○井上座長 所定の時刻ですので、第13回公的弁護制度検討会を開会させていただきます。年末のお忙しい折、御参集いただきましてありがとうございます。
本日は、前回の検討会で御了解いただいたところでありますが、事務局の方で作成された骨格案をベースに議論していただこうと考えております。お手元に配布されている資料13-1「公的弁護制度について」が、事務局において作成された公的弁護制度の骨格案であります。
本日は、まず事務局から、この資料について説明をしていただき、それを基に議論をするということにしたいと思います。御意見をお述べになる際には、いつもお願いしておりますが、できる限りこれまでの議論との重複を避けながら、内容のある議論をしていただければと思います。
それでは、事務局から、資料の説明をお願いします。
○落合参事官 それでは、お手元にお配りいたしました資料13-1「公的弁護制度について」につきまして御説明申し上げます。本資料は、「第1 請求による選任制度」、「第2 職権による選任制度」、「第3 弁護人の選任・解任及び選任の効力に関する事項」、「第4 弁護士の確保及び報酬の算定・支払」、「第5 弁護費用の回収」、「第6 公的弁護制度下での弁護活動の在り方」、「第7 運営主体の在り方」の以上七つの項目に分かれております。以下、順に御説明いたします。
まず、「第1 請求による選任制度」であります。請求による選任制度は、被疑者に選任請求権を与え、その請求により弁護人を選任する制度であり、骨格案におきましては、請求による選任を公的弁護制度における弁護人の中核的な選任方式と位置付けております。第1は、「1 被疑者に選任請求権を与える事件の範囲」、「2 被疑者に対する弁護人の選任要件及び選任手続」、「3 関連問題(被告人に対する弁護人の選任要件及び選任手続)」、以上の三つの項目に分けて記載しております。
「1 被疑者に選任請求権を与える事件の範囲」につきましては、これまで御検討いただいておりましたたたき台のとおり、「身柄拘束されたものに限る」ことを前提とした上で、公判段階で必要的弁護事件とされている「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件」を対象とすることとしております。もっとも、本検討会でも指摘されましたとおり、現実の弁護士の対応能力に限界があることを踏まえ、「改正法施行後、3年程度を経過するまでの間は、死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件とする」こととしております。これによりまして、改正法施行時に弁護人の確保に支障を来すことはないと考えられますし、後ほど御説明申し上げますように、公的弁護制度の運営主体において、全国的に充実した弁護活動を提供しうる態勢の整備が進められることとなりますので、改正法施行後、3年程度の後には、公判段階で必要的弁護事件とされている「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件」を対象とすることも可能であると考え、そのように対象事件を拡大することをも盛り込んだものであります。
次に、「2 被疑者に対する弁護人の選任要件及び選任手続」でありますが、従来のたたき台のとおり、被疑者が貧困により弁護人を選任することができないとき又はその他の事由により弁護人を選任することができないときであって、被疑者以外の者が選任した弁護人がないことを要件とすることとし、貧困要件及びその他要件の具体的な内容や審査について、二つの項目を記載しております。
まず、「(1) 貧困要件」でありますが、「貧困要件については、資力に関する明確な基準を定めるものとし、被疑者に属する現金、預金など容易に弁護報酬の支払に充てることが可能な流動性のある資産の総額から、標準的と思われる弁護報酬の金額を支払うことができるかどうかを基準とするものとする」とともに、「貧困要件の審査資料とするため、被疑者に資力申告書を作成・提出させるものとし、虚偽の資力申告書の提出に対し、罰則を設けるものとする」としております。ここでは、たたき台の資力に関する基準の内容のA案を採るとともに、資力を考慮する者の範囲についてもA案を採っております。被疑者に対する弁護人の選任は、迅速かつ確実に行われる必要がありますので、選任要件についても、迅速かつ安定的な認定が可能なものとするのが適当であると考えられますところ、身柄拘束により失職する場合もあり得ることを考えますと、手取り月収額を基準とすることには難があり、現実の流動性のある資産の総額を基準とするのが簡明かつ合理的であろうと考えたものであります。また、被疑者以外の親族の資力を考慮することにつきましては、親族が弁護費用の出捐を拒む場合の扱いに難がありますし、被疑者による正確な資力申告も期待しにくいことなどを考慮し、被疑者の資力のみを考慮するものとしたものであります。また、貧困要件の審査資料につきましてはA案を採り、その正確性の担保方法についてもA案を採ることとしております。審査資料として被疑者に資力申告書を作成・提出させることについては異論のなかったところであります。その正確性の担保方法につきましては、罰則を設けることに慎重な御意見もございましたが、後に御説明申し上げますとおり、虚偽の記載の有無にかかわらず、有罪になれば費用を負担させるのが原則でありますので、費用負担のみで信用性を担保することは困難でありますし、裁判官による判断の適正や、ひいては納税者の利益を保護する点で重要な保護法益があると考えられ、罰則を設けるのが適当であると考えたものであります。
次に、「(2) 私選弁護人選任申出の前置の要否(その他要件の審査を含む)」でありますが、貧困要件を満たさない者つまりある程度の資力を有する者については、「弁護士会を指定して弁護人選任の申出を行ったが、弁護人を選任できなかったことを弁護人選任の手続的要件とする」ものといたしました。その上で、「当該弁護士会から、弁護人の選任の依頼を受けたが、受任する弁護士がなかった旨を明らかにする書面が提出された場合又は選任の申出から相当の期間を経過したが、弁護人が選任されない場合、国選弁護人を選任する」ものとしております。ある程度の資力を有するのであれば、自らの費用で弁護人を依頼してもらい、それができなかった場合に国選弁護人を選任するのが合理的であると考えられますので、その他要件の審査も兼ねる趣旨で、弁護士会を指定して弁護人選任の申出を行うことを義務付けることとしたものであります。被疑者から弁護人選任の申出があれば、弁護士会において何らかの対応がなされるものと考えられ、その結果、弁護人が選任されれば国選弁護人を付する必要はなくなりますが、受任する弁護士がいなければ国選弁護人を選任することとしたものであります。さらに、私選弁護人の選任が遅延したような場合でも国選弁護人の選任ができるよう、選任の申出から相当の期間を経過したが、弁護人が選任されない場合にも国選弁護人を選任することとしております。
次に、「3 関連問題(被告人に対する弁護人の選任要件及び選任手続)」でありますが、被疑者に対する弁護人の選任要件及び選任手続を整備することに伴い、任意的弁護事件について、被疑者の場合に準じ、選任要件及び選任手続を整備することとしております。他方、必要的弁護事件については、私選弁護人が選任されない限り国選弁護人を付す必要があるため、被疑者の場合に準じた取扱いはしないものといたしました。
なお、請求による選任制度に関し、従来のたたき台に記載しておりました項目のうち、「選任要件の疎明責任」については、法律事項ではなく解釈の問題でありますことから、骨格案には記載しておりません。また、「費用の一部の予納」につきましては、弁護費用の回収の実効化という観点から、「第5 弁護費用の回収」の項に記載しております。
次に、「第2 職権による選任制度」でありますが、たたき台のうちのB案を採り、「被疑者が弁護人選任請求権を有する場合において、弁護人選任に関する判断能力の不足を後見的に担保するため、職権による選任制度を設ける」ものといたしました。被疑者が弁護人選任請求権を有しない場合に職権により弁護人を付すことができる制度を設けるべきであるとの御提案もありましたが、弁護人を付す必要があるか否かについて明確な判断基準を立てられるかどうか、裁判官による安定した判断が可能かどうかといった疑問も指摘されたところでありますし、請求による選任制度における貧困要件との関係などの問題もあることを考慮し、たたき台のB案を採ることとしたものであります。
なお、たたき台では、必要的選任制度も論点として掲げておりましたが、そのような制度の必要性や弁護人が選任されない場合の手続への影響などについて疑問点の指摘があったことをも踏まえ、必要的選任制度は設けないものといたしました。
次に、「第3 弁護人の選任・解任及び選任の効力に関する事項」であります。第3は、以下の五つの項目に分かれております。すなわち、「1 公的弁護制度下における被疑者に対する弁護人の選任時期」、「2 公的弁護制度下における弁護人の選任の効力の終期」、「3 公的弁護制度下における弁護人の解任」、「4 選任できる人数」、「5 選任の効力が及ぶ事件の範囲」であります。
まず、「1 公的弁護制度下における被疑者に対する弁護人の選任時期」でありますが、たたき台のうちB案つまり勾留段階とする案を採っております。この点につきましては、逮捕段階とするとの御意見もあったところでありますが、現実の関係機関の対応能力や態勢の問題のほか、要件審査に当たり、裁判官が直接被疑者に確認することが必要な場合もあり得ると考えられ、逮捕段階の選任が困難な場合が想定されることも考慮し、勾留段階からとするものといたしました。
次に、「2 公的弁護制度下における弁護人の選任の効力の終期」ですが、起訴された場合につきましては、本検討会で異論のなかったところですので、選任の効力は維持されるものといたしました。起訴されずに釈放された場合及び家裁送致された場合につきましては、別の御意見もございましたが、対象事件を身柄拘束されたものに限定したこととの一貫性、弁護人と付添人の地位の違いなどから、いずれも選任の効力は終了するとの案を採ったものであります。
次に、「3 公的弁護制度下における弁護人の解任」でありますが、「(1) 解任権の主体」は、たたき台の案のとおりであります。「(2) 解任事由」につきましては、四つの事由を列挙いたしました。具体的には、「ア 被疑者・被告人が自ら弁護人を選任したことその他の理由により、当該弁護人が必要でなくなったとき」、「イ 心身の故障その他の理由により、当該弁護人が職務を行うことができず、又は困難となったとき」、「ウ 被疑者・被告人と弁護人に利害相反が生じ、又は被疑者・被告人が弁護人に暴行若しくは脅迫を加えたことその他の理由により、当該弁護人に弁護を継続させることが不相当と認めるとき」、「エ 弁護人がその任務に違反する重大な事由があって、当該弁護人に弁護を継続させることが不相当と認めるとき」の四つであります。解任事由を定めることにつきましては消極の御意見もございましたが、多くの方が解任事由を定めることについて賛成の御意見を述べられたところであります。その際、より具体的な解任事由の御提案もございましたが、これに反対の御意見もあったところでしたので、解任につき正当な理由があると考えられる場合を四つに類型化して解任事由といたしました。「(3) 解任手続」は、解任事由を定めることに伴い、「解任に関する手続規定を設けるものとする」ことといたしました。具体的な内容につきましては、これまでの委員の皆様の御意見を踏まえ、法制的な観点から検討してまいりたいと考えております。
次に、「4 選任できる人数」については、捜査段階に複数の国選弁護人を選任する必要性につき慎重な御意見も述べられたところではありますが、複数の国選弁護人による弁護が必要とされる事案もあり得ると考えられますことから、「被疑者のため選任できる弁護人の人数については、原則として一人に限るが、裁判官は、一定の場合、職権で更に弁護人一人を選任することができる」ものといたしました。例外を認める範囲につきましては、国選弁護人が国費で賄われるものでありますことから、合理的かつ相当なものとする必要があると考えており、引き続き検討してまいりたいと考えております。
次に、「5 選任の効力が及ぶ事件の範囲」につきましては、事件単位を原則と考えており、「(1) 別の被疑事実で身柄拘束された場合」には、原則どおり、「新たに身柄拘束された被疑事実について弁護人となるには、当該事実につき選任命令を得ることを要する」ものといたしました。「(2) 追起訴された場合」につきましては、事件単位を原則と考えた上で、「弁護人が選任されている事件に当該追起訴された事件が併合された場合、裁判所がこれと異なる決定をしたときを除き、弁護人の選任の効力が及ぶ」ものといたしました。裁判所が異なる決定を行う場合の扱いにつきましては、異論も述べられたところではありますが、裁判の充実・迅速化の観点からは、事件ごとの弁護人の選任を認める余地を残すのが適当であると考えられますことから、そのような取扱いも可能としたものでございます。
なお、「第3 弁護人の選任・解任及び選任の効力に関する事項」は、本検討会の議論のたたき台の「第4 その他弁護人の選任に関する事項」及び「第5 公的弁護制度下での弁護人の選任の始期及び選任の効力の終期」に対応するものでありますが、その中の「管轄区域と選任できる弁護士の制限」及び「同一の弁護人による数人の被疑者の弁護の可否」の問題につきましては、現在、最高裁判所規則で定められている事項であり、法律事項ではないと考えられますので、法案の基本となる本骨格案には盛り込んでおりません。
次に、「第4 弁護士の確保及び報酬の算定・支払」についてであります。ここでは、二つの項目を記載しております。「1運営主体による弁護士の確保及び報酬の算定・支払」、「2 報酬の基準の在り方」でございます。
まず、「1 運営主体による弁護士の確保及び報酬の算定・支払」につきましては、運営主体において、全国的に充実した弁護活動を提供しうる態勢を整備するため、常勤弁護士を含め、契約により弁護士を確保し、その中から、国選弁護人の候補を指名して裁判所に通知する業務を行うものといたしました。この点は、本検討会での議論のとおり、訴訟法上、このような通知がなければ弁護人を選任できない、あるいは、通知がなされた弁護士を選任しなければならないという趣旨ではなく、運営主体がそのような業務を行うという趣旨で記載しているものでございます。そして、弁護報酬の算定・支払につきましては、本検討会での議論を踏まえ、運営主体と弁護士との間の当該契約に基づき、運営主体が行うものといたしました。このように、契約に基づき支払が行われることにより、会計法24条には抵触しないと考えております。
次に、「2 報酬の基準の在り方」につきましては、公的弁護制度が国費で賄われるものであることを踏まえ、「命令の定めるところに基づき、運営主体において報酬の基準を定め、主務大臣の認可を受けるものとする。主務大臣は、報酬の基準の認可に関し、財務大臣に協議しなければならないものとする」としております。
「第4 弁護士の確保及び報酬の算定・支払」は、たたき台の「第6 公的弁護制度の担い手である弁護士の確保方策」及び「第7 公的弁護制度下での弁護報酬の算定・支払」に対応するものでありますが、たたき台に記載した論点の多くは、運営主体と弁護士との間の契約や報酬の基準の内容として定められるものや、制度の運用の問題などでありますので、法案の基本となる本骨格案には盛り込んでおりません。
次に、「第5 弁護費用の回収」であります。ここでは、「1 弁護費用の回収の仕組み」、「2 捜査段階の弁護費用の負担」、「3 事件ごとの報酬が支払われない場合の弁護費用の負担」、「4 弁護費用の予納命令」の四つの項目に分けて記載しております。以下、順次御説明申し上げます。
まず、「1 弁護費用の回収の仕組み」につきましては、たたき台のA案を採り、「現行どおり、裁判所が弁護費用も訴訟費用の一部として負担を命じ、検察官が徴収する」ものとしております。これは、国が運営主体に資金を交付して弁護費用を出捐していることから、その出捐の原因者である被疑者・被告人に求償できることは当然であると考えられますので、現行どおりの仕組みを採ることとしたものであります。
次に、「2 捜査段階の弁護費用の負担」でありますが、「(1) 起訴された場合」は、現行の訴訟費用と同じ扱いとしております。「(2) 起訴されなかった場合」は、身代わりなど被疑者の責めに帰すべき事由によって生じた費用を被疑者に負担させることができるものとしております。「(3) 少年事件の場合」は、事件が家裁に送致され、検察官送致決定以外の決定で終局した場合において、非行事実が認定されたときは、捜査段階の弁護費用を負担させることができるものとしております。「(4) 告訴人等の費用負担」は、現行の訴訟費用と同じ扱いといたしました。
「3 事件ごとの報酬が支払われない場合の弁護費用の負担」につきましては、いわゆる常勤弁護士等の場合のように「運営主体と弁護士との間の契約に別段の定めがあるため、弁護人に対し、事件ごとの報酬が支払われない場合」があることを前提として、その場合、「被告人等には事件ごとの報酬に相当する金額を負担させる」ものとしております。
「4 弁護費用の予納命令」は、弁護費用の回収の実効化を図るため、「弁護人を選任する段階で、被疑者及び被告人に対し、弁護費用の予納を命ずる制度を導入する」ものとしております。
次に、「第6 公的弁護制度下での弁護活動の在り方」について御説明申し上げます。ここでは、以下の四つの項目を記載しております。すなわち、「1 弁護士に対する指揮命令の制限」、「2 運営主体による契約関係に基づく措置(弁護士の身分等の保障)」、「3 運営主体による基準の策定」、「4 運営主体による刑事弁護全体の質の向上への取組」であります。
まず、「1 弁護士に対する指揮命令の制限」でありますが、「運営主体は、契約関係にある弁護士による個別弁護活動について、指揮命令できないものとする」こととしております。運営主体は、全国的に充実した弁護活動を提供しうる態勢を整備する業務を担当し、業務遂行に必要な範囲で、契約関係にある弁護士に対し契約に基づく指揮命令権を有する場合があると考えられますが、弁護活動の自主性・独立性を確保するため、運営主体が契約関係にある弁護士による個別弁護活動について指揮命令することは制限することとしたものであります。
次に、「2 運営主体による契約関係に基づく措置(弁護士の身分等の保障)」として、運営主体において、契約により確保した弁護士に対し、契約関係に基づく措置(常勤弁護士に対する懲戒又はその他の弁護士に対する契約解除等)を講ずるには、運営主体に公正中立性を確保するために設けられる機関の議決に基づかなければならないものといたしました。
次に、「3 運営主体による基準の策定」として、本検討会における議論を踏まえ、運営主体において契約関係に基づく措置を講ずる際の基準となる業務規程を定めることとしております。運営主体による契約関係に基づく措置や運営主体による基準の策定の問題につきましては、前回の検討会で座長からも御指摘がなされたとおり、本検討会における議論としては、運営主体が契約関係に基づく措置をなしうることや弁護活動のルールを含めた基準を定めることができるとの方向であったものと思われますので、骨格案については、そのように記載させていただいたものであります。
また、「4 運営主体による刑事弁護全体の質の向上への取組」として、「運営主体は、刑事弁護全体の質の向上に寄与するよう、刑事弁護に関して積極的にノウハウや情報を集積し、これを還元する業務を行う」ものとしております。
なお、たたき台の「第9 公的弁護制度下での弁護活動の在り方」のうち、「推薦、連絡又は選任の欠格事由」の問題につきましては、特に一定の場合に選任の欠格事由を定めることについて賛否両論の意見があったところであり、なお慎重な検討が必要であろうと考え、本骨格案には盛り込んでおりません。
次に、「第7 運営主体の在り方」について御説明申し上げます。ここでは、以下の四つの項目を記載しております。すなわち、「1 組織形態」、「2 機関」、「3 業務内容」、「4 弁護士会の協力」であります。
まず、「1 組織形態」につきましては、本検討会で支持の多かった独立行政法人のように、「公正中立で、運営責任の明確性及び経営内容の透明性が図られ、かつ、提供するサービスの質及び効率の向上を図る仕組みを備えた法人とする」のが適当であろうと考えております。それとともに、本検討会でも御指摘がなされましたように、「運営主体の行う業務が司法に密接にかかわるものであること等を踏まえた適切な組織形態とする」のが適当であろうと考えております。なお、具体的な組織形態につきましては、関係機関との協議も必要でありますので、本検討会では、そのような方向性について御理解をいただければと存じます。
次に、「2 機関」についてでありますが、本検討会における議論を踏まえ、「運営主体による業務の運営に関し、特に公正かつ中立な判断を確保する必要がある事項を審議するため、運営主体に、有識者等から成る機関を設ける」ものとし、「例えば常勤弁護士及び契約弁護士に関する苦情の処理などについては、当該機関の議決に基づいて行うものとする」としております。
次に、「3 業務内容」でありますが、司法ネットの中核となる運営主体の業務の一環として、公的弁護に関する業務を位置付け、運営主体が民事・刑事を問わず、国民が全国どこでも法律上のトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供が受けられるような総合法律支援の体制を整備することとしたいと考えております。
最後に、「4 弁護士会の協力」でありますが、運営主体の業務の運営に当たり、弁護士会の協力が不可欠であり、その連携・協力が期待されるところでありますので、「弁護士会は、運営主体の業務の運営に連携・協力するものとする」といたしました。
骨格案の説明は、以上でございます。
○井上座長 ありがとうございました。今、御説明いただいた骨格案の個別の項目についての御質問は、項目ごとに区切って議論をしていただく中で出していただいた方が効率的だと思いますので、そうさせていただきたいと思いますが、この段階で、全体の構成などを含めて全般的な御質問があればお伺いしたいと思います。
よろしいですか。それでは、資料の項目の順に議論していただこうと思います。まず、「第1 請求による選任制度」についてですけれども、御質問からお伺いした方がよろしいかと思いますが、よろしいですか。
それでは、御意見をいただければと思います。どなたからでも結構です。ただ、これまでの議論で、論点については皆さん十分理解されていると思いますので、1、2、3という小項目、これらをまとめて御意見をいただければと思います。
○浦委員 この骨格案の中で「罪名による限定」として、いわゆる必要的弁護事件の範囲を法律の本則とするという提案がなされております。これにつきましては、私が前回段階的実施案ということで述べましたところが基本的に採用されたということができ、評価したいと思っております。私は、在るべき制度としては、逮捕・勾留された全被疑者を対象として、罪名による限定をなくすべきであって、その旨が法律本則に明記されるのが望ましいと考えていたわけですけれども、骨格案のように制度発足時点で対象事件の範囲として、少なくとも必要的弁護事件を法律本則に明記されることについては、おおむね重要な刑事事件を対象とすることができるという意味で、その意義は大きいだろうと思っております。
請求権を与える事件の範囲につきましては、必要的弁護事件を対象とするという規定はされておりますけれども、この範囲をいずれにしても固定的に考えるのではなくて、制度実施後の実績を検証しつつ拡大方向への適時の見直しを行っていただきたい。弁護士側の対応能力が整う見通しが立てば、罪名による限定もなくすということも更に検討されるべきではないかと考えております。
それから段階的実施案のところでは少年事件についても触れておりました。これについては骨格案では採用されておりません。この点につきましても、審議会の意見書が「障害者や少年など特に助力を必要とする者に対し格別の配慮を払うべき」だとしている趣旨を生かしていただいて、今後、なお積極的に検討する方向が強く望まれるのではないかと思っております。
他方で、制度実施当初は、短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件に限定しながら、3年後に必要的弁護事件に拡大するということになりますと、対象事件数が一挙に大きく増加するわけで、弁護士会としましては、それに向けて体制整備を行うべき重大な責務を負うことになります。弁護士会としてもその点を十分自覚して体制の整備に当たっては一層努力していただかなければいけないと思っております。
○井上座長 ほかの方は、いかがでしょうか。
○池田委員 この骨格案に基本的に賛成です。1点だけ意見を述べさせていただくと、2の(2) の「その他要件の審査」に関してですが、この案の基本的な考え方は私も賛成です。そこで、弁護士がなかった旨を明らかにする書面の提出が必要になってくる、あるいは相当の期間経過したけれども選任されなかったという事態が生じてくるわけですが、この辺りがスムーズにいかず、弁護人を選任したかったのにその他要件の審査に時間がかかったためになかなか公的弁護人が付かないということになると、被疑者にとっても不利益になりますので、この辺りがスムーズに運用できるような制度にする必要があるだろうと思います。
この辺りは、弁護士会の規模の大きさとか土地の事情によってもかなり違ってくるのではないかという気もいたしますので、その土地土地によって関係機関が協力し合ってスムーズな運用ができるようにしないといけないと思います。また、法制度としても、各地の実情を無視しないような形になった方がいいのではないかと思います。
○井上座長 その点、いかがですか。
○落合参事官 池田委員のおっしゃるとおりだと思いますので、運用の在り方にも配慮しつつ、法令上どのように対処するか検討してまいりたいと思います。
○井上座長 池田委員の御趣旨としては、法制度として余り画一的に決めて全国一律というのは、妥当性を欠く場合があるだろうということでしょうか。
○池田委員 弁護士会の規模によって、何千人もいるところでは、なかった旨の書面をすぐに出せるのかどうかという問題もあるでしょうし、また、地方で身柄拘束された場所とその中枢のところとの距離関係によっては、相当な期間というのがどの程度になるのかというのも違ってくるのかなという気がいたします。
○井上座長 「相当な期間」というのは、感じとしてはどのくらいなのでしょうか。
○池田委員 短くないと困るのですね。逮捕されてすぐに選任できるということを告げられて、そして弁護人を付けたいと考えた場合を想定すると、自分はお金があるから、まずその他要件の方でいかなければいけない。ところが返事がないので勾留請求の段階になっても、まだ付けてもらえないというようなことになると困ると思います。
○井上座長 警察段階の逮捕ですと48時間ないし72時間。刑事訴訟法の規定でそれがマックスですが、そういうところが一応の目安になるのでしょうか。
○池田委員 その辺りがぎりぎりではないかと思います。
○井上座長 浦委員、何か。
○浦委員 池田委員がおっしゃる意見とほぼ同じで、この書類の提出は新しい仕組みですので、手続が円滑・迅速に行われるよう運用上の工夫をする必要は是非あるだろうと思います。
それから、相当な時間ということになりますと、迅速ということが要求される被疑者段階から考えますと、24時間ないし48時間、48時間ぐらいを最大とすべきかなと、私は思います。
○井上座長 72時間ですと、オーバーしてしまいますね。
○浦委員 ちょっと長いような気がします。
○井上座長 分かりました。ほかにこの点で御意見があれば、どうぞ。
○本田委員 なるべく速く選任しなければいけないという御趣旨はよく分かります。相当な期間をどういう要素を考慮して判断するのかというのも、先ほど池田委員から話が出ましたけれど、大きな弁護士会、小さな弁護士会、それぞれの弁護士会の事情がいろいろあるでしょうから、最終的にはそういったものを総合的に考慮して合理的な期間ということになるのだろうと思います。それを早くしなければいけないということには全く異論ございません。
一方で、弁護士会の方にも是非御協力をお願いしたいのですけれども、そういったものに対して速やかに対応できる態勢というものを是非構築していただかないと、要は弁護士会の方の手続の遅れによって国選弁護人が選任されるということになると、選任の要件の性質が変わってくるだろうという気がしますので、これはそれぞれ制度の運営に携わる者が協力しながら、とにかく速くできるような形にしていくというのが一番望ましいのだろうと思います。
○井上座長 この案は、手続的には、逮捕された段階で、対象事件の被疑者に対しては、こういうことがあるということを告知して、申し出るなら申し出てもらう、それでそれを弁護士会に連絡をするということが最初になるのですか。
○落合参事官 そのような仕組みを法律上あるいは内規あるいは運用上いずれかの形で採りたいと思っています。
○井上座長 「相当の期間」の基準みたいなものは、どのようにして明らかにするのでしょうか。
○落合参事官 想定しております「相当の期間」のマックスにつきましては、今、何人かの委員の方からお話がありましたとおりでありまして、勾留段階から国選弁護人が付くということになると、少なくともそのスタートが遅れないように逮捕段階の期間内に準備活動が終わっているというようなことを考えております。
○井上座長 分かりました。ほかに。
○浦委員 ちょっとほかのことで、今のところについて。
○井上座長 どうぞ。
○浦委員 この第1の2の「(2) 私選弁護人選任申出の前置の要否」のところですが、この点に関しまして、私が第9回の検討会で当番弁護士制度を公的弁護制度の枠組みの中に組み込んで公的弁護人の選任に前置するという位置付けをして、これに国費が投入されるべきだという提案をいたしました。これについては私は前回も同趣旨のことを述べたのですが、骨格案の中には採り入れられておりません。
他方、前回の検討会で、私はこの当番弁護士制度を公的弁護制度の弁護人選任手続の枠組みとは別に、資力の乏しい被疑者に対する法律相談、資力の乏しい市民に対する法律相談というふうな位置付けをした上で検討がなされるべきだと、そういう意見を述べております。司法ネット構想も発表されたところでありますので、当番弁護士制度が司法ネット構想の一環として位置付けられて、これに公費が投入されるというようなことが是非とも今後検討されていくべきだという意見を述べさせていただきたいと思います。
○井上座長 それは分かっているのですが、最初の御提案ですと、それをどうやって理論的に説明するのか、それを示してくださいとお願いしておりました。その結果として、御提案を引っ込められたのかという気がするのですが。
○浦委員 理論的にということはもちろんありますけれども、公的弁護制度に前置するというだけでは当番弁護士制度の一部分しかそこに採用されないということになりかねませんので、全体を司法ネットの枠組みの中で検討されるのが適切ではないかと考えるに至ったということです。
○井上座長 そこのところについてお答えいただけなかったのです。公的弁護という枠の中にどのようにして位置付けていくのか、いけるのかという点については、まだ十分な御説明がないのですね。それに対して、扶助の方でいくとなると、今回の公的弁護とは別の枠組みということになりますので、そういうことで御意見をおっしゃったのだろうと思いますが・・・。
○浦委員 そういうことです。
○井上座長 ほかに、何かございますか。
○浦委員 先ほど落合参事官も言われましたけれども、今後、前置の制度を採る以上は、逮捕段階での弁護人選任権の告知というのは非常に重要になると思われますので、その辺をきっちり法制上も整備していただく必要があると思います。
○井上座長 選任権の告知自体は既にあるわけですが、そのときに、こういう制度があるということをも告げるということでしょうか。
○浦委員 ええ、そうですね。
○酒巻委員 告知と制度の分かりやすい説明については、私も是非お願いしたいと思っております。
○井上座長 それは当然やるべきことでしょうね。
○大出委員 確認というか質問になるのかもしれないのですが、一応逮捕段階で、もちろん告知が行われるわけですね。そうすると申出があった場合、つまり弁護人を選任してほしいと申出があった、なおかつ資力要件があると、つまりお金がないということになった場合、この後での議論になると思ったから控えていたのですが、勾留段階からということになったときに、すぐに対応できる場合であっても、その逮捕段階での申出というのは、勾留になるまで被疑者からの申出には対応しないということになるわけですね、公的弁護制度としては。
○落合参事官 そこは先ほど申し上げたとおりで、なぜ逮捕段階ではなくて勾留段階を採るかということを御説明したつもりなのですが、弁護士会の対応、それから各機関の対応、それから貧困要件等の審査も場合によっては被疑者から直接裁判官が話を聴くということも必要であろうということも考えますと、やはり逮捕段階からすぐ対応するのは難しいという判断でございます。
○大出委員 ですから私も質問といいますか、確認なのですが、それは公的弁護制度としては、逮捕段階からかなり早い段階で申出があっても制度としては対応しないと、そういうことだということの確認です。骨格案のこの仕切りでは。
○落合参事官 貧困要件に当たるので弁護人をお願いしたいと言っても、弁護士会あるいは運営主体などの対応態勢の問題もありますので。
○大出委員 勾留段階でなければできないということだということですね。
○井上座長 そういった事情があるので、制度としてそう組むということなのでしょう。ですから、対応できるのにしないのかという問題設定自体がナンセンスなのですよ。
○大出委員 いいえ、そこは私も申し上げていないので、その説明としてはそういう説明で対応しないのだと、こういう御説明ですよね。
○井上座長 いや、対応できるのに対応しないのかという質問をされるから、そうではないのだということではないです
か。
○大出委員 制度としては、刑事訴訟法上は告知があったときには選任請求できるわけですよね。
○井上座長 刑事訴訟法の規定で、特定の弁護人を指定し、あるいは弁護士会を指定して、自分で払いますので選任したいということなら、すぐできるのではないですか。
○大出委員 ただ、それでも資力要件がかかってですね・・・。
○井上座長 刑事訴訟法に今あるのは、自ら選任をする、私選ですよね。
○大出委員 そうですけれども、本人としては、弁護人に依頼したいという希望を持っていて、ただ、お金がないという場合が当然あるわけですよね。
○井上座長 だから、その場合は、資力要件を裁判所が審査をし、それで要件に当たると認められれば、弁護人を付けるという制度を新たに組むわけでしょう。
○大出委員 ただ、それは勾留段階からだと、こういうことなわけでしょう。
○井上座長 なぜそうせざるを得ないかということは、説明されたとおりでしょう。
○大出委員 ですから、刑事訴訟法上は確かに弁護士会及び弁護士を指定して申し出るということになっているわけですけれども、しかし、いずれにせよ、そのときに申し出たとしてもお金がない場合というのがあるわけで、本人は弁護士を付けてもらいたいと。
○井上座長 それは、制度として違ってくるのですよ。
○大出委員 ですから、その確認だと申し上げたのです。この仕切りでは、公的弁護制度としては対応しないということですよねという確認をしたかったということです。それから、もう一つ・・・。
○落合参事官 1点よろしいですか。ちょっと誤解されていると思うので、私の説明もちょっと分かりにくかったかと思うのですが、告知をすれば選任請求できるとおっしゃったのですが、今議論されている告知というのは、こういう制度があるということを告知するのであって、選任請求権を告知するということではございませんので、そこは誤解のないようにお願いしたいと思います。
○大出委員 誤解をしているつもりはないのですが、つまり・・・。
○井上座長 同じことの繰り返しですので、それを確認した上でどういうことをおっしゃりたいのでしょうか。
○大出委員 今、浦委員の御説明との関係で、公的弁護制度について逮捕段階からという意見もあったわけですね。
○井上座長 その制度は採らない、そこは勾留段階からという制度にしますということなので、それはそのとおりでいいのでしょう。
○大出委員 ですから、公的弁護制度としては、逮捕段階からの申出があった場合であっても、勾留段階からしか付けられないということで、そういう制度の枠組みをつくったということの確認です。
○井上座長 初めからそう説明されていると思いますが。
○大出委員 もう一つ質問ですが、貧困要件のところで、具体的にもしそれをお伺いしておく必要があるかどうかというのは微妙かもしれませんが、基準となる金額としてどんなところをお考えでいらっしゃるのかというのは、現時点で何かあるのですか。
○落合参事官 そこにつきましては、金額の大きな考え方はこの骨格案に書いているところでありまして、あとは国民の一般感情ですとか、ここにありますとおり、弁護報酬、標準的な事件で行うかというようなことも考えながら、今後決められることになると思っていまして、具体的に今ここで数字を申し上げるのは適当ではないのではないかと考えています。
○井上座長 それでいいですか。
○大出委員 はい。
○井上座長 ほかに。この点はこのくらいでよろしいですか。
○浦委員 もう一点だけいいですか。時間は取りません。虚偽の資力申告書を提出した際の罰則なのですが、私は先に消極の意見を述べたのですけれども、これについては違法性の程度というふうな問題からしましても、せいぜい罰金程度とすべきではないかと思います。その点の意見だけ述べさせていただきます。
○井上座長 罰則の中身ですか。
○浦委員 中身です。
○本田委員 罰則の中身について、今、浦委員からおっしゃられたところなのですけれども、これにどのような罰則を盛るかというのは、この行為の違法性の程度であるとか、類似罰則との整合性、そういうものを考えた上で定める必要があるわけで、ただ、一般に罰金を上限というような議論では済まないのではないかと思います。要は虚偽の私文書を作成して少なくとも国民の税金を不当に使うことになるわけですから、そういった同じような行為についての罰則の在り方というものとの整合性も考えながら今後定めていくべきであって、いきなり罰金ということにはならないだろうと考えています。
○酒巻委員 以前、アメリカだとaffidavit にうそを言うと罰則があるということを紹介したと思います。それと似たようなことだとすると、私の認識ではアメリカではfineとimprisonment、要するに罰金刑にするか拘禁刑にするか、両方とも一応法定刑には入っていたと思います。ですから、法的な性質、もちろん制度は違いますけれども、資力の虚偽申告というものについての刑が必ず罰金刑かと言えば、そうではないのではないかと思います。運用は分かりませんが。
○井上座長 本田委員が言われたのとは、ちょっと趣旨が違うように思います。本田委員は、私文書偽造で何かを詐取したような場合とのバランスを問題にされているのでしょう。虚偽申告については、国によって随分厳しさが違っていて、アメリカなどは非常に厳しいですね。各種の申告の真実性を担保するためには、それくらいしか方法がないので、非常に厳しくしてあります。ほかにこの点について御意見は。では、第1についてはこの程度にさせていただきたいと思います。
次に、「第2 職権による選任制度」についてですが、まず、この骨格案の内容についての御質問があれば出していただきたいと思います。大出委員、御質問があれば。
○大出委員 それではお伺いします。具体的にはここでの言い方でいきますと、どのような場合を事務局としてはお考えでいらっしゃるのか、判断能力の不足という場合について、具体的にはどういう場合を想定されているのですか。
○落合参事官 一般的に申し上げますと、裁判官が勾留質問などの際に把握した事情に基づいて弁護人選任請求権を行使するのが相当であるのに行使しないような場合です。具体的には、例えば公判段階になりますと心神耗弱とか心神喪失の疑いというのが定められていますけれども、捜査段階もそこは千差万別いろいろな場合が考えられます。
○井上座長 よろしいですか。
○大出委員 はい。
○井上座長 ほかに御質問があれば。では御意見を伺いたいと思いますが、どうぞ。たくさんあれば、まとめてお願いできますか。
○浦委員 大したことはございませんから。私は、先に、請求権のない被疑者についても職権選任が認められるべきだということを申し上げたのですが、今回の骨格案では請求権を有する場合に職権選任ということにされたということです。もちろんその運用が適切に行われるべきことは言うまでもないのですけれども、前回も申しましたが、先ほどの弁護人選任権の告知とのかかわりでもあるのですが、選任請求権のない被疑者についても、適切な弁護人選任が行われるように、選任権の告知の問題というのは重要になるのだろうと思いますので、その点も是非御留意いただきたいと思います。それだけです。
○井上座長 今のお話でちょっと理解できなかったところがあるのですけれど。
○浦委員 要するに弁護人選任権の行使ができない場合に、この職権選任ということになるわけですけれども、それは一定の限定された範囲で請求権がある被疑者に絞られるわけですが、それ以外の被疑者についても、こうすれば弁護人が選任できますよということを明確かつ懇切に説明していただいておく必要があるのではないかということで御意見を申し上げたわけです。
○井上座長 最初言われたのは、典型的には心身に障害などがあって判断が十分できない、そういう人の場合に職権で付けるということと告知の関係について言われたのですか。
○浦委員 違います。請求権がある場合にはもちろん裁判所の職権選任がされることになるのでしょう。請求権がない場合でも、心身に障害などがあると思われる、あるいはその疑いのある場合には、こうすれば弁護人が選べますよという話を懇切丁寧にしていただく必要があるのではないかなと思います。
○井上座長 私選の選任権についても、ということですか。
○浦委員 そうです。
○井上座長 ほかにいかがですか。よろしいですか。
それでは、次に、「第3 弁護人の選任・解任及び選任の効力に関する事項」という点ですが、まず御質問があれば。よろしいですか。それでは、御意見をお伺いしたいと思います。これも、1、2、3、4、5と分かれていますが、五つまとめて、どこからでも結構ですので、御意見があればいただきたいと思います。どうぞ。
○浦委員 勾留時説を採られたということです。先ほども落合参事官から御説明がありましたが、選任行為の準備というのは逮捕段階から始めていただく。例えば資力申告書の作成とかその他要件での弁護士会への通知等に関しましても逮捕段階から始めていただくことは重要だろうと。この辺は再度確認させていただきたいと思います。
それから、次は解任の問題ですが、解任事由として、アからエまで四つが掲げられております。この解任事由についてですけれども、アは弁護人が不必要という範疇に入るのかなと思います。イは不可能若しくは困難という範疇に入る。ウ、エは不相当。そういうふうに分けられるかと思いますが、この解任事由の法定化の問題につきましては、この間、弁護士会でも議論してまいりまして、日弁連の刑事弁護センターでは12月15日、理事会では12月20日に、それぞれ執行部から解任事由を法定化することを議題として提案し、論議されました。議決には至らず議論がされただけですが。
私としましては、解任事由の法定化につきましては、立法事実とかその必要性に照らして、まだなお疑問を持っておりますし、運用上も懸念なしとはしないと考えているわけですけれども、どうしても解任事由を法定化するということであれば、この骨格案のような内容のものにならざるを得ないのかなと、そのように思っております。
また、この骨格案で示されたアからエの四つの項目といいますのは、日弁連の執行部とか刑事弁護センターの正副委員長会の提案とほぼ同旨の内容になっておりまして、したがって、会内での合意を得られる可能性もあるというふうに思われます。
それから、解任事由のウですけれども、これは弁護士会での論議の中では、「回復しがたい信頼関係の喪失」というような、そういう言葉が入っておりました。ここではその言葉は入っておりませんけれども、ウのところで言われているのは、被疑者・被告人と弁護人との関係において問題が生じて、当該弁護人に弁護活動を継続させることは相当でないという範疇として掲げられたものと思いますので、従来から言われていた信頼関係の喪失といったものもその程度いかんによってはここに入ってくるだろうと理解しております。
それから、もう一つですが、解任事由につきましては、弁護人の解任というのは、時には被疑者・被告人にとって重大な不利益になるわけでありますから、現行の刑訴規則179 条の6の2項の規定にもありますけれども、被疑者・被告人の利益を害さないようにする、そういうふうな明文の規定をどこかで置いていただく必要があるだろうと思います。179 条の6の2項は、国選弁護人が差支えの場合の処置ということで、国選弁護人に期日変更を必要とする事由が生じたときに、裁判所が弁護人を解任できるという規定なのですけれども、この場合でも、著しく被告人の利益を害するおそれのあるときはこの限りではないということで解任を認めない、そういうふうな構成になっているわけです。法律上の文言をどうするかは、なお検討する必要があろうかと思いますけれど、少なくとも被疑者・被告人の利益を害しないようにすべきことを何らかの形で法律上明記される必要があるだろうと考えます。
それから、解任の手続について、これも前回私は意見を申し上げました。具体的な内容については、法制上の観点から検討すると、先ほどの落合参事官の御説明にございましたが、現行法で定められていない解任事由を定めるということになるわけですから、その場合に手続規定を設けることは不可欠だろうと思っています。今申しましたが、国選弁護人の解任というのは、被告人の防御にも重大な影響を及ぼしますし、また、解任される弁護人にとってもこれは不名誉なことになるわけです。したがって、そのための適正な手続が設けられる必要があるだろうと思います。例えば、解任の対象になっている弁護人の意見を必ず聴く、聴いた際にはそのための調書を作成する、そういうふうな手続が必要になるだろうと思います。
さらに、解任事由の法定化に賛成される意見の中には、解任事由を明確化するということを根拠にされておられました。そうだとすると、裁判所による解任決定には、その事由が明確になるような理由を付していただく必要があるだろうと思います。
加えて、これは会内での意見ではありますが、不服申立ての手続ですね。これは法制的になかなか難しい問題もあるやに聞いておりますけれども、不服申立ての手続については、これを設けるべきだという強い要請が弁護士の間にあること、この点も特に付言させていただきたいと思います。以上です。
○井上座長 信頼喪失というのも、ウの「その他」という文言に当たるということですか。
○浦委員 「その他」そこで読めるのではないか、そういう趣旨で確認させていただきます。
○井上座長 それから、被疑者・被告人の利益を害さないようにするということなのですが、一般的にはそのとおりかとも思うのですが、具体的にアからエの理由があるときに、それでも弁護人を続けさせるというのは、そもそも被疑者・被告人の利益になるのですか。アの場合は要らないということでしょう。
○浦委員 アは要りませんね。
○井上座長 イとかウの場合はどうでしょう。
○浦委員 イの場合だと、今の現行法でも、179 条の6の2項にひっかかってくる可能性はあるのですね。
○井上座長 ただ、イなどの場合に続けさせたら、被疑者・被告人の利益を害するわけでしょう。
○浦委員 結審間際で、しばらく時間を置けば、弁護人の故障も癒えるというふうな場合には、そのまま置いておくこともあり得る。規則の179 条の6の2項の規定はそういう趣旨なのだろうと思うのですね。
○落合参事官 刑訴規則の179 条の6というのは、被告人の方に帰責事由が全くない場合なので、その場合に弁護人を解任するということになれば、被告人の利益をよく見なければいけないということだと思うのですね。それに対して、この解任事由は、一般的にア、イ、ウ、エで書いていますので、刑訴規則にある極限的な場合のただし書を一般的な事由としてア、イ、ウ、エのところに持ってくるというのはなかなか難しいという気がします。しかも、これはできる規定なので、そういう極限的な場合も含めてできるということにしておけばいいのかなと今は思っております。ただ、浦委員がおっしゃられた趣旨はよく理解しているつもりですので、更に検討したいと思っています。
それと、信頼関係のところですけれども、浦委員のおっしゃることも十分理解しているつもりではあるものの、例えば現行法ですと、必要的弁護事件というのは、被疑者の希望の有無にかかわらず弁護人を選任する、その際、もちろん指名権はないということを考えますと、信頼関係の存在というのは国選弁護の必須の要件かというのは若干議論のあるところだろうと思いますので、その点も今後いろいろ検討したいと思っています。
○浦委員 それは古くから議論されてきたところですね。
○井上座長 ほかに御意見は、どうぞ。
○池田委員 今の解任の手続に関する浦委員のお考えにちょっと異論があるので意見を述べさせていただきます。
まず、不服申立ての関係ですが、これは今はできないとされています。解任に対して不服申立てを許すということになると手続が止まってしまうわけですね。ほかの弁護人を付けて手続を進めようとしているのに止まってしまうのはどうなのかということを考えると、不服申立てを設けることがいいとは思えないのです。
あとの意見聴取ですとか、調書作成、解任決定に理由を付すというのは、これは考えとしては分かりますが、それをさて立法していくとなると、今の法律との整合性というのも考えていただかないと困るだろうと思います。意見の聴取については、多分これは今の運用からすれば、弁護人を解任しようというときには裁判所は意見を聴きます。聴かないで、突然おかしいことをするから解任するというようなことはあり得ないと思います。裁判所の目の前で起こっていることだったら、それは別ですけれども、それ以外のことであれば、そういうことが本当にあったのかどうかということで聴くわけですけれども、先ほど出ました規則 179条の6でも、これは被告人の意見を聴けということになっていますけれど、弁護人の意見は聴かないでいいことになっていますね。そういうこととの整合性というのも考えなければいけないのではないかと思います。
それから、調書化については、そういうことが起こって、弁護人の方で何らかの意見を述べるということになったら、普通は意見を書面で出してこられると思うのです、裁判所が考えていることと違うことを望んでいるのであれば。そういう書面が出れば、書面は当然記録に綴られることになります。これは規則の 298条で書記官が書面を受理するということになっていますので、記録に編てつされることになるはずです。また、もし公判廷で口頭で陳述すれば、普通の裁判所はそういうことについては調書に記載しますけれども、必要的な記載事項にはなっていません。弁護人の意見を聴いても、すべてのことが必要的記載事項になっているわけではないのです。ですから、それとの整合性も考えていただかないといけないだろうと思います。他方、公判廷外でそういう意見聴取をしたら、これは規則の 296条で、書記官が調書を作成することになっていますので、これは調書になるということです。
それともう一点の解任決定の理由の明示ということですが、先ほどの不服申立てとの関係で、不服申立てができるということになれば理由を付さなければいけないわけですけれど、できなければ、法律で不服申立てできない決定には理由を付さなくてもいいということになっておりますので、それとの整合性をどうするのかという、一般的な規則との整合性が問題になると思います。もちろんこれはかなり重要なもので、利害のある弁護人の立場もあるので、この点だけは特に求めるということももちろん不可能ではありませんけれども、その場合にはこれは法律で決めないといけないことになるわけです。そういう問題もあるのではないかということを指摘しておきます。
○井上座長 解任手続の中身については、御意見も踏まえ、また法制上の問題も考えて、更に整備していくということですね。そういうことでよろしいですか。ほかに、どうぞ。
○大出委員 「4 選任できる人数」について、先ほど落合参事官の御説明だと、なお検討ということもおっしゃっていたので、それであればそれで構わないかと思うのですが、裁判所が判断してお付けになるわけですので、ここで追加について1人というふうに限定する必要はない、事件によっては、2人、3人というのが必要な場合があり得るだろうと思いますので、是非そこは更に検討していただければと思います。
○落合参事官 これまでも人数につきましては御議論いただいたところでございます。この骨格案の考え方は、先ほど申し上げたとおりでございますが、加えまして、今までの検討会でも議論されたところですけれども、お金がなくて国選弁護人を選任した人が複数選任してもらえるけれども、ある程度お金があるので私選でいく人は資力によっては1人分しか私選を頼めないというのはちょっとバランスを失するというようなこともございますし、それと今回常勤弁護士制度というものが設けられるということになりますと、重大事件で弁護人が付きっきりで付かなければいけない事件には、これに対応できる弁護士を本来付けるべきであって、2人、3人を付ける場合は一体どういう場合なのかという問題があることも考慮しまして骨格案ではこのようにさせていただきました。
○井上座長 ほかに御意見は。よろしいですか。それでは、第3はこの程度にさせていただきます。次は、「第4 弁護士の確保及び報酬の算定・支払」ですが、まず御質問があれば。よろしいですか。浦委員、どうぞ。
○浦委員 ここで、国選弁護人の候補を指名して裁判所に通知する業務を行うということになっていますね。指名というのはどういうことか、あるいは通知というのはどんなことになるか、その辺の御説明をお願いします。
○落合参事官 この辺りは訴訟法上のものではございませんで、この運営主体の組織法上の権能として言っているものでございますので、あくまでも先ほどの説明で申し上げましたとおり、裁判所はこれに拘束されないものであります。個々の具体的な運用につきましては、その土地土地の協力いただく弁護士会と運営主体あるいは裁判所とが協議をしていろんなやり方を決めていただければというふうに思っています。
○井上座長 よろしいでしょうか。
○浦委員 指名というのは名前を言うようになるのですか。
○落合参事官 候補を出す以上は、この人というふうに普通は名前を言うのではないかと思うのです。
○浦委員 そういう意味なのですか。分かりました。
○井上座長 名前を言わなければ通知ということもできないと思いますね。では、御意見があれば、お伺いしたいと思います。1、2、両方併せて御意見を伺いたいと思います。
○浦委員 この点につきましては、これまで繰り返し述べてきたところでもあるのですけれども、具体的な事件に対する推薦の順序、あるいは重大事件における個別の推薦の問題は弁護士の選定にかかわる実質的な判断が介在するところで、これが恣意的に運用されることになりますと、弁護活動の自主性・独立性に重大な影響を及ぼすことになるわけです。現在、昭和23年6月9日付けの最高裁事務総長通達に基づいて弁護士会の推薦が行われております。この通達は国選弁護人の推薦についてはその地の弁護士会に一任して行うということになっておりまして、弁護士会の名簿に記載した順番に基づいて人選されていくという方法がとられております。これは23年以降現在まで長期間にわたって大多数の単位会でそういう方法で弁護人の推薦と選任が行われてきました。
加えて弁護士会とすれば、現在、「国費による弁護人推薦に関する準則」というものを制定しまして、それに基づいて不適切な弁護をする弁護士については推薦停止という措置を採るなどしているわけです。このような運用につきましては、なお維持、尊重されるべきだということを私は繰り返し強調してまいりました。この点につきましては、従来述べてまいりましたとおり、弁護人の推薦名簿とか特別案件名簿を弁護士会が提出して、運営主体の方は弁護士会と提携・協議しながら弁護人の通知・連絡業務を行っていくと、そういう運用が重要だということを改めて指摘させていただきたいと思っています。
同時に、具体的には公平な配てん名簿をつくったり、更には特別案件について個別協議をしていく。あるいは、割当てとか選任の状況について、それが恣意的な運用になっていないかどうかを確認できるような、そういう報告とか協議の場を持つとか、方法についてはいくつかあります。いずれの方法も含めてですけれども、弁護士会と十分な提携・連絡をとりながらやっていただく必要があるのだろうと思っております。
○井上座長 御意見として伺っておきます。ほかに、どうぞ。
○清原委員 「2 報酬の基準の在り方」についてなのですが、これから弁護士の方が増えていって、私選の場合には、恐らくその方の資質とか、それまでの裁判の成果等に応じて多様な報酬の在り方というのが実際には展開していくのではないかと思われます。公的弁護においても、やはり弁護士の方を確保する、質の高い弁護士さんに公的弁護の役割を担っていただくためにも適正な報酬の基準を定めるということは大変重要な部分だと思います。特に、「報酬の基準の認可に関し、財務大臣に協議しなければならないものとする」とありますように、なかなか国も財政厳しき中、公的弁護の新しい制度を導入されるとなると、それに対して、もちろん最初から高い報酬基準を設定しにくい状況もあるかと思われますので、これは意見でございますが、本当に財務大臣と主務大臣が大いにこの辺は協議というか、強く言っていただいて、一定の水準を確保していただかなければいけないなと思っております。
そういう意味で、さかのぼって恐縮ですが、3ページ目の「4 選任できる人数」というところで、「原則として一人に限るが、裁判官は、一定の場合、職権で更に弁護人一人」とありますところも実は非常に重要な意味を持っていると思います。国民から見ると、前にも発言いたしましたが、被疑者・被告人に公的弁護を付けるということを本当に理解して公費を出していただく。しかも相対的に適正な、私選弁護の方と大きな格差のない報酬を確保するためにも、この辺りのバランスというのは非常に重要なことだと思いまして、私はこの骨格案の先の4番と「2 報酬の基準の在り方」については、非常に重要な項目であると思っております。
弁護士の方は決して報酬の多寡によって仕事の質を変えるはずはないと信頼はしておりますけれども、やはり公的弁護に当たる弁護士の方の報酬の基準については、是非財務大臣との協議に、私たちは応援をしていかなければいけないのではないかと、そういうふうに思っておりまして、意見でございます。
○井上座長 財務大臣でなく、主務大臣をではないですか。
○清原委員 主務大臣を応援しなければいけない。財務大臣が出していただく決意を滑らかにしていただくような環境が必要ですし、そのためにも付け加えますと、公的弁護の必要性に関して国民の理解を本当に大いに得ていかなければいけないと。決してこれは被告人・被疑者の行為を奨励するという意味ではなくて、人権の観点からしていくことですから、その理解のPRをと、ますます思っているところです。
○井上座長 清原委員のようなお立場の方が御発言になれば、大きな影響力があると思いますね。
○清原委員 はい。以上でございます。
○井上座長 出し遅れの質問なのですけれども、私は理解しているつもりなのですけれども、この文章だけ読むとやや分かりにくいところがあります。それは、これまで常勤弁護士・契約弁護士という概念で議論をし、一般の弁護士を個別に選任する場合には、それと違うようなカテゴリーとしてイメージしてきたわけですが、今回の骨格案では「契約により弁護士を確保し」とされているところです。これは、個別選任の場合もカバーするものですね。
○落合参事官 契約については、いろんな契約類型があるところだろうと思います。ただ、法律事項として契約の内容を細かく書く必要はないと思いますので、「契約により」とだけ書いているわけでありますが、契約の中には今まで当検討会で議論されてきました、例えば 100件なら 100件をいくらでやる。その 100件の受任を義務付けられているものから、裁判所から選任されれば、基本契約に従って弁護してもらうといういわばフランチャイズ契約のようなものまで幅広くありまして、一般の弁護士が個別に選任されるということになりますと、そういうフランチャイズ契約のようなものが考えられるということになります。
○土屋委員 常勤弁護士のことで懸念されるものですから、一言だけ述べておきたいと思うのですけれども、検察官からの出向というような形があると、国民の目から見ると、弁護までいわば検察官がやるのかなというようなことで心配されるようなことが起きないかなということが一つだけ懸念されます。いろんな形で常勤弁護士になる方はあるだろうと思うのですね。私は裁判官の方が常勤弁護士の形で出向されるようなことは、非常に刑事裁判全体のことを考えるといいのではないかと思うのですけれども、検察官から行かれるとなると、ちょっと待てよという気になります。その点だけ心配なので一言だけ。
○井上座長 言われることも分からないわけではないのですけれども、法曹というのは、本来、役割の交代が可能なはずなのです。それぞれ党派的にやっているわけではない。身分が継続してということになると、そこがひっかかるのかもしれないのですけれども。
○土屋委員 そこは工夫の仕方があるのかなとも思うのですね。
○井上座長 制度としては、法廷の反対側に座っている人が、また戻ったりすることもあるわけです。
○土屋委員 奇異に見えるかなという気もちょっとするのです。
○井上座長 そういう御意見があったということで・・・。
○土屋委員 ちょっと心配なところであります。
○本田委員 裁判官と検察官で別に区別して考える必要は全くないと考えています。むしろ検察官になる者が弁護人の立場から事件をよく見ておく必要があるわけで、検察官の立場からだけ物を見るものではなく、弁護人の仕事を一定期間経験させるということは、我々としては非常に大切な、より良い検察官になるための貴重な体験であろうと思います。もちろんそれは裁判官にも言えることであって、そういう意味からいくと、出向という言葉に何かひっかかるところがあるかと思いますけれど、一定期間経験させる。それはどういう形で経験するかは別として、その点についての危惧は全く要らないのであって、むしろ積極的にやるべきではないかなと、個人的にはそういう考えを持っています。
○髙井委員 私も全く同様で、積極的に検察官に一定期間弁護人の役割を果たさせるべきだと。私は両方やっているわけですが、弁護人になってみると、すごく違った風景も見えるわけで、これでもう1回検察官に戻れば、また、ひと味違った検察官に・・・。
○土屋委員 私は正に髙井委員みたいな方がいらっしゃるといいと思うのです。ただ、私が申し上げているのは、ストレートに出向みたいな形で行くことに、えっ、という感じはあるということです。
○井上座長 そこのところはいろいろ工夫というか、配慮しないといけないのかもしれませんね。
○山崎事務局長 この検討会ではないのですけれども、判事補、検事が公務員の身分を持ちながら弁護士として活動するという制度を導入する法案を今度国会に提出することになるのですが、この場合、検事の身分を保有したままではありません。法務事務官という身分を残すということになるのですけれども、そういう一定の身分を持ちながら弁護士事務所に行き、現実に弁護活動をやることになります。その事務所に行けば、民事も刑事もあるわけですが、法曹というのはその立場々々に応じてきちんとやるべきことはやるということを前提に、制度をつくっております。そこのところは御心配は分かるのですけれども、御理解いただければと思います。
○井上座長 今、言われたのは、他職経験のことですか。
○山崎事務局長 他職経験ですね。
○土屋委員 そういう交流みたいなものも必要だと思うのですね。そういう積み重ねがどんどんできてくることが大事だと思うのです。ただ、要らぬ誤解というのでしょうか、それを招かないような工夫をちょっとしていただけたらいいのではないか。
○井上座長 どんどん交流が盛んになっていけば、そういう誤解もなくなってくるのではないでしょうか。
○土屋委員 そういう時代になってしまえばいいのだと思うのですけれど、今、恐らくそういう感じにはないだろうというふうに私は思っていまして、いきなりやるとびっくりするかなという感じがちょっとしないではありません。そういうことです。
○井上座長 御意見として承っておきたいと思います。ほかに。
○樋口委員 報酬の基準なのですけれど、報酬の基準というのは、聴き漏らしたのかもしれないのですけれど、どんなイメージになるのでしょうか。算定基準なのですか。
○落合参事官 算定基準と言い換えて構わないと思っています。
○樋口委員 というのは、回数であるとか要した時間とか、そういったイメージですか。
○落合参事官 具体的な算定の仕方につきまして、検討会でいろいろポイント制ですとか、あるいは日数に応じてとか、全く定額とかいろいろな御意見をいただきましたが、国費の観点もございますので、関係機関と協議をして国民の納得が得られるような制度にする必要があると思っています。
○井上座長 よろしいですか、その点は。
○樋口委員 はい。
○井上座長 ほかに、どうぞ。
○浦委員 その報酬基準の算定に関して、以前、私が報酬基準の審議会のようなものを考えたらというようなことも申したかと記憶しているのですけれど、少なくとも弁護士会の意見、これはもちろん法的なものではないとしましても、運用上弁護士会の意見だとか、国民の方の意見を聴けるような、そういうふうな形でこの基準が定められていく、そういうふうな手続も必要になると考えています。
○井上座長 ほかに、よろしいですか。それでは、先を急ぐようですけれども、「第5 弁護費用の回収」について、御質問からまず承りたいと思います。よろしいですか。
○池田委員 この点についての意見ですが、よろしいですか。
○井上座長 どうぞ。
○池田委員 骨格案に基本的に賛成ですが、若干テクニカルな部分も含めて意見を述べさせていただきます。
2の「(1) 起訴された場合」の弁護費用の負担についてですけれども、裁判所が資力に応じて被告人に負担させるということで、こういう枠組みでいいと思います。ただ、現在の被告人弁護の場合には裁判所は弁護活動もある程度分かっているわけですけれども、被疑者弁護の段階のことは裁判所は分からないわけですから、特に費用がいくらになったかというのは判決の時までには分かるような仕組みにしておいていただかないと困ります。資力に応じて負担させることになりますので、裁判所が思っていたより高い費用を払っていたというようなことでは、それまで負担させるのはちょっとかわいそうだというようなことも起きかねませんので、弁護費用の総額が分かるような仕組みにする必要があるだろうと思います。
次の(2) と(4) なのですけれども、これは被告人弁護について現在も同じような規定があって、裁判所が公判活動を見て負担させるか決めているわけですが、今回の被疑者段階の場合には、特に起訴されなかった場合については、裁判所は被疑者の責めに帰すべき事由なのかどうか、告訴人等に責任があるのかどうか分からないわけですので、これは検察官の申立てによるというような仕組みにしていただかないと実際には動かないのではないかと思います。もちろんそのための資料も、そのときに提出していただかなければいけないということになると思います。
それから、「(3) 少年事件の場合」なのですけれども、少年については、家庭裁判所で非行事実を認定することになりますが、不起訴になった成人の場合には、今のこの骨格案ですと、責めに帰すべき事由がない場合には、単に起訴猶予ということだけですと費用負担にならないわけですけれども、少年の場合には非行事実を認定されると費用負担が原則になるということです。これでバランスがいいのか、バランスを欠いていないかなという懸念があるわけです。少年事件は全件送致ですから、成人であれば起訴猶予になるような事件も、少年の場合には家庭裁判所へ送致されます。そして事案によっては、不開始あるいは不処分ということもあり得るわけですが、そのような場合にまで弁護費用の負担が原則だとなると、成人で起訴猶予になった者とのバランスからいって少年の方が厳しくなりはしないかと。できれば、少年については保護処分で終局した場合に費用を負担させることができるというような切り方というのはできないのかと。その辺りは更に検討していただければと思います。
○井上座長 分かりました。(2) と(4) については、恐らくそういう運用になるのではないかということですね。それとも申立てというのをはっきり書くべきということですか。
○池田委員 そこはどういうことでも構いませんが。
○井上座長 実際に動かすためには、主として検察官から申し出てくれないと裁判所としては分からないということですか。
○池田委員 そうですね。
○井上座長 (3) については、何か。
○落合参事官 (3) についてですけれども、池田委員のおっしゃられたお考えも一つであろうというふうに思っています。ただ、ここでこういう考え方で書かせていただいたことについて若干申し上げますと、例えば、現行の国選付添人の場合には、大体逆送になるとは思うものの、逆送にならない場合も理論的にはあり得て、それは今少年法31条でその場合は費用を徴収することも可能になっているわけなのですね。そうすると捜査段階の弁護報酬は負担させなくて、審判段階のものを負担させるということもあり得ることになってしまって、逆にバランスがどうかなと思います。
ここは、先ほど原則負担というふうに池田委員がおっしゃっておられますが、読み方としてそういうふうに読まれてしまうのかもしれませんが、ここは「できるものとする」ということですので、成人の場合とのバランスを考慮して適切に負担を判断していただくことが可能かなと思います。ただ、池田委員のおっしゃったことも当然考えなければいけないことですので、今後、更に検討させていただきたいと思います。
○井上座長 ほかに、どうぞ。
○本田委員 少年事件の問題について、今、事務局から説明があったのですけれども、恐らく検討の余地が全くないかというとそうでもないかと思いますけれども、検察官の段階で不起訴になった場合と、少年審判で、裁判所に行って一つの決定がなされた場合は恐らく性質が違うので、そういうことも踏まえて現行の少年法はそうなっているのだろうと思います。だから現在の取扱いというのは、恐らくそのような性質の違いから来るものであって、成人とのバランス論だけでそれがすぐ違った取扱いをする理由になるのかなという気がしております。例えば先ほどは保護処分の場合というようなことをおっしゃいましたけれども、身代わりということが分かって不処分になってしまうという場合もあるわけですね。そういう場合に負担させないということにするのかということもあると思うのです。
○池田委員 そういう場合には、確かに成人と同じように、少年の責めに帰すべき場合もあり得るわけですから、(2) と同じように広げないと、今度は逆にバランスを欠くことになりますね。
○本田委員 もうちょっと細かく検討しないと、先ほど言われたように、単なるバランス論だけで済む話ではないだろうという気がします。
○井上座長 今、両様の御意見が述べられたところですが、落合参事官も、御意見を踏まえてなお検討したいということですので、そういうことでよろしいでしょうか。ほかに御意見がないようでしたら、次に進みたいと思います。
次は、「第6 公的弁護制度下での弁護活動の在り方」ですが、この点についても、御質問があれば先に伺いたいと思いますが。
○浦委員 「1 弁護士に対する指揮命令の制限」、これは組織法に規定されると、こういうふうにお聴きしていいわけですね。
○落合参事官 現段階ではそのように考えております。
○井上座長 浦委員の御主張は。
○浦委員 そういう意味では、この弁護活動の自主性・独立性を確保するために、こういう形で運営主体が個々の弁護活動に対して指揮命令してはならないという明文規定が置かれることについては大変評価したいとそのように思っています。
○井上座長 既に御意見に入っていますので、もう余り区別しないで、全体について御意見を伺えればと思います。
○浦委員 よろしいでしょうか。
○井上座長 はい。
○浦委員 「2 運営主体による契約関係に基づく措置」というところでありますが、これにつきましても、運営主体が常勤弁護士を解雇したり、あるいは契約弁護士との契約を解除するというのは、当該弁護士にとって著しい不利益処分、あるいは不名誉なことでもありますから、その身分保障に配慮する必要があることは言うまでもないところだと思います。したがって、解雇とか契約の解除に当たって慎重な運用が望まれるところで、その方法として公正中立な機関の議決を要するというふうなことにされたことについては評価できると考えております。
○井上座長 一般の雇用法上の保障は当然及ぶ。その上に、こういう慎重な手続を採っているということですね。ほかには。
○浦委員 それから、「3 運営主体による基準の策定」というところですけれども、運営主体が常勤弁護士、契約弁護士に対して契約関係に基づく措置をとるための基準を定めることができる、これを否定するものではございませんが、これも繰り返し述べたところとかかわってくるわけで、簡潔に申したいと思います。憲法でいう被疑者・被告人の弁護人の援助を受ける権利というのは、弁護人による効果的な弁護を受ける権利をいうと解されるところでありまして、これも効果的な弁護の提供をする責務というのは、弁護士あるいは弁護士会に第一次的にあるのではないかと考えております。したがって、この責務に基づいて、弁護士会が基準を定めている場合には、運営主体としては、それを是非とも尊重して、特段の事由がない限りは、この弁護士会の基準と別異の基準を定めない、そういうふうな方法をとっていただきたい。特に弁護士会では、先ほども申しましたけれども、「国費による弁護人推薦に関する準則」などを策定して、弁護の質の確保に当たってきているわけですので、運営主体とすれば、この規定を十分尊重していただいて、別異の基準を定めることについては消極的であっていただきたいと思っております。さらに、弁護活動の限界についても、これについて弁護士会の基準と異なる運営主体の基準が定められることになりますと、私選弁護なら被疑者・被告人のために正当に行える活動が、国選弁護では行えないという事態を招くことにもなりますから、これについても弁護士会の基準と異なる運営主体の基準を定めることは大変問題があると思います。
それから、違法・不当な弁護活動に対する措置としては、これも繰り返し述べてまいりましたが、原則として弁護士会による措置を待って、これを尊重すると、そういう運用が重要である。これはこれまで指摘してきたとおりですが、そのような運用がなされるべきだと思っています。
いずれにしましても、弁護の質の確保という問題に当たりましては、被疑者・被告人が効果的な弁護を受けられる、あるいは有効な弁護、有効な援助をどのように受けられるか、それをどのように提供していくか、そういう観点から、弁護の質の確保の基準というものを考えていく必要があるだろう。そういうものを運営主体も弁護士会もお互い共通認識としながら、この問題に対処していくべきではないかと、そのように思っています。
○井上座長 その点については、既にほかの方々から異なった意見が述べられていたところですので、それを繰り返すことはやめて、今の御意見は御意見として承るということにしたいと思いますが、何か付け加えることがありましたら。ほかになければ、次に進んでよろしいでしょうか。最後の項目の「第7 運営主体の在り方」です。質問でも御意見でもまとめてお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。
○清原委員 運営主体の件につきましては、「1 組織形態」で、「独立行政法人の枠組みに従いつつ、運営主体の行う業務が司法に密接にかかわるものであること等を踏まえた適切な組織形態とする」と書いていただいたのは、私はかねて独立行政法人がいいと思うけれども、三権分立の考えから、行政ではなくて、例えば仮称独立司法法人というようなものがいいのではないかと素人が口走りましたものを非常に前向きに受け止めてくださって、具体的にそうした趣旨で骨格案を出していただいたので私は大変感謝しております。是非この形を具体化していければ、大変独立性、中立性、公平性のある運営主体になり得るのではないかなと思っております。以上でございます。
○井上座長 ほかの方は、いかがでしょうか。どうぞ。
○浦委員 今、清原委員のおっしゃったとおりで、そういう意味では、こういう適切な組織形態がこういう形をとられることについては望ましいことだと考えます。ただ、これも以前申し上げたかと思いますけれども、長の任命に当たっては、法人の意見が反映されるような仕組み、あるいは中期目標の指示に当たっては、主務大臣と弁護士会・日弁連とが協議できるとか、そういう仕組みが考えられていいのではないか。
さらには、一方で経済効率だけが過度に追求されるようなものでない、そういう組織形態を是非ともつくっていただきたいと思っています。
○井上座長 ほかによろしいですか。
○浦委員 それから、公正かつ中立な判断を確保する必要がある事項について、有識者から成る機関、いわゆるボードというようなものを設置することについては賛成です。問題は有識者の選任についてどういうふうにするかという問題が出てくるかと思いますけれども、適切な人選ができるような、そういう仕組みが必要になるだろうと思います。かつ、その機関の在り方につきましても、今後具体化を待たなければいけないわけでありますが、事は、刑事に関しては弁護活動、弁護士が担う弁護活動に関するものでありますから、機関の公平中立性を確保するとしましても、その機関には弁護士が多く参加できるようにしていただくのが望ましいのではないかと考えます。
司法ネットの一環として公的弁護が位置付けられること、これについても賛成であります。先ほど落合参事官から言われましたけれども、司法改革の一環としての司法ネットということで、いつでも、どこでも、誰でも良質な法的サービスを受けられる社会の実現を目指す、これは非常にすばらしいことだと思っていますし、国が法律扶助の拡充あるいは法律相談の全国展開、弁護士過疎地への公設事務所の設置などに積極的に取り組むべきだと思います。司法ネット構想は、こうした国の責務を的確に果たすものとして制度設計されるならば、大変重要な意義を有するのではないかと思っております。
いずれにしましても、司法ネットにつきましては、市民が良質な法的サービスを受けられる社会、それをつくるためには何よりも中核になる運営主体に十分な財政的措置がとられることが前提になるだろう。取り分け刑事弁護については、公的弁護につきましては、財政措置はいわば青天井といいますか、オープン・エンドで支出されなければならないものですので、これが他の民事部門を圧迫するようなことのないよう十分な財政的な措置がとられる必要があると思います。
それとあと、弁護士会と運営主体の業務の運営に関する連携・協力の点です。これも先ほど落合参事官から説明がございましたけれども、司法ネット構想を実現するためには、これまで現実に法的サービスを実施してきた実績を持っており、またはそういう法的サービスの提供全般を担う弁護士、弁護士会の関与が不可欠であります。日弁連の方も、この司法ネット構想については積極的に取り組むという意見を述べているところです。したがって、公設事務所の配置だとか、あるいはその他司法ネットの整備・運営、事務の全般にわたって運営主体と日弁連・弁護士会とが適切な連携をし、適切な役割分担をしていくことが必要になると思います。
また、公的弁護につきましても、運営主体と弁護士会の連携・協力が不可欠だろうと思います。これは言うまでもございませんけれども、審議会意見書の趣旨からしても、当然のこととして要求されておりまして、充実した弁護活動を提供する態勢整備をする。一方で、弁護活動の自主性・独立性の確保を実現する。そのためには制度運営に当たって弁護士会が重要な役割を果たしていく必要があるだろうと思います。
具体的には運営主体の機関の役員だとか運営のスタッフの選任に当たって弁護士会の推薦を尊重する、国選弁護人推薦資格に当たって弁護士会の措置が維持、尊重され、国選弁護人推薦準則に基づく推薦資格の停止の問題などを、先ほど述べた点でありますけれども、それらが尊重されるような運用がされること。さらに、個別事件についての弁護人候補の割当てに当たっての弁護士会との適切な連携。それから運営主体の業務規程の策定、更にはその運用に当たっての弁護士会との適切な連携。先ほど出ましたけれども、「その他要件」での弁護人選任に当たっての、弁護人が付かないという書面の提出の問題などの日常的業務に関しての連携・協力。一方で弁護の質の向上に当たっても運営主体が一定の役割を担うということになっておりますが、その場合の弁護士会との連携・協力。これらはいずれも不可欠だろうと思います。そういうことで、弁護士会の役割が運営主体とのかかわりの中で適切に組み込まれていく必要があるというふうに思います。以上です。
○井上座長 是非、適切な連携関係を築いていただきたいと思います。一方が他方をどうのこうのという話ではないと思いますので。
○浦委員 そういう趣旨でございます。
○井上座長 ほかに、よろしいですか。骨格案についての議論は一通り終えたということで、本日、様々な御意見をお述べいただいたところですが、基本的な骨格案の方向性については、皆さんが御賛同なさったというふうに私としては受け止めました。今後、事務局において、本日の骨格案を基に、また、本日皆さんからいただいた御意見も参考にして、具体的な立案作業を進めていただくということでよろしいでしょうか。
それでは、そういうことで、よろしくお願いします。
○山崎事務局長 所用がございまして中座させていただきますので、先に一言御挨拶を申し上げたいと存じます。13回にわたり本当に御熱心に討議していただきありがとうございました。私もこれから関係各方面との調整も進めまして、この国会に是非法案を提出すべく最大限の努力をするということで頑張りたいと思います。また、この検討会では、御討議だけではなく、お忙しいところ北海道まで行っていただきまして、ありがとうございました。成果があったと聞いております。本当に心から感謝を申し上げるとともに、これからは我々が頑張るという決意表明をして御礼の挨拶にさせていただきたいと思います。どうも本当にありがとうございました。
○井上座長 もう一つ、公的付添人制度についてですが、これにつきましても、これまでかなりの時間を充てて議論をしていただき、様々な御意見が述べられたところです。ただ、本日の検討会には、公的付添人制度に関する資料は配布されておりません。その辺りの検討状況や本日の検討会における議論の仕方について、事務局の方から御説明とお考えをお聴きしたいと思います。
○落合参事官 本日、事務局としては、公的付添人制度について新たな資料を用意しておりません。これは、これまでの当検討会の議論を踏まえますと、公的付添人制度につきまして、事務局として具体的な制度設計に関する資料を作成しうる段階にないと判断したことによるものであります。以下、その理由につきまして、これまでの当検討会における公的付添人制度についての議論を振り返りながら御説明いたします。資料11-1「公的付添人制度について」というペーパーを前にお配りさせていただきましたけれども、その各項目に従って御説明いたします。
まず、「第1 公的付添人制度の導入の要否」という論点がございました。その中で、「1 少年事件の特殊性」という論点がございます。この点につきましては、成人と比べて防御能力や弁明力に劣り、迎合的あるいは曖昧な供述が多いなどの少年の特殊性を考慮すべきであり、事実認定の適正を確保するために公的付添人制度を導入すべきであるとの御意見がありました。他方、そのような特殊性が前面に出てくるのは主として捜査段階であるところ、被疑者に対する公的弁護制度の導入によって対応できるため、公的付添人制度を導入する必要はないとの御意見や、事実認定の適正確保のために公的付添人制度を導入するのであれば、検察官関与を認めるべきであるとの御意見もありました。また、少年のみならず、少年事件における被害者の特殊性をも考慮すべきであるとの御意見もありました。この点は、「6 その他」で御説明いたします。
次の論点として、「2 公的弁護制度の対象に少年の被疑者をも含める場合のバランス」というものがありました。この点につきましては、現在、審判段階における少年の権利保護については、職権主義的審問構造の下での裁判所の後見的な審判運営、家裁調査官制度、資格制限のない付添人制度や国選付添人制度などの制度が設けられているところ、保護処分といえども不利益処分の側面があり、現行法上の諸制度だけでは少年の権利保護としてなお十分でないとの観点から、公的付添人制度を導入しなければ、公的弁護制度の対象に少年の被疑者をも含める場合のバランスを失するとの御意見がありました。他方、適正な科刑を実現するための公判手続と少年の健全育成を実現するための審判手続とは異なるものであるところ、審判段階における少年の権利保護は、現行法上の諸制度によって既に十分図られているとの観点から、公的付添人制度を導入しなくても、公的弁護制度の対象に少年の被疑者をも含める場合のバランスを失することはないとの御意見もありました。
次の論点としまして、「3 少年審判手続の構造」がありました。この点につきましては、公的付添人制度を導入した場合には、少年及び公的付添人と家庭裁判所との対峙状況、換言すれば一種の片面的対審構造のような状態を生じ、少年審判手続の構造を変容させるおそれがあるとの観点から、このような状況を回避するため、検察官関与を認めるべきであるとの御意見がありました。また、適正手続の監視ないし保障のために公的付添人制度を導入することは、少年審判手続の構造にもかかわることであり、場合によっては当事者対抗的なイメージに近づく可能性があるとの御意見もありました。
他方、職権主義的審問構造の下でも、少年及び私選付添人と家庭裁判所との対峙状況が生じ得ることや、国選付添人制度の下でも、非行事実が認定された場合には検察官が退出して国選付添人のみが関与することとされていることから、公的付添人制度を導入するからといって検察官関与を認める必然性はないとの御意見もありました。
次の論点といたしまして、「4 家庭裁判所調査官との役割分担及び付添人の役割」というものがございました。この点につきましては、大別して、少年の要保護性の問題については家裁調査官の調査により適切に審判をなし得るとの御意見と、少年の要保護性の問題についても家裁調査官に加えて公的付添人が必要であるとの御意見とがありました。少年の要保護性の問題についても家裁調査官に加えて公的付添人が必要であるとの御意見を持つ方からは、公的付添人に期待されている具体的な役割として、「環境調整」、「少年に対する働きかけにより教育効果を高める」、「保護者を代替する」、「被害回復」等が指摘されました。他方、これらの多くは、本来、家裁調査官において担うべき役割であるとの御意見、新たな就学先や就職先の確保などの環境調整は、必ずしも法律専門家である弁護士が担う必要はないとの御意見、示談や被害弁償の役割を担わせるために、被害者の税金を使ってまで公的付添人制度を導入する必要はないとの御意見がありました。また、保護処分の不利益処分性を強調する観点から、公的付添人には、家裁調査官の調査結果を批判的に検討するなど、適正手続を監視ないし保障する役割が期待されているとの御意見もありました。他方、調査結果を批判的に検討するのであれば、公的付添人のみならず、検察官の視点も必要となるとの御意見や、保護処分が見込まれる事案において公的付添人が具体的にいかなる役割を担うのかが明らかでないとの御意見もありました。
次に、「5 公的付添人の給源となる弁護士の確保」であります。この点につきましては、地方調査において、弁護士会から、公的付添人にまで手が回らないのが実情である、少年鑑別所所在地以外の弁護士が担当するのは現実的には無理があるなどの御報告がありました。これらを踏まえて、公的付添人の給源となる弁護士の確保は困難であるとの御意見がありました。他方、付添人活動に熱心に取り組む弁護士は増えており、公的付添人の給源となる弁護士の確保は困難でないとの御意見もありました。
また、この問題に関連して、少年事件の特殊性の観点から、公的付添人には法律的な知識以外の専門性が必要であるとの御意見や一定の研修が必要であるとの御意見、被害者への配慮の観点から、公的付添人には被害者への配慮に関する教育が必要であるとの御意見もありました。
さらに、公的付添人には法律的な知識以外の知識・経験も求められるとの観点や、弁護士過疎地域において給源を確保するとの観点から、公的付添人の資格は必ずしも弁護士に限定する必要がないとの御意見もありました。
次に、「6 その他」としまして二つ論点がございます。まず、「(1) 公的付添人制度と検察官関与制度との関係」であります。この点につきましては、検察官関与のない公的付添人制度を導入すると、少年及び公的付添人と家庭裁判所との対峙状況を生じる結果、少年審判手続の構造を変容させるのではないか、また、被害者の理解や納得が得られないのではないか、という二つの異なる角度から議論されました。その結果、既にいくつかの論点において御説明しましたとおり、公的付添人制度の導入は検察官関与制度と併せて検討すべき問題であるとの御意見と、公的付添人制度の導入は検察官関与制度と併せて検討すべき問題ではないとの御意見とがありました。
また、もう一つの論点としまして、「(2) 公的付添人制度と被害者等への配慮との関係」があります。この点につきましては、刑事事件と比べて知る権利が制限されているなど、少年事件における被害者の特殊性をも考慮すべきであるとの立場から、公的付添人制度の導入に当たっては、被害者等への配慮の観点が必要であるとの御意見があり、具体的には、公的付添人制度を導入するのであれば、被害者への配慮の観点から、検察官の関与を認めるべきであるとの御意見、また、検察官関与のほかにも、被害者への情報開示や司法ネットによる被害者支援も行われるべきであるとの御意見がありました。他方、そのような被害者の特殊性を認めながらも、公的付添人制度の導入と被害者等への配慮とは別個の問題であるとの御意見もありました。
それから、「第2 公的付添人制度を導入するとした場合における具体的な制度設計」でございますが、公的付添人制度を導入する場合には、多岐にわたる論点を検討しなければなりませんが、既に御説明しましたとおり、そもそも導入の要否について様々な御意見がありましたことから、最低限検討しておく必要があると思われる制度の大きな枠組みに関する論点についての御議論にとどまっております。
「身柄拘束の有無や罪名等による限定」でありますが、この点につきましては、弁護士会の対応能力や国の財政負担などの現実的な観点から、身柄拘束による限定を加えるべきであるとの御意見、その上で更に一定の限定を加えるべきであるとの御意見がありました。また、被疑者に対する公的弁護制度の対象事件が、発足当初は限定され得ることから、公的付添人制度の対象事件も原則逆送対象事件に限定すべきであるとの御意見がありましたが、他方、原則逆送対象事件では狭すぎるとの御意見がありました。
「職権による選任制度及び必要的選任制度」でありますが、職権による選任制度につきましては、現行の職権主義的審問構造とも整合するとの御意見がありました。必要的選任制度につきましては、このような制度が必要であるとの御意見がありましたが、他方、被疑者に対する公的弁護制度での御議論と同様に、公的付添人が選任されるまでの間の審判への影響など法的効果について問題があるとの御意見のほか、現行の職権主義的審問構造とは整合しないとの御意見がありました。その他、請求による選任制度も必要であるとの御意見がありましたが、他方、現行の職権主義的審問構造とは整合しないとの御意見がありました。
「公的付添人制度下での公的付添人の選任の始期及び選任の効力の終期」でありますけれども、選任の始期につきましては、被疑者に対する公的弁護人の選任の効力が家裁送致によって終了するならば、公的付添人は家裁送致後に選任されることになります。公的付添人の選任の効力の終期につきましては、少年法45条6号の改正が必要ではないかとの御意見がありました。
以上のように、公的付添人制度についての当検討会での議論は、そもそも制度導入の要否をめぐり、様々な御意見があったところであり、前回の検討会におきましても、「弁護士や検察官といった手続関与者の問題は、少年審判の構造に深くかかわる問題であり、そう簡単に筋道の見える問題ではない」、「公的付添人制度の導入の要否と検察官関与の問題は、少年審判手続の構造の全体を見た上で慎重に検討しなければならない」、「少年審判手続の構造の全体を考えるとなると、当検討会で取り扱う範囲を超えている、更に別に検討を続けていかなければならない」との御意見がありました。これらの御意見を受けまして、座長からも、「制度の組み方によっては、少年審判制度の根幹にも影響を与え得る問題である」、「当検討会で決着の付く問題なのかどうか、もっと視野を制度全体に広げ、その中で詰めていくほうがよいのではないかも含めて、更に今後検討していきたい」との御指摘を受けたところでございます。
以上のような当検討会における議論の状況を踏まえ、本日は、公的付添人制度に関する今後の検討の在り方について御議論いただくのが適当ではないかと考えております。
○井上座長 ありがとうございました。今、事務局の方から、これまでの検討会での議論の詳細を整理していただいた上で、これらの議論を踏まえると、公的付添人制度については具体的な制度設計に関する資料を作成しうる段階にはないと判断したという御説明がありました。それとともに、本日の検討会では、公的付添人制度に関する今後の検討の在り方について議論していただきたいというお考えが示されたところであります。今の事務局の御説明あるいはお考えについて、御質問あるいは御意見がありましたら、お伺いしたいと思います。どうぞ。
○本田委員 意見ですけれど、この問題については、今、事務局の方から詳細な紹介がありましたように、様々な問題点が指摘され、導入の要否については意見が大きく分かれているという状況にあるわけですね。導入するとなると、少年審判の構造論にまで踏み込んだ議論が必要ではないかというふうに思われるわけで、そうするとこの公的弁護制度導入を契機として公的付添人制度の導入の要否を検討してきたこの検討会の範疇を超えてしまうのではないかという気がします。
そうすると、この検討会とは別の枠組みでのより構造論まで踏み込んだ議論の場が必要ではないかというふうに考えられるわけです。この点につきまして、この検討会での議論の推移などを踏まえまして、法務省の方でも議論の在り方について検討が進められているというふうに聴いておりますので、その辺りのところの考え方もこの場で聴いてみたらいかがかというふうに思っています。
○井上座長 そういうお申出ですので、法務省の方のお考え、あるいは御説明を伺うということでよろしいでしょうか。それでは、法務省の甲斐参事官お願いします。
○甲斐氏(法務省刑事局参事官) これまでの御議論で、公的付添人制度につきまして更に幅広い観点から検討が必要であるという御指摘もございましたことから、法務省、最高裁、日弁連の三者におきまして意見交換会を今後開催してまいりたいというふうに考えております。これまで出されました御議論等も十分踏まえて、幅広い観点から意見を出していただきまして、その検討あるいは意見の状況を踏まえまして、必要な措置を検討してまいりたいというふうに考えてございます。
○井上座長 幅広い観点から公的付添人制度についても検討していく、今お話のあったような枠組みで検討していくということでございますので、それに我々としても期待するというのが一つの考え方ではないかと思われます。もちろん、これまでせっかくここで議論してきたことですので、そういう我々の意見につきましては、そういう検討に活かしていただきたいと思いますし、活かしていただけるだろうというふうに思います。そういうことでよろしいでしょうか。どうぞ。
○浦委員 この検討会で残念ながら、今日までの間に公的付添の問題について結論に至らなかったわけですけれども、引き続いて法曹三者の意見交換が継続されることになった、これはやむを得ないことだろうと思っています。意見交換が精力的に行われて、審議会の意見書は、「審判手続における公的付添人についても積極的な検討が必要である」と述べているわけですから、その趣旨に従って速やかに公的付添人制度が実現するように期待しておりますので、是非その意見交換の場で十分議論いただきたいと思います。
○井上座長 そういうことでよろしいでしょうか。以上で、一応予定していた事項の検討は終了しましたが、今後のことについて、事務局の方からお考えを伺いたいと思います。
○落合参事官 今後のスケジュールについて御説明申し上げます。事務局では、今後、公的弁護制度につきまして、本日の資料を基に、また、本日各委員から述べられた御意見も参考にしつつ、立案作業を進めてまいりたいと考えております。法案の提出は、来年の通常国会を予定しておりまして、具体的には2月下旬の閣議決定を目指して作業を進める予定でございます。
検討会の各委員におかれましては、御多忙の中、2年近くの長い期間にわたって本検討会に御参加いただき、貴重な御意見をお寄せいただきまして誠にありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げたいと存じます。
当面、次回の検討会の予定はございませんので、期日は追って指定ということにさせていただきたいと存じますが、司法制度改革推進本部は、来年11月末日まで存続いたしますので、当検討会も今回で解散ということではございません。その点は、御留意いただきたいと存じます。
○井上座長 今後、更に我々の意見を聴きたいということもおありかもしれませんから、今、御説明がありましたように、推進本部が存続している間、この検討会も存続するという扱いであるということです。いましばらく、そういうお覚悟で臨んでいただきたいと思います。それに、浦委員を除く他の委員は、裁判員制度・刑事検討会の方が残っていますので、身軽になったという気はしないかと思いますが、ともかく2年近くにわたって議論してきましてお疲れ様でございました。
座長として、私は、非常に失礼な物の言い方をしたことも多々あるかと思いますが、何とぞお許しくださるようお願いいたします。除夜の鐘で忘れていただければ、大変ありがたいと思います。委員の皆さんには、これまで議事の進行に御協力いただき、一定の成果が得られましたことにつき、厚く御礼申し上げたいと思います。
本日はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。