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公的弁護制度検討会(第2回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日 時
平成14年5月7日(火)10:30~12:53

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
池田修、井上正仁、浦功、大出良知、清原慶子、酒巻匡、髙井康行、土屋美明、中井憲治、平良木登規男、廣畑史朗(敬称略)

(説明者)
佐藤太勝(日本弁護士連合会刑事弁護センター副委員長)
今崎幸彦(最高裁判所事務総局刑事局第一課長)

(事務局)
大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、落合義和参事官

4 議 題

1. 司法制度改革推進計画及び検討スケジュールについての説明
2. 当面の検討の在り方について
3. その他

5 配布資料

資料2-1 公的弁護制度検討会における当面の論点及びスケジュール(案)
資料2-2 各種統計資料
資料2-3 勾留された被疑者の罪名別人員(平成12年)
資料2-4 司法制度改革審議会配布資料第19回(平成12年5月16日)「『国民の期待に応える刑事司法の在り方』について<参考資料>」のうち、資料26から同36まで

【日本弁護士連合会説明資料】
資料・日弁連2-1 弁護士会支部毎の弁護士数・当番登録数・当番派遣体制
資料・日弁連2-2 当番弁護士制度 全国一覧表(2001年)
資料・日弁連2-3 当番弁護士制度運用状況
資料・日弁連2-4 当番弁護士制度等運用における財政状況
資料・日弁連2-5 受付件数推移
資料・日弁連2-6 受任件数推移
資料・日弁連2-7 被疑者弁護援助件数推移
資料・日弁連2-8 少年保護事件附添扶助件数推移
資料・日弁連2-9 国選弁護事件受任システム
資料・日弁連2-10 国選弁護人推薦手続
資料・日弁連2-11 特別案件(通常の推薦手続によることが困難又は不相当な事件)の国選弁護人推薦手続
資料・日弁連2-12 特別案件受任者名簿登載会員数及び平成13年度推薦数

【最高裁判所説明資料】
資料・最高裁2-1 国選弁護人制度の根拠規定
資料・最高裁2-2 国選弁護人の選任手続に関する規定等
資料・最高裁2-3 弁護人選任に関する通知及び照会(必要的弁護事件用)
資料・最高裁2-4 弁護人選任に関する通知及び照会(任意的弁護事件用)
資料・最高裁2-5 弁護人選任に関する回答書
資料・最高裁2-6 弁護人の選任について

6 議 事

(1) 司法制度改革推進計画及び検討スケジュールについての説明

 事務局から、本検討会に関連する事項を中心に司法制度改革推進計画(以下「推進計画」という。)についての説明を行った。そして、推進計画により、公的弁護制度に関する法案の提出予定時期が平成16年通常国会とされ、また、公的付添人制度についても、本検討会での検討を受けて、現行の国選付添人制度以外の公的付添人制度を導入することとした場合には、所要の法案を同年通常国会に提出する必要があると考えられることから、本検討会においては、平成15年夏ころの終了を目指して検討いただきたい旨説明した。

(2) 当面の検討の在り方について

 事務局から、
  • 今後の議論の進め方として、年内の検討会で、大きな骨組みに関するものと思われる論点についてひととおり議論し、年明けころからは、それまでの議論を踏まえて、細かな論点についてより精緻な検討に入り、又はそれまでに提起された新たな論点について議論する

  • 公的弁護制度と公的付添人制度との検討順序として、公的付添人制度については、少年を含めた被疑者に対する公的弁護制度の制度内容の検討が前提となるものと考えられ、また、場合により公的弁護制度の議論に必要な範囲で少年審判における付添人制度の種々の問題に触れられる場合もあろうが、少年事件の特殊性を考慮すると、公的付添人制度はそれ自体として集中的に議論するのが適当であると考える
旨の事務局の考え方を説明した上で、資料2-1記載の当面の論点及びスケジュールの案について説明を行った。

 この点に関する協議等の概要は以下のとおり(○:委員、□:座長、●:事務局。以下同じ。)。

○ 司法制度改革審議会意見書は、特異重大事件についての充実・迅速化策を強調しており、弁護人の受任の希望者が得にくい事件や弁護活動に危険が伴う案件についてのセーフティーネットについて検討する必要がある。これを第3回の弁護士の確保方策の中の小柱の一つという形で議論するのでは若干軽いのではないか。連日的開廷による充実かつ集中した審理を実現するための弁護体制の整備という項目の検討時間の予定枠の拡大や再配分を検討願いたい。

● 本検討会で検討すべき論点及びその検討のスケジュールを見ると、裁判の充実・迅速化に特定して複数回開催することはやや困難かと現在は考えているが、各検討会で検討される論点や制度設計の議論の必要に応じ、刑事裁判の充実・迅速化の観点からの公的弁護制度の必要性について議論が及ぶこともあり得るものと考えているし、第5回の運営主体のところで、それまでの議論を踏まえてまた議論されることもあると考えている。

○ 意見書によると、被疑者・被告人の弁護人の援助を受ける権利を実効的に担保するというのが大前提であり、まずその観点から公的弁護制度をどういうものにすべきか考えるべきである。その議論が終わった段階で、刑事裁判の充実・迅速化の観点からの公的弁護制度の問題について議論すべきではないか。

○ 現行国選制度は、報酬が安いということを含めて考えれば、基本的には一種のボランティア弁護で、非専門性であることは別に問題にせず、ほかに民事もやり、顧問もやり、いろいろな仕事をしながら、合間をみて刑事弁護をやる。弁護活動の中身をいうのではないが、時間的配分という面からいうと、弁護士活動の時間の中のごく一部を割いて刑事弁護をやっている片手間弁護というのが基本的な構造だと思う。公的弁護もそういう実質を前提にしたものとして考えていくのか、そうではなくて、弁護人の選任・解任は裁判所がやるということだけは確定しているが、あとは全部ゼロから考えるという発想なのか、基本的な発想の在り方を聴きたい。

□ 審議会の意見ではそこはオープンになっており、取り組み方としては、現行の国選弁護の実態をご破算にして体制を考えるということもあれば、現行の国選弁護の中身を充実していくという対応の仕方も当然あると思うので、そこのところは、オープンに議論いただきたい。

○ 第3回で予定されているのは、極端な言い方をすれば、量的な点を専ら問題にしているように思うが、先ほど指摘されたのは、特異重大事件での対応である。公的弁護の量的な体制や範囲についても大変な議論を要する問題であるが、それにとどまらず、これまでの国選弁護の運用の継続で果たしていいのかどうかという重大な指摘であり、第4回の弁護人の選任の問題には、単に弁護人の選任ということにとどまらず、もっと付随する本質的な問題が多々あるのではないか。第3回や第4回の相互の関連の中で、こうした指摘についても十分検討すべきではないかと思う。

□ 当面の論点・スケジュール案も、各回にこういうものを取り上げてそれで終わりという趣旨ではなく、ひととおり順序を整理して議論した後、もう一度全体を見直してみるという構成になっていると思う。第3回の充実かつ集中した審理を実現するための弁護体制の整備というところには、当然量の問題だけでなく、少数であっても特異重大事件を受任し得る弁護士を確保するということも当然含まれているだろうと思う。第4回の私選弁護と公的弁護の関係というところもこれに密接に関係してくるし、第5回の運営体制とはまさに切り離せない関係にある。順序を追って議論しながら、第4回でも第5回でも当然議論し、全体としてもう一回見直してみる機会がやってくるのではないか。第3回についても、趣旨を踏まえて、実質的な議論ができるような時間配分を検討したい。

以上の協議等を踏まえ、当面、資料2-1の形で検討を行うこととなった。

(3) 事務局からの説明

 事務局から、資料2-2から2-4に基づき、公的弁護制度検討のために有益と思われる各種統計資料等について説明した。

 この点に関する質疑等の概要は以下のとおり。

○ 捜査段階及び公判段階の両方についてであるが、弁護人が選任されていない事案はどういう事情があるのか、弁護人が選任されていない理由がある程度分かるようなデータがあれば見たいと思う。

□ おそらくデータという形では出ないと思うが、例えば日弁連や裁判所から、おそらくこういう理由で付いていないのだろうということを話していただけるのではないか。そのような範囲でよければ適当な時期に説明を受けたいと思うし、委員の中に、弁護士や裁判官がおられるので、説明願えるだろう。

○ 資料2-4中の資料28の公的費用による弁護制度の諸外国の例に似た制度を仮に我が国に導入するという場合、予算上の手当て以外に立法上の手当てが必要な事項が出てくるものはあるか。例えば、アメリカの例を見ると、公設弁護人と官選弁護人と契約弁護人という3つの種類がオプションとしてあると書いてあるが、これらのものと類似のシステムを我が国に導入するとした場合に、何らかの法改正が必要なのか。

□ 訴訟法なのか組織法なのかということで違ってくると思う。訴訟法という意味では、被疑者に弁護人を付けるというところについて、どの形態をとっても改正が必要になってくるだろうと思う。形態の違いによって違ってくるのは組織法であり、公設弁護人を国の機関としてつくるという場合には組織法的なものが必要になってくるだろうが、他の形態の公設ということもあり得るので、その場合には法令上の手当てがどれだけ必要なのかはかなり技術的な問題も含めて検討しなければいけない。官選弁護人は日本の国選的なものだし、契約弁護人も、どういう法令上の枠組みでやっているのか詰めないといけないが、基本的には組織法的なものというのは必要ではないのではないかという感じがする。

(4) 日弁連からの説明
 日弁連から、資料・日弁連2-1から2-12に基づき、
  • 弁護士会支部毎の弁護士数
  • 当番弁護士制度及び刑事被疑者弁護援助制度の概要
  • 国選弁護事件への対応状況
について説明がなされた。

 この点に関する質疑等の概要は以下のとおり(△:日弁連)。

○ 接見した当番弁護士が、その後、起訴された被告人の国選弁護人と一致すると考えてよいか。諸事情でそうならないケースもあるかと思うが、その比率はどうなっているか。

△ まず当番弁護士で接見して私選で受任する場合があるが、これは、被疑者との契約関係で私選として活動する。資力がないので法律扶助協会の被疑者弁護援助制度を申請した場合には、同制度に基づく弁護人として弁護活動を行い、その場合には、起訴されると、いったん辞任し、原則として国選弁護人としてその後の国選弁護人の活動をするというシステムになっている。当番弁護士が出動して接見した数が4万7143件で、そのうち私選と被疑者弁護援助制度で受任をして弁護活動をした数が9684件で、取消等を除外した受任率が22パーセントであるから、約78パーセントは接見だけで終わっている。

○ 接見だけで終わっている場合は、必ずしも起訴された場合に国選弁護人になるわけではない。

○ 受付件数や受任件数は増加しているが、例えば資料・日弁連2-6の表を見ると、この数年間で、受付はしたけれども受任をした率は大体20数パーセントで同じくらいだが、どういう理由で結局弁護士は頼まないのか。

△ 自分の手続がこれからどうなるだろうかとか見通しについて説明を受けたいが、説明を受ければ、あとは国選でやってもらうからいいですとか、費用の点もあるからいいですという者もいるし、中には、家族に自分が逮捕されている、勾留されていることを連絡して欲しいという者もいて、捕まっている被疑者がもともと受任を前提としないで当番弁護士の接見を求めるという場合と、弁護士の方で被疑者弁護をやるだけの必要性がないのではないかということで受任を自主規制してしまうというような要素も中にはあるのではないかと思う。

○ 被疑者弁護援助制度での受任については、各単位弁護士会のところで、財政事情との兼ね合いで受任に消極的というか受任をちゅうちょするようなことがないわけではないと聴いたことがあるが、その点どういう状況にあるか。

△ 確かに、当番弁護士が受任しない理由をいろいろ聴いてみると、財政事情を反映して受任を抑制するという要素も一部にはあったのではないかと思われる。

(5) 最高裁からの説明

 最高裁から、資料・最高裁2-1から2-6に基づき、

  • 国選弁護人選任手続とその実情
  • 当番弁護士制度の告知方法
について説明がなされた。

 この点に関する質疑等の概要は以下のとおり(▲:最高裁)。

○ 国選弁護人の選任までの時間の調査結果の説明において、弁護士会からの推薦に基づき選任する場合、おおむね半数程度の地裁では1日か3日くらいで弁護士会から回答があって選任できるという話であったが、少し長引くことになっているケースは、どういう理由か。

▲ 本庁単位で、その庁の通常のやり方で、どのような日数が通常かかっているかという形で尋ねたので、それがどういう理由によるものかというところまでは調べていない。

○ 弁護士会でも、国選弁護人の選任が遅れている滞留事案は随分気にしており、例えば高裁事件で控訴趣意書の提出期限が迫っており、受任を避けられて残ってしまうということがあり、個別の事件の事情があって受け手がないケースがあるが、各単位弁護士会ごとに滞留事案ということには非常に神経質になってそれをなくそうと努力している。

○ 今の公判期日の入れ方の主たる要因は、弁護人の予定だと思うが、私選弁護と国選弁護で、公判期日の入れ方に違いがあるか。

○ まず第1回公判期日の指定の仕方については、選任の方法として、最初に裁判所が期日を指定して国選弁護人の推薦依頼をするのか、推薦依頼した後に期日を入れるのかによって違ってくる。後者であれば、私選弁護人の期日の指定と同じだと思う。前者の方法であれば、それに応じられる時間のある弁護士が推薦されてくるので、そういう意味では期日が非常に早く入る。制度的に国選弁護人だから私選弁護人だから入りにくいという違いは、第2回以降はないだろうと思う。

(6) 次回の予定

 次回(6月25日)は、被疑者に対する公的弁護制度の対象事件及び公的弁護制度の担い手である弁護士の確保方策を中心に検討を行う予定である。

(以上)