(□:座長、○:委員、△:日弁連、▲:最高裁、●:事務局)
□ それでは、第2回「公的弁護制度検討会」を開かせていただきます。
本日も、御多忙のところをお集まりいただきましてありがとうございました。議事に入ります前に、事務局から事務連絡があるということですので、お願いします。
● 事務局では、今般の司法制度改革につきまして、広く国民の皆様からの御意見を承っております。事務局に寄せられました御意見につきましては、今後の参考とするため、事務局で保管しておりますが、このたび、その目録を作成いたしました。検討会の皆様には、御希望がありますれば、この目録をお渡ししまして、更に目録に記載された意見のうち必要とされるものを御覧いただくことができるようにしておりますので、御希望がございましたら、本検討会の終了後など適宜の機会に、事務局にお申し付けください。
□ ありがとうございました。
今日の議事予定ですけれども、既に裁判員制度・刑事検討会の方でお話がありましたように、3月19日に司法制度改革推進計画が閣議決定されておりますので、まず事務局から、この計画の内容と、それを踏まえた本検討会の検討スケジュールに関して説明をしてもらいます。そして、それを踏まえまして、この検討会における当面の検討の在り方について協議をしていただきたいと考えております。
(1) 司法制度改革推進計画及び検討スケジュールについての説明
□ それでは、まず、司法制度改革推進計画と、それを踏まえた全体の検討スケジュールについて、事務局から説明をお願いします。
● 3月19日に閣議決定されました司法制度改革推進計画につきまして、本検討会の検討事項と関連する部分について御説明申し上げますとともに、これを踏まえました検討スケジュールについて御説明申し上げます。
司法制度改革推進計画は、司法制度改革推進法に基づき、司法制度改革に関し政府が講ずべき措置について、その全体像を示すとともに、推進本部の設置期限、すなわち、平成16年11月30日までの間に行うことを予定するものについて、その措置内容、実施時期、法案の立案等を担当する府省等を明らかにするものでございます。
本検討会の主な検討事項は、第1回の検討会で御説明申し上げましたとおり、公的費用による被疑者・被告人の弁護制度(公的弁護制度)及び少年審判手続における公費による少年の付添人制度(公的付添人制度)であります。
これらの検討事項について、司法制度改革推進計画では、「II 国民の期待に応える司法制度の構築」の中の「第2 刑事司法制度の改革」「2 被疑者・被告人の公的弁護制度の整備」におきまして、被疑者に対する公的弁護制度を導入して、被疑者段階と被告人段階とを通じ一貫した弁護体制を整備することとした上、その運営主体は公正中立な機関とし、適切な仕組みによりその運営のためにいわゆる公的資金を導入することとして、所要の法案を平成16年通常国会に提出する予定とされているほか、少年審判手続における公的付添人制度について、積極的な検討を行うこととされており、これらは、いずれも司法制度改革推進本部が担当する事項とされております。
なお、公的弁護制度につきましては、「第2 刑事司法制度の改革」「1 刑事裁判の充実・迅速化」におきまして、「連日的開廷による充実かつ集中した審理を実現するため公的刑事弁護制度の整備」ともされておりますことから、本検討会における公的弁護制度の検討に当たっては、連日的開廷による充実かつ集中した審理の実現のための公的弁護制度の整備ということも検討されなければなりません。
このように、本検討会で御検討いただく公的弁護制度に関する法案は、平成16年通常国会への提出が予定されているところであります。また、公的付添人制度につきましても、本検討会での御検討を受けて、現行の国選付添人制度以外の公的付添人制度を導入することとした場合には、所要の法案を公的弁護制度に関する法案と併せて平成16年通常国会に提出する必要があるものと事務局としては考えております。
これらを踏まえ、条文化等の作業等に要する時間等を考えますと、本検討会におきましては、平成15年夏ころの終了を目指して御検討いただきたいと存じます。
□ ありがとうございました。裁判員制度・刑事検討会とほぼ同じぐらいのスケジュールということで、限られた期間でございますので、よろしくお願いします。
今の全体のスケジュールについて何か御質問はございますでしょうか。よろしいですか。
(2) 当面の検討の在り方について
□ それでは、ただいまの全体のスケジュールを踏まえまして、本検討会における当面の検討の在り方について、御協議いただきたいと思います。
事務局の方で、当面の議論において取り上げることが考えられる論点などをまとめました「公的弁護制度検討会における当面の論点及びスケジュール(案)」という資料を用意してもらいました。まず、これについて説明を伺って、それを手がかりに協議をしたいと思います。
では、お願いいたします。
● お手元に配布しております資料2-1「公的弁護制度検討会における当面の論点及びスケジュール(案)」について御説明申し上げます。
本検討会での検討項目は、被疑者に対する公的弁護制度を導入し、被疑者段階と被告人段階とを通じ一貫した弁護体制を整備すること及び現行の国選付添人制度以外の公的付添人制度であります。
これから、この2つの事項に関し、具体的な制度設計等に向けた議論をしていただくわけでありまして、検討すべき論点は多数に上ると思われますが、お手元に配布したペーパーは、「司法制度改革審議会意見書」及び同審議会での議論の経過を踏まえて、大きな骨組みに関するものと思われる論点を取り上げたものであります。したがいまして、今後検討すべき論点がこのペーパーに記載したものに限られるという趣旨ではございません。
ただ、先程申し上げました司法制度改革推進計画及び検討スケジュールのとおり、所要の法案を平成16年通常国会に提出することとされておりますので、そこから逆算しますと、本検討会における検討は平成15年夏ころまでには終えている必要があるものと考えております。
そうなりますと、とりあえず年内の検討会ではお手元に配布しましたペーパーに記載しております大きな論点について一通り御議論していただき、年明けころからはそれまでの御議論を踏まえて、平成14年中の検討会で取り上げた論点内の細かな論点についてより精緻な検討に入っていただいたり、あるいは、それまでに提起された新たな論点について御議論をいただくのが適当であろうと事務局としては考えております。
そこで、次に項目として2つあります公的弁護制度と公的付添人制度との検討順序でありますが、公的付添人制度につきましては「司法制度改革審議会意見書」では「少年事件の特殊性や公的弁護制度の対象に少年の被疑者をも含める場合のバランスなどを考慮すると、積極的な検討が必要だと考えられる」と記載されております。したがって、公的付添人制度導入の要否等を検討するに当たりましては、少年を含めた被疑者に対する公的弁護制度の制度内容の検討が前提となっているものと考えられます。そこで、本検討会における検討順序としましては、まず、司法制度改革推進計画において平成16年の通常国会に所要の法案を提出することが明記されております公的弁護制度について一通り御検討していただき、しかる後に、公的付添人制度について御検討いただくことが適当であると思われます。また、場合により、公的弁護制度の議論に必要な範囲で少年審判における付添人制度の種々の問題に触れられる場合もあろうかと思われますが、少年事件の特殊性ということを考慮しますと、公的付添人制度と公的弁護制度を同時に検討するというのではなく、公的付添人制度はそれ自体として集中的に議論するのが適当であると考えております。
次に第2回以降の検討の順序でありますが、今後の本検討会における議論を現実的かつ充実したものとするため、言わば議論の土台づくりとして、本検討会における検討項目との関係で有益と思料される刑事に関する基礎的統計について事務局から御説明申し上げたいと考えております。
さらに、関係機関として出席されている日弁連に、公的弁護制度の担い手となる弁護士の方々について、各単位弁護士会や支部ごとの弁護士数といった全国の分布状況、弁護士会などが中心となって自主的に取り組まれてこられた当番弁護士制度及び刑事被疑者弁護援助制度の概要やその活動実績、国選弁護事件への対応状況について御説明をお願いし、引き続き、やはり関係機関として出席されている最高裁に、国選弁護人選任手続とその実情及び当番弁護士制度の告知方法について御説明をお願いし、本検討会の委員各位の共通の理解を得ておく必要があると考えられます。
この点につきまして、委員の皆様方に賛成していただけますならば、できれば本日の検討会で事務局から説明をし、また、関係機関に説明をお願いしたいと考えております。
次の第3回の検討会におきましては、議論の入りやすさとしましては、第2回検討会で説明された刑事事件に関する基礎的な統計等を踏まえた上で、被疑者に対する公的弁護制度の対象事件についてどのように考えるべきかについて御検討いただくのが適当ではないかと考えられます。
さらに、対象事件の問題と密接に関係する事項として、公的弁護制度を担う弁護士をいかにして確保するかという問題があり、これを引き続き検討することが適当と思われます。この点、「司法制度改革審議会意見書」では、全国的に充実した弁護活動を提供し得る態勢を整備すべきである旨記載されており、また、刑事裁判の充実・迅速化の項目におきまして、連日的開廷による充実かつ集中した審理を実現するための方策として、弁護人が個々の刑事事件に専従できるような体制を確立するために、公的弁護制度を確立し、常勤の弁護士等が刑事事件を専門に取り扱うことができるような体制を整備することなども記載されております。
したがいまして、これらの観点から考えられる具体的制度設計について御検討いただきたいと存じます。
次に、第4回検討会におきましては、弁護人の援助を受ける権利を実効的に担保する制度として国が設ける公的弁護制度は、私選弁護とはどのような関係に立つものとして整理すべきかについて御検討いただきました後に、公的弁護制度の下での弁護人の選任要件について御議論をお願いしたいと存じます。
さらに、以上の検討事項と密接に関係する事項としまして、公的弁護制度下での弁護人の選任の始期及び選任の効力の終期が検討されるべきと思われます。
その上で、公的弁護制度の下での弁護活動の在り方について、種々の観点から検討をお願いしたいと存じます。
さらに、公的弁護制度の下での弁護人の活動に対する報酬を算定するにはどのような方法が考えられるかについても、それまでの議論を踏まえて検討していただきたいと存じます。
第5回の検討会におきましては、公的弁護制度の運営主体に関係する事項を一括して御検討いただきたいと存じます。
「司法制度改革審議会意見書」では、「公的弁護制度の運営主体は、公正・中立な機関とし、適切な仕組みにより、その運営のために公的資金を導入すべきである。」「弁護人の選任・解任は、現行の被告人の国選弁護制度と同様に裁判所が行うのが適切であるが、それ以外の運営に関する事務は、上記機関が担うものとすべきである。」など、運営主体の役割などについて種々の記載がなされております。
そこで、それまでの検討会の議論の経過を踏まえまして、公的弁護制度の導入・整備のために、運営主体が行うべき事務とはどのような事項であり、その事務を担当すべき組織としては、どのような機関が考えられるかなどにつきまして、一括して御検討いただきたいと存じます。
第6回の検討会におきましては、公的付添人制度に関する検討をお願いしたいと存じます。その際、公的付添人制度の導入の要否などについて議論するための土台として、各種統計資料や参考資料などをお配りし、場合により関係機関に発言を求めて、議論の参考となる説明をお願いすることも考えるべきかと存じております。
以上が公的弁護制度検討会における当面の論点及び今後のスケジュールについての事務局としての案の説明でございます。
なお、当面の論点として取り上げました大きな論点の中で、更にどのような小項目を検討の対象として取り上げるかでございますが、各回の検討会の冒頭で、事務局において、司法制度改革審議会における関係する議論を紹介するなりしてお示しいたしたいと考えております。
駆け足で申し上げてしまい、大変申し訳ありませんが、趣旨といたしましては、年内中に大きな論点について一通り御検討していただきたいと考えており、この大きな論点及びその検討順序について御意見をいただきたいと存じます。
□ ありがとうございました。それでは、ただいまの説明を踏まえまして、これから当面どういうふうにして検討をしていくか、その検討の在り方について御意見をお伺いしたいと思います。今の説明に対する御質問でも結構ですし、御意見でも結構です。
○ 示された論点とスケジュールは、大体これで良いと思いますが、別途行われた裁判員制度・刑事検討会でも議論があったかと思うのですけれども、刑事裁判の充実・迅速化の観点からも公的弁護の整備ということは義務付けられており、両検討会で互いに連携を取りながら議論していくということで、座長から適切なサジェスチョンをしていただいたわけであります。刑事裁判の充実・迅速化の観点からの議論というのは、拝見するところによると、第3回の弁護士の確保方策の中の小柱の一つとしての連日的開廷による充実かつ集中した審理のところで議論されるという具合に理解してよろしいのでしょうか。
□ この案についてのご質問ですか。
○ はい、案の中身の趣旨です。
● 主としてそのように考えております。
○ そうしますと、意見書の42ページを御覧いただきたいわけでありますけれども、意見書には特異重大事件についての充実・迅速化策を非常に強調して書かれています。
一般の委員の方もおられますので、若干御紹介いたしますと、犯罪組織に弁護士が攻撃を受けて殺されたり、あるいは個人テロで重い後遺症を負ったりするということもあり得るわけでございます。あるいは弁護士本人はもとより、その家族を脅迫して出廷を妨害すると、それは結局審理引き延ばしを図っているわけでありますけれども、特異重大事件の場合にはそういう実例もあるわけです。
そうしますと、そもそも今、申し上げたような弁護人の受任の希望自体が得にくい事件とか、弁護活動にあってはならないことでありますけれども、危険が伴う案件についてのセーフティーネットについて検討する必要があるのだろうと思うのです。
そうしますと、第3回の大きな柱の弁護士の確保方策の中の小柱の一つという形で議論するのでは、意見書の問い掛けに対して若干軽いのかなという感じがしております。そもそも充実・迅速化のための弁護体制整備の必要性そのものについて、改革審の議論を踏まえて、当検討会できちんと議論を深めていくべきではないかと、かように思うわけであります。
若干意見が長くなって恐縮でありますけれども、別途行われました裁判員制度・刑事検討会におきましては、刑事裁判の充実・迅速化の議論が、最初に検察審査会をやり、次に裁判員制度をやって、その後に充実・迅速化の議論をするという具合に既に決せられているところであります。したがいまして、裁判の充実・迅速化策の本体の議論がされる前に、次回の6月25日に弁護士の確保方策の小柱の一つとしての議論をしなければいけないということになるわけでありますが、意見書及び閣議決定を踏まえますと、刑事裁判の充実・迅速化の観点からの弁護体制整備の必要性といった議論を次回にやらなければいけないということになるわけであります。
そういたしますと、いろいろ考えなければいけないことがあるわけでございまして、先程申し上げましたように、特異重大事件において、例えば通常の手続で弁護士を付することができない、こういった場合のセーフティーネットとしては、一つの案、選択肢でありますけれども、最小限度の公設弁護人制度といったようなものも一応検討しなければいけないのではないかと、かように考えるわけであります。
そういたしますと、作業日程の全6回の中での残余が実質4回しかないわけでありますけれども、早く検討していかないと、実際上、間に合わないのではないかということを危惧しております。
したがいまして、次回に予定されております連日的開廷による充実かつ集中した審理を実現するための弁護体制の整備という項目の検討時間の予定枠を拡大していただくか、あるいは再配分といったことを御検討いただければと思うわけでございます。
□ いかがですか。
● 刑事裁判の充実・迅速化の観点から、公的弁護制度の必要性を検討するということは非常に重要なことであると事務局としても考えておりますし、また意見書でも○○委員御指摘の記載がされているところであります。
しかしながら、当検討会で検討すべき論点及び検討のスケジュールというものを見ますと、裁判の充実・迅速化は非常に重要なことであると事務局として考えておりますけれども、これに特定して複数回開催するというのは、非常にスケジュールがタイトなところもありますので、現在はやや困難かなというふうに考えております。
もっとも、各検討会の際、○○委員御指摘の刑事裁判の充実・迅速化の観点からの公的弁護制度の整備ということが、特に論点として出されていなくても、このことは議論の背景に意識されていなければならないことであろうと考えております。
したがいまして、各検討会で検討される論点あるいは制度設計の議論の必要に応じまして、刑事裁判の充実・迅速化の観点からの公的弁護制度の必要性について議論が及ぶということも当然あり得るものと考えております。
特に、御指摘の点につきましては、第5回の運営主体のところで、それまでの第3回、第4回の議論を踏まえ、当然議論がされると思いますが、全体のスケジュールの中で大きな骨組みとして取り上げますと、このようなスケジュールになるということで御理解いただきたいと思います。
□ ほかの方のご意見はいかがでしょうか。
○ 意見書によりますと、基本はやはり被疑者・被告人の権利を適切に保護する、弁護人の援助を受ける権利を実効的に担保する、というのが大前提であるわけですので、その観点から、公的弁護制度をどういうものにすべきなのか、それを第一に考えるべきだろうと思います。
確かに、今、○○さんがおっしゃいました特異重大事件の問題はあろうかと思いますが、順序から言えば、まず第一に被疑者、被告人の弁護人の援助を受ける権利の実効的担保ができる体制はどうなのかという観点の議論が終わった段階で、その問題について議論すべきだということになるのではなかろうかと思います。特にその点を議論すべきではないということを申し上げているわけではないのですが、そういうことで全体として進めていただきたいというふうに思います。
□ ほかの方はいかがですか。
○ これは質問ですが、事務局の方がこのスケジュールを作られたときの基本的な問題意識がどの辺にあるかということをお聴きしておきたいと思うのです。
ざっとこれを見ると、基本的に事務局の方は、現行国選制度を捜査段階に前倒しするということが基本的なイメージとしてあるというふうに思えるのですが、そういう理解でよろしいのでしょうか。
● 意見書に従いますと、弁護人の選任・解任は、現行の被告人の国選弁護制度と同様に、裁判所が行うのが適切であるとされておりますので、選任・解任という点は、現行の国選弁護制度と同様であろうと考えております。
ただ、それを離れまして、それ以外にどういう仕組みをつくるかにつきましては、まさにこの検討会で御議論されることであろうと考えております。
○ 今から申し上げるのは私の理解で、弁護士会から見ると、お前の理解は違っているぞということになるのかもしれないのですけれども、現行国選制度というのは、基本的には、報酬が安いということも含めて考えれば、一種のボランティア弁護なわけです。非専門性であることは別に問題にしない。ほかに民事もやり、顧問もやり、いろいろな仕事をしながら合い間を見て刑事弁護をやる。語弊があるかもしれませんけれども、そういう時間的配分という面から言うと片手間弁護だということになるわけです。これは時間的配分のことを言っていて、中身のことを言っているわけではありません。一生懸命やっておられる弁護士ももちろんいるわけで、そういうことを無視して申し上げているわけではなくて、大きな流れで言うと、弁護士活動の時間の中のごく一部を割いて刑事弁護をやっているというのが基本的な構造だと思うのです。
ですから、公的弁護もそういうような実質を前提にしたものとして考えていくのか、そうではなくて、一回全部白紙に戻して、選任・解任は裁判所がやるということだけは確定しているが、あとは全部ゼロに戻してやるんだという発想なのか、その辺の基本的な発想の在り方を少し聴きたいのですけれども。
□ 事務局としても、その点は白紙でこの案を作ったので、○○委員がおっしゃったように、何かたががはまっているということではないと思います。審議会の意見も、そこはオープンですので。
現行の国選弁護は、確かに実態としてはおっしゃるようなところもあるのかもしれませんが、制度としては必ずしもそういうことを想定しているとも思えません。裁判所ないし裁判長が選任するのですから、それに適した弁護士を選任するということが想定されているはずなのです。そして、弁護士会の方も、それに向けた体制を、制度としては組んでおられるだろうと思います。ただ、実態としては、たくさんある民事などの事件に比べ、ごく一部で刑事をやるという人が大半であることは確かですが。
○ 適していないと言っているわけではありません。
□ 実態としては、おっしゃるとおりだと思うのですが、我々の取り組み方としては、そのような国選弁護を含め体制を全部組み替えるという選択肢もあれば、現行の国選の中身を充実していくという対応の仕方もあると思うのです。
ですから、そこのところはオープンに御議論いただいた方がいいのではないかと、私は思っております。
大きな問題に入ってしまいましたが、ほかに御意見はいかがですか。
○ ここに書いてあることだけから見ますと、次回の第3回で予定されているのは、極端な言い方をすれば、量的な点を専ら問題にされておるように思うのです。弁護体制をどれだけ広げればいいか、逆算で対象事件をどういうふうに絞ればいいかということでしょうけれども、○○委員の指摘されたのは、量的な弁護体制とは違う特異重大事件での対応、多分、特異重大事件に病理的、典型的に現れる問題であって、どの事件でも現れうるのでしょうけれども、そうした点は、量的な問題とは少しレベルの違う問題ではないかという御指摘だと思うのです。
そうしますと、量的な体制、あるいは範囲についても大変な議論を要する問題でありますけれども、それにとどまらず、そうした点は、果たしてこれまでの国選弁護の運用の継続でいいのかどうかという重大な御指摘だと思います。
そうしますと、むしろ第4回で選任云々ということがございますけれども、単に弁護人の選任ということにとどまらず、もっと付随する本質的な問題が多々あるのではないかということになってこようかと、私は理解しますので、第3回、あるいは第4回の相互の関連の中で、○○委員の御指摘についても十分検討すべきではないかなと思う次第です。
○ 今、本当に適切な御指摘をいただいたわけでありまして、要するに意見書を拝見しますと、運営主体に常勤弁護士を配置するか、あるいは個々の弁護士又は弁護士法人との契約云々という例示があるだけで、具体的な制度設計自体は今後の検討課題ということにされているのです。
ところが、例えばこの中で運営主体の常勤弁護士といっても中身が何を意味するのやら、これを議論するとなると、とても一つの項目の小柱の一つで、恐らく時間的に言うと30分取れるかどうかで、とても議論できないのではないかと思います。
仮に改革審意見を真摯に受け止めてやるとすると、時期的に早くやっておかないと、私の言わんとしていることは十分お分かりだと思うのですけれども、実際上後の方で議論してみても、恐らく時間的に間に合わないと思うのです。
そういった面がありまして、第3回のところはこれで結構ですけれども、議論が終わらない場合には、例えば第4回でも取り扱っていただくとか、そういう具合に臨機応変にやっていただければありがたいと思います。
□ この「当面の論点及びスケジュール(案)」も、第2回、あるいは第3回にこういう事項を取り上げればそれで終わりということではない。いろいろな事項が相互に密接に関連しているのは確かですが、一応事項を整理し順番に議論していこうという趣旨のものに過ぎず、1回そこで議論すればその事項はそれで終わりということではない。こういう形で一通り議論した上で、もう一度全体を見直してみるということではないかと思うのです。
第3回のうちの小さな項目にしたのがお気に召さないのかもしれませんが、充実かつ集中した審理を実現するための弁護体制の整備というところには、さっき○○委員がおっしゃった、質とか量の問題だけではなくて、少数であっても弁護人を確保するということも当然含まれているだろうと思いますし、第4回の私選と公的弁護の関係というところも密接に関係してくる。さらに、第5回の運営体制というのは、まさに御指摘の問題と切り離せない関係にあるわけです。
ですから、一応順序を追って話を進めながら、第4回でも第5回でも当然議論するということになるのではないか。しかも、この検討会は12月で終わるわけではありませんので、全体としてもう一回見直して見る機会があると、私としてはそのように考えています。
第3回についても、大体2時間を予定していますので、できるだけ効率よくとは思いますが、今の御趣旨を踏まえて、実質的な議論ができるような時間配分を検討させていただきたいと思います。
裁判員制度・刑事検討会とで議論の順序にそごがあるという御指摘につきましては、一見そのようにも見えますけれども、充実・迅速化策というのは、いろいろなものがあるわけで、公的弁護ということだけが決定版というものではありません。そのうちの公的弁護のところを、ここでは裁判員制度・刑事検討会に先んじて議論するということになるのですけれども、いずれ向こうの検討会の方も議論が進んでいきますから、大体今年の秋から冬ごろには足並みがそろってくる。そのように議論が詰まっていけば、全体としてそごはなくなっていくのではないかと思います。そういうことで了承していただけますでしょうか。
○ とりあえず次回やってみてということになろうかと思いますが、いずれにしましても、このような議論をしなければいけないということは、本来一体として議論すべき事項を2つの検討会に分けたマイナス面だと思うのです。
したがって、我々の今後の検討作業においては、こういうマイナス面をできるだけ少なくするように両者の議論を有機的に連携させていかなければいけないと思うのです。
ただし、若干お願いでありますけれども、例えば公的費用による弁護制度で諸外国の例というような一枚紙が改革審の際にも既に配布されておりますので、できるならば、これを配布していただきたいと思います。
□ 後で説明してもらう予定ですけれども、今言われた資料は、本日配布されている資料の中に入っています。
○ では、今の点は結構です。何分よろしくお願いいたします。
□ それでは、以上のような理解で、○○委員が御指摘になった点についても次回以降十分議論していただきたいと思います。ほかに「当面の論点及びスケジュール(案)」について御意見ないし御質問がございませんか。
大体こういうことでよろしいですか。それでは、当面こういう形で進めることにし、議論の進行の状況によっては、適宜また組み換えたり、補充したりすることもあり得るということにさせていただきたいと思います。
また、毎回予定された事項がすべて終わるわけでは必ずしもなく、積み残しも多々あると思いますので、状況によって、またスケジュールなどを御相談させていただきたいと思います。
(3) 事務局からの説明
□ それでは、次に、事務局から配布されている資料について説明をしてもらい、さらに、日弁連及び最高裁からも補足の説明をしていただこうと思います。
これは、我々がこれから議論していくための土台としようとするものでございます。今後また必要がありましたら、御意見、御要望をいただき、補充的に更に資料を準備してもらったり、関係の諸機関などにも説明をお願いすることがあり得るというふうに御了解いただきたいと思います。
それでは、まず、事務局から主に統計資料についての説明をしていただき、その後、関係機関として出席していただいている日弁連及び最高裁から、事務局が用意した説明項目に沿って説明をお願いすることにしたいと思います。
まず事務局からお願いします。
● 事務局から資料2-2から資料2-4までを用意しておりますので、その資料について説明をさせていただきます。
初めに、資料2-2について御説明いたします。資料2-2は『法曹時報』に掲載されている統計のうち、当検討会の検討にかかわるものを抜粋したものでございます。
以下、刑事手続の流れに沿いまして、平成12年の統計数値を御説明いたします。
まず、捜査段階につきまして逮捕された者の数、勾留された者の数、勾留された者のうち公判請求された者の数の順に、それらの統計について御説明いたしたいと存じます。
初めに3ページをお開きください。右側の「第16表 逮捕・勾留別等人員」について簡単に説明します。
前提としまして、この表の見出しの括弧内で書かれておりますが、第16表の数値からは、自動車等による業務上過失致死傷事件、あるいは自動車等による重過失致死傷事件並びに道路交通法等違反事件は除かれております。この除かれた自動車等による事件は、「交通関係事件」と呼ばせていただきたいと思います。それを前提に御説明いたしたいと思いますが、左端の総数、37万8,467 とありますのは、平成12年中に検察官が起訴・不起訴などの処理を終えた被疑者の延べ人員数でございます。
この37万8,467 人から2つに分かれまして、下の方の逮捕された者13万968 人とありますのは、警察等の第一次捜査機関、又は検察庁で逮捕された被疑者の合計数であります。そして13万968 人のうち、刑事手続が進行しまして、勾留されたものが第16表の右端の上から2つ目に記載されております、勾留された者11万5,391 人となります。
なお、少年事件につきましては、検察官は家庭裁判所に事件を送致する前に、勾留請求に代えて少年鑑別所への送致を請求することができ、これが認められると被疑者である少年は少年鑑別所に収容されることになります。これも捜査段階の身柄拘束の一種でありまして、この手続に従って少年鑑別所に送致されて収容された人員が、第16表の右端の上から4つ目に記載されています、少年鑑別所送致2,573 人であります。
したがいまして、逮捕された人員13万968 人につきまして、捜査段階において引き続き身柄を拘束された者は、第16表中で言いますと、勾留された者11万5,391 人と少年鑑別所送致2,573 人を合計した数ということになり、第16表には記載されておりませんが、これを計算しますと11万7,964 人となります。
なお、勾留された者の罪名別内訳等につきましては、後ほど資料2-3によって御説明いたします。
次に引き続き、第16表に記載されている勾留された者11万5,391 人のその後の推移について御説明いたしますので、引き続き資料2-2の4ページをお開きください。
4ページの一番左端の「第18表 勾留期間別人員」を御覧いただきますと、被疑者段階の勾留期間が6日以上10日以内の者が5万2,877 人、全体の45.8パーセント、勾留期間が11日以上20日以内の者が6万1,378 人、全体の53.2パーセントとなっております。
次に18表の右隣りの「第19表 勾留後の措置別人員」を御覧ください。これを見ますと、勾留された者の総数11万5,390 人のうち、勾留中に公判請求された者は、上から3つ目ですが6万3,390 人です。したがいまして、勾留された者のうち、54.9パーセントが公判請求されたということが分かります。
ところで、これまで説明しました3ページ及び4ページの数字は、冒頭申し上げましたように、交通関係事件を含んでおりません。この交通関係事件を含む全勾留人員についてでありますが、これにつきましては9ページをお開きください。
9ページの左端の「第22表 勾留請求と勾留状の発付数等(地裁・簡裁)」という表があります。この表の左端に地裁と簡裁に区分してありますが、それぞれの12年の欄の2つ右隣りに「発付(B)」というのがあり、これは勾留状の発付数であります。
これらによりますと、勾留状が発付されたものは、地裁では平成12年で5万9,927 人、簡裁では6万2,427 人であります。その数値の罪名別内訳は不明でありますが、この表は、交通関係事件を除いておりませんので、表には出ておりませんが、これらの合計数12万2,354 人が全勾留人員になると思われます。
これによりますと、平成12年の全勾留人員は、資料2-2の3ページの第16表の勾留された者の11万5,391 人よりも6,963 人多くなるという勘定になろうかと思います。
なお、参考まででございますけれども、資料2-2の第22表、地裁と簡裁における勾留状発付の平成13年の数値につきましては、未確定ではございますが、12年より約5パーセント程度増加しているようであります。今後、平成13年の統計が確定いたしましたら、アップデートした統計をお配りいたしたいと存じます。
次に、捜査段階は切り上げまして、公判段階でございますが、7ページをお開きください。
弁護人の選任状況、国選・私選の割合等に関する統計について御説明いたします。
7ページ上段の「第9表 控訴審及び通常第一審における弁護人が選任された人員(高裁・地裁・簡裁)」を御覧ください。
この第9表は、左から順に高裁・地裁・簡裁についてそれぞれ終局人員、弁護人が選任された人員、私選弁護人、国選弁護人別の内訳を見たものであります。
12年の数値を説明いたしますので、第9表の一番下の12年の欄を横に御覧ください。まず、通常第一審である地裁について見ますと、終局人員は6万8,190 人であります。この96.6パーセントに当たる6万5,873 人の被告人に弁護人が選任されております。私選と国選の内訳を見ますと、弁護人が選任された被告人のうち、私選弁護人が選任された被告人が1万7,579 人、終局人員に対する割合が25.8パーセント、国選弁護人が選任された被告人が4万9,094 人、終局人員に対する割合が72.0パーセントとなっています。
次に簡裁に目を転じますと、終局人員は1万1,520 人であります。この96.9パーセントに当たる1万1,158 人の被告人に弁護人が選任されています。同じように私選、国選別を見てみますと、私選弁護人が選任された被告人が1,248 人、10.8パーセント、国選弁護人が選任された人員が9,984 人、終局人員の全体の86.7パーセントとなっています。
このように、同じ通常第一審である地裁と簡裁におきまして、終局人員に占める国選弁護人が選任された被告人の占める割合を見ますと、地裁が72.0パーセント、簡裁が86.7パーセントと、簡裁の方が高い率となっております。
次に、罪名別に国選弁護人の選任状況を見てみることといたします。
8ページ左側の「第11表 通常第一審における弁護人が選任された人員の主要罪名別割合(地裁・簡裁)(平成12年)」を御覧ください。
この表の一番右端の縦の欄、これが「国選弁護人が選任された人員の割合」であります。一番上の地裁における「国選弁護人が選任された人員の割合」は72.0パーセントであり、先程説明した数字でございます。
これを前提に見ていくわけですが、まず、地裁につきまして「国選弁護人が選任された人員の割合」が高い罪名を見ますと、まず「窃盗」が83.2パーセント、その下の「常習累犯窃盗」も98.6パーセントと高くなっておりますし、「出入国管理及び難民認定法違反」が92.1パーセントとなっております。終局人員が一番多いのは、1万5,185 人という覚せい剤取締法違反でありますが、国選弁護人が選任された割合を見ますと、78.1パーセントでありまして、やはりこの割合は、地裁全体の72.0パーセントを上回っているわけであります。
これに対して、法定刑が重い罪名ということで割合を見てみますと、例えば「殺人」は64.4パーセントとなっております。また、「傷害致死」は46.9パーセントにとどまっておりまして、地裁の終局人員に占める「国選弁護人が選任された人員の割合」の72.0パーセントより下回っているということになっております。
次に、合議・単独事件別に国選弁護人の選任状況を見てみることにします。
お手数ですが、7ページの下段の「第10表 通常第一審における弁護人が選任された人員の合議・単独別割合(地裁)」を御覧ください。
12年の数値を見ますので、一番下の12年の欄を横に御覧ください。この欄の右端の区分は、「国選弁護人が選任された人員の割合」を合議・単独別に見たものであります。
この「総数」の欄は、先程来説明しております72.0パーセントであります。これを合議・単独別に見ますと、「合議」では「国選弁護人が選任された人員の割合」が53.9パーセントであるのに対して、単独では73.5パーセントでありまして、終局人員に占める国選弁護人が選任された人員の割合は「合議」の方が顕著に低くなっているということが表れています。
逆に、「私選弁護人が選任された人員の割合」は、裏返しの関係にありまして、「総数」では25.8パーセントでありますが、「合議」では47.0パーセントであるのに対しまして、「単独」では24.0パーセントでありまして、「合議」の方が顕著に高くなっているわけであります。
次に、10ページの訴訟費用の負担の裁判について簡単に御説明いたします。
現行法上は、国選弁護人の報酬は訴訟費用に含まれまして、刑の言渡しをしましたときは、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければなりません。しかしながら、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することができないことが明らかであるときは、この限りではないとされております。
「第74表 訴訟費用負担の裁判の有無(高裁・地裁・簡裁)」は、高裁・地裁・簡裁の有罪人員につきまして、訴訟費用のある者の総数と、そのうち訴訟費用負担の裁判があった者と、なかった者の内訳を示したものでございます。
平成12年につきまして、左端の区分「総数」の欄を見てみますと、有罪人員8万3,627 人であり、このうち訴訟費用がある者は77.8パーセントに当たる6万5,081 人であります。そのうち訴訟費用の負担の裁判があったものは、1万4,959 人にとどまっております。
資料2-2の説明の最後に、13ページを御覧ください。
13ページには、家庭裁判所の事件の概況のうち、少年事件に関するものを掲載しておりますので、併せて御参照ください。この少年事件関係の統計につきましては、第6回の検討会におきまして、公的付添人制度を論点として取り上げる際に、御説明いたしたいと存じております。
これで、資料2-2の説明を終わらせていただきまして、次に資料2-3について御説明いたします。資料2-3は、平成12年の勾留された被疑者につきまして、罪名別人員を示したものであります。勾留された被疑者でございますので、捜査段階に話を戻しているということでございます。
資料2-3につきましては、御注意いただきたい点が2つあります。
1つは、見出しの下にも記載しましたとおり、交通関係事件が除かれております。
2つは、特別法犯についてでありまして、これは資料2-3でいきますと、最終ページの4ページに記載されています。実は、この特別法犯につきましては、統計上、法律単位で統計が取られておりまして、罰条ごとの内訳は不明であります。したがいまして、法定合議事件と必要的弁護事件、これは法定刑によって異なってくるわけでありますが、それを示すことができておりません。
以上を前提に、ごく簡単に説明させていただきます。
資料2-3の1ページ目、右端の「勾留許可」の一番上の欄「総合計」によりますと、平成12年の勾留された被疑者の総数、これは交通関係事件を除いているものでありますが、11万5,391 人でありまして、先程の資料2-2で説明した数と同じであります。
また、ここでは刑法犯につきまして、勾留許可数の内訳としまして、法定合議事件と必要的弁護事件のそれぞれの勾留人員数を示しており、御覧のとおり、刑法犯の勾留許可人員である8万271 人のうち、法定合議事件に当たるものは6,153 人、必要的弁護事件に当たるものは6万7,427 人であります。もちろん、この必要的弁護事件の中には、法定合議事件が含まれております。
なお、先程説明いたしましたが、最終ページの4ページの特別法犯につきましては、法定合議事件と必要的弁護事件の内数を示すことができません。ただ、おおよそどのぐらいかというのを少し拾ってみますと、覚せい剤取締法違反の勾留人員は、1万9,092 人と多いわけですが、実務上、その多くは必要的弁護事件に当たる事案だと思われます。いろいろと罰条はありますが、ほとんどは必要的弁護事件に当たる法定刑の事件であると思います。
したがいまして、これを含め、実務上いくつかは罪名からしますと明らかに必要的弁護事件に該当すると考えられる事件があるわけでありまして、これらを含めますと、必要的弁護事件は、資料2-3の1ページ目に記載しました刑法犯の必要的弁護事件の6万7,427 人よりも更に2万ほど多くなりまして、9万人程度に達するということでございます。
事務局からの説明の最後に資料2-4を御覧ください。これは、先程座長からもお話がありましたが、司法制度改革審議会における「『国民の期待に応える刑事司法の在り方』について<参考資料>」のうち、当検討会の検討にかかわるものを抜粋したものでございます。
今後、司法制度改革審議会の議事内容を御説明いたします際に、御参照いただければと存じます。
ただ、これはあくまでも平成12年5月16日現在のものでありまして、統計的には古くなっております。必要に応じてアップデートした統計を御説明したいと存じます。
また、中に入っております資料につきましても、その当時の審議会の議論のための資料であります。当時審議会がどういう資料を基に議論されたかということをお分かりいただくために出したという趣旨であります。
したがいまして、例えば、この中に少年法の改正につきましてペーパーがありますが、もう少年法の改正は終わっておりますので、その点では古くなっております。
この点につきましては、第6回の公的付添人制度の議論の際に現行の少年法の内容あるいは改正少年法の内容について説明していただくことが必要であろうかと存じます。
先程の外国法制についての説明でございますが、この中に一枚紙として入っております。資料の28でございます。
□ ○○委員、資料2-4の中の資料28というのが先ほど触れられたものです。お読みいただければ理解していただけると思いますが、もし何かまた諸外国の制度について必要がありましたら、それに応じて説明していただくということでよろしいですか。
● なお、資料28の諸外国の制度は、できる限りコンパクトにまとめておりますのと、先程の統計と同じ問題点がありますので、そういうものとして御理解いただければと思います。
少し時間を取って恐縮ですが、事務局からの説明を終わらせていただきたいと存じます。
□ ご質問をどうぞ。
○ もしかしたら、私が見落としているのかもしれないのですが、捜査段階で弁護士が付いた事件と、そうではない事件の統計というのは出ているのですか。
● ここには含まれておりません。
○ いずれあった方が議論がしやすいと思います。もう一つは、逮捕時と起訴時で罪名が異なったのが何件あるのか、また、弁護士が付いているものと付いていないもので統計資料が欲しいです。
□ いまの逮捕時と起訴時で罪名が切り替わった事件についての統計資料というのは、ちょっと難しそうですね。こういう資料を整えて欲しいという御要望として承っておき、可能ならば用意してもらおうと思います。
○ 今回の公的弁護の検討は、公的費用を支出することによって、きちんと被疑者、被告人の弁護を受ける権利を保障しようということでして、そういう意味では公的費用が従来どのぐらい使われていて、先程の御説明によれば、訴訟費用がある事件が増えていて、しかもそれが負担なしというのも増えているという現状の中で、今後どのぐらい公的費用の支出が見込まれるかという数字も必要かなと思います。
例えば、これは簡単なことなんですが、資料2-4の132 ページとか133 ページは、平成10年のものですけれども、恐らく右肩上がりでずっときているように思われるので、最新の国選弁護人標準報酬額とか、予算額とか、そういったものも欲しいなと思います。
また、例えば、このような報酬額というのは、国選弁護人の場合はこうなんですけれども、私選弁護人ならばいくらであって、弁護士の方が私選弁護人を引き受けるときと、国選弁護人を引き受けるときでは違うのかどうか、先程もボランティアという括弧付きの御指摘がありましたが、これは日弁連の方にお願いした方がいいのかもしれないですけれども、刑事事件の典型的な例の場合で、国選と私選では報酬がどう違うのかとか。
もちろん、これは量的な把握にしか過ぎないので、報酬の多寡でお仕事をされていないというのは十分認識しているのですけれども、データとしても、公的費用を支出する上での費用に係るところは、いずれお分かりになる範囲でより詳細に教えていただければと思います。
以上、お願いです。
□ それもできるだけ整えてもらおうと思います。
○ もう一点、さっきの資料の件で、勾留されて不起訴になった、起訴猶予、嫌疑不十分の両方を含むわけですけれども、それについて弁護士が付いているか、付いていないかという統計もいただきたいと思います。
□ もともと基礎的なデータを取っていない場合には、統計を作りようがないということもあろうかと思いますので、可能ならばということで、検討してもらおうと思います。
○ 私も予算的な面のデータをお願いしたいと思ったのが1つ。
もう一つは、弁護人が選任されていない事案です。それが一体どういう理由によるものなのかと、いろいろなケースがあるかと思うのですが。
□ どの段階の話ですか。起訴後ですか。
○ 起訴後の国選弁護、捜査段階の両方について一体どういう事情があるのかなと。これは非常に難しいと思うのですけれども、そういう大まかな理由がある程度分かるようなデータがもしあれば見たいと思いますが。
□ これはデータという形では出ないと思いますね。例えば日弁連の方とか、あるいは裁判所の方で、こういうケースの場合に、こういう理由で付いていないと思われるといった程度のことはお話ししていただけるかもしれませんが、こういう理由で何パーセント付いていませんといった統計はおそらくないだろうと思います。
今申した程度のことでよろしければ、わざわざ関係機関の方に来ていただかなくても、委員の中に弁護士さんもいらっしゃいますし、裁判官もいらっしゃいますので、関係する議論の中でお話していただければと思います。
○ 分からないことが多いと思いますけれども。
□ 合議事件では国選が少なく、私選が比較的多いということなのですが、これは法定合議と裁定合議で差があるのかどうなのか、何かそういうデータはありますか。
● 先程の合議というのは、御指摘のとおり、法定合議と裁定合議の両方含んだものでありまして、資料2-2の6ページの第9図を御覧いただきますと、この中に合議事件の内訳があり、法定合議事件がほとんどでありますが、裁定合議事件も738 あります。この内訳があるかどうかにつきましては、調査したいと思います。
□ 私の質問の趣旨は、重い法定刑が科されるような事件だから私選弁護人を依頼するということなのか、事案が複雑なので依頼するのか、両方かもしれないですけれども、そういうことなのです。
○ 先程教えていただいた資料2-4の資料28ですが、公的費用による弁護制度で諸外国の例ということで、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの例がそれぞれ挙げられているわけですね。
これは、基本的には公的費用によると書いてありますから予算の問題かなと思いますけれども、仮に今後似たような制度を我が国に導入するというような場合に、この中で予算上の手当て以外に立法上の手当てが必要な事項というのが出てくるものというのはあるのですか。
□ 立法上の手当てが必要なものはどれかということですか。
○ それが入っているんですかと。例えば、アメリカの例を見ると、公設弁護人と官選弁護人と契約弁護人と3つの種類がオプションとしてあると書いてありますね。これらのもので我が国に類似のシステムを導入するとした場合に、単に予算を付ければできる話なのか、それとも何らかの法改正が必要なのかという点がもしお分かりになれば御説明いただきたいのですが。
□ 私の漠然とした理解では、法改正という場合の「法」というのが訴訟法なのか、組織法なのかで答えは違ってくるように思います。訴訟法という点では、被疑者に公的弁護を付けるということについて改正がおそらく必要になる。それは、どのような形態の公的弁護制度を取ってもそうだと思うのです。これに対して、形態の違いによって違いが出てくるのは組織法だろうと思います。特に公設弁護人的なもので、しかも国の機関として設けるという場合には、組織法的な裏付けがおそらく必要になる。しかし、国の機関としてではなくて、他の形態の公設ということもあり得るので、その場合には、法令上の手当てがどれだけ必要なのかは、技術的な問題も含めて詰めないといけませんが、全く要らない場合から、ある程度の手当てが必要なものまであり得るように思います。
他の2つの形態のうち官選というのは、日本の国選に相当するものですし、契約というのも、どういう法令上の枠組みでやっているのか、事実上、裁判所と当該弁護士事務所が契約しているとか、あるいは司法行政上の措置でやっているとか、その辺も少し詰めないといけないのですが、アメリカについての私の印象では、組織法的な裏付けが必ずしもなくてもやっているのではないかという感じがします。
○ 改革審の意見書などを拝見しますと、先程申したように常勤弁護士というものと、あるいは個々の弁護士又は弁護士法人との契約という2つの例示だけがあるのですけれども、今の御説明の内容というのは、これとはリンクしているのですか。
□ 意見書は実質としてそういう形態があり得るということを言っているだけで、法令上どういう手当てが必要なのかというのは、実質が決まってから、技術的な問題として考えていくべきものだろうと思います。
○ 改革審の意見書が、そこのところを例示しているのですが、含まれている中身、内包されているものが何であるかというのが今一つよく理解できないのです。
□ 私の理解するところでは、意見書も、考え得るあるパターンを例示しているだけだと思うのです。そこでは大体3つぐらいのパターンが示されていますが、こういう形とこういう形があり得るのではないかということであるわけです。
ただ、一点特に強調しているのは、やはり一つの刑事事件に専従できるような弁護体制を整備すべきだということでありまして、そのためには、常勤の人がいるということが必要なのではないかということです。それは、先程○○委員や○○委員が言われた、量だけの問題ではないということも念頭にあったと思います。
まだ後が控えておりますので、統計についてはこのくらいでよろしいですか。また随時、資料などについて御要望をいただいたり、説明の要求をお出しいただくということにさせていただきたいと思います。
(4) 日弁連からの説明
□ それでは、時間が押しておりますけれども、今日出席していただいております日弁連の方から、弁護士会関係の資料の御説明をお願いしたいと思います。
△ 日弁連の刑事弁護センターの副委員長を担当しております、○○と申します。
当番弁護士の制度概要を中心に御説明したいと思いますが、一般の委員の方もおられますので、日弁連が当番弁護士制度を創設いたしました経緯について若干簡単に御説明したいと思います。
資料としては、日弁連説明資料一覧で、日弁連資料2-1から2-12を使って説明をしたいと思います。
古くは、免田事件など死刑再審無罪事件に見られますように、えん罪事件を生み出す原因の一つが、我が国において被疑者弁護制度が存在しないことにあったということは御承知のとおりであります。
そのことが指摘されながらも被疑者弁護はごく少数の事件に限られ、また個々の弁護人の活動にゆだねられてきたのが実情でありました。大多数の被疑者は弁護の外に置かれておりました。
御承知の松本サリン事件の例を見ても、えん罪を防ぐためにいかに被疑者弁護が重要であるかを指摘することができるというふうに思います。松本サリン事件の○○さんの場合は、当番弁護士ではなくて私選弁護人が付いていましたが、もし弁護人が付いていなかったとするならば、逮捕され虚偽の自白をもとに起訴されていたと思われます。
1989年、日弁連は松江における人権大会において、刑事訴訟法40周年宣言を採択いたしました。そこでは被疑者に国選弁護人制度がないことなど、被疑者の人権は大きく制限されていると指摘し、このような憲法の理念及び国際人権法に反する状況を改革するため英知を結集し、現在の刑事手続を抜本的に見直し、制度の改正と運用の改善を図るとともに、在るべき刑事手続への実現に向けて全力を挙げて取り組むという宣言をいたしました。
この宣言に基づく具体的取組が、刑事弁護センターの設置であり、被疑者弁護強化のための当番弁護士制度にほかならないわけであります。
1990年9月、大分から始まった当番弁護士制度は、全国の弁護士会に広まり、1992年には、全国52のすべての弁護士会で実施されるに至りました。
10年を経過いたしまして、今日では全国すべての地域を対象に8,000 人を超える当番弁護士が接見し、活動する体制になっております。
次に当番弁護士制度及び刑事被疑者援助制度の概要について御説明申し上げます。
当番弁護士制度は、被疑者や家族などから弁護士会に接見の依頼があれば、弁護士が当番弁護士として直ちに接見に赴き被疑者の相談に応じ受任する制度であります。初回接見は無料であります。
日弁連資料2-2を見ていただきますと、当番弁護士として登録している弁護士は、2001年5月段階で8,090 人でありまして、登録弁護士総数の44パーセントになっております。
なお、弁護士会の各支部ごとの弁護士数、当番弁護士登録数は、日弁連資料2-1のとおりであります。
ちなみに、国選弁護人の登録数でございますが、同じく資料2-2を見ていただきますと、国選登録弁護士数は9,683 人で、率でいきますと54パーセントでありまして、当番弁護士数と10パーセントの違いがございます。
この違いは、当番弁護士が被疑者段階から活動するため、国選弁護人に比べて負担が大きいことにあるのではないかというふうに思われます。
当番弁護士制度は、資料2-2で見ていただきますと「平日形態」という左から3つ目の欄がございますが、2つの方式がございます。
1つは、待機方式と言われるものでありまして、これは登録した弁護士があらかじめ決められた担当日に事務所で待機しておりまして、出動要請に応じて接見に行く方式であります。なお、1日の派遣数が多い会では、3人とか5人といった複数の弁護士が待機をしております。
名簿制は、出動要請ごとに名簿に登録している弁護士の中から、事務局が弁護士を選んで接見に行ってもらう方式で、人数の少ない会に多く見られます。
名簿式では、出動弁護士の確保や、特定の弁護士に集中するなどの問題点がありますが、会員数などから待機制が取れない実情を踏まえて取られている方式でありまして、それぞれ弁護士会ごとに工夫がなされ運営されております。
資料2-2で見ていただきますと分かりますように、全国52のうち待機制を取っているのが32、名簿制を取っているのが20ということになっております。
次に、当番弁護士は平日、休日を問わず365 日出動いたします。休日の場合について「休日形態」というのが2-2に記載されておりますが、ここで御説明いたしますと、休日の場合、待機制を取っているところと、先程説明した名簿式を取っているのと2つに分かれます。
具体的に説明いたしますと、休日の場合、留守番電話で受付をいたしまして、当番弁護士が自ら弁護士会の留守番電話にアクセスして出動する方式、連絡担当者が受け付けをして当番弁護士に出動要請する方式、留守番電話で受け付けた上、連絡担当者がそれを聞いて出動を要請する方式、留守番電話で受け付け、出動は翌日に出動するといったような方式が、それぞれ単位会の実情に応じて取られているわけであります。
接見の申込者としては、被疑者本人、家族、知人等、委員会派遣があります。
これにつきましては、日弁連資料にはございませんので、若干口頭で御説明申し上げます。
委員会派遣制度は、本人からの出動要請がなくても、殺人、放火といった重大事件や、早期に弁護人が選任される必要性ありと弁護士会が判断した場合に、当番弁護士を派遣し接見させる制度であります。
2001年のそれぞれの割合は、被疑者本人からの申し込みが87.1パーセント、家族、知人等が10.2パーセント、委員会派遣が2.7 パーセントであります。
このうち、被疑者本人からの87.1パーセントのうち、裁判所からの通知が57.4パーセント、警察署からの連絡が28.6パーセント、検察庁からの通知が0.3 パーセント、その他が0.8 パーセントになっております。
裁判所では、勾留質問の際に当番弁護士制度についての掲示がなされており、また勾留裁判官から口頭で告知がなされる場合もあります。本人から接見の申出があれば、裁判所から弁護士会へ接見要請の文書がファックスで通知されるシステムになっております。
次に、連絡の時期でありますが、2001年について見ますと、逮捕中が17パーセント、勾留決定当日以降が83パーセントになっております。
次に、当番弁護士は、受付から24時間以内に接見することになっており、現に82.6パーセントが24時間以内に接見をしております。
2001年1月から12月まで1年間の受付件数は、合計4万7,143 件でございます。
それにつきましては、日弁連資料2-5の「受付件数推移」と記載した資料を御覧いただきたいと思います。
2001年が4万7,143 件であります。1999年には3万271 件で3万件を超えまして、2000年に3万9,690 件というふうに、この数年増加傾向にございます。この受付件数のうち、少年被疑事件は5,289 件で、全体の11.2パーセントに上っております。
このように受付件数が順次増加している傾向については、日弁連刑弁センターとしていくつか検討いたしましたが、特段の体制を取ったというわけでもなく、また、すべての単位会で受付件数が増加しているということが特徴的なことであります。
以上、説明したシステムによりまして、当番弁護士が被疑者本人と接見をいたします。その際に当番弁護士制度の説明、刑事手続の概略の説明、黙秘権等、被疑者の権利の説明、弁護人を依頼できること、資力がない場合でも被疑者援助制度を利用できることなどを説明いたします。また、被疑者本人からは、家族、職場への連絡等を依頼されることがございます。
弁護を依頼されれば、特別の事情がない限り受任することになっております。受任は、私選弁護と被疑者援助制度による受任とに分かれます。
被疑者援助制度は、被疑者に弁護人選任の意思があって、資力がない場合に法律扶助協会が弁護士費用を援助する制度であります。被疑者援助制度については、当番弁護士が接見内容を記載した報告書に資力要件を記載して、法律扶助協会の審査を受けることになりますが、特別の事情のない限りは援助が認められているのが実情でございます。
援助事件の弁護士費用は、法律扶助協会の支部で若干金額は異なりますが、6万円から13万円の範囲内で費用が援助されます。
そのうち、後に触れます日弁連の当番弁護士緊急財政基金から3万円が補助され、法律扶助協会が3万円、残りは各単位弁護士会が法律扶助協会支部に援助をしているという内訳になっております。
接見しても受任に至らなかった場合には、当番弁護士に接見日当が支払われます。これについては、ほとんど1万円としている会が多いように思われます。これについても、日弁連の当番弁護士財政基金から5,000 円が補助されます。
また、初回接見に際して、被疑者が外国人であるため、通訳を要した場合には、弁護士会が立て替えた通訳費用の実費の一部5,000 円を基金が補助しております。
被疑者援助制度により受任した当番弁護士は、起訴前弁護活動を行い、起訴された場合には、裁判所との協定によりいったん弁護人を辞任した上、国選弁護人として選任され、以後国選弁護人としての活動を行うことになります。
2001年の受任件数は、日弁連資料2-6を見ていただきますと分かりますように、9,684 件、受任率は22パーセントでございます。
このうち、先程申し上げました被疑者援助件数は5,901 件に上っておりまして、受任件数9,684 件のうち60.9パーセントを占めております。
そのほかに、少年保護事件附添扶助件数が2,282 件になっております。
以上、当番弁護士制度、被疑者援助制度の概要について御説明申し上げましたが、今日の到達点も決して自動的に到達したわけではなくて、刑事弁護センターや各弁護士会の血のにじむような努力の結果到達したものと認識しております。
第1に、当番弁護士登録率でありますが、この10年間で見ますと、1992年は4,956 人で、登録率は全体の34パーセントでありましたが、2001年は8,090 人で44パーセント、登録数で約3,000 人、登録率で10ポイントの増加になっております。
これは、各地で毎年当番弁護士の登録を呼び掛け、特に新しく入会した弁護士に対しては研修等を通じて登録するようにそれぞれの工夫がなされたり、人数の少ない単位弁護士会では会員全員が担当するといった工夫の結果、このような数値に達したものであります。
第2に、全地域実施についても、弁護士偏在地域を抱えている弁護士会では、長時間掛けて接見せざるを得ない状況の下で、まさに献身的な活動によって実施されているわけであります。
また、弁護士偏在問題の解消のために、この数年日弁連は、公設弁護人事務所を偏在地域に設置しております。現在9か所に設置されております。
この日弁連の公設弁護人事務所は、民事事件も含めてあらゆる事件に対応するものでありまして、刑事専門の事務所ではありませんが、当番弁護士制度の偏在問題を解決する一つの方向性を示すもので、今後刑事専門の事務所へ発展する要素を含んでいると理解しております。
第3に、逮捕時における接見についても、率はほぼ17パーセント台で推移しておりますが、件数は、1993年が1,495 件でありましたのに対して、2001年には7,616 件と増加しており、全体の受付件数の伸びに比例して増加しております。
これは、当番弁護士制度が広く認識されるに至ったこと、先に述べた逮捕時に当番弁護士を派遣する委員会派遣制度によるところが大きいと考えられます。
第4に、受任件数、受任率についても、受任件数自体は大幅に増加しており、受任率も受付件数の大幅増加と対比すれば、順調な推移を示していると言ってよいのではないかと思います。
これも受任義務を設けていたり、また受任義務を設けていない弁護士会でも議論の積み重ねによって積極的に受任しようという姿勢が浸透してきたこと、受任義務のある委員会派遣制度の拡大によるところが大きいと思われます。
以上、総括してみますと、当番弁護士制度は、今後も更なる努力と工夫によってより発展し得るものであり、そこに公的弁護制度を支える基本的な基盤が存在すると言ってよいのではないかと思います。
最後に当番弁護士制度の財政について少し御説明します。
発足当時は、各弁護士会、法律扶助協会の自主財源で運営してきましたが、出動件数、被疑者援助件数の増加に伴い、それだけでは財政的に困難になったことから、日弁連に平成7年9月当番弁護士等緊急財政基金が設けられました。全国の会員が特別会費として会費を負担し、財政的に援助をしていくシステムでございます。特別会費は、当初1,500 円でありましたが、平成11年4月からは2,200 円、平成13年8月からは2,800 円、本年4月からは4,200 円に増額されておりますが、今後も受付件数等の増加に伴って会費の増額が予想されております。
ちなみに、財政基金のこれまでの総支出額を申し上げますと、26億5,098 万9,742 円に上っており、このうち法律扶助協会本部に対する補助金は、総額で8億6,008 万円に上っております。
なお、平成12年度における接見費用、通訳費用、被疑者援助、少年付添の実施総額と日弁連、各単位弁護士会、法律扶助協会の負担額について触れますと、実施総額は9億4,486 万9,591 円、このうち日弁連が5億5,989 万4,205 円、各単位弁護士会の合計が1億8,493 万2,585 円、法律扶助協会が2億4万2,801 円を負担しております。
以上から、日弁連が財政的にも当番弁護士制度をいかに負担しているか御理解いただけるかと思います。
次に、国選弁護人につきまして、国選弁護人の確保、推薦の方法について御説明申し上げます。
日弁連資料2-9にまとめてございますが、これは、1999年3月に行いました日弁連の刑事弁護センターのアンケートの結果を適宜修正して作成したものでありまして、極めて大まかな分類でございまして、現在調査中であります。今後、より正確な資料として提出する必要があるというふうに考えております。
まず、日弁連資料2-9によりますと、国選弁護人を推薦する方式としては、大まかに言いますと4つに分かれております。
1つは「(1)裁判所が期日を指定しないで弁護士会に推薦依頼する方式」でございます。(1)を図式化したものが、資料2-10のチャートで書きました「パターン(1):期日未指定・名簿推薦方式」といわれるものでございます。裁判所が第1回期日を指定しないで弁護士会に推薦依頼し、登録名簿に従って弁護人が決定され、弁護人が書記官と第1回期日を打ち合わせる方式でございます。この方式が取られているのが、(1)の右側に書いてある弁護士会でございます。
2-9の「(2)裁判所が期日を指定した上で弁護士会に推薦依頼する方式」には、2-10のチャート図のパターン(2-1)(2-2)が該当いたします。
パターン(2-1)は、弁護士会は登録名簿に基づき、公判期日の当番の会員を推薦する方式であります。
パターン(2-2)は、弁護士会が登録名簿に基づき推薦する方式ですが、2つに分かれまして、このうちパターン(2-2)の1は、受任希望会員の登録名簿の中から、弁護士会事務局が順次受任可能な会員を探し出して推薦する方式であります。また、パターン(2-2)の2は、受任希望会員が名簿に登録の上、弁護士会事務局が名簿順に会員に呼び出しの連絡をし、会員は弁護士会に赴いて受任可能な事件を選択する方式であります。
2-9の「(3)弁護士会が登録者名簿を作成して裁判所に提出し、裁判所が直接選任する方式」は、2-10のパターン(3)に当たります。
2-9の「(4)その他(弁護士名簿に基づき裁判所が任命する方式を含む)」は、裁判所が直接任命する形になっております。
それぞれの方式を採る弁護士会名が右側に記載されておりますので、御覧いただきたいと思います。
以上から、国選弁護人の確保と推薦につきましては、各単位会の実情や歴史的な経緯から、弁護士会の関与の仕方や選任の方法が異なっておりますけれども、順調に確保推薦が行われているものと理解しております。
なお、通常の推薦手続によることが困難又は不相当な事件、いわゆる特別案件につきましては、昭和54年3月30日の法曹三者協議会の協議結果に基づき、各弁護士会で特別案件受任者名簿を作成し、責任を持って推薦をするという取り決めになっておりまして、現在ではこの方式が確立しております。
現に、資料2-11を御覧いただきますと、それぞれの単位弁護士会で特別案件の名簿ができており、弁護人が推薦されております。
以上が国選弁護人の確保、推薦の方式についてでございます。
4番目に、公的弁護制度創設に当たりまして、日弁連の基本的な考えを簡単に説明させていただければ幸いでございます。
今後、本検討会におきましては、各論点ごとに鋭意検討、討議がなされ、その際に日弁連の考えを説明する機会も与えていただけるものと考えておりますが、本日は、制度創設に当たっての基本的な視点のみを説明させていただきたいというふうに考えております。
第1点は、いうまでもなく、公的弁護制度は、弁護活動の自主性、独立性を保障する制度でなければならないという点でございます。そのためには、運営主体が政府から独立していなければならないこと、弁護人の選任は、弁護士会の推薦に基づいて行われるべきであり、そのための推薦のシステムを明確化すること、他方、弁護士会は弁護士の量と質の確保に努める責務を有し、これを実行すること、弁護人の解任に当たっても、弁護士会の関与が検討されるべきだと思います。個々の弁護活動の自主性、独立性が確保され、これに運営主体が介入してはならないことが求められると思います。
第2点は、充実した弁護体制を提供するために、公的弁護制度に要する財政支出が国の責務であり、十分な財政措置が講じられるべきことを明確にした上で、報酬制度の改革により適正な水準の弁護報酬が保障されるべきと考えております。
第3に、被疑者となった少年に対しては、被疑者援助制度により弁護人の援助が行われておりますが、家裁送致後の少年については、付添人の制度が認められておりません。被疑者段階での公的弁護制度と併せて、少年について付添人制度を実現すべきであると考えます。
最後に、公的弁護制度を実現し、その制度を現実に担うのは、我々弁護士でございます。すべての地域で、すべての事件を対象として、被疑者段階からの弁護活動を担っていくことは、先程御説明いたしました現在の当番弁護士制度の実績をはるかに超える活動を求められることになると考えております。しかし、当番弁護士制度の10年の実績を基に、公的弁護制度実現を長年にわたって求め続けてきた日弁連・弁護士は、様々な工夫と、これまで以上の努力を傾注して公的弁護制度を担い、運営を軌道に乗せる責任があると自覚しております。
かつて、1949年刑事訴訟法制定の際、弁護士・弁護士会は大きな宿題を背負うことになりました。刑事訴訟法第3次案までは、被疑者にも国選弁護制度が認められておりました。しかし、第4次案以降は、被告人国選に限定されることになったわけでありますが、その理由の一つが弁護士の絶対的不足等、対応能力にあったことが指摘されております。
しかし、今や私たちは、8,000 人を超える当番弁護士と、10年にわたる活動の実績を有しております。多くの市民の支持の下に活動をしてきたという自負も持ってございます。長年にわたる宿題を清算するため、日弁連は、この実績に確信を持ち、制度実現に向けて最大限の努力を尽くすことを表明して、日弁連の説明とさせていただきます。
長時間ありがとうございました。
□ ありがとうございました。ただいまの御説明に関して質問がございましたらどうぞ。
○ 本当に今までの当番弁護士制度の実績には、まず感謝し敬意を表したいと思います。
接見をされた当番弁護士の方が、その後起訴をされた被告人の国選弁護人と一致すると考えて大体よろしいのでしょうか。それとも諸事情で、そうならないケースもあるかと思うのですが、その比率というのはどういうふうに認識されているのでしょうか。
△ 原則としては、まず、当番弁護士で接見して、私選でいく場合がございます。これは、被疑者との契約関係で私選として活動する。資力がないので、先程申し上げました法律扶助協会の被疑者援助制度を申請された場合には、被疑者援助制度に基づく弁護人として弁護活動をする。その場合には、起訴されますと、いったん辞任をいたしまして、原則として国選弁護人として、その後の国選弁護人の活動をするというシステムになっております。
○ ということは、接見された弁護士の方が、起訴後も弁護をされるケースがほとんどだと認識してよろしいですか。
△ この中で先程申し上げました、出動いたしまして接見した数が4万7,143 件でありますけれども、そのうち私選と被疑者援助制度で受任をして弁護活動をした数が、9,684 件で22パーセントですから、約78パーセントが接見だけで終わっています。
○ この接見だけで終わっている場合は、必ずしも起訴された場合に国選弁護人になるわけではありません。
○ 要するに、本人が望んだ場合、法律扶助協会の資金であれ、何であれ、同一の方が被疑者段階から被告人になっても弁護されているかどうかを確認したかったのです。
△ それは一致するわけです。
○ はい、ほとんど当番弁護士の方が最後までかかわってくださるということで。
△ そうです。そういうシステムです。
○ ありがとうございました。
□ 正確を期すために申し添えますと、法律扶助協会による援助の場合も、私選弁護であるのです。費用を自分のポケットから出すのではなく、援助してもらうというところに違いがあるだけです。
初回接見をして、そのままその弁護士にいずれかの費用で弁護を依頼するのが二十数パーセントであるということですが、残りについてはどうなっているかは、その段階では分からないということですか。
△ 説明をしたり、家族の連絡などで受任しないで終わっていると。
□ ほかの弁護士さんに頼むこともあり得ますね。その辺は分からないということでしょうか。
△ そうです。
○ 同じように数字のことでお聞きしたい点があります。御説明に出ましたとおり、受付件数はどんどん増加していますし、それに伴って受任件数も増加しているわけですけれども、例えば2-6の表を見ますと、この数年間で受け付けはしたけれども、受任をした方の率というのは、大体二十数パーセントで同じぐらいなのです。
初回接見をして、弁護士からいろいろな話を聞いた上で、しかし受任をするところまでいくのは2割強であって、その点は余り変わっていないということになります。そこで、どういう理由で弁護士は頼まないという方が7割強いらっしゃるのか、その理由というのは様々だとは思いますけれども、その辺りの大まかな理由というのは分かりますか。
△ 多分、裁判所から説明を受けて、自分の手続がこれからどうなるだろうかとか見通しについて説明を受けたいが、説明を受ければ自分の罪名、例えば窃盗だとか、常習累犯窃盗といったようなことで、後は自分は国選でやってもらうからいいですとか、費用の点もありますからいいですというような方もおられると思います。
中には、ともかく家族に自分がこういうふうに逮捕されているとか、勾留されているということを連絡して欲しいとか、そういう方もおります。ですから、捕まっている被疑者の方が、もともと受任を前提にしないで接見を求めるという場合と、これは弁護士の方の事情かと思いますけれども、本来は受任すべきだというふうに刑事弁護センターでは全国の当番弁護士に義務付けてはいるのですが、弁護士の方で被疑者弁護をやるだけの必要性がないのではないかというようなことで、実際は受任を自主規制してしまうというような要素も中にはあるのではないかというふうに思われます。
□ ちょっと確認なのですけれども、日弁連の方で設けておられるのは、正確に言いますと、「公設弁護事務所」ですね。「公設弁護人」事務所ではなくて、「弁護」事務所ですね。ちょっと紛らわしいものですから。
今の法律扶助協会による援助制度なのですけれども、制度としては、援助を受けた被疑者はお金を返さないといけないわけですね。
△ 建前ではそうなのですが、現実には回収というのはほとんどされておりません。
□ それに関して、法律扶助協会の援助を求めたらほとんど援助してもらえているということなのですけれども、民事の場合には、扶助を受けるには要件があって、審査されると思うのですが、刑事の場合はそういうことは実質的には行われていないということなのですか。
△ 一応、審査をするのですが、民事のように、例えば資力についての証明書を出せとか、そういうことをやっていますと時間的にとても間に合いませんので、一応本人から収入の状況などを聞いて、当番弁護士の報告書でその記載をさせて、実際は援助しているというのが実情です。
□ あと1点、初回接見のときに外国人の被疑者の場合には通訳者を連れて行くことがありますね。その場合に、通訳者への報酬と弁護人の報酬は合わせて1万円ということなのでしょうか。その内訳はどうなっているのでしょうか。
△ 通訳費用は、それぞれの単位弁護士会で決めておりまして、弁護士の接見日当1万円とは別個に支払われております。会によってはほとんどボランティアで通訳を無料でお願いしていたり、本当に交通費程度の支払しかできていないようなところもございます。
□ 会によって違うので、どれぐらい必要かというところは必ずしも分からないと・・・。
△ はい。
□ 分かりました。
△ 通訳協力会といったようなものを組織している会もございますので、そういうところではいくら払っているかというのは調査可能でございます。資料があると思います。
○ 先程御質問がありましたので、財政問題についての資料をお出しいただけるのかもしれないのですが、今の範囲で先程座長から質問のあったところとの関係なのですが、被疑者援助での受任ということになったときに、現在ではさほどそういうことがないということなのかもしれませんが、前に少しお聞きした限りでは財政問題が絡んでいる部分があって受任に至らない、つまり各単位弁護士会のところで自主規制と言うと、少し言い過ぎかもしれませんけれども、財政事情との兼ね合いで受任に消極的というか受任をちゅうちょされるようなことがないわけではないと伺ったことがあるのですが、その点どういう状況にあるのか、もし把握しておられることがあればというのが1点です。
もう一つは、先程の御説明の中で、総計で26億円という数字が示されてあったかと思いますが、あれは各年ではなく、これまでの累計ということでしょうか。
△ 財政基金が平成7年にできてから、13年までの累計、総額でございます。
○ そうですか。では1点目の方を。
△ 確かに当番弁護士が受任しない理由をいろいろ聴いてみますと、○○委員がおっしゃるような財政状況を反映して、受任を抑制するという要素も一部にはあったのではないかというふうに思われます。
○ その場合、被疑者援助制度については、大体平均的に1件当たりいくら支出されていることになっているのでしょうか。
△ 最低が6万円です。一番多いところでは13万円というふうに聞いております。ただ、13万円は、多分単位会の数で言いますと、1つか2つで、平均的には8万円が多いと思います。8万円のうち、日弁連の財政基金からは3万円、法律扶助協会からは3万円、残りの2万円を各単位弁護士会が負担しているというのが多いと思います。
○ 先程の申込時期ですが、警察段階がパーセンテージとしてはさほど動いていないけれども、件数としてはもちろん増えてきているということでの御指摘があったのですけれども、ここでの受付件数の増加に向けた何か御努力といいますか、警察によっては例えばポスターを張るというようなことが行われているとか、いろいろと警察サイドでも御配慮いただいているというようなお話があるようですけれども、それにしてみてもまだパーセンテージでは必ずしも十分な伸びではないという感じもするのですが、弁護士側の対応の能力の問題としていろいろと問題があるのか、それとも警察との様々な交渉の経過でそういうことになっているのか、その辺の経緯について何か御指摘いただけることがあれば。
△ 当番弁護士を発足させた当時は、各警察署にお願いして、ポスターを掲示させていただいたり、パンフレットとして当番弁護士制度を説明したものを置いていただいたりしたのですが、最近はそういうことはほとんどしていないわけでして、特別の体制は取っていないのですけれども、数としては増えてきている。多分、これは当番弁護士制度が10年経ってある程度周知されてきたのかなということでございます。
○ 確認だけすみません。そのときに、警察段階での弁護人選任権についての告知のときに、当番弁護士のことが告知されているかどうかということについて御確認されているということはありますか。
△ 最初の段階で、ポスターとかチラシを置きましたので、それに基づいて各留置事務官の方で説明をしたりしているというのは聞いております。
□ もう一つ説明が予定されていますので、このぐらいでよろしいですか。また、必要に応じて御説明をお願いすることもあろうかと思います。
(5) 最高裁からの説明
□ それでは、次に、最高裁から御説明をお願いしたいと思います。
▲ 刑事局第一課長の○○でございます。最高裁から、説明資料として最高裁2-1ないし2-6までお手元にいっているかと存じます。
そのうち2-1は、国選弁護人制度の憲法その他の関連規定を簡単にまとめたものでございます。
2-2は、国選弁護人の選任手続に関しまして、①は「公訴の提起があった場合に被告人に弁護人がいないとき」には、どのようになるだろうかということをチャートにまとめたものでございます。②は、今回の議論とは直接は関係ないのかもしれませんが、弁護人が選任されていても、公判期日に出頭しない場合にどのような仕組みになっているかということを、これとの関連でまとめたものでございます。
2-1や2-2を適宜御覧いただきながら、御説明をさせていただきたいと存じます。
まず、国選弁護人の選任手続と、その実情ということで、どのような場合に選任するかということであります。
裁判所は、公訴の提起があった場合には、被告人に弁護人がいないときは、遅滞なく、被告人に対して一定の期間を定めて、必要的弁護事件については弁護人を選任するかどうかを、その他の事件については国選弁護人の選任を請求するかどうかを確かめるということになっております。これは、刑訴規則の178 条1項、2項に規定されているわけでございます。
そこで、具体的には公訴の提起がございますと、裁判所は被告人に対して起訴状の謄本を送達することになっているのですが、その際に書記官が被告人に対し、国選弁護人の選任を請求するかどうかを尋ねる内容の書面を起訴状の謄本に同封しておきまして、これに対する回答書も同封されているのですが、それを裁判所の方に返送していただくということをしております。
資料2-3、資料2-4、資料2-5を御覧いだたきたいのですが、これはあくまでもサンプルでございまして、全国統一でこれを使っているわけではないのですが、大体こういうものが使われていると思っていただいて結構でございます。
必要的弁護事件の場合には、資料2-3と資料2-5を、任意的弁護事件の場合には、資料2-4と資料2-5を同封して、資料2-5にいろいろと書いてもらって裁判所に返してもらうと、このようにしているわけでございます。
被告人から国選弁護人の請求がありましたら、裁判所書記官は選任手続に入ることになります。
もちろん、このほかにも被告人の請求がないまま選任手続に入る場合がございまして、具体的には、1つは必要的弁護事件の場合でございますが、私選弁護人を選任するという回答があっても一定期間内に選任がない場合は、必要的弁護事件では、弁護人がいなければそもそも公判期日を開くことができないため、弁護人が選任されないときには、被告人の意思にかかわらず、必ず国選弁護人を選任することになります。
任意的弁護事件の場合でも、例えば被告人が未成年であるときとか、あるいは70歳以上であるときなどといった一定の場合で裁判所が必要と認める場合には、被告人から請求がなくても、国選弁護人選任の手続に入ることがございます。
では、具体的にどのようにしているのかということになりますが、以下では、受訴裁判所という言い方をします。これは、個別の事件を現に担当することになった裁判所という意味でございますが、この受訴裁判所が特定の弁護士を特定の事件の国選弁護人として選任するということになっております。これを国選弁護人選任命令と通常呼んでおります。
それでは、具体的な人選をどのようにして行うかでございますが、これにつきましては、最高裁と日弁連との協議の結果、通常の事件につきましては、弁護士会に一任するということになっております。
これは、昭和23年6月9日付け事務総長通達で書かれているところでございます。
刑訴規則29条1項で、国選弁護人は原則として裁判所の所在地にある弁護士の中から選任しなければならないということになっているものですから、受訴裁判所が個々の事件ごとに所在地にある単位弁護士会に国選弁護人を推薦するように依頼いたしまして、これに応じて弁護士会の方から特定の弁護士を推薦してくると、裁判所がその弁護士を国選弁護人に選任するという方法が一般的でございます。
具体的に申しますと、裁判所から弁護士会に対して推薦してくださいという依頼をいたします。そうすると、各弁護士会は、あらかじめ作成された名簿に基づいて人選をした上に、この人を推薦しますという形で推薦してくるわけでございます。そして裁判所がこの弁護士を国選弁護人に選任するということになるわけでございます。
これが、大多数の庁で行われている扱いでございますが、庁によっては、裁判所があらかじめ弁護士会から候補者名簿の送付を受けまして、裁判所が候補者名簿に基づいて選任するというやり方を行っているところもございますし、さらにそのような名簿もなく、裁判所が個別の事件ごとに直接個々の弁護士に当たりまして、折衝して国選弁護人に選任するという扱いが行われている庁もあるようでございます。
後者の扱いがどのようにしてなされるようになったかということについて少し調べてみたのですが、かなり以前から行われていることでございまして、結論的にははっきりとした経緯は分かりませんでした。
なお、日弁連の資料2-9の国選弁護人受任システムという一覧表につきましては、私どもも調査をしたのですが、少し細かいところまで間に合わなかったものですから、本日は持ってまいりませんでしたが、大体そのようなところだろうと思います。ただ、弁護士会の御説明のとおり、若干前のデータのようですし、こちらももう少し調べまして、よく調査した上でまた後日提出させていただきたいと存じます。
なお、通常の推薦手続によることが困難、あるいは不相当な事件は、先程御説明がありましたが、特別案件と呼ばれております。
これについては、昭和54年3月に開催された法曹三者協議会における協議の結果、差し当たって法曹三者において採る措置として、弁護士会が裁判所から特別案件について国選弁護人の推薦依頼を受けたときには、責任を持って速やかに選任する。そのため、弁護士会は特別案件の国選弁護人を受任する意思がある弁護士を登載した受任候補者名簿を作成するということで意見の一致を見たところでございます。
この協議結果を受けて、現在までにほとんどの単位弁護士会において、特別案件の受任候補者名簿が作成されて、この名簿によって弁護士の推薦が行われていると承知しているところでございます。
それでは、国選弁護人が推薦されるまでにどのぐらいの時間が掛かるのかということでございます。選任手続の所要時間について、全国の地裁本庁に照会した結果を簡単に御紹介申し上げます。
ただ、この調査は、個別の事件ごとに現に掛かった日数を一件一件追跡したものではなく、各庁に対して平均的な事件で通常の事務処理に大体どのくらいの時間が掛かっているかということを尋ねるという形で行ったものでございます。
したがいまして、あくまで大まかな傾向としてお聞きいただきたいと存じます。
まず、先程ございましたが、弁護士会の推薦を待って選任している庁では、被告人に弁護人の選任照会をして回答を受けるまで6日程度、回答を受けてから、弁護士会に推薦を依頼するまで1日あるいは2日程度、弁護士会に推薦依頼をしてから、弁護人が選任されるまで5日程度、合計13日ぐらいで手続が完了する。すなわち、最初の選任照会から選任まで13日程度で終わっているというのが、大体全国の平均的な扱いでございました。
ただ、これは平均的なものでして、庁によっては20日を超えるという庁もございました。
最後の、弁護士会に推薦依頼をしてから、弁護人が選任されるまで、どのくらい掛かっているかということでございますが、先程5日程度が平均と申し上げましたけれども、実際に細かく見ておりますと、実は庁によってかなりばらつきがございまして、1~2日、3日以内で推薦されている庁が半数近くございます。ただ、逆に1週間を超えるようなかなり長い庁もございまして、それが全体として平均を押し上げて5日ぐらいになっております。
以上は、弁護士会から推薦を受けている庁ですが、推薦手続がない庁、すなわち、裁判所が国選弁護人を弁護士会から提出を受けた推薦候補者名簿に基づいて選任したり、あるいはそのような名簿がなく直接選任したりしているという庁の場合には、推薦がないわけでございます。
推薦がない場合では、被告人から回答があって実際の選任までに至る日数というのは、おおよそ2~3日でして、全体でも9日ないし10日ぐらいで選任されているようでございます。
さらに、国選弁護人の選任が滞った事例はあるのかということが問題になるかもしれませんが、このように多少のばらつきはございますけれども、大多数の事件では円滑に選任が行われております。一部に選任が滞る事件というのがないわけではないようでございます。ただ、個別に報告を受けているわけではございませんので、件数など詳細を承知しているわけではございませんが、例えば組織犯罪にかかわる一部の事件でございますとか、あるいは被告人が弁護人あるいは裁判所に対して反感を抱いて、弁護人の選任・解任を繰り返す、あるいは選任・解任を求めるということを繰り返すなど弁護に困難を伴う事件の場合に通常以上に選任に時間が掛かるという場合があるようでございます。
また、社会の耳目を集めた事件が起訴されたような場合には、推薦に伴いまして、受訴裁判所と単位弁護士会との間で、選任すべき弁護人の数などについて意見調整がされることがあります。この意見調整に時間が掛かるということになると、結果的に推薦がそれまで掛かるというようなこともままあるように聞いております。
最後に、先程弁護士会から御紹介がありました、当番弁護士制度について裁判所がどうしているのかということについて簡単に触れさせていただきます。平成3年の後半以降、当番弁護士制度を実施しております弁護士会から、対応する地裁に対して、被疑者に当番弁護士制度の内容を教示する措置を取って欲しいという要望が出されておりまして、その年の12月には、日弁連から最高裁に対して正式に同様の協力要請がございました。
最高裁といたしましても、裁判所の中立・公正に誤解を招かない限度で協力したいと考えまして、日弁連等と協議を行った上、平成4年3月から全国の地裁に対し、対応する単位弁護士会において被疑者の接見申出に対し、当番弁護士が迅速かつ確実に対応できる態勢が整備された場合には、勾留質問控室等に当番弁護士制度の説明文を掲示する方向で、弁護士会との協議に応じるようにとの書簡を発出したわけでございます。
その結果、遅くとも平成7年12月までに全国50地裁すべてにおいて、勾留質問控室等における当番弁護士制度の説明文の掲示が実施されているところでございます。
資料・最高裁2-6でございますが、先程と同様に、これも一つのサンプルでございまして、一言一句同じように全国で使われているわけではございませんが、おおむねこのようなものが控え室の方に掲示され、あるいはリーフレットにはさまれていつでも見られる状態になっております。
なお、それ以外に、現に勾留質問が行われる際に、個々の裁判官が内容を告知するかどうかについては、個々の裁判官の判断に任されておりますので、裁判官が必要と認めれば、当番弁護士制度について告知が行われているものと考えております。
最後に1点だけ補足がございます。先程○○委員から御質問があった中で、接見した当番弁護士が被疑者の弁護人に選任されたときに、起訴後自動的にその人が国選弁護人に選任されるのかどうかという御質問がございました。先程の御説明のとおりですが、1点だけ補足させていただきますと、被疑者段階で弁護士が選任されているのは、あくまで私選でございまして、同時にその人が必ず国選弁護人になるかというと、なる場合というのは、先程の被疑者弁護援助制度に乗ったものでございます。それに乗らないものについては、今、御説明申し上げましたように、改めて裁判所の方から各単位弁護士会に対して推薦してくださいという国選弁護人の推薦依頼をいたしております。したがいまして、結果的にそれがどうなるかということについては、必ずしも同じ弁護士が選任されるわけではないと聞いております。以上でございます。
□ ありがとうございました。では、御質問がございましたらどうぞ。
○ 先程の○○委員の日弁連への質問の回答に少し補足させていただきますと、警察段階での弁護人選任の告知でこれこれの弁護士を依頼したいとなれば、当該弁護士の方に警察側から連絡しますし、弁護人選任の意思はあるけれども、特に当てがないといった場合には、単位弁護士会へ連絡をさせていただく。そこから後が弁護士会での対応で当番弁護士制度とリンクしてくるというのが最近の一般的な都道府県警の流れだろうと思います。
かつては、それぞれの当番弁護士に連絡してくれということで、警察としては連絡がつかなかったときの危険負担を取り得ないということでもめたこともございますけれども、最近は弁護士会の方で、土日の場合でも留守番電話や転送電話等々で対応していただくことになっていますので、大体連絡はつくようになっておるようです。
○ 今、最高裁から御説明いただいたことの関係ですが、裁判所の場合には、当番弁護士制度というのがあるということも裁判官によっては御説明になっていらっしゃるというお話も伺ったことがあるのですが、警察の方では告知の際にそういう制度があるということまではおっしゃっていない。つまり、弁護士を頼む意思があるのかどうかという確認をされて、弁護士を個々には知らないけれども、弁護士は頼みたいんだという意思があれば、今おっしゃったように弁護士会に連絡をされるということをやって、当番弁護士制度というものがあるということの説明は何かされているのでしょうか。
○ 個々の調べ官次第だと思うのですけれども、一般的には制度としてはしていないのだろうと思います。
□ 今、告知とおっしゃったのは、逮捕後警察に引致された際に行われる弁護人選任権の告知のことですね。
○ 逮捕時に行われます。
○ すみません。1点だけ質問よろしいでしょうか。
□ どうぞ。
○ 先程選任までの時間のところで、調査の結果について御説明がございましたけれども、その際に推薦に基づく場合について、おおむね半数程度は1日か3日ぐらいで回答があって選任できるというお話でしたが、少し長引くことになっているケースというのは、どういう理由かということは、最高裁の方で御承知のことがございますでしょうか。むしろ、弁護士会側が必ずしも十分な対応体制が取れていないということなのか、もし弁護士会の方も御承知であれば教えていただければと思いますが、裁判所の方で何か把握していらっしゃることがあればお願いします。
▲ 申し訳ございません。理由までは聞いておりません。
○ 地理的にどこか特定はできるのですか。
▲ はい、特定はできます。
○ 一定の地域では、いつもそういうふうに長く掛かるのですか。
▲ と申しますより、本庁単位で、その庁の通常のルーティンでどのような日数が掛かっているかという形で尋ねましたものですから、これがどういう理由によるものかというところまでは調べていないのです。
□ 何らかの統計的なデータに基づくというよりは、経験則みたいなものに基づいてお答えになっているということですね。
○ 私の個人的な理解では、先程日弁連の方から説明のあったように、弁護士が自分で選ぶのか、弁護士会の方で電話して順番にやるのか、その辺りのやり方によっても若干違って、弁護士が選ぶ方だと選ばない人がいる事件が出てくると、そういうものがあるように思います。
○ 弁護士会でも滞留事案というのを随分気にしておりまして、例えば高裁事件などの場合に、控訴趣意書の提出期限が迫っているために受任を避けられて残ってしまうとか、地裁事件で公判期日が迫っているとかという事情があって受け手がいないケースがありますけれども、弁護士会としても滞留事案ということには非常に神経質になって、各単位会ごとにそれをなくそうと努力しておるところです。
□ ○○委員にお聞きした方がいいのかもしれませんが、私選と国選で公判期日の入れ方に違いがあるかどうかです。今の公判期日の入れ方というのは、弁護人のスケジュールとの調整ということが大きな要因になっていると思うのですが、私選と国選とで差があるのか、それとも同じなのかということです。
もう一つは、さっき特別案件と言われましたけれども、それがどのくらいの数あるのかということと、○○委員が滞留案件に言及されましたけれども、それはどのくらいの数あるのかということなのですが。
○ 私選と国選の違いというのは、まず、第1回期日の指定の仕方については、先程日弁連から説明がありました選任の方法、最初に裁判所の方で第1回期日を指定して国選の推薦依頼をするのか、まず推薦依頼して、それから期日を入れるかによって違ってきて、後者の方であれば私選弁護人の期日の指定と同じだと思います。
最初の方法であれば、裁判所側の意向に応じられる時間のある方が推薦されてきますので、そういう意味では非常に早く入る。
□ 少なくとも1回目はということですね。その後は同じですか。
○ あとはほとんど変わらない。そんなに制度的に、国選だから私選だから入りにくいという違いは、2回目以降はないだろうと思います。
□ 分かりました。
○ 特別案件の方は、今、日弁連の方から数字が資料2-12ということで。
□ すみません。資料をよく見るべきでした。失礼しました。
○ 平成13年度の登録者数と推薦数が出ております。大体これぐらいの数になっています。
○ 全体的には、非常に少ないと思っているのですが、この表を見ると、大阪が25件と突出しておりまして、これがどういうことなのか、私自身個人的には分からない。
○ 裁判所の理解と弁護士会の理解とは少し違うところがございまして、処遇困難な被告人ということで、弁護士会が独自で決めている場合もありますので、その違いがあるかもしれません。
□ これは、推薦した弁護人の数で、必ずしも事件数ではないのですね。
○ そうです。
□ 複数の弁護人を推薦することもあるわけでしょう。
○ 事件数か弁護人の数か、あわてて資料を作ったものですから区別は困難です。
□ 滞留というのはどのくらいあるのですか。
○ その点については具体的な数字は、今持ち合わせておりません。それは各単位会でないと分からないものですから。
□ 例えば大阪ですとどのくらいあるのですか。
○ それはごくわずかです。数件程度です。
□ どのくらいの期間、滞留するのですか。
○ 2週間くらい滞留するということで、裁判所からいろいろ御指摘を受けることがあります。
□ なるほど分かりました。
既に予定された時間を大幅に超えておりますので、今日はこのぐらいで終了したいと思いますが、よろしいでしょうか。
(6) 次回の予定
□ 次回は、6月25日午前10時30分からですが、先程お決めいただきましたように、被疑者に対する公的弁護制度の対象事件及び担い手である弁護士の確保方策ということを中心に御議論をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
予定の時間を大分超過しまして申し訳ありませんでした。ありがとうございました。