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公的弁護制度検討会(第3回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日 時

平成14年6月25日(火)10:30~13:00

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
井上正仁座長、池田修、浦功、大出良知、清原慶子、酒巻匡、髙井康行、土屋美明、中井憲治、平良木登規男、廣畑 史朗(敬称略)

(説明者)

河原昭文(日本弁護士連合会副会長)
今崎幸彦(最高裁判所事務総局刑事局第一課長)

(事務局)

山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、落合義和参事官

4 議 題

1. 被疑者に対する公的弁護制度の対象事件
2. 公的弁護制度の担い手である弁護士の確保方策
 ○ 全国的に充実した弁護活動を提供しうる態勢の整備
 ○ 連日的開廷による充実かつ集中した審理を実現するための弁護体制の整備

5 配布資料

資料3-1 第3回公的弁護制度検討会における論点(案)
資料3-2 勾留された被疑者の弁護人選任等の状況(平成13年)
資料3-3 各地裁(地検)本庁・支部及び簡裁(区検)の管轄区域における対象事件数等一覧

【日本弁護士連合会提出資料】
資料・日弁連3-1日本弁護士連合会報酬等基準規程(平成7年10月1日施行)抜粋
資料・日弁連3-2日弁連・各弁護士会報酬規程比較表(2002年6月1日現在)
資料・日弁連3-3刑事被疑者弁護援助制度の弁護費用支払基準(平成13年度)
資料・日弁連3-4当番弁護士が私選弁護人として受任する際の着手金・報酬金の基準(2002年6月1日現在)
資料・日弁連3-5日弁連報酬等基準規程と弁護報酬実態との比較 ー日本弁護士連合会「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査報告書」抜粋ー
資料・日弁連3-6私選弁護報酬の実態
資料・日弁連3-7-1被疑者国公選弁護制度発足時の対応能力についての調査について
資料・日弁連3-7-2第2次アンケート集計結果
資料・日弁連3-8国費による弁護制度のもとでの弁護態勢に関するシミュレーション

【最高裁判所提出資料】
資料・最高裁3-1地裁通常第一審の合議事件における弁護人が選任された人員(法定合議・裁定合議別)
資料・最高裁3-2国選弁護人標準報酬額の推移(地方裁判所),国選弁護人報酬予算額・支出実績額の推移
資料・最高裁3-3標準的事件における国選弁護人の報酬等について
資料・最高裁3-4-1国選弁護人選任方式集計表
資料・最高裁3-4-2国選弁護人事件における第1回公判期日指定時期集計表
資料・最高裁3-5通常第一審事件(地裁)における終局人員数・平均審理期間・平均開廷回数
資料・最高裁3-6通常第一審における開廷回数が10回以上である必要的弁護事件の庁別終局人員(地裁)
資料・最高裁3-7通常第一審における否認事件の開廷回数別終局人員(平成13年-地裁)

【法務省提出資料】
資料・法務省3-1 逮捕又は勾留された被疑事件の弁護人選任及び処分状況

【参考】
参考図 〔常勤弁護士・契約弁護士〕

6 議 事

 (1) 被疑者に対する公的弁護制度の対象事件

 事務局から資料3-1「第3回公的弁護制度検討会における論点(案)」についての説明があり、本検討項目については、同論点(案)記載の論点の整理に従って検討を進めつつ、他に取り上げるべき論点があれば臨機に対応することとされた。続いて、事務局及び日弁連から関連する配布資料の説明が行われた後、被疑者に対する公的弁護制度の対象事件に関する議論が行われた。

ア 選任請求権を与える事件の範囲

 主として、以下のような意見が述べられた。


  •  捜査段階で弁護人を付ける趣旨の一つは、適切な弁護活動が行われることにより、捜査・裁判の適正化に資するということであるので、捜査がずさんになりがちな軽微な事件も含める必要があり、身柄拘束事件全件を対象とし、罪名による限定は設けるべきではない。

  •  軽微な事件でも、被疑者にとっては重要なので、弁護人が必要だという要望があれば弁護人を付けられる制度とすべきである。将来的に弁護士人口が増えた状況の下で、長期的な視野で見たときの制度の理想的な姿を考えるのか、現状の弁護士数や偏在状況を前提にして考えるのかで話は違うので、将来的にこういう制度であるべきだという形を打ち出し、現状がそれに満たないならば、それに至る手段として、現状を踏まえてこういう制度を採るべきだという考え方をすべきである。

  •  身柄拘束事件を中心に考えることには賛成だが、それと同時に、弁護士会側の対応能力との兼ね合いから、どの程度限定するべきなのかという観点から議論すべきだと思う。

  •  身柄拘束されていない事件では、初めからすべての事件で被疑者だと分かっているわけではなく、いわゆる重要参考人と呼ばれる者のように、捜査のスクリーニングの段階で、次第に嫌疑が濃くなる者もあれば、途中で嫌疑が消える者もあるので、手続の明確性の観点から、身柄拘束されていない事件を対象事件とすることには問題がある。

  •  身柄拘束された被疑者すべてという意見もあったが、国費を投入して真に必要な部分について被疑者に弁護人を付ける制度を設計するのであるから、予算の問題や現在の弁護士の対応能力も考えて、一定の限定をすべきであろう。限定のやり方としては、現状の事件数なども考慮して制度を設計するという方向が妥当であろうし、そうしないと、作った制度が動かないということになるのではないか。現在の制度で、重大な事件を他の事件と区別している枠組みとしては、法定合議事件や必要的弁護事件があり、それらが切り分けの枠組みになると思う。

  •  罪名による限定は設けるべきではないとの意見を述べたが、何らかの限定は必要だと思う。税金を使うのであるから、金持ちに国費で弁護人を付けることには国民は納得しないと思うので、資力要件で限定するということは基本だと思う。また、弁護には信頼関係が必要となるので、本来私選が原則であるという前提を崩すべきではない。

  •  本来は、身柄を拘束されていない被疑者も含めて請求権を認められるべきだと思うが、憲法34条などの規定を見ても、身柄拘束された被疑者に限定することには、それなりの根拠があると考える。更にそれを限定するかどうかについては、公的弁護制度の担い手である弁護士会が身柄拘束された全被疑者を対象に考えていくという立場であるならば、更なる限定を考える必要はないのではないか。

  •  制度である以上、全国津々浦々で制度の趣旨どおり運用されなければならないことは当然の前提となるから、現時点での弁護士会の対応能力が厳しい状況にあることは直視して制度設計していかなければならない。それとともに、今回の改革の推進力の中心は裁判員制度による国民参加であり、これを機能させる上では、裁判の充実・迅速化が必要となり、公的弁護制度はそのための基盤をなすものであるから、少なくとも公的弁護制度の対象事件には、裁判員制度の対象事件が入っている必要があると思う。新たな制度を議論するに当たっては、制度の将来の姿という将来論と経過的な段階でどうするかを分けることが必要であるが、将来論を考えるときには、国民の目線に立って国民の理解と支持を得られるものとしなければならず、そのためには、公的弁護制度だけではなく、裁判員制度を含む今回の改革による国民負担の全容を考える必要があるとともに、今回の改革により国民が享受するメリットが何であるかを考えなければならない。マンパワーも財源も有限であり、これをいかにバランス良く使うかという観点から考えておかなければ、国民の側から見たら、偏った議論をしていることになるのではないか。公的弁護の規模やコストを考えるに当たっては、例えば、被害者側がリーガルサービスにアクセスすることを容易にすることなどについても併せて考えた上で結論を出したということを国民に示さなければ、国民の理解が得られないのではないか。

  •  費用や対応能力の面から対象事件を限定する必要があるのではないかという意見もあったが、基本的に身柄拘束された事件全体を対象とすべきである。財政的な問題については、刑事弁護に対する国民の理解を得ることが必要であるが、身柄拘束された被疑者に対し弁護の必要性があることは明らかであり、また、当番弁護士制度が始められ、現在でも弁護の依頼件数が増えていることも、その必要性を示していると思われ、その実情や中身が明確に示されれば、国民の理解を広げていくことも可能であるので、その意味でも、本検討会としては、刑事弁護の必要性やそれに対し国費を投入することの意味や必要性を積極的にアピールしていくべきだと思う。また、日弁連のシミュレーションは逮捕件数の75パーセントを想定しているが、現在の被告人の国選事件数や当番弁護士の実態を踏まえると、国選にならない部分もかなりあると思われ、対応能力を理由に直ちに対象事件を限定すべきであるということにはならないと思う。

  •  身柄拘束された被疑者に限定するということは理念的に適当だと思う。その上での現実的な対応という観点からは、地域的な弁護士の偏在が気になるところであり、弁護士の報酬だけでなく、地域的な偏在を解消することや刑事事件専門の弁護士を一定数確保することにも国費を用いるべきで、制度全体にかかわる国費の在り方についても考えなければならない。事件の範囲は、身柄拘束された事件としたとしても、資力要件以外の限定を設け、10年後にどのような制度とするかを見通しながら、段階的に範囲を広げていくという制度設計もあるだろうし、10年後と4年後とで格差があってはならないので、4年後に実現できる範囲で制度設計するということもあるであろう。

イ 職権による選任制度又は必要的選任制度の当否

 主として、以下のような意見が述べられた。

  •  基本的には、身柄拘束された被疑者に選任請求権を与える制度ができれば、弁護を不要だという者に弁護人を付ける必要はないと思う。特に助力を必要とする者に対し格別の配慮をするという意見書の趣旨に沿うようにするというのであれば、ごく限られた例外として考えればよい。

  •  職権による選任制度を導入するのであれば、公判段階の国選弁護人に関する刑事訴訟法37条の規定を前提に、そこから対象を減らす、又は増やすということを考えてはどうか。

  •  仮に被疑者に対する公的弁護の選任請求権を与える事件の範囲を、身柄事件のうち法定合議事件のような重大事件に限るなどの限定を付けるとすると、少年の身柄事件の場合には、窃盗や傷害、恐喝など成人とは違ったタイプの事件が多いなど、罪種の性質がかなり違ってくるので、その点を考えなければならないのではないか。

  •  司法制度改革審議会意見書では、弁護人の選任・解任を裁判官が行うとされているが、必要的選任については、少年などは要件が明確であるのに対し、障害者や助力を必要とする者という要件となると、裁判官には判断する資料がないので、必要的選任は不可能ではないか。

  •  刑事訴訟法37条各号に列挙された場合については、必要的に弁護人を付するものとすべきである。

  •  障害者については、障害の種別によって必要な配慮は違ってくるので、当該被疑者・被告人の障害の有無や裁判上の支障の有無に関する資料がなければ、裁判官が職権で判断することはできないであろうから、そのような資料が裁判官に提出される仕組みを運用上定める必要がある。また、司法制度改革審議会意見書のいう障害者に対する格別な配慮の中身が、弁護人を付けるというものなのか、裁判に必要なコミュニケーション能力を補助するなど公正な裁判を受けるための条件整備をすることなのかということは論点として残しておく必要があると思う。

  •  日弁連が以前作成した被疑者国選弁護制度試案では、法定合議事件、18歳未満の少年事件、否認事件の3つの範疇に入る事件については、必要的選任として、被疑者の請求がなくても弁護人を付けるべきだと提案していた。重大事件であっても、弁護人の選任を請求しないケースも多々あり、そうした範疇の事件については、必要的に弁護人を付けるということを考えておく必要があるのではないか。

  •  職権による選任制度については、選任の必要性をどのように判断するかが難しく、慎重に検討すべきであり、職権による選任制度以外の方法で格別な配慮が払えれば、それで足りるのではないか。必要的選任制度については、弁護人が選任されなければ捜査ができないというのでは捜査がストップしてしまうので、認めるべきではない。また、否認事件を必要的に選任するというのでは、否認をしょうようする制度を作るのかということとなり、国民の納得が得られないし、否認が何であるかという定義も不明であり、採り得ない。

 (2) 公的弁護制度の担い手である弁護士の確保方策

 事務局から資料3-1「第3回公的弁護制度検討会における論点(案)」記載の論点及び参考図〔常勤弁護士・契約弁護士〕についての説明があり、本検討項目については、同論点(案)記載の小論点を個別に議論するのではなく、それらの小論点を念頭に置きつつ、常勤弁護士又は契約弁護士等の制度設計全体についてそれぞれ検討を行うこととされた。続いて、最高裁から関連する配布資料の説明が行われた後、公的弁護制度の担い手である弁護士の確保方策に関する議論が行われた。

ア 常勤弁護士

 主として、以下のような意見が述べられた。

  •  常勤弁護士の位置付けとしては、大きく分けると、一般の弁護士が主となり、それでは足りない部分を常勤弁護士が担うという考え方と、常勤弁護士が主となり、それでは足りない部分を契約弁護士が担い、更に足りない部分を一般の弁護士が担うという考え方があり得ると思うが、理念的には、弁護の質の向上や連日的開廷への対応のため、後者の考え方を採るべきである。

  •  ある程度の公判回数が必要な事件で、早く審理を終えられるよう集中的に期日を入れたいといっても、弁護人から、この事件だけ担当していたのでは職業として成り立たないとして抵抗されたことがかなりあったし、さらに、裁判員制度において、国民が裁判員として関与するという負担を負う中では、集中的な審理を実現するため、刑事事件専従でも職業として成り立つ者が必要であるので、その中核として、常勤弁護士という制度を考えるべきである。

  •  現在の制度では充実かつ集中した審理ができない場合を補完するため、常勤弁護士を設けるということが基本だと思うので、常勤弁護士を中核にするということは少し行き過ぎではないか。

  •  弁護の質の確保という観点では、専門化ということを考える必要があると思うが、刑事弁護を担当する弁護士のすそ野をどこまで持っているかという問題もあり得ると思う。また、連日的開廷への対応という観点でも、全体を常勤弁護士としなければ対応できないのか、オウム事件のような事件についても、現在の弁護士会が対応体制をつくってきたという経緯もあるし、常勤弁護士を中核とする弁護体制が可能なのかという疑問がある。トータルな意味で、常勤弁護士を中核とするということについては、更に議論が必要だと思う。

  •  素人が刑事裁判に参加する裁判員制度を念頭に置いて考えると、常勤弁護士がいるということが大前提であり、そのような制度をつくらないと裁判員制度がうまく行かないと思う。将来のビジョンとしては、常勤弁護士が中心となり、契約弁護士やその他の制度は補完的な役割を担うものとして考えるべきである。

  •  裁判員制度は、全国津々浦々で連日的開廷に対応できるシステムが整っていないと動かないのであるから、そのためのセーフティーネットとして常勤弁護士が必要だということには異論がないと思うが、どちらが主で、どちらが従かをここで議論するよりも、いろいろな給源を確保し、そのときの情勢に対応して動けるようなシステムにしておけばよい。

  •  弁護士の間では、現状でも、一定の時間が確保され、証拠開示など諸条件が整備されれば、連日的開廷に対応できるという者は多い。その意味では、連日的開廷や裁判員制度に対応するために常勤弁護士が必要になるということにはならないと思う。ただ常勤弁護士という範疇でなくても、弁護の質を向上させ、更に連日的開廷や裁判員制度を担っていくため、刑事専門の弁護士は必要だが、そのような刑事専門弁護士が裁判員制度すべてを担うということはあり得ないと思う。

イ 契約弁護士(弁護士法人を含む)

 主として、以下のような意見が述べられた。

  •  契約弁護士は、特異重大事件や専門化している事件に付けるという方向で考えるということも一つの考え方ではないか。

  •  契約弁護士については、契約内容をどうするかも重要であるし、被疑者・被告人が不利になるような事態を生じた場合に、どのように契約の不履行を認定し、それに対する制裁を行うか、弁護士会の懲戒制度との関係をどうするかなどの問題もあるので、契約内容及び契約の履行を担保する方法について、更に詳細に議論する必要がある。

  •  契約弁護士の事務所は、日常業務としては様々なものを扱っており、突発的に起こる特殊な事件を受任することを契約することは基本的に難しいのではないか。また、契約により収入が得られることを前提として事務所運営を考えるのであるから、いつ事件が来るか分からないという契約類型では事務所は動いていかない。そういうことを念頭に考えると、一定数の事件ということで契約するということになると考える。

  •  常勤弁護士にしても、契約弁護士にしても、捜査段階への対応は、待ったなしで必要となるが、弁護士数が少ない県もあるし、支部などで弁護士の数がゼロ又は一人というゼロワン地域も多く、弁護士の偏在への手当てをお願いしたい。

  •  契約弁護士の形態としては、弁護士事務所が全体として事件を受け、内部的に事件を回して行くこととし、できれば、個人の弁護士というよりも弁護士法人と契約し、事件の割替えのような形ができるようにして行かないと動かないのではないか。また、特殊案件については、最後は常勤弁護士の方に行くのではないか。将来的に国際的な犯罪組織への対応が中心となると、個人が受任したのでは、弁護士に対する脅迫その他の行為が起きた場合にはもたないと思うが、一つの団体があって、いくらでも代わりの弁護士がいるということであれば、個人に働きかけをするインセンティブがなくなってくる。そのようなことも考えると、常勤弁護士の集団と契約弁護士法人が、その中に相当数の弁護士を抱えているという形態を目指すべきではないか。

ウ その他の確保方策

 主として、以下のような意見が述べられた。

  •  現在の国選弁護の報酬では、国選弁護という市場に参入してくる弁護士が限られており、十分な経済的基盤を提供することが必要だと思う。

  •  弁護士会では、過疎型の公設事務所や都市型の公設事務所などの取組が進められており、本検討会としては、こうした取組についても十分考慮して制度設計していく必要がある。

エ 常勤弁護士及び契約弁護士等の規模

 それまでの検討において、関連する意見が述べられており、特に意見は述べられなかった。

 (3) 次回の予定

 次回(7月23日)は、公的弁護制度下での弁護人の選任要件等について検討を行う予定である。

(以上)