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公的弁護制度検討会(第4回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日 時

平成14年7月23日(火)13:30~17:50

2 場 所

司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者

(委 員)
井上正仁座長、池田修、浦功、大出良知、清原慶子、酒巻匡、髙井康行、土屋美明、中井憲治、平良木登規男、廣畑 史朗(敬称略)

(説明者)

甲斐行夫(法務省刑事局参事官)
河原昭文(日本弁護士連合会副会長)

(事務局)

山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、落合義和参事官

4 議 題

1. 私選弁護と公的弁護の関係
2. 公的弁護制度下での弁護人の選任要件
3. 公的弁護制度下での弁護人の選任の始期及び選任の効力の終期
4. 公的弁護制度下での弁護活動の在り方
5. 公的弁護制度下での弁護報酬の算定方法

5 配布資料

資料4-1 第4回公的弁護制度検討会における論点(案)

6 議 事

 議事に先立ち、事務局から、7月5日の顧問会議でとりまとめられた「顧問会議アピール」及び同会議における小泉内閣総理大臣(司法制度改革推進本部長)あいさつについて説明がなされた。続いて、議事に移り、議題とされた検討項目の順に、各検討項目ごとに、事務局から小論点の案(資料4-1「第4回公的弁護制度検討会における論点(案)」)の説明を行った上、検討を進めることとされた。
 議論の概要は、次のとおりである。(○:委員、□:座長、▲:法務省、△:日弁連)

 (1) 私選弁護と公的弁護の関係

 弁護人の援助を受ける権利の実効的担保のための私選弁護と公的弁護の役割分担について、「自ら弁護人を依頼することのできない」理由及び私選弁護が原則であることと公的弁護の選任要件との関係を足がかりに議論することとされた。

ア 「自ら弁護人を依頼することのできない」理由

 主として、以下のような意見が述べられた。

○ 確かに弁護士が選任されにくい事件があり、そういう場合には、資力要件にかかわらず、最終的には公的弁護で弁護人を付することにならざるを得ないと思う。

○ 被告人について、弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることが認められているということは、弁護士が受けにくいから弁護人を選任できないということは予定されていないのではないか。

○ 昔の注釈書には、刑訴法36条の「貧困その他の事由により」の中には、希有な例であるが、すべての弁護士の反感を買ってしまったような場合も考えられないわけではないとされていたので、そういう場合も、国費で弁護人を付すということが想定されていたように思う。

○ 私選弁護が原則であって、それを補充するものとしての公的弁護であるという位置付けであるから、基本的には、私選弁護人があれば、国選弁護人を選任する必要はないし、私選弁護人が選任されれば、国選弁護人は解任されるべきであり、また、資力のある者は、まず私選弁護人を選任できなかったということがあって初めて国選弁護に流れていくという整理で制度設計していくべきである。

○ 被疑者・被告人の弁護人を選任する権利を保障するという意味からすれば、国家刑罰権行使の対象として、国から犯罪の嫌疑ありとして被疑者又は被告人とされた場合に、それに要する弁護人の費用を国が負担するということは理論上あり得るかもしれないが、現行法の枠組みは、私選が原則で、国選弁護は補充とされており、これを被疑者段階で変える必要はないとは思う。

○ だれが費用を負担するのかということと、だれが選任するのかということを分けて考えると、被疑者・被告人が弁護人を選任し、国が費用を負担するということはあり得る。

イ 私選弁護が原則であることと公的弁護の選任要件との関係

 主として、以下のような意見が述べられた。

○ 裁判員制度という国民参加の制度を動かしていくためには、弁護人が必要不可欠な存在であり、弁護人をうまく確保できる手続を考えるべきだと思う。その場合でも、基本的には、弁護士会の推薦や御努力によって、できるだけ私選で引き受けてもらうのがよいと思う。従来のケースにあったように、手続が暗礁に乗り上げてしまって、どうにもならないという事態になったときに初めて公的弁護制度が動き出すという方が自然ではないか。

○ 私選弁護が基本だと思うが、選任手続の中で、あまり私選弁護人の選任を追求しすぎると、選任が遅延して、裁判員による裁判に間に合うとしても、捜査段階の公的弁護という観点からは十分でないということになる。手続的には、なるべく早期の段階で、私選弁護か公的弁護か振り分けられなければならず、少なくとも勾留請求の段階では、どちらになるかは決着がついている必要がある。当番弁護士制度をきちんとしたものとして、逮捕されたら当番弁護士が接見に行き、当該弁護士が私選弁護か国選弁護かの振り分けを判断して、基礎資料を裁判所に提出するという仕組みを前提にした上で、公的弁護制度を動かさないと、うまく回っていかないのではないか。

○ いわゆる特別案件においては、結局、弁護士会において、弁護人となる弁護士を派遣することとなる。その場合に、それが私選となるか国選となるかは、次の段階の問題であって、私選弁護を原則とし、国選弁護を補充とするかということは、弁護人の選任ということから見ると、第二義的な問題となるのではないか。

□ 公的弁護制度を導入した場合、私選弁護と公的弁護のどちらに振り分けるかということは、選任の前の段階で判断しなければならず、最後は、弁護士会の派遣した弁護士が担当するのだから、後はお金の問題であるというわけにはいかないのではないか。

○ 弁護人を早く的確に付けるということが大事であり、そのためには、現行の被告人に対する国選弁護の要件よりも、更に明確な要件が必要ではないかと思うし、現在は、要件を判断するための資料も明確でない。実体的要件について、より明確化するとともに、手続的に、どういう資料を求めるのかということも明確にしておかないと、早く対応することができないのではないか。

○ 自分のお金は使いたくないが、税金で負担してくれるなら弁護人を頼むということでは、国民の理解が得られないので、貧困要件は外せないが、その認定を短時間に行うことは非常に難しいから、それを手続的な面でどう工夫するかというのが一つのアプローチだと思う。また、いったん支出したものを被疑者・被告人から事後に回収するというやり方は、コスト倒れになるので、期待しない方がよい。したがって、弁護人を付す段階で、手続を考えるべきであり、例えば、まず私選弁護を弁護士会に依頼させるとか、費用の一部を仮納付させるとか、手持ち現金からいくらか予納をさせるなどの仕組みが必要ではないか。

○ 被疑者の視点からも、公的弁護制度の理念という観点からも、当番弁護士制度又は同制度のようなものを必ず公的弁護の前に置くという制度設計がよいと思う。これは、弁護士会の協力なしにはできないが、そのような制度が実効性のあるものではないかと思う。

○ ドイツには、日数罰金制度があるが、その場合の資力の判断は、自白調書の冒頭に必ず資力や収入が書かれていて、それに基づいて行われる。今後、無資力要件を考える場合には、弁解録取の次の段階で、これを聴取することが必要になるのではないか。

 (2) 公的弁護制度下での弁護人の選任要件

 次に、公的弁護制度下での弁護人選任の実体的要件(公的弁護制度下での被疑者に対する弁護人の具体的選任要件)及び手続的要件(要件審査の方法)について議論が行われ、引き続き、「選任できる人数」及び「管轄区域と選任できる弁護士の制限」につき議論された。

ア 公的弁護制度下での被疑者に対する弁護人の具体的選任要件及び要件審査の方法

 主として、以下のような意見が述べられた。

○ 貧困でない者が貧困であるとして国選弁護人を付されるというような、濫用が許されるような制度であってはいけない。そうなると、何らかの形で数値的な要件を定めることが必要である。資力の確認方法としては、裁判官が確認する、被疑者の自己申告による、捜査機関が確認する、当番弁護士のような形で弁護士が接見して確認するなどが考えられるが、弁護士が確認するというのが妥当だと思う。

○ アメリカでは、初回出頭の前に、宣誓供述書の形で、資力申告書を提出する仕組みにしており、虚偽の記載をすると偽証罪で処罰される。日本も、一つの制度設計としては、同様のものにすることが考えられる。それ以上のことを裁判所が調べることは難しいから、申告書を基本にして、一定水準以下であれば、公的弁護により弁護人を付するということが考えられる。

○ 当番弁護士として接見しても、家の様子を見てきてくれなど、弁護士の社会的使命とは思われないことを頼まれることもあり、そういう一種の濫用を防ぐためにも、一定額を支払わせるということが考えられると思う。

○ 資力審査において、大づかみな制度では国民の理解が得られないということになると思うが、逆に正確性を求めるとなると、重すぎる制度となると思う。重からず、軽からず、中庸な制度で、簡便かつ迅速に判断できるようにする必要がある。

○ 要件の有無が分からないときにどうするか決めておかないと、後で、弁護人を付すべきだったとして、証拠の収集や自白の適法性が問題とされるということにもなるので、そのようなことが起こらないような制度としておく必要がある。

○ 曖昧な場合には、やはり国選弁護人を付けるという方向に行かざるを得ないであろう。その場合に、後に資力があることが分かれば、費用を回収するということになるであろう。

○ 本人以外の親族がお金を出してくれそうなときは、親族の資力も考慮し、それでもどうにもならないときに公的弁護で弁護人を付するということは、私選が原則という観点からも、親族に独立して弁護人選任権が与えられているという観点からも、あり得ると思う。資力要件のところで親族の資力を見るということもあるだろうし、私選が原則だから、弁護人選任権を有する者に打診するという手続的要件として親族の資力を見るということもあるだろうと思う。

○ 選任に当たり、当番弁護士前置とするという意見があったが、一見明白に資力がない者にまで当番弁護士と接見を義務付ける必要はないと思う。

○ 被疑者・被告人の本人の資力だけを見るのか、親族の資力も見るのかということについては、何らかの形で本人が調達できるかどうかを考えればよいので、この点を明確にする必要はないという気もする。

○ 少年や高齢者などについて、類型的に判断能力に問題があると考えられるような場合に弁護人を必要的に付すということが考えられるのではないか。前回、必要的に弁護人を付すとなると、選任されるまで捜査ができなくなるのではないかとの指摘があったが、それについては、別に考えることも可能だと思う。

○ 必要的に選任するという制度設計をしておきながら、選任されなくても何ら手続の進行に影響を及ぼさないということは理解できない。また、離島などで少年や高齢者が身柄拘束され、弁護士がいなければ、常勤弁護士を派遣する以外に方法がないこととなろう。そういうケースへの対応も含めて、常勤弁護士を無尽蔵に確保できればよいけれども、弁護士の対応能力や国民負担の問題もあって限界があり、必要的選任という制度では、制度が最初から動かない可能性が極めて高い。

○ 弁護人を依頼できないという場合としては、心神喪失や心神耗弱などで弁護人を依頼する主観的な能力がないという場合も、理屈の上では含まれると思う。

イ 選任できる人数及び管轄区域と選任できる弁護士の制限

 主として、以下のような意見が述べられた。

○ セーフティーネットとしての常勤弁護士に、現行の刑訴規則29条1項の管轄区域の制限が厳格に適用されると、全国の管轄区域すべてに常勤弁護士を置いておかなければいけないということになるので、別途の考慮を要すると思う。

○ 弁護人の人数については、捜査段階は、毎日接見するなど濃密な活動が必要な場合があり、弾力的に複数の弁護人を選任できるように制度設計される必要がある。また、刑訴規則29条1項の管轄区域の制限については、現在も、上訴審において管轄区域で制限されるという問題があるし、被疑者段階の公的弁護制度についても、場所的に相互に弁護士を融通し合いながら事件を担当するという必要があるので、見直しの必要があると考える。

○ 現在の国選弁護制度でも、弁護人の数は一人というのが原則となっているので、その原則自体をくずす必要はない。複数の弁護人が選任されるというのは、特別案件的な場合なので、そのような例外的処置まで封ずるまでの必要はないが、原則は守った方がよい。また、管轄区域の制限も、それなりの意味もあることであるから、全部取り払えばよいというわけではなく、公的弁護との関係で例外を設けなければいけない場合がいくつかあるであろうから、そのときの手当てをしておけば十分ではないか。

○ 私選弁護が原則であって、公的弁護が補充だとしておきながら、私選弁護の場合に、一人しか選任できないことがあるにもかかわらず、補充的であるべき公的弁護になると、弁護人の数が増えていくというのでは、制度全体のバランスとしておかしいのではないか。

○ 私選が原則で、国選が補充的だということはいえるが、選任できる人数についていえば、提供される法的サービスという点で、国選ならば劣っていてよいという制度設計には問題があると思う。

 次の検討項目に入る前に、法務省から、平成12年度の訴訟費用の徴収の実情が紹介された。

▲ 国選弁護費用を含む訴訟費用の徴収について、平成12年度は、件数ベースで、徴収すべき件数が2万104件、このうち処分済件数が1万886件、未済件数が8839件、残りは徴収不能決定をしたものである。金額ベースでは、徴収すべき金額が約17億円、未済が約7億5000万円、徴収不能決定が約2900万円である。

 (3) 公的弁護制度下での弁護人の選任の始期及び選任の効力の終期

 次に、公的弁護制度下における被疑者に対する弁護人の選任の始期(逮捕段階か勾留段階か)及び弁護人の選任の効力の終期について議論が行われ、続いて、選任の効力が及ぶ事件の範囲につき議論された。

ア 公的弁護制度下における被疑者に対する弁護人の選任の始期

 主として、以下のような意見が述べられた。

○ 憲法34条は、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されないとして、身柄拘束の種類に区別を設けずに弁護人依頼権を保障しており、立法政策としても、なるべく早い段階で弁護人が付くということが憲法の趣旨に適うものであると考える。逮捕段階から請求権を認めるという制度設計を理想にして、何とか技術的な問題点をクリアするというのが筋であろう。

○ 当番弁護士制度を前置することを前提に、勾留段階から国選弁護人を選任するという仕組みがよい。勾留審査と併せて、裁判所が弁護人を付するという仕組みである。

○ 逮捕直後の接見の重要性は分かるが、逮捕段階で選任するという仕組みは、現実には動かないのではないか。

○ 実質的に弁護士の援助を提供できるかという問題であるので、裁判所の選任が前提となる形での弁護ということになると勾留段階ということになるかもしれないが、場合によっては、逮捕段階からということもあり得るであろうと思う。いずれにしても、逮捕段階から弁護人の援助を提供するという方向で制度設計すべきだという意味で、逮捕段階からという意見に賛成である。

○ 逮捕されていない任意捜査の段階で虚偽の自白をしたという事案もあり、できるだけ早く弁護人が付くことが必要である。それによって、審理の結果を誤らせないことになるだろうと思う。制度設計として非常に難しいかもしれないが、何とか工夫して、身柄拘束されてから速やかに弁護人が付くよう知恵を出して欲しいと思う。

イ 公的弁護制度下における弁護人の選任の効力の終期

 主として、以下のような意見が述べられた。

○ 身柄拘束された者に弁護人を付するということを前提にすると、釈放により選任の効力は終了することとすべきである。

○ 釈放により選任の効力が終了することとすると、弁護という観点から間隙が生じないか。

○ 身柄拘束のまま公判請求された場合には、同じ弁護士をもう一度選任するという仕組みが費用算定のために簡明ではないか。

○ 公判請求された場合、そのまま効力を維持するという、現在の私選と同じようにした方が、弁護の間隙が生じないということになるのではないか。

○ 現在の国選弁護制度では、解任請求権は認められていないが、弁護人と被疑者・被告人との信頼関係がいったん崩れると極めてクリティカルな状況となるから、被疑者・被告人や弁護人から解任を請求できる制度を考えてもよいのではないか。それと同時に、被疑者段階で裁判所が弁護人を解任すべき理由があるかどうか分からないことも多いはずであるので、解任に弁護士会が関与することも考えられていいのではないか。

○ 公的弁護制度の選任は、裁判所の裁判により行われるのだから、身柄が釈放されるなど選任の基礎がなくなるような場合以外は、裁判所の判断により解任されるという構成にならざるを得ず、法律論としては、解任請求権というものは成り立たないのではないか。

○ 被疑者から弁護人が嫌だと言われたら解任するとすると、選任のときも、被疑者にどの弁護士がいいか聴くべきだということにもなりかねない。国費で資格ある有能な弁護士を弁護人に付けるという制度なのであるから、被疑者が嫌だから弁護士を代えるという問題ではないと思う。

ウ 選任の効力が及ぶ事件の範囲

 主として、以下のような意見が述べられた。

○ 事件単位で考えるほかないと思う。

○ 被告人の国選弁護人は、別件で逮捕された場合、事実上、弁護人の役割をカバーしており、また、私選弁護も、事実上、人単位となっているなどの実情もあるので、人単位という考え方もあり得ると思う。

 (4) 公的弁護制度下での弁護活動の在り方

 次に、公的弁護制度下での弁護活動の在り方に関し、「弁護活動の自主性・独立性の確保方策」及び「弁護活動の水準・適正の確保方策」について議論が行われ、主として、以下のような意見が述べられた。

○ 現在、検察側からやりすぎ弁護だと批判される弁護活動があるが、他方、そのような批判を受けることをおそれて、本来やるべきことを行わない萎縮した弁護活動もあり、そのような萎縮した弁護活動がそのまま残るような制度設計は良くないと思う。

○ 弁護活動の独立性は重要であり、尊重することが必要だと思うが、他方、弁護活動の独立を名目として、首をかしげるような事態が生まれている面もある。弁護活動の適正さが求められるということはそのとおりである。しかしながら、実際に、弁護活動の適正さや水準を確保するという場合に、現実にどういうことが起きてくるかということも考えざるを得ず、一部の弁護士にとっては、十分な弁護活動を行う上での手枷・足枷となるようなことが、そのような名目で行われるのではないかという懸念を持たれる場面もあると思う。

○ 司法制度改革審議会意見書は、弁護士会が弁護活動の質の確保について重大な責務を負うことを自覚し、主体的にその態勢を整備すべきであるとしているので、日弁連や単位弁護士会が具体的に現在どのような取組みをしているのか教えて欲しい。公的弁護人の推薦等に関する準則案が日弁連の刑事弁護センターで採決されたという記事があったが、説明願いたい。

△ 「国費による弁護人の推薦等に関する準則案」は、本年2月18日に日弁連刑事弁護センター全体委員会で採択され、現在、日弁連調査室において、国費による被疑者弁護制度がまだ存在しない段階で被疑者弁護を含めて準則化することの可否及び準則案の内容について検討中であり、また、日弁連正副会長会でも協議中であり、日弁連の正式な準則としては、まだ確定していない。今後、その検討結果も勘案し、できるだけ速やかに日弁連の準則として確定し、全国の各単位弁護士会に対し、同様の準則を制定するよう指導監督して、全国的な態勢を整備すべく努力する所存である。各単位弁護士会は、会規又は規則の形で制定することとなると思う。

○ 日弁連の弁護士倫理に、偽証のそそのかし等の禁止や裁判手続遅延の禁止などの規定があるが、それと「国費による弁護人の推薦等に関する準則案」に基づく推薦停止との関係は、どうなるのか。

○ 弁護士倫理は、その違反が直ちに懲戒事由となるわけではないが、弁護士の品位を傷つけるという懲戒事由の解釈基準として位置付けられており、綱紀懲戒の問題が出てくる。準則は、国費による弁護人としての推薦を停止するという限度での規範性を持たせるということで議論してきたものである。

○ 弁護士倫理に違反する事態が生じた場合には、準則の15条2項の規定により、懲戒を受けない限り、推薦停止とはならないということか。

○ 業務停止などの重い懲戒処分の場合には、それで弁護士として活動できなくなるのだから、それ以上の措置は不要であり、15条2項が意味を持ってくるのは、軽い懲戒処分の場合である。

△ 弁護士倫理の偽証のそそのかしをしてはならないという定めは、準則の中に当然入れるべきではないかと思う。日弁連調査室で検討しているところであり、これから、日弁連正副会長会でも、その点も含めて、もっと良い準則にしたいと思う。

○ 偽証のそそのかしは当然許されないことであり、この準則より上位の規範に違反するということで綱紀懲戒のレベルで処置されるべきことであり、そういう意味で、棲み分けているということになる。

○ 新たに運営主体を設ける以上、日弁連とは別の組織なのだから、運営主体における規律も考えることとなり、問題は、両者の関係をどうするかである。本来的には、国民の側から見れば、二重の基準になるのは適切でなく、両者が一致する方向に行くのが望ましいと思う。まず日弁連において、一般国民の目から見て分かりやすく透明性を確保できるルールを作っていただきたいとお願いすべきである。また、日弁連の作業と同時並行して、運営主体におけるルールづくりも考えて行くべきだと思う。

○ 運営主体のルールという話が出てくると、初めて弁護活動の自主性・独立性の確保方策というものが意味を持ってくることとなる。そうなると、運営主体の権限と義務、責任の範囲はどこまでか、出勤時間など常勤弁護士に対する業務上の指揮監督はあるとして、個別の弁護活動に対する指揮監督や指導助言を認めるのかどうかなどが極めて重大な問題として出てくる。この問題は、運営主体をどうするかということを抜きにしては論じられない。

○ 先ほど、公的弁護制度の下で、弁護人の解任に弁護士会が手続上関与するとの意見があったが、枠組みの問題として、裁判の独立というものがある中で、日弁連や弁護士会が関与していくということは理解しがたい。

○ 法律に、弁護士の推薦の欠格事由や、裁判所の解任又は選任の欠格事由という形で定めを置いて、それに当たる場合には、裁判所が解任し、又は選任しないというやり方もあり得るのではないか。

 (5) 公的弁護制度下での弁護報酬の算定方法

 次に、公的弁護制度下での「捜査段階の報酬の算定方法」及び「公判段階の報酬の算定方法」について議論が行われ、主として、以下のような意見が述べられた。

○ 公判に表れる部分以外の弁護活動は、裁判所に見えないこともあって、国選弁護報酬は、標準報酬額によって算定されることが多いと思うが、本来は、弁護活動の状況に応じて算定がなされるべきであろう。そのために弁護活動に関する報告書を裁判所に提出する弁護人もあるが、多くの弁護士から報告書の提出がなされないのは、そういう活動を裁判所に評価されたくないという意識があるからではないか。そうしたこともあって、標準的な金額から上げ下げすることができないということになっているのがいいのかということを被疑者に対する公的弁護制度の導入に当たり、考えるべきではないか。

○ 弁護活動が報酬に反映される必要があり、定額部分と5段階くらいの加算部分を定めた上で、弁護活動の労力を点数評価して、加算部分を決めるということも考えられる。

○ タイムチャージのような査定が難しい方法を採るということは難しいだろうと思うが、固定額では弁護士の意欲にもかかわる問題になってくる。そういう意味で、一定の幅の中で、ある程度算定を行って、弁護人の努力を評価するということが必要だと思う。

○ 弁護活動の外形から差を付けるということも分かるが、点数稼ぎのために、不必要な活動を行うということでは困る。

○ 公判の準備手続を充実させるという意味では、準備に対応した弁護活動の報酬も必要になるのではないかと思う。また、前提として、現在の国選弁護の報酬の基準がオープンになっていないという問題があり、被疑者段階の公的弁護制度が導入される以上、報酬の基準が明確化される必要がある。さらに、報酬に弁護士会の意見が何らかの形で反映されるような仕組みも考えていただく必要があると思う。

 (6) 次回の予定

次回(10月29日)は、公的弁護制度の運営主体について検討を行う予定である。

(以上)