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公的弁護制度検討会(第5回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)

1 日時
平成14年10月29日(火)10:30~12:51

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 井上正仁座長、池田修、浦功、大出良知、清原慶子、酒巻匡、髙井康行、土屋美明、平良木登規男、廣畑史朗、本田守弘(敬称略)
(説明者) 今崎幸彦(最高裁判所事務総局刑事局第一課長)
河原昭文(日本弁護士連合会副会長)
(事務局) 大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、落合義和参事官

4 議題
公的弁護制度の運営主体について

5 配布資料

資料5-1 第5回公的弁護制度検討会における論点(案)
資料5-2 現行国選弁護制度における事務の例
資料5-3 用語の定義等について(参考)

【日本弁護士連合会提出資料】
資料・日弁連5-1 「国費による弁護人の推薦等に関する準則」(案)について

6 議事
  (□:座長、○:委員、▲:最高裁、△:日弁連、●:事務局)

□ それでは、第5回公的弁護制度検討会を開会させていただきます。御多忙の折、御参集いただきましてありがとうございました。
  議事に入ります前に、既に御承知のことと存じますけれど、顧問会議における顧問のアピール等を受けて、第1審の裁判の結果が2年以内に出るようにするための措置が検討されているということですので、その点について事務局から説明をしていただきます。

● 本年7月の顧問会議におきまして、顧問のアピールとこれを受けた総理大臣の挨拶の中で、迅速な権利の実現を図り、司法を国民にとって頼りがいのあるものとしていくために、「裁判の結果が必ず2年以内に出るように改革することが必要である」という明確な御指摘をいただきました。
  これを受けまして、事務局といたしましては、第1審の裁判の結果が2年以内に出るようにするためのいわば出発点となる法的措置を検討し、平成15年通常国会に所要の法案を提出することを目指してまいりたいと考えております。その具体的内容につきましても、早急に詰めてまいりたいと考えております。

□ ありがとうございました。何か御質問がおありでしょうか。よろしいですか。それでは、これから本日の検討に入りたいと思います。
  最初に、日弁連の方から本日の検討会に提出されている資料につきまして、事務局から説明があるということですので、お願いいたします。

● 日弁連から提出されている資料について申し上げます。資料・日弁連5-1でございます。日弁連からは、第4回検討会におきまして、策定・検討中の「国費による弁護人の推薦等に関する準則」 (案) と日弁連の総会決議である弁護士倫理規定違反との関係につきまして、日弁連正副会長会で検討する旨説明がなされておりましたが、その結論につきまして、本検討会に資料・日弁連5-1として提出されております。以上でございます。

□ この日弁連提出資料について、何か御質問がおありでしょうか。

○ 先回の検討会での質疑で、準則に倫理の問題も盛り込むという発言があったことについての補充のペーパーだと思いますが、これは、補充ではなくて、そのときの説明の撤回というふうに理解してよろしいのでしょうか。これは事務局というより日弁連の方にお尋ねすべきかと思いますが、これを読んだ限りではそのように読めるのですけれども、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。

△ はい、説明の撤回と御理解していただいて結構です。

□ それでよろしいですか。

○ 私個人としては、日弁連のために大変惜しむものでありますけれども、そういう意見として理解します。

□ この点については、また、第2ラウンドの関連する論点の中で御意見があれば御議論いただくことにしたいと思います。
  次に、第4回検討会だったと思いますが、○○委員からさいたま地方裁判所で集中審理が行われている事件の国選弁護人の報酬について、最高裁の方に質問がなされました。この質問に対する回答を最高裁の方で用意されたということですので、最高裁の方から説明をお願いしたいと思います。

▲ ただいま座長から御説明のあったとおりの御質問がございまして、それについて調べてまいりました。この事件、いわゆる本庄保険金殺人事件と言われている事件でございますが、御承知のとおり、この事件は今月1日に第1審判決が言い渡されまして、その後、さいたま地裁に確認いたしましたところ、弁護人に対する報酬の支給決定もすべて終えたということでございますので、本日回答をさせていただきます。
  この事件では4名の国選弁護人が選任されておりますが、この4名の弁護人に支払われました国選弁護報酬の総額は記録の謄写料込みの額で約4,700万円とのことでございます。なお、第1回公判が開かれる前の事前準備の段階に、弁護人から記録の謄写料として報酬の中間払いを求められましたことから、それに応じて複数回にわたって報酬を支払ったという経過もあるとのことでございました。以上でございます。

□ ありがとうございました。ただいまの御説明について御質問がございますでしょうか。よろしいですか。この点もまた、第2ラウンドの関連するところで参考にしながら議論していただければと思います。
  それでは、本日の主題の方に入りたいと思います。本日の検討項目は「公的弁護制度の運営主体について」でございます。
  この大きな検討項目の中で、更に取り上げるべき小論点につきまして、事務局の方で司法制度改革審議会の意見書及び同審議会の議事録等を参照して案を作成してくれました。お手元の資料5-1がそれですが、これによりますと、小論点として「運営主体の事務」と「運営主体の組織」の2項目に分けて整理されております。このうち、まず1の「運営主体の事務」について、事務局から簡単に説明願います。

● お配りいたしました資料5-1「第5回公的弁護制度検討会における論点(案) 」の枠囲みの部分を御覧ください。
  運営主体の事務に関して司法制度改革審議会の意見書は、「弁護人の選任・解任は、現行の被告人の国選弁護制度と同様に裁判所が行うのが適切であるが、それ以外の運営に関する事務は、上記機関が担うものとすべきである。」、「上記機関は、制度運営について国民に対する責任を有し、全国的に充実した弁護活動を提供しうる態勢を整備すべきである。」、「殊に、訴訟手続への新たな国民参加の制度の実効的実施を支えうる態勢を整備することが緊要である。」と述べております。
  ところで、「弁護人の選任・解任以外の運営に関する事務」と申しましても、法令上の事務のほか、例えば弁護人の推薦など事実上・運用上の事務も含めて様々な事務があり、かつ、これら様々な事務を裁判所、弁護士会、検察庁がそれぞれ担っております。また、新しい制度の下では、「全国的に充実した弁護活動を提供しうる態勢を整備すべき」事務、「訴訟手続への新たな国民参加の制度の実効的実施を支えうる態勢を整備する」事務として、例えば意見書の例示する「常勤弁護士の配置」や「個々の弁護士又は弁護士法人との契約を行うこと」など、現行制度にはない新たな事務を生じることになります。
  さらに、司法制度改革審議会の議論の経過を見ますと、公費に見合う弁護活動の適正確保のための方策はどうあるべきかという問題提起もなされております。
  以上を踏まえまして、運営主体が担うべき事務として具体的にいかなるものが考えられるか御検討いただきたいと存じます。
  なお、運営主体の事務は、次の論点であります運営主体の組織如何と相互に密接な関連を有するものではありますが、検討の順序といたしましては、両者を併せて御検討いただくのではなく、まず公的弁護制度の導入の意義・必要性という観点からみて運営主体が担うべき事務は何かについて御検討いただくのが適当ではないかと存じます。以上でございます。

□ ありがとうございました。今の説明につきまして、何か御質問がございますか。よろしいですか。
  それでは、小論点1との関係で事務局の方で検討のための資料を用意してくださっていますので、その資料について説明をお願いしたいと存じます。

● お手元に配布させていただきました資料5-2「現行国選弁護制度における事務の例」と題する資料を御覧ください。
  公的弁護制度の運営主体の事務の検討の参考としていただくために、現行の国選弁護制度における事務にはどのような事務があるかについて、例を挙げて簡単に御説明申し上げます。
  資料5-2の上から順に、まず「選任に関する事務」について申し上げます。国選弁護人の選任に関する事務の中身につきましては、既に第2回検討会で最高裁から説明がなされておりますので、時間の関係上割愛させていただきますが、具体的事務としましては、「被告人への弁護人選任に関する通知及び照会」を行うこと、「要件審査」を経て国選弁護人を選任する場合には、「国選弁護人選任命令書の作成」、その原本又は謄本の「弁護人への交付」、「被告人と検察官への通知」があります。
  なお、国選弁護人選任に当たり、これまでの検討会での日弁連及び最高裁からの説明のとおり、裁判所の中には、その所在地にある弁護士会に対して国選弁護人の推薦を依頼し、当該弁護士会は裁判所に対し、あらかじめ作成された名簿に基づいて人選した弁護士を推薦し、裁判所は当該弁護士を国選弁護人に選任するという取扱いをしている庁と、裁判所があらかじめ弁護士会から送付を受けた候補者名簿に基づいて選任する取扱いや、名簿もなく裁判所が個別の事件ごとに直接個々の弁護士と折衝して選任する取扱いの庁があります。
  また、資料5-2では割愛いたしましたが、通常の推薦手続によることが困難あるいは不相当な事件を「特別案件」と呼んでおり、これにつきましては、法曹三者協議会における協議の結果、弁護士会において特別案件を受任する意思のある弁護士を登載した名簿を作成することになっております。
  このように、弁護士会において行っている名簿の作成は、国選弁護人に選任される弁護士の確保に関する事実上の事務と言えると思います。
  今後、被疑者に対する公的弁護制度が導入された場合には、公訴提起後に行われております選任に関する事務及び弁護士の推薦は捜査段階へ前倒しになりますが、意見書では「弁護人の選任・解任は、現行の被告人の国選弁護制度と同様に裁判所が行うのが適切である」とされておりますので、公的弁護制度の下でも選任に関する事務は裁判所が行うこととなろうかと思われます。
  また、公的弁護制度下で常勤弁護士又は契約弁護士を導入した場合、厳密な意味での雇用かは留保するとして、常勤弁護士のいわゆる雇用及び契約弁護士との契約に関する事務は弁護士の確保に関する事務として運営主体が担う事務であろうと思われます。
  次に、真ん中の段でございますが、「支給に関する事務」について申し上げます。支給に関する事務としましては、受訴裁判所において「弁護人からの請求書の受付」を行い、「最高裁の通達を参考に報酬等の額を算定」した上、「支給決定書の作成」を行い、弁護士が国選弁護人報酬等の代理受領を弁護士会に委任している場合には、裁判所から弁護報酬等の「弁護士会への振込」がなされるものと承知しております。このうち、報酬等の額の算定について申し上げますと、国選弁護人の報酬等の額は、法律上、裁判所が相当と認めるところによるとされておりますが、当検討会における最高裁の説明のとおり、受訴裁判所が報酬を決定する際の参考とするため、最高裁判所において国選弁護人が付された事件の中で開廷回数、事案の難易等が標準的と考えられる事件について相当と思われる報酬額を示した通達を発しています。公的弁護制度が導入された後、捜査段階及び公判段階の弁護報酬の算定をどこが担うべきかについては、本検討会で御議論いただきたいと思います。
  なお、この関係で国とは別人格の法人を運営主体とする場合、会計法との関係で整理が必要と思われます。すなわち、会計法第24条は国の歳出金の支出事務の委任先を国家機関に限っておりますので、仮に公的弁護の報酬の支払を運営主体に行わせようとする場合に、それは国が負う債務の履行であるとすれば、会計法第24条の特例となります。したがって、そのような特例を設けることの合理性や必要性等について十分な検討が必要と思われます。
  次に、下の段の「回収に関する事務」について申し上げます。回収に関する事務としましては、訴訟費用の負担にかかわる事務、訴訟費用の執行免除にかかわる事務も含まれます。また、その負担させた訴訟費用を徴収する事務もあります。
  まず訴訟費用の負担に関する事務について申し上げます。現行法上、国選弁護人の報酬等は訴訟費用に含まれ、刑の言渡しをしたときには被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させなければなりません。ただし、被告人が貧困のため訴訟費用を納付することのできないことが明らかであるときはこの限りではないとされております。また、裁判所は被告人に訴訟費用を負担させるときは、職権でその裁判をしなければならないとされています。この関係の事務が、資料5-2の回収に関する事務の欄の「訴訟費用の負担」の囲みの中の「要件審査」、「裁判書の作成」、「裁判の宣告」です。
  次に、訴訟費用の負担を命ぜられた被告人等は、貧困のためこれを完納することができないときは、裁判所に対して訴訟費用の全部又は一部についてその執行免除の申立てをすることができます。この関係の事務が資料5-2の回収に関する事務の欄の「訴訟費用の執行免除」の囲みの中の「申立書の受付」、「検察官への通知」、「要件審査」、「裁判書の作成」、「裁判書の送達」の事務です。
  今後、被疑者に対する公的弁護制度が導入された場合には、このような負担の仕組みを維持するのか、それとも新たな仕組みを構築して運営主体の事務とするのか、その負担の在り方についての検討が必要になると思われます。
  次に、訴訟費用の徴収について申し上げます。この関係の事務としましては、「徴収金額(訴訟費用額)の決定」、「納付告知」、「督促」、「収納又は徴収不能決定」があります。実務上、訴訟費用の負担を命じる裁判にその額が示されていないのが通例ですが、この場合には執行を指揮する検察官におきまして訴訟費用額すなわち徴収金額を決定することになります。検察官は徴収金額を決定した後、速やかに納付期限を定め、納付義務者に対し徴収金を納付すべき旨を告知いたします。徴収金が納付期限までに納付されなかったときは、検察官は納付義務者に対しその納付を督促いたします。最終的に収納が完了するか、又は法律上若しくは事実上執行することが不能の場合には検察官において徴収不能決定を行うことになります。
  今後、被疑者に対する公的弁護制度を導入した場合には、このような徴収の仕組みを維持するのか、それとも新たな仕組みを構築して運営主体の事務とするのかの検討が必要になると思われます。
  なお、弁護人の報酬等の負担、徴収について新たな仕組みを構築すべきであるとする場合には、現行法上、国選弁護人の報酬等とともに訴訟費用とされている証人、鑑定人等に関する費用の負担・徴収の取扱いをどうするのかということも問題となりますので、この点についても御検討いただきたいと存じます。以上でございます。

□ ありがとうございました。かなり細かな点にわたる御説明でしたので、ちょっと聞いただけではお分かりにならないかもしれませんが、何か御質問がおありでしたら。

○ どういうふうにお聞きすれば一番適切なのかよく分からないのですが、先ほど会計法との関係での御説明がございましたね。ここで事務の内容について細かく御説明いただいたのですが、これは現在の事務の処理として例示されているものだと思いますが、このうちのすべてが会計法上ということではないと思うのですね。会計法上、国の機関でなければいけないというのは、どこになるのでしょうか。

● 資料5-2を御覧いただきたいと思います。現行の国選弁護制度は選任を裁判所すなわち国が行っております。したがいまして、刑事訴訟費用等に関する法律では、報酬は裁判所に対して弁護人が請求する仕組みになっております。資料5-2の支給に関する事務のところで、「支給決定書の作成」、「弁護士会への振込」は国の歳出金を支払うということですので、これは現在、国の機関であるところの裁判所の中の会計機関が行っていることになります。したがいまして、会計法第24条との関係では、そこのところは国の機関でなければいけないということになるということでございます。

○ 確認ですが、それ以外はいいと言えばいいわけですね。

● 会計法は歳出金の支出について、支出事務の委任をすることができる先としては国の会計機関に限っているということでございますので、委員御指摘のとおりでございます。

○ 今の点でちょっと分からないのですが、国の債務の履行になるというのは、国が選任したからということになるのですか。例えば、民事の会社更生とかの管財人などについても裁判所は選任命令を出すわけですが、しかしそれは国の債務にはならなくて、別の財団、会社なりから払われるわけですね。選任というのと、支払、債務の負担は別ではないかと思うのですが、その点はどういうふうに考えておられますか。

● 現行の制度からいたしますと、国以外に請求先がございませんので、そういうことになろうかと思います。

○ 国が債務者だという一つの理由として選任行為というのも見ているということですね。選任行為それ自体が債務負担行為だということですか。

□ 当然そうだということではないのではないでしょうか。ただ、今とりあえず報酬を支払うことができるとすれば国しかない、だから国の債務だという説明ですね。

● はい。

○ 今の国選弁護人選任命令がどういう法的性格なのか議論されているわけですけれども、契約説とか命令説とかいろいろあって、今は命令説、要するに訴訟法的な効果を生じさせる行為だと理解されていますので、契約しているわけではないので、債務負担行為というのは選任から直ちに出てくるというわけではないように思いますけれども。

● 確かに会計法上の債務負担行為とは別の概念ですので、それは別ということになろうかと思われます。ただ、現行制度ですと国以外の者に請求するという理屈は出てこないと思われます。

□ 国が債務を負うという形以外の形は考えられるのですか。

● 国が債務を負う以外のものとして、例えば国以外の法人格を有する者に対して報酬請求をするということになりますと、まずどういう理屈により、その者に請求できるのかということを説明する必要があると思いますし、理屈の上で、その者に対する報酬請求権を発生させるのか、あるいは、報酬請求先としてはあくまでも国だけれども、その報酬の支払を受けるのは別の者からだということになりますと、それは支出事務の委任を受けるという形になりますので、やはり会計法第24条の問題になろうかと思います。したがいまして、報酬請求先を国以外の者にするということであれば、その法律上の理屈の説明が必要かと思います。

□ 今のは個別の弁護人となった人への報酬の支払についての話ですね。これに対して、例えば法人格のある公設弁護人事務所のようなものができたとして、そこに雇われている人は給料をもらう。そういう形になった場合に、その公設弁護人事務所が雇っている弁護士に給料を支払うのも、個別の弁護人となった人へ報酬を支払うのと同じことになるのですか。お金が国庫から出て行くという意味で。

● 仕組みとしましては、選任された弁護士と、座長がおっしゃったいわゆる公設弁護人事務所の間に何らかの法的関係がありますれば、そこは法的関係に従って給料が支払われるということになりますので、会計法第24条の問題はその限りにおいては生じないだろうと思います。

□ 会計法第24条の特例を設けるとすれば、その合理性や必要性について十分な検討が必要だという御説明だったと思うのですが、特例ということはあり得るということなのでしょうか。現行法の下でも特例は認められた例が現にあり、特例というのは要するに国の機関でなくても支払をやっていいということだと思いますが、その必要性・合理性を説明できれば特例は認められるけれども、説明できなければ認められないということなのでしょうか。

● 第一段階の、まず必要性・合理性があれば特例を設けることができるかということでありますが、憲法問題が生じなければ法律で特例を設けることは理論的には可能なのだと思います。
  後段の、その例があるかでありますが、法律を調べているところでございますけれども、今の段階ではそういう例は無いようであります。ただ、この辺はもっと調べたいと思っています。

□ 分かりました。ほかに御質問はおありでしょうか。多分まだ完全に理解できたということではないかもしれませんし、私自身も正直言ってそこまでの自信はありませんけれども、議論しながらまた御説明いただこうと思います。
  先ほど説明がありました資料5-2を参考にしますと、現在は三つの事務がある。その中の選任に関する事務の中で事実上行われている部分が、公的弁護制度になって常勤弁護士とか契約関係で弁護士ないし弁護士事務所と一定の関係を定常的に結ぶとすれば、そこの部分が膨らんできて制度化していくということなのでしょうか。選任に関する事務については、意見書では選任・解任行為は裁判所が行うということにされていますし、常勤とか契約ということになれば、その雇用や契約を行うのは運営主体だということも明らかなので、あと残された支給に関する事務と回収に関する事務のそれぞれ、あるいはその中のどの部分をどの機関に属させるべきか、運営主体でいいのかどうかということを議論する。全体の見取り図としてはそういうことではないかと思いますが、そういう見取り図でよろしければ、資料5-2を参考にしながら、まず支給に関する事務のうち、報酬算定及び報酬支払のそれぞれの事務についてどこが担当するのが適切かということについて御議論いただく。その次に、回収に関する事務の中で弁護報酬の負担及び徴収の仕組みについてどのような仕組みにするかということを含めまして、運営主体がその事務を担うべきかどうかについて御議論いただく。そういう形で議論を進めて行ければと思います。
  まず、弁護報酬の算定ですが、捜査段階・公判段階について、どこが算定すべきかというところからまず手始めに御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 

○ 報酬の算定・支払は、現行法は公判段階しかないのですけれども、現行制度は裁判所が報酬の算定を行っている。そうすると、公的弁護制度の場合も裁判所が審理の過程で把握したいろいろな状況を考えながら、中立的な立場で報酬を算定していく仕組みが恐らく一番合理的だろうと思われます。ほかのところ、例えば運営主体がこれをやれといっても、一々裁判を傍聴してやるということになるのでしょうけれど、恐らく非現実的ですし、また運営主体が的確に算定ができるのかという問題があると思います。
  支払事務に関しては、先ほどの会計法上の問題もありますし、運営主体をどうするかという話はあるのでしょうけれど、少なくとも個々の報酬の支払については国家機関でなければ支払はできませんし、委任を受けるにも現行の会計法上は国家機関ということになっている。そうすると、公判段階における報酬算定は裁判所という選択肢になるのかなという気がします。
  もう一つは被疑者段階の問題もあるのですが、これは報酬算定する際に裁判所、運営主体を含めて考えても、いずれの機関でやっても算定はなかなか難しいであろう。ということになると、私自身は、被疑者段階の報酬は定額制しかないのかなという気がしております。そうすると、被疑者段階の報酬算定は運営主体がやっても、その他の機関であっても可能ということになるのですけれども、公判段階と一貫したものとして考えると、裁判所が捜査・公判を通して報酬算定を行うことが合理的ではないかという気がいたします。

□ そういう御意見ですが、他の方どうぞ。

○ 私はちょっと違うのですが、前にも申し上げましたように、今の国選弁護においても報酬を決めているわけですけれども、裁判所から見て余りよく見えていないのです。本当はせっかく公的な資金を使っていて、それを有効・適切に支給するべきで、公的なお金を使うためには、非常に能力ある有能な人が力を入れていただいたものはそれなりの報酬を、そうではない事件については、それに比べると軽い報酬でいいのではないかと思うわけです。しかし、今の公判段階の弁護についてもそこがなかなか見えないものですから、前にも申しましたように、報酬については基準額という例が大半なわけですね。それが本当にいいのだろうかという疑問がありまして、特に今度の被疑者についての公的弁護になると裁判所には見えないところがたくさん入ってくる。特に、不起訴になると、裁判所は最初の選任のときには勾留質問等で分かった、しかしその後はどうなったか全然分からない、弁護活動はもちろんどうだったのか分からない。そういうものに対して、もちろん起訴される事件もありますけれども、起訴されない事件についてどうやって弁護活動についての報酬を決められるのだろうか。
  今のような機械的な算定ではなくて、もっと労力に見合った報酬の方が在るべき姿ではないか。特にこれから裁判員制度を導入し、連日的な開廷も必要な事件も出てくるわけですが、その事件に適した人なのか、そうでない人なのかという辺りは、常勤弁護士・契約弁護士を確保している運営主体の方で、この事件はこれだけの経験のある人がやるべきだ、あるいはこれはまだそれほどの人でなくてもいいというような判断をして適切な人を推薦して、その人に対しては適切な報酬を算定・支給していく方がいいのではないか。
  そうだとすると、それは運営主体の方が分かるのではないか。特に確保している契約弁護士あるいは常勤弁護士については報酬額は一律ではないはずですので、そうなるとその辺の算定ができるのであれば、それは運営主体がやってもいいのではないか。運営主体が公正中立な立場というのは意見書にもうたわれているわけで、それが前提となればそのほうがふさわしいのではないかと思います。

□ 一番最後の部分ですが、常勤とか契約による場合は、運営主体から雇用とか契約に基づいてお金が出ていくということなのではないでしょうか。個別の選任行為で選任された弁護人に対して報酬をどう算定して支払を行うか、そちらの方がむしろ中心かなというイメージで捉えていたのですが、そうではないのでしょうか。

○ 運営主体が常勤弁護士にというのは、雇用契約ですから、給与になるわけですね。その常勤弁護士が弁護した場合には、国から支給されるわけですが、それは実際の賃金と同様に考えられるわけですから、個別に選任された場合もそれと似たようなものであれば、それで算出できるのではないか。それに応じてそのような支給ができれば、それが公的資金の一番効率的な使い方なのではないかという気がするのですけれども。もちろん全く一緒とは思いませんが。

□ 個別の事件ごとにアドホックに選任される場合も、常勤とか契約による弁護人に対する給与とか報酬に準じて算定できるのではないかという御趣旨でしょうか。

○ はい。

□ 分かりました。そういう御意見ですが、ほかの方はいかがですか。

○ 意見というか質問ですが、今のお話にもありましたように、公的弁護を確保するためには常勤弁護士が非常に重要であると思うのですが、常勤弁護士にとっては事件のあるなし、あるいは重い軽いにかかわらず、公的弁護の役割・責務として引き受けてやるということになると思います。しかし、その場合には一定の給与というか賃金が保障されているということが伴うと思うのですね。その場合の算定基準という考え方と、契約弁護士が例えば仮に年間10件引き受けますと、その10件のうち1件はなかなか難しい、努力が必要だけれど、あとの9件はまあまあ相対的にそれほど努力等がなくてもできるかもしれない。その苦労された1件についてそれなりにしっかり評価をして算定をするということになると思いますし、一般の弁護士さんの場合も、事件の1件ごとに考えていく仕組みを一方では維持する必要があると思いますが、他方ではそういう算定の仕方とは違う、常勤弁護士の場合にはもちろん努力も評価しなければいけないけれど、安定的に決まった報酬が支給されるものが、両方相まって公的弁護が成り立っていくということになるかもしれない。
  そうするとその算定の意味ですけれど、○○委員がおっしゃったように、努力などが反映されるというよりは、1件でこのぐらいの期間かかったから幾らということが現行では相対的に多く行われているとするならば、公的弁護制度が導入された場合に裁判官でもなかなか難しい算定を、多くの事件について、これは契約弁護士、これは常勤弁護士というふうに、あるいは一般の弁護士さんにも御協力いただくことは相変わらず続くでしょうから、そういう中でだれが最も客観的にできるかという問題提起だと思いますが、弁護士の類型が多様化してくるので、その類型ごとに算定を考えるのか、そうではなくて一律に今までのように1件ごとに算定していくということを考えるのかという切り口が必要ではないかと思います。特段意見があるわけではなくて、一緒でいいのか、別にした方がいいのかというところが気になりました。

□ 形としては三通りあって、一つは、常勤ということであれば、その人に対する報酬は賃金ですね。その場合も、運営主体に入るお金の流れがどういう形になるのかによって二つの系統があり得て、交付金とか予算の形で国から入って来て、そこから賃金が出るという形のほかに、いわば運営主体が事件を請け負ったと観念し、裁判所から出るかどうかは別として、請け負った事件数に応じて報酬が運営主体に支払われるという形も考えられなくはないと思うのですが、どちらかというと交付金とか予算で運営していくというのが通常の考え方だと思います。もう一つは、個別選任の場合で、これは今の国選の場合に近いイメージだと思います。その間にあるのが契約型の場合で、これがいま一つはっきりしていなくて、一定程度の件数をやってもらうという契約をした場合に、総体としていくら支払うという契約をするのか、それとも1件1件の報酬の積み重ねで支払うのかのいずれかになる。そういうことではないかと思うのですが、今の議論としては、個々の事件を念頭に置いた場合にどういう報酬の算定があり得るのかが最も基本になるように思いますね。

○ 少なくとも選任・解任は訴訟法上の裁判所が行うということは審議会で決まっているわけですね。運営主体で算定可能ではないかという御意見もあったのですが、具体的な事件の複雑さ、難易度も報酬算定のときは考慮してやるべきではないか。そうすると、少なくとも公判段階において、これが一番客観的に分かるのは裁判所だろうと思います。運営主体が個々の事件について中に入っていって、どういうことをやったかをチェックするのは恐らく現実的には不可能な話で、そこまでやるとしたらものすごく大きな運営主体になるでしょう。その組織をどうするかは想像がつかないのですが、考えられる中でどこが一番適正に判断できるのかという観点から客観的に見た場合に、そこはいろいろな要素を考えても裁判所ではないかという気がします。
  先ほどはある程度できる人でこういう人を選んでというお話があったのですが、選任・解任は裁判所がやるわけですから、推薦があるかもしれませんが、選任・解任して公判段階では訴訟活動も見えていることを考えると、ほかのところはなかなか裁判所以上に算定を適正に行うのは難しいのではないかという気がします。

□ いかがですか、○○委員。

○ 今は弁護士会に推薦をお願いしていて、この事件ではこの人にと言われると、裁判所としては、たとえこれだけの大先生に、多分これは簡単な事件だろうから、この人の時間コストからいってこういう事件でペイするのかなと思う場合でも、選任せざるを得ないわけですね。しかし、それは本当はよくないのではないか。初めて法廷に立ち会う人と何十年かやっている人とではそれぞれ違って、それなりのコストも報酬も当然違う。そして、十分やっていただいた人には十分な支払ができるというのが本来の姿ではないか。
  そうだとすると、客観的に見て、裁判所も客観性だけはもちろん間違いなくあるわけですけれども、資料としては見えないところがあるのは今でも同じなわけですね。準備のためにどれだけやったかは、法廷からある程度垣間見てはいますが、それだけではよく分からない。運営主体なら、どれだけの接見をして、どれだけの準備をして、どれだけの時間を使ったかということも資料を出させれば分かるわけですから、そういうことからすると、推薦・報酬支給のあたりは運営主体でできるのではないか。

□ 今、見えないところとおっしゃった準備の段階ですが、それについては、いずれにせよ当の弁護人から何らかの形の報告書を出してもらう。運営主体に出すのと裁判所に出すのと、理屈としてはどちらもあり得ると思うのですが、いずれにしろ、そういうものを踏まえて、どこが決めるべきかという話だろうと思うのですね。
  さらに、捜査段階についてはより見えない部分がありますので、これも同質の問題かもしれませんが、そこも含めて見えない部分を適切に評価するためにはどうすればいいのかという点について、お二人の御意見は大体分かったのですけれども、ほかの方はいかがでしょうか。

○ 報酬の算定・支払といいますとかなり事務的な作業という感じになるのですが、今回の裁判員裁判制度、あるいは公的弁護制度がうまく動くかどうかは、本当は今議論されているこの問題が、きちんと弁護士から見て納得できるような形で仕組まれるかどうかにかかっている問題だと思うのですね。そういう意味では非常に重要な問題だと思います。なぜかといえば、要するに刑事弁護を一生懸命やろうという弁護士が今より圧倒的に多く集まらなければ、それが常勤であれ契約であれ個別弁護であれ、動いていかないわけですね。ところが、なぜそれほど刑事弁護が熱心にされないかというと、一つは採算に合わないという問題があるわけで、もう一つは先ほど○○委員から定額制でということが出ましたけれども、自分の能力あるいは熱意がきちんと算定に反映されていない。絶対額も少ない上にそういうこともあって、嫌われている分野になっているわけですね。ですから、そういう色彩を引き継いだまま新しい制度をつくっても、決して良質な刑事弁護士が多く集まることは期待できないと思うのです。そういう意味ではここは非常に重要な問題で、むしろどちらが算定する義務を負うかというよりも、どのように算定するのかという方がまず大事であるということです。
  その算定方法をどうするかによって、裁判所でもできるとか裁判所にはできないということになるのではないかと思うのです。そうなると、今の国選が公判を前提にして動いているので公判を前提にした議論をされていますが、捜査弁護と公判弁護は基本的に違うわけです。例えば、公判弁護はある程度定型化しているけれども、捜査弁護はその人の裁量というか着想によって弁護内容に大きな幅が出てくる。上下にも幅が出るし右左にも幅が出てくるわけですね。弁護人の熱意や能力が反映されて結果が左右される幅が公判に比べるとはるかに大きい。例えば、ある弁護士がやったら起訴猶予になって、ある弁護士がやったら起訴されてしまうということもあるだろうし、ある弁護士がつけば嫌疑不十分になり、ある弁護士がやったら起訴されてしまうということもあるだろうと思います。そういう意味では、99.9パーセント有罪になっている今の公判弁護とはかなり風合いが違うという前提で弁護活動を考えなければいけないし、そういうものとして弁護活動の報酬の算定方法を考えていかないと、決して弁護士は集まらないと思うのですね。
  どういう方法で算定するかになると、また非常に議論になるのですが、基本的にはまずどういう弁護活動を想定しているのか。例えば捜査弁護は接見に行けばいいというようなことを考えているのか、それとも、もちろん接見は行くのですが、被害者側の関係者に任意で当たって捜査妨害にならない範囲できちんと調査をして、それで集中審理に備える、あるいはその前の準備手続に備えるというところまで想定するのか。また、現在の国選弁護では、示談は国選弁護人の仕事の範囲外とされているようですけれども、しかし捜査弁護の中における示談交渉は非常に大きな意味があって、示談ができれば起訴猶予、できなければ公判請求という案件はたくさんあるわけですね。そうすると示談交渉を捜査弁護の範囲内と見るのか見ないのかという問題もあって、その辺が解決されない限り、決して実際に動いていく制度にはなり得ないと思うのです。そういう要素をきちんと見ると、定額で捜査弁護は30万円とか10万円という形で決めることはおよそ不可能ではないか。一定の幅を決めて、その中で決めていくということになると思うのですね。
  そういう算定方法を採るという前提で、それを運営主体がやるか、裁判所がやるかということになろうかと思いますが、これは運営主体も結局は見えないのですね。実際に例えばA弁護士が捜査のときに何をやったかということは見えないし、見えないという点では運営主体も裁判所も基本的には同じだと思うのです。そういう意味では、算定方法がきちんと出来上がって、一定の要素を当てはめれば機械的に金額が出てくるようなものにすれば、極端なことを言えば、運営主体がやろうが裁判所がやろうが同じようなもので、あとはその事務量をどちらが負担するかという話だろうと思うのです。
  一方、公判は裁判官が一番よく見ているわけで、例えば反対尋問の巧拙、弁論の巧拙、熱意は裁判官が一番よく知っているわけで、運営主体がその分まで見て、そこを算定するのはほとんど不可能というか、そこも運営主体がやるというのは無駄だと思うのですね。そうすると、公判段階の報酬の算定は裁判所というのは動かないということになると、捜査弁護についても、算定方法の枠組みをきちんと決めた上で、その事実関係は当然、当該弁護士が報告をするわけですけれども、それを前提にしてそれも裁判所でやるのが私は制度の仕組みとしてはスムーズではないかと思います。
  算定する枠組みも何も決めないで、あるいは非常に抽象的なものを決めて、あとは裁判所に丸投げをするようなことは、特に捜査弁護については裁判所もたまらないと思います。ですから、きちんとした枠組みを決めて、ある程度機械的にできる、当該弁護人から出された報告書を信頼するという前提に立てば、機械的にできるという仕組みにして裁判所にやっていただくのが筋だと思います。

□ 分かりました。「定額制」といっても、今おっしゃったようなのも一種の定額制ととらえることも考え方としてはあり得ますね。必ずこの額でなければいけないということではなくて、幾つかの幅があって、そこにいろいろな要素を入れていくとしても、客観化できるもので算定するという御意見ですね。

○ そうですね、なるべく客観化して・・・。

□ ただ、客観化できない部分、そう機械的には算定できない部分もあって、そのところは非常に厄介ですね。

○ そういう部分は残るのだけれども、それをなるべく少なくするということだと思うのですね。

□ 分かりました。そういう御意見が出ましたが、ほかの方はいかがですか。

○ 今の御意見を踏まえてですが、その前提として、今日事務局が示された事務の例の中には入っていないのですが、報酬算定基準をどこがどのようにつくるのかは一つの事務としてあるのではないかと思います。これをどこがやるのか、裁判所がやるのか、あるいは運営主体がやるのかということになろうかと思いますが、私どもが考えた中では、運営主体の事務になるのかなと思います。その場合に、これまで報酬基準の策定に関しては、弁護士会の意見が余り反映されないままで法律で決められていて、報酬増額については、弁護士会として最高裁に陳情し、それをもって最高裁の方が財務当局にまた更に交渉されるという形で行われてきたわけです。
  この辺の問題につきましても、この際、今、○○委員がおっしゃったように、弁護士が今後どういう活動をしていくか、充実した弁護活動をするためにも最も根幹部分に当たりますので、報酬基準の策定の事務自体についても何か具体的なものをこの検討会で検討して提起する必要があるのかなと思っております。

□ 算定基準を運営主体が策定すべきだという理由はどういうことでしょうか。

○ 意見書の中身からしますと、裁判所は選任・解任で、それ以外の運営に関する事務ということになっていますので、その中に入るのかなと私どもは理解しました。ただ、それが裁判所ということも、不可能ではないと思いますけれども、いずれにしましても、報酬基準については、弁護士会も入り、あるいは裁判所も入り、一般の市民も入るというような委員会でもつくって検討して行くことがぜひ必要になるのではないかと思います。

□ 弁護士会の意見も反映させるような決定過程で決定されるべきだという御意見ですね。ほかにこの点について御意見をどうぞ。

○ 違った趣旨の意見ですが、公的弁護制度が裁判員制度の運用のために必要不可欠な制度であるということが大前提ですけれども、もう一つ別の側面があると思っています。それは、刑事弁護が嫌われる分野だという○○委員の御指摘がありましたが、嫌われる分野にしない、そういう制度につくることが重要だと思います。刑事専門の弁護士を日本の社会の中にもっと育てて、この運営主体がその役割を担っていく制度ができていけば、そこから更に刑事専門の裁判官に任官していく人も生まれてくるかもしれない。将来いろいろな発展性があると思うのです。そういう制度に公的弁護制度はつくらなければいけないだろうと私は思っています。
  意見としては、先ほどの○○委員にかなり共感する部分があるのですが、そういうふうに考えると、常勤弁護士と、そうではなくて運営主体が個別にあるいは法律事務所との契約を結ぶいろいろな形があり得ると思いますが、常勤の方の場合と個別に弁護士に事件の依頼をする場合と違う算定方法があってもいいのではないかという気がします。それはつまり刑事専門の弁護士の身分保障・収入保障をするという意味合いですが、そういう制度ができれば、たくさんの弁護士が公的弁護を担ってくれると思うのですね。
  その場合には、運営主体の中で、常勤の弁護士はある程度公務員化するだろうと思うのですが、そういう形の常勤弁護士が運営主体のかなりの部分を担当していくことがあっていいのではないかと私は思っています。

○ 常勤弁護士を中心に考えた場合に、今までの国選と感覚が相当違うということを意識しなければいけないだろうと思う。というのは、確かに事件の弁護を担当してこれに対する報酬という面があるけれども、運営主体があって、そこが主体になっていろいろな権利・義務関係が出てくる。そういうことだとすると、運営主体と常勤弁護士の関係、あるいは運営主体と契約弁護士との関係が出てくるだろう。そこを基本にしていかなければいけない。
  そうなると、事件の報酬はどういう形で出てくるかというと、被疑者に負担させるという形で費用が出てくる。それ以外では出てこないのではないか。このように、運営主体と常勤弁護士との関係を中心に考えていくべき問題ではないかという気がします。もしそう考えると、運営主体が支払に関する事務を行うのが筋ではないかという気もしますが。

□ 個別にアドホックに選任する場合も、一括して運営主体との関係で考えるということですね。

○ そういうことになりますね。

□ そのことと、個別の事件で報酬を算定し、被告人に負担させることとの関係はどのようにお考えですか。

○ 例えば、独立採算制にしてすべて報酬で賄わせるとすると今のような発想が出てくると思うのですが、公的弁護、特に常勤弁護士にもう少しいろいろな役割を担わせようと考えるとすると、恐らくそれだけではとても足りないだろう。むしろ、○○委員が先ほど言われましたように、ある程度そこで一つの社会的な地位が確立できるというか、生活もそれでちゃんとできるという程度のことまで考えてやって行かなければいけない。
  そうすると、事件の報酬は基本にはなるけれど、それだけではとても全てが賄いきれない場合が出てくるだろう。そういう場合も考えてすべての報酬を決めてやらなければいけないのではないか。先ほど公務員化という話が少し出ましたが、それと同じ発想を採らなければ、いわゆる常勤弁護士にはきちんとした人がならないおそれが出てくるのではないかということです。

□ そうすると、常勤であれ個別選任であれ、運営主体と被告人との間で求償ということが生じるという捉え方ですか。

○ そうですね。

□ 国との間では、求償・負担の関係は直接には生じないということでしょうか。

○ 恐らく運営主体と国との関係では生じますけれども、そこから直接常勤弁護士まで直ちにストレートにいくのかどうかは、ワンクッションあってもいい。あるいは・・・。

□ ちょっとよく分からないのですけれど。

○ つまり、運営主体にどの程度独自性を持たせるかということとの関係だと思うのですが。

□ 個別選任の場合はどう位置付けるのですか。

○ 契約・・・。

□ 常勤ではなくて個々の事件で選任する場合も結局、運営主体との個別事件における契約関係だと捉えるのですか。

○ ちょっと待ってください。運営主体があって、常勤弁護士がいる。

□ 常勤弁護士はいいのですが、常勤弁護士だけでは賄えないとなると、次に契約弁護士が出てくるわけですけれど、契約弁護士というのは、一般には、一定の期間にこれだけの事件をやってくださいという意味の包括的な契約を結ぶ場合を指しているわけですが、そうではなくて個別の事件で選任された弁護士との関係でも運営主体との間で契約関係が生ずると捉えるのかどうかですね。

○ それは両方あり得ると思うのです。つまり、先ほど言ったように最終的に弁護人を付するのは、先ほどの意見書のとおり裁判所の責任であることは間違いない。ところが、その契約の主体になるのがどちらかというときに、運営主体にもう少し独立性を持たせて、そことの契約ということも形としてはあり得る。

□ 私にはまだよく分からないところがあるのですが、要するにその場合も含めて、金銭的な債権債務は運営主体との関係だけで発生するという形にするのが望ましいということですか。

○ そこのところはいわゆる国との関係もあるので、トータルで考えれば同じだろうということは言えると思います。

□ 巨視的に見ればそうかもしれないのですが、今は三つの位置関係、裁判所と運営主体と弁護人との法律上の関係をどのようなものとするのかということがまさに問題になっているので、そこをどういうふうに整理されているのか、ちょっとまだ・・・。常勤の方については、イメージがよく分かるのですけれども。
  この問題だけに集中しますとこれだけで2時、3時に及びかねませんので、ほかに御意見はありますか。

○ 運営主体の事務の関係で選任・支給・回収に焦点を当てて議論されたのですが、運営主体をどういうふうにイメージするのかは、まだよく分かっていないところがあって、皆さんもそうなのかもしれないのですが、私などは最終的には公設弁護人事務所のような形態、常勤が主で、そこでかなりのものが賄えるというものが適切だと思いますが、当然それまでの移行形態はいろいろあり得ると思います。それを考えると、もちろん事務所自体のコスト計算など組織の運営に必要な事務は、組織である限り当然あるのですが、ほかにも、専門の刑事弁護士を育てる、刑事弁護に有益な情報を収集して、そしてみんなに提供する。あるいはそこの人に研修させる。そういう刑事弁護に関する一つの情報の蓄積・研修センターのような事務もあるのではないか。
  そういうことから考えると、公的な弁護はどうしても法律扶助的な性格は否定できないのではないか。法律扶助は、本来は被告人のため、あるいは被疑者のために弁護人がいて、その弁護人に払う資金が無いから、それを援助する。それは民事とも同じ問題があって、審議会意見書にも民事の法律扶助に関する拡充の部分には、刑事との運営主体の一体化も考えて総合的な検討の要があるという指摘もあるわけですが、そういうことも考えなければいけなくて、運営主体を大きく考えているのかもしれませんが、そのぐらいの役割は期待してもいいのではないかと思います。

□ 意見書で法律扶助との関係について触れているのは、これまで法律扶助の主体ないし中心になってきた組織を拡充していって運営主体にするというアイデアも出されて、その案も別に否定されたわけではなくて、可能性の一つではありますので、そういうこともあり得るということを踏まえて、民事法律扶助の制度の方を検討してくださいという意味なのですね。
  ただ、意見書が提案している公的弁護の制度が法律扶助型かといいますと、選任行為との関係では明らかに違っています。裁判所により選任されますので、その意味では国選型であり、これに対して法律扶助は基本的には私選で、依頼者個人が支払うべき費用を扶助協会や公的な性格のお金から援助するというものですから、そこのところが違っている。ですから、裁判所の選任行為を通じて国が弁護人を付す場合に、そのお金をどこから出すのか、その事務をどこに持って行くのかという問題があるわけです。

○ 先ほど現在の国選弁護人の推薦の問題で事務局の方から御説明がございました。御説明の中で、事件ごとに裁判所が弁護士会に依頼している場合、あるいは事件ごとには依頼していないけれども事前に名簿を出されている場合とか、個々の弁護士と折衝して選任している場合ということがございましたが、事件ごとに裁判所から弁護士会に依頼され、弁護士会が事件ごとに推薦している会は、本庁レベルで言いますと50の弁護士会のうち40の会がそうなっています。事前に名簿等を提出しておりますのは4会ございます。名簿等を提出されずに裁判所が直接弁護人を選任しているのは6会で、本庁レベルで考えますと大半の弁護士会は弁護人を推薦する機能を持っているわけです。そういうことで、事務局が出された資料5-2の下欄に推薦事務を含めて「弁護士会の事務はすべての弁護士会が行っているものではない」と書いてありますが、これはそういう意味で大半の弁護士会では推薦機能を果たしていると言えるわけですね。
  この推薦の問題は、公的弁護を担う担い手としての資格を付与する、あるいは個々の弁護の割当ての過程では、弁護人あるいは弁護活動の自主性・独立性ともかかわる問題でもありまして、そういうことから考えますと、弁護士会による推薦は、常勤弁護士あるいは契約弁護士という範疇をどういうふうに考えるかは具体的にはこれからの論議になるかと思いますが、そういうものも含めて弁護士会が何らかの形で推薦にかかわっていく必要はあるのだろうと私どもは考えております。また、そういう制度がつくられるべきではないかと思っています。

□ 報酬の算定の問題とはちょっと違う事柄ですね。

○ ちょっと違いますが、座長の方が選任に関する事務は一応終わったものとして議論を進めたいということですから、そういうことで少し前にさかのぼって指摘させていただきました。

□ 分かりました。御注意いただいたということで、承っておきたいと思います。

○ これは前から感じていて、契約弁護士という場合の位置付けを恐らく私自身が理解できていないからだと思うのですけれど、これは運営主体との関係ではどういうようにイメージすべきなのですか。

□ イメージというのは・・・。

○ つまり、特別案件については裁判所と弁護士と直接契約をして、弁護人となってもらうということも想定しているのか。あるいはそうではなくて、運営主体があってそことの関係で契約弁護士が出てきて、個々の事件について、裁判所の方で選任するというイメージになるのか。

□ 審議会の意見書で言っている「契約弁護士」というのは、個々の事件ごとにアドホックに選任される場合までそう呼んでいるわけではなく、先ほどお話ししたように、一定期間にこのぐらいの事件をやってもらうという形で、定常的あるいは一括して弁護士個人か弁護士法人と契約しておく。そういう形で請け負ってもらう場合を意味しているのです。

○ その契約のもう一方の主体がどこになるかということですけれども。

□ それは、運営主体との契約ということです。それと個別事件ごとにアドホックに選ばれる弁護人の場合とは異なる。アドホックに選ばれる場合も、裁判所が今の国選弁護のように命令でやるという形のほかに、運営主体を媒介にすることが可能ならば、そこと個別の契約を結ぶということも理屈の上ではあり得るかもしれないのですが、審議会の意見書が「契約」と言っているのは、そこまでは含んでいないと私は理解しています。

○ もしそこで運営主体が出てくるのだとすると、当面の契約主体も運営主体がなってもおかしくないだろうという意味で先ほどから述べていたのですけれども。

□ 裁判所が選任をして一定の仕事をしてもらうという場合にそれに対する報酬をどこが算定し、どこが支払うのかということは、それとはちょっと違う問題ではあるのです。

○ 事件の報酬というのか、あるいは・・・。

□ 今議論しているのは、個々の事件について、今の国選のような選任の制度を前提にして、そういうものをそのまま延長していくのか、それともその点も変えていくのかということだと思います。

○ もう1回明確にしておきますと、今の国選弁護制度を前提にするとどうしてもそういう議論になってしまうので、先ほどから出ているように、運営主体をもう少し前面に押し出した形をつくった方がいいのではないかというのが私の意見です。

□ 分かりました。まだ御意見があると思いますが、最初のところで既にかなりの時間を使ってしまいましたので、先ほどの御意見の中には支給をどこが担当するのかということと報酬算定を結びつけて御議論しておられる方もいたところでもあり、そろそろ、支給に関する事務はどこに帰属させるべきなのかということについて、先ほどの事務局からの会計法についての説明などをも踏まえて、御議論いただければと思います。ここはテクニカルな問題でもあり、かなり難しいところなのですが。
  ○○委員に質問して申し訳ないのですが、報酬算定を運営主体がやるという御意見だったと思いますが、その場合に支払に関する事務はどういう位置付けにすべきだとお考えですか。お金を実際に支払う事務で、これまでの議論とは性格が違うところがあると思いますけれども。

○ その辺は余り考えたことがないのですが。

□ ほかの方はいかがですか。こういう点は、私なども弱い部分ですけれども。

○ 支給ということで、金の性格が個々の事件の対価か又は育成的なことも含めてかは、また別の論点かと思いますが、それはさておき、昨今の行政改革あるいは予算の執行のより適正化という傾向の中からしますと、少なくとも国費の支給をどこか別法人に委託して裁量権を持たせることについては、特段の合理性・必要性が求められることになろうかと思います。単に支払の委託ないし代行にとどまらず、そこが更に裁量権といいますか評定権といいますか、そういうものまで持つことについてはかなりギリギリと合理性・必要性が求められることになろうかと思います。かつ、この場合には委託先から支出され、別の場合には国から直接出るという二本立てになると、一層難しい問題になってこようかと思います。

□ 国民から預かったお金なので、国が責任を負うのが原則になっているということでしょうか。

○ 原則でありまして、それと外れたものは全く切り離して補助金なり何なりということで、丸投げはまた別の理屈でしょうが、個々に算定し、個々のものに対してある程度対価的なものとして出るのであれば、それは国が責任を持てというのが現在のシステムだと思います。

□ 裁量権というのは、単なる支払だけではなくて、額の決定も含むということでしょうか。

○ 含むことになろうかと思いますね。

○ ○○委員がおっしゃった行革の問題は、後の運営主体の組織の問題と非常に密接に絡んできますね。報酬の関係で言えば、私の意見は、報酬の算定は一応裁判所だろう。そうなると支給も当然裁判所になる。
  もう一つ、○○委員の御指摘との関係で言えば、今まで裁判所で報酬の算定をやり、支給をやっていたのに、なぜこれを別のところに移すのかという理屈は、今おっしゃった観点からみると非常に難しい問題だと思います。よほどの合理性・必要性がなければ、今までそこでやってきたものを行政の分野に移すとか、ほかの分野に移していくということは非常に難しいのではないかと思います。

□ 国家機関でなければいけないという部分は、仮に運営主体が国家機関的なものであれば、クリアするわけですね。

○ 会計法は、ですね。

□ 今おっしゃったのは、そのもう一つ先にある問題ですね。今裁判所の方で現に行っているものをなぜほかに移すのか、ということですね。

○ そうです、それが一つあると思います。

□ その辺も含めて御意見はいかがですか。

○ よく分からないのですが、必ずしも選任と支払は同じでなくてもいい。先ほど更生会社の例もありましたが、選任したからといって、国選の報酬を国の債務としないことも考えられるのではないかとは思うわけです。もちろん国のお金の支出事務を勝手に丸投げしていいはずはないわけで、そういう意味では適正な支給を当然しなければいけないのですが、そのための適切な支払支給額の算定ができるのはどこなのかということと絡んでくるのではないかと思います。

□ ○○委員が言われた問題点はどうでしょうか。今現に裁判所で行っているではないか、それをなぜ別の機関に移すのか、ということですが。

○ もちろん今もやっているわけですから、ほかになければ、それはそのままなのは当たり前だと思いますが、今回被疑者弁護と被告人の弁護との一貫したものを考えていって、それがどちらの方が、ストーリーとしてというか、適切な目的を達せられるのかという問題だと思うのですね。もし運営主体の方が被疑者弁護に対して適切な報酬額の算定等もできるとなると、そちらの方が支給する。被告人の弁護についても、今まではほかになかったから裁判所がやっていたけれども、他の機関がもっと適切にできるならそちらへ動かした方が、公的な資金の支出としてはよりふさわしいわけで、その方が合理性があると言えるのではないかと思います。

□ 問題は、よりふさわしいと言えるかどうか、ですね。

○ その辺はもちろんいろいろな考え方があり得るとは思います。

○ 要は公的弁護をどう位置付けるかという話と絡まると思うのですね。被疑者段階、公判段階を含めて私選があって国選があって、しかし今の国選だけではうまくいかないので、いざとなったときにいつでも弁護士を供給できる、いわゆるセーフティネットとしてのものだとすると、当然新しい弁護士の確保は新たな事務として生じるわけですね。恐らく新たな組織、運営主体ができて、そこでやるのはいいのですけれど、例えばそこで常勤あるいは契約弁護士だけでは、今の裁判制度を含む新しい司法制度の中の弁護士を確保できないとなると、従前どおりの個々の、先ほど座長がおっしゃったようにアドホックに裁判所が選任する国選弁護も当然用意しておかなければいけない。
  その新しいところ、例えば運営主体が雇っている常勤とか契約弁護士のところの事務は運営主体に任せてもいいのですが、そうでないところ、今まで裁判所がやってきた残すところをなぜこちらに移すのか、その必要性があるのかということになると本当に難しいと思いますね。

□ その点は、○○委員は、捜査段階のところが膨らんでくるので、そこを含めて一貫して報酬を適切に算定できるのはどこかということで決めていくべきだという御意見ですね。

○ はい。

□ この点につき、ほかに御意見はございますか。よろしいでしょうか。両様の考え方があることが分かったと思います。
  次に、弁護報酬の回収に関する事務ですが、この点について、そもそもどういう仕組みにするのか、現在は訴訟費用に含めて裁判所が負担を命じ、それに基づいて徴収していく形になっていますが、そういう仕組みを維持するのか、それとも別の仕組みにするのかということを含めて、運営主体がその事務を行うべきなのかどうかという点について御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
  ○○委員、いかがですか。

○ 回収事務ということになりますと、以前に○○委員からもお話がございましたが、実際に回収を実現するためには大変な労力がかかることになるようですね。運営主体がどういうものになるかはペンディングなのですが、そこが担い切れるようなものになるかどうか。私どもの構想でもその辺は回収するということにはなってはいるのですが、回収をどのようにしていくかということまでは具体的に議論は進んでおりませんで、それは運営主体の作業にはなるかなということぐらいで、具体的にそれ以上にどういうふうにやれるのだろうかということになるとまだ充分検討できてはおりません。
  その前提としては、訴訟費用として裁判所の決定の中で負担を命じる、命じないということになるほかないのではないか。ただ、例えば不起訴になった場合にはどうするのか、不起訴の場合も嫌疑不十分、嫌疑なしの場合はいいのですが、起訴猶予の場合はどうするかの問題があるのですね。起訴猶予の場合でも、不起訴になれば負担させないということにならざるを得ないと思うのですが、起訴された場合には最終的には判決の中で訴訟費用の一部として理解していくほかないのではないかと思います。

□ 後の方でおっしゃった問題は少し違う性質の問題ですね。どういう場合に負担させることができるのかということでしょう。

○ はい。

□ 前の方でおっしゃった捜査段階のどの範囲かは別として、不起訴事件について費用を負担させるとした場合に今のような形は採れないので、どういう形があり得るのか。それはまた別の事柄ですが、非常に重要な問題ですね。

○ そうであれば、裁判費用は請求できないことになるのかなと思います。

□ できないということになれば、事柄は簡単になるのですけれども。

○ それを個別に不起訴裁定書の裁定主文で分けていくのはなかなか難しいかなという気がします。

□ 一番前のところのお話で、今のような方式でいけば訴訟費用負担の裁判をして、それを執行する形になると思うのですが、仮に運営主体がその事務を引き受けることになると、ほかの訴訟費用の負担との整合性をどうするのかという問題があるのですけれど、仮にそうした場合に、徴収の仕方はどういう形になるのでしょうか。運営主体の性格にもよると思いますが、運営主体がこれだけの費用を払ってくださいと言う場合、今の裁判とその執行という形ではなくなりますよね。

○ そうですね。

□ 基本的には民事の債権・・・。

○ 債務名義を与えることは可能になるのでしょうね。

□ 支払命令なりそういうものですか。

○ 訴訟費用負担の裁判に債務名義の効力を与えることは可能だと思います。

□ いずれにしろ裁判という形にしないと難しいでしょうね。

○ そうなんですね。

○ 訴訟費用の回収は、これまでどおり検察庁に頑張っていただく以外にないのではないですかね。

○ それも一つの考え方ですね。

○ もっと極端な意見を出すとすれば、民間に委託してしまう。

□ 徴収事務だけですね。その場合も、前提として裁判は必要だということでしょうか。

○ 必要になりますね。

● 徴収事務と会計法の関係でも同じ問題がありまして、会計法上、国の歳入機関でなければならない。

○ そうするとやはり検察庁に頑張っていただく以外にないですね。

○ 訴訟費用の関係で言うと、実際に弁護人に報酬を支払った、それを被告人に負担させるということだから、かなり明確なものとして裁判で命じることができるけれども、公的弁護人については実際に支払っているわけではなくて、そこに多分かかるであろう額ということになってくるのではないですか。ですから、今までの訴訟費用の負担と少しイメージが変わってくるところが出てくる。

□ そこもちょっと悩ましい問題ですね。実際に支払ったということならば、個別に選任した弁護人については、どこから支払われるかは別ですけれども、報酬の形でお金が支払われますので、比較的簡単ですが、常勤の弁護人で給与の形で受け取っている場合には、同じような方法では取れないわけですね。そうすると、どちらに振り当てられるのかによって、被告人としてはその報酬分を負担させられたり、させられなかったりという差が出てくることになる。

○ だから最初に、今までの報酬というイメージで考えたら具合が悪いと言ったのはそういうことなので。

□ なるほど。そうだとしますと、どう考えればよいのですか。

○ もし訴訟費用として考えるのだとすると、恐らく今までの訴訟費用の観念では、現実に支払ったという形が出てこないといけないと思うのですね。ところが、これは観念上の問題だと思うのです。そこのところを訴訟費用の中に入れることができるのかどうか。これは一つの問題になってくると思うのです。

□ そういうものはすべて、そこに入れないということもあり得るということでしょうか。

○ 訴訟費用の範囲について訴訟費用法というのがあって、そこを改正することで賄えるだろう、これは確信はないけれども。

□ もし負担させるとすれば、一種の手数料というか利用料として一定額を徴収するということにするというのも一つの考え方ですね。

○ それだと割と簡単になってきますけれども、それ以外の報酬的な考え方は観念的なものなので、恐らく具体的に課するのは難しいだろうということです。

□ 分かりました。ほかに御意見はどうですか。
  この辺は、今御指摘いただいた点を含め、もっと詰めないといけない問題だと思いますが、これまでの議論を踏まえて更に事務局でも詰めていただき、問題を整理してまた次のステップで、議論させていただければと思います。
  本日はまだ最初のラウンドですので、問題点がどこにあり、現実的な制約や条件はどういうものなのかということを、完全にかどうかは別として、認識したということで、このぐらいにさせていただければと思います。
  時間が押せ押せなのですが、次の運営主体の組織の問題に移りたいと思います。
  この論点についても、まず事務局から説明していただこうと思います。この検討の参考のために事務局で用意してくれた資料がありますので、それについての説明も併せてお願いします。

● 2番目の論点であります「運営主体の組織」について御説明申し上げます。
  本論点におきましては、運営主体の組織形態として、どのようなものが適切かについて御検討いただきたいと存じます。
  運営主体の組織につきまして、司法制度改革審議会意見書では「公的弁護制度の運営主体は、公正中立な機関とし、適切な仕組みにより、その運営のために公的資金を導入すべきである。」「上記機関の組織構成、運営方法、同機関に対する監督等の在り方の検討に当たっては、公的資金を投入するにふさわしいものとするため、透明性・説明責任の確保等の要請を十分踏まえるべきである。」「公的弁護制度の下でも、個々の事件における弁護活動の自主性・独立性が損なわれてはならず、制度の整備・運営に当たってはこのことに十分配慮すべきである。」とされております。
  このように、司法制度改革審議会意見書は、運営主体の在り方について、公正中立性、透明性・説明責任の確保等を求めるとともに、個々の事件における弁護活動の自主性・独立性への配慮を求めておりますが、具体的な組織形態については、特に触れておりません。この点について、司法制度改革審議会での議論を見ますと、直接国が運営する場合のほか、特殊法人、認可法人、指定法人など公的性格を持った法人が運営に当たる場合が挙げられたものの、具体的な組織形態については、後の検討にゆだねられたということが分かります。
  したがいまして、本検討会におきましては、これまで御検討いただきました「運営主体の事務」を踏まえ、そのような事務を担当し、かつ、資料5-1に記載しております意見書の要請を満たす運営主体として、どのような組織形態がふさわしいかについて御議論いただきたいと存じます。
  引き続き、資料5-3の用語集等について簡単に説明いたします。
  もとより本資料は検討会における議論の参考として用語の定義や留意点等を記載したものでありまして、事務局において、運営主体として考えられる組織形態がこれに記載したものに限られるとか、何らかの方向性を示すというものではございません。以上のことを前提に説明させていただきます。
  まず、第1の特殊法人であります。特殊法人とは、法律により直接に設立される法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立すべきものとされる法人のうち、後に説明いたします独立行政法人を除いたものであります。特殊法人の例としましては、日本道路公団や日本放送協会などがあります。
  特殊法人につきましては、この後申し上げます認可法人を含め特殊法人等として留意すべき点があります。それは平成12年12月1日に閣議決定された「行政改革大綱」でありまして、行政改革大綱では、「各特殊法人等について、個別の事業の見直し及び組織形態の見直しの基準に基づき、廃止、整理縮小・合理化、民営化、独立行政法人化等その事業及び組織形態について講ずべき措置を内容とする『特殊法人等整理合理化計画』を策定する」こととされ、その後、「特殊法人等改革基本法」に基づき、平成13年12月19日に特殊法人等整理合理化計画が閣議決定されております。その閣議決定では、「廃止又は民営化できない事業であって、国の関与の必要性が高く、採算性が低く、業務実施における裁量の余地が認められる事業を行う法人は、事業の徹底した見直しを行った上で、原則として、独立行政法人通則法及び個別法に基づく『独立行政法人』化する」とされております。なお、特殊法人の新設等につきましては、特殊法人の新設等に関する総務省の審査が行われます。
  次に、認可法人でありますが、認可法人とは、民間等の関係者が発起人となって自主的に設立する法人でありますが、その業務の公共性などの理由によって、設立については特別の法律に基づき主務大臣の認可が要件となっているもので、例としましては、日本赤十字社や国家公務員共済組合連合会などがあります。留意点としましては、先ほどの特殊法人と同様に行政改革の動向等を踏まえた検討が必要と思われます。
  次に、指定法人について申し上げます。指定法人とは、特別の法律に基づき、主務大臣の指定を受けて特定の公共的、公益的事業を実施する公益法人のことであります。指定法人の例としましては、電子署名及び認証業務に関する法律に基づく指定調査機関、民事法律扶助法に基づく指定法人などがありまして、講学上、前者のようなものを行政事務代行型、後者のようなものを民間活動活用型と分類することがあります。
  留意点でございますが、指定法人につきましても、行政改革大綱等の閣議決定に御留意いただくことが必要であろうと思います。すなわち、行政改革大綱では、「国から公益法人が委託等、推薦等を受けて行っている検査・認定・資格付与等の事務・事業について、官民の役割分担及び規制改革の観点から厳しく見直した上で、今後とも国の関与が必要とされるものについては、国自らが行い又は独立行政法人に行わせることとし、独立行政法人への事務移管その他所要の措置を講ずる。これ以外のものについては、当該事務・事業に対する国の関与は廃止するなどの措置を講ずる。」とされております。
  また、国からの公益法人への補助金・委託費等については、「官民の役割分担の観点、限られた財政資金の効率的使用の観点、及び行政の説明責任の確保と透明性の向上の観点から厳しく見直し、その縮減・合理化を進めることとする。」とされております。
  なお、平成14年3月29日の閣議決定である「公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画」では、行政改革大綱を踏まえて検討を進め、集中改革期間に位置付けられる平成17年度末までに行政委託型公益法人等改革について取り組む内容が決定されております。
  次に、独立行政法人について申し上げます。独立行政法人とは、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国自らが主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として、独立行政法人通則法及び個別法の定めるところにより設立される法人のことであります。
  独立行政法人には、役職員に国家公務員の身分を与えるものと、役職員が国家公務員の身分を有しないものがあり、前者は「特定独立行政法人」と呼ばれております。独立行政法人の新設等につきまして、独立行政法人の新設等に関する総務省の審査が行われます。
  次に、3条委員会(行政委員会)であります。行政委員会とは、委員会という名称の合議制の国の行政機関で、国家行政組織法3条により設置されるものをいいまして、具体的には国家行政組織法別表第一に掲げられております。例としましては、公正取引委員会や中央労働委員会などがあります。なお、行政委員会の新設等につきましては、各行政機関の機構の新設等に関する総務省の審査が行われます。
  次に、審議会等について申し上げます。審議会等とは、調査審議、不服審査、その他学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどる合議制の機関でありまして、例としましては、電波監理審議会ですとか運輸審議会などがあります。留意点でありますが、審議会につきましては、平成11年4月27日の閣議決定であります「審議会等の整理合理化に関する基本的計画」におきまして、審議会等の設置については、いたずらに審議会等を設置することを避けるなどの指針によるものとされており、また、新設等に関する総務省の審査が行われます。
  説明は以上のとおりでございますが、先ほど申し上げましたとおり、ただいま申し上げた組織はあくまで本検討会における検討の参考として説明させていただいたものであり、運営主体としての検討の対象がこれらに限られるということではございません。以上でございます。

□ ありがとうございました。会計法以上に難しい事柄ですが、ただいまの説明について御質問があれば。よろしいですか。
  それでは、私から質問させていただきますと、特殊法人、認可法人、指定法人と、法人の形態は違うのですが、いずれの形でも作るのが難しいという点は共通しているということでしょうか。

● 特殊法人、認可法人につきまして、特殊法人等ということで行政改革で一くくりにされておりますので、問題点としては同じだと思います。指定法人につきましても、元々は行政改革大綱で整理・合理化、あるいは補助金、委託金の縮小化が言われております。

□ 独立行政法人の場合には、そういう問題は必ずしもないということですか。

● 独立行政法人の場合には、特殊法人及び認可法人を組織変更して独立行政法人へというのが今の一つの流れでございます。しかしながら、もちろん総務省設置法に基づきまして審査が行われるということになりますので、その必要性・合理性につきまして御検討いただきたいと存じます。

□ もう一つは、実体的にそういうものに馴染むかどうかというところは検討の余地があるということですね。

● はい。独立行政法人の場合は通則法がございまして、この通則法で定める要件に合致するかということの検討がもちろん第一に必要でございます。

□ 分かりました。ほかの方どうぞ。

○ 行政改革大綱の中には、司法改革について少し触れていましたね。司法制度改革審議会の意見などを踏まえて、司法機能の充実・強化を図るための司法制度改革を推進すると。そういう意味では、行政とは別に、司法改革については別の扱いが可能ではないかなという気もしないわけではありませんし、しかも審議会の意見書には、財政面での特段の配慮を求めるということが明確に述べられているところです。行政改革大綱によると、どうも出口がなかなか見つからないような可能性もあるような気もしますが、そういう意味で司法改革については別異の取扱いもあり得るのかと思われます。その辺はいかがでしょうか。是非そうあってほしいのですけれども。

● ○○委員から御指摘のありました行政改革大綱の司法制度改革に関する記載でございますが、閣議決定の前文の最後のパラグラフにおきまして、「これら行政改革の推進に併せ、司法制度改革審議会の意見等を踏まえ、司法機能の充実強化を図るための司法制度改革を推進するものとする」とされております。

□ それでは、質問はこの程度にして、議論に入りたいと思います。
  今の事務局の説明を踏まえるといってもなかなか難しいところがあると思いますが、それと先ほどの運営主体の事務としてはどういうものがあり得るのかということについての議論を踏まえまして、運営主体の組織としてはどういうものが考えられるか、どういうものとするのが適切なのかについて御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。

○ 論議の素材を提供するという意味で、これまで弁護士会で考えてきたことをかいつまんで報告させていただきます。
  弁護士会では、1997年に「被疑者国選弁護制度試案」を策定しております。当番弁護士制度が実施されて5年目にそういうものを策定しました。その当時、5年間の実績を踏まえて被疑者国選弁護制度を何とか実現したいということだったのです。そのときに議論されましたのは、国選案と公選案、当時は「被疑者国公選弁護制度」という言い方をしておりましたが、これは先ほど座長が説明されましたように、国選の場合には裁判所が選任する、公選の場合には被疑者と弁護人が契約はするけれども、それに対して扶助協会等が弁護費用を支援するというものです。国選弁護制度試案の中では、そのうち国選案、要するに裁判所が弁護人を選任していく、つまり被告人段階の国選弁護制度を被疑者段階にも前倒しするという構想を採ったわけです。なぜかといいますと、当時の法律扶助の論議の状況が刑事・少年はどうも法律扶助法には入らないであろうという一つの情勢がございました。また、実現可能性から考えますと、今の国選弁護制度を被疑者段階に前倒しする方が実現が早いのではないかということも考えられました。さらに、全国の単位会への照会をしましたが、やはり国選案を支持する回答の方が多かったということもございました。
  1997年にそういうことで被疑者国選弁護制度試案を策定したわけですけれども、その後に法律扶助制度の論議がまた刑事も含めた形もひょっとしてあり得るのかもしれないという方向性も出てまいりまして、そういうことから1999年に先ほどの公選案を採った「公的刑事扶助要綱案」を、日弁連の委員会の一つである日弁連刑事弁護センターで決議しました。
  さらに、その当時、法曹三者で刑事被疑者弁護に関する意見交換会が行われておりまして、そこで議論する中で、弁護人の選任機関と公的資金を受け入れる運営主体とを分けるということも考えられるのではないかということから、選任は裁判所が行い、公的資金を受け入れてその運営を扶助協会等の扶助団体が行うという構想で、「国費による被疑者・被告人弁護制度の新たな構想」というものを打ち出したことがございました。
  そういう三つの案が並んでいる中で、今回の審議会の意見が出されまして、それに基づきまして、日弁連執行部から刑事弁護センターに具体的な制度案を構想して報告せよということで諮問がありましたので、それに基づいて刑事弁護センターで検討した結果、次のような制度案を考えました。一つは、「裁判所付設型」と呼んでいますが、これは、選任・解任を訴訟法上の裁判所が行い、国法上の裁判所に独立した機関を付設するという構想です。このヒントになりましたのが、検察審査会です。検察審査会は、行政機関ではあるのですが、裁判所の中に置かれておりますし、予算についても経費は裁判所の予算の一部に計上されているようです。そういう意味では内閣の統括からも離れているということで行政から独立した機関であるわけですね。このような検察審査会と同様の機関を新しい立法によって設立して、そこが運営主体になるということが考えられないかということです。もう一つは、先ほど事務局から御説明のありました3条委員会、行政委員会です。これは各省庁の所管にはなるわけですが、例えば公正取引委員会や中央労働委員会はそれぞれ独立して権限を行使していて、各省庁からの独立性も認められているということで、我々は「独立行政委員会型」という呼び方をしております。この二つの方法が考えられるのではないかということになりました。そしてその際、独立行政委員会を考えた時点では、人権擁護法に基づく新たな人権救済機関ということも念頭にありまして、そこが担う可能性もあり得るのではないか、それが現実性があるのではないかとも思われましたが、現段階では人権擁護法に対して弁護士会は反対意見を持っておりますので、そうすることはなかなか難しいかなという感じはしております。
  もう一つ忘れてはならないのは、財団法人法律扶助協会です。この法律扶助協会につきましては言うまでもありませんが、刑事あるいは少年に関して当番弁護士制度を支えて、この10年間刑事被疑者弁護人援助制度あるいは少年付添人扶助制度を実施してきたという実績もあります。しかも、それは本部があると同時に各支部もありまして、そういう実績と経験からして、公的弁護を担うには最も適切な機関ではないかなという気はしております。ただ、法律扶助協会につきましては、現在は法務省の直接の監督を受ける指定法人になっているわけで、この点について、日弁連では法務省が直接監督機関になるのは望ましくないのではないか、特に法務省には検察庁がございますし、法務省の首脳の方々は検事でおられるということで、その方々の監督を受けるのは望ましくないのではないかという意見もあります。そこで、法務省の直接の監督下にあるのではなくて、例えばこれが法務省以外の別の省庁の所管になるということがあるか、あるいは少なくとも先ほどの裁判所付設型の独立機関あるいは独立行政委員会から扶助協会が指定法人として指定されて現実的な事務を担っていく。そういうワンクッションを置いた形で具体的な任務を担っていくのがよいのではないか。とりわけ公設弁護人事務所あるいは契約弁護士などは扶助協会が担うのが最も適切ではないかという意見が非常に強くございます。この間、日弁連の方では刑事弁護センターの方で策定した案を全国の単位会等に照会しておりまして、その回答がまだ全部ではありませんが、来つつあって、その中では裁判所付設型が最もよいという意見、その際にぜひまた法律扶助協会を関与させるべきだという意見が多数を占めている状況です。
  したがって、具体的に幾つかの案をつくっただけでどれかということはまだ申し上げる段階ではございませんが、そういう検討状況にあります。具体的な組織とすれば、中央に委員会のようなものをつくり、地方にもそれを支える委員会をつくって運営していくということになるのかなと。アメリカなどでは連邦司法会議というのがあるようですし、あるいは理事会とかボードというようなものがつくられているようですので、それに類似した合議制の機関が中央にあって、それが全国の各地裁あるいは弁護士会が支えていくような地方組織もつくっていくという構想になるのかなということで議論しているところです。

□ ありがとうございました。扶助協会は、民事法律扶助との関係では指定法人ですよね。

○ はい。指定法人ですが、刑事・少年は自主事業として行われております。

□ 指定法人の監督官庁が法務省なので、それはちょっと・・・ということですか。

○ それはちょっと問題があるのではないかということです。

□ 今、幾つか弁護士会の中で浮かんでいる案について御説明いただきましたけれども、それをも踏まえながら、御自由に御議論いただければと思います。
  ちょっと質問ですが、裁判所付設型ないし3条委員会型にしろ、これだけ単独でできた場合、そこで常勤ということになれば身分は公務員になるわけですね。それでもいいと弁護士会の方ではお考えなのか。それとも、それの監督下で法律扶助協会を指定法人にして、そちらの方で常勤弁護士を雇うということをお考えなのか、どちらですか。

○ 弁護士会の意見は後者の方で、公務員になるのは望ましくない。弁護士が公務員として公的弁護に携わるのは望ましくない。

□ それはなぜですか。

○ それは理論的ではなくて情緒的だと言われるかもしれませんけれども、やはり公務員ということと弁護は相容れないものがあるのではないかということ。更には弁護活動に対する統制といいますか、それが公務員の場合だとかかりやすいという懸念も弁護士の間では強いようです。

□ 仮に裁判所に付設したとしても、ですか。

○ としても、ということですね。

□ 分かりました。そういう御意見なのですが、どなたからでもどうぞ。

○ ○○委員からいろいろな案が出されたのですが、運営主体の組織を考える場合に、大きく分けると国が直接運営するという選択肢と公的性格を有する法人にその運営をゆだねるという選択肢があると思うのですが、公的性格を有する法人に運営をゆだねるのは、先ほども事務局から説明がありましたように、特殊法人とか認可法人、指定法人は恐らく行政改革大綱あるいはその後の法律とか閣議決定の状況から見て、その方向に逆らってこれをつくって行くのは現実的にはほとんど不可能ではないかという気がするわけです。先ほど○○委員から言われました国法上の裁判所の付設型は非常に特異な存在で、例えばこういう形のものが税金を投入して何かやる場合に、その説明責任とか透明性あるいは行政の責任の所在がはっきりするのだろうかという問題があって、これもなかなか難しいなという気がしているわけです。また、3条委員会で直接やるとなると、公務員に対する反発も結構あるわけで、そのときに扶助協会を指定法人としてというのは、先ほど申し上げましたように、現在の行政改革の流れの中でこれをやるというのは難しいでしょう。余程の説明ができなければ無理だと思います。
  そういろいろ考えて行くと、国が直接運営するということが一つの選択肢としては考えられるのではないか。その場合、運営主体をどうするかと考えると、国法上の裁判所、要するに裁判所が運営主体となる選択肢も十分合理性があると思います。
  もちろん弁護人は自主性や独立性が確保されなければいけないという審議会の意見もあるのですが、現在でも国選弁護は裁判所が選任して、それは自主性も独立性も確保されていて行われているわけですから、既存のものが利用できるのであれば、なるべくその制度の上に乗せてやるのも一つの合理的な考え方ではないかという気もいたします。

□ 国が直接運営するという考え方から、具体的には裁判所がこれに当たるというところまでいくには、論理的にもうワンステップあるように思うのですが、3条委員会の形にしても、国が直接運営するということですよね。そうではなく、国法上の裁判所にやらせるとする場合、それは裁判所のどういう権限に基づいてやることになるのでしょうか。もう一つは、今のように個別の事件ごとに選任するのは訴訟法上の裁判所で、そこはよく分かるのですが、裁判所が常勤の形で弁護士を直接雇う、あるいは契約関係を結んで定常的に業務を委託するということが、果たして裁判所の権限としてできるものなのか、また事柄の性質として適切なのか。そこが恐らくポイントになると思うのですが、その辺はいかがお考えですか。

○ 要するに国法上の裁判所がやる、これは新たに法律も必要だと思いますが、これ自体は十分できるだろうと思います。ただ、もう一つ私が考えたのは、実質的な理由としては、裁判所は全国的な組織があるわけですね。そうすると、被告人あるいは被疑者とのアクセスが容易である。運営主体の組織を創設するにしても、新たな多額の公的資金を投入する必要がなくなってくる。今言ったのは実質的な理由ですが、それから弁護士会の協力を得るなどして、弁護士確保についても実績とノウハウがあるではないか。そうすると、確実な弁護士確保という観点から見ても、運営主体としての能力は十分あるのではないかという気はしているわけです。そこで、裁判所が運営主体になるということにも十分合理性があるのではないかと思います。今でも公的弁護制度に関する事務、弁護士の報酬算定・支払といった財政的事務とか無資力要件の審査は実際にやってきているわけですし、合理的・効率的な事務をやっていく上でもそれがふさわしいのかなという気がするのですけれども。

□ 報酬の算定とか支払は分かるのですが、常勤の形で弁護士を雇うとか、定常的な事務委託の契約関係を結ぶということになると、裁判所という組織の性質から、どういうものであってもよいというわけにはいかないだろうと思うのですね。やはり、司法作用として捉えられるものであるか司法行政事務に含まれるということでないといけないと思うのですが。

○ 当然司法行政ということになると思います。

□ どういう意味で司法行政なのでしょうか。裁判所が常勤の形で弁護士を雇うわけでしょう。

○ 要するに国選弁護人の選任というのは裁判所の職責であるし権限であるわけですから、その供給源をあらかじめ確保しておく。裁判員制度を中心として、充実した集中審理を行うために重要なことの一つが弁護の確保である。その中で選任というのは裁判所が責任を負っていますね。そういうものの供給源を裁判所がきちんと確保しておく。それは司法行政事務として行うということは十分あり得るのではないかと思うのです。

□ その場合、雇用された常勤の弁護士は公務員になるのでしょうか。

○ その場合は公務員になるのでしょうね。

□ そうしますと、弁護士会のように公務員に対しては抵抗があるという向きにはちょっと馴染まないことになりますね。

○ ただ、行政府の公務員ではなく、司法の方に、分野としては移っていますので、多少違うのではないかという気がするのですが、いろいろ議論のあるところかもしれません。

○ 今のは法律でつくれば何でもどうという問題ではないという議論のような気もしますが、裁判所の役割は、特に公正中立な立場でなければいけないことは動かせないと思います。その裁判所が一方で常勤弁護士を雇って、そして刑事弁護のノウハウを与えて弁護人として活動させるというのは、いかにもそぐわない。歴史的にも戦後、結局、司法省を裁判所と法務省に分けたというところからしても、裁判所が一方当事者を確保するのはどうかなと思います。
  それから、先ほど○○委員からは、法務省の監督下よりは裁判所に付設された方がいいという選択のようで、そういう信頼感はありがたいとは思うのですが、検察審査会とはちょっと性格が違いますね。検察審査会というのは、準司法的な、言ってみれば検察官の処分の相当性を判断する。今度は、もっと行政的なもので、組織的な運営まで考えて、いろいろなことをやる。お金の問題もあるでしょうし、人の問題もあるし、そしてそれだけでなく、先ほど言いましたノウハウだとか情報提供、そういうものを提供して研修させる。そういうことも考えると、それが裁判所の下にあるというのも、これも中立公正さにそぐわないのではないかという気がするのですが。
  それではあと何があるのか、どうしたらいいのかというのは、まだそこまで詰め切れていなくて、今の行政改革大綱を前提としてどういう組織にすればいいのかというのは厳しい問題だなとは思っています。

○ 結論的には、今議論されているように、裁判所に付ける、あるいは裁判所の直轄にするというのは馴染まないのではないかと思います。弁護士の具体的な弁護活動でも、検察官と弁護人の対立はある意味では当たり前のことなのですが、裁判官と弁護人が対立することもよくあるわけですね。ですから、弁護人は裁判官とも対立関係にあることを前提にすると、裁判所に付ける、あるいは裁判所の直轄になるのは弁護活動の本質からいっても問題がある。さらに国民から見ても弁護人あるいは弁護活動の独立性について必ずしも納得が得られるとは思えない。それから、運営主体の仕事が将来的には有能な刑事弁護人の教育・育成、情報収集、情報の伝達ということになりますと、弁護活動の基本的な部分を担うわけで、裁判所の組織の一部がやるというのはおかしいし、そういう意味では裁判所とは別の機関がやるべきではなかろうかと思います。
  この審議会の意見でも、「公的弁護制度の運営主体が公正中立な機関として」云々と書いていますが、これは新たな組織を設けることを前提にして書いているのではないかとも読めると思うのですね。そういうことから言うと、事務局からいろいろ説明されておりますが、この中では独立行政法人のようなものをつくって、そこに運営主体の仕事を担わせるのが方向性としては最もいいのではないか。
  それができるかできないかということで、これを見ると、留意点としては総務省の審査が行われて、これが通らないとできないということなのでしょうけれども、どこかの省庁の何かを潰せば可能なわけだと思うのですね。それではどこを潰すかということになるわけですが、広く言えば法務行政の一部になるわけですから、法務省のどこかを潰して、独立行政法人を認めさせるのが一番正しいやり方ではないかと思いますが。

○ 質問的なことで、先ほど座長が確認されたことにかかわるかもしれませんが、法律扶助協会は民事についての指定法人ということで、刑事になるとまた別に指定法人としての指定を受けなければいけないというお話だったのですか。

● もちろん指定法人としての指定は別個必要ということになります。

○ 先ほどのお話は、それ自体が新設に近いものになる可能性があるという御判断だったわけですね。新設といいますか、新しく指定法人を別に設置するのと大して変わらない困難さが行政改革との関係であるという認識ですか。

● そういうことです。また、先ほど会計法第24条で申し上げたことが指定法人にも独立行政法人にも当てはまりますので、その点についてもどう考えるかということの御意見をいただければと思います。

○ ○○委員がおっしゃったことの前半については、私もほぼ同じ意見だと思います。裁判所がおやりになることについて、常勤弁護士等についてはいろいろ問題が出てくると思うわけですね。先ほどのお話にあったように、私も弁護人自体、当事者として検察官との間だけで議論があるわけではなくて、裁判所との間でいろいろやり取りしなければいけないことは当然あり得るわけですから、そこは裁判所が雇っている常勤弁護士ということではやりにくいことが生じてくるだろうと思いますし、それ以外ではどこかということになったときに、私は法律扶助協会というのは一つあり得る。つまり新しいものをつくるよりは、これまでの実績のある組織が、いろいろと検討しなければいけない点はあるかもしれませんが、対応できればそれはそれで意味があるのではないかという気はするのです。弁護士会は法務大臣が主務大臣になっているということで、ただ刑事だから問題になるわけで、これまで民事についてはそれで支障が生じたということは多分ないと思うのですね。ですから、刑事で問題が生じるということがあるのか、あるいは間接的な方法があり得るかどうかということの検討の余地が全くないのかどうかは、少し検討していただいた方がいいのではないかという感じがするのですが。
  もう一つ、先ほど来出ていますように、行政改革あるいは規制緩和との関係で司法改革はその最終的なフォローを請け負うというような話にもなっているわけですから、そのことを考えると、行政改革の枠の中でこの問題を考えて新設を認めないというのは、ちょっと筋が違うのではないかという感じがするわけですね。それをトータルな意味で完成させるためにも、新しいことはあってしかるべきだと。○○委員のようなドラスティックな方法も興味があるところではありますが、それよりはもう少し現実的な方法もあり得るのではないかという感じはするわけで、とすれば、法律扶助協会についてその位置付けをもう少し考えてみる余地はありそうな感じもするのですけれども。

□ 前の方でおっしゃったのは、法務省の主管であっても必ずしも支障があるとはいえないということでしょうか。

○ 先ほど確認したように、民事だったからそれで済んでいたという話なのか、そうは言っても、○○委員に直接お伺いするのも何ですが、そんな露骨なことはされないのじゃないかとも思いますし。
  裁判所との関係でももちろんそういうことなのかもしれませんが、先ほどの話ですと、裁判所は直轄で、しかも常勤ということになったときに、まさに裁判所が直接お雇いになるわけですね。法律扶助協会が入って、主務官庁は法務省であり、あるいは主務大臣は法務大臣であったとしても、そこが直接雇うという話ではないわけですし、そこはやはりワンクッション、ツークッションあるのだろうと思うのですね。ですから、事情はかなり違うだろうと思います。

○ 裁判所の指定法人というのはないのでしょうか。というのは、裁判所に指定法人というのは例は無いのですけれども、これは思い付きなのですが、例えば司法修習生などについては、最高裁が採用するのですね。そして弁護士会なども最高裁から委託を受けて修習しているわけで、そういう形で司法行政事務の一部を外出しすることも不可能ではないのではないか。思い付きですから、うまくいくかどうか分かりませんけれども。
  我々が考えるときには、裁判所でもそういう指定法人のようなものを考えることはできないのかなということが一つございました。その点をちょっと指摘させていただきます。

□ 先ほどの事務局の御説明では、指定法人についてもいろいろ難しいところがあるということであり、指定にしても認可にしても不可能だということではないようですが、今の現実の状況の下でフィージブルかどうかが問題だと思うのですね。そこを、○○委員は、司法改革だからということで行政改革とは切り離して考えるとか提案していった方がフィージブルだという御意見ですけれども、○○委員の方は、現在の枠の中でやった方がフィージブルであるという御意見で、仮に○○委員が提示されたようなドラスティックな案であっても、その方がフィージブルだと、そう判断されているのだと思いますね。

○ 先ほど裁判所という可能性を一つ申し上げたのですが、○○委員がおっしゃった独立行政法人型も、私としては十分可能性があるだろうと思います。行政改革大綱の枠内で考えれば、一番可能性のある法人であることは間違いないであろう。指定法人とか特殊法人、認可法人に比べたら一番柔軟性があるでしょう。ただ、その場合もどこまでその法人が担うのかということは少し考えておく必要があると思います。会計法24条とも関係があるので、常勤とか契約については新たな独立行政法人が担うのだけれども、個々の弁護士の部分は従前どおり裁判所に担っていただくことは十分考えておかないといけないのかなという気はしています。

□ 国の行政機関の在り方についてはまだよく分からないところがあるのですが、今の行政改革の枠組みの中では独立行政法人という形が可能性としては一番高いだろうとおっしゃったのですけれども、その場合、○○委員がおっしゃったように、どこかの省庁の一部の組織をスクラップする、それで新たな組織をビルドするということが不可欠な条件だということでしょうか。

○ 一般的に考えれば当然、そういう話が出てくるだろうと思います。

□ 全体として今の財政や人員を膨らませる方向にはストップがかかるが、現在の総枠の中でやりくりするのならば可能かもしれないということですか。

○ それは出てくるだろうと思います。そうであるならば、その部分をどうするか、私がここで結論的なことを申し上げることは難しいですけれども。

□ ほかに御意見はございますか。この問題も、今ここで一定の方向を採ると言っても解決できる問題ではないかもしれませんので、関係の各方面でも更に御検討いただき、いろいろ調整もしていただくことにして、そういうことを踏まえながら、また第2ラウンドで、もっと整理して議論をさせていただければと思います。
  私の不手際で時間が押せ押せになってしまい、申し訳ございませんでした。これで議事はおしまいにしたいと存じますが、最後に事務局から事務連絡があるそうですのでお願いします。

● 毎回申し上げておりますとおり、事務局では今般の司法制度改革につきまして広く国民の皆様からの御意見を承っており、その目録を作成しておりますので、御希望の委員の方は適宜事務局にお申し付けいただければと存じます。なお、検討会の委員の方で国民の皆様からの意見を直接御覧になりたいとの御希望がありましたら、本検討会の終了後など適宜の機会に事務局にお申し付けください。
  最後に、本検討会の第1回会合の内容を記録した録音テープの不開示決定に対する取消訴訟の提起につき御説明申し上げます。本検討会の各会合の内容につきましては、議事録作成のため録音しておりますが、第1回会合の内容を記録した録音テープにつきまして、本年3月14日に情報公開法に基づく開示請求があり、4月10日付で不開示決定を行ったところであります。これにつきまして、5月7日に異議申立てが行われ、当本部からの諮問により現在情報公開審査会で審議中であります。これと併せて不開示決定に対する取消訴訟が提起されまして、9月20日に訴状の送達を受けましたのでお知らせいたします。以上でございます。

□ それでは、今日はこれで終了したいと思います。次回は12月24日という押し詰まった日ですが、午後1時30分からになっておりますので、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。

(以上)