□ 所定の時刻ですので、第6回の公的弁護制度検討会を開かせていただきます。年末で御多忙の折、お集まりいただきましてありがとうございました。
本日御検討いただく論点は、「公的付添人制度について」でございます。この点で、司法制度改革審議会の意見書は、少年審判手続における公的付添人制度についても積極的な検討が必要であると述べておりますことから、本日の検討会では、公的付添人制度の制度設計について御議論をいただく前に、そもそも公的付添人制度を導入すること自体について御議論をいただきたいと存じております。
この論点の中で採り上げるべき小論点につきましては、後ほど事務局の方から説明していただくことにいたしますけれども、まず委員の皆様により実質的な議論をしていただくために、現行の少年審判手続や統計的な状況がどうなっているのか、さらには国選の付添人制度が今あるわけですが、その制度に関するこれまでの法制審議会少年法部会の議論などを、関係機関から説明していただくというのが議論の前提として適当ではないかと思います。順序といたしましては、まず最高裁から、現行の少年審判制度及び付添人制度の概要、並びに統計資料について説明をしていただき、次いで法務省から、先の少年法改正の際の付添人制度をめぐる議論の状況について説明していただく。その上で日弁連から、少年に関する当番弁護士制度及び扶助制度について説明をしていただく。こういう順序で説明を伺いたいと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、早速ですが、最高裁から説明をお願いします。
▲ 最高裁家庭局第二課長の○○でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
ただいま、座長から紹介がありましたとおり、審議会の意見書によりますと、公的付添人制度の検討に当たっては、少年審判手続の構造や家庭裁判所調査官との役割分担、付添人の役割なども考慮される必要があるとされておりますので、御検討の参考のために審判手続の概要や調査官の仕事について、私から説明させていただきます。
まず「少年審判手続の特徴及び流れ」ということで、最高裁資料の6-1を御覧いただけますでしょうか。少年法の1条は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うことを目的とする、としております。このように少年審判が少年の健全な育成を目的とすることから、その手続は刑事裁判のように、検察官と弁護人とが相対するような当事者対立構造を採らずに、家庭裁判所が職権によって少年に対する手続を進めていく審問構造を採っているわけでございます。すなわち、一般に少年は人格が未熟である反面、可塑性に富んでおりますので、非行を犯した少年に対しては、基本的には刑罰による非難を加えるよりも、保護、教育を行うことが少年の健全な育成に役立つと考えられます。そのためには、非行事実のほか、非行の原因や再非行予防のための諸要素に関する要保護性の判断を適切に行う必要があるということになります。そして、少年に対する審判そのものも少年の健全な育成に役立つものでなければならないことから、こういった手続構造が採られているものと思われます。
次に手続の流れでございますが、少年審判は、犯罪を犯した少年のほかに、将来罪を犯すおそれのあるぐ犯少年や14歳未満で事件を起こした触法少年も対象としております。捜査の結果、犯罪の嫌疑が認められる事件はすべて家庭裁判所に送られます。これを、「全件送致主義」と言っております。また、家庭裁判所に事件が係属するのは大半は警察及び検察庁からでございますが、資料に書いておりますようにいろいろなルートがあります。これらはいずれも少年審判が少年の健全な育成を目的とし、家庭裁判所がその専門的機関と位置付けられていることによるものでございます。
家庭裁判所が事件を受理しますと、その事件に関して調査や審判を行うことになりますが、調査などのために少年の心情の安定を図りながら身柄を保全する必要があれば、少年を少年鑑別所に収容する措置をとります。これを「観護措置」と呼んでおります。家庭裁判所が行う調査には、少年が非行を犯したかどうかという点などの非行事実について行う法的調査と、少年にどのような問題があり、どのような処分にするのが相当かを判断するための要保護性について行う社会調査とがございます。
法的調査は、裁判官が主として事件記録を基に行いますが、少年が非行事実を争う場合には証人尋問等の証拠調べが行われます。社会調査は、裁判官の命令により家庭裁判所調査官が行うことになります。
調査が終わりますと、審判を開始することとした事件については審判が行われます。審判は法廷とは異なる法壇のない比較的こぢんまりした審判廷において非公開の手続で行われます。担当裁判官の職権により進められ、裁判官が自ら少年や保護者に質問していく形で進められます。多くの場合、まず非行事実に関する審理を行い、続いて要保護性に関する審理、すなわち少年のこれまでの生活態度、家庭のこと、事件に関する反省、今後どのような生活を送るかなどについて尋ねていきます。必要と認められる場合には、学校の先生や少年の雇い主など少年の立ち直りに協力してもらえる方に審判に出席してもらい、それらの方の話を聞くこともございます。
最後に家庭裁判所調査官の処分に関する意見が述べられ、付添人が選任されている場合には付添人からも意見を聞いて審理を終えます。
なお、一定の重大な事件について非行事実の認定のために必要があるときは検察官が審判に立ち会うこともあります。
このような調査、審判を経て裁判官が処分を決定し少年に言い渡すわけですが、裁判官がいずれの処分にするか直ちに決めることが難しい場合には、しばらくの間、終局処分の決定を留保して少年の行動等を観察することもあります。これを「試験観察」と呼んでおりまして、家庭裁判所調査官が担当することになります。
終局決定は資料に書いてあるとおりのものがありまして、非行事実が認められない場合や調査、審判段階の指導により、特に保護処分に付するまでの必要はないとして事件を終了させる場合の不処分、児童福祉法上の措置にゆだねるという知事又は児童相談所長送致、保護処分、検察官送致といったものがあります。
保護処分には、少年を家庭や職場に置いたまま、保護観察所の行う指導監督と補導援護によって少年の改善更生を図る処分である保護観察のほか、児童福祉施設を保護処分の執行機関とする児童自立支援施設又は児童養護施設送致と、少年院に少年を収容して矯正教育を行う処分である少年院送致の三つがあります。保護処分決定に対しては、少年、法定代理人又は付添人から高等裁判所に抗告することができます。
刑事処分を相当とする検察官送致となりますと、若干の補充捜査を経て地方裁判所等に起訴され、成人と同様の刑事裁判を受けることになります。
以上が少年審判手続の流れでございます。
次に資料6-2は家庭裁判所調査官に関するものですが、先に統計的な概況について説明させていただきたいと思います。資料6-3以降を御覧ください。
まず少年保護事件の新受人員でございますが、資料6-3-1のとおりでございます。平成13年の少年保護事件全体の新受人員は一番下の欄にありますとおり28万4336人であり、うち刑法犯は約19万人でございます。罪名で言うと窃盗や横領、この中身の多くは自転車などの占有離脱物横領ということになりますが、そういったものや業務上過失致死傷事件及び道路交通事件といった交通関係事件が大半を占めております。
次に少年保護事件の少年鑑別所送致人員の最近5年間の状況は資料6-3-2のとおりでございます。平成13年は合計2万2274人となっております。
一般保護事件の受理時身柄付き人員、つまり家裁に送致されたときに身柄が拘束されていた事件の状況は資料6-3-3のとおりでございます。
なお、一般保護事件といいますのは、少年保護事件全体から道路交通事件及び車両運転による業務上過失致死傷事件の交通関係事件を除いた事件をいうものでございまして、以下の統計表はこの枠での統計ということになります。
終局処分の状況つまり一般保護事件の非行別終局人員は、資料6-3-4のとおりでございまして、終局人員全体は簡易送致事件等を除き7万9998人でございます。うち刑事処分相当の検察官送致が0.6 パーセント、保護処分全体では30.2パーセント、うち保護観察が22.9パーセント、少年院送致が6.8 パーセント、それから不処分が18.3パーセント、審判不開始が50.2パーセントなどとなっております。
資料6-3-5が、観護措置がとられた少年についての終局処分の状況です。刑事処分相当による検察官送致が1.7 パーセント、保護処分が90.3パーセント、保護観察58.2パーセント、少年院送致30.1パーセントなどとなっております。
次に少年審判手続における付添人の選任の手続とその実情について御説明申し上げます。
まず、少年審判において付添人が選任されるパターンは3種類ありますが、資料6-6を御覧いただけますでしょうか。付添人に関する関係規定を書いておりますが、一つ目が、少年又は保護者の選任する付添人というものでございまして、これが少年法10条の第1項によるものです。二つ目が、保護者が家庭裁判所の許可を得て付添人となるもの、これが10条の第2項にあるものでございます。三つ目が、検察官関与決定をした場合において、弁護士である付添人がいないときに家庭裁判所が選任する国選付添人でございまして、条文上は少年法22条の3に規定されているものでございます。
一般保護事件による付添人の選任状況につきまして、資料6-4-1は、最近5年間の選任状況でございます。平成13年に付添人が選任されたものは4408人で、一般保護事件総数に占める割合は5.5 パーセントとなっております。一般保護事件の非行別付添人の選任状況は、資料6-4-2のとおりでございまして、殺人とか強姦といった重い罪名の事件で比較的高い比率となっております。
次に観護措置がとられた事件における非行別の状況は、資料6-4-3のとおりでございます。観護措置がとられた事件全体に占める割合としては、右の下の22.1パーセントの事件に付添人が選任されていることになります。
一般保護事件の終局決定別の付添人の選任状況は、資料6-4-4のとおりでありまして、刑事処分相当の検察官送致になった者は32パーセント、少年院送致について26.4パーセントなどとなっております。
続いて検察官関与事件における国選付添人の選任手続について御説明申し上げます。
資料6-6にありましたとおり、家庭裁判所は、検察官関与決定をした場合において、少年に弁護士である付添人がないときは、弁護士である付添人を付さなければならないとなっておりまして、これは抗告審においても同様ということでございます。
国選付添人の選任手続は、まず裁判所で検察官関与決定をした後に、少年から付添人選任届が提出されてない場合には照会書を作成します。資料6-5-1が照会書の例でございます。こういった付添人を選任するかどうかの照会を行い、これに対して回答書が資料6-5-2になりますが、少年の方から国選付添人の選任を希望する旨の回答があった場合には、当該家庭裁判所の管轄区域又はこれに隣接する他の家裁の管轄区域内にある弁護士の中から付添人を選任することになります。資料6-5-3が国選付添人の選任書です。
以上が、国選付添人の選任手続でございます。
次に家庭裁判所調査官の職務について説明させていただきますので、資料6-2に戻っていただけますでしょうか。
最初に述べましたように少年審判の目的が少年の健全な育成にあることから、少年審判では非行の原因を解明し、再非行を防ぐ適切な保護と教育のための処分を検討することになります。すなわち少年自身の性格や行状、家庭環境、社会環境要因等の問題を把握し、複雑に絡み合っているこれらの問題や当該少年が非行に至ったメカニズムを的確に分析、理解した上で、これらを踏まえた立ち直りのための方策を検討することになります。そのために心理学、社会学、教育学等の人間関係諸科学の知識の活用が不可欠であることから、その専門家である家庭裁判所調査官が家裁に置かれているということでございます。
家裁調査官は、大学において心理学、教育学、社会学等の人間関係諸科学を専攻した者の中から試験により採用され、家庭裁判所調査官研修所において2年間の専門的な研修を受けます。研修所においては、事件処理に必要な関係法律の勉強のほかに、自身が専攻した分野以外のものも含め人間関係諸科学を広く学ぶとともに、面接技法であるとか心理テスト等、実践的な調査方法を学びます。また、家裁の現場における実務研修も経て2年間の研修を終えて任官するというシステムになっております。
少年審判手続における具体的な家裁調査官の動きということになりますが、裁判官との関係では、裁判官から調査命令を受け、随時裁判官と協議しながら社会調査を行い、その結果を裁判官に報告するとともに、審判期日に出席して処分に関する意見を述べるということになります。
調査においては、まず事件の記録をよく読んだ上で、少年や保護者に何度も面接して詳しく事情を聞くわけでございますが、少年は自分のことでも、これを説明、表現することが苦手な者が多く、調査官は専門的な面接技法を駆使して少年の心を開かせ、処遇選択上、重要な話を聞くとともに、少年自らに問題を気付かせるといった作業を行っております。少年の保護者についても同様の問題があるわけで、調査官の専門性を生かした大事な作業になっております。また、面接して事情を聞くだけではなくて、少年の家庭を訪問してその生活環境を把握したり、在学中の少年であればその少年の学校を訪れ、あるいは仕事をしている少年であれば職場を訪問して、担任の先生や雇い主に会って日頃の生活態度を聞いたりいたします。少年の性格の理解のためや、先ほど申しましたように表現の苦手な少年との面接を効果的に進めるためにロールシャッハやTATといった各種心理テストを行うこともあります。身柄事件につきましては、当然のことですが、少年鑑別所の技官等とも随時協議を行うことになります。また、重大な被害をもたらした事件におきましては、事件や少年の問題性をより正確に理解するために、被害者にお会いして被害の状態や心情等についても調べる例が増えてきているように聞いております。このような調査を経て非行に至った経過、少年の性格、家庭や保護者との関係、生い立ち、不良化した経過、交遊関係、心身の状況など審判及び処遇上必要な要保護性に関する事項を調査し、その結果及び処遇に関する意見を裁判官に報告いたします。
少年に対する保護的措置、保護者に対する措置でございますが、調査の過程におきましては、単に審判に必要な情報を集めるということだけではなくて、少年や保護者に対して非行を犯した原因やこれまでの生活態度あるいは被害者のことなどを十分に考えさせて内省を深めさせる、さらに今後どのようにしたら立ち直ることができるか、場合によっては被害者に対する謝罪や弁償に努めることなどを指導しております。また、少年院送致などでない社会内における処遇を考える場合には、今後の家族関係の在り方を指導するとともに、学校や職場における受入れや、そこにおいて今後どのようなことに留意していってほしいかをお願いするなど少年の立ち直りのための環境が整うように関係者に働き掛けることも行っております。これらをまとめて「保護的措置」と呼んでいるわけでございます。
また、最初に手続の流れのところで述べましたように、少年審判においては最終処分の決定を留保して、しばらく少年の様子を見るという「試験観察」という制度があるわけでございますが、家庭裁判所調査官がこれを担当しております。その場合も単に定期的に生活の状況の報告を受けるというのではなくて、少年の動向を観察しながら、必要に応じて生活の指導や環境の調整、学校や職場との連絡なども行っております。そして、その間の少年の立ち直り具合を考慮して最終的な処分が決められるということになっております。以上が調査官の仕事の概要でございますが、このような調査官による社会調査が少年審判手続の大きな特徴と言うことができるかと思います。
以上が少年審判の概要と調査官の職務でございますが、説明申し上げましたとおり、少年審判が少年の健全な育成を目的とする手続であることから、職権主義的審問構造を採り、また、人間関係諸科学の専門家である調査官の調査や保護的措置を活用するなどして家裁の教育的・後見的な機能を生かした審理が行われているということです。
他方、少年審判につきましても、弁護士である付添人が種々の点において、審判の協力者として重要な役割を果たしておられるのも事実でございます。こういったことから、公的付添人の問題を検討するに当たっては、こういった少年審判の手続の構造や家裁調査官との役割分担、あるいは少年事件における付添人の役割を十分理解した弁護士の確保等の問題を踏まえつつ、どういった場合に公的費用により付添人を付すこととするシステムが必要かということを御検討いただければと考えております。以上でございます。
□ ありがとうございました。では、ただいまの最高裁からの御説明について質問がございましたら、どうぞ。
○ 検察官関与の点なのですが、条文上は審判に検察官が関与する必要があると家庭裁判所が認めるときというふうにあるわけですけれども、具体的にどういう場合にこの検察官関与が認められているのかということをお聞きしたいと思います。
▲ まず検察官関与の要件は、対象事件が条文に書いてあるように決められておりまして、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪あるいは死刑又は無期、短期2年以上の懲役若しくは禁錮ということで、こういった比較的重大な罪名の事件について、非行事実に争いがあるといった場合に考えられます。
ただ、具体的にどういったケースで検察官の関与までが必要かということはケース・バイ・ケースで考えられまして、単に少年が争っているというだけで、必ずしも検察官に審判の協力者として参加してもらうことが必要かどうか、その辺りは個々のケースで判断されておりますので、なかなか一般的にこういう場合にこうということを御説明することは難しいかと思っております。
○ 一般論として罪名としては2号に該当するし、かつ否認事件であっても検察官関与が認められない場合もあり得るとお聞きしてよろしいのでしょうか。
▲ そうです。「否認」という言葉がなかなか難しい言葉でありまして、やはり程度問題だろうと思います。事実がかなり深刻に争われていて、検察官の関与が必要だと判断された場合に関与決定が行われていると考えております。
○ 例えば人違いであるとか、それに類するような、いわゆる全面否認というような場合においては、検察官関与は認められると考えてよろしいのでしょうか。
▲ もちろんそういう場合にも関与決定ができるという前提で立法されていると思います。そういう場合に必ず関与決定をしなければならないかというと、それはまたそうではなく、裁判所の方で必要性を判断すると、そういう仕組みになっていると考えております。
○ 調査官のお仕事の中で、最近では少年、保護者との面接調査や雇用先とか学校関係者への調査以外に被害者に関する調査も増加の傾向がありますという御指摘があったのですけれども、どういう場合に被害者に関する調査なども見られるのか。常にということではないかもしれないのですが、どういう場合にあるのかということについて、お分かりの点があれば教えていただければと思います。
▲ この辺りは調査の一つの手段でありますので、統計的には把握しておりません。ただ、一般的な家裁調査官の認識ということで我々が受け止めているのは、最近、特に重大事件が発生した場合には、従前どうしても調査のための情報は少年側からの情報を収集するにとどまっていたきらいがあるのではないか、正確に事件がどういうものだったのか、あるいは少年の問題性がどういうものかというのを把握するためには、被害者の方が今どういう状態にあるのか、どういうお気持ちであるのか、あるいは事件の経過に関する認識等も踏まえた上でないと、正確に非行を理解できないのではないか。そういう問題意識を持って、重大な事件を中心に被害者の調査に取り組んでいると聞いております。
○ ありがとうございました。関連してそういうことまで広げますと、結構お仕事が非常に他領域、他分野へ及ぶのですが、調査官の方の数が足りないとか、少ないとか、もう少し補充してほしいとか、そのような問題提起はあるのでしょうか。
▲ 家裁調査官に期待されるところは多く、期待にこたえるため家裁調査官は工夫して頑張っておりますし、他方、増員の要求の努力もしておりまして、最近3年間5人ずつ増員を認めていただいている状況にございます。
○ ありがとうございました。
○ 質問です。鑑別所から送られて来る鑑別結果の報告と調査官の報告書の大きな違い、それはどこにあると考えたらいいのですか。
▲ 後で鑑別所の職務については説明があるかもしれませんが、基本的には鑑別所は心身の鑑別という作業が中心になっているかと思いますので、そういった心身の状況面を中心に、あと鑑別所内での様子、そういったことが鑑別結果通知書の主な内容になっているかと思います。
○ 統計数字をちょっと確認させて頂きたい。資料6-3-2と6-3-3ですが、資料6-3-2では少年鑑別所送致人員歴年比較ということで、一般保護事件の平成13年の場合には1万9674人となっています。これに対し、資料6-3-3の一般保護事件受理時身柄付き人員ということになりますと、同じ年で1万7006人ということになっています。数字が若干違っておるのですけど、これはどういうふうな理由でしょうか。
▲ 資料6-3-3の人員は、終局した人員について、振り返って受理時に身柄付きだったかどうかとそういう形で数字をとっております。これに対し、資料6-3-2は、観護措置決定自体の数なものですから、例えば1人の少年について別事件があって、2回観護措置がとられたとか、そういうようなケースもあるものですから6-3-2の数が大きくなっていると、主たる理由はそういうことでございます。
○ 資料6-3-5の、これは観護措置のある一般保護事件の終局処分別表ということになりますが、このトータルも1万7803人ですが。
▲ 同じ理由でございます。
○ 調査官と裁判官との関係をお聞きしたいのですが、調査官は独立して仕事を遂行するというのか、裁判官の指揮命令を受けて、あるいは指示を受けて職務を遂行するという関係にあるのか、どちらなんでしょうか。
▲ 制度的には後者ということになるかと思います。
○ 指示を受けて職務を遂行すると。裁判官の意見と調査官の意見が対立するということはあり得るわけだと思いますが、その場合はどういう形になるのでしょうか。
▲ もちろんプロセスとしては十分協議をした上でということになりますが、最終的には裁判官が決定することになります。
□ 先ほどの資料6-3-3の「受理」というのはどの時点を指すのですか。
▲ 裁判所に事件が送致された時点です。
□ そうすると、その前に身柄が付いているということですね。
▲ 勾留状態ということです。
□ 資料6-3-2の観護措置は、その後、観護措置をとったものも含まれているので、その間に差があるということでしょうか。
▲ そうです。
□ 分かりました。
それでは、先を急ぐようですが、また議論の中身で必要なことがあれば質問していただくということにしまして、次に法務省から、少年法改正の際の付添人制度をめぐる議論の状況を中心に御説明を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
◆ 法務省刑事局の参事官の○○でございます。御説明をさせていただきます。
資料は3点用意させていただきました。1点目は、法務省6-1と書いてあります。これは、少年法改正の経緯の概要をまとめたペーパーでございます。法務省6-2は、それに関する法改正の内容の新旧対照表でございます。法務省6-3は、私が以前に『現代刑事法』という雑誌に法制審議会少年法部会の審議経過についてまとめたものでございまして、非常に議論が多岐にわたって長うございましたので、説明の代わりにということで、お配りさせていただきました。主に資料・法務省6-1に従って御説明をさせていただきます。
少年法改正につきましては、まず改正経緯でございますけれども、最初に平成10年7月から法制審議会に改正についての諮問がなされまして、少年法部会で主に審議がされました。最終的に平成11年1月までかかりまして要綱骨子というものが答申されました。これに基づきまして、法務省において少年法等の一部を改正する法律案を立案いたしまして、11年3月に国会に提出しました。しかしながら、その年の通常国会、その年の秋の臨時国会では審議に至りませんで、翌年平成12年5月から本格的な審議が開始されましたけれども、12年6月に衆議院が解散されましたことから廃案となりました。
これに対して、当時様々な少年事件が起こっておりましたことから、与党3党の中で少年法改正についての議論が進められまして、その年の9月に、今度は議員立法で少年法改正法案が国会に提出されました。これはもともとの内閣提出に係る改正法案が事実認定の一層の適正化に関するものを中心としていたのに対して、それプラス刑事処分可能年齢の引下げでございますとか、被害者への配慮の充実等が新たに加わったような形となったわけでございます。その結果、この年の臨時国会でこの改正法案について御審議がなされ、最終的に平成12年11月に、同法案が可決・成立をいたしました。そして平成13年4月から施行され、今日に至っております。
改正の内容でございますけれども、国選付添人に関する部分だけ取り上げて説明をいたします。まず、検察官関与決定というものがこの改正で認められまして、その中身といたしましては、①家庭裁判所は、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」及び「死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役・禁錮に当たる罪」の非行事実を認定するための審判の手続に、検察官が関与する必要があると認めるときは、検察官関与決定をすることができるという規定が22条の2で設けられました。これに伴いまして、②でございますけれども、家庭裁判所は、検察官関与決定をした場合において、少年に弁護士である付添人がないときは、弁護士である国選付添人を付さなければならない、という規定が設けられました。今度は抗告審の手続でございますが、③抗告審の審理については、その性質に反しない限り、家庭裁判所の審判に関する規定を準用するということになりましたので、抗告審で検察官関与決定をした場合で、かつ、少年に弁護士である付添人がないときは弁護士である付添人を付さなければならない、という規定になっております。それから、32条の6のこの規定が、再抗告審にも準用されておりますので、最高裁でも同じ取扱いになります。それから、④でございますけれども、検察官による抗告受理の申立てがなされて、高等裁判所がこれを受理する決定をした場合において、少年に弁護士である付添人がないときは、抗告裁判所は弁護士である付添人を付さなければならないという規定が32条の5で設けられました。
法制審の少年法部会では、国選付添人につきましても、相当多岐にわたる議論がなされております。ここにエッセンスだけまとめましたけれども、先ほどの『現代刑事法』の記事も横で見ながらお聞きいただきたいのですが、現代刑事法の16ページの中段、「第76回会議」と書かれているところで、検察官関与事件について、国選弁護士付添人を付するべきだという意見、これはレジュメの方に書いてありますように、その理由としては、検察官が少年審判の手続に関与する場合には、それとの均衡上、少年の利益を守る立場にある、弁護士である付添人が付されていることが適当であることから、という理由でこういった意見が述べられておりました。これに対して、その下にありますように、検察官関与に対応する場合のみ国選弁護士付添人を付するのでは狭すぎるという意見や、処遇選択については、家庭裁判所は調査官制度を整備し後見的に行っており、重ねて付添人を必要的にすることが妥当か、という意見なども述べられております。
それから16ページの右の段の上のところでございますが、別の意見として、「そこで」の後ですが、まず必要的付添事件は否認事件と法定合議事件を対象とし、また身柄拘束事件については段階的に必要的付添事件を拡大して行くべきである。また、国選付添人制度としては、必要的付添事件、少年本人の請求があった事件、裁判所が相当と認めて職権で付する事件を対象とすべきである、このような意見も述べられたところでございます。
このような状況で相当議論もなされたわけですが、レジュメにも書きましたが、現代刑事法の21ページを見ていただいた方がいいかもしれませんが、21ページの右の欄の第1パラグラフのところ、「弁護士委員試案骨子について、一通りの審議を行った後」の後ですが、裁量的国選付添人制度について再度議論を行ったところ、裁量的付添人制度を直ちに要綱骨子に盛り込むことは難しいが、弁護士である付添人の重要性や積極的役割等にかんがみ、さらに検討を要する重要な問題であることについて概ね共通の認識が得られたので、今後、関係各方面において、引き続き議論を深めていくことが適当であるとされ、この点については、部会長から、法制審議会に報告することとされた、といういきさつになりました。これに基づきまして、部会長からの御報告もなされております。
その後でございますけれども、司法制度改革審議会の場に移りまして、そこでまた議論がなされた結果、最初に座長から御説明がありましたような、審議会意見の取りまとめになったといういきさつでございます。以上でございます。
□ どうもありがとうございました。ただいまの法務省からの御説明について御質問をどうぞ。
○ 検察官が現に関与する事件に限って弁護士国選付添人を付ける、その立法趣旨は、レジュメにありますように、「それとの均衡上、少年の利益を守る」と、煎じ詰めればそういうことであろうと思いますが、この辺りの立法趣旨をもう少し詳しく御説明いただけますでしょうか。
それから、法制審議会答申の要綱骨子における検察官関与事件の範囲は、議員立法で出来上がった現行法よりももう少し広かったと承知しています。もともとの要綱骨子の検察官関与事件、したがって、制度上、弁護士国選付添人が付く可能性のあった事件の範囲はどうだったか、御紹介いただければと思います。
◆ 基本的にここで考えておりましたのは、別に検察官を付けているから弁護士付添人が必要だというような発想というよりは、むしろ検察官と付添人もいた場できちんと事実認定をした方がいいでしょうという頭の整理であったと思います。これに対して、検察官だけが関与して、事実認定について様々意見を申し上げるということだけで、少年側の法的なサポートというのがないのではバランスが欠けるであろうということで、結局のところ、双方が関与した形での事実認定手続が適切であるという頭で整理したと考えております。
それから、今、お話がありましたように、当初、内閣提出法案として出したものは、現在の改正法とは少し形が違っておりました。元の案は、少年法部会で採択された要綱骨子に基づいたものでございまして、当初は法定刑の範囲が死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役、禁錮に当たる罪の保護事件であったわけです。これは長期3年でございますので、法定刑の長期と短期があるうちで、長期が3年を超えれば一応枠の中には入る。したがいまして、窃盗や業務上過失致死、窃盗は上が10年、業務上過失致死で言えば、上が5年ですので、それも一応入る。ただ、要件としてはそれだけではなくて、事実認定に問題があるというようなところが入りますので、そんなに何でもかんでも関与するということはイメージしておりませんで、必要なものだけ関与するのであろうというふうに考えていたところです。
しかしながら、それに対して、種々国会の方でも御議論がございまして、そこまでの必要はないのではないかというような御議論もありました。最終的には、先ほど申し上げましたように、今度は短期2年以上、あるいは故意の犯罪行為で人が死んだような場合という範囲になりました。短期2年以上というのは、上と下とある、下の方が2年を超えていなければ駄目だということでありますので、非常に狭い範囲であります。
□ 非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与するので、それとの対応で、弁護士である国選付添人を付けるということですと、主に両者に期待されているのは、非行事実の認定について審判に協力するということではないかと思われますが、そういう考えでできている制度なのでしょうか。
◆ おっしゃるとおりだと思います。したがいまして、検察官については、非行事実の認定のためだけに関与いたしますので、事実認定の部分が終わって、要保護性のみに関する審理になれば、そこは退席するということになっています。しかしながら、少年の付添人につきましては、いったん付けたものをまた途中で外してしまうというわけにもなかなかまいりませんので、要保護性の部分についても付添人としての役割を果たされるということになります。
□ 分かりました。ほかによろしいですか。それでは、どうもありがとうございました。
次に日弁連から、少年に関する当番弁護士制度及び扶助制度を中心に御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
△ 日本弁護士連合会の子どもの権利委員会の副委員長をやっております○○と申します。本日はよろしくお願いいたします。
公的付添人制度について、御検討いただくに先立ち、日弁連から意見を述べさせていただきます。本日は資料・日弁連6-1のペーパーを用意してまいりましたので、これを補う形で御説明したいと存じます。
まず、公的付添人制度の必要性ですが、少年審判手続には刑事国選弁護制度に相当する制度がないために、資力のない少年は弁護士付添人を選任することができません。少年が成人と比べて防御能力や弁明力などに劣ること、少年審判手続に「起訴状一本主義」などが採用されていないことなどを考えますと、少年審判手続にはむしろ刑事手続以上に弁護士による援助の必要性が高いと考えております。さらに保護処分とはいえ、身体拘束等の強制処分を始め一定の権利制限を伴う手続であることから、少年審判手続は不利益処分の側面を併せ持つものです。資料6-1の別紙1に記載した最高裁の決定を御覧ください。少年審判手続にも適正手続の保障が及ぶことは、これら一連の決定に限られるものではありませんが、最高裁の判断を見れば、少年審判手続は手続保障の充実という方向に進んできた歴史であるというべきであり、適正手続保障の要石たる弁護士付添人の援助を受ける権利を少年に保障することは喫緊の課題であると考えています。日弁連は、少年の付添人の援助を受ける権利は、憲法に由来するものであり、資料6-1の別紙2に記載した条約などにより国際的にも要請されていることであって、憲法37条3項が保障する国選弁護制度を少年にも保障することは国家の責務であると信じます。
次に、少年保護事件付添扶助事業について御説明します。
国選付添人制度は、今まで御説明がありましたように、極めて限定された対象事件について、検察官関与決定があった場合において、弁護士付添人がないときに限り設けられました。施行後1年の実績で、国選付添人が選任されたケースは6件にとどまりました。しかし弁護士付添人が必要な事件はそれで十分なわけではございません。また、改正前には国選付添人制度はありませんでした。それを補完する機能を果たしてきたのが財団法人法律扶助協会が行っている少年保護事件付添扶助事業です。この事業は、資料6-1、別紙3に記載しました最高裁事務総局家庭局長からの照会に応じて、昭和48年から法律扶助協会支部の自主事業として始まり、29年の歴史を有しています。現在では全国で実施されております。
資料・日弁連6-7、少年保護事件付添扶助に関する取扱要綱を御覧ください。これは法律扶助協会本部で平成12年3月に定められたものですが、モデル案でございます。しかし、この事業が支部の事業として始まったこともあり、その具体的な実施内容などは各支部で定められていて、支部の財政事情や各支部の弁護士、弁護士会の取り組み方により様々な運用がなされています。それらを踏まえて法律扶助協会本部がモデル案を作成したものです。したがいまして、このモデル案が標準的な内容となっておりますので、これに基づいて御説明したいと思います。
扶助制度等は取扱要綱第1条にありますとおり、扶助協会が、少年保護事件につき、弁護士である付添人が必要であり、かつ、相当であると認められる事案で、直ちに弁護料等を支払うことが困難な少年に対し、その弁護料等を援助する制度です。
第4条に「家裁から紹介される事件」という記載がありますが、本制度は、先ほど申しましたように、家庭局長の照会に始まったという発足のいきさつから、家裁が支部に弁護士付添人の選任を依頼する場合があり、その場合には各家裁と各支部との間の協議によって処理要領が定められ、その基準に従って運用されています。
第11条、援助の申し込みは、少年本人、保護者又は少年の親族が行います。
資料・日弁連6-4、少年に弁護士付添人が選任される過程を説明した書面ですが、この中の1、②-2で、少年本人が、当番弁護士の出動要請をした場合、あるいは新聞などの報道で少年事件の存在が分かり、「委員会派遣制度」と呼んでいますが、弁護士会が弁護人を派遣する制度により弁護士が出動した場合に、被疑者段階で被疑者弁護援助制度を利用して弁護人になり、家裁送致後になりますと本制度を申し込む場合と、2、④の場合、および、⑤の家裁からの依頼事件が大半を占めております。
援助の対象者は9条に定められております。(3)は具体的には保護者がいないか、あるいは保護者が協力的ではない場合などです。家裁からの選任依頼の基準は、資料6-1の2ページ目、下から2行目の基準になっている場合が多く、9条とは若干異なっています。家裁は資料6-1の2ページ目に記載した3要件のいずれかを満たす場合で、特に必要とすると認めた場合に依頼をしてくることが通常です。
援助の要件は、取扱要綱第10条に定められております。資力要件については、支部では「民事法律扶助と同じ」、あるいは「経済的理由」などとしておりまして、本制度固有の具体的な基準を定めている支部はありません。資力調査については、「資料を求めない」とする支部が多く、「常に資料を求める」とする支部は皆無です。親族からの申込みの場合に給与明細などの資料を求める支部が一部ございます。資料を求めずに資力調査を行う支部では、本人の申告か担当弁護士の意見のみで審査を行っております。家裁からの選任依頼があった場合には、資力要件を課さない扱いをしている支部が多いと思われます。実績で見れば、資力要件を理由に援助を拒否した件数は極めて少なく、年間数件にとどまるというレベルにあります。
次に家裁からの依頼があった場合の弁護士の選任方法について御説明します。
家裁から依頼が来る段階で、ほとんどの事件で既に審判期日が指定されています。依頼を受けた扶助協会支部は弁護士会で推薦した受任予定者名簿を用意しているところと、そうではなく単純な弁護士名簿を持っているところがあります。その中から指定された審判期日に出頭できる者を見つけて選任することになります。このほかに扶助協会支部が弁護士会の子どもの権利委員会に連絡をし、委員会の方で弁護士を推薦する場合があります。この三つのルートが大半だと思われます。
弁護料等についてですが、8万円から15万円、多くは10万円となっており、日弁連の報酬基準による最低額の4分の1程度となっています。この財源は日弁連全会員が特別会費として徴収されている「当番弁護士等緊急財政基金」から援助1件当たり法律扶助協会本部に3万円、単位弁護士会に3万円が支出され、二つのルートを通じてその金が扶助協会支部にわたります。そして、この6万円との差額を法律扶助協会支部が独自に調達することになりますが、実質は単位弁護士会からの補助に負うところが大きいようです。
依頼者の負担については第26条です。原則交付制で、一部償還を求めることができるようになっていますが、支部では「すべて交付」と定めているところが多く、実績で見ますと、償還を求めたケースは極めて少ない状況です。家裁からの依頼の場合は、制度発足の由来もあり交付制になっております。
次に資料・日弁連6-6を御覧ください。これが扶助の実績ですが、急増しております。平成13年のところを御覧いただくと福岡が600 件と突出していますが、これは全件付添制度によるものです。増大の要因は当番弁護士制度、その中でも委員会派遣制度の充実によるところが大きいと考えております。
このように扶助の利用件数は急増していますが、私どもは資料6-1、3ページから4ページに記載した制約があるため、実際の弁護士付添人の必要性には応えきれていないと考えています。
第1に、選任の要件と時期の制約です。
家裁からの選任依頼は、先ほどの基準に基づいて裁判官の裁量により行われておりますが、経験上裁判官の交代により依頼件数が増減することが認められ、同種の事案でも裁判官によって付添人が付される場合とそうでない場合が生じていると推測されます。また、同種の事案でも地域によって付される場合と付されない場合があること、この基準が抽象的なことから、調査官による調査が相当程度進んだ段階でしか判断できないことが多く、時間的余裕がなかったために選任が見送られる場合もあったことなどが報告されています。
第2に、法律扶助協会の予算の制約です。
現行の法律扶助事業には国庫からの補助はありません。予算に限りがあり、一定数で援助を打ち切るという問題が毎年出てきており、事業継続すら難しい状況に直面しております。それを知っている裁判官は、抑制的に選任依頼をしてきたとも報告されています。また、前述した選任依頼の基準には、刑事処分または少年院送致が予想される重大な事件がありますが、本日提出された最高裁からの資料から明らかなように、平成13年度の終局処分において、少年院送致処分となった者は5445人であるのに対し、このうち弁護士付添人が付いていたのは1438人であり、全体の3割弱にしか付いていない状況は問題であると考えます。要するに家裁からの選任依頼があった事件は、弁護士付添人の必要性が認められる事件の中でも、特に高度な要保護性が認められる事件のうちの一部にしかすぎないと考えております。
実際、弁護士付添人の必要性が現実の受任実績を上回ることを推測させる実例として福岡の実践例があります。福岡県弁護士会では、「少年達にもせめて成人並みの権利は保障されなければならない」との考えから、少年付添活動の拡充を図るため、平成13年2月から全件付添人制度を導入していますが、その結果、福岡部会では観護措置がとられた少年の約75パーセントに弁護士付添人が選任されるようになりました。現行の法律扶助事業の通常の予算では到底これに応えていくことは困難です。福岡県弁護士会では毎月の会費を5000円値上げして対応しておりますが、各弁護士の会費で運営されるべき制度ではなく、公的資金が導入されるべきものと考えます。
次に付添人が具体的にどのようなことをしているかについてイメージを抱いていただくために資料・日弁連6-2を用意いたしました。
「21日目」と書いてある、少年が家裁送致された時点から付添人の活動は始まります。観護措置決定に先立ち、意見書を提出したり、裁判官に面会して意見を述べるところから始まります。この資料6-2は、捜査段階から引き続いて付添人になる場合を書いておりますけれども、家裁からの選任依頼がある場合は審判期日に切迫した段階、1週間前などに依頼が来ることがあり、弁護士は十分に活動ができるようにもっと早く依頼をしてほしいと家裁に要請しているのが実情です。付添人は事件記録を読み、少年に面会して非行事実の存否や要保護性を判断する基礎となる事実の存否について問題がないか、また鑑別所収容の必要性についても絶えずチェックすることになります。そのほか少年本人への働き掛け、処遇決定のための資料収集、条件整備に寄与しています。具体的には親などの保護者や学校関係者、雇用主などから事情を聞き、学校への復帰ができるように調整したり、在宅処遇が可能になるように雇用先などを見つけるなどして、帰住先の環境調整を行い、被害者への謝罪と被害回復を行っています。こうした活動を通じて、少年の言い分を尊重し意見交換を重ねる中で、少年に自己の問題点を自覚させ、自らの力によって非行を克服するように援助することが最大の眼目となっています。たとえ少年が少年院送致決定を受けることになっても、保護処分が教育的処遇である限り、本人の教育を受ける気持ちがなければ効果は上がりませんから、前向きに受けとめるように話し合いを少年と続けることもあります。このケースワーク的機能は、家裁調査官が主たる担い手と想定されていますが、調査官とは異なる立場や視点を持った弁護士が、地域とのつながりをも駆使することにより得られる成果が間違いなく存在します。さらに少年から見れば、調査官は裁判所の人間であり、判断する側の立場にいることが少年の心理に与える影響も無視することはできません。少年の裁判所や調査官に対する不安や不審を取り除き、調査官とのより良い信頼関係をつくっていくためにも弁護士付添人が少年をサポートし、少年にアドバイスをすることで重要な役割を現に担っていると感じているところです。
最後に公的弁護制度、公的付添人制度の創設に当たって検討いただきたい点を申し上げます。
第1点は、付添人の活動は、「環境調整」と呼ばれている活動を積極的に行うことが刑事弁護活動との大きな違いです。ほとんどの事件は4週間という身体拘束期間の制約があります。短期間の中で集中的に多岐にわたる活動を行わなければなりませんから、少年事件を受任する弁護士は多かれ少なかれ、他の手持ち事件のスケジュールを犠牲にして付添人活動に従事しなければなりません。この弁護士の負担感を解消する方法の一つは、活動に見合った報酬を支給することです。十分な報酬が保障されるべきものと考えます。
第2点は、少年自らに資力がある者はほとんどおりません。また、資料・日弁連6-9にありますように、非行に陥る少年は被虐待児であった割合が高く、少年の保護者は少年のために費用を出すことを拒む場合が多いというのが現場を担っている弁護士の実感です。選任時の資力要件を考えるに当たっては、この特徴を踏まえ、少年については資力要件を撤廃すべきものと考えます。
第3点は、捜査段階、審判段階を通じて、少年や保護者の多くが弁護士付添人の援助を自ら求める行動をとっておらず、当番弁護士制度の委員会派遣制度や家裁の法律扶助協会に対する付添人選任依頼など後見的な配慮によって付添人活動が開始されているという実態です。少年被疑者について、資料・日弁連6-5を御覧ください。当番弁護士を10年間運営してきたこれまでの経験から、成人に比べて当番弁護士を請求する者の割合が低いことが少年の大きな特徴と言えます。そのような特徴を踏まえ、各単位会では、委員会派遣制度を設けて対応してきました。刑事事件でも必要的弁護事件が設けられていることを考えれば、少年の場合は身体拘束を受けた少年全員について、弁護士付添人が選任される制度の導入など特別な配慮がなされてしかるべきものと考えております。また、少年被疑者に弁護人の援助を受ける権利を実質的かつ十分に保障するためには、制度構想に当たり必要的選任事件などを設けることも十分に視野に入れられるべきものと考えます。
最後に少年被疑者にも公的弁護制度が設けられようとしていますが、現在被疑者段階の弁護人が、審判段階で付添人になる手段としては、純粋な私選弁護か扶助事件しか用意されていません。少年保護事件付添扶助制度は既に財政的限界に近付いています。このままでは保護者または少年が弁護人を依頼する資力に欠ける場合、被疑者段階で選任された弁護人が継続して審判手続における付添人として少年を援助することが困難となるおそれが極めて高いと言わざるを得ません。被疑者段階での公的弁護制度と併せて、少年について公的付添人制度を実現すべき要請は高いと言わざるを得ず、公的付添人制度の導入を強く求める次第です。
□ どうもありがとうございました。ただいまの日弁連からの御説明について、御質問があれば、どなたからでもどうぞ。
○ 福岡で全件付添制度を設けていらっしゃるということですけれども、ほかにこういう全件付添をやっていらっしゃる単位会というのはありますか。
△ 福岡では対象事件に制限を設けておりませんが、一部の事件に限って制度を導入しているところは和歌山で一つございます。また鹿児島においても、弁護士会内部の常議員会というのがございますが、それを通っていて、1月から施行になると思いますけれども、16歳未満の少年について全件付添をするというようなことになっております。また、東京でも導入しようという動きを今検討している最中でございます。
○ その点についての評価みたいなものは、日弁連としてまとめていらっしゃるのですか。全件付添制度を行っている福岡の単位会の活動についての評価みたいなものはまとめていらっしゃいますか。
△ 評価と申しますと、何をお答えしてよろしいのか分かりませんけれども、福岡では福岡家裁と協議の上で全件付添制度というものを設けましたけれども、実際のところは少年当番付添制度と申した方がよろしいのかと思います。初回の接見は無料である、弁護士に会ってみないかという裁判官からの告知がございまして、それに対して明示の拒否がない限り、家裁から弁護士会に連絡が参りまして、弁護士が出動して少年に会い、受任するというような形になっております。福岡の弁護士がいつも言うことですが、明示の意思の反対をする者が、現在なお福岡部会でも25パーセントいる。しかし、そういうところに少年が自暴自棄になっていたりすることがあって、潜在的には弁護士が付かなくてはいけない事件があるのではないか。そこにアクセスできないことは大変に不満であると。実際のところ、少年院送致決定を受けた少年が慌てて抗告審の段階で弁護士付添人を要請するようなこともございましたので、福岡県弁護士会の弁護士の意見としては、少年の請求にかかわらず、全件に付く制度を何とか導入してもらいたいと強く訴えられているところでございます。
□ 扶助協会で扶助をするのは裁判所の依頼と、もう一つは当番弁護士等からつなぎがあった場合であるけれど、そのうちでも、当番弁護士が付いて、そこから扶助協会の方に持ち込まれるものが増えていると書かれていますね。提出された資料6-6は、そういうのを全部含んだ数だと思うのですけど、そのうちの内訳はお分かりですか。裁判所から依頼があった場合と当番弁護士の方から持ち込まれた場合との。
△ 本日は用意してきておりません。調べることは可能なのですが。
□ 両者の割合がどのくらいになっているのか、単純に疑問に思ったものですから。
△ 年々当番弁護士からの事件、私どもは扶助協会に持ち込んで扶助付添人の選任を受けるものですから「持込事件」と申しておりますけれども、その持込みの割合が年々高くなっているということで、それは実感として分かるのですが、正確に何パーセントというところまで出しておりません。
□ 結構です。もう一点、非常にザッハリッヒなことを伺って申し訳ないのですが、扶助協会の方でお付けになる場合に報酬が平均すると10万円ぐらいだということですね。カテゴリーとしては、あと純粋私選の場合と国選付添人の場合があると思うのですが、そちらの方は、それぞれどのくらい報酬をもらっているのか、お分かりでしょうか。純粋私選の場合はいろいろあると思うのですが、大体どのくらいのものなのかですね。
△ 本当にケース・バイ・ケースですので、私選の場合はどのぐらいもらっているか・・・
□ ○○さんは、私選をやったことはないのですか。
△ ございますけれども。30万円いただけるときもございますし、そうでないときは、持込みで扶助事件にしてもらうようなことです。
□ 国選については、成人の国選弁護とほぼ同じくらいですか。
△ 国選の場合は最高裁に聞いていただくとよろしいのですが、基準は成人の刑事の国選と同じようになっていますが、事案が複雑ということなので、金額は多めに出ていると聞いております。実態のところは裁判所の方に聞いていただきたいと存じます。
▲ 標準的な報酬額は刑事の国選と同様、最高裁の方から、いわゆる3開廷基準で8万6400円ということで示しております。個々の事件については、本日は資料を用意しておりませんが、概ねそれプラスアルファというように理解していただければと思います。
○ 本日いただいた日弁連6-1の資料の6ページの付添人の活動のことに関して伺いたいのですが、成人の刑事公判と比べて、環境調整と呼ばれている活動を非常に集中的、加重的に行う必要があるということですが、弁護士の方の実態から言って、これは集中的、加重的であるから少年事件は難しいのか、それとも一般的に刑事事件を担当される弁護士の方であれば、少年審判の付添人のお仕事をされるということはそんなに難しいことではないのか。付添人としての責務を果たすためには、弁護士の方も専門性や心構えが必要で、弁護士の確保は、見通しとしては容易なのか難しいのか、その辺の感触を教えていただければと思います。
△ 私個人の意見でよろしゅうございましょうか。
○ もちろん結構です。
△ 私は付添人活動はそれほど難しいものではないと思っております。少年の言い分をよく聞くことが基本にあると思っております。皆さん子育ての経験がおありなわけですから、御自分の体験を踏まえた上で、少年と話し合いを続けるということはだれにでも可能なことだと思っております。それに法律的な訓練を受けた刑事弁護人が関与するということは十分にできることだとは思っておりますけれども、ただ、少年独特の表現能力のなさ等々のことがございますので、やはり一定の研修は必要であろうとは考えています。
ですから弁護士としては、4週間、実際のところ、家裁からの依頼は非常に審判期日に切迫した段階でまいりますものですから、ほかの事件を延期したりスケジュールの調整が必ず必要になってきまして、また、こちらから雇用主を探しに行ったりという身体を動かさなくてはいけない、そういうような負担がございますものですから、今のところ担い手は少ないと考えております。
○ ありがとうございました。
○ 私の質問もほとんど同趣旨でございます。少年事件の場合は、○○さん御説明のとおり、刑事以上に集中的にやらなければいけないことと、先ほどの御説明のとおり、カウンセリング的な、あるいは環境調整的なお仕事もあるということですので、法律的な知識以外にある程度の専門性がやはり必要であろうと感じました。その点で人的な体制は大丈夫ですかということをお聴きしようと思ったのです。ほとんど同じ質問ですから、もし付け加えることがあればお願いします。
□ 一定の研修が必要だとおっしゃったのですが、具体的に今、弁護士会の方で研修制度などを採っておられるのですか。
△ 各弁護士会でいろいろな講座などを設けてやっております。日弁連が主催する場合は直接的にはないのですけれども、付添人経験交流集会というのを現在13回まで行いまして、分科会の一つにカウンセリングの方法などということで、専門家をお招きしてお話を伺ったり、あるいはロールプレーですか、そのようなことをやる機会を設けております。その交流集会については、参加者の制限をしておりませんので、弁護士が意欲があれば参加できるということになっております。
日弁連が直接やっているのはそういう場でございますが、私は第二東京弁護士会に所属しておりますが、二弁の方ではカウンセリングの技法等々継続的に心理学者等をお招きして研修講座を設けております。
○ 資料6-2の関係についてですが、この少年は最終的に保護観察処分になるわけですけれども、その後のこの少年の生活状況がどうなったかというのは把握されていますか。
△ この6-2は、ある弁護士が架空の話として作りましたものですから、大体こういうようなことをやっているということで、今までの経験上こんなことをやっていますということをイメージしたものですので、そのように御理解ください。
□ よろしいですか。
○ はい。
○ 調査官の環境調整と弁護士付添人の行われているという環境調整の違いを具体的に説明していただけますか。
△ 重なるところも多うございますけれども、付添人が付いている場合の調査官に限っての話なんですけれども、とにかくお忙しいということで、実際のところは少年の心理を観察、分析するところまでで終わることが多いように思っています。それで実際のところ、親に「こうした方がよろしいのではないか、裁判所側はこのようなことを考えていらっしゃる、あなたたちの問題はこんなところにある」というようなことを指摘して、そこをどう変えていくのかというようなこと、将来に向けてのプログラムを構築するということについては付添人がやっていることの方が多いように思っています。
それは重なるところですが、謝罪と被害回復・賠償、そこは弁護士でなければできないものだと考えております。また、従前の雇用先に復帰をお願いすることは調査官もおできになると思いますが、新しい雇用先を見つけてくることはなかなか難しいように受け止めております。
○ 最初にお話になった部分は、本来、調査官がやるべきところの一部を付添人が分担して行っていると聞こえましたが、そういう理解でいいんですか。
△ 実際上分担しているような形になっているのではないかと理解しております。
□ 付添人が付いてない場合には、環境調整などは余りやられていないということですか。
△ やられてないとまでは申しませんけれども、とにかくお忙しいというふうに思います。
□ 付添人が付いているから、調査官としてもそちらに任せているということなのか、それとも一般的に忙しくてなかなか手が回らないが、付添人が付くことによって、そういうところも十全な手当ができているということなのか、どちらなのでしょうか。
△ 付添人としてかかわっておりませんので、付いてない事件について、調査官がどこまで動いてくださっているのかは分かりませんけれども、お忙しいということだけは申し上げられる。役割分担をした方がよろしいのではないか、積極的にかかわった方がよろしいのではないかと考えております。
○ 今の点についてこういう考え方はできないのかどうかを伺いたいのですが。家裁の調査官も、少年の処遇の方針が決まった場合には、環境調整やそういうところへ乗り出せるわけですけれども、決まるまでは調査官だけでは動けないわけですね。環境調整してみたけれども、裁判官は、実はこの少年はもう少年院へ送らなければいけないと思っていたと。そういうようなときには動けないわけですが、そういうような制約もあるのではないでしょうか。その点はどうなんですか。忙しさとかそういう理解だけではなくて、そういう時期と立場からして動けないというようなことはないのでしょうか。
△ 全般的に結論が出るまでは遅いように思っているのですが、そういう中で環境調整に入る段階が極めて短い。例えば親に問題があり少年に問題がある。そこの関係性が問題だというときに、調査官が親を呼び出して1回話を聞いて、再度ここが問題だからということで2回目の呼び出しをなさることは少ないのではないかと思っております。その2回目の面会時になすべきこと、“少年の問題はここだ”と裁判所調査官は考えているということを私たち付添人が親に説明するなどして、実際に担って、それで環境調整をするというような役割分担になっているのではないかと思っているのですが、動けるか動けないか、裁判官との関係というのがよく分からないのですけど。
□ 今の点は、おそらく最高裁の方でも何か言いたいと思っておられると思いますので、もし何か補充しておっしゃることがあれば、お願いできますか。
▲ 家裁調査官が忙しいからやるべきことをやっていないというようなお話だと誤解があるかなと思います。忙しい中でも個々の少年のために精一杯のことをやっておりまして、付添人が付かれた場合には、よりベターな状態に持っていくために役割分担はあるのだろうとは思うのですけれども、基本的には環境調整も含めて、最適な処分を選択できるために精一杯のことをやっているというふうに申し上げておきたいと思います。
□ よろしいですか。
これから議論に入るわけですが、その議論の過程でも、こういう点はどうなんだろうか、説明を求めたいということがありましたら、また補充的に質問していただければと思います。ちょうど切りがいいところですので、約10分ぐらい休憩を入れたいと思います。
(休 憩)
□ それでは再開させていただきます。
まず、本日の検討項目の中で更に取り上げるべき小論点について、事務局の方で、司法制度改革審議会の意見及び議事録等を参照して案を作ってくれております。それが資料6-1です。それによりますと、小論点の1として、公的付添人制度の「意義、必要性、留意点」が挙げられており、また、2として、「少年の被疑者に対する公的弁護制度の在り方」が挙げられております。このうち2番目の論点である「少年の被疑者に対する公的弁護制度の在り方」につきましては、これまでの検討会で、公的付添人制度を検討する際に議論することとされていたものであります。
まず、「1 意義、必要性、留意点」について、事務局から簡単に説明していただきたいと思います。
● 資料6-1を御覧いただきたいと思います。まずお手元の論点(案)の枠囲みを御覧いただきたいと思います。
ここに引用しましたとおり、意見書は、公的付添人制度について、「少年事件の特殊性」や「公的弁護制度の対象に少年の被疑者をも含める場合のバランス」などを考慮すると、積極的な検討が必要だと述べる一方で、併せて、その検討に当たりましては、「少年審判手続の構造」や「家庭裁判所調査官との役割分担」、「付添人の役割」なども考慮される必要があるとも述べております。このように、意見書は、積極的検討の契機として二つの事項を指摘するとともに、検討の際のいわば留意点として三つの事項を指摘しております。
論点(案)の「1 意義、必要性、留意点」中の1番目から5番目までは、これらの意見書の指摘事項を、順次列挙したものであります。
また、司法制度改革審議会の資料等を見ますと、これらに加えて、「付添人の給源となる弁護士の確保」の問題をも取り上げるべきだと思います。すなわち、審議会の第19回会合で配布されました事務局資料「国選弁護士付添人制度導入論の内容、根拠及びその問題点」におきましては、「問題点」として、「少年事件においては、非行のない少年を早期に手続から解放し、非行がある少年には早期に適切な保護を与える必要があるが、国選付添人の給源となる弁護士が大都市に集中している現状にあることや、少年事件に理解を有する弁護士が確保できるかという問題もあり、迅速に国選付添人を選任するには困難な状況にある。」と指摘されています。また、第26回会合で配布されました「国民の期待に応える刑事司法」においても、「少年審判手続における公的付添人制度」の【検討すべき事項】として、「付添人となる弁護士を確保するための条件整備」が挙げられています。さらに、給源となる弁護士の確保の問題は、公的弁護制度に関する第3回検討会においても論点として取り上げられており、委員の皆様に活発に御議論いただき、様々な御意見をちょうだいしたところです。以上の次第で、給源となる弁護士の確保の問題は、公的付添人制度の検討に当たりましても、公的弁護制度の場合と同様に、あるいはそれ以上に重要な留意点になると思われますので、6番目に記載いたしました。
次に議論の進め方でございますが、公的付添人制度の意義、必要性、留意点として記載しました諸点を考慮しつつ、まず、導入についての積極的要素について御意見をいただき、続いて、個別にその検証をして行くという方法で進めることでどうかと存じます。
議論を進めていく際の参考としまして、資料6-2及び6-3を用意いたしました。この二つの資料について御説明申し上げます。
意見書は、現行の国選付添人制度以外の公的付添人制度について、少年事件の特殊性のほか、「公的弁護制度の対象に少年の被疑者をも含める場合のバランスなどを考慮すると、積極的な検討が必要である。」と述べております。これは被疑者に対する公的弁護制度を導入すると、少年については捜査段階では公的弁護制度の対象になり得るのに対し、少年審判の段階では公的付添人がないことがバランスを失することにならないかという指摘だろうと思います。この意見書の指摘について議論していただくに当たっては、少年が身柄拘束された場合の手続がどのように進行していくかについて、実態を踏まえて御理解いただくとともに、意見書が、手続のどの段階とどの段階を比較してのバランスを述べているのかを把握することが必要だろうと考えております。このような問題意識から、身柄を拘束された少年に対する少年審判手続の全体を考慮に入れて議論していただく必要があるものと考え、手続を時間の経過に従って図式化した資料が資料6-2であります。
以下、手続の各段階に沿って資料6-2について御説明申し上げます。
最初に、犯罪少年が逮捕され、その後家裁送致される前の手続を御説明いたします。
一番左端の欄の上段、「身柄」の欄を御覧ください。捜査機関による身柄拘束は逮捕により始まりますが、「逮捕された者」のうち、処理時年齢20歳未満の者は1万9956人でございます。少年が逮捕されますと、その後、二つの点で、成人とは異なる取扱いがなされます。1点目でありますが、少年につきましては、少年法43条3項及び48条1項により、勾留は「やむを得ない場合」に限られております。勾留された者のうち、処理時20歳未満の者は1万5535人であり、勾留中家裁送致された者は1万4220人でございます。2点目でございますが、少年事件につきましては、検察官は家庭裁判所に事件を送致する前に、勾留請求に代えて少年鑑別所への送致を請求することができ、これが認められますと、被疑者である少年は少年鑑別所に収容されることになります。この期間は請求の日から10日間であり、勾留の場合と異なり、期間を延長することはできません。これも「家裁送致前の捜査段階」における身柄拘束の一種でございます。この手続に従って少年鑑別所に送致された人員は1980人でございます。
なお、勾留に代わる観護措置の種類としては、少年鑑別所に送致することのほか、家庭裁判所調査官の観護に付するということもありますが、実務上、後者の措置はほとんど採られておりませんので、統計数値からは除いてあります。
また、複雑になるため、資料6-2では一部省略しておりますが、警察で身柄釈放された者が553 人あり、これらのほか、逮捕中に家裁送致された者が1716人あります。
次に、下段の「弁護人・付添人・調査官等」の欄を御覧ください。御覧のとおり、現在は、法制度として、少年に対する専門家による保護・援助等の仕組みはこの段階ではなく、「運用」として、当番弁護士制度や刑事被疑者弁護援助制度がございます。これらについては、統計数値も含めて、これまで御説明があったところでございますので、説明を割愛させていただきます。
次に、一つ右隣の欄に移りまして、「家裁係属中の段階」を御覧ください。
この欄の上段、「身柄」の欄を御覧いただきたいと思います。
少年の被疑者が家裁に送致され、家裁に事件が係属いたしますと、家裁の裁判官が、観護措置を執るかどうかの判断をいたします。一般保護事件の終局総人員中、観護措置が執られた者は、1万7803人であります。観護措置が執られますと、その期間は原則として2週間とされておりますが、「特に継続の必要があるとき」は、これを更新することができます。また、改正少年法により、限られた要件のもとで、更に2回を限度として、「特別更新」することができるようになりました。一般保護事件のうち観護措置が執られた者の観護措置期間に関する統計数値をみますと、28日以内の者が1万3321人であり、この数値は、改正少年法が施行された平成13年4月以降に観護措置が執られた人員1万3517人の98.5パーセントに当たります。
なお、少年が少年鑑別所に収容された場合、単に施設内に収容されているわけではなく、鑑別のため様々な活動が行われることになります。詳細につきましては、資料6-3を御覧いただきたいと思います。資料6-3に、少年鑑別所における鑑別の内容について書いてございますが、これはもともと少年院法16条に定められているところでありまして、少年鑑別所は、少年法第17条第1項第2号の観護措置の規定により、送致をされた者を収容するとともに、家庭裁判所の行う少年に対する調査及び審判並びに保護処分及び懲役又は禁錮の言渡しを受けた16歳未満の少年に対する刑の執行に資するため、医学、心理学、教育学、社会学、その他の専門的知識に基づいて、少年の資質の鑑別を行う施設とするとされているところであります。
次に、資料6-2の説明に戻りますが、下段の「弁護人・付添人・調査官等」の欄を御覧ください。家庭裁判所の審判の部分でありますが、御覧のとおり、法制度として、第1に「家庭裁判所調査官制度」がございます。裁判所法61条の2によれば、「家庭裁判所調査官は、少年保護事件の審判に必要な調査その他他の法律において定める事務を掌る」ものとされております。第2に、「付添人制度」がございます。少年法10条1項によれば「少年及び保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、付添人を選任することができる。ただし、弁護士を付添人に選任するには、家庭裁判所の許可を要しない。」とされており、同条2項によれば、「保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、付添人となることができる。」とされております。第3に、改正少年法により、「国選付添人制度」が導入されました。これにつきましては、先ほど説明があったところでございます。これら「制度」上の仕組みのほか、さらに「運用」として、「少年保護事件付添扶助制度」がございます。
さらに右隣の欄に移りまして、「検察官送致決定後、公訴提起までの段階」を御覧ください。
この欄の上段、「身柄」の欄を御覧いただきたいと思います。観護措置の執られた少年について、家裁が検察官送致決定を行いますと、少年法45条4号前段、45条の2により、観護措置は勾留とみなされます。これを「みなし勾留」と呼んでおります。このように勾留とみなされるものの、その期間を延長できるかどうかにつきましては、そこに記載されておりますとおり、家裁送致前の捜査段階における勾留とは異なる取扱いがされております。
なお、先ほど最高裁から御説明がありましたとおり、身柄を拘束された状態のまま、刑事処分が相当であるとして検察官送致決定、いわゆる逆送がされた少年は309 人であり、観護措置が執られた人員1万7803人の1.74パーセントとなっております。
次に、下段の「弁護人・付添人・調査官等」の欄を御覧ください。この欄につきましては、一番左端の欄、「家裁送致前の捜査段階」についてで説明したところと同様になっております。
最後に一番右端の欄でございますが、「公訴提起後の段階」でございます。この欄の上段の「身柄」の欄を御覧いただきますと、この段階における少年の勾留につきましては、※印に記載しましたとおり、成人とは異なる取扱いがなされております。また、下段の「弁護人・付添人・調査官等」の欄を御覧いただきますと、この段階では、法制度として、「国選弁護人制度」がございます。
なお、国選弁護人制度につきましては、※印に記載しておりますとおり、少年に関する二つの特別規定がございます。
議論の参考までに、資料6-2、6-3について御説明いたしました。以上でございます。
□ ありがとうございました。今の事務局からの説明を踏まえまして、最初に議論の進め方なのですけれども、先ほど事務局からは、当否について議論をしていただく場合に、まず積極的な御意見を伺い、その上で、留意点を踏まえながら、それを検証していくという方向で議論してはいかがかということだったと思います。さっきも触れられましたけれども、審議会の意見書では、積極的な検討が必要だと述べている根拠あるいは理由として、一つは「少年事件の特殊性」ということが挙げられておりますし、もう一つは、「公的弁護制度の対象に少年の被疑者をも含めた場合のバランス」ということが挙げられております。まず、これらについて御意見をいただければと思います。
その一方で、留意点として、第1に「少年審判手続の構造」、第2に「家庭裁判所調査官との役割分担」、第3に「付添人の役割」ということが挙げられておりまして、そういった点についても留意しながら検討をすべきであるということになっておりますので、次にそれらの点について、御意見をいただく。そういう形で議論を進めていくのがよろしいのではないかと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。
それでは、まず、「少年事件の特殊性」と「公的弁護制度の対象に少年の被疑者をも含めた場合のバランス」という点について御意見をいただきたいと存じます。このうち、少年事件の特殊性につきましては、先ほど日弁連の説明の中でかなり述べられておりましたので、重複を避ける意味では、それに更に付け加える点があれば御意見を伺いたいと思います。どなたからでも結構ですが。
○ 少年事件の特殊性ということについて、捜査の立場から少しかいま見させていただきたいと思います。私も少年警察の専門家ではないものですから、一般的なことしか言えないのですが、少年事件も千差万別ではありますけれども、概して言えますのが集団ないしはグループでなされる場合が比較的成人による犯罪より多いと。これは共犯率が高いというようなことで言えます。
それと一回限りの非行や事件ももちろんありますけれども、最近の犯罪類型でいいますとひったくりとか、オヤジ狩り等々に典型的に見られますように、どこかでストップがかからない限り反復継続、拡大再生産されていく犯罪類型的なものが多いということが言えようかと思います。この辺が隘路でございまして、グループメンバーが少しずつ入れ替わりながら、反復継続するものですから、当該A事件のときに、だれとだれがメンバーであったかという事実認定というのは確かに捜査の側にとっても大変難しい場合が多い。
それに加えまして、先ほどの御説明にありましたように、大人の場合ですと犯罪事実ごとに再逮捕、再々逮捕ということもするわけですけれども、身柄拘束についてのいろいろな制限もございますので、限られた時間の中でそうした複雑な事件、共犯関係を明らかにしなければいけないということもありまして、なかなか捜査当局からは言いにくいのですけれども、必ずしも余罪の全容が解明できているとは限らないということも指摘できようかと思います。
そこから、更に言いにくいのですけれども、7割強のものが審判不開始あるいは不処分ということになってきますので、捜査をする一部の者にとっては徒労感を感じる場合もあるといったようなところが実情かなと思います。何かしらの御参考までに。
○ 少年事件の特殊性というところから考えますと、被疑者・被告人が少年の場合には、自らの行為を客観的に分析したり認識したりするというところに十分な力がなくて、先ほど御指摘のように、集団で非行してしまうとか犯罪を犯してしまうとかということもあるでしょう。自立更生の観点からいきますと、特に被疑者段階、家裁送致前の捜査段階などでは少年を支援する方が必要だなという思いを強くしておりますし、また家裁に係属中の段階でも、特に家庭に問題がある場合など、保護者が保護者としての責務を果たしていないとか、あるいは保護者がいないとか、そういう場合のことを考えますと、付添人の方の必要性は大いにあると言うことができるのですが、ちょっと違う視点で考えたときに、バランスの問題から、違う点も挙げなければいけないと思います。この辺りにバランスという問題提起の意味があるのかなとも思うのですが、それは被害者の視点に立ったときなんですね。被害者の視点に立ちましたときには、検事が同席しない場合にも少年には付添人が付いて弁護人的な活動をする。しかし、被害者はその場にいられないし、検察官もいないとなると、そのアンバランスなところを不公正と見てしまう方も多いかもしれない。
ですから私は、被疑者・被告人の立場に立つと非常に必要性があると思いつつ、違う立場に立ったときに、特に家裁係属中の段階というのがやはり一般の成人の刑事裁判と違って、まさに特殊であるがために、そこに付添人がしっかり付くべきであるというときには、きちんとした明示的な説明なり、あるいはもし必要な場合と必要でない場合を分けるとしたら、必要な場合の要件をきちんと明示しておくなりをしませんと、多角的な立場に立つときに不公正と受け取られはしないかということを論点として挙げたいと思います。また、そうであれば、だれがその要件を設定し、また、それを判断するのかということも出てくるのかなと思います。
その辺りが公的弁護制度の対象に少年の被疑者を含める場合のバランスというときに留意すべき点かなと思っています。以上です。
○ 少年事件の特殊性、今、○○委員がおっしゃったように、犯罪の被害者の中で、少年事件の被害者は、やはり特殊な地位というか立場にあって、通常の成人事件の被害者であったら認められるような権利が少年事件の被害者には認められていない。現在も傍聴の権利はないわけですね。ですから知る権利も成人事件の被害者に比べればかなり制限されている。被害者と話をしていると、例えば家裁に行ったときに、ここは被害者のことを考える場所ではないのだ、少年をいかにして更生させるかを考えるところなんだと、けんもほろろに追い返されたという経験を持っている被害者がおられて、それは少年事件を語るときに常に言われている言葉なんですね。ですからそういう特殊性といった場合に、例えばよく加害者側からすると、うその自白をしやすいというようなことが日弁連サイドでは言いますけれども、そういう特殊性だけではなくて、少年事件の被害者から見た少年事件あるいは少年の特殊性というのも十分に考慮された制度でなければいけないと思います。
それから、捜査段階で弁護人が付く。これは多分少年においても一定の条件で付くということになろうかと思います。公的な付添人制度を認めない場合には、捜査段階では弁護士が付いていた。ところが家裁送致になると、そこで弁護士は切れてしまう。ところが成人はそのままずっと公判段階にも付いていると。手続の切替えはあるかもしれないけれど、国選弁護人が付いている。これはバランスを欠くのではないかという考え方はあるのかもしれませんけれども、成人事件の公判はあくまでも適正な科刑をどうやって実現するかというか科刑手続であるわけですけれども、少年事件の場合は、今、最高裁から御説明があったように、制度の趣旨は、いかにして罰するかではなくて、いかにして少年を健全に育成するかというところにあるわけですから、成人事件においては、公判も継続して国選弁護人が付くのに少年は付かないのはおかしいのではないかということは言えないわけで、少年事件については、捜査段階で国選弁護人が切れてしまうということがあっても当然であるというのがまず基本的な考え方としてあるべきではないか。
ただ、捜査段階から否認をしていて、特に、犯人ではないと言って否認をしている事件で弁護人が付いていて家裁送致になりましたと。これは審判手続ですから弁護人は要りませんというのはいかがなものかというふうに考えていくと、極めて限られた条件、あるいは限られた場合については公的費用で付添人を付けるという場合があり得るだろうと思っています。
□ それは、争いのある事件ということですか。それとも、もっと限られた範囲でということですか。
○ 基本的には私は争いのある事件だと思います。争いのある事件は、おおむね検察官関与事件になろうかと思いますので、自動的に国選の付添人が付くであろう。ただ、今お聞きするとすべてがそれでカバーできるわけではないということのようですので、否認事件について検察官関与は認められない、したがって、自動的に国選付添人が付かないというような場合に、別の観点から国選の付添人を付けるという制度は考えられていいのではないか。
ただ、その場合には、かなり異質なことを言うことになるのかもしれませんが、今の被害者等の立場を考えますと、審判制度そのものが加害少年のためのものだと。加害少年の環境調整のために調査官も付いていると。その上に更に否認事件だからといって、更に付添人まで付けると、片や被害者の方には何もというか、十分な手当てがいまだになされてないというときに、それだけではやはりいけない。
もう一つ、事実関係で争いになっているときに、片方に付添人が付くということは、事実上それは対審構造に近いことになるわけですから、そういう場合には、少なくとも検察官の関与はできると。必須でなくてもいい、必要的関与でなくてもいいですから、検察官関与ができるという道筋はつけるべきであろう。特に被害者サイドからの納得を得るためには、そういう制度構造にするべきではないかという感じがします。
○ ただ今、○○委員、それに○○委員も少年事件における被害者の立場ということを強調されました。確かに少年犯罪の被害者の方が一般の刑事事件の被害者の方以上に不満を抱かれる、その重要な要因として、少年審判手続が少年の保護・健全育成の観点から非公開であるという点があるのは、おっしゃるとおりだと思います。しかし、公的費用による付添人の問題を検討するに際して、この点をあまり強調するのは適切でないように思います。なお、先般の少年法改正の際には、この点も考慮して、被害者の方への配慮・手当てが導入されております。具体的には、先ほど調査官が被害者の方にも面接するとのお話が出ましたけれども、更に進んで、被害者の方が調査官なり裁判官に直接意見を述べて、それを審判に生かす意見聴取や意見陳述の制度が設けられました。また、審判記録について、被害者の方には審判中でも閲覧・謄写を認めるとか、審判結果を通知する等の手当てが行われております。少年審判でも、被害者の方への配慮の措置があるという点は指摘させていただきたいと思います。
○ 今の○○委員の御意見につきましては、確かに少年事件の場合には審理は非公開で、被害者も審判に立ち会うことはできない、傍聴することもできない状態になっておるわけですけれども、○○委員のおっしゃった被害者に対するケアという問題は、少年手続や刑事手続とは別の観点で是非考慮されなければいけないのだろう。それと少年手続で公的付添人を付けるかどうかという問題と一緒にされると議論は非常に混乱してしまうのではないかという気がします。
私自身も弁護士として2、3年に1件ずつぐらいは少年事件を担当いたします。私が担当した事件で非常に記憶に鮮明に残っているのは、先ほど○○委員もおっしゃいましたが、集団事件で反復継続する事件になるのですけれども、数人でグループを組んで、たまたま通行しておる中学生、高校生を脅すとお金を簡単に取れたと。そのためにその後恐喝事件を何度も何度も繰り返し、さらにそれがエスカレートしていって、ついに人を殴ったりしてお金を取り怪我をさせ強盗致傷にまで至ったという事案でした。私が担当したのはまだ15歳の少年だったのですが、その少年につきましては、私が面会しましたときには、自分のやったことについての反省の態度が相当見受けられました。かつ、また家族の方も通常の家庭でしたが、ただ、家庭の環境で言えば、両親とも働いていて大変忙しく、そのために比較的放任されてきたというような家庭でした。そういうふうなことで、事件としては強盗致傷ということで大変重い事件になるのですけれども、裁判官・調査官と面会する中で、試験観察に付するということになり、その少年は中華料理店の店員をするよう指導され、それを4カ月間無事真面目にこなしまして、最終的には保護観察処分になったという事案でした。その中で私が経験しましたことは、子どもというのは接する度に変わって行くといいますか、非常に可塑性に富んでいるということでした。その子は中学時代も本など読んだことがなかったのですけど、鑑別所で本を読まされて、灰谷健次郎さんの本、あるいは下村湖人の『次郎物語』を読んだりなどしまして、両親が自分のために当番弁護士ですけれども、弁護士を付けて費用も出して一生懸命やってくれているということで、両親に対して、初めて感謝の手紙を書いたりしまして、目に見えて立ち直っていく姿が見られました。その子につきましては、その後も両親からですけれども、毎年年賀状をもらって、真面目にやっておるというような連絡もいただいておって、大変弁護士冥利に尽きるような、そういう事件として経験したことがございます。
こういうことからしまして、私が経験した数少ない少年事件であるのですけれども、家族との調整、さらにはその子どもに対していろいろと親のように、あるいは兄貴のように接してよく話をして、それなりに理解を深め合っていくという過程を通じて、少年の目線で事件を見ていくというような、そういう存在というのが是非必要なのだろうという感じがいたしました。
また今言いましたように、少年が立ち直る姿というのは非常に感動的といいますか、これはまた機会があれば是非少年事件をやりたいなということも感じたのですけれども、少年事件を数多く担当している弁護士の中には、そういう意味で子どもたちが立ち直る姿を見て、それにはまってしまうと言ったら語弊がありますけど、そういうようなことで、大変熱心にやっておられる方がたくさんございます。その弁護士の数は、後ほど弁護士の給源の問題で出るかもしれませんが、相当増えてきておると言ってよいかと思います。少年事件の事実認定の過程だけではなくて、保護処分の決定過程に弁護士がかかわり、かつ、少年本人の目から見て問題点を解きほぐして立ち直らせる作業というのは、弁護士の仕事としては非常に重要な仕事なのだろうと思っています。
そういう意味では付添人につきましては、先ほど○○委員がおっしゃいましたように、被告人段階になれば、成人については国選弁護人がいるのに、少年の付添人になれば国選の付添人はいないというような、そういう意味でのバランスを失していることは明らかです。保護処分なり、少年院送致や保護観察処分であっても、それは不利益処分であることには変わりないわけですから、それに対して弁護人が付いて弁護活動をしていくことは是非必要だし、制度としても、そういう意味では広く公的付添人制度を認める必要があるだろう。少なくとも家裁で観護措置決定を受けておる少年についてはすべからく公的弁護人が認められていく必要があるのではないか、私はそのように思っています。
□ 非常に感動的な、あるいは意味のある弁護活動をされたと思うのですけれども、しかし、もし付添人が付いてなかったら、そういうふうにならなかったとまで言えますか。
○ 特に試験観察にするかどうかというのは、やはり弁護士がかかわって、こういうふうに環境調整できますよと。その子は自宅へ帰って、その後、自宅から通って中華料理店の店員さんをしておりましたので、家庭はこういうふうな受入態勢ができているということを裁判官なり調査官に説明することによって、試験観察ということになりえたと思っていますけど。
□ 調査官もいるわけでしょう。それでは賄えなかったかどうかということなのですけれども。
○ 裁判所ではもともと少年院送致という声もあがっていた事案でありましたので、私が少年と接した中で、日に日にそういう立ち直りの姿勢が見えてましたので、少年のために何とか少年院に行かずに済むようにというような活動をしました。そういう意味ではそれは弁護士でなかったらできないことではないでしょうか。
□ 少年の目線に立つということですか。
○ そうですね。
□ 分かりました。
○ 私は、今の前半の部分は賛成で、少年の事件における被害者の立場というのは非常に微妙である。特にいろんな意味で問題があるということについては理解できますけれども、それと公的付添人制度を結び付けることには必ずしも賛成できないというか、むしろ結び付かないだろうと考えています。そのことがまず1点。
もう一つは、少年が、先ほどから出ておりますように、公的弁護の対象となる非行、つまり犯罪を行った場合に、恐らく少年事件についても弁護人を付けるというのが筋ではないかというような気がします。ただ、問題は、非行事実が問題になったときに、それが認められるとしても、刑事処分になるか保護処分になるかという違いがある。つまり要保護性の問題が出てくるわけですけれども、これが刑事処分が相当だということになって検察官に送られて、もし起訴されたというと、先ほどと同じようにそこから先弁護人を付けることになる。要するに真ん中が抜けたような形になるというのがいいのかどうかということになってくるのだろうと思うのです。
そういうことからすると、少年が、少なくとも公的弁護の対象となるような犯罪を行った場合には全部に公的付添人を付けるということも一つの考え方ではないかという気がしております。
□ 全部というのは、公的弁護をどう組むかがまだ見通しがついておりませんので何とも言えないのですけど、仮に請求によって一定範囲について付けるとする場合、事実は争っていないというときであっても、中抜けになるかもしれないので、付けろということですか。
○ そこはもう一つ検討は必要かもしれないけれども。
○ いろんな意見が出ているわけですけど、少年審判手続の付添人の役割というのは一体何だろうということをよく考えてみる必要があると思うのですね。審判の対象となる少年をサポートする役割があるわけですけれども、弁護士たる付添人というのは法律的な立場からのアドバイザーであるわけです。どういう場合にそういった弁護士たる付添人が必要なのだろうかということを考えると、先ほど○○委員から話がありましたけれども、争いのある事件と争いのない事件では違ってくるのではないか。争いのない事件の場合は、要は環境調整や社会調査とかそういったところが恐らく主になる。これは恐らく家裁の調査官という制度の中で十分それは機能していくような制度になっている。
では、争いのある事件について、付添人を付けるということになると、これは先ほど意見が出ていましたけど、やはり検察官の関与がどうしても必要になってくるのではないか。これは先般の少年法の改正での検察官関与の立法趣旨のところで法務省から説明がありましたけれども、やはり双方が関与した場で事実認定を適正にやるというのが一つの理由だというのがありますが、それも一つだと思うのですけど、もし検察官がいないところで付添人を付けるとなると、少年・付添人対家庭裁判所という対峙構造を生じさせてしまう。しかし、現在の少年審判というのは、少年の保護を目的として職権的な審問構造の中で行われる保護手続であって、制裁手続ではないわけですね。少年法の規定にもありますけれども、審判は懇切を旨としてなごやかに行うとともに、非行のある少年に対して自己の非行についての内省を促すものでなければいけない。
もし、片方だけ付けてしまうと、少年・付添人対家庭裁判所の対峙構造の中で果たしてそういうものがうまくいくのか。恐らくこれは少年審判の構造を根本的に変えるような問題になってくるような気がします。そこに検察官というのを関与させれば、そういった対峙構造というのは少なくとも緩和される。そうなってくると本当にそのような構造の変更がいいのかという疑問がありまして、ここはかなり大きな問題ではないかという気がします。
それから、もう一つ、中抜けになるのではないかという疑問が呈されています。公的弁護を捜査段階で付けて、公判段階では国選が付くではないかといいますけど、先ほど事務局のペーパーの中で、資料6-2、これを興味深く見ていたのですけれども、要は現在、少年について言えば、家庭裁判所の審判中というのは、家庭裁判所の調査官制度、資格制限のない付添人制度、あるいは国選付添人制度というのがあるわけですね。むしろその前後にそういった少年の保護のための制度がないわけで、そこに公的弁護をつくるということでやっとバランスが取れるわけで、それを中抜けだというのは、ちょっと違うのではないかという気もするのですね。
□ 一つは審判構造の問題があり、その点では、先頃の少年法の改正で、一定以上の重い罪の場合に非行事実の認定が実質的に問題になると思われるときには、検察官が関与し得ることになった。その場合には、弁護士である付添人も付き、刑事手続における弁護人のような活動をすることになるので、非行事実についての審判に関する限り、一種の対審構造的なものを持ち込むことになっているわけですが、公的付添人が付く場合にも、逆に検察官を関与させ、同じようなバランスを取ることが必要になりそうだが、それでいいのかということですね。
もう一つは、裁判官及び調査官の役割との関係が問題であり、付添人の活動の範囲としては、大きく括れば、非行事実の認定に関する部分と要保護性ないし処遇に関する部分があり得るのですけれど、その両方になるのか片一方になるのか、それによっても役割分担の在り方が違ってくる。整理しますと、こういう二つの問題が今浮かび上がってきていて、それをめぐって議論がなされているということだと思うのです。
○ 調査官と付添人の役割分担のお話に移ってもよろしいのでしょうか。
□ はい、どうぞ。
○ 私は先ほど日弁連の御報告を伺いまして、調査官の方と付添人の方とで、特に違うところという点で、謝罪と被害回復と、例えば新しい雇用先を見つけるなど、環境調整においても相対的な役割分担をするとともに、被害者とのかかわりでも役割があると御指摘があったのですね。
私は先ほど論点として、被疑者・被告人の立場だけではなくて、被害者の視点も論点として大事ですと申し上げましたが、被害者の視点に立ったときも、付添人の方が、従来、被害者への謝罪であるとか被害回復であるとか、これは損害賠償であったり示談であったりするかもしれませんけれども、そういうところにもかかわりを持っていらしたという御報告を聞いたわけで、要保護性と処遇の判断以外に、被害の回復なり、非行なり犯罪なりによって与えた社会的な影響に関する取組みにおいて、もし付添人の方が果たすべき役割があれば、それも考えていかなければいけないということがあると思います。
それから、もう一つ、調査官の方との役割分担の中で、先ほど調査官の方は裁判官の指示によって働くということが第一義的であるということを伺いました。もちろん現実には、いちいち細かい指示を受けることなく、専門性の中で事件を担当していらっしゃると思うのですけれども、そのときに事実認定が非常に争われている場合などは、事実関係の調査が主として行われることも予想されるので、全体として少年中心の活動を調査官の方はされると思いますけれども、事案によっては、そういう事実認定と要保護性とのバランスの中で、ある偏りなり特徴なりが出るかもしれません。
そのことが少年の視点に立ったときに不利でないようにしていく制度も考えるべき視点ではないかなと思います。
○ 今の○○委員の発言の中で、事実に争いがあるときに家裁調査官にその調査をさせる、それが主になるのではないかという御指摘がありましたけど、実際にはそういうことはほとんどなくて、事実に争いがあるときには、それは裁判官の判断分野ということになります。そこは置いておいて、仮に非行があったとすれば、どういう問題があるかという辺りを調べてやるのが調査官の役割になっていますので、そういう意味では、事実の争いについて調査官をというのはちょっと今のやり方から違っているかなと思います。
続けてよろしいですか。
□ どうぞ。
○ 付添人がいろいろ活動されているのはよく分かっておりますし、それによって、例えば試験観察になったというようなことも多分あると思うのですが、家裁の調査官も、そういう要保護性については自分らの領域の問題だと。特に法律家である裁判官には分からない、自分らの動くべき範囲だという責任感と自覚で非常によく調べてきますし、当然付添人がいない事件でも、試験観察が行われています。事件数は分かりませんけど、私が3年ぐらいやった中でもかなり試験観察がありました。その中には調査官の方で、これはもう一回少年にチャンスを、そういう意味では機会を与えて、その中で自覚を促してみたらどうかということでやった事件もあります。裁判官から見ると、調査官がかなり少年にのめり込んでいるようなところもありまして、いや、そんなこと言っても、もうこれは駄目なんじゃないかというようなことで、私の方の意見で処分を決めたこともありますけど、調査官の方が少年とのコンタクトが強くなっていて、よく分かっているので、それではそちらの案でいってみるかということで調査官の意見どおりやったケースもかなりありました。ですから、そういう意味で、もちろん調査官が忙しいというのは、先ほど指摘のあったとおりだと思いますけど、だからといってやるべきことをやっていないとは私は思っておりません。
また、被害者の関係でも、例えば東京家裁の調査官らは試験観察中だったかと思うのですが、そういう少年らを何人も一堂に集めて、実際の犯罪被害に遭った人の話を聞かせるというような試みをやっていると聞いております。もちろんその少年自身の事件の被害者にするというのは制度上制約がありますけれども、そうしたこともやっているということもあります。ですから、私が考えるには、要保護性の範囲内で、もちろん付添人が必要ないと言うつもりはありませんけれども、公的な費用を投じて要保護性だけが問題になる事件にすべて付添人を付けなければいけないというふうにはどうも思えないというのが私の感じです。
○ 先ほど構造論との関係で公的付添人の問題が出てきましたけれども、今の制度でも私選で弁護士たる付添人が入ってきているので、この点は、○○委員流に言えば、崩れているような感じがして、そこに公的弁護人を付けたとしても、五十歩百歩で、問題はこの段階で公費によって付けるメリットがあるのかどうかという議論だけだろうと思うのですね。ですから構造論には余りとらわれる必要はないだろうという気がしますけれども。
□ ただ、少年法のこの前の改正の議論の中で、付添人が付き熱心に活動する、特に非行事実が激しく争われるということになると、一種の片面的対審構造みたいな状態になって、裁判所がいわば検察官の役も兼ねないといけないことになる。これは少年審判の趣旨からすると、裁判所としては非常にやりづらい立場になるということで、それが検察官を関与させることの理由の一つとされたわけですね。
ですから、今そうなっているじゃないかと言われたのですけど、むしろ、変な片面的対審構造のような状態を補てんするためにそういう改正をしたというところがあるものですから、そこは考えなければならない点であることは確かだと思うのですね。
○ いわゆるやりにくさの議論というのは私はあると思うんですね。裁判所はそれによってやりにくさというのは出てくるだろうと思うけれども、これはある意味では我慢しなければいけないので、むしろ対審構造をどこまで広げていけるかという議論で置き換えることは十分可能だろうという気はしますけれども。
○ 先ほどの座長の整理と、今、○○委員のお話とを聞いていて思ったのですが、現在の少年審判の基本構造は、先ほど最高裁からの御説明にありましたとおり、職権主義的審問構造と言われているものです。先般の法改正の際に、先ほどの座長の整理にあったとおり、対審構造的なものを、非行事実の認定に争いがある場合に、持ち込んだのは確かなのですが、しかし、全体の構造を根本的に変えたわけではありません。職権主義的審問構造というのは、事件を審理する裁判官と審理の対象になっている少年が向き合っているという形であって、それ自体は維持されているわけです。
そこでは、付添人も、それから検察官が関与した場合も、両者が対向関係にあるのではなく、建前の上では両方とも、裁判官が主宰する審判の協力者ということになります。このような私の理解に依れば、もともと裁判所と少年が向き合っている形は変わらず、かつ、これまでも私選で弁護士付添人が付いている事件もたくさんあったわけですから、○○委員がおっしゃったように、弁護士付添人が付くのだったら必ず検察官もいないとバランスが取れないという話には、論理的にはならないのではないか。職権主義的審問構造である限りは、裁判所が審理の対象とされた少年に対し適切な処遇を決定するためにいろいろなことをやるに際して、両者はこれに協力していくという格好です。私はまだ意見を固めていませんが、弁護士付添人がいるのだったら、検察官もいなければおかしいという話にはならないと思います。
○ 今、○○委員、○○委員からもお話があったように、今度の改正があくまでも検察官も審判の協力者という形でなされたことは私もよく知っています。それはいろんな問題があって一定の重大な犯罪について争いがある場合、被害者を始めとする国民の納得を得るようなきちんとした事実認定をするためにはそういった協力が必要だと、その限度で設けられたということもよく分かっています。
ただ、例えば争いのある事件一般について、全部公的付添人を、もし私選が付かなければ付けるという形にしていった場合に、あるいは公的付添人を公費で付けて争う以上は、そこは適正手続の観点から検察官の関与もやはり必要になってくるのではないか。それが範囲がずっと広がってくると、今までよりかなり広い範囲でそういった対審的な構造が出てくる。だから、そこで少年審判手続構造が実質的に変わってきてしまうのではないかというおそれがある。
理屈の立て方はいろいろあると思うのですけれども、ある一定の限度内でやっている場合と、それを広く広げていった場合はやはり違ってくるのではないかと思うのですね。そこは少し考えておく必要があるのではないか。
□ この間の少年法改正と同じような位置付けだとすると、裁判所が審判のために付添人の協力が必要であると判断する場合なら、話が違ってくるということですか。
○ ただ、この前の改正のときも、そういったいろんな問題もあって罪種が限定されていると思うのですね。やはり基本構造とのバランスの上に立って改正が行われたものと思います。それをどんどんどこまでも広げていっていいのですかという疑問なんです。
○ もちろん○○委員のおっしゃることはよく分かるのです。ただ、検察官関与がなかったときは、裁判官がすべてをやるという建前で制度がつくってあって、その建前自体はやはり変わっていない。法律家である弁護士付添人が付く事件が広がったからといって、論理必然的に当事者対抗的なバランスから検事がいなければならないという議論にはならないだろう。
□ そこは分かっておられるのですよ。論理の問題として突き詰めれば、そういうことになるかもしれない。成人の刑事手続でも、職権主義であるドイツなどの場合にも、弁護人が付いている。検察官も付いていますけど、検察官はほとんど何もしない。そういう構造でやっているわけですから。しかし、○○委員の御発言は、それとは違うレベルのことであって、そこは意見が違うということだろうと思うのですね。
○ 趣旨は同じですけれども、確かに現在の審判制度は職権主義でできていると、おっしゃるとおりなのですね。基本的には大岡越前守のようになっているわけで、検察官も、もっと言えば制度の趣旨は、そこには検察官も付添人もいないわけですよね。裁判官と少年が1対1で向き合う。これが制度の本来の趣旨なわけです。そこで逆に国費で弁護人をくっつけるわけですね。それ自体が制度をいじっているということなんですね。本来の趣旨がその一点で変わるということ、それをちゃんと自覚しなくてはいかんと私は思うのですね。
ですから、当然それは対審構造がどうのこうのというよりも、少なくともそれで制度を変えるのですから、しかも国の税金で付けるわけですから、当然私は必須で検察官関与とは言いませんけれども、限定的な検察官関与、あるいは検察官が必要だと思ったら、そこに関与できるというような形で、検察官が関与できる道を残しておかなければ、非常にある意味では偏頗な制度になる。制度の趣旨が変わっているのに、それを無視して、かえって跛行的な制度にしたまま残すということになるのはいかがかと私は思いますね。
□ 私選で付添人が付いている場合とは違う、違うのは公費を使うからということですか。
○ ほとんど全部付くわけじゃないですか。原則として付くわけでしょう、一定の条件を満たせば。本来、私選というのは制度の趣旨から見れば、それは付けたかったら付けてもいいですよというような感じで、ある意味では例外的な形で考えているわけですね。ですから裁判官と少年が対峙する、これはおっしゃるとおりだけど、それは1対1で対峙するというのが制度の趣旨だと思いますね。
□ 中間形態もないわけではないですね。裁判所が必要と認める場合に付けるということにすれば、全部には付かないわけですが。
○ そうですね。その代わり裁判所が必要と認めたら検察官も関与させることにするというのでないと制度のバランスが取れないでしょう。
□ 御意見は分かりました。
○ 基本的には少年の納得ということも考えなければいけないのだろうと思うのですね。例の流山高校事件の判決の中で団藤裁判官が言っておられるように、少年に対して人権保障を考え納得のいくような手続を踏んでやることによって、初めて保護処分が少年に対して所期の改善効果をあげることができるのだと。そういう意味では、少年の立場から見て、自分のために弁護活動をしてくれた、あるいは弁護人がいろいろ動いてくれたということによって、最終的には少年院に行くことになってしまった場合でも、それなりに本人はしようがないと納得して行くという場面は結構あるのです。だから、そういうふうなことからしましても、是非とも公費で弁護士たる付添人を付ける必要はあると思うのですよね。
□ 裁判官や調査官では納得しないということでしょうか。
○ そうなんです。先ほど○○委員がおっしゃいましたけれども、裁判官・調査官はいずれにしたって官の目ですよ。そのような立場でなくて、少年の目線でできるかどうかです。さっき○○さんも言われましたけれども、被害者との示談、そういう意味では被害者の問題を取り込むという一つの契機になるかと思うのですが、示談できるのは弁護士以外にはないでしょう。調査官が示談に行かれるというようなことはあり得ないことですからね。
□ その点、示談に応じられるというのは、資力に余裕がある場合ではないのかなとも思われるのですけれども。
○ 必ずしもそうではなくて、経済的な余裕はないけど、今、家族としてできる範囲はこれだけだということで納得してもらうことはあり得るんですよ。法的な請求権からみると100 万の支払義務があると解される場合に、それを10万で我慢してやれというようなことは、調査官では決して言えないですよ。それをできるのはやはり弁護士ですね。
□ 弁護士の報酬は払えないけれども、頑張れば被害弁済くらいはできる・・・
○ 例えば、先ほどの私の例で言えば、強盗致傷の被害額は2万8000円だったのです。これは被害者と示談して2万8000円支払って納得してもらいました。他にも多くの被害者に被害弁償しなければならないので、家族には今この程度の額しかできないから我慢してくれというようなことで。怪我の治療費等を含めると10万円ほどは払わなければいけないケースだったのですけれども。
□ そのケースでは、○○委員の報酬も払ったわけですね。
○ それは払いました。それはそうです。
○ 要するに示談をするために、国が少年に付添人を税金で付けると。これは被害者から見たら、ある意味ではとんでもないことなわけですよ。だったら、示談なんかしてもらわなくていいと。○○委員は私選を前提にお話になっているから、それは私選は私選の世界がありますから、これは国選と違うわけで、それは被害者サイドから見たら、家裁の調査官とどこが違うんですか、家裁の調査官は示談はできませんけど、国選の付添人は示談ができますよと言われて、じゃあ、国選の付添人制度を設けましょう。その費用はだれが出すんですか。被害者サイドの税金も使われますと、それではおかしくないかということになりますね。
ですから当然付添人制度をつくるなら、示談ができるだけではなくて、家裁調査官とは別の、環境調整なり何なり、もっと積極的にできるというのがない限りは、それは要保護性の世界に国選の付添人を入れてくる、これはなかなか難しいのではないかと思いますね。
○ 伺っていまして、さっき○○委員からも出ていたことにつながるかもしれませんけれども、少年手続というのは何のためにあるのか。しかも特殊という言い方が良いか分かりませんけど、通常の成人の事件と違う手続をつくって、もちろんそこはいろんなこれまでの経緯もあって、一部検察官関与というようなことも認めざるを得ないということになってきたという経緯もあるわけですけれども、まさに少年の健全育成というようなことを理念としてこの手続は成り立っていることは間違いないですし、そのことは皆さん否定はされないのだと思うのですね。
ということは、これは実は社会的にその手続というものをまさに少年の健全育成のために利用する。その一つの方策だということで、我々はこの手続を守ってきたということでもあるわけでして、それが有効に機能する、つまり有効に機能するというのは何かと言えば、当然のことですが、少年が健全に、いったんは犯罪・非行というものにかかわったかもしれないけれども、最終的にはその先の、まさに人生が長いという、そんなこと一々申し上げる必要もないと思いますが、そういう中で改善更生の実が上げられれば、それは社会全体にとってのメリットなのだということでこの手続は維持されている。
それは警察が存在するとか検察官が存在するというのと全く一緒なわけでして、だったら、検察官なんか要らないとか警察要らないとかという話にもなりかねない話はしない方がいいわけでして、私はこの少年手続というものが有効に機能するようにするためには、先ほど来、これは実態のところは、いま一つ、お伺いしても難しい問題だろうと思いますけれども、調査官だけではなかなか難しい問題があるということは、実際に付添人を経験されている方たちから随分言われていることですし、従前この10年間だけ見てみても、例えば付添人の比率というものが非常に変わってきているだろうと思うのですが、そのことによって蓄積されてきている経験例などを伺う限りにおいては、付添人がいるということが有効に機能しているという場面があることは間違いないわけですね。だとすれば、手続を維持している趣旨から言っても、それは社会的に還元されているということであれば、私選に任せればいいというような議論だけで済む問題ではないわけでして、そこに我々は公的資金を提供することによって、更に最終的に少年が更生する機会が増えることが分かっている以上、やはりそこに入れる。被害者のことを考えなくていいなんて、私は言うつもりは全くありませんし、しかし、そのバランスを失するというようなことだけで論じられる問題ではないだろうと思います。
□ 分かりました。ほかに御意見はおありですか。
第1ラウンドであり、大体論点や視点が出たのではないかと思いますので、次の2番目の小論点に移らせていただいてよろしいでしょうか。
それでは、2番目の小論点である「少年の被疑者に対する公的弁護制度の在り方」という点に移りたいと思います。まずこの点についての説明を事務局からしていただきたいと思います。
● 2番目の小論点であります「少年の被疑者に対する公的弁護制度の在り方」について御説明申し上げます。
ここでは、少年審判手続を離れまして、刑事手続の被疑者が少年である場合に、捜査段階の公的弁護制度の制度設計をどのようにすべきかという点について、具体的には、「公的弁護制度下での弁護人の選任要件」及び「公的弁護制度下における弁護人の選任の効力の終期」という二つの論点を中心に御議論いただきたいと考えております。
1番目の「公的弁護制度下での弁護人の選任要件」につきましては、すでに第4回検討会におきまして御議論いただいたところでありますが、その際、選任要件として「資力が十分でない」という資力要件を設ける場合に、被疑者本人の資力だけを見て資力要件を判断するのか、一定の親族の資力も見るのかということに議論が及び、少年の被疑者については、本日の検討に留保することとされたところでありますので、ここで御検討をお願いしたいと存じます。
第4回検討会から若干期間が経過しておりますので、参考までにその際の議論の経過をかいつまんで申し上げます。この関係では、親に資力がある場合などには、まず親族の資力を考慮することも考えられるとする御意見がある一方、資力要件は、本人が何らかの形で弁護人を依頼できるだけの金額を調達できるかどうかという問題であるので、親族の資力を見るかどうかを明確にする必要はないのではないかという御意見もございました。また、親族の資力を考慮する場合の具体的な制度の組み方として、そのことを実体的要件とするという組み方と、いったん親族に選任を打診する手続的要件とするという組み方があり得るとの御指摘もあったと記憶しております。
ここでは、そのような第4回検討会での議論をも踏まえながら御検討いただきたいと思いますが、要件審査の方法として、当番弁護士が聴取する方法、捜査機関が聴取する方法、被疑者本人に資力申告書を作成提出させる方法などの御意見があったところですが、いずれの方法についても、何らかの形で親族の資力を考慮することがあるという立場を採る場合には、聴取し、又は申告させる範囲に本人以外の者も含めるものとするのか、少年が親族の資力を把握していることを期待できるのか、そのような期待が困難であるとするならば、それを補う方策として、何らかの方法が考えられるのか、資力のある親族が弁護人を選任しない場合にはどうするのかなど関連する問題にも目配りをお願いしたいと存じます。
次に、2番目の「公的弁護制度下における弁護人の選任の効力の終期」について御説明申し上げます。この点も第4回検討会の論点に関係するものでありますが、その際に、少年の被疑者が家裁送致された場合の弁護人の選任の効力については、公的付添人の問題とも密接に絡みますことから、本日の検討会で御議論いただくこととさせていただいたところであります。第4回検討会におきましては、公的弁護制度により弁護人が付された被疑者が起訴された場合、そこでいったん選任の効力が終了し、改めて選任行為を行うとする御意見、起訴された場合には、そのまま効力を維持するという御意見などが述べられたと記憶しております。この問題につきましては、これまで公的付添人制度の関係で御議論いただいたところをも踏まえ、御検討をお願いしたいと存じます。以上でございます。
□ ありがとうございました。今の説明について、御質問があれば。よろしいですか。
前に議論してからかなり時間が経ってしまっていますので、直ぐに頭を切り替えられないというところもあるかもしれませんが、そういう議論の経過であったということです。
それでは、まず最初の公的弁護制度の下での弁護人の選任要件という点について御意見を伺えればと思いますが、いかがでしょうか。事務局の説明では、主に貧困要件の点について、本人のことだけ考えるのか、一定範囲の親族の資力についても考慮するのか。その考慮の仕方についても、実体要件にするのか、手続要件にするのか、そういったことが中心であったと思いますが。
公的弁護のところで議論したときには、少年の関係のところで更に議論を進めましょうということになっていましたね。
○ 資力要件の点ということになりますけれども、私、記憶もはっきりしてないところもあるのですが、前にも言ったのではないかと思うのですが、少年の場合に、親族を要件化することは果たしていいのかどうかというのはかなり具体的に考えてみる必要があるのだろうと思うのですね。もちろん親御さんなんかが財政的にそれなりに豊かで、しかも子どもについてもそれなりの配慮をしているというようなことももちろんあると思いますし、ただ、その場合には、私選というようなことはあるのだろうと思いますし、そうでない場合について、親のところをカウントするというのはかなりいろいろと厄介な問題を抱えてくることになるのではないかと思うのですね。
具体的に言うと、ケースとしてどの程度あるのか分かりませんけれども、こういう問題になってくるときには、親御さんとの関係が複雑であるということも当然一般的にはあるわけですから、そういう関係の中で、親御さんに出してもらうべきだということで対応すること自体やはり問題があるだろうと思うわけでして、もちろん償還というようなことは将来的なことも含めてあり得ると思いますし、すべてそのまま出しっ放しということでない方策はあり得るとは思いますけれども、いずれにせよ、当初の選任の段階で資力要件を考えるときに、それを実体的要件にすることはやめた方がいいと私は思っています。
○ 資力要件の場合、少年の資力だけを見るということになると、ほとんどの少年は働いていない少年でして、恐らく余り意味がないような気がするのですけれども。親族の範囲をどこまで広げるかというのはまた細かい検討が必要でしょうし、どういった具体的な要件を設定するかというのはいろいろ検討の必要はあると思いますけれども、そこは親なり親族の資力を考慮したものにしないと、少年だけの資力であるということではほとんど意味がないものになってしまうのではないかと思います。
□ 実体要件にすべきだということでしょうか。
○ 手続を別にすべきか、そこはまだ私も考えがまとまっておりません。
○ 非常に難しい問題だと思うのですね。例えば親が非常にお金を持っていると。しかし親の言うことを聞かないから金出すのは嫌だと。この際お灸でもすえてもらおうと、むしろ弁護士なんか付けたくないと思っている親もいるわけですよね。そういうときに、国が勝手に税金で弁護人を付けるというのはどういうものかという感じは持つのですね。ですからどの範囲でどういうふうに考慮していくかは別にして、一切親の資力は見ないという選択肢はなかなか難しいように思います。
○ 公費を出す以上、それに見合う何らかの証明が要るのではないかと私は感じますね。つまり、どこまで要件として要求するかということは別なんですけれども、何もしないで、親の資力も何も調べずに公金を出していいかということになると、国民一般は抵抗があるのではないでしょうか。やはり負担できる人は負担してもらうべきである。負担できないのだったら、税金から出してもいいですよと、そういう制度であるはずなので、そこのところはどういう要件にするか分かりませんけど、何らかの形で要求して、取れるものというか、出してもらえるものならば出してもらおうという方向を考えた方がいいように思いますけど。
○ 私も、資力要件には親を含めた一定の親族というのは考えざるを得ないと思うのですが、確か今の法律扶助協会で扶助するかどうかについても、少年だけではなくて、親の資力等を見るというようになっていたような記憶なのですが、そうではないわけですか。
□ 先ほどの要綱では資力要件を書いてあるのですけれど、実際には、それで扶助しないのは極めてわずかだという御説明だったと思います。
○ 少年法31条に費用の徴収という規定があるのですね。これは家庭裁判所が少年又はそれを扶養する義務のある者から証人とかの費用、さらには補導を委託された者に支給した旅費、日当、宿泊料。さらに、少年鑑別所及び少年院において生じた費用の全部又は一部を徴収することができるという規定があるのですよ。実際これで徴収されたようなことは実際にあるのでしょうか、ないのでしょうか。
□ これは裁判所にお聞きしていいものでしょうか。
▲ 費用徴収に関する統計はないかと思います。
□ 国選付添人の報酬も、その規定でカバーするのですか。
◆ それは同じに扱うとされております。
□ そうすると、制度上は、やってやれなくはない。しかし、実際に徴収しているかどうかは別だと、こういうことですね。また先ほどの説明ですと、扶助については交付制で、償還は求めない。「原則として」と書いてありましたけれど、そういうことですね。
○ 審理の過程で、親に資力があることがわかり、しかも支払う意思もあるということであれば、それは当然徴収すべきだと思うのですけれども、当初の段階で選任の要件として、親の資力まで考慮するということになると、急速を要する被疑者段階ではとてもそれは無理なのではないでしょうか。
○ 実際の運用としては、なかなか○○委員がおっしゃるように難しいとは思うのですけれども、先ほど○○委員が述べられたように、納税者意識が高まってきておる現状の中で、無制約の格好で、実質上無制約ではないのでしょうけれども、表面上無制約の格好で税金が出されるということについては、なかなか世論の納得が得られるような制度として固まらないのではないかという危惧をするところなんですけれども。
□ この点については、資力要件を成人の事件についても課すのかどうか、そうするとしても、それをどういう形で組むのかということについて、まだオープンですので、その点について更に詰めた議論をする。その段階で、あるいはそれを前提にして、少年の場合はどうなのか、また議論するということにさせていただければと思います。先を急いで申し訳ないのですけれど、今の段階では、このくらいでよろしいでしょうか。
それでは、先ほどもう一つ挙げられました「公的弁護制度の下における弁護人の選任の効力の終期」という点について御議論いただければと思うのですが、いかがでしょうか。
○ 基本は捜査段階の手続が終わった段階で終わるというふうに考えるべきではないか。
□ 改めて選任行為をするということですね。
○ はい。
□ バランス論から言いますと、捜査の段階と審判の段階で付ける範囲が一致することになるかもしれませんが、ずれてくることもあり得ますね。そういうことを前提にしながら、改めて選任行為をする。そうすると、検察官送致の場合には、また弁護人としての選任の話になってくるということですか。
○ 検察官送致された場合は、付添人が当然弁護人になるのではなかったですか。規定上、そうだったように記憶しています。
□ 規定上そうなっていますか。
○ 私選の場合ですね。
□ 公的付添の場合も、それと同じにするかどうかですね。
○ その議論はありますね。
□ 私選の場合は、選任の効力がそういう形で維持されるということなのだろうと思うのですけれど。
○ その点は制度設計としてはいろいろと考えられると思うのですけれども、付ける以上はもちろん効果という問題について考慮しながら考えているわけですから、それは成人の場合であっても同様ですけれども、捜査段階からの弁護人、例外はないとは私も言わないですが、継続して弁護活動、付添人活動に当たることができるということが有効に、弁護活動なり付添人活動をする一つの大きな条件になると思いますので、そこで法的な選任の終期はいったん切れるにしてみても、継続して同一の弁護士が担当できるような、何らかの仕組みを考えなくていいのかどうかというのは検討しておく必要があるだろうという気がするのですね。
ですから、私選で備わっているということ、これはもちろん成人の場合、必ずしもそうならないわけですからあれですけれども、ただ、運用としてはできるだけそういう方向を今目指してきているのではないかと思いますし、その点、もし議論するときには少し検討していただければと私は思います。
□ 制度上、それを担保しろということですか。
○ そうですね。できればということですね。運用にゆだねるという点ももちろんあり得ると思いますけれども、それは・・・
□ 制度上は、どういうふうに組めばいいのでしょうか。
○ 運用上、皆さん知恵を出していただいて。
□ 言い出した方から、まず知恵を出していただかないと・・・
○ ですから、それまでに考えてみます。
○ 現在は少年被疑者の場合には、当番弁護士は弁護人選任届と付添人選任届を同時にもらうわけです。それで家裁送致された時点で家裁に付添人選任届を出すことによって、この間、間断なく活動できるようにしている。ただ、逆送された場合に、あとの10日の勾留期間についても、もちろんそれは私選の付添人ですから弁護人にはなるのですけれども、それに対して当番弁護士が扶助で付された場合には扶助の対象になってないんですよ。逆送されまして起訴されるまで、さらに10日の勾留期間がありますが、この分については費用が払われていない。いわば無償の被疑者弁護人という、そういう活動をしておるんですね。
□ それはしかし、私選は私選ですよね、基本的に。ですから、訴訟ないし審判手続上は継続する。問題はお金が支払われていないという部分なのだろうと思うのですけれども、公的な場合に同じ扱いができるかどうかということですね。
○ 少なくともそこの費用の問題をどうするかという問題も当然出てくるのでしょうね。
○ 逆に言うと、公的弁護の場合、捜査の段階から公訴提起以降まで連続してということもあるわけでしょう。
□ 成人の場合ですか。
○ 成人の場合。
□ その点もまだ、そうなるとは限らないですけれども、基本的にはそういう御意見が多かったと思います。
○ そういう考え方があるのだとすると、逆送から公訴提起まで通してというのは一つの考えではあるけれども。
□ ただ、手続が変わるわけですよね、まず家裁送致の段階で。それで、検察官に逆送されるかどうかは分からないわけですね。
○ 一つの案としては、例えば国選付添人制度があるので、その限りでというのは流れとしてはおかしくない。
□ 少年審判と検察官送致された場合の刑事手続との関係では引き継げるという、そういう御意見ですか。
○ はい。
□ 前者はどうですか。少年被疑者が家裁送致された場面です。
○ そこは、手続が変わると、恐らく変わるというのが一般的な考えだと思うのだけれども、ただ、少年審判において、逆送になる可能性はあるわけで、流れとしてはつながっているという見方も可能ではある。
□ 立場とか手続の種類が違ってくるので、選任行為が本当に要らないのかどうかですね。分かりました。
対象とする範囲などが見えてこないと、雲をつかむような議論になってしまうと思いますので、また第2ラウンドで、その点も更に御検討いただければと思います。
では、中身の議論はここまでにさせていただきたいと思います。事務局の方から連絡事項等があるということです。
● 毎回申し上げていることですが、事務局では今般の司法制度改革につきまして、広く国民の皆様からの御意見を承っており、その目録を作成しておりますので、御希望の委員の方は適宜事務局にお申し付けください。
なお、検討会委員の方で、国民の皆様からの御意見を直接御覧になりたいとの御希望がありましたら、本検討会の終了後の適宜の機会に事務局にお申し付けください。
以上は、司法制度改革一般について国民の皆様方から御意見をいただいていることでありますが、事務局としては本検討会で検討されている論点に特に焦点を当てて、国民の皆様から御意見を募ることを計画しております。
それは、本日の検討会により一通りの論点について御議論をいただいたわけであり、また、本日の検討会の議事概要等が当推進本部のホームページ等を通じて公開されますと、どのような事柄が公的弁護制度の導入及び公的付添人制度の積極的な検討のための論点であるかが、国民の方々に提示できるものと思われるからであります。事務局としては、この機会に、現在、検討会における議論の対象となっている当面の論点について広く国民の皆様からの御意見を募集するのが適当であると考えております。具体的な意見募集の方法でありますが、来年1月10日から3月20日までの期間、本検討会における当面の論点について、国民の皆様から御意見を電子メール又は郵送の方法によって募ることを検討しております。このように意見募集を行うことは、当推進本部のホームページにおいてその旨お知らせするほか、各種媒体を通じて広くお知らせすることを計画しております。この意見募集の結果につきましては、いずれ本検討会において報告する予定であります。
次に、来年の検討会の日程についてであります。来年の本検討会の日程は、資料6-4に記載されたとおりであります。
来年の検討会の進め方についてでありますが、事務局といたしましては、先ほど申し上げましたとおり、国民の皆様方から広く意見募集を行うことと並行して、第1ラウンドの議論の締めくくりとして、今後の検討の参考とするため、ヒアリングの機会を設けてはどうかと考えております。つきましては、事務局として考えているヒアリングの日程、内容について御説明申し上げることといたします。まず、日時及び所要時間についてですが、2月28日、来年の最初の検討会でございますが、午後1時30分からの第7回検討会において、約2時間程度行うことを考えております。次に、どなたから意見を述べていただくかということについてでありますが、国民の皆様方からの御意見は意見募集の形でいただきますので、ヒアリング先としては、公的弁護制度等の運営に密接に関係する団体・機関として、日本弁護士連合会、法務省、最高裁及び警察庁からヒアリングを実施するほか、刑事に関しても法律扶助制度を担ってこられた財団法人法律扶助協会からもヒアリングを実施するのが適当であろうと考えております。テーマにつきましては、当検討会の主な検討事項であります公的費用による被疑者・被告人の弁護制度(公的弁護制度)、少年審判手続における公費による少年の付添人制度(公的付添人制度)とし、それぞれの方につきまして、各15分間程度、口頭で御意見を述べていただいた上で、各10分程度の質疑の時間を設け、全体でお一人につき、25分程度の所要時間とすることとしてはどうかと考えております。事務局が考えておりますヒアリングの実施方法については、以上申し上げたとおりでございます。
□ 事務局としては、今説明のあったような日程、内容でヒアリングを行いたい。その前の部分として、意見募集を広く行い、それと並行してこのヒアリングを行いたいということですが、これについて御意見等がございましたら。
よろしいですか。では、次回そういうことで準備していただくということにしたいと思います。
第1ラウンドの議論は、ヒアリングの実施で終了するということになりますので、その後、この検討会をどう進めていくべきかについては、次回の検討会でヒアリングを実施した後の時間で、御意見を伺って決めていきたいと考えております。
今回で、実質的な第1ラウンドの議論は終了して、あとはヒアリングを残すのみということになりました。検討の局面が変わるということでもありますので、この機会に検討会の議事の公開の在り方、具体的には、議事録に発言者名を掲載するかどうかについて改めて協議したいと思います。ちょっと時間が押していますけれども、よろしいですか。
報道機関の方は、申し訳ありませんが、御退席願います。
(報道関係者退席)
※ 議事の公開について協議の結果、次回以降の会議の議事録については、当面、発言者名を記載する取扱いとすることとなった。
(報道関係者入席)
□ これで本日の議事を終了したいと思いますが、本日は裁判所、法務省、日弁連の方々には、入念な御準備の上、大変行き届いた御説明をいただきまして、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いしたいと思います。
次回の検討会は、2月28日午後1時30分からということで、かなり先になりますけれども、来年は皆さんと更に密に顔を合わせ議論をすることになると思いますが、よろしくお願いします。
それでは、どうもありがとうございました。