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「被疑者・被告人の公的弁護制度の整備」に関する意見募集の結果概要


 当事務局において実施した標記の意見募集(平成15年1月10日から同年3月20日まで実施)に対しては、150件の意見が寄せられた。
 本資料は、寄せられた意見の中から、公的弁護制度の整備に関連する部分を引用し、主要な論点ごとに整理したものである。なお、意見内容を引用するに当たっては、誤字と思われる字を修正したほか、長文を要約し、又は部分引用にとどめたものがあること、また、意見内容の整理に当たっては、一通の中に複数の意見が示されている場合には、それぞれの意見を別個にカウントしていることもあること、その内容が同一又は同旨であると認められる意見については、代表的な意見を引用した上で、その余の意見については「(同旨○通)」と示すものとしたことを了承されたい。

I 公的弁護制度全般に関する意見

(公的弁護制度の整備に賛意、期待を示す意見)
  • 審議会意見書には、被疑者に対する公的弁護制度を導入し、被疑者段階と被告人段階とを通じ一貫した弁護体制を整備すべきとあります。また、充実しかつ迅速な刑事裁判の実現を可能にする上でも、刑事弁護体制の整備が重要となるとも述べられています。これらの指摘は、全く同感であります。
  • 公的弁護制度として被告人にはあっても、被疑者にないのは公正に欠けると思うので、これの整備は早急の課題である。(同旨3通)
  • 被疑者段階から公的費用でもって一律に弁護士を付けるということは法の下の平等の精神から大変結構だと思います。(同旨2通)
  • 逮捕段階では公選弁護人が付かないことに驚きました。いったん逮捕されると、強制的に一ヶ月弱勾留されるそうなので、日常生活に与えるダメージは甚大です。(信用問題など、その影響は計り知れません。)逮捕段階で直ちに弁護人が付されるようにすべきです。
  • 賛成理由としては、あくまで被疑者であるうちは、突然に逮捕されたらおそらく右も左も分からないであろうところに弁護士が付くことで法律のことも多少分かるようになること。
  • 国民に裁判を受ける権利があると憲法で保障されるのだから弁護士はタダで利用できるようにして欲しい。
  • 刑事裁判を担当している者としては、刑事裁判の審理を一層充実したものにするために是非導入して欲しい制度である。(同旨2通)
  • より早く、この制度を設けるべきだ。(同旨5通)
  • 他の先進諸国のまさに現場においてどうなっているのかなど、利害関係にとらわれない賢い人が一定期間実際に真剣に調査した結果として公的弁護制度を始めとする司法制度改革といわれるものが進められているのであればもちろん支持したい。
  • 賛成だが、反省は必要。複雑な社会になるので、範囲が全体に広がるのは仕方がなく賛成だが、正義はないがしろにされる危険がある。悪利益に誘導する者が必ず現れる。被疑者や被告人の権利を公的に早くから護らないと、利益だけを目指すメディアの暴走の餌食となる。
  • 被疑者段階で国、地方公共団体又は弁護士会の費用で弁護士を選任できる権利を設けること。(費用は貸与又は免除)
  • 法律扶助制度なども起訴されてからでは利用できないとか、その辺の改革も必要かと思われます。
  • 刑事法律扶助法をまず作るべき(立法せよ)。被疑者の法律扶助基準をできる限りわかりやすく、具体的に決めて公表・周知を新聞・パンフなどを通じて徹底するべき。被疑者公的弁護は、税金より補助金出すべき。今、弁護士を被疑者が頼むと何十万円もかかるので非課税所得者など所得低いが、「病の証明書を出せる人」や「殺人したが同情すべき男」これらのかわいそうな人々が何万円出すのみで良いようにすべき。
  • 今回の制度の整備において、もっと身近な弁護制度になればと思います。

(公的弁護制度の整備に反対する意見)
  • 被疑者・被告人の公的弁護制度に反対です。税金を悪人のために使うのはおかしい。
  • すべての公的扶助の拡充に断固反対である。確かに誤認逮捕、無罪事件もある。しかし、それはごく一部であり、ほとんどの者が「社会悪」であるのに、なぜそれらの者をこれ以上保護する必要があるのか。ただでさえ精密司法という悪行により、弁護士は肥え太り、国(裁判官、検察官、警察)の負担、ひいては税負担が増えているのである。特に、不法滞在外国人など、一体なぜ日本国民の血税で保護する必要があるのか。制度の濫用者が増え(悪いやつほど情報には詳しい、また、非国民NGO等が知恵をつける)、増税となるだけである。
  • 被告人(犯罪加害者)に対して国選弁護人は、いらないと思います。犯罪加害者は被害者、遺族へ償いをしていると思えますか。国選弁護人でも加害者は罰金、保釈金をたぶん親が払っている。でも判決は有罪だ。犯罪加害者へ犯罪加害者税を創るべきだと思います。犯罪も減ると思う。被害者、遺族が大変な事態になるか分かりますか。どうかしたら被害者が加害者になる事件だってある。加害者を守るより、被害者を守ってほしい。被害者の事を考えて欲しい。被害者保護法もそうだろうけど加害者責任法を創ってほしい。加害者は被害者へ何の償いもせずのうのうと生きている。被害者に対して厳しいと思います。加害者へ厳しくしてほしい。
  • 結論から申し上げますと両手を上げて賛成とは言いかねます。反対理由としては、悪い被疑者と悪い弁護士との口裏合わせ。
  • 被疑者の段階から公的弁護制度を採用することは妥当とは思われません。
  • 公的弁護制度が必要という理由が分からない。なぜ必要なのか説明がされているとは考えられない。

II 公的弁護制度の整備に関する主要な論点に対する意見

第1 被疑者に対する公的弁護制度の対象事件

 1 選任請求権を与える事件の範囲

(身柄拘束の有無による限定に関する意見)
  • 身柄拘束のない、いわゆる在宅事件は通常軽微事件であるから、選任請求権を与える必要はないものと思料される。身柄事件に限定してよいと考える。(同旨4通)
  • 選任請求権を与える事件の範囲として、選任請求権は、身柄を拘束された被疑者とすることが相当である。任意捜査の段階での選任は、その選任開始時期などの点からも困難である。(同旨2通)
  • 被疑者に対する公的弁護は、当面、身柄拘束を受けた被疑者を対象とすべきである。すべての事件の被疑者について公費で弁護人の援助が受けられるとすることは、費用の面でも人的資源の面でも無理がある。当面、公的弁護の保障が必要なのは、身柄を拘束されたため緊急の援助を必要とするが、その援助を求める手段を持たない被疑者である。身柄を拘束されていない被疑者でも、複雑な業務上過失致死傷事件の被疑者など、被疑者段階から弁護人の適切な弁護を受ける必要性の高い被疑者もいるが、こういった被疑者については、法律扶助の制度を活用すべきである。(同旨2通)
  • 被告人に国が弁護人を付する場合に関する刑事訴訟法の規定を「身体拘束を受け、又は付審判の請求を受けた被疑者」に準用するようにすると改正するのが良い。
  • 身体拘束を受けた人に対する弁護人の援助は欠かせないものである。

(罪名による限定をしないとの意見)
  • 重大事件限定反対です。ないし,罪名による限定はしない。(同旨5通)
  • 裁判員制における連日開廷の刑事手続を前提として、常勤弁護士などの刑事専門弁護士を担い手とする意見もあるが、裁判員制における刑事手続のみを公的弁護の対象とすることは誤りであるし、また、必ずしも連日的開廷の事件だけを対象とすべきではない。(同旨2通)
  • 一切の刑事事件に適用してほしいと思います。なぜなら最近「痴漢えん罪」にも無罪判決が出るようになりましたが、刑事事件は被害や容疑の大小、金額の多少ではなく、まさに名誉と人権に関わる「人権問題」そのものであり、「人権」は国が国民に保障する義務があります。
  • 軽微な事件でも被告人から申出があった場合には公費弁護すべきです。
  • 別件逮捕である場合や、死体遺棄事件が殺人になるなど捜査の流動性を考えると、罪名による限定は相当ではない。(同旨4通)
  • 平等のためには可能な限り適用範囲を広くすることに賛成です。

(罪名等による限定をするとの意見)
  • 罪名としては、「必要的弁護事件」に限定してよいのではないか。法定合議事件とするのは狭すぎる嫌いがあると思料する。(同旨2通)
  • 接見禁止が付いた者だけでも公的弁護を受けられればと思います。
  • 理念としては、身柄拘束を受けたすべての被疑者が対象とされるべきである。弁護士の過疎・偏在等のために公的弁護制度の実施時期において全国的な展開が困難であるとすれば、重大事件等から始めて段階的に広げてゆくことも検討すべきである。(同旨4通)
  • どうしても財源的に無理なら、一定の所得や資産以下の人たちへの適用を求めます。

 2 職権による選任制度又は必要的選任制度の当否

(職権による選任制度の導入に賛成する意見)
  • 請求がない場合でも次の一定の事件については裁量的に国選弁護人を選任する。
     未成年
     70歳以上
     耳、口が不自由な者
     心神喪失、心神耗弱の疑いのあるもの
  • 裁判所が職権で被疑者のために公的弁護人を選任することを可能とする制度の創設も、検討されるべきであると考えます。特に、選任請求権を与える事件の範囲を限定するとすれば、勾留質問をした裁判官が、被疑者の年齢、事案の内容、被疑者の弁解状況等を考慮して、職権により弁護人を選任することができるようにしておくことが必要であるように思われます。ただし、捜査段階においては、裁判所が職権事由の有無を当然に知りうる立場にない点に配慮した制度設計をする必要があります。

(裁判所による職権発動の困難性を指摘する意見)
  • 事案の内容を把握できない段階で、被疑者の依頼によらずに弁護人を選任する必要性があるかどうかを判断することは難しい。

(必要的選任制度の導入に賛成する意見)
  • 法的合議事件あるいは刑罰に死刑を含む犯罪、被疑者が少年の場合には必要的選任制度とする必要がある。(同旨2通)
  • 子どもの権利条約37条(d)や自由を奪われた少年の保護に関する国連準則18条は、少年が身体拘束される場合における弁護人選任権の保障を定めている。また、憲法34条は身体拘束の条件として弁護人依頼権を保障することを定めている。これらの法的権利を実効的に保障しようとすれば、少年の逮捕や勾留の場合における弁護人の必要的な選任はもちろんのことである。
  • 請求がない場合でも次の事件については必要的に被疑者弁護人を選任する。
     法定合議事件(裁判所法26条2号)
      死刑、無期、短期1年以上の懲役、禁錮
     否認事件
     18歳未満の少年
  • 障害者や少年を対象として、必要と考える。

(必要的選任制度の導入に疑問を呈する意見)
  • 被疑者から請求がないにもかかわらず、必要的に弁護人を選任する必要がある事件の類型は、特に思い付きません。また、何らかの事由により弁護人を付与することができない事態が生じたときの効果について、取調べ等の捜査を継続することができるのか、捜査に与える影響が大きいことになるし、逆に、取調べが継続できるような制度にすると、必要的選任制度を設ける意味はどこにあるのか、という疑問がある。

第2 公的弁護制度の担い手である弁護士の確保方策

 1 常勤弁護士
 2 契約弁護士(弁護士法人を含む)

(常勤弁護士・契約弁護士の確保に賛意を示す意見)
  • 迅速・的確な被疑者公的弁護人の選任や、集中した期日指定を要する事件へ対応するためには、運営主体が責任をもって対応すべきと考えます。そのため、運営主体は、まず、公的刑事弁護活動に従事するための一定数の弁護士を確保する必要があると思います。具体的には、運営主体が雇用し、あるいは、契約する弁護士が考えられましょう。そして、運営主体は、このような新たな形態の弁護士を確保するだけではなく、公的弁護を担おうとする意思のある一般の弁護士の中から、広く裁判所によって選任されるべき弁護士を裁判所に迅速に推薦する責務を担うべきです。
  • 被疑者段階の弁護は、いつ始まるか予測がつかず、始まれば直ちに活動をしなければならない上、多くの事件が一度に重なることもある。さらに、公判段階の弁護も、裁判員制度の下で予定されている連日開廷による集中審理に対応することが求められるのであるから、このような性格の弁護活動に応えるためには、一定の人数の常勤の弁護士が必要とされることは明らかである。このような人材を確保するためには、法曹三者がそれぞれの立場で努力しなければならないが、特に、弁護士会には、公的弁護制度の整備・運営に積極的に協力することとされているのであるから(司法制度改革審議会意見書)、積極的な役割を果たすことを期待したい。(同旨2通)
  • 公的弁護制度の担い手となる弁護士は、原則として通常の弁護士として活動する弁護士を前提とすべきである。現在の国選弁護と同様に考えるべきである。この場合、弁護士過疎地では、選任自体が著しく困難になる。また、連日的開廷による集中審理が必要な事件(裁判員制度による場合など)については、過疎地でない場合にも通常の弁護士活動との調整が困難な場合が生ずる。この両者に対応できる、運営主体又はこれと離れた公的団体(日弁連又は各単位会)が運営する法律事務所がこれを補充する必要がある。この法律事務所に所属する弁護士は、給与により勤務すること及び公的弁護活動を担当する以外に特別な存在とはしない。弁護士としての活動の自主性、独立性を完全に保障され、弁護士として各単位会に所属し、この監督を受けるという点でも変わらないものとすべきである。(民事事件の取扱いについては、検討の余地はあるが、当面は、刑事弁護活動に支障をきたさない範囲のボランティア的活動にとどまるとすべきではないか。)(同旨2通)
  • 常勤弁護士、契約弁護士ともその役割については、連日的開廷による充実かつ集中した審理に対応するために制度設計するべきである。
  • 刑事専門の事務所を立ち上げて、そこに公的資金を導入することは必要なことであるし、そのようなシステムを通じて刑事専門弁護士の数を増やすことも必要なことである。

(常勤弁護士・契約弁護士の確保に反対し、又は疑問を呈する意見)
  • ① 現在の起訴前弁護と同様に個々の一般の弁護士が刑事弁護を担いつつ、これを弁護士会が設立した公設事務所に所属する弁護士が補完すべきである。② 仮に刑事専門弁護士制度を設けるとしても、公設事務所に所属すべきであって、運営主体の常勤弁護士及び契約弁護士の制度は設けるべきではない。(同旨2通)
  • 契約弁護士という制度は疑問がある。現行の国選担当と同じく、登録制度にして一定量の受任を促す程度とすべきである。(同旨2通)
  • 運営主体にかかえられた常勤弁護士や契約弁護士に、運営主体から独立した弁護活動を期待することは困難である。

 3 その他の確保方策

  • 弁護士会の支援する公設事務所・刑事専門弁護士事務所の全国への設置、弁護士過疎地域については単位弁護士会相互の協力関係で対応する。
  • 公的弁護制度においては、被疑者段階・被告人段階を通じて、弁護人に対し適正な報酬が保障されなければならない。現在の国選弁護の報酬基準では、公的弁護制度を維持できないことは明らかである。(同旨3通)

 4 常勤弁護士及び契約弁護士等の規模

  • 現在の国選弁護事件と同様に広範な一般の弁護士が被疑者段階の公的弁護制度を担っていくことが当然の前提であり、一部の弁護士だけが担当するような制度構想であってはならない。
  • 常勤弁護士は,釧路管内全体で最低7名は必要である(本庁区域2名,帯広支部3名,北見・網走地区2名)。

第3 私選弁護と公的弁護の関係

 ○ 弁護人の援助を受ける権利の実効的担保のための私選弁護と公的弁護の役割分担

  • 私選弁護が原則であり、公的弁護は補充的であるべきものと思料する。したがって、公的弁護は、現在の国選弁護制度同様「貧困その他の事由により」自ら弁護人を依頼することができない場合を原則とすべきものと思料する。
  • ① 基本的には私選弁護が原則で、公的弁護は補充的な役割を果たすものと考えるべきである。② 「自ら弁護人を依頼することができない」場合という公的弁護の選任要件は、無資力(貧困)である場合の外に、事件の性質等のために弁護人のなり手が容易に見つからないと考えられる場合、資力はあるが弁護士の心当たりがない場合、知的能力や弁護方針を巡る意見の隔絶などにより弁護士を選任する意思がない、あるいは選任できない(主観的能力の欠如)場合等も含むものとすべきである。(同旨2通)
  • 資力が十分にあり自分で弁護人を選任することができる被疑者について、公的弁護制度による弁護人を選任する必要はない。
  • 「自ら弁護人を依頼することができない理由」は、経済的理由により依頼できない場合を基本とする。ただし、一定の犯罪について必要的弁護事件を設定し、これについては経済的事情以外にも、運営機関が付することができるようにする。現在の、国選弁護人を選任する場合の運用を参考とする。(同旨2通)

第4 公的弁護制度下での弁護人の選任要件

 ○ 実体的要件

(貧困要件が必要との意見)
  • 「貧困その他の事由により自ら弁護人を選任できない場合」刑訴36条と同じ被疑者の申告による運用とし、一定の資力以上の被疑者については私選弁護とする。
  • 被疑者段階は、請求があれば資力が乏しいことを要件として被疑者国選弁護人を選任する。
  • 実体的要件としては、「貧困その他の事由により」自ら弁護人を依頼することができない場合を原則とすべきものと思料する。負担を求められる国民の観点から言えば、資力のある者に公的弁護人を与える必要はないというべきである。
  • ①犯罪被疑者として勾留されていること、②一定の犯罪を除き、本人が選任を希望していること、③経済的理由により、自ら弁護人を選任できないこと。(同旨2通)

(貧困要件の基準に関する意見)
  • 公費弁護の対象は年収が所得税が課税される最低額より低い人にすればいいと思います。
  • 統計庁の試算生活標準額では33万前後が生活水準とのこと。それ以下の家庭では生活苦は当たり前のことと言わざるを得ない。貯えのある方々は問題ではなく社会の底辺にいる人の保護を行政的に一層の助けが必要と感じます。水準は20万以下の生活者です。
  • 年収1000万以上の裕福人は、税金使用は不必要だと思う。1000万以下は適用範囲を広くしてほしいと思う。貧しい人のために重点を置くべきだ。

(貧困要件を緩和するとの意見)
  • 公的弁護制度については、「資力要件」を緩和する必要がある。私選弁護人選任のための資金を直ちには準備できない者にも弁護人選任を保障するためである。他方では、一定の資力や所得があるものについては、費用を償還させることで、私選弁護とのバランスをとることも検討されるべきである。(同旨2通)

(その他要件に関する意見)
  • 被告人国選弁護の選任要件を「貧困」に限定しているわけではないということに留意すべきだと思います。

 ○ 手続的要件

(貧困要件の審査方法に関する意見)
  • 被疑者が「貧困」であるかどうかについては、収入、資産、負債等から判断をすることになるのでしょうが、被疑者段階の判断となりますから、迅速さが要求されることを忘れてはなりません。
  • 無資力要件の審査方法とし、厳密な審査は困難であるし、まして起訴前の切迫した時期であるから、原則として被疑者本人の申告に基づいて判断すべきである。(同旨2通)
  • 手続的要件としては、捜査段階での一件記録によってその者の資力を判断できるものと思われるし、必要があれば被疑者あるいは家族からその点を聴取することも可能であろう。

(選任の手続に関する意見)
  • 被疑者段階の弁護人選任手続についてもこの国選弁護人選任手続と同様の方法を採るとすれば、被疑者から選任依頼を受けた裁判所が、運営主体に推薦を依頼し、推薦のあった弁護士を選任するという方法をとることになろう。しかし、被疑者段階での弁護活動は迅速に行われなければならないから、被疑者の弁護人選任依頼を裁判所を経由して運営主体に伝えるという手続は迂遠である。被疑者の依頼は、運営主体を通じて裁判所に対して行われるものとし、被疑者の依頼の意思を確認した運営主体は、直ちに弁護人となるべき弁護士を推薦し、推薦された弁護士は、弁護人になろうとする者という資格で直ちに弁護活動に入るという運用が考えられる。(同旨2通)
  • 被疑者が逮捕された段階で直ちに、逮捕した捜査機関から被疑者に対して公的弁護人選任制度の十分な告知と意思確認がなされ、選任の意思確認を担保しうる適切な方式の文書が運営主体と弁護士会に提出されなければならない。そして、弁護士会は直ちに弁護士を接見に派遣し、その旨を運営主体と裁判所に通知し、裁判所はその弁護士を弁護人に選任する。なお、選任手続は、必ずしも接見に赴く際に完了している必要はない。(同旨2通)
  • 申込みは、本人以外にも、弁護人になろうとする者などもできることとする。(同旨2通)
  • 取調べにあたっては、任意捜査・身柄拘束前の段階でも、弁護人選任権の告知を義務づけるべきです。そして、弁護人選任権を実質的に保障するには、被疑者本人が、選任について家族と相談することも含め、直接外部と連絡できる権利を認めるべきです。

 ○ その他

(選任できる人数に関する意見)
  • 選任できる人数は、特段の事情がある場合に限り複数の弁護人選任を可能とする。(同旨2通)
  • 弁護士を2人なり3人でいろいろな弁護士の話を聞いてみたいと思う。なぜなら、弁護士によって意見が違う場合があるかもしれないから。僕自身、お金がないため弁護士と相談する機会が余りなかったし、弁護士と相談していれば事件になっていなかった可能性があるし、お金が余りない人でもいろいろな弁護士と相談できるような制度をつくってほしいと思う。

(管轄区域と選任できる弁護士の制限に関する意見)

  • 管轄区域は、原則として被疑者が勾留されている地域に事務所を有する弁護士とする。(同旨2通)

(弁護士の「選択」に関する意見)

  • 本来的には、だれを弁護人に選任するかについては被疑者・被告人の判断と選択の権利を認めつつ、費用負担は国費として支給される制度が望ましい。(同旨2通)
  • 被疑者・被告人に弁護士の「選任権」を与える事が是非必要です。本気で人権を考えるなら被疑者が自分で信頼できる弁護士に依頼できる権利は当然と思います。
  • 弁護士の選任に当たって何らかの基準も見出せないため当たりはずれがあります。

第5 公的弁護制度下での弁護人の選任の始期及び選任の効力の終期

 ○ 公的弁護制度下における被疑者に対する弁護人の選任の始期

(逮捕段階からとする意見)
  • 逮捕時からどうしても必要。問題はここから起きている。(同旨4通)
  • 逮捕段階で直ちに弁護人が付されるようにする。
  • 選任の始期は、逮捕段階とする。身柄拘束後間もない時期に虚偽の自白をしている場合もあり、勾留時期まで待たせる事情は無い。逮捕後、特段の活動もなく勾留されなかった場合には、報酬などでの調整を検討すれば足りることである。(同旨2通)

(逮捕段階からとする必要性を指摘しつつ、勾留段階からとして制度を発足させるとの意見)
  • 弁護人の選任を希望する被疑者については、勾留質問の段階で弁護人が選任されていることが望ましい。勾留裁判官は、勾留質問の際に、被疑者からのいろいろな質問に時間をとられがちである。このような質問に答えることは、勾留質問の本来の目的とは直接関係のないことであるが、現状では、弁護人のいない被疑者に対して、後見的立場に立って、その後予想される手続を説明したり、種々の相談に乗るなどしている裁判官が少なくない。被疑者の取調べに当たる検察官、警察官も同じような対応をしていると思われるが、そのような対応が、かえって後に紛議の種になったりすることもある。そういう意味で、身柄拘束の初めの段階から弁護人が付いていることが望ましい。そのためには、逮捕された時点で、公的弁護を依頼することができるようにする必要があるが、この点も、現実にはそのような態勢を全国に整備することが可能かという問題もあり、まずは、勾留段階から選任依頼権を認めるという制度で発足させることもやむを得ないであろう。(同旨2通)

(勾留段階からとする意見)
  • 選任請求権の発生する時点は、勾留の段階とすることが相当であると考えます。逮捕段階から選任する請求権が発生するとなると、深夜に逮捕される事件にも対応する必要が出てきます。十分な対応態勢が整備できないと、選任請求権との関係で問題が生じるおそれがあることに注意が必要です。なお、逮捕段階については、現在、弁護士会による当番弁護士制度が大きな役割を担っていると評価することができます。理想としては、国費による当番弁護士制度を創設して、公的弁護制度との橋渡しを担わせることを目指すべきと考えます。
  • 当面勾留請求時。この場合でも相当な事件数になり、弁護人の適正配置等の体制ができるまでの経過措置が必要である。公判手続の場合は、弁護人が選任されない限り手続を開始しないという区切りをつけることができるが、捜査の場合は実際に弁護人が選任されることを待たないで捜査活動が進行する。選任されると同時に弁護人が活動開始し、起訴・不起訴処分まで、必要な弁護活動に従事できる当番弁護士体制をつくることができるかどうかがポイントとなる。

 ○ 公的弁護制度下における弁護人の選任の効力の終期

(公訴提起によって,選任の効力は終了しないとの意見)
  • 公訴提起によって被疑者公的弁護の選任の効力が終了するとすべきではないと考えます。被告人公的弁護に移行し、第1審の終局裁判の確定又は上訴申立てのあった場合はその上訴がなされたときまで及ぶ。(同旨4通)
  • 公訴提起裁判所が、被疑者弁護人として選任された弁護士の管轄と異なる場合や公判活動に困難をきたす特別な事情が無い場合には、効力は、第1審判決までを原則とする。(同旨2通)
  • 選任の効力は、身柄拘束の根拠となった事実について公訴が提起された場合は、その1審の手続が終了するまで及ぶものとすべきである。この場合、捜査中の余罪についても弁護人選任の効力が及ぶものとすべきである。(同旨2通)

(略式命令請求によって,選任の効力は終了するとの意見)
  • 略式命令請求のときに,終了する。

(略式命令請求によって,選任の効力は終了しないとの意見)
  • 略式命令請求の場合,略式命令の確定又は正式裁判が開始した場合は、第1審の終局裁判の確定又は上訴申立てのあった場合はその上訴がなされたときまで及ぶ。

(公訴提起されずに釈放された場合,選任の効力は終了するとの意見)
  • 処分保留のまま釈放の場合,釈放の時点で公的弁護の選任の効力は終了する。(同旨2通)
  • 公訴が提起されずに釈放された場合は、弁護人の任務は、そこで終了するものとすべきである。釈放後、在宅のままで公訴が提起されることもあるだろうが、このような場合に国選弁護人の選任依頼があれば、捜査段階で選任された弁護人を国選弁護人として推薦し、これを選任するという運用が行われるべきである。
     身柄を拘束されていた被疑者がいったん釈放された後、別事件で直ちに再逮捕されたというような場合は、あらためて選任の手続が行われることになるが、この場合も、従前の弁護人が引き続いて弁護人として選任されるという運用が行われるべきである。(同旨2通)

(公訴提起されずに釈放された場合,選任の効力は終了しないとの意見)
  • 原則として身柄が釈放されるまで選任の効力が継続するが、処分保留で釈放された場合には不起訴となるまで継続するものとすべきである。(同旨2通)
  • 公訴提起されず釈放された場合には、その事件の処理により、処分確定まで継続するものとする。処分保留のままであり、かつ、捜査が長引くような場合には、弁護人の申出により辞任できる方策を用意する。(同旨2通)

(家裁送致された場合に関する意見)

   IIIの第2記載の意見参照

(解任等に関する意見)
  • 被疑者・被告人による弁護人の解任と弁護人の辞任を認めるべきである。なお、裁判の遅延目的など不当な目的による解任・辞任制度の濫用が懸念される場合は、裁判所が権限の濫用を認定するなど個別の対応を取ることで解決しうる。(同旨2通)
  • 国選弁護人から種々の理由で解任を求められることがあるが、これについても裁判所が解任の当否を立ち入って判断しにくい場合があり、運営主体からその当否についての意見を聴くことができれば、裁判所は、その判断がしやすくなる。(同旨2通)

 ○ 選任の効力が及ぶ事件の範囲

(事件単位との意見)
  • 原則は事件単位とする。ただし、余罪による再勾留などがある場合には、同一の弁護人を選任し、費用の面での調整を考慮する。(同旨2通)
  • 身柄拘束の根拠となった事実ごとに依頼権が与えられ、その事件ごとに弁護人を選任するというのが簡明である。(同旨2通)

(人単位との意見)
  • 数個の身柄拘束が重複して行われる場合は、後の身柄拘束の根拠となった事実についても、先の依頼に基づいて選任された弁護人の選任の効力が及ぶものとすべきであろう。(同旨2通)

第6 公的弁護制度下での弁護活動の在り方

 ○ 弁護活動の自主性・独立性の確保方策
 ○ 弁護活動の水準・適正の確保方策

(弁護活動の自主性・独立性の確保の必要性を指摘する意見)
  • 国家権力の刑罰権行使に対抗して、被疑者・被告人の人権を守る弁護人は、その自主性・独立性が何よりも確保されなければならない。国家機関が個々の弁護活動について「不適正弁護」を理由に制裁等をとることは絶対に許されない。
  • 国費だとすべて国の支配下に置かれ、三者がなれ合いになって役所の都合のいいように弁護士を国が出したりしかねないこともあるので、独立したやり方を保証できるようにしないといけない。
  • 「公正・中立」という概念は、極めて抽象的なものであり立場によって評価が異なる上、そもそも刑事弁護は国家刑罰権の行使と対立する本質を持つものであるから、捜査機関側から見て「不公正」と評価されることが常につきまとうのであり、「公平・中立」を弁護活動のルール(基準)としてはならない。また、「適正」という概念も同様の問題を含み、その違反のみで直ちに懲戒につながることになると弁護活動の自主性・独立性を維持することは困難となる。したがって、準則や弁護士倫理の違反が、個々の弁護士に対して直ちに不利益をもたらすものであってはならない。
  • 弁護人の活動は、被疑者・被告人のために最善を尽くすことであり、これは国選であろうと私選であろうと変わることはなく、公的弁護制度の下でもその活動の在り方に影響があってはならない。
  • 弁護活動については特に制限したりする必要はないと思います。

(弁護人となる弁護士の推薦に関する意見)
  • 弁護活動の自主性・独立性の確保方法として、弁護士会が弁護人の推薦権を持ち、かつ公的弁護体制の整備を担うことが弁護活動の自主性・独立性の確保に不可欠である。
  • 運営主体により、不当な事件配てんの差別などが行われないよう、運営主体の弁護人選任などについても、弁護士会や国民に開かれた手続にする必要がある。(同旨2通)

(弁護士会が弁護活動の質の確保に責任を持つべきであるとの意見)
  • 手抜き弁護の防止をはじめとする弁護活動の質の確保は、弁護士自治の下で弁護士会が自主的、自律的に担うべきものであり、運営主体が関与すべきではない。(同旨2通)
  • 日弁連が作成する刑事弁護のガイドラインによるものとする。(同旨2通)
  • 弁護士会の協力なくして国費による弁護制度は実現できないし、弁護士会・弁護士の努力なくして弁護の質の確保もできないことは明らかである。この場合の質の確保であるが、弁護人の選任・解任が裁判所にゆだねられるとしても、弁護の自主性・独立性を確保する観点から、弁護人の推薦権は絶対に弁護士会が保持しなければならないし、推薦・推薦停止についての基準を明確にすることにより弁護に対する市民の信頼も確保できると考える。もちろん、裁判所、運営主体、その他の国家機関の不当な介入を排斥し、推薦・解任に関する実質的権限を弁護士会が確保するためにも、推薦・推薦停止の基準を明確にするためのルール(規則ないし準則)は弁護士会自身の手で作成し、弁護士会自身がこれを運用することになる。
  • 公的弁護制度の中で活動する弁護士に対して、裁判所・国やこれに準ずる機関が、弁護活動の基準を設け、これに従わない弁護士に対して、経費支払を拒否したり、懲戒(処分)の対象としたりすることを許す制度は、絶対に受け入れることはできません。
  • 弁護活動の質の向上については、弁護士会の研修と自己研さんそして弁護士倫理により対処すべきである。

(弁護活動の準則等を設けるべきであるとの意見)
  • 自主性・独立性は原則的に尊重されなければならないが、一方では、当該弁護士の固有の主義や信念での偏ぱな弁護活動(例えば、当該被疑者にいたずらに否認や黙秘を慫慂したり、準抗告、勾留理由開示申立等を専ら争う姿勢に終始するなど)を展開されるおそれがあることを警戒すべきであり、当然そのような不当な活動に歯止めを掛ける意味から規律する必要がある。「実質弁護」を旨とするものとし、そのための準則的なものを制定すべきであると思料する。また、弁護活動の水準・適正の確保方策は、その準則を制定し、研修等を通じ周知するとともに、個別事件でそれが励行されているかを検証する必要があると考える。
  • 各都道府県で弁護制度というか、弁護士にバラつきが有ると思われ、それを均一にするガイドラインなどを作った方が良いと思います。

(その他)
  • 弁護士との面会の回数をもっと増やしてほしい、弁護士との面会の時間が短すぎると思う。
  • ほんの僅かな弁護士の悪質な行為のために、弁護士に対する信頼を失うような事になり、本当に残念な気持ちで一杯になります。何か、良い対策の解決する方法はあるのでしょうか?
  • 被告人に公選弁護士が付けられるのは強制強要等人権が侵されないためとえん罪を発生させないためがその主眼でありましょう。しかるにその弁護士が被告人の側に立ってしまい、無罪を勝ち取るために知恵を絞り、被疑者をコントロールして不利な条件を秘匿したり等をしては、それは弁護の立場ではなく被疑者の立場に立つもので、これでは国民感情としても納得できません。
  • 人間性を喪失した凶悪犯を法的立場から援助を受け持つのが公的弁護人であるが、被害者の親族は公的弁護人をどんな目で見ているだろうか、おそらく共犯を見る目と同じだと思う。なぜ善良な市民を守る国の代理人が凶悪犯の肩を持つのか納得がいかないはずだと思う。そういうことで一番の不条理を押しつけられるのは被害者の親族ではなく公的弁護人そのものである。
  • 弁護人の質は、悪い。ロースクールでの教育に期待。

第7 公的弁護制度下での弁護報酬の算定方法

 ○ 捜査段階の報酬の算定方法
 ○ 公判段階の報酬の算定方法

(報酬の算定方法に関する意見)
  • 捜査段階の報酬の算定方法として、一定範囲の金額内で弁護活動の具体的な内容(接見回数、検事との面接の有無、示談交渉の有無等)を考慮して決めるのが妥当である。(同旨2通)
  • 公判段階の報酬の算定方法として、現行の国選弁護制度のもとでは定額制に近い方式が採用されているが、タイムチャージを取り入れた算定方法に変更すべきである。(同旨2通)
  • 公的弁護制度の報酬体系はタイムチャージ制にして、労力が少なくてすめば報酬は安く、労力をかければそれに見合った報酬が支払われるようにすべきである。その際参考になるのは、RCCにおける弁護士の報酬基準である。RCCでは、弁護士の執務時間は1時間2万円、移動時間等の執務時間ではないが執務に必要な時間は1時間1万円という報酬基準が採用されている。 ただし、タイムチャージ制については、①請求の適正さについての査定が難しいこと、②例えば判例調査や書面作成などの場合、専門的知識経験が豊富な弁護士ほど短時間で終えられるため報酬額が低くなる等のアンバランスが生じうること等の問題点も指摘されており、これらについて検討する必要がある。
  • 弁護活動の実態に応じた報酬の算定を行うためには、算定主体が弁護活動の実態を把握することが不可欠です。裁判所は、その立場にありません。新たに設立される公正で中立な運営主体が、弁護活動の実態把握を行った上で報酬を算定するのが相当である。報酬算定の基礎となる資料の入手は、被疑者段階については、弁護人の活動報告書を提出してもらい、被告人段階については、運営主体が裁判所から公判活動の結果報告、弁護人から公判外の弁護活動に関する報告を受ける。
  • 弁護報酬は、画一的に算定するのではなく、弁護活動の実態に応じたものとなるように工夫すべきと思います。そのためには、まず、公正中立な運営主体が、全国で統一的な、適正な報酬基準を作ることが重要である。
  • 弁護士費用そのものを現行より大幅に改善する必要があります。「弁護活動のための調査をどこまで認めるのか」経費を認める基準の設け方などについては、弁護士の自主性、独立性が確保されることが基本です。経費の積算の基準づくりや査定についても、国や裁判所から独立した判断ができる法律学者や弁護士による集団的組織的体制をつくることが必要ではないでしょうか。裁判所のみの判断にゆだねることは避けるべきです。
  • 弁護報酬についての不服申立機関を作り、決定された弁護報酬に不服のある弁護士は、不服の申立てができるようにすべきである。

(報酬の在り方に関する意見)
  • 捜査段階での活動や、集中的弁護活動を保障するにふさわしい、報酬が支払われるべきである。(同旨2通)
  • 長引く不況のために税収が悪化する中での制度発足になることが予想されるが、司法改革は国をあげて取り組んでいる戦後初めての、かつ最大規模で検討をして発足させる制度である。したがって、予算措置が小規模であるような制度構想であれば現在の弁護士会が行っている当番弁護士制度の方がまだましであったということにもなりかねない。司法制度改革審議会の意見書は弁護士会の当番弁護士制度や法律扶助協会の任意の法律扶助事業によってその空白を埋めるべく努力されてきたが、そのような形での対処には自ら限界がある旨明言しており、国の制度として被疑者段階の公的弁護制度を制度化する上では当然のことながら十分な予算措置が必要不可欠であり、弁護士報酬については現在支給されている弁護士報酬を上回るものでなければならない。被疑者・被告人(付添人を含む)段階を通じて1件30万円を弁護士報酬の基本として、活動状況に比例した弁護士報酬の体系を確立すべきであると思料する。
  • 記録の謄写料や交通費等の費用実費は、その全額が支払われなければならない。(同旨5通)
  • 請求があった際には供述書や証拠・記録などのコピー経費は裁判所が保障すべきです。公判準備の打ち合わせ、弁護に必要な調査活動などがきちんとできる体制をつくる必要があります。

(弁護費用の負担に関する意見)
  • 公的弁護制度を充実させれば、多くの被疑者・被告人が公的弁護制度を利用するようになることは避けられないが、選任の段階で要件審査を厳しくすることは、現実的ではない。そこで、事前の要件審査を緩くして、事後的な審査で被疑者・被告人に対して適切に費用を負担させ、費用の増大を防ぐことを考慮すべきである。(同旨2通)
  • 公的弁護制度により選任された弁護人に要した費用をどのように負担させるかについては、運営主体にその調査と判断をゆだねるのが望ましい。運営主体は、訴訟手続で現れた資料や関係機関に調査照会をした結果に基づいて、被疑者・被告人の資力を審査し、各自の資力に応じて負担をさせるということになる。(同旨2通)
  • (弁護費用を被疑者・被告人に)負担させるなら,かかった費用と年収を考慮に入れ、生活維持できる無理のない範囲にすべきです。

第8 公的弁護制度の運営主体

 1 運営主体の事務

  • 運営主体の事務として、予算案の策定、報酬の基準の決定、報酬及び費用の決定と支払などとする。弁護人の推薦及び公的弁護体制の整備は、弁護士会が担当し、運営主体の事務とはしない。(同旨2通)
  • 裁判員制度の設置、集中審理の実現をも視野に入れた常勤の刑事弁護人を抱える公設弁護人事務所の設置が運営主体の権限とされる余地が残されているが、運営主体が直接公設弁護人事務所を設置するなどした場合、当該事務所に所属する弁護士は公務員の身分を取得せざるを得ず、また運営主体と直接契約関係に立つことから、雇用関係を梃子にした種々の弊害が予想されるのであり、運営主体の権限に公設弁護人事務所の設置が加えられたとしても、運営主体直営の公設弁護人事務所の設置は認められるべきではないと考える。
  • 刑事弁護の自主性・独立性の確保が「弁護人の弁護を受ける権利」(憲法34条、37条3項)を実効的に保障するために不可欠であることを踏まえ、運営主体の権限そのものが一定の範囲の、かつ、拡大解釈の許されない事項に限定されたものとされなければならないと考える。
  • 公的弁護制度の運営主体に弁護人の推薦と報酬の決定をゆだねることによって、弁護人の選任、解任をめぐる困難な問題が解消される。現行の国選弁護人の選任に関しては、必要とする弁護人の数をめぐって紛議を生ずることがある。法定刑の重い事件や、訴因の多い複雑な事件では、国選弁護人を推薦する弁護士会は、2人あるいはそれ以上の弁護人の選任を求めて推薦してくる場合が少なくない。また、国選弁護人として選任された者から、更に国選弁護人を追加して選任するよう求めてくる場合もある。裁判所としては、審理も始まっていない段階で、複数の弁護人が必要かどうかについて立ち入った調査をすることも適切でなく、申出の当否を判断することには困難を感じざるを得ない。この問題は、被疑者に対して弁護人を選任する場合には一層深刻になる。報酬の支給について責任を負う運営主体が弁護人を推薦するようになれば、裁判所は、運営主体の推薦する弁護人を安心して選任することができるようになり、この点に関する問題が解消される。(同旨2通)
  • 司法制度改革審議会意見書のとおり、裁判所が選任、解任を行うことが望ましい。国選弁護の開始が、強制捜査段階から始まるとの認識にたてば、この方法が最適であると考える。この場合には、過疎地での弁護を保障する事務所の運営は、弁護士会ないしは日弁連とすることが妥当である。裁判所自身での選任が不能であれば、裁判所はその業務運営を日弁連に包括して委託するものとする。(同旨2通)

 2 運営主体の組織

(運営主体の在り方に関する意見)
  • 審議会意見書の趣旨に沿った運営主体が設立されることを望みます。
  • 運営主体については、①憲法の保障する弁護人依頼権の充実のため、早急に具体化すべきである。②運営主体は司法行政から独立した第三者機関とする。③運営主体の構成員は法曹者のみでなく、広く各界から参画すべきである。国民の司法参加の立場から考えるものである。④予算は公的資金を導入すべきである。この結果は、評価委員会を設置するなど透明性を確保すべきである。
  • 被疑者段階の公的弁護制度の運営主体の在り方については審議会意見書にあるように弁護活動の自主性、独立性が損なわれてはならないという点を十分に留意しなければならない。したがって、どのような運営主体を構想するかという点においても、組織、人的体制について殊に役員の選任、構成、意思決定手続等についても弁護士の弁護の自主性・独立性を損なう危険性が全くないように保障されなければならない。
  • 弁護士会と弁護士の独立性・自主性が確保できる公平・中立のものを設計しなければならない。この保障なくして、弁護人は国家権力と対峙して、適正手続の下で被疑者・被告人の権利を擁護する使命を果たすことはできないのである。なるほど、国家予算を支出することから、憲法89条の求める「公の支配」の要件を満たす必要があり、国の全く関与しない運営主体をつくることはできない。しかし、その運営主体の組織については、理事会などの開かれた民主的な意思決定機関を中核とするものでなければならない。その上で、弁護士の個々の弁護活動の内容をコントロールしたり、干渉することのないことを保障するシステムを構築しなければならない。
  • 刑事弁護の自主性・独立性の確保が「弁護人の弁護を受ける権利」(憲法34条、37条3項)を実効的に保障するために不可欠であることを踏まえ、①設置される運営主体そのものができうる限り国家(取り分け検察機関を統轄する法務省)から実質的に独立して権限を行使する組織とされるべきと考える。
  • 運営主体の組織として、弁護人の推薦権を弁護士会がもつこと、一般の弁護士が幅広く刑事弁護を担うという条件が満たされるような運営主体でなければならない。このような条件が満たされる限り、運営主体の組織については柔軟に検討されるべきである。
  • 公的弁護の運営主体については、次の視点が不可欠である。
     充実した弁護活動を提供する態勢整備
     特に、弁護活動の実態を反映した弁護報酬の確立
     弁護活動の自主性・独立性の確保
    ① 法務省・検察庁の影響力の排除
    ② 財政効率の強調などによる政治的圧力を受けないこと
     弁護士会との適切な協働関係
    ① 弁護人推薦資格についての弁護士会判断
    ② 運営主体が常勤弁護士を採用する場合の弁護士会推薦

(具体的な組織形態に言及する意見)
  • 被疑者弁護については(財)法律扶助協会、被告人弁護については現行の国選弁護制度という方式も検討に値するし、また現行の国選弁護制度を被疑者段階に前倒しした制度(裁判所と弁護士会が協同運営する方式)も検討に値する。(同旨2通)
  • 独立行政法人を運営主体とすることは、弁護活動の自主性・独立性を阻害し、妥当ではない。(同旨2通)
  • 運営主体を「裁判所に付設する独立機関」又は「独立行政委員会」とする考えについて、弁護士会が運営主体を担うとする考えもあるが、国家機関である運営主体を弁護士会が担うことは、実質的にも、弁護制度の運営について弁護士会が国家による有形・無形の介入を受けることを招来する危険があり、相当でない。 また、(財)法律扶助協会が運営主体としてふさわしいかという点であるが、検察と厳しく対立する国費による刑事弁護の運営を、事業計画・収支等において検察組織を統轄する法務省(法務大臣)の監督を受ける扶助協会に担わせることは相当でない。 次いで、裁判所に付設する独立機関であるが、裁判所自体にこれを担わせることは、裁判所に常勤の弁護士(公設弁護人事務所)の配置をゆだねることになり、また裁判所が捜査段階の報酬算定をできるかという問題もあり、困難である。また、実質的にも、国選弁護の経験等に照らしても弁護士会との提携・共同関係を築くことは容易でなく裁判所自体にその意思がないという現状からしても、相当でない。 しかし、検察審査会以上に独立性の高い機関(組織)を国法上の裁判所に付設することは可能である。実際にも、弁護人の選任・解任は訴訟法上の裁判所が行うのであり、付設される機関の独立性が確保されれば、弁護制度の運営にも資する。 さらに、独立行政委員会として設置する案であるが、これも、その独立性が確保されることが確実であれば、否定することはできないが、独立行政委員会の所轄官庁から、検察組織を統轄する法務省が除かれなければならないことはいうまでもない。 以上、その独立性の確保を条件として、裁判所付設型、独立行政委員会型いずれかが選択されるべきことになるが、裁判所は司法権の担い手として行政からの独立が憲法上保障されていること、国法上の裁判所が組織として現存することを踏まえると、裁判所付設型が選択されるべきである。
  • 刑事事件での弁護活動が検察という「国家権力」と対峙する事を考えれば、その運用は国や行政の立場から完全に独立した第三者機関の弁護士会や法律扶助協会、あるいは新しく作った組織に委託されるべきです。その運用に国や行政は関与すべきではありません。

(刑事に限定されない法的サービスの提供に関する意見)
  • 近時、独立行政委員会と比較してより独立性の高い独立行政法人としてリーガルサービスセンターを設置し、これにその業務の一環として公的弁護の運営を行わせるという案が浮上している。この場合、①裁判所は弁護人の選任・解任のみを行い、運営主体としてのリーガルサービスセンターは報酬の決定・支給、公設弁護人事務所の設置業務を行うという考えと、②裁判所は弁護人の選任・解任に加え報酬決定・支給を行い、運営主体としてのリーガルサービスセンターは残る公設弁護人事務所の設置業務のみを行う、という二通りのものがあるようである。 これは、今までは裁判所が弁護人の選任・解任のみを行うとされてきたものが、それに加えて報酬の決定と支給も行うべきかという問題を含むのはもちろん、独立行政法人として設置されるリーガルサービスセンターが、弁護の自主性・独立性の確保という根本理念をゆるがせにするのではないかという問題を含む。 もっとも、リーガルサービスセンター構想の内容が具体化されていない段階でこれに賛成するのか反対するのかを決定するのは時期尚早ではあるが、弁護の自主性・独立性の確保を第一義とする観点に立つならば、例え刑事問題に限定されない法的サービスを広く国民に提供するための機関としてリーガルサービスセンターが構想されているとしても、公設弁護人事務所の運営については、別途の機関に行わせるという選択肢が検討されてしかるべきである。なぜなら、われわれは、国家からの制約を受ける危険のない民間型公設弁護人事務所の設置が望ましいとの立場に立ちながらも、運営主体が公設弁護人事務所を設置する場合においては、国家機関である運営主体がそれを直営するのではなく、法律扶助協会にその運営をゆだねる方式を採ることにより、運営主体による直接の介入を防止できると考えてきたものであり、リーガルサービスセンターが相当程度独立性の高い機関として設置されたとしても、これに直接の運営をゆだねた場合、なお、雇用関係を梃子にした公設弁護人事務所所属弁護士に対する身分上あるいは職務遂行上の事実上の介入を排除できるのかという疑問を払拭できないからである。
  • 法務省から出された独立行政法人「リーガルサービスセンター」構想については次のとおり重大な疑義がある。
     もともと「リーガルサービスセンター」構想と公的弁護の運営主体をどうつくるかは別の問題であること。
     独立行政法人であれば独立行政法人通則法の原則的な適用を受け、法人の長は法務大臣が指名・任命し、この法人の長が職員を採用する人事組織となる。そこには開かれた民主的な意思決定機関が予定されていない。これでは人事を通して国の統制が強く及ぶ組織となってしまう。
     独立行政法人では、法務大臣が中期目標を定め、これを法人に指示し、法人はこの指示に沿った中期計画を作成して法務大臣の認可を受けなければならない。法務大臣はこの中期計画の変更命令権を有する。これは業務内容を統制するシステムであり、このままでは個々の弁護士の活動の自主性・独立性が保障されない。
  • 「リーガルサービスセンター」のような法務省所管の組織ではなく、弁護士会が運営主体となるべきである。そうでないと、権力機関から独立した形での弁護活動が担保されなくなる上、刑事弁護が一部の「リーガルサービスセンター」所属の弁護士のみが担うことになり、一般の弁護士が従事しにくくなるおそれもあるが、それは刑事弁護の在り方としてふさわしくない。また、「リーガルサービスセンター」の弁護士が年に100件近い事件を行うということになると、否認事件など複雑な事件の弁護活動が十分にできなくなり、えん罪が防げなくなるのではないかと危惧される。

第9 その他

(公的弁護制度の在り方に関する意見)
  • 被疑者段階の公的弁護制度は、現在の制度にまで拡大発展してきた当番弁護士制度や扶助の被疑者弁護制度を量的にも質的にも下回るような制度であってはならない。
  • 制度創設にあたって考えなければならない視点としては、国際人権法に合致したものであり、国際的な水準に達した制度でなければならないという点である。
  • 「加害者の人権とは国民全体のために存在するのであって、ワルを助けるためのものではない」。これを国民全体の理解の下に本制度の運用、また当局は国民にこれの啓蒙も図っていただきたく願う。
  • 外国人犯罪案件にかかわる議論が抜け落ちているので、今後の議論に、日本語を理解しない外国人被疑者・被告人の公的弁護制度を確立することも含めてほしい。
  • 被疑者を専門に扱う人権団体を作り、対応した方がよい。必要があれば、弁護士に頼み、被告人になったら現行の制度を適用する。つまり、当番弁護士の仕事を公的な人権団体にやってもらう。
  • 一回の接見で法的なアドバイスをすることで足りることも少なくないだろう。提供する弁護活動の内容には差異が設けられてもよい。
  • 被疑者に公的弁護人制度を設けても、保釈制度と組み合わせないと余り実効性のあるものにはならないと思う。

(当番弁護士制度に関する意見)
  • 公的弁護制度においては、現在各弁護士会が実施している当番弁護士制度を参考に、最低限、以下の内容を盛り込んだ国費による当番弁護士制度を創設すべきである。
     逮捕勾留された被疑者に法律で「無料で弁護士に法的助言を受ける権利」を保障する。権利行使には、資力・罪名などによる制限は一切付さない。
     当番弁護士の派遣にあたっては、弁護士会及び弁護士の独立・独自性が損なわれないようにする。
     一定の重大事件・すべての少年の事件などについては、被疑者からの申出がない場合でも、当番弁護士を派遣する制度を設ける。
     当番弁護士には、報酬(接見日当)及び交通費等実費が支払われる。(同旨1通)

(現在の弁護士制度上の弁護士以外の者が弁護活動を行うことに関する意見)
  • 民事裁判における弁護士(現在の弁護士制度による弁護士)と、刑事裁判における公的弁護人との資格を明白に区別する。公的弁護人は、最高裁判所が任命する公務員とし、裁判官、検察官とローテーション制度を設ける。各弁護士会は、公的弁護人候補者を最高裁に推薦できるが、裁判所の選定に異議申立てできない。
  • 弁護士とは別に新たに刑事弁護を取り扱える士職を設けてみてはどうでしょうか。司法試験受験生の中には、刑事弁護士を志しながら私法系の科目で合格点が得られず最終合格できない方がいます。また大学の法学部の刑法や刑訴の教員の方で刑事弁護に関心はあるのですが弁護士資格がないため法廷に立つことができません。やはり刑事弁護を専門にできる人材を養成する必要があるのではないでしょうか。刑事弁護をどうか弁護士以外の者にも門戸を開放していただけるよう御検討願います。
  • 行政手続における身柄拘束事件に行政書士を活用されたい。例えば入国管理及び難民認定法等。
  • 弁護士の活動を支えるスタッフの活用として、現在捜査段階の弁護活動のうちもっとも時間を取られるのは被疑者への接見であり、このような仕事は敬遠されがちである。この接見業務を、弁護士本人しかできないという現在のシステムを改め、弁護士の指導監督の下で、その補助者にも行なえるようにと提案する。公的弁護活動の担い手として「公設弁護人事務所」のような施設を作ることも必要であるが、制度を効率的に運用し、できるだけ多くの人に弁護人の援助を提供するためにも、事務所スタッフによる接見業務は検討されなければならないと思う。(同旨1通)

(犯罪被害者にも配慮すべきとの意見)
  • 犯罪予防と被害者救済にこそより多くの国費を用いてほしい。
  • 一方(被害者:死亡、受傷者)が苦しんでおり、一方(加害者、被疑者、被告人)が量刑減軽に法律上の人権保護を盾に争っている事実が正当な司法制度とは到底考えられません。(同旨2通)
  • 公費で刑事被疑者の段階から弁護士を付ける制度がつくられるのであれば、“被害者側にも公費で弁護士”をつけてマスコミの放送・取材、警察・検察庁に対する被害の真相を知り被害者としての人権を守れるような制度をつくらないと本当に片手落ちと思います。昨今のような凶悪犯罪が増加し、アメリカ並の犯罪者天国になりつつある現実をよく見ていただき、このような制度の確立について御審議の議題にしていただくようお願いします。
  • 刑事事件の手続における犯罪被害者の地位の向上の問題を疑問視している。
  • 殺人者の人権は尊重するが殺された者の人権がない。
  • 被疑者・被告人の公的弁護制度の整備についての検討がなされる一方で、被害者の家族の損害補償についても考えねばならない。また、被害者の家族は裁判において発言することを希望している。一部からは、修復的司法も説かれている。両者の人権を尊重しつつ、慎重に検討すべき問題であろう。
  • 外国でも被害者等に対する法律が充実しているにもかかわらず、日本の法制は欠点が多すぎるとの事を充分に反省し、改正すべきであると言いたい。との主張にも耳を傾けず、なかなか重い腰を上げて改正しないのはなぜか、早く改正に立ち上がってほしいと思います。

(その他)
  • 初動捜査の誤りから誤認逮捕(思い込み、決めつけ)のないように、その事から望みたい。あらゆる可能性を考慮し冷静に捜査すること。慎重の上にも慎重な捜査を心よりお願いしたい。国のあらゆる制度の原点は庶民生活の安全であり、犯罪における公正厳格な被疑者への対応、くれぐれも誤認逮捕による平穏な生活が奪われることのないよう心より期待したい。かような視点で制度の整備をお願いしたい。
  • 真の(刑事)司法制度改革は、戦前のように警察署長等に軽微事件の即決裁判権を与え、逆に「犯人」には司法取引権を与え、司法書類作成及び裁判を減らし、もって一般国民の税負担を減らす、又はその分を犯罪抑止活動に当てることである。
  • 被疑者段階から公的弁護を導入したら捜査期間の延長という問題も出てくるのではないか。
  • 警察捜査は、48時間のみとし、その後の取調は検事が行うという本当の姿にしなければいけないと思う。
  • 刑訴39条3項の原則逆転化。裁判所が捜査のため必要があると判断するときは、検察官等の請求により、被疑者と弁護人の接見の日時を制限することとする。
  • 電話接見の実施等については、本制度を機会に、是非とも実現されるべきである。電話接見が実施されるだけでも、各弁護士の負担が相当程度軽減されることは明白である。
  • 刑訴198条3〜5項の廃止。代わりに、取調べの状況はすべてビデオ録画することとする。そして、弁護人はいつでもその録画をノーカットで(=編集なしに)見ることができることとする。(同旨2通)
  • 刑訴198条1項の改正。「逮捕又は勾留されている場合を除いては」をカット。代わりに、被疑者の要求があれば、取調べに際して弁護人の同席を権利として認める。
  • 税のムダなくすため、なるべく被疑者公的弁護使わなくても効果出るよう、誤った供述調書を防ぐため、やさしく分かりやすく具体的に書いた本の被疑者閲覧権を全面保障すべき。
  • 公判記録については、被告人としてその訂正を求める権利もあるはずで、記録が閲覧できない実状をいち早く改善する必要があります。少なくとも公判記録については、被告と弁護人の双方に裁判所の責任で渡す。
  • 被告人に黙秘権を認めているのは間違っていると思います。尋問する係官は国民の信託を受けた政府を代表していると申せます。係官の尋問に応ずることは日本国民全体の尋問に答えることでもあると思っています。黙秘権は早急に廃止すべきです。

III 公的付添人制度に関する意見

第1 公的付添人制度の意義、必要性、留意点

 ○ 少年事件の特殊性

  • 成人に比較して防御能力に劣る。(同旨5通)
  • 大人よりも可塑性に富む。(同旨1通)

 ○ 公的弁護制度の対象に少年の被疑者をも含める場合のバランス

 ○ 少年審判手続の構造

  • 刑事手続と少年保護手続とでは、その構造や理念を異にするわけですが、少年保護手続においても、適正手続の保障・正確な事実の認定は、少年の権利保障、保護・教育いずれの観点からしても、極めて重要だと考えられているのです。(同旨1通)
  • 少年事件では、一件記録がすべて裁判官のもとに送られる職権主義構造により、裁判官が検察官役をも担う構造になっていることを考慮するなら、公的付添人制度実現に際して検察官関与を前提にすることは、むしろ公平とはいえない。(同旨3通)
  • 検察官関与も限定されている現在の少年審判構造において、少年側にだけ格別の保護を加えるということでは、国民の理解を得ることは難しいのではないかと思われる。

 ○ 家庭裁判所調査官との役割分担

(家庭裁判所調査官の調査と相俟って、少年の更生に資することになるとの意見)
  • 少年法によれば付添人は審判の協力者でありますから、裁く側の家裁調査官の視点と、少年に寄り添う付添人の視点は常に対立するものではありません。むしろ少年の要保護性に関する両者の複眼的な視点が、少年の持つ問題の客観的な理解を深め、それは同時に少年自身の自己洞察や保護者の少年に対する理解をも深める結果となります。その結果として選択される保護処分は一般に少年にとって納得のいくものとなるでありましょうし、それは少年の更生に著しくプラスとなるものであろうと考えます。(同旨11通)

(家庭裁判所調査官の調査を補充するとの意見)
  • 公的付添人の役割は、主として要保護性についての家裁調査官の補充的なものとしてよいのではないか。

(家庭裁判所調査官には裁判所職員であることに基づく制約があるとの意見)
  • 熱心に活動されている調査官も多いのですが、やはり調査官は裁判所の人であり、処分を決める側の人です。そういう意味で、少年が味方として心を開くことは難しい場合があります。(同旨12通)
  • 「忙しすぎる調査官」の隙間を埋めることのできるのは弁護士付添人をおいてほかにはないし、またそれが要保護性のみが問題になるケースにおいても弁護士付添人を選任することのメリットであると考えます。(同旨5通)
  • 家庭裁判所調査官を始め、少年鑑別所、保護観察所、少年院などの関係機関の職員が、いかに誠実で有能であるにしても、現在の中央集権的な官僚組織の下では転勤や補職の変更が不可欠であり、地域社会の情報の収集能力には限界が伴うことは明らかです。

 ○ 付添人の役割

(要保護性に関する環境調整を行うとの意見)
  • 就労先を確保する。(同旨8通)
  • 少年に被害者の心情等を理解させる。(同旨6通)
  • 退学の回避など学校との関係調整を行う。(同旨5通)
  • カウンセリング機関その他の民間団体との連携を図る。(同旨3通)
  • 少年の家庭を訪問する。(同旨2通)
  • 親子・夫婦間調整や債務整理など保護者に関する問題を解消する。(同旨2通)
  • 暴力団又は暴走族からの脱退を促す。(同旨2通)
  • 少年の異性関係を調査する。(同旨1通)
  • 少年及び保護者に調査・鑑別の結果を伝達する。(同旨1通)
  • 遠隔地への少年の転居を具体化する。

(その他)
  • 審判における適正手続の保障に資する。(同旨13通)
  • 事実認定の適正さを確保する。(同旨5通)
  • 身柄拘束の適正さを確保する。(同旨2通)
  • 被害者に謝罪し、被害回復を行う。(同旨12通)

 ○ 付添人の給源となる弁護士の確保

  • 今後司法試験合格者が増加し法曹人口が大幅に増えることが計画されていることにかんがみ、付添人となる弁護士を確保して行くことは十分に可能であると考える。
  • 付添人活動をする弁護士は増えてきていると感じています。特に、若い弁護士は熱心に取り組んでいる人が多いように感じます。その意味で、担い手はこれからも増えていくと思います。

(公的付添人の資格に関する意見)
  • 非行事実に争いのある事件については、法曹資格を持つ付添人を付けるべきであろうと考えております。(同旨1通)
  • 非行事実を争わない少年保護事件においても、弁護士による公的付添人制度を広く認めることを要望いたします。
  • 付添人は、捜査段階から処遇段階まで一貫した少年の援助者をイメージすべきであると考えます。特に審判段階においては、少年法の規定がそうであるように、弁護士に限定して考える必要はまったくないと思います。
  • 人間科学における判断基準はあくまでも相対的なものであり、調査官の調査結果に基づく処遇意見に対して、科学的知見をもとにした反論は当然あり得ます。この場合、法律専門家である弁護士よりも、臨床心理士や社会福祉の専門家などが付添人として就くことは極めて意味のあることであろうと考えております。
  • すべての少年事件(少なくとも保護処分の予測される事件)については、人間科学の専門家である公的付添人をつけるべきである。
  • 人間諸科学の専門知識を持った無報酬の公的付添人の候補者は、退職した家裁調査官や保護観察官を始め、臨床心理士や社会福祉士などを含めて相当数いるはずですが、現在は弁護士法が壁になって活動しにくい状況になっています。その意味でも、今回の司法改革論議の中で、人間諸科学の知識を有する公的付添人の新設を実現していただきたいと考えております。
  • 弁護士プラス人間科学の専門家が本当は一番望ましい。

 ○ その他

(犯罪被害者への配慮に関する意見)
  • 弁護士付添人は、被害者に謝罪の意思を伝え、被害弁償や示談等の被害回復に努めることが大きな役割となっています。(同旨13通)
  • 付添人を通じて被害者のこと、被害の現実を子供がきちんと見つめられるようにすることが、より加害側の更生には有効であると思うところがあります。(同旨6通)
  • 弁護士付添人は、被害者側に事件の詳細や少年が非行に至った事情などにつき説明する。(同旨2通)
  • 付添人の活動により少年の反省を促進させ、そのことを通じて、被害感情が緩和されることも期待できます。
  • 被害者保護の観点からは、被害者の意見陳述や、家裁による被害者調査などによって十分図ることが可能です。
  • 被害者ケアの問題は、別途に議論されるべきだと考えます。
  • 被害者の立会いも限定されている現在の少年審判構造において、少年側にだけ格別の保護を加えるということでは、国民の理解を得ることは難しいのではないかと思われる。

(その他)
  • 児童の権利条約や関連の規則(児童の権利に関する条約12条、37条(c)、37条(D)及び40条2項(b)並びに北京ルールズ7及び14−2)も考慮すべきである。(同旨7通)
  • 少年及び付添人が付添人選任の具体的必要を認めながら、費用を支払うことは困難である、知っている弁護士がいないなど、それ自体として付添人選任の具体的必要性とは関連しない理由から実際に選任できないとすれば、それは社会的・経済的不平等の反映であって、付添人の法的援助の重要性にかんがみたとき、法的平等保護の見地から許されないというべきでしょう。

 ○ 公的付添人制度の具体的な制度設計に関する意見

(すべての少年に付添人を付するとの意見)
  • すべての少年に付添人が必要です。
  • すべての少年に人間諸科学の専門知識を持った公的付添人を付する。

(身柄拘束を受けているすべての少年を公的付添人制度の対象とするとの意見)
  • 身柄拘束を受けているすべての少年を公的付添人制度の対象とされるよう要請します。(同旨5通)
  • 観護措置がとられた少年からの請求があれば(必要的とする方が望ましいが)、必ず公的付添人を選任する制度を構築すべきと考えます。
  • 観護措置をとられたすべての少年に対し弁護士を派遣し、付添人の選任を希望する少年に対してはすべて付添人を選任する。そして、少年に資力がない場合には、公的付添人を選任する。

(裁量による選任制度を導入するとの意見)
  • まずは裁量的な国選付添人選任制度を導入していただきたい。

(必要的選任制度を導入するとの意見)
  • 本来の理想的な制度として、少年の意思や資力の有無にかかわりなく、身柄拘束を受けて審判に臨むすべての少年に対して弁護士を付添人に選任すべきであると考えるが、財政的な問題や弁護士の対応能力も考慮せざるを得ない。
     少年に付添人選任意思がなくても、次の場合には必ず付添人を選任する。
      ア 否認事件
      イ 少年法22条の2第1項の1号、2号に該当するとき

(その他)
  • 少年又は資力のない保護者から公的付添人を付けて欲しいという要請があるすべての事件。(同旨1通)
  • 少年から付添人選任の要請があるが、親権者に付添人を選任する意思がない場合は、親権者の資力の有無を問わず公的付添人を選任すべきである。(同旨1通)
  • 観護措置決定を受けた少年の事件、否認事件、裁判所法26条2項2号の罪で家庭裁判所に送致された少年の事件及び家庭裁判所が必要と認めた事件とする。
  • 事実を争わず、保護者が不在でない事件でも、弁護士による付添人がどうしても必要な事件は多数ある。例えば、両親が揃っていても、正当な監護力を持たず、逆に少年の福祉を害する可能性がある場合などである。
  • 少なくとも保護処分の予測される事件については、人間科学の専門家である公的付添人をつけるべきである。
  • 少年及び付添人が付添人選任の具体的必要を認めたとき、現実的選任がなされるよう確保するために、公的保障を制度化する必要があります。
  • 少年自身が付添人の選任を申し立てた場合。
  • 仮に国選が相当でないとしても、十分に財政的な裏付けのある公的な団体によって付添人援助が確保できる途を、是非確実にしていただきたい。

 ○ 検察官関与に関する意見

  前掲「○ 少年審判手続の構造」記載の意見参照

第2 少年の被疑者に対する公的弁護制度の在り方

 ○ 公的弁護制度下での弁護人の選任要件(「資力が十分でないなど」)

  • 少年の資力を考慮する。
  • 少年の資力を考慮しない。

 ○ 公的弁護制度下における弁護人の選任の効力の終期(家裁送致された場合)

  • 家裁送致のときに終了する。
  • 被疑者段階に選任された弁護人は、家裁送致後は付添人として活動するものとする。