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労働検討会(第12回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成14年12月20日(金) 13:30~16:15

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員)菅野和夫座長、石嵜信憲、鵜飼良昭、春日偉知郎、後藤博、髙木剛、村中孝史、矢野弘典、山川隆一、山口幸雄(敬称略)
(事務局)松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、松永邦男参事官、齊藤友嘉参事官、川畑正文参事官補佐

4 議題
(1) 論点項目についての検討
 ・ 導入すべき労働調停の在り方について②
(2) その他

5 配布資料
資料65労働関係事件への総合的な対応強化に係る検討すべき論点項目(中間的な整理)[再配布]
資料66導入すべき労働調停についての主要な論点[再配布]
資料67導入すべき労働調停の在り方についての検討資料[再配布]

6 議事

(1) 論点項目についての検討

 労働関係事件への総合的な対応強化に係る検討すべき論点項目(中間的な整理)(資料65)中の「2 導入すべき労働調停の在り方について」の部分について、資料66に即して次のような議論がなされた。(□:座長、○:委員、△:事務局)

ア 訴訟との連携(資料66 5)

○ 地方裁判所で労働調停を行う場合には、調停が不調の場合に地方裁判所での訴訟との連携を図り易いよう、対象とする紛争を、地方裁判所が事物管轄を有する紛争に限定してはどうか。その上で、訴訟と調停との連携の仕方としては、事件カルテ、引継メモ等を活用する等の工夫が必要ではないか。

○ 調停前置については、紛争内容によっては訴訟の方が適している紛争もあることから、一律に調停を前置させることはかえって紛争の処理を長引かせることになり、適当ではない。
 裁判所の職権による付調停の活用については、専門家調停委員を配置することで労働調停が充実すれば、円滑な紛争の解決に有効に資するのではないか。特に、労働専門部・集中部のない裁判所については、労働事件に係る経験が十分でない場合もあることから、調整的な解決に適した紛争は、専門家調停委員が関与する労働調停に付して解決することが必要である。また、労働調停においては、調停主任である裁判官と調停委員が一緒になって、同じように事案に対応していくことが必要である。
 調停手続で提出された資料については、調停不調で裁判が提起された場合には、裁判所に送付することとしてはどうか。その上で、裁判所がその判断により必要な資料を活用できるようにしてはどうか。調停で提出された資料の重み、訴訟の場合との書式の違い等の問題はあろうが、これらの資料を活用することを前提として対応策を考える必要がある。
 なお、労働調停の事物管轄について補足すると、簡易裁判所と地方裁判所の両方に専門家調停委員を配置して労働調停を行うことが望ましいが、管轄する裁判所についての原則を決める必要があるのであれば、現行の民事調停のとおり、簡易裁判所を原則とし、当事者の合意により地方裁判所でも取り扱えることとすることが適当である。労働調停の議論は、簡易、迅速なADRの一つとして、代理人を付けない本人申立てもあることを念頭において考えると、間口の広さ、アクセスの容易さが重要であり、そのためには簡易裁判所で取り扱うことが適当である。確かに、対立の激しい重い紛争については、調停不成立後の訴訟との連携を考えると地方裁判所で取り扱う方がよい場合もあるが、それは当事者の合意に基づいて行うこととすべきである。
 簡易裁判所と地方裁判所が同一の場所にある場合については、専門家調停委員は簡易裁判所に配置することとし、一部の調停委員を地方裁判所との兼務とすることも可能ではないか。

○ 職権による付調停については、労働調停では専門家調停委員が加わることとなるので、その活用の可能性はかなりあるのではないか。
 調停前置については、現在、調停前置が採られている家事調停でも、早く訴訟を提起したい事件については時間のロスとなっており、導入しない方がよいのではないか。
 調停手続で提出された資料については、訴訟で活用されるとなると調停の場での資料の出し惜しみのおそれがある一方、活用できれば訴訟での資料提出を待つ時間を省くことができる等、二面性があると考えられるが、これは現実の運用面でどうするかの問題であろう。

○ 調停前置については、消極意見に同じである。
 職権による付調停については、民事調停法第20条の受訴裁判所による自庁調停を活用して、労働事件に詳しい裁判官が調停主任となって調停を行うといったことも必要であろう。
 調停手続で提出された資料については、アメリカでは、調停手続中の言動は訴訟では提出することができないと聞いている。

○ 調停前置については、調停が不成立となった場合にタイムラグが生じるため、採用することは適当ではない。
 調停手続で提出された資料については、代理人を付けずに本人が調停を申し立てる場合には、自分に有利な資料も不利な資料も全てを関係資料として調停手続で提出することが多いので、そのまま訴訟に引き継ぐこととするのは問題がある。調停の資料を裁判所に送付し、裁判所が採否を判断して振り分けることについては、本来証拠の提出は当事者が行うべきものであり、当事者の意向に添わないことを裁判所が行うことは適当ではない。また、裁判所が資料の採否を選別することは困難であり、当事者の納得を得るような手当ては困難であろう。

○ 弁護士としては、調停で提出した資料がそのまま訴訟で使われることは適当ではなく、訴訟で使用する資料は選別したいと考えるが、実際上は、調停の場であっても一旦資料が出されて相手方の知るところとなった場合には、当該資料を訴訟の場で提出せざるを得ないだろう。

○ 一般の民事調停の実務では、提出を受けた資料を相手方に渡すかどうかを調停委員会が判断している。労働調停でも、事実関係を確定するための判定に必要な就業規則、給与規定等の資料については、使用者から提出を受けた場合には、労働者側に渡して、調停が不調で訴訟となったときに、証拠として提出できるようにする工夫が必要である。ただし、互譲の過程で出されたものについては訴訟に引き継がせる必要はない。

○ 請求額の大きな医療過誤事件で民事調停に持ち込まれたものがあったが、この事件では、調停の申立人が訴訟のために、相手方(医師側)の保有する証拠資料を模索する意図もあったようである。
 代理人が付かない場合で、調停でうかつに資料を出して、訴訟で使われることとなると困るのではないか。基本的には、調停の資料をそのまま訴訟に引き継ぐことはせず、何らかの歯止めが必要ではないか。

○ 調停を証拠収集の手段として利用するということは考えがたい。

○ もとより話し合い解決の目的があることはもちろんだが、話し合いと証拠収集の2つの目的があったのではないかと考えられる。

○ 実務的には、そのような取扱いは例外的なものではないか。

○ 訴訟との連携は訴訟の在り方に関係すると思うが、現在の制度を前提として考えると、調停前置の導入は適当ではない。ただし、裁判所の負担が軽減し、処理時間が迅速化するのであれば、迅速な解決の観点からは、調停前置を全面的に否定する必要はないのではないか。
 職権による付調停については、和解との相違がはっきりせず、和解の方がより現実的な対応であることから、その必要性は乏しいのではないか。
 調停手続で提出された資料については、そのまま訴訟で利用するのは適当ではない。訴訟となった際には、当事者が証拠申請をして、吟味の上で取り扱うのではないか。
 労働調停と一般の民事調停の選択の在り方については、労働関係の紛争であれば、原則として労働調停で扱うのではないか。

○ 調停前置については、導入は難しいと考えられるが、雇用関係の存続を前提とした紛争では、考慮の余地があるのではないか。
 職権による付調停については、利益紛争的な事件であれば、付調停を積極的に活用することができる場合があるのではないか。
 調停手続がいたずらに長引かないようにすることが重要である。このため、調停手続のスケジュールをあらかじめ設定する等運用上の工夫が必要ではないか。
 付調停の場合において、訴訟の担当裁判官と調停主任が同一であるときには、調停段階でかなりの心証形成がなされることとなるが、それでよいのか否かの検討も必要である。

○ 建築紛争等の専門的で難しい事件には付調停が活用されているが、労働事件では、訴訟による解決を望んでいる場合も多いとともに、また、労働専門部・集中部があるので、調整的解決を図るとしても和解を希望することが多く、付調停の活用は考えない。
 争点整理の終了後においては、当事者は訴訟での解決を望んでいると考えられるので、当事者の合意によらず、職権で付調停をすることができるとすることには、互譲という調停の趣旨からも反対である。
 当事者が代理人を立てない場合でも、容易に調停を申し立てることができるように、定型的な調停申立書を用意するとともに、調停不成立の場合には簡易な訴状や口頭により訴訟に移行することができるようにし、調停から訴訟への連携を図ることとしてはどうか。
 また、調停委員会が使用者側から給与規定等の資料の提出を受けた場合には、その写しを申立人にも渡すことにより、訴訟となった際に申立人が当該資料を証拠として提出することができるようにする等の工夫が必要である。

○ 調停前置については、当事者が訴訟による解決を望む場合には、調停手続きを経ることで時間のロスとなるが、雇用関係を存続したままで争われる紛争については、調停前置を採用すべき紛争内容を類型化しておくことは考えられる。
 職権による付調停については、労働事件に係る裁判制度の在り方を検討してから議論することが必要ではないか。

○ 一部の裁判所では、労働事件についても付調停を行っているようである。例えば、社会保険労務士が調停委員として加わって、賃金計算を行ったりしている。したがって、付調停を全く否定する必要はなく、事件に応じて選択の幅があってもよいのではないか。

イ 調停の成立を促進するための仕組み(資料66 6)

○ 賃金不払い等の簡易な紛争については、調停委員会が定める調停条項の制度や調停に代わる決定が活用されてよいと考えられる。しかし、一般条項の解釈が必要となるような紛争では、的確な事実認定と法令の解釈適用が必要であり、これらの制度の活用は適正手続の保障の観点から問題があるのではないか。

○ 調停に代わる決定は、異議の申立てがあったときには失効してしまうので、訴訟との関連で、提訴強制の可否等も含め、何らかの制度改善の工夫が必要ではないか。

○ 調停に代わる決定に強制的な効果を持たせることは憲法違反となるとの判例があるので、違憲とならない範囲内で、一定の効果を強める工夫の余地はあるのではないか。

○ 賃金不払い事件等では、債務額の確定により解決の方向性が示されることとなるいわゆる特定調停の場合と同様に、調停に代わる決定の活用の余地は相当あるだろう。しかし、決定の効力を現在以上に強めることには疑問がある。

○ 調停委員会が定める調停条項の制度や調停に代わる決定については、必要に応じて活用できることとすれば、意義があるのではないか。

○ 調停に代わる決定等の活用が有効か否かについては、調停委員会の権限如何によって決まってくるものと考えられる。したがって、調停委員会の権限の在り方とセットで議論する必要がある。

○ 調停委員の専門性の内容もかかわってくるだろう。賃金や残業手当の不払いといったテクニカルな事案については、特に簡易裁判所で行政OBや社会保険労務士等の人材を活用することができるだろう。
 また、基本的な事項に争いのない紛争であれば、運用上、調停に代わる決定を活用することはあると考えられる。

○ 経営側としては、紛争の解決にどのくらいの時間と費用がかかるかを考えることとなる。金銭面の問題であれば、労働調停で調停に代わる決定を出してもらうと解決しやすいだろう。

○ 簡易裁判所において、労働法に精通した弁護士、労使の実務家等を調停委員として参加させれば、賃金不払い事件等のテクニカルな事件では、いわゆる特定調停と同様に、調停に代わる決定は活用の余地があろう。
 しかし、一般条項の解釈が必要となるような事件では、訴訟になった場合に調停に代わる決定が書証として提出されると、裁判所の心証形成に影響を及ぼすおそれがあるので、調停に変わる決定の活用には反対である。
 重要なことは、調停が不成立の場合にはすぐに裁判を移行することができるようにすることであり、例えば、調停の期日についてのタイム・ターゲット等を努力目標として定める等すれば、調停事件を迅速に処理することができるだろう。

○ 現状で労働関係事件に民事調停が利用されていない理由としては、民事調停委員に労働関係の専門家が十分にそろっていないことが挙げられよう。
 賃金不払い等の調停事件には労働関係の専門家を関与させて当事者の納得を得られるようにしていくべきである。また、解雇等の重い事件も念頭に置いて、労使の専門家が関与してそれぞれの立場を踏まえて公正な意見を述べるようにしていく必要があるだろう。
 調停委員会が定める調停条項の制度や調停に代わる決定を活用する際には、専門家調停委員の意見を何らかの形で反映させることが必要であり、それによって、当事者がそれらの決定等に従うようになるのではないか。
 調停をだらだらと続けることは適当ではなく、例えば、手続のタイム・スケジュールをしっかりと考えて、運用上又は制度上、迅速処理義務のようなものを考えることもあり得るのではないか。

○ 労働調停は、労働法の知識や実務の状況を知っている専門家が関与することで使いやすくなると考えられる。日本弁護士連合会では労働法制委員会を立ち上げて様々な検討や提言をする場を設けたところであり、弁護士としても調停委員として参加する等して協力していきたい。

○ せっかく労働調停を行っても、調停が成立しなければ手続が無駄になってしまう。このため、調停が不成立の場合でも、調停委員会の見解を何らかの形で示せるようにしておいた方がよいのではないか。
 ところで、調停に代わる決定は「財産上の給付」以外に、雇用関係の確認等についても命じ得るのか。

△ 調べておく。

○ 解雇の有効性等の一般条項の解釈が必要な判断については、証拠調べを経た上で裁判により行うべきであり、調停に代わる決定で行うべきではない。

ウ 土地管轄(資料66 3)

○ 申立人の住所地での申立てについては、全国に支店等がある大企業であれば対応できるが、中小・零細企業では、解雇後帰郷した労働者が住所地で申し立てた場合には、現実問題として対応することが困難である。

○ 民事調停では、相手方の住所地で申し立てることが原則であり、紛争発生地での申立てであれば検討の余地はあるが、申立人の住所地での申立ては現実的ではない。

○ 解雇後生活に困窮し、やむを得ず帰郷する場合が考えられるので、申立人の住所地での申立てを認めることとし、零細企業等でどうしても出頭が困難な場合には過料の制裁を発動しないこととしてはどうか。労働者が実家に戻るというのはよくよくのことであり、使用者に過酷とまでは言えないのではないか。使用者が出頭できなければ調停不成立に終わるだけである。

○ わざわざ遠方から呼び寄せた労働者を気に入らないからといってすぐに解雇したような事件では、使用者側にも応分の負担を求めてもよいのではないか。

○ そのような事例では、使用者に金銭面で負担を増やす形で解決すればよいのではないか。あえて土地管轄で使用者に負担を強いるまでの必要はない

○ 労働者が労働調停を求めるような場合には通常代理人は付かないと考えられる。一方、使用者が代理人を付けることができるだろう。

○ 使用者も中小・零細企業では代理人を必ず付けるわけではない。先の例のように使用者がわざわざ労働者を連れてきたのであれば特別の配慮が必要かも知れないが、通常は労働者が故郷から都市部に出てきて就職していることが多いと考えられる。

○ 濫用的な調停の申立てであれば不出頭に対する過料の制裁が科されることはないだろう。労働者がやむを得ず実家に帰らざるを得なくなる場合は十分考えられるので、申立人の住所地での申立てを認めてよいのではないか。

○ 労働者は生活をしていかなければならないので、解雇後次の仕事に就いている場合もある。その場合、相手方の住所地では事実上調停を申し立てられなくなることもあり得る。

○ 中小・零細企業はたいへん厳しい状況にある。労働調停であえて申立人の住所地での土地管轄を認めるまでの特殊事情はないのではないか。

○ 複数人が同時に解雇され、それらの労働者がそれぞれ異なる住所地に居住することとなった場合、一か所で集中して調停を行うことや、移送等で工夫することは考えられないか。

○ 調停が成立するのであれば、金銭面の負担で労働者に配慮することも考えられるが、調停が不成立の場合にはどうしようもない。民事調停の原則を踏まえながら、何らかの工夫が必要ではないか。

○ テレビ会議による調停は可能か。現時点では、十分な施設が整備されていないので困難か。

○ 使用者側による労働調停の利用としては、雇用関係が継続している場合に、使用者が労働者の勤務している事業所の所在地で申し立てること等が考えられるだろう。

○ いろいろの事情がある労働者がいることは分かるが、民事調停の大原則を変えるまでの必要はないのではないのか。中小企業の関係者に聞いてみると、申立人の住所地での申立てへの対応は困難だということであった。

○ 例えば、工場の所在地での調停申立ては可能か。

○ それは可能と考えている。

○ 工場であっても、事務所の機能を備えていれば、その所在地での申立ては可能ではないか。

エ その他

○ 労働調停の費用負担を軽減するため、できる限り費用を安くすることも重要である。

○ 労働調停についての定型の申立書や訴訟へ移行する場合の定型の訴状様式を作成し、各種の相談窓口に備えてほしい。

○ 労働調停については、使いやすく、敷居の高くない制度であることを十分にPRすべきである。
調停委員の選び方については、労使の専門家以外にも、産業医や技術者等も含めたリストを用意しておくとよいのではないか。

□ 労働調停の対象とする紛争については、個別的紛争を中心とするが、それに限定するまでに必要はないとの議論であったが、争議行為等の労働関係調整法上の集団的紛争をどう扱うべきかについては、人材のリソースの活用の在り方も含めてなお検討が必要ではないか。

○ 労働委員会の紛争調整機能のレベルはかなり高いので、集団的紛争の調停は労働委員会が行えばよいのではないか。

○ 労働調停が利用されるか否かは専門家調停委員を確保できるかどうかにかかっている。弁護士会としても、労働法の知識を有する弁護士が調停委員として参画して役割を果たしていきたいと考えている。

○ 集団的紛争については、労働委員会の調整機能は高いと考えられる。ただし、労働委員会は各都道府県に一つしかないので、中小企業の紛争等の場合には労働委員会まで出て来るのが大変なこともある。

○ 集団的紛争については、簡易裁判所の労働調停で扱うよりも、労働委員会に任せた上で、労働委員会のアクセスを改善することが必要ではないか。

○ 労働局での紛争のあっせんにおいては、当事者が個人か労働組合かで対象を分けている。労働組合が当事者となる紛争については労働委員会で扱った方がよいと考えられる。

○ 個別的紛争については、労働局や労働委員会でも扱うようになってきたが、そこではあっせんまでの関与としている。裁判所による労働調停は、紛争の調停まで行おうとするものである。したがって、行政のADRと労働調停とのつながりを考える必要があろう。例えば、行政のADRで解決できなかった紛争については、当該行政機関が裁判所の労働調停を教示する等の連携が考えられる。そうすれば、比較的重い事件は裁判所で処理されるようになり、効率的な紛争解決が図られるのではないか。

○ 労働紛争に関するワンストップサービスを充実し、関係機関の紹介や各種申立書の用意、紛争の振り分け等ができるようになることが必要である。

○ 調停条項の内容を定型化していくことにより、ADRにおける紛争解決が用意になるのではないか。

○ 各ADR機関間で連携を図り、紛争解決のノウハウを共有化していくことが必要である。

□ 労働調停の調停委員の組み合わせとしては、常に労使が参加することが必要か、運用上の柔軟性を持たせることが必要か。

○ 労働調停を簡易裁判所と地方裁判所の両方で行うこととする場合には、紛争の仕分けを行い、簡易裁判所では労使双方を参加させなくてもよいが、重い事件を扱う地方裁判所では制度上労使双方が参加するように担保しておかないと制度が動かないのではないか。

○ 弁護士が調停委員になっている場合には、労働者側の弁護士であっても、使用者側の弁護士であっても、中立公平性に留意しつつ職務を行っている。したがって、単純な事件については、調停委員会の構成は、弁護士、社会保険労務士等1人と一般の民事調停委員1人という組み合わせでもよいのではないか。

○ 紛争の仕分けの問題が重要である。簡易裁判所で扱う単純な紛争では労使が必ずしも関与する必要はないが、地方裁判所で扱う解雇事案等では労使が関与して解決案を示すことが必要となろう。

○ 労働調停の調停委員は中立公平な第三者であるという立場をはっきりさせ、専門性を有する弁護士や労使から選べばよいが、実際の調停委員会に誰を参加させるかは具体的な事件によって異なってくるので、ある程度の数の人材を要しておかないと対応できないのではないか。

○ 必要となる専門家の人数は訴訟の在り方とも関連するが、専門性のレベルごとにどの程度の人数の人材を確保できるのかを把握する必要がある。

□ 労働調停について、地方裁判所を中心に考えるか、それとも、簡易裁判所を中心に考えるかを決めるに際して、確保できる人材の人数をつかんでおく必要があろう。

○ 難しいことにも対応できるような高度の専門性を有する人材になるほど、急激に減少すると思う。

○ 専門委員制度の活用や地方裁判所での調停の実施も視野に入れると、かなりの人数が必要となろう。確保できる人数については訴訟との関連も含めて考える必要があろう。

○ マンパワーの点については、法曹資格は有していないが労働組合の内部で法律に関する職務を行っている者に、調停の代理人となり得る権能を与えるかどうかという論点もある。
 現在、連合として、確保できる人材について検討しているが、仮に参審制を導入するとした場合でも、裁判に関与する者と調停委員で、それぞれ一つの役割に特化せずに考えることも必要ではないか。

○ 専門性に対する信頼を確保するためには、専門性らしさのようなものも重要である。例えば、労働調停の調停委員になる者について、弁護士会や労働組合で資格認定を行うことによって、専門性に対する信頼を担保する方策の検討も必要ではないか。

□ 専門性を有する人材を確保する仕組みについて、実現可能性も含めて検討する必要がある。

(2) 次回の日程

 次回(第13回)は、平成15年1月10日(金) 10:00~12:30に開催することとし、雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度の導入の当否についての検討を行うことを予定している。