労働関係事件への総合的な対応強化に係る検討すべき論点項目(中間的な整理)(資料88)中の「5 労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方について」の部分について、はじめに、熊谷委員から、資料94に基づいて説明が行われた後、次のような議論がなされた。(□:座長、○:委員)
○ 不当労働行為制度は、憲法上の労働基本権を保障するために設けられているものであるはずであるが、現在、その存在意義についての認識が充分でなくなっているのではないか。私法上の権利を行使する行為であっても不当労働行為になり得ると考えられるのであり、不当労働行為制度の意義をどう考えるのか再確認が必要である。団交拒否事件の審査に何年もかかっているようでは、労働委員会の2審構造や存続自体も問われかねないのであり、危機感を持って対応すべきである。
「事実上の5審制」の問題については、1つの事件に関して5回も関所を通過させることが本当に妥当なのか。労働委員会の審査はラフで不十分であるとか、裁判所の判断は個々の事件は解決しても紛争全体の解決にはつながらない等と、互いに批判し合うだけでなく、労働委員会と裁判所の双方が、それぞれどのような取り組みが必要かを考え、改善の努力をすべきではないか。
○ 不当労働行為事件では、労働委員会の初審・再審査で6年、最高裁まで争われると10年以上かかることもある。これでは、憲法や労働組合法上の団結権を保障するという不当労働行為制度の趣旨を没却することになる。まずは、こうした現状を改善すべきという共通認識を持つことが必要である。
特に最近は不況に伴い、労働組合を結成しようとする労働者側の動きが高まっているが、こうした中で組合つぶしを図る不当労働行為に対して、労働委員会が十分な機能を果たせていない。こうした現状の認識、改革の必要性について認識を共通化できるのではないか。
○ 労使関係は継続的な関係であるから、労働委員会は、三者構成であることもあって、判定的な機能よりも、むしろ調整的な機能の面で大きな役割を果たしている。判定的な機能については、救済命令の取消率が高いこと等のために判定の公平性への疑問も指摘されており、労働委員会の限界を示しているのではないか。裁判に匹敵する審査手続とするためには、公益委員の常勤化や事務局の専門性の向上等が必要であるが、実現の可能性を考えると現実的ではないのではないか。
したがって、労働委員会については、当事者主義的な運営を基本としつつ、調整的な機能を重視していくことがよいのではないか。また、裁判との関係については、審級省略ではなく、むしろ、労働委員会制度の中で審査の迅速化の在り方等を考えるべきである。例えば、代理人との日程調整についての工夫や、和解になじむか否かを早期に見極めて互譲による解決を促進すること等が必要ではないか。
○ 純粋に研究者として考えてみると、不当労働行為の審査制度は、昭和24年の労働組合法改正により導入されたが、当初の案では、救済命令についての裁判所への認証請求とその認証に対する抗告の制度とされ、GHQは実質的証拠法則が認められているアメリカのNLRBと同様のものを想定していたようであるが、結局は、旧労働組合法で三者構成で調整手続が行われていたこと等と合わせて、大陸法的な取消訴訟制度を採用した不当労働行為審査制度が導入されることとなった。このように、多様な外国の制度を継ぎ合わせていったことが問題であったと考えられる。
不当労働行為審査制度は、通常の行政処分と異なり、審問手続を経ており、こうした手続にも司法審査が完全に及ぶということについてどう考えるべきか、十分な検討が必要ではないか。
○ 救済命令の取消訴訟の審理期間は、なお2年弱かかっており短いとは言えないが、徐々に改善しつつある。しかし、救済命令の取消訴訟の審理に、このように時間がかかるのは、労働委員会の審査に問題があるからだと考えられる。審査が十分に整理されておらず、訴訟手続において記録を整理して仕分けるには多大なエネルギーが必要となっている。まず、労働委員会の審査の現状を改善すべきである。
また、基本的な事実認定や労働組合法第7条の解釈・判断として適当と思われない救済命令もあり、命令の事実認定及び判断の両面をもう少し適切に行ってほしい。
労働委員会の審理の長期化、判断の問題点について、どう克服するかが課題であり、それにより裁判所の審理もよくなっていくと考えられる。
○ 厚生労働省の研究会においても、公益委員や事務局体制の充実強化の方策として、公益委員の常勤化や事務局での法曹有資格者の活用等が議論になっている。現時点で、その可否を言うことはできないが、私としては十分検討に値するものと考えている。
○ 申し立てられる事件がほとんどない地方労働委員会では、公益委員の常勤化等が現実に可能か疑問である。また、ほとんど事件のない労働委員会には、労働関係についての十分な専門性があるとも考えがたい。
労働委員会は、継続的な労使関係の正常化を図るところに意義があるのであり、審査の迅速化を図ることで、一層労使関係の正常化に貢献すべきである。その際には、和解が可能か否かについての事件の仕分けを行うことが重要である。制度論よりもむしろ、事件の仕分けを行い、手続の計画的な整理を行うことで、審査の迅速化を図れるのではないか。
○ 労働委員会制度は、労使関係の正常化を目指すことが目的ではあるが、労働組合結成段階での組合つぶし、差別的取扱い、企業再編にからむ事案等、調整的手続では解決できない事案もある。この場合には、迅速な判定的解決を求めざるを得ない。
労働委員会の審査期間については、和解により長期化しているものもある。確かにいたずらに和解を続けることは避けるべきであるが、審査期間については終結事件全体の期間のみで見ることは適当ではないのではないか。
中央労働委員会の審査体制は裁判所に匹敵しており、専門性も十分に高いと考えられる。むしろ、裁判所は事件に関する私法上の権利義務関係のみを見て、労使関係に対する全体的な見方がおろそかになりがちではないかと思う。裁判所は労働委員会の専門性を尊重していくことが必要である。
また、労働委員会も、専門性の向上や公益委員の常勤化等に努力すべきである。日弁連としても、弁護士の専門性の強化に主体的に取り組みたいと考えており、労働委員会に対する専門的な人材の供給源として役に立てるのではないか。
不当労働行為審査制度については、厚生労働省と日弁連との協議の場を設けていただきたいとともに、裁判所と労働委員会の考え方に相違があることは適当ではないので、労働委員会と裁判所との協議も再開してもらいたい。
○ 救済命令の取消訴訟における一部取消といっても、実質的には判断の変更がされていないものもあり、取消率についてはもう少し精査すべきではないか。
□ 労働委員会の審査は、大量のJR関係事件の負担により、大幅な遅延が生じていたが、最近はかなり改善されてきたのではないか。滞留していた事件があると一時的には既済事件の審査期間は長くなってしまう。
○ 確かに最近では不当労働行為の審査は比較的短期間で処理されるものが多くなっているように思われる。
裁判所と労働委員会では、労働組合法第7条の解釈に違いがあるというよりも、実際は事実認定の点に違いがあるのではないか。条文の解釈にそれほど違いがあるとは思われない。
○ 救済命令の取消率が年によって大きく異なるのは、事案の違いがあること、そもそも母集団となる取消訴訟の提起件数が少ないことに起因するのではないか。
○ 労働委員会の調整的な機能は、その判定的な機能なくしては、十分に発揮することは難しいのではないか。調整的な機能の実質をいかすためには、判定的な機能が必要である。
問題は、審査手続において和解が当事者のガス抜きとして進められ、和解が成立せずいざ判定をしようとした場合に、証拠調べ等が十分になされていなかったといった状況になることであろう。しかし、調整的な機能を発揮するためには、判定的な機能も必要であり、両者をどのように整合的に設計していくかが課題である。
また、事件のない地方労働委員会の専門性を高めることは難しく、そのためには相当制度を改善することが必要であろう。
○ 判定的な機能が不要であると言っているのではなく、労働委員会制度の主たる役割が調整的な機能にあるという趣旨である。救済命令が出されたり、取消訴訟で命令が維持されたりした結果、当事者が納得することがあることを否定するものではない。
○ 労働委員会には、別途労働関係調整法に基づく調整機能があるが、労働組合法第7条違反については、基本的には判定機能が中心である。その際に、労使関係の正常化を目指す判断が含まれ得ることは否定しないが、不当労働行為に関するルールが定着しておらず、この点を明確化すべきである。
○ 和解ではその性質上弱い方にしわ寄せが来ることとなる。使用者側は時間がかかっても対応が可能であるが、労働者側は時間がかかると音を上げることになる。判定的な機能がないと和解もうまくいかないのであり、判定的な機能は最も肝心なところである。
○ 最終的にどのような救済命令を出すかという判定的なところを考えないと、公正な和解による解決にはならないのではないか。背後に控える救済命令という判定結果を踏まえながら進めないと、和解もできないのではないか。
○ 裁判では、判決による結論がどうなりそうかを踏まえながら、和解を進めるが、労働委員会では必ずしもそうではない。
○ 訴訟事件では、紛争の実態を請求の内容がうまく代表しているのが通常であろうが、労働委員会の場合、争われている内容と紛争の実態とがうまく一致していないことがある。
○ 例えば、使用者側が労働法令の無知のため労働者側に対して強く出てくるような場合、次第に知識を得ることで労働組合を認めていくようになると、救済命令によるよりも、むしろ調整的な機能によって団体交渉のルールを作られていき、和解で解決するということもある。
□ 労働関係調整法に基づく労働委員会の調整機能はよく機能しているが、不当労働行為の審査については、労使の参与委員が加わることにより、労使関係の正常化を目指した和解手続が中心となり、しかも、それが審査手続と一体となって行われるようになっていった。審問は審問、和解は和解として行っていけばよいので、和解を制度上位置付けるということはよく分かる議論であると思う。
○ 裁判所では、不当労働行為に関する一般的な見方について、何らかの研修のための資料のようなものを作成しているのか。
○ そのようなものはないが、労働組合法等に関する書物もたくさん出ているので、そうした書物を読みながら裁判に臨んでいる。また、研修や労働専門部の内部等でも議論をする等している。しかし、具体的な事件で、どの部分に重点を置いて判断すべきかは事案によって異なり、書物どおりになるものではない。
○ 労働委員会と裁判所とでは、生の事実についての認定が異なっているのか、それとも、生の間接事実を積み上げていった上での事実の推認が異なっているのか。
○ ケースバイケースである。不当労働行為の前提となる事実について、ある証拠を採用することの妥当性について判断が異なることもある。
○ 裁判所と労働委員会で事実の見方について違いがあるとすれば、それは裁判段階で新しい証拠が出るからか。そうだとすれば、労働委員会での審査の段階で全ての証拠が出るようにすることが重要である。それとも、同じ証拠であっても、見方が異なるのか。そうだとすれば、評価の仕方が異なるのであろうか。疎明や証明の要求の程度、総合評価を行う判断基準が異なるのであれば、それらを統一してもらいたい。裁判所が当事者間の私法上の権利義務関係を分析的に見るのに対して、労働委員会は労使関係全体を見て経験則に基づいて認定・判断をするのであれば、裁判所が労働委員会の判断を尊重するよう、審級省略や実質的証拠法則等を検討することは重要である。
また、人証調べについては、地方労働委員会の段階では、有効な反対尋問も可能であるが、中央労働委員会・地方裁判所と経るに従って、十分に反対尋問を想定した証言がなされるようになり、新鮮な心証が取れなくなる。この点でも、5審制には問題があろう。
○ 事実認定について、裁判所と労働委員会で異なる理由としては、裁判段階で新証拠が提出されることもあれば、反対の事実を示す証拠がある場合等で、証拠について見方の違いがあることもあり、様々である。しかし、労働組合法第7条の解釈について、大きな相違があるとは考えていない。
労働委員会の救済命令の書き方については、現在は争いのある部分について労働委員会から証拠を提出してもらっているが、それでもなぜそのような事実認定ができるのか疑問となる部分もあり、説得力に欠けるところがある。最終的には取消訴訟になるという意識で、救済命令の事実認定や判断に意を用いてもらいたい。
○ 救済命令の書き方については、事実認定のプロセスの判示の在り方等について問題を感じている。行政処分である救済命令においてどの程度詳細に記載すべきか、救済命令をどう位置付けるかといった議論があろう。
○ 裁判段階で初めて新しい証拠が提出されるという点については、使用者側としても地方労働委員会の段階から勝ちたいと考えており、通常は、訴訟の段階まであえて証拠を出さないということは考えられない。
ただ、事件処理の途中で代理人が交替した場合には、新たな代理人が従来までと異なった角度から事件を見て、新しい証拠を提出することはある。また、救済命令の中に、予測もしなかった事実認定がなされている場合があり、それを覆すために新たな証拠を提出するということはある。
しかし、新証拠の提出を制限しなければならないほど、労働委員会の段階で証拠が提出されていないということはないのではないか。
○ 中には、労働委員会の段階で当然提出されていてもよかったと思われる証拠が取消訴訟の段階で初めて提出されたという事件もあった。当事者が命令内容を見た上で当該証拠を出すか否か判断したということではあろうが、労働委員会の審査段階で適切に提出させることができたのではないかとも思われる。裁判所であれば、訴訟指揮により、そのような証拠の提出を示唆すると思われ、労働委員会での審査の指揮の在り方の問題ではないか。
○ 地方労働委員会の段階で、証拠の提出を求めても提出してもらえなかったという場合もあると聞いている。裁判段階での新証拠の提出について、全く制約がないと、何のための審査手続かよく分からないことにもなる。個人的には、信義則に反する新証拠の提出を制限する制度を作ることはあり得るのではないかと思う。
また、実質的証拠法則が設けられていれば当然に新証拠の提出は制限されると考えられるが、新証拠の提出制限が設けられても、必ずしも実質的証拠法則が導入されることにはならないと考えられる。
○ 私法上は有効といえる行為でも、労使関係の推移等から見て不当労働行為となり得る部分もあると考えられる。私法的な考え方に労働委員会が歩み寄れというのは労働組合法の精神を没却するものではないか。
また、中央労働委員会の審査体制にかんがみれば、裁判所の一審に対する代替性は十分にあると考えられる。
○ 労働委員会の審査の全てがよくないと言っているわけではなく、労働委員会制度の役割を否定するつもりもない。
しかし、労働委員会制度の現状がこれでよいというコンセンサスはないようであり、そのコンセンサスが得られるよう改善を図ることがまず出発点だと思う。その上で、裁判所として改善すべきところは改善することが必要だと考えられる。
○ 裁判所と労働委員会の双方がどのような改善の努力をしていくべきかを議論することが必要である。裁判所、労働委員会の双方が、それぞれ労働委員会、裁判所に対して、改善点について注文を出す等して、踏み込んだ議論をしてもらいたい。現実に、5審制により決着まで10年以上かかって苦しんでいる者がいることに留意することが必要である。
○ 5審制や事件処理の長期化の問題点については当検討会で共通の認識があるのではないか。よくない点をきちんと改善していくのであれば、必ずしも5審制とする必要はないのではないか。
○ 労働委員会の審理の当否を判断するのが裁判所の役割である。まずは、労働委員会が十分に争点や証拠を整理して、証拠調べをきちんと行っていくのであれば、それを踏まえて、裁判所も効率的な判断が可能になると考えられる。労働委員会の審査が相当変われば、裁判所の審理も短縮していくのであり、労働委員会はそうした努力をしてもらいたい。
○ 労働委員会としても問題は認識しており、内部でも議論している。
□ これまでの議論では、大がかりな審査体制等の改革よりも、審査手続の改善が特に必要であるとの御意見が多かったように見受けられる。
○ 裁判所に近い審査体制を整備し、準司法機関としての専門能力を高めないと、労働委員会の救済命令について審級省略や実質的証拠法則を導入することは困難と考えられる。これらの制度を労働委員会に導入するには、非常勤で労働法の専門家でもない者が公益委員となっている審査体制や法曹有資格者や経験者が十分ではない事務局体制では不十分であり、専門性のある人材の確保して、労働委員会の専門性を高めることについて制度的な担保をする必要があると考えられる。
地方労働委員会については、地方分権化に伴い、統一的に考えることは困難であるから、まずは中央労働委員会の審査手続について検討することとしてはどうか。
また、取消訴訟における新主張・新証拠の提出制限については、必ずしも労働委員会の専門性とは関連させなくても議論できるのではないか。
○ 地方労働委員会と中央労働委員会の間でも、同じような証拠調べを重ねて実施している場合があるようであり、例えば、地方労働委員会と中央労働委員会の間でも実質的証拠法則を導入するといったことも考えられるのではないか。労働委員会レベルでの審査の在り方についても検討すべきであろう。
○ 中央労働委員会では審問自体は2,3回であり、主に和解や命令書作成段階で長期化していると考えられる。
また、判定的機能に係るルールを行政レベルでどこが統一して打ち出すべきかについての役割分担の議論はなされている。
○ 労働委員会の専門性に対する現状の信頼度を考えると、専門性のあるスタッフを採用し、研修を実施する等しないと、労働委員会において専門家が育ちにくいのではないか。
○ 地方分権が進む中で難しいのかも知れないが、複数の地方労働委員会をまとめ、又は中央労働委員会を分散する等して、労働委員会をブロック化することにより、専門性の充実を図ることはできないか。
○ 専門性には、労使関係についての専門性と法令の適用についての専門性があり、労働委員会の事務局には後者の専門性が特に重要である。地方労働委員会に専門的な人材を入れることも必要であるが、地方自治体のローテーション人事を前提としても、法令の適用についての専門性は各行政分野で役立つので、こうした能力の向上に努めるべきではないか。
○ 労働委員会へのアクセスの問題はあるが、労働委員会のブロック化については検討してもらいたい。
また、法律に関する専門的人材として、法曹有資格者を活用してほしい。
裁判所と労働委員会のコミュニケーションが不十分だと思うので、裁判所と労働委員会、日弁連と厚生労働省の間の協議の場を設けるようにしてほしい。
○ 東京と大阪の地方労働委員会以外の地方労働委員会で救済命令の取消訴訟はどのくらいあるのか。地方労働委員会だけでなく、地方裁判所の専門性についても検討すべきである。
○ 取消訴訟の多くは東京都の地方労働委員会の事件であると承知している。
○ 労働委員会の審査手続がどの程度のレベルであれば、例えば実質的証拠法則の導入が可能かといった相関関係を考えてもらいたい。
○ 現時点で何ができるかというと、制度の見直しは難しいのではないか。まずは、運用の改善に努めるべきではないか。例えば、労働委員会の期日は入りにくいので、とりあえずは、その点から改善することで審査期間が短縮していくのではないか。
○ 労働委員会の審査の早めの段階で様々な事情が生じるというが、むしろ、初期の段階である程度争点等の整理をしていくことが審査委員には求められるのではないか。それがルーズなため、五月雨式の主張・立証を認めてしまい、手続が長期化していくのではないか。
○ 労働委員会の救済命令の実効性を確保するため、命令履行の勧告や緊急命令の在り方について検討することが必要である。アメリカのNLRBでは、審査期間中に暫定的な措置命令を求めることが可能となっており、紛争解決上、このような制度を検討してもよいのではないか。
○ とりあえずといった議論では、結局改善は進まない。ステップ・バイ・ステップで改善するにせよ、例えば、審級省略の導入を目指す等のターゲットを設定して行うべきである。
○ 労働委員会においても、審査期間について一定の目標を定めておくことはあり得るのではないか。
○ 労働委員会では十分すぎるほど主張・立証を行っている。また、救済命令の取消率も精査すればそれほど高いというわけではないのではないか。そうであれば、5審制を放置する必然性はなく、制度改革を実現するための前提条件を十分議論すべきである。
○ 例えば、労働委員会での審査が長期化している場合には、その点についての訴訟を提起できるようにすることは考えられないか。
昭和57年及び平成10年の労使関係法研究会の報告書も提言していることは同じことである。せっかくの提言もすぐに棚上げにされてしまうのは、関係者の怠慢ではないか。
□ 報告書が出された後、大量のJR関係事件が申し立てられたり、労使の意見が一致しなかったりしたため、容易に改善を実現できなかったのであり、関係者の怠慢ということではない。
○ 不当労働行為審査制度について当事者が不満を持っている問題点を把握して、今度こそ本腰を入れて労働委員会の改善に努力してもらいたい。裁判所としても協力できることは協力していきたい。