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労働検討会(第2回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり



1 日時
平成14年3月25日(月)13:30~17:30

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)菅野和夫座長、石嵜信憲、鵜飼良昭、岡崎淳一、春日偉知郎、後藤博、髙木剛、村中孝史、矢野弘典、山川隆一、山口幸雄(敬称略)
(説明者)
高﨑 真一(厚生労働省地方課労働紛争処理業務室長)
田村  定(厚生労働省地方課労働紛争処理業務室長補佐)
根岸 克子(東京労働局総務部企画室長)
村山  隆(東京労働局総務部企画室労働紛争調整官)
山口浩一郎(中央労働委員会会長)
藤田 耕三(東京都地方労働委員会会長)
(事務局)山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、大野恒太郎事務局次長、齊藤友嘉参事官、近藤昌昭参事官

4 議題
1.労働関係紛争処理制度の現状等に関するヒアリング(1)
  • 厚生労働省からのヒアリング
  • 労働委員会からのヒアリング
2.当面の検討スケジュールについて
3.その他

5 配布資料
資料6厚生労働省ヒアリング資料
資料7中央労働委員会ヒアリング資料
資料8東京都地方労働委員会ヒアリング資料
資料9司法制度改革推進計画
資料10当面の検討スケジュール-たたき台-
資料11ヒアリングの進め方について-たたき台-

6 議事

(1)厚生労働省からのヒアリング
 厚生労働省及び東京労働局から資料6に基づいて説明がなされた。これに対して、次のような質疑がなされた。(○:委員、●:説明者)

○東京労働局における助言・指導及びあっせんの打切りの理由は何か。

●本制度は紛争の両当事者が任意に利用していただくことが必要である。したがって、例えば、労働者から相談が寄せられ、労働局が事業主に来局を依頼した場合において、事業主から「民事上の紛争について労働局から助言・指導を受けるつもりはない」等と言われると打ち切ることとなる。
 また、手続の途中であっても、「今後は裁判で争うので、これ以上手続を進めてほしくない」等と言われると打ち切ることとなる。
 あっせんについても、他方当事者から不参加の意思表示があった場合には打ち切ることとなる。
 また、手続の途中であっても、「今後は裁判で争う」等と言われたり、紛争の両当事者の歩み寄りがない場合には打ち切ることとなる。

○助言・指導の手続において、事実関係の調査はどのように行うのか。

●紛争の両当事者から事情を聞くが、食い違うことも多い。労働局ではある事実が法律上どのように評価されるかは判定するが、証拠に基づく事実認定までは行わないので、食い違いがある場合には、手続を打ち切らざるを得ない。

○助言・指導はどのように行うのか。

●助言は口頭又は文書で行う。指導は文書で行う。

○東京労働局の弁護士出身の労働関係紛争担当参与については、どのように選任しているのか。また、その者の専門性の検証はどうしているのか。

●厚生労働省本省から選任基準を各労働局に示している。

○東京労働局の弁護士出身の参与は弁護士会の推薦に基づいて選任しているのか。

●否。東京労働局において以前から労働条件相談コーナーを担当してもらっている弁護士にお願いしている。

○あっせんでは2か月以内の処理が多いが、この短期間でどの程度事実を調査するのか。

●労働局としては、簡易・迅速な解決を目指しており、詳細に事実を調査するのではなく、あっせんに入る前提として、紛争内容についてあっせんの当日、当事者からその場で言っていただく。

○参与の制度は従前からあったのか。

●平成10年10月に労働条件をめぐる紛争についての助言・指導制度を始めたときからあった。

○助言・指導で処理するものとあっせんで処理するものの振り分けはどのようにしているのか。

●助言・指導で処理するか、あっせんで処理するかは申請者の意向による。一般に、金銭による解決を図るのであればあっせんによることとなろう。

○解決の方向をにらんで、どちらの手続がよいか労働局がアドバイスするのか。

●そうだ。

○事案の処理のためのマニュアルはあるのか。

●マニュアルはないが、研修等において事例を交えて説明するなどしている。

○助言・指導による紛争解決事例にはどのようなものがあるか。

●例えば、解雇を撤回し、再度働いてもらうこととなった事例もある。

○紛争内容は統計的に調べてもらえるのか。

●労働局での手続は非公開で行っており、個々の事例は公開していないが、プライバシーに配慮しながら好事例集を作成するなどする。

○労働局の行った助言・指導が裁判で否定されることも想定しているか。

●あり得ることと思う。

○厚生労働省としては、相談件数に対してどのくらい紛争が解決しているかを把握しているか。

●相談のあった事案について、最終的にどのような結果になったかを追跡調査することまでは適当でないので、把握していない。ただ、相談に対応したことで解決につながった事案も多いのではないかと思う。また、取下げ事案でも、手続への申請を契機として解決されたもの等もあるのではないか。

○個別労働紛争解決制度は、紛争解決のためのチャンネルとして実効性を発揮しているか。

●制度立ち上げ後半年を経て、制度が認知されつつあるとともに、これまでの処理が問題となった事例も特に聴いていないので、一定の信用を得て役割を果たしていると考えており、今後もそうなるよう期待している。

○助言・指導について、労働関係紛争担当参与の意見を聴いているというが、そのようにして行った判断について疑義が提起された場合どのように対応しているのか。

●助言・指導には強制力はないので、労働局の処理に不満であればさらに別の紛争処理制度を利用することとなるのは当然である。労働局では所定のプロセスを経て助言・指導を行っており、それを受け入れるかどうかは当事者の判断である。

○東京労働局としては、総合労働相談コーナーに寄せられた相談件数全体について、労働組合が関与しているものがどの程度あるか把握しているか。また、労働組合が関与しているか否かで相談内容等に有意な違いがあるか。

●相談件数全体についての労働組合の関与の状況等については、統計をとっていない。

○相談員や紛争調整委員会委員は期待される能力を発揮しているか。

●相談員はあっせんというものについて初めての人が多いので、あっせんというものを理解してもらうことがまだ十分ではないと思うが、ケーススタディ等で研修をしていけばよいのではないか。また、紛争調整委員会委員も当初はあっせんの塩梅が分からなかったが、最近は10~20日程度で解決できるものも出てきており、スキルアップしてきたのではないか。紛争調整委員会委員の中から意見交換会を開いてほしいとの意見もあり、これからはそうしたことも実施していきたい。

○民間出身の相談員等の中には労働組合の経験者もいるのか。

●相談員等に労働組合の経験者がいるかどうかについては集計していないが、大阪労働局の紛争調整委員会委員1名は地方労働委員会の労働者委員を務めていた者であると聴いている。

○助言・指導は「判定型」だというが、いわゆる「判定型のADR」ということではなく、要は事実関係を聴いた上で、一定の方向性を示すというものである。

○事実の調査においては、資料の提供を求めているのか。

●助言・指導では、紛争の相手方に来局を依頼するときに、就業規則、辞令、タイムカード等を持参していただくようお願いするが、強制する権限はないので、話に乗っていただける範囲で行っている。
 あっせんでは、相手方が手続への参加に同意しているからあっせん手続に入っているのであり、相手方も主張したいことがあるので、何らかの資料を提出していただける。

○解雇の事案では、解雇理由を事業主に確認してほしい。また、あっせんによる解決を図る部分と監督署による監督で対応する部分の分水嶺をはっきりさせてほしい。
 相談者のプライバシーを守るため、相談コーナーには囲いを設けてほしい。また、相談員を常駐させるようにしてほしい。

○関係機関との連携については、裁判所も是非関与したいのでよろしくお願いする。

○弁護士会もお願いしたい。

●あっせんと監督署の役割が重複することはないが、制度上の役割分担をさらに徹底していきたい。予算面の制約はあるが、随時制度の充実整備に努めていきたい。また、関係機関との連絡協議会については、歓迎であるので、各局を通じて声をかけさせていただきたい。

○相談コーナーが労働刑法を扱う監督署にあることが使用者の利用を妨げていると思う。

●今後、駅ビル等への相談コーナーの設置について、重点を置いていきたい。

●東京労働局の場合、事業主からの相談も多くなってきている。

○あっせんを労働局で行ってもよいこととしたのは、労働基準の監督とあっせんをはっきり区別することが前提である。相談員もその辺を念頭に置いてほしい。

(2)労働委員会からのヒアリング
 中央労働委員会(以下「中労委」という。)から資料7に基づいて、また、東京都地方労働委員会(以下「都労委」という。)から資料8に基づいて説明がなされた。これに対して、次のような質疑がなされた。(○:委員、●:説明者、□:事務局)

○公益委員の常勤化はこれまで行われなかったのか。また、その理由は何か。

●これまで常勤化が強くは議論されなかったのは事実だが、その理由は承知していない。個人的には、常勤化よりも事務局の強化が先決ではないかと思う。

●常勤化するとなると人材の確保が難しいのではないか。
 労働事件は労使の対立が激しく、また、法律家でない公益委員もいることから、一部の公益委員を常勤化して複数の公益委員で事件を担当できるとよいと思う。

○命令の起案は事務局職員が行うとのことだが、公益委員が命令を起案しないのは、時間がないからか、それとも、行政処分なので厳密な命令はいらないため職員の起案で十分だからか。

●中労委では調整事件もにらんで委員を任命するので、法律家以外の公益委員もおり、公益委員による命令の起案には難しい面がある。しかし、公益委員は事務局職員の起案したものをよく見て手を入れており、職員の起案したものがそのまま公益委員会議に出されるわけではない。

●都労委でも、公益委員と事務局職員が合議して、公益委員が指示を与えつつ命令案を作っていく。

○都労委の命令に対して取消訴訟が提起された件数はどのくらいか。

●件数は少なく、地方裁判所に5件、高等裁判所に1件係属している。
 その訴訟代理人は、弁護士出身の公益委員1名と職員1名ずつにお願いしているが、必ずしも当該事件を処理した公益委員とは限らない。現時点では、弁護士出身の公益委員5名で訴訟代理人が特に足りないということはない。

○取消訴訟の在り方については、裁判所も労働委員会も問題点の所在を分かっていながら、相互に怠慢になっているように思うがどうか。

●怠慢ということではなく、現在、全国労働委員会連絡協議会(以下「全労委」という。)でも都労委でも審査手続の改善を進めていこうとしている。司法制度改革審議会では、労働委員会の在り方を考えた上で、審級省略、実質的証拠法則の導入等の裁判の在り方について考えるべきと申し上げたが、労働委員会における証拠調べに信用がない中で、司法の場で緻密な証拠調べを行うのは高等裁判所ではなく地方裁判所であるから、審級省略を考えるのであれば、むしろ高等裁判所を省略するようなことも考えられるのではないか。

○労働委員会と裁判所で、証拠調べの程度に違いはあるのか。

●労働委員会と裁判所では権限が異なるが、事実認定の質的な中身は変わらないのではないかと思う。

○労働委員会に出される証拠と裁判所に出される証拠の量が異なるのか。

○裁判で出される証拠は、労働委員会で出されたものが大半である。しかし、認定した事実の見方、評価が裁判所と労働委員会では異なるのではないか。証拠の量の問題ではなく、事件の見方の問題ではないか。

○利用者から見ると、いわゆる5審制では使いにくい。審級省略や実質的証拠法則の導入ができるようになるためには、労働委員会の審査の在り方についてどのような条件を満たすことが必要と考えるか。

●1つには、裁判所は要件事実というものの見方をしているが、労働委員会もそこをわきまえて、そうした手法を使わなければならないのではないかと思う。
 2つには、中労委は裁判所を念頭に置いて命令を作成しているので、事実認定では違いが少ないが、事実の見方、評価では裁判所と異なっている。そこには労働事件の専門性の問題がある。裁判所は労働事件には専門性はないと考え、通常の民事事件と同じように見ているが、労働委員会の実務から見ると、労使の現場には様々な慣習がある。裁判所に労働事件の専門性を認めていただくことが必要ではないか。

●現在、審級省略や実質的証拠法則は、電波監理審議会の手続等法律以外の分野の知識が必要なものについて採用されている。裁判所は、組合差別の発言の有無等労働事件についての認定・判断には、法律以外の分野の専門的知識は必要ないと考えているようだ。

○全国の地方労働委員会の中には、年間の事件数が1,2件というところもある。審級省略等は全国レベルで考えることが必要であるが、中労委については審級省略の議論があり得ても、全国の各地方労働委員会の命令の取消訴訟について審級省略を行うことは考えられないのではないか。

●その点については、現在、全労委で意見を取りまとめているところである。

○労働事件の専門性の活用ということでは、労使の参与委員の役割が大きいのではないか。

●和解での労使の参与委員の役割は大きいが、紛争当事者には参与委員は自分たちの利益の代弁者であるとの意識が大きい。参与委員も当事者の考えを無視できないから、紛争当事者の意識改革を行っていくことも必要である。

○労働組合法第7条では要件は簡単に規定してあるが、これについて個別の事件での争点は何か。また、争点を見出すにはどうするのか。

●争点は規範的構成要件を構成する具体的事実の認否の問題であるが、労働事件では、人事訴訟同様、そうした事実が数多くあるため、争点整理が複雑多様になる。

○事案の処理に際しては、審査委員と事務局職員のコンビネーションが重要であるが、これらの者の間でどの程度合議を行っているのか。裁判では、期日間や期日終了後に合議を行って心証形成をしている。

●都労委では、証拠調べが終わった後に公益委員室で職員と合議を行うほか、審問前に担当職員が事案の説明を行うなど事前の合議も行っている。

●中労委でも、都労委と同様に、期日終了後に意見交換等を行っている。

○裁判所と労働委員会の間での事実の見方、評価の相違を解消し、同じように判断することが必要である。裁判所と労働委員会との会議、出向による人事交流、労働委員会での法曹の活用等が必要ではないか。

●労働委員会も長年の経験に基づいて判断を行っているので信用してほしい。裁判所は労働委員会の判断を前提にしてその是非を判断するのではなく、自ら当該事件を白地から判断している。

●同一の事件を労働委員会にも裁判所にも申し立てることができるので、裁判所としては自らの事件として処理したくなるのだろう。労働委員会と裁判所で相互に理解を深めることが必要である。

□労働委員会における参与委員の関与の在り方はどのようであるか。

●争点整理は公益委員のリーダーシップの下に行っているので、労使の参与委員の関与によってそれがゆがむということはないと思う。

●調査・審問において、参与委員が紛争当事者の代弁者的になることはあるが、それによって審問が変な方向に進むということはない。
 争点を的確に整理し、立証事項の選択を行うには高度の知識経験が必要であり、法律家の公益委員と法律家以外の公益委員の複数の委員で事案を処理する方がよい。

(3)司法制度改革推進計画
 事務局から、司法制度改革推進計画(資料9)について説明がなされた。

(4)当面の検討スケジュール
 事務局から、資料10及び資料11に基づいて説明がなされた。これに対して、次のような質疑がなされた。(◎:座長、○:委員、□:事務局)

○仲裁センターからのヒアリングに関しては、弁護士会の相談窓口での労働関係の相談はかなり増えているが、仲裁センターは労働紛争の解決システムとしては未だ不十分である。したがって、日本弁護士連合会から資料を出すことは可能であるが、ヒアリングは不要ではないか。
 また、社会保険労務士は労働争議に介入することが禁止されているとともに、紛争解決の実績もないことから、労働紛争の解決システムとしてヒアリングを行うことは適切ではないのではないか。

○8月に検討会を開催しないとすると、再来年の通常国会までに検討を終えることを考えれば、検討の終わりが詰まってしまうのではないか。そこで、例えば、次回と次々回の議題を1回で行うなど全般的に検討を前倒ししてはどうか。
 社会保険労務士については、意見を聴ける場があるのであれば、ヒアリングしてもよいのではないか。

○社会保険労務士は中小企業では実際上労働関係の相談を受けることが多い。例えば、使用者側として話を聴く機会があってもよいのではないか。

○それにしても、30分のヒアリングを行うのは長すぎるのではないか。

□社会保険労務士からのヒアリングについては、社会保険労務士と事前に相談しながら、ヒアリング事項、時間等について考えていきたい。
 また、検討を前倒しすることについては、1回の検討会の時間を長くすることやあらかじめ長期的に検討会の日程を確保することが考えられる。

○長期的に検討会の日程をあらかじめ入れておくことがよいのではないか。

◎8月に検討会を実施するかどうか、あらかじめ長期的に検討会の日程を確保するかどうか、検討会の間隔を詰めるかどうか等については、座長と事務局で相談させてもらいたい。

□裁判所に対するヒアリング事項等への意見があれば、4月中頃(できれば4月12日)までに御提出いただきたい。

(5)次回の日程
 次回(第3回)は、平成14年5月1日(水)14:00~17:30に開催することとし、裁判所からヒアリングを実施することを予定している。