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労働検討会(第2回)議事録



1 日 時
平成14年3月25日(月) 13:30 ~17:30

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 菅野和夫座長、石嵜信憲、鵜飼良昭、岡崎淳一、春日偉知郎、後藤博、髙木剛、村中孝史、矢野弘典、山川隆一、山口幸雄(敬称略)
(説明者) 高﨑 真一(厚生労働省地方課労働紛争処理業務室長)
田村  定(厚生労働省地方課労働紛争処理業務室長補佐)
根岸 克子(東京労働局総務部企画室長)
村山  隆(東京労働局総務部企画室労働紛争調整官)
山口浩一郎(中央労働委員会会長)
藤田 耕三(東京都地方労働委員会会長)
(事務局) 山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、大野恒太郎事務局次長、齊藤友嘉参事官、近藤昌昭参事官

4 議題
  1. 労働関係紛争処理制度の現状等に関するヒアリング(1)
    • 厚生労働省からのヒアリング
    • 労働委員会からのヒアリング
  2. 当面の検討スケジュールについて
  3. その他

5 議 事

○菅野座長 定刻になりましたので、第2回労働検討会を開会いたします。本日は、御多忙のところ御出席を賜りましてありがとうございます。
 議事に入ります前に、前回御欠席の石嵜委員と後藤委員が御出席でいらっしゃいますので、最初に一言ずつ自己紹介をお願いしたいと存じます。石嵜委員からお願いします。

○石嵜委員 前回は申し訳ありませんでした。弁護士の石嵜と申します。昭和53年に弁護士になって以来、使用者側の労働事件の代理人として一貫してこの仕事をしております。したがって、そう御理解いただければ早いと思います。
 今は、事務所に6人若い弁護士と事務員の女性が7人おりまして、経営者として日常の労務管理をやっておりまして、非常に悩んでおります。そういった立場から、いろんな発言をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○後藤委員 法務省民事局商事課長の後藤でございます。前回は失礼いたしました。民事局商事課は、商業登記と供託等を主に扱う部署でございまして、労働事件とは直接関係がございませんので、私、一法律家としてここに参加させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○菅野座長 どうもありがとうございます。次に、本日の配布資料の確認をお願いします。

○齊藤参事官 齊藤でございます。本日お配りしている資料は、資料6から資料11まででございます。
 資料6が、本日厚生労働省から説明をいただく説明資料でございます。
 資料7が、中央労働委員会からの説明資料でございます。
 資料8が、東京都地方労働委員会からの説明資料でございます。
 資料9が、司法制度改革推進計画でございます。先日、3月19日に閣議決定を経たものでございます。
 資料10が、当面の検討スケジュールのたたき台でございます。今日、後ほど御議論いただきたいと思います。
 資料11が、ヒアリングの進め方についてのたたき台でございます。これも後ほど御議論いただきたいと考えてございます。
 参考資料としてお配りしてございますのが、座席表、本日のヒアリング出席者の各ペーパーです。
 それから、労働省、現厚生労働省ですが、その労使関係法研究会報告の抜粋、昭和57年のものと平成10年のものをお配りしております。
 最後に、第1回の労働検討会の議事録を本日お配りしております。
 今日、お手元に配布の資料は以上でございます。

○菅野座長 よろしいでしょうか。それでは、本日の議題に入ります。本日は、厚生労働省、労働委員会からのヒアリングを行いたいと思います。まず、本日のヒアリングの進め方について、事務局からの説明をお願いします。

○齊藤参事官 本日は、まず厚生労働省の地方課労働紛争処理業務室の高﨑室長、田村室長補佐から、約20分程度御説明をいただきます。
 続いて、東京労働局総務部企画室の根岸室長、村山労働紛争調整官から、約20分程度御説明をいただきたいと存じます。
 その後で、質疑応答ないし意見交換の時間を45分程度取りたいと存じます。
 その後、10分程度の休憩を挟みまして、中央労働委員会の山口会長、東京都地方労働委員会の藤田会長から、それぞれ約20分程度ずつ御説明をいただきまして、その後質疑応答ないし意見交換の時間を同じく45分程度取りたいと考えております。
 本日のヒアリング事項等につきまして、あらかじめ委員の皆様から御意見をちょうだいしておりまして、ヒアリング対象者の方に事前にお伝えしております。その内容は、あらかじめ委員の皆様にもお送りしているとおりでございますので、御参照ください。
 ヒアリング時間等の関係で、委員の方々からちょうだいした御意見について、プレゼンテーションの中では十分説明し切れない事柄もあろうかと存じます。そのような事柄につきましては、適宜質疑応答ないし意見交換の中で触れていただければと存じます。
 先ほども申し上げましたが、本日は残りの約30分程度時間を取っておりますので、そこで当面のスケジュールとか、第3回以降のヒアリングの要領等についても御議論をいただく予定でおります。
 以上でございます。

○菅野座長 ただいまのような形で進行していきたいと存じます。
 最初に、厚生労働省からのヒアリングを行いたいと思います。
 本日は、厚生労働省の労働紛争処理業務室の高﨑室長、田村室長補佐、東京労働局総務部企画室の根岸室長、村山労働紛争調整官にお越しいただきました。お忙しいところ、この労働検討会の席にお越しいただきまして、ありがとうございます。
 早速ですが、厚生労働省の労働紛争処理業務室の方から、着席のままで結構ですので、20分程度御説明をお願いいたします。

(厚生労働省からのヒアリング)
○高﨑室長 労働紛争処理業務室の高﨑でございます。お手元にお配りしてございます資料の方に従いまして、御説明をさせていただきたいと思います。
 私どもの地方出先機関であります、都道府県労働局で労働関係の紛争の解決の援助をしておりますが、その根拠となります法律が昨年の10月に施行されております、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律でございまして、この法律の中身を説明させていただきつつ、現状について触れたいというふうに思います。
 まず、1枚目の法律の概要のペーパーでございますけれども、今回この法律を新たに制定するに至りました趣旨が、1のところに簡単に出ておりますけれども、まさにそこにありますとおり、企業組織の再編、リストラでありますとか、人事労務管理の個別化等に伴って、個別労働関係紛争が増加している。また、今後も増加することが懸念されるということで、それに対応するADRの一つといたしまして、行政としての、以下説明いたします総合的な個別労働紛争の解決システムの整備を図ったということでございます。
 なお、この法律の中で、個別労働関係紛争という若干耳慣れない言葉が出てまいりますが、これはそこにもありますように、労働関係に関する事項についての、個々の労働者と事業主との間の紛争全般を指すということでございまして、分野とかは問いません。要するに、個々の労働者と会社との間で、何らかのトラブルが生じているものについてはすべからくこの法律の対象としていくということになっておるところでございます。
 ただ若干例外がございまして、労働組合が当事者となっております、いわゆる集団的な労使紛争の解決スキームに乗っているものについては扱いませんし、あと紛争の中には紛争であると同時に、個々の労働関係法律に違反している法違反となっている紛争というものも、概念的には含まれるわけですけれども、こういう紛争につきましては、それぞれ個別の法律の中に、いわゆる強力な是正手段であります行政指導の権限なり措置等が規定されておりますので、いわゆる法違反事案については、抽象的には対象になるんですけれども、そういうより強力な紛争解決のための仕組みの方で対応するということになりますので、現実問題私どもの法律の対象にはなってこないと。
 そういう意味で、私どもの法律の対象となるのは、個別労働関係紛争のうちの民事紛争と言いますか、いわゆる法違反を伴わない、個人と事業主との間の権利義務関係に関します紛争等が対象となってくるという形になるわけです。
 今、趣旨として申し上げた背景のようなことなんですけれども、後でも触れますが、個別労働関係紛争の昨今の増加の非常に大きな要因としては、私は2つ挙げられると思います。
 まず、事業主側の要因としては、やはり雇用失業情勢が非常に悪いということで、リストラが非常に進行しているということで、私どもが取り扱っている件数の中でも、リストラ絡みの紛争というのが大部分を占めておりまして、こういう企業側のリストラの進行ということが非常に大きな要因として挙げられるのではないかと思います。
 一方、働く側、労働者側の要因としては、意識の変化ということがあるんではないかというふうに思います。就業意識、権利意識、両方あるんでしょうけれども、要するにどういうことを思って働いているかという意識が違えば、当然紛争に対します対応の仕方も違ってきますし、いわゆる昔であれば表ざたに出なかったようなものが、いい悪いは別にしまして、権利意識というものが高まっておりますので、言わば我慢しないと申しますか、表に出てきているという状況があるのかなという気がいたします。いずれにしましても、そのようなことを背景にしまして、個別労働関係紛争は非常に増えてきておりまして、それについてシステムを整備したということでございます。
 その中身でございますけれども、概要のところにありますように、やはりそうは言いましても、その紛争が基本的にそういう民事の紛争であるとすれば、これは当事者間で自主的に解決していただくということが大前提になるわけでございまして、この法律の中におきましても、紛争の自主的解決に向けた努力義務をもちろん規定しております。
 ただ、この規定は、言わば一つの理念的なものでもありまして、なかなか当事者間で解決できないからこそ、多くの紛争が外に出てきて、私どもの方に持ち込まれているということが言えるわけでございます。
 では、どういう紛争解決のためのサービスを提供しているかということでございますが、3つございます。
 1点目の機能は、都道府県労働局長による情報提供、相談ということですけれども、要するに、紛争が発生しそうだ、あるいは、発生してしまったという初期の段階におきまして、その解決に向けて必要な情報の提供をしていこう。あるいは、相談者が来た場合に、その相談に応じていこうということでございまして、具体的には、後でも御説明いたしますが、全国に250 か所ほど設置しております総合労働相談コーナーというところで、これらのサービスというものを提供しております。実はこの段階で紛争が解決されるものが非常に多いわけでございます。情報提供、相談という段階で、未然に防止されたり、あるいは早期に解決されるケースが非常に多いわけでございまして、この機能というのは私どもとしても重視をしておるものでございます。
 ただ、それだけでは残念ながら解決に至らない場合があるのでございまして、その段階につきましては、私どもとしては2つの違ったタイプの解決のサービスというものを提供しております。これらは、どちらかを先にやるとか、後にやるとか、そういうものでございませんで、言わばその紛争の内容、中身に応じてより適切な方法で解決していこうという考え方です。もちろん、最終的にどちらを使うかというのは、紛争当事者の意向に従うんですけれども、私ども労働局といたしましては、その紛争の内容を聞いた上で、ではこちらの方がいいんではないかというようなことで、アドバイスもさせていただいております。
 2つ目の機能が、都道府県労働局長による助言・指導という制度でございまして、これは一言で言ってしまえば、判定型ということが言えようかと思いますが、紛争の中身を聞きまして、その事実関係を整理いたしまして、かつ過去の判例、裁判例等にも照らしまして、ある程度その紛争の中身について、白黒と言いますか、どちらの方がより問題があるとか、ないとか、そういうようなことを判定をしまして、その上でその判定に従いまして、紛争当事者に対しまして、紛争解決に向けての方向性を示す、具体的には助言なり指導をしていくという制度でございます。そういう解決のための方向性を示した上で、あとは当事者間がそれをどうするかという考えです。
 若干前後いたしますが、私どもの紛争解決はサービスでございまして、勿論最終的にそれに応じて紛争を解決するかどうかは、紛争当事者が御判断いただくということで、決して強制的に解決するものではないということは、勿論ADRでございますので、皆様方の御承知のとおりでございます。
 これにつきましては、より指し示す方向性の中身の妥当性を担保するために、労働局の方で参与会というものを設置いたしまして、労働局として判断しようとしている内容について、それでいいかどうか御意見を伺うということになっております。その参与会のメンバーであります、参与と言いますのは、弁護士でありますとか、労働分野に非常に見識のある大学の先生でありますとか、そういうような方を複数名、参与として各労働局ごとに委嘱しておりまして、その方々の御意見を伺った上で労働局長として助言・指導していくという形になっております。
 3つ目の機能が、あっせんでございまして、これはどちらかと言いますと、先ほどの助言・指導が判定型と言いましたが、こちらの方は調整型、まさにあっせんなわけでございまして、要するに、両当事者間のあっせんをいたしまして、双方の主張の要点を確かめて、実情に即して解決がなされるように間を取り持っていくというものでございます。
 具体的には、都道府県労働局ごとに置かれております、紛争調整委員会の委員の中からあっせん委員を任命いたしまして、そのあっせん委員の方にあっせんをしていただくということでございまして、あっせん委員は必要な場合はあっせん案を提示するということもいたしております。
 以上が、私ども労働局でやっております紛争解決援助のためのサービスの3つでございます。
 なお、参考までにこの法律の中では、国だけではありませんで、地方公共団体レベルでも個別労働関係紛争の解決を支援するための努力というものを促しているところでございまして、そこにありますような規定を置いておるところでございまして、後で中労委なり地労委の方から御報告があると思いますが、この規定等を受けまして、私どもが承知している限りにおいては、1月4日現在で26道県の地方労働委員会で、個別労働関係紛争の解決のためのサービスを提供していると聞いております。それ以外にも従来より都道府県の知事部局でありますとか、労政主管事務所等の方で、労働相談等の紛争解決のためのサービスが提供されていたことは、勿論言うまでもないんですけれども、今申し上げましたように、加えまして地労委の方でも過半数の地労委でサービスを始められておる、これは今後とも増える傾向にあるというふうに聞いておるところでございます。
 2枚目の資料が、今、申し上げましたことを具体的にスキームにしたものでございまして、これは参考にしていただければと存じます。
 次のページで、横長の表でございますけれども、先ほど250 か所設置しておるという、総合労働相談コーナーでございますけれども、具体的には都道府県47労働局の中に1か所ずつ、あと主要な労働基準監督署の中にも、庁舎内のコーナーとして併設させていただいているのに加えまして、大都市圏を中心といたしまして、庁外型と私ども呼んでおりますけれども、駅前のビルでありますとか、そういうアクセスのしやすい場所にも総合労働相談コーナーを置いております。ここで約600名ほどの総合労働相談員というものを配置をいたしまして、総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談に当たらせておるということでございます。
 勿論、そこには労働問題に関するあらゆる分野の相談なりが持ち込まれるわけでございまして、私どもの対象となります、いわゆる個別労働関係紛争の解決を求めるものもございますけれども、それ以外のものもあります。要するに、紛争を持ち込まれる方は、自分の紛争がどういう内容のものかということが、十分わからずにいるのが大部分なわけですので、総合労働相談コーナーの機能といたしましては、対応に応じるほか、その振り分けと言いますか、内容に応じてより適切な対応機関を指し示すというサービスも行っております。
 具体的に言いますと、例えばそれが法違反等、法施行を求める内容の相談である場合には、所管の労働機関の方に取り次ぐということになりますし、あと中身を聞いた上で裁判というようなことを求めるということであれば、勿論裁判所の方にということでの情報も提供するということでございます。
 これらの紛争解決に当たっております関係機関等の連携につきましては、私ども労働局ごとに連絡協議会というものを年に1回行うこととしておりまして、この連絡協議会を通じまして、私どもとしますと、私どもの機関だけではなくて、地域の他の紛争解決のための機関との連携を密にしていくということにしておるところでございます。
 なお、連絡協議会のメンバーといたしましては、私ども国のほかに地方公共団体は必要的メンバーとして入っていただいておりますし、あと裁判所の方にもお声をおかけいたしまして、可能であれば参加していただくほか、民間レベルで紛争解決のためのサービスを提供される機関に対しましても、声をかけるということにいたしておるところでございます。
 いずれにしましても、そういうことで他の機関とも連携を図りながら紛争解決していくわけですが、私どもの方で個別労働紛争の解決をしてほしいという依頼があった場合につきましては、私どもの方で勿論情報提供、相談いたしますが、私どもの個別労働関係紛争解決制度の説明をいたします。そこで、相手の意向を受けながらも、紛争の中身に応じまして、先ほど言いました助言・指導なりあっせんというものにつきまして、ある程度振り分けをいたしまして、それぞれの制度に向けての申出の受付でありますとか、申請の受理というような手続に入っていくということになるわけでございまして、それ以降は都道府県労働局の本局の方で、担当部局に企画室というのがございますので、そちらの方で具体的な助言・指導なりあっせんの手続に入っていくということになります。
 以上が、総合労働相談コーナーにおける処理ですけれども、助言・指導は先ほど私触れましたが、あっせんの関係につきましては、次のページの資料4枚目をめくっていただきたいと思いますが、具体的にはそこにあります手続に沿って処理がなされていくということになりますが、まず申請書が受理されますと、あっせん委任をするかどうかを決めるわけですけれども、これにつきましては、私どもの制度の対象にならないものを除きまして、原則としてあっせんに掛けていくということになります。あっせん開始に当たりまして、最低限度のベーシックな事実関係確認のための調査を労働局企画室で行いますが、その上であっせん委員を、先ほど言いました紛争調整委員会の委員のうちから3名を選んで、当該事件についてのあっせん委員ということで指名をいたします。ただ、3名の方が常にその事件で対応しなければならないということになりますと、機動性に欠けますので、現状といたしましては、3人のうちの1名を担当あっせん委員という形に選任いただきまして、その担当あっせん委員の方に基本的にやっていただくという形ですので、3名のあっせん委員という形になっていますけれども、実態としては1人のあっせん委員で、調査でありますとか、あっせん期日における当事者の意向の確認というのを原則としてやらせておると。複数のあっせん委員が必要な場合については複数でやりますけれども、基本としては私ども簡易迅速な処理というのを大前提に考えておりますので、1人の担当あっせん委員でやっているということでございます。
 それで、あっせん期日等を決定し通知をいたしまして、あっせんに入っていくということになります。
 最終的に、合意ができた場合については、解決ということになりますし、残念ながらあっせんの結果合意に至らない場合については、打ち切りということになりまして、その場合には民事調停等の他の紛争処理機関の制度についての教示を行っているというところでございます。
 次に資料の5枚目、制度の運用状況でございますが、次のページに、昨年10月から施行されて以降3か月間の実績を載せております。
 まず、その250 か所の相談コーナーに寄せられた総数が12万1千余でございます。相談者の種類は、労働者が7万6千、事業主が3万5千等々ということになっております。事業主の方からの相談も多いわけでございます。
 うち私どもの方の直接の対象になります民事上の個別労働紛争に関します相談というのが、約2万件でございます。相談者の種類は、そこにあるとおりでございまして、中身につきましては、やはり労働条件が圧倒的に多いわけでありまして、そこにありますような状況になっております。それ以外にも、セクハラでありますとか、女性の問題、募集・採用等ございますが、意外と私どもとして多いと思いますのは、職場におけるいじめ、嫌がらせというものが思った以上に多かったというような感じでございます。
 その他という部類でございますが、これは例えば労働者の側から退職を求めているけれども事業主が応じてくれないですとか、会社の車を壊された損害の賠償の問題ですとか、多種多様なものが含まれているようでございます。
 次に、都道府県労働局長による、助言・指導の件数ですけれども、助言・指導をしてほしいという申し出があったのが411 件でございまして、その中身はそこにあるような状況でございます。うちこの3か月間の間に手続を終了した事件が354 件でございます。うち解決したということで確認している事件が130 件でございます。
 具体的な終了の区分ですけれども助言を実施したのが154 件、指導を実施したのが33件、ちなみにこの指導と言いますものは、相手方に対しまして必ず文書を交付する形で行っておるものでございます。
 取下げが89件です。例えばこの中身には、助言・指導の申出をしたことを契機として、相手方との話し合いが促進されて、自主的にもう解決してしまった例ですとか、相手の反応等を見てもうあきらめてしまった事案ですとか、あっせん等他の紛争処理制度の方に移行した事案等が含まれているようでございます。打切りの件数が45件でございます。これは、例えば事実関係が確認できないために手続を進められないとか、本人あるいは相手方との接触ができないために手続が進められないというようなものが含まれております。その他33件ということでございます。
 助言・指導の処理期間ですけれども、全体の66%を1か月以内に終えておるということでございまして、簡易迅速な処理を行っているということでございます。
 最後に、紛争調整委員会によるあっせんの件数ですが、受理が3か月間に304 件、内容はそこにあるような内訳になっております。計が合いませんのは、1つの受理で複数の事案に該当する場合がありますので、合計数は合っておりません。
 3か月間にあっせんの手続を終了した件数が、147 件でございまして、うち、合意が成立した件数が57件、申請を取り下げた件数が41件、これは先ほどと同じように自主的に解決したものとか、あきらめてしまったものとか、裁判所等他の機関に移行したようなものが含まれます。
 打切り44件、これは相手方が私どものあっせんで解決することを望まなかった、要は相手が応じてこなかったことによるもの等でございまして、これが44件というような状況になっております。
 処理期間としましては、このあっせんの方は全体の83%を1か月以内に処理を終了しておりまして、このあっせんの方につきましては、助言・指導以上に簡易迅速な処理が図られているところではないかというふうに考えております。
 今、申し上げましたのは、3か月間の状況でございますけれども、その後の1月、2月の状況等を見ますと、助言・指導申出受付件数は大体同じぐらいというようなことでございますけれども、あっせんの申請受理件数につきましては、その後増加する傾向にございまして、1、2月の数字だけで、この10月-12月期の3か月分の件数に相当するあっせん申請がなされているところでございまして、増加傾向にあるところでございます。
 特に最近では、制度発足当初、原則相手方は事業主が多いんですけれども、事業主の方があっせんに乗らない形で打切る件数というものがある程度あったんですけれども、最近非常に事業主の方の理解、意識が進んだのか、非常に私どものあっせんに応じる率が高まっていると言いますか、私どもの制度を通して紛争の早期解決を図りたいというような状況が出てきているのかなというような感じもいたしますが、詳細な分析はまだこれからということであろうと思います。
 次のページは相談件数の内訳ですので、これは御説明しましたので省略いたします。
 あっせんの事例も、幾つか分野ごとに載せておりますけれども、ごらんになっていただければというふうに思います。
 最後に、私どもの紛争解決援助制度を担う人材と言いますか、そういう供給源の関係でございますけれども、まず総合労働相談コーナーの内訳でございますけれども、572 名の総合労働相談員の方を委嘱しておりますが、10月1日に委嘱した時点の内訳でございますけれども、1番多いのは民間の会社で人事労務実務経験をされておったという、いわゆる民間企業のOBの方が32%、次いで社労士の方が29%、私ども行政の経験者が29%、その他10%というような状況になっております。
 紛争調整委員会の委員でございます。若干説明あれしましたが、紛争調整委員会の委員の定数は、都道府県ごとの規模に応じまして、1番多いのが東京で12名、1番小さい県でも3名という形でやっております。もっと言いますと、東京が12名、愛知と大阪が9名、北海道、神奈川、千葉、福岡が6名、それ以外は全部3名という形になっております。総計しますと、174 名ということになりますが、その内訳でございますけれども、弁護士の方が38%、大学の先生が38%、社労士の方が7%、行政経験者が9%、あと民間企業の人事労務実務経験者の方が3%、その他5%という内訳になっておるところでございます。
 私どもの方で取り扱っているものは、先ほど申し述べたとおりでございますけれども、これは年間ベースで見ますと、助言・指導・あっせんを合わせまして、労働局の方で約3千件ほどの数になろうかと思いますけれども、この数をどう見るかということはありますけれども、私どもとしましては、とりあえずスタートしたばっかりでございますけれども、それなりに件数も持ち込まれておるということで、個別労働関係紛争の解決のためのADRの一機関として、一定の役割を果たしているんではないかというふうに、我々としては考えておるところでございます。
 以上でございます。

○菅野座長 ありがとうございます。続きまして、東京労働局企画室の方から20分程度でお願いします。

○根岸室長 企画室長の根岸でございます。よろしくお願いをいたします。
 それでは、資料に基づきまして、御説明をさせていただきます。今、高﨑室長からいろいろシステム的なことはお話がありましたので、私の方は、例えばこんな事例があった場合に、こんなふうな形であっせんに持って行ったとか、助言・指導に持って行ったというようなことを含めて御説明をさせていただきたいと思っております。
 まず、個別労働紛争解決制度の流れについてなんですが、まず雇用主と個々の労働者との個別労働紛争が発生しますと、総合労働相談コーナーというところに相談に行くようになります。ここは、都内では私ども21か所設置しております。細かく申し上げますと、労働局の企画室の中に1か所、それから先ほど庁外型と申し上げました有楽町、渋谷、そこに1か所ずつ、そのほかに都内に18か所基準監督署がございますので、その中に設置をしております。
 ここの運営につきましては、総合労働相談員82名を配置しており運用しております。細かく申し上げますと、東京労働局内の企画室には10名、有楽町、渋谷には5名ずつ配置しております。あと18の基準監督署の中には、72名の相談員が配置されております。
 ここの総合労働相談コーナーでは、いわゆる個別紛争ばかりではなく、それ以外のものでも、例えば事業主さんの方から就業規則を変更したいんだけれども、どうすればいいだろうかとか、書き方を教えてほしいとかというような相談も受け付けてございます。
 今、非常に解雇が多くなってきておりますが、その例を取りながらお話をさせていただきますと、例えばその相談コーナーの中に、突然勤務態度が悪いから今日から来なくていいと言われたけれども、どうすればいいんだろうかというような形で、私どもの方に相談にお見えになります。そうしますと、相談員の方といたしましては、解雇予告手当を請求しなさいとか、いろいろなアドバイスをいたします。それと同時に、この制度についても説明をいたします。
 本人がもう一度事業主と話し合って解決していくという例がありますが、それ以外にやはりどうしても事業主の言うことに納得できないから、助言・指導なりあっせんなりというような制度に乗せてほしいというような本人の申出がありますと、この窓口で申請を受理いたします。その中で、本人がどうしても東京労働局長による助言・指導をしてほしい、そしてこの中には、解雇の予告手当は交渉したらもらえたと、だけれども解雇を撤回して、元に復職したい、それについて復職できるように助言・指導してほしいというような話が返ってまいりますと、そこで労働局長による助言・指導が実施されます。
 私どもといたしましては、助言・指導を実施するための事務処理は、ここに書かれておりますように、労働条件ですと労働基準部、それから募集・採用につきましては職業安定部、女性労働関係ですと雇用均等室、それから職場内のいじめにつきましては、総務部の企画室で対応するというふうにしておりますので、各事案ごとにそれぞれ各部に対応をお願いいたします。その中で、事実関係を調査いたしまして、私どもの方は現在4名に参与をお願いしておりますので、4名の方に御意見を伺いながら助言・指導をしていく。
 この中で、事業主の方に指導文書を発行いたしましても、本人としては納得できないというようなことになってまいりますと、あっせんの方に行くというような場合も出てくると思います。それが一つの方法です。
 もう一つは、例えば総合労働相談コーナーの中で、もう解雇はしようがないからいいと、だけれども突然の解雇で精神的な負担があるとか、経済的に損害を被ったので、それをどうにか、何らかの形で賠償してほしいというような話が、この相談コーナーで出る場合がございます。それにつきましては、もう即あっせんの方に回すという形にしております。
 その申請を相談コーナーで受理しますと、私どもの方に回ってまいりますので、そこから調整委員によるあっせんが始まるわけですが、具体的なやり方といたしましては、3名1組で組みますけれども、主担当は1名と決めさせていただきまして、その方によるあっせんを開始するわけです。そのあっせんの開始につきましては、紛争調整委員会の会長名で両者にあっせん開始、ここにあっせん委員3名を明記しまして、あっせんの開始を通知いたします。
 そこから事実関係、それから紛争当事者のあっせん、この辺のところは本人を呼んで聞く場合もありますし、ファックスとか電話でやり取りをしながら、状況を確認しながら合意書を作成したり、それからあっせん案の提示・受諾等をして和解をしていきます。
 例えば、ここの中でお互いに合意ができない場合も出てまいりますので、そういうような場合につきましては、ほかの方法というような情報提供もしておりますし、この辺のところは双方で事実確認の中で、なかなか合意が取れないというようなところもございますので、このあっせんについてはあくまでもあっせんということですので、片方が同じ舞台に乗れないというようなことになりますと、そこで打切りをしていくというような形になっておりますので、そのようにさせていただいております。
 以上が、東京労働局の現在実施している姿でございます。
 次のページに行きますと、東京労働局の労働相談の運用状況ということになっております。総合労働相談コーナーに寄せられた相談が、28,640件、これは1月31日までですので、本省の報告よりも1か月多いんですが、大体全国の2割強私どもの方が受け持っている形になっております。
 相談者の種類なんですが、やはり労働者、事業主、大体半分ずつぐらいのような状況になっております。
 その中で、相談の区分ですが、個別労働紛争のものに関しましては、28,640 件のうちの、大体9%、1割ぐらいが個別労働紛争に関わるものでございます。
 相談の内容につきましては、当然労働条件に関するものが93%と、ほとんどが労働条件に関するものであります。
 「民事上の個別労働紛争に係る相談の件数」につきましては、これも全国から見ますと大体1割強、私どもが取り扱っております。
 やはり相談者の種類は、圧倒的に労働者の方の相談が多くなっております。
 相談方法につきましても、来所と電話と大体半分ぐらいの形になっております。
 労働者の就業状況は、正社員の方が大体6割を占めております。
 次のページを見ていただきますと、今度は助言・指導及び紛争調整委員会のあっせんの運用状況について、これも若干御説明をさせていただきたいと思います。
 労働局長による助言・指導の件数は、1月31日までで112 件ございました。大体3割が普通解雇です。助言・指導の手続を終了した件数が、92件ということで、大体82%ぐらい終了しております。
 処理の期間でございますけれども、大体助言・指導につきましては、2か月以内というようなことで考えておりますが、大体1か月以内では78%ぐらい終了しております。ですから、2か月以内も合わせますと、大体97%、助言・指導の手続が終了しているという形になります。
 紛争調整委員会によるあっせんの件数ですが、これは1月31日現在、68件になります。やはり紛争の内容は、46%が普通解雇になっております。
 あっせんの手続を終了した件数は、38件。終了の区分といたしましては、当事者間の合意が成立したものは、14件で36.8%、約4割でございます。打切りが42.1%。
 処理期間の関係ですけれども、1か月以内が大体60%、2か月以内と合わせますと大体92%ぐらいが、あっせんの手続を終了しております。ですから、この辺のところを見ますと、この制度そのものが非常に迅速に解決をする制度ということですので、1か月以内が長いのか、短いのかというのは、いろいろと御意見のあるところだと思いますけれども、私どもといたしましては、1か月以内で60%くらいいっていると、まあいいかなというようなことで考えております。
 次のページで、個別労働関係紛争の相談件数の内訳です。これは、先ほどのところにもありますので、後でごらんいただければというふうに思っております。
 次のページをめくっていただきますと、私どもの総合労働相談員の委嘱状況という形になっております。ちょっと印刷が見にくいかもしれませんが、平成14年の3月1日現在になっておりますが、これは4月1日現在ですので、申し訳ありませんが、御訂正をお願いいたします。
 4月1日から相談員が84名になりますけれども、民間の方、人事労務担当の方が61名ということで、72%を占めております。この民間の人事労務担当の方々の選任につきましては、いろいろなところからの推薦もありますし、もう一つはハローワークの中に人材銀行という、いわゆる管理職の職業紹介を行っているところがございますので、そこのところからの紹介もお願いをしています。
 あとこういうような相談業務に携わりたいということで、御自分から私どもの方に履歴書を送って来る方もいらっしゃいますので、その方たちと面接をしながら決めていくと、あとは監督署の中からの推薦等もございます。そういうふうな形で選任をしております。あと社労士の方が14名、行政OBが9名、それで合計84名の方で相談員の構成をしております。
 この総合労働相談員は、後ほどお話申し上げますけれども、一番最初の窓口ですので、やはりこの方々のスキルをいかに向上させていくかというようなところが、一番の問題かなというふうに思っております。
 東京紛争調整委員会の委嘱状況でございますが、弁護士が3名、それから行政OBが5名ということになると思いますが、この中の1名は私どもの敷設窓口で相談を行っていた方で、非常に労務に詳しい方でしたので、その方にお一人お願いをいたしまして、相談員から調整委員になっていただいたというケースでございます。
 社労士の方3名にお願いしておりまして、この社労士につきましては、社会保険労務士会の東京会の方に推薦をお願い申し上げました。と言いますのは、この制度そのものが非常に迅速に解決をしなければいけないというようなことから、実務家の方にお願いをしたいというのが、私どもの希望でありましたので、そういうような形で社会保険労務士会の東京会の方にお願いをいたしまして、特に紛争の中で、例えば社会保険関係を当事者がよく知らないために、逆に紛争を複雑にしているような場合もありましたので、社会保険労務士の方に雇用保険の受給の仕方とか、そういうふうな請求もできるというようなお話もできますので、ある意味では役に立つものではないかというふうに思っております。
 労働関係紛争担当参与の委嘱状況でございますが、弁護士の方が1名、大学教授が1名、民間団体役員の方が2名、合計4名でお願いをしております。
 これが現在の私どもの相談員、調整委員会の委員、参与の状況です。
 次のページに、先ほどお話が出ました、他の機関との連携の関係について御説明をさせていただきますと、まず私ども東京労働局と東京都との連携を現在行っております。これにつきましては、東京都の方では同じ事務所で相談等もやっていらっしゃいますので、そういうような状況を説明したり、お互いに情報交換をしています。今まで2回ほど開催をして、情報交換をしております。
 労働委員会の関係では、現在東京都労働委員会では、個別紛争を取り扱っていらっしゃらないということも伺っておりますので、今のところこことは直接御連絡を申し上げるというようなことはやっておりません。
 地方裁判所につきましては、今のところ連絡は申し上げていないのですけれども、今後是非ともまたいろいろと連携を取らせていただきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 民間団体とは、各経営者協会の方々と先日会議をもちまして、東京経営者協会、東京商工会議所、東京都中小企業中央会、商工会、その4団体の方々にお集まりいただきまして、この制度の説明と、情報交換と、各機関でおやりになっていらっしゃる相談についての情報交換などをやっております。今後こういう制度の周知についてもよろしくお願いしたいという依頼も含めまして、現況の状況を共有しました。これが、各機関との連携でございます。
 最後に、相談員に対する研修というようなことを1枚、資料として付けさせていただいております。それは、先ほどの総合労働相談コーナーに相談の方がお見えになりますので、その中でやはり相談員の人が、いかに相談にいらした方の問題点を把握して、整理をして、何が問題なのかというようなことを話をしていきませんと、大体急に解雇されたということで、皆さん気持ちがいっぱいでいらっしゃるので、どうしてほしいというのがなかなか整理が付かない方も非常に多うございますので、その辺のところを相談員がしっかり内容を聞きながら整理をしていって、問題点を把握していろいろな形を示唆していかなければいけないというように私どもも思っておりますので、そういう点では相談員に対する研修というものについては、結構重視をしています。
 実は、その基準法の105 条に基づきます労働条件相談員というのが、18の労働基準監督署の方に設置されておりましたが、その方々が昨年の10月から、総合労働相談員というふうに職務内容が変わりましたので、その関係で9月にまずその方々を集めまして、制度の話、あと役割が変わったということ、安定行政・均等行政の内容について、いろいろと研修をいたしました。
 その後、新規に採用される相談員の方々についても、今までお話したような内容のものをすべて研修をするというような形で、新規採用の方については、10月1日から4日間、それから13年12月6日に1日というような形で、新しい方が入ったり交替する都度、研修を実施しております。
 今年に入りまして、2月13日に総合労働相談員ということで、また1年間契約更新になりましたので、それについての話等も含めまして、均等業務の関係、育児・介護休業法等の改正について、それから派遣法、やはり派遣法の相談が多いということでその関係、それからあっせん業務の実際についてということで研修をさせていただきました。このあっせん業務の実際については、総合労働相談員が総合労働相談コーナーで相談をしていく中で、あっせんしてほしいというような話が入れば、そこで受けていただきたいというような私どもの思いもありましたものですから、そういう意味で先ほどお話しました相談員からあっせん委員になった方に講師をお願いいたしまして、あっせんとはこういうものだというようなことも説明しているというような形で、今後ともこの制度が定着して、国民の皆様方に評価されるためには、第一線の窓口、総合労働相談コーナーが非常に大きく役割を果たすものではないかというふうに考えておりますので、これからも相談員についての研修は引き続き充実をさせていただきたいというふうに思っております。
 以上、ちょっと長引いてしまって申し訳ございませんが、御報告させていただきました。

○菅野座長 ありがとうございました。それでは、15時まで厚生労働省からのヒアリングを予定しておりますので、残りの時間でどうぞ御質問をお願いいたします。

○矢野委員 とりあえず東京局の方なんですけれども、打ち切りの件数がかなり多い状況になっていますが、どんな理由で、どんなふうに行われているのか、ちょっと様子をお聞かせ願いますか。

○根岸室長 あくまでも両方の当事者が乗ってこないとなりませんので、例えば話をしている中で、もうそれは解決したことだから、もう既に紛争の当事者と事業主とでは話し合いが付いているのに改めて事業所が乗ることはない、ということで、打ち切られる場合がございます。それは助言・指導、あっせん委員のあっせんの打切りともに同じようなケースです。

○村山調整官 補足させていただきますと、確かにパーセンテージが多くなっております。助言・指導の方は、ただいま申し上げましたように、この制度そのものを始めました時点で、大体労働者からの申出の方が多いもんですから、事業主さんに対して来局の依頼通知を出しまして、それが会社の方に届きまして、労務担当の方が、これは弁護士に相談した上で、会社として解雇をするつもりでしたものであると、だから私どもが間に入っても、これ以上、民事的な問題だから御意見をいただいても、会社として何も対応するつもりはございませんというような回答が来た場合には、当然打ち切らざるを得ないというケースが結構多いです。
 あと処理に入った後に、助言・指導として、一定の見解を示す前に、会社の方としてはこれ以上処理をしていただかない方がありがたいと、相手の主張もよくわかったので、正式なところは裁判でやりたいと思いますというようなお話になる場合も、それ以上無理矢理続けるという制度ではありませんので、打切りになるというケースがあります。
 あっせんの方は、打ち切れる場合が制度の中で定まっておりますので、そもそも最初に被申請人の方に開始の通知を出して、参加しませんというような回答が来ましたら、即打ち切る。それから処理を始めた後でも、双方または一方から、それ以上やらないでくださいと、別の裁判などできちんとした形で解決するというようなお話があれば、即打ち切ると。
 それから、折り合いが付かないような、両者歩み寄るつもりのないような話であれば、両者に説明して打ち切るということです。

○鵜飼委員 助言・指導というのは、判定的な解決とか申されましたけれども、事実関係の調査はどうなさるんでしょうか。双方呼ぶんですか。

○村山調整官 大体申し出の時点で、最初に申し出てこられた方に先に事情を聞いて、ここで必要なところは担当官の方が突き詰めて聞くと、それに基づいて相手方の方からも事実関係を調査する。食い違ってくるケースが結構ありまして、そういうふうになりますと、裁判所と違いまして、どちらの事実が真実なのかということを判定するというような、事実関係の判定の制度ではない、「判定」と言っても一定の事実の上に立っての法律的な評価の判定の問題です。事実関係が詳しくどっちが正しかったか、証人を立てなければならないとか、証拠があるかとか、そういうふうな場合には両方に話をして、当方としては打ち切らざるを得ないかなということで行っております。

○鵜飼委員 助言は口頭ですか。

○村山調整官 口頭のものもありますし、文書によるものもあります。

○鵜飼委員 指導はすべて文書ですか。

○村山調整官 指導は文書です。

○石嵜委員 それに関連して、争いがあれば別として、今、事実が一定程度確認できて、評価とおっしゃいましたね、そうするとこれは今の資料を見れば、普通解雇事案が多いわけですね。そうすると、普通解雇事案について、その判定型というと、事実関係をある程度確定させたら、有効性まで一応評価して助言・指導をするんですか。

○村山調整官 単純なものは、それは解雇権の濫用ですねという話が大半でして、すぐわかるんですけれども、一応専門家の方に御意見を聞かないと分からないような複雑なものにつきましては、労働関係紛争担当参与という制度がありますので、先ほど円グラフに入っていたように、大学の先生とか弁護士さんとか。

○石嵜委員 それを聞きたいんです。とすると、その弁護士がどなたの推薦で、どの程度の専門性があるのか、これが問題なんですね。仮に、この2人座っていますけれども、ぼくが担当参与の弁護士だったらどうなるんだと、労働弁護団の先生はどうなるんだと、こんな問題が現実にあるんで、今の判定、そしてそれを専門の参与にお聞きになるというけれども、1名の弁護士さんもどういう形で推薦されて、選任されて、その専門性についてどれだけ検証されているのか、この点はいかがですか。

○高﨑室長 勿論、参与の先生にお願いするということは、今、私も説明したし、労働局の方から報告したとおりなんですけれども、現実問題、実際上は任命しているのは都道府県の各局長でございまして、私どもとして局長の方に対しまして、参与というのはかくかくしかじかの機能をお願いする人であるので、その人については、例えば弁護士の先生ないしそういうような方で、専門的な知見を持たれている方で、そういう参与会の役割を果たしていただける人を選任するということで、基準と言いますか、方向性を示した上で、労働局長の方に指示をいたしまして、それに従って労働局長が選任するという形になっています。

○石嵜委員 最後に一つ、それはどうであれ、制度はそうなっているんですから、その参与の先生方の氏名は公表はされているんですか。

○高﨑室長 どこかに載せているということはありません。

○石嵜委員 問い合わせれば教えてもらえますか。

○高﨑室長 はい。

○鵜飼委員 先ほど社会保険労務士の方は、社会保険労務士会等の推薦を受けてということで、弁護士は弁護士会の推薦でやっていらっしゃるんですか。

○根岸室長 それはやっていません。

○鵜飼委員 なぜやっていないんですか。

○根岸室長 その辺のところは、私どもの局管内に前々から労働条件相談センターというのが設置されております。それは、私どもの労働基準監督署とは違うところにございまして、都内に3か所ぐらい置いてあるんですけれども、そこでも相談をやっております。そこで意見をいろいろ伺っている弁護士の先生がいらっしゃいましたので、お聞きになると安易というふうに思われるかもしれませんけれども、その方を今お願いをしております。

○春日委員 あっせんについてちょっと伺いたいんですが、手続の流れとしては、事実関係の調査というのが入っておりまして、あっせんの処理期間を見ると、2か月以内というのが97%ということなんですけれども、この短期間のうちに事実関係の調査をされるというのは、どの程度事実関係を調査されるのか、さっき当事者からは事情を聞くということでしたけれども、第三者からの事情聴取とかはあるんでしょうか。あるいは、そういったケースはこれまであったのかなかったのか、そういったことを伺いたいんです。

○高﨑室長 私の方からお答えいたしますけれども、勿論私どもの労働局でやっておりますのはあっせんでございますけれども、私ども労働局としては、とにかく簡易迅速と言いますか、一番簡単に使える機能としてのあっせんということを目指しておりまして、そういう意味では、事実関係と言いましても、助言・指導みたいな形で、本当に判定する上での前提となりますような事実関係を詳細に調査するというのではなくて、要するに、あっせん期日に両当事者を呼んで、あっせんに入る前提としての最低限度の紛争内容の確認でありますとか、そういうことだけするということでございまして、基本的にあっせんの当日、その場で両当事者が言いたいことがあったら言っていただくし、出したいものがあれば出していただくし、見せたいものがあれば見させていただくし、そういう形でやっております。

○春日委員 どうもありがとうございました。

○矢野委員 助言・指導というのは、前からあったんですけれども、紛争調整委員会によるあっせんというのが新しくできたわけです。参与という仕組みは、前からあったんでしたっけ。

○高﨑室長 はい、ありました。

○矢野委員 助言・指導をやっているずっと前からあったわけですね。

○高﨑室長 労働条件についてだけ、平成10年の10月に先行的に助言・指導だけの制度というのを発足させたんですけれども、そのときからありました。

○矢野委員 なるほど。

○山川委員 労働局長の助言・指導と調整委員会のあっせんの振り分けについて、判定型、調整型というお話がありましたけれども、それだけでは具体的な方向はなかなかわからないことが多かろうと思うんですけれども、何か振り分けの具体的な基準みたいなものはあるんですか。

○高﨑室長 それはありません。と言いますのは、あっせんを選ぶか助言・指導を選ぶかというのは、申請人の意思によるということになっていますので、その意思に反してまでこちらで行政の側で振り分けることはしておりませんので、そういう意味では最終的には申請人の意思に従うということで、先ほど判定型、調整型と言いましたのは、言わば我々行政の側として持っているイメージでございまして、向こうの方からどちらがいいでしょうかと聞かれれば、こちらの方はこうこうこういうような特徴があって、こういうような制度で、こちらの方はこうこうこういう制度ですのでという御説明をして、ではそちらの方でお願いしますとなりますが、一般的に金銭的な解決を求める、あるいは金銭的な解決に最終的に移行しそうな事案であれば、あっせんの方にということはあると思います。と言いますのは、助言・指導の方で、金銭的なものをかくかくしかじか支払えという、助言・指導をするということはしておりません。

○山川委員 そうすると、特に当事者がどちらがよいかわからないときは、制度の説明をした上で、あとは解決の結果と言いますか、方向をある程度にらんで、どちらがいいのではないかということを、ということですか。

○高﨑室長 そうです。要するに、最終的に解決する可能性が高い方、早い方を我々としてアドバイスします。

○山川委員 相談員の方に何らかのマニュアルを示すなどして説明はされているんですか。

○高﨑室長 マニュアルと言いますか、紙ではなかなか書きにくい部分がありますので、先ほど東京局の方から御報告しましたような研修の場ですとか、そういうような機会をとらえて、事例等を挙げながら研修してやっています。

○村山調整官 どちらにしたらいいかわからないようなものがあれば、すぐ相談員から労働局担当者に電話をくださいと、話の中身をこちらの方に教えてもらって、こちらの方で判断の上、アドバイスを行っています。

○鵜飼委員 助言、あっせんで解決したケースが何件かありますけれども、具体的な内容は大体どういう内容で解決しているんですか。金銭的な問題は、むしろあっせんの方だと思いますが。

○村山調整官 そうですね。解雇撤回の話であれば、実際に解雇が撤回されたケースもあります。もともと正式な解雇だったかどうかという話になるかもしれませんけれども、一応考えを改めて撤回して、再度働くという形になったケースもあります。

○鵜飼委員 その内容は御報告いただけるわけですか。

○高﨑室長 具体的な事例の中身は、非公開ということになっていますので、判例、裁判例のような形で外に出すということはしておりませんけれども、今、いわゆる好事例集と言いますか、そういう形で私どもの制度を利用されて、こういう形で解決しましたということで、今日の資料にも若干付けておりましたけれども、そういうような形でプライバシーに配慮した形のものは還元していくということは考えておりますし、現にやっております。言い忘れましたけれども、私どもの制度は勿論非公開でやっております。それが1つの私どものメリットだというふうに考えております。

○鵜飼委員 助言・指導をもし文書で出された場合、これが将来裁判になった場合に、裁判で提出される可能性があることはお考えですか。

○高﨑室長 そういう可能性はあると思います。

○髙木委員 東京労働局の方と厚生労働省の方、それぞれにお聞きしたいんですが、まず厚生労働省の方に、運用状況の表で2万5百件というところから順番に、411 件、354 件、308 件、この中には多分ラップしているのもあるんだろうと思いますが、要は労働相談、助言・指導、あっせんを含めて、2万5百弱、あるいはその上の12万1,330 件、相談に来られただけでうまくいったものもあるといったニュアンスの御説明もあったけれども、要は12万あるいは2万5百件に対して、具体的に解決が得られたのがどれぐらいあるのかということについては、把握されておるのかどうか。これを見てみる限りにおいては、2万5百件を対象にするとしても、数百件のオーダーがこういうステージに下ろされているということなのか、そういう意味で全国合わせていろんなチャンネルで百数十万件の労働相談があるという中で、例えば労働局の個別紛争解決制度のもとで紛争が解決に向かうときは、どういうレベルで実効性を持っているのかということを判断する素材みたいなものは集めておられるのかどうか。
 それから、こういう実態について、まだ動き出して数か月なので、にわかに評価をしてくださいということは難しいかもしれませんが、本当に意図されたような解決のチャンネルとしての有効性を、将来に向かって持っていけるという御認識なのかどうか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。
 先ほど鵜飼さんから言われましたが、判定結果について、例えば文章等の内容を巡りまして疑義を呈されることが出た場合に、それをフォローするどういう仕組みを考えておられるのか、具体的にはその判定した内容の可否について問われたときに、どういうことで対応されていこうとしているのか。わかりきった話ばかりですという話も一部ありましたが、中には参与の方に御相談されるケースもあるという話でしたが、参与の方の判断される物差しがどうなのか、またその結果判定された内容について、そんな判定でいいのという疑義が呈されたときに、次にどういう手段を考えておられるのか。
 それから、東京労働局の方には、1つは労働組合の有無、これは次のステップに上がったものについてのみ表が付いておりますが、相談に来られた人たち全体での有無、不明、それが把握されておるのか。
 労働組合のメンバーである人とそうでない人、不明のところはよくわからないわけですけれども、相談内容上のある意味での有意差、例えば労働組合に相談に行った形跡がありやなしや、労働組合に相談しないで来た、来ない、その辺の状況がわかったら教えていただきたいと思います。
 もう一点東京労働局の方に。相談員だとか紛争の調整委員のリクルートの方法についても御報告があり、相談員だとハローワーク、監督署、あるいは企業労務の経験のある方もおられて、研修等もおやりになったということですが、期待されている相談対応能力みたいな視点で見たときに、期待度は大体満たされておられるのかどうか。
 例えば労働相談員で、民間の人事労務経験者と書いてありますが、この中には労働組合の役員を経験した人がいるのかいないのか、その辺が把握がされておられたら教えて下さい。
 紛争調整委員についても、同様な視点でどういうふうに御認識がされているのか教えていただきたいと思います。

○高﨑室長 私どもの勤務状況の評価と言いますか、概略の状況でございますけれども、12万件相談が寄せられておりますが、中身は法令等の中身の紹介とか、法違反絡みのものもありますので、それはそれとして、いわゆる私どもの法律の対象になる相談、約2万件がございますが、これらの相談は勿論来所してこられる方もおりますし、電話での相談という場合も多いわけですけれども、これらにつきましては、我々として持っている情報は提供いたしますが、その結果どうなったかということについて、これは捕捉のしようがないと言いますか、向こうが連絡先、電話番号を言わない場合もあるし、たとえ言ったとしても、結果わかりましたというふうにして、帰られた人がその後どうなったかということを、我々として追跡するというところまでするのは適当でないと思っておりまして、しておりませんので、この2万件がその後どうなったかということについて、私どもとして把握はしておりません。
 ただ、こういうような場合はどうなるんでしょうかというような相談に対して、かくかくしかじかというような情報提供をすることによって、紛争が未然に防がれたり、解決されたりしているものも多いのではないかというふうに、私どもとして考えておるところでございます。
 次の助言・指導ですけれども、この411 件の受付が全国ベースで3か月間であったわけでございますけれども、これらのうち助言・指導を実施したものにつきましては、その後どうなったかということについて確認するということをしておりまして、この3か月間で言えば、130 件の事案が解決されておったということでございます。要するに、187 件の助言をし、指導をしたものについて、その後確認をした結果、130 件の解決がなされているということになっております。
 あっせんにつきましては、当事者間で合意が成立したというものにつきましては、基本的に合意文書を取り交すということにしておりまして、それで解決しておるというところでございます。
 あと申請を取り下げたものの中でも、これは別に追跡をしておるということではございませんけれども、私どもの労働局の方で把握している中には、先ほども御報告しましたが、そのあっせんの申請を契機として、自主的な解決が図られたものも含まれておりますので、そういう意味ではこの取下げになったもののうちでも、幾らかのものは解決をされているというふうに思いますし、決して私どもの方に持ち込まれる紛争の解決というのは、申請人の主張どおりになるものだけが解決ということでは当然ないわけでございまして、いろいろとやった結果、申請人の方が納得された結果、例えばあきらめられたというようなものの中にも、広い意味では解決というものがあるやも知れませんし、そういう意味で狭い意味では当事者間で合意が成立した57件が、あっせんを通じたものの解決の件数なんですけれども、それ以外にもこのあっせん手続を申請したことを契機とした解決が図られたものもあるのではないかというふうに思っております。 あと打切りの件数、あっせんで言えば例えば相手方が乗ってこないということで、44件打切りがされたということでございますけれども、先ほど言いましたように、これは別に全国的にまだ集計しておらないところでございますけれども、私どもで認識する限り、特に都市部の方で、事業主の方があっせんの方の申請に乗ってくる率が若干高まっているような感触を得ているというような報告も受けておりますので、その辺りどう見るかですけれども、私どもとしては、この制度が発足し半年を経て、それなりに認知もされてきて、かつそこでの処理というのが特に内容について問題になっているものは、幸いなことに一件もまだ報告がございません。そういうことで、とりあえず労働局での紛争解決サービスについての一定の信用も得て、私としては紛争解決という役割を果たしているし、今後もより大きくなっていくのではないかと期待をし、信じておるところでございます。
 助言・指導の中身について異議がある場合はどうするかというお話がございましたが、私どものこの紛争解決サービスは、あくまでサービスでございまして、行政権限の行使として、法違反を是正させるように強制的に従わせるような処分を行っているものではありませんので、仮にその内容に不満であれば、私どもとしてお示ししたものについて、納得いただけないということで、私どもの助言なり指導に従われないということになりますし、申請人の方が満足できないのであれば、それは残念ながら私どもを通じてのサービスはそこまででございまして、更に上位の、あるいは地労委の個別の紛争サービスでもいいでしょうし、民事調停なり裁判の方で更に引き続き争っていただくということで、これはADRである以上は当然のことではないかというふうに思っております。
 そういう意味では、私どもとしては、判例等も紹介しつつ、参与会にも意見を聞くというプロセスを経た上で助言するということになりまして、それ以上のものについては、それを受けてどうするかという当事者の御判断ということだと思います。
 あと人材の中に、労組関係の方がいらっしゃるかということでございましたが、勿論相談員の方の中には、企業のOBの方が非常に多うございますので、労働組合に関係されている方があるかと思いますが、そういう観点での情報を私どもとして集計しているわけではございませんが、ただ私どもの方で集計しておりますのは、唯一紛争調整委員会の調整委員というのは、大臣任命でございますので、私どもの方で管理してございますが、大阪の紛争調整委員会の委員の1名が、地労委の労働側委員を長年されている方だというふうに承知しておるところでございます。
 以上でございます。

○根岸室長 先ほどの相談の関係で、組合の有無が有意に働いているかということでございますが、その辺のところはまだ、誠に申し訳ございませんが、こっちの方でもその辺の資料は取っておりません。あと相談員の関係、それから調整委員に期待されている相談対応はしているんだろうかというような御質問でございますが、特に今回東京労働局に配置されました20名は、いわゆる労働基準監督署に設置しております相談員につきましては、平成10年から設置されている、労働条件相談員という方々ですから、逆に今まであっせんというようなことはほとんどやっておりませんし、ほとんどと言うか全然やっておりませんので、この制度の中であっせんということを理解させるということは、若干まだ足りないかなというような評価はしております。
 その意味で、2月に行われました研修の中で、あっせんというのはこういうようなものなんだというようなことで話をしてきましたらば、その後何件かその方からの相談があったり、現実に申請書が上がってきておりますので、そのようなことで検証しながら、ケーススタディーをやれば、その辺のところは技術的に付いてくるだろうと思っております。
 それから、調整委員につきましても、最初のころはなかなかあっせんに対して、どこでというような、あんばいと言いますか、その辺のところがなかなかわからなくて、時間がかかったりしておりましたけれども、今、10日から20日ぐらいの間に大体解決してきているというようなことがありますと、調整委員の人たちもそういうあっせんに対してのスキルアップ、その辺のところができてきているんではないかというふうに理解しております。
 ですから、10月から始まりまして、約6か月ですので、今後研修等を重ねながら、それから特に調整委員の方々では、意見交換会もやってほしいというような話も若干あったりしますので、その辺のところを踏まえながらまた研修なり意見交換会をしながら、お互いに高めていくということで、これからだと思っております。
 ただ6か月の間で考えますと、大変手前みそですが、そういうことではいい形で進んでいるのではないかというふうに思っております。

○岡崎委員 補足なんですが、さっき助言・指導、あっせんで、あっせんが調整型で、助言・指導が判定型ということですが、いわゆる判定型ADRという意味での判定型ではないということで、ちょっと判定というのが強く響き過ぎているのかなと聞いていて思いました。
 そうではなくて、ある程度事実関係を見た上で、判例等を踏まえて、一定の方向性を示す。労働委員会なんかにおける明らかに両当事者から証拠を持ち寄って、事実関係を確定してから判定したと、そういう判定型ではないので、ちょっと補足的に。

○高﨑室長 そうですね、すみません。誤解があったかもしれませんがそういうことです。

○山口委員 事実関係の調査の関係で、使用者側に資料を求めないと詳しい事情がわからないというような場合もあるかと思うんですが、そういう場合はこの資料の提出について検討したいことはないんでしょうか。そういう資料の提出を求めること自体が、あまり多くないことなんでしょうか、その辺はどうなんでしょうか。

○村山調整官 助言・指導の方は、来局を依頼して、大体事業主さんの方から来ていただくときに、こういうものを持って来てくださいということで、労働関係の問題だと、例えば就業規則ですとか、あるいは人事異動の辞令ですとか、そういうものになってくるので、本人の勤務状態についての争いがあるのであれば、タイムカードですとか、会社内部の人事評価なども、出してくれる会社は出してくれるんでしょうけれども、強制はしませんので、そこはどうしてもうちの方でこういうものを出してくれというような話をすることは余りないでしょうし、意図的に出させるという意味合いも一切ありませんので、そこは相手の方が出してくれるという話に乗ってくれる範囲で、事実関係を確認するということです。
 あっせんの方は、勿論参加に同意しているところしか来ていただけませんので、参加に同意するところというのは、逆に言うと自分の方で言いたいことがあるところなんですね。それは十分わかると思うんですけれども、相手方はこういう人なんですよということを積極的に主張したいことがあって出てまいりますから、それなりの資料を持って来られるわけです。そういう意味では、あまり資料提出についての不満は特に感じておりません。

○鵜飼委員 幾つか要望で、1つは監督行政とこういう解決制度の機能との関係なんですけれども、例えば解雇については解雇理由を本人が要求すれば出すべき義務があるんですね、こういうものは必ず解雇に関する助言・指導でもあっせんの場合でも求めてほしいと、ただそれは監督行政との絡みがありますので、それをどうするかという問題がありますが。実際私が神奈川でいろいろ聞いたところによりますと、残業代の不払いなんかのケースですと、一旦この紛争解決制度に乗っかって、今度は時間外労働問題だから監督行政に移って、しかし監督官の方は、一旦こっちの方に移ったもんですから、何かお互いに足して2で割るというような形の解決をすすめるということを聞いたことがあります。そういう意味ではこの監督行政とこのシステムの分水嶺をきちっと引いていただきたいと思います。
 もう一つは、私ども監督署によく行くことがあるんですが、相談コーナーというのは入口のちょっと入ったところに机が置いてあって、折りたたみのいすがありまして、囲いも何もないんですね。これは、特に私たち弁護士会でも非常に注意をしているところなんですが、これはプライバシーの問題がありますので、やはり囲いを置いて、できれば常駐していただきたい。相談員の方は、いらっしゃらないことが多いと思います。相談の機能というのは、非常に重要だと思うんです。ワンストップサービス的な機能も非常に大事だと思うんですが、そこでの懇切丁寧な情報提供とアドバイス、これは是非きちっとレベルを向上させていただきたいというふうに思います。ほかにもいろいろと言いたいことはありますけれども。

○山口委員 私も一点だけ、他の機関との連携の関係で、今日、お話を伺ってもいろいろ目新しい話もありましたので、定期協議には是非裁判所も関与させていただきたいと思いますので、その辺は連絡方前向きにお願いいたします。

○鵜飼委員 それは、是非弁護士会もお願いします。弁護士も、法律相談の中で労働事件の相談が非常に増えて、東京では東京三会で特別な相談コーナーを設けておりますので、是非弁護士会も一緒にそういう場に参加させていただきたいと思います。

○高﨑室長 監督署との話ですけれども、これは当然監督署は監督署できちっと決められた役割がありまして、私どもの役割とは重複してないわけですので、仮に問題があった場合については、それはきちっと直さなければいけないし、我々としてそこは、さっき言いましたように、法律に基づいて権限を処理するところは監督署で、そういうのに乗らないベースのものをうちということで、制度的にはしておりますのでは、それは徹底していきたいというふうに思っています。
 あとインフラと言いますか、コーナーとかの整備ですけれども、何かそういう予算的な制約等もありますけれども、とりあえず来年度に向けても庁舎整備の予算も相当組んでありますで、一遍に全部ヨーイドンできれいになるというわけにいきませんけれども、これは随時整備に努めていきたいというふうに思っておりますので、御理解いただきたいと思います。
 あと協議会の方に裁判所なり弁護士会の方に御参加いただけると、我々としてもウェルカムであり、非常にそれは光栄に思いますから、是非参加していただきたいと思っておりますので、労働局の方を通じまして地元の地裁なり弁護士会の方には声をかけさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○石嵜委員 一点だけ、使用者側の立場から、庁舎整備のお話があったんですけれども、これは非常に使用者側からも利用できるという形を考えると、労働基準監督署内にあるということ自体が問題だと思うんです。あれは理屈からいくと、労働刑法で刑罰を使用者に科する制度なんでしょう、したがってこれ自体がこれの利用を妨げる、労基署から来るというイメージというのは、非常に使用者側は辛いんです。
 したがって、庁舎整備の費用の問題もありますけれども、その辺もお考えになっていただいた方がいいと思います。

○高﨑室長 庁外コーナーは、先ほど言いましたけれども駅ビルとか、庁舎にないというものを、それを今後は増やしていくという方に予算は特に集中していきたいと思って、来年度も新たに神奈川と兵庫に設ける予定にしています。やはり都市部から順次ということになりますけれども、御理解いただきたいと思います。

○根岸室長 特に有楽町の交通会館は便利ですので、あそこは特に事業主の方々が相談にいらっしゃりやすい場所ですので、是非そのへんも御利用いただければありがたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○村山調整官 あとはもう監督署が、使用者の方を取り締まるための場所だという意識も、昨今の状況からいきますと、相当変わってきているんですね。

○石嵜委員 ただし、労働刑法の議論をすると、やはり使用者はそう簡単ではありませんよ。

○矢野委員 うちもありませんね。

○村山調整官 寄せられた相談の件数をごらんいただきますと、事業主さんからの相談が相当多くなってまいりまして、都心部では特に事業主さんからの相談の電話の応対の方が忙しいぐらいの状況でございます。

○髙木委員 今、石嵜さんの言われることと裏表の話になりますが、最近監督官は非常に柔軟にやっておられるという話がありますので、その辺のバランスをよろしくやってください。

○矢野委員 あっせんの方で、担当部局を最終的には労働局でもいいだろうということにしたんですが、総務部にしたのは、刑法をつかさどっているところと、あっせんをやるところははっきり分けなければいけないと。ところが、だんだん前に行けば行くほど、一緒になっているという印象にならないようにした方がいいと思うんです。窓口の皆さんは非常に良心的にやっておられるつもりだろうと思うんですけれども、そういうところから電話があって出掛けるというのはなかなか大事でございまして、やはり運用面ではちょっと違うんだということを、いつも、特に相談員の方々が念頭に置いて上手に仕分けをしていけば、かなり解決することも多いと思いますので、是非そこを留意していただきたいと思います。

○菅野座長 では、よろしいでしょうか。予定した時間も過ぎておりますので、厚生労働省、それから東京労働局からのヒアリングはこの辺にしたいと思います。
 本日は、お忙しいところありがとうございました。

○齊藤参事官 休憩の前に、本日のヒアリング出席者というペーパーの変更と訂正をお願いできますか。
 厚生労働省の島谷敏明さんというところが、田村定さんに変更になります。
 東京労働局の村中隆さんと書いてありますけれども、村山隆さんです。
 失礼しました。以上です。

(厚生労働省説明者・東京労働局説明者退室)

○菅野座長 ただいまから10分間休憩いたしますので、20分から再開いたします。

(休 憩)

○菅野座長 それでは、次に労働委員会からのヒアリングを行いたいと思います。本日は、中央労働委員会の山口浩一郎会長、東京都地方労働委員会の藤田耕三会長にお越しいただきました。
 本日は、お忙しいところ労働検討会のヒアリングにお越しいただき、ありがとうございます。
 早速ですが、中央労働委員会の山口会長の方から、着席のままで結構ですので、20分程度の御説明をお願いいたします。

(労働委員会からのヒアリング)
○山口会長 それでは、座ったままで失礼させていただきます。中央労働委員会の山口と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 今日は、労働委員会のために、こういう機会を与えていただきまして、大変感謝申し上げます。無権代理ではありますけれども、多分御追認いただけると思いますので、藤田都労委会長ともども御礼申し上げたいと思います。
 私の方は、主として中労委の実情を、審査を中心にお話し申し上げたいと思います。事前に委員の関心事項を伺っておりますので、それを踏まえまして、私どもの方で20分程度話させていただきまして、御質問の時間があるようですから、足らないところはそのときに御遠慮なくお聞きいただきたいと思います。
 まず最初に「不当労働行為事件の現状」でございますけれども、「不当労働行為事件の審査手続(流れ図)」を用意してございますので、これに従って御説明を申し上げます。
 再審査の手続は、5つの段階がございます。最初に再審査の申立て、次に調査、3番目に審問、4番目に命令の起案・合議、5番目に命令書の交付でございます。
 なお、このような手続と併せて、調査の段階から命令を交付するまで和解を併行して行っております。和解は、どの段階でということはなく、随時行うという感じになっております。
 再審査の申立がございますと、会長は担当職員を指名いたしまして、続いて公益委員の中から審査委員を選任いたします。この審査委員は、中労委の場合原則として1名でございます。
 そして事件が係属したことを総会、公益委員会議に報告いたしますが、これは事務局の方が担当いたします。
 事件が係属いたしますと、労使の委員の方から参与の申出があるのが普通であります。労働側の参与委員は、当事者になっております労働組合の組織系列の関係で申出がない場合もございますが、ごく普通の事件でありますと、参与の申出がありまして、これを参与委員と言っております。
 参与委員は、労側が1名、使側が1名でございまして、この3人で一応パーティーという形になって事件に取り組むということになっております。
 しかし、この参与委員というのは、担当審査委員であります公益委員とは非常に違った立場でございますので、この点は後ほど申し上げます。
 参与委員が決まります間、事務局の方では初審命令の履行状況を調査いたしまして、命令が履行されていないということになりますと、初審命令の履行勧告というものを行います。
 そして、いよいよ調査ということになり審査に入るわけですが、その前に公労使の委員に対しまして、事務局の方から事件説明をいたします。これは、どういう事件で、どこが争点で、初審命令はどういうふうにそれを判断したのか、不服の申立てはどういうことで、どこが再審査の問題点かというようなことを説明するわけです。
 そして調査が始まります。調査では主として主張、争点の整理、証拠の整理、殊に証人の採否の決定をいたします。これを基にして事件処理の方針を決定して、必要がありましたら審問計画などを作ります。そして、審問開始の決定をして、審問に進むということになります。
 調査は、中労委では大体2、3回程度行われます。
 審問手続に進みますと、審問では、当事者の陳述、証人・証拠調べが中心となって行われます。中労委の場合は、調査のときに主張、争点、証拠の整理をかなりいたしますので、証人の数は非常に少なくて、大体2、3人であります。ですから、審問も大体2、3回で終わることになります。その後、当事者の最終陳述があり、結審ということになります。
 次に、命令の起案に取りかかるわけですけれども、この起案はどういうふうになされるのかと申しますと、結審した段階で担当審査委員が職員に事件の心証とか、命令の起案の方向を指示いたしまして、それに基づいて担当職員が起案します。担当職員は班編成になっておりまして、命令の起案作業のほか、合議の資料の作成も担当いたします。
 その中で、部内の検討も行いますが、まず、命令案の事務局内部での検討を行い、その後審査委員を加えた委員検討というのをいたしまして、最後に会長に起案が終わったという報告がまいりますと、命令案が固まったということで、公益委員会議の合議にかけるということになります。
 合議に先立って、労使委員から意見開陳を受けます。
 さらに、組合の資格審査をいたしまして、それから合議を行い、合議の結果に従って命令書を交付するという5段階となっています。
 皆様方からいただいております質問の中で、この手続に関連して申し上げておいた方がよいと思われる点がありますので、それを申し上げますと、まず初審と同じ証人が再審査でどの程度再度採用されているかという御質問があります。これは、なかなか調べにくいのでありますけれども、初審での証人が再審査で、どれぐらいの比率で証人として重複して採用されているかというものを調べてみますと、その数は大体3分の1となっております。
 調査で主張、争点の整理をいたしまして、証人の採否を決定してから審問に入りますし、審問が2、3回でございますから、一応証拠調べは、計画的になされていると申し上げてよろしいと思います。
 つまり、すべての審問期日は審問に入る前に決めてあり、審問期日には誰を証人として調べるかも決まっているということであります。
 審問を7回、8回、9回とやらなくてはいけないということになりますと、こういう計画的な証拠調べがどの程度できるかわかりませんが、中労委の場合には審問の期日が2、3回でございますから、こういうふうになっております。
 中労委の場合には、1回の期日で主尋問と反対尋問とを同時にやっております。ですから、1期日の時間は大体4時間、主尋問2時間、反対尋問2時間でありまして、反対尋問の方は、主尋問が2時間ですと必ず弁護士さんの要望で2時間差し上げないと問題が起こりますので、2時間ということにしていますが、実際は40分で終わったりするということは結構ございます。
 合議でございますけれども、合議は最近非常に活発に行われています。私が司会役ということになっているんですが、いろんな問題点が指摘され、非常に活発な議論が行われております。
 ただ、定例総会の日に公益委員会議が開催されますので、月2回で1回につき、2、3時間かけて行っておりますので、1回にできる件数は2件程度が限度となっております。
 これに関連しまして、命令書に証拠の摘示ができないかという御質問をいただいておりますが、公益委員のかなりの先生方は、将来的にはそういうふうな方向が望ましいと思っておられるのではないかと思います。しかし、現在の段階では、一般的に申しますと、非常に難しいと申し上げるほかないと思います。それは、証拠の摘示をするということになりますと、地労委の段階から全部やらなければ意味がございませんし、もう一つは行政処分に証拠の摘示をするということが、果たしてほかの行政処分とのバランス上どうかという問題もございます。
 もっとも、中労委の合議では命令案に採用した証拠を摘示したものを合議資料としております。そういうことですので、裁判所との関係では、裁判所の方から釈明がございますれば、証拠を摘示することにしておりまして、これは今後ともこのように続けていくつもりでおります。
 また、労働委員会と裁判所に重複して係属する事件がございますが、それについての協議の必要性をどう考えるかという御質問がございました。私どもといたしましては、全ての事件について機械的に協議をするということまでは必要がないかと思いますが、進行の協議をした方がうまく進められる事件はかなりあるのでございまして、殊に裁判所の方もそうなのではないかと思いますが、私どもの方でも、裁判所で和解が進んでいるという状況になったときに、どういうふうに進んでいるのかは、是非知りたいとかねがね思っている次第です。ですから、何らかの形でこういう仕組みがあれば、非常に助かると言いますか、ありがたいという気がいたします。
 次に、公労使委員及び事務局の果たす役割でございますが、公益委員は会長の指名を受けまして、担当審査委員となって事件を審査する、指揮するというのが役割であります。そして、労組法第24条第1項本文では不当労働行為事件に関する処分には公益委員のみが参与することとなっておりますから、審査は公益委員が行うというのが法律の建前です。
 しかしまた、同項但書では、労使委員が審問に参与するのを妨げないとなっておりまして、労働委員会規則では調査を行うにあたり協力を求め得ると、また、審問では審査委員の許可を得て尋問とか意見の開陳ができるとなっておりますので、参与委員として御協力をいただいているということになります。
 しかし、参与委員の一番の御活躍の場は、先ほど随時調査から合議の段階まで行っていると申しました和解であります。和解は、参与委員からの当事者に対する意向の打診、事情の聴取だけではなくて、和解案の作成とか当事者の説得といった労使の参与委員の方の御尽力がなければ、とても進むものではありません。ですから、法律の条文から見ますと、労使の参与委員の方の審査事件への関与というのが非常に軽いようになっておりますけれども、労働委員会の事件は和解で解決する事件が非常に多うございますので、実際上は労使の参与委員の方の役割は非常に重要であると申し上げたいと思います。
 事務局は、形の上では審査委員を補佐するということでございますが、調査、審問に立ち会いますし、先ほど御説明しましたように、命令案の起案の最初の段階を行いますので、実質上の役割は非常に重要であります。労働委員会は三者構成でありますが、実は事務局を入れた四者構成なんだと言われることもありますが、それは事務局の役割の重要さを表しているのだろうと思います。
 中労委では、事務局は班編成にしてございまして、現在一般案件の審査では1班2名で、12班の構成にしております。
 これに関連をした御質問として、職員に必要な知見とか能力はどういうものが考えられるかということでございますが、これは形式的にお答えするか、実質的にお答えするか、非常に難しいと思います。
 労働委員会というのは、公益委員が中心になって審査事件を扱うようになっておりますが、公益委員というものには特に資格上何の限定もありませんで、誰でも務まるようになっているわけでありますから、それを補佐する職員にも特別の能力を法律は要求しているとは思えません。形式的に言えばこういうことですが、実際に行っている職務という観点から申しますと、やはり事実認定の技能と言いますか、記録を見て事実関係を判断できる能力というものが、かなりの程度なければいけないと思います。この課題を、私どもは研修をどうするかということで解決しようとしているのでありますけれども、事実認定というのは、口で言いましても実際は難しい仕事であります。記録を見て、事実関係を的確に判断できるという基本的なところだけはないと、やはりこの仕事は向かないのではないかというふうに思っております。
 次に、事件処理の現状でございますけれども、資料のIIのとおりでございます。資料IIの1と2をごらんください。これは、取扱件数の統計でございまして、初審、再審とございます。新規申立件数は、大体初審はこのところ350 件ぐらい、400 件超えているときもありますが、ずっと見ますと平成の中ごろからは350 件ぐらいとお考えいただいてよろしいと思います。
 再審査は、新規申立は大体65件ぐらいです。この件数を処理する能力が、労働委員会にありますならば、事件は滞留をしないということになるわけであります。
 続きまして、資料II-4と5の表を見ていただきますと、実は初審、再審とも非常に処理日数が長い期間に及んでおります。初審では13年度ですと2,995 日でありますけれども、これはちょっと特殊な要素がございます。長く係属しておりました、地方公務員関係の事件の決定が多数出された特殊要因によるものです。
 大体それ以外の年を見ますと、600 日の中ごろから700 日の中ごろで、次第に処理日数が減ってきているというのが特徴であります。
 再審査の方も、少しずつ減ってきておりますけれども、1200日ぐらいかかっているということであります。これが審査が非常に遅延していると言われていることで、確かにそうだと思います。
 平均処理日数を初審と再審を比べてみますと、特徴がありまして、初審の方は審問に非常に時間が取られているのであります。これは資料II-5の表を見ていただきますと、第1回審問から結審前までの期間というのが、初審では一番時間を取られておりまして、再審はここのところは非常に短いのでありますが、結審から命令書交付までの期間に時間を取られております。こういう特徴がございます。
 この平均処理日数につきまして、類型別の平均審理期間がわからないかという御質問がございますが、そういう形での統計は取っておりません。と言いますのは、普通の事件は初審の申立でも、再審査の申立でも、1号と3号と組み合わせてくるか、場合によりますと2号と3号が組み合わさったりしていまして、1号、2号、3号、4号の独立した申立ては非常に少ないのであります。
 そこで、御質問につきまして、再審の場合はあまり事件がございませんから、13年の事件だけ独立のものがないかどうか調べましたところ、1号の不利益取扱事件では1,427 日、2号の団交拒否は334 日、3号の支配介入は1,779 日、4号事件はなしということでございます。
 処理事件の長期化の要因については、従来からいろいろ言われてきております。まず事件の複雑化、例えば賃金差別のような事件が出てきますと、訴訟で言いますと何か選挙訴訟みたいなものでありまして、非常に時間がかかるというのが第一点。
 2番目は、合同労組申立事件、それが半分近くになっておりまして、これは形としては団交拒否として係属することが多いのですが、実際は個別紛争でありまして、形と実際の紛争の内容が違っておりますので、進め方が難しい事件であります。
 3番目に、和解も見極めが難しくなってきておりまして、和解の成立も難しくなっております。これらの点はすべて私もそうだろうと思っております。
 中労委に限って申しますと、事件が滞留をし始めたのは、賃金差別事件が登場してからであります。何とか努力をしまして、滞留解消へ向けて少し動き始めたところへ、JR事件がどかっと係属してまいりました。これは昭和62年から初審に事件が上がっておりますけれども、統計をごらんいただいたらわかりますが、年に160 件ぐらいの事件が係属したわけでございます。それが係属してくるにつれまして、事件が滞留していかざるを得なかったということであります。
 それに合わせまして、実はこれはどの労働委員会も抱えている問題と思いますが、中労委でありますと本省とのローテーション人事になりましたので、なかなかうまく人の配置ができない、昔は中労委が独自に採用しておりましたので、配置とか年齢を考えて人を動かすことができましたが、人事上の問題が内部的にも処理能力というものを非常に低下させた原因ではないかという気がしております。
 私個人としては、一番大きな原因は、これではいけないという認識が当時は余り強くなかったのではないかという気がしております。
 最近は、これではいけないという気持ちは非常に強く浸透しておりますので、少しずつではありますが、改善の兆しが見られるようになっております。
 和解の評価は、非常に難しいと思います。今、私どもではJRの事件が和解でかなり落ちておりまして、ついこの間も13件が取り下げられましたし、去年の12月にはやはり6、7件取り下げられているわけですが、恐らく皆さん御覧になっていて、和解で解決したからよかったものの、解決しないで命令交付ということになったら今まで何をしていたんだとおっしゃるだろうと思います。和解は、やはり潮時とかタイミング、見切りの判断が非常に難しゅうございます。
 次に、適正・迅速な解決に向けた取組でありますが、中労委では公労使で審査の迅速化のための懇談会というのを設けておりまして、初回の審査までと、調査・審問と、結審後の3ステージに分けまして、改善の方向を探っております。
 先ほどの事件、処理日数の表を見ていただきますと、再審では結審してから命令交付までの期間が長いのでありますが、実はその前に申立から第1回調査までの期間も長いのであります。今、これを何とかしたいと思っておりまして、いろいろ改善の試みを考えているところであります。
 2番目は、審査体制の機能強化でありますが、平成10年に一般事件班とJR班・行訴班という、機能別の編成にいたしまして、行訴班を除きまして、一般事件、JR班は12班の構成にして、事件の特性を活かして解決していくような班の構成としております。
 3番目は、合議の体制でございますが、小法廷方式というのを導入できないだろうか。中労委は現在公益委員15名の体制でありますが、定例総会の日に公益委員会議を開きますので、公益委員会議は年に何回開けるかと言いますと、最大で23回程度です。1回の合議に2件かけまして、最近1回でも合議が終わらない事件も結構ありますが、仮に1回で合議が終了するとしましても、処理能力は46件であります。大体65件ぐらい係属してまいりますので、和解で事件が1件も落ちなければ、これは事件が滞留する一方であります。こういうことで、できれば、小法廷方式がとれないかということを考えております。
 次に中労委と各地労委との連絡協議会があります。全国労働委員会連絡協議会での取組みについてですが、平成12年の7月に、あり方検討委員会報告として、いろいろ審査体制の強化とか指摘がありまして、この報告書を基に各地労委でも可能な事項は既に取り組んでおられると思います。その後の制度改善は、現在制度基本問題ワーキンググループというワーキンググループで検討中でございまして、本年7月の運営委員会報告に向けて現在最終的なとりまとめをしているところであります。これを待って、全労委協議会の方では動いていくということになると思います。
 最後に取消訴訟への対応でありますが、取消訴訟の方の資料は、まず資料II-9の最後に付けてあります。「命令に対する不服状況」を御覧下さい。取消訴訟は労働側は少ないんですが、使用者の方を見ますと、大体初審、再審査を、大ざっぱに言いますと、8割近いというふうに申し上げていいと思います。次に資料II-3の取消率で言いますと、地労委の方が2割、中労委の方が38%で、切り上げますと4割ということに形の上ではなりますが、これはJR事件が含まれておりますので、これを仮に特殊な事件として除きますと、初審が16%、中労委で25%というぐらいになると思います。
 ただし、これをどう評価するか、これは取消率が高いというふうにも評価できますし、事件の性質からいってこの程度かなということもできると思います。
 取消訴訟における問題点と課題でございますが、取消訴訟は従来から制度的にもいろいろ問題が指摘されておりますが、それは今日ここでは触れないことにいたしまして、審級省略の問題というのがございますけれども、これはやり方も一つではなくて、いろいろな方法があり得ると思います。そして、目下先ほど申し上げました全労委のワーキンググループで検討中でございますので、それをさしおいて中労委として御意見を申し上げることは、差し控えたいと思います。
 ただ、審級省略がなされましても、十分労働委員会としてやっていけるように審査体制の強化充実を目指して、最大限の努力をしていきたいというふうに考えております。
 取消訴訟との関係で、一つだけ労働委員会の方から見た問題点を申し上げておきますと、それは緊急命令についてであります。緊急命令は、本案の判決と同日に出されるというのが最近の裁判所の傾向でございまして、制度本来の役割を果たしていない。労働委員会の救済命令は、緊急命令を出していただきませんと単なる紙切れといっても過言ではないと思いますので、私どもにとってはこれは非常に由々しい問題なのであります。
 これを、何とか裁判所が早くお出しいただくようにしていただきたいというのが、私どもの心からの願いでございます。
 最後に、個別労働関係紛争処理への対応ということでございますが、現在どのように地労委の方で進みつつあるのかというのは、資料としてお付けしてございますので、それを御覧いただければと思います。
 中労委の仕事としては、助言・指導というのがありますが、これは自治事務との関係で、地労委の御意向をよく伺ってから、どういうことをすればいいのかということを見極めていきたいと思っております。
 資料にはこのほか、中労委では、一般企業、国営企業、独立行政法人の調整事件も抱えておりますので、中労委としてはこれも重要でございますので、調整関係の資料もお付けしてあります。後ほど御覧いただければと思います。
 長くなりまして、恐縮です。

○菅野座長 どうもありがとうございました。それでは、藤田会長の方から、20分程度でお願いいたします。

○藤田会長 東京都地方労働委員会の藤田でございます。座らせていただきます。
 ごあいさつの方は、先ほど山口会長が無権代理とおっしゃいましたけれども、喜んで追認させていただきます。時間がございませんので、一応レジュメに従って進行いたしますけれども、要点に絞ってお話させていただきます。
 地方労働委員会の役割等は、もう御承知のとおりでございますが、審査と調整、不当労働行為事件の審査と、労働関係調整でございますけれども、現在の都労委での委員による仕事の処理は、不当労働行為の審査に集中している状況でございまして、あっせんについてはほとんどが職員によって処理されております。これは後ほど申し上げますが、委員の負担の過重という問題があるわけでございましてその結果として、都労委の委員の精力のほとんどは、不当労働行為事件の審査に注がれているという現状でございます。
 一番近いところで、平成13年の新受事件数を申し上げますと、調整事件が168 件、不当労働行為事件が96件でありまして、不当労働行為事件は大体年間100 件前後で推移しております。
 委員による事件の処理ですが委員の構成は資料に出ているとおりでございまして、公益委員、使用者委員、労働者委員、それぞれ13人で合計39人でありますけれども、非常に負担が重い状況でございます。公益委員は、1か月に10件~12件の審理にあたっております。1日1件ではなくて、何件かやる場合もございます。私が最初に公益委員になりましたときに、事前のブリーフィングで大体週2日ではちょっと足りない、2コンマ何日かやっていただくことになると言われました。委員によって多少担当事件の多寡がございますが、平均して週2~3日は務めているということでございまして、公益委員としては、かなり負担が重い状況でございます。資料にありますように、大学教授とか弁護士とか、いろいろ忙しい本務を抱えてのことでございますので、都労委では負担の重さということが問題であると思います。現に、大学教授で公益委員になられまして、普通は3期はおやりになるんですけれども、1期でどうしても引きたいと申し出られた方がございました。というのは、司法制度改革の一環で法科大学院の検討に引っ張り込まれているので、とても両方はできないということでした。弁護士の委員の方は、3期務めますと6年間ということになりますので、先ほど申し上げましたように、週2~3日都労委に出てくるということになりますと、本業の方への影響が大きい。6年間務めて帰られた方がクライアントが激減したと嘆いておられましたけれども、そういうようなこともございますので、これをどういうふうに考えるかということが、後々の課題の一つでございます。
 公・労・使の委員の任命の枠組みですが、所管部局は知事部局の産業労働局で、そこで任命に関する事務を処理するということであります。
 事務局ですが、これは単なる手伝い役ということではありません。裁判所でも書記官がコート・マネージャーという役割を担って活躍しておりまして、組織として仕事をするという形になっておりますが、労働委員会でも同じでございます。不当労働行為事件について申し上げますと、事務局の職員が2人指名されます。主担と副担ということでありますが、この担当職員が縁の下の力持ちとして活躍しております。当事者との折衝等も、命令の起案もそうですけれども、そういう点からすると、職員の担っている役割は非常に大きいわけですが、そこからまた問題が生ずるということもあるわけです。先ほど山口会長がおっしゃいましたけれども、大きな組織の中の一つの部局ということになりますと、どうしても人事はローテーションで動くということになります。そうしますと、労働委員会での仕事は、都庁の中では極めて特異な仕事でございます。公益委員会議である担当職員が申しましたけれども、都庁のほかのセクションでの起案は、ほとんどみな箇条書きのようなことで済むものばかりである、労働委員会では、何十ページ、何百ページということもあるわけですが、こういう長文の起案をさせられるのは、労働委員会だけであると申しておりました。そういう意味で、特異な内容の仕事に対応するための専門性がどうしても必要になります。しかし、一方で、組織の中でのローテーション人事もまた避け難いことでして、本人の将来への希望等もございますから、引き止めるということもできないという面もございます。そういう点で、重大な職務を担いながら、その専門性の養成、維持が、なかなか困難であるということがございます。いろいろな対策を講じておりまして、レジュメにありますように、行政専門職制度を導入する、専門副参事という専門職、現在の職員は労働委員会に骨を埋めてもいいという人ですけれども、すべての職員がそういうわけではございませんので、問題があるということです。
 次に、現在の事件の状況でございますけれども、お手元の資料の2~9までに、都労委での事件処理の統計的な数値がございます。
 先ほど不当労働行為事件の昨年の新受事件が96件と申しましたが、一昨年は124 件でございまして、全体として見ますと、調整事件も含めまして、全国の地方労働委員会の新受事件の大体3割前後ぐらいの事件が都労委にきているということになります。昨年は少し3割を割りましたけれども、一昨年は3割を超えております。不当労働行為事件につきましては、13人ずつの委員がおりますが都労委では負担が重いという状況であります。
 資料の3をごらんいただきますと、終結結果が出ておりますが、不当労働行為事件の終結結果の特徴と申しますと、取下・和解が75%になっております。無関与和解、関与和解を含めまして、たくさんの事件がこういう処理結果になっているということが一つの特徴であります。
 全国の中での比率は、資料4にございます。大体30%前後で推移しているということであります。
 平均処理日数でありますが、処理日数の長期化の点については、先ほど山口会長から紹介がございました。これが、非常に重要な課題になるわけですが、この点については資料6から9までをごらんいただければと思います。
 申立から終結に至るまでの審査手続進行の主なパターンが、レジュメの2ページに書いてございます。一応こういうような流れであるということでありまして、ちなみにこの4つの中で一番多いのがⅳ、次いでⅰというのが最近の風潮のようですが、これはケース・バイ・ケースでもございます。
 事件の担当委員・職員でありますが、委員は公・労・使各1名が組んで担当致します。公益委員の担当審査委員が決められまして、総会で労側、使側の参与委員が指名されるということでございます。
 事件が、それほど輻湊していない地労委の場合には、複数の委員あるいは全員で処理される例もあると伺いましたけれども、都労委の場合は先ほど申しましたように非常に負担が重いということもございまして、複数の担当審査委員がいる例は、現在はございません。
 労使の参与委員については、調査手続から参与していただいているのが実情であります。私も担当している事件については、調査の第1回の期日からすべて労使の委員に入っていただいております。担当職員は、先ほど申し上げましたように、主担・副担の2人でございます。
 まず調査を行いまして、労使の参与委員とともに、審査委員が事件の争点整理と証拠整理をするわけで、訴訟での弁論準備に当たるのですけれども、先ほど、不当労働行為事件の終結区分では、和解が非常に多いということを申しましたが、当事者の側でも和解の機会をつかむという意図で申立をしてくるという事件もかなりございます。そこで、この調査の段階でも和解の瀬踏みをする。その結果、本番の和解に入る場合もございます。組合結成と同時に全員解雇という事態になった事件で、第1回の調査期日で和解が成立したというようなこともございました。
 そういう意味では、調査段階で争点整理、証拠整理ということを目標にするのですけれども、和解についても機会を探るわけです。申立前の段階での話し合いの状況とか、現時点での双方の和解についての意向などについても調べるということが多うございます。そういう意味で昔の弁論兼和解のようなものもございます。
 次に審問に入りますが、争点整理、証拠整理を受けて、書証等につきましても、必要なものは全部出していただく。それから、人証として予定されている人の陳述書も全部出していただきます。そうした上で証人尋問に入るわけです。ところが、先ほど申し上げました事件負担の過重の関係で、なかなか期日が入りにくいということがございます。全件速記者を付けておりますが、なかなか次回期日が入らない。双方の代理人、弁護士等、担当の審査委員・参与委員、全員の都合がつく日というのは、なかなか見付けられないということで、心ならずも先に延びるということもままございます。
 審問に入りました事件については、多くの場合は調査で和解の打診をしておりますので、成立の見込みがないということで審問に入る場合が多いわけでありますけれども、審問の中途、あるいは審問が終結した段階で、再度和解を試みる、ということもございますし、その段階で和解が成立する事件もかなりございます。
 命令は、担当職員と担当審査委員が、参与委員の御意見も伺った上で、起案にかかるわけでして、先ほど命令書への証拠不摘示の問題がございましたけれども、公益委員会議にかけるときには、認定に使った証拠を担当職員が掲示しております。命令には、記述しておりませんけれども、証拠に基づいて認定しているわけです。
 「命令取消訴訟への対応」は、法曹資格のある方に訴訟代理人になってもらい、担当の職員を指定代理人に指名するということでやっております。
 現状の紹介は以上でありますが、将来的な課題ということになりますと、山口会長から御指摘がありましたように、全国労働委員会連絡協議会運営委員会の方で、いろいろな改善方策を考えて、改善のためのワーキンググループを幾つかつくって検討をしている段階でございます。今後の全労委の運営委員会、あるいは総会でその成果が示されるわけであります。一応都労委として考えている課題というのを申し上げますと、何と言っても審理の迅速化ということが、最重要かつ緊急な課題であろうかと思われます。
 先ほど申し上げましたように、都労委ではかなりの負担の過重という事がございまして、なかなか思うように次回期日も入らないわけです。これを改善するためにどうしたらいいかということですけれども、これは裁判所の民事訴訟と同様でありまして、早期に争点整理を徹底的にやる。それから証拠調べについては、できるだけ集中審理を心掛けるということに尽きます。しかし、これが都労委の現状からいきますと、なかなかそう簡単にはいかないわけであります。労働事件は人事事件と並んで、いろいろな周辺事実が重要で、背景立証も必要となります。研修所で教えているような要件事実だけでは割り切れない。あるいはその要件事実の内容を成しているもろもろの間接事実が立証課題になるわけでありますので、その整理についても、かなりの労力を要します。それから、集中審理につきましては、先ほどの負担の過重の問題が障害となっているということであります。
 これを、どういうふうに改革したらいいかということでありますが、これにはいろいろな問題が絡んでいるわけでありまして、司法制度改革の審議の際にも多くのことが議論されました。1つには次回期日が入りにくいということがあります。委員側の方の問題もございます。先ほど申し上げましたように、担当審査委員、労使の参与委員の都合がなかなか合致しない、あるいはほかの担当事件の期日と重なって入れられないということもございます。しかし、もう一つのより大きな理由は、当事者の代理人の弁護士の方たち全員の都合が合致する日がなかなか取れないという点にあります。これは司法制度改革の重要な内容になっております弁護士制度の改革も関係があるのですけれども、弁護士の執務態勢の問題です。法人化の問題等もございますけれども、労働委員会での審理の迅速化について必要なことであろうかと思われます。
 組織体制の強化は必要でありますが、委員について言えば、先ほど申し上げましたように、これ以上の負担を求めるのは、公益委員については無理ではなかろうかと思われます。委員の一部常勤化とか、あるいは員数の増加とか、職員につきましても、先ほどの専門職としての質的な問題もございますが、やはり量的な問題、人数を増強するということを、各地方公共団体でお考えいただかなければならない点ではなかろうかと思います。
 もう一つの問題は、命令書の起案に、かなりの時日を要しているという実情がございまして、先ほどお話しましたワーキンググループの検討課題として、命令書をどうするかということが、一つのテーマとして検討されているわけであります。
 都労委におきましても、公・労・使の委員で審理の迅速化、勿論命令書の問題も含めてでありますが、審査の迅速化に関する検討部会を設置いたしまして、検討を開始したところでございます。事件によっては裁判所の判決書のような命令書が必要かもしれませんけれども、事件の迅速処理を犠牲にして、緻密な命令書を要求するのが、果たしていいことなのかどうかということから申しますと、労働事件につきましては、やはり迅速に処理するということがより必要であろうと思われますので、そこら辺の改善も心掛けなければいけないと思います。
 さらに、手続の強化も必要と思われます。証人尋問はいたしますけれども、任意に出てきてくれない証人についてはどうにもならないということがありますし、宣誓もさせられないということがあります。極端な事例としては、一方当事者が何も立証しないという事件もありましたけれども、それならそれで判断せざるを得ないわけであります。そういうような手続でいいのか。
 先ほど緊急命令のことを山口会長がおっしゃいましたけれども、事件によっては、裁判所と労働委員会に重複して事件が係属する事例がかなりございます。何故かと申しますと、実効確保の措置という制度がございますけれども、強制力もないし執行力もない。内容的にも実効確保の措置でどこまでのことができるかという限界の問題もございます。そういう意味では、強力な保全措置についての権限が労働委員会に与えられていないということが、手続の弱点としてあるわけです。
 「再審査制度・取消訴訟制度の再検討」ですが、再審査制度に関しましては、労働委員会の事件処理の自治事務化というようなこともあって検討されておりますし、取消訴訟制度については、審議会でも一審省略とか実質的証拠の原則というような方策が検討されました。しかし、迅速に処理するために、審級省略をすることがいいのかどうかというと、これまた問題でありまして、今のような労働委員会での証拠調べの現状を前提として審級省略をするということがいいのか悪いのか。地裁と高裁との事務分担の適正ということもありますし、緻密な証拠調べをするのに、地裁が適当か、高裁が適当かということも問題がありますから、そこら辺も考えた上で、全体的な制度検討をする必要があろうかと思われます。
 「個別的労使紛争の処理」ですが、東京都労委がやるかやらぬかということになりますと、やはり労使の委員の意見が必ずしも一致しないということもありまして、やっていないように見えるわけであります。しかし、先ほどお話のありました合同労組の事件ですが、都労委では、あっせんでは8割ぐらいは合同労組事件、不当労働行為事件でも半分ぐらいは合同労組事件でありまして、実質的には個別的労使紛争が集団的労使紛争の衣を着てやってきているという状況でありますので、実質的にはやっていないわけではない。しかし、これを公然とやりますよということにするためには、やはり組織体制の強化をやっていただかないとなかなか難しいという現状であるということでございます。
 「公的扶助制度の整備」ですが我々から見ますと、労働委員会での審理・審問は、裁判所のような手続でありますので、多くは双方に弁護士が付いて、クロス・エグザミネーションという形で、裁判所的に進行するということです。そうして、いざ和解ということになりますと、やはり弁護士費用の問題がからむと思います。解決金という話が出てくると、使用者側からよく非難される。どうして労働委員会は何かというと解決金を持ち出すんですか、と言われるんですけれども、労働者側からすると弁護士費用を自力でカバーするのは、なかなか難しいということもあるのではなかろうかと想像するわけであります。そういう意味で法律扶助のような公的な扶助が考えられないか。審議会では弁護士費用の敗訴者負担ということが大変問題になりましたが、そういう取り上げ方もあろうかと思いますけれども、法律扶助でカバーするということは考えられないのか。法律扶助ですと、立て替えだから、結局は返済しなければならないじゃないかと言われることがあります。日本の法律扶助ですと、7割か8割ぐらいは償還されているということでありますが、イギリスでは年間2千億円ぐらいの法律扶助をしているわけですけれども、償還率が非常に低いという話を聞きました。それは、ある意味では償還させるのが適当でないような事件については、させていないということもあるのではないかと推測致しました。法律扶助、公的扶助というようなことも、労働関係紛争の処理、労働委員会の手続で念頭に置いて、何らかの手を打つ必要があるのではないかということですが、これは全く私個人の考えでございます。
 いろいろ申し上げましたけれども、少し変わったことを言ったなというところは、すべて私の個人的な見解でございまして、労働委員会で議論した結果ではないということをお含みいただきます。以上でございます。

○菅野座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして、20分程度御質問をいただきたいと思います。どうぞ。

○村中委員 非常に忙しい委員会と、暇なところがあると思います。非常に忙しい都労委と中労委なんですけれども、委員の常勤化ということを今、おっしゃったわけですけれども、今までも忙しいというのは都労委も中労委も変わらなかったと思うんですけれども、委員の常勤化をされなかったのには理由があったのでしょうか。

○藤田会長 もう一度、お願いします。

○村中委員 常勤の公益委員をつくるという可能性があるんじゃないかとおっしゃいましたけれども、忙しいのは都労委も中労委も昔からずっと続いているわけですね。たしかに常勤の委員を置かれると、それだけ期日を入れるのも簡単になりますし、どんどん促進ができると思うんですけれども、そういうことを一切試みられたことはなかったということには何か制度上できないとか、あるいは予算措置の上でも無理だとか、特別な理由があってそういうことをされなかったということなんでしょうか。

○山口会長 公益委員の常勤化ということが、審査強化の方向として強くは議論されなかったことは事実ですが、私もそれがなぜかということは、よくつかんでおりません。ただ、今の議論として、委員を常勤化すれば、審査の促進に寄与するかどうかというのは、私自身はちょっと疑問に思っております。コミットメントの問題ではありませんので。それよりも、事務局の職員の強化の方が先決問題だという認識です。

○藤田会長 今まで東京都でどういう検討をされたかということは知りませんが、1つには財政上の問題もあるかもしれません。2つには、常勤ということになると人材の獲得が難しいという面があるかもしれません。専従化ということになりますから、何か仕事を持って活躍していらっしゃる方は就任するのが難しいということになりましょうから、そういう点も一つの阻害要因としてあるんじゃないかと思います。そういう意味で、一部の常勤化と申し上げたんで、何人かの常勤委員がいれば戦力強化になるのではないかということです。
 もう一つは、先ほど申し上げましたように、調査・審問でもすべて公益委員は一人でやっているわけなんですが、弁護士や大学教授のように法律の分野の方もおられますが、そういう方たちとは限らない。一方、労使紛争は、御承知のとおり非常に対立が激しい。特に審問に入るような事件は、和解ができなくて入っているわけですから、先鋭な対立が審問廷で起きるわけですけれども、そういう場合にプロの法律家でも、手続を円滑に動かしていくのがなかなか難しいという面がありますから、私はやはり単独でやるよりも、何人かの公益委員で組んで審査をするというのが望ましいのではないかと思っております。先ほど申し上げましたように、地方ではそういうことをやっているところもあるわけですが、東京では負担の関係でそれができませんので、数を増やしていただくのに加えて、質的に常勤化された委員ができれば、そういうような改善の努力もできるのではないかと考えて申し上げました。

○村中委員 ちょっと関係するんですけれども、命令を実際に書かれることに関してなんですが、実際に統計を拝見していると、かなり時間がかかっているようです。それには例えば公益委員会議で合議を経なければいけないとか、あるいは和解を進めているとか、いろいろ理由はあると思うんですけれども、命令を書いている方は、これは職員の方が書いておられていて、公益委員の方は書いておられないようですね。それは、公益委員の方は時間がないので職員の方に任せているということなのか、それとも先ほど少しおっしゃったように、労働委員会の場合は簡易迅速で、命令というものについても、それほど厳密なものを求めないので、職員の方は特に資格があるわけではないけれど、また、公益委員についても特別な資格は求められていないじゃないかという話でしたけれども、特に能力も必要ではないので、それで十分だとお考えになってきたということなのか。あるいは、過去にさかのぼってみたら、実際は公益委員が実は書いていたんだという事情があるのか、その辺りをお聞かせいただきたいと思います。

○山口会長 中労委で申しますと、委員が15名なんですが、今日のテーマでありませんでしたから、詳しく申し上げませんでしたけれども、中労委は一般の調整事件も若干ですが係属します。全国的な損保とか病院のほかに、国営企業の賃金調整とか、新しい独立行政法人の紛争も管轄しておりますので、どうしても調整事件の処理をにらんで委員を任命しているのだろうと思います。
 そうしますと、調整事件では欠かせない専門家であっても審査事件の方では、審査事件専門の例えば法律家から比べますと、ちょっと命令書きということになりますとどうかなということです。
 一方で、審査を支えてくださっている法律の専門の委員もいらっしゃるわけですが、そういう方は仮に起案されたものが事務局の職員がやったとしても、かなり目を通して直されますし、合議に出てくるときには、何回も委員が手を加えて書き直されたものが出てまいります。ですから、すべて職員が書いたものが出てくるというのは、イメージ的にはすごく違うと思います。

○藤田会長 都労委で申しますと、審問が終結しますと、担当審査委員と担当の職員2人が、合議と言いますか協議をします。事実認定について、どういう認定をするか、法律判断をどうするかということを、担当審査委員が担当職員の意見も聞いた上で指示をして、その指示に基づいて担当職員が起案する。担当審査委員が起案に手を入れて、公益委員会議に提出するという形でやっております。

○菅野座長 どうぞ、髙木委員。

○髙木委員 藤田さんにお伺いします。先ほど、いわゆる地方分権法の関係で、行政訴訟について都労委の場合は、代理人問題があるという御指摘がありましたね。

○藤田会長 はい。

○髙木委員 今、都労委からの命令で、いきなり東京地裁に行くというのは、どれぐらいの件数があって、さっき都労委のメンバーの方のリストを拝見したら、弁護士さん5人ぐらいで、件数によってはそれで十分対応できるというお話でしたのであえておっしゃったのか、その辺をお聞きしたいと思います。

○藤田会長 弁護士の委員に訴訟代理人をお願いし、そのほか担当職員を指定代理人に選任すると申し上げましたけれども、都労委からいきなり裁判所に行くという事件は比較的少ない。やはり再審査に行く事件が多いと思います。裁判所に係属している件数としては、現在地裁で5件、高裁で1件ですので、大体弁護士の委員で賄えるということです。
 それから、訴訟代理人の選任の仕方は、必ずしも、元の審査事件を担当していた委員を選ぶというわけではなくて、弁護士の委員の中からお願いして、訴訟代理人をやっていただくということでやっております。今のところ件数の関係で困るというようなことはございません。

○髙木委員 指定代理人の関係では、実態的には困ってないということですね。制度的には、何とかしなければいけないという御指摘だと聞けばいいですね。

○藤田会長 指定代理人については、労働委員会規則の関係で、どうなるかということがありまして、検討したんですけれども、地方自治法の規定でカバーできるという解釈で、指定代理人として選任いたしまして、裁判所の方でも特にそこのところで問題の指摘がございませんから、従来どおりやっております。

○髙木委員 藤田さんは、裁判所にもおられ、労働委員会にもおられ、両方やっておられるという意味で、例の審級省略などいろんな御意見をお持ちだろうと思いますが、これは現に労働委員会のワーキンググループでもいろいろやっておられる最中なんで、この場でどうということではないと思いますけれども、私ども労働組合の立場で労働委員会にいろいろ関わってまいりまして、私も中労委の委員を2、3年やらせていただいたんで、私も同様の責任ありと思わなければいけない一人なんですが、お互いに問題の所在を、裁判所の方も労働委員会の方もよくわかっておりながら、長い間、小田原評定の世界にいろいろな問題を置いてきたわけですね。ところが、今ここへきていろんな議論をなさっておられるんですが、どちらかというとお互い怠慢だったということなんだけれども、裁判所の方ももう少し知恵をお出しになられるべきじゃないかというような印象を持っているんですが、その辺両方経験されたお立場で、どのように認識されているのか、お聞かせいただきたいと思います。

○藤田会長 お互いに別にやるべきことをサボっていたという意識ではなかったのではないか。本来制度としては、労働委員会でこれだけの時間をかけて、それから裁判所で一、二、三審をやるということを想定してつくった制度ではないのではないか。そういう意味で、審議会でも労働委員会の在り方を論じて、制度の内容の改善・強化ということをやらねばいけない、それがまず最初に取り組むべきことではなかろうかと申し上げました。先ほど山口会長が申されたワーキンググループや都労委の検討会が、今一生懸命にやっているわけですが、裁判所の労働関係訴訟が審理期間の半減を目指すということになりますと、1年以内に結論が出ることになる。そうなると、労働委員会が生き残るためには、もっと短い期間で結論を出さなければならない。行政処分で、ジュディシャル・レビューがあるんだから、私はそれでいいんじゃないかと思っております。そういう意味で労働委員会制度の在り方も考えて、その上で裁判制度の改善も考えたらどうか。一審省略とか実質的証拠の原則という議論もありましたけれども、その前に労働委員会制度をどうしたらいいかということを考えた方がいいんじゃないかと申し上げました。現実論から言うと、地裁と高裁の負担の面からして、高裁で今の労働委員会の証拠調べを踏まえて、緻密な証拠調べをやるだけの余裕がないのではないかと思います。弁護士から高裁での証拠調べの門がかなり狭いという話を聞きますが、やはりきっちりとした証拠調べは、一審の地裁でやるのが本筋ではないかという感じでございます。

○春日委員 審問についてだけお伺いしたいんですが、この審問で行える事実認定の程度、あるいは密度と言った方がいいのかもしれないですが、これは裁判所で行われる事実認定とそう変わらないのか、あるいはそうではなくてやはりそれとはかなりの差があるのか、そこら辺について、ちょっと感覚で結構なんですがお伺いできればと思います。
 と言うのは、先ほどちょっとお話に出ましたように、実質的証拠法則との関連でお伺いしたいと思います。

○藤田会長 立証のレベルは裁判所と変わらないと思いますが、証拠が裁判所と同じように出てくるかというと、証拠調べ手続での強制権限などが違いますから、ベースとなる証拠がどうかと言われると、それは違うかもしれません。しかし、事実認定の本質的な中身という点では、私は変わらないと思います。

○春日委員 そうすると、後で裁判で出てきた証拠の量と、それからこちらの審問で出てくる証拠の量というのは、量的には違わないと。その結果として、裁判所での事案の解明度というんですか、それとこちらの審問の方の事案の解明度、そういう点で違ってくるという理解でよろしいですか。

○藤田会長 そこら辺はちょっと私にはわかりかねますので、山口委員の方がお詳しいんじゃないかと思います。

○山口委員 実際に裁判で出てくる書証は、むしろ労働委員会で出されたものが大半でして、それ以外に補助的に足りない分を当事者双方が出すという形が多いです。したがって、労働委員会の実際の立証レベルとして、必要な証拠としてはそう大きく食い違うというわけではないと思います。
 ただ、事実認定の見方については、裁判所の見方と労働委員会側の見方で少しずれているところはあるかもしれませんけれども、それが書証の数の多い少ない等で違うというわけではなくて、やはり事件に対する見方、あるいは見通し等で判断がされていることなのかなというふうに思います。

○春日委員 どうもありがとうございました。

○鵜飼委員 今の質問の関連なんですけれども、結局利用者にとってみますと、やはり地労委、中労委、そして地裁、高裁、最高裁という五審制ということが、非常に利用しにくい大きな理由になっていると思うんで、そこでお2人に是非お聞きしたいんですが、公正取引委員会とか電波監理審議会とか、そういうところでは、実質的証拠法則とか審級省略とか、そういう意味では実現されておりますね。労働委員会のこの審理の在り方の中で、どういう条件が、勿論地労委、中労委がスピードアップすると、こういう御努力は十分わかるんですが、どの点が改善されれば、どういう条件が満たされれば、例えば審級省略とか、あるいは実質的証拠法則が実現できるのか、そこら辺の御意見があればお伺いしたいと思います。

○山口会長 では、私の方から日ごろ感じていることを申し上げますが、1つは研修所の要件事実教育が非常に徹底してまいりまして、裁判所ではほとんど若い裁判官の方は、そういう窓を通じて事件を見ておられると思います。そのことのよしあしはともかくとして、そういうふうに裁判所が事件を見ておられるということは、労働委員会の方としてもよくわきまえておく必要がある。わきまえておく必要があるだけではなくて、事件というものを何らかの形で理解をし、判断をし、認定をしていく手法としては、労働委員会としてもそれを使っていった方がはるかにいいという点がありますので、労働委員会としてもその技法を十分活用していかなければいけないと思っております。職員の研修というのを、そういう方向でやろうとしているわけです。それが第1条件です。
 第2点としては、最近中労委の命令のかなりの件数が取消訴訟にいきますので、命令を書くときに、必ず裁判所を念頭にいろいろ考えますので、命令も非常に長くなったり、細かくなり過ぎたり、よけいなことを言い過ぎたりするんじゃないかと思います。しかし、事実認定で違うということは非常に少ないと、やはり事実の見方、評価が違うのだろうと思います。この評価の違いはどこから出てくるのかというと、今まで出てきている文書の中で言われている「労働事件の専門性」というものをどのように理解するかということです。ここからは労働委員会の関係者じゃなくて、学校教師の言葉として聞いていただきたいんですけれども、判決を見ておりますと、最近どうも裁判所は労働事件の専門性はないと、普通の民事事件と同じような方法でやればいいと、こういうお考えじゃないかと思うんです。労働委員会の一員としてやっておりますと、企業の中というのは、法律の言葉で言えば不正確ですが、非常にいろいろな慣習法がありまして、なかなか教科書に書いてあるような世界ではないわけです。だから、何とか労働事件の専門性というのを正面から認めていただくということが関連した2番目の条件だと思います。
 この条件が2つ整えば、今、御質問のような方向に進んでいくのではないかと思っております。

○藤田会長 審級省略というお話がありました。実質的証拠の原則もそうなんですが、実質的証拠の原則は今お挙げになったような公正取引委員会とか電波監理審議会、それから公害等調整委員会の土地調整関係の分野で適用されているのですが、法律以外の分野の知識がどうしても必要なものについて、実質的証拠の原則が適用されているわけです。公害紛争処理法を改正したときに、たまたま私は公害等調整委員会に出ていて、その立法作業に関係したんですが、公害等調整委員会の公害の損害賠償の責任裁定を民事訴訟で争う場合に、実質的証拠の原則を導入しようということで立案しました。しかし、法務省民事局や内閣法制局で言われたのは、公害としての特殊性はあるけれども、認定しようとする事実はまさに普通の事実で、法律以外の事業活動とか電波行政とか、あるいは鉱害というような特殊な知識がなければ判断できないことではないじゃないか、だから実質的証拠の原則を適用するのは無理だ言われて、結局実現できませんでした。山口会長から叱られるかもしれないんですけれども、裁判所の感覚から言うと、組合嫌悪の発言があったのかどうかとか、差別的な取り扱いがあったのかどうかということは、法律以外の分野の知識を必要とするような事実認定ではないという頭がある。そういう意味で、実質的証拠の原則を労働関係訴訟にも適用するのは、ちょっと違和感があるということがあります。怒られるかもしれませんけれども。
 審級省略の関係の前提として、どういうことがあればいいかということになりますと、先ほどの手続的な問題とか、組織体制の強化とか、今の労働委員会での証拠調べの現状を大幅に改善するようないろんな強化が必要だと思いますし、そういうことが実現した段階で審級省略ということを考えるとすると、甚だ乱暴なことを申し上げることになるのかもしれませんけれども、むしろ一審ではなくて二審を省略した方が、証拠調べを充実するという点ではいいのかなと思います。裁判所はぎゃっと言うかもしれませんけれども。ですから、やはり労働委員会の手続強化ということをまず実現して、次の段階でジュディシャル・レビューを迅速に処理するためにはどうしたらいいかということを考えるのが順序ではないかという気がいたします。

○石嵜委員 聞いておりまして、今日は中労委と東京都の都労委ですから、これだけのレベルの高いお話ができると思うんです。地方労働委員会は、全国を見て、現実に年に1件とか2件、不当労働行為の申立がない県がたくさんあるわけです。こういうところでいろんな議論をしても、それはやはり多くの事件をこなしながら覚えていくということもありますから、基本的にこの問題は審級制をどうするかという話になれば、これは全国レベルの各都道府県の問題ですから、その辺を意識すべきじゃないかと思うんです。
 したがって、中労委について、東京地裁をどうするのか、東京高裁にすぐ行くのかとか、こういう議論はあったとしましても、各都道府県地労委については、今、審級を外すなんていう議論はちょっと考えられないんですが、いかがでしょうか。

○山口会長 それが、先ほど申し上げましたように、中労委だから、藤田会長の都労委だからどうということは申し上げられないと思います。現在、全労委の方で御検討いただいておりまして、まとめの方向に向かっている状況ですから、私どもとしてはそれを待ってということしか申し上げられません。

○鵜飼委員 先ほど山口会長の方から、労働事件の専門性というお話がありました。藤田会長の方からも、要件事実論だけに収束されない、総合的背景事情というものが非常に大事だというお話があって、そういう意味で労使委員の役割というのは非常に大きいと思うんです。先ほど和解における役割というのありましたけれども、調査なり審問なり、むしろ審理の円滑化とか、労使関係の正常化に向けた、いろんな意味での労使の委員の役割は大きいんじゃないかと思うんですが、何か雰囲気として労使委員が労使対立をむしろ助長するとは言いませんけれども、それを促進するような役割を果たすかのような雰囲気もなきにしもあらずなんですけれども、私はむしろ労働委員会の専門性、労働事件の専門性という点では、労使委員の役割は大きいと思うんですけれども、その辺はお2人の御意見はいかがでしょうか。

○藤田会長 おっしゃるとおり、和解をするときは大変助かっております。大体労は労、使は使で信頼関係がありますから。もっとも労側の場合は上部団体の系統が違うとそうじゃない場合もあるんですけれども、そういう意味では非常に助かっております。しかし、逆に当事者の意識としては、自分の側の代弁者だという意識が非常に強いんです。ですから、当事者がそういう意識であると参与委員もそれを無視するわけにはいかないだろうということがありますので、当事者の側の意識を変える必要があるんではなかろうかと思います。労働調停でも労働参審制を検討する場合でも、それが前提となるのでないとなかなか旨くいかない。ドイツ、フランスの労働裁判所で、労使だけでほとんどの事件を片付ける。両者が対立した場合に、職業裁判官が入って解決するという制度になっていると聞きました。しかし、当事者の意識を変えないと、いつも職業裁判官が判断するということになったのでは意味がないわけですから、そういう意識改革も必要なのではないでしょうか。

○山口会長 私も同意見で、特に申し上げることはありません。

○山川委員 争点整理についてお伺いしたいんですけれども、確かに労組法の7条の要件事実自体はごく簡単になるんですけれども、そうすると争点とは一体どういうものになるでしょうか。当事者の主張が双方で食い違っている場合を争点というのか、それともそうでないとすれば、争点を見出すためにはどのようにトレーニングないし訓練をされるのでしょうか。

○藤田会長 不利益取扱にしても、支配介入にしても、規範的な構成要件ですから、具体的に主張・立証するのは、管理職がこういう発言をしたとか、こういう差別があったとかいう事実になりますので、それは労働事件での審問でも訴訟でも争点整理は同じだろうと思います。そういう規範的構成要件を構成する具体的な事実についての認否が争点整理ということになるんだろうと思いますが、問題はそういう規範的な構成要件を構成する具体的な事実というのが、労働事件の場合は山ほどあるわけです。離婚などの人事訴訟でもそうなんですけれども、そういう意味で背景事情ということを申し上げましたけれども、労働事件では争点整理が複雑で多岐にわたるという点が困難な点ではなかろうかと思います。

○山口委員 審問・命令の関係から言いますと、審査委員と担当職員のコンビネーションが非常に重要だと思うんですが、担当職員と審査委員の合議というのはどの程度行われているんでしょうか。
 具体的に命令書を書く段階になって、動向を見て合議をすることも必要だと思うんですけれども、裁判所の側ですと期日間、あるいは期日が終わった後なんかにも合議をして、事件の心証を固めていくということをやっておりますが、そういったことはどの程度行われているのか、その辺も併せてお聞かせ願いたいと思います。

○藤田会長 裁判所みたいに、開廷前合議というような形ではやりませんが、証拠調べが終わった後で、いや御苦労さんというようなことで、公益委員室で担当職員と話し合う時に、その点はどうなっているのかなというような意見交換もあります。
 それから、都労委では毎回審問・調査の始まる前に担当職員が2人でやってきまして、前回の経過はこうなっていて、今回はこういうことをやることになっているとか、双方当事者からこのような申出がありましたというような形で、言うなれば事前合議みたいなこともいたしますので、かなり突っ込んだ話し合いはしていると言ってよかろうと思います。

○山口会長 中労委の方も似たような状況です。正式には合議というような形にはなっておりませんが、私どもの方は事件が全国から来ますので、審問はなるべく期日をかけないで行いたいと思っております。ですから、1期日大体主尋問、反対尋問含めて4時間やりますので、午後からやりましたらもう終わったころには疲労困憊していますから、どうしてもビールぐらい飲むということになるわけです。それで今日はどうだった、こうだったと、そういう反省と言いますか、意見のまとめはしております。

○鵜飼委員 先ほど山口会長の御発言で、裁判所と労働委員会の違いは、事実認定については余り違いがないと、私も率直に言うとそういう考えです。それに対して、事実の見方がかなり食い違ってくるところが、取消しの数に表われてくるのかなと思うんです。
 これを解消する、先ほど要件事実等いろいろおっしゃいましたけれども、裁判所の裁判官の考え方、あるいは法曹の考え方と労働委員会の考え方と、お互いに接近して、そしてその辺は同じような考え方で判断するようなことが今後必要になってくるのではないかというふうに思うんです。
 労働事件の専門性というところも絡んでくると思うんですけれども、昔は労働委員会と裁判所の協議会みたいなものがあったり、意見交換の場がありました。
 現職の裁判官が労働委員会に出向ということは現状はないんですけれども、あるいは、これから法曹がどんどん増えますので、法曹をもっと労働委員会に活用するとか、考えてもいいんではないか。利用者にとってみれば労働委員会と裁判所の判断が食い違ってくるということになりますと困りますので、い違ってくるということになりますと、利用者にとってみれば労働委員会と裁判所が全然違った場でやろうというふうなことになってしまうので、そこら辺はどういうふうにうまく調整していくのか、そこら辺の御意見を伺いたいと思います。

○山口会長 だんだんそういう核心に触れる御質問をいただくと、答えにくくなってくるんですが、労働委員会サイドから希望を言わせていただければ、労働委員会も奇想天外なことを言っているのではなくて、長年の経験に基づいて判断をしているということで、平凡な言葉ですけれども、信用していただきたいなという気がいたします。
 それは、非常に倫理的な発言でありまして、今の労働委員会でそんなこと信用できるのかと言われれば、引き下がるほかはありません。ただ、取消訴訟が、労働委員会が一旦判断して、つまり、一応判断を任されている他人が下した判断が、それでいいかどうかということを裁判所で見てくださるのではなくて、自分が白地で判断したらどうするかという観点から見られることがかなりあるのではないかと思うのです。それは、私どもとしては非常に辛いことですし、取消訴訟としてどうかなということです。

○藤田会長 今、山口会長がおっしゃったようなこともあるかと思いますけれども、1つには今の制度の立て方が、同じ事件を労働委員会にも裁判所にも持っていけるようになっているんですね。ですから、裁判所としては、自分のところに最初に事件が出てきたときにどう考えるかということを、どうしても考えざるを得ないということになる。そこのところで、評価の面も事実認定も微妙に食い違うこともあると思います。労働委員会では裁判所のことはあまりよく言わないんですけれども、裁判所の方でも労働委員会の命令をよく取り消しますから、よく言っていないのかもしれませんが、そこのところはやはり相互に理解に努めるということしかないでしょう。私が若いころ、労働委員会と裁判所との連絡協議会にも何遍が出ましたけれども、私の出た連絡協議会では、どうも両方が言いっぱなしで終わって、さようならということが多かったように思います。それでは協議をやったからお互いに理解が進むということには、ならないんじゃないかという気もいたします。ちょっと後ろ向きな発言かもしれませんけれども。

○近藤参事官 参与委員の関与の在り方、審理とか判断にどういうふうに労働委員会では関与されているのかということについて、もうちょっと聞きたいと思うんですが、司法制度改革の1つのテーマとして検討してきて、訴訟における専門性の導入ということが一つありますので、その点について聞いておきたいと思います。
 専門性の導入や和解の関与というメリットの点は分かり易いのですが、デメリットがないのか。一点、ちょっと心配をするのは、労働委員会の審理における争点整理の際に、きちんと対応できて争点の所謂コアの部分が明確になっているのかどうかということです。当事者の運動の一環として主張がなされていて、争点整理が十分にできないということをお聞きすることもあるのですが、争点整理の在り方と参与委員との関係というものが、あるのかないのかというようなことを中心にお伺いできればと思います。

○山口会長 その点を、そうかどうかと言って、目を開いて見ていたり、調べたものがありませんので、確かかと言われれば、ちょっとひるみますけれども、日ごろの経験から言ったらそういうことはまずないと思います。争点整理も公益委員である担当審査委員がリードして行っておりまして、そこで参与委員がいるから何か歪むとかいうことはないと思います。
 争点ではないことを調べたり、証人に事情を延々陳述させたり、裁判所の方から見て問題があると思われるのは、それは、審査委員の審問指揮に問題があるのであり、参与委員のせいではないと思います。

○藤田会長 参与委員の在り方ですが、先ほど和解をする場合に大変有効な働きをしていただいているということを申し上げましたけれども、調査とか審問ということになると、やはりさっき申し上げたように、当事者は当然自分たちの主張を理解してくれているだろう、自分たちの言いたいことを審査委員に伝えてもらっているだろう、という意識でいますから、やはりその辺の影響はあるだろうと思います。しかし、そのことによって審理が変な方向に進むということはないと思います。
 ただ、さっき申し上げたように、争点整理にしても何にしても、労働関係の紛争は、非常に複雑多岐な事実関係が背後にありますから、そこら辺の争点を的確に整理し、立証事項を適切に選択するというのは、かなり法律的な知識・経験を必要とすることです。そういう意味で審査委員一人単独でということではなくて、法律家の審査委員とそれ以外の方の複数の審査委員によって調査・審問をするという方が、より的確に行くのではないかと思います。

○菅野座長 よろしいでしょうか。まだまだお聞きしたいこともあると思いますが、今日は労働委員会ということで、中労委、都労委のお二方にお越しいただきまして、大変有益なお話、質疑をさせていただきました。長時間にわたりまして、本当にありがとうございました。

(中央労働委員会説明者・東京都地方労働委員会説明者退室)

○菅野座長 それでは、残りの時間で、当検討会の当面の検討スケジュール等について御議論いただきたいと存じますが、その前に3月19日に「司法制度改革推進計画」が閣議決定されましたので、これについて事務局からの御説明をお願いします。

○松川次長 それでは、私の方から「司法制度改革推進計画」について、簡単に御説明申し上げたいと思います。
 お手元にお配りしております、資料の9をごらんいただきたいと思います。この「司法制度改革推進計画」は、司法制度改革推進法に基づき、政府が司法制度改革に関し取るべき措置について、その全体像を示すとともに、推進本部の設置期間、すなわち平成16年11月30日までの間に行うことを予定するものについて、その措置内容、実施時期、法案の立案等を担当する府省等を明らかにするものでございます。
 本推進計画は、顧問会議での御議論、2回にわたっておりますが、この御議論及び司法制度改革推進本部の本部会合における本部決定を経まして、3月19日に閣議決定されたところであります。
 推進計画の概略を御説明しますと、資料の1ページにありますように「I はじめに」におきまして、本計画の趣旨、司法制度改革推進に当たっての基本的な考え方等を記載するとともに、2ページ「II 国民の期待に応える司法制度の構築」以下におきまして、司法制度改革審議会の意見書の提言内容に即しまして、各課題について記載しているところであります。
 労働関係につきましては、この資料の3ページから4ページにかけて記載されております。意見書において提言されておりますそれぞれの事項ついて、必要な検討、措置を図っていくことが書かれているところであります。
 今後はこの推進計画にのっとって着実に改革を実現してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○菅野座長 それでは、ただいまの御説明に御質問等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、次に当検討会の当面のスケジュールについて、前回の御議論を踏まえまして、事務局に修正案をつくっていただきましたので、御説明をお願いいたします。

○齊藤参事官 資料10と資料11をごらんください。まず、資料10でございますが、第1回目の御議論を踏まえまして、当面の検討スケジュールにつきまして、たたき台を今日お示しさせていただきます。
 第1回にお示しした資料と、修正されている点が3点ほどございまして、まず第3回と第5回に、それぞれフリーディスカッションの機会を設けることにしてあります。第3回が終わったところで、公的な紛争解決制度についての一通りのヒアリングは終わりますので、ここで少しフリーディスカッションをしてはいかがかという考え方です。
 第5回では、当事者サイドからのヒアリングが一通り終わりますので、ここでまた簡単な問題点の整理等をするという意味で、フリーディスカッションをしてはいかがかというふうに調整してございます。
 第6回の検討会ですが、ここでは国内の紛争処理の実情について一通りヒアリングを終えたということになりますので、ここで中間的な論点整理を行ってはいかがかということにしてございます。
 第7回以降ですが、諸外国の労働関係紛争処理制度に関するヒアリング、これを1回分ということで予定を入れてございます。ただし、1回で十分かどうか、あるいはヒアリングは1回で当面済ますけれども、必要な諸外国の制度の調査等は、適宜の方法などを用いていくかどうか、その辺り御議論いただければと考えております。
 資料10の説明は、大体以上でございます。
 続きまして、ちょっと駆け足で恐縮ですが、資料11の説明をさせていただきます。資料11は、第3回、第4回、第5回のヒアリングの内容等につきまして、案をお示しさせていただいているものでございます。
 第3回は裁判所からのヒアリングということで、最高裁判所の事務総局と労働事件を担当している現場の裁判官からのヒアリングを予定しております。
 労働事件を担当している裁判官につきましては、できれば多様性を持たせて、数名からヒアリングできればというようなことも考えていたんですが、なかなか現場の裁判官においでいただくというのは困難な面もあるようで、結果的にはお1人になるかもしれません。
 内容的に質問する、あるいはプレゼンテーションしていただく主な事項は、この資料に記載してあるとおりでございます。今日、この場でいろいろ御意見も伺い、また第1回目の後で皆さんから御要望・御意見等をいただいたのと同じように、本日あるいは本日以降にまた質問事項等、御意見をお寄せいただければと思います。
 第4回は、当事者の代理人をされている弁護士からのヒアリングということを予定しております。
 ついでに、弁護士会の仲裁センターの実情をヒアリングできればいいのではないかということで、弁護士会の仲裁センターの関係者からのヒアリングも予定したいと考えております。
 最後に、第5回の検討会ですが、労働者側、使用者側、直接当事者側の御意向をヒアリングしたいという趣旨で予定してあります。まだ、人選がなかなか難しいと思いますので、労働者側からは、例えば労働相談や紛争解決支援を行っているような労働組合の関係者とか、今後委員の方々、あるいは関係の団体などにも御相談しながら人選は詰めていきたいというふうに考えておりますが、なお皆さんからも御意見・御要望等を伺いたいと思います。
 第5回には、社会保険労務士からもヒアリングしてみてはどうかと考えております。社会保険労務士が企業内でかなり紛争解決にもコミットしているという事情がうかがえますので、社会保険労務士からのヒアリングというのも予定してはいかがかと考えております。
 大体以上でございます。たたき台としてお示ししてあることでございますので、どうか御意見、あるいは今日中でなくてもまた御要望などお寄せいただければと思います。

○菅野座長 それでは、当面の検討スケジュールとヒアリングの進め方のたたき台、ヒアリングの内容、お呼びする方々、その辺について御意見をどうぞ。

○鵜飼委員 まず、第4回目の弁護士会の仲裁センターのヒアリングの件ですが、これは審議会の中でもプレゼンテーションして、資料をお出ししていると思いますが、御承知のとおり各弁護士会では総合法律相談窓口を設けておりまして、その中に労働事件の相談もかなり増えています。東京の弁護士会三会も労働事件の特別な相談窓口も設けておりますし、横並びでやっているわけですが、残念ながら民間のADRと言いましょうか、紛争解決システムとしては、まだ実績を十分上げていないという気がいたします。
 そういう意味では、双方の代理人の側からのプレゼンテーションの時間ほど、30分も必要ないと思いますし、むしろ逆に日弁連の側から、そういうデータ等については十分お出しして、場合によっては日弁連の方も出席してもらって説明できるような体制をつくりますので、限られた時間ですので、できればこの弁護士会の仲裁センターの担当者の30分は必要ないんじゃないかと思います。
 第5回の検討会の件で、これも非常に限られた時間内で社会保険労務士の30分があります。これは、社会保険労務士の方が担当されているお仕事の内容とか、果たしていらっしゃる役割については私も十分評価をいたしますけれども、やはりこれは審議会の議論でもありましたように、労働争議に介入することは禁止されておりますし、弁護士法72条、現在法案が提出されておりますけれども、そういう紛争に関与することは業としては禁止されております。
 審議会の議論でも、社会保険労務士会の方がおっしゃっておりますように、労働紛争に関与した実績は今まではないわけです。そういう意味では、利用者の側からのヒアリングという部分で、社会保険労務士会の方を30分設けるということは、ちょっと不適切ではないかと思いますので、ほかの場でそういった場があればいいんですが、この紛争解決システムそのものの議論をするときに、利用者のサイドで社会保険労務士に30分使うということは、ちょっと妥当ではないんではないかと思います。

○菅野座長 ほかに御意見ございますか。どうぞ。

○髙木委員 6回までの予定を今日お示しいただいたんですが、この間のお話だと8月はやらないというお話もありました。再来年の通常国会までに法案を提出するということであれば、全般的にスケジュールが詰まってしまうんではないかという感じがします。皆さんの御意向もあるでしょうが、例えば次回のものも、2回に分けてではなく、1日で、例えば午前・午後、きついけどやってしまうとか、その辺いろいろ工夫していただいたりして、全般的にもう少し前倒しに、後ろに詰まらないようにしたらどうでしょうか。月2回にするというのは皆さんお忙しいんで大変かもしれませんけれども、そんな月も入れたりしながら、もう少し前倒しして議論していただいたらどうかという感じがしております。
 今の社会保険労務士会の話、弁護士会は72条の問題でいろいろお考えかもしれないけれども、お話をお聞きする場があるのであればお聞きしてもいいかなという感じがします。それは、皆さんに御判断いただいたらいいと思います。

○菅野座長 今の2人の方の意見について、ほかに意見ございますか。

○村中委員 社会保険労務士の件ですけれども、実際京都で個別紛争の調整をやっておりますと、案外使用者側は、とりわけ中小企業の方は、社会保険労務士の方に相談に行かれているケースが実際問題としてかなり多いんです。
 確かに、理屈で言うとおっしゃる通りになるかもしれませんけれども、使用者側という観点で、何か御意見を陳述される、という機会はあってもいいんじゃないかと私は思います。

○鵜飼委員 30分というのはちょっと長いんじゃないでしょうか。使用者側ということで、その中に含めてもらってもいいですし。

○齊藤参事官 事務局としましては、あまりスタイルとか当日のヒアリングの位置づけだとか、そういうことにあまりこだわらずに、広く実情を把握したいというような発想で予定を立てているつもりでございます。
 それで、社会保険労務士のところは、時間配分などはこれからも調整してみたいと思いますし、社会保険労務士の方からも、事前の事情調査と言いますか、非公式なヒアリングなどもやってみて、どういうふうな発言なり説明をいただけるか、そういったことも事前に調査しながら、予定は詰めさせていただきたいというふうに思います。
 それから、髙木委員のおっしゃる、できるだけ前倒しでという御意見なんですが、日程を入れる際の皆さんの御都合を伺うと、やはり大分先まで結構皆さん既に予定が入っている方が多くて、一定のインターバルを置きながら、なおかつ委員の方々できるだけ多く出席していただける、そういう日を見繕うのはなかなか大変でございました。したがいまして、検討のペースを早めるとすれば、やはり1回の検討会の時間をある程度長めに取るというふうな方法が一番現実的かとは思うんですが、そういう手法でもよろしいかどうか、その辺り委員の皆さんの御意見はいかがでしょうか。

○髙木委員 私はどんな方法を取ろうが対応しなければいかぬ立場だと思いますが、ちょっと長期的に日程を入れておいていただいて、例えば1年後ぐらいまでね。それで、結果的にはその日はなしなら、なしにするのは簡単じゃないかと思いますので、かなり長期的に決めておいていただきたいというのが一つです。
 それから、当座はそういうわけにはいかぬというなら、今、齊藤さんがおっしゃったように、時間を長くするというのも良いと思います。ただ長くするといっても何時間か限度があると思いますけれども、午前・午後の日があってもいいと思います。

○山口委員 長期的に期日は入れておいた方が、たくさんの方が出席できると思うんですけれども、こういう機会ですからできるだけ多くの方と意見を交換された方がいいと思いますので、そういう観点からも7月以前はしようがないにしても、その後ある程度長めに入れたらどうかと思います。

○菅野座長 もう一度お伺いしますが、矢野委員が退席された後なんですけれども、8月はやはり皆さんやりたくないということで、それは避けた方がいいということですね。

○髙木委員 8月もやった方がいいんじゃないですか。

○菅野座長 現実問題として、恐らく事務局は非常に日にちを合わせるのに苦労されたんじゃないかと思うんですけれどもね。

○山川委員 8月はある意味では合わせやすいかもしれませんね。

○齊藤参事官 ただ8月の件は、推進本部全体の考え方の問題もありまして、どこかの検討会でその原則を崩すと、また結局推進本部全体として8月はなし崩し的にどこの検討会も日程を入れようかという話になる危険性がありますので、8月の件はちょっとこの場ではなかなか申し上げにくいんですが、できれば。

○鵜飼委員 他の検討会が行われるというんじゃなくて、我々の間で8月やろうというんだったら、それでいいと思います。別にそれが先例になるなんて考える必要は全くないと思います。入りやすいことは入りやすいですね。

○菅野座長 皆様のお顔を見ていると、できたら避けてほしいというふうに感じますけれども、その点も含めて、それから先までなるべく入れるということと、なるべく実質的な議論を早く始めるというような御意向、それも含めて事務局と私で検討させていただいて、なるべく早く御連絡するということにさせていただきます。ほかにヒアリングの事項について、特に第3回は5月1日ですので、わりと差し迫っておりますので、この場でも御注文がありましたら。それで、委員の方から事務局に出していただく時期ですね。

○齊藤参事官 もしも本日以後に御意見、あるいは御要望をいただく場合に、遅くとも4月半ばぐらいにお出しいただきたいんです。そうでないと、裁判所の方で準備をしていただいて、次回期日の1週間前くらいには、ヒアリングの資料を御用意いただいて、また委員の皆様に配布したいと思いますので、御意見は遅くとも4月半ばぐらいまでに、できれば4月12日金曜日という辺りがありがたいと思うんですが、ぎりぎり4月半ばぐらいまでにお願いしたいと存じます。

○菅野座長 よろしいでしょうか。私の不手際で、予定した時間を大分過ぎております。もしもほかになければ、今回は終わりにしたいと思いますが、検討会の今後の日程について事務局からお願いします。

○齊藤参事官 次回は、5月1日水曜日の午後2時から5時半を予定しておりますので、よろしくお願いします。

○菅野座長 それでは、本日の検討会はこれで終わります。長い間どうもありがとうございました。