労働関係事件固有の訴訟手続の整備の要否について、次のような議論がなされた。
○ 審理期間の短縮、適正な判断の担保、計画審理の導入に関しては、総論としての意見は一致しているが、各論では、現実には難しい、あるいは運用で対応可能との意見があった。現実論を前提とした反対論は生産的でない。改革審意見書の趣旨にかんがみ、法曹三者の事情ではなく、ユーザーである国民の声に耳を傾けることから出発すべきである。
まずは労働事件として典型的で件数の多い解雇事件に絞り、現行制度でよいのかどうかを検討してはどうか。現在は、解雇事件の8割がやむなく仮処分手続を利用しているが、仮処分手続については地裁ごとに運用が異なっており問題である。仮処分手続を利用せざるを得ない現状を変えるべきであり、仮処分手続の特則ではなく、本訴の改善を図る方向で検討すべきである。
解雇事件については特に迅速に処理することを義務付け、当事者の責務として法律の中で謳う必要がある。
また、解雇事件については、裁判処理の見通しがたつよう原則として計画審理を行うこととすべきであり、証拠調べについては原則1回で集中して行うこととすべきである。また、終結の目処として、雇用保険の受給期間に照らし、訴え提起から8か月~10か月程度のタイムターゲットを設けることとすべきではないか。
解雇理由や、人事記録等の解雇理由を基礎づける資料を早期に提出させるように釈明権を行使させる措置を取り入れることが必要である。
また、審理の終結から判決までの期間は長くとも1か月とすべきである。
定型訴状については、解雇事件に関して労働者自らが記載できるようなものを作成すべきである。
○ 民事訴訟のタイムターゲットの目標が2年以内であるのに対し、解雇事件の終結の目処を8~10か月程度とすることが適切なのか疑問である。
検討に当たっては現実の問題から離れすぎてもよくない。解雇事件の場合、最後まで争って原職復帰を求めるケースは少ない。どこかの段階で早めに裁判官が関与して金銭解決により終わらせることが、労使双方にとってのメリットになるのではないか。解雇事件に関する仮処分は短時間で決着がついており、一定の有効な機能を果たしているものと認識している。
また、解雇後早い段階で訴えの提起があった方が、解雇後の賃金の支払いを命じられた場合でも負担が少なくなるので、定型訴状の活用は使用者側にもメリットがあるのではないか。
証拠の収集に関して、第1回口頭弁論期日までに解雇理由の提示や資料提出を義務付けることとすると、弁護士の選任に時間がかかる等の問題もあり、逆に審理が進まない事態も出てくるのではないか。第1回の期日は早めに設定して弁護士を選任してもらい、第2回の期日までには十分に主張・証拠を出してもらうようにすればよいのではないか。最終的に早期終結が図られればよいのであり、第1回口頭弁論期日の充実にこだわって全てを一律に規定化する必要はなないのではないか。実務家による積極的な話し合いが必要であろう。
○ 実際には仮処分しか利用できないという現状があるのではないか。保全手続である仮処分を解雇事件解決の最も大きなチャンネルとするしくみで本当によいのか。本案訴訟がもう少し実効的に機能できるように、使い勝手の良さというアプローチから、運用の改善にとどまらず特則の要否も含めて考えてみる必要があるのではないか。
○ 本案訴訟の現状を改め、迅速化を図ることは必要であるが、実務的な観点からみると仮処分は十分機能しているのではないかとの認識を申し上げたものである。ただ、本訴の進め方としては、例えば、「第1回口頭弁論期日まで」ということにこだわるよりも、全体的な審理期間の短縮を目指すことが本来の在り方なのではないかと思っている。
○ 仮処分では様々な制約があるものの、本訴では1年以上かかるということから、納得できないが本訴を断念するケースが多い。
仮処分が現在機能していないとは言わないが、解雇事件の多くが暫定的な権利保護を目的とする保全手続で処理されているというのは切実な問題である。本訴に流れていくことができるように迅速化を謳うといった措置が必要である。運用では裁判所ごとに大きく異なる事態も生じ、十分ではない。民訴法を少し改正して、迅速処理義務、計画審理の原則化、終局期間の目標を規定するとともに、簡易定型訴状が利用できるようになれば随分変わるのではないか。解雇事件について泣き寝入りが多い現状にかんがみると、法曹の責任として、いつまでもこのままでよいとは思えない。
○ 仮処分手続についても、運用の在り方や判断の内容については、裁判官の判断に委ねられるものであり、各地裁で一律な基準を設けているわけではない。事案に応じて様々な判断がされている。
仮処分は、保全の必要性という別個の要件が必要とされるため、本案訴訟とは異なる取り扱いをせざるを得ないという意味では独自の意義があるのかもしれない。基本的には利用者にとって望ましい紛争処理の在り方という観点で考えるべきだということには同感であり、その意味では、本案訴訟をもう少し使い勝手のよいものとする必要があるということはよく分かる。一般的には紛争解決の期間は短い方がよいのであり、審理期間の短縮や計画審理をある程度原則化し、終局の目安を当事者に設定してもらうということも一つの考え方である。ただ、これらを法制度化するのであれば違反に対して何らかの制裁を考える必要があるのではないか。例えば証拠調べを原則1回で行うとすると、限られた証拠しか調べられないが、例外ばかり認めることになってしまうと機能しなくなる。早期の証拠提出義務を定める場合についても同様のことが言えるのではないか。
○ 制裁を含めるという点については、今般の民訴法改正で導入される計画審理と基本的には同様のものとすればよいのではないか。全ての事件に審理計画が必要だとは思わないが、最大公約数をカバーできるような計画を作り、計画審理になじまない事件については当事者間で十分に協議すればよいのである。また、今般の労基法改正で、解雇理由を明示する義務が設けられ、当事者にとっても審理計画の作成がより可能な状況となったのではないか。運用の問題として全て個々の裁判官に任せたままにしておくべきではない
○ 解雇事件について特に優先処理義務を法律に規定する必要があるのか。他の事件の期日を変更してでも、解雇事件の処理を優先すべきことになるのだろうか。また、今の民訴法改正案の計画審理の規定ぶりでは、解雇事件は計画審理を行うべき事案に通常は該当することになるのではないか。結局のところこれ以上のことを特に定める必要はなく、あとは運用の問題なのではないか。
○ ドイツの労働裁判所における解雇事件の「優先処理義務」をそのまま我が国に導入するということであれば疑問があるかもしれないが、迅速処理義務を謳うことにより、当事者に対する指針としてのメッセージ性は十分あるのではないか。
○ 手続法上、義務を導入するのであれば、不履行に対する制裁等の手当てが必要となるのではないか。また、仮に優先処理義務を考えた場合に、その義務を負うのは誰になるのか。解雇事件についてのみ、制裁を伴う特別のスキームをとらなくてはいけない理由があるのか。義務を定めるとかえって手続が硬直化するのではないか。民事訴訟の基本は当事者主義なので、制裁を伴わない形での運用の在り方を考え、紛争解決に向けての当事者の積極的な姿勢を生かすべきであり、その方法は義務を課す以外にもあるのではないか。
○ 「義務」という言葉を使ったが、イメージとしては、民訴法第2条の「裁判所及び当事者の責務」(努力規定)に近いものを指針として規定することを考えている。解雇事件については労働者への影響に照らし、特に迅速に処理しよう、とのメッセージを法律で確認する程度のものであり、制裁型を考えているわけではない。
労基法改正で解雇理由の明示が義務付けられたのであるから、そのことは訴訟手続の在り方にも反映されていくべきではないか。
○ 審理期間の短縮については、裁判所と弁護士がユーザーの便宜をよく考えて話し合うことが現実的なのではないかと思う。また、訴訟が長引くのは使用者側が解雇理由等を早期に提出しないからだという意見もあったが、使用者側は第1回期日では難しくとも、できる限り早く処理したい気持ちは持っている。一方で原告側の主張立証に時間がかかっているからだという話も聞く。結局のところ、こうした現実を踏まえて、裁判所や弁護士等の専門家の当事者がよく話し合うことが大事なのではないかと感じている。
○ ドイツでは解雇が無効の場合には原職復帰させるのが原則であり、就労請求権も認められており、法整備が図られている。原職復帰を重点的に考えるのであれば、解雇事件の早期解決を図ることには意味がある。しかし、金銭補償による救済を行うのであれば、特別に早期解決を図るまでの必要はないのかもしれない。今般の労基法改正では、合理的な理由のない解雇は権利の濫用として無効とされており、原職復帰を前提にしたような規定となっていることを考えると、手続法を実体法にあわせて審理の促進を図ろうという意見にも十分理由がある。ただ、日本では原則として就労請求権が認められていないので、ドイツの議論とは異なるのではないかとの印象を持った。
○ 納得のいかない解雇事件を争いたいと思っている労働者は必ずしも原職復帰を求めるかどうかを決めているわけではない。きちんとした法的手続で解決のテーブルにのせることが可能となることが重要なのである。原職復帰を求めるかどうかと訴訟手続の迅速性は必ずしも連動しないのではないか。
○ 解雇事件について審理計画を定めた方がよいとは言えるが、問題はどのような形式でそのことを明らかにするかである。運用になる場合のイメージはよく分からないが、規則や裁判所側と弁護士会側との協議会における運用の取り決めによることも含め、一定のルール化が可能かどうかの検討を行ってもよいのではないか。民事執行手続、破産手続等についてはある程度マニュアル化がされており、解雇事件に関しては審理計画を定めるといったものを何らかの形でルール化する道を探ることはできるのではないか。解雇の場合は、複雑性、緊急性のある事案も少なくなく、争点の拡散を防ぐという意味でも審理計画を定めることには意味があるのではないか。
○ 現実問題として、訴訟手続については、当事者の代理人と裁判所との間である程度の共通理解がないと進んでいかないため、各裁判所と弁護士会の間で民事訴訟法の運用について協議の場を設けている。その意味では、一律でなくとも、ある程度の事実上の運用の共通化は図られている。
○ 訴訟の迅速審理等についてメッセージを出さないと、運用の改善のみでは、仮処分への流れを止めることはできないのではないか。
□ 運用レベルでの計画審理の実施、迅速処理に向けた努力については共通理解が得られているものと認識しているが、委員から提案のあった訓示規定を設けることの意義について意見はあるか。
○ 労働事件は民事訴訟の手続の中で行われており、この中で、争点整理、集中証拠調べを行うことになっているため、実質的な計画審理が行われている部分が相当ある。今回の民訴法改正においては、こうした実務の動きが反映されて計画審理が制度として取り入れられた。当事者に無理のあるものを制度として導入することは難しいので、まずは協議会等で検討して、よい慣行を醸成していき、その結果、規則化等を含めて共通理解を深めていくことが流れとしては適切なのではないか。
○ これから慣行を積み上げるというのではなく、合意できるのであれば、ここで基本的な原則を定めておくべきである。今後の運用に任せるというのでは、労働事件の処理は相変わらず仮処分でいかざるを得ず、問題のある状況はいつまでも放置されていくことになる。
○ 少なくとも現状の訴訟手続の運用が改善される方向になれば、実務上も訴訟に流れていくようになるのではないか。解雇事件の迅速処理、計画審理の原則を規則に規定するというのも一つの方法かもしれないが、具体的な制裁は変わらず、現実の強制力もないというのであれば、規定することにどのような意味があるのか、まだ十分理解できない。
○ 国民のニーズを踏まえて訓示規定を盛り込むことによって少しでもあるべき姿に近づいていければよいと考えている。法曹同士がお互いに協力していくためにも、ここで一歩踏み込むべきではないか。
○ 労働事件を専門としていない弁護士も労働事件を扱うのであり、彼らの理解を得るためには、まずは協議会で検討して、その結果を発表し、労働事件の処理の迅速化が不可欠であるという意識を広く浸透させることが先ではないか。
○ 一定の試行期間をおいて実施するという形も考えられるが、原則を立てることが必要である。
○ 解雇された労働者は一日も早い権利の救済を望んでいる。解雇事件の処理について、こうあるべきとの姿は必ずあるわけで、そこは運用に委ねておくよりも明確化されている方が疑義も少なくなるだろう。自ずから変わっていくと本当に言えるのか。現状の改善に当たってはより効果の大きい手段を模索するのが当然ではないか。
○ 利用者にとっては計画審理かどうかよりもいつまでに結論が出るかが重要である。メッセージ性を考えるのであれば、ある程度のタイムターゲットを原則的に取り入れる方がよいのではないか。
○ 今般の民訴法改正案では、計画審理においては判決の言い渡しの予定時期についても定められることとされている。
○ 特に解雇事件を迅速に処理するとの原則を示すため、計画審理の実施、1回の証拠調べの原則化、タイムターゲットという形でセットで迅速化を図るのがよいのではないか。
期日の回数を予め一律に決めるかどうかは難しい面もあるように思うが、証拠調べは争点が明確に整理された段階で1回で行うとすることがルールとして必要である。
○ しかし、解雇された労働者にも様々な者がおり、雇用保険の適用がないケースもある。有期労働契約の雇止めのケース等は、せいぜい2,3か月で結論が出ないのであれば訴訟はしないのではないか。正社員を対象とした重い事件を念頭に置くのであれば8か月のタイムターゲットでもよいが、ドイツのように訴訟で全ての紛争を吸収しようとするのであれば、8か月でも時間がかかりすぎとなる事例もあるのではないか。
○ コンセンサスを得るために8か月という案を考えてみたものであるが、事件の類型によって、当事者の協議で短期間の処理を可能とするような制度設計ができればよいと考えている。一律に決めなくても、最後の終結の目処くらいはタイムターゲットとして設けられればよいと思っている。
○ 証拠の収集は、釈明権や釈明処分を有効に行使できるようにすることが考えられる。解雇事件で言えば、文書提出命令の特則で、解雇理由を基礎付ける文書等を提出させることを可能にする規定を設けるべきではないかと思っている。
○ 書証の出し方に関しては、具体的な指針のようなものがないと、迅速化に資することにはならないだろう。労働訴訟協議会でそうした指針を検討していただけると関係者にも有益であるし、現実的かつ円滑な審理の進行が可能となるだろう。
○ 訴訟手続について統一した指針を出すのは裁判官の独立の問題等から難しいだろう。大枠がルール化されれば、あとは様々な運用が可能となるのではないか。
○ 書証の出し方については、労働訴訟協議会でも検討することとしている。タイムターゲットについては、例えば8か月というターゲットを設定した場合に、現実問題としては、かなりきついスケジュールになるが、全国の弁護士が対応可能であると認識してよいのか。
○ 現在も迅速化に向けて当事者は努力している。今後は、まずは労働集中部のあるところから始めるような工夫が必要になろうが、法曹としてしっかり対応できるように努力する責任があると思っている。
○ 個人的には対応していきたいと考えているが、一般論としては、弁護士の対応には限界があるのではないかと思っている。一般の民事事件をやっている弁護士は労働事件を受けられないこととなりかねない。
△ 労働関係事件について、大量迅速処理を前提として制度改正を考えるか、現行の民事訴訟の在り方を基本として考えていくのかという基本的な考え方についてある程度コンセンサスが得られた上で議論されるとまとまりやすいのではないか。現段階で、大量迅速処理を前提とすることについてはどうか。
○ 何万件という単位ではないにしても労働事件の数が今後とも増加していくことは間違いない。その処理を現状の民事訴訟の中で対応していくのがいいのか検討が必要である。
○ ラフジャスティスがいいのか、ある程度丁寧な審理を前提とするのかなど、裁判のあり方をどう考えるかによって色々と考え方も変わってくる。色々な方の御意見をお聞きしたい。
○ 解雇事件でルールメーキングが求められるのであれば、適正さが必要である。そうすると、タイムターゲットを設ける意義があるのか。民事訴訟の大原則は既に定められており、あえて解雇事件だけに規定を設ける理由がまだよく分からない。釈明処分の強化を図るとある意味で裁判所のパターナリズムに乗ることになるが、当事者の姿勢としてそれで良いのか疑問である。弁護士は法律家として証拠を早く出すという姿勢を示して欲しいと考えており、釈明権に頼るべきではない。
○ 解雇権濫用法理が法律に規定され、今後、解雇事由を解雇予告の段階で示すこと等が義務化される。解雇の適法性を確認することは訴訟の流れとして当然に生じるものであり、実体法上の権利を裏付けるため、手続面でも釈明処分の強化等の形で具体化し、実現するのは当然のことである。ラフジャスティスというが、10年かけて素晴らしい判決を出しても意味はない。現実の紛争をできるだけ早く適正に解決する努力が必要とされる。
○ 労働裁判においては、迅速性を重視することが重要であり、迅速性との関係では多少丁寧さが犠牲になることもやむを得ないのではないか。迅速に処理がされていけば、より利用されるようになり、国民に浸透していくと考えられる。
○ 迅速さと適正さは必ずしも両立できないが、裁判手続と調停手続とで当事者の選択を可能とすることにより両者のトレードオフの問題は解決できるのではないか。
・ このほか、鵜飼委員から提出された定型訴状のモデル(資料142)について、質疑及び意見交換が行われた。
山川委員から、「専門家の関与形態の諸次元」について資料に基づき説明がなされ、質疑応答及び意見交換が行われた後、雇用・労使関係の専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度の当否について、前回に引き続いて次のような議論がなされた。
○ 中間的な制度設計の案として、地方裁判所の労働調停をパワーアップしたものに労使の専門的知見を取り入れる方法が何かないか考えている。原則として17条決定のようなものを出すが、訴訟手続までには至らないようなものができないか。
□ 重要なことは、その場合の決定が権利義務について判断するのか、紛争解決案を提示するものかである。
○ 現行の17条決定は、当事者から異議が出ればそれまでだが、例えば訴訟まで提起させることが考えられる。しかしあまり権利義務を確定するようなものにすると、手続や関与の度合いもフォーマルな形で考える必要があり、参審制に近いものになるが、従来の調停案に類似したものということであれば、必ずしもそうはならない。そのような決定を原則として出すこととする方向は考えられないか。
○ 紛争解決案の提示という形で決定を出すのであれば意義があるように思えるが、権利義務を確定するような判断をするのは大きな議論になるところである。あくまでも調停としての解決案を提示し、当事者に納得させるというのがよいのではないか。労使の専門性を生かす方法として、労使が関与して最終解決案を示すようなものはあり得る。仮に権利義務を確定するような手続にすると、実質的に4審制になるなどの問題が出てくることも考えられる。
解雇事件について訴訟が提起されたときは、労働調停に付すと共に、訴訟の期日を含めて調停手続が延々と長引かないようにすることは考えられる。
○ 現段階では訴訟手続における専門家の関与についてのコンセンサス作りは到底難しいので、いったん実績を積みながら前に進んでいくのが現実的なのではないか。調停にプラスアルファということは現実的ではないか。
□ 労働委員会の和解案は現実の紛争をいかに解決するかに主眼をおいたものが多いが、裁判所の判断のような性格でなくても、権利義務を基本としたようなものもありうるのではないか。
○ 労働調停の場で、解雇が有効か無効で原職復帰かだけの判断でなく、労使双方の間を調整した決定を出していくことが考えられる。
○ 労働条件の変更に労働調停が活用できるという意見についてはどうか。
○ 使用者側としては、例えば、配転命令を拒絶されたり、成果主義賃金体系の導入等の労働条件の変更を拒否されたりした場合に、解雇を行う前に労働調停を利用してみるということも十分想定される。
□ 労働条件変更の合理性について、労使が関与した上での判断があり得るのではないか。
○ 時間をかけないようにするようなインセンティブ、ペナルティを作ることが必要であり、これがないと、労働調停だけでよいのではないかということになる。何か工夫が考えられないか。
○ 労働条件の不利益変更は解雇と異なり、ある程度ラフでも迅速性を優先させることが可能ではないかと思われる。そうした類型を整理すれば、ある程度コンセンサスができていくのではないか。
特に、実績主義に基づく評価については、個人個人の問題なので、労働調停を利用することがあり得るのではないか。
○ 労働条件の変更について、調整的な機能を持たせるということはある意味でこれまでの労働法の課題だった。これをきっかけに労働調停のスキームを作っていけばある程度利用価値があるのではないか。労使が関与して労使自治の延長として出された結論には重みが出るのではないか。
○ いくつかの絡み合う要素を考えて、従来の二元論ではなくもう少し多元的な角度から議論すると有益なのではないか。