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労働検討会(第23回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成15年7月11日(金) 10:00~12:30

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員) 菅野和夫座長、石嵜信憲、鵜飼良昭、春日偉知郎、後藤博、髙木剛、村中孝史、矢野弘典、山川隆一、山口幸雄(敬称略)
(事務局) 古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、齊藤友嘉参事官、松永邦男参事官、川畑正文参事官補佐

4 議題
(1) 論点項目についての検討
  ・ 労働関係紛争の解決のための専門的知見の導入の在り方について
(2) その他

5 配布資料
資料143 山川隆一委員提出資料
資料144 労働関係事件への総合的な対応強化に係る検討すべき論点項目(中間的な整理)[再配布]
資料145 今後の検討スケジュール
資料146 検討事項に関する主要な論点及び検討資料(労働調停、裁判制度関係)[再配布]
資料147 導入すべき労働調停についての検討のたたき台[再配布]
資料148 労働調停についての検討の概要〔3訂版〕
資料149 雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度の導入の当否についての検討の概要〔4訂版〕
資料150 諸外国の労働紛争処理制度の概要[再配布]
資料151 訴訟手続への外部の人材の関与制度の比較[再配布]
資料152 日本弁護士連合会提出資料
資料153 矢野弘典委員提出資料

6 議事

(1) 論点項目についての検討

 「労働関係紛争の解決のための専門的知見の導入の在り方」のうち、「雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度の導入の当否」を中心に検討が行われた。
 検討に当たっては、7月5日に日弁連の主催で行われたイギリス及びドイツの労働裁判所の職業裁判官を招いての意見交換会及びシンポジウムの状況も踏まえて議論がなされた。(○:委員、□:座長)。

○ 日弁連のシンポジウムではイギリス、ドイツの両裁判官とも、労使の参審について積極的に評価していたことが印象的であった。
 雇用・労使関係における実情を裁判手続に反映させることが、適正かつ迅速な裁判、信頼性、控訴率の低下につながることを両裁判官が強調していたことに注目する必要がある。また、日本では労働参審制の導入について経営者側の反対が大きいが、両裁判官は労使の紛争解決能力を高めるという意味での企業側のメリットや、法のフィードバック機能といったメリットを指摘していた。
 労働参審制の廃止論は全くないとのことだった。歴史や法体系の異なる両国において、労働裁判の基本的事項に共通点が多いことは、労働裁判の有する普遍性の表れだと思う。両国の経験から学ぶことは大きいのではないか。

○ 同じような印象を受けた。ドイツの裁判官から、裁判に労使が参加することは経営側にとっても大きな意義があるとの発言があり、経営側も裁判への参加というものをそれなりに評価していることが特に印象的だった。

□ ドイツでは、ベルリンだけでも1500人程度、イギリスでも2000人程度の非職業裁判官を擁しているとのことであった。イギリスでは退職者や経営コンサルタント、行政関係者も入っているようだ。両国とも非職業裁判官の供給源が相当幅広く、厚い基盤を有している印象を受けた。

○ ドイツでは非職業裁判官はドイツでは現役であることが必要とされており、イギリスではOBの活用も可能である点で相違があるようだ。

○ イギリス、ドイツの労働参審制については、①両国とも大量の事件を迅速に処理するとの要請が根底にあり、その意味ではある程度ラフジャスティスにならざるを得ず、またそれを許容している風土があるのではないか、②両国と日本では実体法にかなり相違があるのではないか、③両国と日本では供給源の母体の厚みが相当異なるのではないか、④裁判官の配置の在り方や育成に関して、日本では司法制度の均一化の要請から全国異動がなされ、またゼネラリストを育成するという視点がある点でドイツとは異なっており、これが訴訟の進行にもある程度影響していると言えるのではないか、といった印象を受けた。

○ 労使の参画は必要であるが、そもそもドイツにおける裁判の適正性や迅速性、イギリスにおける裁判の適正性がうまく実現されているのは、職業裁判官に専門性があるからなのではないか。両国は労働裁判所、雇用審判所という形で別の裁判所を設け、スペシャリストを育成するシステムを有しており、日本の裁判制度とは基本的に異なる。労働参審制を考えるのであれば、日本のシステムそのものを考え直し、大量迅速処理を原則として取り入れるような形で実施しないと、今の日本にはなじまないのではないか。また、イギリスはドイツのシステムを参考にしており、両国に共通性があるのは当然である。

○ イギリスとドイツの相違は、同一の裁判に一貫して同一の裁判官が関わるのかどうかという点である。また、裁判が迅速であるにもかかわらず、当事者からの信頼を受けているという点は両国とも共通していたように思う。迅速性と信頼性には関係があり、システム自体に信頼が寄せられているから、細かい手続を経ずに迅速な審理が可能であり、その判断が受容されているということなのではないか。

○ 専門性の導入の必要性については異論はないし、これまで以上にその要請は高まってくるだろう。これは裁判官個人の問題ではなく、システムの問題として考えていくべきである。常に変化する現場の実情に通じた労使の知見を導入させるシステムを考える必要がある。
 イギリス、ドイツに共通する点として、争点整理をきちんと行い、念入りな準備を経た上で集中的に証拠調べを行うことによって、早期に結論を出すことがあげられる。
 司法制度改革審議会では国民の司法参加が要請されているが、労働事件における労使の参加は最もこれになじむのではないか。日本人の御上意識を変えるためにも、ここで一歩踏み出す時期にきているのではないか。

○ 大量事件の迅速処理という観点からみれば、ドイツ、イギリスの労働事件処理はうまくいっているように思う。ドイツでは攻撃防御方法の却下が相当行われている点などで日本とはかなり違う。ドイツの裁判官は、当事者が判決の内容に満足していると言っていたが、迅速性を優先するために手続の適正性が犠牲にされている部分もあるのではないか。

○ イギリスとドイツの裁判は荒っぽいのではないかとの印象を受けたが、労働事件に関しては、多少荒っぽくても迅速処理を優先するということなのだろう。
 ドイツでも解雇の有効性の判断は総合的にいろいろと勘案してやっているが、判断の枠組みは相当明確化されているようである。労働条件の不利益変更についても公正かどうかのチェックがかかる。問題は結局のところ、短期間の審理で決めることについての割り切りができるかどうかなのではないか。
 ただ少なくとも現状のままでは労働事件の解決のために裁判所を利用することはなかなか難しく、迅速性を実現するための手続の整備は必要である。

○ イギリス、ドイツの裁判所での労働事件の取扱いはそれぞれ10万件、60万件に昇るようだが、日本では裁判の前に企業内部やADRで解決されているケースが多く、判断結果の受容性について、両国の例が参考になるのか疑問である。日本の場合は裁判に持ち込まれたものはある程度十分に審理して欲しいとの要請があるのではないか。事件数の違いの背景等、まだ見えていない相違があるのではないか。

○ 確かに、日本では企業内部やADRで解決しているような軽微な紛争が、イギリス、ドイツでは裁判所に持ち込まれて和解で解決されているという相違はあるのだろう。

○ イギリス、ドイツにおいて、裁判の迅速性が優先されるあまり適正性が軽視されているとは思わない。労使と専門の職業裁判官が関与しているので、問題の核心を素早く把握できるのである。イギリスの裁判官は、日本の労働裁判の数が現状程度であれば大した問題ではないと考えるのかもしれないが、今後、大幅に増加した場合に、今のシステムでもつのかとの問いかけを行ったのではないか。
 日本ではADRにより解決される数が多いとはいえ、ADRによる解決に対する満足度は必ずしも高くない。
 裁判へのニーズが高い中で、迅速性と適正性の両立の観点から日本のシステムを考えなくてはならない。イギリス、ドイツの努力から学ぶことは多い。
 また、裁判を利用したいという多くの人のためにも、簡易定型訴状の活用は必要である。

○ ドイツの裁判がラフジャスティスになっているとは思わない。むしろ納得性が高い印象がある。一方で、精密に手続を行って時間のかかる日本の裁判の納得性がどの程度あるのか、また納得性、受容性がどのような形で実現され得るのかについても検討する必要があるのではないか。
 裁判官の任用、配置、研修の在り方等については裁判所側の改革も必要であり、裁判への専門性が求められている時代にあって、現状の問題点をそのままにして、裁判官に専門性がないことを当然の前提とするような議論は問題ではないか。

○ 日本の労働裁判は時間がかかっているが、労働事件を精密に処理しているとは思えない。時間が経ってから証人尋問をしても新鮮な心証は失われてしまい、事件の本質をつかめない。労働事件についてはどれだけ早く事件の本質を把握するかが大事なのであり、裁判官が一定のリーダーシップを発揮して争点整理、証拠調べを早期に行うことができるようになることが重要である。裁判官の専門性強化は不可欠である。精密司法を強調する一方でラフジャスティスのおそれがあるという批判は労働事件については当たらないのではないか。

○ 労働事件は現行の民事訴訟法の当事者主義の原則にのっとり、当事者が第一義的な主張・立証の責任を負うこととなっており、当事者の主張を裁判所が強権的に抑えるようなことはしていない。訴訟の進行が長引くことについては様々な事情があるが、期日が入らないといった事情もあり、この現状については裁判所のみならず代理人も反省し、改善を図っていく必要があると思っている。
 裁判官の在り方については、ゼネラリストが良いのかスペシャリストが良いのか、考え方はいろいろあろう。ただ、民事訴訟法に今般、専門委員制度が取り入れられたことには裁判官はゼネラリストだということが前提となっており、こうした制度との平仄を考える必要もある。

○ 訴訟の長期化については弁護士側にも責任があると思っている。国民のニーズに沿った迅速な処理が当事者、裁判官共に責任として求められている。特に労働事件については専門性が要求されるし、迅速に処理するための努力が必要とされている。タイムターゲットを決めて審理を進めていくことや当事者が協議して審理計画を作ることは当事者主義に反するものではない。

□ 両国の裁判官は、参審制に関する中立性、公正性についての懸念は当たらないと回答していた。また、適格性の点については、非職業裁判官に要求される能力は、法的な能力というよりも現場の知識経験であるとのことだったが、どのような印象を受けたか。

○ 制度設計にあたって、中立性、公平性を重視することは必要であるが、両国の裁判官とも、中立・公平性についての問題はないとしており、日本でも克服できないものではない。ドイツでは、非職業裁判官に対する不利益取扱いの禁止等公平性の確保のための制度的担保がある。日本の労使も制度に耐えられず中立公平性を損なうようなことになるとは思わない。

○ マーケットや企業内の賃金体系等の急激な変化、労使関係の在り方の変化などを踏まえた形で裁判を進めることとするのであれば、ドイツの非職業裁判官に要求されている現役性の要件を参考にする必要があるのではないか。ただ、そうすると別途人材確保の問題が出てくることになるだろう。

○ ドイツでは期日毎に非職業裁判官を関与させることとしており、一方、イギリスでは事件毎に関与させることとしている点に相違がある。

○ 日本経団連のアンケートを見ると、企業が人を出し惜しみする感覚で回答を寄せているように思われる。企業の社会システムへの貢献は今後より一層求められていくのではないか。企業社会にもプロボノ活動が求められよう。
 イギリスの裁判官は、非職業裁判官に期待する役割として、解雇の公正さの判断、証言の信用性の判断等を挙げており、また、彼らの貢献は労使関係における常識を裁判のプロセスに取り入れるものであるとして積極的に評価していた。
 日本の労使とも十分対応は可能である。懸念ばかりして実施しないための議論を行うべきではない。

○ ドイツでは、職業裁判官のリーダーシップが極めて大きい。しかも、職業裁判官は一人でやっており、職業裁判官の養成にかかるコストは大きいが、効率的に配置が行われている。日本の場合は1つの事件に3人の裁判官が関与するので、その意味ではよりコストがかかっていると言える。

○ 両国の裁判官によると、職業裁判官と労使の非職業裁判官の合議の結果はほとんど一致するとのことだった。立場が違っても共通の土俵で議論していけば必ずコンセンサスが図られるのだという印象で大変参考になった。

○ システムは各々の社会にふさわしいものである必要がある。紛争処理のシステムはその国の労使関係の歴史や紛争の歴史等が深く関わるものである。ヨーロッパは確かに安定したシステムを有していると言えるが、これをそのまま日本に取り入れることができるかどうかとは別問題である。
 また、司法への国民参加は必要であるが、労働調停という新しい仕組みや専門委員制度の導入が既に決まっているのであるから、それらの充実を図り、その中で具体化していけばよい。調停の中に裁判官以外の者が入ることには大きな意味があり、まずはここから信頼性を醸成することができるようにすべきである。
 現時点では労働参審制について社会的なコンセンサスが得られているとは言えず、このような段階で一歩踏み出すこととすべきではない。

○ 課題に向かって現状の仕組みを変えていこうとするときに、現場の意見を聴くことも必要であるが、時代に対してどれだけの先見性をもって現場をリードしていくかを考えることが重要なのではないか。

○ 基本的なスタンスはそのとおりである。一方でプロセスは民主的でなければならず、幅広く意見を聴くことは必要であり、アンケートの結果からみると、現時点では、一歩進める状況にはないと判断せざるを得ない。安定した社会システムを作っていくためには現実を踏まえて変えられる所を変えていくという形が最善なのではないか。

○ 労働参審制の当否の議論だけで結論がでなければ、中間的な制度設計についても考える必要がある。そこで、例えば、以下のような特徴を有する制度が考えられないか。

  • 裁判官、労使の委員が合議体により議論して結論を得る手続とする。
  • 一方当事者から申立てがあった場合には、相手方は手続に応ずべきものとする。
  • 結論の出し方としては、決定のように一種の裁判手続のようなものを考える。
  • 和解も行うものとする。
  • 出された結論に不服がある場合には異議の申立てができるものとするとともに、結論の効力を失わせるには訴えを提起させるものとする。
  • 証拠調べを行うものとする。証拠調べの手続についてはもう少し緩和されたものとすることが望ましい。
  • 実質上の4審制とならないよう、期日の回数を数回程度に限って実施するものとする。
  • 非訟事件手続法が準用されるものとし、調停よりも多少訴訟に近い制度とする。

○ その制度で出す結論は、紛争の解決案を提示するものか、それとも、権利義務関係を確定するものか。

○ 単なる解決案の提示ではなく、権利義務関係を確定するものをイメージしている。

○ その制度では、訴訟と連携して紛争の迅速な解決を図るべきである。

○ その制度は、原則として労働調停の手続の中で措置しようとするものか。

○ 地方裁判所で行う労働調停を止揚した制度として考えており、この制度を創設するのであれば、地方裁判所での労働調停は導入しないこととし、簡易裁判所での一般民事調停において社会保険労務士等を活用することも考えられる。

○ 裁判手続として考えているのか。

○ 決定手続のようなものを考えており、一応裁判制度と位置付けられるのではないか。

○ 裁判制度ということになると、事実上の4審制となる。

○ 4審制という状況は避ける必要がある。

○ 初めて聴く提案なのでイメージが湧かないが、労働調停は裁判とは異なり、使いやすい制度として導入する点に特徴がある。

○ 労働調停では、一応の出頭強制はあるが、相手方が出てこなければ事実上それまでであり、それは避けたい。

○ 入口をきつくする運用はあり得るが、出口で訴えの提起を義務付けるのであれば、最初から訴訟に持ち込まれることにならないか。

○ 様々な考え方があり得るが、最初から訴訟に持ち込むことを認めると、この制度を使って労使の知見を生かす場面がなくなってしまうように思うので、まずはこの手続を経てもらうこととすることも考えられる。

○ 労働検討会では、裁判制度の中で労働関係の専門的知見を導入することの当否を検討してきた。

○ 純粋な訴訟手続に必ず労使が入らなければならないのであろうか。

○ 提案の制度は非訟事件手続に近いものであり、設計が可能であれば一つの選択肢となり得よう。

○ 結論を定める際に、現職復帰、地位確認等の権利義務関係についても定めるのか。労働調停では、金銭解決の際の金額の調整等が主であると考えている。

○ 単に調整的な決定だけではなく、権利義務関係についての決定も出すようにしてはどうかと考えている。

□ この他にも中間的な制度設計案があれば示してほしい。

○ 労働紛争の解決に当たり専門性を生かす必要があることでは意見が一致していよう。また、紛争解決の迅速性を確保することも重要である。
 そこで、いくつかの制度について考えてみると、専門委員は、説明を行うのみで関与として不十分である。仮に意見陳述を認めても形式的なものとなり適当ではないと考えられる。
 また、司法委員のような制度は、必ず関与させることとなると、紛争解決の迅速性を損なうおそれがある。
 調停での関与も考えられるが、必ずしも十分ではなく、関与をより強める方法としては、一つには、調停と訴訟を時間的にずらすことも考えられる。すなわち、調停前置もあり得るが検討会の支持は得られていない。
 もう一つには、調停と訴訟の中間の制度を検討することが考えられ、最初からそうした手続を経させることや、少額訴訟のように異議を述べた場合には訴訟に移行することも考えられる。しかし、その場合には、この手続を前置させることで迅速性に問題が生ずる可能性がある。
 しかし、この手続を経ることで、労使の実質的な関与を通じて相当程度の紛争が迅速に解決していけば、スクリーニング機能もあると言える。アメリカには勧告的仲裁前置制度というものがあり、訴訟手続での負担を軽減するため、ADRを訴訟手続と接合させている。

○ 労働調停で労使が参画していけば解決案の受容性が高まると考えられる。調整的な内容の解決案を示して受容性が高まっていけば、訴訟にまで連携させる必要はないのではないか。調停は、年俸制における実績評価等について解決案を示すものであり、権利義務関係を確定させるものとは異なると考えられる。

○ 訴訟と調停の中間のイメージを考えている。労使が関与して決定をしていけば、訴訟でもその内容に近い判断がされていくのではないか。

○ 提案の制度では迅速性が問題になるが、裁判官と労使が関与して出された決定が一定の効力を持たないと意味がないので、決定により裁判への橋渡しをしていくということは考えられる。決定に拘束力がないのであれば、調停に代わる決定のレベルに止まることとなる。

○ 司法制度改革審議会意見書から付託を受けている検討課題は裁判制度の問題である。ドイツやイギリスでも訴訟と調整的な手続とが連動した仕組みとなっている。調停手続の中で訴訟的側面を打ち出すとしても、調停は調停に過ぎない。労働検討会の議論のスコープから外れることになるのではないか。専門家の関与する裁判制度の導入の当否ということでは、否との結論を出したということになるのではないか。
 裁判制度の中で中間的なものが考えられるのであればよいが、あくまで調停の中での提案ということであるならば適当ではない。

○ 提案の制度は、互譲による手続である調停とは言えず、第三の手続だと思われる。初めての提案なのでよく検討したい。

○ この提案に議論が収斂していくならば、地方裁判所での労働調停は導入しなくてもいいのではないか。この提案はどちらかというと調停というよりも裁判手続に近く、裁判手続に労使双方の専門家を活用するという場合の裁判手続には幅があるものとのイメージで考えている。

○ 外国の制度を考えてみると、イギリスの雇用審判所はtribunalでありjudgeではない。フランスも労使のみが関与した非訟的な手続であり、行政的に行っている。また、労働委員会では判定と調整を併せて行い、調整的命令を出すこともある。

□ 裁判制度の中での中間案としては、評決権を持たないで合議に関与する参与制もある。しかし、参与制については、検討会では積極的な意見は出ていなかったように思われるがどうか。

○ 通常の民事裁判制度の中で工夫することも中間案としてはあり得るが、通常の裁判の中では、労働事件に特有な迅速な解決を図る制度を設けることは難しい。そうすると、別の手続を考えることにも意義があると思われる。
 調停で解決案を示すことでもそれなりに受容性が高まるかもしれないが、結論に一定の効力を持たせた方がしっかりした制度になると思う。この提案は迅速性という観点からは十分に考慮し得るものではないかと思われる。

(2) その他

 今後の検討の進め方について意見交換が行われた。

(3) 次回の日程

 次回(第24回)は、平成15年7月18日(金)10:00~12:30に開催することとされた。