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労働検討会(第25回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成15年8月1日(金) 13:30~16:45

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員) 菅野和夫座長、石嵜信憲、鵜飼良昭、春日偉知郎、熊谷毅、髙木剛、村中孝史、矢野弘典、山川隆一、山口幸雄(敬称略)
(事務局) 山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官、松永邦男参事官、川畑正文企画官

4 議題
(1) 労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方について
(2) 検討の中間的な取りまとめについて②
(3) その他

5 配布資料
資料163 労働関係事件への総合的な対応強化に係る検討すべき論点項目(中間的な整理)[再配布]
資料164 検討事項に関する主要な論点及び検討資料[再配布]
資料165 不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会報告
資料166 処分の取消訴訟において審級省略等が採用されている行政手続の例[再配布]
資料167 労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方についての検討の概要
資料168 導入すべき労働調停についての検討のたたき台[再配布]
資料169 春日偉知郎委員・村中孝史委員・山川隆一委員提出資料[再配布]
資料170 中間的な制度案の比較
資料171 労働調停についての検討の概要〔3訂版〕[再配布]
資料172 雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度の導入の当否についての検討の概要〔6訂版〕
資料173 春日委員、村中委員及び山川委員からの提案についての検討の概要
資料174 労働関係事件固有の訴訟手続の整備の要否についての検討の概要〔4訂版〕
資料175 石嵜信憲委員提出資料
資料176 鵜飼良昭委員提出資料

6 議事

(1) 労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方について

 はじめに、資料165「不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会報告」について、熊谷委員から説明がなされた後、質疑応答及び意見交換が行われた(○:委員、□:座長)。

○ この報告書の内容で事実上の5審制問題が解決されると言えるのか。研究会ではどのような議論がなされたのか。

○ 御指摘に関しては、裁判の迅速化のための取組みが進んでいること、労働委員会の審査手続を見直すこと等により、今後事件処理に要する期間は短縮化されるのではないかとの意見があったほか、最高裁判所への上告事由が制限されており実質的には4審に近い状況になってきているのではないか、研究会で指摘された問題点の見直しによる審査手続、審査体制の改善状況を見極めた上で更に検討することが必要なのではないか等の意見があった。5つのステップ自体を短縮することについて直接の具体的な処方箋が示されたわけではないが、いわゆる5審制によって生じる問題について、一定の改善策を示しているものであると受け止めている。

○ 審議会の意見書では、5審制問題そのものを解消すべき、ということが求められているのではないか。

○ 現状では、労働委員会が高度の専門性を有した準司法機関として位置づけられているとは言い難い。手続を充実させ、労働委員会の高度の専門性についてユーザーの理解が得られた上で、審級省略や実質的証拠法則等の措置を検討すべきであり、現時点では時期尚早なのではないか。

○ 研究会で示された処方箋には、法令改正を行う制度的処方箋と運用改善等を中心とした実態的処方箋の2種類があるが、制度的処方箋を講ずることは、裁判所の手続に匹敵する手続とする上で重要なステップとなると考えられる。また、実態的処方箋については、実行に移していき、ある程度時間をおいて判断する必要があるのではないか。また、現在の労働委員会は労使関係についての専門性は備わっていると言えるが、裁判所に匹敵するためには、もっと法技術的な専門性を備える必要があるのではないか。

○ 現在の労働委員会に問題があることは承知しており、研究会報告に挙げられている改善措置は重要であると思う。ただ、労働委員会制度には、集団労使関係に関する行政救済機関として、一般の司法手続とは異なる独自の存在理由があるのであり、労働委員会の命令に対する取消率が現在のように高い状況にあることは、労働委員会の判断に問題があるからか。裁判所が通常の民事訴訟と同じ手法・基準で判断しているのは、本来の制度の趣旨に合致するものとは思えない。こうした状況について労働委員会側から、司法審査の在り方にメスを入れようという姿勢が感じられないことは残念である。

○ 御指摘の問題点については同感であるが、研究会では主として労働委員会側の問題点を議論しており、司法審査の在り方そのものに関しては議論はしていない。

○ 研究会報告では労働委員会の審査の遅延について3つの原因が挙げられているが、ウェイトが高いものはどれか。また、遅延の原因の一つとして挙げられている争点・証拠の整理の不十分さ等についての対策が挙げられていないが、具体的な方策はないということか。
 労働委員会の調整的機能は有用だと思っているが、救済命令の取消訴訟における現状の取消率の高さからすると、判定的機能に対する信頼感は低いと言えるのではないか。こうした前提に立って講ずるべき措置を検討すべきであり、審級省略や実質的証拠法則の採用は現段階では賛成できないが、厚生労働省の審議会で更に議論されるということであれば、その経過を教えてほしいとともに、この場で更に議論をすることについては異存はない。

○ 審査の遅延の原因については、資料167、1(1)①の、争点・証拠の整理が不十分という点が研究会で強く指摘されていた。この点についての対応としては、審査を計画的に進めるための計画の作成のほか、審査体制の強化、公益委員の常勤化、事務局の能力向上等による改善が考えられるのではないか。
 労働委員会は審査と調整の2つの機能を持っているが、審査においても取下げ和解で調整的に解決されているものも多い。研究会では、今後より調整的な解決を円滑に行っていくためにも、判定的な機能を発揮できるように強化することが重要ではないかとの指摘があった。

○ 具体的な方策については、審議会でもよく論議していただきたい。

○ 不当労働行為事件の処理に際しては、背景にある労使関係の経過が大きな意味を持つ。労働委員会の指揮によって労使関係の推移を早期に整理し、争点を明確化し、争点に絞った証拠を提出させ、集中的に証拠調べを行えば、かなり迅速に適正な審理が図られるのではないか。労働委員会には、集団的労使関係について理解のある労使が入っており、また、特に中央労働委員会には専門性の高い公益委員が入っているのであるから、そこで判断されるものについて裁判所は一定の重みを持って評価すべきであり、審級省略は大きなテーマである。そして、裁判所と労働委員会が互いに協議して考え方について意見交換をすべきではないか。現状では、労働委員会の命令が裁判所において全く別の物差しで判断されているような印象があり、整合性を欠いているように思われる。

○ 研究会報告では審査の遅延の原因が3つ挙げられているが、これらは相互に関連している。例えば計画審理やタイムターゲットの設定を行う場合には、公益委員と事務局の能力向上が不可欠である。しかし、地方労働委員会では事件数が少ない等の問題があり、これをすぐに実施することは難しい。そうした様々な事情を考慮して、現時点では、審級省略や実質的証拠法則については「引き続き検討する」という表現となったものである。

○ 様々な事情があることは承知しているが、制度上は5階建てになっており、5審制の解消を図る方法や審級省略の可能性についての議論がなされていない。裁判所も具体的にどうすれば5審制を解消できるのか指摘してほしい。このままではいつまでも5審制問題が続くことになる。他の制度では現に審級省略を行っているものもあるのであり、審級省略について見通しがつくような議論をすべきなのではないか。

○ 審査に時間を要することについては、迅速化に向けた方策によってある程度の改善が可能だが、労働委員会の救済命令が取り消されることについては、労働組合法7条についての裁判所と労働委員会の解釈の相違という実体法上の問題も関わってくるものであって、これについては制度改正よりも、両者の協議の場の設定等相互の共通理解を模索する方法を考えることが有効なのではないか。新証拠の提出制限に関しては、新たな証拠がいつでも提出され得る現状は制度面でも問題であり、制度の存在意義に関わるものではないかとの認識を持っている。

○ 新証拠の提出制限は是非とも実現すべきである。
 5審制の問題は、中央労働委員会の再審査まで経た事件について、裁判所の3審を経ることが本当に必要なのかということを考える必要がある。中央労働委員会はかなり高度な専門性を有しているにも関わらず、その救済命令に対して、現在のような高い取消率になっていることの問題点は何か。中央労働委員会の命令が杜撰であって、司法審査に耐えられない状況にあるということなのか。中央労働委員会と裁判所で実体法の解釈に違いがあるということなのであれば、制度の根幹にかかわることであり、両者の整合性を担保するために必要な措置を検討すべきであって、これを放置したまま制度論を議論することはできないのではないか。

○ 労働委員会と裁判所とで事実認定が異なるため、結論が変わってくるのではないか。不当労働行為の要件事実の認定に関して言えば、労働委員会の認定が甘いような印象がある。実体法の解釈が異なるというよりは、要件事実の認定の仕方が異なるということなのではないか。
 5審制の問題については、労働委員会の仕組みが制度面、実態面で整備されていけば将来的には審級省略も考えられるかもしれないが、少なくとも現在の状況では、労働委員会側の改善方策についてより具体的に議論をしていただくことが必要であり、さらに、実際に改善を行った後に、その効果を検証していくことが必要である。

○ 5審制の問題に対し、何らかの対応をすべきことについてのコンセンサスは得られているのではないか。労働委員会の事実認定が甘いというのであれば、その甘さを克服する方策について議論すればよいのであって、現状が悪いという主張を続けていては何も変わらない。

○ 労働委員会の事実認定に一定の能力を持った専門家が関わるようになれば、裁判所の認定との相違がなくなるだろう。このように前提が変わってくれば審級省略の議論もできようが、まずはそこから変えていくべきである。

○ 現状の運用のレベルが低いからといって、それによって利用者が不利益を被っても仕方がないということにはならない。関係者全員が利用者の立場に立ってよく議論すべきなのではないか。

○ 中央労働委員会で認定された事実が、10年経過後に裁判所で覆されることについては、よほど明確な証拠が発見されでもしない限り理解できない。研究会報告は、労働委員会側の問題点の改善に終始しているように思えるが、司法審査の在り方の問題を含めて団結権保護のシステム全体を考えるべきであり、例えば地方労働委員会と中央労働委員会の審理を経たものは地方裁判所の手続を省略する等、具体的な方向性を明確にすべきなのではないか。

○ 労働委員会と裁判所の間では、要件事実の具体的な内容についての理解の違いがあるのではないかとの議論も、研究会では行われた。

○ 議論がかみあっていないように思う。研究会報告は、中央労働委員会、地方労働委員会双方を含めた労働委員会全体の問題を議論しているが、5審制の問題に絞って議論をするのであれば、中央労働委員会の命令の問題点を精査する必要があり、命令の一部取消判決であってもその内容をよく見る必要がある。中央労働委員会についてのみ専門性の向上を図るのであれば、審級省略という議論もあり得るのではないか。

○ 中央労働委員会と地方労働委員会の問題点は別個に扱われるべきである。個人的には、今後、中央労働委員会で公益委員の一部常勤化が図られ、事務局に法曹資格者が配置されることとなれば、審級省略も可能となるのではないかと考えているが、研究会の一致した意見とはならなかった。5審制については、ユーザーの負担と国家資源の無駄を防ぐ観点からも、ある程度の質が確保されれば、中央労働委員会を裁判所の一審と同等とみなして地方裁判所を省略することも考えられるのではないか。

○ 5審制と言うが、最初の2審級は行政機関であり、単純に足して5段階というのは違うのではないか。また、そもそも裁判所の前段階での労働委員会の審査に時間がかかりすぎており、まずはこの部分を迅速化すべきではないか。

○ 団結権の擁護のために、司法判断の前に行政的救済を行う制度が設けられた背景には、迅速化の要請があったのではないか。
 また、裁判所による取消が多いことから、労働委員会が萎縮しているような印象を受けることもある。近年、労働委員会が専門性を発揮して独自の観点から審査を行っていたこれまでの状況が失われつつあるのではないかと懸念している。労働委員会の命令に対する取消訴訟の在り方を変えるべきであり、少なくとも中央労働委員会の救済命令の取消訴訟については、1審を省略するという方向性を検討会として打ち出すべきではないか。

○ 行政委員会の判断であろうと裁判所の判断であろうと、利用者にとっては、判断を5回受けなくてはいけないという面では変わりがない。

□ 厚生労働省の労使関係研究会報告(昭和57年)では、現行制度の下で対応可能なあらゆる処方箋が示されたが、その後の時代背景もあり、うまく改善に結びつかなかった。今般の研究会報告がそのまま制度改正や運用改善につながれば、かなりの効果が期待できるが、実際に実行していくにはかなりのステップが必要である。現時点で今後の見直しがつけば、審級省略等の措置を講ずるべきとの考え方もあろうが、これまでの状況を見ているとまだまだという気がする。

○ いつになれば将来の課題ではなくなるのか。その展望のないまま議論を続けるのでは、いつまでたっても何も進まない。

○ 新証拠の提出制限に関して、労働委員会の文書提出命令はどのような形で出されることになるのか。その枠組みについて、厚生労働省の研究会ではどのような議論があったのか。

○ 研究会では、具体的な枠組みの作り方については今後の検討に委ねることとされた。

○ 現行の労働組合法第22条に強制権限の規定があるが、実際には使われていない。これをより使い易くするような形のものをイメージしている。

(2) 検討の中間的な取りまとめについて②

・ 資料170「中間的な制度案の比較」に挙げられた1~10の事項について、各委員から意見が述べられ、意見交換が行われた。また、次回欠席予定の石嵜委員より、資料175についての説明があった。(○:委員、□:座長)。

○ 「1.対象となる紛争」に関しては、これまでの議論も踏まえて、個別労働関係紛争の解決を目指すこととし、その対象は個別労働関係紛争解決促進法第1条の規定が参考になるのではないか。
 対象となる紛争に当たるかどうかについて、当事者間に争いがある場合も考えられるが、その場合には原則として裁判官が判断することとし、迅速性が損なわれないようにすることが必要である。

○ 資料175に述べた意見をベースとしつつ、「1.対象となる紛争」については、個別労働関係紛争に限定すべきであり、「5.当事者の意向」については、労働調停を基礎とし、当事者双方の意向を踏まえるべきである。また、「9.裁定の内容」については、権利義務を踏まえつつ、労使の知見を生かし、事案の内容に即した解決案を提示することとすべきである。

○ 「1.対象となる紛争」は個別労働関係紛争を中心とすべきだが、集団的紛争についても処理が可能なものがあるかどうか検討してみてはどうか。「2.労働調停との関係」について、4案では労働調停を設けないこととされているが、簡易裁判所で一般の民事調停を利用できるようにしてもよいのではないか。「3.訴訟との関係」については、直接に訴訟も利用できるように選択肢を設けておくべきであって、4案の「訴訟に前置」することには反対である。「4.裁定主体」は労使委員に評決権があることに意味がある。「5.当事者の意向」については、手続応諾義務を入れないとこの制度自体の意味がなくなるのではないか。「9.裁定の内容」については、理由を付すようにすることが納得性、受容性の点で重要である。
 また、裁定手続については、透明性を確保すべきであり、手続過程の公開が求められる。この他、裁定に不服で訴訟が提起された場合には、証拠が引き継がれるようにすべきである。さらに、裁定手続に携わる者に対する研修についての検討も必要である。

○ 「1.対象となる紛争」は個別労働関係紛争とすべきであり、集団的紛争は労働委員会に委ねるべきである。制度の全体的な構造は、広い意味での労働調停としてとらえるべきであり、事実上の4審制にならないように注意する必要がある。「3.訴訟との関係」については、直接に訴訟を提起することも認めるべきである。「4.調停主体」については、広い意味での調停の範囲内でその役割を定めるべきである。「5.当事者の意向」については、当事者双方の意向を踏まえることとすべきであり、一方当事者が反対しているのに裁定を出すこととする意味はない。「7.裁定までの期間」については、期日は2、3回程度でよいと考えている。「9.裁定の内容」については、権利義務関係を踏まえつつ、事件の内容に即した解決案を示すこととすべきであり、権利義務関係の存否を判断することとなると判決と変わりがなく、新しい制度を設ける意味がなくなるのではないか。こうした全体の枠組みを踏まえ、「10.裁定の効力」については、利用しやすい手続となるよう、当事者の一方から異議の申立てがなされた場合には効力を失うこととすべきである。

○ 「1.対象となる紛争」は個別労働関係紛争とすべきであるが、個々の労働者が利用しやすい仕組みにすべきである。現在、行政機関や弁護士会等の様々なADRが整備されつつあるが、これらは調整的な機能しか有しない任意的な手続である。しかし、多くの人が利用するようになるためには、それなりの魅力と紛争解決能力があることが必要である。本来ならば労働参審制を導入することが適切であると考えているが、これが難しいというのであれば、少なくとも、裁判官と労使が判断を下す制度を導入することとすべきである。最終的には裁定が出るという担保があることによって、和解による解決が促進される効果もある。しかし、そのような担保がないと、話し合いもつかず、無駄になってしまい、新しい手続を設ける意味がなくなるのではないか。申立人にとっては、調停又は裁定のいずれを申し立てるかがはっきりしないととまどってしまう。裁定の申し立てがあれば、最低限相当性があれば裁判所が裁定を出せるようにすべきである。そうでないと、制度が利用されないおそれが大きくなる。

○ 「6.裁定を行う際の手続」に関しては、どのように証拠調べを行うかが問題となってくるだろうが、迅速処理を念頭におくべきである。また、和解は労働調停として行うことになるのではないかと考えている。

○ 「3.訴訟との関係」について、裁定前置とするのは強すぎるとの御意見があったが、紛争によっては直接訴訟を提起した方がよいものもあると考えられる。
 「6.裁定を行う際の手続」について、裁定の手続としては、証拠調べも踏まえて3回程度の期日で終了させることを想定している。書証は事前に提出してもらう必要があろう。証人尋問の方法については、裁判官が中心に行い、反対尋問まで認める必要はないとも考えられる。なお、証明の程度は疎明では足りず、ある程度蓋然性を証明してもらう必要があるのではないか。
 「5.当事者の意向」については、手続応諾義務を課すかどうかについては意見が分かれているが、通常の訴訟手続は、当事者がルールを遵守しない場合には制裁を科すという制裁型スキームをとっているのに対し、我々の考えている裁定手続はそこまでは想定しておらず、むしろ、当事者に相当程度の協力を求めながら、適正迅速に紛争解決を図ることを目指すものであり、その理念からすると当事者の自主性を尊重する非制裁型スキームにする方がよいのではないか。当事者の意向を踏まえないと手続は円滑に進まないのであり、入口の部分に手続応諾義務を入れることには若干無理があるのではないか。また、4審制になりかねないとの懸念を払拭するためにも、柔軟で小回りのきく制度にした方がよいのではないか。
 さらに、裁定に対する受容性や満足性を考えると、強いて裁定を出すこととすると異議が出る可能性が高くなり、手続が無駄になりかねない。
 また、裁定で解決案を示すのだとすると、実体法では定められていない内容の提案をすることもあり得るので、当事者の意思を踏まえないと難しいと言う気もする。

○ 前々回の検討会で提示された案のイメージから段々遠ざかっているように感じる。手続応諾義務を設けないと大半の経営者側は裁定手続の利用を拒否することになるのではないか

○ 裁定が出されることによって和解が促進されるとともに、裁定自体が訴訟手続の中で尊重されていくところに裁定手続の価値があるということなのではなかったか。裁定手続が調停のパワーアップというイメージなのであれば、少なくとも調停に代わる決定以上の効力を持たせるべきである。また、調停でも不出頭には過料の制裁があるのであり、一定の強制力は必要である。裁定は、訴えの提起により効力を失うのであれば、相手方の利益を害することはないし、憲法上の裁判を受ける権利を害することもないだろう。手続応諾義務が設けられないとすると新しい制度の利点はなくなるのではないか。

○ 3回の期日で事実認定をして、解決案を出すというプロセス自体はよいのではないかと考えているが、その場合の手続応諾義務の考え方について、統一された理解がなされていないように感じている。過料の制裁を課すもの、通常訴訟へ移行させるもの等がありえる。
 ただ、少なくとも調停手続であれば現在の民事調停と同様に応諾義務を課すこととする制度設計もあり得るのではないか。

○ 手続応諾義務というかどうかは別として、調停であれば過料による出頭強制がある。裁定制度においても、そのような形で相当と考えられる場合には裁定を出せるようにすることが必要である。

□ 相手方当事者が手続に応じるような何らかの工夫が必要なのではないか。

○ この手続が使用者側にすぐに受け入れられるかどうかはやってみないと分からない。ただ、労働委員会や労働局の紛争処理は、労働行政の枠の中で行われているため、使用者は色眼鏡で見られているように感じることもある。一方で、司法の世界では対等の立場で処理されるというイメージがあるので、裁判所に対する信頼は高く、裁判所において解決案が出されることについては、使用者側にとっては大きな意味がある。応諾義務を課さないからといって使用者側の多くがこの手続を拒否することになるとは限らないのではないか。

○ 応諾義務そのものを法律で規定するかどうかは別として、出頭義務や応訴義務程度のものがないと、使用者側は裁定手続に応じないのではないか。相手方が異議を述べれば利用できない手続となってしまう。

○ 使用者側がこの手続の利用をすんなり受け入れるとは考えにくい。できるだけ多くの人に利用してもらうようにするためにも、応諾義務のようなものを課す必要があるのではないか。それがないと、使われない制度になるのではないか。

○ 訴訟をすると時間がかかるという中で、裁判所が控えた手続で短時間で裁定が出れば、通常は使用者側も従おうと思うのではないか。

○ 使用者には、紛争の早期解決を望む気持ちがあるので、それを可能とする制度ができれば利用するだろう。様々な制約を課して使いにくい制度にすべきではない。

○ 労使双方にとって中立的で利用しやすい手続である必要があると考えている。民事調停では、裁判所の呼び出しに応じない当事者というのは実際上は稀であり、過度に手続応諾義務にこだわるべきではないのではないか。

○ 非協力的な利用者に悪用されることを防止することを担保する措置は最低限必要なのではないか。申立てをしても利用されないのでは意味がなく、手続が無駄になるだけである。少なくとも不出頭に対する過料の制裁を設け、相当と認めれば裁定を出せるようにしておくことが必要である。

○ 応諾義務の内容がはっきりしないが、相手方が欠席しても裁定が出されるような手続になるのであれば、最終的には訴訟で争えることとする以上、応諾義務を課すかどうかによって大きな違いが出てくるとは思えない。
 また、調停と裁定では、審理のウェイトが異なってくるので、手続としては分けた方がよいのではないか。

 労働関係事件固有の訴訟手続の整備の要否に関して、資料176について、鵜飼委員から説明がなされ、これについて意見交換が行われた。

○ 資料176-2の1~5は訓示規定のような形になっているが、立法論としてこれらを法律に規定することが可能なのか。また、規定するのであれば、裁判所に対する義務だけではなく、当事者に対する迅速処理義務も考えるべきである。定型訴状については、法律で定めるというよりも、実務レベルで定着させていくのが望ましいのではないか。

○ 解雇事件を本案訴訟に訴え易くしたい。そのため、指針を定めることで実効性が上がるのではないか。

○ 訓示規定だけを独立させて立法化することは難しいのではないか。

○ 解雇事件について民事訴訟法を具体化したものとして、一定のサンクションも含めて、計画審理等を特則のような形で法律に書くことも考えられるのではないか。

(3) その他

 中間取りまとめや意見募集の方法についての意見交換が行われた。
 次回(第26回)は、平成15年8月8日(金)13:30~16:30に開催することとされ、中間取りまとめ案についての議論を行うこととされた。