「労働関係事件への総合的な対応強化についての中間取りまとめ(案)」についての意見交換が行われた(○:委員、□:座長、△:事務局)。
なお、欠席した委員から、司法制度改革審議会意見書において「労働調停を導入すべきである」とされていることに加え、「中間取りまとめ(案)」第2、本文においては、新たな紛争解決制度は「労働調停制度を基礎とし」たものである旨が記載され、また、その(注4)においては、「調停によって解決し難い事件について解決案を決するものとすることが考えられる」旨が記載されているので、本制度の仮称としては、「調停」の名称も明示すべきであり、「労働調停・審判制度」とすることが適当である旨の意見が事前に寄せられたことが事務局から紹介された。
○ 前々回の検討会で提示された3委員の「中間的な制度の方向性について(メモ)」と今回の中間取りまとめ(案)はどのような関係か。また、手続応諾義務に関して、前回の検討会で、通常、民事事件の相手方は応諾義務を課さずとも調停に応じているとの説明があったが、労働関係事件は一般の民事調停事件とは異なるのではないか。手続の入口の段階で利用されなくなってしまう可能性について、よく検討すべきである。
第2の(注5)、中立かつ専門的な知識経験を有する者について、「労働者又は使用者を代表する者ではなく」とあるのは「労働者又は使用者の利益を代表する者ではなく」という趣旨であると理解してよいか。また、労働関係事件の解決に関わる労使の関係者の制度上の位置付けはどのようなものか。さらに、証人の証言を見分ける能力は①から③までのどれに含まれると考えているのか。(注6)の「(いわゆる非訟手続)として導入する」とは原則として非公開との趣旨か。(注7)に「専門委員制度」とあるが、雇用・労使関係に関する専門的知見を有する者を関与させる方法として、専門委員制度を活用することについては特に議論していない。専門委員として労使が関与するかの誤解を与えかねないので削除した方がよいのではないか。
この制度については、使い勝手がよく、当事者の納得性が高く、職場へのフィードバック機能のある仕組みを作るという観点から検討することが必要である。
□ 中間取りまとめ(案)は、前々回の検討会の「中間的な制度の方向性について(メモ)」の1~4案を統合したものである。「労働調停制度を基礎としつつ」は2案と3案に類似しているが、「解決案を決する」という所が大きな柱であり、1案と4案の長所を取り入れている。
△ 応諾義務の要否については、(注4)にあるとおり、「解決案の効力及びこれとの関連における当事者の意向への考慮の在り方」等を勘案しつつ、今後十分に議論していただく必要があると考えている。第2の(注5)、「労働者又は使用者を代表する者ではなく」とは、御指摘の通り、労使の利益代表ではないという趣旨である。労使の関係者の位置付けは、裁判官と共に審理し、合議により解決案を決する立場にあるということになる。法制上の立場については、今後十分に検討されるべき問題と考えている。証人の証言を見分ける能力については、(注5)の①から③までのいずれであるか意識して整理していないが、②の能力があればこそ、そのような能力を発揮できるのではないかと考えている。(注6)に関して、原則非公開とするかどうかについては、今後十分検討していただくべき点だと考えている。(注7)の「専門委員制度」は、民事訴訟一般の制度であり、労働関係事件にも適用され得るものなので、その実績も今後参考として踏まえるべき要素になるとの趣旨で記載している。
○ かつて男女雇用機会均等法上に調停制度が設けられたが、当事者双方の同意が必要だったためあまり使われなかったということがあった。また、都道府県労働局への相談件数は多いが、あっせんによる解決の件数は少ない。できるだけ使われる制度にするという視点が重要である。
○ 手続の入口で応諾義務を課すかどうかは、出口部分の解決案の効力の大きさと深く関連してくる。使い勝手の良さ等の観点から、今後詰めて検討すべき事項である。また、労働者側が手続の相手方となる場合もあり得るので、この点も考慮する必要がある。
○ 第2の(注4)の「なお検討する」事項の具体的な内容として、「訴訟手続との関連」も入れるべきではないか。解決案が出されても解決しない事件について、訴訟段階も含めて全体として迅速に解決を図れるようにする必要がある。
○ 中間取りまとめ(案)の第2の部分はADRの一つとして考えるべきであり、その意味では概ね妥当な内容になっているのではないか。大切なことは使い易く親しみ易い制度にすることであり、その方法としては様々なものが考えられるが、当事者の意向を尊重することをベースに置くべきである。また、(注5)は、労働者又は使用者の利益代表ではないとの趣旨には賛成であるが、具体的に推薦母体をどうするかということについては、今後詰める必要がある。(注7)の専門委員制度の部分については、労働参審制や参与制は訴訟制度の改革の議論であるから、専門委員制度の状況も踏まえる必要があると考えている。制度の名称については、この制度が広い意味での労働調停制度であることからすると、「労働調停・審判制度」とするのが適当なのではないか。第4については、厚生労働省の審議会での検討と連携する必要があるが、労働委員会の救済命令に対する取消率の高さの問題点は、証拠の出し方のみにあるわけではないので、これを特出しすることが適切なのか疑問はあろう。また、代理人が途中で変わる場合や本人訴訟の場合といった様々なケースも考えられるので、法律で一律に新証拠の提出制限を課すことには賛成できない。
○ 労使の適切な人材を確保し配置する観点からも、事件の棲み分けについて今後検討すべきである。簡易裁判所の民事調停、労働審判制度、訴訟の3つの手続があることになるが、全ての事件が労働審判に流れていくのがよいのか。話し合いによる解決も重要であり、簡易裁判所の民事調停も利用し易くする必要があるのではないか。また、労使の関わり方について、利益代表ではなく、中立公正であるべきであるとすることには賛成である。なお、この制度では、解決案の提示に至る過程において、争点整理や事実認定を適切に行うことができる者の関与が前提となることを認識しておく必要がある。
○ 第3の部分の「協議」は、地方裁判所レベルでの協議を指すのか。全国レベルで労働事件の処理についてのガイドラインを作成するようなことまで視野に入れてはどうか。
△ 「協議」は先般立ち上げられた東京地方裁判所における運用についての実務家による労働訴訟協議会のようなものを主として想定している。全国的なレベルの協議の必要性については、各方面の意向等を踏まえる必要がある。
○ 第3では運用改善によることとなっているが、本当に運用のみで改善が図られるのか。最低限の運用の基準・指針が必要である。労働訴訟協議会は東京地方裁判所の運用に限定されるので、全国的な検討を行う協議の場を設けることは考えられないか。
○ 第3については、運用改善だけで証拠の偏在等に対応できるのか。
また、仮処分と本案訴訟の関係をめぐる論議、審判費用の問題、敗訴者負担についての取扱いについてどう考えるのか。
第4では、(注3)で審級省略は採用しないと言っているが、司法制度改革審議会意見書は、5審制の解消を主要な検討課題として提起しているのであるから、本文中で審級省略について触れるべきではないか。また、第4の新証拠の提出制限に関する記述は、厚生労働省の研究会報告よりも後退した表現になっている。いろいろと意見の対立はあろうが、5審制の解消を積極的に考えて、表現を変えるべきではないか。
△ 敗訴者負担については、司法アクセス検討会で検討の上、意見募集を行っており、労働検討会の中間取りまとめにおいて提言を行うことは難しいのではないか。第4の新証拠の提出制限については、引き続き検討すべき旨を端的に記載しており、記述の方法は様々あろうが、原案は消極的な立場で記述されているものではない。
○ 第4の審級省略については、労働検討会における検討状況からしても、(注3)の記述が適当なのではないか。新証拠の提出について何らかの制限を課すことについては反対意見もあり、これ以上踏み込んだ表現を入れるのは難しいのではないか。厚生労働省での検討と連携して検討を進めていくのがよいと考えている。
○ 審級省略についてこの検討会で議論する責務を負っているにも関わらず、注に記載する程度というのは無責任なのではないか。
○ 厚生労働省の研究会報告は参考資料にはなるが、現実の制度として実現すべきかどうかは、今後、公開の場における検討に委ねられるべきものである。
○ 新証拠の提出制限については、労働委員会での不当労働行為事件の審査の迅速性、適正性を確保する上で重要なポイントになる。厚生労働省の研究会報告からすると、中間取りまとめ案の表現はもう少し踏み込んだものにして欲しいという気持ちはあるが、いずれにしても研究会の議論の結果を受け止めていただいているものと認識している。(注2)に挙げられている意見も踏まえ、厚生労働省としても積極的に検討していきたい。9月から厚生労働省の労働政策審議会で詳細を議論していくことになるが、審議会の議論を整理し、労働検討会でも更に検討を深めていただけるようにしていきたい。
○ 一般論としてであるが、政府内の研究会報告はあくまでも参考資料とすべきものであり、これを政府の方針として取り扱うことは適当ではない。
○ この中間取りまとめ(案)の記載は、新証拠の提出制限が認められる範囲等について更に検討する余地があるという趣旨でこうした幅のある書き方になっていると理解している。
○ 労働委員会の専門性が強化されることを踏まえ、労働委員会と裁判所の間で共通項を見出す作業が必要であり、少なくとも両者の協議の場を設けるべきである。
不当労働行為事件の処理手続を公正で利用しやすいものとするために、新証拠の提出制限は当然行うべきなのではないか。また、中央労働委員会の専門性はもっと積極的に評価される必要がある。
中間取りまとめについての意見募集は、分かりやすい形で行うべきである。
第3については、特に解雇事件について、迅速処理義務や計画審理を謳い、運用の指針を定める必要があると考えられ、これについてもう少し詳細に記載し、意見を問う形にしてみてはどうか。
□ 「労働審判制度」という仮称についての意見はあるか。
○ この制度は調停と訴訟の中間の制度として考えられたものであるから、「労働調停・審判制度」では分かりにくいので、「労働審判制度」で統一すべきではないか。
○ この制度は、新たに導入される労働調停を含んだ、調停を中心とする制度であり、新しく労働調停を導入することを周知する意味も含めて、「労働調停・審判制度」という名称が良いのではないか。
□ 解決案そのものを審判と称するかどうかはこれからの検討課題である。全体を示す仮称として「労働審判制度」ではどうかということである。
□ 第2の(注4)に関して、今後検討すべき論点として「訴訟手続との関連」を明示すべきとの意見についてはどうか。
○ 制度設計は難しいが重要な論点であり、検討は必要である。
□ 第3の(注2)について、解雇事件に関して仮処分手続への依存をなくすことが必要であるとの観点から、審理の迅速化、計画審理等についてもう少し詳しく書き込むべきであるとの意見についてはどうか。
○ 本訴の迅速化を図っても、仮処分はそもそも制度が全く別なので、なかなか仮処分と同じようには迅速にならないのではないか。また、解雇事件の中には、審理計画を立てるまでもなく解決する事件もあると考えられ、ケース・バイ・ケースで考えていく必要があるのではないか。
○ 運用改善の指針を法制化することについては賛否両論あったが、法制化すべきとの意見の内容についての説明を付け加えることについては、特に意見はない。
○ 問題意識を明確化するという趣旨であれば、例えば本案審理の迅速化や計画審理の促進ということを具体的に記載するような形で修文する余地はあるのではないか。
○ 第2の(注7)の「専門委員制度」の点については、専門委員制度も労働関係事件に適用され得るため、参考にすべきであるとの説明があったが、労働審判制度と専門委員制度では、関与する者に求められる専門性の内容は全く異なるものであり、両者を並列にとらえられることのないよう配慮する必要がある。また、同じく(注7)においては、労働関係事件の訴訟自体の今後の状況についても踏まえるべきであると考えられる。
○ 制度の名称(仮称)については、多くの人にアピールするという点では、「労働審判制度」でよいのではないかと思うが、最終的には座長に一任したい。
□ 中間取りまとめ案の修正に関して、今日の議論で一致した部分については修文することとし、それ以外の部分については原案を維持する方向で考えていきたい。具体的な修文内容については座長に一任いただいてよいか。
(異議なし)