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労働検討会(第26回)議事録



1 日時
平成15年8月8日(金) 13:30~15:30

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
菅野和夫座長、鵜飼良昭、春日偉知郎、熊谷毅、後藤博、髙木剛、村中孝史、矢野弘典、山川隆一、山口幸雄(敬称略)
(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官、松永邦男参事官、川畑正文企画官

4 議題
(1)検討の中間的な取りまとめについて③
(2) その他

5 議事

○菅野座長 それでは定刻になりましたので、ただいまから第26回労働検討会を開会いたします。
 本日は御多忙のところ御出席賜りましてありがとうございます。
 本日は、御都合により石嵜委員が御欠席です。
 それでは、まず本日の配布資料の確認をお願いいたします。

○齊藤参事官 申し上げます。
 資料177は、「労働関係事件への総合的な対応強化についての中間取りまとめ (案) 」でございます。これが本日の主な資料でございます。
 資料178は、「労働関係事件への総合的な対応強化に係る検討すべき論点項目(中間的な整理)」でございます。再配布でございます。
 資料179は、「検討事項に関する主要な論点及び検討資料」でございます。これも再配布です。
 資料180は、「導入すべき労働調停についての検討のたたき台」でございます。再配布でございます。
 資料181は、「労働調停についての検討の概要〔3訂版〕」でございます。再配布でございます。
 資料182は、春日委員・村中委員・山川委員提出資料でございます。これも再配布でございます。
 資料183は、「中間的な制度案の比較」でございます。
 資料184は、「雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度の導入の当否についての検討の概要〔6訂版〕」でございます。再配布でございます。
 資料185は、「春日委員、村中委員及び山川委員からの提案についての検討の概要〔2訂版〕」でございます。
 資料186は、「労働関係事件固有の訴訟手続の整備の要否についての検討の概要〔5訂版〕」でございます。
 資料187は、「不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会報告」でございます。再配布でございます。
 最後に、資料188は、「労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方についての検討の概要〔2訂版〕」でございます。
 以上でございます。

○菅野座長 それでは本日の議題に入ります。
 本日は、「労働関係事件への総合的な対応強化についての中間的取りまとめ (案) 」について御検討いただきたいと思います。
 この案は、これまでの25回にわたる検討を踏まえて、私と事務局とで相談の上、作成したものでございます。
 この中間取りまとめ案では、講ずべき制度上の措置の方向性について現時点で委員の皆様の間で意見の一致を見ることができると考えられる事項を整理いたしました。
 これまでの議論では、特に「雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度の導入の当否」の点を中心に厳しい意見の対立がありましたが、座長としましては、個別紛争を中心に労働関係紛争が増加しつつある状況の中で、何とか、労使の専門的な知見を活用した、簡易・迅速で適正な紛争解決を図ることができる新たな制度を導入することについて、委員の皆様の一致した御賛同を得られればと考えております。
 また、その他の検討事項についても、皆様の意見の一致が可能となるようにとの観点から記載しております。
 委員の皆様の中には、「不十分である」または「踏み込み過ぎている」等のいろいろなお考えはあろうかと思いますが、関係者一致しての労働関係事件についての司法制度改革の実現を目指したいと考えておりますし、皆様もそのようなお気持ちであろうと拝察いたしておりますので、そのような観点から、御検討いただければありがたく存じます。
 今後の日程ですが、本日、中間取りまとめをおまとめていただけましたならば、約1カ月間意見募集を行い、9月以降は、各措置事項について、具体的な制度設計の詳細を議論していただきたいと考えております。
 それでは、まず、この中間取りまとめ(案)について、事務局から簡単に説明願います。

○齊藤参事官 申し上げます。
 本日お配りしております「労働関係事件への総合的な対応強化についての中間取りまとめ案」(資料177)につきまして、簡単に御説明申し上げます。
 この資料は、先ほど座長からお話がありましたように、これまでの検討状況を踏まえた「中間取りまとめ」の案として、座長と一体となって作成させていただいたものでございます。各委員には既に事前にお送りしておりますので、要点をかいつまんで簡単に御説明申し上げます。
 本中間取りまとめ案は、第1から第4までの4部構成としております。
 第1では、労働検討会における検討の経緯、検討事項を簡単にまとめております。
 第2では、第1に記載しております検討事項のうちの①労働調停関係及び②専門家の関与する裁判制度関係の総合的なアウトプットとして考えられる内容を記載しております。
 具体的には、裁判所における個別労働関係事件についての簡易迅速な紛争解決手続として、労働調停制度を基礎としつつ、裁判官と専門的な知識経験を有する者が事件を審理し、合議により、権利義務関係を踏まえつつ事件の内容に即した解決案を決することとする新しい制度を導入することはどうかとまとめております。この新しい制度の名称については、御議論の便宜のために、一応「労働審判制度」という名称を仮称としてつけさせていただいております。
 制度の内容につきましては、(注)に記載してありますように、地方裁判所において、3回程度の期日で処理が図られるような簡易迅速な手続がイメージされるところですが、決せられた解決案の効力やこれとの関連における当事者の意向への考慮の在り方等制度の詳細につきましては、なお検討するものとしております。
 なお、いわゆる労働参審制につきましては、(注7)にありますように、「将来の重要な問題と考えられる」との認識を記載しております。
 第3では、労働関係事件について、より適正かつ迅速な裁判の実現を図るため、実務に携わる裁判官、弁護士等の関係者間において、今般の民事訴訟法の改正等を踏まえ、計画審理、定型訴状等の在り方を始め、実務の運用に関する事項についての具体的な協議を行うこと等により、訴訟実務における運用の改善に努めるものとすることはどうかとまとめております。
 最後に第4では、労働委員会における不当労働行為事件の審査の際に提出を命じられたにもかかわらず提出されなかった証拠が、救済命令の取消訴訟において提出されることに関して、何らかの制限を課するものとすることについて、引き続き検討することはどうかとまとめております。
 この点につきましては、(注1)と(注2)にありますように、厚生労働省の研究会報告を踏まえまして、救済命令の取消訴訟におけるいわゆる新証拠の提出制限について、労働委員会における証拠の提出命令制度の内容、新証拠の提出制限の要件・効果等、具体的内容についての検討をさらに進めていくものとしております。
 なお、いわゆる審級省略や実質的証拠法則の導入の当否につきましては、「さらに検討されるべき重要な課題である」との認識を記載しております。
 以上でございます。

○菅野座長 それでは、中間取りまとめ案について御意見を頂戴いたしたいと思いますが、最初に、本日御欠席の石嵜委員から事前に御意見をいただいておりますので、最初に事務局から御紹介願います。

○齊藤参事官 それでは、本日御欠席の石嵜委員から、「中間取りまとめ (案) 」に対しまして御意見が寄せられおりますので、御紹介させていただきます。
 司法制度改革審議会意見書において「労働調停を導入すべきである」とされていることに加え、「中間取りまとめ (案) 」第2の本文においては、新たな紛争解決制度は「労働調停制度を基礎とした」ものである旨が記載され、またその注4においては、「調停によって解決し難い事件について解決案を決するものとすることが考えられる」旨が記載されているので、本制度の仮称としては、「調停」の名称も明示すべきであり、「労働調停・審判制度」とすることが適当である。
 このような御意見でございます。

○菅野座長 それでは、どうぞ委員の方々の御質問、御意見をお願いいたします。

○髙木委員 何点か御質問させていただきたいのですが、中間取りまとめの第2についてでございます。これは前回、春日委員、村中委員、山川委員の連名で、中間的な方向性といいますか、メモを提出していただいて、それに基づいて前回も議論したと思いますが、この中間的な方向性メモと第2の整理との関係はどのように認識したらいいのですかというのが1点でございます。
 今後の検討課題の中に入るのでしょうが、前回、春日委員からも御提起がありましたが、いわゆる「応諾義務」という言葉がいいかどうかわかりませんが、一方の当事者がこの制度を使いたいと言ったときに、相手方がどう対応するかは大きなポイントだろうと思います。前回の春日委員の御説明の御趣旨をもう一度おっしゃっていただきたいのですが、私どもの実感では、前回の春日委員の御説明ですと、現在の民事調停でも出頭しないのは高利貸しぐらい、大方の人は出頭するということがありましたが、その辺は労働事件の場合は一般民事の調停事件とは趣が若干違うのではないかという気もいたしております。そういう意味ではどうすれば制度を使う人が多くなるのか、あるいはその制度を使って、もちろん制度が使い勝手がよくて、アクセス上もそういう意味では問題も少なく、当事者にとって納得性の高い解決システムというふうに位置づけられることが一番の目的だろうと思いますけれど、そういう意味で見たときに、入り口のところで余り使われない制度になる可能性のようなものをどのように判断するか。これは9月以降の議論になるのかもしれませんが、その辺について我々はどのように考えればいいのかについて2つ目に御質問したいと思います。
 それから、(注5)に「具体的には」ということで3つ書かれております。その後に、「この専門的な知識経験を有する者は、労働者又は使用者を代表する者ではなく」という表現がありますが、この意味は、「労働者又は使用者の利益を代表する者ではなく」という意味でよろしいのかどうか。
 (注6)に書いてあります「非訟事件手続法」の関係で、この制度にかかわる労使から推薦を受けて参加する人たちが制度上どういう位置づけになるのか。家事調停ですと、裁判官と、「審判員」と呼ばれるのですか、あとは調停委員ですか、そういう位置づけになるのかどうか、その辺の位置づけのされ方がどのように想定されるのか。これもこれからの話かもしれませんが。
 (注5)の①②③の中で、先般ドイツのドーデンホフ判事、ベルリン州の裁判所長がおっしゃっていたことの中に、証人の証言の信用性は労使の参審員が最も的確に見分けられるという趣旨の御発言があったように記憶しておりますが、この発言にあるようなとらえ方は、②の「労働関係の制度、技術、慣行等の実情に関する知見」に含まれるのかもしれませんが、ニュアンスが若干違うのかなとも思えたりするものですから、その辺はどういうことなのでしょうか。
 たくさんあって恐縮ですが、次の(注6)については、ここには「(いわゆる非訟手続)として導入することが考えられる」と書いてあります。非訟事件の中にもいろいろあるのだろうと思いますが、こういうことを書くのは、原則非公開という意味なのか。これは後々の裁判との関係の手続等にもかかわると思いますが、非公開・非訟手続ということでありますと、証拠等の裁判への引き継ぎの問題等も出てくるのではないかと思います。これも後日の議論ということか、あるいは現状で何かお考えがございましたらお願いします。
 それから、(注7)で将来のことに触れていただいておりますが、その2行目の一番最後に、「(及び専門委員制度)」と専門委員制度が入っておりますが、今までの我々の議論では、労働事件に専門委員制度を入れるという議論をほとんどしてきていない。こういう文言が入りますと、労働事件についての専門委員制度を同時に入れるのかと思ったりする向きも出てくるかもしれないと思うので、できればこの括弧は抜いていただいた方がいいのではないかと思いますが、その点についてはいかがでございましょうか。
 何点か申し上げましたが、要はアクセスしやすく使い勝手がよい、そして迅速かつ納得性の高い、強いてそれに加えますと、職場へのフィードバック機能のある仕組みを職場の経験と裁判官の法的な知識等を融合させる仕組みをつくろうということでございますから、そういう本旨に合うようにいろいろな仕組みがこれから詰められていくべきではないかという意見を申し上げ、幾つかの質問に現状でお答えできる範囲で結構ですのでお願いします。
 といいますのは、私どもも多方面からいろいろ聞かれまして、これはこういうことだと答えなければいけないところもあるものですから、よろしくお願いしたいと思います。

○齊藤参事官 それでは、まず事務局の方からお答えできる範囲でお答えしたいと思います。
 最初は、4つの案が示されたメモと中間取りまとめの関係如何という御質問だったと思いますが、この御質問についてはどういうところについての問題意識かということを、もう少し御説明いただけますでしょうか。

○髙木委員 前回、私は4案なり1案について、主として4案で議論をさせていただいたと思いますが、石嵜委員のペーパーには2案、3案というようなこと、要は、それぞれの立場で議論したことについてこういう整理をしていただいたのですが、1~4案というのはとりあえず議論した経過はあるけれど、それはそれとして全部整理してこのような形になったということなのかということです。

○菅野座長 これは、1~4案を総合して出したのですが、「労働調停制度を基礎としつつ」とある点は2案、3案の考え方に類似している点があると思います。他方では審理しつつ調停を試み、調停で解決困難な場合には解決案を決する。「解決案を決する」ことを大きな柱としているというか、そういう点では1案ないし4案の考え方の長所をも取り入れようとしているつもりではあるのですが。
 それでは次の質問についてお願いいたします。

○齊藤参事官 次にいわゆる応諾義務についての御質問があったと思いますが、この応諾義務のところを今後具体的に制度設計を図っていく上でどのように取り扱っていくか。この点は、決せられた解決案の効力と、それに関連する形で当事者の意向の考慮への在り方を今後十分に検討していく必要があるのではないかと考えておりまして、恐らく今後十分御議論いただくべきポイントではないかと考えております。
 第2の(注5)の関係ですが、「労働者または使用者を代表するものではなく」と書かれているところは「利益代表ではない」ということかという御質問だったと思うのですが、これは概ねそのとおりだろうと思います。
 それと労使の参加者の位置づけという点だったと思いますが、要は裁判官とともに審理をし、合議により解決案を決するべき立場にあるということになると思います。そのような地位につきまして法制上どのようなものとするかという点は、今後十分検討されるべきものかと思います。
 証人の証言についての判断をする能力は、ドイツの職業裁判官の説明では労使の専門家が一番よく能力を発揮し得るところだという御指摘の部分は、(注5)の①②③のどれに当てはまるのかという御質問だったと思いますが、この点は厳密にこの整理の中でどこというふうに意識的に整理はできかねているかと思います。おおよそ考えられるのは、御指摘のように②の労働関係の制度、技術、慣行等の実情に関する知見があればこそ証人の証言の内容についての判断は的確になされ得るのではないかと思います。ただ、厳密にどこかと言われれば、意識的にそういうことまで配慮して①②③が整理されていたわけではないような気がします。
 (注6)との関係で、非訟事件手続法に従った民事的手続になると原則非公開ということかという御質問だったと思いますが、公開・非公開の点は十分検討していただくべきところかと思います。
 (注7)の関係ですが、(注7)に「(及び専門委員制度)」という記述がある部分について、こういう記述がなされているのはどういう趣旨かという御質問がまず1点だったかと思います。ここは、今般の民事訴訟制度の改正によりまして確かに専門委員制度が導入されまして、この専門委員制度そのものは民事訴訟事件一般についての制度でございまして、労働関係事件についてももちろん適用され得る制度であると理解されていると思います。
 この(注7)で括弧書きとして記載してあるのは、今後新しい制度として労働審判制度が仮に導入されたとして、そこに労使の専門家が関与する実績を踏まえて、いわゆる労働参審制の導入の当否については検証されながら、将来の重要な問題として位置づけられているということなのですが、専門委員制度もそこに労使の専門家が専門委員として関与することはあり得るのだろうと思います。そこでの労使の専門家の実績も参考として踏まえるべき要素にはなり得るのだろうと思いますので、一応括弧書きで書かせていただいているわけです。ただし、労働審判制度の方で専門家が関与することの意味合いの方が、重要性においてはかなり高いと思われますので、専門委員制度に労使の専門家がかかわることとは少し比重を区別して書いているというニュアンスだと思います。
 それでは、あえて括弧の部分を削ってしまってはどうかという御指摘につきましては、ここで少し御議論いただければと存じます。
 大体こういうところかと思います。

○髙木委員 今の御答弁がどうということではないのですが、先ほどの応諾義務等の関係で、例えばかつて男女雇用機会均等法でつくられた調停制度が10年間ほとんど使われなかったという経験も、あれは双方同意、あとは対象にする紛議のくくり方の問題もあったのでしょうが、ほとんど使われていなくて、これは行政監察などでもこういう制度を、それなりに全国的に人の配置もし、体制もつくって、そのコストはそれなりにかかったけれどほとんど使われていない。
 それと労働局のあっせんの実態も、地域によって大分違うようですが、相談件数がこれだけある。けれども、あっせんで解決したのはこれだけ。その過程でいわゆるあっせんの限界のような問題を聞きますし、地方労働委員会で個別労使紛争を扱っているところがあるのですが、それが比較的よく使われているところは、要するに対応される立場の人に対する説得活動のようなものがよく行われているところは労働委員会のああいうあっせんの仕組みがあるレベルで機能しているし、片一方があっせんにもっていって、相手は受けないと言って、受けないと言った人に対する説得活動がほとんどないところは、双方の対応の違いでほとんど機能していない。
 私も細かくは知りませんが、例えば徳島県のケースは比較的うまくのっかっているし、福島県はほとんどのっからないとか、地方労働委員会の委員をしております組合側の皆さんに聞くとそういう話も結構出ますので、そういう意味でできるだけ使われる制度という視点が非常に大きなポイントではないかと思っています。具体的にはもちろん9月以降の議論だと思いますけれども。

○春日委員 私からも答えなければいけないですね。事務局の齊藤参事官が話されたことと基本的に余り変わらないのですけれども、前回から問題となっていた手続応諾義務は、手続の入り口段階の問題で、出口の段階は「権利義務関係を踏まえつつ事件の内容に即した解決案を決する」ということだと思います。手続応諾義務を認めるか認めないか、先ほどの齊藤参事官のお話にもありましたように、結局は「出口の権利義務関係を踏まえつつ事件の内容に即した解決案」の効力にどれだけウエートを置くかによって、入り口の段階で手続応諾義務を認めるか認めないかという問題の結論も違ってくると思うんですね。ですから、手続全体の個別問題を検討した上で、ここはかためていくという問題ではないかと思っています。確定的なことを言えと言われるとちょっと難しいとは思うのですが、髙木委員がおっしゃるように、使われない手続では困る。私もそう思うわけで、とにかく使い勝手のいい手続にしていかないとお客様にも来ていただけないということになると思いますから、今後もう少し詰めて考えさせていただきたいし、あるいは皆さんからも御意見をお伺いしたいと思っております。
 ただ1つだけ申したいのは、使用者側、労働者側と分けた場合に、これは労働者側が相手方になる場合も当然あり得ると思うんですね。そういう時に労働者側でも手続応諾義務があった場合、すべてに応諾しなければいけないとなると、これもまたある種の負担がかかってくるのじゃないか。その辺は私はよくわからないのですが、その点の感触としては何かありますか。

○菅野座長 そこもまた議論をしていただきたいと思います。ほかにどうぞ。

○鵜飼委員 要望と質問ですが、質問はまず、9月以降の議論になると思いますけれども、民事調停の欠席率といいましょうか、統計的にどうなっているか、それだけ調べていただきたいと思います。それと過料の制裁はほとんど発動されていないと私も聞いておりますが、その辺の実情を調べていただければと思います。
 もう1点は要望で、(注4)になお検討を要するものとして幾つかの項目が挙げられておりますが、訴訟手続との関連もぜひ挙げていただきたいと思います。これは個別紛争で迅速・適正な解決をするための手続、労働審判制度ですけれども、審理をしつつ調停を試みていくわけですし、個別紛争の場合に先ほど言ったような問題がうまくきちんとクリアされれば、相当の事件が解決案の決定以前の段階で解決するのではないかと推測しているわけです。それは先ほど言った点の制度をどういうふうにするかという問題とも絡んでまいりますけれども、10%、20%とどの程度のパーセンテージになるかわかりませんが、解決案を出されてもなおかつ解決しない事件が残ることは間違いないと思います。そういう事件について次に訴訟手続に移るわけですが、例えば解雇事件のケースで言いますと、この手続で次に訴訟手続ということになるわけですから、全体として迅速な解決に資するような次の手続の手当が必要なのではないかと考えますので、その他の問題もありますが、訴訟手続との関連を検討すべきものの中に具体的に挙げていただきたいと思います。

○菅野座長 民事調停の欠席率は調べていただけますね。

○齊藤参事官 はい、これは事務局の方で準備したいと思います。

○菅野座長 過料の制裁についてもお願いします。それと、今のような修正案についての御意見も含めて御意見をいただきたいと思います。

○矢野委員 なかなか難しい議論を1つにまとめるのは大変だったと思います。まずその御努力に敬意を表したいと思います。その上で幾つか申し上げますが、まず第2のところです。これはADRの1つの制度としてとらえることができると思うわけでありまして、そういう意味では全体的に妥当な内容になっていると思っております。
 先ほど来お話がありましたけれども、大事なことは使いやすい制度にする。利用者にとって親しみのある使いやすい制度にすることが大事でありまして、これにはいろいろな方法が考えられると思います。裁判所をもっと身近に感じてもらうようにするとかいろいろあると思いますが、この制度の仕組み自体もそういうものでなければならないと思います。
 当事者の意向を尊重することがベースにありませんと、これは機能しないのではないかと思っております。具体的には、秋以降具体案に即して論議していくことになると思いますが、その場合に当事者の意向を尊重する弾力的な仕組みであってほしいと思います。
 (注5)ですけれども、これは髙木委員が言われた意見に私も賛成であります。実際に具体的には推薦母体をどうするかという問題になると思うんですね。これも詰める必要があると思っております。
 (注7)の専門委員制度に言及するかどうかということですが、この専門委員制度が論議されたときに私も申し上げたと思うのですが、当然労働裁判にも専門委員が導入されるという前提で議論したつもりですので、いわば参審制・参与制という問題は裁判制度そのものの改革になるわけなので、専門委員制度の働き、効果を見る必要があると思いますので、括弧書きで入れる分にはいいのではないかと思っております。
 名称ですが、石嵜委員の意見と私も同じで、「・」を入れるかどうかはどちらでもいいのですけれども、労働調停制度をつくるということを決めて、しかも今度の制度は広い労働調停制度とも言えるわけですし、基礎にそれがあるわけですから、「労働調停・審判制度」という名前にしたらいいのではないかと思っております。
 第3についてはこの案でよろしいのではないかと思います。
 第4の問題は、厚生労働省の検討会とよくタイアップしてやっていく必要があると思いますが、実務のレベルで聞いているところでは、労働委員会の救済命令に対する取消率が高いのは証拠の提出方法だけに原因があるわけではないので、これだけを特出しするのはどうだろうかという考え方があります。また、本人訴訟の場合とか代理人が途中から変わった場合などいろいろなケースが考えられるのに、新証拠の提出を認めないのはおかしいのではないかという考え方もあります。したがって、法律で一律に提出制限を課することについては賛成できないと考えている次第です。これは、ここで論議することではないと思いますが、そういう考え方を持っていることを申し上げておきたいと思います。

○菅野座長 ほかに御意見をいただきたいと思います。

○山口委員 質問ですが、第2の関係で今のところ決まっているのは、地方裁判所に労働調停制度を基礎とする専門家が関与した解決案を決する制度をつくるということで、具体的な中身については9月以降の議論になるということでよろしいのでしょうか。

○菅野座長 はい。

○山口委員 そういうことで考えてみた場合、そういう形で労使の方が地裁の、労働調停審判かあるいは労働審判かは知りませんけれども、そういう制度に入っていくとなると、事件のえり分けも考えないと、具体的な労使のマンニングとの関係でも多少問題があるのではないかと思うのですが。この議論ですと、現段階ではユーザーが裁判所の紛争処理手続を利用する制度としては簡裁の民事調停と労働審判制度と訴訟の3つになると思うのですが、そうだとすると、その多くは労働審判に流れていくのが本当にいいのかどうかという問題も1つある。必ずしも審判というか、解決案の提示をしなければならないような事件ばかりではないと思いますので、ある程度話し合いの方に解決のウエートを置くタイプの事件も一定数であるのではないか。そうだとすると、簡裁の民事調停として労働事件の解決を考える場合に、現状よりもう少し利用しやすくするような仕組みを考えて、そちらの方で解決するのに適当な事件はそちらの方で解決して、労使の方が入った労働審判は地裁の方でやっていく形にして、事件のすみ分けを考えないとマンニングの点でも制度としてどうなのかなという感じはしておりますので、その辺も9月以降の議論で議論していただければありがたいと思っております。
 労使の方が入ってくるという制度ですが、その利益を代表するものではないということで私としてもいいと思います。それぞれの立場から出てこられるのだろうとは思うのですが、基本は中立公正な立場ということが保障されるのであれば、推薦母体の関係からするとある程度一定のところに頼らざるを得ないし、そこでしっかりした方を推薦していただくことになると思いますので、それはそれで結構だと思いますが、1点気にかかったのは、具体的に解決案の提示に至る過程においても具体的な争点は何か、争点を踏まえた事実関係、事実認定はどうするか。これはまさにこれからふさわしい労使の方が本当に入っていってきちんとやっていただくということが前提になるわけなので、現状認識としてはそういう方が入っていただくことが前提になることは押さえておいていただきたいと思います。

○髙木委員 山口委員のおっしゃったマンニングの話で、裁判でもマンニングの問題がかかわる、特に労使の関係でという趣旨で、トータルのマンニングに関するコーディネーションの話をされたような気がするのですが、矢野委員からもいわゆる労働裁判の方で専門委員制度云々という御発言がありましたし、齊藤参事官も将来そういう話もあり得るようなニュアンスで冒頭御説明があったように思うのだけれど、9月以降の議論で専門委員制度をいわゆる労働裁判の方に入れるというイメージがあるのですか。

○齊藤参事官 私が申し上げたのは、新しい労働審判制度 (仮称) の中に専門委員制度を入れるか入れないかということは全く考えていないわけです。専門委員制度は民事訴訟制度に全般的に導入される制度ですので、自ずと労働関係事件にも専門委員制度が適用され得るということは全体的な理解になっているということを申し上げました。

○髙木委員 可能性としては排除されないけれど、我々は労働事件に入れるという議論はほとんどしてこなかった、また、入れるという認識も、少なくとも私の頭の中には全然ないんですね。

○菅野座長 秋以降それを検討するという趣旨はこの中には入っておりません。

○鵜飼委員 また質問と要望をしたいのですが、第3の点です。まず、パブリック・コメントは本文の「○○することはどうか」ということに対して一般的な意見を求めるということになるわけですね。(注)の部分は意見公募の対象にならないわけですよね。それで私は、こういう手続を主張した者としては残念な気持ちがしているわけですが、本文に書かれている「計画審理、定型訴状等の在り方をはじめ実務の運用に関する事項についての具体的な協議を行う」、これは現在6月ぐらいから東京地裁労働部の裁判官との労働訴訟協議会が実質的にスタートしておりますが、そのことを指していらっしゃるのでしょうか。あるいはもっと高いレベルの、全体としての労働事件についてのガイドラインをつくるとか、定型訴状等をこういうふうにつくっていこうとか、例えば最高裁レベルの協議のことを指していらっしゃるのか。その辺をまず御質問したいと思います。

○齊藤参事官 1つ目の御質問は、意見募集はこの中間取りまとめを基礎にしたときに、意見を述べ得るのが本文に記載されている内容に限られるのかどうかということですか。

○鵜飼委員 限られるのではないのでしょうか。そういう理解でどうかということです。

○齊藤参事官 そこは、(注)に書かれてある事柄につきましてももちろん本文と関連しているわけですし、御意見は本文に書かれてあることだけに厳密に限定されるとは今のところ考えていないんです。ですから、適宜、本文と注の記載を関連させて御意見のある部分は御意見としてお寄せいただいてもよろしいのではないかと、今のところは考えております。
 第3の本文中の「協議」ですが、これは一応、5月からスタートしている労働訴訟協議会も含めて協議と考えておりまして、どういう協議が立ち上げ可能かということは、これまたなかなか難しいでしょうから、現在行われているような労働訴訟協議会のようなものが主として当てはまるのではないかと考えています。

○鵜飼委員 迅速かつ適正な労働裁判の実現というのは、申すまでもなく審議会意見書に、労働関係訴訟事件、特に人証調べを行った事件は平成13年度で21.2カ月の期間がかかっているわけですね。審理期間をおおむね半減することを目標にしていますし、計画審理の促進、証拠収集手続の拡充を図ることが意見書にうたわれているわけですね。それを前提としたときに、運用レベルで足りるのかというのが私の根本的な疑問でありまして、運用レベルでやるとして、運用についての協議を行うとした場合、全国統一的な最低限の基準のようなもの、あるいは運用の指針のようなものが出される必要があるのではないかと思うわけです。
 東京地裁と行っている労働訴訟協議会は、東京地裁に限定された運用の基準でありまして、そのような趣旨で裁判所の方からも要請があって、東京地裁の運用に限定してやっているわけです。したがって、もうこういう趣旨でやれるのであれば、具体的な協議の場をもう少しレベルアップしたものという形で具体的に書いていただいた方がいいのではないか。意見書を受けて全国的な形で労働事件を適正かつ迅速な裁判をやるための計画審理、定型訴状等の実務の運用についてどういうガイドラインなり方向性が考えられるのかという協議の場を設けるということは検討できないでしょうか。

○齊藤参事官 鵜飼委員から御指摘のような事柄が結構難しいということで、このあたりは裁判所の方からの御意向なども踏まえながらでないと、事務局サイドとは何ともなかなか決しがたいところだと思います。むしろ、事務局から明確なことを申し上げるより、この点については委員の方々からの御意見をいただければと思います。

○髙木委員 第3の問題については、これでは運用改善で何とかできるのではないかというようにしか読めないのですが、本当に運用の世界だけで、特に証拠開示の問題等をしのいでいただけるのか、改善をきちんとしていただくことができるのかどうか。これは裁判所と弁護士会の方で話をされて、私もその協議に参加していませんから、また実務的なことは余りよくわかりませんから、その運用改善たるものの実効性について判断のしようもないわけですが、とりわけ証拠の開示をめぐる問題についてです。
 これは鵜飼委員が前々から言っておられますが、仮処分と本案訴訟の関係、どちらもそもそも別個の制度に基づくものではあるにしましても、同じ事件で仮処分があり、本案訴訟がある実態があって、恐らく審判制度ができても仮処分が全く使われないかといったら、審判制度ができた後も仮処分は使われる……頻度は少し落ちるのかもしれませんが、あるのだろうと思いますが、その辺の本案訴訟、仮処分をめぐる論議がどういうふうに整理されるのか。
 加えまして、裁判費用の問題。今度、労働調停審判になるか審判制度になるか知りませんが、これが行われるようになったときに、この費用の問題はどう考えているのか。
 加えまして、司法アクセス検討会の方でやっておられるからということですが、いわゆる労働事件における弁護士費用の敗訴者負担問題。これはこの中で触れる話なのか、司法アクセス検討会でやっているからそちらに任せるのか……ただ任せっぱなしには私もできないと思っておりますが、全く触れていないのでどうなのかなと。
 といいますのは、弁護士費用の敗訴者負担問題は問い合わせが多い話になっていまして、その辺はこの第3で、書くとしたらここしかないと思いながら発言させていただきました。
 第4の労働委員会の関係は、審級省略への言及が、(注3)に審級省略はまずありませんねというニュアンスで触れておられるだけで、審議会の意見書を昨日も一遍見てみましたら、「いわゆる『事実上の5審制』の解消など、労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方について」と書いてあるわけですね。だから、この検討会に労働委員会の問題で付託された最大のポイントは、いわゆる事実上の5審制を改善というか、「解消」という言葉を使ってありますが、それを我々は付託されたわけで、厚生労働省は厚生労働省の方で研究会をおつくりになられて、先般報告いただいたような方向性を打ち出されましたけれど、できる・できないの議論はいろいろにあるにしても、今議論している中間取りまとめの本文に「審級省略」という言葉を入れておいていただかないと、この検討会としての役割としてどうなのでしょうか。
 総論的に申し上げるとそういうことなのですが、第4の書き方で、「労働委員会における不当労働行為の審査の際に提出を命じられたにもかかわらず提出されなかった証拠が、救済命令の取消訴訟において提出されることに関して、何らかの制限を課するものとすることについて」、厚生労働省の研究会報告は「その方向で」ということで、どちらかというと、これはもう少し詰めてやりましょうというニュアンスが出ているのですが、我々の中間取りまとめは「引き続き検討することはどうか」とやるともやらないとも読みようがないような、一歩下がったような表現になっています。
 この書き出しにありますのは、独禁法で掲げられている提出証拠に関する……あちらはネガティブリストに近いような書き方がしてあるのでしょうか。公取委の審決の場合は審級省略もありますし、審級省略があるものは提出制限がある・ないのルールをつくってもいいけれど、労働委員会はだめだからという論理的な話なのか。
 そういうこともよくわかりませんが、ともかくこれを読む限りは、先ほど矢野委員が初めて意見が一緒だと1項目だけ言ってくれましたが、この問題は厚生労働省の労働政策審議会の部会でやられるということですが、この部分は使用者側と労働側が意見が対立するところだろうと思っておりますけれども、そもそも事実上の5審制を解消すべく何とかしろというのが、我々に与えられた付託であるわけです。
 直接関係があるかどうかわかりませんが、審議会の意見書にこういう書き方があるんですね。「以上のような諸方策を円滑に実施に移すことに加え、労働関係紛争の予防、事件の適正・迅速な解決を実現していくためには、関係機関(関係省庁、裁判所を含む。)の協力・連携が不可欠であり、今後、これを一層強化することが望まれる」。
 そういう意味で、いわゆる5審制問題にかねてから裁判所の側からも何かアプローチしていただくことがないのか、労働委員会の側は労働委員会でやられるから、そういう意味で事実上の5審制についてギブアップですという中間取りまとめに読める。将来そういうことにつながる1つの根拠に足り得る新証拠の提出制限についてやりましょうというのが厚生労働省の報告だった。この案では、そういうことに対して積極的にアプローチするというニュアンスは全くなく、引き続き検討すると書いてある。検討する以上は、イエスかノーかの結論が出るのでしょうが、そういう意味でここの書きぶりを変えていただく必要があるのではないか。

○齊藤参事官 髙木委員から御指摘のありました点につきまして、ニ、三申し上げたいと思います。
 まず、労働関係事件と弁護士費用の敗訴者負担の問題ですが、この問題は司法アクセス検討会が具体的な措置内容については責任を持って対処していただけるものと考えております。そして現在、意見募集をしている最中でございますので、基本的には司法アクセス検討会の方へ御意見をお寄せいただければと思っております。ただ、こちらの検討会で取りまとめた中間取りまとめに対して、労働関係事件と敗訴者負担の問題について御意見をお寄せいただくことは何ら差し支えないとは思うのですが、こちらの検討で中間取りまとめしようとしていることは、当検討会として具体的な立案措置に結びつけていこうとする事項を主として対象にしたいと考えておりますので、敗訴者負担の問題についてはいささか言及はしにくいと考えております。
 第4の本文で新証拠の提出制限について記載しているわけですが、この本文の記載をどのようにお読みいただくかは、確かにそれぞれ印象は違うのかもしれませんが、一応何らかの制限を課するものとすることについて引き続き検討するというふうに、端的に記載しているつもりでございまして、新証拠の提出制限という制度の導入に後ろ向きといいますか、消極の気持ちを込めてこのように表現しているわけでは決してなくて、改善できるところはぜひとも改善したいという積極的な気持ちを込めてはいるつもりです。
 それと、厚生労働省の方で今後引き続いて証拠の提出命令制度の在り方等を具体的に検討されていくという経過もありますので、そういう経過も踏まえつつ引き続き検討するというふうに書かせていただいているところでございまして、「方向で」という文言がないからといって、決して消極的な気持ちでいるわけではない、そういうことは御理解いただければと思います。

○髙木委員 途中になるかもしれませんが、齊藤参事官はそう言われますけれど、そういうつもりだと言われても、この文章を読むとそういうつもりで書かれたものだということを読み取れというのは、普通は難しいです。

○齊藤参事官 そのあたりは御意見も伺いたいと思います。
 それから、審級省略等について本文中に全く言及がないのは適切でないという御趣旨だと思いますが、この点は確かに当検討会で審級省略とか実質的証拠法則の導入という点も御議論いただいているということは間違いないところでございますので、ただ、この時点で立案課題としてとらえ切れているかどうかのメリハリさえきちんとつけさせていただくならば、本文中に何らか言及することも工夫の余地はあるのかとは思います。
 とりあえず御説明できる範囲で発言させていただきました。

○矢野委員 審級省略の問題はこの検討会でも随分議論しましたが、(注3)に書かれていることが概ね現在の状況を語っているのではないかと思っておりまして、これからさらに踏み込んだり退いたりするということではないのではないかと思っています。
 本文の方ですが、事務局としては多少前向きの姿勢を出しているとおっしゃいますけれども、本当はこの場で意見を言うのがふさわしいかどうかは迷ったのですが、先ほど申し上げたのは、強い反対がある状況でありますから、ある意味ではもう少し状況において公平な表現にしてもらったらいいとむしろ思っているぐらいでありますから、でもこのぐらいのところはしようがないかなと私は思っているわけで、これ以上さらに踏み込んだ表現になるとすれば、ちょっと問題になると思いますね。
 これはなかなか難しいところなんです。ですから、幸いというか、厚生労働省の方でもそういう会議ができたので、連携しながらやっていくというのが今の時点での答えかなと思っているんですね。ですから、秋以降の論議でいいのではないかと思っております。

○髙木委員 1つは、審級省略問題を議論してくださいというある種のミッションをいただいたということについて、注書きでしばらくは無理ですからもう少し時間のかかる話で今は無理ですなということだけ書いて終わりというのは、ちょっと無責任ではないかと言っているんです。
 矢野委員が今おっしゃいましたが、そもそも厚生労働省の研究会の報告を我々はずっと待ってきたわけですね。そして8月1日に御報告をお聞きした。その時に新証拠の提出制限については、最終的にどういう結論になるかならないかはいろいろあるにしましても、何とか入れたいという方向で、これには村中委員も山川委員もお入りになって、多分そういう思いで整理されたのだろうと拝察しているのけれども、それでは人に検討させておいて、ここに出してきたものは、もちろん全部このまま飲む必要はないわけですが、それはちょっとどうなのですかと。そういうつもりで書いたはずだと言われても、積もり積もって何とかなるという話ではないわけですから。

○矢野委員 これは初めて公開討論の場に提出されたということだと思うんですね。研究会は研究会としてよく頑張っていただいた、それは大いに重要な参考資料になるのは決まっているわけですが、だからといって、それがおっしゃるとおりで現実の制度として実現すべきかどうか、その時期も含めて検討する。それを公開の場で論議するわけで、これから初めて公の論議になるわけですから、そういう場が設けられたということは尊重して、論議の経過を踏まえてよく連携して話を進めていくことしかないのではないかと思いますけれど。

○熊谷委員 新証拠の提出制限につきましては、前回、厚生労働省でやってきました研究会報告で御説明させていただいたわけでありますけれども、私どもはこの問題は不当労働行為事件の審査の迅速化、的確化を図っていく、あるいは救済命令に対する信頼性を確保していく上で非常に重要なポイントであると考えてはおります。今ほどお話がございましたように、この中間取りまとめの案は、前回御報告いたしました研究会報告ということからすると、私どもももう少し踏み込んでいただければという気持ちを持っておるわけでございますが、いずれにしても、ここにこういう形で取り上げていただいているということで、研究会での議論の結果を受けとめていただいているということであると考えております。
 私どもも(注2)ということでさらに検討すべき課題をいただいておりますので、厚生労働省としても積極的にこの問題を検討してまいりたいと思いますし、厚生労働省にございます労働政策審議会の場で9月から御議論いただく予定でございますので、そういう議論もまた整理いたしまして、こちらの検討会にもまた御検討いただけるようにしたいと考えております。

○矢野委員 私はいろいろな機会に申し上げているのですけれども、政府が研究会を組織して調査し、分析し、答えを出す作業がありますね。あれはいろいろな意味で非常に有益な作業だと思いますし、尊重すべきだと思いますが、あくまでも参考資料でありまして、そこで出された意見を、あたかも政府の方針であるかのように言うのはおかしいではないかといつも言うんですね。決めるのは別の場所、つまり公開討論の場であると思いますので、前傾姿勢で取り組まれることに文句は言いませんけれども、あたかもこれが省の方針であるかのような取り上げ方はよくない、これは一般論として申し上げておきたいと思います。

○山川委員 最終的に決めるのは厚生労働省の労働政策審議会であるのはもちろんのことだと思いますが、少なくとも私の理解では、研究会のメンバーとして加わってきた者としては、それが否定された趣旨でここに加わったという趣旨の表現ではないというふうに理解しております。先ほど、最初に矢野委員からこういう場合にも提出が認められないのはおかしいというような御意見がありましたが、アメリカでも例えば合理的な理由があれば認めるということですし、逆に日本でも判例上は明文がなくても信義則を理由として制限しているものもあるということで、そのあたりの幅などはさらに議論の余地があろうかと思いますので、そういう点も含めてなお検討が必要であるという趣旨でこういう表現になるかと思っております。

○鵜飼委員 この問題は、労働委員会と裁判所との間で、労働委員会から裁判所にいく段階でどうも1つの制度的な流れが担保されていないのではないかと私自身は思うわけですが、新証拠の提出制限もその問題ですし、審級省略も次の問題に出てくると思いますが、このヒアリングを含めて25回の検討の議論の中で、少なくとも労働委員会は労働委員会として専門性を強化していく必要性は指摘されましたし、厚生労働省の研究会で今議論されているわけですから、それを踏まえて裁判所と労働委員会のお互いの制度及び運用の在り方についての議論といいますか、お互いの共通項を見出す作業はどうしても必要なのではないかと思います。
 先ほど髙木委員から意見書の部分が紹介されましたが、関係諸機関の協議といいましょうか、やっと裁判所と弁護士の協議がスタートいたしましたけれども、まさにこの問題は利用者にとってみると、労働委員会と裁判所がどういう基本的な原理なり指針で同じ事件が扱われているのかということについてなかなかわかりにくいという問題でもありますので、少なくともこの場では協議の場を提案するぐらいのことは必要なのではないか。これは運用とか判断基準等についての協議の場を設けることが必要なのではないかと思います。
 新証拠の提出制限は、今の民訴法の裁判手続の最近の状況から言いますと、あえて問題にするまでもないぐらいの自明のことのように思われます。もちろん例外は当然認めた上で、しかし地労委、中労委からいって、裁判所にいって、その段階でそれまで出せと言われた証拠を出さないでおいて裁判所の訴訟手続で出すということは、ある意味では労働委員会無視と言われてもしようがない部分があります。全体の流れをきちんとフェアなものにしていくというか、利用しやすいものにしていくためには、裁判手続・司法手続の中で計画審理、証拠提出期間を制限するとか、それを遅れて出すことについての一定の制約、ペナルティを科す方向にあるわけですから、私はこれは当然のことだと思います。
 審級省略につきましてはそんな遠い将来の問題ではなくて、特に審級省略で問題なのは、中労委の再審査命令に対する一から出直すという今の制度ですよね。これは中労委の高い専門性が、ある意味ではほとんど評価されていないような感じがありますので、私は本文に何らかの形で、この場で共通の表現ぶりについて合意ができる範囲で出すべきではないかと思います。特に労働委員会と裁判所の協議の場はぜひ本文に入れていただきたい。
 前後いたしますけれども、(注)となりますと私は率直に受けとめまして、本文が当然主ですからパブリック・コメントの対象は本文だろうと思いまして、(注)に対して意見を求めるというニュアンスは薄れてきているという感じがしているわけですが、そういう意味では、意見を求める際は(注)を含めて意見を求めるようにわかりやすくしていただきたいと思います。
 もう一度第3に戻りますけれども、(注2)の部分は、労働関係の終了に関する事件は解雇事件を象徴といたしますが、これについて「訴訟実務における運用改善の指針を法制化することが適当であるという意見があった」と非常にあっさりと書いてあるわけです。少なくとも運用改善の指針として迅速処理、計画審理の導入等を法制化することが適当であるという意見があったがどうかという具合に書いてほしいのですが、これはもう蒸し返しませんけれども。裁判官もどうなのでしょうか、例えば平成13年度で708件のうち551件が解雇事件なのですが、実務の我々の率直な感想としましては、解雇された労働者の生活の基盤を考えますと、本案訴訟がなかなか利用できにくい現実があるわけですね。こういう立法事実といいましょうか、これをいつまでを放置していいのか。今回はせっかくのチャンスではないかと思うわけです。
 少なくともその流れを、仮処分制度自体が労働事件に使われるであろうことは私は否定しませんし、これからも仮処分は使われていくであろうと思っていますが、しかし最も労働事件の典型的な中核をなす解雇条件で、仮処分を利用せざるを得ない現状を変える、それは運用でできるのだろうかと思うわけですね。
 そのために、迅速処理義務については意見書の中で「一般の事件に比して特に迅速な解決が望まれる」とうたわれておりますが、その中で解雇事件は特に必要性が高いわけですね。だから、本案訴訟手続ではそういう問題が担保されていないから仮処分にいくという状況になっているわけです。したがって、迅速処理義務をうたって、運用のレベルにおいてそれが具体的に実現するように、きちんとした指針を出すということも必要だと思います。
 計画審理は、ヨーロッパ等では労働事件では非常に機能しているわけです。日本の民訴でも、大規模訴訟の審理方法の特則で計画審理が導入されて、今回、民事訴訟法の改正によって計画審理が部分的に導入されていくわけです。今回の民訴法改正によって導入される計画審理は、審理すべき事項が多数とか錯綜しているとか、事件が複雑であるとか、その他の事情によりというのがありまして、その他の事情に実は解雇事件が入るのかどうかが明確ではないわけですね。入るという考え方をする人もいるでしょうし、入らないと言う人もいるでしょうし、大規模訴訟から民訴法改正になって、例示されているものが審理すべき事項が多数で錯綜していて、事件が複雑であるというふうになりますと、結局事件が複雑で通常の審理では長引いてしまう事件類型というふうに一応推定されるわけです。そういう意味では、単純な解雇事件はこれに入らないと言われる可能性もあるわけです。そのように意見が違ってくるわけですね。そういう場合に、解雇事件については計画審理の対象になるとうたうことは非常に大きな意味があるのではないかと思われるわけです。
 そういうことはこの検討会の場でそんなに異論があるのでしょうか。これについて、運用というのでは百年河清を待つにひとしい。なぜこの間、新しい民訴法改正ができ、計画審理についてある意味の前進が図られているのか、きちんとした骨格をつくって、よき運用をつくっていくということでこの間認識は醸成されているのではないかと思うので、この辺は再考願いたいというのが私の意見です。

○菅野座長 先ほどの第2の制度の名称の点についてはいかがですか。「労働審判制度」に仮称するという点について「調停」を入れるべきという御意見がありますけれども。

○鵜飼委員 私は春日委員たちは調停と訴訟手続の中間的な案ということで出されて、それを全体として総合的に考慮されて今回の案が出されておりますので、最終的なネーミングは「調停・審判」などというわかりにくいネーミングであってはならないと思います。仮称でも、まとめのように審判制度という形で統一した方がいいと思います。
 と申しますのは、「調停・審判」となりますと、調停手続と、現在家事審判などの審判手続がございますので、それを連想することになりまして、調停手続があって、その次の段階で審判手続があるという、ある意味では段階的、あるいは機械接合的なイメージがありますので、実際の中身と必ずしも一致いたしません。そういう意味では私はミスリーディングするおそれがないように、石嵜委員の御意見には余り賛成できないと思います。

○矢野委員 調停と裁判の間の制度だと私は思っていないのですが、調停も含んだ制度ではないのですか。調停というのが別にあり、そして審判制度があるという理解はしておりませんけれども。

○鵜飼委員 訴訟手続の中でも、この手続の中でも常に和解というか、お互いの互譲によって問題を解決するということは追求していくわけですね。そういう意味で調停は基本的に言うと判断的機能を全く持たない、互譲によって解決する手続ですね。訴訟手続は一定の強制力を持つ手続ですよね。そういう意味ではまさに中間的な制度だと思います。

○矢野委員 (注4)にもありますが、審判制度そのものの中に調停があって、さらに解決機能があるというふうに理解しているのですが、違いますか。
 最終的なネーミングは皆さんの意見でいいのですが、調停を含んでいない制度だとするとこれはちょっと問題ですね。

○鵜飼委員 調停を含んでいないという意味ではなくて、全体の中で審理の中に調停も組み込まれていると理解しています。

○矢野委員 それなら同じです。それなら「調停・審判」と言ってもいいのではないかと思うのですが。

○鵜飼委員 ネーミングとしては、私は賛成しかねます。

○菅野座長 鵜飼委員の(注4)の「今後検討すべき論点として訴訟手続との関連」を明示すべきだという御意見はいかがでしょうか。そういう論点があるということは確かだとは思われますが。

○村中委員 重要な論点だと思います。それは制度設計は非常に難しいような気もしますけれども、検討はしなければならない論点かと思います。

○菅野座長 この点を明示することに反対はないとしていいでしょうか。

○矢野委員 もう一つよろしいですか。「調停・審判制度」と申し上げた理由は、今度新しい制度ができるわけですね。労働調停それすらも新しい制度なんですね。ですから、調停も含んで、またそれに加えて判断もそこで出るというような今度の制度を世の中の人に知ってもらうには、ちょっと長い言葉になってしまうのですが、2字ぐらいつけ足してもいいのではないかと思うんです、「調停・審判制度」ですね。
 どうでしょうね。その方が、ああそうかということになるのではないでしょうか。「調停」という名前をつけて、何かとても困るということではないですよね。そうすると制度そのものがおかしくなってしまうというなら別ですが、制度そのものの中に調停があるわけですから、そうするといろいろな意味で理解が進むのではないでしょうか。ちょっと意見をつけ加えておきます。

○菅野座長 解決案そのものを「審判」と呼ぶかどうかはこれからの検討課題ですね。ですから、全体として仮称するということになっていて、調停を試み、権利義務関係を踏まえつつ解決案を決するという制度全体をこう呼んではどうでしょうかということで、さらにその内容を検討していくということでありまして、これは全く仮称なんですね。
 御意見の中で出てきている修正案についてどのぐらい一致できるかということを……。

○髙木委員 お話の途中ですけれども、ネーミングの問題ですが、調停の認識の仕方もあるのかもしれませんが、これは事件の中身にもよるでしょうが、裁判の中でも和解勧試的な道程があるはずですし、調停的なものはこの審判制度の中にもそういう要素は当然あるということは矢野委員もおっしゃるとおりで、余り立場を言い出すとあれなのですけれども、私は裁判制度の中でできないことになったということは、平たく言いますと、おまえは何をしていたのだと今やられているわけですね。「今日、その審判制度の議論に出ていくのか」「はい、さようでございます」と言って出てきましたが、そういう意味で矢野委員の方は内部的に「労働調停・審判制度」の方がかねての御主張から説得しやすい面があるかもしれませんが、私の方は「何だ、日本経団連がずっと求め続けてきた労働調停の枠内の話につき合うために、名前までそうされてきたのか」と言われかねないところはあるということは率直に申し上げておいた方がいいのではないかと思います。こういう言い方をすると座長に怒られるかもしれないですけれど、私どもの方ばかりが譲らされていると思っていますから。

○菅野座長 いろいろな点を議論していただきたいわけですが、これは鵜飼委員の御意見で、第3の(注2)は確かにやや簡素であるきらいがないでもないので、鵜飼委員の御意見をもう少し書き込むことはいいのかどうか。そこは鵜飼委員の意見を客観的にもう少し詳しくするというのであればという気もいたしますが、いかがですか。その修文はお任せいただくことになりますが、鵜飼委員の問題意識は仮処分手続に依存する必要がないようにしてほしいということと、迅速処理、計画審理をきちんと表記してほしいということですが。

○後藤委員 鵜飼委員は以前から言っておられて、仮処分と本訴の関係をということは、おっしゃりたいことはわかることはわかるのですが、資料によりますと本訴の方は平均で13.5カ月、仮処分の方は3.7カ月という数字になっているわけです。仮処分自体は民事保全法で要件があって、争いがある権利関係について債権者に生じる著しい損害、または窮迫の危険を避けるために、必要とするときに発することができるという制度であるわけで、まさに解雇されて賃金がもらえないということで仮処分が出るわけですね。それは、いかに工夫して本訴の方を速くしても、今ですら4倍ぐらいの差があるのですが、本訴の方を本当に努力しても、東京地裁で幾ら努力されても、それは仮処分と同じようにはなかなかならないわけですね。20年、30年の先は別ですけれども、当面の話としてそれはなりようがないと思うので、その仮処分自体は今の民事保全法の要件がある、著しい損害を避けるための制度ということで、それはそれで運用し、他方で本訴は本訴の方でできる限り速くやりましょうということで、当面の問題としては代替はできないと思うんです。
 計画審理の対象は解雇事件全部だと法律に書いたらどうだということではあるのですが、解雇事件の中にも審理計画を立てるまでもなく判決に至る事件もあるでしょうし、それはケース・バイ・ケースだと思うんですね。そういう意味では、それを民事訴訟法の中に、どこに書くかわかりませんけれども、書くというのはいかがなものかという気がします。

○鵜飼委員 そういう御意見があることはわかりますけれども、例えば地位確認の本案訴訟はもっと時間がかかっているんですね。ですから、証人調べ等を行った事件は21カ月という数字が出ており、その半減が意見書でうたわれているわけですけれども、仮処分というのはこの間もるる資料を出しましたのでおわかりになるかと思うんですが、あちこちで運用が別々で、特に東京地裁とほかの地裁での運用は、これが同じ1つの制度かと思われるぐらいに違うわけですね。それはもう具体的的に一つ一つは言いませんが、保全の必要性という要件が1つ加わってくるわけです。それをどうしても使わなければいけないケースもあります。しかし、その判断が例えば本案訴訟と違ってくるとか、負担が重くなってくるといろいろ言いましたよね。それと、本案訴訟で例えば解雇事件で労働者が使えるようにするためには、タイムターゲットは10カ月ぐらいになるわけです。ちょうど改革審の意見書が言っているように、半減のターゲットになってくるわけです。そういうものをターゲットに合わせるように、当事者の事情を尊重した上で、協議の上で、迅速に処理する。争点整理、証拠整理をなるべく3回ぐらいの期日までに行い、集中的な証拠調べを行う。こうすると、現在の民事訴訟手続で東京地裁を中心として本案訴訟もスピードアップされていますし、お互いに我々が協力すれば十分可能な日程、射程範囲に入ってくると私は思うんです。
 そういう意味で今は運用のレベルで議論がされていますけれども、基本的な指針を出すべき時期にきているのではないか。どう見ても仮処分でこれだけの解雇事件がきている、それによって各地裁の運用がこれだけ分かれている。それによって負担もこれだけ重い。判断が分かれてくることもある。こういう状況からすると、方向性としてはそういうものをきちんとパブリック・コメントに出して皆さんの御意見を聞くことが必要なのではないかと私は思います。

○菅野座長 そういう立法論については既に今と同じような議論がなされてきたわけですが、修文について(注2)自体はそういう意見の対立を前提にした鵜飼委員の意見の表示としてそのような形にすることについてはいかがですか。

○山口委員 東京地裁とほかの裁判所の仮処分の運用がそう大きく違っているというのは、私としては認識していないのでそこはまた意見の分かれるところなのですが、ただ、(注2)の修文の関係で言えば、立法化が適当だという意見もあったし、それは具体的な制裁規定もないし、果たして立法になじむのかどうか、いろいろな意見があったと思うので、(注2)の形で書くということで法制化が適当という意見の中身を書き込むというのであれば、それはわかりやすいという意味ではあってもいいと思っています。

○菅野座長 もう一方の意見があると書いておいた方がいいということですか。

○山口委員 そこまでは申し上げませんが、多分いろいろな見方があると思いますので、運用改善の指針の中身を法制化論者の意見をつけ加えるということについては特段の意見はありません。それはそれでも構いません。

○村中委員 これは調停・審判、審判制度ですけれども、それと仮処分との関係は余り議論していないですね。それで仮処分の方の要件を変えるというような話は出てこないでしょうか。

○菅野座長 別個の制度ということで、そういうことも論点になるのかもしれませんね。広い意味での訴訟手続との関連はあるのかもしれませんが、それはそれでまた9月以降に議論していただきたいと思います。

○山川委員 鵜飼委員の問題意識を具体的に書き込む中身について、当否を云々ということではないという御趣旨だと思いますので、例えば本案訴訟の迅速化や計画審理の促進、あるいは本案訴訟と仮処分の関係など、問題意識をより具体的、あるいは明確にするという意味で修文する余地はあるのではないかと思います。

○菅野座長 今日は予備日として入れたということもありますし、取りまとめの段階なので、できれば休憩を入れないでやれるかなと思ったのですが、ちょうど1時間半ぐらいになっているので休憩を入れますか。
 それでは10分の休憩を入れましょう。

(休 憩)

○菅野座長 それでは、再開いたします。どうぞ議論を続けていただきたいと思います。

○髙木委員 今日の後の時間の運び方と、今日の議論を受けて、いろいろ御意見があって修文していただいたり、書き加えていただいたりとあるのかもしれませんが、その辺の処理は今日中にやってしまうということですか。

○菅野座長 そういう話に入ってよろしければ、ですが、これから議論を聞いてどのぐらいのところで混乱するのかまとまるのか、その辺によるわけです。

○矢野委員 その前に今後の長期的な予定をもう一遍説明していただけますか。いつの国会に出して、いつから実施するという話です。

○齊藤参事官 まずは、9月以降の検討会の予定が12月まで入っておりますので、その検討会の検討を踏まえて、法案の提出は平成16年の通常国会を目指しているわけです。それで施行時期がどのあたりになるかまでは、率直に言いまして具体的な目途などは、恐らく座長もそこまでは見通しておられないと思います。事務局としましても、そこまで具体的なことは見通せておりません。

○矢野委員 大体の方向が決まって形が少し見えてきたので、秋口ぐらいから、先ほどのマンニングの話ではないですけれど、準備を始めなければいけないんです。髙木委員のところはよくわかりませんが、私どもはそう簡単に右から左に人が出るという状態ではないので、まずその趣旨の徹底も必要ですし、少し時間がかかると思うんです。余りいつまでもということではないだろうと思ってはいるのですが、それはどこかの時点でまた相談すればいいんでしょうね。

○菅野座長 私としては、まずこれをまとめることが先決でありますので。

○矢野委員 余り先走らない方がいいですね。こちらは全国何万社とあるわけですから、これからそういうところにおろしていこうと思っているんです。今は幹部に話していますけれど、きちんとおろして、まず思想とか哲学から始まって、細かい手法・手続は後からでもいいのですが、ここぐらいまではつくってもらいませんと、すぐ人を集めろと言われてもそう右から左にいきませんので、そういうことを思っているということだけ申し上げておけばいいと思います。

○髙木委員 特に教育問題はできるだけ早く段取りしないと、それなりに雰囲気もつくらなければいけませんし。

○矢野委員 そうです。

○山川委員 今の点に関して後で言おうかと思ったのですが、皆さんは人材をどのように育成するか、供給するかということが皆さん共通の御関心かと思っております。そういう点について議論する場が将来的に秋以降あってもいいかなと思いますし、やや個人的にですけれども、労働教育に関するアドバイスを行う立場に若干ありまして、そこで既に個人的な案として労働紛争解決のための人材育成の案は出しています。具体化するかどうかはわかりませんが、個人的なことでもよければそういう話題提供ぐらいは、今後いつか必要でしたらできるかもしれません。その際に髙木委員、矢野委員をはじめ皆さんにお知恵をいただければとも思います。

○村中委員 2ページの(注7)の専門委員制度についてですが、専門委員制度は民事裁判一般に入るということですから、その専門委員制度が労働事件に関してどのような運用のされ方をするかの参考にするということは、それはそれとしていいかとも思いますけれども、その並列というのは性格が違うのではないかという気はしますね。両者における参加している人の専門性が求められているものが全く違うわけですから、並列で専門委員制度が労働事件に関して実際どのように使われているかの考慮の仕方は全然違うだろうと思います。しかし括弧で書いてあるので、それはそれでよいかと思います。
 ただ、そういうことを考えますと、さらに通常の訴訟事件、要するに労働事件がそもそもどうなるのかどういうことになっていくのかということ自体を考慮しないといけないですね。ですから、そういうことを入れておけばいいのではないかと思います。

○菅野座長 今の御意見はよろしいですね。
 そのほかには何かありますか。

○春日委員 先ほどのネーミングについてよろしいですか。矢野委員と髙木委員の両委員からそれぞれの立場から御発言があったのですが、私としては最終的には座長にお任せしたいと思っているのですけれども、ここでの新しい手続は雇用・労使関係に関する専門的な知見を持っている人たちに合議してもらうという特徴をアピールするというか、中間取りまとめ案は当然読み手、対象者がいるわけで、そういう人たちへのアピールという点では、とりあえず「労働審判制度」という仮称でよいのではないかと思っています。

○菅野座長 ほかにいかがでしょうか。
 それでは、皆様からいろいろな御意見を今までいただいてきまして、座長として御批判もいただいたり、突き上げもいただいたわけですが、この中間取りまとめ案はそういう御意見を踏まえて、最初に申し上げましたように、何とか労使の専門的知見を活用した新しい紛争解決制度をつくれないかという気持ちで提案し、今後の時間的なことやそこにいろいろな課題が集約されているということも考えて、それを最優先にしたものでございます。それで皆様方が何とか一致できるところを、いわば薄氷を踏む思いでつくったものですので、今日の御議論で一致できた修正等は盛り込ませていただきますが、原則としてそれ以外は原案を維持させていただけないかというのが私の考えです。その上で今日の御議論をもう一度踏まえた最終的な詰めを座長にさせていただき、そういうものとして皆様にお示しし、パブリック・コメントにかけるということにさせていただきたいのですが、そのようにお願いできますでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、そういう線で当検討会の中間取りまとめをつくらせていただきたいと思います。後ほど皆様には最終版をお届けするとともに、本中間取りまとめについて約1カ月の意見募集を行うことにさせていただきます。
 そういうことでこの中間取りまとめができたことを前提にして、なお今後のことで、今日いろいろな御意見をいただきましたので、それはまた9月以降に生かさせていただきたいと思いますので、それに加えて今後のことについて今おっしゃりたいことがあればお聞きしておきたいと思います。

○髙木委員 パブリック・コメントに付された後の、寄せられた意見の集約の仕方といいますか、私もそれぞれどういう方法があるのかよくわかりませんが、寄せられた意見を後々の議論にできるだけ詳細に供してほしい。余りくくってまとめられずに、同じような意見が何百もあったらそれを全部羅列せいとまでは言いませんけれども、これは要望です。

○齊藤参事官 その点は工夫させていただきます。

○菅野座長 ほかにいかがでしょうか。
 なければ、本日の検討会はこれで終了したいと思います。委員の皆様には、御多忙中のところ非常に熱心に議論をしていただきまして、まことにありがとうございます。委員の皆様の御協力に心から御礼申し上げます。
 9月以降はこの中間取りまとめ及び意見募集の結果等を踏まえて、具体的な制度設計の詳細等について、さらに御検討をお願いすることになりますが、引き続き御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 最後に事務局から次回の日程を説明願います。

○齊藤参事官 次回は9月19日(金)午後2時から午後5時を予定しております。よろしくお願いいたします。

○菅野座長 それでは、本日の検討会はこれで終了いたします。ありがとうございました。(了)