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労働検討会(第27回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成15年9月19日(金) 14:00~17:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委員) 菅野和夫座長、石嵜信憲、鵜飼良昭、春日偉知郎、熊谷毅、後藤博、髙木剛、村中孝史、矢野弘典、山川隆一、山口幸雄(敬称略)
(事務局) 山崎潮事務局長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官、松永邦男参事官、川畑正文企画官

4 議題
(1) 「労働関係事件への総合的な対応強化についての中間取りまとめ」に関する意見募集の結果(速報)について
(2) 今後の検討スケジュールについて
(3) 労働審判制度(仮称)の制度設計等について①
   ・ 制度上の主要な論点等についての検討
(4) その他

5 配布資料
資料189 労働関係事件への総合的な対応強化についての中間取りまとめ
資料190 「労働関係事件への総合的な対応強化についての中間取りまとめ」に関する意見募集の結果(速報)
資料191 今後の検討スケジュール(案)
資料192 「労働審判制度」(仮称)の導入に関する主要な論点(案)
資料193 民事調停への不出頭に対して過料の裁判を受けた人員
資料194 日本弁護士連合会提出資料

6 議事

(1) 資料190「労働関係事件への総合的な対応強化についての中間取りまとめ」に関する意見募集の結果(速報)について事務局から説明がなされた。

(2) 資料191「今後の検討スケジュール(案)」について質疑応答及び意見交換が行われた。

(3) 資料192に挙げられた「労働審判制度」(仮称)の導入に関する主要な論点(案)について質疑応答及び意見交換が行われた後、各論点について検討がなされた。(○:委員、□:座長、△:事務局)

<主要な論点について>

○ 中間取りまとめの(注7)に掲げられている労働参審制についても、導入に向けた工程等に関して論点に入れて検討すべきではないか。

△ 資料192は、労働審判制度の導入に向けて検討すべき論点を整理したものであるため、労働参審制の導入については論点として挙げていない。まずは労働審判制度を優先して検討していただきたいという趣旨であるが、労働参審制について今後どのように議論するかは決まっているわけではない。

□ 労働参審制の導入に関する議論を当検討会でどのように扱うかについては、別途検討させていただきたい。

○ 労働審判の申立費用についても検討すべきである。

○ 労働審判の迅速処理、計画審理等の手続法的な論点や申立ての仕方等についても検討すべきではないか。

○ 労働審判制度は、労働調停を基礎とするものであるため、労働調停と労働審判のつながりについても議論する必要がある。

□ 御指摘の手続に関する事項については8,9の論点に含まれているものと理解している。

<論点1:解決案の内容等について>

○ 「(1) 解決案の内容と当事者の意向との関係」については、民事調停法の17条決定を参考にして、「当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で」事件の解決のために必要な決定をするとすることが考えられる。「(3)解決案の方式等」のうち、書面の要否については、非訟事件手続法第17条を参考とし、決定によって書面で行うこととすべきである。また、理由を付記させることが適当である。解決案の内容については、例えば賃金請求の事案において未払賃金の支払を命ずる場合には、分割払いを命ずることができるようにする等、柔軟なものにすればよいのではないか。

○ 労働審判制度は、調整的機能に加え、判定的機能が発揮されることに大きな意味があり、これがうまく機能すれば相当数の事件を解決することが期待できる。解決案の方式は書面によることとし、判定的な機能という側面からは、主文と理由を記載することとし、理由は事実認定や法的な解釈を含めて記載させることが適当である。

○ 判定的機能を強調するということは、理由を相当詳細に書かせるということになるのか。3回程度の審理を前提としているのだから、無理のない程度に理由を付記させることとすべきである。

○ 付記する理由は判決ほど詳細でなくともよいが、少なくとも当事者が納得できるように、判断に至るプロセス、認定した事実、法令の解釈が明らかになる程度の記載は必要である。イメージとしては家事審判制度に近いのではないかと考えている。また、理由付記の程度は運用レベルで柔軟に考えればよい。

○ 解決案の内容は、当事者の申立ての趣旨に反しない範囲のものとすべきである。また理由については、権利義務関係の有無等を納得性や労使の現場へのフィードバックという観点から、ある程度付記させることが適当である。

○ 解決案を提示した段階で両当事者が合意しているような事案であれば、書面によることを不要とすることも考えられるのではないか。

○ 労働審判制度は労使の参加により個別紛争を迅速、適正に解決しようとする新しい制度であるので、手続は、ある程度柔軟な運用が可能となるようにすべきである。理由の書き方等細かい部分まで厳密に決めておかない方がよいのではないか。

○ 当事者の意思に反する解決案の提示を認めるべきでないとの意見があったが、例えば、雇用関係の存在確認に関する申立てがなされた場合に、解決案の内容が、「確認する」又は「確認しない」の二者択一では硬直的にすぎるのではないか。

○ 例えば解雇の事案において、当事者が職場復帰を望んでいるにも関わらず金銭補償による解決案が提示されることについて懸念している。

○ 中間取りまとめに記載されている「権利義務関係を踏まえつつ・・・解決案を決する」の部分がポイントである。労働審判で出される解決案は単なる和解案とは異なるものであり、例えば解雇の事案では、当事者に職場復帰する意思がない場合には金銭補償による解決も可能という趣旨なのではないか。基本的には、実体法上の要件と効果を踏まえつつ、当事者の意向に合致し、かつ、それが相当である場合には、そのような解決が可能になるものと理解している。

○ 3回の期日で結論を出すことになるので厳密な審理にはなるとは限らないだろう。訴訟の前段階であり、また、迅速性が要請されていることから、権利義務関係は踏まえるが解決案は柔軟なものとすべきなのではないか。

○ 「柔軟」も程度の問題ではないか。本人の意思に沿った形で進められるのであれば問題はない。

○ 本人が原職復帰を希望しているにも関わらず金銭補償を内容とする解決案を出すようなことが制度上可能だとしても、不服がある当事者は結局訴訟を提起することになるため、実際にはそのような当事者の意向を無視した解決案が出ることはないのではないか。

○ 労働審判制度はADRの最終形であって、話し合いによって問題解決するところに意義がある。本来の目的を考えながら議論する必要がある。

○ 具体例を挙げると様々な問題が出てくるが、委員間の意見にはほとんど隔たりはないのではないか。解決案の柔軟性の程度については、手続全体のイメージを念頭に置いて考える必要がある。調停との関係についても、基本は簡易、迅速であり、要件事実を厳格に調べるものではないが、審尋等を行ってきちんと審理した上で柔軟な解決案を出すということなのではないか。審判という一定の手続を経て示されることから解決案は書面で示し、理由の付記も必要である。審判として解決案を決することと、調停として調停案を示すことの違いも出しながら手続を進めていける点に妙味があろう。

○ 解決案の理由は裁判官が書くことになるのか。判断の根拠を明らかにするため、理由を付記することは望ましいが、付記するかどうか、どの程度付記するかは事案によってある程度柔軟に対応できるようにすべきである。解雇の事案で金銭補償による解決案を提示することの可否については、解決案の意味合いに関わる問題だが、当事者の希望があくまで原職復帰である場合には、金銭補償による解決案の提示は申立ての趣旨の範囲を越えるものになるのではないか。審判を行う者が当事者の意向を十分把握した上で、解決案を示すことが必要である。

○ 解雇のような事例の場合には、はじめに労働審判制度の趣旨を説明して、労働審判制度を利用すれば金銭補償による解決の可能性があり、最後まで復職を希望するのであれば、訴訟の選択も可能であることを理解してもらえばよい。

<論点2:決せられた解決案の効力について>

○ (1)にあるように、当事者のいずれかが訴えを提起した場合に効力を失うこととすることが考えられる。当事者のいずれかの異議のみによって効力を失い、全て白紙に戻ることとすると、新たに労働審判制度を設けることの意義が失われかねないのではないか。労使と裁判官が入って一定の証拠調べもしつつ、相当のコストをかけて解決案を提示するのだからある程度の効力を認めるべきである。

○ 例えば、解決案で権利義務の存在の確認を前提とした請求が認められた場合には、使用者は起訴命令をかけることになるというイメージか。そのような取扱いを考えると(1)と(2)の間には大きな相違はないのではないか。いずれにしても、更に具体的な検討が必要である。

○ (1)の場合であっても、申立人は債務名義を得るためには反訴することが必要になる。

○ 解決案で権利義務の存在が確認された場合には、(1)の考え方では、不服のある者はその裏返しで不存在確認の訴えを提起しなければならない。このため審判の申立ての趣旨の書き方を工夫する必要がある。労働審判手続にかけられるコストを考えると、解決案に異議がある者に訴え提起による印紙代の負担をしてもらうことが適当ではないか。

○ 解決案を示してもらった場合、相手方は不服があれば訴えを提起することになるが、その場合でも、労働審判を申し立てた労働者が反訴の提起や仮処分の申立てをしなくてもすむような仕組みはできないのか。

○ (1)のように訴えを提起させた方が、相手方にとってのハードルは高くなり、解決案を決することによる解決率が高まるのではないか。

○ (1)が適切だと思う。(2)だとすると、17条決定との相違が分からない。また、4審制を防止するための工夫が必要である。

○ 解決案を受け入れなかった者に提訴の印紙代を負担させることは、制度の本質に合致しないのではないか。自ら同意して解決案を出してもらったのであれば理解できるが、労働審判による解決を望まない者に負担を負わせるのが適切なのか。論点4とも絡めて議論する必要がある。

○ 労働審判という労使双方が参加した一定の手続を経て解決案が定められ、理由まで付記させるのであるから、それに不服があるというのであれば、その者に起訴責任を負わせるべきではないか。

○ 解決案に一定の効力を認めないと審判手続に携わる者のインセンティブがそがれることになるのではないか。

○ 労使と裁判官が加わって審理をしつつ、調停も試みていけば、調停で解決する可能性は高いと考えられる。解決案は異議を述べることにより失効するとしても、解決案を定めることは事実上大きな意味を持ってくるのではないか。

○ (2)を選択したとしても、訴訟提起の道が閉ざされるわけではないし、労働審判で全て完結するわけではない。

○ 基本的には(1)が適当だと思うが、純粋な利益紛争の場合について、解決案に不服の場合にどのような訴訟を提起すべきかは考える必要のある問題である。また、審判の主体に熱意を持ってやってもらうには、訴訟手続との連携が必要であろうが、(1)の場合、相手方に解決案への不服があれば、必ず訴訟が提起されることとなるので、労働審判の申立てを行うには訴訟も見据える必要があり、かえって利用しにくくなることも考えられる。他方、その方が労働者側からの濫訴防止になることも考えられる。

○ 論点4との関係で議論する必要がある。

○ 専門家の関与する調停手続においては、現行の調停に代わる決定は裁判の場でも重要な参考になるという役割を果たしており、異議により失効する解決案であっても、全く無意味になるというわけではない。

<3:確定した解決案の効力について>

○ 訴訟のような厳格な手続ではないので、解決案に既判力を持たせることは難しいのではないか。執行力は調停に代わる決定と同様にあり、形成力については、形成の裁判の性質を有しているものについてはあると考えるのではないか。

○ 解決案の効力については、以前に、判決と同様の効力を生ずることとしてはどうかとの意見があった。雇用関係存在の確認を求める労働審判手続においては、確認の解決案が決せられた場合には既判力を認めておく必要があるのではないか。

○ 裁判官が入って進められる手続であり、裁判所との判断の食い違いを防止するためにも既判力を認めるべきではないか。

○ 柔軟な解決案を想定していたので、既判力は難しいと考えていたが、紛争の性質上、既判力を認めるべきものもあるのかもしれない。

○ 審判の申立ての捉え方に関わる問題である。既判力については審判の申立ての趣旨に即して新たに考えていく必要があるのではないか。

○ 申立ての趣旨としてどこまで要求するかに関わる問題だと思う。後の訴訟での紛争の蒸し返しを防止する必要もあろうが、それは解決案の効力として考えるのか、信義則の問題として考えるのか、考え方は様々あろう。

<4:労働審判制度(仮称)が進められること(解決案が決せられること)についての相手方の同意の要否について>

○ 同意を必要とする意見は、どの段階でどのような同意を得ることとする意見なのか。

○ 同意を得る段階については、事案の内容によって柔軟に考えるべきであり、解決案を示す段階で得ればよいのではないか。労働審判制度を導入する目的は、解決案を示すことではなく、紛争を解決することである。当事者の意思に反して解決案を示したとしても、受け入れられるのか。調停による解決を目指して手続を進め、相手方の同意を得て解決案を示せば、手続は円滑に進み、当事者が解決案を受け入れる確率も高まるのではないか。同意なしに解決案を示しても、結局は訴訟へと進み、せっかくの手続が無駄になってしまう。

○ 同意を必要とするのであれば、ある段階まで行われた手続が覆されて、手続が無駄にならないように、手続の最初の段階で同意を得ることとすべきである。

○ 不同意となっても、調停は進めていくので、解決の機会は続くことになるから、手続が全く無駄になってしまうとは言えない。同意の時期は手続の当初に限ることなく、事案に応じて審判を行う主体が決めればよいのではないか。

○ 労働審判に携わる側の立場からすれば、いつ拒否されるか分からないままに手続を進めていくことは困難であり、同意という主観的な要素を入れると、手続の安定性を損なうことになりかねない。後で解決案が決せられるからこそ、解決が促進されると考えられる。
 紛争解決に協力的でない経営者も関わらせることができるような手続にすべきである。

○ 制度の意義に関わる問題である。同意を得る段階を柔軟に考えるべきだとする意見は、そもそも労働審判制度に信頼性がないという前提を置いているに等しい。手続に不満があればいつでもやめてよいような不安定な制度になることがよいとは思えない。

○ 現実問題としては、解決案が提示されることに同意がされてはじめてこの制度が生きてくるのではないか。相手方の同意を得ることで解決案の受容度が高まるのではないか。非協力的な経営者を無理に手続に参加させて解決案を提示したとしても、結局は訴訟になり、労働者側も時間が無駄になるだけではないか。

○ 裁判官と労使の三者が解決案を示すことで、解決案が受け入れられることが多くなるのではないか。相手方の不同意で手続が進まないというのは妥当ではない。

○ 現行の調停制度においても法律上出頭義務が課せられている。司法手続としての労働審判手続であればそれ以上に出頭義務を重いものとすることが必要ではないか。当事者の同意がないと手続が進められないような裁判制度はないのではないか。

○ 出頭することと解決案を決することは別個の問題として考えるべきである。出頭に同意が必要だといっているわけではない。最終的な解決案を示すことについては、当事者の意思を確認することで受容性が高まると考えている。

○ 相手方の不同意によって、それまでの審判手続の中で主張、立証に努めてきた当事者の負担が無駄になるのではないか。

○ 審判手続の中で柔軟に同意を得ていけばよい。同意を前提とすれば、ある程度ラフな解決案でも受け入れやすいが、そうでないと相手方としても、厳格な主張、立証をすることとなり、3回の期日では処理できなくなるのではないか。

○ 裁判所の手続の進行について他方当事者の同意を要件とすることについては違和感がある。また、実務上も、審判に携わる人が手続を進行しにくいのではないか。労働審判制度は、労使の専門家を入れて、より実情を反映した適切な解決案を示すことが前提となっており、少なくとも解決案を示すことに他方の同意を要するとすることは適当ではない。

○ 同意を要するとした場合、法的には仲裁と同様の手続になると考えられるが、仲裁裁定には強い効力が認められている。一方で労働審判による解決案には仲裁裁定のような強い効力を認めるわけではないので、法体系のバランスからみても、同意を要することとすることは難しいのではないか。

○ 国が設ける紛争解決制度であるから、効果的な紛争解決を図るべきであり、そのためには、一方当事者の意向が手続の進行に影響を及ぼすような制度にすべきでない。使用者側が申し立てられるケースが多いというのは分かるが、使用者側が申し立てることもあり得るところである。いずれにしても、国の制度の在り方としてどの程度まで紛争解決に国が関与することが適当かという観点から議論する必要がある。また、相手方が解決案を受け入れる見込みがないからといって、解決案を示さないよりは示した方がよいのではないか。

□ 論点2との関係についてはどうか。

○ 仮に、同意を要するとするのであれば、労働審判を利用したくない相手方は自ら訴訟を提起することとすることが考えられる。

○ 理論的には、論点2と4の関連性はないのではないか。

○ 同意の要否に関わらず、論点2については(1)を支持する意見が多かったのではないか。

○ これまで意見は出されていないが、論点2については、仲裁裁定と同様の効力を有するという選択肢も理論上は考えられる。その場合には、同意が必要という結論になるのではないか。

<5:相手方が期日に出頭しない場合の取扱いについて>

○ (1)の「出頭確保の方策」については民事調停法上の期日への出頭義務や過料の制裁を参考にすればよいのではないか。

○ 相手方が手続に応じない場合であっても解決案を提示することが可能になるのか。

○ 相手方が手続に応じない場合には、一方の当事者からの資料のみで解決案を出すことになるのではないか。不利益を被りたくないのであれば手続に参加して、主張、立証を尽くしてもらう必要があろう。また、出頭しない場合には、不利益な結果を甘受せざるを得ないとするしかないのではないか。過料の制裁は実際には使われることはあまりないのではないか。

○ (2)で同意の擬制を行うこととしても、結局は複雑で分かりにくい手続になる。手続はシンプルにすべきであって、同意の要件はなしで手続を進めることとすべきである。

<6:訴訟手続との連携について>

○ 審判手続の中で出された証拠を、訴訟でどのように扱うかも問題である。審判で提出した証拠の副本が相手方にも渡されることになるのだろうか。いずれにしても、4審制にならないように配慮しつつ制度設計を行う必要がある。

○ 解決案に不服のある者に訴えを提起させることとすると、労働審判の申立てでの申立人・相手方の関係と、訴訟における原告・被告の関係が逆になる場合が生じることは気になる。審判申立て時における申立人・相手方の関係が訴訟手続の場に移っても引き継がれることが望ましい。また、審判での資料については、調停による互譲の部分は別にしても、審理と証拠調べに係る部分は調書にする等して基本的に引き継ぐこととすべきである。訴訟でも審判で行ったことと同じことを繰り返すことのないようにし、4審制にならないようにすべきではないか。

○ 労働審判制度は非訟手続であって訴訟手続とは異なるので、労働審判で出された証拠を当然に訴訟に引き継ぐことには問題がある。訴訟では当事者が適切に選択した上で自ら提出するべきではないか。また、審判手続で行った審尋等をどこまで記録化するかについても検討が必要である。

○ 訴訟を迅速、効率的に進める観点から、労働審判で用いられた証拠で必要なものは原則として訴訟に引き継げることとしてはどうか。
 また、労働審判でかなりの時間のかかる事件については、当事者の一方の意思で審判を打ち切れるようにすることも考えられるのではないか。一律に期間や期日の回数で決めるわけにはいかないが、迅速性の観点から検討する必要がある。
 さらに、訴訟が提起された場合には、解決案の効力が失われることになるが、訴訟が確定しない間をどうするか検討が必要である。例えば、解決案に暫定的な効力を与えるといった何らかの手当てが必要ではないか。

○ 労働審判による解決が困難な事案については、当事者の意向を踏まえた上で調停不成立という判断を行うことも考えられる。
 労働審判は、裁判官が主宰する手続であること、また、審理が3回程度であることから証拠がアトランダムに出されて混乱することもないのではないか。基本的には証拠を引き継ぐことを可能にすべきである。

○ 労働審判は3回の審理での解決を目指す手続であるのに対し、訴訟は権利義務の存否を判断する手続であって、両者は性格が異なる。訴訟になってから、労働審判の資料のコピーをどう使うかは別として、当事者は労働審判の段階で出された証拠がそのまま訴訟に引き継がれることを想定していないと考えられ、両制度を結びつけなくてもよいのではないか。

○ 労働審判の制度設計は、最終的には訴訟と結びつくことを前提として考えるべきではないか。

○ 労働審判手続と訴訟手続は別個の手続であり、調整的解決を基本とする労働審判手続において提出された証拠が、対立構造を前提とする訴訟手続に自動的に引き継がれることとすべきではない。

○ 労働審判において、判定的な手続の部分の記録と調停手続の部分の記録とを区別して作成してはどうか。

○ そもそも審判手続の資料と訴訟手続の資料は別のものであり、自動的に引き継がれることとはならない。

○ 労働審判と並行して訴訟を提起することの可否、逆に訴訟と並行して労働審判を申立てることの可否についても検討する必要がある。

○ 3回の期日で手続を終えることを前提とした労働審判における審尋と訴訟における証人尋問の関係についても、整理する必要がある。

○ 最終的には労働審判の運用に任せるしかないのではないか。

○ 労働者が審判手続による解決を求めているにも関わらず、使用者が訴訟を提起した場合にはどうすべきか。途中で訴訟へ行くのは仁義に反するのではないか。

○ 論点2や論点4とも関わってくるのではないか。

○ 手続が併存する場合の取扱いを画一的に定めることは難しいのではないか

(4) その他

 次回(第28回)は、10月6日(月)10:00~12:30に開催し、引き続き「労働審判制度」(仮称)の制度設計等について検討を行うこととされた。