前回及び今回のヒアリングを踏まえて、中間的な論点整理の進め方等について、フリーディスカッションを行った。その主な発言は以下のとおりである。(□:座長、○:委員、△事務局)
□ 厚生労働省の個別労働紛争処理について、相談件数と助言・指導、あっせんの件数にギャップがある。相談が紛争解決に果たす効果や他の紛争処理機関への移行状況等の実情はどうか。
○ 今後分析したいが、相談員のアドバイスにより相談者自ら方向性を定めて解決に向かう事例も結構多いと聞いている。
○ 助言・指導のイメージがはっきりしない。プライバシーに配慮しつつも、指導文書の実物を示してほしい。
○ 労働局での助言・指導は、事案を聞いた上で判例等を示してアドバイスするもの。個別の事案の判断に踏み込むのではなく、判例等を参考に話し合いを勧めたりするものである。
○ 今回のヒアリングの対象者は都心部の関係者が中心であるが、当検討会で議論する事項は国の制度に関することである。地方の実情は都心部とは異なっていると思う。
○ 労働相談のホットラインでは、都心部の相談が多かったが、最近は地方の相談も増えている。
ADRのニーズは高まっているが、これは司法の在り方次第である。審理期間は全体的には短縮されてきているが、判決・決定に至る事案ではまだ時間がかかっており、そのためやむを得ず和解をするという面もあるのではないか。そうした点の議論のためにも、実証的なデータを示してほしい。
○ 中間的な論点整理については、労働検討会における大きく4つの検討項目について、各委員の考えを出し合って整理・収斂させていってはどうか。
○ 論点整理については、7月に中間的に取りまとめた後にもヒアリングを実施していくので、また改訂版を作っていくということでもよいのではないか。今後、毎回のヒアリングの後に議論の時間を設けて考えを述べる場を設けてはどうか。
○ 論点整理は、検討事項をブレークダウンして足りない部分等を詰めていくことが必要になると考えられるが、テーマによって若干違いがありそうだ。労働事件の民事調停は少ないとのことだが、一般の民事調停の実態も知りたい。また、専門家の関与の在り方については外国の状況を知らないと整理が難しいかもしれない。
○ 労働調停を導入するにしても、制度を支える人材の確保は重要な問題だ。法曹養成に際して労働法の教育をどうするかについて、法曹養成に係る検討の場に何らかの形で意見表明をしていく必要があるのではないか。
○ 人材については、労使含めて養成していかないと供給源は足りないと思う。外国ではどのように人材の供給をしているのかについても議論が必要だ。
○ 労働調停等に必要なマンパワーについては、ロースクールも含めトータルに議論することが必要だ。例えば、事件数に違いがあるが、ドイツと同様の人数の労使が労働裁判に関与することとなると、我が国でこれを確保することは簡単ではない。
○ 人材供給を如何に確保するかは難しい問題だ。また、どう専門性を身につけさせるかも重要だ。
○ 少額訴訟の限度額の在り方については関心がある。労働検討会でも触れて、必要があれば担当のところに伝えることも必要ではないか。
△ 現在、法制審議会で検討中であるが、少額訴訟の限度額の在り方については簡易裁判所の事物管轄の問題があり、議論はそれほど進んでいない。
○ 本来暫定的な制度である仮処分手続で、一般的・普遍的な解雇事件を扱うことがよいのかも議論が必要だ。
また、救済命令の司法審査に関して、救済命令に強制力を持たせるための緊急命令が、取消訴訟の判決の段階で出されていることがあると聞いているが、命令を発する時期についての資料を示してほしい。
○ 地方労働委員会における審査事務を自治事務化したことに伴い、地方労働委員会と中央労働委員会の関係をどうすべきか難しい問題がある。こうしたことも労働検討会の場で議論し、外部に発信していってもよいのではないか。
○ 地方分権の議論については、労働委員会における現行の2審制は維持するという理解で自治事務化したものである。
□ 救済命令の司法審査に関しては、裁判所はこうあってほしいといった点も出してほしい。
○ 労働紛争処理システム全体の位置付けについても議論すべきか。
○ 裁判官協議会で労働事件に関して具体的なケースの検討を行っていると聞く。流動的な雇用社会の状況に対応することが必要な労働事件の議論に当たっては、こうした研修の状況についても資料を示してほしい。
○ 緊急命令については、難しい内容判断が多いので慎重な判断が必要となることが多いのが実情だろう。資料の点については、出せるデータは出したい。また、裁判官協議会の件についても最高裁にも伝えておく。
○ 救済命令の取消率が5割を超えたり、少なくとも1/4~1/3もあるのはたいへんなことだ。労働委員会の信頼性の問題にもつながるものであり、解明が必要だ。そこを考えないと、審級省略の議論には進まないのではないか。そこは論点の一つとして考えるべきである。
□ 裁判所の資料では、一部取消も全部取消と同様にカウントしているので取消率が高いように感じるが、前回の中央労働委員会の資料では、一部取消は1/2件として計算していた。
最近取消率が高くなっているのは、JR関係事件が多いからだろう。JR事件を抜いて比較することが必要だろう。
しかし、それでも救済命令の取消率は、一般の行政処分に比べて高くなっている。
○ 救済命令の司法審査については、労働委員会サイドのアプローチと裁判所サイドのアプローチを整理し、制度と制度のかみ合わせの検討も含めてトータルで解明して、改善を図ることが必要だ。
○ 20年程度前に裁判所と労働委員会の連絡会議を設けて議論していた頃には、両者の齟齬はあまり目立っていなかったのではないか。今後、こうした議論の場も必要ではないか。
○ そうした話し合いの場があってもよいが、法曹間で共通の認識がないと進まないので、弁護士会も含めて意見交換会を設けることも有意義ではないか。
○ 救済命令については、判決が出たものの取消率だけでなく、救済命令を踏まえて和解・取り下げがなされているものもあるので、命令が出されたもの全体について命令後の状況を分析したい。
労働委員会の在り方については、裁判も含めて全体を検討することが必要と考えており、厚生労働省での検討と労働検討会の連携の下に検討してほしい。
□ 論点整理のイメージとしては、4つの検討事項をブレークダウンして、何を検討すればよいか分かるものを整理するほかに、裁判所の役割、裁判所内の各種制度の位置付け、裁判所と行政機関の関係、企業内の紛争処理制度との関係等の労働関係紛争処理全般の総論的・横断的な論点も必要ではないかと感じる。
○ それぞれの制度の重さや相互関係もあるので、そうした論点も必要だと思う。
□ 論点整理の仕方については、座長と事務局で取りまとめて、また提案したい。