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労働検討会(第3回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり


1 日時
平成14年5月1日(水) 14:00~17:30

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
菅野和夫座長、石嵜信憲、鵜飼良昭、岡崎淳一、春日偉知郎、後藤博、髙木剛、村中孝史、矢野弘典、山川隆一、山 口幸雄(敬称略)

(説明者)
定塚  誠 (最高裁判所事務総局行政局第一課長)
小林 宏司 (最高裁判所事務総局行政局参事官)
三代川三千代(東京地方裁判所民事第11部部総括判事)

(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官、近藤昌昭参事官

4 議題
1.労働関係紛争処理制度の現状等に関するヒアリング(2)
  • 裁判所からのヒアリング
2.フリーディスカッション
3.今後の検討会の進め方について
4.その他

5 配布資料
資料12 裁判所ヒアリング資料
資料13 第2回労働検討会におけるヒアリングの概要
資料14 労働検討会の検討事項
資料15 当面の検討スケジュール -たたき台-
資料16 ヒアリングの進め方について -たたき台-

6 議事

 (1) 裁判所からのヒアリング

 最高裁判所事務総局及び東京地方裁判所から資料12に基づいて説明がなされた。これに対して、次のような質疑がなされた。(□:座長、○:委員、●:説明者)

○ 裁判の終局事由(判決・仮処分決定・和解・取下げ)別の審理期間、解雇事案での仮処分命令の内容別内訳等を資料にして示してほしい。

● 統計の簡素化により把握していないデータがあるが、必要なものについては別途調査する。

○ 例えば、平成13年度の東京地裁、大阪地裁など労働部、労働集中部のある ところだけでも資料は出してもらいたい。

○ 地方裁判所における労働関係の民事調停の状況はどうか。

● 極めて少ない。労働事件では調停に付すよりも、担当の部での和解を進めてほしいとなる。

● 担当事件でも調停に付したものは1件であり、何件かの事件で調停を提案したが断られた。

○ 使用者側が、労働委員会の審査の場では証拠を提出せず、裁判で初めて提出する事例があると聞くがどうか。

● 担当する事件の中で、そうした事件の経験はない。労働委員会における審問後の状況を主張することはあるが。

○ 労働委員会で主張が足りなかった点を追加して主張することはあるが、担当する事件の中で指摘のような事例は1件経験した程度である。

○ 使用者側としては、JR事件では戦略として労働委員会の場では法律論だけを主張したが、それ以外では、通常は使用者側も労働委員会の場で主張・立証する。

○ 世界規模の市場競争の中で雇用社会の状況は激変しており、労働関係の知見は裁判官が研究会等で学ぶだけでなく、裁判に専門家を参加させることも必要ではないか。

● 労働事件の専門性といった場合、判例等を勉強しなければならないことはもちろんであるが、専門部にいると半年程度で勘所がつかめるようになる。また、専門性として、労使慣行のことが言われることがあるが、当該事件の職場を超えるような一般的な労使慣行というものがあるのかについては疑問をもっている。問題となるのは当該事件での労使慣行であり、結局、他の事件の事実認定と異ならないように思える。

● 裁判官は労使関係や業界の状況等については、実際の経験がないので、書物、裁判資料等で勉強をしている。現在、専門委員制度等も検討されているが、労働事件に関して、どのような知見をどのような場面(事実認定、ルールメーキング等)で導入するのが適当か、専門家を入れるとして中立的な者がよいのか労使の対立構造を持ち込むのがよいのか等について、実証的に御議論いただきたい。

○ 裁判官は労働事件の処理についてOJTでその勘所を学ぶというが、利用者としてはOJT中の裁判官が担当するということは受け入れがたいことではないか。
 また、日本の裁判所の労働事件に係る控訴率が5割程度というのは割合が高いのではないか。英国では労使が入ることで控訴率も10%程度と低く、納得性が高いと感じた。こうしたシステムを日本にも導入することについてどう考えているか。

● それぞれの専門性に応じてどのようなシステムがよいかということだと思う。

□ 事実たる慣習に当たるような事項で当事者が当然の前提としているものを裁判所が見過ごしているということはないか。

● 裁判所は当事者の主張を通じて判断することとなる。当事者が争ったところについては証拠により事実認定する。
 裁判所の認識が間違っているというのであれば、その点は当事者から指摘してほしい。したがって、裁判所としては、当事者の攻撃防御に資するため、裁判所の考え方を当事者に示すことが適当であると考える。

○ 労働専門部・集中部に所属している35名の裁判官について、どういうキャリア形成をしているのかの資料をお願いしたい。

● 外形的なことを調べることは可能であるが、誰をどの部に配属するかについては、現場の裁判官の集まりで決めており、配属理由までは答えかねる。

○ 労働専門部・集中部の裁判官の司法修習の期別構成や年齢、人数の10年前から現在までの変化についても示してほしい。

● 客観的なところについては調べさせていただく。

○ 労働部の裁判官については、エキスパートの育成という方針はないのか。

● 全国の労働裁判のレベルアップのため労働部の経験者を全国に配置することもあるとともに、何度も労働部に配置して労働裁判の核となってもらう者もおり、両面がある。

○ 専門性にも勉強して分かるものとそうでないものがあるが、専門性を身に付けていれば、簡単に理解し、迅速に処理することができるという面があるのか。また、勘所というものが一つの専門性かとも思うが、例えば、解雇理由として挙げてあっても理由になりそうもないような事項について直感的な印象を持つことがあるのか。

● 専門性がどういうものかについての答えは持っていないが、最近増えているのは、雇用契約書が横文字で書かれている事案であり、これは辞書を引いても十分には分からないことがある。
 また、解雇事件は、判例で権利濫用の法理が複雑かつ体系的に固まっているが、権利濫用の判断に当たり、労働者の生活の維持と企業の論理とのバランスをどこで取るかは難しい。加えて、証拠の有無という民事裁判官としての事件の見方がミックスして働いており、何をもって労働事件の専門性というかについては多様なものがあって難しい。

 (2) フリーディスカッション

 前回及び今回のヒアリングを踏まえて、中間的な論点整理の進め方等について、フリーディスカッションを行った。その主な発言は以下のとおりである。(□:座長、○:委員、△事務局)

□ 厚生労働省の個別労働紛争処理について、相談件数と助言・指導、あっせんの件数にギャップがある。相談が紛争解決に果たす効果や他の紛争処理機関への移行状況等の実情はどうか。

○ 今後分析したいが、相談員のアドバイスにより相談者自ら方向性を定めて解決に向かう事例も結構多いと聞いている。

○ 助言・指導のイメージがはっきりしない。プライバシーに配慮しつつも、指導文書の実物を示してほしい。

○ 労働局での助言・指導は、事案を聞いた上で判例等を示してアドバイスするもの。個別の事案の判断に踏み込むのではなく、判例等を参考に話し合いを勧めたりするものである。

○ 今回のヒアリングの対象者は都心部の関係者が中心であるが、当検討会で議論する事項は国の制度に関することである。地方の実情は都心部とは異なっていると思う。

○ 労働相談のホットラインでは、都心部の相談が多かったが、最近は地方の相談も増えている。
 ADRのニーズは高まっているが、これは司法の在り方次第である。審理期間は全体的には短縮されてきているが、判決・決定に至る事案ではまだ時間がかかっており、そのためやむを得ず和解をするという面もあるのではないか。そうした点の議論のためにも、実証的なデータを示してほしい。

○ 中間的な論点整理については、労働検討会における大きく4つの検討項目について、各委員の考えを出し合って整理・収斂させていってはどうか。

○ 論点整理については、7月に中間的に取りまとめた後にもヒアリングを実施していくので、また改訂版を作っていくということでもよいのではないか。今後、毎回のヒアリングの後に議論の時間を設けて考えを述べる場を設けてはどうか。

○ 論点整理は、検討事項をブレークダウンして足りない部分等を詰めていくことが必要になると考えられるが、テーマによって若干違いがありそうだ。労働事件の民事調停は少ないとのことだが、一般の民事調停の実態も知りたい。また、専門家の関与の在り方については外国の状況を知らないと整理が難しいかもしれない。

○ 労働調停を導入するにしても、制度を支える人材の確保は重要な問題だ。法曹養成に際して労働法の教育をどうするかについて、法曹養成に係る検討の場に何らかの形で意見表明をしていく必要があるのではないか。

○ 人材については、労使含めて養成していかないと供給源は足りないと思う。外国ではどのように人材の供給をしているのかについても議論が必要だ。

○ 労働調停等に必要なマンパワーについては、ロースクールも含めトータルに議論することが必要だ。例えば、事件数に違いがあるが、ドイツと同様の人数の労使が労働裁判に関与することとなると、我が国でこれを確保することは簡単ではない。

○ 人材供給を如何に確保するかは難しい問題だ。また、どう専門性を身につけさせるかも重要だ。

○ 少額訴訟の限度額の在り方については関心がある。労働検討会でも触れて、必要があれば担当のところに伝えることも必要ではないか。

△ 現在、法制審議会で検討中であるが、少額訴訟の限度額の在り方については簡易裁判所の事物管轄の問題があり、議論はそれほど進んでいない。

○ 本来暫定的な制度である仮処分手続で、一般的・普遍的な解雇事件を扱うことがよいのかも議論が必要だ。
 また、救済命令の司法審査に関して、救済命令に強制力を持たせるための緊急命令が、取消訴訟の判決の段階で出されていることがあると聞いているが、命令を発する時期についての資料を示してほしい。

○ 地方労働委員会における審査事務を自治事務化したことに伴い、地方労働委員会と中央労働委員会の関係をどうすべきか難しい問題がある。こうしたことも労働検討会の場で議論し、外部に発信していってもよいのではないか。

○ 地方分権の議論については、労働委員会における現行の2審制は維持するという理解で自治事務化したものである。

□ 救済命令の司法審査に関しては、裁判所はこうあってほしいといった点も出してほしい。

○ 労働紛争処理システム全体の位置付けについても議論すべきか。

○ 裁判官協議会で労働事件に関して具体的なケースの検討を行っていると聞く。流動的な雇用社会の状況に対応することが必要な労働事件の議論に当たっては、こうした研修の状況についても資料を示してほしい。

○ 緊急命令については、難しい内容判断が多いので慎重な判断が必要となることが多いのが実情だろう。資料の点については、出せるデータは出したい。また、裁判官協議会の件についても最高裁にも伝えておく。

○ 救済命令の取消率が5割を超えたり、少なくとも1/4~1/3もあるのはたいへんなことだ。労働委員会の信頼性の問題にもつながるものであり、解明が必要だ。そこを考えないと、審級省略の議論には進まないのではないか。そこは論点の一つとして考えるべきである。

□ 裁判所の資料では、一部取消も全部取消と同様にカウントしているので取消率が高いように感じるが、前回の中央労働委員会の資料では、一部取消は1/2件として計算していた。
 最近取消率が高くなっているのは、JR関係事件が多いからだろう。JR事件を抜いて比較することが必要だろう。
 しかし、それでも救済命令の取消率は、一般の行政処分に比べて高くなっている。

○ 救済命令の司法審査については、労働委員会サイドのアプローチと裁判所サイドのアプローチを整理し、制度と制度のかみ合わせの検討も含めてトータルで解明して、改善を図ることが必要だ。

○ 20年程度前に裁判所と労働委員会の連絡会議を設けて議論していた頃には、両者の齟齬はあまり目立っていなかったのではないか。今後、こうした議論の場も必要ではないか。

○ そうした話し合いの場があってもよいが、法曹間で共通の認識がないと進まないので、弁護士会も含めて意見交換会を設けることも有意義ではないか。

○ 救済命令については、判決が出たものの取消率だけでなく、救済命令を踏まえて和解・取り下げがなされているものもあるので、命令が出されたもの全体について命令後の状況を分析したい。
 労働委員会の在り方については、裁判も含めて全体を検討することが必要と考えており、厚生労働省での検討と労働検討会の連携の下に検討してほしい。

□ 論点整理のイメージとしては、4つの検討事項をブレークダウンして、何を検討すればよいか分かるものを整理するほかに、裁判所の役割、裁判所内の各種制度の位置付け、裁判所と行政機関の関係、企業内の紛争処理制度との関係等の労働関係紛争処理全般の総論的・横断的な論点も必要ではないかと感じる。

○ それぞれの制度の重さや相互関係もあるので、そうした論点も必要だと思う。

□ 論点整理の仕方については、座長と事務局で取りまとめて、また提案したい。

 (3) 今後の検討会の進め方について

 第4回検討会及び第5回検討会でのヒアリングの進め方について議論が行われ、弁護士からのヒアリングについては、弁護士出身の委員から労使各側1,2名ずつ程度のヒアリング対象者を、また、利用者側からのヒアリングについては、労使団体出身の委員及び弁護士出身の委員から労使各側のヒアリング対象者を、それぞれ推薦してもらうとともに、社会保険労務士からのヒアリングについては、全国社会保険労務士会連合会と相談の上ヒアリング対象者を選定して、ヒアリングを実施することとされた。

 (4) 次回の日程

 次回(第4回)は、平成14年5月30日(木) 15:00~18:30に開催することとし、弁護士及び社会保険労務士からヒアリングを実施することを予定している。