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労働検討会(第32回)議事録



1 日時
平成16年7月27日(火)16:00~17:40

2 場所
永田町合同庁舎1階 共用第4会議室

3 出席者
【委 員】菅野和夫座長、石嵜信憲、鵜飼良昭、春日偉知郎、熊谷毅、後藤博、髙木剛、村中孝史、矢野弘典、山川隆一、山口幸雄(敬称略)
【事務局】山崎潮局長、古口章事務局次長、大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、齊藤友嘉参事官、笠井之彦企画官
【説明者】定塚誠(最高裁判所事務総局行政局第一課長)

4 議題
(1)労働審判法の成立等について
(2)労働訴訟協議会における協議について
(3)その他

5 議事

○菅野座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第32回労働検討会を開会いたします。
 本日は久しぶりの会合ですが、御多忙中のところお集まりいただきましてありがとうございます。
 まず、本日の配布資料の確認をお願いいたします。

○齊藤参事官 配布資料として、資料214をお配りしております。これは「労働審判法」でございます。
 資料215は、「山川隆一委員提出資料」でございます。
 参考資料として4点ほど配布させていただいております。
 「労働審判員推薦スキーム」と題するペーパーでございます。
 それから、「判例タイムズ」1143号に掲載されました「座談会 労働訴訟協議会」の記事を配布させていただいております。
 同じく「判例タイムズ」1144号の「『労働事件審理ノート』連載にあたって」の記事を配布させていただいております。
 それからもう1点、NBL789号の抜き刷りでございまして、「新しく誕生した労働審判制度について」という記事でございます。
 資料は以上でございます。

○菅野座長 それでは、本日の議題に入ります。
 本日は、初めに、さきの通常国会で労働審判法が成立いたしましたので、その経過等につきまして、事務局から改めて報告していただくとともに、労働審判制度の円滑な施行に向けて、裁判所、労使等の関係方面において行われている議論の状況等についても、関係の皆様から御報告をいただきたいと考えております。
 その次に、昨年、当検討会での議論を受けまして、労働関係事件の訴訟手続について、裁判官、弁護士等の関係者の間で「労働訴訟協議会」を開催して、実務的な御議論をいただいておりましたが、先般、その協議の結果が取りまとまったとのことですので、その内容について関係の委員の皆様から御報告をいただきたいと考えております。
 それでは、まず労働審判法の成立の経過等につきまして、事務局から御報告をお願いいたします。

○齊藤参事官 御報告申し上げます。
 労働審判法成立の経過につきましては、平成15年8月、「労働関係事件への総合的な対応強化についての中間取りまとめ」が行われ、この中で、労働調停の在り方と雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度の導入の当否の2つの検討事項を総合的に議論した結果として、「裁判所における個別労働関係事件についての簡易迅速な紛争解決手続として、労働調停制度を基礎としつつ、裁判官と雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者が当該事件について審理し、合議により、権利義務関係を踏まえつつ事件の内容に則した解決案を決するものとする、新しい制度」、すなわち仮称「労働審判制度」の導入が提言されたことが、大きな節目となりました。
 その後、仮称「労働審判制度」の具体的な制度設計についてさらに検討が進められ、昨年12月に「労働審判制度 (仮称) の概要」が取りまとめられました。
 これを踏まえまして、司法制度改革推進本部において立案作業を進めました。その結果、平成16年1月27日の第15回顧問会議で立案の方向性について了承をいただき、さらに本部決定を経て「労働審判法案」は、本年3月2日に閣議決定の上、同日、第159回国会に提出されました。
 国会での審議状況につきましては、まず、衆議院においては、同月16日に法務委員会に付託されて審議が行われ、同月23日に全会一致により可決されました。なお、法律案に関して3項目からなる附帯決議が付されております。その上で、同月30日に本会議で全会一致により可決されました。
 その後、参議院におきましては、4月22日に法務委員会に付託されて審議が行われ、同月27日に全会一致により可決されました。なお、法律案に対して4項目からなる附帯決議が付されております。また、委員会での審議におきましては、本検討会に関わっていただきました社団法人日本経済団体連合会司法制度労働検討部会部会長の小島浩さん、UIゼンセン同盟会長の髙木剛委員及び石嵜信憲委員のお三方に対しまして、参考人としての意見聴取が行われています。その上で、本法律案は翌28日に本会議で全会一致により可決され、成立いたしました。
 労働審判法は、平成16年5月12日に法律第45号として公布されております。なお、この法律は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において、ただし、労働審判員の任免に関する規定である第9条については1年6カ月を超えない範囲内において、政令で定める日から施行されることとなっております。
 検討会での検討から、立案段階、国会審議に至るまで、検討会委員の皆様には多大なご尽力を賜り、まことにありがとうございました。また、関係の機関、団体を初めとしまして多くの皆様からもさまざまな御協力を賜りましたことに対しまして、深く感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
 以上でございます。

○菅野座長 どうもありがとうございました。
 この件につきまして、特に御質問、御意見等ございますでしょうか。
 ございませんようでしたら、次に、労働審判法の施行に向けた現時点での関係方面の御議論、取組みの状況等につきまして御報告いただき、あるいは意見交換をさせていただきたいと思います。
 労働審判制度の施行につきましては幾つもの課題があろうかと思いますが、主要なものを挙げれば、労働審判員の選任の仕組み、労働審判員の研修の在り方、労働審判制度の広報宣伝といった点が主なものではないかと思われます。そこで、本日は、これらの点につきまして特に関係が深いと思われる方々から一通り御説明をちょうだいした上で、若干の意見交換等を行いたいと思います。
 まず、労働審判員の選任の仕組みについてですが、一番御関係が深いのは最高裁ですので、まず最高裁から御説明をお願いいたします。

○定塚最高裁判所事務総局行政局第一課長 最高裁判所事務総局行政局第一課長をしております定塚でございます。よろしくお願いいたします。
 まず最初に、労働審判制度という新しい制度を生み出したこの検討会、菅野座長を初めといたします各委員の皆様の御努力に深く敬意を表する次第でございます。国会審議は山崎事務局長が獅子奮迅の活躍をされていたわけでございますが、国会でも非常に評判のいい制度でございました。野沢法務大臣は、この法律が一番いいのではないかと言っておられるくらい評判のいい制度でございました。裁判所といたしましても、是非よい制度として運用できるように頑張っていきたいと思っております。
 労働審判制度を預かる裁判所、これから運用していく裁判所といたしましては、この制度の成否のかぎは、2つの点が握っているのではないかと考えております。1つは、先ほど座長からお話がございました選任・研修、労働審判員にいい人を得られるかどうかという点だと思っております。もう1つは、3回という限られた期日できちんと審理を行って判断する仕組みができるかどうかということだと思います。1つ目の選任・研修の点につきましては、労使の団体の方々がどのように御協力していただけるか。ここに大きなポイントがあるのではないかと思っております。2番目の3回という期日でうまく審理できるかにつきましては、弁護士の先生方、あるいは裁判所の法曹関係者の努力にかかっているのではないかと思っております。いずれにいたしましても、労使の団体あるいは弁護士の先生方、裁判所のいずれかがやる気を失えば、この制度は失敗するのではないかと思っております。
 お手元にお配りさせていただいたNBLという企業法務向けの雑誌、私と局付の男澤で書かせていただきまして、7月15日号に載せていただいたものでございますが、この冒頭部分に3つの期待を書かせていただきました。労働審判制度自体は、個別的な労働紛争を迅速に解決する、あるいは労使の力をお借りして解決することに注目が集まりがちですが、それだけではない。むしろそれ以上のものとして、2つの大きなものがあります。1つは、労使自治の基盤を築くということでございます。まさにこの制度が定着することによって我が国の企業内での労使紛争の解決方法がダイナミックに変革を遂げるのではないか、労働審判の経験者とか研修を受けたたくさんの労使の方々が全国規模で活躍されることによりまして、法規範に従って企業内で自主的に紛争を解決する仕組みが定着し、成熟した労使自治制度が我が国の社会に定着するだろう、そういう期待が込められているのだと思います。それだけに、各方面が真剣になられて、この制度をみんなでいいものにしていこうと考えているのではないかと思います。労使紛争解決コストが大幅に減少して、我が国の産業社会の将来に大きな利益をもたらす制度になるのではないかと考えているわけです。2つ目は、3回の審理がきちんとできるようになることによりまして、これは民事訴訟制度全般に大きな変革をもたらすのではないかというものであります。本日、これから研修、選任のスキームについて話題にされるということですけれども、ぜひとも労使の関係団体の皆様が目先の負担などにとらわれることなく、我が国の労使自治の在り方を変えるスキームにどのように参画していくのかというダイナミックな中長期的視点を踏まえて議論していただければありがたいと思っている次第です。
 選任スキームについてでございますが、お手元に「労働審判員推薦スキーム(メモ)」をお配りしてございます。まず、労働審判員の制度についてですが、平成18年4月施行の可能性が非常に高いということで、それを前提に準備を進めることで考えております。また、労働審判制度は、全国の地方裁判所の本庁で実施する前提で準備を進めているところでございます。労働審判事件の事件数の予測は非常に困難なものでございますが、1,500件程度という予測があります。他方で、多用されると3,000件、あるいは3,600件という数値の予測もあるところですが、一応、事件数は1,500件程度を念頭に置きまして、審判員が月1回程度立ち会うという仮定で計算いたしますと、最初は労使各500名程度を選任し、不足が生じればその時点で新たな審判員を選任して補充したり、近県の審判員が職務代行することなどで対処していければと思っております。また、事件の少ない庁でも、最低、労使各5名程度は確保していきたいと考えているところでございます。
 労働審判制度は、個別労働関係民事紛争を3回以内の期日で公平迅速に解決することを目指すものでございますので、労働審判員は、中立公平性の倫理を身につけるとともに、期日設定など手続運営において迅速性の実現に最大限努力していただく責務があるのではないかという前提のもとで選任スキームを検討させていただいております。
 労働審判員の選任についてでございますが、労働審判員の選任につきましては、公募ではなく、団体推薦の方法によることが適当なのではないかと考えているところでございます。労働審判員に適格な人材、すなわち、知識と経験を豊富にお持ちで、あるいは、中立公正な視点から裁判制度にかかわっていただける方々が我が国のどこにどの程度の人材がいらっしゃるかということにつきまして、これは裁判所には情報がございません。労使団体がそういう情報をよく持っていらっしゃると考えられます。また、推薦とその責任は表裏の関係にございまして、推薦する1つの団体のようなところで基礎的な教育などをどのようにやっていくのかということも含めて、人材の適格性について一定の責任を負う立場になっていただくことになるのではないかと思いまして、推薦制のほうが実際上より広く、より適切な人材を得られると考えられるところでございます。そして、全国の地方裁判所に一定水準以上の審判員を必要数供給しなければならないということでございますので、推薦団体は、全国的に推薦が可能な労使団体と考えるのが適当ではないかと思っているところでございます。
 実際の選任スキームにつきましては、全国的な基盤を持つ労使団体自体が直接の推薦母体になっていただく形もありますが、労使それぞれに全国的な労使団体が統一的な推薦委員会を設けるなどして、そのような委員会に母体となっていただく形も考えられます。アカウンタビリティの点では、後者のほうが望ましいのではないかと思っているところでございます。
 具体的な選任スキームにつきましては、次のようなスキームによることが考えられます。すなわち、最高裁から労使それぞれの推薦母体に対して、この地方裁判所には何人、例えば東京地裁には何人、佐賀地裁には何人というように労働審判員の推薦の数をお願いいたしますと、全地裁分を一括して使用者側あるいは労働者側の推薦母体が適格者を推薦していただけるスキームを考えたい。そして適宜、使用者側あるいは労働者側の推薦母体でその方々に研修等を行っていただいて、最高裁では各地裁に名簿を送付し、基本的にその推薦に従って任命させていただきたいと考えております。
 労働審判員は再任を妨げないことにさせていただいて、任期は2年程度と考えております。ただ、制度の施行当初におきましては、研修等の期間を考慮いたしまして、2年より少し長い期間をとることも考えられると思っております。
 そして、労働審判員は、現役の方のみならず、現役を退いてそれほど期間を経ていないOBの方々を活用していただくことも望ましいのではないかと思っております。と申しますのは、大変お忙しい労働審判員が入られて、その方々のお仕事等のご都合によって期日が先延ばしになっていくようなことがあれば、それは労働審判制度がそもそも予定する3回、数カ月以内で事件の解決をしようという目的が達成できなくなるということでございます。そこで、現役の審判員につきましても、労働審判期日を職務よりも優先するぐらいの気持ちで入っていただければありがたいと思いますし、また、現役を退いてそれほど期間の経ていない、フレッシュな労使の知識経験をまだお持ちのOBの方にぜひ参加していただければありがたいと思っております。
 年齢につきましては、70歳ぐらいが1つの目処ではないか。これは、民事調停委員がそのような仕組みになっておりますので、そのようなことが考えられますが、特別の場合等については例外が認められるようにしたらどうかとも思っております。
 労働審判員の職務等の負担と独自性を考えますと、その人選に当たりましては、労働委員会の労使委員とできるだけ重ならないようにしていただければありがたいと思っている次第でございます。
 労働審判員の推薦スキームにつきまして、今現在考えているのはこのような状況でございます。

○菅野座長 ありがとうございます。
 それでは、今考えておられる選任の仕組みに一番関わっている労使のほうから、現在のお考え、あるいは検討状況をお話しいただければありがたいと思いますが、まず労働側として髙木委員からお願いいたします。

○髙木委員 今、定塚課長から、労働審判員の推薦の枠組みといいますか、考え方のお話がありましたが、そういう考え方を踏まえまして、労働側としては、全国的に推薦責任を負える団体という意味で、連合と全労連を対象団体ということで、全労連の合意もおおむね得て、現在具体的な数字等をどうするか、そのあたりは抽象的かもしれませんが、詰めつつあるところでございます。
 あとは労働団体としては全労協がございますが、これは組織的に全国をくまなく網羅する意味での網羅性のレベルはかなり低かったりしますので、全労協や、どこにも入ってない純中立の組合もありまして、この辺は連合の枠の中で処理させていただくということで、関係組合と調整をしているところでございます。人数割等でまだ若干詰めが残っておりますけれども、おおむね関係組織の理解を得つつある状況かと思っております。
 OBの皆さんにも力を借りなければいけませんし、労働委員会委員との兼務云々の話など、定塚課長から御説明いただいたようなスタンスでやっているのではないかと思っております。
 そういう意味では、推薦責任といいますか、極力レベルの高い状態でスタートに臨めるように推薦し、その後、現在でも厚生労働省等でも御検討いただいております研修のスキームにも、推薦する人はほぼ義務的にとまで言うと語弊がありますが、ともかく研修は受けていただく。受けた後、裁判所のほうにきちんとリストをお持ちする。その辺の段取りについてはまた裁判所に御相談させていただかなければいけないと思っておりますが、研修のスキームも、現在御検討いただいているスキームを前提に対応を始めているところでございます。
 費用の関係等については、受講料はそれぞれ労働団体がカバーする。足代や泊まる必要がある人の関係などは、それぞれの労働審判員を出してもいいという組織にかぶってください、出してくださいということになるのではないか。それについてはこれから詰めなければいけないところが組織的には残っております。
 以上でございます。

○菅野座長 それでは矢野委員、お願いいたします。

○矢野委員 よい制度ができたと私どもも思っております。労使の合意の成果であると思っておりますし、先生方のよいアドバイスも大きなヒントになったと思っております。何とかこれを軌道に乗せて定着させたいと考えているわけですが、そのためには幾つかの条件があると思っておりまして、それをクリアしていくことが必要ではないかと思っています。
 1つは、制度そのものが時代に則した意義があるかどうかということですが、これはまさに今の必要性から生まれたものでありますから、これは全く問題がない。実は、この検討の過程で、もう何年になりますか、いわゆるADRのシステムづくりが始まったときから、地方経営者協会という地方団体の幹部に対して繰り返し説明してきましたから、こういう仕組みは必要なのだという認識は相当強くなってきているし、それに対する協力も得られると私は思っております。2つ目は、定塚課長がおっしゃったように、人材の確保と育成でありまして、これはしっかりした結果を出す必要があると思っております。3つ目は、審判員は、OBであればかなり余裕がありますが、現役を選ぶ場合の職務との調和です。それから財政基盤といいますか、そういうものをきちんと整えて対処することが大事ではないか。この3つを前提といいますか、条件整備のために必要な事柄として考えています。
 選任の問題について考え方を申し上げたいと思います。冒頭お話があったとおり、日本経団連が推薦母体になる。全国都道府県にある47の地方経営者協会に具体的な推薦を依頼する、それをまとめて最高裁に私どもが提示する、こういう仕組みにしたいと思います。他の経済団体がございます。例えば商工会議所とか全国中小企業連合会などの団体との関係については、それぞれが地方組織を持っておりますので、協力が必要であれば地方経営者協会に協力を求める形でゆだねたいと思っております。
 具体的に審判員の推薦基準ですが、どういう人が適格であるかということですね。決め方が難しいと思いますが、もし最高裁規則でそうしたものを定めようというのであれば、それは十分尊重したいと思っておりますので、御説明いただきたいと思っています。
 現在、私どもが考えている人材の確保ということでありますが、基本的には、人事労務管理の知識経験が豊かな人ということになりますので、人事労務部門の役職者やそれを経験した人が一番念頭に浮かぶ候補者でありますが、同時に、労務管理というのはあらゆる管理者の本来的な業務でありまして、むしろ個別紛争が現在こんなに起きている原因は、現場の管理力、現場力といってもいいのですが、それがちょっと欠けてきているのではないかと思っております。本当は各職場ごとにそういう問題が解決されてきたのが、実はこれまでの長い歴史でした。そちらが弱まってきているのではないか。しかし一方では、実はそういうところに人事労務管理者も顔負けの立派な労務管理者がいるわけです。そういうものを経て経営者になった人もいるので、人物本位に選んでいきたいと思っております。
 年齢でありますが、やはり70歳過ぎは原則的にどうかなという気がしておりまして、特に初任資格で70歳を超えているのはやめたほうがいいのではないかと思っております。ただし、OBが60歳代半ばぐらいから、あるいはもっと前から審判員に任命され、何度か再任を繰り返した上で70歳を超える場合はあり得るだろうと思います。しかし原則的には70歳を超えない人を念頭に置いて選んでいきたいと思っております。これは、第一義的には、現役の人事労務部門あるいは現場のライン長を経験した経営者、管理者ということになってくると思いますが、OBも十分活用すべきであると思います。
 労働委員会の委員との兼務も、これは地方によってはあまり制限的に扱わないで、そういうこともあり得ることを念頭に置いて選んでいったほうがいいと思います。
 こういうことを今考えているところでございまして、全国500人ということですので、それを何とか、しかも実力者を集めていきたいと思っております。

○菅野座長 ありがとうございました。
 引き続いて、労働審判員の研修の在り方につきまして、山川委員から御説明をいただきたいと思います。

○山川委員 先ほど来お話に出ておりますように、労働審判制度の施行に当たっては研修が非常に重要でありますので、座長から御指示がありまして、これまでの議論、あるいはさまざまな場面でのお話を整理させていただきまして、このような基本的な考え方で整理できるのではないかということで資料を提出させていただきました。
 研修ということですから、そもそも労働審判員に必要な能力は何かということと、そのためにどういう研修を行うかという2つの要素がまずあるわけです。さらに、必要な能力とはどういうものかという点について、任命の前提あるいは要件として求められる知識経験とは何かということと、任命された後にさらに行うべき研修、あるいは知識経験とは何かという2つの要素にさらに分かれてまいります。
 法律の第9条第2項では、労働関係に関する専門的な知識を有する者のうちから労働審判員を任命するとなっておりますので、したがって、労働関係に関する専門的な経験と、それに裏打ちされた労使慣行等の知識については、そもそもそういう知識経験を持つ方を選定するスキームが予想されているのではないかと思われます。
 ただ、もう1つ考えられますのが、労働紛争あるいは個別的労使紛争の解決のための知識というべきものでありまして、個別労使紛争の内容を法的に整理するとどういう法的なルールに基づいて判断をするのか、あるいはどういう解決を行うのかという点についての基本的な知識が、労働審判員として活動するに当たっては不可欠ではないかと思われます。
 こうした点については、別途研修あるいは能力の付与が必要になると思われますが、その場合は、既に労働関係に関する専門的知識経験を持っている方を対象として研修を実施する。その際の観点としては、1つは、そもそも個別的労使紛争の解決は、本来的には労使が自主的に行うことが望ましいという視点があろうかと思われます。もう1つは、先ほども御紹介のありました推薦スキームとの関係で研修の実施が推薦と結びついている点も考慮しますと、労使の関与のもとで体系的な研修を実施する。このように整理ができるのではないかと思われます。
 そのようなことで労使の自主的な紛争解決能力自体がアップする。先ほどもお話がありましたけれども、そういう観点からすれば、いわば労働審判制度の実施を超えたメリットも、こういう研修を行うことにはあり得るというように整理できると思います。
 そうした観点からしますと、こうした労使の自主的な紛争解決能力の養成に向けての研修については、何らかの法的支援の仕組みを考えてもよいのではないかという感じがしております。
 3)については、紛争の解決のための知識ということですが、そこでは労働契約に対する実体法上の知識が基本的に重要になるということではありますけれど、紛争解決そのものについての基本的なスキルのようなものも含まれると思われます。それは紛争における事実の認定の問題、あるいは基本的な法の適用の在り方に関するスキルということも考えられます。これについても、本来的にどういう紛争の解決の仕方をする場合でも、恐らく技術的な事実認定と法の適用が考えられると思いますので、基本的には3)に含まれるのではないかと思われます。
 次が、任命要件を満たす者に対して、あるいは任命された場合に改めてさらに行う研修ということですが、それは法の第9条第1項で、労働審判員は中立かつ公正な立場において必要な職務を行うと書いておりますので、1つは労働審判という手続にかかわる職務を行うに当たっての労働審判手続それ自体に必要な知識が考えられますし、その際も中立かつ公正な立場においてという点での中立公平性の倫理についての研修という2つの要素があり得ると思われます。
 こちらにつきましては、労働審判員特有のトレーニングになるかと思いますので、裁判所によって研修がなされることが原則と考えられる。そのように整理できるのではないかと思っております。
 以上です。

○菅野座長 それでは、山川委員によって考え方が整理されましたが、この中で裁判所による研修が課題として提出されておりますので、このあたりを最高裁でどう考えておられるか、今のところで結構ですので、御説明いただければと思います。

○定塚第一課長 山川委員から整理していただきましたとおりだと思っておりますが、知識経験の豊富な労働審判員の方々を推薦していただいて、その方々を任命させていただいた後、非常勤の公務員として行動していく中立公正あるいは倫理等について裁判所のほうで研修させていただく。あるいは、労働関係についての知識経験が豊富な方で、その知識を労働審判制度という裁判所が行う手続の中でどのように発揮していただくのか、その労働審判手続の仕組み、内容等を御説明させていただき、研修によって知識を補充させていただく。こういうことを考えております。これは任命していただいた各地方の地方裁判所単位で行っていくのが、労使の審判員にとってもいいのではないか、わざわざ最高裁で一括するということになりますと大変だと思いますので、今のところ、各地方裁判所単位で研修をさせていただければと考えております。
 以上でございます。

○菅野座長 3)の「労働法、労働契約に関する法律知識等」のあたりで、ここに「労使関与の下で体系的な研修を実施」と書いてありますので、これから詰めて検討していかなければいけないと思いますが、今の時点でのお考え等があればお聞かせいただければとも思います。
 髙木委員は先ほどおっしゃっていましたので、それでよろしいですか。

○髙木委員 はい。

○菅野座長 矢野委員はいかがでしょうか。

○矢野委員 研修は非常に大事なことなので、私どももいろいろ考えているのですが、3種類の研修があるのではないかと思っております。1つは最高裁が行う研修でありまして、ただ今の御説明ですと、地方裁判所単位でやるということで大変結構なことではないかと思います。わざわざ遠くまで出かけていって、時間的にも経費的にもかけるよりも、やはり地元でやるのがいいと思いますので、賛成します。
 もう1つは使用者が独自でやる研修でありまして、これはぜひ充実させていきたいと思っております。これは当然、経費的には自前でやる部分でありますが、地方の経営者協会ともよく相談しながら、どういうプログラムをつくるかということをやっていきたいと思います。現在まで労働委員会の使用者委員の研修会をやっておりますが、なかなかいい成果を上げていると思っておりまして、この審判員についてもそういう形をとりたいと思っております。
 3つ目が、山川委員からお話のあった公的補助を受けて行う研修ということであります。その範囲や実施主体、方法などについてはまだ決まっていないようでございますけれども、当然それについても、実現可能性のあるものをつくり上げていく必要があると思っております。
 本来、国の制度改革によってやる制度でありますから、原則として国がやるべきものだと思いますが、そうは言っても、審判員あるいはその候補者、自力での企業内解決能力を高めるための研修になりますと、例えば、講習料について受講者が応分の負担をすることが必要だろうと思っております。このやり方にもよるのですが、それぞれ忙しい人を任命するわけですので、まとめて全員を集めるのは期間が長くなるほど難しいのではないかと思っております。人によっては、基礎的な知識の研修は必要ない人も必ずいるはずでありまして、そうなりますと、こうした形での研修を審判員任命のための必須科目とするのは、適当ではないのではないかと今のところは思っております。どういう団体にこれを委託するか、いろいろな議論があるのは私も承知しておりますが、受講料の一定の個人負担はともかくとしまして、一番問題になるのが、研修に伴う宿泊費、旅費の負担であります。これは何とかゼロかミニマムにする、実際問題ゼロは無理にしても、宿泊を伴わない研修であれば費用は知れたものでありますから、そういう方法を考えるべきだと思います。裁判所の研修が地裁単位で行うというのは非常にいいヒントでありまして、実は補助金による研修についてもそういう方法を考えるべきではないか。1つは通いの研修を考える必要があると思っています。また、その場合、今のようなIT化のご時世でありますから、eラーンニングをしたり、あるいは通信教育、ビデオ教育など、教材と講師の選定を誤らなければレベルの維持向上については問題ないのではないかと思っておりますので、そういう検討もこれから進めていくことが現実的ではないかと思っております。
 実は、今日はまだおいでになっていない石嵜委員とも話し合いまして、この時間までに間に合えば御本人がやるはずだったのですが、まだ姿をあらわしておりませんのでちょっとご紹介しておきますと、例えば、地方の弁護士会も協力を惜しまないと言っております。どういう形になるかは別といたしまして、この研修をまとめて元請する団体との関係をどうするかということはありますけれども。あるいは、地方の経営者協会や連合、労働組合も一緒になっていろいろな協力ができるのではないかと思っております。講師の派遣や地元の講師を使うなどの工夫をすれば、私が申し上げましたような通いの研修が実現するのではないかと思います。意義ある制度だから経費はみんなもてというのは、お気持ちはわかるのですが、そうはいかないのでありまして、例えば、OBを選びますと、私は、出身の会社は払わない、OBは自己負担になるだろうと思います。その経営者団体がもてばいいということではあるかもしれませんが、現実問題としてはそうはならないと思っておりますので、今申し上げましたようなことをぜひ考慮して、いい仕組みをつくっていく必要があると思います。私どももよく考えて、また機会があれば提言をしたいと思っております。
 研修については以上のように考えております。

○菅野座長 ありがとうございます。
 それでは、次に、労働審判制度の広報宣伝につきまして、差し当たりは日弁連関係と最高裁が考えられますので、日弁連関係で鵜飼委員からお願いいたします。

○鵜飼委員 日弁連では、法律の成立を受けまして、具体的な今後の施行までの課題及び施行後の課題について検討し、取り組んでいきたいと考えておりまして、そのスタートを切った段階です。日弁連はいろいろボールを投げましたけれども、いよいよ我々にボールが投げ返されてきたわけですから、先ほど定塚課長が言われましたが、非常に重い責任があることを痛感しております。
 先ほどの定塚課長の話にありましたように、国会等の議論でも、特に、今後多くの人が利用できるようにしなければいけないと言われておりますし、そうしないと、この制度は生きてきませんので、法曹の一翼を担う弁護士及び弁護士会の役割、責任は非常に重いと考えております。委員会の中にプロジェクトチームをつくり、検討を始めている段階でありまして、委員会内部での認識はかなり深まっておりますが、弁護士会全体からしますと、この制度に対する認識は広まっているということではない状況があります。したがって、とりあえずは、この制度の目的、内容、手続等について、とにかく弁護士会内部での周知が必要であると考えております。9月には日弁連の理事会がありまして、その場をお借りいたしまして、少し時間をとっていただき、私と石嵜委員と2人出席して、労働審判制度の趣旨、目的、内容、手続等について説明し、全国の弁護士会会長や日弁連の理事が集まりますので、その場でこの制度についての意義を理解していただき、弁護士会の役割等について議論していただいて、日弁連及び単位弁護士会レベルでの取組みをスタートさせたいと思っております。
 さらには、先ほどの定塚課長のお話にありましたように、3回の期日で労働事件を解決するということは、よほど単純な事件は別といたしまして、ともすれば労働事件は長くなりがちな傾向がありますので、これを3回でというのは、今までは意見を言う側だったわけですが、具体的にそれを受けとめてやろうということになりますと、かなり大変だなと痛感しております。そのためにも、この意義を弁護士の間できちんと理解し合うことが第一義的に必要ですし、さらには、専門性の強化が必要になってまいります。
 そこで、今考えておりますのは、日弁連で、来年1月15日にサテライト研修を行いまして、全国に中継いたしまして、労働審判制度についての意義だけでなく、具体的に3回以内に終わらせるにはどうしたらいいかということも含めて、ケーススタディ的なものを含めた研修を行い、それをスタートにしたいと思います。その段階では最高裁の御協力等をいただきまして、裁判官にも参加していただく。それには、各地の単位弁護士会レベルで同時中継いたしますので、各地の裁判官もできれば御出席いただければありがたいと思っております。その後は、キャラバン隊という古めかしい言葉ですけれども、各ブロック単位、各単位弁護士会単位に労使の弁護士等で編成隊を組んで行こうではないかという話があります。やるほうは大変なのですが、これを具体化していきたいと思っております。
 私自身の認識では、本来、この手続は本人でも申し立てられる簡易な手続であるべきだとは思いますが、いずれにしましても新しい制度でありますし、3回以内に終わらせるのは大変なことですので、少なくとも軌道に乗るまでは弁護士が代理人になる、単純明解な事件は別として、多くの事件については代理人になるぐらいの心構えで臨む必要があり、その体制もつくる必要があると思っておりますので、そういうことも全国に訴えていきたいと思っております。
 さらに、来年から再来年にかけては、一般の人たちに対する広報宣伝が必要になってくると思います。まさに利用する人たちがこの制度を利用しようという気持ちになりませんと、我々だけが頑張ってもしようがありませんので、そのための広報宣伝の取組みは、弁護士会の仕事でもあろうと思っております。パンフレットやビデオ、あるいは集会、シンポジウムを企画するのは、来年から再来年のテーマであろうと思います。最高裁も、来年度にパンフレット等を予算化するということですので、これも協力させていただきながらいいものができればと思っております。
 その辺の関係でいきますと、アクセスの問題で、一般の人たちが利用できるように、定型の申立書や答弁書、あるいはマニュアルも何とかいいものをつくっていきたい、事件類型ごとにつくりたい。これは自己破産や個人再生で裁判所はわかりやすい書式をつくっていらっしゃいますし、それを一般の人が使える道を開いておりますので、何とかそういうものをつくっていきたいと思っております。できれば、それを各相談窓口に置いて、労働審判にふさわしい事件、あるいはそれを使いたい人にとっては使い勝手のいいものにしていきたいと思っております。
 最後に、これはいろいろな関係団体の協力が必要になってくると思います。日弁連段階でも、既に最高裁との話し合いもインフォーマルにはしておりますが、日弁連、単位弁護士会レベルで裁判所との協議、連携、あるいは労使団体との協議、連携、さらには行政、地方労働局、総合労働センター、あっせんなど個別紛争を扱っている機関との情報交換や連携、労政事務所との協議も、日弁連段階だけではなく各単位弁護士会段階でもできればやっていきたい。これも来年から再来年にかけての大きなテーマではないかと思います。
 いずれにしましても、やることは多く、たくさんの課題がございます。しかし、この制度の一翼を担う弁護士、弁護士会として何とかこれをやり遂げたい。まず第一段階としては、弁護士会内部での周知徹底を図りたいと考えています。

○菅野座長 ありがとうございます。
 それでは、最高裁からお願いします。

○定塚課長 鵜飼委員がおっしゃるように、3回で審理していく仕組みは非常に画期的なものというか、普通にやっていけばできない、今までの常識ではなかなかやっていけない、ある意味で常識を覆すような仕組みでございますので、弁護士会で今までの慣行を変えていくのだという力強いメッセージとして、こういう企画ということでいただきましたので、とても心強く思っている次第です。裁判所といたしましても、労働紛争につきまして専門的に処理する新しい仕組みが全国に広がるということで、きちんとしたサポート体制をつくっていきたいと思っているところでございます。
 基本的には、まず、審理のイメージは、これから最高裁規則で制定していきます。最高裁規則で、3回でできるイメージはこういうものだろうということを作成いたしまして、それを執務資料、あるいは解説書ということでどんどん周知させていきたいと思っております。あるいは、3回の期日でどのように審理すればいいか、これは裁判官の中でもいろいろな考え方があると思いますので、協議会などを行って、この制度の趣旨、目的に沿ったうまい審理方法ができるようにやっていきたいと思っております。
 先ほど鵜飼委員から、パンフレットなどというお話もございました。このあたりにつきましては、弁護士会との協力が重要です。弁護士会と十分に連携を図りながら、一般の方々への周知について裁判所も頑張っていきたいと思っております。
 以上でございます。

○菅野座長 ありがとうございました。
 それでは、選任の仕組み、研修の在り方、広報宣伝等の主な課題について関係の方々からの御説明を一通り伺いましたので、関連して、施行に向けた課題についての意見交換をしていただきたいと思います。

○髙木委員 ちょっといいですか。法律の施行に向けて1年半とか2年以内とありますが、それで察しがつくことかもしれませんが、具体的な作業のスケジュールは、目処は大体このぐらいまでなのだと、逆算すればわかることなのかもしれませんが、例えば、推薦しなければならない人たちのリストはいつごろまでが目処なのか、あるいは、研修は大体いつごろまでに終えておいてほしいなど、ここの作業にかかわるポイントとなる節目は一応押さえておいていただいたほうがいいのではないでしょうか。
 そのことにも関係するのですが、広報の関係で、私どももお盆休みが明けたぐらいから順次説明会をやって歩かなければいけないのですが、説明会等で使う教材はそれぞれ勝手につくればいいのか。ただ、勝手につくると勝手なことを言うかもしれないからというので、この問題についてはおおむねこういう内容で説明したらどうかみたいなものをつくるほうが、それぞれ付加しなければいけないところは付加して使えばいいのではないかと思ったりしますので、説明教材などは、できるだけ早めにつくっていただけるといいのではないでしょうか。
 公務員の労働紛争について、労働審判制度は、公務員も例えば現業とか、あるいは郵政の非常勤の短時間職員、有期雇用ですが、こういうところで、例えば雇いどめ等についての紛争が起きたとき等は、事件の内容を実質的に見て個別労使紛争だという感覚でとらえて、この制度の対象にしていいという理解でいいのか、それについて結構問合わせが多いものですから、どういう考え方でいたらいいのか一度整理しておいていただきたいと思います。
 最後に、今後追加して検討を加えなければいけないような事態が出てくるのか出てこないのかよくわかりませんが、お聞きするところによりますと、この検討会は今日で最後というお話なので、そういう場合どこで処理していただくのか、どこにお話をお持ちしたらいいのかだけでも教えておいていただければと思います。
 以上です。

○菅野座長 御質問も含まれていましたので、事務局で答えられることがあれば答えていただければと思います。

○齊藤参事官 それでは、私から一、二お答えします。
 公務員の労働事件の関係でございますが、私どもは、行政事件という形で切り分けられるものは行政手続ないしは行政訴訟手続でと考えております。ただし、公務員という属性だからといって、すべて労働審判の対象にならないというわけではありませんので、特に現業の関係で短時間労働に従事していらっしゃる方々の場合にどうかという点などは、施行に向けていずれクリアにしなければいけない事柄だと思いますので、ぜひきちんと検討させていただきたいと思います。今日は詳細に即答する準備はございませんので、そこは御容赦いただきたいと思います。
 最後の御質問で、新たな問題が生起した場合にどうかということですが、司法制度改革推進本部は11月まで存続しますので、何かあればまずは御連絡いただいて、施行に向けた事柄ということで、実施主体である最高裁等と連携して対応できることであれば、そういう方向で対応させていただきたいと思います。特段の事情があって、是非とも労働検討会を再度開かなければいけないというようなことは、慎重に判断して対応させていただきたいと思います。

○菅野座長 作業のスケジュールは、最高裁で御検討の段階でしょうか。

○定塚課長 いつごろまでに推薦したらいいのか、あるいは、それまでにどう研修したらいいのかということでございますが、髙木委員からは逆算するとというお話がありましたけれども、平成18年4月施行をうまくスタートするためには、その前に、裁判所として、先ほどのような研修をしたい、その前に任命手続を行うということを考えますと、前の年の秋から初冬ぐらいまでに推薦のリストをいただければというのが、今のところの感触でございます。

○髙木委員 前の年というのは今年になりますか。

○定塚課長 いいえ来年です。

○髙木委員 1年6か月以内に任命というのがあるので。

○定塚課長 おっしゃるように、法律の附則第1条で、第9条の規定は公布の日から1年6か月を超えない範囲内で施行されるということで、多分、来年の秋に任命関係の手続は施行できると思います。ですから、その時期までにいただければ一番ありがたいのですけれども、秋を少し超えて、人事のほうの期間あるいは研修の期間との関係で、正確には検討しておりませんけれども、秋あるいは初冬ぐらいまでの間に推薦のリストをいただければ、私どものほうで任命手続あるいは研修の手続ができるのではないかと、今の段階では考えております。

○菅野座長 広報宣伝の教材といいますか、労働組合あるいは労使双方が行うのに利用可能なものが裁判所なりどこかでつくられていくのかなど、その辺はどうですか。

○定塚課長 まず、現段階ですと、法律の解説というか、法律の概要をまとめたものになるのではないかと思います。その後、私どもも規則をつくりました暁には、規則の解説のようなものは出していこうと思っております。今の段階ですと、多分、法律の解説になるのではないかと思います。「季刊労働法」に村中委員が書かれた論文などいろいろございますので、そういうものを利用させていただくのもいいのではないかなどと思っております。規則のほうに運用手続のものも出てきますので、そういうものは一冊の資料なのか、あるいは雑誌に発表していくのか、順次準備していきたいと思っております。

○菅野座長 弁護士会は、何か考えておられますか。

○鵜飼委員 来年のテーマとして考えているものですから、今のところは考えていません。

○髙木委員 いずれにしても、具体的な推薦というか、選任の手続を進めていかなければいけませんから、そのときに、少なくとも、こういう制度だとわかって推薦してもらわないことには始まらないと思うんですね。そういう意味で、それぞれやれと言われればやりますが、そう乱暴な理解で説明しないつもりですけれども、何かあれば使わせてもらえばいいのかなと思っています。矢野委員のところは別途つくられますか。

○矢野委員 まだこれから検討しようと思っているのですが、制度の仕組みなどを書いたものは、統一したテキストがいいですね。それを骨組みにして、それぞれもし必要があればつくろうと思っていますけれども、どうしますかね。

○定塚課長 労使の審判員の推薦向けのパンフレット等は、なるべく今年度中に、裁判所の方で、今年度の予算でつくっていこうと思っております。手続の規則などは、まだこれから規則制定諮問委員会等を開いてやっていくものがございますので、先ほど髙木委員がおっしゃったように、今すぐに秋口に間に合うようにというとちょっと苦しいのですが、規則をつくっていく作業とあわせて、今年度中に何とか選任用のパンフレットをつくっていきたいと思っています。

○髙木委員 でき上がってきたものを使う時間がないということではつまらないので。

○矢野委員 先ほど申し上げたような基準でどんどんやっていいということであればやってしまいますが、どこかまずいところがあるとまずいので、何かあるといいと思っているんですが。

○定塚課長 推薦基準等につきましては、最高裁規則では、細かいところ、例えば経験が15年以上とかそういうことは規則では書かないことになりまして、そういう意味では、労使の推薦母体の方々と、どういう内容にするのかということについてぜひ御相談させていただきたいと思っております。

○矢野委員 私どもは、年齢の下限とか経験年数は入れないつもりです。上の方だけ決めておけばいい、あとは人物本位で決めたいと思うんですね。結果としては、そんなに若い人は入ってこないだろうとは思っております。10年たてば一人前という言葉がありますけれども、しかし学校を出て10年だと32歳ですから、何かもめごとがあったときに説得力のある答えが出せるのかということがありますので、それは常識的に考えてもう少し上だろうと思っています。下限を設ける考えは、私どもの人選から言うとふさわしくないだろうと思っています。
 それから広報活動は、私どももそれなりいろいろやっているつもりですが、裁判官にも講師などお願いできますか。どこもかしこもとは思っていませんで、ところどころという感じなのですが、もしうまく合えば、例えば、東京や福岡がやるときなど。

○定塚課長 もちろん、基本的に、時間や場所がうまく合うようであれば協力させていただきたいと思っています。

○矢野委員 みんなが全国から集まったときの方がいいのではないかと思っています。分散してPRするよりも、その方がいいかなと思っています。質問も出るでしょうから。また御相談させていただきます。
 もう1つ、弁護士会がいろいろな意味で研修の面で協力していただけるのではないかということを石嵜委員になりかわって申し上げたのですが、石嵜委員から直接お願いします。

○石嵜委員 昨日、私は日経連に出て、本部の事務局にもお話ししたのですが、今まで言っていた構図の中で、いわゆる8ブロックに集めるときの費用をどこから捻出するのか、教材の部分だけなら問題はないのですが、そこに集まる人たちの交通費や宿泊費は相当膨大な金額になると思われるのですけれども、この負担について話がついているかどうかという御質問をしたと思います。これがもし本当につかないということで、この金額が用意できないとすれば、それについてどういう補足を考えるかというと、これは、結局は地方分権で単位弁護士会の協力を得てやっていくしかない。裁判所と使用者の地方経協と地方の労働団体の3つで中間で接着剤になり得る可能性があるのは、各地方の弁護士会ではないだろうか。もちろん弁護士会総意ではありませんので、私が常にそう言っているだけでして。しかし、弁護士会であれば、裁判所とのおつき合いもあるし、使用者側の先生がいれば地方経協とのつながりもあるし、労側の先生がいれば連合とのつながりもある。そういうところで弁護士会が核になって、その地域の先生たちを中心として何らかの形で各地域で研修ができないものか。そうすればあごあし代もありませんし、加えてもう1つ、あの構図で2日間と4日間で6日間になるのですが、どうしても企業側から現役を集めたい。企業側から集める6人の現役に、一括して6日間も拘束できるのだろうか。これが各単位庁でやるとすれば自宅から通うこともできるので、日にちを6日連続という形にせずして、2日ずつでも分けられるのではないだろうか。こういうことをすべて考えたときに、各単位庁でやることも1つの考え方としてあるのではないかと、昨日日経連で申し上げたつもりですし、これは日弁連でも、鵜飼委員にもそう言っています。鵜飼委員から、そんなことができるかといつも怒られて、弁護士会はそこまでやらないとおっしゃっているけれども、この問題は、最後は各単位庁の責任なのですから、そうするとああいう大きな形で研修ができればそれにこしたことはないし、それに反対しているわけではないんですが、ただ、教材の一部をもつならば、昨日、小島先生に説明を受けたときには、上が6万円もってくれてここは3万円でいいとかそういう話だったのですが、そのぐらいなら日経連でもみんなを集めて対応できても、500人のホテル代と交通費をどうするのだろうと。私が一番気になっているのは、常にこの問題ではここだけなんです。この問題は解決したのですかとお伺いすると、何となくうまくいきそうだと説明されたもので黙っていたら、昨日日経連へ行ったら、そんな金額はちょっともてという話になったものですから。
 仮に8ブロックという形でやるとしても、沖縄の方はどうするかとか、地域で集まれないところについてどういう補足をいれるかを考えていかないと難しいのではないかという思いを持っています。日弁連にどこまで手伝っていただけるかはわかりませんが、9月17日に日弁連で理事会が行われます。各単位弁護士会の会長がお集まりになりますので、そこに鵜飼委員と私が出ていって、各弁護士会できちんとやっていただかないとこの問題は動かなくなるであろうと話しに行きますが、そのときにも、そういう意味での地域に対する弁護士のサービスの意味でも、各弁護士会が中心となる何らかの研修にでも参加してできないのだろうかというお話をしてみたいと個人的には思っています。

○菅野座長 労働審判員の研修は非常に重要な課題で、選任とも関連しています。しかも検討すると、石嵜委員も言われましたが、実際にいろいろな問題が起きてきますので、これは関係のところで実際的な問題としてよく詰めていただくということで、検討会の方はそういうお願いをするということにさせていただければと思います。
 そのほかに、施行準備関係で御意見等があれば承っておきますが。

○鵜飼委員 各地の裁判所の労働審判員の割当ては、イメージは大体でき上がっているのでしょうか。

○定塚課長 1,500件で割り振っていくことでよろしければ、割振りはでき上がっております。

○鵜飼委員 東京地裁は何名とか。

○定塚課長 ええ。ですから、今日こういう形で検討会でまとまっていくということになりましたら、また具体的な数字を労使の団体にお願いして、こういう形でいかがでしょうかと御相談させていただきたいと思っております。

○菅野座長 そのほかにいかがでしょうか。
 なければ、労働審判法の施行に向けてはさまざまな課題がありまして、今日その主なものについてはお話しいただき、現時点での取組みの状況等も御説明いただきましたので、今日の御説明あるいは御意見を踏まえて、関係の方々には今後もよろしく御尽力をいただきますようにお願い申し上げます。
 次に、労働訴訟協議会の協議結果につきまして御報告いただきたいと思いますが、石嵜委員、よろしくお願いします。

○石嵜委員 労働訴訟協議会の座談会が平成16年1月17日に行われまして、「判例タイムズ」の2004年4月15日号に掲載されました。第2の協議概要にありますように、訴訟の提起段階、タイムターゲットの設定、争点整理段階、人証調べの段階に分けて、労働訴訟の在り方について、弁護士と裁判官が協議した内容を発表させていただいております。
 これと並行して私の方で興味を持っておりますのは、こういう協議があったからだと思っておりますが、「労働事件審理ノート」があります。東京地裁の裁判官の方々が、自らペンをとって、「労働事件審理ノート」の連載をしておられます。1回目だけのものを持ってまいりましたが、最初に、地位確認等請求事件として、解雇一般論という形で、要件事実から始まる説明をしてあります。そして最後に、訴状モデル、答弁書モデルという形で、訴状と答弁書のモデルを裁判官の方から出していただいています。これを参考に今後考えてくださいとおっしゃっていると思うのですが、こういうものが連載されておりまして、相当数の回数を重ねております。
 このように、労働訴訟協議会で議論し、かつ、裁判官の方々がこういう形で訴状や答弁書のモデルをつくって発表していただけるところまでいっております。労働訴訟協議会は、今年の4月1日に東京地裁労働部、11部、19部、36部のメンバーに一部入れ換えがありましたので、新しいメンバーの方々と、2004年7月6日に、また新しく2004年度第1回労働訴訟協議会を開催しております。この労働訴訟協議会では、まず、保全、仮処分の関係と計画審理の2つをテーマに、裁判所と弁護士側で協議することになっております。日程的には、労働審判制度をどうするのかということもあったのですが、施行が2006年4月で時間に少し余裕があるので、先に保全と計画審理をやる、保全と計画審理の総論を1回やって、その後に各論を数回やりたいということで合意ができております。そして、総論の関係では、2004年10月4日に保全の総論、12月17日に計画審理の総論と、ここまで日程ができておりまして、今後もこの協議を進め、そこで成果物があればどうするかわかりませんが、前回と同じような形で「ジュリスト」等に発表する形をとっていくと思っております。
 これが大体の御報告です。

○菅野座長 ありがとうございました。
 それでは、ただ今の御報告につきまして、御意見、コメント等はございますでしょうか。

○山口委員 労働訴訟協議会の関係では、石嵜委員が言われたような感じで、ある程度平均的な労働事件について、訴訟手続の流れに従った形で議論して、争点整理をした上で集中的あるいは計画的に証拠調べをしていくということで基本的なコンセンサスが得られたのは非常に大きな意味があることだと思っております。今後の日程につきましては、先ほど石嵜委員が言われた形でやっていくと思いますが、この協議会での成果物についてもさらに検証していただいて、東京だけでなく、全国の地方裁判所にもこういう成果が広げられていけばありがたいと思っております。
 審理ノートの方は、必ずしも労働訴訟協議会とは関係が、全くないとは言いませんけれども、東京地裁は専門部でありながら、今まで裁判官の交代のときの事件処理、あるいは基本的な考え方についての引継ぎが十分ではなかったということがありますので、この引継ぎを何とかスムーズにしたいということが1つと、もう1つは、専門部や集中部のない地方の裁判所の裁判官は、労働事件は本当にたまにしか来ないので、具体的にどういう形で審理していいかというイメージがなかなかつかみにくい。そういう意味で言えば、地方の裁判所の労働事件にあまりなじみのない裁判官にも、こういう基本的なノートのようなものがあれば大体の争点、あるいは大体の訴訟はどういうものがあるかということがわかりやすい、とっつきやすいだろうということもありまして、ぜひノートのようなものをつくってほしいという要望がかねてからありましたので、基本的な事件類型別ごとにつくってみようということでできたわけです。
 このノートは連載中ですが、連載がまとまった後は手直しをして、来年春ごろには1冊の本として出版したいと思っておりますので、それも参考にしていただければと思います。

○菅野座長 ありがとうございます。
 それでは、御質問等がありましたら。

○髙木委員 これで大分変わりますか。

○鵜飼委員 変わります、と言うより変わらなければならないと思います。東京地裁での協議ですので、協議に参加したメンバーの間では、かなり共通認識が進んだのではないかと思います。これからの課題は、まさにどれだけ多くの人に意見を聞いて、さらにその認識を共有化していくかが次のテーマではないかと思います。それができないと、労働審判制度は実際に機能しないということもありますので、労働審判制度とは別のテーマでやっておりますけれども、労働審判を機能させるためにもこういう協議の場が必要であると思っています。

○山口委員 私も全く同じで、変えていかなければいけないという意識が、この協議会を通じて、裁判所と労使の方々で共通化できたのが一番大きな財産だと思います。そういう意味では、今までのような訴訟のやり方ではいけない、基本的には十分争点を整理した上でお互いに認識を共有した上で手続を進めていこうと一致できたわけですし、それをやっていこうという思いは皆さん同じなので、ぜひ努力を見守っていただきたいと思っています。

○鵜飼委員 1点だけ補足しますと、法曹内部での話で今までは内部でしか通用しない議論が多かったのですが、少なくとも協議会の中で我々が一番関心を払っていたのは、社会のニーズといいましょうか、そういうものに応えたい。それが裁判所、労使双方の弁護士が何ができるかという議論ができたことではないかと思います。そういうものは必ず次につながっていくと思っています。

○菅野座長 ほかにいかがでしょうか。
 それでは、ございませんようでしたら、労働訴訟協議会の成果につきましては、今日の御説明等を踏まえて、弁護士会を初め、関係の皆様においても十分に周知を図っていただくなど、今後の労働関係事件の訴訟実務の運用改善に向けて一層の御尽力をいただきますようにお願いいたします。
 以上で本日の検討会は終了いたしますが、この際、御意見はありますでしょうか。
 それでは、労働検討会におきましては、2年半の長期間にわたりまして熱心な御協議をいただいてまいりましたが、本日をもって一応の区切りとさせていただきたいと思います。最後に、山崎事務局長から御挨拶をお願いいたします。

○山崎事務局長 一言、御挨拶をさせていただきます。この2年半にわたり、32回というすごい回数ですけれども、座長を初め、委員の皆様方には本当に御熱心な御議論をいただき、おかげさまで法律として成立することになりまして、心から感謝申し上げます。
 この検討会といたしましては、仏をつくるということで一応の任務は終わったことになろうかと思いますけれども、今日、御議論いただいているところをお聞きしておりますと、まさにこれからどのように魂をつめていくか、これが非常に重要であるということで、早速いろいろ行動されていただいておりほっとしておりますけれども、まだまだ詰める余地がかなりあるなという印象でございます。当初の立上げは非常に重要でございますが、問題は同じ人にずっと労働審判員をお願いするわけにいかず、人がかわっていかなければならないということです。どこかでなり手がいなかったというわけにもいかず、継続しなければなりません。継続は力なりでございますけれども、これをどうしていくかというところは、まさに研修にかかってくるわけでございますので、これをきちんと行っていくためにも、皆様方にもぜひまたさらに御尽力をいただきたいと思うわけでございます。
 また、運用の点についても、いろいろな慣行など新たにつくっていくものも多々あろうかと思いますが、皆様方、各界のそれぞれのリーダーでございますので、ぜひそういう点にもお力を貸していただきたいと思うわけでございます。いずれにしましても、この検討を機会に、さまざまなところで労働関係事件についての検討が加えられていくのは大変いいことだと思いますし、また今後もぜひ続けていただくよう、お願いしたいと思います。御尽力、本当にありがとうございました。

○菅野座長 それでは、私からも一言御礼申し上げたいと思います。この労働検討会、労働審判法という単独法と、厚生労働省の方でやられた労働組合法の改正法案の作業のお手伝いをさせていただきましたし、今日御報告いただきました労働訴訟協議会という貴重な議論の場をつくるきっかけをもつくれたと思っていまして、本当におかげさまで成果を上げられたのではないかと思います。特に労働審判制度は、初めて1年間ぐらいは、こういう制度が生まれるとは、どなたも、私自身も考えていなかったのを、一生懸命議論を尽くした上で、みんなの協力によってつくり出したものでありまして、これが今後の労働関係の紛争解決の1つの中心的な制度として発展していけば、私たちとしてはこれ以上の幸せはないという気がいたしております。
 座長として非力で、皆様にいろいろな点で御迷惑をおかけしましたが、皆様の真剣な御議論、御協力と取組み、それと事務局の方々の献身的なサポートによって、何とか今日にたどり着きましたので、心から御礼申し上げます。どうもありがとうございました。
 それでは、本日の検討会はこれで終わりまして、これで区切りとさせていただきます。ありがとうございました。