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労働検討会(第4回)議事録



1 日 時
平成14年5月30日(木) 15:00~18:45

2 場 所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 菅野和夫座長、石嵜信憲、鵜飼良昭、岡崎淳一、春日偉知郎、後藤博、髙木剛、村中孝史、矢野弘典、山川隆一、山口幸雄(敬称略)
(説明者) 井上 幸夫(弁護士)
鴨田 哲郎(弁護士)
角山 一俊(弁護士)
八代 徹也(弁護士)
岩城猪一郎(社会保険労務士)
大野 実(社会保険労務士)(敬称略)
(事務局) 松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官、近藤昌昭参事官

4 議題
  1. 利用者側の立場から見た労働関係紛争処理制度の問題点等に関するヒアリング(1)
    • 弁護士からのヒアリング
    • 社会保険労務士からのヒアリング
  2. フリーディスカッション
  3. その他

5 議 事

○菅野座長 定刻になりましたので、第4回労働検討会を開催いたします。本日は、御多忙中のところ、御出席頂きましてありがとうございます。
 岡崎委員は所用により遅れて出席されるとのことです。
 それでは、まず本日の配布資料の確認をお願いいたします。

○齊藤参事官 まず、資料17でございますが、これは弁護士ヒアリング資料でございます。今日お招きしている4名の弁護士さんのものと、日弁連作成の統計資料が付いております。
 資料18は社会保険労務士ヒアリング資料でございます。内訳はレジュメ、それから資料1ないし4、それに、その他各委員からの質問に対する回答とか補足の資料が付いてございます。
 資料19は、第3回労働検討会におけるヒアリングの概要でございます。これは前にも提出した資料と同様のものでございまして、事務局の責任において要約させていただいたものです。今後の検討の便宜に御活用いただければと思います。
 資料20は、これも第3回労働検討会におけるものですが、フリー・ディスカッションの概要を要約したものでございます。
 資料21は労働検討会の検討事項を御参考までに改めて提出してございます。
 資料22は当面の検討スケジュールの案でございます。
 資料23は、ヒアリングの進め方についての案でございます。
 資料24は、厚生労働省提出資料でございます。
 あとは座席表、本日のヒアリング出席者の一覧表、それから労働検討会委員の名簿、矢野委員の所属、肩書が変わりましたので、その部分を訂正したものでございます。
 また、2002年司法総行動共同要請書等を参考までにお配りしております。
 それから、本日は厚生労働省からは追加の資料を御提出いただいていますが、裁判所に対しましても、資料の提供をお願いしている件があります。これについては、最高裁判所の方で現在、集計作業をしている最中とのことで、次回の検討会までには提出できる見込みであると伺っております。
 以上でございます。

○菅野座長 それでは、本日の議題に入ります。本日は弁護士及び社会保険労務士からヒアリングを行い、その後、ヒアリングを踏まえて、今後の論点整理に向けて若干フリー・ディスカッションを行いたいと考えております。
 まず、本日のヒアリングの進め方について、事務局からの御説明をお願いします。

○齊藤参事官 本日は始めに弁護士からのヒアリングを行いますが、ヒアリング対象者につきましては、あらかじめ石嵜委員、及び鵜飼委員から御推薦をいただきまして、労働者側として井上幸夫弁護士、鴨田哲郎弁護士に、また、使用者側としては、角山一俊弁護士、及び八代徹也弁護士にお願いしております。
 まず、労働者側、使用者側の順でそれぞれ45分程度ずつ御説明をいただいた後、質疑応答や意見交換の時間を50分程度取りたいと思います。
 それから、本日は日本弁護士連合会から労働関係法律相談等の件数推移等についての資料を御提出いただき、御担当の方にも御出席いただいておりますので、この点についての質疑応答等も一応可能でございます。
 その後10分程度休憩をはさみまして、社会保険労務士からのヒアリングとしまして、岩城猪一郎社会保険労務士さん、及び大野実社会保険労務士さんから20分程度御説明をいただいた後、質疑応答ないし意見交換の時間を20分程度つくりたいと存じます。
 本日のヒアリング事項につきましては、あらかじめ委員の皆様から御意見をちょうだいしておりまして、ヒアリング対象者の方に事前にお伝えはしております。ただ、ヒアリング時間等の関係で、頂いた御意見についてプレゼンテーションの中では全部に御説明はしきれないこともあろうかと思いますので、適宜質疑の中で触れていただければと思います。
 以上でございます。

○菅野座長 それでは、ただいまの御説明のような形で進めさせていただきたいと思います。
 まず最初に弁護士からのヒアリングを行います。本日は労働者側として井上幸夫弁護士、鴨田哲郎弁護士、また、使用者側として角山一俊弁護士、八代徹也弁護士にお越しいただきました。本日はお忙しいところ、労働検討会のヒアリングにお越しいただきまして、誠にありがとうございます。
 早速でございますが、労働者側のお二人から着席のままで結構ですので、45分程度の御説明をお願いいたします。

○井上氏 弁護士の井上と申します。労働側の代理人の立場から御説明を申し上げます。
 最初に私が申し上げて、次に鴨田弁護士から説明と御報告をしたいと思います。
 ちなみに私は弁護士になって今年で25年目で、労働者側の代理人として多くの労働事件を担当してきました。一応今日は私の経験から見た労働裁判の現状について御報告申し上げたいと思います。
 最近の労働相談、労働事件の特徴ということなんですが、資料2は、日本労働弁護団が行っている「リストラ110 番」の資料であります。私が考えていたものとちょっと違ったものが入ったので、考えていたものを、よろしければ後で追加の資料として提出したいと思いますが、日本労働弁護団では、93年2月以来、毎年2回「リストラ110 番」という電話相談を実施しております。このほかに、東京の弁護団本部では、毎週火曜日と木曜日の午後3時から6時までを電話相談としています。また、月曜日の午後4時から6時まで面接相談というものを実施しています。電話相談では毎回ひっきりなしに相談があります。相談内容はこの資料を見ていただいてもわかるとおり、解雇が最も多いわけです。その次に退職強要、それから、倒産も含む賃金や退職金不払い。最近では、賃金や労働条件の切り下げの相談も非常に多くなってきています。定例の相談日でも相談を担当する弁護士は次々と掛かってくる電話に対応するのも大変な状況であります。
 次に、労働者側の現状として、労働仮処分について御報告したいと思います。
 事件で最も多いのは解雇事件でありますけれども、解雇を争う場合、本訴は時間が掛かりますので、実際上は地位保全、賃金仮払の仮処分を利用しなければいけない場合がほとんどであります。その労働仮処分が労働者にとって使い勝手がいいかどうかというのが問題になると思います。
 まず、仮処分は証人尋問を行わずに、書面審理で行われております。大昔は証人尋問も仮処分の中で行われていたということですが、東京地裁労働部ではかなり以前から書面審理だけであります。大阪地裁では、労働仮処分は、保全部に係属をしていて、平成10年までは法廷での証人調べの形式による審尋も行われていたわけですが、平成11年4月に労働仮処分事件が労働部に継続するようになって以来、それまでの大阪方式と言われている法廷での証人調べの形式の審尋は実施されなくなって、すべて書面審理になっているということであります。
 書面審理では裁判官は労働者側の陳述書や会社側の上司の方の陳述書などの書証だけを読んで、事実を認定して判断をするということになります。
 陳述書を書いた人の話を直接聞かないで、労使関係の争いがある事実について判断をするというのは労使関係の社会経験とか、洞察力がないと非常に難しいと思います。
 それから、解雇事件などでは、使用者側は、例えばその労働者に能力がないとか、ミスが多いとか、そういうことを述べる陳述書を多数出してくることがあるわけですが、解雇された労働者の方は、自分の陳述書以外に、例えば職場の同僚の陳述書を出すということはほとんどの場合不可能です。上司や同僚の方は会社から言われれば、会社の主張に沿う陳述書を書かざるを得ないと思いますし、そもそも陳述書を書くこと自体が会社の業務であって、そのための打合せにも賃金が保障されているわけです。陳述書以外の書証でも、使用者側は業務などに関する資料のうち、主張に沿うようなものをたくさん出されるわけですが、解雇された労働者の方は、例えば業務に関連する資料でも、あらかじめ解雇されることを予想してコピーでもしておかない限り、自分の主張に沿うような資料を書証として提出することができないというわけです。
 このような使用者側と労働者側との実情を踏まえないと、なかなか適正な事実認定や判断はできないと思います。実際の労働者側の代理人としての実感としては、労働者側が労働裁判で勝訴することは容易なことではありません。不当な解雇で容易に勝訴できると見える事件でも、裁判になれば会社の方から追加の解雇理由とか多数の陳述書が出てきて、代理人としてはそれに反論する書面を作成をして、それを裏付ける陳述書等の資料を集めなければいけない。
 そういう意味で裁判官が使用者側と労働者側との実情を踏まえて書面審理だけでも事実を適正に判断できると考える事件は仮処分を利用できますが、それ以外の事件は仮処分を利用できないのが実態です。
 次に、労働仮処分の大きな問題は保全の必要性の問題です。民事保全法では著しい損害、または急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに仮処分を出すことになっています。以前は賃金で生活していた労働者が解雇されて収入が絶たれたということで保全の必要性が認められていました。しかし、東京地裁労働部ではかなり前から保全の必要性を厳しくして、必要な生活費を明らかにするよう労働者に求める。そして、支払いを命ずる賃金の額を限定をする。あるいは支払いを命じる期間を1年間に限定するというようになりました。最近その傾向は東京地裁以外の他の裁判所にも一部及んでおります。
 それが仮処分を利用する労働者にとってどんな問題があるかということですが、まず、解雇された労働者は1か月に必要な生活費、その内訳を陳述書に記載をして、自分や家族の生計を明らかにしなければいけません。これは解雇された労働者が自分や家族のプライバシーを、解雇した相手の使用者側に明らかにしなければいけないということになるわけです。これは労働者にとって大きな苦痛です。このような保全の必要性を厳しくする運用がエスカレートしつつあるのが現状ではないかと思います。
 例えば昨年の3月に神戸地裁尼崎支部に申立をした仮処分事件で、保全の必要性について、労働者側の疎明がないとして申立却下になった事件があります。この事案は、夫と子ども2人がいる女性労働者が解雇された事件です。
 裁判官は、夫の預金通帳や株券、それから夫の所有する不動産の登記簿謄本など、全資産の内容を明らかにする資料を書証として提出するよう女性労働者に求めました。女性労働者の方は、解雇した会社にも自分と家族のすべての資産を公開しろというのは許せないということで、その資料を出さなかったところ、裁判官は申立を却下しました。
 その理由としては、夫婦で働いているのだから資産があると思われるのに、夫を含めた全員の資産を明らかにしないから保全の必要性の疎明がないというものであります。解雇を仮処分で争うのに、家族を含めた全資産を公表して、家族も含めたプライバシーも解雇した相手の会社にも明らかにしなければならないとしたら、容易に仮処分を利用できなくなるのではないかと思います。
 ちなみに、大臣になりますと、配偶者名義も含めて資産公開をしておりますが、解雇された労働者は大臣でもないのに、裁判を利用するのに、家族も含めた全資産を明らかにしなければならないのか、これは普通の人では理解できないことだろうと思います。
 もう一つ、事例を挙げますと、この資料1の別紙の1は私が担当した明治書院事件の経緯を書いたものです。これは東京地裁労働部の第1次仮処分で1名について解雇無効の賃金仮払命令が出されたんですが、1年間の期間限定だったために、1年後に第2次仮処分を申立て、同じく1年間の賃金仮払命令が出されました。ところが、使用者側が保全異議申立を行って、それを担当した東京地裁労働部の別の裁判官が、預金が多額にすぎて保全の必要性がないと判断して、仮処分決定を取り消しました。この労働者は30代半ばの独身の女性労働者で、今後の自分のことも考えて財形貯蓄をしていて、解雇されたときには額が1,000 万円くらいだったんですが、この事件では裁判官が預金を明らかにせよと言ったのではありません。財形貯蓄だったので、会社の方でその金額がわかり、それで仮処分で保全の必要性がないと主張した事例であります。仮処分を担当した裁判官は保全の必要性があるとして仮処分を出したのに、保全異議を担当した別の裁判官が保全の必要がないとして仮処分を取り消したという事例です。
 考え方としては、預金を取り崩して生活して、預金がなくなったら仮処分を出してあげるというような考え方なんでしょうけれども、本訴の判決が出るまで預金を取り崩して生活をしろというのは、労働者にとって過酷であると思います。額はそれぞれでしょうけれども、預金がある労働者がほとんどでしょうから、もし預金を公表しろと言って、あるいはある程度預金があれば仮処分を出さないということになれば、事実上、労働者は仮処分を利用できなくなってしまうのではないかと思います。
 それから、最近のある仮処分事件での問題です。資料7「東京地裁の最近の解雇事件」という資料があります。これは何人かの弁護士に頼んで申立から決定、判決まで、どのくらいの期間がかかったとか、特徴的なことについて書いてもらったので、ほんの一部のみですが、この資料のNo.22 、23の解雇事件を見ていただきたいと思います。これは第1次仮処分では解雇無効として1年間の賃金仮払が命じられました。今年の2月に第2次仮処分を申し立てましたところ、担当した裁判官が「アルバイトを見つけてほしい。能力のある人なら、今のような厳しい雇用情勢においても、再就職している。保全処分としては、ほぼ限界と思っている。期待されている結論は出さないのではないと思っている。少なくとも暫定的な就職なら可能性としてありうる以上、それは保全の必要性に影響してくる」と労働者側に述べたわけです。
 能力がある人は再就職しているし、能力がなくてもアルバイトならできるから仮処分は出さないということなんでしょうけれども、その労働者は解雇を争って復職を求めているわけです。解雇が無効と判断されているわけですから、本来は暫定的に復職をさせるのが筋ではないかと思いますが、もしアルバイトができるから保全の必要性がないということになりましたら、仮処分事件はほとんどなくなってしまうと思います。
 なお、この事件は労働者が復職を求めていたんですが、つい先日、5月21日に退職、そして解決金支払いという形での和解が成立しています。
 それから、保全の必要性の問題で、もう一つ大きな問題は、賃金仮払期間の1年限定の問題です。以前は賃金仮払期間は本訴の判決までというふうにされていたんですが、東京地裁労働部は次第に期間を限定するようになっています。
 資料6を見ていただきますと、この資料は昭和60年から3年間東京地裁労働部にいた裁判官が、昭和63年の6月に発行された『判例時報』に書いた論文です。この9ページの上から3段目の最後の方を見ると、この裁判官が仮払期間を限定すべきだという実際上の思いが書かれています。9ページの上から3段目、終わりから10行目です。
 「しかも、実際上、その終期を確定期限として限定されないと、債権者は、長期にわたる月々認容された金額の仮払いを受けることが保証され、生活に困らないため、何ら収入を得る努力をしないばかりか、本案訴訟の追行に熱意を欠き、時には引き延ばしを図っているのではないかと疑われるような事態を生ずることがある。殊に、債権者が労働組合の組合員であり、組合の支援を得て、解雇撤回活動に熱心のあまり、これに明け暮れ、多額の解決金の支払いを要求するなどして妥協を知らない場合は、まるで闘争資金を援助するかのごとき様相を呈する」というふうに書かれています。
 この裁判官は、仮処分で労働者が生活に困らないこと自体が問題だと考えているのかもわかりませんが、解雇された労働者が解雇を争うのにどんな苦労があって、1日も早い迅速な解決を求めているということを理解していないと思います。それどころか、労働者に対する偏見があるのではないか。特に労働組合に対する偏見はひどいのではないかと思います。
 「解雇撤回活動に熱心のあまり、これに明け暮れ」と書いているんですが、裁判所の仮処分で解雇無効と判断しているわけですから、解雇撤回活動をするのは問題かのように考えるのはちょっと理解できないところであります。
 ここで、この報告の最後の別表を見ますと、その当時は賃金仮払期間を本訴判決までとしているものと、1年など期間限定をしているものが半々だったんです。ところが、その後、東京地裁労働部では賃金仮払期間を1年に限定する決定がすべてになっています。
 資料5は、東京地裁労働部にいた裁判官が昨年4月に発行された本の中で、賃金仮払の必要性について書いている論文なんですけれども、253 ページの「五 将来分の仮払期間」で、「現在、東京地裁労働部では、期間を1年に限定するのが原則的な運用となっている」と書いてあります。実際に事件を担当している裁判官と話しても、東京地裁労働部ではそうしていますというふうに言われるわけです。いつ、だれが、そのような運用を決めたのか。どういう権限で決めたのか、あるいはどのように申し送りがされているのか、これは裁判官の独立性の観点からも問題だと思います。
 ちなみに、賃金仮払期間が1年限定というのは、全国の裁判所の中で少数で、本訴判決までの賃金仮払を命じる地方裁判所の方が多数だと思います。賃金仮払期間を1年に限定されますと、本訴の判決は1年で出ませんので、第2次仮処分を申し立てなければなりません。それは労働者にとっては大きな負担です。再度弁護士に依頼をしなければいけない。
 また、これは使用者にとっても再度弁護士に依頼をして対応しなければいけないということで、負担になると思います。裁判所にとっても、事件が増えるだけで、ただでさえ多数の事件を担当している裁判官の負担も大きくなると思います。
 もう一つの問題は、判断が違う仮処分決定が出てくるという問題です。資料7の「東京地裁の最近の解雇事件」のNo.6、7、8に、総合労研事件というのがありますが、これは第1次仮処分は解雇無効、第2次仮処分は解雇有効、第3次仮処分は解雇無効というふうになっています。
 また、No.9から13のナショナルウェストミンスター銀行事件では、第1次仮処分は解雇無効、第2次仮処分は解雇無効、第3次仮処分は解雇有効というふうになっています。
 これでは労働者はたまったものではありせんし、裁判所の判断が同じ事件の仮処分の第1次、第2次、第3次で分かれるというのは、裁判所への信頼という点でも、あるいは労使間の紛争の解決という点でも大きな問題があるのではないかと思っています。
 以上のように、現状の労働仮処分には、大きな問題があると思います。労働者が安心して利用できるような、適正迅速な労働裁判のための固有の手続は絶対に必要だと思います。
 次に、労働の通常訴訟事件の問題です。
 率直に言って迅速な解決とはほど遠い実態があると思いますが、解雇事件で1年で判決が出る事件はほとんどありません。最近は争点整理と計画的な審理ということで迅速な判決を目指すということが行われ始めています。ただ、率直に言いますと、例えば使用者の中には、訴訟になっても解雇の具体的な理由をすぐ明らかにしないで、何回かに分けて出したり、そうしますと、争点整理自体にもかなり時間が掛かります。また、合理的な解雇理由がない乱暴な解雇事件と思えるものでも、使用者側が解雇通告のときには言っていなかった解雇理由を後出しと言いますか、次々に追加をしてくるような場合もあります。裁判官がその主張の制限をしないので、その解雇理由に反論しなければならなくなる。勿論、そのような後出しの解雇理由は口実だというようなことで、裁判官が考えてくれればいいんですが、裁判官がどういうふうに考えておられるのかわかりませんので、取って付けた解雇理由と思われるものでも逐一反論をして、そのために打合せをして、準備書面を作成して、それを裏付ける資料を確保したり、いろいろ時間が掛かる。証人尋問でも時間が掛かってしまうという点はあると思います。
 先ほど述べましたように、一般に労働事件というのは、使用者側の方は多数の陳述書とか証人という形で職場の上司とか同僚の証言を出せるんですが、あるいは資料などをいろいろたくさん出せるんですが、労働者側の方では、なかなか本人以外、職場の同僚の証言を出すことができない場合がほとんどですので、いろいろ苦労をします。労働者側の方では、資料とか証拠をいかに確保するかというのが大変な苦労で、会社が持っている資料の開示がされないまま、争点整理がされて、それだけに絞って証拠調べや尋問が行われるということになりますと、例えば争点整理の後に入手できた資料や事実について尋問が制限されるということになりますと、迅速な判決は出るけれども、労働者側は敗訴するという裁判が多くなるという危険があって、そういうことになったら、ますます労働者は労働裁判を利用しにくくなると思います。
 ある程度複雑な解雇事件で提訴から1年で判決まで出す審理が可能かどうかということについて、一言申し上げますと、裁判所は使用者側が解雇理由を主張できる期間を一定期間に限定するとか、後出しの解雇理由を制限するとか、あるいは使用者側の持っている資料などを早急に開示させるということができれば、ある程度可能だと思います。
 また、尋問時間は十分に取るということが前提なんですけれども、更にその前提条件として、裁判官が一つひとつの事件の記録をその都度きちっと読んで、事件を把握をして、的確な訴訟指揮をすることも必要だと思います。私は現状では一人の裁判官が余りにも多数の事件を担当していて、迅速、的確に各事件を把握することが十分にできていないのではないかという危惧を持っています。裁判官がその都度迅速・的確に事件の把握をして、適切な訴訟指揮をして、迅速・適正な審理を進めていくためには、その大前提として、労働事件を担当する裁判官、書記官とか速記官、職員を大幅に増員することが必要ではないかと思います。
 あと、労働事件での迅速な審理ができない要因の1つとしては、解雇事件でも賃金差別事件でも、例えば解雇や差別についての合理的理由とか、立証責任とか、違法な解雇、あるいは差別と判断された場合に裁判所が出す判決内容、救済命令の内容に対して立法の整備がされていないということは指摘できると思います。
 ILO条約で使用者の発意による雇用の終了に関する条約(第158号条約)というのがありますが、これは日本は批准していません。日本政府がILOに対してこの条約を批准できない理由を述べているんですが、それは解雇理由についての立証責任を労働者だけに負わせないというILO条約の規定が、現行法ではクリアーできないということを述べております。こういうふうな解雇などについての実体法、立証責任も含めて、そういう法的な整備も適正・迅速な裁判のためには必要ではないかと思います。
 次に、労働事件の判断と専門性の問題ですが、私の経験からいって、裁判官の労働事件の判断には、率直に言って重大な疑問を持たざるを得ません。資料1の私のレジュメの別紙1に書いてある明治書院事件は、私が担当した事件なんですが、簡単に申し上げると、社員50 名から60 名ほどで組合員が20名いた教科書会社ですが、業績悪化を理由に10名の社員、しかもその全員が組合員を解雇したという事件です。資料3の96ページに書いてありますので、参照していただければと思いますが、仮処分で、労働者側は人員削減の必要性や解雇回避努力が認められない理由のうちの1つとして、10名解雇後に10名の派遣社員を受け入れているということ。あるいは解雇の前には、社長の役員報酬が年間2,500 万円に加えて、85歳になる社長の父親で、既に事実上引退して数年間全く出社していない会長に年間約4,800 万円の役員報酬が支払われているということを主張いたしました。
 しかし仮処分を担当した裁判官は、この派遣社員については、解雇前後に派遣社員を採用しても、これによって人件費削減にならないということでなければ、人員削減の必要性はあるということで、労働者側の主張は採用しないと述べています。
 会社は10名も解雇して業務に困るので派遣社員をそれだけ入れたのだと考えるしかないわけですが、労働者派遣法という法律は、常用雇用の代替として派遣が利用されないように派遣にいろいろ制限を加えています。そのような派遣法の趣旨を裁判官が理解できていないのではないかと思います。
 また、役員報酬について、その決定では、役員に対して報酬を支払っていることを原因として人員削減が必要となったとは認められない。また、役員の貢献度が低いことをうかがわせる事情は認められない、役員が会社に出社していないことのみをもって、当該役員が会社に貢献していないということはできないと書いてあります。それで労働者側の主張は採用できないとされたわけです。
 問題は、一般的に役員の報酬が高いか安いかということではないんです。事実上引退している85歳の社長の父親に、社長の役員報酬の2倍近い4,800 万円の役員報酬を支払ったまま、従業員に一方的に犠牲を強いる整理解雇まで行うのが許されるのかというのが問題なわけです。
 それなのに、この裁判官が書いていることは、企業の実情、経営者の経営責任とか労使関係の実情についての理解がなさ過ぎるのではないかというふうに思います。
 私のレジュメの別紙2は、これも私が担当した日本ヒルトン事件なんですが、これはホテルの配膳人の雇止めの事件で、基本的な事実関係では労使で争いがないんです。基本的争点は、労働条件不利益変更の通知に同意しないことが雇止めの合理的理由になるかどうかが争われた事件なんです。東京地裁での仮処分事件での裁判官は、この雇止めには合理的な理由が必要なんだけれども、労働条件変更には合理性があって、変更条件に同意していないから雇用契約は成立しないということで雇止めを有効にしました。
 しかし、本訴の裁判官は労働条件変更の合理性と雇止めの合理性とは別の問題である。この雇止めは人員削減を目的とするのではなくて、労働条件不利益変更の通知に同意しないということは、雇止めの合理的理由にはならないと判断として雇止めを無効としました。
 この事件は労働者にとってみれば、労働条件不利益変更に同意するか、同意しないで雇止めされてから労働条件不利益変更と雇止めを争うかという、どちらを選択しても不利益になる悪魔の選択を迫られたわけなんですが、この問題は事実認定の問題ではなくて、社会通念とか労使関係の実情を踏まえた合理性の法的判断という基本的な問題について、裁判官によって結論が全く逆になるというのは、やはり問題ではないかと思います。仮処分では9名が申立をして争ったんですが、仮処分で敗訴したために、5名は争いを断念をして、結局、本訴は4名しか提訴できませんでした。
 日本ヒルトン事件の仮処分事件を担当したのは若い裁判官で、労働法、判例法がわかっているのか不安になるような感じがしていましたが、本当に社会のことを知っているのか、頼りない感じがする裁判官でありました。
 明治書院事件の仮処分事件を担当した裁判官は、私の見た感じでは仕事は真面目で非常に熱心にしている人だと思います。ただ、自分の頭の中だけの形式的な論理だけで考えて判断をされているんじゃないかなと思います。労使関係の実情とか経営者、労働者の実情、職場の実情等を理解していれば、あのような判断はしていないのではないかと私は思います。
 それから、事実認定の問題について一言だけ申し上げたいんですが、大阪の弁護士や労働組合で構成している民主法律協会という団体があって、そこが大阪地裁の労働部に昨年5月に労働事件の審理に関する申入書を出しています。これも後から資料としてお出ししたいんですけれども、その中で、大阪地裁労働部の判決について、事件の種類や結論の勝敗を問わず、ずさんな事実認定や不当な事実認定を受けたという報告がなされているということが書いてあります。
 1つだけそこに書いてある例を挙げますと、男女差別事件のシャープライブエレクトロニクス事件では、判決では一部男女差別を認めて慰謝料支払の判決が出されているんですが、原告の能力に関する事実認定に関してはほとんどが会社側が提出した上司の陳述書の記載どおりなんです。最も問題なのは、上司の証言や陳述書の信用性について、判決は、これらの証人や陳述書の作成者が事実を虚構してまで殊更に原告をおとしめ、被告に加担しなければならない理由もないと述べていることであります。差別事件など、原告の能力が問題になる事件では、使用者側としては勝訴しようとしていかに原告に能力がないか、ミスが多いかを一生懸命立証するわけです。その会社で働いている上司が会社に対して訴訟を提起した労働者に対して、会社の主張に沿わない陳述ができるとは通常考えられないんです。むしろ会社の主張に沿って、原告にいかに能力がないかを誇張して、労働者側から見れば、労働者をおとしめる内容を述べざるを得ないのが普通であります。
 この大阪地裁労働部への申入書では、こうした問題の重要な一因は、証人尋問の極端な制限と陳述書の偏重にあると考えられると述べています。平成12年以降の判決では、判決を早く出すことを重視する余り、事実認定のずさんな判決が相次いでいるという危惧があると書いています。
 私自身は陳述書自体は、適切に活用することはできると思います。問題なのは、陳述書を偏重して、尋問、あるいは反対尋問を制限をしたりすることに大きな問題があると思います。
 私は、裁判官の過重負担を減らしてずさんな認定、あるいは判断がされることがないようにするために、労使関係の実情などに基づく適正な判断をきちんとするような体制をつくるとともに、労働部の裁判官や職員の大幅な増員をして、裁判官が一つひとつの事件により集中できるようにすることが必要であると思います。弁護士でも裁判官でも同じだと思うんですが、多過ぎる事件を抱えたらいい仕事はできないと思います。
 弁護士の場合は、多過ぎてできない、ということで依頼は断れますけれども、裁判官の場合提訴されたら断ることは絶対にできませんので、一つ一つの事件に集中できるような体制のために大幅な増員というのは必要じゃないかと思います。
 次に、労働事件の代理人についてですけれども、代理人の専門性、工夫、取組みについて御報告したいと思います。
 労働事件の代理人に労働事件としての専門性は当然必要だと思います。労働法とか判例法理を知るのは大前提ですが、労使関係の状況とか、その事件の実情などを的確につかむということは最低の条件になると思います。
 そのためと言いますか、例えば私の事務所では、労働事件は原則として1人では担当しないことにしています。複数の弁護士で担当するということにしております。中堅、ベテランと若手が担当して、若手を教育するという面もありますし、中堅同士でもできるだけ複数で担当して、お互いサポートし合うようにしています。
 また、事件の討議と言いますか、事務所の中で事件の討議もできるだけするようにしています。ただ、いろいろ忙しいので、十分なことはなかなかできていませんけれども、そういうふうな努力はしております。
 日本労働弁護団では、労働相談マニュアルというのをつくりまして、そこには労働相談を受けた場合にどういうふうに対応するのか、実践的に書いたものをつくっております。この問題についての判例を引用したり、実践的に対応できるようなものをつくっております。これは多くの弁護士も利用しておりますし、あるいは個人の労働者の方で買っている方も多い状況であります。
 それから、日本労働弁護団としても、お互いの事件の報告会みたいなものを、これも非常に不十分なんですけれども、やって、お互いの研究もしているということがあります。
 これは私が担当したというよりも聞いた話なんですが、例えばある残業代支払請求事件で、使用者側の弁護士は経営法曹会議のメンバーではない弁護士さんなんですが、労働者との間で、残業代は支払わないという特約が成立している、だから、残業代を支払う必要がないという主張を行ったということです。
 裁判官はその主張を制限しようとしなかったということを担当した弁護士から聞いたんですが、残業代不払いは刑事罰に処せられる強行法規ですので、仮にそのような合意があっても無効ということになるんですが、そういう点で労働の基本のイロハ等も含めて、それなりの専門性というのは労働者側の弁護士もそうですし、使用者側の弁護士もそうだと思いますけれども、勉強して研鑽を積んでいるのが実情だと思います。
 我々、弁護士の苦労としては、事実の把握というのはなかなか大変で、本当に事案の本質をつかむというには、相当苦労します。いろいろ打合わせをしても、本人が重要だと思っていない事実については、なかなかわからないんです。それでかなり後になって酒を一緒に飲んでいるときに言ったことが、何でそのことを早く言わないんだということも苦い経験としてありますけれども、そういう苦労もありますし、多くの事件をやりなから、いろいろ苦労しながらやっているのが実情であります。
 かなり時間が過ぎてしまいましたので、最後に労働委員会の不当労働行為審査と司法審査について簡単に述べて終わりたいと思います。
 労働委員会における審査ですが、私の率直な感じでは、労働委員会の審理期間は非常に長いです。公益委員の訴訟指揮をきちっとしてもらいたい。計画的な審理をしてもらいたいというのが率直な意見であります。
 また、事務局の専門性を高めてほしいということがあります。事実認定自体は、率直に申し上げれば、裁判所に比べればそれほど問題ではないと思います。審理期間が長い分だけ丁寧に認定をするという点があると思います。ですから、事件にもよるでしょうけれども、私個人としては、労働委員会の事実認定はそれほど問題ではないというふうに思います。
 問題は不当労働行為の評価で、裁判所の方は労働契約の権利義務関係の存否という観点で判断するのが中心ですけれども、最近ではそういう裁判所に影響されて、労働委員会自身の不当労働行為の成立の判定に問題がある事件が逆に出てきているんじゃないかと思います。
 それから、司法審査の問題ですが、労働委員会は直接時間を掛けて審問して、それで認定をしているわけですから、裁判所が書面だけ見て、事実認定に安易に異議を述べるのは問題だと思います。裁判所の方は、労働委員会が直接時間を掛けて認定をしていることについては、もっと謙虚になってほしいというのが率直な意見です。
 最後に緊急命令の問題ですが、これは東京地裁労働部では、判決まで緊急命令を出さないというのが運用だというふうになっております。
 資料8は、労働弁護団が出した決議なんですが、緊急命令の趣旨から言って、判決と同時に緊急命令を出すというのでは不当労働行為救済命令の実効性は全くなくなってしまうのではないかと思います。この資料8の決議に該当する事件は、解雇の問題ですが、裁判所の解雇の事件は、最高裁まで行って、解雇無効で確定している事件なんです。確定している事件なんだけれども、行訴で東京地裁労働部が判決まで緊急命令を出さないというのは、理解できないということであります。
 大分時間が過ぎてしまいましたので、私は終わりたいと思います。

○鴨田氏 続きまして、鴨田と申します。残された時間、私の方から幾つか具体的なケースに基づいたお話をさせて頂けたらと思います。できるだけ生のデータを見ていただいた方がよろしいのではないかと思いまして、生の物を出しておりますが、具体的な事件の当否や担当された裁判官を非難するとか、その人柄を云々するという意図は全くありませんので、データとしてだけ見ていただけたらと思います。
 労働調停などを含めて、いわゆるADRがさまざまな場面で拡充される。これは大変結構なことなんですが、そこで解決されなかった場合、必ず裁判所が最終的な結論を出さざるを得ないこととなりますと、裁判所が早く適切な判断をしていただく体制がきちんと整っていることが何よりも大事と私は考える。
 裁判所の適切な判断というのは2つの分野に分かれると思うんです。正しい事実認定と適切な法的判断、評価であります。この事実認定の関係で2つ例を話させていただきますと、1つは、私のレジュメにも書きましたし、先ほどの井上弁護士の報告にもありました1頁第2の1の事件、勝って負けて勝ってというケースですが、ごく簡単に申し上げますと、会社の代表者に経営上不正があるのではないかいうことの追及を始めた労働者側に対して、その経営者が自己を防衛するために解雇を含むさまざまな処置をとったというケースです。
 第1次仮処分では、労働者側が勝ちました。第2次仮処分、主張も疎明資料もほとんど全く同じでした。にもかかわらず、同じ裁判官でありながら異なる結論を出しました。3回目、今度は別の裁判官に掛かりましたが、これも基本的に証拠関係は同一のところ、また逆転をいたしました。私のレジュメの方に、その他の事件の流れも書いてありますけれども、会社関係の株主総会無効とか、新株発行無効の訴訟も、私は担当しておりませんが、係属中で、一部判決が出ております。会社側の弁解は到底信用できないということが民事8部の方から判決で出されている。
 先ほど井上弁護士の話にもありましたように、仮処分の場合、書面を見るだけということです。その書面の字面だけを読んだ場合に、一応理屈の通った書面として整理して、代理人がつけば出してくるわけですから、その書面の裏に隠されている紛争の本質なり実態ということをどれだけ見抜けるかというところが裁判官の非常に大事な事実認定の能力、資質だろうと思います。残念ながら、この事件を担当された裁判官は、証拠の表面しか見なかったのではないかと私は思っています。
 もう一つ、私のレジュメで出しましたのが1頁第2、2の事件です。
 茨城県の田舎で現地採用されたブルーカラーの労働者を広島の工場まで配転させることができるのかということが争われた事件ですが、地裁判決はそのような配転はできないということで労働者側の勝ちです。高裁の方は全く逆転をしまして、適切な配転命令だということで、事実認定それ自体が180 度変わりました。高裁の判決を読みますと、私どもが証拠として出しました、あるいは求釈明に応じて、会社側自身が出してきた配転先である広島での人員変化の状況、人が必要だと言いながら、ほとんど人員が変化していない。募集もかけてないという事実があるわけですけれども、高裁判決はその点を事実認定すらしないで適切な配転命令だったというような判断をしております。
 また、退職強要というところで争ったわけですけれども、工場長が配転対象者を呼び集めて、これは会社の命令である、行かなければ懲戒解雇だというのがテープで録音されて、その反訳文が証拠で出ているわけですけれども、その点についても、高裁判決は特段触れないまま結論を出した。
 研究者の皆さん方は、判決文しかごらんになれないわけで、その背後にどのような証拠があったのか全然分からないわけですけれども、私どもから言わせれば、裁判官の手法として、自分の結論に都合の悪い事実、それ自体を排除することができるというのは非常に問題だろうと思います。
 あと1分ほど頂きたいと思います。
 裁判が長い。特に仮処分の場合、日々の生活に困っているわけですから、早く結論がいただきたい。今日資料7で出しました一覧表を見ていただいても、大体東京地裁で6か月、7か月、ごく普通にかかっています。ようやく雇用保険が切れるか切れないかくらいが1つの目途くらいという感じになりますけれども、私のレジュメ5頁の4の事件、去年の8月に整理解雇をされて、これは八王子支部ですけれども、7か月にわたって8回の審尋を重ね、4月10日に結審をして、今日現在、まだ仮処分の決定が出ておりません。ほぼ2か月近く経とうとしております。これは8回の審尋と言いますけれども、最後の2回くらいは和解期日でしたので、事実上、数か月前に結論が裁判官の頭の中では出せていたはずの事件についてまだ結論が出ない。
 あるいは判決期日の延期の問題も含めて指摘をさせていただきました4頁の3の事件ですとか、5頁の5の事件、確かに今まで判例の積み重ねがない新しい法律問題の事件ですので、ある程度調査に時間が掛かる。これはやむを得ないかと思いますが、それも個々の裁判官に保障するだけの設備、人的なもの、物的なものを含めて極めて不十分なのではないか。先ほどの八王子の事件で裁判官がいみじくもおっしゃったのは、当支部には労働判例の備え置きがありませんので、引用される判例については、すべてコピーを出してください。八王子と言えば、小さな地裁よりはよほど背景の人口が多いところでありながら、労働判例すら備えていないような設備の貧弱さというのは、この改革の中で是非前向きに改めていただきたいと思います。
 時間を超過をしまして、申し訳ありませんでした。以上です。

○菅野座長 ありがとうございました。
 続きまして、使用者側のお二人から45分程度お願いします。

○八代氏 弁護士の八代です。私の方から始めさせていただきたいと思います。
 お手元にある私の名前での「労働紛争処理の現状と課題について」というレジュメに従ってお話をしていきたいと考えております。
 今、労働側で御報告になられました鴨田先生の事務所や井上先生の事務所の弁護士の方とは、法廷等で年中会っているわけでありますから、こういう席にいると、また建て前になってしまう部分もあるのかもしれませんけれども、まず、私が労働側弁護団と使用者側の代理人とで違うと思うのは、労働側でやられる方は、割と横の連絡がある。例えばいい情報があると、ほかの事務所の方でも、弁護団の中で検討されるということはあるだろうと思います。けれども、使用者側で言うと、そういう面が非常に少ない。例えば受けた会社の顧問の先生がやられるとか、顧問の先生の紹介で代理人が付かれるということで、使用者側で横で何か連絡を取ってやるというのは、相当大きな事件でない限り余りないだろうと思われます。
 これからの私の報告は、私個人の印象とか個人的な体験に基づくものだということで御了解をいただきたいと思います。
 まず、レジュメの1.(1)のところでお話をしますと、裁判所にかかる事件との関係で言うと、私のところに来る相談自体の内容が変化しているなということです。従来は解雇、退職、組合との団体交渉を巡る問題であるものとかが多かったんですが、最近では相談事例で言えば労働条件の変更、つまり、契約内容の変更がどういう場合にできるのか、していいのかとか、協定をどういうふうに変えられるのかとか、そういうケースの方が圧倒的に多くなっております。勿論、解雇とかいう問題がなくなっているというわけではありませんが、相談事例で言えば先の例が多くなっています。
 それから、労働委員会で現在やっている事件で言うと、私個人の印象ですが、例えば労働組合の組織率が二十数%、その中で例えば労働委員会に出てくるのは、連合系はほとんど出ないとすると、全労協系、全労連系といったところが圧倒的に多くなる。そうすると、これは非常に失礼な言い方ですけれども、そこでの解決が企業全体の中でどれほどの意味を持つのだろうかという印象は否めません。つまり、圧倒的大多数の労組は会社内でけりが付いている問題について、本当に一部の問題が労働委員会に出て、今言ったようなことでやることが、全体の会社の体制、あるいはそういったものの中でどういう意味を持つのか、言葉の悪い使い方で言えば病理現象みたいなものを解決しているだけじゃないかという言い方すらあるところであります。そういう問題をどうとらえるのかということです。
 先ほど井上先生や鴨田先生の方からもお話がありましたが、レジュメの1の(3)のところなんですが、本当に解決まで長期間掛かっているのか。五審制という問題が取り上げられていますけれども、実際、労働委員会に掛かる審理というのは、これは井上先生の報告からもあったように、たしかにある程度かかっています。ただ、私は労働委員会が、いい悪いは別にして、もっと民事訴訟の手続に近付ける、争点整理をして迅速化をする、これがいいのかどうか。そういうことをすれば確かに労働委員会での審理期間は短くなるだろうと思いますが、それが労働委員会の面目としていいのか。例えば、事件は終わるけれども、紛争は解決していない。この事件としては一応終わりになるけれども、紛争は解決しないということになる部分もあるだろうと思います。
 それから、裁判所における審理については、レジュメの2ページの3の(2)でも書きましたけれども、実際、労働裁判に限らず裁判所の審理というのは新民事訴訟法が適用になってから非常に速くなりまして、労働事件だから例外にしてくれ、もうちょっと時間がかかるんですと言っても、ほとんど通用しません。例えば保全処分で言えば2週間に一遍は期日が入ります。労働事件だから時間がかかるというのは許しませんみたいな感じでやっております。したがって、一審である地裁レベルで言えば時間はかかるかもしれませんけれども、高裁になれば事実上1回、2回の結審というのは当たり前ですし、最高裁の上告受理制度が、現状のようなもので言うと、事実上1.5 審制みたいなもので、審理にかかる期間だけを見れば、私は弁護士になって22年になりますけれども、昔に比べれば、圧倒的に早くなっているという印象があります。これは仮処分の場合でもほぼ同じです。
 私が担当した例で言うと、数か月から8か月くらいの間で結論が出ている。これを長いと見るのか、短くなっていると見るのか、それは利用者によって違いますが、実情としては早くなっている感じがいたします。
 それから労働委員会の利用度というところに書きましたけれども、先ほど申し上げたように、労働委員会を利用する集団的労使関係そのものが昔に比べて変質化している以上、労働委員会の役割とか旧来のやり方というのがどういう意味を持つのかという疑問は今後残ってくるだろうと思います。
 レジュメの2の中で労働調停の話を書いてありますが、これと併せて4番の専門的な知識、経験、労使関係について、ということが議題になっているかのように聞いておりますので、その点を併せて説明しておきたいと思います。
 レジュメの2ページの4の(1)のところをお話ししたいと思います。
 労働事件というのは、専門性があるのかという疑問が常日ごろからしてなりません。というのは、医療や建築紛争、あるいは特許訴訟のようものは確かに専門性がありますし、そういう意味で言えば、例えば鑑定書が出てきて、それである程度決まってくる。その鑑定書の評価がどうかは別として、そういうことで決まってくるということになりますが、労働事件では、例えば鑑定書というものがほとんど裁判で出ないように、そういう意味での専門性はないのではないか。むしろ労働紛争に係る特殊性とか、そういう部分、ここは先ほど井上先生や鴨田先生からお話があったように、裁判官にもわかっていただきたいというのはそういう部分です。つまり人事の経験とか会社の実情とか会社における人事、処遇というのが実際はこうやっているんだという部分での経験、特殊性というのがあるのではないかと思います。
 もう一つ、労働事件の紛争の特殊性で私が思うのは他への波及効果、この人の解決が会社全体へどういう影響があるのか。制度に対してどう影響を持つのかとなると、民事や商事のようにこれで終わり、ここで和解すれば終わりというのではなくて、和解をした次の日にまた訴えが起こされるかもしれない。そういうことを覚悟してやっていくためにどうしたらいいかのか。そういうことがあり得べしとしてやる場合の特殊性、そういうものが出てくるんではないだろうかと思います。
 したがいまして、そういうことを前提にしますと、参与制とか参審制とか労働調停における専門家というものが、労働事件ではどういう人をターゲットにするのかという点は非常に問題があるだろうと思います。
 例えば集団的労使紛争みたいな問題であれば、従来のような労使それぞれから代表選手を出して、それぞれの経験に基づいてということはあり得るでしょうけれども、そうではない、集団的労使関係ではない労働協約の話、労働条件の切り下げの話、あるいは解雇の話。そういったときに、労使双方から1名ずつ出るという意味がどこにあるのか。むしろ、そういうことで言えば経験者、あるいは適切な言い方がありませんけれども、そういう部分の人をどうやって確保するのかということになるんだろうと思います。 そういうことができ得るとすれば、労働調停というのは、ある種の事案においては有効になるのではないかなという気がいたします。したがって、裁判所が見て、最初の事件の振り分けをすることによって有効に機能することは一定程度期待できるのではないか。だから、最初の事案によって労働調停に行くものと、そうでないものという振り分けができれば、かなり労働事件でもうまく使えるのではないかなと思います。
 現状、労働調停については実例がほとんどありませんが、それは1つは、調停そのものは簡裁でやっているということです。また、地裁の労働部に掛かった事件を労働調停に回そうと言っても、人材がいるのか。あそこでどうなるかわからない、使用者から見れば何だかわからない人に言われるのはいやだ、それだったら、裁判所で和解をやってください。裁判官のところでやってくださいよという意向の方が強い。したがって、労働調停には反対であるという形になるのだろうと思います。ただ、そこの機能を変化させれば、労働調停、いわゆる専門的な知識、経験を有する者を入れた調停制度というのはうまく使える可能性はあるんじゃないかなと思います。
 ただし、その場合、従来のような労使代表というのでは、今後の労働事件の紛争解決としては、いささか疑問であると思っております。むしろ事案の内容が変わってきているわけでありますから、そこでの経験者というものをどのように選出するのかということになると思っています。
 次に、レジュメの3番ですが、労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方です。その前に2ページの5番の訴訟手続のところについて、これは一般論としてまずお話ししておきたいと思いますが、先ほどお話ししましたように、仮処分において、迅速化というのはかなりなされておりますし、仮処分における和解手続というのも比較的使われているというのが実感であります。
 これは井上先生や鴨田先生はどうかわかりませんが、どうしても私が話すのは、東京、大阪など大都市の労働事件を参考にして、早いとか、遅いとか言っていることになります。実際には地方が大変でして、全体の労働事件で各地で起きたものがそれほど充実してできているのか。あるいは裁判所によってできるのかどうかというのが、むしろ私どもの方が裁判所にお聞きしたいという感じがするくらいであります。
 ですから、どうしても私の発言は、経験した東京や大阪や札幌などの大きな都市の例になります。札幌で仮処分事件をやったときに、ああ、なるほどなと思ったのは、東京地裁のように、先ほど井上先生から若い裁判官という言葉がありましたけれども、左陪席の方が担当するのではなくて、あそこは労働専門部ではありませんから、必ず部長と主任の裁判官という形で、2人で入る。仮処分でもそうです。合議で審議するんです。ちょっと難しい事件になると3人でやる。仮処分でも3人でいろいろ1時間くらいやる。そうすると、若い人がいろんなことを言う以上に、部長が指導していろいろやる。なるほど、教育システムとしてもいいし、割と会社側から見ても安心感があるなと思いました。若い裁判官が、という偏見、あるいは抵抗はない。むしろ裁判所が合議をしてきちっとやって、しかも名目だけの合議ではなくて、何件か当たりましたけれども、全部裁判長が出ていらしてやっている。これは裁判所における1つのやり方なのかなという気がいたしました。
 ただ、裁判手続の中で、労働事件で私が思う特有の問題は、これは裁判所の手続が民事訴訟手続ですから民事訴訟手続でやるんですが、例えば応援団が来る。応援団というと失礼かもしれませんが。それも多数傍聴されている。これは法廷ではいいんですが、審理を充実させようとして弁論準備期日をやったときにも、代理人と当事者ではない、組合関係者、傍聴者が入ってくる。そうすると、昨日あった整理解雇の事件ですが、弁論準備期日でありながら、労働側は部屋の後ろまで埋まってしまう。そうなると、実際上弁論準備期日と言っても公開法廷と同じように、建前論を言って、いや、その点は次回というだけで終わるし、率直な論争というのはほとんど期待できない。
 ですから、労働事件に固有の問題になるのかもしれませんけれども、運動論としてはわかるんですが、そういうセレモニー的な部分をどうするのかと。民事訴訟手続としてどう充実させるのかというのは、別な問題になる。だから、その点は裁判所においても割り振りをしてやっていかざるを得ないのではないか。そうでないと、弁論準備期日とか論点整理とは言っても、事実上は公開法廷でやるのとほとんど変わらない。一歩も進まないという形になってしまう。これは和解手続においても同じようなことが言えるだろうと思います。つまり、率直に言うことができない。後ろに応援団がいれば退職は一切だめです。復職一本ですみたいな建前の話にどうしてもなってしまう。その点は民事訴訟手続の中で労働事件のある意味での特殊性をどういうふうにやっていくのかという問題になるだろうと思います。その点が担当している例で考えるところであります。
 それから、先ほど申し上げたレジュメの4と5とに関連するんですけれども、労働事件の特殊性というのは、労働紛争が解決するということを目指すのか、それとも係属した事件が解決することを考えるのかというのは大きな違いだろうと思います。ですから、この事件として解決をすればいいんだということになれば、先ほど言ったように民事訴訟手続をうまく使うとか、そういった何かしらのテクニックを使えばできるだろうと思いますが、その背景にある紛争そのものの解決を考えるのであれば、多分、もうちょっと時間が掛かってもいい、時間を掛けてじっくりやった方がいいということもあり得るでしょうし、その結果、和解をもうちょっと時間をかけて使った方がいいとかいうことになる。
 ですから、何を考えるのか。例えば裁判所として事件の解決を考えるのであれば、迅速化ということをターゲットにやっていけばいいわけでしょうし、紛争ということまで解決するとなれば、ある程度時間をかけて背景がわかった上で、一定程度の工夫が要るんじゃないかなと思います。
 その視点に立ってレジュメ1ページの労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方について考えますと、労働委員会でも同じなんです。つまり、審査の迅速化だけを図るのであれば、先ほどから言っているように、民事訴訟手続に近いやり方をする。つまり、争点整理を充実させる。証人を絞る。書面を多く活用するということでやっていけば、迅速化はできるだろうと思います。ただし、そういうことが労働委員会でいいのかどうかというのは、これは全く別な話だろうと思います。私がやっている労働委員会の事件で言うと、弁護士さんが付かない組合が申立てて、組合が進行をする事件もかなりあるわけです。それは先ほど言ったように、組織率、提起率から言えばそういうことにならざるを得ないのかもしれないわけですが、そういう中にあって、例えば争点整理を充実される、証人を一括して採用して10分置きくらいでやるということができるのかどうか、また、いいのかどうかというのは全く違う課題になるのではないかなと思っています。
 それから、労働委員会にいる公益委員はどのような形で選ばれるのか。労働事件をやっている労働側の先生とか使用者側の我々が選ばれることはまずないわけで、だから、余りやったことがない弁護士さんがなる、そういう形になってしまいます。一番困ってしまうのは、争点整理として、1回、2回書面のやり取りがあり、ともかく証人だけ聞いてみましょうかという。そういうケースが今でもある。また、各地労委で言うと、どうせ何かあっても再審査申立で中労委が統一して直してくれるんじゃないか、変な命令が出たら中労委が直してくれるんじゃないかというような傾向があるくらい、各地でばらばらな判断が出るという気がいたします。
 ですから、労働委員会の役割をどうとらえるかによりますが、早くするということがいいのかどうか。逆にそういう問題も含まれているんじゃないかなという気がします。
 それから、労働委員会の不当労働行為の審査事件で、井上先生は労働委員会の事実評価については、ある程度裁判所よりは信頼があるんだということをおっしゃいましたけれども、会社側から言うとそれは全く逆です。これは永久に解決しない議論かもしれませんけれども、ともかく労働委員会では何を出してもだめだ。何を言っても、出した証拠もどこかへ行ってしまっている。どこからこんな認定が出てくるんだという不満があって、ともかく土俵は裁判所だと。マージャンで言えば早く場替えしてくれというような感じが強いのが正直言ってあります。
 もっとも、それは事件の解決とかいうことであればそうですけれども、労働紛争の解決とすれば、そこでごたごた話し合っているうちに、何だかんだ言っているうちに、何だかよくわらないけれども、和解ができたという部分もありますから、一概に長く掛かる、日数が掛かるというのが悪いというふうにも考えていないということです。
 不当労働行為の救済命令をどうするかということで言えば、これは使用者側は明らかに裁判所の方に信頼を置いております。その点は2つありまして、一つは、事実認定について、先ほどから言っているような疑問があるということと、もう一つは、最高裁がこう判断して、労働委員会が余り意識していないんじゃないか。つまり、上に行けば取り消されても、労働委員会はそういうことを言うことに面目があるんだというお考えがあるのかもしれませんけれども、判例と法律解釈に対する乖離が見られるということです。
 それから、救済命令が取り消されない、使用者側が申立てた取消訴訟で答えは棄却なんだけれども、理由が全部変わっている。つまり、労働委員会で、こうだから会社側の行為は不当労働行為だというのが、裁判所では全然違う観点から不当労働行為になっているというのがある。これは不当労働行為の労組法第7条が、ある意味では白紙規定に近いところからすればしようがないのかもしれませんが、命令の結果は維持されているけれども、理由づけがほとんど変わっているという場合行政処分としてどうなのか。会社から見ると、何がいけないんですか。そうすると、事件になってみなきゃわからないという面も出てきているというのがある。
 したがって、不当労働行為事件というのは、解雇や個別的紛争の事件とはちょっと違って、背景事情もあるし、故事来歴もあるし、感情論もあるわけで、なかなか司法審査としては難しい部分もあろうと思いますけれども、だからと言って、労働委員会が今やっているような背景事情重視、つまり前科がある、前に不当労働行為をやったものは今回もやるだろう、今回も悪いだろうというような認定で始まったのでは、とても使用者側としては納得できない、裁判所に行くかという形になっているというのが現状だろうと思っています。
 したがいまして、問題は、不当労働行為事件の審査指針として、裁判所がどういう役割を果たすのか。つまり、事件の審査だけをする方がいいのか、それとも和解をもうちょっと充実させるのか。つまり、裁判所の中で和解手続を充実させて、紛争の解決を目指すのか。あるいはそういう陣容や体制が裁判所の方で得られるのかということです。これは失礼な言い方ですけれども、裁判所としても腰が定まっていない。
 例えば、担当している裁判官が、全体和解をやってみましょうかという裁判官もいらっしゃるし、この事件についてだけこういうふうにやりましょうかという人もいる。統一がなく、いわゆる個人的な体験で終わってしまう。それは特に地方の裁判所においてはそういう形になるという現状だろうと思います。
 そういう意味で言うと、裁判所の役割です。先ほどの労働調停をやって振り分けて、残った部分について、つまり本来の意味での判決を出すことに面目を施すと考えるのか、労働事件ではなく、労働紛争として裁判所として解決に力を注ぐという発想が取れるのか。その辺の問題で、それは取らなくていいんだいうお考えもあるかもしれませんし、取った方がいいんだという考えもあるかもしれません。そういう点での基本的な姿勢が多分今後問題になってくるだろうと思います。
 ちょっと駆け足になりましたけれども、私の方としては、労働紛争と労働事件の違い、それから専門性が果たしてあるのかどうか、あるいは裁判所とか労働委員会に対する役割をどのように考えるのかということを中心に簡単ではありますけれども、お話しをさせていただきました。
 以上です。

○角山氏 それでは、引き続き経営側の弁護士として角山の方から若干御説明させていただきます。
 私、32期でございますので、今年で23年目の弁護士になるんですけれども、労働問題を専門にやっているわけでありますけれども、今までのプレゼンテーションをしていただいた先生と若干違うバックグラウンドがありますので、それを御説明させていただいて、そういう枠の中で私どもの考えていることを理解していただいた方がいいと思います。
 私どもの事務所、アンダーソン・毛利法律事務所と申しまして、渉外事務所でございまして、名前から言うと外資系の法律事務所に聞こえるんですけれども、50年前にアメリカの弁護士がつくりましたけれども、アメリカの弁護士はすべてリタイアして、今や日本人のパートナーが経営している純粋な日本の法律事務所でありますけれども、歴史的に国内企業と外資系企業、両方をお手伝いする長い歴史を持っているために、八代先生とは違う観点から外資系の問題でも発言してほしいという御依頼の趣旨だろうと思っております。
 そういう経緯がありますので、私が労働問題を扱いますときに、あるいは訴訟事件、あるいは労働委員会も勿論やっておりますけれども、比率的に言いますと、事務所内での相談の案件が圧倒的に多い。訴訟事件と相談との割合は、相談が大体6割から7割で、訴訟事件というのは3割から4割くらいという割合ではないかと思います。
 ただ、分量的にはそれを専門に訴訟事件などをやっておられる先生方と負けないくらいの分量になっていると思います。私どもの事務所には弁護士が95名おりまして、今年中には110名くらいになるんですけれども、チーム制でやっておりまして、私一人で大変なときは別のチームをつくりまして、訴訟事件等に対応する、ということで対応できているということがあります。それが後からの説明に若干影響してくるんですけれども、そういう前提で私の話を聞いていただければと思います。
 まず、国内企業と外資系企業を取り巻く労働関係紛争について何か違いがあるのかという御質問があったので、それについてお答え申し上げます。一旦紛争になりますと、日本の労働法の枠の中で紛争になるわけですから、現象面的なことで、例えば裁判所に行ったときにどういう訴訟になるのか、どういう紛争になるかということについての違いは基本的にはありません。それは日本の制度の中で問題になっているんですから、全く同じ形で問題になります。ただし、原因におきましては、随分違った角度からそういう問題が起こっているというのはあると思います。例えば外資系の企業の場合には、日本は高コスト体質ですから、現在日本にいる外資系の企業で製造業の企業は非常に少なくなったと思います。過去20年間、外資系の企業をお手伝いしている経験でも、日本から出ていった製造業は山ほどお手伝いしましたけれども、日本に入ってくる製造業のお手伝いというのは非常に少ない。したがって、外資系の企業というのは、金融も含めてサービス産業に従事している企業が圧倒的に多い。
 それから、大卒の新規採用をするところは基本的に非常に少ない。新規での定時の採用は行わないで、中途での即戦力の採用というのが基本的な人の採用の中心です。したがって、中途採用で予定されている能力を持っておられない方がおられますと、即解雇の問題がそこから発生する。比較的高い給料で来ていただきたいということでお願いするわけですから、その能力を発揮していただけないときには直ちに解雇の問題が、日本の企業と比べて早目に発生するということであります。
 それから、賃金の制度も年功制の賃金制度を持っている外資系はむしろ少なく、仕事の価値で賃金を決めているものが多い。
 それから、企業内での配転というのは、外資系の企業では本国では基本的には余りやっていませんで、ある部門で働く人はその部門で専門性を請われて自らの専門性を高めて、高い給料をできるだけ得られるように努力するというシステムの中で働いておりますので、ジェネラリストを採用して、企業の中でいろんなところを配転させて、育てていくというシステムを持っていないところが非常に多いことから、企業内での配転は非常に少ない。
 したがって、今度はどういうことが起こるかというと、ある部門が不採算になったり要らなくなりますと、日本の企業ではそこで働いておられる人たちをほかの部門で吸収するという動きになるわけですけれども、外資系では始めから他の部門で吸収するという発想が出てこない。各部門ごとで独立して運営しているというところが非常に多いです。かつ、日本に来ている外資系の子会社等は、支店の場合、各部門ごとに日本でまとまって経営しているというよりも、外資系の本社の各部門に直接所属していて、そのグループ単位で経営しているということがある場合には、そういうのがむしろ多いんですけれども、グループ相互間での人事の交流がない。
 そういう置かれている背景が全然違いますので、原因として、ある部門がなくなったときに、当然日本の企業では解雇するという形ではなくて、ほかの部門で採用できるかどうかを考えるわけですけれども、外資系ではほかの企業に面接に行くようにインタビューに行って、そこで受け入れてもらえるということならば、初めてほかの部門に行けるという現象があります。
 したがって、現象面は同じであるけれども、原因が違って、労使紛争に発展するということがあります。
 それから、労働関係紛争の現状について、ざっと私の感覚で申し上げますと、時間的余裕がなかったので、資料とデータを直接もう一度当たってみたわけではなく、私の印象だと思っていただければと思いますが、これは既に言われていることですけれども、個別労働紛争が飛躍的に分量的に増えているのに対して、集団的労使紛争は極めて例外的な現象になりつつあると思います。
 それから、集団的労使紛争の中でも、集団的労使紛争の個別化というふうに言っていいかどうかわからないんですけれども、実質的にはこれは個別労働紛争だという内容が集団的労使紛争の形で構図化される。つまり、合同労組系の問題ですけれども、そういう現象があると私は思っています。
 それが反映して、裁判所の労働部等にお世話になること、労働紛争は、私の実務家としての感覚としても非常に増えているなという実感はあります。
 それに対して労働委員会はどうなのかというと、分量的にも非常に減ってきていると、実感もしますし、現に数年前の記憶になりますけれども、統計に当たったときでも、たしか労働委員会の場合には、全国の労働委員会で毎年2桁以上の新件の申立があるというのは、2桁なかったと思います。1件も新件の申立がないというところが2桁以上ある、とそのときの私の調査では記憶をしています。
 それから、ここでもまさに問題になっております紛争の解決までの期間の長期化の問題ですけれども、裁判所における長期化の問題というのは、あるとき非常に危機的な状況になったと思うんですけれども、最近は私も東京が中心がございますので、地方のことはよくわかりません。東京に関する限りでは専門部があって、今年から更に1箇部も増えたという中で、裁判所も非常に努力しておられるようで、裁判所でも積極的に争点整理をして、裁判所の方で争点整理案というのをつくって、これに基づいてあなたたちも整理をしてきなさいということをやられるようになられまして、若干の改善傾向にあると思います。
 しかし、正直申し上げて、これ以上の改善については、多分、裁判所でも無理なんじゃないかなと現場に出ております弁護士としては思っております。
 労働委員会の方は、正直申し上げて、迅速な解決についての命令までの時間については、過去ほとんど改善されていないというか、変更はないと思います。
 それから先ほど、私の業務というのが相談で動いていると申しましたけれども、相談内容につきましても、過去20年間、本当に変化してきたなと思うわけです。20年前、私が駆け出しの弁護士のころには、労働事件というと、解雇事件と真の意味での集団的労使紛争、労働委員会でがんがんやり合うという労使紛争があったんですけれども、今や個別労使紛争では、解雇の事件であり、解雇に至らないとしても、リストラ、つまり希望退職をどうやってうまくやっていくのか。そういう話だったり、大きな組織変更をする場合に人をどう動かせばいいのかとか、非常に多様化した社会の中で、年功一本やりであった給与体系を変えていくためにはどうしたらいいのかということ、退職金の問題につきましては、昨今、確定給付、あるいは確定拠出型の年金の法律もできたりして、あるいは厚生年金とか適格年金の積立不足の問題が顕在化する中で、退職金をどうしていくのかとか。このままほうっておけば企業は倒産するという状況の中で、退職金の変更をどうやって議論するのかといった非常にシリアスな相談があります。
 それから、極めて今日的な相談の内容としては、M&A、買収等に伴って、当然人が問題になりますから、倒産とも絡むことにもなりますけれども、人をどうするんだという相談。
 他では、セクハラの話。20年前ではほとんどありませんでした。それから雇用差別。更に今日的な問題としては、メンタルヘルス、職場で悩んでおられる方をどうするのか等々、非常に多岐にわたって個別労働紛争の内容は複雑怪奇、多様化の一途をたどっているというふうに思います。
 それが私の労働関係紛争の現状の認識ですけれども、労働事件の特徴、専門性がどうのこうのという議論がありましたけれども、労働事件の特徴として、幾つか申し上げたいと思うんです。
 労働事件の特徴の第1は、私はやはりその対立的構造にあるのではないかと思います。端的に言えばけんかしているわけです。非常に感情的に対立している状況が見られる。それが労働事件全体の処理にいろいろな意味での影響が出ていると思いますが、非常にわかりやすく言うと、解雇事件などは離婚事件によく似た様相を持っているなと感ずることがあります。
 更に、非常に複雑であると。例えば勤務成績不良等を理由に解雇される事件などが裁判所で争われますと、一人の人間の全人格が問題になっているような様相を呈してきまして、それこそ過去の経歴からすべて裁判所に出して、聞いていただきたいという話にもなりかねない。そういう意味で非常に複雑です。
 それから、事件処理に本当に時間が掛かると思います。事件処理に時間が掛かるのは、複雑であるということと、感情的に対立するという相互作用があるんじゃないかなと思います。経営側も労働側の代理人も、実はある段階では急げないということはわかっているということがあります。双方非常に感情的な対立があって、何を話しても解決には結び付かない。言葉は非常に不適切かもしれませんが、リングの上に上がって、お互いに殴り合って、その上でないと解決の先は見えないんじゃないかという面もあると思うこともあります。それが事件処理を長くしているところがあります。
 そういうことがありますので、労働事件は非常に和解が多用されます。なぜならば、判決とか命令が必ずしも究極的な解決に適していないというのは、多分、裁判所も労働委員会も、労働側の代理人の先生も経営側の代理人もみんなよくわかっていて、できれば和解で終わらせたいという気持ちが暗黙の了解として存在するというのは間違いのないところだと思います。
 私の経験だけで申し上げますと、私の処理する紛争的な案件のうち、裁判所とか労働委員会に行くのは2割を欠くのではないかと思います。9割近いところは、すべては裁判所に行く前の段階で解決しています。それは代理人同士の話し合いであったり、雇用者と本人との話し合いであったり、私どもが陰に隠れた中でのアドバイスの中で解決するなり、ほとんどは裁判所に行く前に解決しているというふうに考えていただいていいんではないかと思います。残りの2割、多分2割を欠くんだと思うんですけれども、裁判所に行きますけれども、これはむしろ裁判所の方がその統計資料を持っておられるのではないかと思いますが、その残りの2割を欠くような紛争事件でも、そのほとんどが和解で終わっているという認識が私にはあります。判決をいただくのは例外中の例外で、当事者も望んでいないし、我々も望んでいないし、裁判所もできれば和解で終わらせたいという意向を持っておられますし、先ほど申し上げましたように、判決とか命令では必ずしも究極的な解決にならず、必ず上訴されてしまう。紛争が長くなるだけであるということがあるために、和解が先、ということがあります。
 それから、労働事件の特徴で先ほど専門的な知識とかいう話がありますけれども、これはやはり当然必要なんだと思うんですけれども、八代弁護士が申し上げたように、特許訴訟のような専門性ではありませんけれども、少なくとも労働判例、つまり制定法で決まっていないところ、例えば解雇等について、整理解雇とか、判例でかなり影響される部分がありまして、その辺の知識がなければ、勿論、議論の前提がかみ合わないことになりますので、労働法に関する基本的な知識がなければいけないという意味では専門性が必要だと思います。労働事件をほとんど扱っておられない労働者側に付かれた先生と和解の話をしても、議論が全くかみ合わなくて、和解のチャンスを逸してしまうということも時にはあるわけですから、専門的な知識は必要だと思います。
 もう一つの専門的な必要性としては、労働事件は非常に感情的で、複雑で、事件処理に時間が掛かる。和解のタイミングをはからなくてはいけないという意味で、事件解決への専門的なノウハウというか、これはやはり必要で、労働側の先生方と経営側の我々の間に何となくあうんの呼吸で、そろそろ和解の潮時ではないでしょうかねというのがあるわけです。それがお互いにシグナルを送れないノウハウを持っておられない先生が突然入ってこられると、そのチャンスを失ってしまうということがあります。
 それから、労働調停の導入について私の意見を述べさせていただきますと、今、申し上げたように、今は裁判所ではほとんど和解で終わらせていまして、裁判所の和解手続というのは実質的な調停機能を果たしていると私は思っているんです。ある程度これは機能していると思います。なぜ機能しているかというと、裁判所の場合には、和解的な調停、調停的な和解がうまくいかなかったときには直ちに判決を出すということがあるからです。後ろに控えているものがあるために、判決というか、結論がどうなっていくんであろうかという見込みをお互いに考えながら、また、裁判所も和解を進めていく。簡単に号に②達しないような事案であっても裁判所での和解手続がある程度機能して、結果を予測しなから話をしているときには、できない譲歩もしてみようかなという気持ちにもなるということだってある。
 これは何を意味するかというと、逆に言えばやみくもに、話し合いをしてみろ、調停をしてみろと言っても、結果に対する見込みがある程度ないところで調停をしても、単なる話し合いで、お互いに自分の言いたいことをいって一歩も引かないという中で調停が機能しないんじゃないかなと思っているんです。したがって、労働調停をやる場合にも、全体のプロセスを単に長期化させて、労働調停というものをつくったけれども、そこでは単に話をするだけで裁判所に行くまでの時間が長くなっただけであると。全体としての解決が長くなってしまったということがあってはならないんじゃないか。そういう意味では、先ほど鴨田先生も同じような意見を持っておられたんじゃないかなと思うんです。
 したがって、裁判手続との連携を労働調停の中では真剣に考えて、うまくいかないときにはさっさと裁判所に行けるようなシステムなり、あるいは裁判所が指導して調停の見込みのあるものは調停に回すなり、その中で調停の見込みのないものはさっさと裁判手続にするということを制度の上である程度確保しておかなければ、労働調停は単に全体のコストを長くするものではないかと考えております。
 それから、労働問題の特殊性から、労働調停に参加する方は専門的経験を有する方が必要かということになりますと、これは当然そうだと思います。先ほど申し上げたように、ある程度紛争の解決の見込みに対して、予測が持てるということは、労働法を知っているということでありますし、判例もある程度知っていて、裁判所に行けば結論はこうなりますよということが、そういう議論を前提に行かなければ、結局、言いたいことを言って、お互いに譲歩しないで終わるとなりますから、労働法的な、専門的な経験のある方。それから、先ほど申し上げましたように、この種の事件解決の専門的、経験的なノウハウが必要ですから、これを有する方が参入されることが当然必要だろうと思います。
 それから、労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方なんですけれども、これは先ほど八代弁護士がほとんど申し上げましたので、私の方から余り付け加えることはないんですけれども、正直申し上げて、裁判所で判決が下ったときには、経営側も会社の方も、内容に非常に不満、裁判官に個人的な不満を持っている会社もあるんですけれども、裁判制度そのものがそんなにおかしいというふうに不満を持っているか。勿論、持っているんですけれども、決定的に制度自体に対する公平性とか中立性に対する疑問を持っている、ひょっとしたら労働側とつるんでいるんじゃないかと、そんなことを思っている会社は余りないと思いますが、正直言いまして、労働委員会の場合には、労働委員会の制度自体に対する基本的な不信感というのが会社側にあると思いますので、出てきた命令に対して、しようがない。労働委員会から命令が出たんだから、そのまま従おうという気持ちはなかなか出てこない。当然、負ければ行政訴訟に訴えていくということに、そこがつながっているんじゃないかなと思います。
 それから、相次ぐ行政訴訟における命令の取消というのは、今申し上げた労働委員会に対する信頼性に対する根本的な不信を更に助長していると思います。
 それから、労働委員会における事実認定の信頼性につきましては、八代弁護士も言われましたけれども、どうしてこういう事実認定になるのか、どうにも理解できないというのはあると思います。労働委員会の審問をする方については、大変失礼な言い方ですけれども、公益委員の熱意にかかっていると思います。時間的な余裕とか、専門でそこに付いておられるわけではありませんから、ほかの仕事を持ちながらパートタイムでやっておられるので、極めて限られた時間の中でやっておられる。正直申し上げて、裁判所にはあるような証拠制限などはありませんから、出したいものは全部出せるわけですし、非常に長期化して膨大になった資料を公益委員がパートタイムでやりながら全部読んで、正確な事実認定をやっていくということは、よほど熱意のある方でない限り難しいのではないか。それから、公益委員の方の力量もあるでしょうし、ばらつきがあるというのは、否めないんではないかなと思います。そういうこともあって、労働委員会における事実認定の信頼性については、大いに疑問があると思うんです。
 したがって、労働委員会の事実認定を、何らかの集団的労使紛争の方の解決にそろえて、例えば実質的証拠主義等で裁判所で審査できないようにするということについては、到底承服し難い、公正、公平という面でも無理だと思います。
 5番目ですけれども、これは参与制、参審制の問題だと思うんですけれども、既に述べておりますけれども、労働調停的な局面におきましては、非職業的な裁判官が、専門的な知識、経験を有して解決のプロセスに参加していただくというのは有益で、和解解決へのプロセスを早めるのではないかなと思いますが、一旦それが破綻してしまって、権利確定的局面でどっちが正しいんだということを決めなくてはいけないという場面になると、果たしてそういうことが本当に公平で迅速で適正な解決に寄与するのかというのは正直申し上げてよくわかりません。下手にそこにまた労使の対立的なものを持ち込んだりして、迅速さに欠けることになりかねないんではないか。極めて冷静、冷徹に判断することがある段階では必要になることはないかなと思っています。局面を分けて労働調停的な局面では非職業的な方に入っていただいて、権利確定的なところになったら、迅速さを最優先にして、できれば利害対立的なものを持ち込まないようにすることがいいのではないかと思いますけれども、よくわかりません。
 それから「6.労働関係事件固有の訴訟手続整備の要否について」ということなんですけれども、正直申し上げて、今の訴訟手続法の中で、労働事件について、こういう制度を設けるべきであるという必要を感じたということは余りないんですけれども、ただ、解雇事件は今のままではいけないというと思っています。解雇事件は和解が成立しなければ、判決、あるいは命令が出るわけですけれども、これは解雇が有効であるか無効か、どちらかしかないわけですので、解雇が無効であるということになれば、雇用契約が続いている、給料を払い続けろ、労働者側からでは、仕事を与えろとなります。法律的には今は就労の権利はないということになっているので、実際の仕事を与えなくてもいいということに通説はなっていると思うんですけれども、いかにも現実と遊離している結論に判決がなってしまっているのではないか。ある段階から本人も、とても職場に戻れるとは思っていない。裁判所も本人がこの環境の中で帰ったとして、幸せだと思えない。経営側も戻すつもりはさらさらない。その中で帰すか帰さないかという結論しかないというのは、問題解決になっていない。したがって、裁判所では和解の努力を大変されるわけですけれども、これはやはり中間的な、解雇権の濫用だけれども、もう損害賠償だけで済ませて、次の人生を歩みなさいよということを裁判所が言えてもいいんじゃないか。実は今の制度でも裁判所はそれができるんじゃないかと私は見ているんですけれども、立法的な根拠がなければなかなかできないでしょうから、立法的な解決を、訴訟法的にやるのか実体法的にやるのかわかりませんけれども、これは用意をしなければ、明らかに何となく皆さんが違っていると思っている解決法しか提供できていないと思います。
 御質問をいただいているものについて、逐一お答えするのは20分という与えられた時間では難しいので、質疑の中で必要なときにはお答えしていこうかなと思います。
 以上です。

○菅野座長 ありがとうございました。
 労使それぞれの弁護士の方から御報告いただきましたので、御質問等を受けたいと思いますが、その前に、これらのほか、日本弁護士連合会から労働関係法律相談等の件数推移等の資料が提出されています。これについては、何か御説明はありますか。

○日弁連(永尾氏) それでは、前回から出席させていただいております日弁連副会長をしております永尾と言いますが、私の方からペーパー2枚について説明を簡単にさせていただきます。
 まず、1枚目の一番上は東京の3弁護士会の法律相談窓口での労働関係がどういうふうな推移をたどっているかということです。
 結論は、1995年に260 件、翌年546 件が、昨年は1,002 件ということで、4倍ないし2倍と非常に増えている。ただ、この下の数字で総相談件数のところの数字の伸びが減っているというのは、東京の場合は、クレジット・サラ金の相談については弁護士会が別に設けたという関係で総相談件数が減っているということがありますので、下の方と対比で少し奇異に思われるかもしれませんが、そういう事情です。非常に相談件数が弁護士会の相談センターの中で、労働関係も増えているということです。横浜も同じくです。
 ※印、注意書きの「総相談件数は有償・無償の相談のすべてを含む」ですが、無償というのは、消費者事件とか、子どもとか、そういうものを含んでいる、そういうことをやっているということがたまたま統計的な処理で出てきているということを指しています。
 あとは全国弁護士会の有償相談の統計になっています。大坂の方も労働関係の相談が増えている。私の所属しております福岡県弁護士会の中でも、83件から162 件で2倍に増えているということで、一番下にありますように、相当弁護士会の相談窓口での相談件数が増えているということでございます。
 2枚目の方は、法律扶助協会で実際に労働事件の解決のために弁護士が付いた、それを法律扶助協会から援助した件数ということです。こちらの方も増えているということが、この数字の中からおわかりいただけるかと思います。
 最後ですが、※印、「事件数ではなく、支出件数を示す」というのは、統計の取り方の問題で、人数によらなくて、1事件を1件として数えるという統計の取り方の問題だということを最後に補足いたしまして、相談も事件も増えているという資料を出させていただいたということでございます。

○菅野座長 ありがとうございます。それでは御質問等がありましたら、お願いいたします。

○山口委員 仮処分の関係につきまして、労働者側の方はいろいろ書面審理の問題だとかあるいは期間限定の点についてのお話がありましたけれども、その辺につきましても、使用者側の説明がなかったので、使用者側の方でどういうふうにお考えになっているか御説明いただきたいと思います。

○八代氏 まず、期間限定がおかしいというのは、労働事件を仮処分の中で特殊なものだと見るから・・それが当然だろうとおっしゃるかもしれませんけれども、基本的に仮処分は暫定措置なんだ、緊急やむを得ない場合の暫定措置なんだということになるとすれば、当然期間限定もされなければいけないし、例えば1年後に事情が変わったらもう一度チェックしなければいけない、事情が同じであれば同じようなことを出せばいいというスクリーンが必要なわけですから、そういう意味で言えば、期間限定するというのは私は当然だろうと思います。
 というのは、そうでないと、実質的に仮処分で処分は決まってしまう。例えば確定に至るまで毎月幾ら払えというのが出てしまえば、そこで勝負が決まってしまう。そこで勝負が決まるんであれば、仮処分というのは緊急暫定のものではないから、昔言われた仮処分の本案化みたいな形でやらざるを得ないという形になるだろうと思います。
 したがって、書面審理をする。あるいはそれに基づいて期間限定する。本当に仮の措置として出すというのであれば、今の制度で例えば数か月、10か月程度では解決するという方がいいんだろう。
 逆に言えば証人を聞いてやる、あるいは疎明資料もきちっとしたもの、書面だけではなくて、いろんなものを出していく、それから期間限定もしないというようになれば、仮処分そのものの機能が元に戻ってしまうということになって、本案をやっているのか、仮処分をやっているのかよくわからないということになるんではないかと思う。
 したがって、その意味で言えば書面審理化、あるいは期間限定化というのは私は賛成です。以上です。

○角山氏 基本的なところになりますけれども、書面審理になっている理由は、これは労働仮処分が本案化したことに対する大きな反省があってのことで、労働仮処分は非常に時間が掛かるという時期があったと思うんです。それをできるだけ迅速にやろうと思うと、当然証人等を呼んで審尋をやると本訴と同じようになってしまうわけですから、同じように時間が掛かって、今、本訴判決が出るまでどんな早くても1年半、遅ければ2年くらいは掛かっている。それでは労働仮処分の意味がないということで、迅速にやるために、書面でやって終わりという理由でなったところで、これをまた元に戻してしまえば、迅速に処理しようという本来の目的と違う方向に行ってしまうのではないかと思います。
 1年というのも、これはやむを得ない、第1審判決までとなれば、当然第1審判決もゆっくりやろうということになってしまうわけですし、八代弁護士が申し上げたように、保全が本案と同じような闘いの場になってしまうと思いますし、それから、欧米的な考え方、多分、アメリカだと思いますけれども、本人の損害を少なくするためにミリティゲーションオブリゲーションと言いますか、そういうのがあると思うんです。一旦仮処分が出てしまうと、もう問題解決への努力、意欲が一切失われてしまうということにもなりかねないので、紛争解決にはむしろ逆効果になる。そういう意味でも1年というと状況が変わってくるでしょうし、仮処分というのは、常に状況が変われば、その中でもう一度見直すというのが本来の姿なものですから、1年でいいのではないかと思います。

○鵜飼委員 井上さんと鴨田さんにお聞きしたいのですが、先ほど出されたいろんな事例で組合に所属していないケースと所属するケースがありますが、特に組合に所属しないケースで解雇事件で争う場合に、1年半とか2年とか、その労働者にとっては不可能に近いと思うんです。そういう意味では仮処分事件の8割以上が解雇事件というのは、利用せざるを得ないということだと思うんですが、その辺のところの実態と評価について。

○井上氏 それでは、私の方から申します。
 私どもがやっている、組合に所属している労働者の事件と、全く組合とは関係ない個人の事件とがありますが、特に組合に所属している労働者の事件でも、例えば労働裁判で審理の期間が、判決だったら1年、2年掛かりますよということを率直に言うならば、なかなかそれでは解雇を争うというふうにならないケースもあります。
 そういう意味で仮処分というのは、迅速にできるという点で、解雇事件などでは必要なんですけれども、組合に所属している人は組合がサポートするという点でそれなりの前提条件があるんですが、組合に所属していない全くの個人の場合には、やはり早くそれは解決をしたい。迅速な解決を望むというのは非常に強いと思います。
 例えば1年も掛かるということであれば、なかなか解雇自体が許せないと思っていても、裁判を利用しようということには非常に障害があるんじゃないかというのが率直に思うところです。

○鴨田氏 若干補足させていただきますと、前提の理解に1つ誤解があるんじゃないかと感じるんです。組合に所属している人の解雇事件というのは、事件が争われている最中、組合側がその人の生活の面倒をかなり見ているというふうに御理解いただいているんじゃないかなと思いますけれども、それは大きな誤りです。非常に大きな組織で、組織としても運動上まさに犠牲者と言われる方に犠救資金で生活保障がされるというのは特殊なケースではないわけではありませんけれども、現在、争われている民間の解雇事件で組合が生活保障をかなりやっているようなケースは恐らくほとんどないと思います。
 そういう意味では、組合員であれ非組合員であれ、解雇事件を争っている最中の自分の生活は自分で賄わなくちゃいけないということです。
 当座は雇用保険が出ますけれども、せいぜい半年、それを過ぎたら自分の飯の種をどうするか。よそでアルバイトするなり何なりすれば、保全の必要性がなくなった、減ったなどということでもらえる賃金が少なくなるということになると、まさに自分の身を削って解雇事件を争わざるを得ない。労働者が貯金するのは、解雇されるために備えて貯金するんじゃないんです。子どもの教育のこととか、老後の資金とか、そのためにお金をためているんです。それを削って解雇を争えというのは、まさに人道に反するんじゃないかと私は思います。

○矢野委員 労働調停についてのお考えを伺いたいんですが、地裁のレベルについてはそれぞれお話があるんですけれども、簡裁の労働調停、これから将来どういうふうになっていくのかという点について、どうお考えですか。双方からお話をいただければと思います。

○鴨田氏 私からまず口火を切らさせていただきますが、先ほどの経営側の弁護士さんのお話にもあったように、地裁だから、簡裁だからという区別は私は余り関係ないんじゃないか。その適切な人が得られれば、簡裁であれ、地裁であれ、同じじゃないかと思います。

○井上氏 私からも一言申し上げますと、調停について申し上げられませんでしたけれども、私は角山先生が言われたことと基本的に同じような感じを持っているんですけれども、今の裁判所での和解は、実際上調停的な機能を果たしている面もありますので、労働調停を訴訟と全く切り離して利用できるのは、どういうふうなことが考えられるのかというのがもう一つよくわからない点はあります。
 ただ、紛争を解決していくチャンネルとして設置するのは意味があると思いますので、例えば弁護士が代理人として付いているような場合は、やはり裁判所での和解ということを念頭に置きます。調停にどうですかと言われても、むしろ裁判官でやってくださいよ。和解で解決してくださいよと言いたいのが実情です。
 なぜかと言いますと、そちらの方が早いということです。判決なり判断という背景なしに労働調停に行っても、かえって時間が掛かるんじゃないかという危惧があるからなんです。

○八代氏 私が体験した例で言うと、簡裁の調停にいきなり出されたのが1件だけあります。代理人の先生も付かれていて、勿論、井上先生や鴨田先生はよく知っていらっしゃる事務所の先生なんですが、何をするのかなと思ったら、要するに、調停の名目とすれば、例えば未払賃金を払ってくれとかいろんなものがありましたけれども、実際は、その中でふわっとした解決、実際は辞めてもいいんだ、条件が整えばそういうことでいいんだ。そういうバックグラウンドがあって、そういうことは書けないから調停で適正な解決をという形で出したんだという実例が1件だけありました。
 そういう解決であれば、考えられる、ではやりましょうということになりましたけれども、調停の趣旨だけ見ると、とても簡裁の調停でこんなもの出されてどうするのかという感じが強かったです。そういう面で言えば、井上先生、角山先生、鴨田先生もおっしゃったように、裁判所に出して、そこで振り分けてやった方が早いんだろうと思います。
 ですから、簡裁にいきなり裁判でない形で調停を出すという場合に、そういう裏の事情があるケースがあるんじゃないかということは体験としては思いました。
 以上です。

○角山氏 私が思っておりますのは、先ほど申し上げましたように、最後に裁判所の権利確定的な判断がないと、和解的な解決は難しいと申し上げたんで、調停はその前になるということになると、簡裁での調停の場合、むしろ終わったとき次どうなるんだということを考えておかないと、事物管轄の関係で、簡裁では地位確認訴訟はできませんということになれば、その後一旦簡裁で終わって、再度地裁の申立ということになりますから、終わった途端に直ちに訴訟手続に入れるという流れの中で用意する必要があるのかなと。
 そうしますと、簡裁でできる調停と地裁でできる調停というのは違ってくるのかも知れないし、逆に事物管轄等をいじって、簡裁のできるところを増やすなり、そこをいじらないと、調停からスムーズに裁判手続まで移行するという全体としてのプロセスが短くなるというのは難しいんじゃないかと思う。
 そうして考えていますと、解雇事件辺りは、先ほど労働事件の特徴というところで私が申し上げましたけれども、専門的な知識とか、事件解決の専門的なノウハウという点では、東京地裁では労働専門部のようなところが、やはり解決するんだと思うんです。それを簡裁レベルでそういうのを設けるというのはなかなか難しいんじゃないかなと思います。
 ところが、例えば賃金の未払いの話のときには、労使の専門の先生がおられる、それについて簡裁でやっても話がまとまるかわからないし、また、うまく回らなければ、簡裁でも判決手続に行けるんじゃないかなという気がしないでもないんですが、その辺の振り分けが必要になってくると思います。

○鵜飼委員 双方にお聞きしたいんですけれども、大体経営側、労働側のそれぞれの弁護士さん、やはり原告側と被告側の違いという面もあるんじゃないかと思うんです。私も労働側ですけれども、労働側はほとんど訴えるのが多くて、そういう意味では大体何%くらいが原告側でどの程度が被告側か聞きたいと。迅速な審理ということについても、救済を求めている側は早くしてもらいたいということがありますし、角山先生の話でも、迅速性ということは被告側もおっしゃっているわけですね。その辺は企業の置かれた状況によっても違ってくるのか。その辺、非常に雑駁な質問ですが。

○角山氏 迅速な処理に関しては、会社は非常にそれを望んでいると思うんです。いたずらに会社も延ばしたいと思っているというはずもないと思うんです。私は外資系のお客さんが非常に多い中で、日本の司法制度に対する最も大きな不満は、公平性についてはほとんど不満はないんですけれども、迅速性については、大変な不満があるんです。日本という国は一体どういう国なんだ。判決が出るまでどうしてこんなに掛かるのか。これを説明するには大変な苦労を要します。

○八代氏 角山さんは外資系の企業が中心ですから、日本の企業で言うと、余り時間が掛かって困るというのはないです。ないというのは、慣れ切っているからなのか、長く掛かっている方がいいと思っているからなのか、それはわかりませんけれども、余りそれはないだろうと思います。
 それから、鵜飼先生の言葉じりをとらえるんですが、迅速化して早く労働側としては仮処分を出してもらいたいとありますが、これは勝つ仮処分、勝つ方を早く出してもらいたいということでしょう。2か月で終わる命令は出したけれども、労働側は負けだというのではやはり不満はあるわけで、そうなると、ある程度の審理期間をとって、ある程度の公平な裁定をするということになると、2か月とか3か月ではできないんじゃないかなという気がします。
 ですから、繰り返しになるんですが、正確な数字はわかりませんけれども、裁判所の仮処分が、東京地裁で言うと6か月から8か月くらいで大体ある程度の目途がついているというのは、私の印象ではかなり迅速化されているし、仮処分を会社が引き延ばしているということはないです。むしろ裁判所の訴訟指揮に追われて、次またこれやるのか、また宿題が出てこれをやるのかという感じです。アップアップしている感じがあって、かなり仮処分については早くなっているんじゃないかなという気がします。
 それから、依頼者、会社が被告側か原告側かという率で言えば、圧倒的に被告側です。

○角山氏 先ほど申し上げた中で、もう少し言っておきたいんですけれども、労働事件の特徴の中で申し上げましたけれども、非常に感情的に対立しているときに、解決の潮時というのを余り考えないで、迅速、迅速でやっていて、結局、お互いの解決の機運が盛り上がっていないところで、白黒を付けるというのは本当に解決に資しているのかというのはあると思うんです。
 先ほど申し上げたように、裁判所に行くまでには、ある程度選別が終わっているというか、こじれきったものしか行っていないというところがあるわけですので、こじれ切ったものが行って、いきなりこうだという判決が出てというのでは、勿論、それも1つの解決かもわかりませんけれども、ある程度主張をして、お互いに疲れ果てたところで解決かという面もなきにしもあらずなんですけれども、判決なり命令なりが出たとしても、上訴して、控訴審があるので、長いプロセスを経るよりは、和解のほうが最終的な解決が早かったり、当初は不満が起こるとしても、全体的な解決にはなっているかもわからない。だからこそ圧倒的に和解で終わっているという現実があるんだと思うんです。

○井上氏 迅速性の問題については、労働者側の観点で言うと、かなり以前と言いますか、要するにがっぷり四つに組むような、それで時間が掛かって、和解の機運だというような事件は確かに以前はあったと思うんですけれども、最近はそのような事件はほとんどないんじゃないかと思うんです。解雇とか差別等の問題についても、やはり時代の流れ、テンポが変わっていますので、早く解決したいという切実さというのは非常に強まっている。そういう事件が多くなっているというのはわかります。
 労働側の目から見た使用者側の迅速性に対する考え方について言うと、これは事件によると思います。その意味は、その使用者によるというふうに思います。外資系については迅速性を求めているという点は確かにあると思います。例えば日本の企業で、それこそ大きな企業から、中小企業で超ワンマンの社長の企業まで千差万別ですので、基本的に迅速審理よりも、むしろ引き延ばしをしているなというふうな事件は結構あります。それは使用者にもそういう点で合理的な使用者もいるし、必ずしも合理的じゃない、弁護士の言うことを全然聞かないようなワンマン社長もいるわけですから、どうしても迅速化をしようとしないことについては、労働者側としては、迅速な審理を是非してほしいという強い意見はあります。
 ついで和解の件なんですが、大体労働事件というのは最終的には和解で解決するんです。ただし、和解ができるためには、これもケースによるし、大体最終的な判断は使用者がどういう判断をするかで決まってくると思うんですが、そのためにはある程度判断が必要な場合があるわけです。勿論、公的機関の判断が出る前に和解で解決できる場合もありますけれども、公的機関の判断が出ないと和解はできないというケースもあると思うんです。
 裁判所の判断を一旦出してもらって、その後、次の段階で和解をすると。そういうふうなことがありますので、勿論、労働事件で和解で解決するケースは多いですけれども、それは労働事件というのは、あるところでは最終的には和解で全部解決しないと、実際にはそうなっていますからね。
 ただ、その前提として一定の判断が仮処分の決定とか、あるいは一審での判決とか、場合によっては一審での和解でも裁判所の判決ではない形での一定の発言とか、そういうもので初めて解決ができるという事件というのも結構あるんじゃないかとは思っています。

○鴨田氏 今のお三方のコメントは、主として解雇事件や差別事件を念頭に置かれてのコメントだったと思うんですけれども、私どもはレジュメの方にも事案に応じてというのをわざわざ書きましたけれども、労働事件ということですべてをひとくくりに議論していただきたくないなというのが1つ強い希望としてあります。
 私のレジュメでは4つに分類しましたけれども、とにかく早く結論を出してもらいたい単純な未払事件とか、先ほどもちょっと例に出ましたけれども、会社の顧問であるけれども、労働法を全然知らないような弁護士さんが、到底抗弁などにならないようなことを、社長が言うからということで4つも5つも並べてくるようなものまで丁寧に判断するようなことはやめていただきたい。払うべきものはさっさと払え、24条があるじゃないかということがストレートにできるような手続。あるいは解雇事件であっても、小さな企業に多いわけですけれども、解雇には我々に言わせれば正当事由、裁判所的に言えば相当性、合理性が必要なんだということを全く知らずに無視して行われるような単純な解雇事件。
 それとは別に、経営側の先生などが付かれるような経営側の立場からすれば、それなりのきちんとした理由がある、労働側から言えば、別の視点から冗談じゃないよという解雇理由それ自身がそれなりに合理性の部分で争いになるようなケース。
 更には、女性なり思想なり、いろいろありますけれども、いわゆる賃金差別事件。類型をある程度分けて、それぞれに適したシステムというのを御検討いただきたい。
 先ほど若干時間がなかったので、一言だけ付け加えさせていただきますと、私が分けました3つ目、4つ目の事件を迅速に解決するのに一番必要な方法は、私は証拠開示が徹底されることだろうと思います。
 先ほどアメリカの例が別の角度から出されましたけれども、アメリカのディスカバリーで言えば、相手の胃の中に手を突っ込んで何でもかんでも持ってくるわけです。ところが、日本の裁判所、今の民事訴訟法であれば、会社の内部文書というのは全部自己使用文書で出てこないわけです。会社の中でつくられたメモこそ最も真実を表すものです。それを自己使用文書として裁判の場に供させないということは、アメリカの裁判がよくゲームだと言われますけれども、アメリカのゲームは真実を前提にしたゲームを考えているんじゃないか。日本の裁判は真実なんかどうでもいい。出された証拠さえ評価すればいいんだというシステムになっているんじゃないか。それで果たして裁判の結果に対して当事者の納得が得られるんだろうかということはこれから考えていただきたいことだと思います。

○髙木委員 八代弁護士にお尋ねしますが、先ほどの御説明で事件は解決したが紛争は解決していない。まさに言い得て妙だなという思いをしていましたが、そもそも労働委員会制度が目指すもの、どちらかというと紛争という世界、裁判所は事件の解決というか、木に竹を接ぐような関係の取消訴訟などがあると思うんですが、そういう中で八代さんのお話にも、1.5 審制かどうかともかくとして、実質五審制問題がいろいろ議論されておりまして、先ほどの色々な御指摘で早くマージャンの場替えじゃないけれども、場所を替えようという背景には、労働委員会の審査について、色々な意味で御不満というか、疑念をお持ちだろうと思うんですが、それをいつまでも言ってもらっても、現状はなかなか変わらない。。では、どうしたらいいんだと。裁判所の側からはどういうアプローチを求められ、あるいは労働委員会の側はどうしたら今の御批判のようなことを少しでも緩和できるのか。その辺について、問題点の御指摘は多々いただいたんですが、では、どうしろというのももう少しクリアーにおっしゃっていただけたらと思うんです。
 それから、今、鴨田さんに触れていただいたんですが、例の証拠の偏在問題、特に労働弁護団などからこの議論についても指摘があります。今、アメリカのディスカバリー的な世界だったらという御指摘がありましたが、とりあえず日本の新民訴で一部そういう、どこまで活用できているかどうかは存じませんけれども、証拠の問題について、若干の改善が加えられたという話も聞くんですが、とりあえず現実的に証拠の偏在問題を少しでも前に進めるには、どういう内容の改正をしたらいいのか、その辺何かアイデアはありますか。

○八代氏 これに答えられるようでしたら私こんなところにいないんですが、まず1点だけ申し上げますと、総トータルで長期化しているかということを言えば、裁判所はかなり改善されている。労働委員会が長いと見るのか短いと見るのかですけれども、私は先ほど言ったように、労働委員会の役割をどうとらえるかだと思うんです。
 というのは、申立人の側から見ても、早く命令が欲しいという案件と、それから申立てはしているけれども、例えば自主交渉を途中でやりたいというのもある。会社側が次回の期日を入れてくれと言っても、いや、自主交渉を当面やりたいと言って、公益委員が、じゃ、自主交渉をやってください、それでだめなら期日をまたもう一回、というケースもあるわけです。
 そういう意味で言うと、労働委員会がその事件について、こういうパターンだからどうするのか。ある程度時間が掛かっても和解のような形をやるのか。それとも申立人が早急な結論を求めているんだから、命令を出す。そのためにシステムを、民事訴訟に近くして、きちっとやっていくのか。そういう振り分けが私は必要だろうと思います。
 今の率直な印象で言うと、それをごった煮にして、何か審理手続をやっているのか、調査手続をやっているのか、和解手続をやっているのか、何をしているのかよくわからない。申立人側の事情や思惑はいろいろあると思うんですが、そこの部分でかなり振り分けができれば、労働委員会において、これは申立人側もある意味では命令ではなくて、調整的な解決をしたいんだから、少し条件を整備してくれということなのか、あるいは例えば早く命令をもらってきちっとしたいということなのか、そこを労働委員会がクリアーにしていけば、例えば早く命令をもらいたい、結論を出したいというんであれば、先ほど私がちょっと触れましたけれども、民事訴訟的にきちっと争点を整理して、どういうふうにやっていくという、いわゆる審理過程を計画化すればできるんだろうと思うんです。
 私の労働委員会の印象というのは、そこの部分を何となく曖昧にしたまま、とりあえず次回は和解やってみましょうか、次回とりあえず話し合ってみましょうか、御意見を聞いてみましょうかということがあるんです。どうなっているのかという部分があるということです。
 ですから、そこの振り分けです。労働組合は本音がこうです、和解したいんでとはなかなかおっしゃらないでしょうけれども、それは委員の力量で切り分けをしていくということが大事なんじゃないかと。そうすれば、例えば結果的に労働委員会で2年くらいかかった、3年くらいかかったとしても、ある程度申立人の方が納得するんであれば、それは一般的な意味での長期化という不満はないはずです。紛争が解決するわけですから、ないはずだと思っています。
 ただ、申立人が命令を求めている、会社側も和解できない、会社も命令を求めている事いや、そうは言わないでもう一回話し合ってください。話し合いでだめですからここに来ているんですと言っても、そうおっしゃらないで、先生そう短気を起こさないでとか何かと言われて、ずるずるやっているということなんです。
 だから、そこの切り分けの問題が大事になるんじゃないかなという気がします。端的なお答えになっているかどうかわかりませんが、そういう気はします。

○角山氏 先ほどそこで少し提案を申し上げたつもりなんですけれども、労働委員会が判断されるときは、基本的には公益委員でやるわけですね。労働側、使用者側の参与委員はいますけれども、一旦命令を出す段階になると公益委員が判断するわけですけれども、正直申し上げて、大変お忙しい方が、資料がこんなになったものを精査した上で、命令をお書きになるというのは大変だと思うんです。これを速くしろと言っても、ファシリティーの関係で、これはどんなことを言ったって、ファシリティーがちゃんと用意できていなければ実現しないと思います。問題の指摘はできても、先ほども御指摘があったように、どうしたらできるか。さっさとやってください、審問の指揮も公益委員にちゃんとやるようにしなさいと規則をつくっても、できないものをやれと言ってもできるわけがないですから、それは公益委員の人数を増やすなり、究極的には専門的な公益委員というか、アメリカのNLRBの場合には、行政裁判官というんですか、それがおりますけれども、そういう方がおやりになれば、専門的に朝から晩まで時間をつぶすことができるわけですから、命令という意味での労働委員会の判断が充実してくるかもわかりませんです。
 ただ、今の大きな流れの中でそういう新しい制度を作れるかということ、それから、相対的な集団的労使紛争の比重が社会の中で少なくなっている中で、社会的なリソースをそこに注げるのかという問題をもっと大きな観点で見る必要があるんでしょう。

○鴨田氏 先に今の角山先生のお話に私なりに一言付け加えさせていただくとすれば、私は事務局職員の専門性をいかに高めるかという問題だと思います。今は非常勤の公益委員の方が命令を出すというのが最大のメリットだということで労働委員会制度は組み立てられているわけですから、たしか昭和58年くらいだったと思いますが、石川先生の石川委員会報告が事務局職員の専門家的養成ということを提起されながら、これはずっと20年来出きないままなわけです。国も各自治体も全く努力をしてこなかったということが一つ言えるんじゃないかなと思います。
 私の方に御質問のありました証拠の関係ですけれども、具体的にまず考えられるのは、現行法で言えば民事訴訟法の部分の改正ですね。それから、労働法的観点で言えば、まさに御指摘いただいたように証拠が偏在をしているという実情を踏まえた労働争訟法なり、あるいは立証責任、証拠提出責任についての規定をきちんとつくっていただく。
 例えば会社側が一定の主張をする。その裏付けになる書証が出せるはずなのに出さないというときに、その主張をどう見るのか。この辺は裁判官に是非見ていただきたい。裏付けの書証がないにもかかわらず、前後一応合理性があるということならば、大体会社側の主張を事実認定してしまうわけです。
 その辺は具体的な事件の運用の中でも、私たちはこういう書類があるはずだから出せという求釈明をしたり、場合によったら当事者照会とかいろいろ試みますけれども、それに積極的に応じてくる使用者側というのは余りいらっしゃいません。
 そういう当事者間のやりとりを裁判所の方は見ていらっしゃるだけ。そこに積極的に介入していって、真実発見のために、こういう証拠を出せとか、出したらいかがですかという指揮をされるケースというのは、私が経験する限り非常に少ない。この辺はもう少し積極的な関与があってもいいのではないかなと思っています。

○春日委員 証拠開示の話が出てきたので、特に角山先生にお伺いしたいと思ったんですが、やはり和解とか裁判外解決、これに結び付くのはやはり結果の予測をしているからだというお話があったと思うんですが、この結果の予測をするにはある程度事実関係について、双方代理人との間で、ある程度事実はこうなんだという最低限の共通の認識がないと、和解の話とか裁判官の解決というのはうまくいかないと思うんですが、先生の場合の御経験で結構なんですが、どの程度相手方代理人と話し合ったりするときに、自分の方の手持ち証拠を出してもらっているのか。あるいは、出さないとか。
 それから、先ほどちょっと当事者照会のお話も出ましたので、それもお伺いしたいんですが、比較的最近当事者照会は、使われていないという話を弁護士の先生の何人かから聞いたことがあるので、その辺の今の御経験で結構なんですが、お伺いできればと思います。

○角山氏 手持ち資料の提出というのは、実は会社側でその資料を隠しているという前提で議論されているんですけれども、解雇事件などの場合には、立証責任が事実上逆転しているというのは皆さん御存じと思うんです。本当は立証責任は労働者側の方で解雇権濫用の事実を立証しなくちゃいけないはずですけれども、裁判の現場においては完全に逆転していて、会社側が正当な理由を立証できなければ解雇事件では負けてしまうわけです。そのときに会社が資料を出さないということはあり得ないわけで、それを正当化づける資料を、それこそ必死になって集めてきて、裁判所に食べていただけるように料理して、それは何年も掛かって存在する事実を裁判所に数か月の間に食していただけるように料理するというのも大変な作業なわけです。それをちゃんとして一応出しているという自負があります。

○春日委員 お伺いしたいのは、裁判の場面ではなくて、裁判外での紛争解決のときにという前提なんです。

○角山氏 裁判外のときにはむしろ逆で、正直申し上げて、裁判外で和解をするときには、本当に事実をお互いに出し合うことが解決に結び付くのかというのは、場面によって違うと思います。いろんな事件があるので、ひとくくりで申し上げられませんけれども、解雇事件などのときに、解雇すべき正当な事由があったとして解雇されそうになっているとして、仕事ができなかった云々の話を、これからお互いに手を握って、裁判所に行かないで解決しましょうというときに会社がそんなものとっとと出して、それを受け取った従業員の方が、そうでございます、私が悪うございました、解雇されてもいいですから、和解金は少なくてもいいですとなるかというと、絶対にならないわけでして、むしろ解決をしたいときには、お互いに曖昧な中で、何となく解雇の理由がありそうでなさそうで、とことん殴り合う前に、和解したらどうですかということになるわけですから、徹底的に証拠をお互いに出し合うというのは、解決の方向に必ずしも結び付かないというふうに私は見ています。裁判になれば出すしかないんです。
 それから、当事者照会ですけれども、民事訴訟法が改正されたときに、多分どっと来て、ディフェンス側、経営側はてんてこ舞いになるであろうと予測してまして、当初は幾つか出たことがありますけれども、今はほとんどありません。
 というのは理由はあるんです。それはなぜかというと、訴訟になったとき、訴訟が解決になったときには、やはり裁判所での最後の事実整理のところに結び付かなければ、どんなことをやり合っても、単にそれは時間の無駄なわけでして、裁判所に理解していただけるような事実関係の整理というのが必要だと思っております。
 当事者間だけでやるときには、感情の方が先に立っていますから、法的に問題になっているところの問題に限定して事実関係のやりとりをやるんではなくて、あっちにもこっちにも飛んで、多分収拾がつかなくなるんだろうと思うんです。それが嫌だったら裁判所を通じて当事者間でやって、裁判所が要らないところは裁判所の指示で切り落としていって、必要があるところは裁判所がこれについてもっと言ってください、と言った方が最終的には、本当の意味での事実に近付くということがあるんじゃないかと思うんです。

○八代氏 1点だけ補足してよろしいですか。
 今の点で、労働事件の解決が共通の証拠、あるいは共通の事実認識があった方が早いんじゃないかという前提が訴訟外にしろ、訴訟にしろあるような気がするんですけれども、私はむしろ逆なんじゃないかと思うんです。勿論、事案によるんでしょうけれども、例えば会社側はこういう立場からこう言っている。それは正しいかもしれないし間違っているかもしれない。労働側はこういう立場からこういっている。それは正しいかもしれないし間違っているかもしれない。ですから、例えば裁判所があなたの方は負けますよ、こういう前提を立てますと負けますよと言う。そうかなと考えるわけでしょう。ある意味で共通の事実認識があったら、ほとんど弁護士は答えがわかってしまう。むしろそれは立場が違うからある意味で裏表で全然違うから、共通の認識がないからこの辺でよくわからないけれども、妥協しようかという面がかなりあると思うんです。
 そういう意味で言うと、事案によるという前提ですけれども、共通認識があるから事案の解決が早くなるということは、むしろ逆なんじゃないか。例えば会社がめちゃくちゃなことを言っているけれども、そのことを一々論破していると長く掛かりますよ。だったら、この辺でどうですかという押さえ方もあるんでしょうし、それは逆もあると思うんです。だから、必ずしも事実認識を共通にしたら解決が早いのかどうか、紛争解決については、私も疑義があるような気がします。

○山口委員 全然別のことでも構わないでしょうか。先ほどの鴨田先生の話なんですけれども、訴訟にしろ調停にしろ、適切な人を得ることは必要だというお話がありまして、私もそれはそのとおりだと思うんですけれども、実際に労働調停を導入する場合に、労使慣行その他について、かなり外資系の方から、巨大企業とか小さいところまでいろいろあると思うんですが、そういうことについてもある程度想定された方を一定数確保ということが必要になってくると思うんですが、実際問題として、そういうことがある程度可能だとお考えなのかどうか、労使それぞれの方にお聞きしたいんです。

○鴨田氏 すべての分野にわたって実体験として意見が言えるような方をそろえるというのはなかなか難しいだろうと思います。例えば私の方でも事件をやるときに、タクシーならタクシー、その業界の慣行と言いますか、運用と言いますか、用語と言いますか、特殊なものがそれぞれの業界ごとにあるわけです。それを初めての業界なら聞き出しながらようやく事件として組み立てていくと。そのような現場の話をくみ取ろうという姿勢のある方で、一定の労使関係の中での経験のある方が何人かそろうのであれば、私は十分に可能性があるのではないかと感じています。

○角山氏 私の経験は余りワンマン社長という経験はないんですが、外資系の企業でも、日本の企業でも比較的規模が大きなところが多いんですけれども、例えばですけれども、私が要請されたとしても、私の知識は外資系の企業とか大企業に限定されましょうから、すべての分野について経験のある方というのはおられないと思うんです。
 ですから、そういうまだら模様になっている。この分野は強いけれども、この分野は弱いというのは、組み合わせでそういう人たちを集めてくるという方向しかないんではないか。
 経営側もそれぞれの団体があるわけですから、ある程度の数は出せるんでしょうけれども、これは大都市の議論ではなくて、地方に行ったときに実はどうなるのか、これは非常に心もとないところがあると思います。

○山川委員 先ほどの迅速性との関係で、事件の振り分けというのができればかなり有効かなという気がしたんですけれども、審理の計画を立てる段階において、労働委員会でも裁判所でも、紛争全体の解決のために、最初から、事件を振り分けるプロセスを取るということは可能でしょうか。代理人の先生方同士で話し合うことによって、あるいは他の方法でも結構ですが、何か工夫がありうるでしょうか。

○井上氏 それは可能だと思います。

○山川委員 急ぐ事件と、そうでもない事件ということでの振り分けですね。

○井上氏 それは代理人が合意していいかどうかなんですけれども、ある程度事案の性質といった区分けはそれなりに可能だと思います。

○八代氏 山口さんの質問事項の中にありましたけれども、私が言ったように弁論準備でもどうしても形式的になる。だったら、例えば代理人同士を呼んで、どこまでできるかわかりませんけれども、この事案についてはどうなんだ。率直に意見交換をする。これは昔東京地裁でかなりやっていたと思うんです。私呼び出されて、責められた記憶がありますから。ただ、最近そういうのが余りなくなった。いろんな問題があるからなくなってしまったのかもしれませんけれども、むしろそれは復活させて、例えばこれは調停でもいいのか。あるいは判決まで行くのか、和解もあり得るのか。そういうのは最初の段階で呼んで、別々に呼ぶのがいいのかわかりませんけれども、そういうことをやればある程度建て前と本音希望はとこういう形でというのは言えるんだろうと思います。それをやれば、調停でもいい。あるいは和解に早い時期に付してほしい。とてもじゃないけれども、和解なんて冗談じゃない。がっぷり四つに組んで、土俵を割っても割っていないと言いたいんだとか。そこはかなり代理人同士と裁判所を入れて振り分けというか、訴訟進行の見込みとかやるということは私は有効なような気がするんです。

○菅野座長 まだおありかと思いますが、予定の時間を大分過ぎているので、弁護士の先生方からのヒアリングはそのくらいにしたいと思います。1点お諮りしたいのは、今日提出された資料の中で、特定の裁判官が行った事件名が書いてあるものがありまして、それは最初の労働側からの御説明で、そういう本意ではないという御説明もありましたので、インターネットでの公開のときには伏せた形にしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○菅野座長 では、そのようにさせていただきます。本日は本当にお忙しい中、4人の先生方、おいでいただきまして、ありがとうございました。御礼申し上げます。
 ここで、10分ほど休憩いたします。

(休  憩)

○菅野座長 それでは、次に社会保険労務士の方からのヒアリングを行います。本日は岩城猪一郎社会保険労務士、及び大野実社会保険労務士にお越しいただきました。本日はお忙しいところ労働検討会にお越しいただきまして、ありがとうございます。
 早速ですが、着席のままで結構ですので、20分程度御説明をお願いいたします。

○岩城氏 御紹介をいただきました社会保険労務士の岩城でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○大野氏 社会保険労務士の大野でございます。よろしくお願いします。

○岩城氏 それでは、レジュメに沿いまして、御説明をさせていただきたいと思います。
 社会保険労務士として、実情、実態を御理解いただこうということでこのようなレジュメをつくらせていただきした。
 まず、1枚目の社会保険労務士の現状ということで説明させていただきますけれども、社会保険労務士法が昭和43年6月に公布されまして、12月2日に施行されています。当時の趣旨説明によりますと、特に中小企業の労務管理の近代化が切実な問題となっており、労働社会保険関係の法規に通暁をして、適切な労務指導を行える専門家の制度が必要だということがその中で述べられています。
 制度の 目的の一つは、労働及び社会保険に関する法令の実施に寄与するということで、労働基準法をはじめとする50近くの労働社会保険関係諸法令に関する事務の円滑な実施に寄与するという、社会的な役割をここで持っているわけでございます。
 更には、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資する、良い会社づくりに専門性を発揮するようにという2つの側面が私どもに課せられていると理解をしているところであります。
 次に、社会保険労務士の主たる業務ということで3つ書かせていただいております。労働社会保険諸法令に基づいて提出いたします行政機関への書類の作成、申請書等の提出代行というのが1番目でございます。
 2番目に、審査請求等の代理事務も行っているところです。
 3番目には、労務管理、更には労働社会保険諸法令に関する相談・指導ということでございます。
次の項目の会員数ですが、47都道府県で現在2万6,039 名の会員がおります。うち開業社会保険労務士が62%強で1万6,189 名の者が業として携わっています。また、勤務等ということで、企業とか団体の中で勤めながら専門性を発揮して頑張っている方が9,850 名います。合計で2万6,039 名の方が現在全国で活躍をしているということでございます。
 最後の 研修についてでありますが、北海道から沖縄まで47の都道府県毎に1個の社会保険労務士会が設置されております。その社会保険労務士会、更には全国6つのブロックの地域協議会、連合会と、3つの主催による研修会が開催されておりまして、法令とか労務管理の研修を私どもは受講しているところであります。
 中でも、就業規則の作成、労働判例事例研究も非常に活発でありまして、自主研究会などが盛んに行われているということを付け加えさせていただきたいと思っております。
 次のページでありますけれども、企業内における紛争防止や紛争処理の現状と課題ということでございます。
 1番目には、社会保険労務士の関与の実情ということでありますけれども、ポイントを要約して申し上げますと、労働社会保険諸法令の適正な運用に努めるとともに、法遵守の行政手続を行っております。これは資料もございますので、後ほど御覧いただきたいと思います。
 更には、労務管理の相談指導ということを中心に、継続的な顧問契約の中でサービスをさせていただいているところであります。
 資料1を御覧いただきますと、私どもの業務の範囲が御理解をいただけるのではないかと思っております。資料の中に入っていると思いますけれども、今申し上げたすべての業務、労働社会保険諸法令に係る書類の作成、提出・代行・事務代理・労務管理をやっているという開業者が59.2%、これは昨年の10月に実施いたしましたアンケートの結果でございます。
 更には、申請書の作成とか事務代理だけやっており、労務管理はやっていないという方が29.5%います。そして、労務管理の相談指導をしているという方が7.8 %おり、その他が3.5% ということになっており、これが私どもの実際に行っている業務内容ということで御理解をいただきたいと思います。
 それから、労使のせめぎ合いというか、時代を反映いたしまして、労務管理についての御相談が非常に多いわけですけれども、その下の方に掲載してございますが、「労務管理の相談、指導業務の主要なものの内容」ということで、これも時代を反映していますが、一番目には賃金に関わるような相談が非常に多うございます。次いで労働時間、採用、退職、安全衛生となっております。
 そこで私どもは法令等を遵守しながら手続をするということですけれども、これも資料の中にお入れしてございますとおり、手続業務に関するトラブル事例の主なものを幾つか掲載させていただいております。会社の方から一人採用したから社会保険の手続をお願いします、雇用保険の手続をお願いしますという依頼があるわけです。その場合私どもはまず書類をつくる前に、採用が法令等にかなって適正におこなわれているかどうかということをチェックしております。例えば労働契約書がちゃんと結ばれているかどうか。その内容はどういうふうになっているかとか、賃金にはどういう項目が載っているかとか、例えば被扶養者がいるかどうか、年金手帳を持っているかどうか、それから労働条件の明示が更に詳しくされているかどうか、就業規則の周知がされているかどうか、そんなことを確認しなから手続をしていく。雇用保険についてもそうであります。また、社員が業務上けがをしたときには、労災保険ということになりますけれども、そのことにつきましても、法令等に的確に行う必要があるということで、色々なことを従業員や事業主から確認しながら手続をしているということでございます。
 それから、2番目の「企業内における労働関係紛争の発生要因、性質、労使の考え方等」ということでありますけれども、発生要因については、大体労働法規違反が多いようでございます。特に経営者の労働法規に対する無知識、無理解、そういうことが根底にあるようでございます。
 就業規則等の社内ルールが未整備ということもあり、悪いようにしないから任せておけといったタイプの昔ながらの経営者も数多くおられるわけであります。そういうことが労働者の不満とか不平となって、トラブルがいつ起きてもおかしくないという現場も数多くあるわけであります。
 そこで私どもは、まず労働紛争を未然に防ぐことが非常に大事であると思っており、それにエネルギーをかなり使っているというのが現状です。私の場合はそういうふうにしております。
 それから、次のページでございますが、時間がなくて大変恐縮ですけれども、ポイントのみ説明させていただきます。「労働関係紛争の性質、労使の考え方等」についてということでありますけれども、先ほど申し上げたようなことで、社内ルールが未整備である、また、労働者への周知が十分されていない、運用の誤りがあるということで、お互いに都合のよい解釈を労使の中でされていることが非常に多いようであります。そういうことがトラブルの原因になっているし、労使の考え方の相違がそんなところにもあるようです。
 そこで私どもは就業規則を作成する際には、かなり神経を使ってやっているところであります。資料にはお出ししておきましたけれども、就業規則を作成するときにはヒアリングシートというのを作っておりまして、会社の経営理念と言いますか、ビジョンはどんなところにあるのかとか、就業規則を定めた目的はどうなのかとか、社員の定義はちゃんとなっているかとか、そういうことをヒアリングしながら、法令等に的確であり、かつ会社の実情を反映している、そういう就業規則をつくることをお勧めしている、指導しているということであります。
 更には、そのような就業規則があるわけですけれども、古いままの就業規則がかなりございます。そこで、その就業規則を診断して差し上げようということで、就業規則の診断プログラムというのも作りまして、この中でチェックを掛けていくということもしております。
 会社の 現状、法令等に適正な就業規則であるかどうか、それから就業規則の充実度はどうだとか、こんなトラブルには、こんな判例が出ておりますよということも示しながら、無知識、無理解を何とか改めさせるため、有効に活用していることを御理解いただければ大変ありがたいと思っております。
 それから、3番目の「企業内における労働関係紛争の解決の取組みの状況、課題」でございます。まず私どもはトラブルを未然に防ぐ、起きないような仕組み作りが必要だと思っておりますので、これも資料にしてございますけれども、トラブルの芽を発見しよう、何とか未然に防ごうということで、労使トラブル診断シートというのを作りまして、50の設問を作っております。これも資料の中に入っていると思いますけれども、こんなことで労使トラブルの芽をとにかく摘もうと、それが未然防止で一番重要なことだと考えております。
 この設問でありますけれども、業種、業態によって設問も全部変えるようにしております。定形的な設問とか答えではございませんで、業態別に、いろいろ設問を変え、答えを変えて説明をする、提案をするということで、トラブル防止のために活用しているところでございます。
 このように努力しているわけですが、どうしてもトラブルが起きてまいります。このときが実は問題でございまして、これも資料4にございますけれども、私どもではどうしても手が届かない、やってはいけないという法の制約がありますので、最終的には弁護士の先生にお願いをする、一緒にお手伝いしながら解決、改善するということもあるわけですが、これもアンケートの結果にでていますとおり労使紛争処理に関わったことがあるかという問いについて、41%の方が関わっているという数字が出ております。
 処理をした内容はどんな内容が多いか、先ほどの数字と同じですけれども、解雇の問題、賃金の問題等時代を反映しているようなところが多いようです。
 それから、紛争処理をしたもののうち、訴訟までに関わったものということで、弁護士の先生に経過を説明し、資料を提供したとか、訴訟にいたるまで弁護士の先生方と一緒に活動した、そうした数字の結果も出ています。
 次のページ、トラブルを回避する上で弁護士法72条の障壁を感じたことはあるかという質問については、4割の方が感じたという答えも出ております。
訴訟に関わった方のうち、弁護士法 72条の障壁を感じたかという質問については、そちらの方も6割くらいの方が感じたというデータが出ております。
 いずれにいたしましても、私ども継続的に企業との関わりを持つ中で、やはり詳しく、早く知る立場にあるので、企業の方から、また働く方から、スピーディーに速く解決してほしいという話が多くあることを聞いている現状であります。
 次のページですけれども「社会保険労務士会での労務相談の取組、概況」はいかがでしょうかということでありますけれども、先ほど申し上げました47都道府県に総合労働相談所を14年度中に設置することにしております。現在は、東京始め、9個の社会保険労務士会で相談をお受けしています。東京都社会保険労務士会での相談の件数は、資料3にございますけれども、去年の4月から今年の3月まで、東京都社会保険労務士会館の方でこのような御相談を受けております。これもやはり賃金とか退職、解雇の問題、それから労働契約、就業規則等の問題がどうも多いような感じでございます。こういうことが今後全都道府県、14年度中には、47都道府県でこのようなサービス、御相談に応じようということで現在、進んでいるところでございます。
 それから、各種統計資料というのは、すべてをお出ししておりませんけれども、私どもの実情、実態という意味では、お届けしている資料で御理解をいただきたいと思っているところでございます。
 また、各委員の方々から御質問をちょうだいしておりますけれども、それについても資料としてお届けしてございますが、一応ポイントだけでも、大野社会保険労務士の方からご説明いたします。

○大野氏 それでは、少し形式的になって恐縮でございますけれども、先般、委員の方々から御質問をちょうだいしておりまして、それに対する回答といいますか、コメントを改めてお話をさせていただきたいと思います。
 また、後ほど詳細な御質問があればと考えております。 資料の方の「社会保険労務士への各委員の質問に対する回答」がお手元にあろうかと思いますので、それを少し読み上げるような形で御説明をさせていただきます。
 高木委員の方から御質問をちょうだいしております。「社会保険労務士の多くに、企業から報酬を受けつつ労務コンサルタント等の使用者サイドに立った業務が見受けられるが、労働側に立ち紛争を扱うことができるか」という御質問をちょうだいしておりまして、私ども社会保険労務士制度の目的は、事業の健全な発達と、労働者等の福祉の向上に資することとなっており、社会保険労務士の職責というのは、公平な立場で、誠実に業務を行うということが主眼となっておりまして、共有化した価値観であるというふうに考えております。そういうことで、特に労働側に立って、労働紛争を扱うことに何ら支障はないだろうと思っておりますし、実際、私どもも多くの事例として労働者側からの御相談も数多くあると考えております。

○菅野座長 質問を受けたいので、この点だけは是非ということをお願いします。

○大野氏 それでは御質問を頂きたいと思います。

○菅野座長 ありがとうございました。ただいまの御説明について御質問等をお願いいたします。

○村中委員 最初に社会保険労務士になって、開業するためには、社会保険労務士の試験に合格するということ以外に何か条件はあるんですか。

○岩城氏 社会保険労務士試験に合格する以外には社会保険労務士になる方法はないと思います。弁護士の先生は勿論、弁護士資格により社会保険労務士になることはできますけれども、そのほかは一応試験に合格するということが大前提です。
 実務経験があれば、若干の試験科目免除という制度はありますけれども、それ以外はありませんし、また、その場合でも他の科目の試験を受けなければいけませんので、おっしゃるように、試験に合格しなければ社会保険労務士になれないと、そういうふうに御理解いただいて結構です。

○大野氏 社会保険労務士の登録をするためには、試験に合格する、それに加えて実務経験が2年以上ないと登録できないということになっています。

○村中委員 実務経験というのはどういう経験ですか。

○大野氏 企業の中での人事・労務に関するポジションにいたというような企業での労働及び社会保険に関する実務経験が中心です。あるいは、社会保険労務士事務所での社会保険労務士の補助の勤務年数が2年以上という場合も含まれます。企業であれば、企業の事業主、社会保険労務士事務所であれば所長が証明をすることによって実務経験の確認をしているということです。

○岩城氏 1つ補足させていただきますけれども、試験に合格しても2年の実務経験がないと登録できませんので、実務経験に代わる講習を連合会で行政指導の下で毎年行っております。実務経験に代わる勉強を座学で行っていると御理解いただければよろしいかと思います。

○齊藤参事官 社会保険労務士さんの場合に、お一人の方が使用者側の仕事も手掛けるし、労働者側の仕事も手掛けるということは現実に行われていますか。それとも、実際にはお一人の方は、使用者側を中心にやるか、労働者側を中心にやるか、区別されているのか、その点はいかかでしょうか。

○岩城氏 企業を構成しているのは働く人たちが構成するものですから、片方だけに偏った解決、相談というのはいささか問題があるのではないかと実は思っております。ですから、そういう意味では、中立公正という立場で御相談に応じることが多いのではないかと思います。中には労働者側に立ってやる方もおられますけれども、継続的に顧問契約の中で、トラブルが起きた、相談が起きたというときには、どちらかのサイドに立つというよりは、中立公正、適正というか、遵法ということで処理することが多いだろうと思います。

○齊藤参事官 私がお聞きしたかったのは、案件の処理とか判断の場面で中立公正が要求されるとかどうかという意味ではなくて、例えば開業されている社会保険労務士さんが、使用者側からの依頼、相談を中心に仕事をするというふうに割り切っていらっしゃるのか、それともまんべんなく、労使双方からの依頼、相談等をこなすような現象が多いのか、その辺のことなんです。

○大野氏 基本的には継続的な顧問契約ということで言うと、お金を頂戴するのは確かに事業主さんではありますけれども、労務管理を一緒に支援をしていくということで言えば、労働者側、あるいは会社側の立場は、基本的には同じでありますので相反することはないと思っています。そういうことで言うと中立であると考えています。ただ、結果的に労使の争いになったようなときには、どちらかの軸足に立つべきであると思っています。
 また、争い事が、スポットの案件として依頼されたときには、明確にどちらかの立場に立たざるを得ないということになりますが、通常の事件などでは、円滑に労使の関係がいくようにするために中立な立場でコメントをするし、我々の価値観としても、はじめから労使のどちらか一方に軸足を持っているということはないということです。

○齊藤参事官 大体わかりました。

○石嵜委員 弁護士の方はこれから先、恐らく事件の多様性とか、いろんなものを考えて、十分にデパート的に対応できるように規模を大きくしていくと思います。ですから、社会保険労務士の先生たちの今の開業の規模は、昔の弁護士は一人で職人的にやっておりましたので、今、社会保険労務士の先生たちは事務所というのはどういう具合で、つまり10人の事務所とか、100 人とか、そういう規模に関する統計があるのか。今はどれくらいの感じなのかというのがわかりますか。

○岩城氏 資料を持っていませんが、それもアンケートで取っておりますけれども、100人とか50人の職員というのは余り聞いたことがありません。職員の方が25人、30人の方はおられるようです。

○石嵜委員 職員というのは、その30人の方々が社会保険労務士の資格を持っておられると理解してよろしいですか。

○岩城氏 すべて資格を持っているということではなくて、本人も含めて、有資格者も何人かいるでしょうが、全体で補助の職員の方も入れて、20~30人と言ったら大きい方の事務所ではないかなと思います。

○大野氏 今は数字を持っていませんけれども、一般的なケースとしては、2、3名でやっている方が多いのかなという感触は持っています。いわゆる中堅と言われるような方たちが10名を超えるくらいの規模でやっているということだと思います。

○石嵜委員 今、公正、公平にという形でおやりになるということについては、弁護士も常に考えているんですけれども、弁護士も社会保険労務士の先生たちも食べなきゃいけないんですね。財政基盤というのは非常に議論になっていくだろうと思うんです。そうすると、両者間で紛争があるということなると、どちらの立場に立つかということになると、財政的なものを考えた場合に、顧問契約を結んでいれば、お金という問題もあるので、2、3人でやっておられる事務所というのは、顧問契約を結んでいる会社の数とか、こういうものについてどれくらいお持ちか、そういう統計はお取りになっておられますか。

○岩城氏 開業社会保険労務士1人の顧問事業所は、 35社ぐらいが平均値です。

○大野氏 経済的な基盤ということで言いますと、私どもは通常、継続的に企業の労務管理をサポートするという契約形態だと思いますので、そういう意味で言うと、争いごとだとか、トラブルがあって、始めてビジネスが立ち上がるということではないので、安定的なというか、健全な形で企業との関係を構築できていると思うわけです。

○菅野座長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本日はお忙しいところをおいでいただきまして、ありがとうございました。

(社会保険労務士会退室)

○菅野座長 次にフリー・ディスカッションに入る前に前回の検討会で委員から厚生労働省に対して資料の提出をお願いしておりまして、資料が厚生労働省から提出されております。岡崎委員の方から御説明をお願いします。

○岡崎委員 資料24でございます。2つありますけれども、1つは、労働委員会の命令についても、取消訴訟の終結状況といいますか、最高裁の方からも資料が出ておりましたけれども、私どもの方で集計をし直したものであります。平成11年から13年までの3年間につきまして、行政訴訟が起きているもののうち、裁判所で事件が終結したものを整理してみました。
 中労委の命令、取消訴訟が起きて終結しているものは、そこにある件数です。
 そのうち、判決で取り消されたというものについては、ここにある数字でありまして、これは取消しの率は、最終的には訴訟費用の負担割合で整理してあります。
 そういう形で見ますと、取消率は1割くらいで、地方の方が若干取消率が低いです。
 こういう数字をどのように見るかは色々あると思いますけれども、何か半分くらい取り消されているというのは、実態に合わないのではないかという感じがいたします。それが1つです。
 個別具体的のものについては、後ろに付いていますので、御覧いただければと思います。
 2つ目は、私どもが施行しております個別労働関係紛争解決法につきまして、相談件数が相当あるけれども、それに応じてあっせんとか、そういった申出は余り起きていないのではないかというお話があった件で、資料2で、まだ日が浅いので統計的に数字を整理してはおりませんが、幾つかの局の相談担当者にヒアリング等をして、定性的なお答えで恐縮でございますけれども、(1)にありますように、個別労働関係の紛争と言いましても、大きく分けると2つある。既に労使間で話し合いというか、結果と言いますか、そういうふうになっているということで、そうなってから持ってきているものと、そうではなくて、主として労働者側が使用者側から賃金が下がるとか、あるいは辞めてくれと言われたという中で、相手方と話しはしない中で、とりあえず相談に来たという2つがあるということ。
 統計処理はしていませんが、実感、ケースとしては、こういうことでありました。
 このうち②の方につきましては、相談の過程で全体として判例の動向とか、一般的な状況といったものを話していく中で、これは納得したという場合もあるし、明らかだという場合もありましょうし、色々なことがあります。
 場合によっては、そういうことを前提に自分で話し合ってみますということもあるわけですが、そういうものが相当ありまして、相談をした上であっせんや指導を申立てるというのは必ずしも多くないという状況であります。
 現に争いになってから来ているというものにつきまして、これを相談の中で納得されたというのもあるわけですが、こういったものについては、どちらかというと指導を要求したり、あっせんの申立のケースが多いということです。
 統計上の2万件くらいの紛争ということですが、それは紛争になっている度合が相当違うということであります。
 それから、他の機関にどういう形で取り次いでいるかということですが、これもまだ件数が余り多くないのですが、そこにありますように、私どもの方での解決を望まないけれども、他に何かないかということで相談を受けた場合に、弁護士さんに相談したらどうかということで紹介した例とか、あるいは最高裁のパンフレットがこの間配られていたと思いますが、ああいったものをお渡しして、こういう制度があるということでお示ししたりという例はあります。
 勿論、こういう形ではなくて、例えば担当機関が権限行使すべき事案等については当然行政機関に紹介して措置しているということはあります。
 それから、助言、指導をどういう形でやっているかという話ですが、個別の事案というのは、それぞれ若干差し障りがありますので、私どもの方から参考例として配っているものを付けてあります。それぞれ御覧になっていただければと思うわけでありますが、助言の場合につきましては、ある程度裁判例等の考え方を添付しながら、労働者との話し合いなり、あるいは再考を促すという形になっております。
 それから、指導の場合には若干の例があります。ここの事例にありますように、ほとんど事実関係が明らかなような場合には、支払うべきであるというような形で指導しているということもありますが、解雇の妥当性のように、最後の判断までは難しいというものにつきましては、いろいろな基準を示しながら最低値を指導するという形で少し引いたような形の指導になっているということであります。
 一応、先日、資料と言われた点について御説明いたしました。

○菅野座長 どうもありがとうございます。何か御質問ありますか。

○山口委員 1点だけなんですけれども、労働委員会の取消訴訟の関係のペーパーなんですが、実際問題として、終局件数と取消件数と書いてありますけれども、実際やってみると、和解その他の関係とか、ネーミングがどうかなという感じもあるものですから、進めたりして解決している分があるということ、それはちょっと御理解いただきたいと思います。
 それから、訴訟費用の関係で一部取消しの場合を出されておりますけれども、これは御承知のように、民訴の規定で訴訟費用をどうするかというのは、裁判所の裁量でやっていますので、必ずしも一部取消し、2分の1だから0.5 となるわけではない。これはあくまでも便宜的な基準ということで、厚生労働省の方でお考えになったんだろうというふうに思いますけれども、裁判所からみて少し気になります。

○岡崎委員 一部取り消されたものを、裁判所の資料みたいに取消で数を数えると、それはやはり過大に取消しというのが出ているんじゃないか。他にしようがないものですから、全部0.5 でやってもよかったんですけれども、どっちがいいかなと。それはいろんな分析ですから。

○山口委員 だから、統計資料をどう見るかというのは、見方もいろいろあると思うんです。それはよくわかっているんです。

○菅野座長 ほかによろしいですか。フリー・ディスカッションということで、本日のヒアリングを踏まえての御指摘、御感想を、後ほどお諮りしますが前回も少しお諮りした論点整理に向けて、本検討会の課題に関連して、本日のヒアリングをお聞きになった上で感じた問題点等を出していただきたいと思います。

○石嵜委員 今日は私達から指名をした先生方でしたので、1つだけ感想を述べます。使用者側のお2人の方から、訴訟審理の迅速化について、使用者はどう考えているかということで、外資の方は迅速にやりたい、日本の方は必ずしもそうではないと八代先生はおっしゃったんですけれども、勿論、鴨田先生が言うように、企業規模の違いがありますし、いわゆる使用者の性格などもあるんですけれども、私が25年やってきていて、今感じているのは、企業側はコストというものを非常に強く意識するんです。とすると、あの陳述書をたくさん使用者は書いて出すというけれども、あの陳述書は物凄く費用がかかるんです。ということは、従業員を使っているわけですから。具体的に出るお金よりも、ああいう証拠をつくるための従業員とか、役員を集めて話をするないし作成する時間のコストが気になっています。加えて、私らが今一番思っていますのは、従業員に陳述書を書いてもらうときに、違うことを書けと言ったら、私が解雇されたときにあんなことを書かせるのかと言って、絶対信頼関係がなくなりまして、使用者と労使の信頼関係を失って、その裁判コストよりもっと大事なものを失うんです。
 そういう意味では、コストという意識をものすごく強く持っておりまして、できるだけ我々も日本の企業の多くも、そういう意味では裁判は少々高いお金が掛かっても、こういう言い方は何ですけれども、和解しても、早く終わりたいというのが使用者側の本音に変わりつつあるし、これからきっとそう流れていくんだろうと私は感じております。

○鵜飼委員 私も是非感想を述べさせていただきたいと思います。
 私も30年ちょっとやってきまして、こういう公の場で労働側と経営側の代理人が労働裁判の在り方についてこういうディスカッションができるというのが夢のようでありまして、これは司法制度改革推進本部のお力のお陰だということと、時代が変わってきたなということを痛感します。共通の土俵で労働裁判の在り方について議論できる時代になっているのではないかなということで非常に感慨深いものがありましたけれども、立場の違いによって、勿論、ニュアンスは違いますが、適正、かつ迅速に労働紛争を解決しなければいけないというのは、社会が要請していることだと思います。その中で、それぞれの立場から現代の労働裁判が抱えている問題点、これはやはり制度ですから、必ず問題点があるわけで、新しい時代に向けて、改正をしていく必要がある。こういう問題点がそれぞれのサイドから出てきたんじゃないかなと思います。
 共通に思いますのは、労働事件というのは、本当に労使共に非常に重い責任を負うという感じがするんです。代理人として、どんな小さな事件を担当しても、労働者にしてみれば、その労働者の職業人生が掛かっておりますし、経営側にしてみましても、やはり経営の人事管理、労務管理とかいう組織的な方針にも関わってまいります。
 更にその結果が、先ほど八代弁護士がおっしゃったように、大きく他に影響するという点で、非常に重い事件なんです。そういう意味で、我々法律家として大きな役割、責任を感じると同時に、研鑽しなければいけないなということと同時に、その限界も感じておりまして、それが労働側、経営側の代理人の方からも出たんだろうと思いますし、この制度改革の中でも、法律専門家としての責任、どのようにこれから研鑽をして、改善していくのかということと同時に、その限界を考えながらやっていかなければいけない。
 そういう意味では、労働側と経営側の代理人がこういうふうに話す機会をこれからも是非つくっていきたい。日弁連においては、そういうふうな機運、あるいは委員会が立ち上がろうとしておりますので、それが1つの受け皿になっていくのではないかと思います。
 それと、是非裁判所と労働委員会と、お互いに同じ問題を処理している実務家同士の協議というのは是非お願いしたいと思いますし、その辺は実務の改善の面から言っても、制度改革の上からも必要なんだろうなと。
 最後に、是非最高裁にお願いしたいのは、判決とか決定の所要期間の問題とか仮処分の運用状況とか、いろいろ主張していますが、これは私としては、別にそれでいちゃもんをつけようという気持ちは全くありません。客観的、実証的に現在の労働裁判はどんな状況にあるかということをまず見極めた上で、そこから議論をスタートするということがなければ、お互いに感想程度で終わってしまうものですから、客観的事実は是非押さえていただきたい。
 最近私、イギリスの労働審判所のアニュアルレポートを見まして、控訴率は5%弱なんです。これはどういうふうにしてそうなっているのか、控訴が制限されるとか、いろいろなものがあるんでそういうことになっているんでしょうが、やはり事件の母数が違うということもあるんでしょうけれども、やはりそこら辺の実証的なデータが大事なところで、それをベースにして議論していこうということで、是非お願いしようと思っております。

○山口委員 今日の使用者側、労働者側の御意見を拝聴しまして、色々な見方なり評価というのがかなり違うなという思いが改めてしたんですけれども、そうは言っても、基本的に今の労働訴訟の在り方も含めまして、労働紛争の解決システムが今のままではいいわけではないという認識、これは労使とも共通しているかなという感じがします。労働者側、使用者側、それぞれ立場があるわけですし、考えの違いというのは当然あってしかるべきだと思うんですけれども、そういうことを乗り越えて、基本的な土俵の上で、それでも立場の主張、証拠を闘わせるというのは、そういう土俵づくりというのは、見通しとしてはある程度可能かなという感じがしておりますので、制度設計ということと同時に、今の制度がそのままでは良くないという認識は共通しているんであれば、制度設計に行く前の改善についても、労使の代理人も含めて、裁判所も含めて、考えていく必要があるんじゃないかなということは十分理解しました。感想です。

○菅野座長 私も1つ感想を述べさせていただきますけれども、今日のヒアリングの中で、八代弁護士が言われた当該事件の解決か紛争の解決かというのは、私もそのとおりだという感じがいたしました。集団的労使紛争というのは、長期的な労使関係の中で出てくる色々な事件なんですね。争訟事件として命令を出したりしても、納得しないで、結局、中労委、あるいは行訴に行くというので、労働委員会としては、当該労使関係そのものを安定させるために一番苦心してきた、よく言えばそういうことなんだと思うんです。労働委員会については、三者構成で、労使委員がいて、対立を解きほぐすという役割を、非常によくやってくれるというところもあったと思いますが、他方では、また八代弁護士が言われたと思いますが、事件の性質を選り分けて、そういう中でも早く命令を出さなくてはいけない事件、例えば団交拒否事件のようなものがあるわけで、そういうのを適切に選り分けて対処するということをしてこなかったんじゃないかという点は、私は労働委員会の関係者としては謙虚に耳を傾けなくちゃいけないと思います。
 それは、常に意識しているつもりではあるんですが、やはり全体として労使関係の安定化のための調整に余りにも偏っていたのかという気もいたすわけであります。この辺は、集団的労使紛争というのはどこの国でも独特の世界である。専門的な機関がつくられる独特の世界でありまして、労働委員会の今後の機能において、調整的な機能、労使関係を長期的に安定させる機能と、当該争訟事件を早く判定して決着させるというところをどういうふうに整理するかが非常に重要だと思っております。
 もう一つ、労働調停は実際には今は裁判所の和解手続で行われていることなんで、それが機能するのは判決・決定という公的な判断が後ろに控えているからじゃないかという御指摘、ごもっともだという感じがいたしました。イギリスの場合は、労働審判所にまず申し立てられて、それが全部自動的にACASという調整機関に回されるわけですが、労働審判所は、ACASでの調整状況に関係なく期日を指定してしまう。期日を指定して、大抵一回で解決するわけです。その期日が目安になって、ACASではそのときまでに調整を済ませようと努力し、当事者もそれを非常に意識して行動する。そういうことによって、実際上の連携の仕組みができあがるわけです。労働調停を設計するときには、そういうことを参考にする必要があるのかなという気がいたしました。
 以上です。
 ほかにいかかでしょうか。

○鵜飼委員 我々法律専門家としてやらないといけないことはたくさんあるということは切々と感じておりますけれども、是非これは労使の側にも、労働紛争というのは、この社会の中で、爆発的にこうしたものが起こってくるでしょうし、この問題の適正な解決というのはコンプライアンスというか、必要だと思うので、労使としてこの問題について、十分積極的に取り組んで頂きたいと思いますが、制度設計の中にも主体的に参加していただけないかというふうに期待をしたいと思います。

○矢野委員 感想ですが、1つは、事件になってしまって、裁判とか労働委員会にかかるケースを今問題にしているわけですけれども、その前の段階をよく考えなくちゃいけないなと思ったんです。
 つまり、労使がそれぞれの企業とか現場で自主的に解決できる能力、これがもしかすると弱ってきているんじゃないかという気がするんです。ですから、希望的な側面でいろいろ手を打つというのと、問題は小さい芽の段階で組合があってもなくても、現場で解決できるような能力を育てるということが一方で必要で、何でもかんでもお医者さんにかかるのではなくて、自分で健康法を考えるという部分が、この法律の世界でも必要なんだというのをお話を伺っていて感じました。
 もう一点は、専門性について、それぞれのお立場で、いろいろ突っ込んだお話があったんですが、要するに、労働事件というのは、個別問題であろうと、集団的な問題であろうと、物凄くどろどろしたところがあって、曰く言い難しというところですね。人間が絡んでいるということで難しさがあるんだということだと思うんです。それでも重い事件と軽い事件と、難しい事件と、複雑な事件と簡単な事件と集団的な問題と個別的な問題、それぞれいろいろ差があるという気もするんです。そこをどう整理したらいいのかというのはちょっと答えが出ないんですが、やはり建築とか医療過誤というのとちょっと性格の違う専門性というのが大分浮き彫りにされてきたような気がするんです。その辺、もうちょっと論議してみたいなという感想を持ちました。

○石嵜委員 今の点ですけれども、したがって、スペシャリスト的な議論ではなくて、いわゆる特質性のある現場における体験を通した熟練性のようなエキスパート的なものではないかという気がするんです。そういうものを求められている。その熟練度が事案によって、どれくらいの熟練度があればある程度の、三代川裁判官が言われた最終的な事件の本質の勘みたいなものをつかみ切れるかという、それは事案によっては違うだろうと思いますけれども、裁判にはそういう感覚も必要だと考えています。

○菅野座長 予定の時間を大分過ぎたんですけれども、もしよろしければ、残りのお諮りしたいことに移りたいと思います。今後の検討会の進め方についてでありますけれども、事務局の方からお願いします。

○齊藤参事官 それでは、今後の検討会の進め方につきまして、事務局の方で考えておりますところを申し上げます。
 まず、1つは、資料23をごらんいただきたいんですが、2枚目に今後のスケジュールといたしまして、諸外国の労働関係紛争処理制度に関してヒアリングを実施する予定としております。その要領案としてお示ししてあるわけですが、ヒアリングの人選や実施の要領等につきまして、御意見があれば本日お伺いしたいと思います。
 順番どおりに9月4日に予定されている検討会で、もしも諸外国の制度についてのヒアリングを実施しようということですと、そろそろ人選に入る必要があろうかと考えております。
 次に、7月29日の検討会での中間的な論点項目の抽出、整理の進め方についてですが、前回の検討会での御議論の中で、まず各委員から論点項目に関して、書面等で御意見をちょうだいすることとしてはどうかという御意見もございましたが、基本的には事務局におきまして、これまでのヒアリングやフリー・ディスカッションの内容を取りまとめながら、検討事項ごとに今後議論すべき論点項目を抽出整理したたたき台を作成させていただいて、それを踏まえて十分御議論いただきたいと考えております。
 ただし、事務局がたたき台を作成するのと前後して、委員の皆様から御意見をお寄せいただけるようでしたらよろしくお願いいたします。
 そして、事務局のたたき台が作成される前に御意見をお寄せいただける方につきましては、できれば7月初旬ころまでに御提出くださるようにお願いしたいと考えております。
 以上です。

○菅野座長 まず諸外国の労働関係紛争処理制度のヒアリングで、そろそろ人選とか実施の要領をかためていかなくてはいけないということでありますが、これについて何か御意見ありますか。私としては、皆様の御意見を伺った上で、人選については、この中の労働法学者の委員の山川委員と村中委員と御相談しながら、私の方で適任な方にお願いするということにしたいと思うんですが、何か御意見がこの場でありましたらお願いいたします。準備をしていただく関係で、そろそろ考えた方がいいということなんですが。

(「結構でございます」と声あり)

○菅野座長 何かありましたら、御連絡いただければと思います。
 それから、中間的論点整理のやり方は、今、事務局から御説明のとおりでありますが、私も関与しまして、事務局においてたたき台を出していくということですが、委員の皆様からも御意見をお寄せいただくなら、7月の初旬、5日が金曜日だと思いますが。

○齊藤参事官 事前に是非お出しされたいという方につきましては、そのくらいの時期までにお願いしたいと思います。

○菅野座長 そういうふうにしていただきたいと思いますが、この点について何か御意見ありますでしょうか。
 では、次回のヒアリングが終わった後でも、この点についてのフリー・ディスカッションをしていただいて、論点整理でこういうふうなことを希望するとか、こういう項目を加えてほしいというのがありましたらお聞きしたいと思います。
 そういうことでよろしいでしょうか。
 次回の労使からのヒアリング事項についての御意見の提出期限は。

○齊藤参事官 この点は、次回が7月1日ですので、6月14日金曜日くらいまでにできればお願いしたいと思います。

○菅野座長 よろしいでしょうか。
 では、最後に検討会の今後の日程について御説明をお願いします。

○齊藤参事官 次回は7月1日月曜日、午後1時半から午後5時を予定しております。当事者サイドからのヒアリング、あとはフリー・ディスカッションということになるかと思います。

○菅野座長 予定した議題はすべて終わりましたが、特に御意見はありますでしょうか。なければ、本日の検討会はこれで終わりたいと思います。長時間ありがとうございました。