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労働検討会(第6回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり


1 日時
平成14年7月29日(月) 13:30~16:30

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
菅野和夫座長、石嵜信憲、鵜飼良昭、岡崎淳一、春日偉知郎、後藤博、髙木剛、村中孝史、矢野弘典、山川隆一、山口幸雄(敬称略)

(事務局)
大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官、松永邦男参事官

4 議題
1.検討すべき論点項目の中間的な整理について
2.今後の検討スケジュール等について
3.諸外国の労働関係紛争処理制度に関するヒアリングについて
4.その他

5 配布資料
資料33 第5回労働検討会におけるヒアリング及びフリーディスカッションの概要
資料34 労働検討会の検討事項[再配布]
資料35 当面の検討スケジュール -たたき台-[再配布]
資料36 労働関係事件への総合的な対応強化に係る検討すべき論点項目(中間的な整理) -たたき台-
資料37 鵜飼良昭委員提出資料
資料38 今後の検討スケジュールについて -たたき台-
資料39 諸外国の労働関係紛争処理制度に関するヒアリング事項 -たたき台-

参 考
  • 「国民一人ひとりが輝く透明で開かれた社会を目指して」及び「内閣総理大臣挨拶要旨」
  • 検討すべき論点項目の中間的な整理についての事務局たたき台の作成に当たり、委員から事務局に対して事前にお寄せいただいた御意見

6 議事

 (1) 検討すべき論点項目の中間的な整理及び今後の検討スケジュール等について

 事務局から、資料36に基づいて検討すべき論点項目の中間的な整理について、また、資料38に基づいて今後の検討スケジュールについて説明がなされた。これらに関して、次のような質疑、意見交換がなされた。(□:座長、○:委員、△:事務局)

○ 議論に当たっては、個別労働関係紛争の増加等の労働関係紛争の実態についての客観的事実や、労働関係紛争の解決における裁判の役割についての認識を共有化することが必要である。

○ 労働関係事件に係る裁判へのアクセスの在り方については、ヨーロッパでは様々な配慮がなされており、当検討会の検討の中でも取り上げるべきである。

○ 今後の議論の前提となる指針として、労働関係事件の処理には特に迅速性が必要であること、適切で納得性の高い裁判が要請されることといった点を議論しておくことが必要である。

○ 検討の順番としては、裁判制度の在り方がどうなるかがはっきりしないと労働調停といったADRの議論はしにくいので、まずは裁判制度について先に議論すべきである。

△ 裁判へのアクセスの在り方については、最終的には司法アクセス検討会で意見が取りまとめられるべきものであるが、労働関係固有の観点から当検討会で御議論いただくこと自体は差し支えないと考えられる。その議論内容については、座長から司法アクセス検討会に連絡した上で、そちらで検討していただくことが適切ではないか。

○ 司法アクセス検討会の検討スケジュールに合わせて、当検討会でも必要な議論を行うべきである。

○ 総論的な議論を最初に行って、委員間で基本的な認識を共有することが必要である。
 検討の順番については、裁判制度が要であるので、まず裁判制度について議論し、その後、労働調停制度について議論すべきである。

○ 民事調停と訴訟では、手続的にも、制度の性質上も別個のものであり、あるべき調停制度と訴訟制度の議論はそれぞれ別の観点から議論できるのではないか。

○ ADRの在り方については、訴訟との連携や訴訟における専門的な人材の確保の問題とも関連し、裁判制度がどう構成されていくかを模索しながら考えていくことが必要である。現実的にも裁判制度の在り方を議論し、それを踏まえて調停制度を議論することが適当ではないか。

○ まず総論の議論を行い、委員間で認識を共有しておくことが必要である。その際には、将来的に労働関係紛争がどうなっていくか、それに応じて紛争解決の在り方をどうすべきか、裁判所にどのような役割を求めるべきか等について、トータルに議論しておくことが必要である。

○ 労働関係事件処理に係る専門性については、そのイメージに関して共通の認識が得られていない。どの部分に専門性があり、どういう制度に専門性を導入するのがよいのかといった専門性に関する認識を委員間で固めていく必要がある。

○ 議論の順番について、労働調停が先か、裁判制度が先かは様々考え方があろうが、まず総論を議論してからどのような順序で議論を進めるかを検討するのが効率的ではないか。

○ 労働関係紛争の動向についての将来的なイメージ、専門性の内容について、今後の議論の前提となる共通の認識を得ておくべきである。また、今次の司法制度改革の目的との関係についても議論しておくことが必要であろう。

□ 認識を共有化するため、総論部分の議論が重要である。その際、司法制度改革全体の理念との関係についても議論しておくことが必要と思われる。
 また、検討の順序に関しては、各制度間の関係について一通り議論した上で考えることが必要ではないか。

○ 総論の議論の中では、認識の共有化だけでなく、労働関係紛争処理システムの基本的構想に関するある程度の方向性も出せるように議論すべきではないか。

○ 総論は今後の各論の議論の前提となる部分であると認識している。しっかり議論して各論に臨む必要がある。
 その際には、今後世の中がどう変化していくのかについてコンセンサスを得ておくことが必要ではないか。また、紛争の予防の在り方についての議論も十分しておくべきである。

○ 労働調停制度に関しては、現行の民事調停制度が利用されてこなかった原因についても議論すべきである。また、専門家調停委員の供給源、養成、報酬の在り方についても、他の制度と比較して議論すべきである。

○ 総論部分の議論を行って共通の認識を形成することが重要である。特に、労働関係事件に関する専門性・特殊性のとらえ方、労働市場の実態等についての議論が必要である。
 20~30年先にも通用する制度設計を考えるに当たっては、技術革新やマーケットの変化が雇用に与える影響についても議論しておく必要がある。

○ 雇用社会の変化に伴い、労働関係紛争の質や量がどうなっていくのかを議論し、その中で司法制度がどのような役割を果たしていくのかについて共通の土俵を作っていくことが必要である。

○ 労働関係紛争処理の在り方についての全体的なグランドデザインを議論する必要がある。その際には、労働関係のルールメーキングの在り方も含めて一応の議論が必要だろう。

○ 労働調停の役割については、裁判との役割分担、他のADRとの役割分担を検討することが必要である。ADRにも、個別労働関係紛争のあっせん、男女雇用機会均等法に基づく調停等様々なものがあり、これらの位置付けも考えることが必要である。

○ 労働委員会については、現状のままでは様々な問題があると思うが、厚生労働省としても十分検討し、変えていくべきところは変えていきたいと考えているので、その議論を踏まえた上で、当検討会でも議論してほしい。

○ 今後、労働関係紛争が増加していくのであれば、裁判だけでは処理しきれないと考えられ、ADRを活用せざるを得なくなる。まずは今後の紛争の量と質の見極めについて議論し、その上で、調停制度と裁判制度のいずれを先に議論すべきかを考えるべきであろう。
 民事調停は、未払い賃金の事件等で十分活用できると思う。ADRは無視できない存在であり、今後ますます必要性が増してこよう。

○ 本案訴訟手続と仮処分手続の二重構造には様々な問題があり、こうした事実をどのように評価し、改善が必要かについて、論点整理の中で重点を置いて取り上げてほしい。

○ 来年の秋口までに大方の議論を終わらせることになるとすると、検討時間が足りなくなるのではないかと心配している。そうならないよう検討会の頻度を増やすなど工夫してほしい。

○ まず総論の検討を行った上で、各論点について濃淡、優先度を付けていくことが必要である。

○ 論点項目の抽出については一通り項目が出ていればよく、今後はある程度方向性を出していく必要があろう。したがって、総論からでも議論に入っていくべきではないか。

○ 当検討会としては、法案要綱又は意見書を作成するのか。

△ 基本的には、要綱の作成や意見書の取りまとめまでお願いするものではない。

○ それでは事務局は検討会の議論を聞き置くだけか。議論の結果は形には残らないということか。

△ 立案作業は、当然、事務局が検討会の議論を踏まえて進めていくものであり、聞き置くだけということはない。必ず意見書の作成までしていただくことをお願いするというものではないということである。

□ 議論によっては、何らかのペーパーを作ることにもなるのではないか。何も作成してはならないということではない。

△ もちろん作成してはならないと申し上げている趣旨ではない。

○ 裁判へのアクセスの関係で、事件類型ごとに定型の訴状を用意することは可能か。

○ 簡易裁判所では既に実施しており、運用上の問題として地方裁判所でも可能かどうかについては検討を要すると思われる。

○ 総論部分については、ある程度時間をかけても徹底的に議論してほしい。

○ 社会における法の役割について、労働関係の実体法、判例、労使間の自主的な規範も含めて議論し、紛争の予防・解決にどのように反映させていくかを検討することが必要である。

○ 意見書の内容に即して、検討の終期を考えてこれから検討して行くべきであろう。

○ 検討の終期が定まっているので、総論部分から早々に議論できるようにしてほしい。

□ 次回は総論部分から議論を開始することとし、その後2,3回議論して総論部分についての共通認識を形成する努力をすることでどうか。

△ 中間的な論点整理を一通り固めて、総論部分についての議論に入り、その後各論の検討順序を決めていくということにしたい。

 (2) 諸外国の労働関係紛争処理制度に関するヒアリングについて

 事務局から諸外国の労働関係紛争処理制度に関するヒアリング事項について資料39に基づいて説明がなされた。その後、ヒアリング事項等について意見交換がなされた。

 (3) その他

 フリーディスカッションが行われ、次のような意見交換がなされた。(□:座長、○:委員)

○ 労働組合の全体としての組織率の低下、企業内における正社員比率の低下に伴う企業内の組織率の低下が進行し、労働組合を受け皿とする紛争解決の割合が低下しており、個別労働関係紛争が増加している。こうした労働組合の空洞化に伴い、企業内における自主的な紛争解決能力も落ちてきているのではないか。

○ 労働関係事件が裁判に持ち込まれない理由の一つとして、弁護士へのアクセスがよくないという意見があった。容易に訴訟を提起できるように、弁護士会としても弁護士へのアクセスの容易化についての議論をしていきたい。

○ 使用者側では、紛争をどう内部で自主的に解決していくかを議論している。アメリカでは企業内のシステムによる紛争の自主的解決といった議論も盛んである。

○ 労働関係紛争の自主的な解決能力が減退してきているのではないかと心配である。以前は、上司と部下の間、同僚間等の従業員間のコミュニケーション・ネットワークが存在していたが、こうしたものが薄れてきているようだ。
 また、雇用形態や働き方の多様化が進んでいるが、こうした変化をポジティブに捉えて、どのように問題解決を図っていくかを考えていくことが必要である。
 労働関係紛争については、ワンストップサービス化も含めて相談窓口を広くすることは必要だが、自主的な解決を目指した自助努力も必要である。

○ 成果主義の強調等により社内の上下間の親和性が弱まってきている。働き方の変化をポジティブに受け入れられるようにするための働くルール作りが必要だ。こうしたルールがないので、最近の働き方に対する信頼性が失われてきている。

○ 企業・個人における紛争の自主的な解決能力をどのように高めていくことが必要かを検討することが重要である。
 労使が裁判に関与する制度は、外部の紛争処理機関に持ち込まれた紛争の解決に労使が責任を持つというものであり、そこでの紛争処理によって得た蓄積が企業内にもフィードバックしていくのではないか。

○ 使用者側の多様性、特に中小・零細企業の存在に留意すべきである。中小・零細企業では、労働法や判例についての知識のないまま紛争が発生することがあり、制度設計に当たってはこうした企業の多様性も無視できない。

□ これまでの企業別労働組合を軸とした企業別の労使関係というものは紛争予防の機能が高かったと思うが、企業における後継者の育成の問題とも相まって、こうした仕組みが今後いつまで維持し得るのか懸念している。

○ 経営側としては、厳しい競争を戦っていくためにも、企業内に労使間のコミュニケーション・ネットワークを構築していくことが必要である。

○ 働き方の多様化に伴い、労働組合がコアとなる労働者を組織していない状況が増えている。労働組合としては、そうしたコアとなる労働者を活動の対象にしていけるようにすることが必要であると考えている。

 (4) 次回の日程

 次回(第7回)は、平成14年9月4日(水) 14:30~17:30に開催することとし、中間的な論点整理、論点項目中の総論についての検討、フランスの制度に関するヒアリング等を実施することを予定している。