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労働検討会(第6回)議事録



1 日時
平成14年7月29日(月) 13:30~16:30

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)菅野和夫座長、石嵜信憲、鵜飼良昭、岡崎淳一、春日偉知郎、 後藤博、髙木剛、村中孝史、矢野弘典、山川隆一、山口幸雄(敬称略)
(事務局)大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官、松永邦男参事官

4 議題
  1. 検討すべき論点項目の中間的な整理について
  2. 今後の検討スケジュール等について
  3. 諸外国の労働関係紛争処理制度に関するヒアリングについて
  4. その他

5 議事

○菅野座長 それでは、時間になりましたので、ただいまから第6回の「労働検討会」を開会いたします。
 本日はお忙しい中、御出席をいただきまして、ありがとうございます。
 まず本日の配布資料の確認をお願いいたします。

○齊藤参事官 配布資料の御説明を申し上げます。
 まず、資料33ですが、これは前回第5回労働検討会におけるヒアリング及びフリーディスカッションの概要でございます。従前と同じく事務局の責任において取りまとめをさせていただいたものです。御参考にしていただければと思います。
 資料34は労働検討会の検討事項でございます。御議論いただくために再度配布させていただきました。資料35は当面の検討スケジュールのたたき台です。これも御議論いただくための便宜として、再配布させていただくものでございます。
 資料36は、労働関係事件への総合的な対応強化に係る検討すべき論点項目(中間的な整理)のためのたたき台でございます。
 資料37は、鵜飼委員の提出資料でございまして、事務局の中間的な論点整理の案につきましての御意見でございます。これも参考にしていただければと思います。
 資料38は、今後の検討スケジュールについてと題する事務局の案でございます。
 資料39は、諸外国の労働関係紛争処理制度に関するヒアリング事項についての事務局の案でございます。
 参考資料としまして、「国民一人ひとりが輝く透明で開かれた社会を目指して」と題するアピール文、それから内閣総理大臣の挨拶要旨をお配りしています。
 また、検討すべき論点項目の中間的な整理についての事務局たたき台の作成に当たりまして、事前に委員の方から事務局に対してお寄せ頂いた御意見のペーパー、合計4通を配布させていただいております。
 資料は以上でございます。
 先ほど資料で確認させていただきましたが、顧問会議のアピールというものがございまして、この点について若干御説明申し上げます。
 7月5日に開催されました顧問会議におきまして、「一人ひとりが輝く透明で開かれた社会を目指して -21世紀の日本を支える司法を確実に築くために-」と第するアピールが取りまとめられまして、司法制度改革推進本部長である小泉内閣総理大臣に提出されました。このアピールは司法制度改革推進本部令第1条第2項に基づきまして、顧問会議が司法制度改革推進本部長に意見を述べたものであり、また、同時に国民に向けたアピールとしての意味を持つものと位置づけられているものでございます。
 アピールの内容としましては、2年以内に判決が出されるように、制度的基盤の整備や人的基盤の拡充を十分に行うというような目標が掲げられている点などが注目されております。
 また、労働検討会との関係では、労働関係事件への総合的な対応強化を図る旨が掲げられておりますので、この辺りを御注目いただければと思います。
 以上でございます。

○菅野座長 それでは本日の議題ですが、本日はまず、検討すべき論点項目の中間的な整理についてということで、これについて御議論いただいた上で、諸外国の労働関係紛争処理制度に関するヒアリングについて、御相談いたしたいと思います。
 まず、中間的な論点整理ですが、これまで4回にわたって実施してきたヒアリングやフリーディスカッションを踏まえまして、今後、本格的な検討を進めていくべき具体的な論点項目についての中間的な整理を行いたいと思います。
 本日は検討の素材として事務局において、中間的な論点整理についてのたたき台を作成していただきました。このたたき台は事前に委員の皆様方から頂戴した御意見も踏まえながら、私も関与して整理してもらったものであります。
 それでは、事務局からたたき台についての御説明をお願いいたします。

○齊藤参事官 事前に委員の皆様にもお配りしてございますので、要点だけ説明させていただきたいと思います。
 資料36を御覧いただきながらお聞きください。
 まず、始めに、たたき台を作成するに当たっての事務局の考え方を御説明いたします。
 論点項目の整理は、今後、当検討会におきまして、本格的に検討を進めていくべき具体的な論点を当検討会の4つの主要な検討事項に即して、ある程度体系立てて分類整理することにより、各論の全体像を明らかにするとともに、今後の検討がさまざまな角度から合理的に進められていくようにするものであると考えております。
 このような観点から、これまでのヒアリングやフリーディスカッションの中で御指摘のあったような事項、それから、制度論上の基本的な問題点と、重要な論点と考えられるような事項、更に事前に委員からお寄せいただいた論点に関する御意見、これらを踏まえまして、座長とも御相談申し上げながら、必要な論点項目を過不足なく盛り込んだものを目指してたたき台を作成させていただきました。
 たたき台の作成に当たりまして、事前に委員の方々から事務局に対してお寄せいただいた御意見の中には、検討に当たっての考え方や、スタンスについて触れておられるものもございましたけれども、中間整理のたたき台では具体的な個々の論点項目を箇条書きにするという形で参考にさせていただきました。
 また、論点の細目にわたると考えられる御意見につきましては、関連する論点項目の中に含まれ得るものと考えておりますので、今後の具体的な検討の場において、そうした点も含めて御議論いただけるものと考えております。
 それから、たたき台の作成に当たっての参考として事前に委員から事務局に対してお寄せいただいた御意見は本日皆さんにお配りしておりますので、適宜御参照いただければと存じます。先ほども触れましたが、事務局の本日のたたき台に対して鵜飼委員から、御意見が提出されておりますので、これも参考にさせていただきたいと思います。
 続きまして、検討すべき論点項目の中間的な整理のたたき台そのものの御説明を概要ですけれとも、申し上げます。
 まず、事務局のたたき台の構成ですけれども、「1 労働紛争処理の在り方について」といたしまして、裁判所を始めとする我が国の労働関係紛争処理制度の全体的な在り方や、紛争処理における専門性等、当検討会の検討事項全体に関わる総論的な論点を掲げております。
 そして、2以下で労働調停の導入を始めとする4つの主要な検討事項ごとに論点を整理しているところでございます。
 各項目の下には想定される論点といたしまして、個々の検討すべき論点や、これまでに御指摘のあった具体例等を記載しているところでございます。
 次に、各項目ごとに見てまいりますと、「1 労働関係紛争処理の在り方について」のところでは、「(1)労働関係紛争の動向等」「(2)労働関係紛争処理制度の全体像」「(3)労働関係紛争処理における特殊性・専門性」「(4)他の制度改善の検討の動きとの関係」等について御検討いただくこととなるのではないかと考えております。
 このうち(3)では、労働関係紛争処理における専門性の内容や紛争処理過程への専門家の活用の要否、在り方等について、各論での議論に先立って、全般的な御議論をいただいてはどうかというふうに考えております。
 (4)は、他の制度改善の検討の状況とも十分に連携を図っていくことが必要ではないかと考え、留意すべき事項として掲げております。
 「2 導入すべき労働調停の在り方について」以下につきましては、大体これまで当検討会で触れられてきたような事柄などを、適宜整理してございます。以下、3、4、5、大体ごらんになったような項目を整理してあるという次第でございます。
 なお、「5 労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方について」でございますけれども、この検討会では基本的には救済命令に対する司法審査制度の在り方について御検討いただくということになると思いますが、これと関連する範囲内で、労働委員会制度の在り方についても、御議論をいただく必要はあるのではないかと考えております。
 概略は以上でございますが、いずれにしましても、事務局の案としてお示しするものでございますので、本日の検討会で十分に御論議いただければと思います。
 以上でございます。

○菅野座長 事務局からたたき台を出していただいたということですね。このたたき台を用いて、論点整理の構成、論点として盛り込むべき事項、その他について御意見をいただきたいと思います。
 御自由にどうぞ御発言いただきたいと思います。何人かの委員の方々からは事前にそれぞれの論点整理の案、考え方を出していただきましたので、それらをこの場で御披露いただいても結構ですし、どうぞ御自由に御議論いただきたいと思います。

○鵜飼委員 この事務局案を見せていただきまして、一応私の意見を資料37という形で提出させていただきました。言いたいのは、やはり総論につきましても各論につきましても、この意見書のテーマにもありますし、今度の顧問会議のアピールにもありますけれども、21世紀の日本を支える司法制度というコンセプトに基づいた労働裁判の在り方を検討しないといけないと考えますので、果たして現在の労働紛争の状況がどういう実態にあるか、特に個別紛争が90年代増えておりまして、その増える状況というのは今後も構造的に変わらないのではないかという点の認識がまたあります。
 これは審議会の議論の中でも、更には意見書の中でも明記されておりますので、あるいは個別労働紛争解決促進法等のADRの整備等についてもそういう法律ができたり、労働委員会で個別紛争についてすでに40くらいの労働委員会が個別紛争を扱っているという状況があったり、そういう意味では客観的な事実としてお互いに共通認識ができるのかなと思いますが、やはり立法事実として、その前提的な認識が必要なのではないかと思います。 その上で、では、裁判というのは、増大する個別紛争に対して有効に対応しきれているかどうか。今回のアピールにもありますように、労働関係事件についても、総合的対応の強化という点からいって、特に司法が増加する労働紛争に対して十分に対応しきれているかというのが現状の認識でございます。
 この間ヒアリング等でも明らかになりましたように、客観的な数値としましては、労働事件数が諸外国、特にヨーロッパ等に比べて非常に少ないという事実があります。これは労働者の人口比からしましても、数十万単位のヨーロッパの事件数に比較して、せいぜい日本は2,700 件くらいになっております。やはりもっと紛争が裁判の手続で解決するという対応を強化するということが必要ではないかという認識を私は思っておりますが、その辺の共通認識が持てるかどうかという点が1つあります。
 そこで私として先ず論点の中に付け加えていただきたい点は、アクセスの問題でありまして、ヨーロッパ等で労働事件数が多いということを検討してみますと、アクセスについて、いろいろ制度的に配慮されております。私、97年にイギリスに調査に行って、いろいろ驚いた点があったのですが、例えば訴状1つにしても、この1枚で裏表で、これは不公正解雇についての訴状でありますが、非常に簡単に、本人でも書き込めるような簡単な訴状になっている。こういう点を始めといたしまして、例えば訴え提起の印紙もイギリスの場合は要らない。ドイツの場合は、非常に低額化していますし、最高限も定められております。
 このようにアクセス面、例えば代理権にしても、弁護士が代理人でなくても、労使団体の職員が代理人になるとか、非常に容易なアクセスを可能とするシステムがございます。そういうものもあって、件数が日本とヨーロッパで違う。諸外国の法制の検討の際にアクセスの点も是非検討していただきたいと思います。特に私が労働側で切実に感じておりますのは、大体提訴が、98%くらいは労働者側だと思いますので、そのアクセス面の苦情と言いますか、そういうものが非常にありますし、私自身も痛感しておりますので、それは是非中間的論点の中に入れていただきたい。それは日本の司法が十分対応し切れていない1つのポイントとして避けて通れないテーマではないかと思います。
 司法アクセス検討会で議論されているということのようですが、私もいろいろ資料を取り寄せたり、議事録を読んだりしておりますし、勿論、一般的な訴訟費用についてとか、いろいろ議論されておりますが、やはり労働事件についての議論はされておりませんし、そのデータ、資料、例えば外国等で労働事件について、特別に配慮されているということについてのデータ、資料は一切出されておりません。
 一種の守備範囲が空白状態になっているのではないかと思いますので、これは途中でボールがぽとりと落ちるようなことがないように、労働検討会においてこれを検討テーマにしていただいて、ここで独自にやるのか、司法アクセス検討会の方にボールを投げるのかわかりませんが、司法が有効に対応するために必要不可欠なテーマだと思いますから、論点としていただきたい。
 もう一つは、総論を含めて、中間的な整理で論点が出されておりますが、その前提として、労働事件の特殊性として、提訴側、特に労働者は働いて生活しておるという観点から、迅速性が非常に要請されるという事件の処理、これは一般的にもそうでありますけれども、特に労働事件は迅速な処理が要請される。
 同時に、適正かつ納得性のある裁判手続が要請されるという、ある意味では対立する要請をいかに制度設計上満たしていくのか、満足させていくのかというのが非常に工夫を要する点だというふうに私は認識しております。
 これはこの間のヒアリング等でその辺の問題点が明らかになったのではないか。要するに、制度設計を考える場合の指針と言いましょうか、指導理念という点から言うと、意見書なりこの間のアピールで明確に出ております法の支配を社会に及ぼしていくというコンセプトがありますが、労働事件については、今言ったような要請が制度設計上、非常に大切な要請になってくる。それを前提とした上で、その各論について、議論が必要なのではないか。単に専門性で議論するだけでは、ちょっと空中論戦になりかねないので、とくに労働事件について迅速性と適正性と納得性ということをどうかみ合わせて実現していくか、そのときに専門的な知識経験、あるいは紛争についての解決のノウハウをいかに活用していくかという観点から議論すべきではないかと思います。
 そう考えますと、今後のスケジュールの点がありますし、論点ごとの議論の順番というのがあると思うのですが、これは審議会の中でもどういう順番で議論するかということは大変な議論になったことは審議会の議事録を見てもわかりますが、私も限られた時間の中で、各論点をどういうふうな順番で議論するかというときに、これは非常に重要になってくると思います。
 その際、中間的な整理の中では、まず始めに労働調停がありまして、その次が参審、または参与の問題、労働事件固有の手続、そして最後に労働委員会の司法審査の在り方について、があります。
 これは事務局の方で意見書の構成、意見書の提起を踏まえてこういうふうな順序にされたのであって、余り特別な意図はないのかもしれませんが、私はやはり裁判機能の強化というのが論理的、実践的にまず先行すべきであって、労働調停というのは一種のADRでありますが、現実に労働調停はこのヒアリング等でも明らかになりましたし、我々も実感として思っていますけれども、なかなか実際調停というのは利用しにくいものがあります。労働調停に余り大きく期待するということはできない限界性があると思います。
 本来、裁判そのものがどういう形になるのかということがはっきりしませんと、判定的、強制的な解決機能というのがどういうものになるかということがはっきりしませんと、その前段である労働調停というものを構想するというのは非常に難しい面があると思います。
 そういう意味でせっかく労働調停を先に議論して、細かな制度設計をしても、労働裁判そのものについての議論によって、場合によってはもう一度やり直さないといけないということにもなりかねませんし、逆に言うと、労働調停に時間が掛かって、裁判制度そのものについての議論の時間がなくなってしまうということにもなりかねませんので、私はやはり労働裁判の機能の強化の点の議論を順序としては先にやっていただきたいと思います。 大体以上が中間的整理の全体を見た上での私の感想であります。

○菅野座長 ありがとうございます。今の御意見の中の司法アクセス検討会との関係については何か事務局の方でありますか。

○齊藤参事官 まず一般論にとどまりますけれども、司法アクセスの関係は、司法アクセス検討会がありまして、その検討会において中心的な課題というのがあるわけなのです。いわゆる弁護士費用の敗訴者負担の問題と、それからあとは訴訟費用の関係のところです。一応司法アクセス検討会の方でこれを課題として検討しておりますので、その課題自体としては、司法アクセス検討会の方が最終的に意見をとりまとめるというものだと考えております。
 ただし、当検討会の方も労働関係事件固有の観点から、訴訟制度の在り方についても検討するということも課題になっているわけですので、そういう観点から御議論いただくこと自体が全く否定される必要はないのだろうと思っております。
 ただし、両方の検討会で意見をとりまとめるということは、これはある意味で調整不能になってしまう危険性もありますので、一応労働検討会としては、司法アクセス検討会で固有の課題として挙げられている課題につきましては、こちらでの議論や考え方、御意見、こういったものを適宜座長なりから、司法アクセス検討会の方に御報告いただくなり連絡いただくなりして、司法アクセス検討会の方でも十分御議論を尽くしていただく。そういった関係を考えるのが一番適切なのではないかと一応考えております。

○鵜飼委員 司法アクセス検討会における検討のタイム・ターゲットというのはあるんでしょうか。平成15年度通常国会に上程するという予定がありますので、例えば労働関係訴訟の固有手続を考える場合に、例えば訴訟費用の問題も当然出てきますし、あるいは簡易訴状、これは運用の面でできるかもしれませんが、例えば弁護士費用の敗訴者負担の問題、これは外国でも仮にそれを導入している国でも、労働事件については例外扱いになっております。訴訟費用についても、これも例外扱いになって、低額化又は無料になっています。これは司法アクセス検討会のタイム・ターゲットがあるのであれば、早急にこちらで議論して、そういうものについてこういうふうになっていますよ、こちらの意見はこうですよというのを出すべきじゃないかと思うんです。
 向こう側のタイム・ターゲットを押えないで、そちらで意見がまとまった後でこちらをやったってしようがないんで、そういう意味では、いつ、どういう手順で進めていくかということをこちらで見極めた上で早急に検討しないといけないと思うし、諸外国の法制度の場合は、アクセスについても是非テーマに入れていただきたいと思います。

○菅野座長 諸外国のヒアリングはまたあとから検討しますので、落ちていたらまた、おっしゃっていただきたいと思います。

○髙木委員 議論をしていくのに必要な、少なくともこういう議論をするなら、こういう基本的な認識みたいなものを共有して議論した方がいいのではないか。根っこのところで全然頭に描いているイメージが違って議論を始めてしまうとどういう議論になるのかなと、ちょっとそんな気がするものですから、どれくらいの時間をかけるかはともかくとして、総論的な議論を少し最初にしていただいたらどうかなというのが1点。
 議論する順番がいろいろあるのだろうと思うのです。そういう意味で今、鵜飼さんがおっしゃった参審制とか、参与制とか、それから議論をしていただく。と申しますのも、マンパワーの問題とか、専門性というか特異性というか、そういう議論など、何と言っても裁判制度が要であるわけですから、その要である裁判制度のところを固めつつ、それとの関係で例えば労働調停はどう考えていくのですかというふうに、議論としてはそういう順番ではないかと思ったりしますので、その辺の議論の順番は、私は参加型裁判制度というか、それから議論していくのがいいのかなと思っております。
 とりあえず以上です。

○後藤委員 今、調停と訴訟で議論の順序がどうかというお話だったのですけれども、調停は当事者の互譲によって紛争を解決する手続であり、訴訟の方は法令を適用して終局的な判断が出るということで、性質的にも別だし、手続の在り方も全然違うものだと思います。労働調停は労働調停で、どういうものが労働関係の調停としてふさわしいかという観点で議論すればいいんだと思いますし、訴訟は訴訟で、どういう手続が必要かということでしょうから、あとはそれをどうやってつなげるかという連携の問題は連携の問題として、その次の論点なのではないかと思いますので、順序は、特に訴訟からでなければならないということではないと思います。

○鵜飼委員 ただ現実的な問題として。

○髙木委員 訴訟から議論したらだめなのですか、おかしいですか。

○後藤委員 訴訟が決まらなければ、調停の在り方が決まらないというものではなくて、それぞれ別の観点から議論ができると思います。

○鵜飼委員 2つのテーマを同時に議論することはできないと思いますので、例えば是非御理解いただきたいと思いますのは、日本の場合、特に解雇という非常に普遍的で重要な労働事件が仮処分と本案訴訟という二重構造になっているという、これは解雇事件だけではありませんけれども、この五十数年そういう状況が続いているという状況があります。諸外国では私の知るところはほとんどそういうものはありません。迅速かつ適正な労働裁判の手続が存在している。それと参審制が組み合わされた形で、労働裁判が運営されているということになれば、ADRという任意的調整的な解決、それとどう連動していくかという制度設計上の工夫というのは、おのずから出てくるわけですが、今の二重構造の問題とか、あるいは参審制はまだペンディングということになりますと、労働調停はどういうふうに裁判機能が構想されていくかということを模索しながら労働調停自体を設計しないといけない。現実的な問題としては、労使の調停委員と、例えば参審制の労使の参審員、これは人材については同じところに供給源を求めざるを得ない面がありまして、そこで同じような資質が求められてくるわけですから、そういう意味では、やはり論理的に裁判機能の強化というところから議論をして、そして労働調停の制度設計を考えていくというのが順番ではないか、現実的にもそうなのではないかと思います。

○山口委員 最初に労働関係紛争処理の在り方という形で、総論的な議論を行って、基本となる認識を共通にしようというのは、これは私も賛成です。総論部分をきちっと委員の間で理解していないと、各論について議論したって、それぞれのスタンスが違うと言いますか、考えているところが違っているのは余り適切でないのではないかと思っております。そういう総論的なところを議論するという観点から言いますと、1つはここに書かれておりますように、将来紛争がどうなっていくかということ、それからそういう紛争を解決する処理制度がどうあるべきかということ。
 特に今、紛争処理制度としては、裁判所の方が最終的な紛争解決機関ということになるでしょうが、裁判所に対して具体的にどんな役割を求めていくのか。その役割というのは、ほかの紛争処理機関との関係で言えば、どういうふうに調整されていくかというトータル的な流れというか、そういうことをきちっとお互いに理解する必要があるのではなかろうか。そこの議論を十分する必要があると思っております。
 もう一つ、大きな柱となるのは、やはり専門性をどういうふうに考えるかという問題だと思います。ヒアリングの議論を聞いておりましても、専門性に対するイメージが必ず各使用者なり労働者なりの方で統一されているかと言いますと、これは裁判所も含めてですけれども、必ずしも統一された認識ではないというふうに私は感じました。
 したがって、労働事件の専門性を考える場合に、どの部分に専門性があると考えるのか、その専門性を持っている人はどういう人なのか、その専門性のレベルになってどういうふうな紛争処理機関へそういった人たちを持っていくのか。その人たちの人材確保の問題もありますけれども、そういった労働事件の専門性に対する認識なりをきちんと固めておかないと、例えば労働調停をどうするのか、あるいは労働の専門家を訴訟手続へ関与させるかどうかということを考えるに当たっても、その辺の認識が一致していないとうまくつながっていかないのではないかと思っております。
 そういう意味では言えば、まず、この委員会でやるのは、きちんとした総論部分についての一定程度の共通認識を得るということで、これがまず第一に必要なのではなかろうかと思います。
 労働調停から議論していくか、それとも裁判制度の導入の当否から議論していくかということについては、多分、いろんな意見があるかと思いますけれども、まず、総論部分をきちっと議論して、その認識の共通化ができた段階で、では、労働調停の方からやってもいい、あるいは裁判制度の方からやっていった方がより効率的だといった議論が出てくるのではないでしょうか。
 そういう意味で言えば、まず総論をきちっとやって、その後、調停なり裁判についてどういう順序で議論をしていくかを決めても遅くはないのかなと思います。

○菅野座長 髙木委員、先ほど基本的な前提、認識を共有する必要があるというので、総論的なところから意見等するとおっしゃいましたが、その総論的なというイメージはこのたたき台のイメージでよろしいのでしょうか。

○髙木委員 この中に含まれているのかなと思いますけれども、例えば労働関係紛争の動向等という、これから恐らく個別労使紛争を中心に、紛争はかなり増えていくんだろうということ、例えばそういう認識に立つか立たないかとか、まず現状から将来推計されることは大体こういう意味ではないかと思います。
 それから、いま、山口さんがおっしゃったように、論点の中でも例えば専門性とは何ぞやということについて、恐らくこの中でも大分イメージが違うのかもしれませんし、我々がこれから議論の前提にすべき専門性のイメージは大体こういうことなのかなと、イメージが絞り込めるか私自身もよくわかりませんけれども、例えばそういうのも議論の今後の前提となるべき認識として、もし、大体合意できるならそれを合意して、先の議論をしていった方が効率的な議論になるのではないかなと思います。
 それから、今後の司法制度改革の大きな1つの目的は、司法制度と国民的基盤というのが大きなポイントだったように、これは審議会に参加してきまして得た私の印象なんですけれども、例えば国民的基盤と労働事件というのはどういうことなのか。あるいは今、御提起のあった使い勝手が悪いという問題、その一番大きなものはアクセスの問題ではないかということですが、こういった問題もこの労働検討会でも、特に労働事件については、議論していっていいのではないかとか、そういう感じで、総論というふうに申し上げたのです。

○菅野座長 各論の制度を論ずる上での基本的な認識をできるだけ共有する上でも、総論部分が重要ではないか、という御意見のようです。その点について、総論とは何ぞやということなのですが、たたき台で示されている項目がありますが、そのほか鵜飼委員が最初に言われたようなこと、あるいは髙木委員が言われたことの中には、要するに、司法制度改革全体の理念というか、そういうことも必要なのではないかということも入っていると思いますが、そういうのも入れる必要があろうかと思います。そのほか何か、例えば先ほど調停が先か、労働調停と労働事件裁判制度の改革そのものとどちらが先かというのも、その総論の中で、各紛争処理制度相互の関係、裁判制度とADRとの関係として入れて、そこでまずひととおりの議論が必要かなという感じはしているのですが、他にありましたらどうぞ。

○山川委員 例えば調停にしても、訴訟手続の問題にしても、その中で基本的な方向に関わる論点と、言わば具体的な細かい論点とがあり得ると思いますが、その基本的な方向の検討は、今おっしゃられたことに近いんですが、総論の中でできるのではないかという気もします。資料36の1ページの中にアという項目がありますけれども、このアに入れるかどうかはともかくとして、アクセシビリティー等の点も含めて、かつ専門性も含めて、労働事件の全体的な特色みたいなものと、それが基本的に紛争処理システムにどう反映されるかということなど、おおまかな方向性みたいなものを議論して、あと具体的な論点は、順序はいろいろあろうかと思いますが、個別のところで考えるという進め方もあり得るかなと思います。状況の認識に加えて、ある程度方向性のようなものも出せるような形まで、総論のところで検討していけないのかなという気がします。

○矢野委員 総論部分というのは、いろいろ今後の制度と運用を考える背景とか、前提となる認識だと思います。そういう意味では、総論はかなりしっかりと論議して、各論に臨むというのが必要だと思います。これはおっしゃったことと考え方が似ているんですが、特に世の中がどう変わろうとしているのかという変化ですね。変化の姿と言いますか、動きと言いますか、小さい芽であってもこれから大きくなることがあればそれを重要視するとか、できればそういうような見方とか認識である程度コンセンサスが得られると、次の議論が組みやすいのではないかなという気がしております。
 これは紛争が起こった後のことを主として論点でたくさん出されているのですが、この1ページの一番下の行にありますように、紛争の予防と言いますか、こういう点についての議論というのを忘れずにやっていく必要があるということです。
 それから、各論の方で気づいたことがありますので申し上げます。
 労働調停のところで、導入すべき労働調停の在り方というのがありますが、そこで論点の1つとして、どうしてこれまで労働事件について民事調停が利用されてこなかったのかというところを論点に入れてはどうかという感想を持っております。
 それから、専門家調停委員の供給源という4ページのエ、これについても確かに供給源、養成の問題というのは大問題だと思いますけれども、報酬をどうするということも、ほかの制度との絡みで一遍見ておく必要があるのではないか。どういうレベルで、どういう形の報酬が望ましいのであるか。比較すべきほかの事例がわかりませんが、いわゆる専門家。調停委員で、いろいろ専門家を招聘している例があると思いますが、その比較検討をするということも必要ではないかと思います。
 この論点、全体的によく必要な事項に触れていると思いますので、また、気がついたら申し上げますけれども、法制審議会での少額訴訟の問題とか、裁判の充実・迅速という問題とか、是非アップデートにその議論を参考にして活かしていく必要がある。
 少し気がついた点です。

○石嵜委員 私自身の意見も、今出てまいりました総論でとにかく共通認識をちゃんと作ろうということです。特にそれについて、今の裁判制度でどの程度労働事件には専門性というか、特殊性があるのか、したがって、現状でいいかどうかという議論だと思っているのです。特にここでまとめられています労働市場の実態とその変化という、私は実務で生きていまして、そのマーケットと今の技術革新のすさまじい勢い、これは物凄いスピードで動くと思います。そうすると、20年、30年先の制度設計、こういう議論にもなるわけですから、今後のマーケットと技術革新によって影響を受けるであろう雇用社会、この方向性について一回は議論して、イメージをみんなある程度共通にしないと難しいのではないかと思うんです。
 その社会において、今から先裁判所とか、いわゆる解決の機関というハード面を増やしたり、裁判官の人数を増やすという形で、裁判官に十分勉強していただくということだけでその時代に絶え得るのか。
 それとも、現場で体験した人を入れながら制度設計をしていくのか。そこにはどういう専門性が必要なのか、この辺の共通認識をしない限り、恐らく各論ではがちゃがちゃになってしまうのではないかという気が私自身はしています。特に労働市場と書いてありますけれども、更に進めてマーケット、市場とか、技術革新の流れとか、これが雇用社会に与える影響というのを一回は議論しておきたい。共通認識を持っておきたい。使用者側からはそう考えます。

○齊藤参事官 今の石嵜先生の御発言で、マーケットという言葉をお使いになりましたけれども、それは。

○石嵜委員 労働市場というのは、その意味は、労働、レーバーという形で、雇用の枠の中で取ったものですが一般市場というのは、いわゆる商品の売買をする市場のこと。つまり、使用者というのは通常マーケットにサービスとか製造物を出して、売って利益を得てくる。ここはレーバーではなくて、もっと外資と共通する場面です。こういう場面の変化、つまり、一般マーケットというか、一般市場の変化を先にとらえて、それが労働市場に与える影響なのだろうと考えるのです。
 労働市場をそういうふうに意味づけ発言しました。

○鵜飼委員 私も同じ意見なのですけれども、実務をやっていますと、本当にこの雇用社会、いろいろな外的な要因によって規定される雇用社会というのが、一体この21世紀どういう姿になっていくのだろうというのは念頭から離れないわけです。その中から、さまざまな紛争が発生してきて、その中で先ほど山口委員がおっしゃったように、裁判というのはどういう役割を果たすべきなのかという議論、全体の雇用社会の在り方、姿を見た上で、ルールを形成し、更に判定的に法を適用していく裁判の役割はどういうものであるのか、現状はどうで、今後どうあるべきなのかという議論をする必要があります。
 諸外国では日本の人口比で言うと何十万という事件数がある。果たして日本ではそれだけの事件数を増やすような社会を考えるべきなのか。あるいは現在の状況はちょっとおかしいので、その中間的な形になるのか。その辺のシミュレーションはなかなか難しいかと思いますが、やはりあるべき雇用社会の姿を想定していく中でそこで発生する紛争の質、量をお互いに議論し、その中における司法の役割、労働調停とかADRの役割はそれなりにありますが、この社会を支える司法制度の役割という点から言うと、ルールを適用し、ルールを形成していくという役割は非常に大きいわけで、この裁判の役割をどういうふうに考えるのかという、そこら辺はやはりお互いの議論を出しあって共通の土俵ができませんと、各論の制度設計になかなかつながらないのではないか。その辺のところは全く同じような認識です。

○岡崎委員 私もある程度、全体のグランドデザインみたいな共通認識が必要だと思います。今、石嵜先生のお話をお伺いすると、どこまで議論するかというのはなかなか難しいかなと思いますが、確かにルールメイキングの話になると、判例によるルールメイキングというのも勿論あるわけですが、私、あるいは厚生労働省の立場とすれば、やはり立法なり規則なりでのルールメイキングというのもあって、こちらを議論する中でも、では、それでどういうふうに解決されるかというのも考えなければいけない。物すごく大きくなっていくと、どこまで議論するかというのはなかなか難しいかもしれませんが、ただ、一度は議論する意味があるのかなという気がいたします。
 最終的には司法判断であるというのは、それはそれでいいんだろうと思いますが、例えば労働調停とか調停制度を考えた場合には、その役割というのは、裁判がやる部分も全部取っていくのか、ほかのADRとの役割分担をするのかとか、その辺は考える必要があると思います。
 個別紛争のあっせんシステムというのは、基本的には何でもやるということになっていますが、ほかにも行政機関では、均等法の調停、あるいはルールを守らせるための調停として位置づけられています。
 それから、まだ国会を通っていませんが、人権擁護法の調停もルールを守らせるための調停です。したがって、いろんなシステムがあるということも、今後の社会がどう変わっていくかという中である程度位置づけて考えていかないといけないのかなと思っています。
 労働委員会についても、相当いろんな御議論というか、御批判があった中での話ですけれども、我々としても、今のままの労働委員会では、司法制度が変わっていく中で、なかなか本来の役割を果たしていないのではないかという思いはあります。ここにもメモ書きしていただいておりますが、私どもも労働委員会そのものを相当変えないといけないのではないかという認識はありますので、少しお時間をいただいて、そっちの方の議論も見ていただきながら、順番として議論していただければ非常にありがたいと思っております。

○鵜飼委員 労働委員会の議論は大体、どういうタイムスケジュールですが。期間的な目途というのはどうですか。

○齊藤参事官 我々の問題意識としては、要するに、この検討会というか、司法制度改革推進本部が16年の11月までだとすると、法律は恐らく16年の1月に始まる通常国会に出るという前提だろうと思っていますので、基本的なデザインについては、年内が可能かどうかは別として、1つに絞れるかどうかもまだわかりませんけれども、ある程度考え方は出していきたい。その中で、こちらの検討会の進み方も見ながら、姿をつくっていきたいと今のところは思っています。

○菅野座長 このたたき台の構成ですね。大きく変えてほしいという御議論があれば出しておいていただきたいのですが、今日いただく議論を十分勘案して、次回に改良版を出して、また、議論していただくことになると思います。

○髙木委員 これを見たら、我々が申し上げたのが入っているようにも読めますし。

○山口委員 ぼやっとしている感じがします。入っているのかなと。

○齊藤参事官 中間的な論点整理では、この時点で検討対象を事務局で取捨選択するという意図は基本的にはありませんで、むしろできるだけ議論すべき余地のあるものは、できるだけ抽出していくという発想でおりますので、細部に分析すれば、明記はされていないものも、一応中間的な論点整理の段階では、むしろ入っているというふうに御理解いただいてよろしいのかと思っています。

○春日委員 具体的には2を先にするか3を先にするかという議論なのかと思うんですけれども、恐らくは労働事件の量とか質という、将来予測というものに基づいて決まってくるのではないでしょうか。事件が、今2,700 件程度というんですが、これが何万件という数になれば、当然裁判所だけでは負担し切れるものではないと思うんです。そうしたら、当然ADRとか他の代替的な紛争処理の方に流れていくというか、流さなければいけないと思うので、そういう事件の量とか質が今後どんなふうに変わっていくか、そういったものをまず見極める必要があると思います。それは恐らく1の「労働関係紛争処理の在り方」というところで検討することになるんだろうと思います。そこでまず少し議論いただいて、それから2を先にするか、3を先にするかということを考えていったらいいのではないかと思っています。
 例えばドイツのように、事件数が何十万件もあるといったような状況だったら、これは当然裁判所以外の代替的紛争処理か何かを考えていかなければ事件は処理しきれないと思うのです。しかも、迅速とか、いろいろ利用者のニーズに応えるような紛争処理というのはできないと思うのです。まず、前提としての労働事件の量とか質、そういったものを少し考えていくべきではないかと私は思っています。
 それから、例えば個別紛争で、さっきちょっとお話が出たんですけれども、なぜ民事調停に事件が回っていかないのかというお話が出たと思うんですが、私は未払い賃金の支払い請求というので調停事件も何件か処理したことがあるんです。そうすると、その程度の専門性とか、特殊性があまり要求されない事件であるならば、これは民事調停でもかなりやれるなというふうに私は思っています。
 そういう意味では、やはりADRの存在というのは無視できないだろうし、これからも多分ますますADRというのは必要になってくるだろうというふうに考えております。

○菅野座長 何人かの委員の方から論点書を出していただいたものと比べると、これはさっきおっしゃったように、いろいろ入っているけれども、むしろ焦点がはっきりしないようなところもあろうかと思いますが、それは事務局が御説明になったように、できるだけニュートラルに皆様の御意見をいろんな観点も入れて整理したものですから、そうなっているのだと思います。一人の考えできれいに整理した方がずっとわかりやすくて、何を言いたいかとか、論じてほしいかがよくわかるのだと思いますけれども、それも御議論いただいて、先ほどから御指摘のように、総論のところでできるだけ率直な御意見をいただいて、共有できるところは共有していく中で整理していけるのかなというふうに希望しております。
 それで、もしも中間論点整理のたたき台についてとりあえず御意見がなければ、今後の検討のスケジュールの点に入って、それでまたこのたたき台に戻ってきていただくということも必要かと思いますので、そこの点、事務局の方の考えている御説明をいただけますでしょうか。

○齊藤参事官 それでは、資料の38をごらんいただきたいと思います。
 中間的な論点整理の御議論を終えた後で、今後のスケジュールのことを御議論いただこうかと思ったんですが、ある程度関連している状況でもございますので、今後の検討スケジュールのことにつきましても併せて御検討いただければと思います。
 まず、中間的な論点整理を踏まえまして、さらなる論点項目の整理をどのようにすべきかということでございますが、中間的な論点項目の整理の検討の中で、論点項目のまとめ方、あるいは構成、具体的な事項等については、かなり詳細な内容になってきつつあるかと思います。
 そこで、諸外国の制度に関するヒアリング等を踏まえた上で、中間的な論点整理に対して、必要な加除修正を加えていき、そのことによって、論点整理を完成させていくというようなイメージも一つあろうかと思います。
 また、中間的な論点整理を一通り区切りを付けて、中間的な論点整理を踏まえた一通りの御議論というのを尽くしていただき、その上でのさらなる論点整理を行うというような考え方もあろうかと思います。
 この辺り、率直に申しまして、事務局の方でどういう手法を、ということを確定的に考えているわけではございませんので、この辺りを委員の方からも率直な御意見を伺いながら検討してまいりたいというふうに思います。
 諸外国の制度に関するヒアリングは、結局、この資料38をごらんいただきますとわかりますように、9月中の2回に分けて実施させていただく予定でございます。実際に対象先の教授の方々に連絡を取りましたら、既に9月4日では全く都合が付かないという方もいらっしゃいましたので、2回に分けて行わせていただきます。
 したがいまして、諸外国の制度のヒアリングと並行して、中身の議論も時間を有効に使って進めていくことで効率的にできるのではないかというふうに考えられます。
 そこで、先ほど申しましたように、中間的な論点項目の整理から、その先をどういうふうに進めるか、その手法も含めて御議論いただきたいのですが、今後ヒアリングと並行して中身の議論も徐々に詰めていけるのではないかというふうに考えております。
 それから、司法制度改革審議会の意見書におきましては、労働調停制度につきましては導入すべきであるというふうに検討事項の中で、ある意味で唯一方向性が明確になっているわけでありますので、労働調停の具体的な制度設計等の検討は、着々と法案提出時期をにらみながら、やはり進めていく必要があるのではないかというふうに考えます。ただし、勿論専門的な知識・経験を有する人をどのように活かしていくかという点では、労働調停は裁判制度の課題と共通のものがございますので、この共通した要素をばらばらに検討するというのは不合理かと思いますが、その関係性に留意しつつも、労働調停の導入という点は確実に検討が進むようにといった配慮も必要ではないかというふうに考えております。あとは、先ほど岡崎委員からも触れていただきましたように、労働委員会の審査の在り方の関係は、一応厚生労働省の方の研究会が先行していますので、それとの関係をうまくとらえながら進めていく必要があるのではないかというふうに考えております。
 概略ですが、今後のスケジュールにつきましては、事務局の方でそんなことについて関心を持っておりますので、是非委員の方々からも御意見をいただければと思います。

○菅野座長 資料38はごらんのように、第9回以降は空欄になっておりますので、どういうふうに進めていったらいいか、是非御意見をいただきたいと思います。
 次回に、今日の論点整理に関する御議論を踏まえたたたき台をもう一回出すわけですが、論点整理は一応このぐらいで中身の議論に入った方がいいのかなという気もいたしておりますけれども、どうぞ御意見をいただきたいと思います。

○鵜飼委員 先ほどの中間的論点整理のところでよろしいでしょうか。6ページのところの「4 労働関係事件固有の訴訟手続の整備の要否について」のところなのですが、これはヒアリングでかなり具体例が出まして、先ほども少し申し上げましたけれども、労働仮処分と本案訴訟が二重構造になっている側面があります。これは、第一次仮処分、第二次仮処分、仮処分異議、本案訴訟というふうになっていて、これは実務家として、特に労働側でやっていてこういう形でいいのかという思いを常にしていますので、この前にヒアリングで出された実態についてどう見るべきなのかという点を入れてほしいと思います。現在の二重構造、第一次仮処分、第二次仮処分という形、また保全の必要性を一つの要件とせざるを得ないということをどうするか、です。
 これは、仮処分制度本来から言うとそうなるかと思うのですけれども、しかし一方で労働事件については、仮処分を解雇事件で利用せざるを得ないというジレンマがありまして、この辺で実務の中でいろんな問題が起こってきている。第一次仮処分、第二次仮処分、仮処分異議、本案訴訟で判断が食い違うという、それは裁判所にとっても双方の代理人にとっても、特に当事者にとって非常に負担が重いことです。この辺の事実をどう見るのか、それに対して現状でいいと考えるのか、あるいはそれをどういうふうに改善することができるのか、それは運用改善でできるのか、あるいは制度改革が必要なのか、これはやはり重要な論点だと思います。
 これは民事保全法をつくる際にも、保全の手続の中で労働仮処分の特則が必要かという論点がありましたが、あのときにはまだ我々もそういう問題意識がなくて、そんなものは必要ないという意見をたしか出したと思うんですが、私は現状から言うと、個別労働紛争が増えているし、それが利用者、当事者にとって大変な負担になっていますので、これは真剣に議論しなければいけないテーマではないかなと思いますので、その論点の中に入れてほしい。
 少し固有手続の整備のところが、余りにも論点が少な過ぎるなというのが率直な感想なのでお願いしたいと思います。

○齊藤参事官 今の鵜飼委員の御発言に関連するのですが、たたき台の方では、6ページの4の(1)のところで「・労働関係訴訟事件における民事訴訟手続の現状と評価」ということを1つ項目として挙げてあります。
 それから、7ページの「(3)その他」のところで「・仮処分手続の在り方(証拠調べの在り方)」としてその点も含めてという趣旨で、このような項目も挙げてございますが、今、鵜飼委員が論点項目に挙げてほしい内容というのは、ここにもある程度関連しているとは思っていたんですけれども、もう少し別立てで明確に掲げた方がよろしいということになりましょうか。

○鵜飼委員 結局、ここに書いてありますので、私も余り意見を述べなかったんですが、やはりまずスタートラインとして、先ほどから何回も言っておりますように、労働仮処分と本案訴訟の併存状況についてどう見るか、そこのさまざまな弊害とか、それでいいという意見もあるかもしれませんが、私は弊害だと思っていますが、その事実をどう見るかということを検討してほしいなと思います。確かに書いてありますので、それはこの議論でやればいいのであろうとは思うのですが、その辺のトーンの置き方が、これでいいのかなと若干不満を感じるものですから申し上げたのです。

○齊藤参事官 トーンという部分は、どうしても特定のトーンで整理するというわけにはいかないものですから、そこは少し抽象化してしまっているという御批判になるのだと思いますが。

○鵜飼委員 あえて言うと、括弧の中にあるというのがどうかと思います。

○齊藤参事官 大体わかりましたので、その点は工夫させていただきます。

○髙木委員 このたたき台は、次回も少し議論があるのかどうか知りませんが、期限からしますと、来年の秋口までに大方の議論をしなければいかないということだと認識しますならば、多分後ろの方で詰まってしまうのではないかなと思います。
 そういう意味では、1つのテーマごとにどれぐらいの時間が取れるのか、そういうのも若干の想定をしてもらいながら、これだけのものをこなすのに、1時半から5時までの会議で、延べ何回の会議が必要になるのか、その目途を立てていただいて、それが何十回なのかよくわかりませんが、月に1回ぐらいのペースではとても追い着かないということなら、もう少し頻度を増やすなり、どこかで集中してやるなりしないと多分論議が終わらないまま時間が来てしまうということになってしまうのではないかなと、私もそれを一番危惧しますので、その辺の論議の仕方も含めまして、大方の皆さんは総論的なことも少し議論しましょうということなので、例えば次回にその辺も若干たたき台に加えていただくなりして、その辺から早速始めてしまおうかとか、今までヒアリングのときにいろいろ意見を言ったという御認識ですけれども、ヒアリングのときにそう意見を言えるような時間が十分あったかといったら、そんなこともなかったような気がしますし、だからあそこではまだ十分な議論をしていないというのが大方の皆さんの御認識でしょうから、議論を始めると一つ一つでもかなりの議論になるのだろうと思いますし、そういう意味では、しつこいですがかなり先に行って詰まってしまう心配をしているんですけれども。

○菅野座長 そこはよく考えて、逆算して場合によっては回数を増やしたり、スケジュールをちゃんと立てて、結局時間が足りませんでしたということで終わらせないようにしたいと思っております。

○村中委員 論点が非常にたくさんありまして、さきほどからのお話を聞いていると、結局どこが重要で、何からやらないといけないのかということが、いま一つよくわからないということですから、とにかく総論的な議論というのを早くやって、論点整理というのは、その後でなければ意味がないのではないでしょうか。論点の整理をするときには、濃淡をはっきりさせていく、優先順位を付けていくということをするために、そのときには先ほどいろいろ皆さんがおっしゃったように、司法制度改革の理念からいって、労働事件の処理について何をしなければならないのかという論点で濃淡を付けていくという作業を早く進めるというのが大事だと思います。そうしますと、総論的な議論というのは、どの段階で、いつやることになるのでしょうか。

○齊藤参事官 そこで先ほど事務局から少し御説明させていただいたのは、中間的な論点整理が、例えば次回で一応完成ということであれば、中間的な論点整理を踏まえての総論の議論という形も1つ考えられますし、中間的な論点整理から、さらなる論点整理をできるだけ合理的に、早目にやり遂げて、そこから総論の本格的な議論というような考え方も一応あるのかなとは思っているんですが、どうも最終的な論点整理というものをきちんと行うためには、今、まさに村中先生がおっしゃったように、どうもある程度総論的な議論を経た上でないと合理的にやりにくいのかなという気もしております。
 ですから、その辺りも是非皆様から御意見をちょうだいして、今後の進め方の道筋を考えていきたいというふうに考えているわけです。

○岡崎委員 進め方として、論点整理といっても、これは論点項目の整理になるわけですね。論点項目というのはある程度出してくればそれだけの話で、ある程度方向性が出てこないと、方向性の入った論点整理にはいつまで経ってもならないと思うのです。 ですから、項目の抽出というのは、あとは皆さんから御意見でもいただいて、足りないものを付け加えていただければよくて、むしろ今の髙木委員のお話のように後ろの方を考えるのであれば、項目を頭に置きながら少し方向性の議論を総論からでも、次回からでもどんどん進めていった方がよいのではないかという気がいたします。

○矢野委員 平成16年1月の通常国会にということになりますと、この会議で結論を出さなければいけない最後の日程は、どの辺なのでしょうか。一応資料38に来年の3月までの日程が入っていますね。この後、どの辺までにすべて上げなければいけないかという心積もりは、どんな感じなのでしょうか。

○齊藤参事官 私は、現時点でそんなに明確なことを自信を持って申し上げられるわけでもないのですが、やはり大体来年の秋口ぐらいまでには、尽くすべき議論は尽くしておかないといけないのではないかと思います。
 ただし、平成16年の通常国会にどの程度のボリュームの、どういう内容の法案を提出するかにもある程度影響されてくると思います。そのボリュームが大きくて、場合によっては相当ぎりぎりまで議論がずれ込むようなこともあり得るかもしれませんし、また推進本部としてほかのいろんな課題との絡みなども出てくるかもしれません。しかし、やはり一応は夏休み明けの秋口ぐらいには、大筋の議論が尽くされていないといけないのではないかというふうに一応考えております。

○山川委員 それとの関係で、この検討会では一体どのようなものまで最終的なプロダクトとして出す必要があるのかということなんですけれども、各項目について網羅した、言わば法案要綱のようなものまで守備範囲に入るのか、あるいは研究会報告のようなものになるのか、それによってもどれだけ議論するかの幅は違ってくるかと思うんですが、それは既に司法制度改革審議会で議論がなされたかもしれませんけれども、何か予定されているのでしょうか。

○齊藤参事官 推進本部の事務局で、今、10の検討会を設けているわけですけれども、基本的に検討会で意見書とか、そういうものをとりまとめていただくということまでは考えておりません。
 立案課題について、制度要綱のようなものを検討会自体でまとめていただくのかどうかも、これもそんなに明確な仕切りがあるわけではございませんけれども、基本的には立案そのものに結び付く作業というのは、どちらかというと事務局の責任でやらせていただくというイメージでおります。

○山川委員 いずれにしても、進め方としては、皆さんから既に出ていますように、総論に入って、そこでは基本的な方向についても含めて議論していくということで結構だと思います。

○髙木委員 では我々が議論したものは、最後はどういう形になるわけですか。残るのは議事録だけ残るということですか。

○齊藤参事官 いえ、勿論ここで検討された内容を踏まえて事務局は立案作業をしますので、検討会での議論と基本的に齟齬を来すような立案をしても意味のないことですから、そこのところは御理解いただきたいと思うんです。
 検討会での議論と無関係な立案作業が行われるということはあり得ないことだというふうに考えていただいてよいと思うのです。
 ですから、例えば事務局で色々な法制的な検討なども尽くさないといけないと思いますので、そういったものも含めて法案の中身というのが、法案要綱のような形で見えてきたときに、それをこの検討会でも何らかの形で御検討をいただくなりして、議論の中身と、最終的にでき上がっていく法案との間の整合性のようなものは当然御説明もし、あるいは御理解もいただかなければ、最終的に法案提出というところまでいけないのだというふうに考えています。

○髙木委員 だから、法案をつくるのに必要な、これがなかったら法案のこういうところがあいまいになるとか、そういうところを残さないように議論をきちんとした上で、あとはいろんな法制局との関係や何やらは、勿論事務局にお願いするということでしょうけれども。
 ちょっと失礼な言い方かもしれないけれども、事務局の人たちの鉛筆のなめかげんみたいな部分がある議論ならば、その議論の仕方は問題だと思います。

○齊藤参事官 そういうことは勿論考えていないわけです。

○髙木委員 紙も何も残らないと言われるので。

○齊藤参事官 いわゆる意見書、例えばこの労働検討会で幾つか検討課題として挙げさせていただいているそれぞれの課題について、検討会で意見書のような形にまとめていただくという作業は予定していないというだけのことなのです。
 例えば、五審制の問題などについても、司法審査の在り方という課題について、この検討会ではどういう意見がとりまとめられたかということを意見書というような形で、とりまとめていただくというところまでは予定していないということなのです。

○髙木委員 どういう形でまとめるのですか。

○齊藤参事官 それは、検討会でのとりまとめというよりも、検討会で議論がなされ、あるいは特定の意見に集約できたときには、そのことの何らかの整理は付けるのだろうと思うのですけれども、労働検討会の意見書というような形のものにしていただくというところまでは考えていないというだけのことなのです。

○古口次長 事柄によっていろいろ違うと思うのですが、ほかの検討会でも中には議事録にはっきり、この点とこの点を確認したという形で残すだけにしている場合もあります。また、少し複雑な中身の場合には、とりまとめの前提としてのペーパーをつくって、それに手を入れるような形でとりまとめ文章を検討会自身で検討していただいて、ではこの方向を方針にしましょうということを確認するというやり方をしている場合もあります。
 ですから、ここでの結論が具体的にどのようなものになるのか、それをどのような形で、はっきりまとめるためにペーパーが必要なのか、ないしは口頭で確認してもよいようなことなのかということです。それ自体を検討会の方々で判断していただく、少なくとも内容が二義的なものではなく、はっきりこういうことなのだということがわかり、立案していく作業のきちんと指針になるようなものとしてつくっていただく、ないしは合意していただくということだろうと思います。

○髙木委員 何でこのようなことを言うかというと、なぜ推進本部の会合の名前を検討会というネーミングにしたか、なぜ会議にしなかったかというと、検討会議ではなく会だ、というと、ただ単に集まって意見だけ聞けばいいんだというとらえ方があるという話をある人から聞いたので、そういう意味では今の齊藤さんの話も含めて、議論したものが最後にどうなるんだということについての担保のないような議論を我々はするのかと、そんなことならそんなふうに認識してこの会議を考えるしかない。

○鵜飼委員 我々労働分野でずっとやってきた実務家としては、司法制度改革審議会の2年間、そして推進本部ができてこの検討会ができた。これからトータル5年になりますが、今まで実際の運用の中で制度改革が必要だと思いながら、いろんな問題にぶつかってきたわけですが、そういう意味では本当に制度改革の絶好のチャンスと思います。ここで出されている論点、特にアクセスの問題も含めて、今まで制度設計の中での議論というのは、されてこなかった、しかしそれぞれ問題意識を持ってやらざるを得なかったという部分があるのです。
 そういう意味では、21世紀の雇用社会における紛争解決システムの在り方を考える意味でも避けて通れないテーマだというふうに思うので、これは是非時間切れに終わらせないで、やはり最後まで徹底的な議論を是非この場でやらせていただいて、そして何らかの形でそれが実を結ぶ形にしていただきたいと思います。
 これは、若干余談ですけれども、日本弁護士連合会でも、労働問題について経営法曹会議と労働弁護団の間で、今までなかなか共通の議論ができなかったわけですが、やっとこの推進本部に対応するという形で共通の議論ができるようになりまして、労働法制委員会というものが8月には立ち上がるということになりまして、やはりこの機会に労使を超えて共通の議論をして、そして何らかの形で出されたテーマというのは避けては通れない重要なテーマだと思います。そこは本当に最後まで時間切れで終わらせないで議論したい。そして何らかの実を、具体的な形を結ぶようにしたいという思いがありますので、これは是非本部の方でも受けとめていただきたいというふうに思います。

○菅野座長 いずれにせよ、これだけの大きな全体的な議論や、幾つかの各論的な制度の議論をするわけで、それでこれだけの専門家の方々にお集まりいただいた議論で、立場も違う中で共通のものができるかどうかを求めていくわけなので、全然ペーパーをつくらないわけにはいかないと思うのです。ペーパーをつくって、それを改良してどこまで一致できるか、できないかをやっていかざるを得ないと思います。それの終着点のペーパーというのは、想定せざるを得ないと思っているのですけれども。

○齊藤参事官 そのペーパーというものは、実は推進本部事務局内でも、どういうものかという統一的なものまでイメージできているわけではないんです。ただし、検討会の場で尽くされた議論と、それに反するような立案作業をするなどということはほぼあり得ないことですので、その点はそれほど御疑念をいただかなくてもいいのだろうと思うのです。 事務局としては、限られた時間内で、最低限立案作業をしなければいけないという課題は推進計画に盛られていますので、議論が仮に意見書というような統一的な見解にまとめるというところに余り時間がかかってしまいますと、推進本部設置期限内に立案作業まで終えるということとの関係がすごく厳しくなってしまいますので、あえて必ず意見書を作ってくださいということはお願いしていないということなのです。
 ですから、勿論順調に議論が進んで、うまく集約できたような部分について、それを形あるものにするということ自体まで否定する意味ではないと思うのです。
 ただ、検討会の必要な作業として、意見書までまとめてくださいということになりますと、意見書を最終的にまとめるというところにどれだけ時間がかかるかということの予測がつきにくい面もありますので、意見書を作成してくださいということをマンデートな要求としてはお願いしていない、むしろ、そんなニュアンスで御理解いただきたいと思うのですが。

○髙木委員 だから、さっきも言ったように後ろが詰まるのではないかといったことを、いろいろ思っているのです。
 それから、今、おっしゃるような認識でしたら、何も残らなかったら議事録を見てみんな作業をするわけですか。それで間違いがあることをしませんとは言われますけれども、御自身がそれをちゃんと自分の責任で担保できますか。

○齊藤参事官 それは、勿論事務局全体として対応していくことですので、一応今の私の説明は、事務局内での平均的な理解に基づいて御説明しているわけですので、私自身の力で必ずこうする、ああするということは。

○髙木委員 次回に山崎さんに出てもらって、その話をはっきりとどういうふうにするのということを聞かせてもらわないといけない。

○齊藤参事官 そういう対応につきましては、必要に応じてこちらも検討させていただきます。

○髙木委員 要するに我々の議論の持つ意味だとか、議論した内容の処理をどうしてくれるのか、あとの法案との関係でこうやるとか、あとは事務局に任せてもらうみたいな話ですから。

○菅野座長 私の聞いたところでは、先ほどの齊藤参事官のお答えは、意見書といった統一的な体裁を整えたようなものは、要求するわけではないけれども、議論の成果として形が出れば、それはそれとして意味があるので、それに基づいて立案等をせざるを得ないというふうに伺ったわけですけれども。

○齊藤参事官 勿論、そういう関係になると思います。基本的に検討会の場で集約されたものを踏まえて細かい法制的な作業をしていくことは当然のことですから、そういうものがうまくでき上がるということ自体までしてはいけないと申し上げているわけでは決してないのです。

○菅野座長 ですから、我々としてはそういう形をつくるように努力してみるということだと思います。また、それで議論が収拾できなかったら仕方がないということにもなるわけです。

○石嵜委員 ですから、ちゃんとできればいいんでしょう。絶対作れとは言っていないとおっしゃっているだけで、作ってちゃんとみんなが一致して、そして文章にしてお渡しすれば、それはちゃんとしますということですね。

○菅野座長 私は、そういうふうに理解しております。

○髙木委員 絶対に作れとおっしゃっていないと言うのだったら、審議会意見書、あるいは閣議決定されたあの内容から、マンデートを一部放棄するという話になる。

○山川委員 私のさきほどの理解は、報告書のようにきれいに全部文章で流れてはいないけれども、また、法案要綱とも違うかもしれないけれども、要綱的な文章はつくるということだったと思いますが、その方針も含めてこの検討会の中で議論すればよいということではないでしょうか。

○鵜飼委員 例えば、審議会の意見書の中に関係機関との連携強化というのがありますね。多分、この中でもいろいろ議論されておりまして、山口委員の方からも裁判所と日弁連との協議という話がありまして、これはできれば早急にやりたいと思っておりますけれども、それはこの検討会外でどんどん進めていくこととします。
 例えば、その中で山口委員、どうですかね、定型訴状というのは、日本の法制度の限界もあるのでしょうが、例えば解雇なり賃金不払いなり残業代なり、それぞれの類型に応じて簡易な訴状を考えてみるということは工夫の余地があるのではないかと思うのです。そういう協議をして、具体的によりアクセスを容易にするような手立てを講じていくということもやってみたいと思いますし、それは多分前回の検討会でも議論されましたし、そういう方向がいいのではないかなと思っているのですが、そういうのはどうなのでしょうか。

○山口委員 今の定型訴状等の関係は、運用の問題ですし、例えば簡裁の場合は定型訴状が用意されていますから、そういうものを地裁の方でも考えることは十分あり得ることなので、積極的に、かつ代理人の方と一緒に考えていきたいと思っています。裁判所だけであれこれするのはまたどうかという問題もありますから。
 それはそれとしまして、結局基本的にはこの検討会というのは、あくまでも制度設計を考えていくわけですから、先ほどの総論につきまして十分議論していって、そして総論を踏まえてある程度各論の制度設計についても基本的な認識が委員の間で共通化できるのであれば、それはそれできちんと残して推進本部の立法作業に反映してもらうということは当然必要なことだと思いますし、私たちはそれに向けた議論を精一杯して、やはり21世紀の労働紛争制度を構築できるようにやっていくべきではないかなというふうに思います。

○鵜飼委員 私がアクセスの問題にこだわりますのは、やはり日本の場合、何件ぐらい労働裁判件数として想定できるのか、あるいは適正なのかという非常に難しい議論だと思うのですが、ただ、私の中にもありますし、委員の皆さん方にもあると思うのです。現状はどうなのかというと、私は現状は少な過ぎると思います。でも、これから法曹の数も増える、やはり日本の社会における司法の役割というものが大きくなってくる。そのときに、どの程度事件を想定するのか、例えばアクセスを容易にしていくと、その件数はかなり増えてくるだろうと、それをどういうふうにして司法が対応していくのかと、これは避けて通れないテーマですし、私は、一度本当に総論を徹底的に少し時間をかけてでも議論する場を設けていただきたいと思います。

○山川委員 今のお話との関連で、項目の中に戻っていくようなことになるのですが、労働社会における法の役割とでもいうべき論点、これを議論し出すと、それこそ意見が一致しない可能性が高いかもしれませんが、先ほど岡崎委員や矢野委員も言われたように、労使の自主規範も含めた上での労働社会における法の役割とか、ルールの役割とか、そういうものも視点の1つに入れる必要があるのではないかなと思っております。
 つまり、現在あるような労働法制、判例法理や自主規範も含めてですが、それでどういう形で労働紛争に対処、あるいは予防していくのかという点です。
 例えば、最も根本的なことかもしれず、それゆえに意見の一致も難しいかもしれませんが、1ページ目のアに、そういう視点を加えて行くということがあり得るのではないかと思います。それを若干ブレークダウンした問題として出てくるのが、固有の訴訟手続に関わる6ページから7ページ辺りのところなのですけれども、割と手続的なことがスペシフィックにテーマになっていて、これはこれで結構なところが多いのですけれども、前回か前々回に申し上げた個別の実体法との関連みたいなものを考慮する必要があるのではないかと思います。
 例えば、立証責任というのは、手続か実体かと言えば、どちらかと言うと実体に近い問題かと思いますので、どういう結論が出るかはともかくとして、個別実体法との関連みたいな視点を、その他という項目の中にでも入れていただけると、法の役割との関係の一つの具体的な現れになるかなと思います。

○菅野座長 予定では、このぐらいの時間に休憩を入れることになっていますので、休憩を入れて、また再開して、もう少したたき台とスケジュールの議論を続けていただきたいと思います。  10分間休憩いたします。

(休 憩)

○菅野座長 それでは、再開いたします。先ほど中間的論点整理たたき台、それから今後のスケジュールについて議論していただきましたが、どうぞこの続きをしていただきたいと思います。その区切りがついたら、諸外国の法制のヒアリングに関する御相談をしたいと思います。

○鵜飼委員 私は、先ほど山川委員が言われた、雇用社会における法の役割ということ、これはある意味では総論の最も基本的なところだと思いますので、今後の21世紀の雇用社会がどういう姿なのか、なかなかそれは難しいことですが、それを前提として法の役割をどういうふうに考えるべきなのか。
 あと自主規範との関連性は、非常に重要なポイントだと思いますので、それは是非総論の中心的な考え方として、それを一番初めに入れていただいて、その中でいろいろ出されているような論点というのは、それと関連性を持たせて議論していくというふうにしたらどうかというふうに思います。

○齊藤参事官 たたき台に更に加えるべき論点、あるいは項目という意味では、明確に反対意見がそれほど多くなければ、とりあえず取り込むという方向で対応させていただきたいと思いますけれども、そんな意味で活発な御議論をいただきたいと思います。

○春日委員 中身のことではないのですが、さきほど山川委員も言われたと思うのですけれども、例えば制度要綱とか法案要綱までいくのかいかないのかという話があったと思うのですが、この委員会では司法制度改革審議会の意見書の内容に即して、内容を具体化していくという作業なのだと、私は少なくとも理解していたのです。
 ですから、ある程度司法制度改革審議会の意見書の枠に即してここで議論をして、勿論その内容は基本的にここに掲げられているようなものでいいと思うのです。それで、ある種の結論というのか、つまり納めるべきものと納期というのがあるはずなので、そのことを考えながらやるべきなのではないかと思うのです。
 ですから、単にここで各委員が意見の言いっぱなしとかそういうことではなくて、ある種の結論というか、それは必要だと思うので、それがなければここで結局何を議論したのかという話になるので、やはり改革審での意見書の内容を、我々としてはもっと具体化すべきだというふうに考えているのですが。
 もっともお前がやれと言われても、できるわけではないのですけれども、とにかくそういう方向で、タイムスケジュールも考えながらいくべきだというふうに思います。

○矢野委員 私は今の御意見に賛成なのですが、ですから大体お話のように来年の10月早々ぐらいまでをターゲットに置いて、そこで成果としてペーパーをつくるということにして、あとこれからの進行状況に応じて逆算して、日程をきつくすることもあるし、緩やかにするときもあるということでやっていくとよいのではないかと思います。
 私ども実務家は文章なんて全然書けませんが、もう先生方で文章達意の方がいっぱいいらっしゃいますので、あっという間にできてしまうのではないかと私は思っているのです。問題は、その議論の中身だと思うのです。それをどういうふうにして充実させていくか。しかしあくまでも最後の目標は、成果物そのものでもある、ということでありますと、日程の面でもそれを目指して取り組むということができるのではないかという気がします。

○山口委員 私も同じ意見で、一応終期が決まっているのであれば、それをにらみながら、とりあえず総論部分からやっていこうということについては、大方の認識は一致していると思いますので、次回からでも一向に構わないと思いますので、今日出されたような追加の論点も含めた形でつくり直していただいて、早い段階からそれらについてしっかりした議論ができるような形にしてほしいというふうに思います。

○菅野座長 資料38は空欄が多いのですが、次回はフランスに関するヒアリングをします。またこの中間的な論点項目の整理の改訂版を出した上で、それについての御議論もいただきますが、できれば総論部分の議論をここで開始したいと思います。
 第8回は3つの国を扱いますので、おそらくヒアリングで手いっぱいだと思います。また、ヒアリングにおける質問で議論も出ようかと思いますけれども、第9回、第10回ぐらいで総論の議論をするぐらいのイメージではいかがかと思います。余り総論ばかりというわけにもいかないので、このぐらいで何とか共通認識をつくる努力をしてみて、できれば10回、11回の間あたりに1回予備日を入れられるかどうかをお諮りしてみたいと思います。

○髙木委員 第10回と第11回の間ですね。

○菅野座長 はい。11月29日金曜日の1時~4時というので、御都合が悪い方はいらっしゃいますか。
 あるいは、12月6日の金曜日の1時~4時で御都合悪い方はいらっしゃいますか。
 12月6日の方が、皆さん御都合が良いようですので、こちらの日程を確保していただくことにいたします。
 ほかに、このたたき台とスケジュールについて、ご意見はいかがでしょうか。

○齊藤参事官 ちょっと確認的なことなのですが、中間的な論点整理が9月4日で一応区切りが付いたとして、その中間的論点整理に基づいて、総論の議論から一通りまずこなしてしてみる、こんなイメージで皆さん御異存ないでしょうか。

○菅野座長 順番は、総論の議論をした段階で、事務局の準備の程度で決める必要がありますが、総論の段階で、少なくとも1回、第9回に議論をしてみたいと思っていますけれども。

○齊藤参事官 結構です。事務局がそもそもたたき台で順番に整理してございますけれども、順番そのものをそんなに厳密に考慮して整理しているわけではございませんので、これは勿論効率的な、合理的な議論が尽くせるような順番、工夫は幾らでもできると思いますので、その辺はそんなにこだわっていただかなくて結構だと思います。

○菅野座長 それでは、もし今日の資料36の中間的な論点整理のたたき台について、御意見は特になくて、スケジュールについても先ほどお諮りしたようなことでよろしいということであれば、この議題はとりあえずこのぐらいにさせていただいて次に進みたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 次の議題は、9月に予定しております、諸外国の労働関係紛争処理制度に関するヒアリングについてでありまして、このヒアリングでは論点項目の中間的な整理についての御議論をも踏まえまして、今後の具体的な検討に際して参考になると考えられる諸外国の制度の実情や、その歴史的、社会的背景等について、主にどのような事項を中心にヒアリングしたらよいか、委員の皆様から御意見を頂戴したいと思います。
 ヒアリング対象者に対して、事前にヒアリング事項の調査・準備をお願いする関係上、できれば本日おおよその御意見を賜りたいと思っております。
 まず、ヒアリング事項のたたき台等について、事務局で資料を作成していただいておりますので、御説明をお願いいたします。

○齊藤参事官 資料39をごらんいただきたいと思います。諸外国の労働関係紛争処理制度につきましては、これも限られた時間の中で効率的・効果的にヒアリングを進めるために、これまでのヒアリングや中間的な論点整理に関する御議論などを踏まえまして、今後の具体的な検討に特に参考になると考えられる事項を、重点的に準備を進めていくことが適当ではないかと考えております。
 そこで、資料39はそんな観点から一通り平均的にヒアリングすべき事項というものを整理してみたものでございます。
 資料39に掲げてある中身というのは、大体これまでも平均的に関心事項とされてきたようなものでございます。諸外国の制度を我が国の労働関係紛争処理制度の在り方に係る検討の参考とするに当たりましては、諸外国における背景事情等が我が国とは大分異なる点があるのではないかとも考えられますので、単に制度や手続の仕組みなどを御報告いただくだけではなくて、できる限り当該外国におけるADR等も含めた、労働関係紛争処理制度全体の特徴、当該外国の制度に係る社会的、歴史的な背景や経緯、更には制度に関する当該外国での評価などについても理解を深めることが重要だというふうに考えられますので、そのような観点から気の付くことを総論部分等に一定程度盛り込んでございますが、更にいろいろ御意見をいただければと思います。
 既に確認ということになりますが、9月4日は法政大学の浜村彰教授からフランスの制度について、9月30日の検討会におきましては、北海学園大学の小宮文人教授からイギリスの制度について、専修大学の毛塚勝利教授からドイツの制度について、最後に、千葉大学の中窪裕也教授からアメリカの制度について、それぞれヒアリングを行う予定としております。
 事務局の方からの説明は、大体以上でございます。なお毛塚教授は、8月中にドイツに行かれるというふうにおっしゃっていますので、ドイツの関連で何かこういった事項を調べてきてほしいということがあれば、ある程度お願いできる余地もあるようにお聞きしていますので、そんな観点からも御指摘をいただければありがたいと思います。
 以上でございます。

○菅野座長 それでは、こういうヒアリング事項のたたき台が出ていますので、これを基に御議論いただきたいと思います。こんなふうにつくり変えたらどうかとか、こういう項目を付け加えたらどうかという御議論をいただきたいと思います。

○齊藤参事官 説明し忘れましたけれども、このたたき台というのは、各国共通のヒアリング事項というふうな体裁できていますので、国ごとにもうちょっとメリハリを付けて、この国ついてはこういう事項がということがあれば、そういうものも踏まえまして、ヒアリング対象先の先生にお願いにまいりますので、よろしくお願いいたします。

○鵜飼委員 先ほど申し上げましたように、アクセスについての工夫が各国でされておりますので、簡易な定型訴状の問題、訴え提起の手続の問題、提訴のときの費用の問題、代理権の問題、敗訴者負担制度の問題等々について、是非検討の対象にしていただきたいと思います。 そういう意味では、本人訴訟の比率というのももし調査できればお願いしたいと思います。

○村中委員 今の関連で訴訟を起こす場合に、労働団体がどれぐらい援助しているかという問題があるかと思うんですけれども、ドイツの件は私自身はわかりますけれども、イギリス、フランスはわかりません。

○山川委員 今の点については、労働団体以外の援助、例えばイギリスですと差別訴訟についてはEOCの援助などもあります。労働団体その他の機関の援助という形であれば、例えば2ページ目の3の(1)か(2)に入ると思いますけれども。

○矢野委員 例えば、取り扱い件数とか、処理期間とか、ドイツは取り扱い件数がものすごく多いという話を、ちらちらと伺っていますし、処理期間は国によって短いということがありますが、なぜそういう状態になっているのかということです。結果だけではなしに、なぜなのかと非常に興味がある部分なので、たまたま例として2件を挙げましたが、取扱い紛争内容についても、どの程度軽いものからどの程度重いものがあって、中身はどうなっているのかということも知りたいと思います。
 もう一点は、日本の制度との対比なのですけれども、これはそれぞれの先生にお願いをするのがいいのか、先生にはそれぞれの御判断で話をしていただいて、その後で事務局にお願いしてその対比を作ってもらうのか、どっちがいいのか迷っておりますけれども、日本との対比というのを見ていろいろ考えてみたいと思うんですが、その辺はどうでしょうか。

○村中委員 さっき山川委員がおっしゃっていた、法の社会における役割という観点から言うと、単純に労働事件の数が多いかどうかということと、そもそも民事紛争がどれぐらいあって、その中で労働事件の比率がどうかということで、要するに、日本では労働事件が比率として極端に少ないというのか、それとも紛争全体が少なくて結果労働事件が少ないという傾向の方が強いのか、それともそうではないのかという紛争全体との対比というのも知りたいと思っています。ヒアリング対象の先生方の顔が浮かびますのであまりご無理はお願いできませんが。

○鵜飼委員 一般民事事件との比率ですね。

○村中委員 あと、こちらで書かれている「実施機関、手続の概要」というところに入ってくると思うのですけれども、まず専門性ということとの関係では、労働法の知識なり労使関係に関する知識というのを、どういうふうに修得しているのかということです。それが法曹養成の段階でなされているのか、その辺りの話をもう少しきちっと、ここの話だと思うのですけれども。

○髙木委員 先生方にどこまでお願いできるのかというのもあるのだと思うのですが、要するに労働法体系と言いますと、労働に関する実定法がどの範囲まであるのか、例えば雇用契約法みたいなものがある国と、日本のような民法準拠というか判例積み重ね型のようなところと、その辺の労働法体系の国による違いというのも、裁判所なり裁判全体にいろんな影響を与えているのではないかと思うのですが。

○鵜飼委員 私もドイツについていろいろお聞きしたところによると、かなりの部分企業内のシステムを通じて解決・処理されていくと、これはイギリスに行ったときにもいろいろそういう話をされまして、それと外部の紛争解決システムとの連動性と言いましょうか。それと自主的規範というものと外部の法というものと、裁判所に労使が関わることの関連性と言いましょうか、非常にそれは興味があるところで、フィードバック機能というふうに菅野先生がおっしゃっていますけれども、そういう労働法というものが社会に根付くための、いろんな役割分担というか、全体の構造というのがあるのではないかというふうに思いますので、その辺のところはちょっとどういうふうに表現したらいいかわかりませんが、コメントしていただければなと思います。

○山口委員 髙木委員の話の関連なのですけれども、手続法の前に実体法がどうなのかということがあると思います。特に我が国のような判例法理のように、総合判断でさまざまなケースが処理されているというふうに、外国の場合なっているのかどうか、そこら辺のところも教えていただきたいと思います。

○菅野座長 1回目は全体的な枠組み、実体法も含めて制度の枠組みとか、裁判制度の違いとか、そういうのを含めて時間に限りのある中で説明していただくので、それをお聞きした上でこの点はどうだというのがたくさん出てくるから、わざわざお呼びするかどうかということはありますが、ある段階で補足的な調査というのが必要になるのではないかという気がします。

○春日委員 実際に、例えばこの1の(2)で「取扱状況」と書いてあるのですね。このデータを調べてくれと言っても、恐らくデータがないとか、個別裁判所にはそれぞれの記録があって、データが取れるのですけれども、例えばドイツ全体でとか、フランス全体でということになると、かなりデータが取りにくいと思うんです。
 例えば、1か月前とか2か月前にお願いしなくても、中にはちゃんとデータを持っておられるとか、あるいはぱっと取れる方もいらっしゃるかと思うのですが、一般論として例えば民事訴訟で、ドイツでこういった統計が欲しいと言っても、すぐに向こうでは答えてくれないと思うのです。そういう意味では、これ全部は無理なので、後から補充質問とか、そういったような形でもお願いできればと思うのですけれども。
 そうでないと、恐らくここでヒアリングされる先生方も、とても大変だという話になると思います。

○岡崎委員 ですから、数字はむしろ事務局からの方が良いのではないかと思います。せっかく先生方に来て頂いて、数字の説明をして頂いてもしようがないので、むしろ先生方が持っていらっしゃる様々な知識の中で、制度の意義とか、そういったものを中心にして、今おっしゃった(2)などは事務局が大使館か何かを通じて資料を取り寄せた方が良いのではないかというふうに思います。

○山川委員 前もちょっと申し上げましたけれども、諸外国の個別労働紛争処理システムという本が、日本労働研究機構からそろそろ出るのではないかと思うのですが、そこの中にある程度のデータが出ていると思います。ただこれに完全に一致している項目ではないのですけれども、それを何らかの形でこちらでも紹介していただけるということは、できると思います。
 また執筆者の中には、今回お呼びする方も含まれておりますので、そういう情報も使えるのではないかと思います。

○菅野座長 それは出てから、皆様にお配りするようにしましょう。

○齊藤参事官 勿論それは考えて、私どもも首を長くして待っているところなんです。

○山川委員 7月の始めごろには再校刷りまで出しましたから、もう出るのではないかと思います。

○髙木委員 今、国の名前が挙がっているようなところは、恐らく法務省なり最高裁判所、あるいは厚生労働省からも人が行っておられるでしょう。
 最近、少しずつそれぞれの国の制度も直されたりしているような話も聞いていますから、例えばドイツだと非職業裁判官の人たちの任期が4年だったのを5年にしたのか、そんなようなものがあるとか、この間ちょっとフランクフルトで聞きましたので、どういう意味があるのかどうかは知りませんが。

○鵜飼委員 法文そのものを、読めるかどうかという問題は別といたしまして、イギリスに行ったときにどういう法文があるかわからなかったので、もしできれば基本的な法律を参考のためにお願いしたいと思います。

○齊藤参事官 これは本来事務局が収集に努めるべきことかと思いますので、留意したいと思います。
 それでは、ヒアリングの準備につきましては、あとはお願いしている先生方に、今日の御議論なども踏まえてお願いに行ってまいりますので、よろしくお願いいたします。

○菅野座長 そのほかお気付きの点で、こういう点を教えて欲しいというようなことがあれば出していただきたいと思います。いつごろまででしょうか。

○齊藤参事官 一応、これもまた急ぎで恐縮ですけれども、来週の頭ぐらいまでに何かお気付きのヒアリング事項等ございましたらば御連絡いただければありがたいと思います。できるだけ早目に対象先の先生方にも連絡を取るようにしたいと思います。

○菅野座長 そういうことでよろしいでしょうか。
 こちらの方で用意した議題は、以上のようなことで、中間的な論点整理の御議論、今後のスケジュール、それから次回から始まる諸外国の労働関係紛争処理制度のヒアリングについて相談するということでありますが、まだ30分ほど予定した時間がございますので、どうぞもう総論の議論を始めても結構ですし、こういう議論をしたいというようなことがあればおっしゃっていただければと思います。

○髙木委員 先ほど矢野さんの方からお話のありました、紛争の予防、自主的解決の在り方ということで、労働組合の中での方策ということが書いてありますが、今、特に日本の企業別労働組合という組織の仕方が直接関わっているんですが、全体的な組織率のみならず、個別企業内の組織率というか、これは雇用形態なり就業形態の多様化が関わって、日本の企業別組合というのは、正社員、フルタイマーをお客さんにしてきたわけですけれども、これは製造関係も含めて企業内というか、塀の中の組織率が労働組合に参加する人たちの率というか、これが非常に落ちてきていまして、そういう意味での労使紛争に対するカバー率は、ここ数年急激に落ちてきていまして、そのことも個別労使紛争の増加に関わっているのではないかと、最近つくづくそんなことを思っております。労働組合の怠慢もあるのですが。
 取り分け流通サービス業では、正社員で組合員になっている人たちが2割、外食産業等では数%になっていまして、パートタイマーなり派遣なり、派遣もいろんな形態がありましたりして、そういう人たちの間である種の紛議が起こりましたときに、勿論労働組合でも相談に来られたらまた対応をするのでしょうが、いきなりそういう受け皿の外へみんな出てしまうという例を見ております。私どもの電話相談の中にもそういう方々からいろんな電話もありますし、そういう意味では労働組合をチャンネルにした問題解決能力というか、受け皿としての力は、今のままだとかなり落ちていくし、また今後も特段の手当ができなかったら、更に低下するであろうと、私のような仕事をしている者がそんなことを言ってはいけないのですけれども、それが実態ではないかと思います。
 そういう意味で、会社側の方でその辺に気が付いていろいろ手当をされている企業が、最近あるのかないのか、会社側の事情はよく存じませんけれども、そういう労働組合の空洞化みたいなものがあって、日本の労働秩序の安定という視点から見て、将来のことを一部の経営者の皆さんは心配になられるようなお話を少しお聞きしたりしますけれども、そういう意味では紛争の予防、自主的解決力は大分落ちているのではないかというのが、私の率直な印象でございます。
 労働市場の実態そのものは、ますますそういう日本型の労働組合を空洞化させる方向で、なお一層動き続けるでしょうから、そうなったときの問題解決、あるいは予防がどうなるのか。今の私どもの自戒も含めての話ですけれども。

○鵜飼委員 私も、弁護士の自分自身の反省も踏まえて申し上げますと、最近東京都の労政事務所の方といろいろ話をしまして、アクセスの問題もお話ししたんですね。私の期待していた答えは、先ほどいろいろ申し上げましたような、簡易訴状の問題であるとか、印紙の問題だとか、そういうところにあるのではないかと思っていたんですが、まず一同異口同音に言われたのは、裁判に出せないのは弁護士へのアクセスができないからだということを言われまして、当番弁護士ぐらい作ってほしいというような声があちこちからありました。
 確かに何とかして我々としてもそういう体制をつくりたいというふうに思っていて、奮闘してきたつもりなのですが、やはり現実の相談活動をやっていらっしゃる方たちにしてみれば、弁護士の敷居は高いというふうなことを知らされました。我々としても先ほどの簡易訴状などにしましても、今まで訴状をつくるのは弁護士の仕事というようなことがありまして、簡単だと困るという面もないわけではございませんけれども、本当に普通の人が書けて、訴え提起できるという体験と言いますか、これは私は非常に大切なのではないかと思いますし、そこに法曹がどういうふうに関与するかということもありますので、東京都の労政事務所の人たちの話を聞いて非常にショックを受けまして、弁護士会としてもアクセスが容易になるような体制をつくるべきかということを、早速日弁連に戻って、遅まきながら議論したいと思っています。
 要するに、アクセスを容易にしていって、いかに雇用社会の中に法とかルールをお互いに守っていくか、これは予防にもつながります。やはり紛争の解決を図るというのは、社会の中で法を守っていこう、ルールを守っていこうという意識なり、体制をつくっていくことにつながると思うのです。そういう意味では、我々も非常に不十分だと思っていますので、その体制も十分取りながら、何かそういうシステムができればいいなと思っています。

○石嵜委員 使用者側の立場からすれば、今、鵜飼先生が言うような形で外に出るのではなくて、内部で自主解決できないかという議論なのです。そして、少なくとも使用者と労働者に信頼関係がないと、決して企業は動きません。そうだとすると信頼関係を維持する上においても、いろんな従業員の苦情問題を内部でどう処理するかが問題なのです。
 従来は、過半数労働組合があって、使用者と過半数労働組合の間で労使委員会とか、苦情処理委員会を作って、そこで解決するということをやっていった。
 ただ、もう今の組織率では使用者そのものが、自ら自分たちでそういうものを作り上げて、これはもう過半数代表者か何かでやるしかないのかもしれないですけれども、内部でそういうものをつくれるのではないかと考えています。
 今日も朝1件これがありまして、労働組合かと言われたので、髙木さんには怒られるかもしれませんけれども、労働組合よりは自ら苦情処理委員会をつくろうという議論をしてきたのです。やはり内部で使用者も自分たちで、いわゆる苦情処理委員会のような形をつくって、従業員が内部でそういう問題を十分解決できる機関をつくらないと難しいという認識を少しずつもち出しているのは事実です。これは、IBMの小島さんのときにもっとお聞きすればよかったのですけれども、外資系だったらもっとそういうものをつくっているはずですし、企業内裁判制度のような形のものをアメリカだったらやっているといいます。今度は使用者側自体ができるだけ自分の企業内でこの問題を解決するように努力しようという思考を少しずつ持ち出した、今やっとという感じなのですけれども、私たちもそういうふうにアドバイスしているという感じなのです。
 勿論そこから外に出たものは、今度は鵜飼委員のように労政事務所という議論になるのでしょうけれども、ですからこの辺は矢野委員にお聞きになった方が、企業内の状況がわかると思います。

○矢野委員 御指摘のとおりなのですが、私が今、一番心配しているのは、自分で解決する能力がどんどん減退しているのではないかという、ちょっとぞっとするような思いがあるのです。それは組織率の問題もあるんですけれども、日本の企業の一番優れていた点は、お互いになあなあでは決してないのです。上の方から下の方まで理解しあえるネットワークというのがあったわけです。それは、労使関係というパイプを通して解決されることもあるけれども、労使関係と従業員関係というのは、コインの表と裏みたいなものですから、いい従業員関係、上司と部下との関係とか、同僚との関係とか、あるいは同じ部門でなくても隣の部門の関係にしても、そういうところに非常にいいネットワークが張られて、コミュニケーションのネットワークがありますと、問題とい うのは自然に解決されるのです。ところが、その辺が少しイバラのような状況になってきて、企業の中の風土がだんだんと休耕田みたいになって、雑草が生え出しているのではないかということを非常に心配するわけです。これは、労働組合の人も一緒に悩んでほしいと思っているわけです。労働組合のない会社の場合はよほど大変なのです。しっかりした労働組合があれば、そのパイプを通じて多くの問題が解決できるのですけれども、労働組合のない場合はそれがないわけですから、倍以上努力しなければいけないのです。それでやっている会社もあるから、組合のあるなしをどうこう言いませんが、本当は何でも話し合える、コミュニケーションネットワークというのが、私は日本の労使関係の一番の特徴だと思っているんですけれども、そういったものが薄れつつあるんではないかということが第一の心配です。
 ですから、日経連時代から経営者は雇用を守れと言って頑張っているわけですけれども、一番大事なことである人を大事にしようという精神が基にあって、しかも日本の場合は競争力の源泉は人なのだから、企業の長期的な視点の存続・発展を考えたら、人を大事にするのが一番いいという経営的な目的にも沿った主張なのですけれども、それが何を生み出してきたかというと、やはり上下左右の人間的な信頼関係なのです。それが、だんだんと目先の利益というものに注目する余り、そういう大事なところを犠牲にし始めているのではないかという気がするのです。どうしても会社としては、つぶれるかどうかということになったら、やらなければならないことはあるし、そこまでを否定するつもりはないですけれども、そこに今非常に危機感を持っておりまして、これは労働組合とも一緒になってやっていかなければいけないなということがあります。
 もう一つ、ここで論議しているのは雇用労働者の問題ですね。今、失業者が増えているということもあるし、フリーターというような形で若者がはっきりしない働き方、暮らし方をしているわけです。そういう人たちのことも考えますと、先ほど山川先生がおっしゃった社会の中における法の在り方、そういったものがもっと雇用社会だけではなくて、そこからちょっと出てしまっている。つまり労働社会全体にとって何が大事なのかということを考えなければいけないと思います。
 それから、これは石嵜先生が常に主張しておられることなのですけれども、本当に雇用形態が多様化してきておりまして、この速度というものは止まらないと思います。長期雇用の核になる従業員というのは非常に大事で、これが競争力の源泉でもあり、雇用安定の根本でもありますから、それはどの会社も大事にしていくと思いますが、その比率が小さくなっていって、有期契約とかパートとか、いろんな雇用形態の従業員が増えてきている。 まして、単に契約上多様化しているわけではなくて、働き方もフレックスタイムから始まって在宅勤務とか、時間で管理されない人たちも在宅勤務という形でどんどん増えてきているわけです。成果を重んじて報酬を出すという形です。
 そうすると、雇用社会そのものが本当に凄い勢いで変わり出しており、その状態を見て、その変化が良いことなのか悪いことなのか、白黒の議論をするのはおかしいかもしれませんけれども、それは日本の社会にとって今後必要なことなのだと思うかどうかによって、対処の仕方が変わってくると私は思うのです。
 ですから、それに順応できない場合には、企業も労働組合も人に対する魅力を失っていくわけです。私は、こういう雇用の変化、形態の変化というものを、むしろポジティブにとらえて、その中でいかにして雇用を増やして、あるいは企業にとっては競争力を高めるかという問題を解決するというテーマを目の前に与えられているというふうに思うのです。
 この議論を進める上で、実体経済、実体労働市場の変化というものを、本当にある意味ではありのまま前向きにとらえて、将来の変化というものが今、現れているものをポジティブにとらえるということでないと、良い答えが生まれないのかなと思います。
 そういう中で、一方では矛盾したことかもしれないけれども、日本の企業が強みとして持ってきたコミュニケーションネットワーク、信頼関係、それをどうやって維持していくかということが課題でありまして、困ったときにはいろいろなところに相談窓口があるようにする、これは法律上の裁判とか調停とかそういったようなものを含めた、言ってみれば救済措置ですが、そういう場面もなるべく幅広くして、なるべくみんながどこへ行っても相談ができるようにする。どこに行ったらいいかわからないというのが多くの人だと思うんですけれども、どこに行っても相談相手がいて、ワンストップサービスということもありますし、司法の敷居もなるべく低くして、そして多くの人たちが本当に困ったときには行けるようにする。だけれどもその前に、自助努力というか、自分で解決できるような道をつくっていくということでないといけないと思います。
 あちこち話が散漫になりましたけれども、今の話に触発されたものですから申し上げました。総論の一部です。

○髙木委員 矢野さんのおっしゃることはよくわかるのですが、企業を律していた、何も紙に書いていないのですが、働くことを動機づける、一種の葉隠れのようなものが大分痛んできていて、それはなぜなのだというと、いろいろなことが関わっていると思います。例えば成果主義ということを余り言うものだからどうだとか、オン・ザ・ジョブ・トレーニングというのが大分痛んでいて、それがゆえに職場の上下の親和性みたいなものが大分薄まってきているというか、弱まってきているとか、いろいろな分析はあります。
 私も、止まらないだろうと思っているのですが、そういう変化をポジティブに受けとめられるような、働くことに関するルールなり常識、そういうものがどうしても少しずつ遅れるものですから、その過程で働き方のルールが揺ぎ、揺ぐ過程でまた働き方に対する信頼性のようなものが低下をしていくという、逆サイクルの悪循環というか、そんな面もあったりします。
 ここで矢野委員と論争するわけではありませんが、最近の雇用形態の多様化、あるいはそれに伴って生じる新しい働き方に関するフレキシビリティーの話等では、若干使う側の使い勝手の良さが先行しているのですね。そういう中で、本当に派遣なら派遣をもっとポジティブなものにして受けとめていくには、例えばこんなルールをちゃんとしなければいけないとか、その辺のことも心理的にはいろいろみんなに影響を与えているかなと思います。
 それから、特に大企業等の労使関係というのは、労使と言うけれども、さっき申し上げた葉隠れをお互いに共有する、別の言い方をすれば、氏素性が一緒なんです。ところが、最近その氏素性一緒というところが、少し変わってきているのですかね。

○矢野委員 その問題も重大なテーマで、ここ2年ぐらい多様性という問題を取り上げていろいろ研究してきたのです。ダイバーシティー・ワークルールというものですけれども、5月に最終報告書を発表したのですが、実は日経連のときなのですが、30人ぐらい集めて若手の研究会をつくりまして、半分が女性で半分が男性、しかも平均年齢が30ちょっと前なのです。日経連の委員会、今の日本経団連もそうですが、委員会の平均年齢というのは60歳ぐらいだろうと思うのです。我々も、30歳未満の平均年齢の若手の人事労務担当者をどんと集めて、2年間猛烈に議論させたのです。実に面白いレポートができまして、簡単に言いますと、ダイバーシティーというもの、男女、年齢、人種、身上とかいろいろありますけれども、そういったものを今まではどちらかというと、男女平等でなければならない、というような「ねばならない」としてきた。しかし、「ねばならない」の問題ではなくて企業の戦略として活かすべき、つまりそういう違いとか多様性というものを企業の戦略として活かすべきだと、属性的な多様性もあるし、働き方の多様性もあるし、そういうものを企業の戦略として活かすことが、一方では企業のためにもなるし、一方では働く人たちのためにもなるということです。なぜならば働く側もニーズが多様化してきているのですね。いろいろなライフステージに応じて、このとき短時間勤務でやっていたい、それで子どもが大きくなったからまた長時間勤務に戻りたい、そういうような多様性を選択できるような世の中になるべきだということです。
 ですから、かなり日経連らしからぬ提案をしたのです。これが新団体の中にもいろいろ取り入れられて、多様性の持つダイナミズムをいかに活かしていくか、これはマクロの経済にとっても、ミクロの経営にとっても重要なのだと、そういうようなことを設立総会のときから言ってきているわけです。
 ですから、これはこういうふうに言葉で言うと簡単なのですけれども、髙木さん、実際現場に行くとこれは本当にいちいち弱ってしまう問題で、ダイバーシティーということが起因して、いろいろな問題、軋轢が起こってくるわけです。それが裁判にも影響してくるわけですから、直接な影響というのは余りないかもしれませんが、間接的な影響力も相当強い因果関係があるというふうに考えますと、やはりこれからの大きな課題の1つだと思います。
 まだ、こちらも研究途中ですけれども、1つの最終報告をつくったので、これから第2弾をやろうということで、この研究会は解散せずにやっておるのです。また、よろしくお願いいたします。

○鵜飼委員 我々は紛争解決システムというのは後ろ向きのものととらえ、我々弁護士は紛争請負人と言いましょうか、紛争をいかにクライアントに有利に解決するかということでやってきた面もないわけではありませんが、しかし最近の紛争解決システムの論議を考えると、先ほどの矢野さんと髙木さんの議論にありますように、この社会を担う企業、個人が、自分たちで解決する能力をいかに作り上げていくのか、そのためにどれだけお役に立てるかという仕事ではないかということをだんだんと思い始めてきまして、そういう意味では後ろ向きの議論ではなくて、やはり紛争解決システムはどうあるべきかというのはむしろ前向きの議論として論じ、先ほどの御意見のように雇用社会がどんどん多様化していく中での紛争の解決の仕方もやはり画一的であってはいけないので、やはり本当に多様な個人、組織のニーズに合わせた解決でないといけないというふうに思っております。
 やはり内部の解決能力の低下というのは、外部とも連動する面がありまして、外部と内部というのは、非常に密接に関連するのではないでしょうか。先ほどの石嵜さんのお話がそうですけれども、アメリカに行って思ったのは、アメリカの内部のいろいろなシステムができているというのは、外部の裁判制度が非常に強力であって、あるいは企業の不祥事に対して、それに対するペナルティーというのをかなり厳しく課すことによって、コンプライアンスを確立していく。逆に言うと、内部のそれを守っていこうというシステムにフィードバックしていくというダイナミズムがあると思うのです。
 そういう意味では、外部のシステムを考える場合でも、本当に企業、組織、社会、個人の世界がいかに解決能力を高めていくかという方向で議論をしないといけないなというふうに私自身は思っております。
 生臭い議論になりますけれども、労働参審制というので私が大事だと思いますのは、そういう労使から発生した紛争が、外部に行ったケースについて、やはり解決に労使が責任を持つというシステムだということだと思うのです。現状に人材がいないとか、いろいろ大変だということはよくわかるのですが、やはりそこで本当に紛争を労使が責任を持って、法を適用し、法を発見するという仕事に関わることによって、単なる法律家、専門家だけではなくて、やはりそれは企業にも戻っていく、それで自主的な自分たちの解決能力を高めていくということになると思います。
 少し私の理想論かもしれませんが、最近そういうことをつくづく感じていまして、そういう意味では、先ほどの矢野さんと髙木さんの議論とも結び付くのかなと思います。どうも弁護士というのは、後ろ向きで、紛争解決だけに出てきて、後は関係ないというふうに思われがちな面がありますけれども、私はそうであってはいけないなと思います。
 司法制度改革審議会の中でも社会生活の医師というふうに言われていますので、医師というのは直していかないといけないわけですが、最近そういうふうに思っています。

○村中委員 髙木委員と矢野委員のお話を面白く聞いたのですけれども、もう一つ考えないといけないのは、企業の多様性、そこをちょっと押えておかないといけないと思うのです。
 特に問題にしているのは、中小零細企業の問題で、実際の紛争のかなりの数がそういうところから挙がってきている。そこでは、使用者側の紛争解決能力ということを矢野委員はおっしゃいましたけれども、要するにそういうものを付けている暇もない。労働法の知識を付けている暇もない。それぐらい忙しいという状況にあって、無知の中でいろいろなことが起こって紛争になる。それが労働局に持ち込まれたり、いろいろなことをするということがあって、一言で労働紛争と言っても、やはり出自というのがかなり大きいので、制度設計をする場合も、そういう多様性は無視はできないのではないかというふうに思います。
 実際のところ、中小零細企業に自主的な解決ということを言っても多分意味がなくて、うちは社会保険労務士の先生を付けていますというふうにおっしゃるのですけれども、その方が30日の予告期間を守れば解雇が自由にできますというふうに指導されたというような状況ですので、その点も余り期待もできないということですから、その使用者側の多様性ということは常に議論の中で注意しておかないといけないと思います。

○山川委員 先ほどの髙木委員と矢野委員のお話を聞いていて、ちょうど今紹介を頼まれているアメリカの論文を思い出しました。それは、労使紛争の解決の在り方には、一方で、村中委員の言われた言わば古典的な紛争に対する一刀両断型のアプローチがありますが、もう一つは、構造的アプローチと言いまして、紛争自体の輪郭も解決のためのルールもはっきりしないようなものについては、むしろ労使の中で解決していくアプローチ、つまり、紛争解決の中で言わば組織の抱える問題点のようなものをより広く明らかにしていって、その解決を図っていくというアプローチがあり得るということを言っています。法の中身自体もある意味では変わってくるということになるのですけれども、その中で裁判所は、論文の表現では「触媒」といわれていますが、自主的な解決、あるいはルールの形成を促進するような役割を果たしていくというようなことがあり得るということを指摘していまして、それは日本でもある程度言えることではないかと思います。
 つまり、何らかの形で、紛争にもいろいろありますけれども、生産性を低下させるようなことも含めて、組織全体の抱える問題点が氷山の一角みたいな形で紛争として表われるとすると、労使の中で自分たちで問題を発見して解決方法をつくっていくというアプローチは、多様化などが進んでくると非常に有効なのではないかと、学者的な机上の空論ですけれども思っていまして、そうしたアプローチと、公的な紛争解決機関やルールの在り方との関係がどうなるのかという点が非常に関心のあるところです。

○菅野座長 私も1点だけ申し上げますと、企業別労使関係、つまりは、しっかりとした組合があって労使協議をやっている労使関係は、紛争の予防の機能もしっかり果たしていたと思います。そこでとられていた、企業の再編成をやる場合の色々な問題を争議にはならないようにして、両方が譲歩しながらこれを解決していくやり方が、特に労働組合側の後継者養成の問題もあって、いつまで維持できるのか。それが日本の企業の労働関係における紛争解決の1つの原形と言うか、モデルだったのではないかと思うのですけれども、いつまでそういうモデルが維持できるのかということを私は少し懸念しているのです。

○矢野委員 ですから、しっかりとした労使関係のあるところは、そのままでいいと思いますが、そうではないところで、だんだん組合員の比率が小さくなっていって、非組合員の数が増えていくような、パートとか何とかいう場合はどうするかとか、あるいは労使関係の折衝に当たる人たちのレベルが下がってきて、そして実際の自力による解決能力を落としているというような場合もあると思うのです。
 やはり、私は、経営的な立場から申し上げますと、労働組合があってしっかりやれるパートナーであるならば、それは大いに活用してというと少し言葉が悪いかもしれないのですが、一緒になって問題解決をやればいいと思うのです。仮にそうではないとしても、経営側には企業の中にしっかりした信頼関係をつくるようなネットワークをつくる務めがあると思うのです。企業を守るため、そして世界に伍して戦っていくために、それは国内だけの企業であっても、いろいろな意味での競争原理があるわけですから、戦っていくためにはやはり人の体系というのはしっかり維持されなければいけないということだと思うのです。
 そういう意味では、経営者の関心がもっとそっちに向いていくということが大事だろうと思います。そうすれば、解決していくと思うのです。
 私は、去年でしたけれども、東南アジアのフィリピンとインドネシアを見て、そこの政府の人とか、労働組合のナショナルセンターとか、経営者団体とか、企業も見てきたのですけれども、日本の随分前の姿がそこに表われていると思いました。
 紛争が激化してどうにもならなくなっている理由は何であるか。色々あるにしても、もし1つ理由を挙げろと言われれば、内部にそういうしっかりしたコミュニケーションのネットワークがないということなのです。労使関係も敵対的な関係になっているし、それを補い得るような従業員関係があるかというと、それもない。それは実に悲劇的な状況にあるのだろうと思います。
 そういう時代を経て今日に来ていますので、そんなにひどい状況に日本が戻るとは全く思っておりませんけれども、長い間蓄えてきた財産を切り食いして、少しずつほころびているのではないかという心配をするわけです。
 だから、本当に労働組合の組織体制がどうなっていこうとも、企業の中での信頼関係をつくるためのネットワークというか、そういうものをつくる努力です。これは経営の中の大事な仕事だと思っております。そういう自覚をしておられるところは、トップ以下、そういう自覚のあるところは問題ない。
 最近アメリカのケースをいろいろ聞いたり、調べたりしてみるのですが、エクセレント・カンパニーと言われるようなところは、非常に人を大事にしていますね。ですから、私は共通しているのだなということを思うのです。
 ですから、心配はしているけれども、悲観しているわけではないのですが、先生の今の問いに対しては、そういう感想でございます。

○髙木委員 組合の関係で申し上げますと、そもそも労働組合というのは、労使関係も勿論ありますが、特に働く側にとって一種の問題解決のシステムだと考えたときに、さっき少し空洞化の話を申し上げましたが、コアの働き手がメンバーでない労働組合は、労働組合の本質を失ってしまうわけですね。
 そういう意味で、今一番コアな働き手をメンバーに持てていない労働組合がどんどん増えていまして、その典型が例えば外食産業、これは具体的に話していいかどうか、例えば、すかいらーくという外食産業は、私どもの組合に加盟していただいているのですが、組合員は5,000 名ぐらい。ただ、すかいらーくグループで働いている人たちは10万人おります。すかいらーくグループでコア労働者は組合に入っていない9万5,000 の人たちです。そうでない5,000 の人たちを相手に労働組合だということで運動していても、コアの部分に直接的に触れないことはないのですが、みんな店長とか、店次長をしていますからね。けれどそれも何かあったときのチャンネルになれる組織では全くなくなっている。
 そういう意味では、これからの労働組合の役割はどこにあるのかということが、我々の一番の悩みですけれども、菅野先生のおっしゃる雇用社会化の流れはまだまだ続くわけですし、日本の就労者の8割~9割の人たちが、賃金所得で生活を立てているとしたら、その中で働き手と雇い手との間に紛議が起こらないわけがない。その解決の仕組みとしての労働組合が20世紀型とは違って21世紀にはどんな組織を求めていくのか。特にコアな働き手からの問題提起を受けられる労働組合ではなかったら、労働組合の本質をまさに失っているわけで、そういう意味ではその辺をどうするかという問題があります。
 ただ、この問題については、経営者の方々も一部そういうことの怖さみたいなものを感じておられ、反面、私どもにお前らちゃんとしてくれという叱咤激励だと受けとめているのですが、36協定で労働組合が締結権者でない職場はいっぱいあるわけです。基準法上やら労組法上やら、学生さんも労働者でしょうけれども、労組法上の労働者というふうに学生さんを認識していいのかどうかは、いろいろ御議論もあるところなので、学生アルバイトの方が多いような職場は、また少し別の議論があるかもしれませんけれども、そんなことも含めまして、今、コアの人たちがいないわけですから、労働組合に対するクレディビリティーというか、そういう感覚も外延の人たちだけのクレディビリティーしかない、そんなことが実態だと思います。
 そういう意味では、我々の立場からは、ともかくコアの人たちをお相手にできる労働組合になってほしいと思っています。
 それから、さきほど村中先生からありました中小企業についてはもうおっしゃられるとおり、中小企業で何か問題が起こって、私どもが見たときにその中小企業はどういう中小企業かということで、大手の子会社、孫会社というのは責めがあるのです。一人親方、オーナー型の経営者のところで問題がおきますと、これは石嵜さんのところにお世話になって、そういうところの解決をしたケースもありますけれども、この辺でもめますと、まず初めに何をもめているのか、その企業はどういう成り立ちになっているのだというところをぱっと見たら、大体問題の所在はこういうところだなというのが何となく分かります。
 今、同じ中小企業でも、子会社、孫会社は極端なことを言えば、親会社に何かのチャンネルでこんなことが起こっているのですがという話を持っていきますと、親会社も世間体もおありになるので、余り乱暴なことはなさらない。例えば、の話ですけれども。
 中小企業は当然スタッフもおりませんし、後ろに社会保険労務士会の方もおられるけれども、どういうサジェスチョンをなさっておられるのか、ときどき気になることもあります。

○菅野座長 よろしいでしょうか。それでは、次回にこのようなところから総論につなげたいと思いますが、次回の検討会の日程についてお願いします。

○齊藤参事官 次回は、9月4日水曜日の午後14時30分~17時30分を予定しておりますのでよろしくお願いします。

○菅野座長 それでは、何か御発言がなければ、本日の検討会はこれで終了いたしますが、よろしいですか。

(「はい」と声あり)

○菅野座長 それでは、どうもありがとうございました。