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労働検討会(第8回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成14年9月30日(月) 13:30~16:50

2 場所
司法制度改革推進本部事務局共用第4会議室


3 出席者
(委員)
菅野和夫座長、石嵜信憲、鵜飼良昭、熊谷毅、春日偉知郎、後藤博、髙木剛、村中孝史、矢野弘典、山川隆一、山口幸雄(敬称略)
(事務局)
古口章事務局次長、齊藤友嘉参事官、松永邦男参事官

4 議題
(1) 諸外国の労働関係紛争処理制度に関するヒアリング②
 ・ ドイツの制度に関するヒアリング
 ・ イギリスの制度に関するヒアリング
 ・ アメリカの制度に関するヒアリング
(2) その他

5 配布資料
資料46 労働関係事件への総合的な対応強化に係る検討すべき論点項目(中間的な整理)
資料47 諸外国の労働関係紛争処理制度に関するヒアリング事項[再配布]
資料48 諸外国における労働関係紛争処理の概況
資料49 毛塚勝利教授ヒアリング資料
資料50 小宮文人教授ヒアリング資料
資料51 中窪裕也教授ヒアリング資料
資料52 矢野弘典委員提出資料

6 議事

(1) 諸外国の労働関係紛争処理制度に関するヒアリング

 ドイツ、イギリス及びアメリカの労働関係紛争処理制度に関して、それぞれ専修大学法学部の毛塚勝利教授、北海学園大学法学部の小宮文人教授及び千葉大学法経学部の中窪裕也教授から、ヒアリング資料に基づいて説明がなされ、その後、次のような質疑が行われた。(○:委員、●:ヒアリング対象者)

○ ドイツ、イギリスでは、非職業裁判官は審理にどの程度積極的に関与しているのか。また、ドイツでは職権主義的に審理が行われているようであるが、裁判官のステータスが高いということもあって、当事者等に対して強く指導したりしているのか。

● ドイツでは、第1審の非職業裁判官(名誉職裁判官)は、事案に関して期日当日に初めて書面を読んだり、職業裁判官から説明を受けたりするようだが、事件の多くは定型的なものなので対応はできるようである。裁判所によっても異なるが、職業裁判官と名誉職裁判官はかなり真剣に合議しているようである。
 また、第2審及び第3審では、名誉職裁判官は下級審の名誉職裁判官の経験者がなるなどしており、一般に第1審の名誉職裁判官よりも評価は高いとのことである。以前には、名誉職裁判官は不要だとの話も聞いたが、最近では、職業裁判官から、名誉職裁判官がいることで助けられていると聞いた。
 審理が職権主義的に見えるのは、定型的な事件が多いからだろう。

● イギリスでは、訴訟指揮は職業裁判官(審判長)が行っているが、非職業裁判官(素人審判官)はあまり質問はしないようだ。審理のメモも審判長が取っているようだ。事実関係に関する書面等も審判長のみが読んでいるようであり、素人審判官の役割は大局的な見地からの助言を行うことに限られるのではないか。
 労使の素人審判官を関与させることとしたのは、従来のコモンロー裁判所では職業裁判官が使用者に有利な判決を出すことが多かったことから、労働者側にも裁判の公正さについてのイメージを持ってもらう必要があったからではないかと考えている。

○ ドイツの職業裁判官は他の系統の裁判所に異動することはあるのか。

● 州内の他の労働裁判所に異動することはあるが、他の系統の裁判所に異動することはない。

○ ドイツの職業裁判官の専門性の程度はどうか。労働裁判所の職業裁判官には優秀な者がなることが多いと聞いたことがある。

● その点はよく承知していないが、州によっては企業内で人事労務の実務経験を有する者を職業裁判官に任命することとしているところもあるようだ。

○ イギリスの雇用審判所の審判長は、コモンロー裁判所の裁判官になることがあるのか。

● 雇用審判所の審判長は法曹として7年間以上の経験を有する者から任命することができるので、他の裁判所よりグレードは低いと考えられているのではないか。ただし、雇用控訴審判所の審判長は高等法院の判事から任命されるので、コモンロー裁判所への異動は想定されていると言えるだろう。

○ イギリスの雇用審判所の判決は執行力が弱いと聞くが、この点について見直しの議論はなされているのか。

● そのような議論はなされていないようだ。

○ イギリスの場合、執行力を得るためにさらに通常裁判所に訴えなければならず、結局審理が長期化するのでないか。

● そのような問題点はあるが、イギリス国内ではその点の見直しの議論はなされていないようだ。

○ ドイツの場合、解雇事件では、特に迅速な処理を図るために、主張や立証の時期などについての特別な手続を設けているが、準備の点や真実発見の要請等から当事者や代理人に不満の声はないのか。

● 準備期間が短すぎるといった不満は特に聞いたことはない。ドイツの場合、解雇事由は法律で規定されているので、定型的な処理が可能であり、主張立証の準備はそれほど難しくないのではないかという印象を受けている。

(2) 次回の日程

 次回(第9回)は、平成14年10月25日(金) 10:00~12:30に開催することとし、中間的な論点項目の整理(資料46)の総論部分についての検討を実施することを予定している。
 なお、今後の検討の進め方に関して、座長から、総論部分の検討項目に関して、①労働関係紛争の今後の動向、紛争処理の基本的な在り方、裁判所等の紛争処理機関の役割分担の在り方、②労働関係紛争処理における特殊性・専門性の2点について、各委員から意見を頂戴した上で議論を進めていく旨の提案がなされ、了承された。
 また、次のような質疑が行われた。(○:委員、△:事務局)

○ 仲裁検討会で検討されている仲裁法制については、労働分野では、労働者が使用者と対等な立場で仲裁合意を行えるようにすることが必要であるが、この点、個別の労働者との関係で弊害が生じないか心配がある。労働分野についても消費者保護と同様の配慮が必要ではないか。
 このため、労働検討会でも検討することその他の何らかの方法で仲裁検討会に意見を伝えることはできないか。

△ 御指摘の点については、仲裁検討会の担当ラインにおいて検討を行っているが、労働検討会での取扱についても検討しているところである。