6 議事
○井上座長 所定の時刻ですので、第11回の裁判員制度・刑事検討会を開会させていただきます。
本日も御多忙の折、御参集いただきまして、ありがとうございます。
本日は、新しい年になってから最初の会議です。今年は旧年にも増して忙しい年になりそうですが、よろしく御協力のほどお願い申し上げます。
御承知のとおり、本日の検討会から、二巡目の議論を始めることになっております。その第1回目として、「公訴提起の在り方」、つまり検察審査会の一定の議決に法的拘束力を付与する制度の導入について御議論いただくことにしたいと思います。
最初に、事務局から事務連絡があるそうですので、お願いします。
○辻参事官 メンバーの交替がございましたので、御報告いたします。前回まで御参加いただいていた廣畑警察庁刑事局刑事企画課長が、福岡県警察本部長に御異動になられました関係で、廣畑課長に替わられまして、警察庁の樋口刑事企画課長に新たに当検討会のメンバーとして加わっていただくことになりました。
○井上座長 樋口委員から一言お願いいたします。
○樋口委員 ただいま御紹介いただきました樋口でございます。よろしくお願いいたします。前任の廣畑福岡県警察本部長からは、大変残念であると、それから、皆様に是非よろしく申し上げてほしいということでございました。
途中から検討会に参加をお許しいただけるということでございまして、大変光栄でございます。今後ともよろしくお願い申し上げます。
○井上座長 よろしくお願いします。ほかに事務局から何かありますか。
○辻参事官 これは、いつも申し上げていることですが、広く国民の皆様から寄せられました御意見につきましては、これまで同様、本日もその後寄せられた御意見の追加の目録をお配りしております。目を通していただいた上、御覧になりたいものがございましたら、適宜の機会にお申し付けいただければと思います。以上です。
○井上座長 ありがとうございました。
それでは議事に入りたいと思いますが、前回の検討会での議論を踏まえまして、事務局でたたき台を作成してくれていますので、これからその内容について説明していただこうと思います。その前に、こういうたたき台を作っていただいた趣旨について、もう一度私から確認させていただきたいと思います。前回の検討会における協議によりまして、事務局において、裁判員制度、刑事裁判の充実・迅速化、検察審査会制度のそれぞれのテーマごとに、具体的制度設計に向けた議論のたたき台を作成してもらい、それを素材として、いわゆる第2ラウンドの議論を進めていくということとなったわけでございます。
お手元に配布されております「検察審査会制度について」というタイトルのペーパーは、そのうち検察審査会制度に関するたたき台ということになります。事務局において、この検討会でこれまで議論してきました大きな論点については、これまでの議論を踏まえたものとしていただきました。また、これまでの段階では十分議論されなかった細かい論点についても、考えられる制度の枠組みを検討した結果をまとめてもらいました。
もちろん、考えられる選択肢というものは、たたき台に掲げられたもの以外にもあると思われますが、事務局の方では、前提となる論点について、検討会での議論の状況や現行制度の在り方等を踏まえて検討した上での一応の案を作成したものと考えておられまして、私もそのように理解しております。前回の検討会においても確認されたことですけれども、これまでの検討会の議論において、意見が分かれたような論点については、複数の選択肢を掲げてもらっていますし、また、今後の本検討会による議論は、このたたき台に記載された範囲に必ずしも限定されるわけではなく、例えば、ある論点について、A、Bという2つの案だけが掲げられていたとしても、それらとは異なった案を提案することはもちろん可能であります。また、たたき台に取り上げられた論点以外の論点について意見を述べることも可能であるという了解であったと存じますので、その点、確認させていただきたいと思います。
そういう前提で、このたたき台を素材に御議論いただければと思います。このことは十分御理解いただいていると思いますけれども、もう一度念のために確認させていただいた次第です。
それではたたき台の中身について、事務局の方から説明をお願いしたいと思います。
○辻参事官 まず、資料1としてお配りさせていただいております、たたき台の全体の構成から御説明いたします。大きく分けて3つの項目に分かれておりまして、まず第1点目が、1ページの「検察審査会の議決に対するいわゆる法的拘束力の付与」というものであります。今般の検察審査会制度の改正の、ある意味で中心となる、検察審査会の一定の議決に法的拘束力を付与することに直接に関係する部分というものであります。
2点目が、3ページの2でありますが、「検察審査会の組織、権限、手続等の在り方」と題した項目であります。検察審査会の審査、議決をより充実し適正なものとする観点、そういった観点などから、検察審査会の組織、権限、手続等の在り方に関して検討が必要と考えられる措置を掲げたものであります。
3点目は、5ページの「建議・勧告制度の改革」という項目でございます。これは、司法制度改革審議会の意見及び司法制度改革推進計画において、検察庁運営への国民参加として言及されているところでありますが、検察審査会が検察事務の改善に関し、検事正に行う建議・勧告の制度を充実・実質化するための制度改正に係る部分ということになります。以上が全体の構成であります。
順次、1から御説明をしたいと思います。
まず、1の(1)「いわゆる法的拘束力のある議決の種類」という項目ですが、ここは、検察官の起訴処分を相当とはしない議決として、現在、起訴相当の議決と不起訴不当の議決がある中で、どの議決に法的拘束力を付与することとするかという論点であります。この検討会でも指摘がありましたとおり、起訴相当の議決は当該事件を起訴すべきであるという検察審査会の明確な意思表示であると考えられるのに対し、不起訴不当の議決はそこまでの趣旨ではなく、検察官の捜査が不十分であり、更に捜査を尽くした上で再度処分を決せられたいと、こういう趣旨でなされることが少なくないということにかんがみまして、このたたき台では、起訴相当の議決に法的拘束力を付与するものとするという案を掲げたものであります。
次に、(2)「いわゆる法的拘束力のある議決の要件」という項目についてであります。検察審査会の一定の議決に法的拘束力を付与し、その議決に基づき公訴が提起される制度を導入するということになりますと、そのようにして公訴が提起されるということになった場合、被疑者は種々の負担を負うことになるところから、先ほども申し上げたかと思いますが、検察審査会において、より充実しかつ適正な審査・議決が行われるようにすることにも十分に意を用いる必要があるのではないかと考えられます。
そのような要請にもこたえ得るように、このたたき台では、この検討会における以前の検討の際の議論を踏まえ、法的拘束力のある議決を行うための手続的な要件として、以下に書いてございますア、イ及びウの3つの要件を設け、これらの要件がいずれも満たされた場合に検察審査会は法的拘束力のある議決を行うことができることとしております。
そのうちの(2)のアでありますが、これは、検察官等の意見聴取を要件とすることに関するものでありまして、御覧いただきますとお分かりいただけるように、A案とB案の2つの選択肢を掲げております。A案、B案いずれも、法的拘束力のある議決をするに当たり、検察官に対し、検察審査会議に出席して意見を述べる機会を与えることを必要的とするものであります。その趣旨は、この検討会でも指摘があったところでありますが、少なくとも検察審査会が法的拘束力のある議決を行う事件については、その前提として、各検察審査員が審査の対象である検察官による不起訴処分の理由を十分に把握した上で、審査、議決を行うというようにすることが必要不可欠であり、それを担保するため検察官に出席説明の機会を与えることを必要的にしようというものであります。
そこで、A案とB案の違いはどこにあるかということでありますが、A案は、検察官からの意見聴取のみを必要的とするのに対し、B案は、検察官に加えて被疑者からの意見聴取についても必要的とするというところに違いがあります。
A案は、被疑者の弁明については、不起訴記録などからこれを把握することができることや、一般の国民だけで構成される検察審査会に被疑者が出席して、例えば、粗暴な言動に及んだ場合、審査会がこれに適切に対処することは困難であると考えられることなどから、そのような機会を被疑者に与えることを必要的なものとするのは適当ではないという御意見があったことを踏まえたものであります。
B案は、検察審査会の議決によって、被疑者は公訴を提起される立場になるため、被疑者に対する適正手続の保障の観点から、被疑者にもそのような機会を与えるのが相当であるという御意見があったことを踏まえたものであります。
続きまして(2)のイでありますが、これは、検察官に再考の機会を与え、その結果をも踏まえた上でなされた議決に法的拘束力を付与することとするかどうかという論点に関するものであります。以前の検討の際、この点につきましても両方の御意見があったことを踏まえて、このたたき台を作成しました。なお、資料2-1ないし3といたしまして、たたき台のこの部分につきまして、それぞれの案を採った場合の手続の流れを図示したものを用意いたしましたので、併せて御参照いただければと思います。
ここに書かれているA案は、そのように再考の機会を与えた上でなされる議決に法的拘束力を認めるべきであるという案でありまして、便宜「二段階案」と呼ぶことにしております。その趣旨といたしましては、公訴提起に伴い、被疑者・被告人に種々の不利益が及ぶことにかんがみ、法的拘束力のある判断ができるだけ慎重かつ適正に行われるようにするため、二段階目の審査において、検察官による再捜査、再処分の結果をも踏まえてその当否を審査し、なお起訴相当とするときに拘束力のある議決が行われるようにするということが挙げられます。
これに対しましてB案は、イの要件は設けないこととして、検察審査会が起訴相当の議決を行えば、検察官に再考の機会を与えることなく、当該議決に法的拘束力を付与するというものでありまして、同様に便宜「一段階案」と呼んでおります。その趣旨としましては、公訴権の行使に民意を直裁に反映させるという、今回の制度改正の趣旨により適合すると言えることなどが挙げられると思います。
そして、二段階案であるA案につきましては、以前のこの検討会での検討の際にも議論があったところでありますが、検察官の再考の前提となる検察審査会の最初の議決について、それでいったん審査手続が終了する終局処分の議決とする案と、中間処分的な議決とする案が考えられることから、その点の違いによってA1案、A2案の両案を掲げました。
具体的に説明いたしますと、A1案(二段階案①)とした案でありますが、これは、第一段階の議決を法的拘束力のない起訴相当の議決とするものであります。検察審査会が、最初の議決として、法的拘束力のない起訴相当の議決を行った後、一定期間内に検察官が公訴を提起しなかった場合に、当該事件について改めて審査の申立て又は職権審査の議決があり、検察審査会が再度審査をした結果、やはり起訴を相当とすると、こういう判断に至ったときに法的拘束力のある起訴相当の議決を行うことができるということにするというものであります。
最初の議決が起訴相当の議決という終局処分であり、それにより、当該事件の審査手続はいったん終了するということになりますから、検察審査会が当該事件を再度審査するに当たっては、検察審査会法第2条第2項、第3項に基づいて、事件の審査を開始するために必要な手続である審査の申立て又は職権審査の議決が改めて必要になるものであります。他方、A2案(二段階案②)は、検察審査会が、最初の議決として、名称は更に検討を要すると思われますが、起訴相当の議決と同様に、検察審査員8人以上の多数によって検察官に起訴を勧告するという趣旨の議決を行うものであります。その後、一定期間内に検察官が公訴を提起しなかった場合に、検察審査会は、当該事件を再度審査した結果起訴を相当とするときに、法的拘束力のある起訴相当の議決を行うことが可能となるというものであります。
A2案は、A1案とは異なりまして、最初の議決を終局処分ではなく中間処分的な議決とし、その議決によって当該事件の審査手続は終了せず、検察審査会にいまだ係属していることにするものであります。こうすることによって、改めて審査の申立てや職権審査の議決を経ることなく、当該事件を再度審査することとするものであります。
このように、二段階目の検察審査会による再審査の前提として、改めて審査の申立てや職権審査の議決を行うことが必要か否かということが、A1案とA2案との具体的な違いということになります。
A1案の趣旨としましては、例えば、第一段階の議決後の検察官の再捜査によって、被疑者の無実を示す決定的な証拠が発見・収集され、審査申立人が検察官の再度の不起訴処分に不服を持っていないという場合も考えられるわけで、そうだといたしますと、審査申立て等を経ることなく、自動的に二段階目の検察審査会が再審査をするものとするというのは、検察審査会の負担等の観点からしましても相当ではないということが考えられます。また、第一段階の議決後に審査申立人と被疑者との間で示談が成立したといったような場合、この場合も審査申立人がもはや不服を持っていないということになることだと思いますが、そういう場合も考えられると思います。
これに対しまして、A2案の趣旨といたしましては、検察審査会が積極的に起訴すべきものとする第一段階の議決をしたにもかかわらず、検察官があえて公訴を提起しなかった場合、審査申立人に再度審査申立ての手続をとることを求めるのは相当ではなく、当然に検察審査会がその当否を再審査すべきであるということが考えられます。
以前のこの検討会での検討の際には、中間処分とした方が、検察官の再捜査、再考が迅速に行われるのではないかという指摘もあったところであります。
なお、A1案につきましても、A2案につきましても、検察官の再考を経て再度の審査を行う第二段階目の検察審査会が不起訴不当の議決を行うことができるものとすると、当該事件は再度検察官に戻るということになりまして、なお被疑者が公訴提起されるのかどうか未確定である状態が継続するということとなりまして、被疑者の立場等を考えますと相当ではないと考えられることから、再度の審査においては、不起訴不当の議決を行うことはできないものとするという案といたしております。
要件の最後の(2)のウでありますが、これは、法的拘束力のある議決の多数決の要件に関するものであります。以前の検討の際の議論を踏まえまして、起訴相当の議決を行うためには検察審査員11人中8人以上の多数が必要であるとしている現行制度どおりに、8人以上の多数によるものとしております。現行制度どおりであっても、検察審査員の3分の2を超える多数が要求されており、十分に議決の慎重さを期すことができると考えられる一方、例えば、全員一致にするなど現行以上に多数決要件を加重すると、法的拘束力のある議決を行える場合が限定され過ぎるきらいがあるのではないかということから、このような案としたものであります。
続きまして、(3)「いわゆる法的拘束力のある議決後の訴追及び公訴維持の在り方」という項目についてであります。
これは、(2)の各要件を満たしまして法的拘束力のある議決がなされた後、具体的に誰がどのようにして公訴提起のための手続を行い、その公訴を維持するために訴訟追行を行うのかという問題であります。たたき台には、当検討会における以前の議論を踏まえまして、3つの案を掲げております。この点につきましても、資料2-4ないし6といたしまして、それぞれの案を採った場合の手続の流れを図示してみましたので、併せて御参照いただければと思います。
内容について御説明いたしますと、A案及びB案は、検察審査会の判断とは異なり、言わば最後まで不起訴処分相当の意見であった検察官が公訴の提起及びその維持に当たるものとするのは、審査申立人等を始めとする一般国民から見て、その公正らしさに疑念が生じ得ることなどを理由に、現行の付審判手続と同様、指定弁護士が公訴維持に当たるとするものであります。
これに対しましてC案は、検察官が公訴提起手続を行い、その維持に当たるという案でありまして、検察官は不起訴処分相当の意見であったとしても、公益の代表者の立場にあることから、検察審査会の議決に従って公訴を提起し、その維持に当たる者としても公正さに欠けることはないという考えによるものと言えます。
このように、A案とB案は、いずれも指定弁護士が公訴維持に当たるとするものでありますが、この2案の違いは、公訴提起に至る手続について、A案においては起訴相当の議決を行った検察審査会がこれを行うのに対し、B案は指定弁護士が当該議決に従って公訴提起手続も行うというところにあります。
具体的には、A案は、法的拘束力のある起訴相当の議決を行ったときには、検察審査会は起訴状に相当する書面を作成して、これを裁判所に提出することとし、これによって公訴提起があったものとみなすというものであります。そして、その事件を審理する裁判所が、現行の付審判手続と同様、当該事件について公訴の維持に当たる者を弁護士の中から指定し、その指定弁護士が公訴維持に当たることになるということでございます。
B案は、法的拘束力のある起訴相当の議決を行ったときには、検察審査会は、その議決書謄本を裁判所に提出することとし、その提出を受けた裁判所が、その事件について公訴の提起及びその維持に当たる者を弁護士の中から指定し、その指定弁護士が検察審査会の当該議決に従って公訴を提起し、更にその維持に当たるというものであります。
以上が項目の1でございますが、続きまして、項目の2「検察審査会の組織、権限、手続等の在り方」について御説明いたします。
まず、(1)「リーガルアドバイザーの委嘱」という項目でありますが、もとより、リーガルアドバイザーという名称は、片仮名であることもございまして、仮称と御理解いただきたいと思います。
この点につきましては、起訴処分の当否を審査し、起訴相当の議決を行うか否か等を判断するのは当然検察審査会でございますが、検察審査会は法律家ではない一般国民で構成されており、必ずしも法律に関する知識が十分であるとは言えず、捜査関係書類にもふだん接しておらず見慣れていないといったようなことが考えられることから、法律専門家である弁護士が、いわゆるリーガルアドバイザーとして検察審査会の審査を補助することとして、判断の前提となる審査の一層の適正・充実を期すということを趣旨とするものであります。
そのうち、(1)のアでありますが、これは、そのようなリーガルアドバイザーの関与する事件の範囲に関する論点でありまして、これまでの議論を踏まえ、3つの案を併記しております。
A案は、検察審査会が不起訴処分の当否を審査するに当たり、必要と認めるときに、弁護士の中からリーガルアドバイザーを委嘱することができるものとするというものでありまして、リーガルアドバイザーの委嘱の要否を検察審査会の判断に委ねるものであります。
B案は、A案のように、検察審査会が必要と認めるときに委嘱することができるとすることに加えまして、法的拘束力のある起訴相当の議決を行うに当たっては、その事件の審査のためリーガルアドバイザーを委嘱しなければならないとするものであります。すなわち、そのような議決を行う事件につきましては、審査を適正かつ充実したものとする必要性がより高いといえることから、リーガルアドバイザーの委嘱を必要的なものとすることによって、審査の一層の適正・充実を確実なものにしようという趣旨ということになります。
C案は、更に進みまして、検察審査会が不起訴処分の当否を審査するときには、必ずリーガルアドバイザーを委嘱しなければならないとするものでありまして、この案によれば、検察審査会が審査に当たる全件にリーガルアドバイザーが関与することになります。
次の(1)のイでございますが、これは、リーガルアドバイザーの職務の具体的内容に関する論点になります。審査の一層の適正・充実を図るための補助者として、リーガルアドバイザーは、審査に係る事件の事実認定上及び法律上の問題点を整理することや、関連する法令、判例等を整理・解説すること、議決書を起案することなどのほか、各検察審査員の求めに応じ、必要な助言を行うという案にしております。
次に(2)「検察審査員の義務・解任」、(3)「罰則」、(4)「検察審査員の欠格事由等の見直し」についてであります。
いずれも、この検討会における以前の検討の際の議論をも踏まえまして、検察審査会の一定の議決に法的拘束力を付与することに伴い、検察審査会の審査、議決がこれまで以上に適正かつ充実したものとなるようにするために検討が必要ではないかと考えた論点でありますが、裁判員制度においても、これらと同種の論点についての検討が必要となると考えられます。
そうしますと、これらの論点については、検察審査会制度と裁判員制度の両方を視野に入れて検討するのが適当と考えられましたことから、このたたき台におきましては、そのような論点の所在を明らかにするにとどめたものであります。
そこで、これらの論点を掲げた趣旨を簡単に御説明いたしますと、(2)の「検察審査員の義務・解任」につきましては、検察審査員の審査、議決の充実・適正を確保するため、各検察審査員につき、公正な判断を行うことが期待できないと認められる一定の義務違反があった場合に、その検察審査員を解任することができるとする趣旨の規定を定める必要があるのではないかというものでございます。
(3)の「罰則」につきましては、検察審査会の権限が強化されるのに伴い、検察審査員等が職務上知り得た秘密の保護の必要性や、検察審査員等が不正な働きかけを受けることを防止する必要性が、これまで以上に高くなるといえますことから、現行の検察審査会法所定の罰則の見直し、検討、再検討が必要ではないかと考えたものであります。
次に、(4)「検察審査員の欠格事由等の見直し」につきましては、検察審査会法第5条に規定されております欠格事由、あるいは同法第6条の就職禁止事由等につきまして、現在の事情をも勘案して、より合理的なものとなるよう見直す必要があるのではないかと考えたものであります。
続きまして、(5)「付審判請求手続との調整」という項目についてであります。これは、現行の付審判請求手続において裁判所の付審判決定によって公訴が提起されることがあるのに加えまして、今回の改正を行いますと、検察審査会の議決に基づいて公訴が提起されることになることから、検察審査会の審査手続と付審判請求手続との間で何らかの調整規定が必要になるのではないかという趣旨の論点でありまして、以前の検討の際に問題提起がなされたところであります。
そのうちの、(5)のアの「申立期間」についてでありますが、これは、検察審査会への審査申立の期間を定めるものとするかどうかというものであります。御承知のとおり、付審判請求手続にあっては、対象犯罪である公務員職権濫用罪等の告訴・告発人は、不起訴処分の通知を受けた日から7日以内に請求を行わなければならないものとされており、その期間経過後の請求は請求権消滅後にされたものとして棄却されることとなります。
他方、現行制度では、検察審査会への審査の申立ての期間は定められておらず、審査申立権のある者は、いつでも審査を申立てることができることになっております。
このような状況を踏まえまして、A案、B案と2案掲げておりますが、そのうちのA案は、現行制度同様、検察審査会に対する審査申立ての期間は特に定めないとするものであります。
これに対しまして、今回の改正を行いますと、検察審査会の議決に基づき公訴が提起されるということになるわけですが、そうなりますと、付審判請求制度にしても検察審査会制度にしても、同じく検察官の不起訴処分に対しまして私人の申立てによって手続が開始され、公訴提起に至ることがあるという点では変わりなく、特に被疑者の立場から見ますと何ら変わりはないということになると思われます。
そうしますと、付審判請求については申立期間が定められ、検察審査会に対する審査申立てについては申立期間の定めがないというのは、制度間でバランスを失するきらいがあるという考えもあり得ると思われます。
B案は、そのような考えに立って、付審判請求制度と同様に、検察審査会への審査申立てにつきましても、不起訴処分がなされたことを知った日から一定期間以内に行われなければならないというふうにするものであります。
次に、(5)のイでありますが、「付審判請求対象事件について、付審判請求と審査申立てとが並行してなされた場合についての調整」という項目であります。
ここも2案掲げておりますが、A案は、調整規定を設けないというものであります。付審判請求の対象事件について、付審判請求と検察審査会への審査申立てが並行して行われた場合、特に、いずれか一方の手続において、付審判決定又は法的拘束力のある起訴相当の議決が行われて公訴が提起されたときに、何ら調整規定を設けないといたしますと、他方の係属中の手続をどのようにするのかということが問題になると思われますが、現在でも、例えば、検察審査会における審査中に付審判決定がなされた場合には同様の問題が生じるわけでありまして、その点は解釈により解決が図られているところであります。A案は、そういう場合は解釈でまかなうことができるということも含めまして、あえて調整規定を置く必要はないのではないかという考えであります
他方、B案でありますが、これは、付審判請求手続が先行いたしまして、付審判請求を棄却する決定が確定したときに関するものでありますが、付審判請求棄却決定が確定したときには、検察審査会は同一事件について法的拘束力のある起訴相当の議決を行うことはできないとする旨の調整規定を設けるものであります。検察官のみならず、公正中立の立場にある裁判所もまた公訴を提起しないのが相当であるという判断をした場合には、被疑者の立場等を考えますと、それでもなお検察審査会が法的拘束力のある議決を行うことができることとするのは適当ではないのではないかという考えもあり得るかと思われ、そのような考えに至った案ということになります。
そういう趣旨に基づくものでありますので、ここで付審判請求決定にそのような効果を付与すべきであるのは、刑事訴訟法第266条第1項各号の棄却事由のうち、裁判所が実体判断をしている、請求が理由のないときということになると思われます。
なお、現行の制度では、付審判請求棄却決定に対する抗告は、現決定を取り消す利益がある限りいつでもこれを行うことができるとされていますことから、付審判請求棄却決定がありましても、抗告が行われない場合には、当該事件に関する公訴時効が完成するまでは、その付審判請求棄却決定は確定しないことになります。しかしながら、付審判請求棄却決定がなされ、その請求人がこれを不服として抗告を申立てているわけでもないのに、決定が確定しないということの妥当性にそもそも疑問があるのではないかと思われますし、公訴時効が完成した段階で、付審判請求棄却決定に、B案のように、検察審査会が法的拘束力のある起訴相当の議決を行うことができなくなるという効果を与えても、既に公訴時効が完成しているということであまり意味がないということになります。
そこで、たたき台におきましては、併せて付審判請求棄却決定に対する抗告申立てにつき、一定期間内に行うべきものとする案を掲げているところであります。
続きまして、(6)「検察審査会の配置の見直し」という項目でありますが、これは、検察審査会法第1条第1項ただし書きを見直すものとするというものであります。この点は、以前の検討の際に問題提起があったところでありますが、現状の検察審査会の配置はアンバランスが顕著となっており、都市部の検察審査会と地方の検察審査会とでは、事件数に著しい差が生じているという指摘がされております。そのため、一部の大都市の検察審査会では、週1回程度の審査会議を開催しても、事件受理から審査開始まで4カ月から9カ月程度の時間を要するなどといった問題が生じているという指摘もあるところであります。
そこで、検察審査会の議決に法的拘束力を与えるものとすることに伴い、検察審査会がこれまで以上に適正かつ充実した審査を行うことができるようにするとの観点からも、検察審査会の配置を合理的なものに見直し、それぞれの検察審査会の取扱う事件数が適正なものとなるようにして、各検察審査会の審査がより適正かつ充実したものとなるための基盤整備を行う必要があるのではないかと考えられます。
検察審査会の具体的な配置は、政令によって定められる事項とされておりますが、検察審査会の配置を合理的なものに見直すに当たっては、その前提といたしまして、「検察審査会の数は、二百を下ってはならない。」などとしている検察審査会法第1条第1項ただし書きの見直しが必要なのではないかと考えたものであります。
最後に、3の「建議・勧告制度の改革」についてであります。
先ほども若干触れましたように、司法制度改革審議会の意見は、検察庁運営への国民参加の項目におきまして、検察審査会が検察事務の改善に関し検事正に対して行う建議・勧告の制度を充実・実質化することを提言しているところであります。そして、そのような建議・勧告の制度を充実・実質化するために、司法制度改革審議会の意見は、例示としてでありますが、建議・勧告に対する検事正の回答義務を法定化するということを掲げておりますので、これを受けまして、このたたき台に記載した案を考えたものでございます。
長くなりましたが、以上であります。
○井上座長 ありがとうございました。今説明がありました、たたき台の内容について御質問があれば伺いたいと思います。かなり広い範囲にわたり、詳細な説明があったものですから、疑問があれば議論の中でもまた質問していただくとして、引き続いて中身に入らせていただいてよろしいでしょうか。今日は時間が必ずしも潤沢にはないということを考えますと、この検察審査会制度についての議論を、もう一回、次回も行うということにし、2回かけてこの問題領域についての第2ラウンド目の議論を一通りすませるということで進めさせていただきたいと思います。よろしいですか。
そういう意味で、枝葉にわたって事細かく議論していただけるだけの余裕は必ずしもないと思われますので、できるだけ重要な点に集中して議論していただければと思います。
これからの進め方なのですけれども、せっかくたたき台を作ってもらいましたので、まずは、このたたき台の項目に沿って議論を進めていくことにしたいと思います。もちろん、さっき確認させていただいたような了解ですので、このたたき台の項目に関連して、さらにこういう点も議論すべきではないかということがございましたら、まず項目として取り上げられている部分について議論をした上で、その項目の最後の方の段階で、こういう論点もあるのではないか、もう少しこういう点も考えたらどうかといった御意見をいただくこととしたいと思います。先ほどのような趣旨を念頭に置きながら、活発に御議論をいただければと思います。
それではまず、項目1の「検察審査会の議決に対するいわゆる法的拘束力の付与」の(1)の「いわゆる法的拘束力のある議決の種類」、つまり、そのような法的効果を与えるべき議決の種類という点から議論を始めたいと思います。たたき台としては、起訴相当の議決にいわゆる法的拘束力を付与するということになっており、この点に関しては、第1ラウンド目の議論では、特段これとは異なる御意見も出なかったように記憶するのですが、どうぞ御自由に御議論いただければと思います。いかがでしょうか。
○酒巻委員 第1ラウンドにおいて皆さんの意見がほぼ一致したとおり、たたき台に示された、「起訴相当」の議決に限って法的拘束力を付与するという考え方が妥当だと思います。その理由は、先ほどの事務局説明にほとんど表れていたと思います。検察審査会制度は、検察官の事件処理のうち事件を不起訴にする処分に対し不服があった場合に、一般国民がその当否を審査するものであり、審査の結果検察官の不起訴処分が適切でないとの議決には2種類あるものの、「不起訴不当」の議決は、必ずしも検察審査会の明示的な決断を示すものではなく、むしろ検察官に対して、今一度捜査を尽くした上で、処分を再検討して欲しいとの趣旨である場合が多い。これに対して、特別多数決をもってなされる「起訴相当」の議決は、検察官の不起訴処分に対して、検察審査会が正反対の意思を積極的に示すものですから、将来、議決に法的拘束力を付与して起訴の効力を与えるのであれば、検察審査会としての意思が積極的に明示されている起訴相当の議決に限定するというのが妥当な在り方でしょう。
○井上座長 ありがとうございます。ほかに御意見はありますか。この点は、前回も余り異論はなかったところですので、たたき台のようなことを前提として、先に議論を進めさせていただければと思います。
次が、(2)の「いわゆる法的拘束力のある議決を行うための要件」ということです。先ほどの説明にあったとおり、たたき台では、3つの要件を満たすことが必要だとされています。その一つめが、検察官に対して意見を述べる機会を付与することを必要的なものにするということですが、まず、この点から御議論いただければと思います。検察官に対して意見を述べる機会を与えることを要件とするという点については、これも前回特に強い御異論があったとは記憶していないのですけれども、この点、もう少し突っ込んで議論していただく必要があるかと思いますので、どなたからでも、御意見をいただけませんか。
○酒巻委員 拘束力が付与される起訴相当の議決をする前提として、検察官については必ず意見を聴くという制度にするのが妥当だと思います。先ほども述べましたとおり、検察審査会は、検察官の不起訴処分が妥当であったかどうかを審査する役割を負う構造の制度ですから、検察官の不起訴処分に対して、検審が反対の意思を示す前提として、不起訴処分をした当の検察官から、なぜそのような判断をしたかという理由を聴き、その理由を十分理解・把握していただいた上で審査判断を行うことができる機会を、制度の仕組みの中に取り込むことが適切でしょう。検察官については、必要的に意見を聴くという制度設計をするのが妥当だと考えます。
○井上座長 ほかの方はいかがですか。
○髙井委員 あえて、議論のために申し上げます。裁判員制度の問題でも、アマチュアがプロに言い負かされてしまうのではないかというような懸念を主張される方もおられるわけで、そういう観点に立てば、不起訴裁定書の中で不起訴理由は一応書いてあるわけで、その上で、更に検察官の出席を義務的にして検察官に意見を述べろということになると、アマチュアがプロに言い負かされてしまうのではないか、結局制度の改正の趣旨が没却されるのではないかという意見が出てくるということは考えられると思うのです。そういう観点から言うと、検察官の出席というのはそれほど自明なものでもないかという気もします。
○本田委員 髙井委員の意見とはちょっと意見を異にするわけですが、起訴になれば相当重い負担を被疑者にかけるわけですから、起訴相当の議決というのは、検察官が不起訴処分を相当とした理由、あるいは証拠の評価等について、審査員が十分にその内容を理解した上で、慎重に検討して判断すべきであろうと思います。プロがアマチュアを言い負かすという話がありましたが、それは別に言い負かすとかいう話ではなくて、検察官がなぜそのような判断をしたのか、その理由を合理的に説明するだけの話であって、それで検察審査員の方が納得されるというのであれば、それは適正な判断が行われたということでしょう。それでもやはり検察官とは意見を異にするのだと、十分に説明を聴いて、それなりに理解したけれども、やはり検察官の不起訴はおかしくて起訴相当だと判断されれば、それで法的拘束力を与えれば良いでしょう。やはり、人ひとりを起訴するか起訴しないかの手続というのは、それくらい慎重な手続の上に立ってなされるのが相当であろうという気がいたします。
○井上座長 髙井委員も御自分の意見として言われたというより、議論のための議論とおっしゃっていましたので、多分御自分なりに回答は用意されているのだろうと思います。では、土屋委員、どうぞ。
○土屋委員 アマチュアがプロに言い負かされるのではないかという懸念があるのは当然なのですが、あまりにそれを前提にすると、検察審査会制度も成り立たないし、裁判員制度も成り立たないのだろうと私は思います。髙井委員は十分それを御存じの上であえて言ってらっしゃるというのはよく分かるのですけれども、そういうことでなく、起訴が妥当な事案なのかどうかという点に絞って言えば、アマチュアの判断というのはそう見捨てたものではないし、信頼に値するべきものだと私は考えます。そういう前提で話をしていっていいのではないかと私は思います。むしろ、信頼してほしい。そういう信頼に値する意見を述べる人たちがたくさん出てくる制度にすることの方が大事だと私は思っています。
○井上座長 今おっしゃったようなことを前提に考えた場合、検察官の意見を聴くのを必要的にするということについてはどうですか。
○土屋委員 今でも、聴こうと思えば聴けるという制度ですよね、証人として。ですけれども、起訴すべきだという結論に法的拘束力を付与することとなると、一段階ランクが上がるという筋合いのものだと思います。そういう重要な決定をするときには、やはりきちんと意見を聴く必要があるのだろうと、私は思います。
ちょっと先走った話かもしれませんけれども、検察官の意見を聴くとなれば、この事案に対して被疑者がどう考えているのかということも当然出てくるでしょうし、そのように、関係者の意見も検察官の口を通じて知ることができるというメリットもあるのだろうと思います。ですから、起訴相当という議決をするならば、検察官の意見を聴くことを必要的にしてもいいのではないかと私は思います。
○井上座長 被疑者については、次に議論していただこうと思っています。
○四宮委員 私も、あえて議論を提供するという意味で申し上げると、慎重に検討する必要があるというのは、恐らく全員疑いがないところですし、拘束力が新たに付与されるということで、より一層慎重にということもそうなのだろうと思うのです。ただ、慎重に検討するということと、すべての起訴相当の議決をする場合に必要的に意見を聴かなければいけないということとの間には、まだ少し距離があるように考えることも可能であろうと思うのです。
さっき酒巻委員がおっしゃったように、検察官の不起訴処分を審査するというのが仕事であるということであれば、恐らく、それだけ重大な決定を審査会がするときには、検察官の意見を聴く必要を感じることが実務上は多いだろうと思います。現行法でも検察官の出頭を求めて意見を述べてもらうことはできるわけで、審査会が記録等を検討して十分だと考える場合にも、すべて、検察官を呼ばなければいけないものとするのかは、一考を要すると思うのです。
それは、例えば、行政不服審査、あるいは情報公開などの制度を見ても、処分庁ですとか、諮問庁の意見を必要的に聴かなければならないということではなかったように思います。ですので、現行法のままでも新たな制度に対応できるという考えも十分成り立つのではないかと思います。
○井上座長 議論を整理しますと、皆さんのおっしゃっていることには二つの事柄があって、一つは、酒巻委員が言われ、今、四宮委員が言われたことですが、要するに、審査の対象となる原処分をした人の言い分を聴くということですね。もう一つ、土屋委員等が言われたのは、起訴相当になった場合には、被疑者が起訴されることになるので、被疑者の保護という意味での慎重さが求められるということですが、これは、恐らく別の問題ではないかと思います。全体として今までの御議論は、どちらかというと、審査の対象となる処分の当事者の言い分を聴かないでよいのかという方の議論だったと思うのですが……。
池田委員、どうぞ。
○池田委員 この問題は、次の二段階論か一段階論かとも絡むのかと思うのです。イメージとして必要だというのは分かります。一段階論を採るのだとすると、特に、検察官の意見を聴く必要性は強くなるだろうと思います。しかし、二段階論の場合、それでは2回聴くのか、あるいは後の方だけ聴けばいいのかという問題があると思いますが、仮に、後の方だけだとすると、もう一度検察官に再捜査を促すということで、前の1回の機会は与えているということにもなるのかなと思います。そして、そこでまた検察官が不起訴にするのであれば、多分、その際の不起訴理由は十分なものを説明するわけでしょうから、そこで意見を聴いたことになるのかなという気がするのです。ですから、そういうことからすると、二段階論を採るのだとすると、必要的にしなければいけないとまでなるのか、ちょっと疑問があります。ただ、結果的には、説明を十分聴いて、不起訴裁定書等の理由だけではなくて、実際にどういうところが問題だったのかというのを、生の声を聴いた方が検察審査会の審査員にとっても分かりやすいのではないかと思います。
○井上座長 二段階論との関連については、一応今の項目についての議論をも踏まえて、またそのところで議論していただければと思いますが、御指摘のような問題があることは確かですね。酒巻委員は、なお反論がおありのようですが。
○酒巻委員 先ほど座長に整理していただきましたとおり、二つの問題があります。一つは、まさに審査の対象になった者の意見を聴くという面です。もう一点は、土屋委員やまた本田委員も触れられた観点であり、起訴相当の議決に法的な拘束力が与えられる、すなわちこの判断により、検察官が不起訴とした被疑者が、刑事被告人の立場にいやおうなく立たされるというところが、これまでの検察審査会の制度と違ってくるわけで、そこの点を合わせ考えると、起訴される可能性のある被疑者に配慮して手続を慎重にするという政策的観点からも、検察官の意見は必ず聴いた方がいいという整理になるのではないかと私は理解しております。
○大出委員 私も判断しかねているところがあるのですが、髙井委員が、あえてということで御意見をおっしゃったのですが、検察官の意見を聴くというのは、審査会としてできるだけ正確に検察官の処分内容を把握して審査に当たるということが必要だということから、必要だというお話だと思うのですが、不起訴裁定書の中身というものや、記録の取り寄せということも可能であることを考えたときに、それを超えて、意見として述べなければいけないような必要性はどういうところにあり得るのかということを、もう少し実際に、御経験があるとすればお聞かせいただけるとありがたいのですが。
○髙井委員 私の本音は、検察官の意見は絶対に聴かなくてはいけないということです。
○大出委員 それは分かっていますけれども。
○髙井委員 不起訴裁定書というのは、実務の流れから言うと合理化ということで、なるべく簡単に書くようになっています。中には簡易書式といって、マルをちょんちょんと打って、はい、不起訴というのもあるわけです。ですから、不起訴裁定書及び不起訴記録から検察官が不起訴にした理由がすべて分かるという状態ではないわけです。
仮に、検察官の出席が義務的でないとなると、検察官はものすごく詳細な不起訴裁定書を書かざるを得なくなる場合がかなり出てきます。そうすると、結果的に無駄になるという場合もあって、事件の迅速処理という点からすると、実務的には、逆方向かなとも思われ、そういうマイナス面もあると思います。
ですから、検察官の出席を必要的としておけば、部内処理である不起訴裁定の段階では、とりあえず、ある程度の簡単な骨子のような不起訴裁定書で決裁を受けることにして、検察審査会に申立てを受ければ、自分が出て行って詳細に説明をするということができるわけで、実務的にはそれがベストだと考えています。
○大出委員 その場合に、先ほど四宮委員が言われたように、検察審査会が必要と考えるときに呼ぶというようなことでは不十分だということになりますか。
○髙井委員 そうですね。必要かどうかの判断が的確にできるかという場合もあるわけです。
○大出委員 そこは、さっき土屋委員がおっしゃったことで、そこの判断が審査会はできないという話になるのかどうかというのは。
○髙井委員 検察官とすると、検察審査会が、本当に呼んでくれるだろうかという不安があるわけです。そうすると、もしかしたらこれは検察審査会にいくかもしれないという事件は、とにかく、細かく書かなくてはいけないということになって、その負担は結構大きいわけです。それは、検察審査会を信頼するとかしないとかというのとまた別の次元の問題だと思います。
○辻参事官 検察官からの意見聴取を必要的にするということについて、御疑問というか、そこまでする必要があるのかという御意見がありましたですが、その理由としては、1つ、アマがプロに言い負かされるのではないかという理由が議論のためにということで、あえて提起されましたが、それ以外に、検察官からの意見聴取を必要的なことにするとこんな問題があるというようなことはあるのでしょうか。
○井上座長 要するに、検察官が出てきたら何かまずいことがあるのだろうかということですね。必要的というのは、こういう議決をするためには必ず検察官を呼ばないといけないということですが、そのようにしたら、不都合な点はあるのかということですね。
○大出委員 そんなにすぐに、その事態を不都合だというふうに私は考えているわけでは……辻参事官の想定は、必ずしも私に当たってないと思っていますが。
○井上座長 いや、想定というのではなく……。
○大出委員 出てきたらまずいと、言い負かされるのではないかというふうに思って、私は申し上げたのではありません。
○井上座長 言い負かされるのではないかという懸念があることは、御指摘のあったところですけれども、それ以外に何か不都合を生じさせることがあるのだろうか、ということではないでしょうか。
○大出委員 私自身はとりあえず思いつかないのですが、それより、私が今申し上げたのは、不起訴裁定書というものがどういった内容で、認識を共通にするための資料としてどの程度有効なのかということを確認したかったということです。
○井上座長 今、髙井委員から御説明があったのが実務の扱いであるとして、そのことを前提にした場合、いかがですか。
○大出委員 そのところがちょっとまだ分からないのです。つまり、検察官の方たちの意識との関係ということになってくると、そこは何とも私自身も推し量りようがないというところがあるのです。
○井上座長 検察官の意識というよりも、不起訴裁定書というのはその程度のものだということでしょう。それと、検察審査会として、記録を取り寄せるということだけで判断できる場合があるとすれば、呼ぶ必要はないですし、必要があると感じたら呼べばいいというのが現行の取扱いだけれども、それで十分かということが、問われていることではないですか。特に被疑者の立場から見て、それで十分でしょうか。
○大出委員 私の前回の主張もそうですが、そうだとすれば、被疑者は別に被疑者としての意見を述べる機会を考えるということがあっていいだろうと思います。
○井上座長 それは、次に議論していただく問題なのですけれども。
○大出委員 検察官がそこのところで被疑者の立場を代弁するというのが果たして妥当なのかどうかというふうに思っています。
○井上座長 検察官が被疑者の立場を代弁するということでは必ずしもないと思うのです。なぜ不起訴にしたのか、証拠の状態はどうであったのか、それはどう評価されるべきで、自分としてはこう評価したといったことを、詳しく説明するというのが、検察官が出席して行う第一次的な事柄でしょう。もちろん、その中に、被疑者の弁明というものも入ってくるかもしれませんが、それに限らず、もっと広く、証拠の状態がこうであるということを説明するのが、第一次的な機能になると思うのです。それを必要的なものとすれば、検察審査会が議決をする前に必ずそういう説明を受けることになるのですけれども、任意的なものにとどめるときは、検察審査会が検察官の説明は要らないと思う、つまり、それがなくても判断できると思えば議決していいということになるわけで、そこをどう考えるべきなのかということなのです。今、議論しているのは。
○大出委員 ですから、そのことが私としても確認したかったから御質問したのですが、具体的に不起訴裁定書等について、必ずしも十分に私自身承知していないものですから、それで判断できないと言われればそうかなと思いますし、ただ、審査会が記録の取り寄せ等々もできるということになってくれば、それなりの判断も可能かなという気もしますし、そこがちょっと微妙だなと思いますので、最終的な結論は、今の時点では出しにくいなと思っているというのが正直なところです。
○四宮委員 その御質問の点については、問題は特にないと思います。
○土屋委員 1つだけ疑問に思っているところがあります。これは、改めて言うまでもない当然のことなんでしょうけれど、検察審査会の審理の内容は非公開ですね。だから、素人の人が自由に議論できる場が確保されているというのが大前提ですから、検察官の意見聴取が必要的であるとなったときに、検察官が常時その場に出席しているというようなことはないだろうと私は思っているのですけれども、仮に、検察官として、いろんな判断を下す上で、議論の中身を知っておく必要があるから傍聴するというようなことがあると、これは何らかの形の影響が及ぶかもしれませんね。そういうことはできるだけ排除する必要があるように私は思います。
○井上座長 たたき台の趣旨は、一度は検察官にそういう機会を与えないといけないということでして、それ以上に、検察官が常時出席できるかどうかについては触れていないのです。恐らく、そこまではどなたも考えていないように思うのですけれども。
この論点については、このくらいでよろしいですか。次は、被疑者についても意見を述べる機会を与えることを要件とするかどうかということです。この点が、たたき台のアのA案とB案で違いがあるところなのですが、この点については、もう既に御意見が出かかっていました大出委員からお願いできればと思います。
○大出委員 前回もそういう趣旨のことを申し上げたわけで、検察官から聴くのなら、というだけではないのですが、審議会の意見書も適正手続に留意するということを指摘されているわけですね。それは、恐らく、被疑者の権利について留意するというようなことだと思います。したがって、前回も申し上げましたように、被疑者にとって不利益な処分が行われ、しかもそれは法的効力の問題はともかくとして、いったん決着がついていると思われることについて、再度審査が行われている場合であり、不利益な処分が行われるということになるわけですので、その場合には、被疑者の意見を聴く機会が保障されてしかるべきだろうと私は思っています。
被疑者の意見を聴くべきだという考えに対しては、前回、いろいろと危惧の念を表明される意見もあったかと思います。先ほどもちょっと御説明の中にありましたけれども、例えば、出席した被疑者が粗暴な言動をとるというようなことも、私も、それは全くないとは思わないわけです。ただ、それが例外的かどうかと言われると、私も絶対そうだとか、そうでないとかと言うつもりもありませんけれども、しかし、それは、別の対処を考えるべき性格のものであって、検察審査会に、その場合は、例えば、そういったことに対処するための方策、措置を講じることを権限として認めるとかというようなこともあり得るだろうと思いますので、そこは考えてみる余地があるのではないかと私は思っています。
○井上座長 対処するとは、例えばどういうことでしょうか。
○大出委員 例えば、もし、そういうことが予測される場合にはですね、警察の方に。
○井上座長 検察審査会の判断として、警察官の立会を求めるということですか。
○大出委員 つまり、前回の話で、検察審査会には法廷警察権のようなものはないというような御議論もあった気がするのですが、場合によっては警察官の立会を要請するということはあり得るのではないかと思います。
○酒巻委員 先に結論を申しますと、私は、検審が被疑者の意見を把握する機会はいろいろあると思いますが、必要的に意見を聴取するという制度にするのは適当でないと思います。
繰り返し申しているとおり、検察審査会制度の基本的な構造・仕組みは、検察官の不起訴処分の当否についてチェックをし、審査をするものです。このことからして、検察官の意見を聴くのは、制度趣旨からいっても自然に出てくるわけです。しかしながら、検察官の意見を必ず聴くなら他方で被疑者の意見も必ず聴かなければならないといった考え方の筋道は、基本的におかしいと思います。ここでは、検察官と被疑者が対抗しているのではなくて、既に捜査が終わり、事件処理がなされた後に、検察官の処分を検察審査会がチェックしているという形です。検事と被疑者が当事者対立構造になっていて、一方の意見を聴くなら他方の意見を聴くといった考え方は出てこない筋合いでしょう。
しかし、他方では、先ほど述べましたとおり、拘束力のある議決がなされた場合には、被疑者は起訴される立場になるのであり、大出委員もおっしゃったとおり、これは一回不起訴になった人がまた起訴されるかもしれないという不利益処分を受ける立場に立つわけですから、当然、検審はこのような極めて重大な決定をするについて、被疑者の意見、言い分がどういうものであったかを把握しておくのが望ましいだろうと思います。
そして、現行制度の下では、事務局の説明にもありましたとおり、不起訴になった事件の記録の中に、当然、捜査の段階での被疑者の言い分、供述内容が証拠資料として存在していると考えられますから、まずそれが被疑者の意見把握の1つの資料になると思います。
また、検察審査会が必要であると考えれば、現在の検審法37条により、証人という形で被疑者を直接呼んで言い分を聴くということも可能です。このように、検察審査会が重要な決定をするに際して、被疑者の立場についても考慮するための材料は、現行制度の下でも、十分にあると思います。
それから、先ほど大出委員は、被疑者が暴力的・威圧的言動に及んだ場合の対処のお話をされましたけれども、これ以外の制度設計上の危惧としては、例えば、もし仮に被疑者の意見を聴くこと自体を必要的な制度にした場合、つまり、それがないと審査会の議決ができないという制度にしますと、被疑者が、議決を阻止するために呼ばれても絶対に出て行かないというような行為に及べば、議決ができなくなって、制度としては先に進まなくなるという結果になってしまうでしょう。もとよりこれは、希有な事例かも知れませんが、仮に被疑者の意見聴取の履践を必要とする制度にするとこのような不都合が出てくる可能性があるのでしょう。
以上の次第で、検察審査会は被疑者の意見を聴くことができるけれども、それを必要的な制度にするのは適切ではないというのが私の意見です。
○四宮委員 今の点の確認なのですが、被疑者が出頭しないことにちょっと触れられたのですけれど、この、必要的というまとめ方の趣旨は、機会を与えたという理解でよろしいわけですね。つまり、現実に聴かなければいけないという意味ではなくて、意見を述べる機会を与えるということを「必要的」というふうに表現しておられるという前提で議論していいのですか。
○酒巻委員 被疑者が出頭しない設例に関する、先ほどの私の発言は、「必要的」の意味を、仮に、現実に意見を聴かなければない趣旨ととらえて制度をつくった場合の不都合を述べたものです。ただ、機会を付与するという趣旨であっても、機会の伝達困難等の問題はあり得ようかと思います。
○井上座長 その点、たたき台の言葉使いはどういう趣旨ですか。
○辻参事官 意見を述べる機会を与えるという趣旨です。そういう意味では、被疑者が出て来なければ、それはしようがないということです。省略形のときに、「必要的意見聴取」という言葉を使っているので、誤解を招いたかもしれません。
○四宮委員 もう一つ、議論の前提としての質問です。検察審査会の証人には被疑者が入るという解釈を前提に議論してよろしいのですか。
○井上座長 現在の解釈によりますと、そうなります。
○四宮委員 それでよろしいわけですね。
○井上座長 はい。
○平良木委員 今の酒巻委員の意見に賛成です。ここで一番注意しなければいけないのは、検察官が不起訴にしたという結論について、ということが問題になるということです。したがって、この点については、被疑者と検察官とは、言ってみれば利害が一致しているということになるわけで、むしろ、検察官と対立するのは申立人だと考えなければいけない。そういうことで、検察官が出てきて意見を述べることが必要的だからといって、被疑者が当然出て来るということにはならないだろうということです。
そういうことで、被疑者を呼ぶことになると、いろいろな弊害が出てくる可能性があるので、私は従前の程度でいいのではないかと考えております。
○井上座長 ほかに御意見はございますか。
○大出委員 今の点なのですが、私も先ほど申し上げましたように、対抗的に、検察官に意見を聴くから被疑者に聴けという趣旨で申し上げているわけではないのです。今、平良木委員は、利害が一致していると言いましたけれど、私はそこは違うだろうと思っているわけでして、被疑者は、明らかに、不利益処分を受ける対象、当事者であるわけです。ところが、確かに、検察官の処分が審査されるわけですけれども、検察官がそこで個人的利害で職務を執行しているわけではないわけです。検察審査会の審査というのは、民意をそこに反映させる、検察の権限行使の一般的な意味での適正を期するということだと言っていいと思うわけですから、個別の検察官あるいは個別の審査の利害の問題ではないのだろうと私は思うのです。
ですから、その限りでは、処分の対象になる被疑者と審査を受ける検察官との利害が、その限りでは一致するということには、多分、質的にならないだろうと私は思っています。私は、直接不利益処分を受ける当事者が意見を述べて、自らに対する処分のありように対して、審査の前に意見を述べるというのは当然あってしかるべきことだというふうに申し上げているという趣旨です。
○井上座長 法律論としては、ここで審査の対象になっているのは検察官の不起訴処分なのです。そして、その処分を行ったのは検察官であるわけで、そういう意味での利害を持っているということです。これは、一般のほかの訴訟でもそうですね。だから、それと被疑者の利害は質的に違うということでしたら、おっしゃるとおりだと思います。
○大出委員 そういうことです、申し上げたことは。
○井上座長 1点、前に質問してお答えがあったようにも思うのですが、まだ、私は疑問が解消されないのですけれども、同じような検察官の不起訴処分を前提にしたものとして、付審判の請求の手続がありますね。そこのところでは、被疑者というのは当事者ではなく、したがって、当然に審理に出席して陳述する権利というものは認められていないのですが、それと完全に同じ手続ではないとはいえ、検察審査会の審査も似たような構造になっているので、それとの対比をどうお考えになるのでしょうか。大出委員から前に説明は受けたのですけれど、まだちょっとよく分からないものですから。
○大出委員 御指名ですのでお答えします。この間もちょっと申し上げましたけれど、私は、付審判と検察審査会の手続は性格が違うものだというふうに考えているわけでして、確かに不起訴処分に対する審査という側面を持っているという意味では共通していることになるかもしれませんけれども、付審判手続というのは、対象犯罪が限定されているわけですし、それはまさに公権力の行使にかかわる審査ということで、特別に設けられている手続ということになるわけです。ですから、まさに公権力の行使にかかわった方たちが対象であるということになるわけですし、検察審査会の方は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、民意を反映するものです。
それは、審議会の意見書もその点を特に強調されていると私は理解しておりますけれども、そして、今回の改革も、その民意の反映を一層充実したものにするということで改革ということになってきているわけですけれども、それに対して、付審判手続というのは、公権力行使に当たる方の職務の逸脱行為といいますか、特定の事件について二重のチェックといいますか、言い方は非常に難しいのですけれども、二重のチェックのシステムが必要だということを法が自ら認めており、それで設けられた手続だと思うわけです。ですから、その限りにおいては、そういう言い方が適切かどうか分かりませんけれど、法自らによる直接的な不信の表明というものが背景にあるということになろうかと思いますし、それに対して、検察審査会は、それとは違って民意というものを反映していく中で、起訴裁量というものの、国民の認識や意識等の感覚の違いというようなことも含めて審査の対象にしていくということに多分なる。
ですから、裁判所が判断すれば、即座にこれまでは起訴されたと同等の効力を与えるというようなことにしてきたのだと思いますし、そこは明らかに性格が違うというふうに見るべきものだと私は思います。
○井上座長 制度ができた趣旨については、私は大出委員とは同じようには理解していませんけれども、いずれにしろ、被疑者の立場から見れば同じことではないですか。自分が不起訴処分を受けたのに、起訴される可能性が出てくるということですから、被疑者の立場で権利とか利益を守るという意味では同じような保障があってしかるべきだと思うのですけれど。
○大出委員 そこはちょっと違います。それも別に考えないわけではなくて、先ほど申し上げましたように、付審判手続の場合には、公権力の行使にかかわっての違法行為なり逸脱行為が問題になるわけでして、付審判手続自体、これは非公開ということになりますね。ですから、決定が行われて、起訴されたときに公判で審理が行われるということになりますね。そうだとすると、被疑者とされた公権力行使の主体というものが、そこで弁明するというようなことではなくて、まさに、公開の法廷で、裁判という場面で公権力の行使の是非というものについて明確に弁明するなり、対抗するなりというようなことが行われるということが筋であって、ですから、あえてその前段階では聴かないということだってあってしかるべきであるということになると思います。
○井上座長 聴いてはいけないということですか。
○大出委員 いや、そういう筋で考えることができると。
○池田委員 付審判手続については、むしろ、裁判所におけるは事実調べも公開しろという要求があって、しかし、別にそれは必要ではないとされているのですが、訴訟指揮の範囲内で被疑者や請求人に立会権を与えることができるようにはなっているのです。ですから、それは事案によってですが、そのような運用をすると制度に反するということになるわけですか。
○大出委員 制度に反するのではなくて、最終的にそういう機会が与えられれば、つまり、公開の法廷での裁判という場面で、公権力の行使というものについて弁明する機会あるいは正当性を主張する機会が保障されるということであれば、最終的にその前段階としていろいろ裁量的に処置をするということがあっても、私は、制度に反するというのを申し上げているわけではありません。
○井上座長 お考えは分かりました。座長としてではなく、私個人の意見ですので、簡単に申し上げますが、それは、説明としておかしいのではないかと思います。被疑者は被疑者であるという点では変わりはなく、付審判請求事件の被疑者も、公権力の行使について弁明することはあるかもしれないけれども、それ以外の点についても、当然防御できるはずです。それは、検察審査会の対象になっている被疑者と本質的に変わらないのではないかと思います。特別公務員あるいは公務員だから、人権保障が弱くていいというのはちょっとおかしいのではないかという感じが、私にはします。
○大出委員 そこは意見が違うということで。
○井上座長 議論が横にそれてしまい、申し訳ありません。本筋に戻したいと思いますが、いかがですか。
○本田委員 私も、被疑者の出席といいますか、発言の機会を与えることを必要的にする必要はないという意見であります。理由はいろいろあって、これまで出た意見と余り変わらないのですが、検察審査会というのは検察官の不起訴処分の当否を判断するところで、検察官から意見を聴くから被疑者からも意見を聴けというような、そういう構造にはなっていないはずなのですね。
適正手続というようなことを先ほどおっしゃいましたけれども、被疑者から意見を聴き、検察官から意見を聴いて、そこで新たな事実をいろいろ認定していって当否を判断するということになると、捜査機関にだんだん近づいてくるような気がするのです。あくまでも、検察官の処分の当否を判断するのが検察審査会の性格なのだろうと思います。
実際問題としても、検察官が不起訴処分にする場合には、捜査段階で被疑者の弁解・主張というのは十分聴いているわけです。それがちゃんと証拠によって覆すことができるのかどうか、単なる否認弁解かどうかというのを判断した上でやっているわけで、まさにその判断が検察審査会で審査されることになるのでしょう。主張・弁解というのは記録の中にも入っているはずで、仮に、主張・弁解が記録の上でどうも不十分で、ここの弁解をもうちょっと聴いてみたいということになれば、そこで検審が聴いてみるということはあるのかもしれませんけれど、それは必要的にしなくてもいいだろうと思います。必要的にすることによって、何となく検審の性格が変わってしまうのではないかという気がしてしようがないのです。
実際にも、先ほど、被疑者が暴れたりする場合、警察を入れてやればいいのではないかという話がありましたけれど、果たしてそれでうまくいくのかということです。本当にそういうふうにいくのか。どうしても被疑者を入れなければ、意見を聴かなければ、検察審査会が判断できないということなのかという問題なのですけれども、そうではないと思います。
また、話が横道にそれて申し訳ないのですが、先ほど大出委員から、付審判は非公開ではないかということを1つの例に掲げられていましたけれども、検察審査会も非公開ですね。そこのところの議論よく分からなかったのです。
○大出委員 さっきの座長からの御質問が、同じ被疑者ではないかというものだったので、そうではないということの説明のために申し上げたわけであって、手続が違うわけですから、被疑者の性格というのも違ってくるだろうというのが私の意見です。
○酒巻委員 大出委員の御意見の前提に対する確認ですが、付審判事件と検審事件の対象被疑者の性格が、「同じ被疑者ではない」とおっしゃる法的な意味が、私には全く理解できないのですけれども、それはどういうことですか。
○大出委員 どうしてですか。その前提から申し上げなければいけないのですが、私の基本的な考え方からしますと、付審判手続が刑事訴訟法のあそこの規定として置かれているということ自体について、私は違う意見を持っているということなのです。
○井上座長 そこのところは、一つの御意見としては分かりましたけれども。
○大出委員 言ってもしようがないですけれども。
○井上座長 単純にそのように仕分けできるのですか。付審判請求手続の対象となる事件も検審の対象になり得るわけでしょう。
○大出委員 もちろんなりますね。ただ、先ほど申し上げましたように、検審は、検察官の起訴裁量、不起訴の判断について、民意を反映させるための手続であって……。
○井上座長 そちらの趣旨が違うというお考えであるということは分かったのですけれども、質問は、同じことなのですが、被疑者の法的地位も異なってくるのかどうかということです。大出委員は、そこでも異なってくるということですね。
○大出委員 そうですね。
○井上座長 公務員である以上、弁明するのだったら、公開の法廷でやれということでしょうか。
○大出委員 はい。ですから、なぜ付審判手続があるのかということと、検審があるのかということでは、趣旨が違うということだと私は考えていますので、付審判手続というもの自体、先ほど申し上げましたように、それは極論だとおっしゃるかもしれませんし、そこでの議論をここでするつもりは私もないのですが、私の意見は、そこについて根本的に性格の問題のところでちゃんと議論をする必要がある問題があると考えているものですから、質問があったものですから、一応お答えしました。
○井上座長 公権力に対する不信に基づいている。その不信は、被疑者に向けられているのであり、だから、密室で弁明するのでなくて、裁判になったら、そこで弁明すればいいじゃないか、そういうお考えなのでしょう。
○大出委員 しかも、それは公権力の行使にかかわっての犯罪に、明らかに限定されているわけですので、付審判の場合には。
○井上座長 それを弁明するのは公開の法廷でというお考えだということですね。
○大出委員 そういうことです。
○井上座長 そういうお考えであるということは分かりました。
○大出委員 今の点にかかわって、これは質問と確認なんですが、私は、先ほどもちょっと申し上げましたように、審議会の意見書の、被疑者に対する適正手続の保障にも留意するという文言、この文言からすると、我々が考えられるものは、被疑者の必要的意見聴取が具体的には保障の内容であり、ほかにちょっと思い浮かばないのですが、その辺は何がそれ以外にあり得るのでしょうか。
○井上座長 誰に対しての御質問ですか。
○大出委員 お答えいただける方に。
○井上座長 審議会の意見をまとめたときに、それぞれの委員がそれぞれの意味合いを込めていたかもしれませんけれども、私自身、ここのところを指摘したものですから、説明させていただきますと、審議会では、検察審査会の一定の議決に強い効力を持たせるべきだという方向での議論が圧倒的に多かったわけですけれども、ちょっと待ってください、それによって決定的な影響を受ける被疑者の利益も守らなければいけないでしょう。その意味で、安易な決定がされて、拘束力が生じるというのでは、問題がありますので、議決に至る審査の手続が慎重になされ、十分な審理を尽くした上での議決であることが担保されなければならない。そういう意味で、審理の在り方も見直さないといけないのではないか、ということを私などは申し上げたわけです。
そこでは、具体的に被疑者が出席して意見を述べたり、一定の防御活動をするというところまで認めるべきかどうかというところまでは、必ずしも含意していなかったし、共通の理解でもなかったと思います。私の記憶では、そういうことです。
○髙井委員 制度というのは、いろんな役割を分担しているわけですから、制度の趣旨がどこにあるかということをまず基本に考えなくてはいけないわけです。検察審査会というのは、検察官の処分の当否を審査するというのが制度の大きな趣旨なわけですね。ですから、検察官の出席は当然なのですけれども、大出委員は、被疑者の出席が必要ではないかと言われていますけれども、この検察審査会の制度は、訴追を慎重に行うという方向でできた制度ではないわけですね。訴追を慎重に行うという方向でできている制度であれば、それは被疑者を呼ばなくてはいけないのではないかという議論が出てくる余地はあるのですけれども、制度が向いている大きな方向は、そっちを向いているわけでなくて、検察官の不起訴の当否を審査することになるわけですから、おっしゃるように、細かく言えば利害関係が一致してないかもしれないけれども、だからといって、被疑者を必要的に呼ばなくてはいけないということにはならないということがまず第1点です。
それから、先ほど大出委員が、盛んに検審の制度というのは民意を反映するための制度だとおっしゃっているけれども、この制度の趣旨から言うと、それは、起訴の方向に向けた民意の反映ということになるわけですね。不起訴処分に対する民意の反映と言っているわけですから。ですから、そういう大きな方向の中で民意を反映しようとしているときに、被疑者の出席が必要的であるというのは、大出委員の議論自体の中で矛盾しているのではないかということです。
それから、被疑者の人権保障はどうするのだということを大出委員が言われましたけれども、それは、今、座長も言われていますように、リーガルアドバイザーを入れなければいけないとか、検察官の出席を必要的にするということ自体が被疑者の人権に配慮しているという答えなわけです。要するに、被疑者を不起訴にしたいと検事は言っているわけですから、その検事を出席させて、必要的に意見を聴きましょうと言っているわけですから、それはそれで被疑者の人権には十分配慮しているということが言えるのではないかと思うわけです。
それから、大出委員は、るる言われておりますが、大出委員の先ほどの議論は、最終的には被疑者の中に不当な差別を持ち込むものだというふうに思います。以上です。
○大出委員 るるおっしゃられたので、反論しないわけにはいかないんですが、ただ、趣旨がよく分からない。
○井上座長 なるべく簡潔にしていただけますか。
○大出委員 ここが最大の焦点だなんて私は思っていませんので、私もここで延々とやるつもりはないんです。ただ、今のお話ですとか、私の意見がいかにも矛盾しているかのようなニュアンスのお話だったのですが、決してそうではなくて、検察官の処分の当否と言いますけれども、検察官の訴追裁量といいますか、訴追権に対する、国民サイドからの民意の反映というのは、国民サイドから、公判の裁量権について国民が意見を言う機会を持ち、そのありようについて適正化を図るという趣旨ですよね。そこにまさにポイントがあるわけであって、その結果として、当否についての判断が行われるということ。まさにそこは、国民が主権者として、検察権の行使に対して意見を言う機会を保障しようというわけですから、その結果として、当否いずれかの結論が出てくるということは当然あるわけですから、そのこと自体は、私が申し上げていること、つまり、被疑者に対する人権の配慮だとか、そういったことと何ら矛盾することではないと私は思っているわけです。
○髙井委員 まず、前段の意見について申し上げると、現在、例えば、検察官は起訴猶予にしたけれども、私は嫌疑なしになるべきだと、あるいは嫌疑不十分になるべきだという人が異議の申立てができるか、不服の申立てができるかというと、できませんね。それを認めているのだったら、検察権行使の全般にわたって民意を反映させる制度だということは言えるわけですけれども、そういうことは認めてないわけですから、起訴方向に向けての民意の反映のための制度だということは大前提としてあるわけです。
○大出委員 起訴方向といっても、最終的には必ず起訴するわけではないわけですから、それはいろんな場合があって、すべてを対象にするということにはしていませんけれども、それは、制度設計のところの政策的な配慮ということは当然あり得る話であって、そうでなければ、この制度は起訴裁量についての審査をするための制度でないというようなことは言えないわけで、現に、意見書が前提にしているのも、この制度はまさにそういう制度だということを前提にして、制度設計の在り方を考えろということを言っているというふうに私は理解しているわけで、すぐ髙井委員の言うことだけが当てはまるというふうに私は思っていませんけれども。
○井上座長 ちょっと脇の論点に逸れた議論になってきましたので、被疑者の出席という論点に戻っていただけますか。
○四宮委員 戻ります。意見と質問なのですけれども、被疑者が、いったん不起訴という処分を受けて一定の法的な地位に置かれたと。それが、今度はひっくり返されようとする状態に置かれる。これは、いったん得た地位が不利益方向で変わる可能性があるということですから、私は、制度の在り方として、被疑者に意見を述べる機会を与えること自体は必ずしもおかしくはない、仮に検察審査会制度の趣旨がさっきから議論されている趣旨だとしてもおかしくはないと思います。座長がおっしゃった付審判との関係では、むしろ、整合的に考えていくということも1つの解決としてはあり得るのではないかと思います。
あと、弊害論なのですけれども、ここはちょっと質問なのですが、先ほどから、被疑者の出席の機会を必要的に与える必要はないという御意見の方でも、現行法では証人として尋問することはできることは認めておられます。つまり、理論的には、先ほどから問題とされているような被疑者についても、意見を聴いてみたいということで、現行法上出席を求めることはあり得るわけで、その場合には、どう対処されるお考えなのかということなのです。つまり弊害論というのが、機会を与えることの消極的な根拠になるか、疑問なのですけれど、どうでしょうか。
○井上座長 必要だと判断して呼んだら、そこで大暴れしたという場合はどうするのだということですか。
○髙井委員 弊害が、暴れることだけが前提になっているけれども、暴れるだけではないわけです。検察審査会への申立てには、罪種の制限はないわけですから、選挙違反であるとか、地方自治法違反であるとか、贈収賄であるとか、ヤクザの事件であるとか、ヤクザだからといって必ず暴れるわけではないわけですけれども、要するに、地元のいろんな意味での有力者、影響力の強い人が出てくるわけです。ですから、そういう人に対して、物腰は柔らかいかもしれないのだけれども、威圧的に物を言ったりして、不当な影響力の行使を受けないのかということです、弊害の1つは。
もう一つ、民間人というのは、基本的には何ら自分で自分を守る力は持っていないわけですから、そういう民間の人に、一種の司法作用に加わってもらうというときには、単に身体的・物理的な危険から守ってあげるというだけではなくて、ある意味では、心理的な負担をなるべく抱かせないような仕組みというのは必要なわけです。
そうすると、検察審査会の委員になってしまうと、ヤクザの親分が出てきて、その人とちょっとやらなくてはいかんというのは、国民に対して過度の心理的負担を負わせることになるのではないかと思います。
○四宮委員 私が申し上げたのは、今でも審査会の主体性に任せられているわけで、審議会が……。
○井上座長 必要的にすれば、いやが応でも全員呼ばなければならないけれど、裁量的にすれば、どうしても聴いてみたいという必要性の程度と、反対に、そういうおそれが具体的にどの程度あるかということを勘案して、呼ぶかどうかを判断するだろうということではないでしょうか。そういう御説明であったと思います。むろん、四宮委員がおっしゃるような危険はあるわけです。裁量で呼んだとして、判断を誤って威迫されるとか、そういうことはあり得るわけですね。
○池田委員 必要的とすると困るのではないかというのに対して、先ほど、弁明の機会を与えればそれで足りるから、必要的としても何も差し支えないかと言われたのですが、知らせるというのは大変な労力でして、所在がつかめないときや、郵便を受け取らないというようなことがあると、知らせたことにならないわけですね。今、刑事の本来の手続ですと、民訴法を準用してあって、そうはいっても、公示送達ができない、しかし、書留郵便に付することで送達の効果が生ずることも認められています。ところが、このような規定が検審法にはないので、多分そういう場合のことは考えなければいけなくなってくるはずですし、そうであっても、何らかの事情で所在が分からなくなって通知もできなくすると、一般的には、捜査段階なら捜査官が身柄を拘束するとか、あるいは公判段階になれば、裁判所が身柄拘束、あるいは勾引するというような強制的な手段も裏打ちされていますけれども、多分、この検審法では、そういうような事態が生じるとかなり困ることになるのではないかという気がいたします。
○井上座長 このくらいでよろしいですか。まだ先に、より議論を呼ぶかもしれない論点が控えていますので。ここで5分くらい休憩してよろしいですか。それでは、5分後に再開ということにさせていただきたいと思います。
(休 憩)
○井上座長 それでは再開させていただきます。次の項目で、一段階にするか、二段階にするかという話ですが、検察審査会が起訴の方向で議決をしたときに、検察官に再捜査ないし再考の機会を与えることとするかどうかというのが、ここでの中心的な論点です。この項目についても、たたき台では複数の考え方が示されているわけですが、議論の順序としては、まず、考え方の分かれる一番大きな点、すなわちAとBの、検察官に再捜査、再考の機会を与えるか、それとも、与えないで直ちに拘束力を認めるかという点について、まず御意見をいただきたいと思います。
○本田委員 二段階案の方で行くべきであろうと思います。先ほど申し上げましたけれども、起訴処分というのは、被疑者にとっては極めて重い負担を課すことになる処分になるわけです。その判断というのは、したがって、できる限り慎重になされる必要があるであろう。そういう観点から言うと、検察審査会が起訴相当にするといったん判断したとしても、そこで直ちに拘束力を認めるのはいかがなものかと思います。いったん検察官に事件を戻して、検察審査会の指摘も踏まえて検察官が必要に応じて再捜査を十分尽くす。その上で、事件を起訴するかどうか再度慎重に考える機会を与えるべきであると思います。
それでもやはり検察官が、不起訴処分はやはり維持されるべきだと判断した場合に、その検察官が、必要に応じて再捜査した事項等も踏まえて、その判断の過程を、もう一回検察審査会で慎重に判断して、その上で拘束力のある議決をするということにする必要があるだろうと思います。
本来、起訴するかどうかというのは、検察官が独占しているわけですから、いったん検察審査会で議決があった場合にも、もう一度検察官に判断の機会を与えるというのが全体的な制度の趣旨にも合致するのではないかと考えます。
○井上座長 ほかの方はいかがですか。
○池田委員 今回の審議会の意見書の公訴権の行使に民意を反映させるということからすると、一段階でもいいのかなという気はするのですが、ただ、その後、また補充捜査等が必要な場合もあるでしょうから、それをもう一度検察官にやってもらうということも十分考えられる選択かなという気がします。ですから、二段階説も十分あり得るのではないかと思います。
○四宮委員 私は、前回も申し上げたのですけれども、結論は一段階がいいと思います。いくつかの理由がありますが、今、池田委員がおっしゃったように、一番大きな理由は、意見書が、公訴権の行使の在り方に民意をより直接に反映させていくことが重要だとして、今度の拘束力の付与という改革を提言しているということです。こういった制度趣旨をよりクリアーに設計するとすると、一段階ではないかということです。
次の理由は、これも趣旨と関係しますけれども、いったん国民が判断をした後に、前回これも意見が出ましたけれども、いわば民の判断を後で官が調整するという形になる、というような意見がたしかあったように思いますけれども、それも趣旨からすると疑問があるということです。
それから、検察官の再考ということですけれども、先ほどの、検察官からの意見聴取を必要的なものとするということであれば、まず審査会に審査申立てがなされた段階で検察官には考える1つのチャンスが来るわけですね。それから意見聴取の段階で再度また考えるとすれば、機会は少なくとも二度あるわけで、それで十分なのではないかということです。
それから、起訴相当の議決の後、更に再捜査、そして判断ということになりますと、時間も掛かります。前回も出ましたけれども、戻ってきたときの審査会のメンバーの具体的構成が変わっているということもあり得るということもあります。
それから、起訴という効果を発生させるために二段階を要することにしますと、結局、審査会は二度判断をしなければならなくなるわけで、それだけ国民の負担も増大するわけです。もし、捜査が不十分だという趣旨で再考を促すということであれば、現在も行われている不起訴不当という議決は改革後も維持されるはずですので、その議決をすることで足りるのではないかと思います。
今日、図が配られましたけれども、この図を見ても、国民に、こういうふうにしないと、最終的にあなた方の判断は法的拘束力は出ないんですよといって見せるときに、この資料2-1、2-2、2-3を示すとなると、明らかに2-3が簡明で分かりやすく、また国民の理解を得やすいのではないかと私は思います。
○酒巻委員 四宮委員は、一段階案が妥当であるという御意見を述べられましたけれども、私は違いまして、二段階案の方が、その中をどうするかは別として、より適切ではないかと考えています。
今までの話にありましたとおり、改革審の意見書は、公訴の提起に民意を反映する国民の広い意味での司法参加を拡充するという点も述べているわけですが、先ほど座長が紹介されたとおり、他方で検察審査会について、特に被疑者に対する適正手続の保障にも留意しつつ、法的拘束力を考えよとの指摘もあります。これは、本田委員が言われましたとおり、公訴提起行為というものの重大な影響等にかんがみて慎重を期すべきであるという側面と、他一方で国民の司法参加の拡充という側面、その両面の適切なバランスに留意すべきであるとの趣旨だと思います。
そういう意味で、制度として二段階にしておくこと自体が起訴に向けての慎重さの側面を担保するであろう。また、二段階であっても、起訴相当の議決の意味は相当に重いわけですから、場合によっては、第一段階目の起訴相当の議決の後に、検察官が再捜査や再度の考案をすることによって当初の判断を変え、起訴に至るということも十分あり得るでしょう。これは、大きく見ますと、検審の起訴相当の議決の結果、起訴の効果が発生した点は変わらないわけですから、そういう意味で、国民の意見が公訴提起に反映されているという趣旨は達成されることになるだろうと考えます。要するに、民意の反映ということと、一方で起訴されるかもしれない被疑者に対する手続保障という観点からは、大枠として二段階のシステムをとることが妥当であろうと思います。
○本田委員 酒巻委員の意見と同じようなところがあるのですが、まず、民意の反映ということからいえば、まず起訴相当の議決があって、検察官に事件が戻されて、検察官がそれで再捜査した結果起訴をすれば、それは民意は反映されたことになるわけですね。また、不起訴を維持した場合に、もう一度審査会がやはり起訴だと判断して起訴の効力が生ずれば、そこは民意を反映したことになるわけで、一段階にしなければ民意が反映されないという理由にはならないはずです。
それから、実務的なことを言えば、起訴相当の議決がなされて、検察官の方に戻されて再捜査しているうちに、無罪となる証拠が出てきてしまったということだってあるでしょう。そういう可能性だってあるのだから、そこはきちんともう一回機会を与えるということも考えておかなければいけないだろうという気がいたします。
○四宮委員 私は、一段階でなければ民意反映の制度ではないと言っているのではないのです。民意を直接に反映する仕組みという提言があるので、ということを言っているのです。起訴手続が慎重でなければならないことは誰も異論のないところであろうと思います。ただ、問題は、その慎重をどう実現するかということで、手続をいろいろ複雑にしていくということが慎重であるということには必ずしもならない。むしろ、審査会の判断の中身、審理の中身を充実させるということで慎重を求める方法ということもあるわけで、今度、先ほど議論になった検察官の意見聴取を必要的なものにするという制度を仮に採ったり、あるいは、後で議論になるリーガルアドバイザーを入れるというようなことは、まさに審査会の審査の中身を充実させて、起訴手続を、あるいは審査手続を慎重にするということにつながるわけで、一段階が手続を慎重にしない、ということでは決してないと思うのです。
それから、無罪証拠の発見は理論的にはあり得る話です。しかし、それはもしそうであれば、裁判で、仮に起訴という効果が発生した後の話だとすると、それは裁判所でやるということですね。
○井上座長 無実の証拠を誰が発見するのか。本田委員は、補充捜査をやることによって発見されるということを想定されているのですが、それが四宮委員の言われるように、裁判で出てくるものかどうかですね。
○四宮委員 再々捜査で出るということも理屈の上ではあり得るわけです。そこまでは誰も考えてないだろうと思うのですけれども。
○平良木委員 民意の反映がより直截的にということからすると、これは一段階案というのがいいし、そのために検察官の意見陳述を必要的にするとか、これも先ほど出てきましたけれども、この後で議論するリーガルアドバイザーということも考えるということでまかなえないかというとこれはまかなえないわけではない。したがって、その一段階案というのは、私自身は十分に魅力を感じるところでありますけれども、実際に公訴提起をされて、例えば、いろんな事件があって、甲山事件などを見ていると被告人に大変な負担をかけているというようなことがあって、ここら辺があると、更に慎重な制度をつくっても、これは1つの在り方であるだろうと思います。
しがって、結論的に言うと、これは二段階案でやむを得ないかなというように思うということでありますけれども。
○井上座長 「やむを得ないかな」と言われた理由がちょっと分からないところがあるのですけれど、ほかの方、どうぞ。
○大出委員 前回、この点については、確か発言を余りしていなかったのではないかと思うのですが、というのは、それはいろいろと難しい問題もあるかなというよりも、二段階案というものを余り想定していなかったものですから、なるほど、そういうこともあり得るかなと思って、少し考えてみた方がいいかなと思っていたところがあるのです。ただ、いろいろと、今、平良木委員あるいは池田委員もおっしゃいましたけれども、両方それなりに考える余地はあり得るかなという感じがしますけれども、やはり、先ほど来、私が申し上げてきたことと、変に一貫性を追求する気は全くないのですが、民意を反映するということで考えた場合には、直截な方法ということを考えた方が、確かに四宮委員がおっしゃるように、分かりやすいことは大事なことだと思いますし、先ほどの話と私もリンクさせる気はないのですが、検察官の意見をお伺いするというようなことを必要的なものだというふうにお考えの方が多いとすれば、そこは検察側にとってみれば、意見陳述の機会は与えられることで十分ということにならないという御主張もあるかもしれませんけれども、与えられることになるわけですから、一段階ですっきりというような形の方がどうもよさそうだなという感じはするのです。
○酒巻委員 先ほど大出委員がおっしゃったこととの関係ですが、検審の対象になる、起訴されるかもしれない被疑者については、むしろ、手厚い手続保障があった方がいいというお考えではなかったのですか。
○井上座長 その趣旨と矛盾するのではないかということですね。
○酒巻委員 被疑者のためには、より慎重な手続を踏んで、二段階という御意見になるのではないかと思ったのですけれども。
○大出委員 ですから、私は、余り本意ではなかったのですが、先ほど弁明にこれ努めたのは、であればこそ、被疑者の意見を述べる機会を保障するということで対処するということでいいのではないか、そういう趣旨です。
○井上座長 1点御質問したいのですが、意見聴取で十分ではないかと言われた点なのですけれど、違うのは、検察官にとって再捜査の時間ないし機会があるかどうかというところだろうと思うのですね。検察官が検察審査会に出てきて意見を述べる段階では、元の捜査の結果に基づいて意見を言うことになるのだと思いますが、それにとどまるのではなく、更に再捜査の機会まで与えるべきかどうか、そこが論点だろうと思うのですけれど、その辺はどのようにお考えですか。
○大出委員 そこは、さっき四宮委員がおっしゃったように、そういうことで被疑者にとって有利な事態を確認するといいますか、確保できる場合もあるかもしれませんけれども、それは絶対的なものではないわけですし、当然、弁護人がどこまでできるのかという問題があるのかもしれませんけれども、弁護人が付いて対応するということにもなるでしょうし、これはどういう想定が前提になっているのかというのはこれだけでは分からないわけですが、多分、起訴されたからといって、これがすぐに身体拘束になるということは多分ないと思うんですね。ではないかと私は推測しているのですが。
○井上座長 それは分からないのではないでしょうか。
○大出委員 もちろんこれだけでは分かりません。そうでないということを私は願っているのですが、ということを申し上げておくしかないですが、そうすると、起訴するということになったからといって、直ちにそれで通常の事件と同じような意味での困難や不利益ということは直ちに発生するということではないような気がするのですね。その辺はちょっと微妙と思いますけれども……。
○井上座長 身柄が拘束されるかどうかということに限っていえば、分からないのではないですか。
○大出委員 多分これだけでは分からないと思います。
○井上座長 起訴の効果があった後、裁判所が判断されることであり、それだけの嫌疑があって、必要性があれば身柄拘束ということもあり得るのではないですか。
○大出委員 一般的には否定しません。
○髙井委員 この問題は、起訴権だけではなくて、公訴追行権をどういうふうに分担するかという問題もあるわけですね。これは、公訴追行権をどうするかという、後の問題も絡んでくるのだけれども、どちらが追行するのが妥当なのかということも含めて考えなければいけないわけで、そうしてくると、公訴追行というのは、基本的にはできる限り検察官にさせた方がいいのではないかという考え方もできるわけで、そういう発想に立つと、もう一回検察官に戻して、あなた起訴しなさいよというのもいいのではないかというふうに思うということです。
それから、もう一つは、検察官に戻した場合に、分かったと、起訴しますと、右から左へ起訴する場合と、もう一回捜査しますという場合と2つあるわけです。捜査しますという場合にも2つの方法があって、起訴する方向で捜査をする、要するに、起訴はするけれども、このままの状態で起訴したのでは不安だから、もう少し証拠を集めようとして捜査するという場合と、検審は起訴だと言っているけれど、どうもこれはおかしい、だからもっとシロがはっきりするように捜査しようという場合と、両方きちんと分かれた2つの方向の捜査があり得るわけで、そういう意味では、仮に起訴する方向の捜査をした場合は、例えば、殺人事件が不起訴になりました、ところが検審はこれは起訴だと言うとき、一段階ですと、そこですぐに起訴の効果が発生します。しかし、それでも職権発動して身柄拘束することは可能だとは思うのだけれども、そうでなくて、いったん検察に戻して検察が再捜査して、これは起訴だとなれば、そこで検察が令状請求して、裁判所が許諾をすれば、そこの段階で逮捕できるわけで、そういう意味では、捜査と刑事裁判と全部ひっくるめて考えると、二段階論でいったん検察に戻して捜査をさせるという方が最終的には合理的だと思います。
ただ、再捜査して無罪の証拠が出てくるかもしれないということは、余り二段階の理由として強調することはいかがなものかなと思います。派生的にそういう結果が生ずるということは当然あるのだけれども、そういうことをさせるために二段階構造にするという議論はちょっとどうかなという感じはします。
○井上座長 慎重にという趣旨からすると、無罪の方向の捜査もやってもらわないと困るわけでしょう。
○髙井委員 そもそも、起訴相当意見が出るというのは、しかもリーガルアドバイザーまで含めて、その段階でやって起訴相当意見が出るわけですから、相当な確度で、ある程度この証拠だったら起訴できるというふうに普通の人なら判断するという程度の証拠はあったということになりますね。
○井上座長 リーガルアドバイザーの役割についてはまた後で御議論いただくとして、どうぞ。
○本田委員 先ほど四宮委員から反論が出ていまして、一つは、検察官に戻すと時間がかかるのではないかということです。しかし、これは無制限に時間をかけるわけではなくて、期間を限るわけです。だからそんなにやたらと時間がかかるという話にはならないでしょう。もう一つは、国民の負担が増えるという話があったのですけれど、一人の人間を起訴するとなると、おまえは有罪だと、あるいは自由を奪い、場合によっては極刑ということだって、あり得るわけです。
そういう場合に、2回審査するぐらいの負担は当然負うべきだろうという気がするのです。そこは、一段階論の論拠としては余り強いものではないような気がするのです。
○井上座長 ほかの方の御意見もいただきたいと思います。どうぞ。
○酒巻委員 これはたたき台をつくった事務局への質問ということになるのだと思いますが、今の本田委員の御意見と、それから四宮委員がおっしゃったことに関連してお尋ねします。二段階にしますと、当然ながら2回検察審査会が働くことになる。これは、状況により、審査に要する時間によっては、検察審査会の人員構成が変わる場合があっても仕方がないということを前提にしているだろうと思います。二段階案をとったときにはこの問題が出てくると思うのですが、たたき台をお作りになった事務局としてはどういうことをお考えになっていたのかという確認です。
○井上座長 それでいいのかということでしょうか。
○酒巻委員 あえて異論があるわけではありません。私は人員構成が変わってもやむを得ないと思っています。
なお、もう一点質問は、本田委員から、議決があった以上、一定期間内に再検討するというお話がありましたけれども、現在、検審から不起訴処分は妥当でないという趣旨の不起訴不当なり起訴相当が出た後の、検察の実務はどのぐらいの期間で処理しているのか、これをお聴きしたかったのです。
○井上座長 辻参事官、どうぞ。
○辻参事官 一段階目と二段階目とでは、検察審査会の具体的な構成が変わり得るのではないかということですが、一定期間の構成の仕方にもよるのですけれども、現行の検察審査会法を前提とする限り、同一の構成は基本的には3カ月だけですので、そこは十分変わり得るだろうとは思っておりますが、そういう意味では、そこはやむを得ないと考えるべきなのか、そうあっても当然だと考えるべきなのか、そこは両様あると思いますが、それは変わることはあり得るという前提でつくっております。
そもそも、検察審査会というのは、会議体としての意思を表明するという機関でございますので、会議体としては同一性は保たれているということだと思いますし、現行の検察審査会法の手続を見ましても、裁判官の場合と違いまして、手続の更新というようなものはございませんので、かつ、一回の期日で各事件の審査を終えなければいけないという制限もないので、臨時の審査員とか補欠の審査員という制度があることを踏まえましても、制度としては、もともと審査員の入れ替わりということはあり得べしと考えているのではないかという気はします。
○井上座長 中間処分説の場合にも、機関としての同一性は保たれているから、そこは矛盾がないということですね。
○辻参事官 はい。
○本田委員 実は、私、統計を持っていませんので、はっきりしたことを申し上げられないのですけれど、事件によって期間の長短は結構違うだろうと思います。複雑な事件とそうでない事件がありますので、後で調べてみますけれども、果たして統計があるのかどうか分かりませんが、もし統計があったら、次回にでも御説明したいと思います。
○四宮委員 私も、無制限でないという点で、どのくらいかかるのか聴きたかったので、是非、それをお願いしたいのですけれども、国民の負担との関係なんですけれども、重大なことをするのだから2回ぐらいはしようがないよと本当に国民に言うのか、ということですね。従来の検察審査会の人たちも、無作為に選ばれて、仕事を調整しながら来てもらっているわけです。そして、今度一定の範囲で拘束力が与えられることになりました、しかし、あなた方の結論が日の目を見るのにはもう1回やってもらわなければいけないのですよ、という制度に本当にするのかどうかということなのです。この負担と、ある意味での責任というか、やりがいといいますか、そういったことはやはり影響があるのではないかと思うのです。
裁判員制度もそうなのですけれども、今度は、裁判員制度にしろ、この検察審査会の改革にしろ、つまり、今までなかった、一定の場合には国民が決める、という制度を導入しましょうということなのだと思うのです。そうだとすると、どうも私たちは、なるべく従来の手続が入っていれば、何となく安心するという部分があるのかもしれませんけれども、これは、新しい制度を入れるのであり、それは、一定の限度で限られた範囲かもしれないけれども、国民が決める、という制度を入れるのだということだとすると、もう1回来てくださいとか、かなり先になりますよとかという制度ではなくて、さっき申し上げたことの繰り返しになりますけれども、慎重な充実した審理が行われることを前提に、一段階でいくべきだと思います。
○井上座長 趣旨としては、国民が決めるということでは必ずしもなく、国民の声を反映させるということなのでしょう。裁判員の方も、国民のみが決めるということにはなっていないので、そこのところはちょっと違うかなと思うのですけれども、負担の面は、裁判員の方は事件数が増えればかなり影響が大きいと思うのですが、検察審査会の方は、今、起訴相当事件は年間ほんの少しです。それを前提にする限り、起訴相当とされた事件が戻ってきて、もう一度審査するということでダブルになっても、それほど大きな件数にはならないのではないでしょうか。それと、最初の検察審査員であった人にもう一度戻ってきて審査してくださいというシステムには必ずしもなっていないですよね。任期がありますので。
○四宮委員 そうなったらなおさらですね。「あなた方の出した結論は、この先どうなるか分かりません」ということですね。
○井上座長 そこは両様の見方があって、そんな重いことをやるのだから、さらに慎重に調べてもらった方が自分たちは安心だと考えるのか、いや、自分たちがやりがいを感じるためには、強い効力を与えてもらった方がいいのだと考えるのか、見方がかなり分かれ得るように思うのですが。
○四宮委員 アピールしていただきたいと思います。
○井上座長 私が変に口を挟んでしまったのですけれども、まだ、先に御検討いただかなければならない論点があるものですから、少し先に進ませていただきます。今の御議論で、B案がいいとおっしゃる方も何人かおられ、A案の方もおられたわけですが、A案の方に誘導するわけでは決してないのですけれど、仮の議論として、A案というものを前提にした場合、1と2のどちらがいいのかという点も議論はしておいていただかないと、制度設計を今後考えていくときに材料が乏しくなると思いますので、その点について議論していただけますか。B案がいいとおっしゃった方の御意見も、ぜひ伺いたいと思いますので、いかがでしょうか。
要点は、検察審査会による二段階目の審査のためには再度の申立てを必要とするかどうかということです。最初の起訴相当の議決それ自体は、終局的な決定であり、検察官が見直した結果、起訴すればそれで済むのですけれども、不起訴の結論を出したという場合に、当然に検察審査会の審査が再度開始されるのではなく、申立人が新たな申立てをするか、検察審査会自身が職権で取り上げるかした場合にはじめて、二段階目の審査が開始される、そのような手続を踏ませるのかどうか、そうではなく、最初の起訴相当の議決は、いわば中間処分であり、検察審査会が検察官の対応を見守っているという状態なので、検察官が不起訴を維持したときは、検察審査会の手続が継続し、最終的な処分を決定することになるという形にするのか、どちらがよいのかということなのですけれども。
○髙井委員 Aの1案ですと、制度的に起訴相当の議決を2回出さなくてはいけないということになりますね。それ自体がおかしいという感じはします。それだけです。
○井上座長 最初の起訴相当は何だったんだろうとうことになる、ということでしょうか。
○土屋委員 私もそう考えています。先ほど悩んでいましたけれど。ちょっと戻ってしまいますけれども、私は、二段階論にもかなり慎重な部分があっていいなと思っているのです。だけど、会議体が変わってしまう可能性が、難しい事件であればあるほどあるのではないか。私は、それは、手続的には大丈夫だといっても、やはり大変だと思うのです。また、出てくる検察審査員にしても、違うメンバーが出てくると、また議論が蒸し返しになりますから、これも大変だと思います。もう一回やるのは本当に荷が重いと思うのです。重大なことだから、それだけの負担は当然だという御意見もありましたけれど、私はそうではなくて、この負担は実は大変だと思います。
重大な事案であればあるほど、議論がゼロからのスタートになるだろうと思うのですね。そうすると、これは慎重に決めなければならないという面はあるのですけれども、やはり、一段階論の魅力というのは私には捨て難い。一段階論は、何にしても分かりやすいと思うのです。
それで、先ほど意見を言いましたけれど、検察官の意見聴取を必要的にするとか、結論を出す前、起訴相当の議決をする前の手続のところでいろいろ考える手だてがあるのだろうと思うのです。そこのところを充実させていくことによって、再捜査の機会を確保することも可能でしょうし、いろんなことができるかもしれないと思うのです。そこはどういう形がいいのか分からないのですけれども、そういうことも可能かなという気もしているのです。
それで、私の立場ですけれども、二段階論も非常に魅力的ではありますが、やはり一段階論の方が分かりやすいし、国民の負担から考えたら、その方がいいのかなと、私は今のところ考えています。そういう前提でもう一回お話しすると、ここで再度の申立てを求めるとか、そういう手続をかませない方がいいと私は思います。
○井上座長 仮にA案を前提としても、ということでしょうか。
○土屋委員 Aを前提として、髙井委員の意見に賛成ということです。
○本田委員 確かに、髙井委員あるいは土屋委員のような見方もあると思うのですけれども、先ほど、事務局の説明の中で、A1の方について、審査申立人との間に示談が成立して審査申立人の方の不服がなくなってしまうということだって想定されるではないかというような話がありました。そうであるならば、申立てがなければ、それで終わりで、あと余計なことはしなくていいということになるので、省力化になるのかなという気がするので、A1案もそれなりの理由があるなと思うのですが、仮にA1案みたいな形をとらないとそういうことができないのかということについて、もう少しここを実務的に検討すべきかなと思います。
○井上座長 Aの1案のような形をとらないと、ということですか。
○本田委員 審査申立人と被害者との間で示談が成立して、申立てした人が再度の申立てをしないということになれば、2回目の手続はもう要らないわけですね。そうすると、A1案の方がすっきりします。
○髙井委員 取り下げればいいことでしょう。
○本田委員 そこは、実務的なものをもう少し検討して……。
○髙井委員 A2案は、まだ係属しているわけだから、取り下げればいい。
○本田委員 だから、そこはちょっと検討した方がいいかなという気がします。
○井上座長 取り下げた場合に、審査が当然打切りになるのかどうかですね。職権で開始できる手続なので、その辺のところの説明は考えないといけないということですね。
○本田委員 もうちょっと実務的に検討した方がいいかなという気がします。
○井上座長 もう一つは、再捜査の結果、無罪の証拠が明らかになったという場合、申立人に取り下げろとは言えないので、そういう場合に対処できるのかという問題がありますね。それは例外的な事態なので、そういうことを想定して議論すべきでないという御意見もありましたけれど、その点はどうなのでしょうか。
○酒巻委員 私は、二段階の中身については、どちらにすべきだという強い意見はないのですが、今、座長がおっしゃった事例と、本田委員がおっしゃった事例について、A2案だとどうするのかという点については詰めなければいけないのだろうと思います。
なお、配布されている絵図面を眺めていてふと思ったのですが、先ほど、髙井委員は、起訴相当の議決を2回やるのは変であるとおっしゃった。ただ、A2案の図面の第一段階を見ますと、起訴相当という一番強い検察審査会の意見表明が中間的な処分になっていて、そうではないものが終局処分になっているのが、形として変なのではなかろうかと感じます。やはり、いずれの議決も平等に終局処分とされ、その上でまた二段階目に行くという方が、制度として良いのではないかと、これは全く形の問題ですが、そういう気がしたということであります。
もう一点は、どちらの二段階案を採るとしても、二段階目に行く間の「一定期間」が、余り長く延びないような制度的な手当ては絶対に必要だと思います。また、仮に、A1案の二段階目を中間決定ではなくてやり直す、したがって、審査申立てを必要とする場合には、不起訴処分がなされたことの通知を、現行法上不起訴処分の通知の制度は一部分についてはありますし、最近は被害者通知制度などでほとんどはうまくいくのでしょうけれども、そういう通知をして再度先へ進めるための手当ては絶対に必要になると思います。
中間処分で行く案だと、この点はあまり心配はないのかなと思います。
○井上座長 後の方で言われたのは、申立人に機会を与えるために、ちゃんと通知をしろということですね。
○酒巻委員 はい。
○井上座長 ほかにこの点につき、御意見はおありですか。最も御意見が分かれるのは、A案かB案かという点ですね。
ほかに、この項目に関連して、こういう論点もあるのではないかという御意見はございますでしょうか。この点で、本日御欠席の清原委員から文書の形で御意見をいただいています。先ほど酒巻委員が触れられた点ですけれども、A1、A2を仮に採るとした場合にも、一定期間内に検察官が公訴を提起しなかった場合において、とされている、その一定期間について、どの程度の期間として法定をするのか、あるいは、法定しないとすれば、それを誰が決めるのか。検察審査会が決めることができるのか、それとも他の機関が決めるのか。そういう点についても検討することが必要なのではないかということでございます。
そういった点についても、御意見があれば、伺っておきたいと思うのですけれども。
○池田委員 今の一定期間の点ですが、そうすると、法定するか検察審査会が決めるかということになるわけですけれども、かなり多くの検察審査会申立事件は、時効が迫っているような事件であるわけです。一定期間が、それより長いと、その後どうするかという問題がありますね。そういうことで、一定期間ということを法定できるのですか。そうすると、時効の中断の効果とか、そういうことを与えないといけなくなってきますね。
○井上座長 その点は、事務局では何かお考えでしょうか。
○辻参事官 事務局として考えたところだけですけれども、一定期間が定められたからといいまして、公訴時効が一定期間内に満了をするのにそれをみすみす見逃して次へ行かないように処理するということが、当然許されないだろうとは、前提として、思っていますので、公訴時効が一定期間に満了するという場合には、最低限、それと二段階目の検察審査会の審理要する一定程度の時間を見込んだ再捜査・再考に当然努めるべきであろうと思います。
○池田委員 審査会が決めるということはちょっと考えられないですね。
○辻参事官 一定期間というのは、ある意味では法定だという頭でつくっていましたので、そこは清原委員のそういう御意見を受けて、更に御意見をいただければと思います。
○井上座長 清原委員は、期間を法定するのか、法定するとすれば、どのくらいの期間にするのか。法定しないとすると、それは個別に決めるということに恐らくなるのだろうと思うのですけれど、それはどこが決めるのか、こういう御質問なのですね。そういう点について議論していただきたいということです。
○髙井委員 この一定期間というのは、どの程度の期間を今想定されているのですか、事務局としては。
○辻参事官 そこは特に想定していませんので、一定期間ということになっておりまして、むしろ実務的な観点も含めて御議論なり御提案をいただければと思います。
○髙井委員 法律には、何カ月とか何年とか書き込むということですね。速やかにとか。
○辻参事官 イメージとしてはそういうつもりで、このたたき台はつくっているということでございます。
○井上座長 速やかにですと、現に速やかにやっているのだということで全然変わってこないということもあり得ますね。そうすると次の手続は動かないことになりますので、法定するとすれば、やはり期間を定めなければならないでしょう。
○髙井委員 長くて6カ月ですね。
○井上座長 長くて6カ月ですか。
○髙井委員 6カ月を超える法定期間というのは、どうかと思いますね。特に、被害者の立場からいっても。本当は3カ月ですね。任期は3カ月なのですから。
○井上座長 6カ月で再捜査はできるものなのですか。
○本田委員 今、その確たるところは私も自信がないのですけれども、6カ月あれば、大体の事件はできるだろうとは思います。ただ、事件によっては、例えば、医療過誤事件であるとか、複雑な事件などになると、多少それではまかなえない事件も出てくるかもしれません。
○髙井委員 捜査をやり直すわけではなく、そこで再捜査の論点は絞られているわけですから。
○本田委員 ポイントが絞られていますので、そう長い期間というのは制度としてはおかしいだろうと思いますけれども。
○大出委員 そうすると、ほぼ間違いなくメンバーは交代しますね。さっき言った、機関としての同一性があればいいという御意見ではありますけれども、先ほど言った、二段階にするということでの審査員の方たちの意識といいますか、そういうことに余り影響を及ぼさないということでいくと、新しく選ばれた人たちにはまたその問題が起こるわけですね。ですから、そこは一遍、起訴相当と決断していれば、もう1回、時間は空いたとしても、検察から戻ってきたときにもう一度するには、一遍やっているのだからということで、中身はともかくとして、踏み切りが効く部分があるかもしれませんけれど、先ほどの御心配との関係でいくと、そこで機関が同一機関であっても、また別の構成になってくると、新しいメンバーの方たちは、また踏み出すのに、先ほどの御心配からすると決断が必要になってくるというようなことになるわけですから、そこは、もし期間を定めるとしても、再捜査というようなことが必然的といいますか、どうしても絶対的に必要だという前提でない期間の設定の仕方を考えて、構成体の維持というところに配慮した期間の設定の仕方が必要なのではないかという感じがしますけれども。
○井上座長 それは可能なのですか、二段階にした場合。
○大出委員 ですから、これは難しいのではないかという話になるかもしれませんけれども。
○井上座長 そうだとすると、検察審査会がどうしても同一構成でなければいけないかどうかという点が問い直されなければならないように思うのですが。
○大出委員 期間との関係でいけば、それはやむを得ない場合は私もあり得ると思いますから、絶対同一でなければいけないということにはならないのですけれども、ただ、そこの点について、先ほど来、むしろ二段階をお考えの方が、審査員の決断に対する配慮というものが必要だから、二段階ということがあるのではないかという御主張だったものですから、そこと少し齟齬を来すのかなと思ったもので、確認で伺ったんです。
○髙井委員 これは、事務局に対する質問ですけれども、二段階目の審査のときには、1案、2案の問題なんですが、特に2案について、前段の判断の拘束力というものは、単なる事実上のものと考えるわけですか。だから、建前上は二段階目の審査はゼロから始めるということですか。
○井上座長 拘束力というのは、同一機関に対する自縛力みたいなものですか。自分たちが最初に起訴相当と決議している以上、変更することができないという……。
○髙井委員 そうです。人的構成が同じ場合と違う場合がありますね。
○井上座長 機関としては同一ですよね。
○髙井委員 法的に言えばそうなのですけれども、実際生身の人間が同じ人と違う場合があるわけで、そのときに、最初の判断、それは起訴相当の議決であろうが、起訴勧告であろうがいいのですけれども、そういうものの最初の意見の拘束力というものをどう考えるのかということです。例えば、二段階目の審査、これは、同じ人であれ、メンバー替わっていてもいいのですが、要するに原則は起訴だというところから出発すべきだというふうにするのか、ゼロからもう一回出発していいとするのかということですね。
○辻参事官 そこは両様あると思いますので、議論いただければと思いますけれど。
○髙井委員 ここは、私は、メンバーが同じであれ、違っていたとしても、一応起訴相当を原則として考えるべきではないかと思います。例外的には、新しい証拠が出てきていると、例外的にこれは不起訴でいいということになれば不起訴にするという余地は残さなくてはいけないでしょう。
○井上座長 中間処分と位置付けた場合には、その色彩が割と強いかなとは思います。しかし、二段階案の場合には必ずしもそうではなく、審査の対象は何なのかということで違ってくるだろうと思うのです。事件そのものだということならば、両様の考え方があり得るし、検察官の元の不起訴処分だということになれば、拘束力の方に傾くのかなと思います。それに対し、直近の検察官の処分だということですと、前の審査対象とは別の新たな事件ということになりますね。
それと、検察官の意見を聴くことを必要的にするのを、どの段階に持ってくるのかということも関連してくるのではないかという感じがしますね。
○髙井委員 私は、検察官の意見を聴くのは1回だけだと思います。私は中間処分案説ですから。
○井上座長 それは、後の段階の方ですか。
○髙井委員 前の方です。
○井上座長 前の段階の方……。
○髙井委員 前の方。基本的には、これは拘束されているということです。だから、2回目のときには、起訴相当を原則として考えるべきだと思います。例外的に、新証拠が出てきて不起訴になるときには、不起訴意見を出しても例外的にそれはいいというような縛りをかけるべきだと思います。
○井上座長 その前に、最初の議決として、起訴相当の方向で勧告なりするわけでしょう。それで、検察官が再捜査した結果、起訴すればそれまでですが、検察審査会の意見はおかしいということで、不起訴を維持した場合、検察審査会としては、検察官が何でそのように判断したのかを聴かないで、もとの自分たちの起訴相当の議決をベースにして判断するということですか。そうすると、考え直す契機は何から出てくるのですか。
○髙井委員 基本的には、1回目に検事からいろいろ意見を聴いて、その上で判断をするわけです。ですから、その段階である程度論点は絞られているだろうと思っているわけです。ですから、その論点について、検事が再考あるいは再捜査をして、また不起訴にしましたというときに、例えば、アリバイ証言が出てきましたという非常に極端な場合を除けば、それは最初に来たときと基本的には同じでしょうということです。
○井上座長 要するに、評価の違いということですね。
○髙井委員 そうですね。2回目のときには、これは聴いてはいけないわけでなくて、聴きたかったら聴いてもいいわけです。必要的にしないというだけですから、新証拠も出てきているけれど新証拠の意味がよく分からないというのだったら、呼んで聴けばいいわけですから、別に問題ないと思うのです。
○井上座長 御意見は分かりました。
○辻参事官 実際にどう働くのかというのがいま一つ分かりにくくて、心構えの問題として、原則、前のことを踏まえてというぐらいでしかありようがないような気もします。
○髙井委員 それが作れる。
○辻参事官 何というか、破棄判決の拘束力のような意味の拘束力というのはなかなか難しいのではないかと思いますけれど。
○髙井委員 実体としてどういうものをイメージするかということは、まず固めておかないといけません。それを法案に書けるか、書けないかということで、これは書けないから、事実上の運用で行きましょうねというのはあると思うのだけれど、実体的なイメージというのは、そこは詰めておかないといけないですね。
○酒巻委員 検察官の意見聴取を必要的にする場合、二段階のどこに入れるかという点ですが、私の意見は、検察官が再捜査等を行い、それにもかかわらず検察官が不起訴処分にした、その理由を、二段階目の拘束力を発生する議決を行おうとする検察審査会のところで説明するという形にすべきであろうと思います。髙井委員とは違う意見です。
○髙井委員 そうしますと、第一段階の起訴相当議決の方は、事実上は不起訴不当議決と変わらなくなると思うのです。
○酒巻委員 確かに、事実上そういうことになるのかな……。
○井上座長 要するに、もうちょっと捜査しなさいというのと変わらなくなるということですね。
○大出委員 先ほど座長がおっしゃったことそのものかもしれないのですが、要は、二段階にするということの御趣旨が、先ほど来確認していますように、慎重を期するということだとすると、拘束力的なものを認めるというのは筋が違うのだろうと思うんですね。なぜかというと、検察官側がやっぱり不起訴なんだというふうに判断をするわけですから、だとすれば、それを踏まえて、もう一度本当に起訴すべきなのかどうかということを判断せざるを得なくなると思うんですね。ですから、そういう意味では、拘束力的な縛りをかけるわけにいかないということに多分なるのだろうという気がするんですね。その限りでは、事務局のさっきの御説明ということになるかもしれません。
そうだとすると、先ほど来申し上げたように、また新たな合議体自体は、起訴をするかしないかについて決断を迫られることになるわけですから、何のために二重の手続をして負担を減らすということにしているのかということが分からなくなってしまうのではないかという気がするんですね。
○井上座長 負担を減らすというより、そのくらいの負担はやむを得ないだろうと思っておられる方のお考えでは、それだけ重大な事柄なのだということなのでしょう。
○土屋委員 もう一つ、再捜査の期間の問題ですね。再度捜査するような場合に結論を出さなければならない期間というのは、6カ月というような長いものであっていいのだろうかと思ったりもするのですけれども。適正な捜査であるにしても6カ月は長いですね。
○井上座長 長すぎないかということでしょうか。
○土屋委員 人事異動で所属が変わっちゃいます、審査員が。転勤しちゃっているかもしれません。
○井上座長 いまの点に限らず、初めて出席されて議論の混乱にびっくりされたかもしれませんけれど、樋口委員、いかがですか。
○樋口委員 ずっとお聞きして感じたのは、関心を払っていただきたい点としては、実務上の重複を強力排除してロスを少なくするということです。いずれにしても、民意を反映する新しい制度を模索していることには違いないわけです。そういった観点からしますと、やはり、今の二段階案で行けば、2案が制度設計としては非常に効率的なのかなという感じがいたします。
この時期に機会をいただきましたので、先ほどの検察官の意見聴取なども、検討してみますと、必要的な検察官の意見聴取というのは大変望ましい設計ではないかといった感じがいたします。
○井上座長 どうぞ遠慮なさらずにどんどん発言して下さい。この論点は、このくらいにさせていただいてよろしいですか。
時間が押してきたのですけれど、あと一点だけ御議論いただきたいと思います。検察審査会の議決の仕方なのですけれども、現行法で、起訴相当の議決をするためには11人のうちの8人以上の賛成が必要ということになっているわけですが、たたき台でも、この点は現行どおりでよいのではないかという案になっています。この点について御意見があればお願いしたいと思います。
○髙井委員 私は、前回の議論で申し上げましたけれども、プロの検察官が、特に嫌疑不十分で不起訴になったといっているものを、11分の8だとはいえ反対説が3人いる、つまり、犯人じゃないんじゃないかと言っている人が3人いる中で起訴していいかという危惧を持っています。
○酒巻委員 髙井委員の御意見に対しては、第1ラウンドでも述べたとおり、確かに実務上は嫌疑不十分の不起訴と、嫌疑は十分あるが、起訴猶予相当という不起訴処分の区別はあるものの、検審の審査対象は検察官の不起訴処分、そして刑事訴訟法上も事件処理としては不起訴か起訴かということですから、髙井委員のおっしゃるように、不起訴処分の中から、嫌疑不十分起訴を、区分抽出して、多数決のやり方をこれに対応させるというのは制度設計として無理があるのではないかと思います。
○髙井委員 嫌疑不十分と起訴猶予を分けるというのは前回申し上げましたけれど、それは撤回します。私の意見は、すべての案件について、8人でいいのかということで議論します。全会一致とすべきです。
○井上座長 全会一致ですか、すべてについて。
○髙井委員 当然、その中にも、人違いじゃないかというのも入っているわけですから。
○井上座長 その点、ほかの方はいかがですか。
○平良木委員 日本の多くの制度というのは、過半数ということで決まっていて、それを起訴相当に関して言うと、8人以上ということになっている。これは、考えてみると、多くの国がとっている、例えば3分の2以上というよりも厳しく、3分の2を超えているわけです。これは、格段に、そういう意味では強化されているといいますか、そういうところがあるので、現行のとおりで私はいいだろうと思います。
○池田委員 私も現行法のとおりでいいのではないかと思います。民意の反映が、11人全員一致ということになるとかなり反映しにくくなってくるのではないか、今回の趣旨には沿わないのではないかというふうに思います。
○井上座長 ほかにはいかがですか。数の点でほかに御意見がないとしますと、法的拘束力のある議決を行うための要件について、特別多数決あるいは全員一致という点以外で何か御意見があればお伺いしたいと思いますけれども、よろしいですか。
ここについては、たたき台の2-1のリーガルアドバイザーの設置ということも関連してきて、たたき台の2(1)アのBの考え方をとるとしますと、リーガルアドバイザーの委嘱ということも議決の要件になるということになりますけれど、その点については、またリーガルアドバイザーのところで御議論いただくことにしたいと思います。
それ以外に、この議決の要件として、こういうことも必要なのではないかということがあればお伺いしたいと思います。もしなければ、この論点についての議論は一応このくらいにさせていただきたいと思います。
○髙井委員 ちょっと質問ですけれど。
○井上座長 どうぞ。
○髙井委員 この議決の場合には、棄権というのは認めるのですか。
○井上座長 現在は、起訴相当の議決をするためにはとにかく8人以上の賛成がなければだめなのですね。棄権する人がいてもよいけれど、賛成の人が8人は必要だということでしょう。
○髙井委員 了解しました。
○大出委員 3分の2ということではないですね。
○井上座長 そうです。まだ、項目(3)というのが残っているのですが、(3)とその次のリーガルアドバイザーの話というのはつながっているところもありますし、時間もかなりたってしまいましたので、本日はこのくらいにさせていただき、次回にまた引き続き議論をしたいと思います。
予定された議事としてはこれだけなのですけれども、ほかに何か御意見なり御指摘があれば伺いたいと思いますが。
○大出委員 今日お答えいただく必要はないのですが、この第2ラウンドはこういう形で進めていくということになると思うのですが、ただ、今日の議論でもいろいろと意見が分かれていて、何か雰囲気としてこうだというのもありますけれども、必ずしもそうでないとなったとき、この後、どういう形で、時間の関係もありますし、何か不安なのは、もう1回では終わらないかもしれないという感じもしないでもないという感じもしますし、検察審査会も、ぜひ終わらせるのだろうと思いますが。
○井上座長 ぜひ御協力をお願いします。私も余計な質問はしないようにしますけれども。
○大出委員 私はある程度、前から申し上げているように、時間がかかるのはやむを得ないだろうと思いますし、ただ、皆さんお忙しい中で、調整等、事務局も大変でいらっしゃると思いますから、なかなかそう簡単ではないだろうと思いますけれども、その後、今、一応夏前までということで予定が入っていますね。その後、どうなのかということについて、少しイメージが必ずしも私の中で焦点が結ばないところがあるものですから、もし何かの機会で、今日でなくてももちろん結構ですが。
○井上座長 そういう御意見があるのは承知していますので、事務局の方とも相談し、検討させていただき、また御相談したいと思います。
私の方で、今思いついたのですけれど、前に御質問があった点で、たしか大出委員でしたか、取調べ過程の記録に関する検討はどうなっているのかという御質問がありましたね。
○大出委員 はい。
○井上座長 これについては、本検討会でも、関連性があれば、お聴きするということだったのですが、関連性があるのかどうか、必ずしも共通の意見であったかどうかは分からないのですけれども、9月のヒアリングの際に、法務省の方から、その時点での進捗状況を御報告いただきました。しかし、その後の状況はいかがかということを、大出委員が、たしか年末の検討会だったかにお尋ねでしたので、その点、今もし可能でしたら、現時点でどうなっているのかについて、御説明いただけますか。今突然お願いしたので、可能ならばということで、もし直ぐには難しいということでしたら、次回でも結構ですが。
○法務省(山上圭子刑事局刑事法制企画官) 今の段階でお答えできる範囲内でということでよろしいでしょうか。
○井上座長 はい、そういうことで結構です。
○法務省(山上企画官) この前の検討会のヒアリングの際にも若干御報告いたしましたとおり、法務省におきましては、取調べ過程・状況の書面による記録制度を導入するということで、推進計画に定められています本年半ばごろまでに所要の措置を講ずることができますように、刑事局内にプロジェクトチームを設置しまして、そこで技術的、実務的な見地から検討を行っているところです。
さらに、法務省のほか捜査機関を所管している省庁はほかにもございますので、ほかの省庁との間でも、関係省庁連絡会議というものを設置しておりまして、そこでこの問題に対して対応が統一的に図れるように会議が行われています。
具体的には、どのような事項について記録を義務付けるか、それから記録作成の手順ですとか、記録の保存の方法、記録の公判提出の方法、記録の正確性、あるいは客観性の担保方法等の論点について検討しているところでして、連絡会議においても、これらの論点について議論がなされているところであります。
今後ともまだ議論・検討が続けられることになると思いますが、推進計画で定められております本年半ばごろまでには所要の措置を講じることを前提に、できるだけ余裕を持って措置をなすことができますように、できる限り早い時期に、連絡会議において制度の骨子案をまとめたいと考えています。
○井上座長 また、おいおい、可能ならば状況を伝えていただきたいと思います。
○大出委員 ちょっとよろしいですか。
○井上座長 どうぞ。
○大出委員 書いてあったかもしれませんが、その関係省庁の中には裁判所は入っているのですか。
○法務省(山上企画官) 裁判所は入っておりません。
○大出委員 入ってないわけですね。行政官庁のところで措置をされている。
○井上座長 推進計画で明示されているわけですね。
よろしいですか。それでは、年が改まったにも関わらず、私の不手際で、かなり時間を超過してしまいましたが、本日の議事はこれで終了したいと思います。次回は、2月19日の午後1時30分からということになっておりますので、よろしくお願いいたします。