首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 文字なし
 トップ会議等一覧司法制度改革推進本部検討会裁判員制度・刑事検討会

裁判員制度・刑事検討会(第12回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成15年2月19日(水)13:30~17:40

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
池田修、井上正仁、大出良知、清原慶子、酒巻匡、四宮啓、髙井康行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局)
古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
「公訴提起の在り方」について

5 配布資料
資料1 裁判の迅速化に関する法律案(仮称)について

6 議事

 前回会合に引き続き、前回会合における配布資料1「検察審査会制度について」(以下「たたき台」という。)に沿って、公訴提起の在り方について議論が行われた。
 議論の概要は以下のとおりである。

(1) 検察審査会の議決に対するいわゆる法的拘束力の付与
 たたき台の「1 検察審査会の議決に対するいわゆる法的拘束力の付与」に関し、前回に引き続き、主として、以下のような意見が述べられた。

ア いわゆる法的拘束力のある議決後の訴追及び公訴維持の在り方について(たたき台1(3)の関係)

・ 検察官が不起訴処分としたが、検察審査会の議決によって起訴された事件につき、検察官が公訴の維持に当たるとすると、審査申立人等から見て、有罪に向けて十分な訴訟活動がなされるか疑念を抱かれるおそれがある。特に、結果として無罪となった場合には、制度自体についての不信を招くおそれがある。制度の「公正らしさ」を担保するためには、検察官以外の者が公訴提起及びその維持に当たるA案又はB案が相当である。
 また、不起訴処分の当否を審査する機関である検察審査会の本来の性格や、指定弁護士が検察官として公訴を提起するB案であれば略式命令請求が可能になると考えられることから、A案とB案とでは、B案の方が望ましい。

・ 同様の理由で、検察官以外の者が公訴の提起及びその維持に当たるべきという意見に賛成であるが、公訴権行使に民意を直截に反映するという制度趣旨等からすると、検察審査会が公訴提起手続を行うA案の構成を採ることも考えられる。

・ 裁判手続を進めるに当たり、訴訟追行に当たる検察官の役割は非常に大きいものなので、その観点からすると、公訴の提起及びその維持は、それらの手続に精通している検察官が行うC案の方が望ましい。仮に、指定弁護士が公訴の提起及びその維持に当たるとする場合には、指定弁護士による補充捜査、訴因の提示、証拠の請求等に遺漏の生じないような態勢を整備する必要がある。

・ 付審判事件では、検察官役の指定弁護士は補充捜査に相当苦労しているようであり、C案が適切である。検察官が訴訟追行を担当して無罪になったとしても、さほど非難を受けることにはならないのではないか。

・ C案が相当である。「公正らしさ」のみを重視するのは相当ではない。検察官は公正に職務を遂行する限り非難を恐れる必要はないのではないか。

・ 付審判事件とは異なり、検察審査会の議決に基づき起訴される事件では、特に二段階案を採れば、起訴に至るまでの間に十分に捜査が尽くされることになるから、補充捜査の必要性を理由として、検察官が訴訟追行に当たるべきということにはならない。また、検察官一体の原則の下にある検察官が不起訴とした事件について、検察官が訴訟追行に当たるとすると、審査申立人等の国民の目から見て、公正らしさに疑念を招くことになるから、A案又はB案を採るべきである。ただ、A案の場合、検察審査会が起訴状を作成することになるが、それは困難と思われるから、指定弁護士が公訴提起手続を行うB案の方が相当であろう。

・ 現在、被害者の検察官に対する不信感は深刻なものであり、二段階案を採った場合、二度にわたり不起訴処分とした検察官が、訴訟追行をするというのでは、被害者の納得が得られない。無罪になればなおさらである。指定弁護士では、補充捜査が不十分になるとの懸念が指摘されているが、検察審査会制度の場合、むしろ、警察官が起訴してもらいたいと考えていた事件を検察官が起訴せず、検察審査会が起訴したということが多くなると思われ、警察官の捜査意欲も強いものとなると考えられるから、その懸念は当たらない。したがって、A案又はB案が相当であるが、検察審査会が訴因を明示した起訴状を作成することは難しいであろうから、B案が相当である。

・ 実務的には、プロである検察官が公訴維持に当たるC案が妥当ではないか。補充捜査に関しても、検察官と捜査機関との人的つながりや、相互の連携がうまくいくかという点も重要ではないか。

・ 現行の法曹三者の資格制度では、検事が弁護士になることも、弁護士が検事になることも可能であり、検察官が訴訟追行等に慣れているからC案が相当であるとする意見は、そのような現行制度の原則に整合しないのではないか。

・ 審議会意見書は、法曹三者のそれぞれが多様な仕事を担当することを想定しており、その点からも、指定弁護士が訴訟追行に当たるのが相当である。

・ B案に魅力を感じる。法的拘束力のある議決がなされるまでに、検察官の必要的意見聴取等を契機として必要な捜査が尽くされることを前提に考えると、その上で検察官が不起訴とした事件について、その訴訟追行を検察官が担当することは、審査申立人等が不信感を持つだろうし、無理があるのではないか。

・ 被害者の視点を考慮すると、検察官が訴訟追行をするという従来の役割分担にとらわれず、指定弁護士に検察官の役割を果たしてもらうB案が望ましい。A案の場合、略式命令請求が困難となるし、リーガルアドバイザーが起訴状を作成することとなり、アドバイザーとしての性格を逸脱するのではないかという懸念がある。

・ 検察審査会が起訴相当の議決をする事件で、略式命令相当のものがあり得るのであれば、A案とB案の当否を議論する上で、それぞれの案を採った場合の略式命令請求の可否が一つの論点になるだろう。

・ 業務上過失致死傷の事案で、検察官は過失が認められないとして不起訴処分としたものの、検察審査会が過失を認め、被疑者も納得している場合など、略式命令相当の事件もあるであろう。本来、略式命令相当の事件について、公判請求しかできないことになると、被告人に無用な負担を課すことになり、相当ではない。

・ 一段階案を採った場合でも、検察官ではなく指定弁護士が訴訟追行に当たることにより、被害者等から見た「公正らしさ」を保つ必要性がある。補充捜査の問題についても、例えば、検察官が指定弁護士からの捜査の嘱託に応じる義務を明記したり、指定弁護士が司法警察職員等へ直接捜査を指揮することができるようにするなど、指定弁護士の補充捜査の権限を強化することによって対応すべきである。

・ A案又はB案を採った場合の指定弁護士の捜査権限については、基本的には、現行の付審判制度における指定弁護士と同様と思われる。問題は、指定弁護士が直接捜査の指揮を行うことができるようにするかどうかという点であるが、付審判制度において、指定弁護士が、検察官を介して、司法警察職員等への捜査の指揮を行うものとされている理由として、捜査の指揮には人的つながりが必要であるとされていることからすると、付審判制度と同様、間接的に指揮をする方がスムーズにいくと考えることも可能と思われる。

・ 検察審査会制度と付審判制度とは性格が異なるから、付審判制度と同様に、間接的に捜査の指揮をすべきであるということには必ずしもならず、指定弁護士が直接指揮できるとものとすることも考えられる。

・ 指定弁護士の役割は重要であるから、その報酬について配慮してもらいたい。

(2) 検察審査会の組織、権限、手続等の在り方
 たたき台の「2 検察審査会の組織、権限、手続等の在り方」に関し、主として、以下のような意見が述べられた。

ア リーガルアドバイザー(仮称)を委嘱する要件・手続について(たたき台2(1)アの関係)

・ いわゆる二段階案を前提とすると、最終的に拘束力のある判断をする二段階目の審査においては、最初から必ずリーガルアドバイザーを委嘱するものとし、一段階目の審査においては、起訴相当の議決をする場合には、あらかじめ、リーガルアドバイザーを委嘱しなければならないものとするのが相当である。

・ 法的拘束力のある起訴相当の議決を行う事件では、リーガルアドバイザーの委嘱を必要的とするB案が相当である。

・ B案が妥当である。

・ リーガルアドバイザーが介入的に意見を述べるということは相当でないが、法的な問題について疑義が生じたときに、検察審査員がいつでもリーガルアドバイザーに意見を聴くことができることが重要であるから、全件委嘱のC案が相当である。実際にそのような態勢をとることができるかどうかは問題であるが。

・ B案が相当である。C案のように、全件についてリーガルアドバイザーを委嘱するのは無駄が多い。

・ B案が相当である。コストの点からも、C案の全件委嘱には無駄が多い。

・ 濫訴的な申立てがあるかもしれないが、いろいろな事件で、検察審査員が、法的なアドバイスを受ける機会を確保しておく必要があるから、弁護士会の協力が得られることを前提として、C案が相当である。

・ 起訴相当の議決に基づき公訴が提起されることに伴い、その前提となる審査を慎重かつ充実したものとして、適正な判断が得られるように、リーガルアドバイザーの制度を設けるという趣旨からすると、B案が相当である。

・ 被害者の立場からすると、B案では、本来起訴すべき事案が見落とされるおそれがあり、全件委嘱のC案ということになる。ただし、濫訴的な申立ての事例があることを考えると、一段階目からC案というのは適当ではなく、せめて二段階目の審査時からは全件委嘱とすべきである。

・ 被疑者・被告人の立場からすると、いったん不起訴とされたのに、起訴されることになるのであるから、その判断を慎重に行うために、リーガルアドバイザーを委嘱するものであると考えることができるのではないか。

イ リーガルアドバイザー(仮称)の権限について(たたき台2(1)イの関係)

(ア) リーガルアドバイザーが問題点を整理することの当否など

・ 事件の問題点の整理は現状では検察審査会の事務局が行っているのではないか。そのような問題点の整理をリーガルアドバイザーが行うべき理由は何か。
 また、リーガルアドバイザーは飽くまでもアドバイザーであり、検察審査会のメンバーではないから、その権限を明確化する必要があるのではないか。特に、リーガルアドバイザーが議決書の起案をするのは、リーガルアドバイザーを委嘱しない事件とのバランスの問題もあり、慎重に検討する必要があるのではないか。

・ 問題点の中には法律上の問題点もあり、また、検察審査会の起訴相当の議決に基づいて公訴が提起されることになることからすると、法律専門家が、より正確な整理を行うものとするのが相当と考えられる。

・ 事務局による補佐には限界があり、リーガルアドバイザーが事実認定上・法律上の問題点について何らかのアドバイスができるよう、その権限を明確化すべきである。

・ 例えば、道路交通法違反の問題と業務上過失致死傷の問題とが区別されることなく、不起訴不当の議決がなされることが少なからずあり、現状では、検察審査会において、問題点が十分に整理されているとは思えない。リーガルアドバイザーが事実認定上及び法律上の問題点を整理するのは必須である。

・ 飲酒運転をして人身事故を起こし相手が死亡したからといって、過失がなければ業務上過失致死罪は成立しないが、検察審査会が「酒を飲んで運転して人を殺しているからけしからん」ということで、起訴相当の議決をすることも考えられるから、リーガルアドバイザーが、過失の存否等の問題点の整理・説明をすべきである。しかし、更に進んで、リーガルアドバイザーが「この事案は不起訴が相当である」と言うなど、本来、検察審査会が判断すべき事項についての意見を述べることは許されるべきではない。

・ C案を支持するわけではないが、仮に、現状では、事実認定上及び法律上の問題点が十分整理されていないとすれば、すべての事件でリーガルアドバイザーが必要になるということにならないか。

・ リーガルアドバイザーの職務範囲は、たたき台の案が相当である。ただし、リーガルアドバイザーが、事件の実体判断にわたる事項についての意見を述べることはできないものとすべきである。
 検察審査会で問題点が十分に整理されなかったため、不起訴不当などの議決がなされることがあるかもしれないが、だからといって、リーガルアドバイザーを全件に付けるということにはならない。法的拘束力のある議決がなされる事件と、それ以外とでは、リーガルアドバイザーの関与の必要性は異なる。

(イ) リーガルアドバイザーが自己の意見を述べることの当否など

・ 検察審査会は起訴すべきという意見になった場合に、リーガルアドバイザーの目から見ると、絶対に無罪であるというときでも、リーガルアドバイザーは、何も意見が言えないのか。

・ そのような場合であっても、リーガルアドバイザーが意見を述べることができるとすると、制度の全体構造が崩れることになるので、不可とすべきである。

・ 明らかに犯罪が成立しない場合には、例外的に、意見を述べ得るとすることも考えられる。ただし、「明らか」の範囲をめぐって議論を招くなど、実務的には難しいかもしれない。

・ 明らかに犯罪が不成立である場合といっても、事実認定の問題として、犯罪が成立しないという場合もある。そのようなときでも、リーガルアドバイザーが意見を述べることができるというのは、公訴権行使に民意を反映させるという検察審査会制度の趣旨に照らし相当ではなく、公判裁判所に判断をゆだねるしかない。

・ 公訴提起の要否を最終的に決するのが検察審査会でありさえすれば、明らかに犯罪が成立しないようなときに、リーガルアドバイザーがその旨の意見を述べることができるとしても構わないのではないか。

・ リーガルアドバイザーは、少なくとも、法的に犯罪が成立しないと考える場合には、その旨の意見を述べることができるものとすべきである。その上で、検察審査会が、「法律家はそういう考えかもしれないが、国民一般の感覚として納得いかない。」ということで起訴の判断をするのであれば問題はないが、そのような意見を認識することなく最終的な判断をするのは相当ではない。

・ 素人であっても法律専門家の意見を理解できないことはなく、問題あるのならその旨の意見を述べてもらう方がよい。ただし、法律専門家の意見は重みがあるから、例えば「リーガルアドバイザーは、事実認定上・法律上の問題点について、結論を誘導するような意見を述べてはならない。」という趣旨の規定を置くのが相当である。

・ リーガルアドバイザーは、結論を誘導するような意見は述べるべきではないが、明らかに犯罪が成立しないような場合に、例外的に、リーガルアドバイザーによる何らかのネガティブ・チェックの仕組みを設けることが可能であるのなら、被疑者の利益にもかなうから、検討に値するのではないか。ただし、犯罪が成立しないことが「明らか」といえるかどうかの判断は微妙であるが。

(ウ) リーガルアドバイザーが意見を求められた場合の在り方など

・ リーガルアドバイザーの方から意見を述べるのは相当ではないが、検察審査員から意見を求められた場合には、それに答えてもよいのではないか。そうでなければ、リーガルアドバイザーを委嘱する意味がない。

・ リーガルアドバイザーの権限として、例えば、実体判断に関する意見を述べることができないということになると、そのような意見を求めることもできないことにならないか。また、検察審査員がリーガルアドバイザーの意見に依存するという問題が生じないか。

・ 依存の問題は、リーガルアドバイザーが意見を求められても、まずは検察審査員に考えてもらうようにするなど、実務的に解決できるのではないか。

・ 検察審査員から質問があった場合についても、その質問が、起訴が相当か否かというものである場合や、その前提となる個別の証拠の評価に関するものである場合には、それらは検察審査会が判断すべき事項であるから、リーガルアドバイザーは意見を述べることができないものとすべきである。

・ リーガルアドバイザーが、判断者である検察審査会をリードするようなことがあってはならないが、そのアドバイスが助言にとどまる限り問題はないのではないか。検察審査会の方から助言を求められて答えるのであれば、それは助言であるから、リーガルアドバイザーが結論にわたる意見を述べてもよいのではないか。

・ 検察審査員が最終的な結論を出す際には、リーガルアドバイザーを同席させないものとすることも、リーガルアドバイザーが結論を誘導するような影響力を及ぼすことを排除する上で意味があるかもしれない。

・ リーガルアドバイザーがたたき台に掲げてある職務を行うことは相当であるが、それ以上に、その権限の範囲を厳格に明確化するまでの必要はなく、その良識にゆだねればよいのではないか。判断するのは飽くまでも検察審査会であり、リーガルアドバイザーにはその権限はないから、リーガルアドバイザーの発言は自ずと助言にとどまると考えられる。

・ リーガルアドバイザーの権限を明確に規定することにより、リーガルアドバイザーが権限を逸脱しないように担保するという考え方もあり得るだろう。

(エ) その他

・ リーガルアドバイザーと指定弁護士とが一致することになると、リーガルアドバイザーが検察審査会の判断を起訴方向に誘導したのではないかという印象を与えることにならないか。

・ 一般的には、リーガルアドバイザーは、事件の証拠関係等を十分に把握しているから、リーガルアドバイザーが、そのまま指定弁護士となり、訴訟追行に当たるものとするのは、合理的運用であると考える。ただし、法律上の制度として、リーガルアドバイザーが必ず指定弁護士になるものとするまでの必要はなく、運用で足りる。

・ 事件と利害関係のある者を除くなど、リーガルアドバイザーの除斥事由を定めることも考慮すべきであろう。

・ リーガルアドバイザーは判断者ではなく、除斥事由を設けるまでの必要はないのではないか。

・ リーガルアドバイザーに対する報酬について配慮が必要であろう。

ウ 検察審査員の義務・解任、罰則及び検察審査員の欠格事由等の見直しについて(たたき台2(2)ないし(4)の関係)

・ 推進本部事務局の意見募集の際に寄せられた、検察審査会事務局長の意見を読むと、検察審査員の出頭確保が重要な課題であることがよく分かる。

・ 欠格事由等の見直しに関しては、より多くの人が参加できるように配慮すべきである。

・ 検察審査会法6条の職業による制限は見直しが必要だろう。検察審査員の義務については、現行法以上に義務を課すことは相当ではない。罰則についても、秘密漏泄罪に関しては、検察審査員当人の意見、感想などが国民に伝えられることによるプラスの面もあると思うので、すべての事項を守秘義務の対象とすべきではない。

エ 付審判請求手続との審査申立期間の調整について(たたき台2(5)アの関係)

・ 検察審査会への審査申立期間を定めるべきではなく、A案が相当である。これまで申立期間がなかったのに、新たに制限するとなると、被害者やその遺族等に、一定期間内に申立てを行うか否かの決断を迫ることになり、申立てを萎縮させるおそれもあること等を考慮すると、付審判請求制度とのバランス論のみから、申立期間を制限するものとすることは相当ではない。

・ 審査申立期間を定めるべきであり、B案が相当である。現行とは異なり、検察審査会の議決が、付審判決定と同様に、公訴提起の効力を有することになる以上、両制度のバランスをとるべきではないか。

・ B案が相当である。申立期間を定めないと被疑者の立場が長期間不安定となり相当でない。

・ 申立期間を定める必要はなく、A案が相当である。B案の場合、実務的には、期間の始期である、審査申立権者が不起訴処分がなされたことを知った日の認定が困難である。

・ 審査申立権者のうち、告訴・告発人等には、刑事訴訟法260条により不起訴処分の通知がなされており、被害者等にも、運用により、希望があれば、不起訴処分の通知がなされているから、「知った日」の認定は困難ではなく、実務上対処し得るのではないか。

・ 通知があれば「知った日」の確認は容易であり、通知がなされていなければ、結局は、不起訴処分がなされたことを知っておらず、申立期間が経過したことにならないだけではないか。

・ 親告罪の告訴期間の始期である「犯人を知った日」の認定が困難であることがあり、検察審査会の場合も同じようなことが起こるのではないかという懸念がある。

・ 検察審査会への申立期間を設けることとした場合、申立てが期間内になされたか否かという困難な認定を検察審査会が行わなければならず、本来の仕事ではない、煩瑣な事務が増えることとなり、相当ではない。

・ 親告罪の告訴期間の限定や付審判請求の期間制限の趣旨は、被害者等の私人の意思にかからしめる期間を無限定とすることが、被疑者の立場の安定という点からみて望ましくないという趣旨によるものと考えられる。そうであれば、審査申立期間を経過した後でも、検察審査会という国家機関が職権で審査を開始することができるものとすることはあり得ると思われる。

・ 各審査申立権者ごとに申立期間が異なることになり、審査申立期間を定めても余り意味がないと考えられること等からすると、A案が相当である。

オ 付審判請求対象事件について、付審判請求と審査申立てとが並行してなされた場合についての調整について(たたき台2(5)イの関係)

・ B案が相当である。検察官だけでなく、公正中立な立場にある裁判所も、公訴を提起しないのが相当であると判断しており、そのような事件についてまで、検察審査会の議決に基づき起訴され得るものとするのは適切ではない。

・ 検察審査会制度の趣旨は公訴権行使に民意を反映させることであり、付審判請求の対象事件については、民意によるチェックが必要であるから、A案が妥当である。

・ A案が相当である。付審判請求制度と検察審査会制度とは趣旨が異なるものであり、付審判請求が裁判所によって棄却されたからといって、その手続には民意は反映されていないのに、検察審査会の審査もできなくなるというのは相当でない。裁判所が付審判請求を棄却する予定であったとしても、たまたま、検察審査会の判断の方が先行したら、起訴相当の議決をすることが可能となるというのも適当でない。

・ A案に賛成である。仮に、裁判員制度の対象事件が法定合議事件になるとすると、特別公務員暴行陵虐致死罪が対象事件に含まれることになるが、B案であると、そのような事件が、検察審査会の民意によって起訴することができないことがあり得ることとなり、相当でない。

・ 濫訴的な付審判請求のことを考えるとB案も意味があるが、例えば、暴行罪には当たるが、職権濫用罪には当たらないなど、何らかの犯罪は構成するものの、付審判請求の対象犯罪は成立しないことを理由に、請求を棄却することもある。B案を採ると、そのような理由によって棄却されたの場合の取扱いが難しい。

カ 検察審査会の配置の見直しについて(たたき台2(6)の関係)

・ 検察審査会法1条1項ただし書のうち「200を下ってはならず」という部分は、その根拠を理解することができず、むしろ検察審査会の適正配置を阻害していると考えられるから、削除すべきである。

・ 検察審査会は、国民の負担、事件数等を考慮して配置すべきであり、200という数字が、適正配置の障害になっているのであれば、削除すべきであろう。

・ 適正配置は必要であろうが、効率性だけでなく、検察審査員の交通の利便性等についても十分な配慮が必要であろう。

(3) 建議・勧告制度の改革
 たたき台の「3 建議・勧告制度の改革」に関し、主として、以下のような意見が述べられた。

・ 建議・勧告への回答義務を法定化することは望ましいが、これに加えて、その公表についても検討すべきではないか。

・ 法律上の義務としなくとも公表することは可能である。他方、建議・勧告は具体的な事件に言及して行われることがあり、公表を法律上の義務とすると、公表によって支障が生じるような場合に柔軟な対応が困難となる。したがって、公表を法律上の義務とすることは適当でない。

・ 公表を義務付けることになると、プライバシーその他の公表になじまない事項にからんだ回答が必要である場合には、当たり障りのない回答がなされることになりかねず、適当ではない。

・ 弊害がある場合にまで公表すべきということではないだろう。例外は例外として認めた上で、可能な範囲で公表すべきではないか。

・ およそ公表する必要がないと言っているわけではなく、法律がなくとも、公表できるものは公表するすることになろう。しかし、内容的に公表できないものがあり、法律上、公表すべきものと、公表すべきでないものとを明確に書き分けることは困難であるから、法律上の義務としては、回答義務を明記するものとするのが相当である。

・ 公表の義務付けは、透明性の拡大に関連する問題であり、建議・勧告の実質化の問題とは結び付かないのではないか。

(4) 次回以降の予定
 次回(3月11日)は、刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入に関する検討を行う予定である。
(以上)