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裁判員制度・刑事検討会(第2回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成14年4月23日(火)10:30~12:15

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
池田修、井上正仁、大出良知、清原慶子、酒巻匡、四宮啓、髙井康行、土屋美明、中井憲治、平良木登規男、廣畑史朗(敬称略)
(事務局)
大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
(1) 司法制度改革推進計画の説明
(2) 本検討会における当面の検討の在り方について
(3) その他

5 配布資料
資料1 司法制度改革推進計画
資料2 裁判員制度・刑事検討会における当面の論点
資料3 統計資料
資料4 外国法制に関する参考資料

6 議事

(□:座長、〇:委員、●:事務局)

□ 所定の時刻ですので、第2回の裁判員制度・刑事検討会を始めさせていただきたいと思います。
 本日は、お忙しい中、朝から御参集いただきましてありがとうございます。
 まず、議事に入ります前に、事務局の方から事務連絡があるそうです。

● 事務局では、今般の司法制度改革につきまして、広く国民の皆様からの御意見を承っているところでございます。
 寄せられた御意見につきましては、今後の参考とするために、保管をしておりますが、このたびその目録を作成いたしました。今後も寄せられる御意見については、順次目録を作成していきたいと思っております。
 そこで、検討会の各委員におかれましては、御希望があれば、目録をお渡しして、そのうち必要と考えられるものを御覧いただくことができるようにしておりますので、御希望がありましたら、検討会終了後など、適宜の機会にお申し付けいただければと考えております。
 以上です。

□ どうもありがとうございました。

○ 目録は、かなり大部なものですか。もし目録だけ皆さんにちょうだいできれば、そこから好きなものだけお願いするということができるので、まず目録をいただきに上がらなければいけないとなると、なかなかおっくうになるという点があるんですが。

● それほど大きなものではありませんので、もし御所望とあれば、お渡しするようにいたします。

○ 恐れ入れます。

□ では、そういうことでお願いいたします。

 (1) 司法制度改革推進計画の説明

□ 今日の議事の予定ですが、去る3月19日に司法制度改革推進計画が閣議決定されたことは、既に御案内のことと存じますけれども、この推進計画の内容と、それを踏まえた本検討会での検討スケジュールについて、まず、事務局の方から説明してもらおうと思います。
 それを踏まえまして、本検討会における当面の検討の在り方について御相談したいと思います。
 最後に、お手元にいっていると思いますが、今後の議論の参考として事務局の方で統計資料や、外国法制に関する基本的な資料を用意してくれましたので、それについての説明をしていただきます。
 本日の議事の組立てとしては、そのようにやっていきたいと思います。是非、議事の進行に御協力いただければと思います。
 それでは、まず、司法制度改革推進計画と、それを踏まえた検討のスケジュールについて、事務局の方から御説明願います。

● 資料1としてお手元に「司法制度改革推進計画」をお配りしておりますので、それを御覧いただきながらお聞きいただければと思います。
 この「司法制度改革推進計画」が、3月19日に閣議決定されましたので、その概要を御説明申し上げるとともに、同計画を踏まえた検討スケジュール、すなわち、本検討会における検討を終えていただくべき時期等につきまして御説明を申し上げたいと思います。
 まず、この司法制度改革推進計画でございますが、司法制度改革推進法に基づき、政府が司法制度改革に関し講ずべき措置について、その全体像を示すとともに、推進本部の設置期限、すなわち、平成16年11月30日までの間に行うことを予定するものについて、措置内容、実施時期、法案の立案等を担当する府省等を明らかにするものでございます。
 本推進計画は、顧問会議での御議論及び司法制度改革推進本部の本部会合における本部決定を経て、3月19日に閣議決定されました。
 概略を御説明申し上げますと、「I はじめに」と書かれておりますが、ここにおきまして、本計画の趣旨や、司法制度改革推進に当たっての基本的な考え方などを記載するとともに、「II 国民の期待に応える司法制度の構築」以下において、司法制度改革審議会の意見書の提言に即して、各課題について、先ほど申し述べたような内容を記載しているところでございます。
 その中で、本部が法案の立案等を担当するとされている事項も多々あるわけですが、本検討会に関連するものについて御説明をしたいと思います。
 まず、6ページの終わりに「第2 刑事司法制度の改革」という標題があり、これを受けて7ページに「1 刑事裁判の充実・迅速化」という項がございます。ここにおきまして、充実した争点整理のための新たな準備手続の創設及び証拠開示の拡充並びに連日的開廷の確保のための関連諸制度の整備を行うこととされておりまして、所要の法案を平成16年通常国会に提出する予定とされております。
 そのほか、直接主義、口頭主義の実質化を図るための関連諸制度の在り方、裁判所の訴訟指揮の実効性を担保する具体的措置等についても検討することとされております。
 同じく7ページの末尾に「3 公訴提起の在り方」という項がございますが、ここにおきましては、検察審査会の一定の議決に、いわゆる法的拘束力を付与する制度を導入することとされており、所要の法案をやはり平成16年通常国会に提出する予定とされています。
 あとは、かなり飛びまして、17ページの末尾の辺りになりますが、「1 刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入」という項があり、ここでは、いわゆる裁判員制度を導入することとされておりまして、所要の法案をやはり平成16年通常国会に提出する予定とされているところであります。
 このように、推進計画によって、推進本部が法案等の立案等を担当する事項や、提出予定時期が明らかになったわけでございますが、本検討会で御検討いただく事項に係る法案は、いずれも平成16年通常国会への提出が予定されたというところであります。
 そのことを踏まえまして、条文化の作業等に要する時間なども考えまして、本検討会においては、平成15年の夏ごろの終了を目指して御検討いただければと存じます。
 以上です。

□ ありがとうございました。今、説明を受けました推進計画や、全体としての検討スケジュールについて、御質問等がございましたら御発言願います。

○ 7ページの「1 刑事裁判の充実・迅速化」のところの(2)ですが、これもやはり平成16年ということなんでしょうか。ここは、単に検討で、法案の提出等については特に指定はされていないんですか。

● これは、審議会の意見自体が「検討せよ」ということですので、推進計画としても「検討する」ということになっておりまして、本検討会におきまして、前回御紹介したように、この点についても御検討をいただいて、その結果を踏まえて法案にするものはするということになるかと思います。

○ その場合には、平成16年を目途ということになのでしょうか。そこははっきりしないわけですか。

● その場合は、同じく充実・迅速化の方策ということで、(1)と位置付けとしては同じになるかと思いますので、16年を目指してということになるかと思います。

○ もう一点、8ページの4のところの「(2)被疑者・被告人の身柄拘束に関連する問題」の特にイのところになるかと思いますが、この点について、これは事務局にお尋ねするのがいいのかどうかわかりませんけれども、もしお分かりでしたらお教えいただければと思いますが、この点について、本部が入っていないということで、これは後ほどの説明にも関わるかもしれませんけれども、その辺のいきさつなり、理由なり何か御承知でいらっしゃったらお教えいただきたいと思います。

● 御指摘の事項は、被疑者の取調べの適正を確保するため、取調過程・状況について記録を義務付ける制度を導入することとするということでございますが、この推進計画を御覧いただきますと、警察庁、防衛庁、総務省、法務省等の府省が担当府省として記載されているところでありまして、ここに記載されている府省が担当して、立法というよりは、内部規則によって、制度の導入を図るという趣旨であります。
 理由といたしましては、一つは、本制度については、内容自体は、司法制度改革審議会の意見において、既に明らかにされておりまして、今後必要とされる作業は、その実現に向けた検討を行うということでありますが、この制度は、全国の捜査機関の日常的な業務の遂行方法に関する、むしろ細則的な事項を定めるものであると考えられます。
 そういう性格のものですので、取調べに関する実際の運用の在り方とか、それぞれの捜査機関の組織の在り方などを十分に踏まえた技術的、実務的見地からの検討が必要不可欠であると考えられるところです。
 そういう点から、やはり日々の被疑者取調べの実務に関わっている捜査機関を所掌する、ここで担当府省とされたところにおいて検討を行うのが適切ではないかと考えられたという点が一点ございます。
 付け加えて申し上げますと、本制度は、今も申し上げましたとおり、全国の各種多様な捜査機関の日常的な業務の遂行方法を規律するものですので、日常業務の遂行の仕方に与える影響というのは、かなり大きいというふうにも考えられるところでありまして、やはりその点でも運用とか組織の在り方等を踏まえたものとする必要性は非常に高いと思われるところであります。
 ここで担当府省とされている府省におきましては、既に、本制度の実現に向けた検討を開始されていると承知していますが、そのようなことを踏まえまして、試案を作成して、一定期間試行を行った後、細部を修正して、最終的な成案を得るという作業の方法が適当かどうかも検討されていると伺っております。
 そのような柔軟な対応というのは、むしろ立法措置による場合は困難であって、各担当府省において作業していただくのが適当ではないかと考えられたものと思います。
 また、制度の導入後におきましても、取調べに関する運用や、組織の在り方等について、状況の変化があり得ると思われますが、そのようなものに対する柔軟な対応、修正というような観点からも、各府省における作業による導入というのが適当ではないかと考えられたものと承知しております。

□ 以上でよろしいですか。

○ 一点だけ確認ですが、その場合に、この項目も含めてということになりますけれども、先ほどのお話ですと、本部と記載されている部分が、この検討会の趣旨で検討事項というようなことになるのかと思いますが、それ以外に、例えば、今の項目等について、進捗状況によって、ここに当然関連する問題でもあるわけですので、何らかの形で議論をさせていただくと言いますか、そういう機会はあるということになるんでしょうか、それはどうなりそうなんでしょうか。

□ 今の推進計画自体については、審議会の意見書を受けて、それが反映されているかどうかにつき顧問会議の御意見も伺った上で、推進本部の方で決定され、閣議決定されたということですので、それについてこの検討会で、それはおかしいではないかと、これも入れた方がよいといった意見を言うことは、組織としてはできないだろうと思います。
 第二の、ここでの検討事項に関連する限りで議論するという点は、後で、どういう論点を取り上げて、どういう順序で議論していくのかをご協議いただきますが、そこでの協議の中身になると思います。
 ただ、御理解いただきたいのは、我々の検討会が対象にしている事柄は、刑事手続全般、さらには、それよりも広い範囲のいろいろな事項に関連するわけですが、それを全部網羅的に検討していくとすると、恐らく何年もかかってしまうことになりますので、ここではやはり、推進計画において本部が担当するとされている事項について議論をすることが中心にならなければならないと思います。
 今お話のあった関連事項についてどこまでここで取り上げるかということは、それらの主たる検討事項にどれだけ密接に関連するかということに懸かってきますので、個々の事項のところでまた考えていくということにしてはいかがかと思います。
 いずれにしても、次の御協議にも当然関係してきますので、そこのところでまた御発言いただければと思います。

 (2) 本検討会における当面の検討の在り方について

□ それでは、以上のような一般的なスケジュールを前提にして、この検討会で当面具体的にどういう事項を取り上げて検討を進めていくのかという御相談に移りたいと思います。
 この点につきましても、議事をスムーズに行うという意味で、事務局の方で、当面の議論において取り上げることが考えられる論点を拾い上げて整理していただきました。それが、お手元に配られています「裁判員制度・刑事検討会における当面の論点」という資料です。これについて説明をしていただくとともに、大体こういう具合に検討を進めていくのが適切ではないかという、検討の順序やスケジュールについての事務局としての考え方についても、併せて説明していただこうと思います。
 それでは、お願いいたします。

● 資料2といたしまして、お手元に「裁判員制度・刑事検討会における当面の論点」というタイトルの資料をお配りしておりますので、これに基づいて御説明申し上げます。
 この資料は、3つに分かれておりまして、それぞれにサブタイトルが付されておりますとおり、一つは「刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入」、もう一つは「刑事裁判の充実・迅速化」、3点目は「公訴提起の在り方」につきまして、それぞれ当面の論点を記載したものでございます。
 これから、これら三つの事項について具体的な制度設計に向けた議論を本検討会でしていただくわけですが、検討すべき論点は極めて多数に上ると思われます。
 各ペーパーは、その中でも大きな論点、言ってみれば、新たな制度の大きな骨組みに関するものと思われる論点を取り上げたものでございます。したがいまして、今後検討すべき論点がここに記載されたものに限られるという趣旨のものではございません。
 ただ、そのように多数に上る論点の性格というのは、大小様々に及ぶと考えられまして、新たな制度の言わば骨組みに当たるような大きな論点もあれば、骨組みを踏まえた肉付けに当たるような論点、さらには、より細かい論点と、様々であると考えられます。
 そういうことを考えますと、まず、当面は、骨組みに関するような大きな論点について一通り議論をしていただくのが、今後の検討をスムーズに進めていくために有益であろうと考えたものであります。
 骨組みに当たる論点についての一通りの議論というものも済ませないうちに、細かな論点について個別に踏み込んでいくというやり方ではなかなか難しい面もあるのではないかと考えられるところであります。
 そこで、最初の段階としては、裁判員制度、刑事裁判の充実・迅速化及び公訴提起の在り方の各検討事項ごとに、これらのペーパーに記載しました大きな論点について一通り議論していただき、その後、次の段階としてより細かな論点をも含めた検討に移るのが適当ではないかと考えたわけであります。
 もとより、骨組みに当たるような論点についての検討は最初の段階ですべて終えていただくという趣旨ではありませんで、最初にまず、大きな論点に絞った議論をし、次に、大きな論点とそれより細かい論点を加えた議論をする、というような進め方はどうかと考えているところであります。
 それが言わばこの資料の全体の考え方ということでございますが、次に個別のペーパーについて御説明したいと思います。
 まず、サブタイトルが「刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入」とされているペーパーについてであります。
 ここにおきましては、1~7までの項目に分けて論点を掲げ、当該論点を御議論いただく際の出発点となる審議会意見の関連部分を枠組みを付して紹介しているところであります。
 そのうち、第1は、「1 裁判官と裁判員との役割分担の在り方」でありまして、ここでは、審議会意見において、裁判員が、有罪・無罪の決定及び刑の量定に関与することとされていることを踏まえて、そのほかにも、法律問題や訴訟手続上の問題等に関与すべきか否かといった点について、まず御議論を願えればと思っております。
 第2は、「2 裁判体の構成・評決の方法」でございますが、当面の議論におきましては、裁判官を何人にして、裁判員を何人とするかという具体的な数字について御議論いただくというよりは、裁判体の構成を定めるに当たっての基本的考え方は、どういったものがいいのかといったような点について御議論いただくのがいいのではないかというふうに考えております。
 3点目は、「3 裁判員の選任方法」であります。選挙人名簿から無作為抽出した者を母体とするというのが審議会の意見でありますので、それを踏まえた上で、やはり審議会意見で言われている、「更に公平な裁判所による公正な裁判を確保できるような適切な仕組み」として、どのようなものが考えられるのかといった点について議論をいただくのがいいのではないかと思っております。
 4点目は、「4 対象事件の範囲」でありますが、審議会の意見では、法定刑の重い重大犯罪とされておりますが、その具体的範囲などについて御議論をいただければと思っております。
 5点目は、「5 公判手続の在り方」でありまして、裁判員が関与する事件の公判手続の在り方について御議論願いたいと思います。
 第6は、「6 上訴の在り方」でありまして、審議会意見において、裁判員が関与した事件についても、当事者からの事実誤認又は量刑不当を理由とする控訴を認めるべきであるとされているところでありますので、そのような控訴審の在り方、すなわち、控訴審にも裁判員が関与するのかどうか、その審理方式といった点について御議論をしていただくのがいいのではないかと考えたところであります。
 7点目は、「7 憲法との関係」ということでありますが、憲法に適合した制度とするためにどのような制度とすべきかという点についての御議論をお願いしたいと思っております。
 次に、「刑事裁判の充実・迅速化」というサブタイトルのものを御覧ください。これも、同様に幾つかの項目に分けておりますが、第1は、「1 充実した争点整理のための新たな準備手続の創設」であります。
 審議会意見では、裁判所が、新たな準備手続を主宰すべきであるとされておりますが、その事件を審理する受訴裁判所がこれを主宰すべきか否かという点、さらには、新たな準備手続において、具体的にはどういったことを行うのかという点などについての御議論が考えられるかと存じます。
 第2は、「2 充実した争点整理のための証拠開示の拡充」でございます。
 審議会意見は、「充実した争点整理のためには、証拠開示の拡充が必要である。」、「証拠開示に伴う弊害の防止が可能となるものとする必要がある。」などとしているところでありまして、こうした意見にのっとって、証拠開示の時期・範囲等に関するルールの在り方について御議論いただければと思います。
 ただ、ルールの在り方というのは、もちろん議論をしていけば非常に細かい点も出てくるわけですが、最初から細かい点まで御議論いただくというよりは、まず、基本的な考え方と申しますか、大きな枠組みの部分についての議論していただければと考えている次第であります。
 第3は、「3 連日的開廷の確保のための関連諸制度の整備」であります。
 審議会の意見も指摘しておりますように、取り分け裁判員の関与する事件では、連日的開廷が不可欠の前提となると考えられますことから、そのような連日的開廷を確保するための具体的措置としてどのようなものが考えられるか。どのようなものが必要かといった点について御議論いただきたいと思っております。
 第4は、「4 直接主義・口頭主義の実質化を図るための関連諸制度の在り方」でありまして、直接主義・口頭主義の実質化を図るため、関連諸制度はどうあるべきかを御議論いただきたいと思っております。
 第5は、「5 訴訟指揮の実効性を担保する具体的措置」でありまして、そのような具体的措置としてどのようなものが考えられ、実際にどれが必要かといった点についての御議論をお願いできればと考えております。
 最後の第6は、「6 捜査・公判手続の合理化、効率化を図るための方策」であります。 審議会意見では、有罪答弁制度の導入、現行の略式請求手続や簡易公判手続の見直し等が例示されておりますが、捜査・公判手続の合理化・効率化を図るための具体的な方策として、どのようなものがあり得るか、考えられるか、また必要であるか、可能であるかといった点について御議論をいただければと考えております。
 次に3つ目の「公訴提起の在り方」という資料でありますが、これは検察審査会の一定の議決に法的拘束力を付与する制度の導入に関するものでありまして、3つの大きな論点を掲げておりますが、そのほかに、各論点ごとに、参考といたしまして、現行の検察審査会制度等に関する条文の御紹介を併せてしております。
 論点につきまして、第1は、「1 拘束力のある議決の種類・要件」であります。
 審議会意見は、一定の議決に法的拘束力を付与するべきであるとしておりますが、どのような議決に拘束力を付与するのかという点や、検察審査会がそのような拘束力のある議決をするための要件といった点は、今後の検討にゆだねられているところですので、拘束力を付与する議決の種類や要件等についての御議論をお願いできればと考えております。
 第2は、「2 拘束力のある議決後の訴追及び公訴維持の在り方」であります。
 具体的には、拘束力のある議決がなされた事件について、誰が、どのような手続で訴追することにするのかという点、さらに、訴追された当該事件の公訴の維持を誰が行うこととするのかという点について御議論を願えればと考えております。
 ちなみに、現在の制度について若干触れますと、公訴を提起し、公判に立ち会って主張・立証といった訴訟活動を行って公訴を維持する役割を担っているのは、原則として検察官です。
 ただ、現在の制度でも例外があり、それがいわゆる付審判手続でございまして、そこでは、裁判所の付審判決定によって、公訴の提起があったものとみなされ、その後の公訴の維持も裁判所が指定した弁護士が行うこととされているところでありますので、参考として、これらの関連条文を併せてここに記載しているところであります。
 最後になりますが、第3は、「3 検察審査会の組織、権限、手続等の在り方」であります。
 審議会意見でも指摘されているところでありますが、一定の議決に法的拘束力が付与されるのに応じまして、起訴される側の被疑者に対する適正手続の保障のためにも、検察審査会の審査機能をより一層充実させる必要があると考えられます。
 このような観点から、検察審査会の組織、権限、手続等の在り方について御議論願いたいと思っております。
 これに関連して御紹介をいたしますと、審議会の議論の過程では、いわゆるリーガル・アドバイザー、法的な問題について検察審査会に助言をするものとして位置付けられていると思いますが、そういうリーガル・アドバイザーを検察審査会に置くことの当否、あるいは、検察官の出席説明を必要的なものとすることの当否などが議論の対象となったところであります。
 以上が資料の御説明でありまして、かつ、事務局といたしまして、大きな論点として当面このようなものが考えられるのではないかというところでありますが、最初に申し上げましたように、まず、最初の段階としては、これらの論点についての御議論をお願いしたいというふうに考えております。
 そのような当面の議論あるいは検討のスケジュールでございますが、推進計画に関する御説明の際に申し上げましたとおり、平成15年の夏ごろには、本検討会における検討を終えていただければと考えておりますので、そのようなことも踏まえまして、本年の秋ごろまでに、当面の論点について一通りの御議論をいただくこととするのがよいのではないかというふうに考えております。
 本検討会における議論の参考ともしていただくために、その間に法曹三者を始めとする諸団体からのヒアリングも考えたいと思っているところであります。
 さらに、当面の議論の順序でございますが、どこからというところはないかと思いますが、既存の制度であり、委員の皆様におかれましても、あるいは国民一般の皆様におかれましても、イメージをつかみやすいと思われる検察審査会制度、ペーパーのサブタイトルで申し上げますと、公訴提起の在り方の議論からスタートしていただいて、次いで、それと同様に国民の司法参加の制度である裁判員制度に関する議論、そして、裁判員が関与する事件では、必須の前提となるべき刑事裁判の充実・迅速化に関する議論という順序とするのはいかがであろうかと考えているところであります。
 こうして、本年秋ごろまでに大きな論点に関する一通りの議論などをしていただいた後に、次の段階として、より細かな論点を含めた議論に進むこととするのがよいのではないかと考えているところであります。
 長くなりましたが、以上でございます。

□ ありがとうございました。少し長いので、要約しますと、我々の検討課題は、大きな塊として三つあるということです。
 一つは、公判の充実・迅速化、もう一つは、裁判員制度、そして、もう一つは、公訴提起の在り方、この三つがある。
 スケジュール的には、来年の夏までに検討を終えるのが適切だということですが、その場合に、まず大きなところをひとあたり議論をして、それを踏まえて更に内容を詰めていくこととし、その第1ラウンドを今年の秋ごろまでと設定したらどうかというのが事務局としてのお考えのようです。
 その秋までの間に、どういう順序でやるかというのが、更に具体的な話になるわけですが、これも今の御説明ですと、まず、比較的入っていきやすい公訴提起の在り方と言いますか、検察審査会の一定の議決に拘束力を与えるという問題を議論し、次に、国民の司法参加、裁判員制度の問題をやって、最後に、より一般的な問題である公判の充実・迅速化の問題を議論する。こういう順序でどうかという御提案というか、たたき台のようなものだと思うのですが、そういう案を示されたわけです。
 今の説明をも踏まえまして、これから我々として何についてどういう順序でやっていくのかということを御協議いただきたいと思います。
 今の説明についての御質問でも結構ですので、どなたからでも御発言願います。

○ ただいま、御説明を伺っていまして、論点や検討状況ですが、私はこれでおおむねいいと思うんですが、1点だけ少しお尋ねというか、確認をしておきたい点があります。
 本日配布された「司法制度改革推進計画」の閣議決定の7ページを見ていただきたいのと、前回配布された司法制度改革審議会の意見書の42ページを見ていただきたい。この両方を対比しながら議論するというのが実践的であろうと思うわけであります。
 何を申したいかと申しますと、推進計画の7ページの「1 刑事裁判の充実・迅速化」の欄をざっと見て、今渡された事務局の予定されたペーパーを見ますと、いわゆる公的弁護制度に関連する記載が、論点の資料から抜けているんではないかということを感じるんです。それは、意見書の方でも同様でございまして、42ページで四角で囲まれていて、特に重要だということで、そうなっていると思うんですけれども、その中には公的弁護の制度のことも書かれているのに、これが論点の資料では抜けているということであります。
 前回申しましたように、私どもの検討会と、別に行われる公的弁護制度検討会は、密接に関連しているわけでありまして、私は、前回も申し上げたと思いますが、何でこれが二つに分かれているのかが、ついに理解できないわけでありますけれども、いずれにせよ、両検討会における検討は、一体として、座長のお話にあったと思いますが、有機的関連をよく確保しつつなされるべきではないかと、こう思うわけなんです。
 実務法曹の方には申し訳ないんですが、一般の方もいらっしゃるので、平たく若干補足させていただきますと、訴訟の迅速化のために、争点整理いたしましょうと、あるいは、訴訟指揮等もきちんとやりましょうというのは、確かにそのとおりなんですが、実は、実務的に申しますと、これらの手段、方法というのは、弁護人の方に法廷に来ていただいて、裁判所の指示に一応従っていただくと、これが大前提になっているんです。
 一般の方々は、法曹三者が常に法廷に来て、裁判所の指揮に常に従っているとお考えになるかもしれないんですけれども、あらかじめ申しますけれども、弁護人の方を非難しているわけではございません、それぞれのお立場や御事情があろうかと思うんですが、一部の事件では、いろんな理由からなかなか御協力をいただけないという事態があることもまた事実なんです。
 現行制度の下では、このような事態を、当事者の努力と言いますか、心構えみたいなもので改善することには事実上限界があるということから、こういう論点設定がなされているんだと思うんです。
 したがいまして、今、申したのは一部の特殊な例かもしれませんけれども、そういう事例に関するきちんとした制度設計というのが必要なわけでございまして、その意味から、充実・迅速化の中で、閣議決定もあり、意見書にもある事項を落とすというのはいかがなものかと、これは若干御検討いただければと思う次第です。
 以上です。

□ さっきの説明についての御質問も含まれているわけですね。

○ はい。

□ それでは、まず説明の補充からしていただけますか。

● 刑事裁判の充実・迅速化を図るための方策の一つとして、公的弁護制度を整備する必要があるということは御指摘のとおりでありまして、今も御指摘がございましたけれども、そのことは、審議会の意見におきましても、連日的開廷による充実かつ集中した審理を実現するために、公的弁護制度の整備等によって、弁護人が個々の刑事事件に専従できるような体制を確立すべきであるとされているところであります。
 ただ、具体的な内容として、どのような公的弁護制度を整備するかということにつきましては、基本的には公的弁護制度検討会において議論していただくということになると考えられますが、本日お配りした資料は、公的弁護検討会とは一応は別である本検討会の当面の論点ということでございますので、あえて論点として公的弁護制度の整備というものは挙げなかったというところであります。
 ただ、もちろん先にも述べましたように、公的弁護制度の整備というのは、刑事裁判の充実・迅速化のためにも重要なものですので、本検討会における議論の際には、公的弁護制度検討会における検討状況にも十分留意していただく必要があることは御指摘のとおりだと思っておりますし、逆に、公的弁護制度検討会における検討の際にも、本検討会における、充実・迅速化を図るための他の方策に関する検討状況をも併せて考慮した御議論をいただくのが必要であろうと思っておるところです。その点は、前回の本検討会におきまして、事務局長がごあいさつの中で申し上げたとおりでございますし、公的弁護制度検討会の第1回においても、座長がごあいさつの中で申し上げられたとおりだと思っておりまして、その関連性と言いますか、必要性を否定するという考えでは全くございません。

□ 今の説明を踏まえて、御意見がございましたらどうぞ。

○ 今、○○委員のおっしゃった具体的な弁護活動に関わる事柄も、実質的には、例えば、訴訟指揮の実効性を担保する具体的措置とか、あるいは、新たな準備手続の設計に密接に関連するでしょう。そういう設計をする場合には、当然、関与者である弁護士さんのみならず、検察官、裁判官それぞれの活動の現状、それらがどうあるべきかというのが当然前提になって制度設計の議論をすることになると思いますので、今、○○委員がおっしゃったような論点については、公的弁護の設計とは別でありますけれども、むしろこちらの検討会における議論の中に自然に入ってくる事柄ではないかと思います。

○ 今のことに直接関連するというよりも、議論の進め方について質問させていただいてもよろしいでしょうか。

□ はい、どうぞ。

○ 今日、論点として提出していただいた内容や、公訴提起の在り方から入って、国民の参加制度、充実・迅速化にいくという御提案については、私は賛同いたします。
 と申しますのは、論点に関しましては、やはり制度設計上非常に重要なものが一応マクロに漏れなく入っていると思うからです。
 進め方につきましては、まずは検察審査会という具体的に現にあるものについて議論していくということが、私のような、言わば現状をある程度知った上でこれからの制度を考えていかなければいけない立場の者にはありがたいと思っています。
 ただ、そのときの進め方なんですけれども、今の御議論とも関係するんですが、後で概要として数字は出てくるようなんですが、例えば、現状で裁判に掛かる年数ですとか、あるいは、先ほどおっしゃったように、時間的な要因及び今御指摘のような検事、弁護士の方が法廷でそれなりに裁判所の指示に従ってやっていらっしゃるというふうに私なども思いがちなんですが、現状は、どうしてもいろいろな事情で重い事件ほど長引いていたりというようなことも承知しておりますので、そうであれば、それをどういうふうに改善したらいいのかということについては、やはりある程度の事例の分析とか、そういうことが方法としては必要でしょう。
 あるいは論点を明らかにしていくときの議論の手法なんですが、おそらく事務局の方が更に細かい論点とか、現行の制度をどう変えていったらどういうような可能性があるか、あるいは問題点があるかというようなことをお出しいただけれるのかもしれないんですけれども、併せてそういう法律的な議論だけではなくて、実際、特に検察審査会などに参加された方の経験だとか、そういったものも役に立つかもしれないということで、議論を進めるときに、どのぐらい具体的な事例とか、あるいは、今までの御経験ある方の声が、限られた時間の中で反映できるかどうかです。希望としては、私は大いに希望するんですが、事務局の運営案というんでしょうか、その中にはどのぐらいの具体性を想定されているか、私の希望は限りなく具体的でいいとは思っておりますけれども、いかがなものでしょうか。

□ 司法制度改革審議会の審議の過程でも、入手可能な資料をできる限り入手し、これは審議会の事務局で準備したものもあれば、関係の諸機関、法曹三者が中心ですけれども、それ以外のところからも御協力いただいて、提出していただいています。
 その中には、今、触れられました審査会の経験者の声を分析したものも、確か日弁連の方から提示されていたように記憶しますが、そういうものも踏まえながら議論をした。本検討会よりは、もっと非法律家が多い会議体だったわけですけれども、それらの資料に基づいてかなりの議論をしたつもりです。そういう資料も既に存在しますので、必要でしたら、もう一度整理をして、各委員の許に届けてもらって、それを勉強した上で議論に臨むというのがまず最初かなという感じがします。
 それに、本検討会として議論をする時間は非常に限られていますので、これから何か新たに調査するというのは、かなり難しいのではないかと思います。
 事例については、適切な事例を取り上げることができれば具体性があっていいと思います。その可能性について検討させていただきたいと思いますし、事務局の方でも考えていただきたいと思うのですが、ただ一つ懸念するのは、具体的な事例というのは、一つひとつ個性があり、非常に特殊な事情があるかもしれないということです。したがって、取り上げ方によっては、特殊な事情に目を奪われてしまって、一般的な制度の改革の話とずれてくるおそれがあるようにも思いますので、その辺も慎重に考えながら、御趣旨をできるだけ活かせるような形で運営をさせていただければと思うのですけれども。

○ 私の方から申し上げたいのは、限られた時間、限られた回数の中で、ある一定の時間を切った中で議論をしていくことになりますので、例えば、私が座長からも御紹介いただき、事務局からも御紹介いただいて、やはりこの会の事前に、委員として私なりにもちろん勉強させていただいて、できる限り、会議のときには、一体何と何が原案としては成り立って、そこでどういうようなところが、本制度になるときにぎりぎりに詰めなければいけないかというところに議論の焦点を絞って進めていただいた方がいいかなと思います。
 ですから、私のような立場の者は、できる限り検討会本番以外のところで粛々と勉強させていただきますけれども、一つの論点についても多様な視点があり得る。そのときに、私が勉強して余り追いつくものでもないと思いますので、なるべく国民一般の視点というようなもので、こういうところが気になるというところは積極的に言わせていただきますけれども、具体的な制度設計をやっていくときというのは、どうしてもぎりぎりのところを一つ出していただき、やはり国民に開かれていくときには、こういうところは配慮すべきだというところにも、進め方の上で限りなく視野を広げていただければと思います。これはお願いです。

□ もちろん、今後個々の論点につき検討していくときに、何の手がかりもなくどうぞ自由に議論してくださいということでは、非常に効率が悪いと思います。ですから、もう少し論点を細分化する、あるいは、審議会の議事録を読んでいただくだけでも、かなり論点が出ていると思うのですけれども、そういうものをも踏まえながら、もう少し細分化した議論の項目を立てささせていただいて、それに基づいて議論していくというのが効率的かもしれません。その辺も検討させていただきます。
 もう一つ、本検討会と公的弁護制度検討会の二つをなぜ区別しているのか、二つの関係はどうなのかという点は、当初からいろいろ議論があったところですが、私なりに整理をいたしますと、確かに公判の充実・迅速化を図るためには弁護体制をきちんと整備するということは非常に重要で不可欠なことです。それは、審議会の意見書でも述べているとおりです。
 その際、私選弁護についても、例えば、弁護士事務所の法人化等を見据えて、体制を整備するということも必要となりますが、それだけでは恐らく不十分ですので、やはり公的な弁護体制をきちんと整備することが必要になる。そして、それは、起訴前の被疑者段階の弁護体制と一貫したものとして考えるべきだろう。そういう意味では、本検討会における論点と密接不可分の関係に立つわけです。
 ただ、他方で、被疑者の公的弁護体制の整備ということは、それだけにとどまらない広がりと、それ自体としての意義をも持つ問題であるわけでして、その意味で、公的弁護体制の問題だけを取り上げて、別途検討するというのは、それなりに理由があることではないかと思うのです。
 無論、この二つは、○○委員が御指摘のとおり、密接に関連していますから、お互いの検討状況を常に意識しながら議論しないといけないことは確かで、これは、最初の回にも申し上げたとおりです。
 実際、幸いにも、お一人を除いて二つの検討会の委員は共通していますし、一方の検討会だけの委員である方も、それぞれ他方の検討会を常に傍聴していただけるようですので、お互いにどういう検討状況になっているかということを分かって議論を進められると思うのです。
 そういうことでよろしいでしょうか。

○ 基本的に了解いたしますが、冒頭申しましたように、私は、やはり両方は一体としてやられるべきであるという意見を持っていますので、それを分けたことによるマイナス面をできるだけ減殺するようにお願いしたいと思います。
 というのは、公的弁護の論点とか、順序をまだ決めていない段階で、こちらの検討会が動き出しているものですから、何となく居心地が悪い感じがしておりますので、そこは卓越した座長がおられますので、そこら辺りをうまく整理して、両者が有機的関連を常に保持し得るように進行していただきたいと、これはお願いでございます。

□ その辺は十分配慮させていただきたいと思います。

○ 私も今後、有機的関連に配慮しつつ発言するつもりでおります。
 さっきの○○委員の関係で、多様な視点から議論するべきではないかということで、今日は、意見というほどではありませんけれども、提出させていただいたペーパーに基づいて述べさせていただきます。
 取り分け裁判員制度というものは、恐らくは今回の司法改革の課題の中で、最も国民に影響を与え、また国民の協力なしには成り立たない制度の一つであろうというふうに思います。
 そのこともあって、審議会の意見はもっと大きな視点から、私が繰り返すまでもありませんけれども、法曹三者だけで決められるようなことがあってはならないということを重ねて述べております。
 そこで、いろいろ時間的な制約があるということも十分承知をした上でのお願いですけれども、一つは国民の意見をどのように受信して、どのように発信するか、また国民に戻していくかというようなことを十分議論していく必要があるだろう。
 先ほど、幸いにして、事務局の方から、寄せられた声について御配慮いただけるということもありましたけれども、さらに、ここでの議論が時を追って国民にきちんと伝えられ、また時を追って、こちらの議論にふさわしい形ではね返ってくるというような仕組みを取っていただけたらと思います。
 これも私の思いつきですが、受信の仕方としては、意見を受け付けると、先ほど事務局からお話がありました。その他に、パブリックコメントですとか、場合によっては審議会がなさったような公聴会なども、制限はあるかもしれませんけれども、やってみたらどうかという気がします。
 もう一つは、隣接の諸科学、あるいは、ほかの分野で国民参加が実現している分野の経験というのを、やはり十分学ぶ必要があるだろうということです。
 先ほど座長がおっしゃったように、審議会で非常に広範で、しかも、いろいろな点からの資料を収集されて十分に議論を尽くされたということは、私も傍聴させていただきながら感じておりました。
 ただ、今度、例えば、裁判官と裁判員がどうコミュニケーションを取ることがいいのか、どういう仕組みが必要なのかというようなこととか、意見書で述べている裁判員の意見が評決に影響を与える仕組みはどういう仕組みなのかというのは、むしろ法律のフィールドよりは、ほかの専門科学、あるいは、先行している他領域での実績などに学ぶところが多いのではないかというふうに思うんです。
 例えば、社会心理学ですとか、言語の心理学、行政における住民参加の実績、これは○○委員が御専門でいらっしゃいますので、非常に貴重なお話も十分伺えるのではないかと思います。もちろん、検審の実績も。
 今、アメリカでも陪審制度の改革が全米で進んでおります。この改革の視点は、正に審議会の言葉を借りれば、陪審員の主体的、実質的関与をどう保障するか、どう確保し伸ばしていくかという視点からの改革ですので、ここに学ぶことも相当あるだろうと思います。
 もう一つ、充実・迅速の点でも、先ほど座長がおっしゃったように、個々のケースの特殊性に目を奪われるのではなくて、制度設計に役立つケース研究というものは重要ではないかというふうに思うんです。
 その意味で、これは進行中の事件ではありますけれども、今、埼玉で非常に充実・迅速化に配慮した三者の協力による裁判が現に進行しております。聞くところによると、今月中に弁護側立証が終わるやに聞いております。
 何がこういう裁判を可能にしたかということは、まさに生きた事例として、ここでの議論に大いに役立つのではないかと思うわけです。
 そういった、隣接諸科学ですとか、他の領域における経験というものをどのように集めるかというのは、また時間的な制約との関係でも問題はあるとは思いますけれども、例えば、先ほど法曹三者とか、諸団体からのヒアリングを予定しておられるということですが、言わばこれは今までいろいろやってきたやり方の踏襲だと思うんです。この検討会では、やはり新しい切り口でのヒアリングもやってみるべきではないだろうかと思います。
 もう一つは、ほかの検討会では実例があると聞いていますけれども、時間がなければ、研究者に研究委託をするということも可能ではないかというふうに思います。
 そんな意味で、正に国民が議論を見ていて、法律的な観点だけでは、やはりどうしても距離を感じてしまうというのが今までの例だったと思うので、それ以外の身近な議論が行われていくということが、国民の関心を高める非常に有力な方法だろうと思いますし、また国民からのいいアイデアも集められることになるだろうというふうに思っております。是非、御配慮賜わりたいと思います。

□ 2点あったかと思うのですが、1点目の、国民の皆さんに向けてどう発信し、国民の声をこちらにどう反映させていくかということにつきましては、冒頭に説明があったような方策を、事務局としては実施しようとしているわけです。それに加えて、更に何かという御趣旨かもしれませんが、その点、事務局として何か補足説明がございましたら、どうぞ。

● 最初に、御紹介、御説明いたしましたように、本検討会につきましては、報道機関の方々に傍聴をしていただいているとともに、議事録を公表しており、検討会あるいは事務局側からの発信というのがございまして、それに対して、電子メールや郵便等によって意見をいただいているところでございます。
 加えまして、関係諸団体のヒアリングということも考えたいと思っております。さらには、パブリックコメントというお話がございましたけれども、これにつきましては、事務局では、本検討会での議論を踏まえまして、導入すべき制度についての何らかの案というものを順次作っていきたいというふうに考えておりますけれども、その段階におきましては、当然、その案というのは検討会でお示しするとともに、議事録等と同様に広く発表いたしまして、同様に意見をいただくということを考えております。
 それ以上に公聴会といったようなお話もございましたが、ほかにどういう手段があり得るかということにつきましては、今、御説明いたしましたような手段との関係や、時間的な問題、それらのことも考えまして、今後また慎重に検討していきたいというふうに思っているところでございます。

□ ほかの方の御意見はいかがでしょうか。
 では、当面そういうことにさせていただきたいと思います。
 1点付け加えますと、私の個人的な感想ですけれども、この検討会は、いろんなバックグラウンドを持った委員が、個人の資格で参加して、推進本部の事務局と一緒に議論をし、推進本部が今後お決めになる改革の具体策について参考となる意見を言うという性質のものであり、何かここで決議をして決めていくというものではありませんので、むしろ我々委員の一人ひとりが、国民の皆さんがどういうお考えであるのかということを吸収して、自分の責任で意見を言っていくというのが基本的な在り方だと思うわけです。
 そういう意味では、検討会として公聴会をやるというのは、そぐわない感じが個人的にはするのですけれども、事務局の方で今後その点も含めて検討したいということですので、この段階では、今の御説明の線で、まとめさせていただければと思いますが、よろしいでしょうか。
 もう一点、隣接諸科学の知見等を積極的に活用すべきだという御意見がありましたが、ほかの委員の御意見は、いかがでしょうか。

○ それは、議論の中で出てくることだと思うんです。例えば、取調べなんかも、もう少し供述心理学の成果をうまく生かした方が、もっとうまい調べができるだろうと昔から思っていたわけです。けれども、そういうようなことは、個々の人たちが自分たちで思っていることを踏まえて、ここで議論して、議論が煮詰ってきた段階で、供述心理学の専門家に聞いてみましょうかという話になれば、その人を呼んで聞けばいいことであって、一番の問題は、この場でいかに充実した議論ができるのかと、すべての面はそこに集約されて考えられるべきだというように思います。
 ここでの議論が充実しているけれども、国民の意識から全く離れたところで充実していても意味がないわけです。そういうことがないように配慮しながら、ここでいつも充実した議論をするためには、どういう材料を出せばいいかということをそれぞれの委員が自分なりに考え、検討して、かつ、勉強して、ここで言うということに尽きるんではないかと思っています。

□ ほかの方いかがですか。

○ ○○委員の御発言は、私のような隣接諸科学を専攻とする者には応援歌として承りまして、私が発言させていただくときに、私が持っております知見とか、事例とか、周辺領域のことなど、積極的に御提案させていただくことが意義あることだなと改めて思いました。
 併せて、最近裁判の傍聴をさせていただいたときに感じましたのは、やはり用語が特殊であるということと、文章で読むときは、まあまあ理解できたとしても、裁判所で耳で聞いたときに、一般の国民にはなかなか難しいなと改めて確認したということです。
 あるいは、証人として迎えられたときに、きっと心理的に相当ストレスを感じていらっしゃるんではないかなと想像できたりしました。また、やはり裁判を改めて国民に開かれたものとして見るときに、まさにおっしゃったように、制度を考えていくときに、一般の国民は証拠云々というよりも、きっと心証をすごく気にするだろうというようなことも考えてしまいまして、判断をするときに、当事者としての心理的な側面、あるいは、対象をとらえるときに心理的な面を重視してしまうかもしれない一般の普通の人々の傾向などもあらかじめ想定して、ミスとか、不正とかがないような制度にしなければいけないということも感じました。
 そういう意味で、今の御指摘を受けて、皆さんそれぞれの御専門の中から、今の御発言にもありましたように、ほかの心理学等の知見を援用したいとお考えになっている方がたくさんいらっしゃると思うので、そのような議論が積極的に行われるプロセス、実際に有効な制度というところにお話しができたらなと思った次第です。
 以上です。

□ ほかに御意見はありませんか。

○ 私は法律学者でありますけれども、制度設計の際には、人間行動に関わる隣接諸科学の知見で、検討会の具体的論点に関係するものについてはそれなりの勉強をした上で、それも踏まえて法律技術的な制度設計の議論をするつもりであります。
 確かに、○○委員がおっしゃったように、既に国民の司法参加制度の存在する諸外国には隣接諸科学の多くの研究があり、主要なものは専門家として勉強しておりますので、それも踏まえて議論はしたいと思います。
 先ほど○○委員がおっしゃったように、この検討会は、それぞれのメンバーが各自専門のバックグラウンドを踏まえて勉強もし、発言をする場だと認識しておりますので、法律家であるからといって、隣接諸科学を無視して議論するわけではないつもりでございます。

□ 私なども、委員ほど十分勉強しているとはとても言えませんけれども、それでもそういうことは心掛けてやっているつもりです。
 また、審議会の過程で使った資料なども、かなり外国の研究も踏まえたものとなっていると思うのです。先ほどと一緒ですけれども、まずは、現在ある資料を整理してもらい、それをもう一回勉強して、議論に臨むというのが、最初ではないでしょうか。
 その上で、先ほどの○○委員の御発言のように、議論をしてみて、こういう点を更に明らかにする必要があるといったところが出てきたら、それに関連する資料を集めてもらうとか、あるいは適切な専門家がいればその助言を求めるとかするのがいいのではないかと思います。
 ただ、蛇足ですけれども、関連諸科学と言っても、例えば、欧米諸国などでは、現に陪審制度とか参審制度があって、それを前提にして、それについて実証的な調査をしたり、研究をしたりしてきているのに対して、そのような制度のまだない日本で、それに特化した専門の学問領域というのが十分熟した形で形成されているのかどうかには、疑問もあります。それに、一口に「隣接諸科学」といっても、その範囲はかなり広い。心理学や言語学が例に挙げられていますが、そのほかにも例えば、裁判員の負担ですとかコストですとか、そういったことも含めて考えるとかなり広いと思うのです。
 そういう中で、果たして適切な専門家を得られるかどうかということもありますので、そういうことをも含めて、今後考えさせていただきたいと思います。今の段階ではとりあえず、有用な資料があれば、それを用意してもらい、それを手がかりに勉強するということではないでしょうか。これについては、事務局だけではなくて、日弁連を始め関係の機関からも協力していただけるだろうと思いますし、こちらからお願いしなくても、そういう資料が届けられるかもしれませんが、そういう形で、とりあえずはやらせていただきたいと思います。

○ 私もおっしゃっることは、よくわかりますし、今後の議論の特に前半部分は、裁判員制度の構成を定める上での基本的な考え方を的にして議論をしようということですので、そういう場合には、やはりそういった知見に学ぶことが重要だと思うんです。
 もちろん、それぞれが勉強しなければいけませんが、なかなか困難もあろうということもありまして、できる限りこうしたらどうかという趣旨でございます。
 もう一つは、座長がおっしゃるとおり、研究の始まった時期と量においては、欧米と日本とでは大きな差があることは事実でございますけれども、既に審議会で議論が始まった辺りから、例えば、心理学でも、それから言語心理学、国際法言語学会というのがありまして、その理事も日本の学者が務めている方もおられますので、具体的にそういう研究をしている日本人の方も増えてまいりましたので、将来と言うのかわかりませんが、是非御配慮いただけたらなということで、私も頼まれなくても資料を出すように努力はいたしますけれども、全体としても何かそういうものを吸収する点に御配慮賜われたらというふうに思っております。

□ 御意見として承っておきます。資料の提供につきましては、紙爆弾(笑)のように大量に送られてきますと勉強しにくくなりますので、その点も御配慮いただければと思います。

○ 一つだけ、今のことに関連してなんですが、今、○○委員からアメリカの陪審制度について改革の動きがあるということですけれども、そういうことを知っておくことも大事だと思いますし、特に市民参加の裁判制度ということで、大陸の参審制度なんかについて、いろいろお話を聞く機会があるといいなと思います。
 委員がおいでになっていますから、直接伺ってしまえば話は早いでしょうけれども、出版されているものなんかを読んでも、実際にその国の制度がどこに問題があって、どういうふうに動いているのかよくわからないことが結構あるんです。ですから、その土地でそういう裁判制度を経験した方だとか、あるいは研究者の方で詳しい方とかに細かいところなど、この国で一体何が問題になって、実際に何年か運営してみてどこを直そうとしているのかというような最近の動向みたいなものを聞く機会があったらいいなと思います。

□ 我々は学問研究をやるわけではありませんし、時間の制限もありますので、おっしゃることはごもっともではありますが、個別の国の制度やその実情について、それぞれ専門家を呼んで詳しく話を聞くというのは難しいだろうと思います。
 我々としては、具体的に日本において新たな国民参加の制度を作っていく、そのために必要な事項を検討する過程で、例えば、ここのところは陪審制あるいは参審制を採っている国でどうやっているんだろうかということが問題となったならば、本検討会には、幸いにも専門家が3人もおられますので、適宜教えていただく。
 また、審議会の段階で配られた資料、これは日弁連のものもあれば、最高裁の方で長年調査されたものもありますが、かなり詳しいものが既にありますので、それらを丹念に読めば、かなりのことが分かるはずです。
 その上で、更に分からないところがあれば、事務局の方も手いっぱいだと思うんですけれども、できる範囲で更に調査をしていただくというような形で、進めるということでいかがでしょうか。
 では、今の点はよろしいですか。少し先を急ぎますけれども、ほかに先ほど事務局から説明のあった大体のスケジュールの案について御意見がございますか。大体先ほどの説明のような運びでよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

□ では、そうさせていただきます。

 (3) その他

□ それでは、少し時間が押してきましたけれども、せっかく事務局の方たちが忙しい中、時間をかなり費やして用意してくださった資料が配られていますので、少し御説明をいただきたいと思います。

● 御用意いたしましたのは、統計資料と外国法制に関するものです。基礎的な条文だけでございますが、簡単に御説明したいと思います。
 まず、統計の方でございますが、『法曹時報』の第54巻第2号及び第3号に掲載されました「平成12年における刑事事件の概況(上)・(下)」及び「裁判所データブック2001」という資料に基づきまして、事務局において作成したものでございます。
 議論の参考にしていただければと思いますが、主だったものについて御説明いたします。
 まず、資料3-6でございますが、平成8年から12年までの地方裁判所の通常第一審の終局人員の審理期間、平均開廷回数及び平均開廷間隔に関する統計でありまして、平均審理期間は3.1 月ないし3.2月でございまして、開廷間隔はおおよそ月に1回となっております。
 資料3-7は、合議事件・単独事件別に見たものでございまして、平均審理期間は、単独事件の場合3か月弱程度でありますが、合議事件だと8か月程度ということであります。
 次に、資料3-10でございます。平成8年から12年までの地方裁判所の通常第一審における、自白と否認の別に見た、平均審理期間に関する統計でございまして、やはり否認事件の場合に10か月程度ということで、自白事件よりは期間を要しているということであります。
 資料3-12は、同じく地方裁判所の通常第一審における、自白と否認の別に見た、終局人員1人当たりの平均の取調べ証人数に関する統計でございまして、否認事件の場合、平均3人程度ということになっております。
 続いて、検察審査会関係の統計でございます。
 資料3-15でございますが、平成8年から平成12年の検察審査会の事件の処理状況に関する統計でありまして、少ない年が平成9年で1,200 人、多い年では平成12年の1,880 人となっております。
 一方、既済の欄でありますが、起訴相当・不起訴不当の議決、すなわち、検察官の不起訴処分に対して否定的な判断がなされたものが、少ない年で平成10年の65人、多い年で12年の108 人となってございます。
 資料3-16は、刑法犯の主要罪名別の受理人員でありまして、右側の累計を見ますと、業務上過失致死傷事件、恐らく交通事故の関連だと思われますけれども、それが多いようであります。
 資料3-18は、原不起訴裁定理由別に見た起訴相当・不起訴不当事件の事後措置に関する統計でございます。
 総数のところで全体の起訴率が記載されているほか、起訴猶予、嫌疑不十分等の原不起訴裁定理由別に分けました起訴率が書かれております。
 最後が、資料3-19から以降でございますが、事案複雑等を事由とする長期係属事件に関する統計で、平成12年末現在で、地方裁判所におきまして、5年を超えて係属しているものが45人でございます。10年を超えるものが7人ということであります。
 資料3-21は、事案複雑等を事由として審理期間が3年を超える長期係属事件の罪名別の係属年数を書いたものでございます。
 統計についてはごく簡単ですが、以上でございます。
 次に外国法制でございますが、アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツにおける陪審制あるいは参審制に関する基本的な条文を中心として仮訳したものでございます。
 アルファベットと番号がありますが、AがアメリカのA、EはイングランドのEという具合に付けてございます。
 簡単にアメリカに関する資料から御説明いたします。
 資料のA-1は、U.S.Codeの第28編第121 章「陪審員;陪審員による裁判」の章と、連邦の刑事訴訟規則の第5章「公判手続」のうちの23条と24条、「陪審又は裁判所による審理」及び「公判陪審員」という題の付いた条文の仮訳でございます。
 連邦法典につきましては、陪審員の選任方法等の基本を定めているものを仮訳したもので、御承知のとおり、米国においては、連邦及び各州でそれぞれ別個の法域を形成していますので、あくまでその一例ということで、連邦法を御紹介させていただくものであります。
 簡単に御説明いたしますと、1861条、1862条は、基本的な理念を定めたものであります。1863条以下が具体的な選任手続ということでありますが、1863条(a)を見ていただきますとお分かりになると思いますが、実際の選出の手続は、各連邦地方裁判所ごとに具体的な計画を定めるということになっております。
 1863条の(b)を見ていただきますと、基本的には選挙人名簿等から無作為に選択して、陪審員基本台帳というのをまず作成するということのようです。
 1864条の(a)あるいは1866条の(a)によりますと、陪審員基本台帳から無作為抽出された者に対して、陪審員資格確認書といったような書類を送付して、その回答を受けるということで調査を行いまして、陪審員の資格を確認して、陪審員有資格者名簿を作成するということが規定されております。
 1866条の(a)(b)辺りを御覧いただきますと、陪審員有資格者名簿から陪審員団を割り当てるために必要な人数を無作為抽出して、裁判所への召喚をするという手続が基本となっているようであります。
 陪審員の資格要件等につきましては、基本的な要件に関し、1865条(b)があり、ここに列挙されているもの以外は、基本的には適格であるということになっているということです。
 そのほかに、1863条(b)(6)で職業上の免除事由として、軍人や消防職員、警察職員といったものが挙げられているほか、1866条(c)(1)におきましては、過度の負担又は著しい不便がある場合は、本人の申出に基づいて免除される場合があるというようなことも規定されております。
 そのほか、陪審員に対する謝金に関する1871条や雇用の保護に関する1875条の規定もございます。
 連邦刑事訴訟規則の方ですが、法典の方に規定がない部分を若干補足する趣旨で御紹介するもので、ヴォア・ディールと呼ばれる陪審員候補者への審尋の実施者や理由を示さない忌避の回数、補充陪審員といった点について24条に規定されています。
 A-2は、「アメリカ合衆国各法域における陪審制度」ですが、これは米国の連邦司法省が作成いたしました「State Court Organization 1998 」という資料の中に各州の陪審制度の比較をしたものがございましたので、基本的にそれを翻訳するという方針で作成したものであります。
 3つございまして、一つは「I.陪審員基本名簿の給源となる名簿及び陪審員の資格要件」であります。
 アメリカの場合は、選挙人名簿に、必ずしもすべての成人の住民が登載されているわけではないので、選挙人名簿以外に各種の名簿が用いられているわけで、どのような名簿が使われているかを記載したのが給源という欄であります。
 右側は、資格要件についての各州比較資料です。
 2番目は、「II.陪審の職務の免除、免責及び補償」です。
 3番目は、先ほど連邦刑事訴訟規則のところで出てまいりましたヴォア・ディール、すなわち、陪審員の候補者に対する審尋ないし予備的な質問の実施者、さらには、理由を示さない忌避の配分回数についての比較資料でございます。
 次にEのイギリスですが、同様に、陪審制度についての基本的なところを定めている、1974年陪審員法の仮訳及びその他の関係する法律の抜粋部分の仮訳でございます。各条文の内容は、把握することができた範囲で、法律制定後2000年までの法改正を反映したものでございます。
 基本となります、1974年陪審員法でありますけれども、陪審員の資格要件、選任手続、職務に対する補償といった点について規定されております。
 陪審員の選任手続につきましては、2条以下でその流れが規定されておりますが、時間の関係もありますので、簡単に御紹介しますと、大法官が召喚に関する手続について責任を負って、召喚する候補者の名簿を作成することとされており、それが陪審員候補者名簿ですが、選定の基礎としては、選挙人登録名簿が用いられること、召喚された者は出頭して陪審員としての義務に服さなければならないこと、陪審員候補者名簿から、個別の事件の陪審員が公開の法廷で抽選によって選出されること等が定められております。
 後ろの方の抜粋部分は御覧いただければと思いますが、その中では「III .1988年刑事司法法」で、アメリカとは違いまして、イギリスにおきましては、理由を示さない忌避という制度は廃止されているところです。
 次は、フランスですが、資料のF-1は、少年事件は別にいたしまして、成人の刑事裁判につきまして、管轄裁判所ごとに裁判体の構成、審級関係等を一覧にしたもので、やや複雑なので、こちらで若干まとめたものでございます。黒い服の人が職業裁判官、白い服を着ている人が参審員です。ただ、この資料につきましては、図式化の都合上、一部例外的な場合については記載を省略している点がございますので、御了承いただければと思います。
 これは、ドイツのG-1も同様です。
 この資料について簡単に御説明いたしますと、フランスでは、比較的軽い罪については、違警罪裁判所又は軽罪裁判所で、職業裁判官が審理することになっております。
 参審員が関与するのは、重罪法院における審理のみということでございまして、基本的には3名の職業裁判官と、参審員9名の合議体が第一審の審理を行うこととされています。
 ただ、テロ事件など一部の犯罪については、特別重罪法院が審理することとされており、ここでは7名の職業裁判官による審理が行われています。
 上訴の関係につきましては、図に書いてあるとおりですので、ここでは省略させていただきます。
 資料のF-2が、フランスの参審制に関する法律の規定の抜粋の仮訳ということで、主として刑事訴訟法の規定でございまして、陪審員の資格につきましては、254 条以下及び291 条に規定があります。
 合議体の構成については、240 条や296 条等で記載されております。
 陪審員の権限及び評議等につきましては、340 条及び348 条以下に詳細に規定されています。
 最後にドイツに関する資料ですが、2点ございます。
 G-1は、「ドイツにおける刑事裁判権の審級と裁判体の構成(成人)」です。
 第一審の手続につきましては、ドイツでは、軽い罪については、区裁判所において職業裁判官が単独で審理し、中程度の罪については、同じく区裁判所におきまして、職業裁判官の裁判長と2名の参審員から成る3名の合議体が審理するということになっておりまして、これを通常、参審裁判所と呼んでいるということでございます。
 更に重い罪につきましては、地方裁判所の大刑事部が審理することになりまして、ここは、2名又は3名の職業裁判官と2名の参審員から構成されます。
 内乱罪など、ごく一部の重大犯罪に関しては、高等裁判所に相当する上級地方裁判所が第一審の管轄を有しておりまして、ここでは5名の職業裁判官による審理が行われることになっています。
 上訴の関係につきましては、御覧いただければと思います。
 資料のG-2が、参審制に関する法律の規定を抜粋したものの仮訳でありまして、主として裁判所構成法の条文ですが、区裁判所の参審裁判所の管轄については、24条、25条、28条が定めております。
 地方裁判所大刑事部の管轄については、74条等に規定されております。
 参審員の資格につきましては、31条以下に規定があり、参審員の除斥事由については、G-2の10ページになりますが、刑事訴訟法の22条以下の裁判官の除斥事由に関する規定が参審員にも準用されているというところであります。
 その他、合議体の構成、参審員の権限等についての記載がございますが、時間の関係もございますので、詳細は後ほど御覧いただければと思います。
 駆け足で申し訳ございませんが、以上でございます。

□ ありがとうございました。ベーシックなものだけですが、それでも準備はなかなか大変だったと思います。先ほども申しましたが、これ以外に、既にかなりの資料がありますので、そういうものの中で適切なものがあれば、追ってまた補充をさせていただく。無論、これも、段ボールに何杯も届けられたら、皆さんも困ると思いますので、適宜、私の方で事務局と相談しながら、役に立つようなものについては補充させていただきたいと思います。今説明のあった参考資料につきましても、この場で直ぐに質問しろと言われても無理でしょうから、本日は説明を受けただけにとどめ、じっくり勉強した上、またそれぞれの事項についての検討の過程で、御質問があれば出していただくということにさせていただきたいと思います。
 予定した議事はすべてカヴァーしたと思いますので、本日の検討会をこれで閉じたいと思いますが、よろしいですか。

 (4) 次回の予定

□ 次回ですけれども、5月21日午後1時30分からということで、先ほど御相談して御了承いただきましたように、公訴提起の在り方、検察審査会の一定の議決に法的拘束力を与えるという問題を中心に御議論いただければと思います。
 私の不手際で、時間が経ってしまい、申し訳ございません。今後ともよろしくお願いしたいと思います。
 本日は、ありがとうございました。

(以上)