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裁判員制度・刑事検討会(第22回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成15年7月18日(金)14:00~17:20

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第2会議室

3 出席者
(委 員)
池田修、井上正仁、大出良知、酒巻匡、四宮啓、髙井康行、土屋美明、樋口建史、本田守弘(敬称略)
(事務局)
山崎潮事務局長、松川忠晴事務局次長、古口章次長、辻裕教参事官

4 議題
「刑事裁判の充実・迅速化」について

5 配布資料
資料1 裁判員制度及び検察審査会制度についての意見募集の結果概要
資料2 刑事裁判の充実・迅速化について(その2)

6 議事

 議論の概要は、以下のとおりである。

 まず、前回に引き続いて、第19回検討会配布資料1「刑事裁判の充実・迅速化について(その1)」(以下「たたき台その1」という。)に沿って、刑事裁判の充実・迅速化について議論が行われた。

(1) 開示された証拠の目的外使用の禁止等
 たたき台その1の「9 開示された証拠の目的外使用の禁止等」に関し、主として、以下のような意見が述べられた。

・ 訴訟関係人による、開示された証拠の目的外使用は、当然許されず、たたき台その1の9(1)アのような一般的禁止規定を設けることは必要である。そして、これを担保するため、義務違反に対し、イのように過料の制裁を科すことができるとすることも妥当である。しかし、義務違反に対して刑罰を科すことができるものとするウについては、新たに罰則規定を設けることになるのだから、当罰性の有無や保護法益は何かといった観点からの検討が必要である。

・ 保護法益は、開示証拠が目的外使用されることによって、罪証隠滅、関係者のプライバシー侵害等の証拠開示に伴う弊害が拡大されることを防止することや、さらには、捜査、審判に不当な影響が及ぶことを防止し、刑事司法の適正な作用を確保することであろう。
 当罰性の有無は、本検討会で御議論いただきたいが、たたき台の趣旨としては、本検討会で、開示証拠のコピーが暴力団関係者に流出している事例がある等の御指摘があったことを踏まえ、このような罰則をもうける案を掲げたものである。

・ 本規定により、刑事司法の適正な作用の保護とともに、個人のプライバシー保護なども図られるということであり、そうした明白な保護法益があるのであれば、刑罰を科すことも適当である。

・ イの過料とウの刑罰とは重畳的に適用されることもあり得るのか。

・ たたき台の趣旨としては、刑事訴訟法で証人の証言拒絶等に対して過料と刑罰との双方が定められているのと同趣旨である。

・ 名あて人が被告人と弁護人になっているが、検察官が弁護人から開示を受けた証拠を別事件の捜査のために使用するようなことは規制の対象とならないのか。また、開示証拠の写しと区別して、「内容」の目的外使用が禁じられているが、どのような場合を想定しているのか。

・ 検察官は国家公務員であるので、国家公務員法上の守秘義務が課せられており、義務違反には刑事罰が科せられる。また、守秘義務違反に当たらない場合であっても、職務上の必要もないのに、開示された証拠を使用することは職務上の義務違反であり、懲戒処分の対象となる。もっとも、職務上必要であれば、別事件のために開示された証拠を使用することも認められると解される。
 「写し」と区別して「内容」を挙げているのは、例えば、開示された証拠の内容がインターネット上に公開されることがあり得るが、こうした行為も規制されるべきという趣旨である。

・ 開示された証拠の目的外使用を禁止する措置は大変重要であり、これを罰則によって担保することは相当である。自分が提供した情報が目的外に使用されないことに対する信頼感が、安心して捜査に協力してもらうための基本的要件であり、捜査に協力した者の供述が世間に流布するようなことがあれば、当該供述者の協力が得難くなるだけでなく、国民一般からの捜査協力も得難くなる。特に、供述調書のように、高度の個人情報を内容とする文書については、その適正な取扱いを罰則で担保する必要がある。保護法益として、刑事司法の適正な作用の確保が挙げられていたが、刑事司法の究極目的は社会の安全確保であるとの観点から、刑事司法手続の出発点に位置する犯罪捜査が有効に機能することは極めて重要であり、犯罪捜査にとって最も重要な要素である国民の協力の確保を制度的に担保するためにも、このような規定は必要である。

・ 「当該被告事件の審理の準備以外」の目的での使用が禁止されているが、これでは、証人威迫やプライバシー侵害などの弊害のおそれがある場合に限られず、規制の対象が相当広くなる。学術研究のための資料提供も規制の対象となるという趣旨か。また、審理終結後も規制が及ぶのか。

・ たたき台の趣旨としては、研究目的であっても、事件の審理の準備と関係がない場合には目的外使用になる。また、審理終結後でも規制の対象となる。
 訴訟記録を研究目的で使用することもあり得るだろうが、刑訴法47条により、公判廷に現れていない訴訟記録の公開は禁止されている。公判審理中の訴訟記録の閲覧・謄写も弁護人又は被告人に限って認められており、広く一般に対して認められているわけではない。また、裁判確定後の訴訟記録の閲覧については、刑事確定訴訟記録法で定められており、検察官が、犯人の更生や関係者のプライバシー等を考慮しつつ、一定の場合を除いて記録を一般の閲覧に供することになっている。このような現行の刑訴法等の構造に照らすと、開示された証拠を、こうした正式のルートによらずに使用することは、基本的に認められていないと解される。
 証人威迫等の弊害が直接には生じないとしても、証拠が世間に流出することにより、弊害が生じる危険性が出てくるということではないか。

・ 記録の使用により関係者のプライバシー侵害などの弊害が生じるのであれば問題だが、純粋に研究目的で記録を利用・検討することはあり得る。こうしたことまですべて禁止されるとは考え難い。

・ 現在でも、たとえ訴訟進行中であっても研究目的の使用は禁止されていないという趣旨か。

・ 禁止される場合もあるだろうが、一般的には訴訟進行中であっても研究対象として利用可能なのではないか。

・ 弁護人が法的判断について研究者の意見を求めることもある。

・ それは、審理の準備のために専門家の意見を聞くのだから別の話であろう。

・ 研究目的の使用は刑訴法47条ただし書で認められるのではないか。

・ 刑訴法47条ただし書は、判断権者が公開の当否を判断するという構造になっており、一定の使用目的について自動的に公開禁止の対象から外れるという構造にはなっていない。

・ 現在の刑事訴訟法の規定によれば、公判開廷前の記録は刑訴法47条により原則非公開とされ、証拠調べが終了したものについては、同法40条により、弁護人には閲覧・謄写が、被告人には弁護人がいないときに限って閲覧のみが認められている。そして、裁判確定後の記録の閲覧については刑事確定訴訟記録法により定められている。これらを総合すると、要するに、訴訟関係人以外が記録を閲覧する場合に当たっては、記録を保管する裁判所又は検察官の判断を経て、それを閲覧することが認められるという建前になっている。基本的には、それ以外の場合には、開示された証拠を目的外で使用してはならないということである。

・ 昨今、特に個人情報の保護が強調されるようになってきており、個人情報が何らかの目的で提供された場合に、当該個人情報の使用範囲は原則としてその目的に限定されるべきと考えられている。この問題は、個人情報の保護に関連する問題であり、刑事司法の適正確保や証人威迫の防止だけでなく、もっと一般的な保護法益につながる問題なのではないか。

・ 参考人から供述調書を録取した場合を例に挙げると、当該参考人は、刑事手続で使用されることを前提に事情聴取に応じたのであり、研究など目的外に使われることはまったく想定していないはずである。そうしたことを度外視して、何にでも使っていいということにはならないはずである。

・ 個人情報の保護は考慮すべき重要な問題であるが、他方で、刑事裁判については裁判の公開の要請もあり、両者の兼ね合いを図るべき問題ではないか。
 先ほど、検察官が弁護側から開示を受けた証拠については、職務上必要があれば他の事件のために使用することも許されるとの説明があったが、それは、弁護人にとっても同じことなのか。つまり、例えば、共犯事件で各被告人の弁護人同士が打合せをすることがあるが、その打合せのために開示された証拠を使用することは、事件の審理の準備を目的としていると言えるのか。また、刑事事件と同一の社会的事実に基づく民事訴訟のために、当該刑事事件の訴訟で開示を受けた証拠を使用することは、当該被告事件の審理の準備とは言えないとしても、職務上必要があるとして許容されるのか。

・ たたき台の趣旨としては、共犯事件で開示された証拠を、各被告人の弁護人同士の打合せのために使用することは、基本的に目的外使用に当たると思われる。証拠開示の当否の判断は各被告人ごとに弊害の有無を考慮して行われるのであり、被告人相互間で開示証拠がやりとりされることになると、そのような開示ルートがバイパスされることになり相当でない。
 また、開示された証拠を刑事事件と同一の社会事実に基づく民事事件のために使用することは、訴訟記録の利用に関する現在の刑事訴訟法等の構造に照らして許されていないとの考えも有力であり、たたき台の趣旨としては、それも目的外使用に当たると考えている。

・ 実質的にも民事事件での使用が全く許されないというわけではなく、開示を受けた証拠を正規の手続も経ずに、そのまま別事件で使うことは目的外使用に当たるということだろう。正式の手続を取れば、そのような客観的に存在する証拠を民事事件の証拠として提出することは可能なはずである。

・ 民事訴訟法上の文書送付の嘱託手続を経る必要があるということか。そのような手続を経ずに民事訴訟において利用すれば、目的外使用になるということか。

・ 民事手続のための利用が当然に認められるということではなく、証拠を取り寄せる必要性と相当性の要件を満たしていれば認められるということであり、嘱託する側の民事裁判所と嘱託を受ける側の検察官又は刑事裁判所の判断を経る必要があるということであろう。

・ 証拠開示の当否の判断はあくまで証拠開示の枠組みの中だけで判断されるものであり、民事訴訟における文書送付の嘱託手続とは判断の枠組みが異なるのだから、開示証拠をそのまま民事訴訟に利用できるとすると、こうした文書送付嘱託における判断のルートをバイパスすることとなり、相当でないという趣旨である。

・ 公判での証拠調べ後に、メディアがその証拠の内容について報道することは許されるはずである。それと同じように考えると、報道関係者が証拠調べ前の証拠の内容を入手し、これを報道する価値があると判断した場合に、報道することは許されないのか。これは目的外使用に当たるであろうが、それが規制の対象になるのであれば、規制が広すぎないか。

・ 証拠調べ前に入手された証拠の内容は、刑訴法47条の趣旨に照らすと、そもそも現在でも報道することは許されていないと思われる。

・ 報道関係者が何らかの形で入手した証拠の内容を報道の価値があると判断して報道した場合に、処罰していいかどうかというのは、それとは別の問題だろう。

・ 「内容」の線引きは難しい。書証を一言一句書き写したものであれば「写し」と同視して規制すべきだろうが、証拠の概要にすぎないのであれば使用が許される場合もあるのではないか。

・ 「内容」を厳格に解釈すると、共犯事件で弁護人同士で会議を開くことがおよそ不可能になってしまう。「内容」の線引きについては慎重な検討が必要である。

・ 共犯事件で、弊害に配慮して被告人ごとに開示の範囲が異なる場合に、弁護人の間で開示証拠の詳細な内容が交換されると、各被告人について開示範囲を限定した意味がなくなる。どこで線引きするかが問題である。

・ 検察官が、開示する際に、「共犯者間では慎重に扱ってほしい」などと条件を付すこともあり得るのではないか。

・ 共犯者間で、一方が起訴事実を認めており、もう一方が否認している場合には、罪証隠滅や証人威迫などの弊害発生のおそれが被告人ごとに異なってくるので、弁護人間での証拠のやりとりを規制しないと、開示を制限する意味がない。目的外使用禁止の対象となる「内容」は、「写し」と実質的に同じと言えるものに限定されるのではないか。

・ 開示された証拠の目的外使用の禁止について、アのような一般的規定を置くことは意味があると思うが、弁護側が防御目的でいろいろと使用する必要にも配慮して、「内容」の使用までは規制すべきでない。また、審理の準備とは純粋に言えない場合であっても、使用する必要があることもあり得るから、例えば、「事件の審理の準備その他の正当な目的の範囲内で使用しなければならない」など、もう少し余裕を持たせた規定にすべきである。制裁を科すことについては、証人威迫や名誉毀損などの刑罰法規に触れるような実害発生の有無にかかわらず、形式犯として処罰対象とするのは適当でなく、刑罰を科すことには反対である。基本的には法曹倫理の問題として対処すべきことだろう。

・ 被告人が違反することもあるのだから、法曹倫理だけでは対処できず、刑罰を含めた制裁規定を置く必要がある。

・ 開示された証拠を目的の範囲内で使用するのは当然のことであり、これを罰則で担保するのは妥当である。目的外に使用されることによって、他の刑罰法規に触れることがなくとも、捜査に対する協力に支障が生じるのであって、形式犯であるとの指摘は失当である。

・ 刑罰法規に触れない場合で、捜査協力に支障が生じるのはどのような場合が想定されるのか。

・ 被害者や参考人は、自分のプライバシーに関する事項を供述することもあるのだから、そうした調書が外部に流出することを防げないのであれば、被害者・参考人の協力が得られなくなるおそれがある。

・ 例えば、自分の供述調書が暴力団の組長に見られてしまう可能性があれば、目撃者の協力は得られなくなる可能性が強いのだから、一般の人の捜査への協力を確保するためには、開示された証拠の目的外使用禁止を罰則で担保する必要があり、証拠の「写し」の目的外使用が刑事罰の対象となるのは当然と言える。他方、証拠の「内容」については、このままでは証拠の趣旨・骨子・結論まで規制の対象となるおそれがあるので、例えば、「写しと同等の具体的内容」に限って規制の対象とすべきではないか。

・ どこまでを規制の対象とするかは検討会で議論すべきであろう。

・ 純粋に研究目的の場合など、実害発生のおそれのない場合まで一律に処罰の対象とするのは疑問である。

・ 捜査記録や公判記録は、一つの刑事事件について、事実を認定して適正な刑罰権を実現するという目的のためのものであり、本来その限度で使用されるべきものであって、研究目的を含め、それ以外の目的のために当然に用いてよいということにはならないはずである。

・ 流出先が暴力団であれ、研究者であれ、第三者に流出することが、捜査協力者への萎縮効果を及ぼすことに違いはない。

・ 研究者にも、弊害を防止するための配慮は求められようが、一律にすべて禁止するのは妥当でない。

・ その論理からすると、開示証拠だけでなく、すべての証拠が対象になり得るはずだが、たまたま弁護側に開示された証拠について利用できるというのはおかしな議論である。また、個人情報保護の観点からすると、刑事手続の目的のために提供された情報は、その目的に従って正当といえる場合に限って使用が認められるのであり、弁護人に対して必要で相当な範囲の証拠を開示することは正当な使用と言えるが、研究目的のために当然に利用できるというのは論理的に飛躍しており、社会的には認められない議論ではないか。

・ 開示された証拠は、そもそも、捜査のために収集されたものであることを踏まえて議論すべきである。研究者の手に渡る危険があるとの理由で開示の範囲がかえって狭められてしまう危険もあるのだから、そういうことにならないよう、目的外使用の禁止をきっちりと定めておくべきだろう。

・ 目的外使用の禁止が罰則で担保されることにより、証拠開示の裁定において開示が広く認められることになるのではないか。

・ 開示された証拠の目的外使用の禁止は、罰則によらずとも、開示の方法を指定することで担保できるのではないか。また、刑事訴訟の記録が、弊害を生ずることなく、民事訴訟の重要な証拠として用いられることもあるのだから、一律に目的外使用を禁じるのは相当でない。

・ 弁護士倫理で対応できるのであれば問題ないが、現実に対応できていない実例もあるのだから罰則は必要である。また、開示方法の指定だけですべてに対応できるわけでもない。民事訴訟への利用については、現行法上の正規の手続をとれば利用できるようになるのであるから、罰則を設けることを否定する理由とはならない。

・ 開示された証拠の使用目的は本来限定されているのだから、目的外使用の禁止は当然のことであり、これを罰則で担保するかどうかが問題である。保護法益に関しては、捜査への協力確保から更に一歩進んで、刑事手続の出発点に位置する捜査が健全に機能すること自体が守られるべき利益であると言うべきだろう。

・ たたき台その1の項目9(2)の開示された証拠の管理に関し、「他人」には被告人も含まれるという趣旨か。

・ 「他人」には被告人も含まれると考えるが、被告人による検討のために被告人に証拠の写しを渡すことがおよそ禁じられるということではなく、最終的な証拠の管理については弁護人に責任を持ってもらいたいという趣旨である。

・ 開示された証拠の流出という不適切な事態を防止するため、証拠の管理責任の所在を明確にすることは重要であり、法律家である弁護人を管理責任者とするのが適当であろう。

・ 記録管理会社に記録の管理をゆだねることは、「他人」にゆだねることに当たるのか。

・ 記録管理会社と弁護人との契約内容にもよるが、一般論としては、管理会社に管理をゆだねたとしても、最終的な責任は委託者たる弁護人が負うことになると思われるので、問題ないのではないか。

・ たたき台の案は、開示された証拠が外部に流出しないことを担保するために、適切な規定である。

 続いて、配付資料2「刑事裁判の充実・迅速化について(その2)」(以下「たたき台その2」という。)に沿って、刑事裁判の充実・迅速化について議論が行われた。

(2) 連日的開廷の確保等
 たたき台その2の「第2 連日的開廷の確保等」に関し、主として、以下のような意見が述べられた。

・ 連日的開廷の原則を法定することに賛成するが、連日的開廷を実現するための条件整備として、夜間接見を可能としてもらいたい。また、当事者による公判手続の録音を認めること、あるいは、公判終了後に裁判所が公判手続の録音テープを当事者に交付するものとすることも、連日的開廷に対応するためには必要である。さらに、接見の際に、弁護人と被告人が一枚の図面を見ながら打合せができるようにするなど、接見室の設備についても配慮してもらいたい。

・ 夜間接見は、現在でも可能な範囲で対応していると承知している。

・ 監獄法施行規則122条で、「接見ハ執務時間内ニ非サレハ之ヲ許サス」と規定されている。これを改めることを検討してはどうか。

・ すべての公判期日を夕方まで行うのかという問題もあるだろう。早めに切り上げて接見してもらうということも考えられよう。

・ 今でも、審理の重要なところで、打合せのために休廷して裁判所構内で接見してもらうことはある。連日的開廷となっても、打合せの必要があるときは、休廷して接見の時間に充てることは可能だろう。

・ 公判の内容をおさらいする打合せには相当の時間を要するので、接見を充実させることは重要である。

・ 現実問題として、矯正職員の人員が限られている上に、過剰収容という問題もあり、現下の態勢での対応は困難である。

・ 連日的開廷が原則となっても、弁護人が公判手続の録音テープを聞き直す必要はあるのか。

・ 連日的開廷が原則となり、主尋問後直ちに反対尋問に移行することとなっても、証言を他の証拠と突き合わせて検討するために、録音テープが必要となることもある。

・ 米国の弁護士は、公判廷でのメモだけに基づき、証言と他の証拠とを検討して反対尋問の準備をし、連日開廷に対応している。

・ 埼玉で連日的開廷をした事件では、公判ごとに弁護人に録音テープが交付されていたと承知している。

・ 土日の開廷や接見についてはここで検討しないのか。

・ 土日の開廷の問題は、裁判員が出頭しやすい環境の整備という観点によるものであり、連日的開廷とは別の問題であろう。

・ 土日の開廷については、裁判所の執務時間も関係する問題であろう。休日の接見については、現状では、矯正当局と日弁連との協議に基づいて、一定の範囲で行われていると承知している。

・ 土日の開廷は、関係者が多数おり、警備、押送等の必要もあり、難しい。また、裁判員裁判の手続では、準備手続の段階でいつ誰を呼ぶかまで計画を立ててから裁判員を選ぶことになるので、当事者や証人の都合によりあらかじめ公判期日が定まっているはずであり、裁判員が選ばれてから、その都合に合わせて公判期日を設定することは難しいのではないか。

・ 一日だけなら仕事を休める人も多いだろうから、あらかじめ、金曜日と土曜日に期日を入れてしまえば、裁判員として参加できる人が増えるのではないか。裁判員制度の導入により国民に新たな負担を求めながら、官側の執務態勢は今までどおり変わらないのはいかがかとの指摘を受けることがある。

・ 連日的開廷の原則を法定すべきであり、その内容は、現行の刑事訴訟規則197条の2と同様でよいだろう。

・ 連日的開廷の確保のためには、連日的開廷が原則であることを法定することは有効である。同時に、争点整理のための新たな準備手続の創設、公的弁護制度の整備による弁護人が刑事事件に専従できる制度の確立、今般成立した裁判迅速化法により第一審の手続を二年以内のできるだけ短い期間に終結させるよう裁判所及び当事者に責務を課すことのほか、訴訟指揮の実効性を確保する制度などが整備されていくべきである。

・ 連日的開廷のイメージが明確でなく、「的」の意味を聞かれることがある。法律に書く際には、もう少し明確化できないか。

・ 「連日開廷」とすると、必ず毎日開廷すべきこととなり現実的でない。「的」となっているのは、できれば毎日開廷するが、事情によっては間があくことも排除しないという趣旨である。

・ 連日的開廷の原則を法律に定めるとき、裁判員事件と非裁判員事件とで区別する必要があるかどうか。裁判員事件については、原則として連日開廷とすることが分かるような規定にすべきと考えるが、他方、非裁判員事件では、例えば、薬害、医療事故、爆発事故のような、大規模な業務上過失致死傷の事件では、公判が始まってからも時間がかかる可能性があり、双方の事件について、一律に、連日的開廷を規定するのが適当なのかどうか迷っている。

・ 裁判体に裁判員が入るかどうかによって違いが生じてよいと言えるかどうか。刑事事件一般について、連日的開廷が在るべき姿であるというのが審議会意見の趣旨である。

・ 裁判体の違いによって区別するものとすると、非裁判員事件はゆっくり審理してもいいのかということになり、適当でないが、その一方で、同じだとすると、非裁判員事件で連日的開廷が実現できなかった場合に、全体の精神が崩れてしまうことが懸念される。

・ 連日的開廷を実現するための関連諸制度の整備に関して、身柄を拘束されている証人予定者と弁護人との接見の際に、時間制限や立会いなしに接見できるよう配慮してもらいたい。また、被告人の保釈の運用についても検討し直してもらいたい。さらに、公判記録の作成方法について、機械入力の活用も含めて検討してもらいたい。

・ 証人予定者との接見時における立会いの有無が連日的開廷の問題とどう関係するのか、よく分からない。

(3) 訴訟指揮の実効性確保
 たたき台その2の「第3 訴訟指揮の実効性確保」に関し、主として、以下のような意見が述べられた。

ア 国選弁護人の選任について

・ たたき台で、「弁護人が、出頭しないとき」などとあるのは、弁護人が「正当な理由なく」出頭しない場合などという趣旨か。

・ 正当な理由があって弁護人が出頭しないときに、被告人の意思に反して国選弁護人を附すことはできないだろう。

・ 「正当な理由なく」と明記できないのか。

・ 刑訴法289条2項には、「正当な理由なく」と規定されておらず、正当な理由があって弁護人が出頭しないときでも、被告人の同意があれば国選弁護人を選任できるとの解釈もあることから、この規定との関係も含め、更に検討したい。

・ 「出頭しないおそれ」として、どのような場合を想定しているのか。

・ 辞任を示唆する場合や、出頭しないと明言している場合が想定される。

・ このような制度は必要である。裁判員制度の下で、弁護人の不出頭により審理が進まなくなれば、制度が機能しなくなる。正当な理由がある場合でも、被告人の同意があれば弁護人を附してよいだろう。

・ こうした制度がないと、裁判員制度は機能しない。弁護人の不出頭により審理が止まることとなれば、刑事司法に対する国民の信頼にも傷が付いてしまう。

・ 連日的開廷を確保するためには、実際に出頭しないときだけでなく、出頭しないおそれが明確なときにも弁護人を選任できるものとする規定が必要である。

・ 出頭しない「おそれ」というのは漠然としており、出頭しないことが「確実」な場合に弁護人を附せることとしてはどうか。

・ 国選弁護人を附したけれども、それまでの弁護人が出頭した場合には、その弁護人は解任されるわけではなく、弁護人が併存することになるのだから、問題ない。

・ 国選弁護人選任の要件を、出頭しないことが「明らか」な場合に限定してはどうか。

・ 弁護人が不出頭をほのめかした時点で国選弁護人を選任できなければ、当初の弁護人が実際に出頭しなかった場合には期日が空転し、裁判員等に無用の負担をかけるので、相当でない。

・ このような規定は必要だが、現実には、いきなり選任された国選弁護人が対応するのは難しいのではないか。

・ 公的弁護制度の整備により、刑事事件に専従できる弁護人を附すことができるかどうかが問題となる。選任後、その弁護人のために多少の準備期間を置くとしても、その後続けて従事できるのであれば、新しい弁護人を選任する意味があるだろう。

イ 訴訟指揮権に基づく命令の不遵守に対する制裁等について

・ たたき台2(1)アの「出頭命令」とは何か。また、「訴訟関係人」とあるが、被告人は召喚や勾引の対象となるし、検察官個人に対する出頭命令があり得るのか不明であり、結局、対象は弁護人だけということになりはしないか。また、制裁に対する不服申立ては認めない趣旨なのか。

・ 「出頭命令」とは、訴訟指揮権に基づいて裁判所が訴訟関係人に対して公判期日又は公判準備への出頭を命じることを想定している。「訴訟関係人」は一般的用語例と同じであり、被告人、検察官、弁護人その他を指すものである。不服申立てに関しては、過料の制裁を科すということになれば、即時抗告を認めることが考えられる。

・ 出頭命令は、公判期日ごとに発せられることになるのか。

・ 訴訟関係人が出頭しないおそれがあるときなど、必要なときに命令を発することになるのではないか。

・ 訴訟指揮の実効性を担保するために、こうした制裁規定は必要である。

・ 訴訟指揮に従うことは当然であり、これを担保するために制裁規定を置く必要がある。

・ 新しい準備手続の創設や裁判員制度の導入により、審理の在り方をめぐる紛議は相当回避できると予想される。また、弁護士会においても、規範性を持った新しい倫理規程を策定中であるほか、懲戒制度を整備した弁護士法の改正もなされていることなどから、制裁規定によるのではなく、新しい制度と新しい法曹倫理にゆだねるべきと考える。

・ 訴訟指揮に従うべきであることを前提とすると、従わない者に対して制裁を科す規定を置いてはならない理由があるのか。

・ 弁護士会で特別に倫理に関する規程を置いているので、そちらにゆだねるべきである。

・ 現に、弁護人の公判期日不出頭や重複尋問が問題となる事例があり、新しい制度や弁護士倫理の見直しによってこうした事例がなくなる保障はないのだから、制裁規定は必要である。

・ 日弁連の倫理規程は、一業界団体が制定したものに過ぎず、民主的正当性がないのだから、法律で制裁規定を設けるかどうかの議論をするに当たり、日弁連の倫理規程があるから必要ないという議論は相当でない。また、倫理規程は弁護士の身分の得喪にかかわるものであり、すべてのことを倫理規程でまかなうことになると、かえって問題である。倫理規程で定めるべきことと法律で定めるべきこととは、きちんと区別すべきである。

・ 被告人の命令不遵守に対しては倫理規程が及ばないので、法律で制裁規定を設ける必要がある。

・ 裁判官の訴訟指揮が訴訟関係人の尋問を不当に制限するものであった場合には、訴訟手続上の法令違反の問題になり得るだろう。

・ 裁判所による処置請求に関し、「適当の処置」とはどのようなものが想定されるのか。

・ 刑事訴訟規則303条の規定にならったものであり、「適当の処置」には、弁護士については弁護士法上の懲戒処分、検察官については国家公務員法上の懲戒処分が入る。それ以外に注意処分のようなものがあり得るのかについては、更に検討したい。

・ 「適当な処置」を採ることを請求された弁護士会等が、懲戒処分等をしないと判断する余地があるのであれば問題はなく、妥当な規定である。

(4) 次回以降の予定
 次回(7月29日)は、引き続き、刑事裁判の充実・迅速化に関する検討を行う予定である。

(以上)