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裁判員制度・刑事検討会(第27回) 議事録

(司法制度改革推進本部事務局)



1 日時
平成15年9月25日(木)13:30~18:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 池田修、井上正仁、大出良知、酒巻匡、四宮啓、髙井康行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局) 古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
「刑事裁判の充実・迅速化」「公訴提起の在り方」について

5 議事

○井上座長 それでは、所定の時刻ですので、第27回の裁判員制度・刑事検討会を開会させていただきます。
 前回に引き続いての連日的な会議になりますが、よろしくお願いします。
 早速、中身の議論に入っていくことにしたいと思います。本日は、たたき台「刑事裁判の充実・迅速化について(その2)」に沿って議論をしていくことにしております。まず、第2の「1 連日的開廷の原則の法定」というところからになりますが、この点につきましては、これまでの議論で余り御異論のなかったところだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○四宮委員 これは、法定化することに賛成です。前回の繰り返しになりますけれども、意見書も、連日的開廷を法定化することに加えて、これを可能にする関連諸制度の整備ということを言っておりますので、繰り返しになって恐縮ですけれども、十分な証拠開示を前提とした争点整理、保釈の運用の改善、夜間の接見や休日接見も含めた接見制度の拡充、あるいは、機械入力によるリアルタイム速記など、公判記録の即時交付といった関連諸制度を併せて整備する必要があると思います。

○井上座長 これまでの検討会でも、そのような御意見があったところで、多少の議論をしましたけれども、何かその点について御意見があれば。どうぞ。

○池田委員 私も、ここは前回、法定することは望ましい、ただ、裁判員事件と非裁判員事件で若干運用が違ってくるだろうから、非裁判員事件が、今よりは連日的に開廷ができるにしても、あまり進展しないとすると、裁判員事件についての連日的開廷原則の規定が、非裁判員事件と同じようなもので足りるのかということが疑問になるのではないかということを申し上げました。今回もその気持ちは変わらないので、後は、法文としてどううまく書けるかということだろうと思いますけれども、例えば、今の刑事訴訟規則の、「できる限り、連日開廷し、継続して審理を行わなければならない」ということは、これは全件に適用されるとして、裁判員事件においては、特に連日的開廷を原則とするというような、何かそういうようなことが法文として書けるのかどうかというのを御検討いただきたいと思います。

○井上座長 特に連日的開廷を原則とするという規定を裁判員制度対象事件以外の事件の場合には適用しないとなると、裁判員制度対象事件以外の事件では、連日的開廷の原則が、逆に後退したようなことになりますから、今おっしゃったように、連日的開廷を原則とするという規定がすべての事件に適用されることを前提としつつ、裁判員制度対象事件については、どこまで法文にさらに積極的に書き込めるか、そういう御趣旨ですね。

○池田委員 はい。

○井上座長 ほかに御意見は。それでは、ここはこのくらいでよろしいですか。四宮委員の御意見については、その多くはほかのところでも検討したことですし、ある部分は実際上対応可能かどうかということも含めて、現実的に検討しなければならないということだと思いますので、御意見として承っておくことにしたいと思います。
 次は「第3 訴訟指揮の実効性確保」ということですが、そのうちの「1 国選弁護人の選任」です。この点については御意見いかがでしょうか。

○酒巻委員 たたき台の文言、法文がこのままかどうかは別にして、この趣旨に全面的に賛成です。必要的弁護事件は、弁護人がいないと開廷できないわけですけれども、弁護人の中には、そうした必要的弁護の制度を不適切な形で濫用する、例えば、公判期日の引き延ばしの道具に使う、期日指定等について自らの主張を通すために、不出頭をほのめかすなど、いろいろと期日指定等について、もめごとを生ずる方がいないわけではないと承知しております。もちろん、すべての事件でそうであるというわけではなく、そういう人がいた、事案があったということです。
 そこで、そのような不適切な事態に対処するためには、弁護人が公判期日に現に出頭していないというだけではなくて、出頭しないおそれがあるという場合も、別途国選弁護人を職権で附することができるという制度にしておくことが、そのような、必要的弁護制度の不適正な、濫用的な使用という事態を防止することにもなり、予定された公判期日の空転を避けることができると思いますので、このたたき台が望ましいと思います。不適切な活動をした弁護人の事例があったことは事実でありまして、それには、やはり対処しないといけないと思います。

○四宮委員 前回、刑事訴訟法289条2項の「弁護人が出頭しないとき」というのは、「正当な理由なく弁護人が出頭しないとき」という解釈で行われているようだけれども、そうであれば、「正当な理由なく」という文言を入れたらどうかという話をしました。それに対しては、正当な理由があって出頭しないときでも、被告人の異議がなければ国選弁護人を附することができるという解釈もあり得るというお話もあったのですけれども、現在解釈されている二つのこと、つまり出頭しないときというのは「正当な理由なく」という場合であること、それから、被告人に異議がなければ弁護人を附することができる場合があるということ、そういったものをこの中に盛り込んだらいかがかと、現在そのように解釈されているというのであれば、そのように思いますが。

○井上座長 それは、刑事訴訟法289条2項自体を改めるべきであるという趣旨ですか。

○四宮委員 その解釈の部分を、より条文上明らかにされてはいかがかという提案です。

○本田委員 趣旨が分からなかったんですが、「正当な理由なく」というのを法文に入れるという話なんですか。

○四宮委員 そうです。

○本田委員 例えば、弁護人が急に病気になって長期間の入院を要するような場合、これは恐らく不当な理由で出頭しないというわけではないでしょうけれども、裁判員裁判を考えた場合に、既に裁判員の選任手続が終わって、公判期日が全部決まって、例えば3日なら3日、4日なら4日の審理計画が全部決まっておりますというときに、弁護人がその4日間全く出頭できないというような場合に、弁護人の病気が快復するまで待つために、いったん指定した期日を全部取り消してしまう、ということで、果たして裁判員裁判の制度がうまくいくのか疑問に思います。そういう場合には、国選弁護人あるいは公的弁護人の選任制度によってきちんと対処できるようにしないと、そういった場合も想定した制度を設計しておかないと、全体の制度がうまくいかないのではないかという気がします。そういう意味では、一般的には、弁護人を選任しなくても済むような場合はいいのですけど、そうでない場合を想定しておく必要もあるので、あえて「正当な理由」という文言を入れる必要はないでしょう。

○髙井委員 私も結論的には本田委員がおっしゃったとおりで、「正当な理由なく」というのを入れる必要はないと思っています。正当な理由があろうがなかろうが、裁判員裁判の場合には、こういう措置を講ずる必要が出てくる場合があろうかと思うんですね。ただ、仮にこれを実際問題として考えてみると、ある公判期日に弁護人が出頭しなかったということで国選弁護人を付けたとして、予定どおりにその次の日の公判期日を開けるかというと、実務的には、それはなかなかそれは難しいのだろうなと思います。いきなり何にも知らない弁護人が付いたからといって、わずか半日で記録を読み込んで証人尋問をやりなさいというのは多分無理なので、ここは、仮に制度があったとしても、そういう事態が生じた場合には、審理期間の延伸というのは避けられないかなという感じはします。

○池田委員 私もたたき台でいいのではないかと思っているのですが、今の髙井委員のお話にもあったとおり、国選弁護人の選任が公判期日の直前では、弁護人として十分な準備活動ができないままで新しい人にやれということになり酷だと思いますけれど、少し前から不出頭のおそれが明らかになっているというときもあり得るので、そういうときにはきちんと対処できる必要があるのではないかと思います。そういう意味では、こういうものを規定する方が望ましいのではないかと思います。

○大出委員 今、髙井委員が指摘された弁護活動の準備への支障の問題については、運用に対処をゆだねればいいという趣旨ですか。それとも、何か具体的に規定を入れるというようなことが必要だということですか。

○髙井委員 そういうことを言っているわけではなくて、実際にやってもなかなかうまくはいかないかもしれませんねということです。池田委員がおっしゃったように、前からそういうことが予測できていて、かなり前から一種の補充裁判員みたいな形で弁護人がついているのであれば、それは翌日代わって証人尋問できますけど、そうでもない限り、なかなか難しいかなと思っているということです。

○大出委員 それは、運用で、公判期日を延伸させるというようなことを考えるしか手がないということですか。そこは規定は要らないということですか。

○髙井委員 規定のしようがないでしょう。

○井上座長 実際の対応の問題でしょう。国選弁護人を付けるか、付けないかという問題というよりは。

○池田委員 今と同じことでしょう。現行の刑事訴訟法289条2項についても同じことが起こりますので。

○井上座長 準備なしにやれといっても、できないわけでしょうから。

○辻参事官 先ほど御議論があった点についてですが、特に私選弁護人の場合は、正当な理由があって弁護人が出頭できないというときに、国選弁護人を選任できるかどうかということについては、被告人が自ら依頼した弁護人の弁護を受ける利益との関係について検討が必要ではないかという感がいたします。

○本田委員 確かに、被告人の意思を全く無視してできるかというのが一つ問題だろうとは思いますけれども、被告人としても、国選弁護人を選任することに異議がないということになれば、それでいいでしょう。だから、規定の仕方としては、別に「正当な理由がなく」という文言を入れる必要はないだろうと思います。

○井上座長 このくらいでよろしいですか。
 それでは、次の2の「(1) 命令の不遵守に対する制裁」というところですけれども、これまでの議論では、ア、イいずれについてもたたき台を相当とする御意見があったと思いますが、そのほか、過料等の制裁を設けるのは相当でないという御意見も述べられたところです。この点について、さらに御意見があればお伺いしたいと思いますけれども、いかがですか。

○四宮委員 私、前回も申し上げましたが、この趣旨そのもの、法律家として裁判所の命令に従うということは、法律家の倫理として当然のことであろうと思います。ただ、出頭の問題で言えば、これは前回の繰り返しの部分があって恐縮でございますけれども、準備手続の導入とか裁判員制度が導入されるということから、審理の在り方をめぐる紛議というものは、現在も私が承知している限りではほとんどないと思いますけれども、今後は一層回避できるだろうということが一つあります。
 それから、尋問、陳述制限命令違反のイの方ですけれども、これは、当事者法曹の活動とも密接にかかわるわけで、特に当事者主義をとっている我が国の訴訟形態の下では、例えば、検察官が訴追側の法律家として、弁護士が防御側の法律家として、熱心で精力的な活動を行うことはむしろ意見書も期待しているところなのだろうと思います。特に、関連性とか重複というのは、法廷における訴訟活動の目的や技術とも関連する部分がありますし、必ずしもそういったものが直ちに裁判官に御理解いただけるということはない場合もあるのではないか、もちろん裁判官の理解を得つつ努力するのが法律家としての使命だと思いますけれども、理解が得られなかった場合には、だから制裁ということではないのではないかと思っております。
 私の結論は前回と同じでございますけれども、ア、イともに制裁規定というものは設けずに、検察官、弁護士の法曹倫理というものにゆだねていただきたいという意見でございます。

○酒巻委員 私は、前回同様、命令の不遵守に対する制裁は、不出頭の場合、陳述又は尋問制限違反の場合のいずれについてもたたき台のとおり、このような制裁は必要であると考えています。最初に四宮委員がおっしゃった点は私も全く共感するところで、本来訴訟というのは、当事者あるいは訴訟関係人が裁判所の適切な訴訟指揮の下で活動するのが当然のことで、これは法律家の倫理であるというのはそのとおりだと思いますが、まず、弁護士さんがそう思っても、被告人が言うことを聞かないという場合については、これは法曹倫理の問題ではないので、それをコントロールする必要はあると考えます。
 それから、四宮委員は、当事者主義のことをおっしゃいましたけれども、訴訟進行方法の基本原理である当事者主義とそれが真に適切に実現するための裁判長ないし裁判所の訴訟指揮は、全く矛盾するものではなくて、私の知る限り、比較法的にも、当事者主義の原産地であるイギリスにしろアメリカにしろ、そこで当事者として活動する法律家は、正に当事者主義が活発に、適切に機能するために、裁判長の合理的な訴訟指揮には素直に従うのが当然の前提になっているわけです。訴訟指揮というのは、裁判所の職権によって当事者の活動を押さえつけるものではなく、正にそれをより良く花開かせるための大変重要なものであります。
 本当は、当事者法曹がそう自覚して、制裁がないのが一番なわけですけれども、先ほど言ったように被告人の問題があるのと、それから、最後の最後に、そういう当然の前提に従わない訴訟関係者がいた場合に対処できるということを法文上明らかにすることによって、最後のかなめを置いておくことは必要ではないかと考えます。私の気持ち・趣意は四宮委員と変わらないのですが、制度としてはこういう規定が必要であると思います。

○井上座長 それぞれが自覚して活動していれば、この制裁は発動されないわけですね。四宮委員が最後に言われたのは、イの制裁の前提となる、刑事訴訟法295条のような命令が濫発されるのが心配ということなのでしょうか。

○酒巻委員 不相当な訴訟指揮等に対しては、現行制度の下でも、不服を申し立てる道があるわけでありまして、法律家であれば、そこを使うということが当然であり、それで全体のバランスがとれるのではないかと考える次第です。

○井上座長 当事者主義とはあまり関係がないように思いますね。アメリカなどでも、訴訟指揮に従わない人がいた場合は、御存じのように、法廷侮辱の制裁を科されますから、かなりの強権発動となり、場合によっては身柄拘束までされることがあるわけですね。それに比べれば、このたたき台の案などは、まだ穏やかなもののような感じがするのですけれども。こういうものを置くこと自体が象徴的な意味を持つのでけしからんと、そういうお考えも分からないではないですけれど。

○四宮委員 当事者主義だから、この制裁規定が矛盾すると申し上げているのではなくて、当事者主義の下であるから、両当事者法曹が相当熱心に精力的にやる場合が出てくるだろうと。それはそれぞれの目的と技術に基づいてやっていくだろうという趣旨で、それが裁判所に御理解いただけない場合もあるかもしれないという趣旨で申し上げたので、当事者主義とこういう制度が矛盾するという趣旨ではございません。

○本田委員 私は、たたき台の案のとおり、一定の制裁規定は必要だと考えます。当事者が熱心に精力的に法廷活動をやること自体には何の異論もありませんけれども、裁判長の理解が得られないという場合ではなく、誰が見てもおかしな尋問ということが現にあるわけです。どう考えても不必要な尋問が行われているわけです。それを裁判長が制限しても、それに従わないというような場合が現にあるわけで、これは、第2ラウンドの議論でも同じようなことを申し上げましたので繰り返しませんけれども、そういう場合に対処できる、きちんとした制裁規定を置くことによって、そういった活動も抑制される面も出てくるのではないか。現実にこういう制裁が発動されないのが一番いいわけですけれども、万が一の場合の担保としては、こういうものをちゃんとつくっておく必要があると思います。

○井上座長 ほかに御意見は。よろしいですか。
 次は「(2) 裁判所による処置請求」ということですが、この点でも、これまでの議論では、たたき台の考え方で相当だという御意見のほか、(1)で過料等の制裁は設けるべきではないという御意見を前提として、(2)の処置請求の制度を設けるのも相当ではないという御意見があったところです。この点についてはいかがでしょうか。

○四宮委員 1点だけ改めて確認をしたいのですけれども、たしか前回も事務局の方で御回答があったと思いますが、もう一度だけ確認したいのは、イの方で「速やかに適当と認める処置を採り」というところのくだりですけれども、私の記憶では、事務局の御説明として、そもそも懲戒するかどうかも含めて監督権者が判断することであるという御認識が示されたと記憶しておりますが、それでよろしかったでしょうか。

○辻参事官 適当と認める処置ということでございますので、何が適当と認めるかは処置をする側で御判断いただきたいということだと、たたき台の趣旨としては考えております。

○四宮委員 ありがとうございました。

○髙井委員 私はこの前の(1)も原案どおりでいいと思っているのですが、先ほど座長がおっしゃったように、これはかなり象徴的な規定で、果たしてこれで効き目があるのだろうかと思ってもいるわけです。ですから、そういう前提に立って考えると、併せて(2)の処置請求がないと、抑止力としてあまり機能しないのではないかと思います。そういう意味では、このたたき台のとおりで結構だと思います。

○土屋委員 ちょっと意見を言いにくい部分がありまして、どうしようかと迷っておりました。実は、命令の不遵守に対する(1)の部分について、私は基本的には過料程度の制裁はしようがないかなと思っております。やはりルール違反に対しては、その程度のものはしようがないかなと思うのですが、実際にこの処置請求というところになると、もうちょっと抵抗感が働きます。「請求しなければならない」という形で裁判所が必ず請求しなければいけないとなっているのですが、弁護士会の綱紀懲戒制度というのがここのところ相当熱心に議論されておりまして、私もその議論を傍聴したりもしているのですけれども、本当に熱心に自分たちの懲戒制度はどうあるべきかということを議論していらっしゃいます。ですから、基本的には弁護士会の綱紀懲戒制度による自主的対応がちゃんと機能するようにする必要があるのだろうと思うんです。実際、現在の制度では足りないとは思っていますが、法改正も行われましたし、そういった事情をもうちょっと見ないと、現実的にどう動いていくのかよく分からない部分がまだあると思います。ただ、ここで「請求しなければならない」として、必ず適当な処置を採れというふうにしていくと、ちょっとこれはきついかなという感じを私持っておりまして、そういう請求ができるというぐらいな穏やかな感じの方が、弁護士会の協力を得られやすいのかなというふうに感じたりしています。
 それで、ちょっと発言しようか、どうしようかと思っておりました。

○井上座長 現行の刑事訴訟規則でも処置請求をすることはできるのでしょう。

○酒巻委員 現在の刑訴規則にも、たたき台と同趣旨の規定があり、裁判所が特に必要と認めるときは請求できるということになっています。ですから、土屋委員の御意見は、現在の規則のままのマイルドな規定がよろしいだろうということになるのだと思います。
 私の意見は、今の規定をもう一歩進めるというたたき台の方がよいのではないかということであり、先ほどの髙井委員の意見と私の意見は同じです。

○平良木委員 (1)で命令の不遵守に対する制裁が出てきたので、それに対応するような形に、処置請求についても手直しをしたというように理解すればいいのではないかと思うんです。

○本田委員 ここに「特に必要と認める場合」というものを入れる必要はないのだろうと思います。そうした要件を加えると、裁判所の方で、「特に必要と認める」という基準をどうするかという問題もいろいろ出てくると思います。むしろ、裁判所から請求をしてもらって、後は監督権者の方の適切な処置にゆだねるということでいいのではないかと思います。

○井上座長 ほかに。よろしいですか。
 それでは、次に進ませていただいて、第4ですけれども、「直接主義・口頭主義の実質化」につきましては、御承知のとおり、先日の裁判員制度に関するおさらいの議論の際に、たたき台に沿って、この点をも踏まえて公判手続等に関する議論を行ったところです。したがいまして、ここでは、裁判員制度対象事件以外の事件における直接主義・口頭主義の実質化について、裁判員制度対象事件における議論とは異なる考慮をすべきところがあるかどうか、あるとすれば、それは何か、という角度から御議論をいただければと思います。これまでの議論では、基本的には同じではないかという御議論だったと思いますけれども、何かさらに付け加えることがございましたらおっしゃっていただければと思います。よろしいですか。基本的には裁判員制度のところで議論したことを踏まえて、ということになるのだと思います。
 それでは、次の「第5 即決裁判手続」に入りたいと思います。事務局から前回説明がありましたように、たたき台が修正されておりますので、それを踏まえて、前回の説明についての質問でも結構ですが、御意見をお伺いしたいと思います。項目に沿って、まず「1 即決裁判手続の申立て」についてはいかがでしょうか。

○酒巻委員 一つお尋ねしたいことがございます。修正のあった新しいたたき台では、即決裁判手続に異議がないかどうかを決めなければいけない被告人の権利については、被疑者の段階から公的弁護人の請求権を認め、かつ、公判も必要的弁護にし、さらに量刑も執行猶予の限度という制約が設けられて、被告人の権利保護が手厚くなっているわけです。ところで、即決裁判手続の申立ての要件として、被疑者に弁護人がいるときには、被疑者だけでなくて弁護人にも異議がないかどうか確かめるとされています。これはもとからあった部分ですけれども、新たなたたき台ですと、請求すれば、被疑者の段階でも弁護人が選任される機会が出てくるわけです。そして、弁護人としては、被疑者から、即決裁判手続でよいということや、犯罪事実を認めるという話を聞くことはできるでしょうが、しかし、この被疑者の段階では、まだ事件に関する証拠等は開示されていない。そういう段階で、弁護人が、いわゆるプロとして、即決裁判手続によることに異議がないということを判断できるのかどうかということを、私としては、知りたいわけです。
 プロですから、私も、ある問題について何か考えて、これで行けるのではないかと思っても、いろいろと文献を調べて、いろんなものを読んで、それでやっと踏ん切りがつくということがあるわけで、それと同じように、弁護士さんも、プロであればあるほど、被疑者の話を聞いただけで、この即決裁判手続によることに異議がないと言えるのかどうか、ということです。特に、今のたたき台の内容ですと、弁護人が異議がないと言わないと、検察官は即決裁判手続の申立てをすること自体ができないことにになっているので、その辺りはどうなんだろうか、というのを、弁護士である髙井委員や、四宮委員にお聞きしたいなと思います。

○井上座長 お二人おられるので、どちらの方でも。嫌ならおっしゃらなくても結構ですが(笑)。

○髙井委員 すかっと判断できるものもあるし、すかっと判断できないものもある。すかっと判断できるものについては「異議はありませんよ。」と言えばいいわけだし、判断できないものについては、「即決裁判手続では無理ですね」と言えばいいだけのことですね。ただ、たたき台では、この制度を全体として見ると、罰金以下の刑を除き執行猶予しかできないとなっていますね。ですから、実際この手続にのってくる事件は、ある程度類型化されている事件であるとか、大体結果が想定されるような範囲のものなんですね。筋が複雑で、証拠を見てしっかり検討しないと、この手続にのせていいかどうか判断がつかないというものは、そうないと思うんですね。例えば、この手の事件であれば、一般的に、証拠関係はこれとこれであり、こういう類型の争点がいくつか想定され、その争点について、Aという証拠があったら、これはお手上げだね、というように、そういう類型的な判断をすることができる事件が多いと思うんですね。ですから、それを前提にして、かつ被疑者に聞いて、被疑者はこれは絶対間違いありませんよと言う。また、類型的に争点が想定できますから、この点はどうだと聞くと、この点はこうですね、と被疑者はしっかり答えてくる。それなら、その争点はクリアされているな、と分かると思うのです。
 また、即決裁判手続にのるような事件の場合には、検察官と弁護人が面談をして、証拠関係はどうなっているんですかということを多分聞くと思うんですね、事実上。検察官としては、それは答える義務はないのですが、検察官としても、こういう手続にのせようと思っていれば、当然許される範囲内で証拠関係はこうですねということは説明すると思うんですね。それを聞けば、普通であれば、これは大丈夫だという判断はできますし、そこまでやっても大丈夫だと判断できない事件は、そもそも、この手続になじまないということですから、それは異議を述べることになりますね、というふうに言うだけです。
 ですから、そういう意味では、酒巻委員がおっしゃった懸念というのは、実務家としてみるとそんなに心配してないということですね。

○井上座長 ありがとうございました。四宮委員、何かありますか。

○四宮委員 ちょっとつけ加えますと、たたき台の案では、検察官が相当と思料する事件がこの手続に乗るということですね。今、髙井委員からお話があったように、おのずからその性質は決まってくるだろうと。すかっとする事件と、すかっとしない事件とあるということですけれども、すかっとしないけれども、ちょっと何か資料を見ればすかっとするというのもあると思うんですね。例えば覚せい剤の1回使用、自己使用だけのケースというのは、恐らくこの手続になじむケースの一つだと私は思いますけれども、逮捕されるときには簡易な鑑定をしているわけですね。そういうものは検察官の手元にあると。それから、例えば出入国管理法違反、いわゆるオーバーステイなども、入国記録とビザの問題は恐らく手元に資料としてある。
 そういったものは、まだ被疑者段階ですけれども、この手続で弁護士がついたときに、ちょっと見せてもらえれば、高井委員の言葉で言うすかっとするということになるわけで、弁護人が異議がないかどうかを判断することを実効的にする仕組みではないかと思うんです。それが、仕組みとして、そういうものをつくるのかどうか、また一つ議論になるのだろうと思いますけれども、そういったものまで、もし見せてもらえるということになれば、より一層この手続は使い勝手が良くなると思います。

○井上座長 見ないと判断はつかないということですか。例えばオーバーステイの場合に、本人が、事実はそのとおりであり、即決裁判手続で処理してもらっていいと言っているときでも、弁護人としては、いや、それらの資料を見て確認しないと答えが出せないということですか。

○四宮委員 ということもあるだろうと。

○井上座長 覚せい剤の自己使用などについても同じだということですか。

○四宮委員 ええ。

○井上座長 それは、例えばどういう場合でしょう。例えば覚せい剤の自己使用で、本人も認めているとして、判断がつく場合とつかない場合の仕分けがよく分からないものですから。

○四宮委員 多くの場合は判断がつくと思いますけれども、ただ、今申し上げたような限度で何か弊害があるのだとすれば別ですけれども、こういう仕組みを動かしていくためには、むしろ私はプラスに働くのではないかと思っておりますけれども。

○井上座長 という御意見ですが、どうぞ。

○本田委員 証拠を見ないと判断できないという場合が事案によってないわけではないでしょうけれども、まず、そういった事件を、検察官がこの即決裁判手続にのせるのが相当だとして請求するということはまずないだろうと思います。要するに、たたき台に書いてあるとおりに、事案の性質、公判において取調べを必要とする証拠の内容・量、被疑者が被疑事実を認めていること、こういう要件が全部満たされた上でやるわけですから、そこはあまり心配されるようなことはないのかなという気がします。それでもどうしてもだめだということになれば、それはこの手続によることができない事案なのでしょうけれども、異議があると述べるところまでは行かなくとも、例えば、証拠開示を受ける前の段階では、弁護人としては、意見を留保したいというような場面が想定されるかもしれないですね。起訴後に、証拠開示を受け、その証拠を見て、異議があると言えば、即決裁判手続から外れることになると思いますけれども、証拠開示のない起訴前の段階で、弁護人が意見を留保した場合にも、検察官が即決裁判手続を申し立てることができず、その事件を手続にのせることができない、ということになると、被疑者は事実関係を認めていて、この即決裁判手続でやってもらいたいと言っており、事案自体も即決裁判手続にふさわしい事案の場合であっても、即決裁判手続によることができなくなる。ですから、被疑者の弁護人が積極的に異議があるとまでは言わずに意見を留保するにすぎないという場合には、即決裁判手続の申立てはできることにして、いったん事件を手続にのせ、証拠開示をした上でだめなら、そのときに通常の手続に移るというようなことも十分考えられるのではないかと思います。

○髙井委員 四宮委員の御意見も分からないではないのですが、証拠を見せるということを、運用でやるのでなくて制度化してしまうと、これは検察官としては非常に使い勝手が悪くなって、弁護人はいいかもしれないけれど、検察官の方で慎重になってしまって、結局この制度が活かされなくなると思いますね。ですから、そこは、検察官がその場の運用では、事実上証拠を見せたり説明したりするのは構わないと思いますけど、起訴前の証拠開示を制度としてしまうとなると、かえってこれは難しいという感じはしますね。

○井上座長 ほかの方はいかがですか。

○酒巻委員 私の質問は、証拠については公訴提起後に公式な証拠開示があるという前提であり、証拠を見ていない公訴提起前の段階で、弁護人として、異議の有無を判断できますかという質問だったわけであります。恐らく検察官の方でも適切な事件を選ばれて、即決裁判手続を申し立てられるわけですが、被疑者の弁護人が、何らかの事情でどうしても証拠を見なければ異議がないかどうかはっきり言えないという場合があるかもしれませんから、今、本田委員がおっしゃったように、異議を留保した場合でも、手続は先に進めることができるようにして、起訴後に、公式に証拠開示を受けたときに異議があればある、なければ、そのまま先へ進めていく、そういう制度設計にするのが最も適切ではないかという意見を今持ちましたので申し上げます。

○井上座長 もちろん、はっきり異議があれば、異議があると言って手続にのせないということもできるということですね。

○酒巻委員 当然そうでしょう。意見を留保するだけで手続がとまってしまうのは、どうも、もったいないという感覚であります。

○池田委員 証拠を見なくても異議がないと言える事件もあるだろうということですし、また、見てから異議を述べる機会もあるので、弁護人が意見を留保したときでも申立てはできるという仕組み自体はいいのではないかと思います。
 もう一点、論点が変わりますけど、よろしいですか。

○井上座長 どうぞ。

○池田委員 上訴制限のことも関連するので、今回の新しいたたき台は、弁護人を選ぶ権利、弁護人を依頼する権利を保障しようという趣旨だと思いますし、そこは十分理解できるのですが、そうすると、被疑者段階での公的弁護の範囲が、ここでは広がるということになるわけですね。今日の新聞報道によると、日弁連も、被疑者段階の公的弁護について、最初は大きな事件だけで始め、段階的に広げていこうという案を固められたやに書いてありましたが、即決裁判手続では、小さな事件でもやっていくということになりますが、対応能力は大丈夫なんでしょうか。

○井上座長 それはどなたにお聞きすればよいのですか。別の検討会の話題かなという感じもしないでもないのですが、どなたかお答えになりますか。

○四宮委員 私の知る限りですけれども、今、当番弁護士の件数は、年間5万件を突破しております。一体どのくらいの件数の公的弁護人選任の請求があるかどうか、全く予想はつきませんけれども、現在当番弁護士に全国でそれだけ対応しているということを踏まえて、私は十分対応できると思います。また、弁護士会として正式に何か報告せよということであれば、持ち帰ってそのように申しますけれども。

○井上座長 別の検討会のところで話題にしていただいても結構だと思いますが、少なくとも、公判請求された後の段階になれば、今の国選弁護と同じことですよね。国選弁護については、ほぼ対応できているのではないですか。

○池田委員 今より広がることはないんでしょうか。少し感じているのは、即決裁判手続で罰金刑を宣告することも可能ですから、現行制度では、略式手続で処理されていたような事件についてまで、即決裁判手続の方が利用しやすい、あるいは、こちらの方が体刑まで求められる、ということで、即決裁判手続の方へ移行してきて、現在の国選弁護の事件数よりも増えてくる可能性がないとは言えないのではないかという気もするのですが、それはないですか。

○井上座長 どうですか。

○本田委員 略式手続の対象事件と確かに重なるんですが、略式手続では50万円までの罰金刑しかできないわけですね。50万円以下の罰金刑となる事件は、略式手続でやっていけばいいわけで、それ以上の罰金刑になると、こちらの即決裁判手続でやることになるでしょう。しかし、現在、略式手続でやっているような事件をわざわざ即決裁判手続の方に持ってきてやらなければいけないという必要性は、実際の運用上、ほとんどないと思います。

○井上座長 理論的な可能性としてはあるかもしれないですけど、実際上はほとんどないのではないかという御意見ですが。

○本田委員 略式手続の場合は、公判を開くことなく、記録をそのまま裁判所に上げて、すぐ決定してもらうわけで、手続的には略式手続の方が簡略ですね。

○井上座長 ほかによろしいですか。

○四宮委員 今、1と2は区別していらっしゃらないわけですか。

○井上座長 1の議論だったのですけれど、2に自然に入ってしまったものですから、2についても、何か御意見があればお伺いしたいと思います。

○四宮委員 質問というか、確認ですが、2の(2)の要件なんですけれども「検察官の意見を聴いた上で、相当と認められるとき」とあります。これは、なぜこういう要件を設けたかという理由、つまり具体的にはどんな場合を想定しているのかということも含めて伺えればと思うんですが。

○辻参事官 「検察官の意見」というのは、手続的にどう組むかということにもかかわるのですけれども、要するに、検察官として実際にこの即決裁判手続によるつもりであるのかどうかというところの確認というか、意見というか、基本的にはそういうものを想定しているということであります。
 (1)の方に記載しておりますように、この即決裁判手続によるかどうかを判断する場合に弁護人の助言を求めるという趣旨で、2の制度をもうけようということですので、そういうことがあるかどうか分かりませんけれども、およそ検察官として、即決裁判手続によることを考えていない事件の被疑者から請求があるとすると、それは、ここの仕組みにはのってこない請求になりますので、そこのところは検察官の意見の確認といいますか、聴取が必要であろうと思っているということであります。

○四宮委員 趣旨は分かったのですが、実際に規定がどうなるか、全く別の話なのでしょうけれども、この手続を使うかどうかについての確認はもちろん必要だと思いますが、弁護人を選任するかどうかについての検察官の意見が要件になっているとなるとちょっと問題ではないかと思ったのです。これはある面では、見方によっては、被疑者にとっては、通常公判を受ける権利を放棄するという手続的には重大な決定、判断のための援助を求めるということですので、私としては、もちろんこの手続を検察官が使うということは大前提ですけれども、被疑者から請求があれば選任されるとすべきではないかと思います。

○井上座長 検察官に、弁護人が要らないのではないかというような意見を聴くという、そういう趣旨ではないのでしょう。

○辻参事官 そういう趣旨ではありません。

○井上座長 制度のつくり方として、検察官の方から即決裁判手続で行きたいという申入れみたいなものが最初にあれば、そういう誤解はないので、そこは制度設計というか組み方の問題ですね。いずれにしても、検察官から弁護人は不要だと言われたので、裁判所も、そうか、それなら、弁護人は付けない、ということにはならないのではないですか。

○酒巻委員 私も、先ほどもちょっと触れましたが、新しく設けられた公的弁護人選任請求権の付与というのは賛成でありまして、特に、今、辻参事官からも説明のあった、(2)の趣旨もよく分かりましたので、これは望ましい規定だと思います。特に、被告人は普通は法律の素人でありますから、自分はやったのは間違いないと言っていて、そのとおりであっても、やはりいろいろと不安があって、そのときにプロの弁護士さんに相談するのがお金がなくてできないというのは大変不当なことだろうと思いますので、安心して判断ができるために、求めれば、弁護士さんの援助が受けられるというふうにしておくことは大変良いことであろうと思っております。

○井上座長 ほかに、よろしければ。どうぞ。

○四宮委員 ここは、非常に重要な制度を導入してもらったと思っています。今、酒巻委員がおっしゃったように、大事なのは、被疑者の真摯なといいますか、任意で瑕疵のないといいますか、そういった同意をどう確保するかということなのだろうと思うんですね。さっき池田委員から弁護士の対応能力についての御指摘もありましたけれども、本来は、これは別の検討会の方の議題かもしれませんけれども、公的弁護制度の運用等もかんがみながら、被疑者段階ではなるべくこういった権利保護、手続的な保護というものが拡大していくことを希望しております。

○井上座長 特にさらに御意見がなければ、次に進みたいと思いますけれども、よろしいですか。
 次は、「3 即決裁判手続の決定」ですけれども、6つの項目がありますが、このうち、(5)が新たに追加された部分です。それも含めまして、全体につきまして御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

○酒巻委員 新たに付け加えられた、いわゆる特別の必要的弁護事件にするという点を含めて、全体について、たたき台に賛成です。これも、第一審の即決裁判手続における被告人の権利を十分に保護するためには、必ず法律家である弁護人がいるということは大変望ましいし適切なことだと思いますので、このように必要的弁護にするというのは大変結構だと思います。

○井上座長 ほかにいかがですか、どうぞ。

○四宮委員 また確認ですが、新しい(6)のアですけれども、さっき議論されたことで確認されているように思うのですが、被疑者段階で異議がないと言っていた被疑者、弁護人も、裁判所に移ってから冒頭手続において異議を述べることも可能であるという制度設計と理解してよろしいわけですね。

○井上座長 有罪である旨の陳述をしないという形で、ということですか。

○四宮委員 公判期日に先立ち異議を述べるというのが、どういう場面を想定されているのかちょっと分かりませんが、冒頭手続前に、例えば書面を提出するということがあり得るのか、公判期日前に。

○井上座長 最初、異議のないという書面を出していたのだけれども、後で思い直して、公判期日が開かれる前に異議を新たに申し立ててきたとき、ということでしょうか。

○辻参事官 たたき台の趣旨といたしましては、捜査段階と申しますか、この手続の申立ての段階において異議がないという書面を出していたとしても、その後、公判段階に移って、例えば証拠開示を受けてみたらちょっと問題があるということで、あるいは、そういう理由がなくてもいいと思いますけれども、即決裁判手続によることについて異議があるということであれば、異議を述べることができるという趣旨で考えております。

○四宮委員 ありがとうございました。

○井上座長 ほかに、いかがですか。

○酒巻委員 前もちょっと気になって、机上の空論だとは思い恐縮ですが、今、四宮委員が問題にされたのは公判が始まる前に異議があるという場合ですね。しかし、公判が始まり、即決裁判手続の決定もあったけれども、審理の途中で、やっぱり嫌だということになる場合は、論理的にはあるわけですね。即決裁判手続は、簡易公判手続をモデルにしていると思うのですが、前にも申し上げたとおり、簡易公判手続の決定があって、手続を始めた後、異議を述べる、あるいは、有罪の陳述を撤回するということは、簡易公判手続の場合には想定されていて、同じようなことが、即決裁判手続でも、あり得る。
 そして、簡易公判手続での有罪陳述の撤回等の場合については、いろんな学説がありますが、有罪の陳述というのが手続の前提であり、それが途中で消えた場合は基礎がなくなったのだから、この手続によることはできないと解されています。即決裁判手続についても、理論的には、これと同じように考え、即決裁判手続の決定があって、審理が始まった後に、被告人らが、有罪の陳述を撤回し、あるいは、異議があるということになったときには、必ず即決裁判手続の決定を取り消すということにすべきなのではないかと私は考えている次第です。実際上は、そういう事態はほぼないとは思いますが、もしあった場合には、そのように決定を取り消さないと適当ではないと思います。

○井上座長 原則として、即日判決ということになるけれども、短い時間とはいえ、審理をしている間に、やっぱりやっていない、有罪ではないんだ、と言い出したという場合ですね。

○酒巻委員 ええ。

○井上座長 ないとは言えないですね。

○酒巻委員 ええ。ないとは言えないので、必要的に、即決裁判手続の決定を取り消さないといけないのではないかということです。

○平良木委員 それは、現行の刑訴法291条の3ですか、それと同じような規定をもうければよいのではないですか。

○酒巻委員 ただ、有罪陳述の撤回等があった場合に、刑訴法291条の3の「できない」によるのか、「相当でない」によるのか、という点の解釈については争いがございまして、「相当でない」によるとすると、有罪陳述の撤回等があったときでも、場合によっては、簡易公判手続をそのまま続けてもいいという議論もありますので。

○平良木委員 恐らく実際は全部取り消しているのだと思うんですね。

○井上座長 それが条文上明らかでないということですか。

○酒巻委員 解釈が分かれると言いましたように、明確になっていないので、有罪陳述の撤回などがあったときには、決定が必ず取り消されるようにすべきだということです。すいません、細かい、技術的なことで。

○井上座長 いずれにしろ、条文としてどういう書き方をするにしても、そういう場合には、即決裁判手続の決定を必ず取り消すべきだと、こういう御意見ですね。

○酒巻委員 はい。

○樋口委員 第2ラウンドで申し上げたのですけれども、(6)のアに関連してなのですが、同時に、最後に出てくる上訴制限のところとも関連するのですが、この制度の悪用を企てる者があったとして、その悪用を封ずるためにも必要ではないかということなのですが、(6)のアのケースで、有罪である旨の陳述をしなかった場合には、公訴を棄却するといった仕組みをもうけることによって、もう一度捜査に戻す必要があるのではないかと思います。そもそもこの制度の入り口として、1の(1)で、検察官は、「捜査の結果」とあるわけですが、その捜査の結果が何を意味するかにもよるわけですね。
 ただ、この制度では、比較的単純で、軽微なものを扱うことになるでしょうし、自認事件ですから、自認があって、あと確かな補強証拠がいくつかあれば、「捜査の結果」、つまり捜査を行ったということに多分なるのだろうと思うんですね。ただ、その自認が崩れた場合、有罪の陳述をしなかった場合には、これは捜査を尽くしてなかったということでは全くなくて、証拠の組立てが違ってくることになるのだと思うんです。
 自認が崩れた場合、例えば、財産犯をこういった対象犯罪に据えた場合には、たちまち処分先の捜査も必要となりますし、それから動機の裏をとっておかなければいけませんし、粗暴犯ですと、当日飲酒の状況がどうだったとか、あらゆる否認事件には必要な裏付け捜査が出てくるわけですね。ですから、捜査段階では自認していたのに、公判で有罪陳述をしなかった場合、これがいったん公訴棄却なりで捜査に戻されませんと、必要な裏付け捜査が尽くされないままで公判だということになりますね。ですから即決裁判が行われる手前でやめたといった場合の穴をふさぐ措置が、制度上必要なのではないかと思います。即決裁判が終わってからの穴をふさぐのは上訴制限でいいと思うんですね。穴は二つともふさぐ必要があるのではないかというのが意見でございます。

○井上座長 その点はいかがですか。

○髙井委員 私も本質的には、今の意見と全く同感なんですね。これは前回、科刑制限がないと、とても弁護人としても使い道がないですよということを申し上げて、科刑制限を入れていただいたわけで、そういう点では非常に評価しているわけなんですが、しかし、いずれにしても、これが公判の合理化を目指した制度にとどまっているということは言えると思うんですね。ただ、今回のたたき台でも、ここに書かれているような制度になると、その反射効として、今までのようなち密な捜査ではなく、自白事件として必要な捜査を遂げた段階で起訴してくるというような、そういう事件が多くなる。そういう事件をこの手続にのせてくるという形で、反射的に捜査が合理化されるという効果はあると思うんですが、あくまでもそれは反射効であって、きちんとした捜査の合理化というところを目指した制度にするためには、今、樋口委員がおっしゃっているように、いったん捜査にもう一回戻すという道を開いておかないと捜査の合理化にはつながらないだろうというふうに思っているんですね。
 ただ、いずれにしても、現時点ではここまでしかできないということであれば、それはそれでやむを得ないわけですから、今後も捜査の合理化をするための制度をさらに考えていただきたいと思います。いずれにしても、こういうことを申し上げるのは、捜査の手抜きをするということではなくて、目の前の被疑者は認めているので、認めていることを前提にすれば、今あるこの証拠でも100パーセント大丈夫なんだけれども、もしかしたら公判廷で否認するかもしれない。それで、否認したときのために備え、例えば、想定されるAというの型の否認をした場合に備えてこちらの捜査をする、それとは別に想定されるBという型の否認をした場合に備えて、また、あちらの捜査もする、というように、今の日本の捜査は、十重二十重に捜査をして起訴しているから、勾留も長くなっているし、証拠の分量も多くなっているということなんですね。
 ですから、これを捜査の手抜きというが適当でないのはもちろん、合理化という言葉も、本当は実体をあらわしているわけではなくて、自白事件で将来も自白が維持されるのであれば、必要かつ十分な捜査は既に遂げているわけですよね。だから、そういうふうに公判段階でも自白が維持されるということが分かっている事件については、本来不必要な捜査を回避することのできる制度が必要ではないかということを前回申し上げているわけで、そういう意味では、半歩は前進したけれども、一歩前進したとまでは言えないわけですね、この改善案も。ですから、是非将来的には、捜査の、自認事件は自認事件として必要かつ十分な捜査で起訴ができるというような手続にすることを考えていただきたいと思います。

○池田委員 捜査段階での合理化が必要なことは私も全くそのとおりだと思いますが、この制度で、途中で打ち切って、もう一度その捜査に戻るというのは非常に難しい問題がいろいろと起こってくる。捜査をどういう手続で終わらせるのか、そして、その後、再度身柄拘束が可能になるのかとかいろんな問題が起こってくると思いますので、それは非常に難しいのではないかと思います。
 また、即決裁判手続にのってくる事件は、前回の話も前提とすると、かなり、類型的に、量刑の幅がそれほどない事件であり、また、有罪・無罪ということについても、被疑者が認めていることもあるにしても、証拠物があったり、現行犯逮捕されていたりしていて問題のないような事件がのってくるのではないか、仮に、公判で言い分を変えたからといって、それほど影響を受けないような事件がのってくるのではないか、と思うわけで、そうだとすると、こういう制度で、そういう類型の事件もかなりあることも間違いないので、それについて、公判が中心となる効率化にしてみても、髙井委員も言われたように、捜査もそれを前提としたものになってくるわけで、そこに合理化ができるという点はあるわけですので、それなりの効果はあるのではないかと思います。

○樋口委員 対象犯罪をどうするかというところが大きいと思うのですが、入管法のオーバーステイとか、薬物の使用とか、それは当然対象犯罪に入るのだろうなと思うのですね。ただ、即決裁判手続の制度を新たに導入することの意義を考えると、やはり窃盗も手口がいくつもありますけれども、窃盗がとらえられないとあまり価値がないのではないかとも思われます。
 それから、偶発的なけんかに伴う暴行・傷害、これも件数的に非常に多いわけですが、手口で言えば、窃盗では万引きであり、こういった単純な暴行・傷害であり、それから財産犯では、窃盗以外にも器物損壊も財産犯だと思いますが、それとか寸借詐欺とか無賃乗車とか、結構使えるものがあるのだろうと思うのです。
 そういうものを考えると、自認事件かそうじゃないかによって、やはり財産犯であれば、先ほど申しましたけれども、被疑者の経済状況とか被害金品等の処分先とか使途先等々の捜査も必要になってきますし、それから、粗暴犯であれば、日ごろの被疑者の性格の捜査であるとか、犯行時の状況、飲酒の有無と、多岐にわたる捜査が必要になるわけですね。そのあたり、自認かどうかで、そういった捜査事項の構成が変わってくるということだと思います。

○大出委員 質問なのですが、樋口委員に伺えればと思います。私は、捜査に戻すというのは、直ちに賛成するということではないのですが、一応こういう話になったので確認なのですが、つまり捜査の合理化というようなことにこの手続が資するということになれば、それはそれにこしたことはないと思うので、それがあってこそということもあるのだろうと思うのですが、という場合に、今お考えの捜査の合理化の中には、もし本当に自認して、この手続で最後までいくという話であれば、被疑者の拘束期間の短縮というようなことも射程に入れておられているのですか。

○髙井委員 拘束期間ですか。

○大出委員 身体拘束期間。つまり、自認して、この手続でいけるという判断になったときには、その段階において、拘束期間を何らかの形で切るというようなことをも射程に入れておられるのかどうかというのはどうなんですか。

○樋口委員 そこは直に結び付く話では必ずしもないかなと思います。ただ、身柄事件で勾留がついて、その期間中捜査を行っているわけですね。ですから、必要な捜査を行っているわけですが、その期間というか、身柄事件の場合の勾留の必要性というのはまた別途の問題ですよね。ですから、今お話のところは、どの切り口で単純化して申し上げたらいいのか大変難しいと思うのですが。

○髙井委員 通常はこういうことが言えますね。この制度がない現行制度であれば勾留延長されていた事件が10日でこの手続で起訴されるということはあると思うんですね。だから、事実上、運用として勾留期間が短くなってくる。現在の勾留延長事案が、延長されずに10日で起訴される方向に振れていくという実務上の効果は期待できますよね。

○樋口委員 触発されて一言。

○井上座長 どうぞ。

○樋口委員 これは多分制度論ではなく運用論なんですが、即決裁判手続の制度にのせる時期が非常に重要になると思います。

○髙井委員 それは検察官の問題ですね。

○本田委員 新しい制度をつくるとき、どこまでできるかということは、現行の法体系の中で、どこまで採用できるかという問題も当然視野に入れながら考えていかなければいけないのだろうと思います。この即決裁判手続自体は、事実に争いがなく、比較的情状の軽い定型的な事件について、簡易な手続で処理しようというものであり、現時点において採用可能な、手続の合理化・効率化の方策としてはそれなりに評価できるだろうと考えています。
 ただ、先ほどお話があったように、更なる捜査の合理化ということは、今後の課題として、当然考えていかなければいけないだろうと思います。将来的には極めて重要な課題になるであろうと考えています。むしろ、新たな捜査手法といいますか、捜査の合理化のための新たな捜査手法として、どういうものを導入できるのか、あるいは、有罪答弁制度のようなものをどういう形で採り入れることができるのかということを含めて、将来的には、大きな枠組みの中で検討をしていかなければいけないのだろうと思います。
 というのは、一方で裁判員制度の導入、連日的開廷の実現は近いわけですけれども、訴訟関係人の業務負担が増す部分というのはどんどんあるわけで、その一方で、犯罪の組織化とか複雑化とか、治安情勢の悪化ということが顕著になっており、これが当分の間治まるような状況ではないわけで、そうすると、このような困難な犯罪捜査に対して重要な資源を重点的に投入していかなければいけないわけで、どこかでやっぱり合理化というものが必要になってくる。もうちょっと大きな枠の中で、将来の検討課題として考えていくべきだろうと思います。

○井上座長 髙井委員も樋口委員も、これはこれとして一応評価するけれども、さらに捜査の合理化につながるような制度を検討すべきではないか、こういう御意見ですので、本田委員が今言われたようなまとめというか、そういう整理かなという感じもするのですが。どうぞ。

○髙井委員 それを考えて一言。先ほど、池田委員が、類型化された事件だから、当然否認に変わったからといって、あまり捜査する必要はないのではないかとおっしゃいましたね。ただ、供述調書をとっている立場から言うと、捜査事項は仮に増えないにしても、これが自白事件のままいくという前提で調書をとる場合と、公判廷でもしかしたら否認に変わるかもしれないという前提で調書をとる場合とでは、同じ相手から調書をとるにしても、そのとり方が全然変わってくるわけですね。前者であれば、例えば3枚ぐらいでいいものが、後者だと、6枚とか7枚になったりするわけですね。否認に備えた調書にするためには。
 ですから、自白がそのまま公判で維持されるかどうかということは、単に捜査事項が新たに増えるかどうかということだけではなくて、例えば、被疑者の取調べなど、公判での自白の維持いかんにかかわらず、捜査段階で行っておかなければいけない、必要最小限の捜査事項についても、その密度が違ってくるということなんですね。ですから、類型化された事件だから、否認に回っても新しい捜査事項は増えないから問題ないのではないかということとはちょっと違うということであり、やはりそこは捜査にいったん戻すという制度を持っているか持ってないかによって、必要とされる捜査の量は大幅に違ってくるという前提でお考えいただきたいということです。

○井上座長 否認に転じたら捜査に戻すということが前提にならなければ、念のために丁寧なとり方をするという趣旨ですか。

○髙井委員 そうです。例えば自白の内容でも、これはどっちみち自白はとらなければいけないわけですけれども、自白調書でも、これがそのまま公判廷で自白が維持されるという前提でとる場合の自白調書と、もしかしたら否認に変わるかもしれないという前提でとる自白調書では密度が全然違うということですね。

○井上座長 その点で身軽になるためには、もっと考えるべきだと、こういう御趣旨ですね。

○髙井委員 いったん起訴しても、もし否認したら、もう一回捜査に戻るという制度を持ち込まないと、そこは合理化にならないということなんですね。

○井上座長 当然戻るという制度にしなければならないかどうかはまた別かもしれませんね。ここから先は、将来検討してもらえばいいと思うのですけど、刑訴法340条の、公訴取消しをしたときに再起訴をすることができるための要件を緩和するということでも対応できるのかもしれません。ここは、このくらいでよろしいですか。まだ、御不満は残るかもしれませんけれども。

○樋口委員 2番目の問題なんですけど、一歩前進という言い方も否定しないのですけど、穴が二つありまして、一つがふさがれたが、一つはあいたままだと、そういう認識でございます。

○井上座長 分かりました。先ほど酒巻委員が言われた、有罪陳述が撤回された場合に関する御意見は、たたき台の「4 即決裁判手続による裁判」の(4)のところの話でしたね。

○酒巻委員 そうですね。すいませんでした。

○井上座長 この項目4の(4)のところで、先ほどおっしゃったようなことを考えるべきだと、こういうことですね。

○酒巻委員 そうです。

○井上座長 ちょっと気が早くて(笑)。

○酒巻委員 申し訳ございません(笑)。

○井上座長 先に進ませていただいて、「4 即決裁判手続による裁判」という点について御意見を伺いたいと思います。ここでは、(3)の科刑制限のところが新たに追加された部分であります。また、(5)につきましては、これまでの議論では、たたき台の案でいいのではないか、たたき台は相当だという御意見と、これには反対だという御意見がありましたが、いかがでしょうか。全部まとめて御議論いただければと思います。

○酒巻委員 まず、新しく設けられた科刑制限については、私は賛成です。他方、新しい(5)の、決定が取り消された場合に、取調べ済みの書証が同意があったものとみなされるという点についてはやや異論がありまして、やはりこれはもとに戻って、原則どおりになる方が筋ではないかと私は考えています。以上です。

○井上座長 ということですが、その点でも結構ですし、ほかの点でも結構ですが、どうぞ。

○髙井委員 科刑制限については、前回追加をお願いしたところでもあり、このたたき台に賛成です。(5)については、弁護人という立場から考えれば、同意があるものとみなされると、ちょっと使い勝手が悪くなるかなという感じがします。

○四宮委員 私も酒巻委員と髙井委員の意見と同じです。

○本田委員 私はちょっと反対の意見でして、不相当を理由に取り消された場合に、既に取り調べた書証がまただめになって、同意、不同意の意見聴取からやり直さなければいけないというのは、手続の合理化のため、せっかくこういった制度をつくる趣旨に合致しないのではないかと思います。例えば、事実を認めていて、証拠の開示も受けて、異議がないということでずっと進んでいて、途中で有罪の陳述をひっくり返したため、即決裁判手続の決定が取り消されました、それで、また、書証の証拠能力についても、もとに戻って、改めて意見を聴くところからやり直します、というのでは、こういった簡易な手続をせっかくつくりながら、それを混乱させるようなことを認めることになると思います。通常の公判であっても、当初認めていて、書証についてもすべて証拠とすることに同意していたところが、途中で否認に変わったからといって、その書証の同意、不同意の意見聴取をやり直すかというと、そういうことはないわけで、同意された書証については、否認に転じても、それはきちんと証拠能力が維持されるわけですから、それと同じ考えで制度をつくらないと意味がないと思います。

○平良木委員 私も今の本田委員の意見に賛成で、科刑制限はこれでいい。それから、取り調べられた書証の証拠能力の問題は、今の述べられた切り口と似たところがある。したがって、現行の簡易公判手続の場合はちょっと別ですけれども、このたたき台の(5)は、これでいいのではないかと思っています。

○髙井委員 本田委員の御意見にも一理はあるのですが、しかし、この不相当を理由に取り消される場合というのは、被告人が否認に回った場合だけではないですよね。自白を維持しているのだけれども、やっぱりこれは不相当だという場合がありますね。このたたき台の書きぶりですと、そういう場合に、弁護人の立場から言うと、当然科刑制限を前提にしていろんな訴訟活動をしているわけで、それを前提にして書証は全部同意しました。そして、自白を維持しているのに、裁判所の方が、これは即決裁判手続によるのが相当でない、と言って普通の裁判に戻ってしまったというときに、それにもかかわらず、その場合でも同意はそのまま生きているとなると、これはちょっと危険というか、弁護人としてはそういう場合があるのだったら、そう簡単には、この即決裁判手続を使えませんよということになって、かえってこの手続が使われなくなると思うのですね。
 むしろ、科刑制限があるということを前提にすると、自認して、証拠までいったん同意した事件が、改めて否認に戻るということは普通は考えられないですよね。むしろ、これはどうも執行猶予ではだめで、実刑相当だというようなことで、裁判所から不相当だと言われてしまう場合の方が多いのではないかと思うんですね。
 そうなってくると、(5)のような制度ですと、弁護人としては、その辺の危険、リスクというのは、ある程度大きく見積もらなくてはいけないから、なかなかこれは使えないということになってしまいますよね。この手続を使うというのは、基本的には、君が犯罪を犯したのは間違いないし、有罪となるのは仕方がないが、実刑にはならないのだから、この簡単な手続でやる方がいい、というのが一番大きなメリットなんですよね。仮に、被疑者から、どうしようかと聞かれたときに、君、どうだ、この制度を使えばいいじゃないか、と言えるというのは、科刑制限があるからということなんですね。
 ところが、被告人本人の態度は変わらないのに、科刑制限が取っ払われて、しかし、証拠の同意がそのまま残ってしまうという道が開かれると、これは弁護人としては、迷っている被疑者に、これを使ったらどうだ、と勧めるのはなかなか難しいです。よほど度胸がないと、こういうことは勧められないということになるでしょう。

○本田委員 弁護人の立場から、髙井委員の気持ちは分からないわけではないのですが、例えば、通常裁判の場合に、この事案から見れば、弁護人としては執行猶予は間違いないと判断する場合がありますね。それで同意しましたと。ところが案に反して裁判所は実刑にしてしまったということだってあるわけですね。

○髙井委員 普通の裁判の場合ですか。

○本田委員 普通の裁判です。そうすると、見込みの違いというのはそこであるのかもしれませんけど、要は、それとあまり実質的には変わらないだろうという気がするんです。今、問題になっているのは、恐らく情状面だと思うんですね。執行猶予か実刑かという話ですから。そこで本当にこれが実刑か執行猶予か、ある人の供述調書で変わるというような事件で、もし決定で取り消されたとしたならば、その供述調書がそのまま証拠として維持されたとしても、前の検討会のときにちょっと申し上げましたけれども、その人の証人尋問を請求して、それを裁判所が不採用にするということはまずないだろうし、それを不採用にすれば、恐らく立派な控訴理由にもなりますよね、異議を申し立てておけば。
 また、証人尋問を請求したけれども、採用されずに、調べられなかったとすると、それは、控訴審では、やむを得ず調べられなかった証拠として証人申請できるのではないですか。

○池田委員 多分、有罪であることはそのままでいいんだけれども、量刑が争いになっているという事件で、ある参考人の供述調書の内容が、例えば、殴った回数が実際よりも多かったとか、あるいは、その者の方が嘘をついている部分があるとか、そういうようなところが本当は不満だったけれども、証拠とすることに同意をしたというようなときには、それが量刑上かなり重要なものだったら、その参考人を証人として調べるだろうと思うんですね。しかし、どっちにしても量刑は変わらないよと、どのように被告人が言っても、ちょっとこれは執行猶予というわけにいかないよということになると、多分調べないということもあり得ると思うんです。
 即決裁判手続による事件は、異議がないということで始まって、そこの大きな有罪・無罪について異議がないわけですので、多分、通常の手続で審理する場合であっても、書証は全部同意になるような事件だろうと思うんですね。また、決定が取り消された場合に、被告人側がまた同意をしないと証拠にならないということになると、今の簡易公判手続では、決定が取り消されると、改めて同意がなければ証拠にならないので、かなり使いにくくなっており、それと同じようになるのではないかと思います。それから、調書の内容が、情状関係で量刑を左右する重要な事実になってきたら、その供述者を証人として十分呼べるわけですので、請求権自体が制限されるわけではありませんので、そういう意味では、たたき台のとおり、これは同意というので残しておいてもいいのではないかという気がいたしますけれども。

○髙井委員 先ほどの本田委員のお話は、全然違うわけですよね。一般の裁判ときには、多分100パーセント執行猶予だと思っても、普通は100パーセント執行猶予ですなんて言わないわけです。場合によったら実刑ですよというようなことを言ってやるわけで、そういうのと、いったん即決になったら基本的には科刑制限があるわけですから、この手続だったら絶対執行猶予ですよというのと全然質が違うわけで、今と同じじゃないですかというのは、それは当たらないと思うんですね。あとは情状面で、被害者の調書、この部分とこの部分はどうしても納得できないと、仮に被告人が言ったとしますね。だけど、やったことはやった、確かにやりましたと、でも執行猶予だからいいじゃないか、同意しろよという話になるわけですよ。それで同意したら、それを読んだ裁判官が、被害者の言っているとおりだと、こいつはとんでもないよと、こんなのは実刑だと、それで、通常の裁判に戻ってしまい、証拠の同意はそのまま生きているとなると問題なわけです。
 それは確かにおっしゃるように、証人請求の必要性をちゃんと証明できれば、それは採用されるからいいじゃないかというふうにおっしゃるんだけれども、それは裁判官だから、そういうふうにおっしゃることができるので、当事者としては、果たしてそれで採用されるかどうか分からないというリスクがあるときに、それでは、この制度を使えるかというと、それは使えないわけです。
 これは、この制度が本当に使われるかどうかは、当事者から見て予測可能性があるかどうか。どの程度確実な予測可能性があるかということで、この制度が使えるか、使えないかが変わってくるわけで、それは逆に言えば、裁判官の裁量がどの程度制限されているかということの裏返しでもあるわけで、そういう意味では、池田委員には申し訳ないと思うのですが、とにかく予測可能性が確実であればあるほど、この制度は使われるし、その中に不確実な要素が入ってくれば入ってくるほど弁護人はリスクを恐れてこの制度は使わない。本人がどうしてもこの制度を使いたいと、でも、あなたは全部認めた挙げ句に、またひっくり返って、証拠も同意のままで、実刑にされちゃうかもしれないんだよ、それでもいいかい、それでも結構です、と言ったら、どうぞとなりますけど、そうでもない限り、この制度は使わないということだってあり得るわけで、この制度を本当にうまく使って、公判も簡素化し、かつ、それで反射的に捜査も合理化しようということであれば、当事者から見たリスクをいかにして少なくするかということが大事だと思うんですね。

○井上座長 もう一点、決定が取り消されても同意があったものとみなすとすると、そうとはされていない現在の簡易公判手続の場合との整合性をどう説明するのかという問題があり、これは、法律専門家としては考えていただかなければならないと思います。今の簡易公判手続については、何らか別の理由があって、あるいは政策的な理由で、そうしているのであるから、今回の即決裁判手続については、そうする必然性はないということなのかどうか、そこの整合性をちゃんと説明しないといけないのではないかと思うのですね。もし、別の扱いをするとすれば。

○髙井委員 科刑制限があるわけですから。

○井上座長 そういうことを申したのではなく、科刑制限があろうがなかろうが、通常公判に戻った場合の扱いについて、現在の簡易公判の場合の扱いとの整合性をどうつけるのか。区別するとすれば、その理由をどう説明するのかということです。

○池田委員 リスクの問題ですけど、ものすごく微々たるものを言っておられるのではないかという気がするんですね。まず、検察官が執行猶予でいいということで、申し立てるわけですね。弁護人が異議がないというので、そこで裁判官がこれはまずいと、実刑相当だよというのは、現実的にどれだけあるかというと、非常に少ないのではないかと思いますけれども。

○髙井委員 それは、当事者と裁判官の違いかもしれませんね。その辺のリスクの見積り方が違うのは。

○本田委員 先ほど座長の方から指摘がありましたが、現在の簡易公判とこちらの方で書証の証拠能力の取扱いが違う合理性を説明しなければいけないと思います。確たる考えがあるわけではないのですが、それは手続の始まりが違うのだろうと思うんですね。ちゃんと被疑者・弁護人の同意を得た上で、証拠の閲覧もさせて、被告人の権利保護を十分に手厚くしているというところが、現在の簡易公判手続とは違うので、そこはそれだけの権利保障がきつくなされているから違いがあるのだという説明が一つはあるのかもしれません。

○井上座長 今の簡易公判手続では、被告人が公判で有罪の陳述をすれば、裁判所の判断で、簡易公判手続の決定をすることができるということになっています。その前のところの権利保護が即決裁判手続の方が手厚いというのは、一つの理由になるかもしれませんね。すみません、自分の興味から質問を投げてしまったのですけれど(笑)。まだ言い足りないところだと思いますが、問題点は大体尽きたように思いますので、最後の「5 上訴制限」について御意見をお伺いしたいと思います。これは、A案は、再審事由を理由とする事実誤認の場合は上訴制限をされないということを明示したというのが、前回の案からの修正点ですけれども、この点を踏まえて、全体について御意見を伺いたいと思います。

○池田委員 前回、上訴制限については消極的な意見を述べました。上訴制限の制度自体をもうけることができないとは思っていませんし、弁護権の保障とのバランスの問題で上訴権を制限するというのは十分あり得る選択だと思うのですが、気になる点が三つほどありますのでちょっと指摘させていただきます。
 まず、第1は、前回も述べましたが、略式手続と交通事件即決裁判手続では上訴権の制限はないわけですけれども、軽い刑を科す方が上訴権の制限がなくて、重い方、執行猶予付きですけど、自由刑まで科し得るものについて上訴権の制限があっていいのかというのが、バランスとして気になります。
 それから、第2点は、上訴制限をすることで、かえって制度の使い勝手が悪くならないかという点です。一つは、裁判所が起訴状の記載と少しでも異なる事実を認定しようとする場合には、即決裁判手続によることが不相当であるとして、この手続を使わなくなるのではないか。もちろん、類型的な、本当に絞られた範囲内の事件であれば可能だと思うのですが、例えば、よくある事件では、先ほど樋口委員も言われた暴行・傷害などでは、暴行の態様が、回数ですとか、あるいは手拳だったか平手だったかとか、相手のどこを殴ったとか、そういうような点も争いになることがあるわけですし、また恐喝事件などでも、脅迫文言が一字一句どうだったのかということがあり得るわけですけれども、公訴事実と認定とがずれる場合に使いにくくならないか。
 逆に、上訴制限がなくても、上訴される例は少なくなるのではないかという点なんですけれども、昨年1年間の地裁の単独事件、それも自白事件で執行猶予となった事件が、大体自白事件全体の60パーセント。終局したのは6万9000件、約7万件ですが、そのうち4万2000件ぐらいが執行猶予になっています。そのうち控訴があったのは225人で、0.5パーセントです。これは検察官の控訴も含んでおりますので、被告人側からの控訴はさらに少なくなるということです。
 何を制限されるものとして上訴を構成するかということにもかかわるわけですけれども、このような上訴制限がなくても、上訴審まで行く事件はほとんどないし、また上訴審でも困らないのではないかというのが第2点です。
 第3点は、このたたき台の書き方なのですが、「認定された罪となるべき事実に誤りがあることを理由として」と、この書き方で、控訴審の立場として有効な機能を果たすのだろうかという点です。裁判所が罪となるべき事実として記載したか否かで分かれることになってしまわないか。あるいは、被告人側が事実誤認だと言うか、量刑不当だと言うかによって分かれてしまわないか。同じようなことなのに、そうならないかという心配です。
 最初の例は、例えば、執行猶予の事件として、現在類型的に多いのは、道路交通法違反、覚せい剤取締法違反、出入国管理及び難民認定法違反、次が業務上過失致死傷、あるいは、窃盗、傷害、恐喝と並んでおりますけれども、一番多い道路交通法違反で考えますと、例えば、類型的とはいっても、酒気帯び運転で、「呼気1リットルにつき、0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有し」と書けば足りるわけですし、そういう起訴状が多いわけですけれども、裁判官によっては、重要な情状だということで、呼気検査の結果が1リットル当たり0.3ミリグラムだと、罪となるべき事実として、「0.3」と書く人がいます。それは必ずしも書かなくてもいいわけですが、罪となるべき事実として、そう書いてしまうと、0.3という認定に対し、いや、実はそこまでの量はなかったと主張して争えなくなるけれども、書いてないと、そのように主張して情状として争うことができるのかということが懸念されるわけです。
 もう一つは、事実誤認と量刑不当ということで分かれるというのは、例えば、先ほど例が出ました覚せい剤の使用事犯で覚せい剤を使ったと、単独犯ということで起訴されて認定されたが、実際は知人から勧められて使ったというときに、いや、あの知人も共犯だと言ったら、単独犯の認定と反する事実誤認の主張になるわけですけれども、情状として、勧められて使ったんだというのなら量刑不当の主張でも組み立て得るわけで、同じようなことが控訴審で言えたり、言えなかったりすることにはならないかという懸念がありまして、その辺りの切り分け方としてこれでいいのだろうかというところが気になっているところです。

○髙井委員 今の日本の刑事司法の問題点はいくつかあると思うんですが、一つは、過剰捜査と過剰防御だと思うんです。要するに、お互いが最悪の場合を想定して捜査する。防御する方も最悪の場合を想定して防御するから、本来だったら5ぐらいの捜査と5ぐらいの防御でいいものを、お互い10ずつやっている。それで捜査も長引く、公判も長引くという部分があると思うんですね。この制度は、過剰捜査と過剰防御というものをいかにして改善していくかというのがこの制度の眼目だと私は思うんですね。そういう意味では、過剰捜査を防ぐという意味では、上訴制限は絶対必要だというふうに思います。
 先ほど、どうせ執行猶予なんだから、上訴制限をつけなくても上訴しないのではないかという御意見がありましたけれども、検察官としては、もし控訴されたらどうするんだということを常に考えながら捜査をしなくちゃいかんというリスクを負担するわけで、実際に控訴されている件数はこれだけですよ、だから、あまりそこは必要ないのではないですかというのは判断者の考え方で、訴追の全責任を担当している検察官から見れば、確かにたとえ100件のうち1件しか控訴がないとしても、すべての事件で、控訴されるという前提で捜査をしなければいけないという考え方になってしまうわけですね。ですから、上訴制限がないと、なかなかこの制度は訴追側からは使いにくいというふうに思います。
 それから、略式と比べてどうなんだというお話がありましたけれども、略式は正に事実上書類裁判ですから、不服があったら当然上訴できなければおかしいわけで、それに引き換え、これは一応公判が開かれていて、弁護人もついていて、と手厚く保護されているわけですから、その見返りとして上訴制限がくっつくとしても、それは何ら不思議ではないと思います。
 ただ、最後に指摘されていた点で、今の書きぶりですと、実際は事実誤認の主張なんだけど、量刑不当のような形に構成して控訴するということが許されてしまう、穴があいてしまうのではないか。池田委員がおっしゃったのと逆の意味になるかもしれませんが、穴があいてしまって、それで訴追側から使いにくいというふうに言われるのではないかという気もします。
 ですから、この考え方自体は、私はこれは正しいと思うのですが、書きぶりをもう少しきちんと書いていただいた方がいいかと思います。

○本田委員 まず、略式手続、あるいは即決裁判との違いについては、今、髙井委員から指摘がありましたように、手続の構造そのものが違う。要するに、公的弁護人の請求権を被疑者段階で認め、必要的弁護とし、異議がないかどうかをきちんと確かめてやっていくという手続の違いがあるので、必ずしもこれをパラレルに考えなければいけないという問題ではないですね。
 それから、認定が違ってくる場合があるのではないかという御指摘、例えば、暴行とか傷害、暴行で何回殴った、平手で殴った、手拳で殴ったという点については、検察官が、供述調書なり、いろんなものを証拠として公判に出しており、それとは別に新たに証人尋問などをすれば、また違った角度からの証拠が出てきて、起訴状と違った認定ということはあるかもしれませんけれども、共通の証拠の中で、そんなに事実認定が異なるということが実際にあるのだろうかと思います。即決裁判の手続の中で、被告人の供述調書、被害者の供述調書など、証拠が共通の上できちんと認定しているわけで、そこで検察官の起訴状の認定と裁判所の認定が、証拠関係が共通の場合に本当にそんな違うことがあるのだろうかという疑問があります。基本的には一緒になるのでしょう。理論的には違ってくることがあり得ないわけではないのでしょうけれども。
 事実上、上訴する人は少ないでしょうというのは、確かにそれはそうかもしれないです。ただ、制度としては、これだけ権利保護の手続を厚くして、きちんとやった上で、また上訴審で不当に犯罪事実の審理を蒸し返すことができるというのはふさいでおくべきだろうという気がします。
 また、最後の方に言われましたけど、0.15グラム以上と0.3グラムとで、本当に事実誤認になるのかなという気がするんですね。書き方によって変わるだろうかと。それは、要するに事実の提示の仕方であって、証拠によって認定される事実に同一性があるのでしょう。恐らく、それは控訴したとしても、単なる事実誤認の主張で適正な控訴理由に当たらなくなるのではなかろうかと思うのですが、そこはまた検討したいんですけれども、どうも事実の摘示の仕方によって、事実誤認になったり、ならないようになるのかというと、0.15以上ですから、0.3も含まれるのでしょう。証拠関係も含めてなんですけど、そこは書き方の問題で、形式的なところで事実誤認になったりならなかったりというのは、ちょっと疑問があります。

○井上座長 池田委員が最後に言われた、単独犯か共犯かということですけれども、罪となるべき事実としては単独犯であると認定しているわけですね。そこを争わないで、量刑の前提事実として共犯だという主張をしていくというようなことはできるのですか。犯罪事実は動かないわけですね。そこはそのとおりだと言いながら、実は共犯だから、量刑不当だと主張するというのは、そういう争い方自体が矛盾しているのではないかと思いますが。

○池田委員 共犯だというのだと、多分それは単なる量刑不当でなくて事実誤認でしょう。例えば、覚せい剤を注射したという者が、知り合いから勧められて注射してもらいましたというのだと、多分その人との共犯でやるんですね。ところが、注射したのは自分ですと、勧められて覚せい剤も渡されましたが、私の判断で注射しましたと、これは単独犯であることを認めながら、自分から進んでやったのでなくて、勧められたからやったのだと、そういう量刑不当の主張なんですね。
 そういう、非常に切り分けにくい、同じようなことを言いながら、片一方は、それは共犯だから事実誤認の主張だと。それはもうだめだと言いながら、もうちょっと手前のものだったら、量刑不当として言えるというのは、ちょっと切り分け方がおかしくないか、重いものは言えなくなって、小さいものは言えるというのはどうだろうかという話なんですけど。
 先ほどの本田委員の、後の方の0.15か、0.3というのは、今、犯行態様ですとか、酒気としてどれだけ持っていたかということについて、量刑事情として重要なものは、その点が仮に争いになるのだったら、控訴審としては、量刑事情に関する事実誤認として扱っている例が多いと思うんですね。示談ができたかどうかとか、そういうものだったら、これは当事者が事実誤認だと主張しても、それは量刑不当だということにすると思いますけど、量刑事情に関して、犯情、直接的な犯行態様に絡んだ事実を争いますと、事実誤認としているのが多いと思うんです。もちろん、今は、事実誤認とするか、量刑不当にするかによって、そんなに変わりがないから、そんなに深刻には悩んでないわけですけれども、そのことを前提とすると、今のような点は、0.3は重要な犯情だということになると、それを争うのは事実誤認だということになり得るのではないかと思います。

○井上座長 その場合、罪となるべき事実にそういう認定をしているかどうかで決まってくるのですか。0.15以上という罪となるべき事実の認定でも、0.3であるということが量刑上重要な事実であるとすれば、理由中で示すのではないですか。
 そして、理由中に示してあれば、同じことですよね。逆に、示していないとすれば、それは考慮していないということになるはずですよね。その場合には、0.3であろうが0.5であろうが、裁判所の判断を左右しなかったということではないですか。

○池田委員 それは左右するんです。証拠としては0.3の証拠しかなければですね。

○井上座長 しかし、量刑事情としては書いていないわけでしょう。

○池田委員 書いてなくても、それは争えるわけですよね。

○井上座長 逆にそうだとすると、書いてあってもなくても、証拠の標目に上げていれば同じことですよね。書き方によって違ってくるということではなく、書かれていなくても争えるということになるのではないですか。

○池田委員 今のは量刑不当として争える。

○井上座長 ただ、事実誤認というか、罪となるべき事実が間違っているということになるわけではないでしょう。0.15以上であれば。

○池田委員 それは犯罪の成否には関係ないです。ただ、重要な情状事実であっても、その点を争う場合には、事実誤認だとしているのが今の控訴審なんですね。犯情に直結するものは。ですから、そこが大丈夫なのかという考えなんです。

○井上座長 最初の問題も含めて考えると、有罪か無罪かというところ、罪となる事実の大もとのところで再審請求事由に当たらない限りだめであると、そこで絞っておきながら、量刑という、その次の問題になると許すというのは、逆転しているのではないか。何かそういう感じもするんですけれど。

○池田委員 基本的に、量刑不当というのも、事実誤認と非常に密接なものがあって、事実誤認は、単純に有罪・無罪のものを争うだけではないですよということを言いたいんです。

○辻参事官 ちょっと難しい問題なので、確たるものではございませんけれども、先ほどおっしゃった、単独犯かどうかというようなところにかかわるのですが、上訴制限をもうけることの合理性、その理由にかかわってくるのかなと思います。基本的には、公訴事実に対して有罪の陳述をして、弁護人の援助も受けて、証拠の開示も受けて、それを最後まで維持したというところに、その理由が求められるとすると、そこの公訴事実が、基本的には罪となるべき事実という、むしろ根幹になる重い方に引き継がれていくから、その限りで、その範囲で上訴制限が認められる。重要な情状事実であっても、手続上そういう意味では明示されてないとしたら、そこまで制限するのは適当でないという考え方かと思います。事実として重い、軽いというよりは、手続上明示されていたかどうかという違いなのではないかと思います。

○井上座長 いかがですか。かなりテクニカルな議論になってきたのですけれど。どうぞ。

○酒巻委員 基本的な意見は、上訴制限は、たたき台のA案相当という意見です。ただ、ちょっと質問なのですが、執行猶予の科刑制限がある一方で、量刑不当の上訴というのは、具体的には、例えば罰金がこんなになるとは思わなかったとか、そういうことなのですか。

○井上座長 あるいは、執行猶予の期間が長過ぎるとか、刑期が長過ぎるとか。

○酒巻委員 すいません、刑をもらったことがないものですから分からないもので(笑)。そういうことですね。量刑不当の上訴は当然認めないといけないんでしょうね。分かりました。

○井上座長 よろしいですか。
 それでは、ここで、10分くらい休憩させていただきたいと思います。
 

(休 憩)


○井上座長 それでは、再開させていただきます。
 ここから先は、検察審査会制度に関するおさらいの議論に入りたいと思います。これも、たたき台の項目に沿って進めさせていただきたいと思います。
 まず、「検察審査会制度について」というペーパーの1の「(1) いわゆる法的拘束力のある議決の種類」ですけれども、この点については、これまでの議論では特に御異論がなかったところですので、特に御意見がなければ、次に進みたいと思いますが、よろしいですか。
 次が「(2) いわゆる法的拘束力のある議決の要件」でありますが、アにつきましては、これまでの議論では、A案を相当とする意見とB案を相当とする意見の両方がありましたが、この点についてはいかがでしょうか。どなたからでも。

○髙井委員 これは、前回もそうでしたが、ここはA案で、検察官に意見を述べる機会を与えれば十分で、被疑者にはその機会を与える必要はないと思います。なぜならば、これは検察官の不起訴の処分に対する不服の申立てということですから、基本的には検察官の利益と被疑者の利益がある意味では一致している。したがって、検察官からの意見を聞けば十分だというふうに思います。

○酒巻委員 結論も理由も髙井委員と同じです。既にこの点については言い尽くしましたので。

○四宮委員 私、前回、明確には意見を述べていなかったのですが、この点は、次のいわゆる一段階か二段階かというものとも関連すると思います。私は、一段階案とセットで、この点についてはA案、検察官の意見聴取を必要的なものとするという意見です。検察官の不起訴処分の当否を審査するということですので、説明を受けるのがよろしいのではないか。とりわけ、一段階ということであれば、その必要性もあるだろう。被疑者の地位の安定のためにも慎重にすることになるだろうということで、一段階案とセットにしてA案という意見です。

○大出委員 一応申し上げておかないとまずいだろうと思いますが、理由を今さら更に付け加えるというようなことをするつもりもないのですが、それに、ますます少数意見と化しているようですので、抵抗する気もあまりないのですが、しかし髙井委員がおっしゃられたこととの関係でいけば、私はそこは理解は前に申し上げたように違うということだと思いますし、B案を維持するということで結論だけ申し上げておきます。

○酒巻委員 先ほど髙井委員がおっしゃった利害の問題だけではなくて、これは根本的な構造の問題であり、不起訴処分の当否を審査するのですから、その審査対象である不起訴処分をした検察官が検察審査会に意見を述べるというのは望ましいし、必要的にしなければならない。しかし、被疑者についてはこの制度の構造からして、意見聴取を必要的にする必要はないと、そういうことでございます。

○井上座長 髙井委員の御意見も、そういう部分も含まれているということですか。

○髙井委員 はい。

○本田委員 この点については、私もA案です。理由は、さきの検討会で述べたのと一緒でして、先ほど意見が出ましたように、検察審査会は、検察官の不起訴処分の当否を審査するところである。また、被疑者から聞きたければ、現在も聞こうと思えば聞ける。しかし、それ以上に必要的にする理由は何もないだろうということです。

○平良木委員 私もA案です。

○井上座長 ひとわたり御意見を伺いましたので、ここはこの程度でよろしいでしょうか。 次のイですけれども、この点については、これまでの議論では、A1案、A2案、B案、それぞれの御意見が述べられました。A案かB案か、一段階か二段階か、というのが一番大きな論点で、その上で二段階説を仮にとるとすると、A1案とA2案のいずれなのかと、論理的にはこういう順序になりますので、まず、一段階か二段階かという点について御意見をお願いしたいと思います。ただこの点は、これまで既にかなり議論してきたところでありますので、できるだけ、単なる繰り返しに陥らないように、これまでの議論を踏まえて御意見を更にいただければと思いますけれども、いかがでしょうか。どうぞ。

○酒巻委員 大きな枠組みとしては、二段階案がより望ましい制度設計と考えます。一つは、これまでと違って検察審査会の判断に法的な拘束力が発生して被疑者が起訴されるという大変重大な帰結を生む、そういう制度であるということです。審議会の意見書も、公訴提起についての民意の反映ということと同時に、被疑者に対する適正手続の保障にも留意して制度を設計せよという基本方針を示しおり、公訴提起に至る手続を慎重に行うという意味で、2回審査の機会を入れるという構造が妥当だと思います。
 もう一つは、大きく見ればプロフェッショナルである検察官の判断に対して、一般国民の方々だけの合議体がそれと違った判断をされ、最も強い意思表示が起訴という効果に結び付くわけですけれども、もし一段階ですと、プロである検察官が行った不起訴処分に対して、一般国民である検察審査会が、いや、それはおかしいということで手続が進んでいくということになります。これに対して、二段階方式ですと、検察審査会の議決を受けてもう一度プロが再考し、その上で、しかしそれにもかかわらず、やはり意見が違うというときに、検察審査会の判断によって起訴されるという形になる。これはもちろん裁判員とは違うわけですけれども、一般国民の健全な社会常識というものとプロフェッショナルの専門技術的判断との間の、一種のコミュニケーションが、二段階案だと可能になるだろうと思います。それはそれで望ましいことなのではないかと考えられますので、公訴提起に至る手続の慎重を期すということに加え、プロフェッショナルと一般国民との協働作業という点からも二段階が望ましいのではないかと考える次第です。

○四宮委員 私は前回同様一段階説を主張します。繰り返しにならないようにしますが、1点目の理由は繰り返しです、申し訳ありませんが(笑)。意見書が公訴権の在り方に民意をより直截に反映させていくことも重要と言っている点であります。
 そのほか、なお、いくつか付け加えさせていただきますと、二段階説は起訴相当議決を事実上不起訴不当議決として扱うことになるのではないか。実質的には再捜査をしてもらうということになるわけですから、特にA1案の考え方はそういうことになるのではないかと思います。
 それから、少なくとも、今、酒巻委員が専門家と国民とのコミュニケーションということをおっしゃいましたけれども、一段階説でも、先ほど申し上げましたように、検察官の意見聴取を必要的なものとすることによって、十分にコミュニケーションを図ることができるわけですし、また、後で議論されるリーガルアドバイザーという制度も新たに設けられるということで、十分その目的は達することができるだろうと思います。
 もう一つは、被害者の立場も考えますと、検察審査会で一度起訴相当議決が出た後、なお、結論を待たせられるということになりますし、また、いろいろ寄せられた意見を拝見してみますと、検察審査会の経験者の方は、やはり起訴相当には、一段階、二段階というのは特に言ってはいませんけれども、法的な拘束力を認めることを強く希望している方が多いようであります。
 それから、何よりも申し上げるのは、これも繰り返しになるかもしれませんが、国民にとって分かりやすい仕組みというものをつくる必要がある。
 これらの理由から、私は強く一段階説を主張したいと思います。

○井上座長 ほかの方はいかがですか。どうぞ。

○本田委員 私は二段階説です。現行の刑事訴訟法では、公訴権を独占する検察官が起訴するのが本来の姿なわけですね。付審判請求にしても、これは例外的な措置として制度ができているわけで、本来の形で処理が可能なものについては、本来の形で処理するのが制度の中では望ましいのだろうと考えます。
 ちなみに平成10年から14年までの間に起訴相当の議決がなされた事件については、全部で11件あるのですけど、現在捜査中のが2件、法人が消滅してしまって処理したのが1件、それを除きますと、8件のうち6件は起訴して、2件が嫌疑不十分で不起訴という結果になっており、起訴相当の議決があった事件のうち75パーセントは検察官が起訴しているということになっております。
 先ほど四宮委員から、民意の反映ということがあったのですけれども、検察審査会の起訴相当の議決によって起訴することが可能な制度となれば、検察官が再考を行う際にも、検察審査会で起訴が行われる可能性を念頭に置いて再考することになる。また、検察官が再考の結果、起訴した場合、それは民意が反映されていないということにならないでしょう。それは、検察審査会の起訴相当の議決をもとに検察官が再捜査をして起訴をしたということであり、それは民意が反映されたというふうに考えるべきであろうと考えます。
 それから、先ほど被害者の立場からということを言われました。もちろん、被害者の立場に視点を置いて考えるということは重要なことではありますけれども、一方では、被告人の立場というのも当然考慮しなければいけない。公訴の提起によって、被告人に対しては、社会的、経済的、心理的な負担、様々な不利益が及ぶわけであります。とりわけ、無実の者を裁判にかけるべきではないという国民一般の意識、こういったものを考えると、やはりそこはそれなりの手続というものが必要なわけで、慎重さであるとか公平さというのが求められるのだろう。かれこれ考えると、ここは二段階説にするのが、最も現行の刑事訴訟法の本来の姿に沿うものであるし、被告人の権利あるいは民意の反映ということと何の齟齬もなく調和した制度になると考えます。

○大出委員 私も繰り返しにならざるを得ないんですが、さんざん申し上げましたので、多くを申し上げるつもりはないですが、やはり伺っていますと、民意の反映、それは反映の程度の問題だということになるかもしれませんが、やはり一段階説をとるべきだろうと私は思うわけでして、結局二段階になった場合に、これも前回申し上げたことですけれども、検察がいったんそこで再捜査をされるということになるかもしれませんけど、それで戻ってきたときには同じメンバーでない方たちが改めて審査をせざるを得ないことになるわけですね。結局、事実上そうならざるを得ないでしょう、期間の問題からいっても。
 そういったことを想定すると、結局、一段階目、先ほど四宮委員からは、不起訴不当というようなことと同じではないかというような話もありましたけれども、一段階目で審査員の方たちが審査して出した結論は、もちろん最終的には活きる可能性はあるのかもしれませんけれども、直接的にはかかわった方たちの意向が事実上意味を持たないということになりかねないわけですね。
 そういったようなことで、果たして検察審査会の皆さんにそれなりの苦労をかけて判断を求めることが合理的なことであるということになるかどうかということは検討してみる必要があるところだと思うわけです。ですから、より民意を反映する以上、ストレートな反映の仕方ということを考えるべきだと思いますし、慎重ということをおっしゃられるのであれば、先ほどのところで申し上げたような被疑者の意見を聞くというようなことで、そこは賄うべき性格のもので、筋がちょっと違うのではないか、それだけの問題ではないと思います。

○髙井委員 私は、二段階案が相当だと思います。裁判員の問題もありますが、裁判員の場合は、片や検事が起訴している。それに対して弁護人が同じプロが争っているという、ある程度狭い土俵の中で、どちらかを選ぶ、あるいは両方とも認めている中で、量刑をどうするかということで選ぶことになります。
 ところがこの検察審査会の場合は、本来、訴追を職責としている検察官が不起訴にしたものを起訴しようということですから、裁判員と似ているようでかなり似てない部分があって、ここは、被疑者の権利ということを考えたら、慎重な検討が必要だと思います。そういう意味では、一度拘束力のない起訴相当の意見を出して、それを前提にして、検察官がもう一度再捜査をしたらどうかということで再考を促し、それでも不起訴になった場合に検察審査会としてどうするかを考えるという仕組みの方が、検察官の公訴権の運用と民意の反映というものをより慎重に調和させることができる。単に民意を反映させればいいというわけではなくて、それだけではなくて、被疑者の人権とか真実に沿った起訴が行われるという、それとは違う、非常に大事な基本的な価値があるわけですから、それとの調和を図ることができるという意味でも、二段階案が相当だろうと思います。

○井上座長 ほかの方はいかがですか。

○樋口委員 このイについては二段階だと思います。これは既に述べられていますように、最初の議決を受けてもう一度補充捜査等が行われて、それを踏まえて判断をするということに合理性があるのではないかということです。最初の検察審査会も、補充捜査を踏まえて判断する二段階目の検察審査会も、同じ検察審査会ですから、検察審査会を構成する個々のメンバーの立場というのは考慮の対象とすべきではないのではないかということでもあります。

○平良木委員 私も樋口委員と同じようなところがないわけではなくて、従前、一段階案の方が望ましいと思ったのですが、民意の反映と起訴に慎重を期すということのバランスのとり方の問題であるということを考えると、二段階案でもいいのかなということで、前回これに賛成したわけですけれども、今の時点でも、それでよいだろうと考えております。

○池田委員 この審議会の意見書の趣旨等に照らすと一段階の方が明快かなという気がしているわけですけれども、前回もお話しましたように、A2という二段階案であればとり得る選択かなというふうに思っております。

○井上座長 ほかの方はいかがですか、土屋委員どうぞ。

○土屋委員 私も悩ましく思っているんですけれども、私は、やはり一段階が明快だなというふうに思います。理由は前にも述べたところもありますので繰り返さないのですが、長期化して、審査員の構成が変わったり、いろんなことが考えられますので、できれば同じメンバーで結論を下すのが望ましかろうと思うんですね。それから、検察官の意見聴取とか、ちょっと先走ってしまいますけれども、リーガルアドバイザーとか、こういう制度が導入されれば慎重な結論を導くという基本的な条件は満たされるのではないかと思います。それから、最も根本的な理由として、検察審査会というのは検察官の判断と違っていて当然なのだろうと思うのですね。制度として検察官の処分の妥当性を吟味するところに存在意義があるわけですから、それがもし基本だと考えれば、検察審査会で出した結論に従って裁判を始めるということが、速やかに一段階の判断で始めるということが、やはり制度の趣旨に合致するのではないかなと私は思います。以上です。

○井上座長 分かりました。ひとわたり御意見を伺いましたが、さらに何かあれば、どうぞ。

○酒巻委員 私は、先ほど言いましたとおり二段階案でありますけれども、前にも質問したことだと思いますが、仮に二段階にした場合、最初の議決の後、「一定期間内に」という言葉がたたき台には出てくるわけです。これがあまり延びますと大変問題だと思います。現在も、検察審査会の起訴相当又は不起訴不当の議決で事件が戻ってきた場合、また、再捜査して、事件処理をするということになりますが、条文化することは難しいと思いますけど、実際のところ、議決後どのぐらいの期間で処理できるものかというのを、本田委員にお聞きしたいと思うのですが。
 仮に、二段階案の制度になったときに、その点は、重要な問題であると思いますので、伺えればと思います。

○井上座長 もしお答えしていただければ。

○本田委員 検察審査会から戻ってくる事件も様々でして、中には再捜査に時間が掛かるのもあるし、ほとんど再捜査しなくても証拠の評価だけで終わってしまうというのもあるのですけれども、今考えているのは、たたき台の「一定期間」というのは、原則3か月以内できちんとやるということにして、ただ、3か月と区切ってしまいますと、例えば、検察審査会の指摘を踏まえて鑑定などをやらなければいけない場合があり、そうすると3か月では再捜査・再考のための時間が不足するという事態も考えられる。そうすると、更に3か月ぐらいに限って延長ができると、最長6か月というところで何とかできるのではないかと思っています。

○酒巻委員 具体的なイメージは分かりました。ありがとうございました。

○井上座長 ほかに何か。ひとわたり御意見を伺いましたので、それでは、この点はこのくらいにしたいと思います。
 次に、今の御意見の中でも、二段階説の方が相当いらっしゃるわけで、仮にそういう二段階案をとるとした場合に、たたき台のA1案とA2案のどちらがいいのかということについても御議論いただきたいと思います。これは、二段階なんて考えられないという方にとっては、そんな議論に付き合っていられないということになるのかもしれませんが、そういう方も、仮に二段階案を前提にした場合にどうなのか、御意見があればいただきたいと思います。この点も、既に第2ラウンドの最初の方のところで御意見を伺っておりますけど、いかがでしょうか。要するに、最初の検察審査会の起訴相当の議決を一応終局処分とした上で、検察官が再捜査をする。その結果、起訴が行われるときはそれでいいのですけれど、起訴がなされなかった場合に、検察審査会に事件が戻ってくる。そのときに、A1案のように、審査申立人の再度の申立てを必要とし、その申立てがあって初めて戻ってくるという形をとるのか、それとも、A2案のように、最初の起訴相当の議決を中間処分的なものにとどめておいて、再度の申立てをするまでもなく、検察官が起訴するということはない限り、自動的に検察審査会に戻ってくるという形をとるのか、ということなのですが、いかがでしょうか。

○髙井委員 私はA2案が相当だと思います。A1案ですと、最初の議決が起訴相当の議決だとしても、それは一体どういう意味があったんですかということになろうかと思うんですね。そういう意味では、意見書が言っている枠組みからやや外れるのではないかという気もしますので、A2案が妥当だと思います。

○井上座長 審査申立人が、もういいと言う場合はどうするのですか。その場合も、二段階目の審査を行うのですか。

○髙井委員 被害者がですか。

○井上座長 はい。そういうことも考えられなくはないですね、示談が成立するということもありますから。

○髙井委員 二段階目の審査までに示談ができたということですか。

○本田委員 よろしいですか。

○井上座長 どうぞ。

○本田委員 今、座長の指摘もあったところですが、私は、一段階目の議決を終局処分としたからといって、必ず再度の申立てがなければいけないという話ではないのではないかと思います。ですから、一段階目の起訴相当の議決後、一定期間過ぎたところで、二段階目の検察審査会の方で再度審査を始めるのだけれども、その場合に、例えば、示談が成立して審査申立人の方で、もういいと言うような場合、そういった特段の意思表示があった場合には、再度の審査はしないといったような制度設計ができないだろうかと考えています。

○井上座長 一段階目の議決を終局と言おうが中間と言おうが、あまり変わりはないということですか。

○本田委員 それは説明の問題だろうと思うんですね。中間議決というのは一体何なんだということもあり、そこは、一段階の検察審査会で、いったんきちんと判断してもらって、それを受けて、再捜査期間というのがあって、それからもう一度、二段階目の検察審査会が審査を始める。その始め方をどうするかということだけの問題だろうと思います。説明の問題だと思います。

○酒巻委員 私は、前の議論のときには、かなりごりごりのA1案だったのではないかと記憶します。座長が御指摘になったような場合もありますので、一番固いA1案どおり、第一段階の手続は議決が出たところで終わる。その後、検察官が公訴を提起しなかったことについて、審査申立人になお不服がある場合に、改めて審査申立てをしていただいたときに、再審査するということになるのが筋と思ったのです。もっとも、今、本田委員がおっしゃったような一種の折衷的な行き方もあるかなと考えるようになりました。そうすると、一定期間というのをはっきり決めることになるのかと思われますが、その一定期間内に、例えば3か月以内に検察官が公訴提起しなかったら、申立ての有無を問わず再度検察審査会の審査が開始されるということにしつつ、その期間の途中で審査申立人の不服がなくなり問題が終わってしまえば、そのまま審査を開始しないというような、マイルドなA1案でいいのではないか。その場合、A2案とどこが違うかというと、ほとんど違わないということになりますが。

○井上座長 先ほどの本田委員の御意見では、原則3か月として最長6か月まで延長できるということでしたが、それは、どういう形の手続になるのですか。延長するときは誰かの許可を得るということなのでしょうか。

○本田委員 恐らく、これは許可にかからしめるとすると誰が判断するか。検察審査会では判断できないと思うんですね。それは捜査に必要な期間についての判断ですから。だから、基本的には、検察官から審査会に通知をする。例えば、まだ捜査にこれだけ時間が掛かるから、あと1か月延長するというような通知をすることによってその期間を延ばしてもらう。それでも最長6か月で終わりですよという歯止めをつくっておけば、それはきちんとした制度になるだろうと思います。

○井上座長 実務的には、関係書類がどう動くのかよく分かりませんけれど、何かそういう仕組みにするということですか。

○本田委員 そうですね。

○井上座長 一段階案を唱えられた方は議論しにくいと思うんですが、仮に二段階案を採った場合、先ほど池田委員はA2案ならば考えられる案だということでしたか。

○池田委員 仮に二段階だとしても、もう一度、審査申立人に申立てをさせるというのは趣旨に反するだろうと思います。それを不要だとすれば、A1案の修正とかいろいろあると思いますが、基本線はA2案に近くなるのかなという感じはしますけど。

○井上座長 ほかにいかがですか。仮にA案の二段階案でいった場合は、皆さん何となく同じようなイメージを持っておられるのかという感じはしますね。このくらいでよろしいですか。
 次が(2)のウですが、これについては、これまで特段御異論なかったように思いますので、よろしいですか。
 次が「(3) いわゆる法的拘束力のある議決後の訴追及び公訴維持の在り方」という点です。この点については、これまでの議論では、A案、B案、C案のそれぞれを相当とする意見が述べられたところですが、御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。

○髙井委員 私はこれはB案です。指定弁護士が公訴提起と公訴追行をするというのが妥当だと思います。検察審査会が検察官に起訴を促したにもかかわらず、2回にわたって、検察官は起訴しなかったという場合に、検察審査会の権限で起訴するわけですから、その起訴手続及び公訴追行を検察官にさせるというのはやはりおかしい。それは、被害者の立場から見て、仮に無罪になったとき、それを納得できるのかということと、それから、逆にもし検察官の立場でも、検察官はこれは絶対不起訴だというふうに思っているときに、自分の心証に反した公訴活動をさせるというのは検察官の在り方と矛盾するのではないか。
 もう一つは、これは有罪になるべきだというふうに確信している人でない限り、公訴追行というのはなかなかできないものだと思うんですね。そういうようなことをもろもろ考えますと、指定弁護士が公訴提起及び公訴追行を行うというのが妥当だと思います。

○井上座長 今の髙井委員の御意見ですと、起訴状も……

○髙井委員 起訴状も指定弁護士が書く。

○井上座長 指定弁護士が書くということですね。

○髙井委員 はい。

○酒巻委員 私も髙井委員と同じで、指定弁護士が公訴提起の手続を行い、そして、公訴の追行も検察官ではなく指定弁護士が実行するという案をとるべきだと思います。その理由は、既に何度も申しました。要点を申し上げますと、以前の議論のときも、私は外から見たときの適正さの外観ということを強調したと思います。それが一つです。法律的には、もちろん個々の検察官が独任制の官庁として起訴不起訴の決定をしているわけではありますが、しかし、事実として、検察庁としての判断として、ある事件を起訴するかしないかという判断が行われ、それに対して検察審査会という別個の機関が、検察庁の不起訴の決断に対して反対の意思表示をされて、それが法的拘束力を持って、現に訴追が行われるということになるのでありますから、そこは、適正さの外観を確保する観点からは、その訴追と公訴維持を検察官が担当するというのは制度として望ましくないと思います。
 それから、細かな点では、略式手続にできるかどうかという観点からも、指定弁護士が起訴状を作成する際に、そういう判断の余地があるとする方が、検察審査会そのものが起訴状を作成するものとする場合よりもよいと思います。
 また、公訴追行につきましては、従来は、検察官が望ましいという御意見の方から、付審判請求の御経験等で、なかなか補充捜査等が困難ではないかという御意見が出ていましたが、私の想像では、付審判請求の対象事件は、御承知のような補充捜査が必要となりやすい特別の性格の事件に限られているのに対して、検察審査会の事件には、そういう制限がない。また、先ほどの二段階案をとる場合は特にそうですが、そうでなくても、起訴相当の議決がありそうな場合には、検察官は十分補充捜査を行った上で、その内容に基づいて検察審査会に説明するという格好になりますから、起訴の段階に至ったときに、まだ補充捜査をしなければならないとか、捜査が足りないといった問題は、付審判事件とは違って、あまり起きないのではないかと思います。
 以上のような理由で、指定弁護士が起訴状を作成して公訴を提起し、その公訴を維持するというB案が妥当だと思います。

○樋口委員 第2ラウンドでは、やはりこれは検察官が行うのがいいのではないかと、特に公訴維持はと、申し上げたのですけれども、もちろんその心は、実務が非常に効率的に、実務的に円滑に行えることが重要であるという観点から申し上げたわけですけど、指定弁護士による、つまりB案を支持するということに改めたいと思ってます。
 指定弁護士による公訴提起、公訴維持という制度自体に問題があるということではもちろんございませんで、特にいろいろ御意見等を伺っておりましても、この2段階案が採用された場合に、二度にわたって、確かに不起訴にすべきと判断をした検察官が当たるというのは、公正らしさということについては、相当でないという考え方、見方があるのかなと、十分理解できるところであるなと考えます。既に付審判請求にも指定弁護士の制度があるわけですから、指定弁護士が公訴提起をして公訴維持をするという仕組みが、十分このケースでもあり得ると思います。
 ただ、もう一度、確認かたがた1点だけ申し上げておきたいのですが、その場合でも、補充捜査の指揮については、付審判請求事案と同様に、人的なつながりが大変重要でございますので、これを重視して、今、刑事訴訟法268条2項ただし書の規定がございますけれども、それと同様に、検察官に嘱託して行うこととすべきだと思います。

○本田委員 私も、指定弁護士が公訴提起を行って訴訟追行すべきということで、前と見解は同じであります。理由も前と変わってないのですけれども、先ほど申し上げましたように、起訴相当の議決がなされたもの11件について、捜査中2件、法人消滅1件を除くと、8件のうち6件は起訴しており、2件だけが不起訴で、75パーセントは起訴しています。それほど、検察審査会の指摘も踏まえて慎重な捜査をして終局処分をしているわけですけれども、そうした上で、検察官が不起訴としたものについて、なおかつ検察官に公訴提起と訴訟追行をさせるというのは、先ほどから出ていますとおり、制度として、やっぱり公正さが保てない。被害者の立場からの話も先ほど髙井委員からありましたけれども、やはり、被害者が見て、検察官が本当にきちんとやっているのかという疑念が生まれてくるような制度というのは制度としておかしいのだと思います。特に、無罪の判決などになったときは、そういった不信感というのはかなり増大されるだろうということを考えると、これは指定弁護士にやっていただかないとだめであると考えています。

○井上座長 ほかの方、いかがですか。どうぞ。

○四宮委員 私も、一段階説でも、公正らしさという点から、公訴維持は指定弁護士が行うべきだと思います。また、そのために、補充捜査の権限、特に現行法の嘱託という形をとるにしても、解釈で行われているように、検察官は指定弁護士の嘱託に応ずる義務があるという解釈だそうですので、それが明記されることが望ましいと思います。
 問題は訴追の方でありまして、前回、私は、検察審査会が公訴提起を行うというA案を述べました。B案についても相当の理由があるとは思いますけれども、なお、A案が望ましいのではないかと思います。理由は前回申し上げましたので繰り返しません。特に、今も酒巻委員からも御指摘のあった、例えば略式請求にするのが相当だという場合どうするのだと。私自身も検察審査会が量刑判断と手続を選択することを任務とすることはふさわしくないと思います。ですので、非常に悩ましいところなのですが、ここから先はいろいろな御異論を覚悟で申し上げますと、今は起訴前に、起訴するときに手続を選択するわけですけれども、前回御批判はありましたけれども、起訴した後、一定の手続を選択できるような仕組みというものを新たに考えてみるのもこの際いいのではないかということであります。つまり、指定弁護士が、選任後に事案を勘案して手続を選択できる制度を新たに設けてはどうかという提案であります。

○井上座長 それとB案とどこが違うのですか。それであれば、B案でもいいような気がしますけれど。

○四宮委員 私は、検察審査会に、ちょうど付審判における決定書のようなものを是非やってもらいたいという気持ちがありまして。

○井上座長 誰がそれを書くのですか。

○四宮委員 リーガルアドバイザーです。

○井上座長 それなら、実質的に変わらないのではないですか。検察審査会自身が文書を作成するのであればともかく、いずれにしろ、プロがかかわって書くわけですから。

○四宮委員 ええ。

○井上座長 違うのは起訴の前か後かという点だけで、実質はあまり変わらないですね。検察審査会が起訴したという形を維持したい、ということかもしれませんが。

○平良木委員 私も前回いろいろ申し上げておりますけれども、ここのところは、もし、B案ということになるのだとすると、ちょっといくつか条件があって、これは言わずもがなのことかもしれませんけど、一つは、補充捜査の権限というのを十分に担保してもらいたいということと、もう一つは、できれば公的弁護のところで出てきている常勤弁護士、これを充てるような、これは制度としては難しいでしょうから、運用として配慮してもらいたいということです。できるだけそういう刑事手続に精通している人が当たるのが望ましいだろうということでB案ということです。

○井上座長 常勤弁護士が検察官役の指定弁護士になるとすると、利益相反などが問題になってきますよね。

○平良木委員 それは出てくるでしょうが、それはそれで対処すればよいでしょう。

○本田委員 先ほど言い忘れたんですけど、B案のアのところで、「議決謄本を当該検察審査会の所在地を管轄する地方裁判所に提出する」となっていますが、これは、むしろ事件を管轄する地方裁判所に提出するとすべきではないでしょうか。事件を管轄する裁判所と検察審査会の所在地を管轄する裁判所が必ずしも一致しないのではないかと思います。

○井上座長 Bのアですか。

○本田委員 という気がちょっとしているので、検討していただきたいと思います。
 それから、先ほど四宮委員からA案の話が出ていますけど、検察審査会というのは、いわゆる捜査機関でもなければ訴追機関でもないんですね。要は、本来の職務というのは、検察官の処分の当否を審査するところで、その議決に法的拘束力を与えるというので、これが起訴手続まで行うというのは、ちょっと行きすぎた話になろうかなと、これは前にも申し上げましたけど、そんな気がします。
 それから、補充捜査を十分担保してほしいということが、先ほど平良木委員から話があったのですけれども、現行法でも十分補充捜査は担保されているわけで、いわゆる捜査の指揮が、検察官を通じて行う以外はすべて検察官と同じ権限を持っているわけですし、指定弁護士からの補充捜査の嘱託については、検察官としては正式に対応するという運用がなされているわけで、これは現在の制度でも十分担保されているというふうに考えていいのだろうと思います。

○池田委員 私は、前と変わらないのですが、扱う事件が非常に難しい微妙な事件になるので、慣れている検察官が担当してもいいのではないかと思っています。特にその理由は、前回申しましたように、指定弁護士ですと、付審判のときになかなか十分な活動ができないというような実情があることも理由の一つなわけです。けれども、ただ、C案については有力な支持者が次々と意見を改められているので、非常に孤立してしまうわけですが、仮にB案をとるとしても、補充捜査の点は十分な活動を担保してもらえる何かは必要なのではないかと思います。今、本田委員も言われたように、法律の規定上は検察官と同じ職務を行うことができるようになっていますし、検察事務官、司法警察職員に対しては検察官に嘱託して指揮をするということになっていますので、それ自体をさらに強くするというのはできないのかもしれないのですが、今の実際の運用上ネックになっていることも考えると、検察官が当該事件の記録の閲覧・謄写、関連する資料の収集等について、誰にどういうふうに頼んだらいいのかとか、それから誰がその要請を拒絶することができるのかとか、そういうルールについては、何らかの形で定めることはできるのではないかという気がしております。

○大出委員 私が池田委員の意見を支えることになるかどうか分かりませんが、私は前回縷々申し上げましたけど、私はC案ということで申し上げてきて、基本的にそれを現時点でも変えるつもりはないのですが、その一つの理由は、前回申し上げたことですけれども、どうも皆さん「公正らしさ」ということをおっしゃるわけですが、法律家に求められているのはらしさではなくて公正性なわけでして、そういうことを言ったときに、検察官が職務を遂行するについて公正であるということであれば、「らしさ」を気にされるというのはどうもよく分からないのですね。だから、その点はやはり申し上げておくべきだろうと思います。
 それから、もう一つ、そうだとすると、嘱託には誠実に対応されるというのですが、事実上、指定弁護士は補充捜査については検察に依拠せざるを得ないわけで、そのことは御承知でいらっしゃるわけで、そのこと自体は「公正らしさ」との関係からいって問題にならないのかどうかですね。検察官の御主張との関係、本田委員と髙井委員がおっしゃっていることからすると、そこは結局最終的にそれで無罪になったときは、事実上は補充捜査を検察の組織がおやりなっているわけですから、それに依拠せずして指定弁護士の対応ができないということになったときには同じ問題が起こるんじゃないですか。

○井上座長 検察官が補充捜査をやっているわけではないのですよ。

○大出委員 でもそこを通しているわけですよね、結局。そこに依頼せざるを得ないわけですから、最終的には検察がおやりになる仕組みということですよ。ですから、そういう問題があるので、御主張としては、私はつじつまが合ってないのではないかという意見でして、ですから、そこは……

○井上座長 ちょっと飛躍がすぎるのではないでしょうか。

○大出委員 飛躍というよりも、論理としては、当然そういう「公正らしさ」ということを強調されるのであれば、そこの問題点は論理的には残る問題だと私は思うわけでして、そのことは、実際にもしそこで検察を通じてというようなことが補充捜査として当然行われるべきだとすれば、その結果を利用して公訴維持をされるというようなことも、検察官がおやりになることが私は一番直截であり、筋の通った話だろうというふうに思うわけでして、それはもちろん、今までのお話との関係でいけば、特に正に公訴維持をするときの態勢の問題という面が、「らしさ」の問題を別にすればあるわけでして、その限りでは、私ももちろんB案という話になるとすれば、その点について、平良木委員、池田委員がおっしゃったように、どう対処するのかということについてはお考えいただく必要があるだろうと思っております。以上です。

○髙井委員 指定弁護士が検察官を経由して担当警察官に補充捜査の依頼をするわけですね。そのでき上がりは、当然また検察官経由で指定弁護士のところへ持ってくるわけで、指定弁護士がそれでいいと思えばそれでいいし、これでまだ足りないと思ったら、さらに追加して補充捜査をまた同じ経路で頼むわけですね。ですから、最終的には指定弁護士が補充捜査の出来、不出来、十分であるかどうかを担保しているわけですから、補充捜査を検察官経由で警察にお願いするから、公正らしさがなくなるということには全然ならないと思います。本質的に違う問題だと思いますね。
 検察官が公訴維持をしているのと、指定弁護士が最終的には警察の補充捜査を受けながら、利用しながら、公判に立会する、これは全然違う問題だと思います。

○土屋委員 私は前と同じB案で、指定弁護士が行うという案です。というのは、理由は同じなんですけど、今、お話に出ているとおり、指定弁護士が十分な公判活動ができるように、検察や警察と協力し合っていけるような、そういう権限、これをきちんとすることが一番大事なのだろうと思うんです。付審判の事件などを傍聴していますと、うまく動いてないなと感じることがあるんですね。ですから、検察官の職務を行うという具体的な内容なんですけれども、そこのところを実効性のあるような権限の行使ができるように、先ほど樋口委員がおっしゃったような、警察に対する指揮の権限だとか、そういうあたりをかなりはっきりとした形で与えて、指定弁護士によって運営するのがいいのではないかと私は思います。

○本田委員 権限の問題ですけど、現在の付審判請求事件での指定弁護士というのは、検察官と同等の権限を持っているわけで、それについては何ら問題ないでしょう。ただ、検察事務官とか司法警察職員に対する指揮については、検察官を通じなさいと言っているだけの話で、そこは人的なつながりの問題もあって、指定弁護士が直接やるよりもスムースにいくだろうという考慮が働いているのだろうと思います。
 当然、検察としても、指定弁護士からの捜査指揮の嘱託については、積極的に協力するというのは当然の話で、これはかなり古くから通達が出ているのですけれども、検察官としては、こういった事件の性質にかんがみて、裁判所の指定を受けた弁護士たちに積極的に協力しろということになっています。特に、捜査指揮の嘱託を受けた場合は、これに応ずべきことはもちろん、指定弁護士がその職務を行うために必要とする執務場所、備品、消耗品などについても、検察庁において特別の考慮を払い、指定弁護士の職務執行上、支障のないよう留意されたいということになっており、こういった方針で臨んでいるわけで、そこに何らかの支障があるとは思えません。

○井上座長 ほかに、どうぞ。

○樋口委員 補充捜査が必要となる場合があって、補充捜査の主体は、B案でいった場合には、指定弁護士なわけですね。ただ、検察官に嘱託して行うという必要があると思いますが、それは、何を行うかというのは当然のことながら指定弁護士が判断するのですが、ただ、それを司法警察員が受ける場合に、捜査の方法とか時期とか、それなりに打ち合わせをした上でやらないと円滑を欠くということがあり得るわけですね。それは、検察官の方が、捜査機関、警察なら警察の組織であるとか、捜査のための捜査力であるとか、場合によっては、その他の事件の状況等についても承知していることが期待できるので、そういったことも踏まえた上で、検察官が嘱託を受けて行う、勘の働く検察官が仲介に入るという方が効率的であるということであって、仲介するから何か指定弁護士の主体性が損なわれるということはないのではないかと思います。
 それともう一点、補充捜査を十分担保する必要があるとか、権限を明らかにせよという御指摘についてなのですが、それが何を具体的に意味しているのかよく分かりません。嘱託して行うということで十分ではないかと思います。

○酒巻委員 最初にも言いましたけれども、皆さん、今ある付審判事件での指定弁護士の活動をイメージされているのでしょうが、検察審査会の事件では、付審判の事件とは違って、特に二段階案を採れば、その事件で行うべき捜査は尽くされており、それほど補充捜査が必要になるような事件は実はあまりないのではないかというか、それは言い過ぎかもしれませんけど、そんなに多いのだろうかというのが第一です。
 それを前提にして、今、樋口委員のおっしゃったところにかかわるのですが、今の指定弁護士の持っている捜査権限、専ら話題になっているのは検察に嘱託することですが、それ以外のところは、検察官と同様の権限が付与されているわけですので、私は、現在の付審判請求の制度に組み込まれている指定弁護士の権限で適切、妥当なのではないかと考えているところです。

○井上座長 ほかに何か付け加えることがありましたら。よろしいですか。
 今日は少し早く終わるかなと思ったんですけれど、やっぱりだめで、お役所が退ける時刻くらいまでは掛かるというふうにお覚悟ください(笑)。
 2の「(1) リーガルアドバイザー(仮称)の委嘱」というところですけれども、アにつきまして、これまでの議論では、B案を相当とするという意見と、C案を相当とする意見、二段階案をとることを前提として、二段階目においては、委嘱を必要的とすべきであるという意見、こういった御意見が述べられたところですけれども、それを踏まえてさらに御意見を賜ればと思います。

○髙井委員 私は、まず二段階案ですが、いずれにしても、二段階案で最後の2回目の検察審査会についてはリーガルアドバイザーは必要的にしなければいけないと思います。最終的に起訴相当の議決を維持するかどうかを判断するわけですから、これは必須であろうと思います。その前の1回目の検察審査会については、A案でいいのではないでしょうか。

○井上座長 分かりました。確かに以前もそういう御意見でした。ほかの方はいかがですか。

○四宮委員 私は前回、C案を述べました。その述べた趣旨は、いろんな事件のアドバイスを受けられる方がいいのではないかという趣旨であったわけで、審査会による審査を一層適正な充実したものにするために補助をまんべんなくできたらいいのではないかという趣旨だったわけですけれども、いろいろ伺いますと、濫訴的なものもかなりあるとかいう御意見もありました。
 その後、いろいろ考えてB案でよろしいのではないかと思います。要するに、原則としては、B案は、「A案に加え」ということですので、審査会が助言がほしいというときに呼んで、そして起訴相当の議決を行うに当たっては委嘱を義務的なものとするということであります。この必要的な委嘱というものは、必ず会議の期日に初めから終りまでいなければいけないという趣旨ではないという理解でよろしかったでしょうか。私は、アドバイスを求めたいときに、あるいは求めなければならないというときに求めるということで、ずっといなければいけないということではないという理解でおったのですが、それでよろしかったですか。

○井上座長 リーガルアドバイザーを委嘱するけれども、委嘱した以上は、その会議に必ず全部いないといけないのかと、こういう御趣旨ですか。

○四宮委員 ええ。特に義務的という場合ですね。

○井上座長 その点はどうでしたか。そういう理解がみんな共通していたかどうかですね。私の記憶では、そこまで突っ込んだ議論はなかったと思いますが。

○四宮委員 私もちょっと記憶がないのですが、常駐していなくてもいいのではないかという考えなんですけれども。

○井上座長 検察審査会が必要と認めるときにいてくれればいいということですか。

○四宮委員 ええ。

○井上座長 それだと、B案を採ったとしても、「検察審査会は、……ならないものとする」とされているけれども、本当はあまり必要ではない、自分たちの意見で決めたいというときは、最小限の意見を求めればいいということにならないですか。リーガルアドバイザーが何をするかによるのですけれども、リーガルアドバイザーとして、必要と思うときに意見を言うというシステムではなくなると思うんですけど。いろいろな組合せはあると思うのですが。

○四宮委員 リーガルアドバイザーの方から言いたい場合ということですね。

○井上座長 リーガルアドバイザーが、例えば、「皆さん、そういうふうな議論をしていますけど、この場合は、法的な枠組みはこうですよ。」と言うようなアドバイスはできないかもしれないですね。

○四宮委員 そういうことになりますね。

○井上座長 それでいいのかどうかということだと思うんですね。

○四宮委員 いいかどうかですね。

○井上座長 ですから、リーガルアドバイザーに何を期待するのかということだと思うんですけど、その辺りについては、確か、それほど、皆さんが共通の理解をしているわけではなく、突っ込んだ議論はしていなかったのではないかと思うんですけれども、重要な論点ですので、その点も含めて御議論いただければと思うのですが。

○髙井委員 四宮委員がおっしゃった、常駐しなければいけないという、「常駐」というのは、何を意味されているのかよく分からないところがあるのですが、リーガルアドバイザーの委嘱を必要的とする場合、検察審査会が開かれているとき、その案件を審査しているときは、最初から最後までいなければいけないというのは当然だと思うんですね。

○四宮委員 当然ですか。

○髙井委員 そう思います。私は、そういう趣旨で、今までずっと意見を言ってきたつもりで、検察審査会が開かれている途中の、例えば10分ぐらい居たらいいよという問題ではないと私は思うんですね。
それから、こういう話をしていいのかどうかよく分かりませんが、つい最近新聞を読んでいましたら、対向車線を走っていたオートバイがカーブを曲がり切れずに自車線に入ってきて、それをはねて死なせてしまったという事件で、検察官は被疑者を不起訴にしたという事件なのですが、それを、検察審査会が申立てを受けて、起訴相当の議決をして検察官に事件を戻したという報道が載っていました。私たちの常識から見ると、対向車線に入ってきたオートバイをはねてしまったのは、どうしようもないではないかと思っているわけですが、そういうような案件を見るにつけ、リーガルアドバイザーは絶対必要だと思います。しかも、それは、呼ばれたときだけ居ればいいという問題でなくて、ちゃんと責任を持って記録を読み、最初から最後まできっちりそばにいて、質問を受けたら答え、どうしても言わなければいけないという案件の場面が来たらちゃんと言うというものでないと、やはり非常に不安定な制度になって、本来起訴されてはいけない人が起訴されてしまうということにもなりかねないと思います。

○酒巻委員 二段階案を私は採るのですけれども、それを前提にした場合、二段階目の審査というのは、いよいよ当該被疑者が起訴されるかどうかに決着がつく、そういう重大な局面段階ですので、二段階目のときには最初からリーガルアドバイザーがいらっしゃる、そういう制度がいいのではないかと思います。
 B案は、最終的な法的拘束力のある議決を行うに当たっては必要的という格好なんですが、B案のままですと、「その議決を行うに当たっては」というのがいつなんだというのが非常に茫漠としていると思います。それよりは、制度として、二段階目の場合は大変重要な決断がなされるので、最初からアドバイザーにいてもらうことを必要的にするというのが望ましいのではないかと思います。

○池田委員 私は、B案でいいのではないかと思います。二段階目についても、やっぱり検察官の再考の結果、不起訴になったら、それはしようがないなという事件もあるように思うんですね。そうだとすると、すべてリーガルアドバイザーが必要だというまでのことはないのではないかと思います。
 先ほど、四宮委員から、いつ出席するかという話がありましたけれども、ここは、委嘱しなければならないという趣旨の委嘱に当たるのかどうかによると思います。つまり、一番最後の議決のときだけ、1分前に来てください、はい、リーガルアドバイザーが居ましたよ、というのでは、それは委嘱にはならないわけですから、そこは、実際的な、実質のある議論に立ち会うことが求められると思います。例えば、議論の中で当然その日はずっと居なければいけないかもしれないし、あるいは大事なところで呼ばれて、そこで本当にリーガルアドバイザーからいろいろ法的な知識の話を聞いた上で決めようというときには、そこに居ればいいわけですから、必ずしも最初から最後までいなければいけないというものでもないように思いますけど。

○髙井委員 池田委員の先ほどの御意見は、要するに、起訴相当の議決をするときだけリーガルアドバイザーを委嘱すれば、それで起訴ミスは防げるのではないかということだと思うんですね。しかし、検察審査会の起訴相当意見に拘束力を与えようという、その考え方は、検察官が判断を誤って不起訴にした場合に、本来、起訴されるべき案件については起訴されるようにしようというのが本筋だと思うのですね。
 そうしてみると、仮に、B案の場合には、検察審査会が、例えば検事の説明に幻惑されて、本来、公訴提起が相当である事件であるにもかかわらず、これは不起訴でいいというふうに誤った判断をしてしまった場合には、それは救えないということになりますね。ですから、そういう意味で私はB案に賛成できかねる。検察審査会の委員が検察官の説明に幻惑されて、不起訴でいいかなと思っていても、リーガルアドバイザーがいて、これはかくかくしかじかで、検察官の説明はおかしいので、これは起訴はされるべき事件であるというような助言をするということもあってもいいのではないかと思います。そういう意味で、私はB案には賛成できないということです。

○大出委員 前回、私は、C案ということを申し上げたと思うのですが、今の髙井委員のお話などを伺いますと、そのときのC案の趣旨は、今のようなところまでリーガルアドバイザーが与するというようなことを是として申し上げたわけではなくて、あくまでも検察審査会のメンバーの主体的な判断というものを最大限尊重すべきなのであって、ただ、起訴相当の議決に法的拘束力を認めるという話になったとき、法的に迷うこと、専門家の意見を聞いてみたいということが起こり得るであろうということが前提で、その場合には意見を聞くことができるという態勢を保障する必要があるだろうということで、私はC案ということを申し上げたのではないかと思うんですね。
 ですから、今のお話を伺っていると、リーガルアドバイザー自身の判断が優越する場合があるというようなニュアンスのお話になるわけで、それは少し違うのではないかと思います。イの部分と重なってしまうということになるのだと思いますが、私はその限りでは、C案ということで、居てもらうべきだと思います。それは、必要な場合にいるということとどこが違うのかということを言われると、しかも、先ほど来のお話ですと、委嘱した以上、居るということが前提だということで、私もそう思ってC案と考えたわけですが、A案の場合も必要と認めるときということで委嘱したときには、必要と認めて、委嘱した以降はずっと居ると、こういう趣旨というふうに考えられるわけですね。それは事件の性格等々の関係でそういう話だと思いますから、そうすると、A案とC案とは違わないのかなという感じもするのですが、いずれにせよ、私としてはそういう趣旨でC案ということを申し上げたいと思います。

○井上座長 その点は、イのところで御議論いただければと思います。どうぞ。

○本田委員 私はB案でいいのだろうと思います。常時居る、居ないという話が先ほどあったのですが、それは、リーガルアドバイザーの職務内容との関連で決まるのだろう思うんです。実質的に職務ができるような形で関与してもらわなければ、何のために置いたか分からないわけで、そこは実質で考えていくことになるのだろうと思います。

○井上座長 池田委員も、実質はやってもらうという前提ですよね。

○池田委員 もちろん、そうです。ですから、今の本田委員の意見と変わらないと思います。

○井上座長 イのところの話かなという感じがするんですね。全く不必要なところまでずっとそこに居なければいけないという話ではないのかなという気がしますけど。

○四宮委員 私がさっき申し上げて、池田委員が、最後の1分だけいればいいように、私の意見を紹介されましたが(笑)、そうではありませんで、実質的に必要な場合に居るということです。

○平良木委員 私も同じで、起訴相当の議決に特別の効力を認めているので、そのときには少なくとも居た方がいいと考えます。したがって、その意味で言うとB案が相当と思います。

○土屋委員 私もB案で、理由は同じです。拘束力がある議決をするときにリーガルアドバイザーは不可欠であると思います。

○樋口委員 B案でよろしいと思います。

○井上座長 ちょっとイの方に入ってきているものですから、イの論点について御意見を伺いたいと思います。ここでも、これまでの議論では、たたき台を相当とする意見がある一方、リーガルアドバイザーが検察審査員に事件に関する意見を述べることができるものとすべきであるという意見、反対に、そういう意見を述べるものとすべきではないという意見、主にはそういう3通りの御意見が述べられたように記憶しますけれども、この点についても、さらに御意見があればお伺いしたいと思いますが、先ほどの大出委員の御意見は、リーガルアドバイザーは意見などは述べるべきでないと、要するに、検察審査会から命ぜられたことだけをするべきであると、こういうことですか。

○大出委員 そうです。

○髙井委員 先ほど、大出委員から、私の意見がリーガルアドバイザーの意見を優越させるものだという指摘がありましたけれども、それは私の真意とは違っていて、リーガルアドバイザーの意見を優越させるということではなくて、リーガルアドバイザーが居て、例えば検察官も見落としている、検察審査会も気づかない、そういう事実認定上あるいは法律上の問題点の見方、視点というようなものを、ここにもこういう見方がありますよという提案をする、その見方に立ったら結論はこうあるべきだということは言わないわけですけれども、そういう視点、あるいは問題点をきっちり整理して提示をすることは必要でしょうということを申し上げているわけですね。そういうものがあって、初めて、検察審査員は正しい判断に帰着することができるのではないですかということを言っているわけです。
 ですから、イの原案は、「各検察審査員の求めに応じ」とありますが、場合によったら求めがなくても、こういう点はどうですかと、考えておかなければいけないのでしょうかというような助言ができるという仕組みじゃないといけないというふうに思います。

○井上座長 大出委員は、求めがあっても意見を述べてはいけないという御意見なのか、それとも求めがあれば意見は述べていいという御意見なんですか。

○大出委員 そこは微妙ですけれども。

○井上座長 微妙というのはちょっとやめてもらいたいですね(笑)。

○大出委員 ですから、どういう場合かということにもよると思うんですが、意見ということであれば、求めがあれば述べることはあり得るだろうとは思いますけれども。

○井上座長 分かりました。ほかの方は、いかがですか。

○酒巻委員 私は、リーガルアドバイザーが意見を述べることの当否に関して、かなり前に、検察審査会という制度は、一般国民の皆様だけで構成された合議体が不起訴処分の当否を判断するという制度である以上、リーガルアドバイザーが居ることは重要ですけれども、起訴相当にすべきか、あるいは不起訴不当なのかとか、終局的に、本来、一般国民の皆様だけで決めるべき事柄については、意見を聞かれても、リーガルアドバイザーは立ち入った意見は言うべきではないと述べたと思います。しかし、このたたき台の表現の中に出てくるように、一般国民の審査員から質問があって、法律上の問題あるいは証拠の整理とか、法律の解釈、例えば、現在の判例実務であれば、これこれこういう証拠があれば、こういう判断になるであろうというような予測にかかわるような事柄を述べるのは、議決すべき内容にわたる意見を述べることとは区別でき、認められるのではないかという趣旨の意見を申し上げました。その意見は、今でも変わっておりません。法律家であるということで、結論はこうですと、こうすべきですというようなところまで突っ込んだ意見は述べるべきではないが、それ以外の事項については、求めに応じて審査員の判断に必要十分な情報を整理し御説明すると、そういう役割だと思っています。

○井上座長 髙井委員が出された問題はちょっと違っていて、事件の処理、結論についてどうこうというよりは、プロとして立ち会って、証拠関係を見たりした場合に、こういうポイントがありますよということをむしろ指摘すると、そういうことだったと思うんですね。その点はどうですか。

○酒巻委員 その点は、全く想像ですが、ある部分は、検察官が出て来られて、どうしてこういう処理をしたのかという説明が行われるわけですね、法律家として。私はそれでいいのではないかなと思います。

○井上座長 リーガルアドバイザーが立ち会っていて、検察官が説明しておらず、検察審査員も気づいていないという法律上あるいは証拠上、事実認定上の問題があると、そういう場合なんでしょう。

○髙井委員 そうです。

○井上座長 そういう場合、どうするのだと、黙っていろというのかということなんですね。

○酒巻委員 事実認定上及び法律上の問題点の整理、解説ということで指摘をしてもいいのではないかと思いますが。

○大出委員 その場合に、リーガルアドバイザーの指摘の妥当性とか相当性ということについて、誰がチェックをかけることになるのですか。つまり、今、酒巻委員が言ったように、検察官が出てきても言わなかったと。検察審査会も気がついてないと言うけれども、アドバイザーの言っていることが妥当だとか相当だとか正しいという保証はないわけでしょう。私の趣旨は、今、酒巻委員がおっしゃったことと一緒で、つまり結論にかかわるようなことは言うべきではないわけです。ですから、それと同様であって、今の点についても、そういうことになるようなことが想定される場合については、それは審査員の判断に任せるべきということになるのではないでしょうか。

○本田委員 私は、このたたき台の案でいいのだと思っていますけれども、最後の「審査員の求めに応じ、必要な助言」というのはどこまでできるのかというのは確かにいろんな意見があると思いますが、リーガルアドバイザーが、最終的な判断者である検察審査会の判断を不当に誘導するような方向でもっていくのはだめだということは間違いないだろうと思います。ただ、事件にはいろいろあって、事実関係はみんな確定していて、過失があるかどうかというのはかなり評価が難しい部分があったりする、過去の判例に照らしてどうだろうかと、審査会の方が本当に迷って、プロの法律家に、こういった事実関係を前提にして、これは過失が成立するのでしょうかというようなことを聞かれたときに、これは答えちゃいけないのでしょうか。リーガルアドバイザーが私の考えはこうですと言ったとしても、それは、あくまで参考意見であって、最終的には審査会が判断するわけですね。そこはちゃんと担保されているわけです。素人の人が入っているわけで、いろんな法的評価が絡むような事件について何も教えてやらないというのはちょっと不親切ではないかという気はするのですけれども。それは、あくまでも参考意見だということです。

○池田委員 私も今の本田委員の意見には賛成です。リーガルアドバイザーは、いろいろ法律家として気づいた点を指摘して述べるのが本来の在り方ではないかと思います。もちろん、このたたき台にあるように、「検察審査会長の指揮監督を受け」ということで、その範囲内でということになるとは思いますけれども、法律家として気付いた点は指摘すべきではないかと思います。
 また、最終的な結論を述べる、あるいはそれを押し付けるというのは、それはアドバイザーの権限の域を超えているわけですので、そういうことは許されないことは当然ですけれども、それ以外の法的な見地、事実認定上の問題等を指摘することは自由にできるのではないかと思います。

○四宮委員 私もこのたたき台の「従事するほか」までの仕事は当然にアドバイザーの職務であろうと思います。問題は「必要な助言」の中に何が含まれるかということで、さっき髙井委員がおっしゃった、特定の事件に関するポイントとか、あるいは考え方の筋道ですとか、そういったものを示すことは職務の範囲内だろうと思います。ただ、ここは争いはないと思いますけれども、結論を示すことは行き過ぎで、助言の範囲を超えると思いますし、例えば、個々の証拠の評価なども、本来は審査員が行うべきところなのではないかと思うのです。なかなか線引きは難しいわけですが、ただ、本田委員のおっしゃった例の、過失があるかどうか、あなたどう考えますか、と聞かれたアドバイザーが、参考意見だけれども、どう思うかを答えるというのは、例えば業務上過失傷害などの事件については、言わば結論部分を述べることになるのではないかと思うのですね。そこまで、求められたから述べていいのかという点については、私個人としては違和感を感じています。私は、髙井委員がおっしゃった、ポイント等をきちんと示すと、ただ、判断とか考えてもらうのは審査員にやってもらうということなのだろうと思います。

○井上座長 それこそ微妙で、過失があるということはどういうことなのかということを踏まえた上、この事案の場合には、ここのところがポイントです、ここのところをどちらに評価するかなんです、というように、問題点を整理をすることまでは、今おっしゃった「助言」に入ると思うんですね。しかし、このところをこう評価すれば、こっちになって、こう評価すればこうなんですよというところになってくると、最終的な結論を述べることとほとんど一体ですよね。どの辺で線を引くというのはかなり微妙ではないでしょうか。ほかに、いかがですか。どうぞ。

○平良木委員 本当に難しい問題なのですけれども、例えば、起訴相当の意見を出すというときに、現行法では8人以上の賛成ということになっている。リーガルアドバイザーの意見がその中に入ってはいけないということは誰もが認めるということですよね。

○井上座長 それはもちろん。

○平良木委員 それから先の話で、例えば、いろんな事案を見ていても、先ほどから出ている、いわゆる過失の内容というのは、恐らく道路交通法違反が加わったときに、その区別が分からないということが随分あると思うんですね。そのときに、いや、道路交通法違反はあるけれども、これが直ちに過失の内容になるわけではないというような言い方ができなければ、これはおかしいのだと思うんですね。そうすると、ある意味で結論に近いところというのは出てこざるを得ないだろうと思います。だけど、こっちが絶対正しいのだとか、あるいはこっちでなければいけないのだというところになると、これは明らかに行き過ぎなので、言ってみると、そこら辺で線引きをする以外ないのだろうと思うんですね。

○髙井委員 具体的には、例えば、危険運転致死罪を適用するのか、業務上過失致死罪と道路交通法違反の酒酔い運転でいくのか、これは非常に難しいと思うんですね。酒を飲んでいて、酔っぱらって運転をして人をはね、死なせてしまったという場合、被害者の遺族の気持ちからすれば、酒飲んでいるのだから危険運転致死罪ではないかということになるでしょう。だけど、それは法律家として見れば、酒は飲んでいるけれども、一応まともに運転していたわけだから、これは酒酔い運転と業務上過失致死だということになりますね。それで、何らかの理由で不起訴になって、検察審査会の審査にかかったとして、普通の人たちは、酒飲んで事故を起こしているのだから、起訴するなら、危険運転致死でしょうということでどんどん議論が進んでいってしまうかもしれない。そういったときに、いや、そうじゃないよということはどこかで言えないといけないと思うんですね。最終的には、それはあなた方が判断することですけれども、これは法律の構成からいったら、これは違いますよという、そういうぎりぎりのところに来たら、そういうことも言えるという余地がないと、本当は起訴されてはいけない人がどんどん起訴されてしまうのではないかという不安を持ちますね。

○井上座長 言い方もあるのかもしれませんね。皆さんの御意見が枠組みとして大きく違っているような感じもしないのですけど、この点はこのぐらいでよろしいですか。まだ先があるので、先に進ませていただければと思います。
 次が「(2) 検察審査員の義務・解任」、「(3) 罰則」、「(4) 検察審査員の欠格事由等の見直し」というところですが、いずれも裁判員制度における検討を踏まえて検討する、あるいは見直すというふうにたたき台はなっておりますが、具体的なたたき台の案は示されていませんので、御意見を伺うのは難しい面もありますが、基本的にどういうふうに考えればいいかという姿勢というか方向というか、そういうことについて御意見を伺えればということですが、まず「検察審査員の義務・解任」について、裁判員制度と同様に義務及び解任の規定を定めるべきかどうかという点についてはいかがかということから伺いたいと思いますが、いかがでしょう。

○髙井委員 本来、公開されないはずの捜査記録を読んで、いろんなプライバシーにわたる事実も知るという立場にあることは裁判員と基本的に同じなわけですから、基本的には裁判員と同様の義務及び解任の規定を設けるべきだと思います。

○井上座長 という御意見ですが。

○四宮委員 現在の検察審査会法には、いろいろ義務が定められているわけですけれども、それに何かを加えるのですか。現在、義務に応じない場合には、解任の規定はないんですね。

○髙井委員 加えるとかそういうことではなくて、抜本的に、裁判員の義務から新しく検察審査員の義務及び解任を考え、その結果、今の検察審査会法の規定と同じものが出てくる場合もそれはもちろんあるでしょうけれども、それは、今の規定に、別個に何かを足したり引いたりするという発想ではないということです。

○井上座長 裁判員制度の場合を踏まえて、検察審査会制度についてはそれに準ずるというような形で考えるべきだと、こういう御意見ですか。

○髙井委員 はい。

○本田委員 私も髙井委員と同じ意見でして、検察審査会の議決に、公訴提起の効力を認めるわけですから、審査の公正に対する国民の信頼を確保する必要があります。それから、審査そのものが適正にならなければいけないという要請が強く働くわけですから、どういうものを設けるかというのはいろいろ今後検討していかなければいけないのですけど、例えば、会議にちゃんと出席しなさいとか、あるいは審査の公正性に対する信頼を損なうようなことはやってはいけないのだとか、守秘義務であるとか、こういったものは盛り込んで、そのような違反があった場合には審査会の議決で違反者は解任するといったような制度を設けるべきであると考えています。

○井上座長 いかがですか。特に御意見がなければ、先に進んでよろしいですか。
 次は「(3) 罰則」というところですが、この点についてはいかがでしょうか。

○髙井委員 これも、裁判員裁判と同様なものを導入するべきだと思います。従前の検察審査会というのは、単なる意見を言うだけで何ら拘束力がなかったわけですが、今回、拘束力を与えて、要するに起訴するという非常に強大な権限を与えるわけですから、それに見合う罰則が出てくるというのはやむを得ないところだと考えます。

○井上座長 ほかの方、いかがですか。

○平良木委員 前回、私はリーガルアドバイザーを外すべきではないかということをちょっと述べておりましたけれども、これは要するに、リーガルアドバイザーの選び方といいますか、任免の仕方というのがかかってくるので、ここで非常に信頼のおける人が得られるのだったら、あえて罰則は要らないだろうという趣旨だったのですが、そこの見通しの問題というのがあると思うんですね。どんな人が選ばられるかという問題があると思うんです。
 それで、もし、選任が普通の形となって、リーガルアドバイザーにおかしな人が入ってくる余地があるというようなことだとすると、罰則の担保というのはある意味では必要だという気はいたしますけれども、まず選任の仕方の方、選び方の方をちゃんとした方がいいのではないかという趣旨で申し上げたということです。

○井上座長 同じことをやって、検察審査員は処罰されて、リーガルアドバイザーは処罰されないということですか。

○平良木委員 リーガルアドバイザーは、おかしなことをしないだろうという信頼が前提になるということです。

○井上座長 やった場合のことです(笑)。何か変かなという感じもしないでもないのですけれども。

○酒巻委員 平良木委員の御意見は、気持ちはよく分かるのですが、やはり罰則をつけるかどうかという基本的な制度の観点から言いますと、先ほど髙井委員がおっしゃったとおり、これはリーガルアドバイザーであれ、検察審査員であれ、補充員であれ、つまり、捜査記録に接するということでは同じなわけでありまして、要するに、処罰規定というのは、変な人が現れたときのための担保ですから、罰則は設ける必要があると思っております。処罰規定の内容、今、存在する罰則もあるわけですけれども、それらも含めて一遍きれいに整理し直し、また裁判員制度に関してもうけるであろう罰則との調整等も必要であろうと思います。調整というのは、それも踏まえて総点検して設ける必要があるということです。

○四宮委員 私も酒巻委員の意見に賛成ではありますけれども、今、定かに記憶していませんが、裁判員のところでもいろいろな義務を設けることについて議論があったと思います。そういうものも踏まえて、現行法も踏まえて見直すことは結構なのですが、私の希望は、必要最小限度のものにして整理をしてほしいという趣旨です。

○井上座長 裁判員のところでもそうだという御意見ですよね。

○四宮委員 そうです。あそこもいろいろな意見があったと思いますけれども。

○土屋委員 私も同じように必要最小限と思います。特に、現在の検察審査会法の44条の秘密漏泄罪のところには、新聞その他の出版物の発行に対する罰金という規定があるんですね。これは、裁判員制度の制度設計の中の罰則と微妙に絡んでくる問題でもありますので、このままでよろしいとはなかなか言えないということであります。

○井上座長 裁判員制度を踏まえて、この44条2項も見直せということですね。

○土屋委員 ええ。ただし、裁判員制度のたたき台の方では、このあたりは懲役、罰金というもっと重い罰則が示されておりますので、それと整合性をとれという意味ではありません。そういう意味ではなくて、ここに書いてあるような、言わば合議の秘密に相当するような会議の模様だとか、各委員の意見、その多少の数という三つが挙がっておりますけれども、それを掲載した場合には罰金だという構成になっていますね。微妙なところがあろうかと思います。
 それで、これより重くしろというふうに私は求めるつもりは全くなくて、そういう意味で、罰則は必要最小限にとどめてほしいという、四宮委員の意見に同調したいと思います。

○井上座長 ほかの方、どうぞ。

○大出委員 私は結論だけですが、今、土屋委員、四宮委員がおっしゃったように、裁判員との関係でいろいろと配慮するというようなことはあろうと思いますが、しかし、私は一段階説ですが、一段階説でなくて二段階説ということになったときに、検察審査会の委員の方たちのおやりになったこと自体について、先ほどもちょっと議論になりましたけれども、必ずしも自らの役割がどうだったのかというようなことが明確でない形で、罰則だけは非常に重たいというようなことにならないような配慮はどうしても必要だろうと思うんですね。是非、その点を配慮して、罰則の在り方について、整理をお願いできればと思います。

○本田委員 明確な役割がないまま罰則というのは、どういうことでしょうか。

○大出委員 先ほど申しましたように、二段階になった場合に、一段階目は一体何をしたのかというようなことになりかねないと思います。私は、先ほどもそういう意見をを申し上げていますが、それは、皆さんとは感覚が違うのだと思います。

○井上座長 検察官が再び捜査して、起訴するかどうか決めるので、検察審査会の意見は、参考程度の意見になってしまうということですね。

○大出委員 特に一段階目はですね。

○井上座長 そうすると、自分たちはあまり大したことやっていないのではないかという感覚になるのだけど、それなのに、義務とか罰則だけ重いのはかなわないと、こういうことですか、御趣旨は。

○大出委員 そういうことにならないようにしていただきたいということです。

○井上座長 それでも、検察審査会は十分に働いているというふうに考える人もいるということですね。

○大出委員 ただ、そこはちょっと……。

○井上座長 そこが感覚が違うということだと思いますけど、御意見は分かりました。

○本田委員 たたき台に書いてありますとおりに、公訴提起の効力を与えるようになると、検察審査員の知り得た秘密の要保護性というのはこれ以上に高まるだろうと思いますので、その罰則は見直していかなければいけないし、一方で、ここに書いてあるように、審査員に対する不当な圧力から審査員を保護する必要もあるので、威迫罪その他の罰則の整理も必要であろうと思います。罰金等も、1万円の罰金というのはほとんど意味がないでしょう。これは、社会情勢に応じてきちんと適正な額に見直す必要があると思います。

○井上座長 一通り御意見を伺いましたが、よろしいですか、この辺は。
 次は「(4) 検察審査員の欠格事由等の見直し」ですけれども、この点も、「裁判員における検討を踏まえ、見直すものとする」というのがたたき台ですので、基本的にどのように考えるべきかについて、主に御意見を伺えればと思います。もちろん個別の事由をどうするかという御意見も結構ですけれども、できれば基本的な考え方についてどうかという御意見をいただければと思います。

○四宮委員 基本的な考え方としては、現在、欠格、就職禁止、除斥、辞職等、いろいろ制限があるわけですが、これは大きく見直して、なるべく多くの国民が参加できるように見直してほしいです。特に、欠格事由の教育要件ですとか、20項目にわたる就職禁止の見直し、それから、辞職できるものとして、「年齢60年以上の者」とありますけれども、こういったものも現在の実態に合わせて見直し、結論としては、なるべく多くの国民が参加できるようにしてほしいということです。

○酒巻委員 そこについては、たたき台の表現で結構だと思いますが、私自身は、立法当時はどうだったかよく分からないけれども、今の目から見て、不合理なものは見直すべきでしょう。やはり重要なのは、裁判員制度も、法律家でない一般国民に関与していただく制度というふうに私は理解しておりますので、それと平仄を合わせた欠格事由にすべきだと考えております。

○井上座長 もちろん、それぞれの機関の性質上の違いというのはあると思うんですけど。

○酒巻委員 その点は、おっしゃるとおりでしょう。

○井上座長 ほかに、よろしいですか。
 次が「(5) 付審判請求手続との調整」です。これも、かなり法律論というか、テクニカルな問題になると思うんですけれども、アの申立期間については、これまでの議論の中では、A案が相当という御意見と、B案が相当という御意見が述べられたところですけれども、この点についてもさらに付け加えて御議論があれば承りたいと思いますけれども。どうぞ。

○酒巻委員 ここは、私、前回かなり熱烈にA案を述べたと思うのですが、意見は変わっておりません。検察審査会への審査申立期間は、現状どおり特に定めないのがよいと思います。たたき台のB案の立案趣旨として、前に事務局の方から、新たに起訴相当の議決に法的拘束力が発生するということから、付審判請求手続と同じように申立期間を設けて、被告人になるかもしれない人の地位の安定を図るべきだという理由が述べられたと思います。確かにそういう側面はありますけれども、そこから直ちに付審判制度と同様の期間制限でなければならないという制度が論理的に出てくるわけではないというのが一つです。
 それから、これまで審査申立期間がないところに申立期間を創出して、それを徒過すると、もう申立てができないとすることは、立法政策として妥当ではないと思います。論理的ではないかもしれませんけれども、これまでなかった申立期間を設けることによって、いつでも申立てができたという申立権者の活動が萎縮する、あるいは無駄になってしまうという危惧があります。特に、犯罪被害者の方が申立てをする場合、しかも検察審査会の事件は一般犯罪でありますから、そういう方が申立てをするときに期間があるというのは、いろいろと難儀な点があるのではないかと思います。
 さらに、期間が設定されますと、今度は検察審査会自体に、期間を徒過しているか、していないかというような、これまでになかった手続的なチェックを行わなければならないという負担が生じまして、それも望ましいことではないでしょう。
 なお、検察審査会制度は、従来から起訴相当の議決だけが意味を持っているわけでなくて、検察審査会は、不起訴処分に不服がある申立権者の不服を受けて、不起訴不当議決をするという形で再捜査を促し、その結果、検察官が起訴をするという結末に至って、そういう形で民意が反映されているという場合も多いわけです。単に起訴相当の議決をすることに限られない、広い現在の機能を少しでも萎縮させるようになる、申立期間の設定というのは望ましくないだろうと思います。
 長くなりましたが、以上です。

○四宮委員 酒巻委員に賛成です。理由は全部同じですが、一つだけ付け加えますと、被疑者の立場の安定ということがあると思いますけれども、現在でも不安定で困るということはないのではないかと思います。

○井上座長 そこはよく分からないですけど。ほかの方、いかがですか。髙井委員、どうですか。

○髙井委員 私はB案だと思います。今までは確かに申立期間はないのですが、それは、議決が拘束力を持たないからなんですね。非常に強い言い方をすると、単なる評論だったというふうに言ってもいいわけですね。確かにそれを受けていきなり起訴される場合もあるので、本当に評論だけなのかと言われると、そうでもないけれども、拘束力がないという意味では、制度的には評論だったわけですね。
 しかし、今回は、場合によったら起訴という効力を持つわけですから、今までがそうだったからといって、これからも、時効が完成するまで、いつ申し立ててもいいよというふうにはいかないのではないかと思います。やはり、被疑者としていったん不起訴になったけれども、また、いつ検察審査会によって起訴されるか分からないという状態で、時効完成まで過ごせというのは酷過ぎるのではないかと思います。ですから、ここは一定の申立期間を設けて、その期間が徒過したら申立てができないというふうにすべきだと思います。
 最近では、不起訴の場合は通知が来るようになっていますから、不起訴を知った日から、その一定期間内に含まれるのか含まれてないかということは、容易に検察審査会において把握することも可能だというふうに思いますので、一定期間という制限を設けたからといって、手続的に難しいということにはならないと思います。

○大出委員 私も今、髙井委員の御主張は筋だと思うんですね。前回、私は主張していたかどうか記憶がないのですが、今の髙井委員は髙井委員なりの筋だと思いますし、私は私なりの筋で、これはもうB案ということです(笑)。

○井上座長 なりの筋って、理由は同じですか。

○大出委員 理由はいくらか違うのではないですか(笑)。髙井委員は、起訴相当の議決に拘束力を認めるからということですが、その点は一緒ですね。私も、拘束力を認める以上は、被疑者に対する配慮というのはあってしかるべきと思いますので、いったん結論が出ているわけですから、その安定性というものをいつまでも脅かすというようなことはすべきでないということで、そこは申立期間を設けるというのが筋だと私も考えます。

○井上座長 髙井委員の場合、申立期間はどれくらいをお考えですか。付審判の場合は7日ですけれど、通知を受けてから、そのぐらいの期間が相当ということでしょうか。

○髙井委員 7日というのはやや短いのではないかと思いますね。

○井上座長 どのぐらいがいいんですか。

○髙井委員 被害者の立場としてはいろいろ考えるでしょうから、最低1か月ぐらいかなと思います。やっぱり、最低でも1カ月はほしいと思いますね。特に、例えば性的犯罪で不起訴になったという場合にどうするかを考慮すべきでしょう。

○井上座長 ここは、交通事故のときの議論とも関連してきますよね。そこはまた、原則はどうであれ、少し考えないといけないのかもしれませんけれど。

○髙井委員 どうしても、1週間というのはちょっと短過ぎると思います。

○池田委員 私は、今の議論を聞いても、やはりA案で、申立期間は特に定めないでいいのではないかと思います。先ほど、不起訴処分の通知の対象が広くなっているとの指摘がありまして、それはそういう運用になってきていることは理解しておりますし、望ましいことと思いますけれども、それでも、検察審査会の申立権者の範囲というのはもっと広いのではないかと思いますので、そういう意味からしても、現在と同じく、時効にかかるまではしようがなくて、それを短くするという理由はないのではないかと思います。

○土屋委員 私もA案です。申立期間は特に定めないでよいと思います。それは、ちょっと別の理由もありまして、検察審査会の一つの機能として、具体的な不起訴処分の妥当性について疑問を投げかけるということ以外に、現在の司法に対しての一種の不満というのでしょうか、問題点の指摘というか、そういった機能も現実に果たしている面があるように感じているのです。実際に検察審査会に持ち込まれた事件を契機として、新しく政策変更されて、刑事司法が見直されたものもありますね。ですから、そういう機能を考えると、一定の期限を設けてしまわなくて、どういう問題が起きているのかということを計る一種のバロメーターみたいな、そういうような機能というのを見落としてはいけないのではないかというふうに感じたりしているんです。
 そういう意味で、今、性犯罪の話が出ましたけど、性犯罪などは、考慮期間というだけでなくて、この間、法改正が行われて、告訴期限が撤廃されましたけど、いつまでに結論を出さなければいけないというような選択を迫るたぐいの犯罪ではないのだろうと思うんですね。そういった、言わば、現在の社会の動向を見たりする上で、検察審査会にどれだけの申立てが来るのか、どういう内容が来るのか、一体何が問題になっているのかということを知ることというのは、それなりに違う意味での意味合いがあるだろうと私は感じているんです。ですから、期限を設けない方がいいと思います。

○髙井委員 いったん捜査の対象になり、検察官の調べを受けて、仮に嫌疑不十分で不起訴になったとしたら、その後、安心して暮らせないとおかしな社会だと思うんですね。いったん検察官がきちんと捜査をして、嫌疑不十分で不起訴にしたにもかかわらず、私人である被害者の意向いかんによって、また捜査が開始されて、もしかしたら起訴されるかもしれないというような、非常に不安定な、あるいは不安な状態で、その後、時効完成まで過ごさせるというのは、時効制度の趣旨からいってもやや違うのではないかと思うんですね。ですから、ここは、起訴相当の議決に拘束力を付与する以上は、どの程度の期間が妥当かはさておくとして、一定の申立期間を設けるべきであって、時効完成まで、とにかく不安な状態で首洗いながら待ってなさいというのは、ちょっといかがなものかと思います。いったん司法の判断が不起訴と決まったにもかかわらず、そういう状態が続いていくというのはいかがなものかという感じはしますね。

○井上座長 ほかの方、いかがですか。

○平良木委員 私も今の意見にもかかわらずA案で、要するに、今の実際の事件を見ていても、いったん不起訴になったものが、かなり時間がたってから起訴されたというケースも実際上あるということです。そういうことが否定できない以上、現行法を特に狭めて解釈しなければならない必要性というのはないだろうということになります。

○樋口委員 結論だけ申し上げたいと思いますが、B案がいいと思います。理由は、拘束力のある議決ということであり、被疑者の立場、身分を安定させるために、申立期間を決定すべきだということです。

○本田委員 私は、確か前回はB案をかなり強く主張したと思います。今でも確かに髙井委員、樋口委員の方から述べられた理由は決して無視できないなものがあると思うのですけれども、一方で、例えば、一定の親告罪で告訴期間が撤廃されたような経緯をどう考えるか、果たしてそういうものと整合するのかなという気が若干してきておりまして、どうしてもB案でなければいけないという主張は若干弱めて、A案でもやむを得ないのかなと思っています。ただ、疑問は若干残っております。

○井上座長 さらに何か御意見がありますでしょうか。よろしいですか。
 次は、さらにテクニカルかもしれませんが、イの付審判請求事件について、付審判請求と審査申立てとが並行してなされた場合についての調整です。付審判請求と検察審査会による審査の申立てとが並行してなされた場合ということですが、A案は、特段の調整規定を設けないということで、こういう御意見があったと同時に、付審判請求棄却決定が確定したときは、検察審査会が拘束力のある起訴相当の議決をすることができないものとするというB案を相当とする意見、この両様の御意見があったところですけれども、この点はいかがでしょうか。どうぞ。

○酒巻委員 私は、結論を先に言いますと、A案で、特段の規定は設けずに、個別具体的な場合に応じて論理と法解釈によって決着をつければいいのではないかと思っています。B案は、要するに、検察官が不起訴処分にした上に、裁判所もこれは起訴すべきでない事件だというような裁判をした場合には、検察審査会はこれについては立ち入らない方がいいのではないかということをはっきりさせようという趣旨だと思いますが、そこまではっきり書かずに、むしろ、これは現状でも両方が並立する場合がありまして、もちろん今後は検察審査会の起訴相当の議決については拘束力が発生するわけでありますけれども、そのことも加味して、どっちかで訴追がされた場合には片一方を終りにするという形で対処すればよいのではないかと思っております。

○井上座長 ほかの方はいかがですか。

○本田委員 少なくとも、二重起訴にならないような調整は必要だろうと思いますね。それだけの手だてはしておかないと、付審判請求で起訴になりました、検察審査会も起訴しましたということで、二重起訴になるようなことは防がなければいけないでしょう。

○井上座長 それは、現行法の規定ではいけないんですか。同一事件が二重に係属した場合に、片方の公訴を棄却するということになっていますが。

○本田委員 そういう事後の調整をする前に、通知か何かをして、余分な手続にのせないようにしておくべきだろうと思います。

○井上座長 二重起訴の状態が生じないように事前に対処するということですか。

○本田委員 現実にはあまりないのでしょうけど、そうなる前に、予防措置をちゃんとやっておいた方がいいのだろうという気がします。

○井上座長 制度上ということですか。

○本田委員 そこは、法律で書くのか、事実上運用で対処できるのか、検討する必要があると思いますが、いずれにしても、何かやっておいた方がいいのかなという気がします。
 それから、付審判請求棄却決定が確定した場合に、検察審査会がもう一回、拘束力のある起訴相当の議決ができるのか。理屈の上では、できるということになるのだろうけれども、言うならば、各審級で棄却となって、最高裁まで争われて、それでも最高裁も棄却してしまった事件について、検察審査会が拘束力のある起訴相当の議決をするというのは、理屈の上ではあり得るのかもしれませんけど、常識的に考えると、被告人の立場から言うと、一体何なんだろうという気がしてしようがないです。理屈の上では起訴してもいいのですけれども、そこまでやって、請求棄却が最高裁までいって確定したような場合、その事件ついて、もし起訴相当の議決をして無罪になったような場合に、それは恐らく合議体としての検察審査会の国家賠償上の責任は必ず出てくると思うんですね。本当にそこまでしていいのかという気が若干するんですけど。時起訴相当の議決をしてもいいという理屈は立つと思うんですけど、本当にそこまでやらせていいのかなという疑問があるということです。何とも常識に反するじゃないかということなんですけど。

○井上座長 それを発展させると、請求棄却決定の確定に遮断効のような効力を認める規定を設けるということにいくのですか。

○本田委員 技術的な問題があるので非常に難しいんですね。例えば、破棄判決の拘束力みたいのが今ありますが、ああいった形のものがもしつくれるならうまくいくだろうと思うのですけれども、非常に難しいのは承知しております。だから、例えば、付審判請求審の方が、職務は関係ありません、暴行・傷害だけですが、これは認められますといって、特別公務員暴行陵虐罪についての付審判請求を棄却したときに、検察審査会が暴行・傷害だけで起訴相当の議決をするということはあり得るのかもしれませんね。

○井上座長 付審判請求を棄却する場合にも、いろんな場合があるので、およそ嫌疑がないという形の場合もあれば、職務犯罪ではない、公務上の犯罪ではない、職権濫用ではない、しかし暴行・傷害の部分はあるという、今言われたような場合もあるでしょう。その判断の内容によって随分違ってくるので、一律に遮断効というのも確かに難しいところがありますね。

○本田委員 それは、そういう制度を採るならば、どういうふうにして遮断するのか、非常に難しいというのはよく分かっているのですけれども、ただ、例えば特別公務員暴行陵虐罪について、何にも事実はありませんという決定が最高裁で確定した場合に、検察審査会が拘束力のある起訴相当の議決をして起訴になりましたが、無罪になりましたというのは釈然としないですね。
それで、もし身柄拘束されていたら、刑事補償の問題もあるでしょう。それは、検察官が2回不起訴にしているし、最高裁もだめと言ったのに、それでもあえて起訴するというのは、重大な過失が認められるのではないか、という問題が出てくるような気がします。

○井上座長 かなり理論的な問題だろうと思うんですけど、制度としては考えておくべきだという御趣旨ですか。

○本田委員 ただ、私も、規定は難しいことは分かっています。どういう切り取りで書けるのかというのは、私もちょっと今アイデアが出ませんけれど、ただ、そういう問題があるのだということです。

○井上座長 この点はいかがですか。なお検討するということでいいですか。どうぞ。

○四宮委員 確かに、今、本田委員がおっしゃったようなことは悩ましいことだと思いますが、その棄却決定の理由にはいろんなものがあること、それから、付審判の棄却決定については、民意が反映している制度ではないこと、それから、さっきのような問題は、検察審査会の審理が始まったときに、そういった前の付審判請求棄却決定等も、資料として判断の材料とし得るのではないかということ等を考えると、A案で、調整規定は特に設けずに、さっき酒巻委員がおっしゃったような形で対処していくのがよろしいのではないかと思います。

○井上座長 万一起こった場合はしようがないと、賠償をしてもらうということですか。

○四宮委員 ただ、検察審査会が国家賠償の対象になるかというのは、もう一つ理屈、つまり何といいますか……

○井上座長 対象にならないと言えますか。

○四宮委員 どうなんでしょうかね。

○井上座長 多分、四宮委員は、アメリカのことに詳し過ぎるので、そういう頭で考えていると思うんですけど、アメリカと日本の場合、損害賠償制度とか国家賠償制度の前提が大きく違います。

○四宮委員 おっしゃるとおりですけれど。

○井上座長 アメリカの場合は、主権の行使の場合にはトータルに免責されるという大前提がありますから、そこで多分免責されるのかもしれないのですけど、日本の場合は、そうではないですよね。

○酒巻委員 国家賠償のことは昔から気になっていたのですが、おそらく、今の国家賠償法の枠組みでは、起訴という公権力の行使自体に、故意・重過失があればということになるのでしょうけれども、公訴提起の仕組みにもよりますが、完全に免責されるというわけにはいかないように思いますが。例えば、リーガルアドバイザー等の適切な意見・助言をも踏み越えて暴走した検察審査会が、誰が考えても明らかに無罪になるような事件を起訴した。そして妥当にも裁判官が無罪判決を出して助かったような場合、仮に私がその被告人だったら、やっぱりそのような目に遭わされたら起訴の判断をして人々に対して何かしたくなるというか(笑)、国家賠償請求訴訟を起こしたくなるだろうなとは思います。

○井上座長 この点、かなりテクニカルな法制上の問題もあって、なお検討しないといけない論点だろうと思いますので、御意見いずれもごもっともだと思いますから、今日はこのぐらいにさせていただければと思います。どうぞ

○本田委員 このB案の下に、付審判請求棄却決定に対する抗告期間の問題が提起されているのですけれども、これは検討すべきだろうと思います。棄却決定に対して、現在通常抗告ができることになっているのですけれども、そうすると、時効完成まで、先ほど言ったように、被疑者はずっと不安定な状態に置かれるわけですね。要するに、棄却決定を受けた者については、不利益な状態が継続していると、付審判請求を受けた者にとっては、自己が被疑者だという立場が長期間にわたって継続して、それが一私人の意思にゆだねられるというのはどうもまずいのではないかと思います。
 例えば、ほかの規定の関係で言うと、付審判請求棄却決定の際の費用賠償の決定の方は、即時抗告の対象とされているわけですね。そうすると、いろんな不都合が出てくるので、ここは、立法するときの制約もあるかと思うんですけれども、抗告期間を法定する方向での検討が必要だろうと思います。どういうふうにするかは、いろいろまた難しい問題もあるかと思います。

○井上座長 これは御意見として承って、さらに検討していただくということでいいですか。

○辻参事官 はい。

○井上座長 いろいろと、法制上問題がないわけではないと思うんですけれども、このくらいでよろしいですか。
 次が2の「(6) 検察審査会の配置の見直し」と、「3 建議・勧告制度の改革」につきましては、これはこれまでの議論であまり御異論がなかったところだと思いますので、この際、特に御発言がなければ、これはこういうことでよろしいかと思いますが、いかがでしょうか。
 それでは、ちょっと最後駆け足になって申し訳なかったのですけれども、一応検察審査会制度についても、おさらいの議論を終えたということにさせていただきたいと存じます。
 これで一通り、第2ラウンドのおさらいの議論を終えたということになりますので、次回からは次のステップに移っていくということにしたいと思います。

○土屋委員 一つだけよろしいですか。

○井上座長 はい。

○土屋委員 あまり議論されてないところで気になっているのですけど、裁判員制度のところに戻ってよろしいですか。今日の議論というよりは、前回のところにちょっと戻ってしまうのですが、評決の仕方のところなんですけれども、これがどういうイメージになるのかというところなんです。つまり、投票をするのか、挙手をするのか、あるいは何もしないで、大勢がこうなのかという判断をするのか、そのあたりのイメージが分からないですね。どうしたらいいのかなというのが、私ちょっと気になっておりまして。

○井上座長 一般的に言うと、投票するかどうかは別として、意見が分かれてくれば、それぞれの意見を何らかの方法で確かめるということになるのではないでしょうか。

○土屋委員 どういう形とするのか、過半数にするのかどうするのかという議論のところで本来言うべきだったのですが。

○井上座長 それは既に議論しましたよね。ですから、最初から意見が一致していれば、そこまでするのかどうか。これも意見を最終的には確認するということにはなるのでしょうね。

○池田委員 私の意見としては、投票だとか挙手だとか、そんなことの必要でない、誰がどういう考えを持っているかというのが分かるような議論、今はそうですけど、そういうことが数人だったらできるだろうというふうに思うんですけど、投票とかしなければいけなくなってくると、これは陪審に近くなってくるのではないかと私は思っております。

○土屋委員 このあたりは、事務局もそういうイメージですか。

○辻参事官 法律で特に定めることなのかなという感じは持っておりますけれども、今、座長もおっしゃったように、必要なら何らかの形で意思を確認するということになると思います。今、池田委員からも御発言がありましたように、通常は評議の中でそれぞれ意見を述べて、最終的に意見が詰まらなければ、評決を行うことになりますが、誰の意見がどうなのかということが明らかになっていれば、それでいいのでしょうし、必要ならば、挙手なり、あるいは場合によって投票なり、それはそれぞれ適宜の方法でやっていただければ、それでもいいのかなという感じはしております。

○井上座長 理由まで詰めて合意しないといけませんから、意見ははっきり表明しないといけないと思うんですね。結論だけというわけに多分いかないので、そうすると、かなり難しい論点になれば、一人一人の御意見を確認していくということは必要になってくるのではないでしょうか。ただ、それは事案の内容とか、もちろん規模などにもよると思うのですけれども、そこで何がベストかということになるのではないでしょうか。漠然としたイメージですけど。どうぞ。

○平良木委員 これも言わずもがなかもしれませんけれども、参審では順序が決まっているというか、評決の仕方が決まっていて、まず、素人裁判官、参審員の一番若い者から意見を述べていけと。それが終わったときに、今度は裁判官の一番若いのから意見を述べていけということで、それで全体で意見を述べ合ってやるということに裁判所構成法では決まっているのですけれども、実際上は全然意味がないという言い方をしていますね。

○井上座長 中間評議だとかいろんなことを考えますと、意見を言うときに、あまりかたいものでやると、意見がうまく、実質的な意見が闘えなくなるおそれがあるが、ただ、最後の最後、意見が分かれたというときにどういう形で意見を確認するか、そこだろうと思うんですね。

○四宮委員 私も、いろんな議論を重ねていくということではあろうと思うんですけれども、今、座長がおっしゃった、最後のそこの決め方は、池田委員のようなイメージもあるでしょうし、あるいはまた別の、またアメリカの考えが強過ぎると言われるかもしれませんけれども、投票ということもあり得ないことではないでしょう。また、合議体の規模とかそういうものによるのではないですか。

○井上座長 秘密投票みたいな形になると、それは理由についてまで意見を表明したことにはっきりならないと思うんです。それが果たして、そういう形の投票というイメージだと正しいのかどうかということですね。
 その辺は、多分、法律事項というよりは、実際上の工夫なのではないかなという感じがしますけれども。

○四宮委員 平良木委員がおっしゃった、ドイツには規定があるけど、実際ごちゃごちゃになっているということなのですが、例えば、最初にテーマについて、裁判官からテーマをぽんと出すと。これも、私は別に法律で決めるようなことではないと思いますけれども、裁判長の方から、私はこう思うんですけど、というようなことは多分ないのだろうと思うんですね。

○池田委員 それは絶対あり得ないです。日弁連のドラマではそういう感じのところがありましたけど(笑)、あれは残念ながら、合議を見られたことのない人がつくっておられるのではないかと思って、私はあそこだけは本当に驚きました。

○井上座長 もし、必要ならば、次のステップで、また御意見いただければと思います。一応、これで第2ラウンド目の議論を終えたいと思います。
 次回の検討会は、10月10日、午後1時30分からの予定でございますので、よろしくお願いいたします。それでは、どうも長時間ありがとうございました。