○井上座長 それでは所定の時刻ですので、第29回「裁判員制度・刑事検討会」を開会させていただきます。御多忙の折、御参集いただきましてありがとうございます。
本日は前回に引き続き、まず「考えられる裁判員制度の概要について」という表題のペーパーに沿って議論をしていただいた後、前回お示しした「考えられる刑事裁判の充実・迅速化のための方策の概要について」という表題のペーパーの内容を御説明した上で、時間の許す限りですが、刑事裁判の充実・迅速化について議論をしていただくという手順で進めさせていただきたいと思います。
なお、前回お約束しましたように、「考えられる検察審査会制度改正の概要について」という表題のペーパーも用意し、お手元に配布させていただいておりますけれども、これについての御説明は、刑事裁判の充実・迅速化についての議論を終えた後にさせていただきたいと思います。
それでは早速、裁判員制度に関する議論に入りたいと思います。前回申し上げましたように、更に議論をしていただいた方がよいと思われる項目を、まず私の方から挙げさせていただいて、それらの項目について議論をしていただいた上で、それ以外の点で各委員において議論すべきだというふうにお考えになる事項についても御意見をいただくという形で議論を進めさせてきていただいているところです。
もう御承知と思いますが、もう一度確認させていただきますと、私の方から更に議論をしていただいた方がよいと考えた項目としましては9点ありまして、1番目がペーパーの1ページ、「1 基本構造」の「(1) 合議体の構成」の「ア 裁判官の員数」、2番目が同じところの「イ 裁判員の員数」、3番目が2ページの「(3) 評決」、4番目が同じ2ページですが「(4) 対象事件」の「(ア) 原則」、5番目が3ページの「ウ 事件の性質による対象事件からの除外」、6番目が8ページ「2 裁判員及び補充裁判員の選任」のところの「(9) 質問手続」のイ(カ)というところの理由を示さない忌避の人数という項目、7番目が14ページの「8 裁判員の保護及び出頭確保等に関する措置」の「(1) 裁判員等の個人情報の保護」、8番目が同じ14ページの「(2) 裁判員等に対する接触の規制」、9番目が15ページ「(3) 裁判の公正を妨げる行為の禁止」、以上の9点でありました。 前回の検討会では、5点目の事件の性質による対象事件からの除外というところまで御議論をいただきましたので、本日は6点目から議論を続けさせていただきたいと思います。なお、お手元にありますように、本日御欠席の清原委員から前回の検討会で議論をした項目に関するものをも含め、書面で御意見をいただいておりますので、適宜御参照くださればと存じます。
それでは議論に入りますけれども、6点目はペーパーの7ページから始まる「2 裁判員及び補充裁判員の選任」、「(9) 質問手続」、「イ 質問手続」というところの、(カ)の理由を示さない忌避の人数に関する項目というところです。
○四宮委員 議論の進め方についてですが、先ほど座長の方で、まずお示しになった9点の議論が済んだ後で、例えばここも議論をすべきではないかという点があれば、その後で取り上げるという理解でよろしいのでしょうか。
○井上座長 そうです。
(カ)の理由を示さない忌避の人数については、御説明したように、とりあえず私の方で、裁判員の数を仮に4とした場合、このくらいの人数ということをお示ししているのですが、この具体的な数字についての考え方については全くこれまで議論をしていませんので、こういうものを手がかりにして、その考え方について御議論をしていただければと思います。
○髙井委員 この数をどういうふうに考えるかによって、候補者の数がどの程度のボリュームになるかということになってくると思うんですね。
私はかねてから申し上げているように、相対的に適格な者を選ぶという観点からいうと、候補者はなるべく多い方がいいというふうに考えております。そういう立場からすると、ここに示されているように裁判員の員数と同数、あるいはマイナス1程度という考え方というのは妥当だろうなというふうに思います。
ただ、仮に裁判員の数が6になったときに、では6人となるのかというと、それではかなりボリュームが増え過ぎるかなという感じもします。理由があって忌避するという人が出てくるかもしれないわけですから、裁判員が4人であれば3ないし4という感じかなと思いますが、仮に裁判員が6になったら6あるいは5というのは多いかなという感じもします。
○井上座長 髙井委員は、裁判員の員数については5人という御意見ではなかったのではないですか。
○髙井委員 清原委員の提出されたペーパーに6人を軸にと書いてありますので、一応、それを忖度したということです。
○井上座長 つまり、仮に6人だとしたら、ということですね。裁判員の員数は、また蒸し返すと同じ議論になってしまうので、全部仮にということで議論を続けさせていただきたいと思いますが、ほかの方はいかがですか。
○池田委員 私自身はこの前言いましたように、3人でいいと言っていたわけですが、そのときの感じとしては理由なし忌避の行使数は2ないし3程度であり、その数より多いというのは当事者が恣意的な裁判員の選び方をすることを許すことになるのではないかという懸念もありますので、裁判員の数か、あるいはそれより少な目の数でいいのではないかと考えます。ですから、そういう意味では裁判員が4人だとした場合には、3ないし4ということになりますので、座長ペーパーの案は数としては相当なのではないかと思います。
今、髙井委員も言われたように、裁判員候補者の数は、両当事者が理由なし忌避を全部行使するとすると、その2倍までいって、そして更に辞退とか、あるいは理由付き忌避があるとすると、裁判員等の数の6倍ぐらいの人を裁判員候補者として呼んでおかないといけないということにはなるのかなという気がします。人を集めるのはかなり大変だなと思いますので、その意味では国民の協力というのが本当に大事になってくるなと思います。
○四宮委員 私は、裁判員の数はより多くという意見ではあります。具体的には、9人ぐらいでもいいのではないかというふうに述べてまいりましたが、だからといって裁判員の定員と理由を示さない忌避の数というのは、必ずしもイコールというかリンクさせる必要はないという意見です。
座長の御説明文の中にも、理由を示さない忌避の制度趣旨が書かれていて、当事者による忌避や最後のスクリーニングであるとか、それから、公正だと当事者からも信頼してもらえる裁判所を構成するための方策ということですが、この趣旨に照らすと、他方で欠格ですとか、それから理由を示す忌避という制度もあるわけですから、裁判員の数が多いからといって、この理由を示さない忌避の数も多くする必要は私はないと思っています。
以前に具体的な忌避の手続が終わった後の裁判員の選び方については、多くの方が最後に残った方の中からまた無作為に選ぶという方法をたしか支持しておられたと思いますけれども、そうだとすると、私は裁判員の数が私の主張のような規模だとしても、理由を示さない忌避権の行使ができる数は3人ないし4人という制度は十分にあり得るというふうに考えています。
○本田委員 この理由を示さない忌避の人数をどうするかという問題を考える場合、二つ考えなければならない点がありますけれども、一つは公平でできる限り質の高い裁判員を確保しようという要請であります。もう一つは、現実の事務負担を過大化させない、かつ、その裁判員の選出時には、やたらに戦術的とか戦略的にならないようにし、こういうことによって選出手続が長期化するという弊害を防ぐという要請であろうという点であります。そして、この両者の要請のバランスをどう考えるかということだろうと思います。
それで、公平でできる限り質の高い裁判員の確保という観点からすると、選任される母体となる候補者の数を多くして、理由を示さない忌避の人数を多くするということで、当事者から見て相対的により公平な、よりよいと思われる裁判員候補者が残るということになるだろうし、後者の観点からすると、余り多くなると困るということになると思うんです。
それで、そういうことをかれこれ考えると、座長試案の中で示されている、もし裁判員が4人ということになるのであれば、これと同数程度の理由なし忌避を認めても、事務負担が必ずしも過大になることもないし、そういう意味ではバランスの取れたものになるのではないかというふうに思います。
裁判員の員数を4人として、理由なし忌避の数を、3人とすべきか、4人とすべきか、この辺りは若干判断が難しいところがあるんですけれども、合議体の人数と同数でなければならないということまで言うのかという気もいたしますので、そこは3人でも4人でも、その辺りのところで落ち着けばいいのかなという気がしております。
もう一つ、今、四宮委員から裁判員を多くしても3、4人でもいいのではないかというお話があったんですけれども、それでも十分ではないかという結論はいいんですけれども、どうもその積極的な理由がよく分からなかったのですけれども。
○四宮委員 要するに、信頼してもらえる公正な裁判所を構成するための方策は、この理由を示さない忌避だけではないわけですね。既に私たちが検討してきたとおり、資格要件ですとか除斥ですとか欠格、それから理由を示した上での忌避というようなものもあるわけで、全体の仕組みの中で、この理由を示さない忌避という制度も位置づければいいということです。理由を示さない忌避だけで、公正な裁判所の構成を維持するということではないので、先ほど申し上げたような制度でも十分なのではないかという趣旨です。
○本田委員 よく分からないですけれども。まあ、いいです。
○井上座長 問題は、ほかの制度で、どれくらいの数が裁判員候補者から外れるかなのでしょうね。中でも一番難しいのは、辞退になってくるのかなという感じがします。
理由あり忌避については、説明に書きましたけれども、この人は不公正な裁判をするおそれがあると認定するのは実際にはなかなか難しいだろう。そうしますと、自動的に排除される欠格だとかそういう制度にかかってくることになりますが、それらでどれだけスクリーニングできるのかにもよってくるのだろうと思います。
○平良木委員 私も、この座長試案でいいのではないかと思っております。本田委員が言われましたけれども、やはり裁判員の質の確保と公平な裁判の実現ということから公平な裁判員の確保ということが必要で、そのときに、沿革的な、あるいは比較法的な観点を考えると、大体一方の当事者により同じ数ぐらいのものを理由のない忌避をする、また、もう片方でもそうするということで、大体座長試案に示された数が適当ではないかと考えております。
○井上座長 先ほど、池田委員は、裁判員候補者として6倍くらいとおっしゃいましたが、本当にそんなに要るのでしょうか。理由なし忌避の数が裁判員の数と同数だとすると、最低限3倍は必要ですね。そして、補充裁判員ということを考えると、それよりは多くないといけない。それにほかの仕組みで、裁判所に来てもらってからスクリーニングする数がどのぐらいと見込まれるかということを考慮に入れたトータルの数ということになりますが、6倍なのかもしれないし、4倍くらいでよいのかもしれないのですけれども。
○池田委員 そうですね、辞退などをどの程度認めていくかによって違うとは思いますけれども。
○井上座長 辞退を広く認めるとすると、かなりの数の人に裁判所に来ていただかないといけないということに多分なるんでしょうね。
ほかの方は、いかがですか。
○酒巻委員 座長試案で結構だと思います。
四宮委員のさっきの御発言に関して一言申しますが、アメリカでもチャレンジ・フォー・コーズはなかなか使いにくいのです。あなたはこういう不公平な裁判をするおそれがあるので忌避しますと具体的理由を示すのは実際には難しいので、具体的な理由は明示できないけれどもしかしこの人には陪審員にはなっていただきたくない、という場合を何とかするために、この理由なし忌避の制度にはかなり機能してもらう必要があると思っております。
○井上座長 次が7点目から9点目、これは相互に関連するところがあるものですから、一緒に御議論いただければと思います。「8 裁判員の保護及び出頭確保等に関する措置」というところの(1)から(3)までの三つの項目、個人情報の保護というところと接触の規制というところ、公正を妨げる行為の禁止の三つです。いずれの項目からでも結構ですので御議論をいただければと思います。
○土屋委員 報道に関係する部分がありますので、9月に御報告した以降の新聞協会などの動きを御報告しておきたいと思います。
新聞協会の人権・個人情報問題検討会という、ここにヒアリングに来た幹事団の組織ですけれども、そこが9月19日、最高裁に行きまして事務総長にお会いして、9月に表明した指針の内容を説明しました。その結果、最高裁の広報課を窓口として新聞協会との間で報道をめぐる具体的な申し合わせについて今後、協議していこうということになりました。また、同じメンバーが10月22日にも法務省の但木事務次官ともお会いして、同じように指針について説明をしています。法務省との間でも今後、話し合いを続けようということになっています。
それから、日本弁護士連合会との間では11月18日、同じように意見交換の機会を持つということが決まっています。
更に、2回目の懇談もスケジュールが入っていまして、法務省とは今月20日、最高裁とは12月3日、それぞれ具体的にどういう問題を取り上げていくのかというような、また総論的な話ですけれども、そこら辺りの意見交換をしようというふうになったと聞いています。
それから、もう一つ、新聞協会の中の動きなんですけれども、そういう法曹三者との懇談の場に臨むメンバーについて、10月30日の会合で決まりました。今年の幹事社は、産経新聞と日経新聞なんですけれども、その2社のほかに、朝日、毎日、読売、NHKの4社が加わって6社で、いわゆる自主的ルールづくり、裁判所との申し合わせ事項の協議というようなところを詰めていこうというふうになっております。
そのように、実際法曹三者と新聞協会の協議が始まっているということでありまして、座長のペーパーの後ろに、「自主的ルールについての状況を策定しつつあることを踏まえて、更に検討する」というふうにされていますけれども、これを裏付ける動きが新聞協会を中心に出ているということをまず御報告しておきます。
私の意見をついでですので、ちょっと申し上げたいと思うんですが、今まで述べてきた意見とそれほど変わらないものですから、繰り返しにならないようにしたいと思うんですけれども、裁判員の個人情報の保護の問題ですけれども、これについて私は個人情報の保護というのは、極めて重要な問題だというふうに考えていまして、住所や氏名などが公表されると、予想外のいろんな圧力を受けたり、家族の安全が脅かされたり、そういった不安を覚える人がきっと多いだろうというふうに思います。
そのような事態を防ぐために、我々のメディアの方としても協力をする用意があるということでありまして、新聞協会が今までの指針の中で述べているとおりなんですが、ただ、新聞協会は同時にすべてクローズにしない、完全に秘密にしておくような状態はつくらないでほしいという趣旨のニュアンスのことを言っております。つまり、個人情報の保護は必要であるとは考えるんですが、ただ完全に秘密にしておくこと、それが果たして公共の利益にかなうのかどうかという疑問を私は持ちます。
例えば、性犯罪といった例を考えた場合に、男性ばかりの裁判官、裁判員で裁いたら、一体どういう傾向の判決が出るのかとか、逆に、痴漢事件で、女性だけで裁いたらどうなってしまうのかとか、例えば性別だけ取り上げても、いろんな研究対象にもなるでしょうし、我々の報道の対象にもなると思うんです。
ですから、余りに個人情報の保護に傾いてしまって、そのことによってそういった一種の公共的な利益を図ることが損なわれるような事態は避けるべきであろうと思います。かえって社会的な利益に反するのではないかということもあり得るのではないかというふうに思うんです。
住所だとか、氏名だとかという、個人の特定されるような情報を保護する必要性は高いでしょうけれども、年齢だとか、職業だとか、そういった個人の属性に関する事柄については違った扱いがされてもいいのではないか、そういう余地があるのではないか、というふうに考えます。
それから、その次の接触規制の話ですけれども、これも新聞協会の中ではいろいろ意見が分かれているんですが、裁判の進行中に現職の裁判員や補充裁判員に接触してはならないのは当然だというふうに私は考えております。
そういう現に進行中の裁判ということを考えると、報道機関の側にも原則的に接触を控えようということには、それほど異論はないのではないかというふうに思います。ただし、雑誌協会がこの間ヒアリングで述べたように、裁判員が被告人と一定の利害関係があるというようなことが後で判明したようなとき、そういったときは公平な裁判が行われない可能性があるのではないか。だから、そういう事実があればそれは報道していく必要があるであろうということを言っておりまして、正に例外的な、緊急避難的な問題なんですけれども、そういう可能性というのはメディアとしては放棄できない部分もあるのかなというふうに私は思います。ただ、それは進行中の裁判の場合に望ましいことではないというふうに思うことには変わりはありませんので、あくまで例外的な場合ということですけれども。
ただ、この座長のペーパーで困ったなと思っているのは、かつて裁判員または補充裁判員であった者にも接触の禁止をかけてしまったことなんです。これでは、判決後に言わば話を聞いて、取材をして、いろいろな裁判に関する検証をしたり、あるいは論評をしたりというような作業ができにくくなってしまうのではないかと思うのです。その理由は繰り返しになりますので、余り述べません。
ちょっと長くなって申し訳ありません。裁判の公正を妨げる行為の禁止の部分なんですが、ここは新聞協会などが全面削除を強く求めている部分であります。その理由というのは、ここでいう「事件に関する偏見を生ぜしめる行為」、あるいは「その他の裁判の公正を妨げるおそれのある行為」という規定が、あいまいであってかえって問題を生ずるのではないかということです。公正な裁判が行われなければいけないということは、だれもが異論はない、だれもが尊重しなければならないことでありますから、一般論の形で書かれる限りは異論は出ないだろうという気もしますけれども、一般論であるために返って内容が包括的であって、いろいろ支障が出てくる面もあろうということが懸念されるわけです。メディア側には、「偏見」とは一体何をいうのかあいまいだという意見が非常に強くあります。
もしこの規定が、単なる一種の訓示規定のようなものとして置かれているにしても、この存在自体があると、それを理由にしたいろんな事前のメディア規制効果につながりかねないのではないかということを心配しているわけです。
そして、もしこういうことが起きれば、それは表現の自由と正面からぶつかり合うような懸念が出てくるのではないかというふうに私は考えます。ですから、罰則がない訓示規定であっても、法的な制度として規定することには消極的にならざるを得ないということです。
まして、座長が書いていただいたように、メディアは今、御報告したとおりの自主的ルールをつくりつつありますので、本来こういった法的な規定を置く代わりに、実質的にメディア側で対応すれば、それが受け皿として機能するのであれば、かなり解決される問題が私は多いだろうというふうに考えています。以前御説明したとおりのいろんな事情があって、自主的ルールというのは決していいかげんに勝手につくるルールでもないということです。ましてやそういうことで、法曹三者と協議した上でつくろうということになっておりますので、かなり実質的な効果のある内容になってくるであろうというふうに、私としては考えているわけです。
ちょっと心配しているのは、今のところ新聞もテレビも報道関係も、この案を巡って、メディア規制だというような言い方を今のところしておりません。それは、やはりいろいろと公正な裁判を確保するために安全措置を講じる必要があるだろうということを考えているからでありまして、そういった言わば慎重な態度を取っているわけですけれども、一面でまた裁判員制度そのものに対する是非については決断を下していないと、それについては留保するということをヒアリングで述べているとおりであります。ですから、制度のつくり方によっては、これはメディアに対する強い規制効果を持つ法案だというふうに評価をして、裁判員制度そのものについて反対だというような論陣を張るところが出てこないとも限らない。私はそれを心配しております。無用な摩擦を起こさないように、是非この項目については、新聞協会が主張しているとおり削除をお願いしたいというふうに思います。
○井上座長 最後の点は、聞き方によっては非常に不穏当に聞こえます。つまり、裁判員に賛成してほしければこの規制を取り下げろ、というニュアンスにも聞こえたのですけれども、そこのところは事柄が逆ではないかという感じがするのです。報道の方々が裁判員制度に賛成されるかどうかは、御自由だと思うのですが、裁判員制度それ自体について検討されて、国民的・社会的見地から非常に重要な制度であるので賛成だ、あるいは、それ自体にこういう問題があるから反対だということであれば分かるのです。しかし、報道の規制の部分があるから制度自体にも反対だというのは、ちょっと筋が違うのではないかと思います。
○土屋委員 別にそういうつもりで申し上げていることは全くありません。そうではなくて、いろいろ制度設計について、この部分については反対だという意見の方というのはいらっしゃるわけですね。そこだけ取り上げて、だから全部反対だという議論になりかねない危険性というのが、現に感じられないではないので、そういうことを申し上げただけのことです。
○井上座長 分かりました。
もう一点だけ確認したいのですけれども、一番最初に言われたことですが、法曹三者と協議が始められているということで、それはそれとして非常に望ましいことだと思いますけれど、新聞協会なら新聞協会自身の話として、ルールを検討なさっているという点については、いつごろ形になってくるのでしょうか。
○土屋委員 それは、恐らくどういう内容になるか、そして、それはいつごろであるかという両方の趣旨の御質問かと思います。私も別に新聞協会の代表ではありませんから、別にお答えできる立場ではないんですけれども、ただ一つの例を引きますと、ある民間テレビ局が自分の社内の自主的ルールというのを公表しておりませんけれどもつくっています。言わば集団的加熱取材といわれるような、いろんな事態が起きたときに、自分の社としてはどういうふうに対応するかということを書いてあるわけです。つまり被害者であるとか、関係者に迷惑をかけないように社会的に穏当と見られる取材方法を取ると、一言で言えばそういうことですけれども、そこには、こういうことはやってはいけない、ああいうことをやってはいけないということを書いてあります。ですけれども、それをまとめるまでに一つの社だけで1年掛かっているんです。
恐らく新聞協会全体で話をしていくということになりましても、今までのやり方がすべてそうなんですが、積上方式なんです。各社の意見をまとめて、その全体の方向を合意でつくっていくというやり方になりますので、そう簡単にはできないというふうに思います。
○酒巻委員 私には新聞協会の自主的ルールというもの自体の位置づけについて、まだよく分かっていないところがあるのですが、報道機関の協会が自主的ルールをおつくりになるのに際して、国家権力である最高裁や法務省との間で協議されるというのは、いったいどういう文脈なのかがよく分からないので、それを教えていただきたいと思います。
法曹三者や国家機関とお話し合いをしなくても、報道の自由という憲法価値に御奉仕される皆様が自主的にお作りなるものではないかと思うんですが、その辺がよく分からないので教えていただきたいということであります。
○土屋委員 自主的ルールだから自分たちで勝手につくればいいじゃないかという趣旨のもので本来あるであろう、ということはそのとおりだと思います。
ただ、具体的に問題が生じないようにしたいというのが、報道側としても考えていることなのです。そのためには、この間の指針に出ていますとおり、一番最後のところに書いてありますけれども、各地の事情に応じて裁判所との協議機関を設けて、そことの間でルールを、原則みたいなものを決めていきましょうというようなことを言っています。
ですから、いろんな御意見があろうかと思うんです。裁判所には裁判所の方として、こうするべきであるという意見はありましょうし、それから検察庁にも弁護士会にも、こんなことやってもらっては困るという意見もありましょうから、とりあえずその辺りの意見交換をした上で、それで自分たちで決めていこうということであります。
○酒巻委員 あとは繰り返しになりますが、土屋委員がおっしゃられた個別の問題について、私は基本的にすべて座長案に賛成であります。ということは、土屋委員のおっしゃったことにはほとんど反対ということになります。それについてまた意見を繰り返し述べることになりますけれども。
○井上座長 簡潔に述べていただけるのでしたら結構ですが。
○酒巻委員 では簡潔に述べたいと思います。一番のポイントは、報道関係の方は、事件が終わった後であれば、裁判員の守秘義務について変化が生ずるというお考えのようですけれども、守秘義務、評議の秘密等の趣旨からいって、そういう区別はできないのです。したがって、裁判が終了前であれ、終わった後であれ、守秘義務というものは続くものでなければ意味がないと考えています。
守秘義務の趣旨は既に述べたとおり、評議が自由に行われ、適正公正な裁判が行われるということが、何よりも重要なことであり、評議の秘密が守られない状態が生ずるという可能性があれば、評議での自由な意見交換はできなくなり、ひいては公正な裁判という極めて重要な司法制度の根幹部分が崩壊することになる。それを防ぐためには、裁判の途中であれ、終わった後であれ、守秘義務をかけるというのは当然のことであると考えます。
また一般的に裁判の公正を妨げる行為をしてはならないというのも、これは当然のことでありまして、当然のことを法律として規定するのも、これはまた当然のことだろうと思います。
それから、接触の禁止につきましても、座長案は要するに守秘義務を破るような目的を持って接触をすることを禁止するという形に修文されておりますけれども、これもまた先ほど述べた趣旨から、これで妥当だろうと思っております。
前にも申しましたとおり、私も自主的ルールによって裁判の公正が阻害されないということが最も望ましいことであり、そして裁判も国家権力の発動ですから、それを報道機関が監視し、適切に批判するということは憲法の保障した重要な価値であるからこそ、誤解のないように言いますと、できる限り自主的なコントロールをされることによって、国家権力による介入を回避するべく最大限の努力をしていただきたいというふうに思っているのでありまして、そのためにできる限り早く具体的なルールを定めていただきたいと思っている次第です。
○井上座長 ほかの方は、いかがですか。
○本田委員 個人情報の保護のところで、先ほど土屋委員の方から、例えば性犯罪について裁判員の性別の構成によってどうなるんだということを検証する必要があるということをおっしゃったんですけれども、判断に一定の傾向が見られないかもしれませんし、あるかもしれません。もしもあったときに、では制度としてこういう犯罪については女性だけの裁判員。こういうものについては、男性だけの裁判員、あるいは、男性と女性は何対何というような制度というのが、本当に構築できるのでしょうか。何か将来的に制度が改善できるようなものがあって、それに向けての検証とおっしゃるならよく分かるんですけれども、そこがどうもよく分からない。果たしてそういうことが可能なのか。同じことは裁判員だけではなくて、裁判官だって同じ話じゃないのかという気がします。ほかの部分についてはおっしゃらなかったんですが、そこだけちょっと疑問です。
それから、裁判員の個人情報の保護というのは、裁判員がきちんとした裁判を行う上で当然必要なことであって、座長試案以上の情報を公開すると、裁判員に無用な負担をかけてしまうので、そのようなことをする必要は恐らくないんだろうと思います。職業や性別などのデータが、例えば統計的な数値として出てくるというのは別にいいと思うのですけれども、個々の事件についてそれをどこまで公開するかといった場合には、この座長試案に書かれた限りでの公開で十分なのではないかという気がしております。
接触の禁止については、前からずっと申し上げているとおりなんですけれども、私は以前のたたき台の案でもよいというふうに思っています。ただ、この座長試案の方では、守秘義務の範囲で接触を禁止しようとしている。これはもう当然の話であって、裁判員等が守秘義務を負っている情報を聞き出す目的での接触、これは要するに守秘義務違反という犯罪を犯すことを慫慂する行為ですから、これを規制するのは当然だろうという気がしております。そういう意味では、この座長試案でもいいのかなと思いますが、もうちょっと規制の対象が広くてもいいのではないかという気がしております。
裁判員であったものに対しては取材してもいいのではないかという御意見もあったんですけれども、やはり裁判が終わった後でも一定の範囲での守秘義務に妥当性があるわけで、その守秘義務は全くないとおっしゃるなら別だと思いますけれども、先ほどの理屈はどうもそこが通らないのではないかという気がしております。
裁判の公正を妨げる行為の禁止ですけれども、イの方については、座長試案では報道関係で自主的ルールを策定され、それを踏まえ検討するものとされておりますが、報道機関の方で現にいろいろ努力されているということで、その努力は多としなければいけませんし、実効性のあるルールとなるかどうかということも当然検討する必要があるので、ここは是非実効性のあるルールをつくってもらいたいと思います。その上で、またこういったルールをつくる必要があるかどうかを検討しなければいけないということで、ここは座長試案に賛成したいと思います。ただ、その前にちょっと申し上げたいのは、「偏見」という言葉があいまいでよく分からないというような発言があったんですけれども、本当にそうなのでしょうか。法律にも「偏見」という言葉を使っている部分がありますし、報道関係も偏見という言葉を幾らでも使っているはずです。それはちゃんとその意味内容が分かっているからでしょうから、「偏見」という言葉だけあいまいだと言われても、なかなか理解できない部分があります。裁判の公正を妨げるおそれのある行為というのを行ってはいけないことは当たり前のことだと思いますし、それを書いたから表現の自由に抵触するとか、先ほどおっしゃったように、ここでいろんな摩擦が起きて裁判員制度がどうこうという話は、本末転倒ではないかという気がいたします。
○大出委員 今のお話の中で、この個人情報の保護のところの、イのところの、「その他のこれらの者を特定するに足る事実」ということですから、例えば年齢構成とか、あるいは男女比ということ自体は特に問題ないわけですね。個人個人が特定できるかどうかという問題ですから、先ほど土屋委員がおっしゃったこととの関係でいけば、今、本田委員のおっしゃったことが、それが問題だという趣旨になるのかどうか。ですから、年齢と男女ということでは、特定はおよそできないはずですから、そのこと自体は引っ掛かってこない問題だというふうに思いますけれども。そのことは確認されていたような気もするんですが、それはどういう趣旨でおっしゃったのかよく分からないのでお教えいただければと思います。もう一つ、メディアの関係の(3)のことなんですが、この点について私も当初いろいろと新聞協会の御意見を伺って、考える必要がある部分があるかなというふうにも申し上げましたし、ただ先ほどありましたように、新聞協会がいろいろとこの点について検討されているというお話を伺って、その限りではかなり素早い対応であったと、つまり従前新聞協会というなかなか大所帯で難しいっしゃるということは、いろいろと仄聞するところもあるわけで、そういう中で自主ルールをお決めになるという御方向で御議論があって、一定の方向でのペーパーをお出しになったということで、私としてはそういうことでの御努力がある、しかもそれがかなり迅速に行われたという印象を持ったものですから、それであれば訓示規定もないことの方が適切だろうというふうに思っているわけでして、基本的にその考え方は今も変わってないんです。ただ、先ほど土屋委員がおっしゃったように、これは例えであって、全体的にそうだということではもちろんないと思いますけれども、一つの社で1年間掛かったというのは、例としてはやはり今の時点ではもう少しお考えいただく必要があることだろうと思います。 ですから、大変難しい作業をされているんだろうということは重々承知しますけれども、やはりことの問題性とか、意味ということを考えた場合には、やはり是非その辺はできるだけ速やかに、それは酒巻委員もおっしゃったことかもしれませんが、できるだけ速やかに自主ルールをお作りいただきたいと思います。
私の認識では、これは何も裁判員制度が始まるからどうのこうのというだけではない課題でもあったと思うんです。既に十何年議論されてきた問題でもあるわけでして、そのことを踏まえれば、やはりこの先同じように時間が掛かるということでは、納得を得られない部分があるだろうと思いますので、是非そこは更に御努力をいただきたいというふうに思います。
○井上座長 最初の点は、アの方では書かれないのです。アでは、訴訟に関する書類である限りは、氏名以外は公開しないということになっているのです。
○大出委員 はい。ですけど、年齢構成についても全く出ませんか。ですから、書類以外で出すということがあり得ない。訴訟に関する書類でないところで出てくることはありえないということですか。
○井上座長 あり得ないというよりは、イの方は公にしてはならないということです。ですから、イは、積極的にどこまでの情報を出すかということにはなっていないわけで、アの方は、公開するのは氏名のところだけということです。
私も、本田委員と同じような疑問を持ったのですけれども、例えば痴漢事件とか性犯罪を例に挙げられましたけれども、仮にもし、性犯罪の場合に、男性だけの構成員で裁くのは判断が偏るのではないかとか、あるいは、逆に女性だけだと偏るのではないかとか、そういうことが仮にあるとして、それが不適切だとすれば、そういう構成にしてはいけないというルールをつくるという話になるのでしょうが、そのような偏りがあるのかどうかを検証するには、特定の事件について裁判体がどういう構成で、どういう結果が出たということだけでは、何も証明にはならず、相当の数の事件を対象として、統計的処理をしないと検証できないわけで、もしそういう目的で統計的処理をするというのであれば、個別事件の裁判体の構成員について属性を明らかにするということとは別の話ではないかと思うのです。
もう一つ、裁判進行中の接触のときに、裁判員が被告人などと利害関係があるかどうかということは、それ自体がいいかどうかは別として、裁判員が職務上知り得た秘密を知る目的というところからは外れてくるように思います。それと、もう一つ、以前の議論の中で指摘されたことですけれど、もしそういうことが事実としてあったならば、そのことを裁判所に伝えるなり、当事者に伝えるなりして、きょうすのが本来の筋ではないかと思うのですが、その辺をどうお考えなのか。挙げられている事例は、接触禁止に関する議論には適切ではないように思います。
○土屋委員 正に御指摘のとおりだと思います。私もちょっと例示が妥当だったかどうかということになると、ちょっと妥当でなかったかもしれないとは思ったりもしますけれども、ただ例えば性犯罪とか軽犯罪法違反、痴漢事件のようなものを例に挙げたというのは、そういうことを知ることによって、そのことによって現在行われている裁判をこういう方向に変えるべきだという提言につながってくる可能性があるという話なんだろうと思うんです。だから、どうすればいいとか、こうすればいいという、どんな議論が飛び出してくるか分かりませんけれども、そういうものとして個人情報の取り扱いというのは考えられる面があってもいいのではないかということをただ申し上げたかっただけだということです。
もう一つ、今も御指摘を受けた部分で、お話しておきたいと思ったのは、私もまだ余りよく整理できてないんですが、守秘義務の観点からだけ考えるというのは、どうも妥当ではないのではないかと思っているんです。刑事裁判が公開されるというのは、憲法上の原則ですし、それは国民が現実に行われている裁判の内容を知り得る必要性があるからだというふうに私は考えているんです。そうすると、何のためにそういうことが規定されているのかということを考えていくと、現実の進行している裁判というものについては、そこでは重大な死刑判決も出るでしょうし、大変な結果をもたらすこともあるだろうから、裁判の公正さというのが、最優先に考えられるべきだろうというふうに思うんですけれども、でも裁判が終わってしまった後については、進行中と同じなのだろうかという気もするのです。確かに、守秘義務ということで考えれば、同じではないかという話になるかもしれません。ですけれども、それはまた違ったレベルの話として考えてもいいんではないかという気が私はちょっとしているんです。つまり、司法の在り方というのはどうあるべきかというような意味で、司法の現状を分析、研究して、あるいは報道していくというような作業をする。そういう面での社会、公共の利益を図る必要性、そういう面がもうちょっと裁判が終わった後は前に出てくるという部分があるのではないかというふうに私は感じております。つまり、何が社会の利益なのかということに関して、裁判が進行中と終わった後では違うかもしれないという気が私はしているんです。
○井上座長 土屋委員の御議論だと、今の職業裁判官が行ってことも、裁判が終わった後は公開すべきだということになるのですか。つまり、職業裁判官のみによる合議の在り方についても検証すべきだということになれば、同じことが当てはまるのではないでしょうか。
○土屋委員 私は感動した本があるのですが、元裁判官の書かれた、例えば財田川事件の本とか、そういうものを読むと、そのときの裁判が一体どういうものであったのかということが分かりますね。
元裁判官、あるいは訴訟の関係者の方が一定の時期に、そういう内容を明らかにして、そのことを社会が広く認識することによって、もたらされる別の利益があると私は思うのです。裁判官と裁判員は同じではないかと考えて、裁判官には許されないだろうから、裁判員も同じように許されないだろうと考えて、果たしていいのだろうかと思うんです。つまり、職業倫理として守秘義務が重要な位置を占める裁判官と、特定の事件だけに限って参加してくる裁判員というのが、全く同じなのであろうかということを考えてしまうわけです。
○井上座長 土屋委員の御議論は、理由づけがちょっとずれていっているような気がします。最初は、裁判の公開ということから始まって、裁判の公開のためには評議の過程も公開すべきだという御議論だったと思うのです。どうやって裁判が形成されるかは、進行中の場合は裁判に影響を与えるからだめかもしれないけれども、後なら検証できるはずで、そうすべきだということをおっしゃったのですけれども、最後の方では、職業倫理として守秘義務を負わされている人と、一回だけ裁判に関与する人とでは違うだろうという議論になっていて、議論がずれてしまっていると思うのです。
一番最初の前提として、先ほど酒巻委員が指摘されたことにはどうお答えになるのか、ちょっとよく分からないのです。つまり、裁判の後であろうと、評議の中でだれがどう言って、どうなったといったことが明らかにされると、そこで自由闊達に意見交換ができなくなるという問題は残ると思うのです。
それと、土屋委員がおっしゃっているような要請とのバランスをどうやって取るのかということだと思うのですけれども。
○土屋委員 私はあえて繰り返さなかったんですが、座長は評議の経過ということを言われましたけれども、経過だって守秘義務の範囲に入ると思っているんです。
○井上座長 それは当然前提となっているのですけれども、終わった後は守秘義務の対象にならないということになれば、評議の経過は明らかにされるわけでしょう。
○土屋委員 守秘義務としてずっと守られなければならない部分というのはあるだろうと思うんですけれども、それは言わば裁判の中核を成すような部分ですね。
○井上座長 そうしますと、裁判が終わった後に守秘義務の範囲から外れてくるのは、何なのですか。
○土屋委員 例えば私は自分の意見は述べてはいいではないだろうかということを、前にも申し上げていますけれども、それは守秘義務とは関連ないであろうというふうに言われるかもしれません。しかし、合議の中で形成されたのが個人の意見であるならば、それは守秘義務と関係あるではないかという指摘ももちろんあるわけです。そういう意味で守秘義務と関連性があると言われる可能性があるだろうと思うんです。
ただ、私はそういう自分の意見を言うというのはいいのではないかとか、幾つか申し上げいるんですが、そういう部分というのは言わば守秘義務のどうしても守っていかなければならないコアの部分からは、ちょっと違う扱いを受ける類型のものなのではないかというふうに考えております。
○井上座長 在職中ではなく、過去に裁判員であったという人について、守秘義務の範囲から外れてくるものとして、主に念頭に置いておられるのは、その人自身の意見ということですか。
○土屋委員 主に意見ですね。
○井上座長 分かりました。
○本田委員 まず、今の最後の点、自分の意見を言ってもいいではないかということをおっしゃったわけですけれども、評議の場面というのは、お互いが裁判員も裁判官も自分の意見を述べて議論しながら裁判体としての一つの結論が出ているわけです。
それで、自分の個人の意見は言っていいと、しかし評議というのは中核みたいな部分で明らかにするのはだめだとおっしゃるけれども、そうであるならば、裁判員全員が、評議について、こうだった、ああだったと言ってしまえば、それは評議の内容が半分以上分かってしまうんですね。そこをどうやって区別されるのか。抽象的におっしゃるんでよく分からないんですけれども。
もう一つは、意見とかいろんなことを言って、裁判官については従前どおり守秘義務がかかるんだとおっしゃるんですけれども、では裁判員であった人が、裁判官が守秘義務を負っている範囲のことについて、必ずしも正確でないことを外に明らかにした場合、それに対して裁判官は一切反論できないですね。裁判官には守秘義務がかかりますから。そうすると、評議に関して不正確な情報が出ていってしまう、それは本当は違うんだということだってあるでしょう。そのようなことがあると、これも前から言っておりますけれども、極めて裁判が不安定になってしまうという問題が起きてしまう。
それから、いろいろ司法の在り方とかいうことを抽象的におっしゃるので、よく分からなかったんですけれども、では特定の事件について、証拠の評価をどうするかということを議論していった評議の過程を明らかにすることによって、どういう司法の在り方の議論とつながっていくのか、そこが抽象的過ぎていま一つ理解できない、分からないところがあるんです。もうちょっと具体的に、自分の意見を明らかにすることを許すと、こういうところでこうなって、そうすると司法の在り方は、今はこうですけれども、こういうふうになります、というようなことを、もうちょっとイメージをつかめるように説明していただけないと分からないんですけれども。その辺りの議論が抽象的過ぎて、どうもよく分からないという気がいたします。
○四宮委員 議論の進め方なんですけれども、8の「裁判員の保護及び出頭確保等に関する措置」ということで、3点議論しているんですけれども、議論を伺っていると、例えば、個人情報の保護とか、接触の禁止ということから、もちろん関連はするんだけれども、更に守秘義務の範囲という問題に相当議論が入っているのですが、それは前のところの裁判員の権利及び義務のところであったテーマだと思うのです。それもここで一緒に議論するのでしょうか。
それとも、私が考えていたのは、8のところは一応こういう形で議論して、もし守秘義務の範囲について議論すべきだと考える委員がいれば、私はそう思っているんですけれども、それはそれで座長の示された9ポイントについての議論を終わった後で議論するという形なのか。
今、ちょっと混乱しているように伺ったんですけれども。
○井上座長 幾つかのことを同時並行的におっしゃって、そして、その幾つかのことについて同時並行的に反論がなされたりしているものですから、議論が混乱しているようなところがあるのですけれども、今の最後のところに絞って言えば、私が1案として示させていただいた接触の禁止のところは、守秘義務を課された裁判員を手厚く保護しようという趣旨から、こういう規制を設けたということですので、それは、結局、守秘義務の内容そのものと裏腹の関係になるわけです。
ですから、どうしても守秘義務の議論になってしまうのですけれども、そこに踏み込んで議論していただいてももちろん結構だと思います。
○四宮委員 理屈で言うと、任務が終わった後の人は守秘義務が一切なくなるという考え方の人がいれば別ですけれども、最後まで守秘義務を負う範囲はあるということになれば、範囲の問題は別にして、その義務を負っている人に対して接触を規制すべきなのかどうかという議論はできるのではないかと思っていたのです。そうではなくて、範囲の問題についての議論がずっと行われていったものですから。
○井上座長 守秘義務の範囲が広いときには、接触の規制についてもいろいろ御異論があり得ると思うのです。
○髙井委員 土屋委員の先ほどの御意見ですが、まずプロの裁判官と裁判員とでは守秘義務の範囲について違っていいではないかというふうにおっしゃいましたけれども、そういう考え方は基本的にこの裁判員制度の構造に反すると思います。
対等であるというのが原則なんですから、同じ義務を負担しているからこそ対等だと言えることであって、義務を半分しか負担しない、あるいは、3分の1しか負担しないで対等だとか言っても、それは説得力を持たないと思います。
ですから、私は裁判員が裁判官と対等であるというふうにするためには、権利も義務も同じにしなければいけないと思います。つまり、裁判官はこうだけれども、裁判員はこうだと、一回限りしか一緒にやらないから裁判官と違っていいのだという議論があってはいけないと私は思います。そのような議論は、裁判員制度の根幹に私は反すると思います。
それから、もう一つ、土屋委員の先ほど来の御意見は、裁判員の保護ということに関する視点を欠いていると言わざるを得ません。この8は、明らかに裁判員を保護するためのものであって、当然裁判員を保護することによって公正な裁判を実現しようというふうにつながっていくわけですけれども、第一義的には裁判員を保護しなければいけないという観点があるわけです。ところが、土屋委員の先ほど来の御意見は、すべて取材する側の論理に貫かれているという気がします。取材される側の論理がどこにもない。要するに、いったん裁判員になったら、どんどん、ああだこうだとマスコミから言われるとすると、それが嫌で裁判員になりたくないという人がいっぱい出てくるわけです。また、裁判員になってしまったらいろいろ言われるかもしれない、聞かれるかもしれないと思えば、それが裁判員になった方の議論にも影響しないという保証もない。前回申し上げましたけれども、日本の裁判員裁判制度というのは、裁判員の保護ということについては、非常に手薄になっているわけですね。ですから、その手薄になっている中の数少ない保護措置がこの8に書いてあるわけですから、それを考えるときにはもう少し裁判員を保護するという観点から議論がされるべきだと思います。前回終わってからの新聞報道を見ても、裁判員の立場に立ってものを考えてないではないかという論評があったと思いますが、そういう観点からいっても裁判員の保護ということをもう少し重視した議論がなされるべきだというふうに思います。
そういう観点から考えると、この座長試案で書かれている、例えば、8の(1)のアとイ、これは至極当然だというふうに思います。年齢構成ぐらい分かってもいいではないかというふうにおっしゃいますが、それはいちいち個別の事件で報道しなくてはいけないほどのものか、裁判員の保護という利益と比べてそれだけ重みのあるものか、と考えると、必ずしもそうとは言えないだろうというふうに思います。
それから、(2)の秘密を知る目的で接触してはならないということですが、これは前々のたたき台に比べると、ある意味では範囲が限定され、ある意味では広がっているという部分があると思いますが、少なくとも守秘義務があるということを前提にして考えれば、その秘密を破る目的で接触をすることは当然禁止されるべきだと思います。これは、裁判の公正という観点からも当然言えることですが、裁判員を保護するという観点からも、当然これは設けられなければいけない制度だというふうに思います。確かに、何をもって秘密とするかということについて、争いが起きるという懸念はありますが、そういう懸念はほかの守秘義務に関する規定にもあるわけで、殊更この規定だけにある問題ではないので、それはある意味ではやむを得ないというふうに思います。
○四宮委員 今、髙井委員から土屋委員に対する意見がありましたけれども、土屋委員は、私が伺っていた限りでは、取材する側だけではなくて、つまり、裁判員保護の視点が全くないということではなくて、その保護の視点を法律で規制するのがいいのかどうかという議論をしておられたのだと思います。ですから、保護の視点がないということではなくて、それはむしろ紹介のあった自主的なルールによるのがいいのではないかという御意見だったと思います。
私も、それに賛成なんです。確かに、例えば裁判員になったときに、わっとメディアが来て、いわゆるメディアスクラム状態になると困るから何とかしてほしいという声はあり得るわけで、それからどう保護するかということなので、それを法律で規制するというのは一つのやり方かもしれませんけれども、私はそれよりは先ほどのメディアのいろいろな自主的な取り組み、特に裁判中の裁判員に対する取材と、裁判が終わった後の裁判員に対する取材、それぞれについて必要性を十分に考えて、今、検討しているということなので、私はそれによってコントロールしていくのが正しいと思います。
もう一つ、髙井委員のおっしゃった、裁判官と裁判員の対等の話なんですけれども、もちろん対等というのは裁判における権限の行使が対等ということなんだろうと思うのです。いろんなものが全部同じになっているかというと、例えば裁判官には法律上は接触規制というのはないわけです。あるいは、例えば調停委員だって守秘義務を負っているけれども、それに対する接触規制は法律上はない。罰則の点も、守秘義務、秘密を漏らした場合の罰則については、裁判官には特に罰則はないわけです。
そういうことを考えると、それはそれぞれの立法趣旨に従った考え方で決めていけばいいのではないかと思います。
また、後で守秘義務の範囲について意見を申し上げたいと思っておりますけれども、そういった点から考えると、8については、私も個人情報の保護の理念は大変重要なものであろうと思いますけれども、その趣旨は基本的にプライバシーの保護ということであろうと思いますので、それが侵害されない情報は基本的にはオープンにしていくべきではないかと思います。とりわけ、裁判員は公権力の行使にかかわるわけですので、個人情報保護の趣旨に反しない限り、例えば「だれか」がどういう意味があるのかと、どんな価値があるのかというふうにお考えになるという御意見もありましたけれども、それは前から申し上げているように情報の受け手が判断すべきことではないかと思います。
それから、接触の規制については、やはり守秘義務ということで考えていけばいいのではないかというふうに思いますので、これは前にも申し上げましたけれども、裁判が終わった後についての接触の禁止の規定は置かない方がいいというふうに思います。報道の規制の関係ですけれども、これは犯罪報道には、もちろん今の犯罪報道を全部肯定するつもりは全くありませんし、よりよい報道のために議論していってほしいと思いますけれども、報道の意義というものは非常に大きなものがあるので、この規定にも引き続き反対です。
○井上座長 一番最初に言われたことがよく分からないのですが、職務上知り得た秘密を知る目的で接触をするということも、自主的ルールによる規制によるべきだということですか。
○四宮委員 メディアはですね。
○井上座長 なぜですか。
○四宮委員 私は、つまりこれは置かなくていいと。それは人の秘密を職務上知る立場にいる人の制度はたくさんあるわけですけれども。
○井上座長 説明文にも書きましたように、職業に伴って守秘義務を負わされている人は、それなりの覚悟でその職業に就いているはずでしょうが、たまたま抽選で選ばれて、たまたま一回ある事件の裁判を担当したということで守秘義務を課された場合に、守秘義務があるからあなた自身で義務を守りなさいということで十分か、それでその人の保護になっているかということなのです。守秘義務を破らせるという目的で接触することを禁止する規定を設けてはいけないという理由が、どうもよく分からないのですよ。それは、いずれにしてもやってはいけないことではないのですか。
○四宮委員 望ましくないことですね。
○井上座長 望ましくないというだけではなくて、やってはいけないことではないですか。守秘義務を破らせようとするのですから。それなのに、規制する規定を設けてはいけないという理由がどこにあるのか、よく分からないですね。
○髙井委員 私が裁判員の保護に欠けると言っているのは、要するに、接触の規制をしなければ、それは、攻撃するなら勝手に攻撃しなさいよと、裁判員に対して、攻撃させるから、あなたは自分は自力で防御しなさいと言っているのと等しいわけですね。そういうことが裁判員の保護に欠けるんではないか、ということを言っているわけです。
○本田委員 裁判員であった者に対する接触禁止の規定は置かなくてもいいという四宮委員の話だったんですけれども、そうすると、だれでも裁判員であった者に対して接触していいのだ、知り得た秘密を知る目的で会ってもいいのだということになるわけですか。例えば、暴力団などの組織犯罪であって、それについての判決が出たとして、そこの構成員が裁判が終わった後、裁判員のところに訪ねていって、接触を図って、「お前評議でどういうことを言ったんだ」と聞いてもいいということをお認めになるんですか。メディアだけを主体として念頭に置いてずっと議論されていますけれども、試案では何人も、だれもやってはいけないと書いてあるわけで、もしメディアを除外するなら、メディアの定義をどうされるのでしょうか。
守秘義務を破らせることを目的として接触することはもともとやってはいけないことで、私はそれを規制しないというのはおかしいと思うんです。先ほど座長からも話があったように、もともと守秘義務というのは必要なもので、守秘義務を破ることを慫慂するような行為が許されるはずがない。ましてや、今、みなさんメディアだけを頭に置いていますけれども、そういった犯罪組織の構成員が裁判の終わった後に裁判員だった者の所へ行っていいということになれば、みんな恐れてしまいますので、そもそも裁判体が構成できるかどうか問題でしょうし、仮に構成できたとしても、そこで公正な裁判ができるのかという疑問があります。そんないいかげんな制度でいいのか、という気がするんですけれども。
○酒巻委員 本田委員と同意見です。この部分は報道機関の自主規制で決めるような話ではないと思っております。規制の基本部分が守秘義務の対象となっている情報を開示させることでありますから、それは「何人も」と書いてあるとおりで、当然定めなければならないのではないかと思います。その理由はみなさんのおっしゃったとおりです。
○池田委員 私も、8は座長試案のとおりでいいと思いますし、特に接触の規制については、修文もされて、ここでの議論を踏まえたものになっていて、結構なことだと思います。
一点だけ、先ほど土屋委員の方から裁判の公開との関係で、裁判の経緯といいますか、評議には入らないもので、感想なり、自分の意見なりというものを公にすることがある程度認められてもいいのではないか、公表すること、あるいはその公表を目的として接触することがいいのではないかということを言われたわけですけれども、裁判の公開というのは、私どもが考えているのはもちろん手続の公開については、公開の法廷で、どのような証拠で、どのように処罰されるべきか、されざるべきかという審理が行われていることで実現されています。
そして、審理後の判断については、裁判という結論を示して、そしてこの検討会でもずっと議論されていたように、結論に至った理由を書くということになっています。そして、その理由を書くということが最も公開性に応じているものなのです。要するに、裁判がなぜそういう結論になったのかという理由を示すというのは、その裁判がどうしてそのような結論になったのかということを、第三者にも、もちろん当事者にも評価してもらうためのものだと思っています。裁判は結論とその理由付けというのが大事であって、その結論と理由に至るまでの過程にはいろんな過程があるわけで、いろいろな過程を経たからこそいい結論が出るともいえるわけですから、いろいろ評議が自由に行われなければいけないということは、前にもお話したとおりです。しかし、そういう過程を公開することが重要なのではなくて、重要なのは、やはり、判決で示される判断の最終的な結論とその理由を示し、それが批判に耐えられるものであるかどうかということなのです。ですから、途中の過程で、何を言っていたかということは、大事ではないわけです。例えば、裁判官が、「私は一生懸命やりました」とか、「本当にもう寝食忘れて寝ずにやった」と言ったとしても、結論とその理由が間違っていたらしようがないんです。裁判というのは、結論とその理由の正当性だけが重要で、一生懸命やった過程があっても、それらが間違っていればだめなのです。裁判とは別のところで、例えば「私は実は判決で示されたようには思っていなかった」とか、あるいは「判決で示したことは、実はこういう趣旨だった」とか言っても、当事者はそれを根拠に判決の正当性を争えないわけです。やはり正当な手続で争えるのは、その裁判という結果に表わされたものであるのです。ですから、裁判で示されたものが一番大事なのであって、結論とその理由が十分明らかにされていれば、公開性というのは十分に担保できているのではないかと思うのです。ですから、それ以外のことを明らかにしないと公開性が不十分だというのは、理解できないのです。
○平良木委員 私もこの座長試案でいいだろうと思っております。これは前にも申し述べたことですけれども、要するに、裁判員が自由に発言できる、言いやすい環境をつくってあげるということが必要で、そのためには、裁判員が評議での発言を理由に裁判後批判されたりするというような無用な負担をかけてはいけないでしょうし、それから裁判員のプライバシーもできるだけ守ってやらなければいけないだろうと思います。そう考えると、8の1、2というのは当然のことだし、その後に出てくることも、訂正されたことは、要する報道機関の自主的ルールとの兼ね合いで見ていこうということであるわけですから、これも私はこれでいいだろうという感じがしております。
○四宮委員 本田委員がお挙げになったケースは、裁判員等威迫罪が裁判員の任務を終わった者に対する威迫についても適用があるので、それに当たるのではないですか。
○本田委員 威迫罪で賄えるものは賄えますよ。威迫というところまで来れば、確かに裁判員等威迫罪が適用されるでしょう。そこまでではなくて、教えてくれと言ってくることが許されるということになれば、みんな怖がって裁判員にならないでしょう。接触を規制しないと、そういう事態が発生しませんかと、そういうことをまた許していいんですかと言っているのです。
○井上座長 大体皆さん、それぞれ御持論を展開なさったのかなという感じがします。
先もありますので、このくらいでよろしいでしょうか。私の方で特に更に議論していただいた方がよいと考えた項目は以上ですが、それ以外の点について、御意見があればお伺いしたいと思います。
○平良木委員 座長試案の11ページの証拠調べのところです。最近よく裁判員制度はうまくいくのでしょうかという質問を受けることがあるのですけれども、これはやらなければいけないだろうと答えることにしています。そう言ったときに成功するかどうかというのは、ここにも書かれておりますけれども、裁判員がどのようにしたら十二分に心証をとることができるかということであって、逆に言うと裁判員に分かりやすい証拠調べを行わなければならないということにかかっていると思います。
ここに書かれているのは、そういう観点から出ていることだと思いますので、これはできるだけ法案化してもらいたいということを希望しておきます。かなりそれが難しいものも中にはありますので、検討は十分必要だろうと思いますけれども、そういう要望をまず述べておきたいと思います。
それから、もう一つは、裁判員の負担、あるいはその心証のとりやすさということを考えると、集中審理あるいは連続的開廷ということが必要になってくる。これも恐らく、ここでは想定されていることだろうと思いますけれども、そのためには現在の運用を変えていかなければいけないものもあるだろうと思います。もし、そうだとすると、その試みをできれば、今の段階から始めていただきたい。特に申し上げますと、公判調書の作成の問題も出てくるだろうと思います。それをどういうように変えるかということについて、例えば公判手続を録音するとか、録画するという話も出てきておりますけれども、そういうことをも含めて検討してもらいたいということであります。そして、検討して、できればいろいろ問題点を洗い出して、そしてそれに対する対策を考えてもらいたいということでありますけれども、その関連で裁判所の公判調書の在り方も考えていくということが必要かなという気がしております。
以上のような検討などの結果、場合によっては刑訴規則の改正や、あるいはそのほかの方策ということが改めて問題になるかもしれませんが、そういう試みをすることを、特にこの場に関係機関の方もいらっしゃいますので、要望しておきたいと思います。
○井上座長 最後のところがよく分からなかったのですが、公判調書について刑訴法とか刑訴規則の改正に結び付くような検討というのは、どういうことなのでしょうか。公判調書の書き方とかつくり方ということですか。
○平良木委員 そういうことも出てくるだろうと思いますけれども、例えば以前にも話題に出てきましたけれども、連日開廷の場合に公判調書をどうやって出すんだという問題等が出てくるので、そういう問題も含めて検討してもらいたいという趣旨であります。
○井上座長 現行の刑訴法でも、原則としては継続して連日開廷するということを前提にして、公判調書のつくり方とか、出し方について規定しているのではないですか。
○平良木委員 そうですけれども、連日開廷の場合、実際には、例えば証人尋問をやったという場合には、その証人尋問調書の作成は翌日の期日までには間に合わないということになるかもしれません。
○井上座長 それは、現行法の下でも許されているのではないですか。
○平良木委員 許されているといいますか、建前から言うと、公判期日が変われば、その前に公判調書を全部整理しておかなければいけないといことになっている。
○井上座長 必ずしもそうではないのではないですか。次回の公判期日までに整理が間に合わない場合は、要旨を告知するということになっているわけですから、現行法でも、それが望ましいかどうかは別として、間に合わないこともあり得るという前提になっているわけですね。
ですから、御義論が制度や法令の改正にどのようにつながっていくのかというところが、ちょっと分かりにくかったので、御趣旨を確認するということで質問させていただいたのです。
○平良木委員 分かりました。その点も含めて検討していただきたいということであります。
○酒巻委員 私は、平良木委員のおっしゃることがよく分からないのですが、問題にされているのは、例えば刑訴法50条の規定の手直しが必要ではないかということですか。
○平良木委員 恐らくいろんな問題が出てくる中で、それも出てくるかもしれないということです。
○酒巻委員 分かりました。
○平良木委員 まず運用上の工夫してもらいたいということで、もし必要があれば、刑訴法の改正が出てくるし、規則の改正も出てくるし、あるいは運用を改めることで済む場合も出てくるだろうということです。
○井上座長 御趣旨としては、連日的開廷ということを前提に、十分な審理ができるように、公判調書等についてもつくり方だとか在り方について検討していくべきだということですね。そして、運用で賄えないようなところが出てくれば、法令の手当をすべきだということでしょう。
○平良木委員 はい、そういうことです。
○井上座長 分かりました。ほかに御意見はありますか。
○四宮委員 12ページの上から四つ目の、供述調書等の作成状況の立証ついてですけれども、具体的な立証方法については、裁判員制度の発足までに、取調べ状況のビデオによる録画も含めて十分に検討するということを、是非、重ねて要望しておきたいと思います。
○井上座長 前にもそういうふうな御希望を伺ったと思いますが、今の点はよろしいですか。
○本田委員 その点については、以前にきちんとお答えしたはずでございまして、なぜまたおっしゃられるのか、ちょっと趣旨が分からなかったのですけれども。
○四宮委員 本田委員が検討対象としては外さないとおっしゃっていただいたので。
○井上座長 決して本田委員が言われたことを信用していないということではないですね。
○四宮委員 信用しております。
○井上座長 四宮委員、他に議論したいと思われている点はどのくらいあるのでしょうか。そう長くならないように、一つ一つ簡潔にお話しいただけたらと思うのですが。
○四宮委員 では、守秘義務の関係にしたいと思いますが、9ページの(2)のオです。それと、これは罰則とも関係するのですけれども、私は前回からずっと、この守秘義務の範囲は限定すべきで、裁判員に対しては、言ってはいけないことを明確に絞っていくべきだというふうに申し上げてまいりました。
いろいろ今回の座長の説明を拝見すると、守秘義務の保護法益というのは、裁判の信頼性の保護と、評議における自由な意見表明と、プライバシーとか秘密の保護ということを挙げておられて、これは全くそのとおりだと思います。問題は、それぞれを確保していくために、どの範囲で義務を課すかということだと思うのです。評議における自由な意見表明の確保のためということだとすると、私は、誰が何を言ったかということを明らかにすることを禁止すればいいのではないかと思います。
それから、プライバシーとか秘密の保護の観点からは、職務上知った他人の秘密に守秘義務をかけるということが必要だし、それで足りるのではないかと思います。
そうだとすると、ほかの点について、守秘義務を課す必要があるのだろうかということなんです。特にこの案でいきますと、各裁判官及び各裁判員の意見、これには守秘義務は当然かかるべきであるし、職務上知り得た秘密、これはほかの法制よりもちょっと広いような感じを受けていますけれども、職務上知り得た、特に他人の秘密には守秘義務をかけるべきだと思うのです。しかし、それ以外のものについては、どうなのかということなんです。 一つは、「多少の数」ですけれども、これは裁判所法にも、検察審査会法にも、それから日本の陪審法にも規定が確かにあるわけですけれども、これは本当に公表されてはいけないのだろうかという気がしています。私は、前回はこれも守秘義務の範囲に入るというふうに申し上げたんですけれども、本当にそうなのかなというふうに思っています。つまり多数決制というのを、日本の裁判は取っているということを明言して、言わば国民に伝えているわけですから、多数決であったということを、つまり結論だけですけれども、本当に伝えないということが必要なんだろうかということで、これについては疑問を持っております。
2番目に、評議の経過なんですけれども、もちろん経過の中にもいろんなことがあって、先ほど申し上げたような、だれが何と言いましたとかいうことは言ってはいけないし、その中で出てきた他人の秘密を言ってはいけないということは、そのとおりだと思います。ただ、例えば、裁判官が十分意見を言わせてくれたとかいうこと、あるいは逆に十分に意見を言わせてくれなかったこととか、例えば、最初有罪の意見が多かったけれども、評議をして判決にあるように、目撃証言に疑問が出てきて、その疑問を共有していって無罪の意見が多くなりましたというようなこととか、あるいは、最初に検察官の求刑は軽過ぎると思ったけれども、みんなと評議をして、証拠を検討したり、ほかのケースなども参照した結果、判決にあるような刑になりましたというようことは、私はそれらが明らかにされることによって裁判の公正性が害されるとは思いませんし、むしろ我々の仲間である国民が、裁判官と一緒に十分な評議をしてその結論に到達したんだということを国民に、社会に伝えるという意味もあると思うのです。
そうすると、守秘義務の範囲としては、各裁判官、各裁判員の意見ということと、職務上知り得た他人の秘密ということに限定したらどうかと考えております。
○本田委員 自分の意見、評決の多少の数も明らかにしていいということを前提にして考えると、一応座長試案に従って7人の構成で裁判を行ったとして、評決は6対1で有罪という結論になったが、私は反対でした、私は無罪の意見でしたと言ったら、あとの6名は有罪の意見だということがそこで全部分かってしまうではないですか。それでいいのでしょうか。ほかの人の意見は分かってしまうわけでしょう。その人たちの中には言ってもらいたくない人だっているわけでしょう。
○四宮委員 各自の意見を言ってもらいたくないということですか。
○本田委員 そうです。有罪の意見を言ったかどうか、私は言いたくないと言っている人の立場はどうなるんですか。
○四宮委員 ですから、それは、評議というか、裁判の信頼性といいますか、そういったものを一体どのように確保するのかということだと思うんです。
○本田委員 いやいや、私が言っているのは、そういうことではなくて、私の意見は言ってもらいたくないと、私の意見は表に出したくないんだと言っている人の意見が分かってしまうでしょうと言っているんです。この人の立場はどうしてくれるんですかとお聞きしているんです。
○井上座長 評議は6対1だと言った上で、私はその1ですと言ってしまえば、あとの人はみんな6の方の意見だということが明らかになってしまうので、結局は他人の意見を明らかにしているのと同じではないかという御趣旨ですね。
それともう一つ四宮委員の御意見でよく分からないのは、評議の経過というのは、整理された形で判決理由に反映されるはずで、それでは、なぜ足りないのですか。
○四宮委員 ただ、判決理由には、例えばさっき申し上げたように、当初は有罪の意見が多かったけれども、その後こうなったということは書かれないわけですね。
○井上座長 それは、どうして必要なのでしょうか。
○四宮委員 それは、さっき申し上げましたように、普通の人が聞いて、こんなふうに評議が進んだんだと分かるということです。
○井上座長 有罪かどうかを最初から評決を取っていればともかく、評議の中では、いろんな議論をして、自由な思い付きの意見もたくさん出て、それぞれの構成員の意見は変わっていくと思うのです。そして、それが集積し、最終的には合議体の意思として、こういう理由でこういう結論に至ったと、池田委員が言われるように、判決理由の中で説明されるわけです。それではなぜ不十分なのかがよく分からないのですが。
○四宮委員 そこが、普通の人が裁判をするということと、プロが裁判をするということとの大きな違いだと思うのです。つまり、どんなふうに裁判というのは進むのだろうか、どんなふうにプロと評議をするのだろうか、私たちにできるのだろうかと、国民はみんな不安に思っていると思うのです。そこで、私たちはこんなふうにやりましたと、もちろんしゃべってはいけないというもの以外の部分で、こんなふうにやりましたと述べることに意味があると思います。
○井上座長 評議の過程で具体的にどういう意見が出て、最終的にこうなったということを具体的に説明しないで、評議の様子が分かるのですか。つまり、例えば、「私たちが参加してプロの裁判官と十分、実質的あるいは対等の議論ができるんですか」と尋ねられたときに、評議における議論の具体的な内容を明らかにしない限り、評議の様子は評議に加わったことのない人には分からないですよね。
○四宮委員 私はそうではないと思います。議論の中身をいちいち言わなくても、こんなふうだったということを言っていいと思います。評議の秘密というのは、構成員の意見表明の自由というものを保証するということが趣旨なのです。そうすると、特に裁判員については、その人が本当に意見表明が自由にできたかどうかということが語られる場所がなければ、私はおかしいと思うんです。「評議において意見を自由に表明してもらいます。それは信用してください。ただ、評議の中がどんなふうだったかということは言わないでください。」ということでは、本当に自由に意見が言えるかどうかということを国民は分からないのではないでしょうか。
○井上座長 要するに、評議の中身についてもチェックしないと、信用できないということですか。
○四宮委員 チェックをしろというんじゃなくて、チェックをできるようにしておいた方がいいということです。できればすべきだと思いますが。
○井上座長 ほかの委員は、それよりは、裁判員も自由闊達に議論ができるようにしよう、だれか他の裁判員に後から評議の内容が明らかにされることがあり得るということでは、安心して自由に発言できないので、そうならないようにするということを重視すべきだという御意見なので、そこが分かれ目だと思います。評議に対する信頼については、裁判の理由付けで担保するしかなく、それは今の裁判官のみによる合議の場合と同じだと考えるかどうかということでしょう。
○四宮委員 例えば、評議で十分に意見を言わせてもらえなかったということは言っていいのですか。
○井上座長 「評議の経過」に当たるかどうかの問題ですね。
○四宮委員 ですから、どうなんでしょう。
○井上座長 丁寧だったというのは、一般的にそう言う限りでは、守秘義務に反しないだろうという御意見が、以前議論したときには多かったように思いますが。
○四宮委員 では、「丁寧でなかった。」と言うのもいいわけですね。
○井上座長 単に「丁寧でなかった。」と言う限りではそうかもしれませんが、「それでは、どう丁寧じゃなかったのか。」と問われれば、評議の具体的な中身を明らかにせざるを得なくなり、そうなると話は違ってくるのではないですか。
○髙井委員 「裁判官は横暴だった。」と言うのであればいいんじゃないですか。ただ、どういうふうに横暴だったかはちょっと言えない。
○四宮委員 結局、ここで意見が分かれるように、試案の表現では分からないと思うのです。
○井上座長 ですから、そこまで明らかにしないと、裁判員制度が健全に機能していかないということなのかどうかという問題だと思うのです。四宮委員の御意見では、そこまでチェックしないと、裁判官が横暴であったかもしれないし、十分な議論ができなかったかもしれない。評議室で何が行われたかも明らかにしてチェックしなければ、危ないということなのでしょうか。
○四宮委員 危ないということではなくて、もちろん言ってはいけな範囲が必ずあるわけですけれども、それ以外で何があったかを裁判員が言える自由があってもいいのではないかと思うのです。
○井上座長 おっしゃっているような仕分けが本当にできるのかどうかでしょう。
○髙井委員 四宮委員がさきほど言われた座長試案の書きぶりで、何が許されて、何が許されないかがよく分からないという問題と、四宮委員が最初から言われている問題というのは、別の問題だと思うのです。
四宮委員の議論の通底を成しているのは、要するに、裁判官は横暴で、一般国民を押さえ付けるに決まっていると、私は聞いていてそう感じるのです。ですから、何かあったときに、国民が裁判官は横暴だと言えるようなシステムにしておかなければならないということを四宮委員は言っているのでしょうか。
○四宮委員 それは違います。私が言っているのは、例えば、裁判員が裁判官はとてもいい人でしたと、我々一人一人が十分に意見を言えるように、大変な配慮をしてくれたと言うこともいいわけです。
○井上座長 四宮委員のおっしゃりたいことは、要するに、裁判員が安心して参加できるように、評議というのはどういうふうに行われているのかということが公になった方がいいだろうということなのでしょうか。
○四宮委員 そういうことです。
○井上座長 ほかの方は、それよりももっと重要な守るべきものがあるという議論なのですね。
○本田委員 評議がどのように行われているか分からないから不安だという、そういう不安を・・・。
○四宮委員 不安ではないのです。今、座長がまとめていただいたとおりに引用してください。
○本田委員 不安だというのは、どうやって自分がやっていいか分からないから不安だという意味ですよ。評議がどうやって行われているか分かって入った方が安心して裁判員になれるでしょうと、自分の意見も言いやすいでしょうということであるなら、別に実際の裁判の評議の中でのことではなくて、教育効果みたいなものを求めるのであれば、別に模擬裁判などといった方法で広報活動をして、こういうふうにやることになっていてますよ、ということを周知していけばば済むことではないですか。
○四宮委員 本物と模擬では全然違いますよ。実際に裁判員を経験した人の話こそ国民は期待しているのだと思います。そしてそれが役立つのだと思います。
○井上座長 手足を縛られた形で情報を出すことでも意味があるということですか。
○四宮委員 そうです。
○井上座長 今問題になった点について、更に付け加えて、違う角度からでも結構ですが、御意見があれば出していただきたいと思いますが。
○酒巻委員 評議の秘密関係で、四宮委員の御意見はさっきも出ましたけれども、裁判が終わってからも守秘義務は続くという点はよろしいのですか。
○四宮委員 ですから、さっき申し上げた範囲では、つまりだれが何を言ったかということと、それから職務上知り得た他人の秘密、これらについての守秘義務は裁判員としての職務が終わった後もずっと続くということです。
○井上座長 現職の場合は、守秘義務の範囲はもっと広いということですか。
○四宮委員 現職の方が広いです。現職の場合は、個人の意見は一切言ってはいけないと考えています。
○井上座長 裁判が終わった後は、四宮委員の言われるコアの部分は言ってはだめだけれども、その他のところはいい、守秘義務の対象にすべきではないということですね。
○四宮委員 はい。ですから、さきほど本田委員がおっしゃった、例えば6対1の場合どうするかという問題については、一つの思い付きですけれども、最後の結論、有罪・無罪とかですね、それは明らかにしてはいけないというやり方もあると思うのです。
○本田委員 そういうのをすべて想定してルールをつくれますか。
○四宮委員 それは知恵を出したらいいと思います。
○井上座長 何かつじつま合わせの議論のようになってしまっている感じがしますが。
○四宮委員 私が言いたいのは、もっと知恵を出した方がいいということなんです。確かに日本の法制では同じ文言がずっと使われてきているわけですけれども、これをさかのぼっていくと、明治23年の法律である旧裁判所構成法に行き着くのです。守秘義務に関しては、それと全く同じ文言ですね。今度国民が主権者として入る制度を運営するときに、その時代の法律と同じでいいのですかということを言いたいのです。
○井上座長 御趣旨は分かりました。そこを見直すべきではないかということですね。
○四宮委員 そうです。
それと、これは結局罰則にも関係してくるのですけれども、私は、罰則が及ぶ範囲は、先ほど申し上げた守秘義務の範囲に限定すべきであると考えております。
それから、特に懲役刑ですけれども、ほかの制度で懲役刑が設けられているのは、人の秘密を漏らした場合だけですね。評議の秘密、私の意見ではだれが何を言ったかを明らかにする場合に限られるわけですけれども、いずれにしろ評議の秘密を漏らした場合には罰金刑だけです。
更に、裁判官と対等だということであるとすれば、裁判官には罰金刑すらないということもある。
ですから、私の意見では、懲役刑がこんなに広い範囲に入るのは問題であるし、罰金刑を先ほど私が申し上げた守秘義務の範囲で科するので十分ではないかと考えています。
○井上座長 四宮委員の御意見ですと、罰則については、職務上知り得た他人の秘密と言われましたが、その秘密について漏らす行為については懲役刑でいいということですか。
○四宮委員 いえいえ、そこまでは言っておりません。
○井上座長 それでは、御意見の内容が整合しないのではないですか。ほかの制度で懲役刑があるのは、他人の秘密漏洩のような場合だけだということであれば、そこの部分は懲役刑が相当という話にならないですか。
○四宮委員 ですから、ほかの法制との整合性という観点で議論をすれば、そうなると思います。ただし、私は、裁判員の場合にはほかの法制で主体になっている人たち、調停委員とか、司法委員とかいう人たちと比べるよりは、この場合は検察審査員などと比べた方がいいと考えていますので、罰金刑だけでもいいのではないかという意見です。
○井上座長 そこはよく分からないところですね。私が説明文の中で書いたのは、選択刑としては懲役刑もあり得るのではないかということです。選択刑ですから、事案の内容により、守秘義務違反の中身が法益侵害の点で軽重があると思いますので、それに応じて考えられるということです。
ですから、秘密漏洩的な部分については、選択刑として懲役刑があるという方が整合しているのではないかと思うのです。
四宮委員の御意見は、秘密漏洩についても、やはり罰金刑が相当なのだということですね。
○四宮委員 そうですね。整合性の観点で考えるならば、秘密漏洩についてだけ懲役刑が残るのが筋ではないかということにもなります。
ただし、私は、裁判員が秘密を漏洩した場合、では懲役刑がいいのかどうかというのは、また別の議論が必要なのではないかと考えております。つまり、懲役刑が設けられている例えば調停委員などは、選任の制度を見ますと、やはりこれは専門家、あるいは準専門家として選任されているわけです。しかも、任期もあるということなんです。そういう人たちと、無作為に、つまり望まずに裁判員になって、たまたまそういった一定の義務を負うことになった人というのは、当罰性において区別があってもいいのではないかというのが私の意見です。
○髙井委員 秘密を売って多額の金銭を得た事案でも罰金ですか。
○四宮委員 罰金ですね。
○髙井委員 そのような事案についても本当に罰金だけでいいのでしょうか。
○酒巻委員 四宮委員のおっしゃっている結論は分かります。だけれども、これは制度の設計だから、やはり理由が立つのかどうかということが大事で、主体はもちろんおっしゃるとおり違うかもしれないけれども、一番最初に考えなければいけないのは、秘密を明らかにされてしまった人の被害、保護法益ではないですか。そして、同じ秘密漏洩の罪だったら、それはやはり刑罰は同じになるというのが法律の世界における普通の考えではないですか。
○四宮委員 酒巻委員の立場でいけば、秘密漏洩に限って罰則というのは、それはそれで一つ筋が通るのだと思うんです。
○酒巻委員 それ以外に、なぜ裁判員だと違ってくるのか、私には全然分からない。それは、四宮委員がそうしたいと言っている結論は分かるんですけれども、理屈は通らないのではないですか。
○四宮委員 そうですか。
○髙井委員 金を取って秘密を売った人に、罰金でいいとは思えないですね。週刊誌に1件50万円で秘密を売りますといって、どんどん売ったという事案で、罰金30万円しかありませんということでいいのかなという感じですね。
○酒巻委員 基本的に重要なのは、被害を受ける方の保護法益でしょう。同じ秘密を漏らされて、なぜ裁判員が漏らした場合にだけ刑罰が軽くなるのですか。
○大出委員 今の四宮委員の問題提起をお伺いしていて、やはりこれは秘密の保護と裏表の関係になっているわけです。先ほどちょっと四宮委員から問題提起のあった、つまり国民が裁判員を引き受けるときに、一体その秘密として守らなければいけない部分がどこまでなのかということについての議論をどこでするのかということを、座長の方からは具体的にはおっしゃられなかったので。つまり、先ほど出た意見でも、非常に微妙に意見が分かれる部分があるわけです。ここは本当に秘密漏洩罪として処罰されることになる秘密なのか、そうでないのかという部分については、やはり必ずしも明確ではないということが現状としてはあると思うので、そこのところを議論するならするということにしていただいた方がいいと思います。
○井上座長 秘密については、コアの部分で、そこは明確だという前提で議論してきたのではないですか。あとは、守秘義務の対象として、感想のようなものが入るかどうかという問題なのでしょう。
○大出委員 ですから、そこのところについて、しかしそれだった秘密漏洩罪の関係でいけば、今のお話との関係でいけば、選択的にいろいろとあり得るということであれば、その幅というのはもちろんあるから、その選択的にいろいろとあってもいいという、今、髙井委員のお話からすれば、当然そういうことも当然あっていいだろうというふうに私も思いますけれども。
だとすれば、そこが具体的にどういう場合に処罰対象になってくるのかということが、明確になってないと、裁判員の立場からすれば非常に不安を抱えたまま裁判員をやらないといけないという話になる可能性がありますね。そこのところをやはり明確にしなければならないという、さっき警告目的というお話もありましたけれども、むしろそちらの方が重要な問題で、そこのところをきちんと整理する必要があるだろうと思います。
○井上座長 具体的にはどう書けばいいというお考えなのでしょうか。
○大出委員 ですから、オのところでいけば、私は前から申し上げているように、自分の意見というのは言っても構わないだろうというふうに思っております。
○井上座長 それは、また別の問題ですね。今、言われていたのは、処罰対象がはっきりしないのではないか、特に裁判員にとってはっきりさせるには、試案の書き方では不明確ではないかということでしたので、それではどういう書き方をすればいいんですかということをお聞きしているのです。自分の意見を言うのがいいかどうかというのは、書き方の問題とは別でしょう。
○大出委員 今、議論になっていましたのは。
○井上座長 自分の意見を発表するのは、そもそも守秘義務の対象にすべきではないという御意見は意見としてあり得るのですけれども、先ほどの御議論はそれとは違う話でしょうということです。不明確だというふうに言われたので、それではどういうふうに書けばいいのかをお尋ねしているのです。大出委員のお考えでも、守るべきものはあるわけでしょう。
○大出委員 それはそうです。
○井上座長 ですから、そこは具体的に提案していただかないと、議論にならないのですよ。
○大出委員 ですから、守るべきものということでいったときに、ここに掲げてある、私は評議の経過並びに各裁判官及び各裁判員の意見並びに多少の数、ですからこの限りでは異論がないんです。
○井上座長 他人の秘密もでしょう。そうしたら、書き方のどこが問題なのですか。
○大出委員 ですから、その場合には先ほど言いましたように、意見と具体的な感想・・・。
○井上座長 何度も言いますが、それらを外すかどうかという問題と、不明確かどうかという問題とは別だろうということなのです。
○本田委員 先ほど四宮委員がおっしゃったのは、要するに法定刑の問題を言っていたわけです。
○大出委員 ですから、そこに関係しているということを申し上げたんです。
○本田委員 そこに関連するとは思われないですけれども。
○井上座長 懲役刑まで科され得るから、そのような重い刑罰の対象にするのであれば、ここまではやってはいけないが、ここまではいいということがはっきりしていないと困るだろう、というのが大出委員がおっしゃりたいことなのでしょう。
大出委員の御意見は、自分の意見とか感想といいうものを外せば明確になるということですか。
○大出委員 そうです。
○井上座長 まだよく分からないところがありますが、ほかの方の御意見を伺いたいと思います。どうぞ。
○四宮委員 あと二点ほど。一つは3ページの年齢です。私は、やはり20歳にすべきであると。これは社会経験ということを座長はお書きになっておられるのですが、前にも出たように、20歳と25歳とでそんなに違いがあるのかということです。
それから、20歳から24歳までの人たちは800 万人以上いるのです。そのうち、みんな大学生などではなくて、大体6割ぐらいの人は大学に行っていないのです。
他方、被告人は20歳以上であれば、裁判員裁判を受ける可能性があるということですので、そしてまた、ここはまた異論があるかもしれませんけれども、これは国民参加の制度ということで、最近は参政権の年齢の引き下げということを公約にする政党も表われてきて、そういうことも考えて、やはり20歳にするべきであると思います。
それからもう一つ私がこだわっているのが、中学校の卒業の点です。これは一つ質問したかったのですけれども、中学校卒業と同等の学識の有無をいつ、だれが、どんなふうに判断するのかということなのです。これがあるので、日本語を理解するものということと同じ要件になるのではないかと言われているわけですが、これをいつ、だれが、どんなふうに判断するのか。
もし、例えば最初に送る質問票に、あなたは中学校を卒業していますかという質問があって、していませんというところにチェックをしたとします。そして、その後この人が日本語の中学校卒業後と同じ学識があるかどうかをチェックする手続がないとすると、このただし書は意味がなくなってしまうのではないかと思うのです。ですから、前から申し上げているように、ここは、日本語を理解するという要件にしてほしいということです。
○井上座長 中学校を卒業していますかという質問に対して、仮に中学校を卒業していませんと答えたからといって、それで自動的に排除されることにはならないのではないですか。
○四宮委員 どうなるのですか。
○井上座長 資格があるかどうかを、最終的に確認しないといけないわけでしょう。そのときに、中学校を卒業していないということだけれども、その人の経歴等を見たりして、同等の学識があるといえるかどうかを判断することになるのではないですか。それは、日本語の能力の有無を問う場合であっても同じではないですか。つまり、端的に日本語の能力があるかどうかを尋ねて決めるわけではないでしょう。召喚に応じて裁判所に来たときに、何らかの形でそういう能力があるかどうかをチェックせざるを得ないですよね。
○四宮委員 そうすると、座長のイメージでは、仮に中学校を卒業していませんという質問票に対する回答が返ってきたとしても、その人を召喚するということですか。
○井上座長 それはそうでしょう。ただし書が付いている以上は。
○池田委員 そもそも質問票によって本文に書いてあることだけしか聞かないなんていうことはあり得ないと思いますが。
○四宮委員 そうすると、どう聞くんですか。
○池田委員 ただし書に該当するような事由はありますかというようなことを質問票に付記するのではないでしょうか。本文に書いてある要件の有無に関する回答だけではねてしまうということは、ちょっと考えられないのではないでしょうか。
○井上座長 池田委員が言われたような形で、質問票にそのような事項を書いてもらうか、それとも、裁判所に来てもらったときに質問してチェックするか、どちらかでしょう。日本語の能力についても同じことではないですか。日本語の能力という要件を掲げて、その要件の充足の有無を実質的に判断しようと思ったら、どこかでそれをチェックしなければいけないわけですから
○四宮委員 そうです。ただ、日本語の能力がないとチェックして回答が返ってきたら、召喚するのですかね。
○井上座長 そう書いてきたら自動的に除外するということだと、裁判員になるのが嫌だから日本語の能力がないと書いてくるようなことがあったら、どうするんですか。例えば大学院まで出ているような人がそのようなことを書いてきたという場合、そのような回答があったというだけではねてしまってよいのですか。それと同じレベルの話でしょう。
○四宮委員 しかし、レベルは同じでも。
○井上座長 どこで判断するのかという意味では、同じレベルの問題なので、むしろ、実質として、どういう要件とするのがよいのかという議論をされた方がよろしいようにと思います。
最初の年齢の点については、いろんな御意見があって、私が別にお答えすることもないのですけれども、説明文に書いたような御意見が、どちらかといえば多かったと思います。これについては、選挙権から類推するのか、被選挙権から類推するのかという考え方の違いもあると思うのです。
私自身として、25歳とするのがよいのではないかと考えましたが、無論、あるポジションとか社会的地位にいる人が未来永劫裁判員になれないということでは不適切ですが、しかし、25歳未満の人でも数年経てば資格は得られるわけですし、20代前半の人を裁くのには20代前半の人でないといけないといった理屈がどこからくるのかもよく分からないのです。
○四宮委員 20代前半の人でないといけないと言っているのではなくて、そういう人が裁判員になり得る仕組みの方がいいのではないですかということが言いたいことです。
○井上座長 要するに、より広く裁判員になり得る資格を認めようということを言っておられる、そういうことにつきるのだと思います。しかし、この検討会全体としては、主権の行使なので、ある程度社会経験を積んでいる人が裁判員になる方がよいという御意見が多かったわけで、私もそうだろうと思ったものですから、こういう案をお示ししたのです。
○四宮委員 そういう意見が多かったことは承知をしております。
○井上座長 本当は私の説明を先にやってしまいたかったのですが、もう4時になろうとしていますので、4時まで休憩ということにさせていただきたいと思います。
(休 憩)
○井上座長 それでは、「『考えられる刑事裁判の充実・迅速化のための方策の概要について』の説明」という表題のペーパーに移らせていただきたいと思います。
この内容について御説明申し上げたいと思います。前回と同じように、理解していただきやすいように、説明文を用意させていただいております。ほぼそれに沿って、御説明をしたいと思います。
最初の「作成の経緯」「全体の構成について」のところは、前回のものに準じております。若干違うのは、たたき台の項目番号の振り方がもともと裁判員制度についてのたたき台とは違っていものですから、ちょっと不体裁だったのですけれども、このペーパーでも、たたき台の項目番号の振り方に合わせております。
赤字で記載した部分を中心に、以下、順次説明させていただきます。
まず、1ページですが、第1の1の「(2) 準備手続の目的」というところのアの1行目に「充実させるとともに」という文言を加えております。これは、当然のことなのですが、準備手続で争点整理等を行うのは、公判の審理を実質的な争点を中心にした充実したものにし、そうすることによって、迅速化を図ろうとする趣旨のものであり、このことは、これまでの議論でも、皆さん当然の前提にされてきたところだといえます。
ただ、たたき台のように「迅速かつ継続的に行う」とだけ書いてありますと、後々そこだけが独り歩きして、単に迅速化のみを目的にするものというふうに曲解される恐れもないわけではないように思われましたので、こういう修文を施したわけであります。
次に「(4) 準備手続の主宰者」についてですけれども、2ページに書きましたように、「第1回公判期日前の準備手続は、受訴裁判所が主宰するものとする。裁判員制度対象事件においては、受訴裁判所を構成する裁判官が準備手続に関する権限を有するものとする」ということにしております。これは、たたき台でA案として示されていたものを採ったものです。
御承知のように、たたき台では、裁判員制度対象事件の場合には受訴裁判所以外の裁判所が主宰するというB案というものも示されていたわけですが、検討会の御議論では、A案の方を支持する御意見が大勢を占めていたように理解しております。
内容的に考えましても、準備手続における争点整理や証拠調べ決定、審理計画の策定等は、公判における審理・証拠調べの在り方を決定付けるものであり、また、証拠開示に関する裁定も争点整理に密接に関するものでありますので、いずれも公判の運営に責任を負う受訴裁判所の裁判官がこれに当たるべきであり、他の裁判所が準備手続を主宰し、その決定に受訴裁判所による公判審理の在り方が拘束されることになるのは適当ではないと考えられます。
検討会の議論では、裁判員制度対象事件の場合には、受訴裁判所の裁判官が準備手続を主宰し、証拠の内容に触れると、事件について予断を抱くことになる上、裁判員との間で情報の格差が生じるので、適当ではないという御意見もありました。
しかし、これに対しては、準備手続において裁判官が、争点整理や証拠調べ決定、証拠開示に関する裁定などのために必要な限りで、両当事者の主張や証拠に触れたとしても、それによって実質的な心証をとるものではないとの御指摘があったところです。
また、裁判員制度対象事件の場合にも、訴訟手続上の判断は裁判員の責務ではなくて裁判官が行うこととする以上、それに伴って裁判官と裁判員との間で一定の情報の格差が生じることは不可避でありますが、それは公判開始後にも起こり得ることでありまして、それは心証形成に結び付くものでも、また、結び付けてよいというものでもないわけですから、その手続に携わった裁判官が後の評議の過程において、公判の審理には現れなかった情報を用いて、あるいはこれを基にして、裁判員を不当にリードするとか、あるいは、そういう情報を持っているからその評議において優位に立つということにはなり得ない、という御指摘もあったと理解しております。そして、私としても、これらの御指摘には理由があるように思いました。
次に3ページの「(4) 準備手続結果の顕出」につきましても、検討会における多数の方の御意見を踏まえまして、たたき台の案を維持するということにしております。
検討会の議論では、準備手続における最終的な結果のみを顕出すべきであるという御意見もありましたけれども、これに対して他の委員から御指摘があったところですが、裁判の公開の原則や公判中心主義の要請を考慮しますと、現行の準備手続の場合と同様に、調書の要旨の告知等により、最終的な結果のみならず準備手続の経過をも含めて公判廷に顕出されるものとするのが妥当だというふうに考えた次第です。
次に「3 検察官による事件に関する主張と証拠の提示」というところですが、この4ページの「(3) 取調べ請求証拠以外の証拠の開示」につきましては、ア~クとして掲げました一定の類型に該当し、特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要な証拠を開示するという内容の案にしております。これは、基本的にたたき台のB案によったものです。
たたき台ではこのほかに、A案として、検察官が保管する証拠の標目を記載した一覧表を被告人側に開示するとともに、被告人側からその一覧表記載の証拠の開示請求があったときは、弊害がある場合を除き、その証拠を開示するという案も掲げられておりましたけれども、検討会での御議論では、B案を支持する御意見が大勢であったと理解しております。
一部の委員からは、B案に加えて検察官手持ち証拠の一覧表も開示することとすべきであるという御意見や、あるいは、B案に掲げられた類型の証拠は、弊害がない限り開示するものとすべきであるという御意見なども述べられました。
しかし、これに対しては、標目だけのような形式的な一覧表では意味がないし、そうかといって、証拠の内容ないしはその要旨まで一覧表に記載するとすると、初めから全面的に証拠を開示しているのと変わらなくなり適当ではないという御指摘があったところであります。
また、検察官手持ちの全証拠について一覧表を作成させること、特に証拠の内容ないしはその要旨まで記載した一覧表を作成させることは、捜査機関の負担を過重なものとし、現実的に見て妥当ではないし、一覧表の記載の正確性などをめぐって無用の紛議を生じさせるおそれもあるという御指摘などもあったところです。
これらの御指摘には、理由があるというふうに考えられますし、やはりこれも検討会で御指摘のあったところですけれども、ここのB案の枠組みだけで証拠開示というものを考えるのではなく、5の「争点に関連する証拠開示」の制度と組み合わせた全体の仕組みによれば、審議会意見が求めるように、証拠開示に伴う弊害等にも配慮しつつ、争点整理と被告人側の訴訟準備に必要かつ重要な証拠が開示されることになるというふうに思われますので、基本的にB案によるということにした次第であります。
なお、そのB案本文の要件の具体的文言やカの「検察官主張事実に直接関係する参考人の供述調書」という部分の表現につきましても、より平明で適切なものとするよう工夫するべきであるとの御指摘もあったわけですが、その点は、今後の法案づくりの作業において詰めていただけるであろうというふうに考え、この段階ではあえて加工をしませんでした。もちろん、この検討会での今後の議論において、こういうふうに書くべきであるといった具体案があればお示しいただければというふうに存じます。
以上に加えまして、以前に関係機関での検討の結果を報告していただきましたように、身柄拘束中の被疑者の取調べの過程・状況を記録した書面が作成されることになっておりますので、その書面もB案による証拠開示の対象類型として追加すべきであるという御意見が多くの方から出されておりました。もっともな御意見だと思われますので、新たにクとしてその記録書面を対象に加えた次第です。
続いて、5ページの「4 被告人側による主張の明示」の「(1) 主張の明示等」のうち、アにおきましては、「被告人又は弁護人は、公判廷において、関係する事実の主張その他事件に関する主張をする場合には、準備手続において、あらかじめ、当該主張を明らかにしなければならない。検察官請求証拠に対する意見についても、同様とする。」という案をお示ししております。これは、たたき台のA案を取ったものです。
たたき台には、このほかに、被告人には争点の明示に関する義務を課さず、弁護について、公判廷では検察官主張事実のうちどの部分を争い、積極的にどのような主張をする予定であるかをできる限り明らかにするとともに、検察官請求証拠に対する同意・不同意等の意見を述べなければならないものとするという、B案が掲げられていました。
検討会の議論でも、それぞれの案を支持する御意見が述べられ、その理由としても、さまざまな御指摘がありましたけれども、後で述べますように、これは「8 争点の確認等」の「(2) 準備手続終了後の主張」というところで、被告人に対しては準備手続終了後に新たな主張をすることは制限しないものとするとしましても、準備手続における争点整理の実ができる限り上がるようにするためには、弁護人だけではなく被告人も公判においてする予定の主張は、準備手続段階で明示すべきであることを法律上明確にしておくべきだと考えた次第であります。
この点ちょっと誤解があるかもしれませんので、あえて付言しますと、こういうふうに被告人にも主張明示の義務を規定するとしましても、このことは、被告人自らが必ず準備手続に出てきて、自らの口でそういった主張を述べるということまで要求するものでは必ずしもなく、弁護人が、被告人の意向をも受けて、公判で行うことを予定している主張を明らかにすれば足りる、というふうに考えられます。
また、憲法38条1項に保障された被告人の自己負罪拒否特権や、刑事訴訟法に定められた黙秘権との関係については、慎重な検討が必要であることは言うまでもありませんけれども、検討会においても御指摘がありましたように、今回の案はあくまで、検察官が公判で証明しようとする事実と、その証明に用いる証拠が被告人側に示された上で、被告人側として自らの判断で公判において明らかにしようとしている主張を、時期を前倒しして、あらかじめ準備手続で明らかにしてもらうよう求めるだけのものにすぎないわけです。
自己に不利なことを認めるように求めているものではないばかりか、括弧の中も読んでいただきたいと思いますが、この準備手続において被告人側が何らかの防御上の主張をしなかったからといって、そのこと自体によって被告人側が公訴事実を認めたものと積極的に推認されることなるわけではありません。現行の公判において、被告人側がそのような主張をしなかった場合と同様の状況になるというだけにすぎないわけです。
また、そもそも当の主張をするということ自体を強要するものではありません。あくまで、被告人側が自ら判断で主張しようと考えている主張を明らかにしてもらうというだけのものにすぎない。そういうことですので、憲法上の自己負罪拒否特権には抵触せず、刑訴法上の黙秘権の趣旨にも反しないというふうに考えています。
以上のような理由から、基本的にはたたき台のA案と同様の案をお示しすることにした次第です。
ただ、たたき台のA案には「検察官主張事実の全部又は一部を否認する主張」という語句があったわけですが、この部分は削除しました。このような主張は、結局は事件に関する主張に含まれるわけですし、検討会においても御指摘のあったところですけれども、「検察官主張事実の全部又は一部を否認する主張」と書いてありますと、被告人に対し、検察官主張事実について個別に細かく認否を求める、すなわち、この部分は否認するということを明らかにしたところ以外は、積極的に認めるということになる趣旨であるかのように受け取られるおそれもないではないと思われましたので、その語句を削除したというわけです。
次に、同じく「(1) 主張の明示等」のうち、5ページのイにおきましては、「被告人又は弁護人は、取調べを請求する証拠があるときは、準備手続においてその取調べを請求し、かつ、これを開示しなければならないものとする。」というようにしております。これもたたき台にA案として掲げられていたものを採ったものです。
たたき台には、弁護人にのみこういう義務を課すというB案も示されておりました。検討会における議論でも、A、Bそれぞれの案を支持する御意見が述べられ、また理由についてもさまざまな御意見、御指摘があったところですが、先ほど主張を明示する義務について述べたのと同様の理由から、A案を採ることにした次第です。
次に「7 証拠開示に関する裁定」のうち、7ページの「(4) 証拠の標目の提出命令」のイにおきましては、「裁判所は、アにより提出された一覧表を被告人及び弁護人に開示しないものとする」ということにしました。これは御承知のように、たたき台にA案として掲げられていたものを採ったものです。
たたき台には、このほか、B案として、開示により弊害が生じるおそれがあると認めるときは、その一覧表を開示しないものとするという案も掲げられており、検討会の議論でも、A、Bそれぞれの案を相当とする御意見が述べられましたが、その際も御指摘のあったとおり、証拠の標目の一覧表が被告人側に開示されるということを想定しますと、その一覧表に単に形式的な標目のみにとどまらず、多少とも証拠の内容にわたることまで記載するということが困難になる。そうしますと、裁判所の裁定のための資料とするという本来の役割を十分に果たすことができなくなってしまうように思われます。
また、裁判所の判断で被告人側に一覧表が開示されなかった場合には、証拠そのものではなく、標目の一覧表の開示という、言わば付随的な事柄をめぐって無用な紛議が生じるおそれも出てくるわけてありまして、これらのことを考慮し、A案を採ることにした次第です。
続きまして「8 争点の確認等」の「(2) 準備手続終了後の主張」につきましては、検察官と弁護人は、原則として、準備手続終了後に、準備手続で確認された争点と異なる主張をすることはできないものとするものの、被告人については、準備手続終了後の主張を制限する制度は設けないものとする案をお示ししております。
たたき台には、被告人も含めて、準備手続終了後の主張を制限するというA案と、そういう制限を設けないものとするB案とが掲げられておりましたが、このうち被告人の主張を制限するということについては、検討会の議論では消極の御意見が多かったように理解しております。
その理由としては、被告人が公判廷における被告人質問において、新たな主張をし始めたときに、その発言を禁止して主張をやめさせるというのは適当でないということが挙げられていました。
この御意見、御指摘には理由があると思われますので、被告人の主張を制限すること自体はしない。ただ、そうしましても、争点整理の実効性を確保するという観点からは、被告人が公判廷において新たな主張をし始めたときも、弁護人の方は、それに対応して新たな主張を組み立てることが許されるのは、やむを得ない事由により準備手続ではその主張をすることができなかった場合など、正当な理由のある場合に限るべきではないかと考えた次第です。
次の(3)で述べますように、準備手続終了後の被告人、弁護人による証拠調べ請求を制限する制度を設ける。それが(3)のところの案ですが、そういうこととする場合に、それとの整合性という観点からも、そのようにするのが適当だと考えた次第です。
分かりやすく言えば、被告人が公判廷で何か新たなことを言い出した場合に、それを無理に制止することはできないだろう。しかし、そうだとしても、それを、弁護人までが新たな争点を形成する主張として取り上げたり、その立証のために被告人側が他の証拠の取調べを請求することを許すのは、それぞれ8の(2)及び(3)に記載した正当な理由のある場合に限るべきではないかということであります。
次が、同じく7ページの「(3) 準備手続終了後の証拠調べ請求」というところですが、この点は「検察官、被告人又は弁護人は、やむを得ない事由によって請求をすることができなかった場合を除き、準備手続の終了後に新たな証拠の取調べ請求をすることはできない。ただし、裁判所が職権で証拠調べをすることを妨げない。」という案をお示ししております。
これは、たたき台にA案として掲げられていた案ですが、たたき台には、そのほかにB案として、証拠調べをすることができないということではなくて、新たな証拠調べの請求をしようとする場合には、準備手続においてその請求をしなかった理由を説明しなければならないとした上で、その説明に相当な理由がないときは、その証拠調べ請求を却下することができるという案が掲げられておりました。更にC案として、証拠調べ請求の制限の制度は設けないという案も掲げられておりました。
検討会においては、それぞれの案を支持する御意見が述べられたところでありますけれども、A案を支持する御意見と、B案を支持する御意見とを併せますと、準備手続終了後の証拠調べ請求を何らかの形で制限する制度を設けるべきであるとする御意見が大勢であったというふうに理解しております。公判段階において、無制約に新たな証拠調べ請求をすることができるということになりますと、計画的・集中的に実質的な争点を中心とした公判審理を行うことが困難となってしまうわけですので、準備手続終了後の証拠調べ請求を制限する制度を設けることが必要だと考えられます。
そのことを前提とした場合に、A案とB案のいずれがよいのかということになるわけですが、実際の運用では恐らくさほどの差異がないように思われますし、A案でも、やむを得ない事由により準備手続では証拠調べ請求ができなかった場合には例外が認められるということになっている上、真に新たな証拠を調べる必要があると認められるときには、職権による証拠調べという道も開かれておりますので、被告人側に不当な不利益を課すことにはならないのではないかというふうに考えられるわけです。
そこで、準備手続において証拠調べ請求をすることが原則であるということを明確にするという観点からは、A案の方がB案に比べてよりはっきりしているということで、A案によったという次第であります。
次に「9 開示された証拠の目的外使用の禁止等」の「(1) 目的外使用の禁止」のところですが、たたき台では、使用禁止の対象が「開示された証拠の写し又はその内容」とされていたわけですが、そこを、8ページに書きましたように、「開示された証拠の複製その他その内容の全部又は一部をそのまま記録した物又は書面」というふうに改めました。
この点については、検討会での議論の中で、「内容」という文言は不明確で、規制の範囲が広がり過ぎないかという御指摘や、あるいは、同様の観点から、内容として規制するのは、写しと同視できるようなものに限定すべきではないかという御指摘がありましたので、そういう御指摘を踏まえまして、目的外使用の禁止の対象がより明確となるように修文を試みた次第です。
この修正に当たりましては、いわゆる通信傍受法に第22条第4項という規定がありまして、違う文脈の規定なんですけれども、その規定ぶりを参考にしました。「複製」というのは開示証拠の内容を元の記録媒体と同種の記録媒体に写し取ったものであり、供述調書をコピーに取るというような場合がその典型例です。「その内容の全部または一部をそのまま記録した物または書面」というのは、開示証拠の内容の全部または一部を、要約することなく、そのまま記録した物や書面であり、供述調書の内容を逐語的に入力したフロッピーディスクやハードディスクなどがその例であります。
このほか、検討会においては「当該被告事件の審理の準備」という目的は狭きに失し、例えば関連する民事訴訟で使用したり、学術研究目的で利用することも許容すべきであるという御意見もあったことは、御承知のとおりであります。
しかし、これに対しては、検察官による証拠開示はあくまで被告人側が当該被告事件の審理の準備を十分に行うことができるようにするという目的ないし趣旨でなされるものであって、被告人側に当該証拠のコピー等を、当該被告事件の審理とは関係なく自由に処分ないし利用でき得るようにするものではない、という御指摘があったところです。
また、開示される証拠を当該被告事件の審理の準備以外の目的で使用することが許されるということを前提にしますと、そのことをも考慮入れて、証拠の開示に伴って生じ得る弊害等について、判断せざるを得なくなるだろうと思われます。そうなりますと、結果として開示が認められる範囲が狭くなる可能性があるという御指摘もありましたし、刑事事件における証拠を学術研究目的や、民事訴訟における証拠として使用することを可能にするための方策というのは、現行法においても設けられており、そういう方策によるのが本来の在り方だという御指摘などもありました。私としても、これらの御指摘には理由があるというふうに考えた次第であります。
次は「第3 訴訟指揮の実効性確保」の「1 国選弁護人の選任」というところですが、検討会の議論では、弁護人の不出頭等が正当な理由のないものであるとき、あるいは弁護人の不出頭等に正当な理由があるが、被告人に異議のないとき、この二つの場合に裁判所が職権で国選弁護人を選任することができるという規定にすべきであるという御意見もあったところです。
しかし、現行の刑事訴訟法第289条第2項は、理由のいかん、当事者の意思いかんにかかわらず、必要的弁護事件において弁護人が出頭しないときには、弁護人を付けなければいけないことになっておりまして、その規定ぶりとの整合性などを考慮して、たたき台の案を維持するのが適当ではないかと考えた次第です。
続きまして、8ページの下の方から始まる「2 訴訟指揮に基づく命令の不遵守に対する制裁」というところですが、検討会の議論では弁護活動の独立性を尊重するという観点から、(1)の命令不遵守に対する過料等の制裁の制度や、(2)の処置請求の制度を設けることに消極の御意見もあったと承知しておりますが、たたき台案を支持する御意見の方がむしろ多数であったように理解しております。
その際、御指摘のあったように、訴訟関係人が、裁判所の出頭命令や重複尋問等の制限に従わない場合に、審理が遅延・空転したり、あるいは、焦点の定まらない審理となって、集中審理の下、明確化された争点を中心に当事者が活発な主張立証活動を行うことによって刑事裁判の充実・迅速化を図るという今回の改革の目的を達することが困難になるおそれがあると考えられますので、たたき台の案を維持することにした次第です。
次に、9ページの「第4 直接主義・口頭主義の実質化」という点ですが、たたき台においては、「裁判員制度について」と題するペーパーの「4 公判手続等」の(6)及び(7)に記載された諸点に関して、裁判員制度対象事件以外の事件について、異なる考慮をするべきところはあるかという質問の形で書かれていたわけですが、検討会の議論では、基本的には裁判員制度対象事件と同様の観点から、直接主義・口頭主義の実質化を図るべきであるというのがほぼ一致した御意見であったというふうに理解しておりますので、ここにお示ししているような案とした次第であります。
最後になりますが「第5 即決裁判手続」についてですが、このうちまず9ページの「1 即決裁判手続の申立て」というところを御覧いただきたいと思います。
ここでは、弁護人が即決裁判手続によることについての意見を留保したときにも、検察官は、即決裁判手続を申し立てることができるという形にしました。
これは検討会で御指摘のあったところですが、事件によっては、被疑者の弁護人が、いまだ証拠開示がなされていない起訴前の段階では、即決裁判手続によることに同意するかどうかの意見を留保し、起訴後に証拠開示を受けた上で意見を明らかにしたいと考えることがあり得るわけで、そういう場合に弁護人としては即決裁判手続によることに積極的に異議を述べているというわけではなく、意見を留保しているにすぎないわけですので、そのことのために即決裁判手続の申立て自体ができないものとするのは適当ではないという御指摘があったところです。そこで、それを踏まえまして、意見を留保したときも申立て自体はできるという形にした次第です。
もちろん、弁護人がその後即決裁判手続によるべきではないと考えるに至ることはあるわけですが、その場合には次の3のところで述べますように、即決裁判手続の申立てがあった後、裁判所が弁護人の意向を確認するということになっており、その確認に応じて弁護人が書面で同意することを明らかにしない限り、公判を開いて即決裁判手続によることの決定をすることはできないという仕組みになっていますから、申立て自体を認めたとしても不都合は生じないと考えられます。
この修正に伴いまして、弁護人が意見を留保したとき、異議を述べたとき、そして積極的に即決裁判手続によってよいという意思を明らかにしたとき、こういう三つの場合が考えられることになりますが、その三つの場合の区別をより明確にする趣旨から、たたき台では即決裁判手続によることについて異議がないときといった表現であった部分を、即決裁判手続によることに同意をしたときという表現に改めた次第です。
次の2~4についても、それに応じた文言の修正を施してあります。
次に、10ページの「3 即決裁判手続の決定」につきましては、今、御説明したとおりですが、被疑者段階で弁護人が意見を留保したときでも即決裁判手続の申立てができるものとしたことに対応しまして、(3)及び(4)のとおりに、弁護人が意見を留保した場合には、起訴後に改めて裁判所が、当該弁護人に対して同意をするかどうかを確め、弁護人から同意をする旨の書面が提出された後に始めて、公判期日を開くということにした次第です。
11ページの「4 即決裁判手続による裁判」につきましては、まず(4)のとおり、即決裁判手続の決定を取り消す場合として、「即決裁判手続の決定があった後、同手続による判決があるまでに、被告人又は弁護人が同手続によることについての同意又は有罪である旨の陳述を撤回したとき」というものを加えました。
これは、事務局からの説明を御記憶だと思いますが、たたき台としてはそういう場合には即決裁判手続によることが不相当であるという理由で決定を取り消すということを想定していたわけです。しかし、検討会で御指摘があったように、仮にそうだとしますと、裁判所としては相当であるかどうかという判断をしないといけなくなるということで、実際上はともかく、理論上は裁判所が不相当と認めないで決定を取り消さずに有罪判決をしてしまうという余地が残ります。そして、これは、特に上訴制限を設けることとする場合には、適当ではないことになります。そこから、文言上も、有罪陳述の撤回等があったときは、必ず決定を取り消すべきであるということを明らかにした次第です。
(5)の文言も(4)の修正に併せて修正しております。(5)につきましては、検討会の議論では消極の御意見もあったところですけれども、その際にも御指摘があったとおり、被告人としては弁護人の援助を受けつつ、即決裁判手続によることに同意し、それに基づいていったん適法に即決裁判手続の決定がなされ、書証が取り調べられたという場合には、実質的に見れば通常の公判手続において、被告人が弁護人の援助を受けながら公訴事実を認め、検察官請求書証を証拠とすることに同意した場合にほぼ等しいように思われますので、たたき台の案を維持することとした次第です。
最後ですが、12ページの「5 上訴」につきましては、上訴制限の制度を設けるという案をお示ししています。これは、たたき台にA案という形で掲げられていたものです。この点も、たたき台では、上訴制限は設けないというB案も記載されており、検討会でも、A、Bそれぞれの案を支持する御意見があったわけですが、上訴制限を設けることによって、手続の一層の合理化が期待でき、また、被告人としては、弁護人の援助を受けつつ、即決裁判手続による判決がなされるまでは、いつまでも有罪陳述を撤回するなどして、通常の手続による審判を受けることが可能であったわけですから、上訴制限をしても被告人の権利を不当に制約することにはならないのではないかと考えた次第です。
以上であります。まず内容についての議論に入る前に、ペーパーの文言の趣旨などについて御質問があれば承りたいと思います。もちろん、議論に入ってから御意見あるいは疑問という形で表明していただいても結構です。
それでは、もし御了承いただければ、私の方で特に議論を更にしていただいた方がよいと思われる項目が七つほどありますので、これらについてまず議論していただいて、更にこの点も問題だとか、あるいは議論すべきだということがあれば、その後で御意見をいただくということにさせていただければと思いますが、それでよろしいですか。
更に御議論いただいた方がよいと思われる点は七つでして、1番目が、「3 検察官による事件に関する主張と証拠の提示」というところの4ページの「(3) 取調べ請求証拠以外の証拠の開示」という点です。
2番目が、5ページの「4 被告人側による主張の明示」の「(1) 主張の明示等」というところです。
3番目が、「7 証拠開示に関する裁定」のうちの7ページの(4)のイ、証拠の標目の一覧表の開示の可否に関する点です。
4番目が、7ページの「8 争点の確認等」の(2)及び(3)、「準備手続終了後の主張」と「準備手続終了後の証拠調べ請求」という点です。
5番目が、7ページの末尾からだと思いますが、「9 開示された証拠の目的外使用の禁止等」の「(1) 目的外使用の禁止」という点です。
6番目が、8ページの下からですが、「2 訴訟指揮権に基づく命令の不遵守に対する制裁等」というところの「(1) 命令の不遵守に対する制裁」及び「(2) の裁判所による処置請求」です。
7番目として、「第5 即決裁判手続」の全体について御議論をいただければというふうに考えています。以上のような順序で御意見を伺うということで、よろしいでしょうか。
それでは、まず「3 検察官による事件に関する主張と証拠の提示」というところの4ページの「(3) 取調べ請求証拠以外の証拠の開示」という点から御意見を伺いたいと思います。
この点は、これまでの検討会でもかなり時間をかけて議論をしたところですけれども、更に御意見があるということでありましたら、述べていただければと思います。
○髙井委員 私は、前回までに申し上げているのですが、ここに書かれている考え方自体は相当だと思うんです。ただ書きぶりが非常に複雑になっているということ、それから、運用が考えておられているように正しい方向で運用されるかどうかということについて、やや疑問があります。そこで、ここでの考え方が正しく運用に反映されるような書きぶりを考えなければいけないと以前から思っているわけです。
そういう観点からすると、これも法案にするときに考えるということなのかもしれませんが、重要性と開示の必要性の関係はどうなるのかとかいう問題があるし、それから「事案の内容及び検察官請求証拠の構造等」といった文言が果たして必要なのかという問題があると思っています。
それから、これも座長ペーパーにありましたが、開示を原則として例外的に開示できない場合を設けるというような形で、運用するときにもう少し使い勝手のいい書きぶりが考えられないんだろうかと思います。これもまたすべて法案化のときにお任せするということでいいのかどうか、やや疑問といいますか、やや心配しているところがあって、もう少しその辺のところは詰めなければいけないのではないかと思っております。
今述べたことは、単なる問題提起なのかもしれませんが。
○井上座長 問題提起はもちろん結構なのですが、この段階に至りますと、更に具体的に、ここをこうすべきだというふうに提言していただいた方が、議論は先に進むと思うのですが。
○髙井委員 ここは非常に書きぶりが難しいです。ここはもう後は事務局に書きぶりを考えていただく以外ないというふうにも思っているわけです。ただ、本文の部分について、もう少しここはやはり制度自体のイメージの問題になりますので、ここはもう少し議論して、すっきりした形にならないかなと思うのです。例えば、ここの座長の試案にも残っているわけですが、「検察官請求証拠の構造等に照らし」というくだりが残っているのはなぜかということについて、もう少し詳しい説明があると議論が深まるかなと思います。
○井上座長 これまでは、ちょっと分かりにくいといった程度の御議論しか出なかったものですから、むしろ、ここはこう改めた方がよいのではないかという議論をしていただければありがたいのですが。
○髙井委員 書きぶりの問題ではなくて中身の問題になってしまうわけですが、例えば犯人性が争われている事件で、直接犯行状況を目撃したというA供述がありましたと、そのほかに更に犯行後の状況を目撃している、例えば10分後ぐらいを目撃しているB供述があったとします。そして、弁護人としては、A供述の信用性は争えないけれども、B供述は供述もあやふやだし、ここは争えると考えたとします。
そこで、B供述の信用性を争うという理由でア~クまでの証拠の開示を要求した場合に、座長試案に示されている考え方では、Bの供述調書関連の証拠開示は認められるのでしょうか。認められないのでしょうか。
議論のための設例ではありますが、要するに、証拠構造から言うと、犯行状況を直に目撃しているA供述があって、その供述については信用性を争わないというか、今のところ争う手がかりがないから証拠開示を請求しないという場合で、A供述が崩れない限りは、犯人特定は揺るがないという証拠構造になっているときに、B供述の信用性を争っても、B供述の信用性が否定されてもA供述が残るんだから、大勢に影響はなく、だから開示の必要性がないということになるのか。それとも、一応B供述も検察官が請求している以上、このB供述の信用性を争うといえば、B供述関連の証拠開示が一応必要性ありとして認められるのか。そこはどうなんでしょうか。
○井上座長 A供述に関係するア~クの類型に該当する証拠の開示は請求しないのですか。
○髙井委員 請求してしまうと、私の質問の意味がなくなってしまいます。つまり、私がなぜこのような設例を設けているかというと、「検察官請求証拠の構造等に照らし」という文言が、どういう効き目を持っているのかということを議論したいと考えているからです。
○井上座長 その場合に、検察官としてはB供述によって犯行から10分後に被告人はここにこういう状態でいました、あるいは歩いていましたということを証明しようとするわけですね。
○髙井委員 そうですね。それは、基本的には、検察官は、犯行時の状況、犯行後の状況を立証することによって、より有罪を確実にするという立証方法を取っていますから、当然B供述の請求をするわけです。
もう少し詳しく言いますと、弁護人は犯人性を争っている、つまりA供述の信用性を争うし、B供述の信用性も争うという場合に、そのときの証拠構造からいって検察官立証の核心部分はA供述にあるというような証拠構造になっているときに、どうなるのか。そのときに、確かにA供述には重要性があります。ですから、A供述関連の証拠開示は認められることになるでしょうが、B供述の信用性の有無は、有罪・無罪に関係してこないから、B供述についての証拠開示請求は却下しますということになるのかどうかということが、私が質問したいことです。
○井上座長 もし、B供述の信用性がひっくり返っておかしいということになれば、A供述の犯行を目撃しましたという部分の信用性にも影響してくるのではないですか。
○髙井委員 そういう場合もありますね。
○井上座長 ですから、そういう場合かどうかということを確かめるために、ここの段階で開示を受ける必要性があるということが、重要性があるかどうかという判断にかかわってくるのではないですか。
○髙井委員 そうですね。ですから、座長がおっしゃるような判断であれば、多分両方の証拠開示請求は認められると思うのです。弊害がないという前提で言えば。そういうことだとすると、この「検察官請求証拠の構造等に照らし」というのは、どういう意味を持ってくるのかよく分からないと思っているのです。
例えば、A供述の方が核心的な証拠だから、A供述関連の証拠開示は認めますが、B供述関連の証拠開示は認めませんというような判断が出てきていいのだ、あるいは、出るべきだという前提であれば、この「検察官請求証拠の構造等に照らし」という文言が効いてくるかなと思っているのです。
○井上座長 検察官として、第一次的に開示の要否を判断する際に、犯行後の状況というのは、ついでに立証しているだけのことで、犯人性を立証するためではないと判断すると、重要ではなくなってしまう。そういうふうになるのではないかという御疑問でしょうか。
○髙井委員 そうですね。
○辻参事官 もともとたたき台に記載してあったことですので、「検察官請求証拠の構造」と書いた趣旨について、若干考えたことをお話させていただきます。今おっしゃられたことと若干つながるのですけれども、およそ犯行の目撃供述一本が犯人であることを立証する証拠だという場合と、証拠はたくさんあって争う余地がなさそうな場合もあり得るかもしれません。
そのどちらかであるかによって、必要性の判断が変わらないかというと、およそ変わらないということは多分ないでしょう。あるいは、開示が必要な類型とか範囲とかを判断する際にも、それは一つの要素になるのではないかということで記載しということです。
ただ、今おっしゃったように、犯行の目撃供述が崩れなければ、およそB供述は意味がないからということで、開示請求が必ず却下されるのかというと、今、議論がありましたように、それは違うと思っております。
○髙井委員 確かに、弁護人の主張の仕方にもよるし、それはいろいろだと思うんですけれども。
○井上座長 証人の信用性ということだけではないわけですね。つまり、目撃したと言っているのだけれども、弁護側としては、その前後の状況はそれと矛盾しているではないかということを証明してもよいわけですね。そうすると、関連してくるのではないですか。
○髙井委員 そうですね。おっしゃるとおりだと思います。そうすると、たたき台に「検察官請求証拠の構造等に照らし」という文言が入ったという理由も理解できます。しかし、それを踏まえた上でも、果たしてこの文言は要るのだろうかという疑問があります。
○井上座長 この文言自体がですか。
○髙井委員 はい。「事案の内容に照らし」という部分だけでもいいのではないか。「検察官請求証拠の構造等に照らし」という文言があるために、余分なことを考えることになるのではないか。それによって運用のずれが広くなるのではないか。そのような疑問があります。
○井上座長 検察官としては、ある最終的な事実を証明するために、一定の立証方針を組み立てて証拠を請求するわけですね。従って、その組み立ての構造というものに照らさないと、重要かどうかという判断はできないのではないですか。「事案の内容」ということだけで、判断できますかね。
○髙井委員 逆に言うと、「事案の内容に照らし」という部分も絶対に必要なのでしょうか。
○井上座長 要するに、髙井委員のお考えだと、端的に、検察官がある事実を証明しようとして、ある証拠を請求しようとしているときに、それの証明力に関連するものであれば、必要のある限り開示すればよいではないかということですか。
○髙井委員 要するに、検察官が必要として証拠調べを請求しているわけだから、その証拠の証明力を争うということで請求すれば、弊害がない限りそれは開示されてもいいのではないかと思うのです。
ですから、「かつ」から「照らし」まではなくてもいいのではないか、その方がすっきりするから、運用をするときに余分なことを考えなくてもいいのではないか。その結果、運用のずれが少なくなるんではないかと思うのです。
○井上座長 検察官が余分なことを考えずに済むということでしょうか。
○髙井委員 そういうことです。
○辻参事官 結局、最終的には必要性の程度と弊害の有無、種類及び程度ということで、一種の衡量が必要だと考えておりまして、その必要性の程度ということを考えるに当たっては、やはりここでいうところの事案の中身が何であって、その問題となっている証拠がその立証の中でどういう重要性とか位置を占めているのかというのは、およそ必要かどうかというレベルとは別に、どのぐらいどう必要なのかというところでは、「検察官請求証拠の構造」とここに書こうが書くまいが、恐らく考慮に入れざるを得ない事項ではないか、ですから書いてもいいのではないかということで、もともとのたたき台には記載したということです。
○髙井委員 おっしゃる趣旨はよく理解していて、仮に問題の文言がなくなった場合に、こういうことを全然主張しなくても開示されるべきだということを言っているわけではなくて、当然弁護人としてはここは検察官の証拠構造はこうなって、ここが中心だからここを争うと、そのためにこれは必要だと、当然主張するわけです。それをしないで開示請求したら、それは却下されてもしようがないと思っているんですが、そういう意味では、ある意味ではここの部分はあってもなくても同じで、それは辻参事官がおっしゃるとおりなんです。
ただ、これがあると運用のときに、検察官によっては余分なことを考える人がいるんじゃないか。例えば、今言ったように、これはAだったら見せるけれども、B関連は見せる必要ないのではないか、Bは証拠構造から言ったって、従の従たるものだから開示しなくてもいいではないかということになって、最終的にはそれは裁判官が裁定して決めるわけですけれども、余分な争点を持ち込むことになるのではないかと私自身は思っているわけです。
○辻参事官 開示の請求をするに当たっては、今、髙井委員が御指摘になったような内容のことを、弁護人として述べるべきであることをむしろ明らかにするために、書いてみたということでございます。
○四宮委員 今の点に絞ってなんですけれども、私は髙井委員の意見に賛成で、要するにこれは今も出たように、開示の必要性の内容だと思います。
削る部分も同じで、この「事案の内容及び検察官請求証拠の構造等に照らし」という部分を削るべきではないか。
もう一つ、ここに関して言えば、ここにある類型は定型的に防御に重要であって、弊害も少ないというものを定型的に挙げていると思われますので、原則開示、例外的に不開示としたらどうかと考えています。
では、どういうふうに書くかということになりますが、私の提案では、「被告人又は弁護人から開示を求める証拠の類型及びその範囲を特定し」、そこから、「特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために、当該類型及び範囲の証拠を検討することが重要、必要であることを明らかにして開示の請求があった場合には、開示しなければならないものとする。ただし、開示によって生ずる弊害を考慮して、開示が不相当と認めるときは当該証拠を開示しなくてもよいものとする。」。こういうのはどうでしょうか。
○井上座長 髙井委員が言われたところと、原則開示、例外不開示ということの二つを言われましたが、後者については、一般的、類型的に、果たしてそのようなことが言えるのだろうかという御指摘もあり、必要性と弊害の有無、程度、種類を考慮して相当と認める場合には開示するという個別判断の形で判断した方がよいのではないかという御意見があったところです。そこは、御意見の分かれるところなのです。
要は、おっしゃるように、一般的、類型的に開示の必要性が高く、他方、弊害の恐れは類型的にない、とまで言い切れるかどうかということだと思うのです。そして、そこは、そうではないだろうということで、一応、この案としているのです。
前者については、そこを削って、さきほど辻参事官が言われたような趣旨が明らかになるかどうかという問題ですね。
ほかの方の御意見を伺ってみたいと思うのですが、いかがですか。
○池田委員 原則例外を確認するという四宮委員の話には、賛成し難いのですけれども、本文の、「かつ、事案の内容及び検察官の請求証拠の構造等に照らし」という部分については、私も削ってもいいのではないかと思います。もちろんこの点が当然必要性についての判断要素になることは間違いないわけですけれども、ここは特に弁護人の方に主張してもらうことになるわけですが、弁護人としては当然必要性について述べなければ、検察官の方が弊害等を考慮して開示の判断をすることができないわけですから、当然そこは弁護人の方で必要性の理由として書いてくるのではないかと思うのです。
この点が書いてないと、必要性の判断というのが違ってくるということではないのではないかと思います。
○本田委員 まず、開示の必要性と弊害というのは、総合考慮してそのバランスの上で判断していかなければいけないので、これは試案のとおりの判断枠組みにしなければいけないだろうと考えます。
それから、必要性の判断のためにどういう要素を考えなければいけないかというのは、今まで議論に出てきたところで、当然事案の内容とか、どういう証拠を検察官が証拠として組み立てて、それに対してこの証拠がどうだということを考慮しないと、必要性、あるいは重要性というものは判断できないだろうと思うのです。そうであるならば、きちんと明文化した上で判断するということを明確にしておいた方が、むしろ法律というか、開示のルールとしては明確になるわけで、あえてこれを削らなければならない理由がどこにあるのだろうかと考えます。ですから、この試案のとおりきちんと書いておけばいいと思います。
○酒巻委員 四宮委員のおっしゃった後半部分ですが、確かにア~クまでの中には、類型的に必要性が高く、弊害は余りないだろうというものが多いのですけれども、例えばオとかカというのは、従来から証人請求予定の者の供述調書とか、参考人の供述調書の中には、必ずしもそうは言い切れない類型も含まれていますので、一律に原則開示という枠組みをつくるのではなくて、比較衡量によって相当と認めるときというこの座長試案の形のままの方が、制度全体としては望ましいと思います。
そして、四宮委員がおっしゃったような類型の証拠については、普通は弊害が認められないでしょうから、結果として開示されることになるのではないかと私は楽観しております。
しかし、他方で参考人供述調書のたぐいは個別の場合毎にやはり具体的弊害の点が問題になり得るだろうと思います。
○大出委員 今の御議論を伺っていまして、原則例外という言い方をするから議論になるのかもしれませんけれども、基本的には争うということで開示が必要な証拠については、開示をするということでないと、結局ここで開示の問題を扱っている意味がなくなるだろうと思うのです。だとすると、そこで判断の仕方が難しいということになるのです。つまり不相当と認めるときに、いずれにせよ比較衡量であることは間違いないわけですから、その場合に原則として、言い方は問題かもしれませんが、開示の必要性があって、その類型に当たっている場合については、そういう主張があったときには開示すると。ただ、それは弊害があればもちろん開示しないということは了解しているわけですから、その場合の書きぶりとしては例外的なものにする。ただ、そこは相当か不相当かの判断の違いということになるわけだと思うんですが、それではなぜ相当な場合に開示するということでなければいけないのか、よく分からないんですね。
○井上座長 それは、逆も言えるのではないですか。
○大出委員 逆も言えるけれども、ただ開示の意味から考えた場合ですね。
○本田委員 恐らく、その開示の必要性にも程度の差があると思うのです。それから、弊害にも程度の問題があるだろうと思います。そして、開示の必要性が極めて高いということになれば、弊害の程度がある程度あったとしても開示しなければいけない場合があるかもしれない。しかし、開示の必要性があるとしても、そんなに高くないと、事案の内容とか、証拠の構造に照らしてそんなに高くないときに、弊害の程度が中程度だということになれば、それは弊害の方を優先しなければいけない。それは事案によって恐らく判断は違ってくると思います。
そういう実態があるとするならば、それはちゃんと原則とか例外ではなくて、両方をきちっと考慮して、開示するか、開示しないか決めるんだということを、そのまま素直に書いておけばいいではないかという気がするのですけれども。
○井上座長 大出委員は争うということを言われたけれども、それは争点関連の証拠開示の方の話で、ここでの開示は、争点にするかどうかを検討するために、それを判断するために必要だから開示を請求するというものなのです。
○大出委員 ですから、それは言い方の問題だと思うのですが、だとすればますます弁護側としてみれば、その判断をするための証拠として開示してもらいたいということであれば、その必要性があるという主張があれば開示するということでなぜいけないのか分からないんです。
○井上座長 「ますます」と言われたけれども、そこは平行線なのですね。つまり、本田委員が言われたのは、開示の必要性についても程度があるだろうし、弊害についても、その有無とか種類とか、程度というのがあるのだから、その両方を勘案して判断せざるを得ない。それをストレートに書いただけではないか、ということなのですが。
○大出委員 ですから、それをなぜ。
○井上座長 逆に、必要がある場合には開示するという書き方にした場合、開示の必要性の程度等を考慮して開示が不相当と判断されるときに、必要性の程度というのは、どこに出てくるのですか。
○大出委員 必要性の程度はその前に出てくるわけでしょう。
○井上座長 必要があることを明らかにして、あるいは重要であることを明らかにして請求があった場合には開示しなければならないとした上で、ただし書で、弊害の有無、種類、程度等を考慮して、不相当と認めるときはこの限りではない、と書いた場合、必要性の程度というのはどこに入ってくるのでしょうか。
○大出委員 その程度というのは。
○井上座長 本田委員が最初に言われた点なのですけれども、弊害が考えられるが、それよりは開示する必要性が高いという場合には、弊害があっても開示しないといけないという判断になるわけですけれども、その必要性の程度の概念というものが、先ほど私が述べたような書き方をした場合には、どこに入ってくるのだろうかという質問なのですが。
○大出委員 ただし書きで区別してしまった場合ということですか。
○髙井委員 若干そこと絡んでくるのですが、原則例外の書き方云々とは離れて、これは前にも申し上げたかもしれませんけれども、重要性の判断と必要性の判断、両者はどういう関係になるのでしょうか。
例えば、先ほど来座長もおっしゃっているし、本田委員もおっしゃっているんですが、開示の必要性の程度はどこに出てくるのかとおっしゃるけれども、例えば重要であることを明らかにして、重要性についても当然これは程度のある概念ですから、当然濃淡ありますね。確かに重要ではあるけれども、この弊害と比べたら、この程度の重要性では開示は不相当という場合もあり得るでしょう。
逆に弊害は確かにあるけれども、重要性は確かに高いから開示しましょうという判断の仕方もあるわけですね。
そうすると、開示の必要性というのはなくてもいいのではないかとも思うのです。重要であることを明らかにして開示の請求があった場合において、開示によって生じるおそれのある弊害の有無、種類、程度を考慮して、相当と認めるときは当該証拠を開示しなければならないものとするのでいいのではないか。
○井上座長 その場合には、開示の重要性というものをここに入れておかないといけないのではないですか。
○髙井委員 ですから、ここの書きぶりを、重要性の程度だとか、そういうことを若干修文することになるかもしれませんが。
○井上座長 要するに、どちらかに統一しろということですね。
○髙井委員 そういうことです。
もう一つ、私がなぜここにこんなにこだわるかというと、これは私の独特の感覚なのかもしれないけれども、検察官としては必要なものは出しているつもりなわけです。手持ちに持っている証拠というのは、これは役立たずの証拠だと思っているから手元に置いているわけです。非常に極端な言い方をすると。
そういうふうに必要性のあるものは全部出しているというときに、証拠開示の請求が出て、その必要性の判断をするというときに、こういう言い方をすると語弊があるかもしれませんが、基本的には役立たずの証拠が手元に残っているのに過ぎないのに何で開示が必要なのだという発想になって、実際の運用における必要性の判断というのは、なかなか検察官の必要性のあるものは全部出しているという立場からすると、なかなか難しい判断ではないかと思うのです。
もう一つ、相当と認めるときというのにこだわっているんですが、要するに検察官としては、必要なものは出しているのだから、更に出すことが相当だと認められると生理的に判断しにくいものだと思うのです。
むしろこんなもの出したら弊害があるのではないかと、不相当だという判断の方が、検察官の習性としてはしやすい判断だと思うのです。これは私だけの独特の感覚なのかもしれないけれども、そういうような検察官の習性というものを前提にして考えると、もう少しこの書きぶりは考えた方がいいのではないかと思っているのです。
○井上座長 ほかの方、いかがですか。ここのところは、いずれにしても、法案化するときにさらに詰めて考えていただきたいと、私自身も思っています。
○本田委員 検察官が犯罪事実を立証するために必要な証拠は全部出しているということは、そのとおりだとだと思うのですけれども、こういった証拠開示の制度ができて、証明力について争うという具体的な主張がなされている場合は、別の判断が当然出てくるわけですね。今まではそういった制度というのは、訴訟指揮でしかなかったわけですけれども、髙井委員の御指摘はやはり違うのだろうという気がします。こういう制度があれば、当然別の切り口から検察官はものを見るわけですね。そこは検察官の公益の代表者たるゆえんですから。
それから、重要と必要性、必要性というのは非常に広い概念ですね。単に必要というよりも、その必要性の程度はある程度きちんとしてもらわなければいけないと、そういうのを含めた必要性だろうと思います。そういう意味では、もうちょっと表現ぶりは考えるのかもしれないけれども、精神としてはそういう精神で書いてあると思っております。
○井上座長 そうですね。私も必要性の程度のところに重要というのがかかってくるのかなというふうに読んでいたのですけれども。
○髙井委員 そうすると、非常に複雑な構成ですね。
○井上座長 この文言については、さらに検討していただこうということですね。
○四宮委員 この(3)のほかの点で、これもいろんな意見があった上で、座長がこういうふうにまとめられているので、ある面で繰り返しになると思いますけれども、一つはリストの点で標目で形式的な一覧表では意味がないというふうにお書きになってらっしゃいますけれども、ここは考え方が違うということかもしれませんが、弁護人からすればやはり非常に有用なものだと考えております。
特に私が申し上げたいのは、争点関連の部分と、被告人、弁護側の主張の明示ということと併せて議論してもらえたらいいのではないかと、これは前に申し上げたことの繰り返しです。
それから、この(3)の類型とはちょっと異質で、これも前に申し上げたことですけれども、検察官の主張を弾劾する可能性があると検察官が思料するものを是非開示の対象にしてもらえないかということです。これも繰り返しになりますけれども、公判における真実の発見という要請、あるいはそういった証拠が埋没するのを防止するということからも有用ではないかとえている次第です。これは異なる意見があることは十分に承知をしておりますが、あえてもう一度申し上げます。
○井上座長 現在の案で、具体的にどういうものが落ちてくるのか、よく分からないのですが。
○四宮委員 どこですか。
○井上座長 今回の証拠開示に関する全体の仕組みの中で考えた場合に、どのような証拠が開示の対象から落ちてくるのか。検察官の主張を弾劾する可能性があると思料する証拠というものが、この仕組みの下で開示されないというのは、どういう場合なのでしょうか。抽象的に議論する限りでは、四宮委員がおっしゃるような考え方もあり得るのかもしれないのですけれども。
○四宮委員 例えば、ほかの人を捜査していたというような場合の捜査報告書などはどうなのでしょうか。
○井上座長 それは、争点として出せば、争点関連の証拠として開示の対象になってくるわけでしょう。
○四宮委員 ただ、それが分からないわけですね。
○井上座長 それがどういう意味を持つかですね。
○四宮委員 犯人の同一性に関して意味を持つということなんでしょうね。
○髙井委員 弁護人としては、最初はAを犯人と思って捜査していたのに、何でBをつかまえてきたのかということを言いたいんですね。それも犯人性について争うというようなことを言えば、主張の仕方によっては出てきますね。
○井上座長 当然に出てくるのですかね。
○髙井委員 出てくるでしょう。ですから、私が言っているように、この証拠開示の仕組みというのは、これを言うとまたしかられるかもしれないけれども、A弁護士だと出てこなくても、B弁護士だと出てくるという可能性はありますね。
○井上座長 それは、ここの部分に限ったことではないでしょう。
○髙井委員 そうですけれども、特にここで、弁護人の能力の差というものが出てきますね。
○酒巻委員 私は、座長試案に賛成です。さっきの御説明にもありましたし、私も言ったと思いますけれども、四宮委員もおっしゃった3だけではなくて、争点関連の開示も全部セットにして考えたときに、今、四宮委員が最後におっしゃった、検察官の主張に反するような証拠というものも、ほとんど争点に関連するというところに当てはまるのではないでしょうか。問題は座長試案の証拠開示の枠組みで何かが開示の対象から落ちるかというと、余り落ちるものはないと思うのですけれども。
検察官の主張に反するような証拠といった抽象的なことを書くより、まずは検察官取調べ請求証拠以外の証拠開示の第一段階で、必要性、重要性を示されれば、相当な範囲のものが開示されるわけで、開示されたものを検討して、検察官主張の弱いところを発見したら、そこを防御方針として積極的に主張する。その主張がされれば、つまり、例えば犯人性を争うというような形で、具体的に主張されることによって、争点関連の証拠開示の方でさらに証拠が開示されることになる。これが通常の能力のある弁護人のまず成すべきことでしょう。
髙井委員が先ほど検察官の目から見たらということをおっしゃいましたけれども、今申したような別の視点からの御主張や意見が具体的に示されれば、その目で検察官も見直すことができるわけです。そうすると、役立たない不必要とおっしゃいましたけれども、検事の目から見て役立たない証拠に見えたものがそうではないということが分かってくるということもあり得るわけです。そして、座長試案の仕組みの下ではこのような主張交換の過程を繰り返すわけです。そのことによって十分、かなり完備したいい証拠開示制度ができ上がっていると思うのです。
何度も繰り返しますが、確かにイギリスには四宮委員がおっしゃるような条文がありましたけれども、同じ趣旨は座長試案の仕組みによっても十分実現できるのではないかと思うのです。
○四宮委員 早い段階で、検察官が検察官の主張を弾劾する可能性があると考える証拠が弁護側に開示されれれば、それは主張の明示、整理に非常に役立つと思います。
例えば、さきほど申し上げたように、例えば別の人を捜査していたということが全く知られてない場合には、それらに関する証拠の開示は4の主張の明示に大きく貢献するのではないでしょうか。
○井上座長 別の人を捜査していたという事実は、検察官主張事実の弾劾という意味を持つのでしょうか。
○四宮委員 あり得るのではないですか。
○井上座長 どういう場合ですか。
○四宮委員 実際に私が担当した事件で、被告人となった人を捜査する前に、別の人を捜査していたというものがありました。ただ、その別の人は結局自白をしなかった。ところが、私が代理人となった人は、その後で自白をしたために、起訴されたというものでした。
○井上座長 しかし、その場合、当の被告人が犯人であるということを検察官は主張しているわけですよね。その主張に対する弾劾にどういう具合でなるのですか。
○四宮委員 弁護側からすれば、被告人とは別の人が犯人である可能性があるわけですね。
○井上座長 それは非常に乱暴な議論ですね。
○四宮委員 私は犯人ではありませんと争うわけですね。ほかに犯人がいるはずですと主張するときの・・・。
○井上座長 捜査の過程で別の人が浮かんだことがあったのだから、そうだというわけですか。
○四宮委員 例えば、Bという人が自白をして起訴された事件で、まずAという人を捜査していたということをB側が全然知らないとします。しかし、Bは起訴後に私は犯人ではない、別の人が犯人である可能性があると主張しようとするときに、相当長期間にわたって前に別の人つまりAを調べていたということが分かり、一体どんな嫌疑から、どんなことでBを調べていたのかということがもし分かれば・・・。
○井上座長 当の被告人について犯人性を争うために、そういった事実を持ち出したいということですか。
○本田委員 捜査というのが、どういうふうに行われるかというのは、御説明するまでもないと思いますけれども、例えば殺人なら殺人が起きたとします。そして、現場の状況からあらゆることを想定していろんな可能性を探って捜査をしていくわけです。その捜査線上には浮かんだり消えたりする人がいるし、その中で一人の犯人について、きちんと証拠があって起訴するということになる。
事件が起きていますから、犯人がいることは間違いないですね。では、ほかの人を捜査したから、この人が犯人ではないという理屈にはならないはずなんです。捜査はいろいろやりまして、つぶしの捜査もやりますし、いろんな捜査をやって、積極的にこの人が犯人であるという証拠があるということで起訴しているわけです。四宮委員のようなことをおっしゃるのであれば、要は最初から真犯人以外は捜査ができないということになってしまいますよ。しかし、そんなばかな話はないですよ。
○四宮委員 そうではなくて、いろいろな捜査の結果、被告人に嫌疑はあるのだと思います。ただ、その中に、被告人に有利なものがあるかもしれない。私は何もそれを全部証拠あさりだと言っているわけではなくて、その中で検察官が今、実際に起訴した被告人にとっては、自らが組み立てた証拠構造について弾劾をする可能性があるかもしれないというものがあったら、それは開示しなさいという規定がもしこの段階であれば、それは。
○井上座長 他の人が犯人だということを証明するというのは、弾劾ではないのではないですか。
○四宮委員 そうですか。
○井上座長 検察官が請求している証拠が信用できない、あるいは証拠価値がないというのが弾劾なのではないですか。
○四宮委員 でも、検察官の主張は弾劾するわけですね。弾劾という言葉がいいかどうかは分かりませんが、事務局が訳されたものでは弾劾という用語が使われていましたので。
○井上座長 しかし、ほかの人が犯人である可能性があるということを幾ら言っても、当の被告人が犯人であるということが合理的な疑いを超えて証明されれば、それで終わりなのではないですか。
○四宮委員 そうです。そこを被告人、弁護人が争っているわけですね。
○井上座長 ですから、そういう争い方で本当に意味のある争いになるのでしょうか、ということなのですが。
○四宮委員 そうなるだけの証拠が埋もれているかもしれないわけです。
○池田委員 検察官がどういうことで被告人が犯人だと考えているのかということを裏付ける証拠が請求されるわけですね。そして、その証拠そのもの、例えば目撃者なり、あるいは現場の指紋などの証拠価値が争いになるのではないですか。
○四宮委員 なると思います。
○池田委員 そうすると、例えば、目撃者の供述の証明力を争うために、そこに別の人がいたかもしれないとか、あるいは犯人の特定について、もっと別のことを供述している人がいるのではないかとか、指紋の証拠価値を争うのであれば、それを採取したときのことについて、こういう証拠があるのではないですかということで、どんどん証拠の開示を求めていくことは可能なのではないですか。
主張だけでだと、全然関連性がないようですけれども、検察官は既に積極的に立証すべき証拠を出しているわけで、それに何か争いがあるわけでしょう。そうすると、その個々の証拠との関連で、証拠の開示を求めていけるのではないかと思うのです。
○髙井委員 警察が最初の段階で被告人とは別の人を捜査していたということを立証しても、法廷に出ている証拠が崩れない限りは有罪ではないですか。
○四宮委員 もちろんそうです。そんなことを立証したって、何の役にも立たないです。ただ、捜査をしていたときに出てきた証拠ですとか、作成された捜査報告書ですとか、そういうものの中に被告人の無罪の主張に資するものがあるかもしれないということを言いたいのです。
○井上座長 しかし、基本的な証拠というのは、共通しているわけでしょう。一つの事件を捜査しているわけですから。それについて、この証拠が意味を持つ、重要だということで、それに基づいて被告人が犯人であるということを検察官は立証していくわけで、それに対して、実はここのことろは矛盾する証拠があるのではないか、という形で争点として出していくことは可能なわけですよね。
それがないのに、捜査の過程でいろんな人が浮かんでいたから、そちらが犯人かもしれないということで、捜査の対象になっていた人に関する証拠を全部開示しなければならない、ということになるものですかね。
○四宮委員 検察官がそう考えるのであればということで、先ほど私が提案した類型を仮に入れるとすればですね。
○井上座長 そこがよく分からないのですけれども、抽象的に考えるからそんなふうな議論になるのかもしれませんけれども、問題は、起訴されている当の事件について、検察官が請求している証拠をどうやって弾劾するか、あるいは、矛盾した証拠があったら、どうやってそれを発見していくかということでしょう。
○四宮委員 例えば、先ほど私が述べたケースで、最初にAという人を取り調べて自白した調書が1通だけあるという場合に、その調書は座長試案の仕組みの中でどう開示されることになるのですか。
○井上座長 その自白調書をどのように使うのですか。
○四宮委員 その内容にもよりますね。それが客観的な証拠に非常に合致していてということもあり得るかもしれない。もちろん、今、私が申し上げているのは、あり得ないことかもしれないけれども、こういう場合はどうするのかということで、言わば議論のための議論をしているわけですけれどもね。
○井上座長 どうも現実的な想定ではないような気がします。それは、明らかに違う方向を指している証拠があるのを、検察官が無視してしまったというような場合を想定されているのでしょう。
○四宮委員 無視したのかどうかは分かりませんけれども、捜査の結果ですから。
○井上座長 しかし、きわどいところだったら、さっき池田委員が言われたような形で開示されるのではないですか。関連しているとすればですね。
○本田委員 1点だけ、先ほどおっしゃったように、このAという被告人を起訴しているときに、捜査段階でBという人も犯人である可能性があるといって追いかけていたから、この人が犯人でないという証拠には何もならないでしょう。
○四宮委員 それはそうです。
○本田委員 もう一つ、検察官の主張を弾劾する可能性のある証拠というようなことをおっしゃいますけれども、可能性っていうのがよく分かりませんね。一体何が、どういう場面で、どういう可能性なのか。それは具体的に証明力などを争うなら争うということを明らかにしてもらわないと、判断のしようがないですよ。
○四宮委員 可能性があると検察官が判断した場合には、開示すればいいわけです。
○本田委員 主張に反する可能性というのは、具体的にどういうことなんですか。
○髙井委員 検察官の主張に反する可能性のある証拠で、ア~クにあるものを開示せよという主張はなかなか。
○井上座長 その段階では、被告人、弁護人側はまだ主張を明示していないのですよ。犯人性を争うとも何とも言ってないわけですね。
そうであるのに、先ほどの四宮委員のお考えのようなことにすると、とにかく捜査の対象になった人に関係する証拠は全部開示せよということになるのではないですか。
○四宮委員 検察官がそう判断すればですね。
○本田委員 しないですよ。
○井上座長 四宮委員の御議論でいけば、判断しなければならないという理屈になるのではないですか。およそ可能性があるものは開示せよ、弁護人の目から見れば使えるかもしれないということであれば、捜査の対象になった人に関連する証拠である限り、弁護人として犯人性を争うかもしれないから、すべて開示しないといけない、ということになるのではないですか。
○四宮委員 その犯人性を争うのに役立つ可能性があると検察官が判断した場合には、開示するということであって、争えそうだというものを全部開示せよということではないです。
○井上座長 検察官としては役立たないと思って出さなかった場合、別の人を捜査していたはずだということは裁判所に持ち込まれることになるということですか。
○四宮委員 そうです。それは証拠開示の裁定のところで。
○井上座長 これ以上議論しても平行線のように思うのですけれども、四宮委員が想定されているところがどうもぴんとこないですね。
○髙井委員 争点に関連する証拠開示のところであればともかく、弁護人の主張をはっきりさせる前の段階で、なぜそれが必要なんですか。
○四宮委員 例えば、争点形成に見落としているものがあるかもしれないわけです。開示されたものを見て、ああそうだったということで争点を形成できるということです。
○髙井委員 だけど、例えば自分が犯人かどうかは見なくても、被告人は分かるわけでしょう。
○四宮委員 さっきの例ではそうですけれども、争点形成の前の段階の証拠開示の問題にする意味は、埋もれているものを出すということです。
○樋口委員 証拠物でも、目撃証言でも、被疑者本人の供述でも、供述はクで新たに加えられていますけれども、結構変遷しますね。変遷した元の供述も類型に入っているわけですね。
それから、目撃証言もいろんな目撃証言があって、矛盾する目撃証言もありますが、これも開示対象になりますね。それから証拠物について言えば、現場鑑識活動で収集した微物から、例えばDNA鑑定をして、鑑定の結果が手持ち証拠になっているわけですけれども、これもたまたまそこにいたかどうかの証明のためにDNA鑑定をやるわけですけれども、本人のDNAの鑑定結果と照合した結果、一致するものはないということは往々にしてありますが、現場の微物のDNA鑑定結果も開示対象になりますね。
ですから、座長試案の枠組みでも、証拠物であれ、目撃証言であれ、本人の変遷したもともとの供述であれ、すべて開示の対象になるのではないですか。
○酒巻委員 結局、どうも抽象的で分からないのですけれども、四宮委員のおっしゃっていることは、座長試案の基本枠組みと違う、要するに大昔から言われている事前全面開示をせよという御主張なのではないですか。しかし、私の考えでは、具体的に開示請求を行えば、弊害のない限りそれにほとんど違わないことが座長試案の枠組みでできるはずだと思うのです。
○井上座長 ほかに、更に付け加える御意見がなければ、このくらいにしたいと思います。もう一つ議論しておきたかったのですが、今日はこのくらいにさせていただきたいと思います。
次回のスケジュールについて、事務局の方から何かありますか。
○辻参事官 次回の日程は、申し訳ございませんが、現時点でまだ未定でございまして、今、御都合を伺っているところでございますが、なかなか調整が難しいところもあり、この後若干の方には御無理をお願いすることもあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
○井上座長 本日もまた、なかなか白熱した議論で、ありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。