ア |
起訴相当の議決以外の議決にも拘束力を付与することの当否
起訴相当の議決についてのみ拘束力を付与するのが相当であるとの意見が述べられた。 |
イ |
拘束力のある議決の要件
(ア) 検察官からの意見聴取を必要的なものとすることの当否
主として
- 公訴の提起が被疑者に大きな負担をもたらすものであることから、検察審査会の議決に拘束力を付与する以上、その前提として、各検察審査員が、検察官の不起訴処分の理由や証拠の評価等を十分に理解した上で慎重に判断する必要があり、少なくとも、拘束力のある起訴相当の議決をする場合には、あらかじめ、検察官の意見聴取を必要的なものとすべきとする意見
- 拘束力のある起訴相当の議決をする場合には、検察官の意見を聴取するだけではなく、検察審査員が検察官に疑問点を質問することを含む手続として、必要的なものとすべきとする意見
- 拘束力のある起訴相当の議決をする場合において、原不起訴処分の理由が嫌疑不十分、嫌疑なし等のときには、犯罪の成否が問題となっていることから、慎重を期して、検察官の意見聴取を必要的なものとし、原不起訴処分の理由が起訴猶予のときには、犯罪自体は認められることから、検察官の意見聴取を必要的とはしないものとすべきとする意見
が述べられた。
なお、本論点に関連し、拘束力のある起訴相当の議決をする場合に、被疑者に弁明の機会を与えることを必要的なものとすることの当否が議論され、主として、
- 拘束力のある起訴相当の議決をする場合に、検察官の意見聴取を必要的なものとすることに賛成であるが、それとのバランスから、被疑者に弁明の機会を与えることを必要的とすべきとする意見
- 被疑者はいったん不起訴処分とされており、拘束力のある起訴相当の議決がなされることが想定されるのであれば、当該被疑者に、弁明の機会を与える必要があるとする意見
- 検察審査会の審査は検察官の不起訴処分を対象としてその当否を問うものであり、検察官の意見を聴取することと、被疑者の弁明を聴取することとを同列に論ずることはできないこと、被疑者の弁明は検察審査員が精査する不起訴記録中に記録されている上、現行制度でも、必要があれば、検察審査会が被疑者の出席を求めて弁明を聴取することも可能であることから、被疑者に弁明の機会を与えることを必要的とするのは相当ではないとする意見
- 検察審査会の審査においては、被疑者を不起訴処分とした検察官と、当該被疑者との利害は一致しており、両者を対抗的にとらえて、「検察官の意見聴取をするのであれば被疑者に弁解の機会を与えることも必要である」という立論をするのはおかしいとする意見
- 検察審査会には法廷警察権のような権限もないため、一般の国民だけで構成される検察審査会に被疑者が出席して粗暴な言動に及んだ場合適切に対処することは困難であるから、被疑者に弁明の機会を与えることを必要的とするのは相当ではないとする意見
が述べられた。
(イ) 検察官に再考(再捜査・再処分)の機会を与え、その結果をも踏まえた上でなされた議決に拘束力を付与するものとすることの当否
主として、
- 被疑者の利益との調和を図ることができるよう、検察審査会の一定の議決により事件を検察官に戻し、検察官において、検察審査会の指摘を踏まえ、再捜査の上、処分を再考し、なお不起訴が維持された場合に、検察審査会が改めて審査し、起訴相当の議決をした場合に拘束力を与えるべきとする意見
- 検察審査会の議決によって事件を検察官に戻し、検察審査会の疑問を踏まえて、プロである検察官が当該事件を見直し、それでも不起訴処分が維持された場合に、検察審査会が一般国民の良識に照らして審査し、起訴相当の議決をすればこれに拘束力を与えるものとするのが、プロである検察官と一般国民で構成される検察審査会とがよりよく協働することとなり、相当であるとする意見
- 検察官の再考の機会を挟み、検察審査会が二度審査する二段階案に賛成であるとしつつ、最初の検察審査会と二回目の検察審査会との構成メンバーが異なる可能性があることを指摘する意見
- 検察審査員の任期の見直しの要否をも含めて検討する必要があるとする意見
- 検察審査会の意向を踏まえ、検察官が再考した結果、起訴すべきと判断した事件については、検察官が起訴できるようにすべきとする意見
- 公訴権行使の在り方に民意をより直截に反映させていくことが重要であるとする司法制度改革審議会の意見の趣旨からすれば、検察官に事件を戻すことなく、当初から、検察審査会が、拘束力のある起訴相当の議決を行い得るものとすべきであり、検察官の意見聴取を必要的なものとすれば足りるとする意見
- 検察審査会の起訴相当又は不起訴不当の議決は、検察官の不起訴処分への不満表明ないし批判であるから、まずは、これに対する検察官の説明責任を果たさせる機会を設けるべきとする意見
- 検察官の原不起訴処分の理由が嫌疑不十分、嫌疑なし等のときには、犯罪の成否が問題となっていることから、慎重を期し、検察官に事件を戻して再考させた上で、拘束力のある起訴相当の議決を行うものとすべきであるが、原不起訴処分の理由が起訴猶予のときには、犯罪自体は認められることから、検察官に戻すことなく拘束力のある起訴相当の議決を行い得るものとすべきとする意見
が述べられた。
(ウ) 議決の多数決要件を加重することの当否
主として、
- 現行の制度と同様、拘束力のある起訴相当の議決を行うには、検察審査員11人中8人以上の多数とすべきであり、全員一致まで要求するのは不相当であるとする意見
- 現状でも起訴相当の議決は少なく、現行の制度以上に多数決要件を加重すると、制度として機能しなくなるおそれがあるとする意見
- 検察審査会の議決に拘束力を付与しても、最終的な有罪、無罪等の判断は裁判所にゆだねられており、現行の制度と同様、検察審査員11人中8人以上の多数で相当であるとする意見
- 嫌疑不十分、嫌疑なし等を理由とする不起訴処分に対しては、犯罪の成否が問題となっていることから、慎重を期し、検察審査会が拘束力のある起訴相当の議決を行う場合には、全員一致によるものとすべきであるとする意見
が述べられた。
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ウ |
その他(問題提起等)
(ア) 拘束力のある議決によって公訴の提起がなされるのではなく、当該議決に付審判請求がなされたのと同様の効果を与え、裁判所が付審判決定(公訴提起)をするか否かを判断するものとする制度も考えられないかという問題提起がなされたが、これに対しては、
- 司法制度改革審議会意見は、公訴権行使の在り方に民意をより直截に反映させるため、検察審査会の一定の議決に公訴提起に向けた拘束力を付与するものとする趣旨であり、付審判請求の効果しか認めないのは、同意見の趣旨に反するとする意見
- 付審判制度のように罪種の限定もなく、検察審査会の議決を受け、裁判所が、訴追官の役割を果たす一方、第三者的に裁判も行わなければならないことになるのは相当ではないとする意見
- 検察審査会の審査に加え、裁判所による付審判の審理を経るのでは時間がかかり過ぎて適当ではないとする意見
が述べられた。
(イ) 公訴提起による被疑者の負担の観点、あるいは、事件の罪種・態様によっては不当な圧力が加えられるおそれがある検察審査員の安全を確保する観点から、対象事件を一定範囲に限定することも今後の検討課題とすべきとする意見が述べられたが、対象事件の範囲を限定するのは相当ではないとする意見もあった。 |