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裁判員制度・刑事検討会(第3回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日 時 : 平成14年5月21日(火)13:30~16:45

2 場 所 : 司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者 :
(委 員) 池田修、井上正仁、大出良知、清原慶子、酒巻匡、四宮啓、髙井康行、土屋美明、       中井憲治、平良木登規男、廣畑史朗(敬称略)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、辻裕教参事官

4 議 題 :
「公訴提起の在り方」について

5 配布資料 :
資料1: 検察審査会関係参考資料
資料2: 「公訴提起の在り方」に関する当面の論点(補充)

6 議 事 :
 事務局から配布資料の説明を行った後、委員の協議により、資料2に沿って、公訴提起の在り方に関する当面の論点をひととおり議論することとなった。
 その議論の概要は、以下のとおりである。
(1) 拘束力のある議決の種類・要件
 ア 起訴相当の議決以外の議決にも拘束力を付与することの当否
起訴相当の議決についてのみ拘束力を付与するのが相当であるとの意見が述べられた。
 イ 拘束力のある議決の要件
(ア) 検察官からの意見聴取を必要的なものとすることの当否
  主として
  •  公訴の提起が被疑者に大きな負担をもたらすものであることから、検察審査会の議決に拘束力を付与する以上、その前提として、各検察審査員が、検察官の不起訴処分の理由や証拠の評価等を十分に理解した上で慎重に判断する必要があり、少なくとも、拘束力のある起訴相当の議決をする場合には、あらかじめ、検察官の意見聴取を必要的なものとすべきとする意見
  •  拘束力のある起訴相当の議決をする場合には、検察官の意見を聴取するだけではなく、検察審査員が検察官に疑問点を質問することを含む手続として、必要的なものとすべきとする意見
  •  拘束力のある起訴相当の議決をする場合において、原不起訴処分の理由が嫌疑不十分、嫌疑なし等のときには、犯罪の成否が問題となっていることから、慎重を期して、検察官の意見聴取を必要的なものとし、原不起訴処分の理由が起訴猶予のときには、犯罪自体は認められることから、検察官の意見聴取を必要的とはしないものとすべきとする意見
が述べられた。
 なお、本論点に関連し、拘束力のある起訴相当の議決をする場合に、被疑者に弁明の機会を与えることを必要的なものとすることの当否が議論され、主として、
  •  拘束力のある起訴相当の議決をする場合に、検察官の意見聴取を必要的なものとすることに賛成であるが、それとのバランスから、被疑者に弁明の機会を与えることを必要的とすべきとする意見
  •  被疑者はいったん不起訴処分とされており、拘束力のある起訴相当の議決がなされることが想定されるのであれば、当該被疑者に、弁明の機会を与える必要があるとする意見
  •  検察審査会の審査は検察官の不起訴処分を対象としてその当否を問うものであり、検察官の意見を聴取することと、被疑者の弁明を聴取することとを同列に論ずることはできないこと、被疑者の弁明は検察審査員が精査する不起訴記録中に記録されている上、現行制度でも、必要があれば、検察審査会が被疑者の出席を求めて弁明を聴取することも可能であることから、被疑者に弁明の機会を与えることを必要的とするのは相当ではないとする意見
  •  検察審査会の審査においては、被疑者を不起訴処分とした検察官と、当該被疑者との利害は一致しており、両者を対抗的にとらえて、「検察官の意見聴取をするのであれば被疑者に弁解の機会を与えることも必要である」という立論をするのはおかしいとする意見
  •  検察審査会には法廷警察権のような権限もないため、一般の国民だけで構成される検察審査会に被疑者が出席して粗暴な言動に及んだ場合適切に対処することは困難であるから、被疑者に弁明の機会を与えることを必要的とするのは相当ではないとする意見
が述べられた。

(イ) 検察官に再考(再捜査・再処分)の機会を与え、その結果をも踏まえた上でなされた議決に拘束力を付与するものとすることの当否
 主として、
  •  被疑者の利益との調和を図ることができるよう、検察審査会の一定の議決により事件を検察官に戻し、検察官において、検察審査会の指摘を踏まえ、再捜査の上、処分を再考し、なお不起訴が維持された場合に、検察審査会が改めて審査し、起訴相当の議決をした場合に拘束力を与えるべきとする意見
  •  検察審査会の議決によって事件を検察官に戻し、検察審査会の疑問を踏まえて、プロである検察官が当該事件を見直し、それでも不起訴処分が維持された場合に、検察審査会が一般国民の良識に照らして審査し、起訴相当の議決をすればこれに拘束力を与えるものとするのが、プロである検察官と一般国民で構成される検察審査会とがよりよく協働することとなり、相当であるとする意見
  •  検察官の再考の機会を挟み、検察審査会が二度審査する二段階案に賛成であるとしつつ、最初の検察審査会と二回目の検察審査会との構成メンバーが異なる可能性があることを指摘する意見
  •  検察審査員の任期の見直しの要否をも含めて検討する必要があるとする意見
  •  検察審査会の意向を踏まえ、検察官が再考した結果、起訴すべきと判断した事件については、検察官が起訴できるようにすべきとする意見
  •  公訴権行使の在り方に民意をより直截に反映させていくことが重要であるとする司法制度改革審議会の意見の趣旨からすれば、検察官に事件を戻すことなく、当初から、検察審査会が、拘束力のある起訴相当の議決を行い得るものとすべきであり、検察官の意見聴取を必要的なものとすれば足りるとする意見
  •  検察審査会の起訴相当又は不起訴不当の議決は、検察官の不起訴処分への不満表明ないし批判であるから、まずは、これに対する検察官の説明責任を果たさせる機会を設けるべきとする意見
  •  検察官の原不起訴処分の理由が嫌疑不十分、嫌疑なし等のときには、犯罪の成否が問題となっていることから、慎重を期し、検察官に事件を戻して再考させた上で、拘束力のある起訴相当の議決を行うものとすべきであるが、原不起訴処分の理由が起訴猶予のときには、犯罪自体は認められることから、検察官に戻すことなく拘束力のある起訴相当の議決を行い得るものとすべきとする意見
が述べられた。

(ウ) 議決の多数決要件を加重することの当否
 主として、
  •  現行の制度と同様、拘束力のある起訴相当の議決を行うには、検察審査員11人中8人以上の多数とすべきであり、全員一致まで要求するのは不相当であるとする意見
  •  現状でも起訴相当の議決は少なく、現行の制度以上に多数決要件を加重すると、制度として機能しなくなるおそれがあるとする意見
  •  検察審査会の議決に拘束力を付与しても、最終的な有罪、無罪等の判断は裁判所にゆだねられており、現行の制度と同様、検察審査員11人中8人以上の多数で相当であるとする意見
  •  嫌疑不十分、嫌疑なし等を理由とする不起訴処分に対しては、犯罪の成否が問題となっていることから、慎重を期し、検察審査会が拘束力のある起訴相当の議決を行う場合には、全員一致によるものとすべきであるとする意見
が述べられた。

 ウ その他(問題提起等)
(ア) 拘束力のある議決によって公訴の提起がなされるのではなく、当該議決に付審判請求がなされたのと同様の効果を与え、裁判所が付審判決定(公訴提起)をするか否かを判断するものとする制度も考えられないかという問題提起がなされたが、これに対しては、
  •  司法制度改革審議会意見は、公訴権行使の在り方に民意をより直截に反映させるため、検察審査会の一定の議決に公訴提起に向けた拘束力を付与するものとする趣旨であり、付審判請求の効果しか認めないのは、同意見の趣旨に反するとする意見
  •  付審判制度のように罪種の限定もなく、検察審査会の議決を受け、裁判所が、訴追官の役割を果たす一方、第三者的に裁判も行わなければならないことになるのは相当ではないとする意見
  •  検察審査会の審査に加え、裁判所による付審判の審理を経るのでは時間がかかり過ぎて適当ではないとする意見
が述べられた。

(イ) 公訴提起による被疑者の負担の観点、あるいは、事件の罪種・態様によっては不当な圧力が加えられるおそれがある検察審査員の安全を確保する観点から、対象事件を一定範囲に限定することも今後の検討課題とすべきとする意見が述べられたが、対象事件の範囲を限定するのは相当ではないとする意見もあった。


(2) 拘束力のある議決後の訴追及び公訴維持の在り方
  公訴維持の主体を中心に議論がなされ、主として、
  •  審査申立てをした被害者の立場から見ると、不起訴処分をした検察庁の検察官が公訴の維持に当たり、その事件が無罪になると、検察官が最善を尽くしていたとしても、その訴訟活動に対する不信感を抱かれ、制度の公正らしさに疑念を生じることになることから、検察官役の弁護士が公訴の維持に当たるのが相当であるとする意見
  •  国民一般、特に審査申立てをした被害者から見れば、検察官は最後まで不起訴処分を主張した立場にあり、そのような検察官が公訴の維持に当たるのでは、公正さの外観を保つことができないから、現行の付審判制度と同様に、裁判所が検察官役に指定した弁護士が公訴の維持に当たるのが相当であるとする意見
  •  検察官は、事件によっては無罪の論告をすべき場合があるが、検察審査会の議決によって公訴提起された事件について、検察官が無罪の論告をすることは実際上困難であることから、付審判制度と同様に、指定弁護士が公訴の維持に当たるべきとする意見
  •  検察審査会の拘束力のある議決によって公訴提起に至る事件では、公訴の維持のため補充捜査が必要となる場合があると思われるが、指定弁護士に十分な補充捜査をすることが可能なのか、検察官の方が慣れていているのではないかとの意見
  •  訴訟を運営する立場からすると、手続に精通している者が公訴の維持に当たるのが望ましいとする意見
  •  指定弁護士が公訴の維持に当たるのが相当であるが、その場合、指定弁護士の権限を明確にすべきとする意見
  •  公正らしさを担保するために指定弁護士が公訴の維持に当たるべきであるという意見は理解できるが、その場合、指定弁護士による補充捜査の権限を明確に示すべきであるとする意見
が述べられた。


(3) 「検察審査会の組織、権限、手続等の在り方」について
 いわゆるリーガルアドバイザー制度に関し、主として、
  •  検察審査会の審査が適正かつ充実したものとなるよう、検察審査会が審査するすべての事件について、リーガルアドバイザーが関与するようにすべきであるとする意見
  •  各検察審査員がリーガルアドバイザーに細かいことでも質問しやすいように、リーガルアドバイザーが検察審査会に常時関与するようにすべきであるとする意見
  •  リーガルアドバイザーがすべての事件に関与するのは実際上困難であるとする意見
  •  リーガルアドバイザーの関与は有意義だが、すべての事件に関与させるまでの必要はなく、例えば、拘束力のある議決が見込まれる事件など、一定の事件にリーガルアドバイザーを関与させることとすべきとする意見
が述べられた。

 そのほか、検察審査会の組織等に関する論点として、
  •  検察審査会の適正配置の問題
  •  検察審査員の欠格事由、辞退事由の見直し
が挙げられた。


(4) 次回の予定
 次回(6月11日)は、刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入に関する検討を行う予定である。


(以上)