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裁判員制度・刑事検討会(第31回) 議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成16年1月29日(水)14:00~16:10

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員)
池田修、井上正仁、大出良知、酒巻匡、四宮啓、髙井康行、土屋美明、樋口建史、平良木登規男、本田守弘(敬称略)
(事務局)
山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、松川忠晴事務局次長、古口章事務局次長、辻裕教参事官

4 議題
「刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入」「刑事裁判の充実・迅速化」及び「公訴提起の在り方」について

5 配布資料

資料1裁判員制度の概要について(骨格案)
資料2刑事裁判の充実・迅速化のための方策の概要について(骨格案)
資料3検察審査会制度の概要について(骨格案)
資料4裁判員制度、刑事裁判の充実・迅速化及び検察審査会制度改正に関する意見募集の結果概要

6 議事

 議論の概要は、以下のとおりである。

(1)刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入について(資料1「裁判員制度の概要について(骨格案)」関係)

  • 評決に関し、死刑判決については特別多数決制とすることを考慮すべきである。また、評議は、あくまでも全員一致を目指すべき旨の規定をもうけてほしい。裁判員の辞退事由に関しては、親族の介護・養育などによる支障があっても裁判員を務めたいと考える者が、裁判員を務められるよう必要な配慮をしてもらいたい。証拠調べに関しては、公訴事実の存否に関する証拠調べと量刑判断にかかわる証拠調べとを区別することとし、それぞれの証拠調べの順序について規定すべきである。また、供述調書の信用性等の立証方法について、引き続き検討してほしい。裁判員等の秘密漏洩罪に関しては、構成要件を絞るとともに、懲役刑はもうけるべきでない。
  • 小さな合議体の構成が、裁判官1名、裁判員4名となっている理由は何か。小さな合議体はどのような事件を扱うことになるのか。小さな合議体によることについて、当事者に異議がないことを要件とした理由は何か。
  • 小さな合議体で扱う事件は、準備手続の結果事実に争いがなく、かつ、法律問題や訴訟手続上の問題も生じないと予想され、量刑が中心的な課題となる事件であると考えている。そのような事件につき、小さな合議体で審理するものとして、裁判所及び国民の負担を軽減することは合理的と思われる。人数については、このような制度の趣旨から考えたものである。また、小さな合議体は原則的な合議体ではないということで、手続保障的な観点から、当事者に異議がないことを要件としたものである。
  • 裁判所及び国民の負担軽減を理由として本来よりも小さな合議体をもうけるというのは、被害者側の立場からは承服できないのではないか。
  • 小さな合議体は、あくまでも、裁判官が事案の性質を勘案して相当と認めるときに選択されるものであり、被害者側の意向も裁判官として考慮すべき要素の一つとなるだろう。また、検察官も、被害者側の意向を踏まえて異議を述べることはあり得るだろう。
  • 仮にこのような制度を導入するのであれば、被害者側の意向を十分に汲み上げるための制度もあわせてもうけられるべきである。また、裁判官と裁判員との人数比を1対4とすることが合理化につながるのか疑問である。裁判官1人に対し裁判員が4人となると、個々の裁判官の負担はかえって増大するのではないか。
  • 裁判員制度は、裁判官と裁判員とが協働するという思想で設計されるものであり、裁判官が1人になるから裁判官の負担が増大するとは考えていない。
  • 以前、裁判官2人説を否定する論拠として、裁判員が加わることにより合議体運営の負担が増えるとの議論がなされていたのではないか。
  • その議論の際には、事実関係・証拠関係の整理や判決書の作成などに要する負担が問題とされていたのであり、小さな合議体の対象となる事案は問題点の少ないものと想定されるから、裁判官の負担は問題とならないのではないか。
  • 裁判所と国民の負担軽減の観点からは、裁判官1人、裁判員2人という構成もあり得るのではないか。
  • 裁判員2人というのは、裁判に国民の感覚を反映させるという裁判員制度の趣旨に照らし問題があるのではないか。
  • 裁判官と裁判員との員数が3人対6人の合議体と1人対4人の合議体では、質的に異なるのではないか。後者は事実上陪審制度に近い合議体なのではないか。そうすると、一つの刑事司法制度の中に、本質的に異なる二つの合議体が併存することになるが、それでいいのだろうか。しかも、そのどちらを選択するかを当事者が選べるということになるが、そのような安定性を欠く制度は、刑事司法の制度として適当なものとはいえないのではないか。さらに、当事者は、どちらの合議体を選んだ方が有利であるかを考えるようになるから、刑事裁判がゲーム化し、ひいては刑事司法がビジネスの対象となってしまうのではないか。
  • 小さな合議体によるかどうかは、当事者に選択権があるのではなく、まず、裁判所の裁量判断があって、当事者は小さな合議体によることについて異議を申し立てることができるに過ぎない。
  • あくまで、裁判所が適当であると認める範囲内で小さな合議体が選択されるのであり、当事者に選択権が認められているわけではないから、直ちにゲーム化、ビジネス化につながるとは考えていない。また、合議体の性格に関しては、それぞれの合議体が、審議会意見書の提言を踏まえた、裁判官と裁判員が協働する制度として成り立ち得るものと考えている。
  • 小さな合議体をもうける理由として、負担の合理化という観点だけではなく、争いの有無など個々の事案の性質に応じてどれだけの労力を投入する必要があるのかという、必要性の観点もあるのではないか。
  • 争いのない事件であっても、今までは裁判官3人で裁判していたのであり、それをなぜ裁判官1人とするのか説明がつくのだろうか。
  • 小さな合議体は、裁判官1人だけで裁判をするのではなく、裁判員が加わり合計5人の合議体により裁判されることになるのだから、現在の法定合議制度の趣旨を損なうものではないと考えている。
  • その議論によると、裁判員は裁判官を代替し得るということになるのではないか。
  • 裁判員と裁判官の代替性の問題は、専ら法律問題及び訴訟手続上の問題に関して論じられていたが、小さな合議体の対象事件は、法律問題及び訴訟手続上の問題のほか事実認定にも争いがなく、専ら量刑が問題となる事件であるから、このような構成としても現在の法定合議制度の趣旨を損なうものではないだろう。
  • 小さな合議体で意見が分かれた場合、裁判官と裁判員のそれぞれ1人以上の賛成を要するという評決要件から、実質的に裁判官が決定することになってしまう。
  • 有罪・無罪の意見が分かれるような事件はそもそも対象にならないであろう。
  • 公訴事実に争いがないことが前提であり、仮に有罪・無罪の意見が分かれた場合には、原則的な合議体に戻すべきであろう。
  • いったん小さな合議体で審理を始めた場合であっても、その後に事実を争うようになった場合には、原則的な合議体に戻るのが基本であるとのことだが、その場合、どこから審理をやり直すのか。また、小さな合議体の構成員は新たな合議体に残るのか。新たに裁判員を選び直して一からやり直すということになると、使いづらい制度になるのではないか。
  • 細部についてはなお検討中である。
  • 小さな合議体での審理を何日も続けた後に、いきなり事実を争うことになるというのは考えにくいのではないか。
  • 専ら量刑が問題となる事件について、小さな合議体で審理するという制度はあり得ると思うが、重い量刑が予想される事件は対象としてふさわしくないだろう。
  • 骨格案に示された制度を前提として、一年間にどれくらいの国民が裁判員候補者として裁判所に呼ばれることになるのか。
  • 試算するには、前提条件をいろいろと仮定する必要があるが、どのような前提状況を置くかについて、事務局として責任ある回答をすることは難しい。仮に、前提条件として、裁判員を6人、補充員を3人、対象事件数を平成13年の実績から2,749件とすると、一年間に24,741人が裁判員又は補充員に選任されることになる。また、召喚する人数を選任必要数の5倍と仮定すると、年間123,705人が裁判所に呼ばれることになる。
  • 辞退事由の「その他やむを得ない事由」は、骨格案に例示されているもの以外にどのようなものが考えられるのか。
  • 例えば、近親者の葬儀、本人の結婚式など、社会生活上の重要な用務があるときは辞退が認められるべきであろう。
  • 就職禁止事由については、裁判員候補者を十分に確保するためにも、その範囲を限定する方向で見直すべきである。隣接法律職種のうち、弁理士、司法書士及び公証人のみを就職禁止者とする合理的理由はないし、公務員も良質な裁判員の給源として期待できるのではないか。
  • 公務員については、三権分立の観点から、行政府の実質的意思決定に関与する者に限り就職禁止者とされており、また、隣接法律職種については、訴訟代理権を付与されている者が就職禁止者として掲げられているのではないか。
  • 裁判員の解任に関し、解任すべき事由に該当することが明白な場合まで別の裁判体で解任すべきものとしては、手続が迂遠となるから、場合によっては受訴裁判所が解任できるものとすべきではないか。また、弁論の分離・併合については、法的措置が必要であり、施行までに措置してもらいたい。証拠調べ手続については、運用上行うことについて、裁判所規則で定めることもあり得るだろう。裁判員の出頭確保については、労働基準法7条又はその他の規定により裁判員の休業が保障されること、また、事業主には不利益取扱いをしてはならない義務が課せられることを確認したい。
  • 労働者が裁判員を務める場合には、労働基準法7条が適用されるものと考えている。不利益取扱いの禁止については、事業主にそのような義務を課すという方向で検討を進めている。
  • 合議体の構成が9人となることにより、評議の内容が変化し、その結果判決書の内容も変わってくるだろう。第一審で事実を争い、有罪判決を受けた被告人とその弁護人への影響は甚大と思われる。

(2)刑事裁判の充実・迅速化について(資料2「刑事裁判の充実・迅速化のための方策の概要について(骨格案)」関係)

  • 取調べ請求証拠以外の証拠開示の要件は、もう少し分かりやすいものとなるよう検討してもらいたい。また、争点に関連する証拠の開示については、関連性があれば必要性があると思われ、要件を拡充する方向で検討してもらいたい。開示された証拠の目的外使用については、「使用」に該当する行為の範囲を限定すべきであり、また、制裁規定をもうけることに反対である。訴訟指揮権の実効性担保に関しては、尋問制限命令への違反に制裁を科すことに反対である。即決裁判手続については、即決裁判手続の決定の取消し後に、取調べ済みの書証を刑訴法326条の同意があったものとみなすことに反対である。さらに、運用上、即決裁判手続の申立ては捜査段階の早い段階で行われるようにするとともに、対象事件を証拠関係が客観的に明らかな事件に限定してもらいたい。
  • 骨格案全体として、洗練されたよい制度になっていると思う。
  • 骨格案に対していろいろな意見が示されているが、骨格案はこれまでの検討会での議論を十分に踏まえたものとなっており、その内容は妥当なものである。

(3)公訴提起の在り方について(資料3「検察審査会制度の概要について(骨格案)」関係)

  • 秘密漏洩罪について、懲役刑をもうけるのは相当でない。

(以上)