○:法務サービス会社を独立させて法務サービスに当たらせる場合と、親会社の法務部門が直接法務サービスを提供する場合とはどこが違うのか。
□:株を所有しているかどうかに関係してくる。日弁連の考えでは、株式を100パーセント有する完全親子会社を条件としており、その場合には少数株主は存在しない。独立した法務サービス会社の場合には、兄弟会社の関係で法律事務を取り扱うこととなる。そこが大きな違いとなる。
■:委員の指摘は、日弁連の言うように完全親子会社を条件とするならば、100パーセント子会社である法務サービス会社が行う業務と、親会社の法務部が行う業務とはどこが違うのかというものだと思う。
○:子会社の少数株主保護の問題と、親会社と子会社との間の利益相反の問題とは関係がないのではないか。
□:役員としては、少数株主による代表訴訟のことも念頭に置く必要があり、子会社の少数株主の利害が親会社と完全に一致することはあり得ないと思う。
○:親会社・子会社間、子会社同士、その他少数株主との間でも、利害の対立する可能性があることは理解できるが、その場合であっても、独立した法務サービス会社を使わなければならないというものではなく、コンフリクトのある会社であれば、外部の弁護士を頼めば済むことではないか。どうして問題とされるのか理解できない。
■:これまでの質疑の状況をみると、範囲をどのように画するかはともかく、親子会社の間、あるいは、グループ会社の間の法律事務の取扱いについては、形式的には弁護士法72条本文に抵触するようにみえるが、実質的にみると、現行弁護士法72条の下でも、解釈上、これに抵触しない部分があるのではないか、というのが議論の方向であると思うがいかがか。
○:弁護士法72条の適用範囲を狭める根拠として、「報酬を得る目的」を欠くとの意見もあったかと思うが、ここでは、「他人性」の欠如をベースとした議論を行うということでよいか。
■:「報酬を得る目的」を欠くことについての議論をこの場で行うことは、問題の性質が少し違うように感じる。この場では、主たる論点である「他人性」が否定される場合があるのではないかという観点に絞って、その範囲について議論してもらいたい。
○:弁護士法72条は刑罰法規であり、「他人性」の解釈は、一義的・画一的であって明確性をもつものでなければならない。解釈の範囲の縦枠としては、証券取引法上の連結財務諸表の適用のある会社でいいと思う。横枠としては、商法上の規定に従って、①完全親子会社、②特別決議を可能とする3分の2以上の株式を有する会社、③50パーセントを超える株式を有する会社の3つが考えられる。
○:弁護士法72条を改正する方法がいいのか、解釈を確定させる方法がいいのかといった、政策上の方向性はあるのか。
■:立法によるか、権限ある当局の解釈によるかのは、極めて技術的な問題であり、この場では実質を議論していただいた方がよいと思う。
○:日弁連の完全親子会社に限定するという考え方は、世間の要請に逆行していると思う。
○:法律家の考える株式会社は、経済学者の見方と違って、株式の保有割合を重要視している。しかし、日本の株式会社は、株主よりも経営者や従業員の方が力を持っている。
株式の保有割合によって、会社を支配しているかどうかの判断をすることは可能ではあるが、それが会社の実態を反映しているかどうかはと疑わしいところである。実態を反映しているのは、財務であり、税であると思う。連結財務諸表を法律上の基準とすることができるならば、それが一番望ましいと思う。
○:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則8条を基準とするとしても、同条4項2号のホについては、何を支配しているのかがあいまいであり、中身がよく分からない。連結というだけでは基準として不明確である。そこで同条による基準の明確な部分と、商法211条の2第1項の基準とを合わせたものを、「他人性」の判断の基準として使うのも一つの方法だと思う。
○:親子会社の実態としては、株式の50パーセント超を保有することを要求する商法211条の2第1項の基準を満たさない、ちょうど50パーセントの子会社が多く、それが結構重要な会社であることも多い。そのような子会社が入らないようでは、弁護士法72条の解釈も意味がないものとなってしまう。
○:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則8条4項2号に該当する事例で実務上多いものは、過半数の役員の派遣、半分以上の資金調達、重要事項の決定権に関する契約の存在等である。
○:財務諸表の公表の周期は早まる傾向にあり、最近では3ヶ月に1回程度の割合でディスクローズされ、どの会社が連結されているのかが分かる仕組みとなっている。
○:10年程度のスパンで将来を考えた場合、企業法務がグループ会社に対して積極的に法務サービスを提供することにより、弁護士の仕事は増加すると予測できる。現在でもグループ会社が抱えている法律問題は多いが、それらは曖昧な処理をされている。それらの問題が掘り起こされて顕在化されれば、企業法務で処理できる分量は限度があるため、弁護士の仕事は確実に増えると言える。
■:親会社が中心となって作成した法務サービス会社が、現に連結されたグループ会社に提供する法務サービスの取扱いについてはどうか。
○:時代の流れとして、現時点でそのような企業形態が存在しないということをもって認められないという考えは建設的ではない。グループ企業の様々な業務に応じて、会社形態を別にして分社化することが、フレキシビリティーを生じさせる。法務サービス会社だけを特に排除しなければならない積極的な理由がない限り、認めるべきであると思う。
○:法務以外の人事、経理等の分野は既に分社化して人件費の効率化が図られている。法務部門の子会社化の合理性はあると思う。ただし、法務サービスというのは、他の分野と違って、親会社の本当のコントロールが及ぶようにしておく必要がある。
○:親会社から外に出た法務サービス会社が、兄弟会社の法律事務を取り扱うことが許されるとするためには、まず親会社と一体となった上で兄弟会社を支配しているといった二重の理屈を構成する必要があるなど、解釈としては相当に苦しいのではないか。誰がみてももっともだという範囲に止めておくのがよいのではないか。
■:この問題についての今後の取扱いとして、弁護士法を所管している法務省に解釈を示していただくとしても、さらにさまざまな検討が必要であろうと思われるので、検討会での議論はいったんここまでとし、当検討会でのご議論を踏まえ、本部事務局、法務省でさらに検討していただくこととしたいが、どうか。
○:異議なし。