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法曹制度検討会(第10回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成14年10月8日(火)13:30〜17:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 伊藤 眞(座長)、岡田ヒロミ、奥野正寛、小貫芳信、釜田泰介、木村利人、 佐々木茂美、田中成明、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)
(説明者) 川中 宏(日本弁護士連合会副会長)
高中正彦(日本弁護士連合会弁護士制度改革推進本部事務局長)
小池 裕(最高裁判所事務総局審議官)
(事務局) 大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、植村稔参事官

4 議題
(1)弁護士法第72条について、隣接法律専門職種の業務内容や会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務等との関係も含め検討した上で、規制対象となる範囲・態様に関する予測可能性を確保すること(企業法務との関係その他について)
(2)最高裁に、その諮問を受け、下級裁判所の裁判官として指名されるべき適任者を選考し、その結果を意見として述べる機関を設置するとともに、その機関が十分かつ正確な資料・情報に基づき適任者の選考に関する判断を行い得るように適切な仕組みを整備すること
(3)その他

5 配布資料
【事務局配布資料】
[弁護士法72条の予測可能性の確保のための措置−企業法務との関係その他について]
○資料10−1 親会社、子会社等の法令上の定義
[裁判官の任命手続の見直し]
○資料10−2 日本国憲法抜粋
○資料10−3 裁判官の任命手続の見直し 検討のたたき台(案)その1
[期日の追加]
○資料10−4 法曹制度検討会 今後の開催予定

【日弁連配布資料】
○資料 司法修習期間中の倫理研修について

【最高裁配布資料】
[裁判官の任命手続の見直し]
○資料 裁判官の任命手続の見直しに関する検討状況について
○資料 最高裁判所一般規則制定諮問委員会関係資料
・資料1司法制度改革審議会意見書抜粋(裁判官の任命手続の見直し)(委員会参考資料1)
・資料2最高裁判所一般規則制定諮問委員会委員名簿
・資料3一般規則制定諮問委員会の議事の公開の概要
・資料4最高裁判所一般規則制定諮問委員会議事概要(第1回)
・資料5最高裁判所一般規則制定諮問委員会議事概要(第2回)
・資料6下級裁判所の裁判官の指名過程に関与する諮問機関の設置に関する基本論点(委員会配布資料2)
・資料7下級裁判所の裁判官の指名過程に関与する諮問機関の設置に関する論点メモ(委員会配布資料3)
・資料8これまでの議論の整理等に関するメモ(委員会配布資料4)
・資料9任官希望者の類型に応じた委員会の運営方法等(「委員会配布資料4」より抜粋)
・資料10裁判官の任命手続の概略(委員会配布資料6)
・資料11現在の裁判官指名手続の実情に関する資料(委員会配布資料7)
・資料12裁判官制度(任命関係)法令(委員会参考資料4)
・資料13裁判官の定員(平成14年度)(委員会参考資料7)
・資料14平成13年度 採用・再任者数(委員会参考資料8)
・資料15第48回司法制度改革審議会議事録抜粋(委員会参考資料9)
・資料16第49回司法制度改革審議会議事録抜粋(委員会参考資料10)
・資料17第56回司法制度改革審議会議事録抜粋(委員会参考資料11)
・資料18第58回司法制度改革審議会議事録抜粋(委員会参考資料12)
・資料19第60回司法制度改革審議会議事録抜粋(委員会参考資料13)

6 議事

 議事に先立ち、事務局から、事務局配布資料10−1から10−4、最高裁配布資料等について確認がなされた。

(1) 弁護士法第72条について、隣接法律専門職種の業務内容や会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務等との関係も含め検討した上で、規制対象となる範囲・態様に関する予測可能性を確保すること(企業法務との関係その他について)

① 日弁連からのプレゼンテーション

 国民の法律生活の安定を確保するため、弁護士法72条の制度趣旨を守ることを当然としつつも、合目的的な解釈・運用を図っていく必要性がある。
 子会社が親会社から独立した法律的・経済的な地位・利益を有さず、親会社が子会社の法律事務を取り扱うことが実質的に「自己」の法律事務を取り扱うのと同一であると認めることができる場合には、他人の法律事件を取り扱うものではないと解釈することが可能ではないか。
 親会社が株式を100パーセント有する完全子会社については、法律的にも一体の関係にあると考えられ、子会社の法律事務を親会社の法務部門が取り扱うこととしても、他人の法律事務を取り扱うものではないと解釈することにより、問題がないと考える。
 刑罰法規である弁護士法72条は、罪刑法定主義の見地から、厳格に解釈される必要がある。
 いわゆる連結消去は会計処理方法にすぎず、いわゆる連結消去になることをもって、直ちに弁護士法72条の報酬目的がないとすることは困難だと思われる。
 独立した法務サービス会社については、支配しているとはいえない、いわゆる兄弟会社の法律事務を適正・中立に処理できるのか、グループの範囲を超えて、広く一般の法律事務を取り扱うに至るのではないか等の疑問があり、国民・会社の法律生活の安定を害する可能性が高いと言わざるを得ない。したがって、弁護士法72条の規制の対象外とすることはできない。

② ①について、次のような質疑応答がなされた。(○:委員、●:事務局、□:日弁連、■:座長、△最高裁。以下、同じ)

○:法務サービス会社を独立させて法務サービスに当たらせる場合と、親会社の法務部門が直接法務サービスを提供する場合とはどこが違うのか。

□:株を所有しているかどうかに関係してくる。日弁連の考えでは、株式を100パーセント有する完全親子会社を条件としており、その場合には少数株主は存在しない。独立した法務サービス会社の場合には、兄弟会社の関係で法律事務を取り扱うこととなる。そこが大きな違いとなる。

■:委員の指摘は、日弁連の言うように完全親子会社を条件とするならば、100パーセント子会社である法務サービス会社が行う業務と、親会社の法務部が行う業務とはどこが違うのかというものだと思う。

○:子会社の少数株主保護の問題と、親会社と子会社との間の利益相反の問題とは関係がないのではないか。

□:役員としては、少数株主による代表訴訟のことも念頭に置く必要があり、子会社の少数株主の利害が親会社と完全に一致することはあり得ないと思う。

○:親会社・子会社間、子会社同士、その他少数株主との間でも、利害の対立する可能性があることは理解できるが、その場合であっても、独立した法務サービス会社を使わなければならないというものではなく、コンフリクトのある会社であれば、外部の弁護士を頼めば済むことではないか。どうして問題とされるのか理解できない。

③ 第9回法曹制度検討会における中川委員のプレゼンテーション及び本日の①について、次のような意見交換がなされた。

■:これまでの質疑の状況をみると、範囲をどのように画するかはともかく、親子会社の間、あるいは、グループ会社の間の法律事務の取扱いについては、形式的には弁護士法72条本文に抵触するようにみえるが、実質的にみると、現行弁護士法72条の下でも、解釈上、これに抵触しない部分があるのではないか、というのが議論の方向であると思うがいかがか。

○:弁護士法72条の適用範囲を狭める根拠として、「報酬を得る目的」を欠くとの意見もあったかと思うが、ここでは、「他人性」の欠如をベースとした議論を行うということでよいか。

■:「報酬を得る目的」を欠くことについての議論をこの場で行うことは、問題の性質が少し違うように感じる。この場では、主たる論点である「他人性」が否定される場合があるのではないかという観点に絞って、その範囲について議論してもらいたい。

○:弁護士法72条は刑罰法規であり、「他人性」の解釈は、一義的・画一的であって明確性をもつものでなければならない。解釈の範囲の縦枠としては、証券取引法上の連結財務諸表の適用のある会社でいいと思う。横枠としては、商法上の規定に従って、①完全親子会社、②特別決議を可能とする3分の2以上の株式を有する会社、③50パーセントを超える株式を有する会社の3つが考えられる。

○:弁護士法72条を改正する方法がいいのか、解釈を確定させる方法がいいのかといった、政策上の方向性はあるのか。

■:立法によるか、権限ある当局の解釈によるかのは、極めて技術的な問題であり、この場では実質を議論していただいた方がよいと思う。

○:日弁連の完全親子会社に限定するという考え方は、世間の要請に逆行していると思う。

○:法律家の考える株式会社は、経済学者の見方と違って、株式の保有割合を重要視している。しかし、日本の株式会社は、株主よりも経営者や従業員の方が力を持っている。 株式の保有割合によって、会社を支配しているかどうかの判断をすることは可能ではあるが、それが会社の実態を反映しているかどうかはと疑わしいところである。実態を反映しているのは、財務であり、税であると思う。連結財務諸表を法律上の基準とすることができるならば、それが一番望ましいと思う。

○:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則8条を基準とするとしても、同条4項2号のホについては、何を支配しているのかがあいまいであり、中身がよく分からない。連結というだけでは基準として不明確である。そこで同条による基準の明確な部分と、商法211条の2第1項の基準とを合わせたものを、「他人性」の判断の基準として使うのも一つの方法だと思う。

○:親子会社の実態としては、株式の50パーセント超を保有することを要求する商法211条の2第1項の基準を満たさない、ちょうど50パーセントの子会社が多く、それが結構重要な会社であることも多い。そのような子会社が入らないようでは、弁護士法72条の解釈も意味がないものとなってしまう。

○:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則8条4項2号に該当する事例で実務上多いものは、過半数の役員の派遣、半分以上の資金調達、重要事項の決定権に関する契約の存在等である。

○:財務諸表の公表の周期は早まる傾向にあり、最近では3ヶ月に1回程度の割合でディスクローズされ、どの会社が連結されているのかが分かる仕組みとなっている。

○:10年程度のスパンで将来を考えた場合、企業法務がグループ会社に対して積極的に法務サービスを提供することにより、弁護士の仕事は増加すると予測できる。現在でもグループ会社が抱えている法律問題は多いが、それらは曖昧な処理をされている。それらの問題が掘り起こされて顕在化されれば、企業法務で処理できる分量は限度があるため、弁護士の仕事は確実に増えると言える。

■:親会社が中心となって作成した法務サービス会社が、現に連結されたグループ会社に提供する法務サービスの取扱いについてはどうか。

○:時代の流れとして、現時点でそのような企業形態が存在しないということをもって認められないという考えは建設的ではない。グループ企業の様々な業務に応じて、会社形態を別にして分社化することが、フレキシビリティーを生じさせる。法務サービス会社だけを特に排除しなければならない積極的な理由がない限り、認めるべきであると思う。

○:法務以外の人事、経理等の分野は既に分社化して人件費の効率化が図られている。法務部門の子会社化の合理性はあると思う。ただし、法務サービスというのは、他の分野と違って、親会社の本当のコントロールが及ぶようにしておく必要がある。

○:親会社から外に出た法務サービス会社が、兄弟会社の法律事務を取り扱うことが許されるとするためには、まず親会社と一体となった上で兄弟会社を支配しているといった二重の理屈を構成する必要があるなど、解釈としては相当に苦しいのではないか。誰がみてももっともだという範囲に止めておくのがよいのではないか。

■:この問題についての今後の取扱いとして、弁護士法を所管している法務省に解釈を示していただくとしても、さらにさまざまな検討が必要であろうと思われるので、検討会での議論はいったんここまでとし、当検討会でのご議論を踏まえ、本部事務局、法務省でさらに検討していただくこととしたいが、どうか。

○:異議なし。

(2) 最高裁に、その諮問を受け、下級裁判所の裁判官として指名されるべき適任者を選考し、その結果を意見として述べる機関を設置するとともに、その機関が十分かつ正確な資料・情報に基づき適任者の選考に関する判断を行い得るように適切な仕組みを整備すること

① 最高裁からの説明

 最高裁配布資料「裁判官の任命手続の見直しに関する検討状況について」及び「最高 裁判所一般規則制定諮問委員会関係資料」に基づいて説明がなされた。

② 事務局からの説明

 事務局配付資料10−3「裁判官の任命手続の見直し 検討のたたき台(案)その1」に基づいて説明がなされた。

③ ①、②の説明に対して、次のような質疑応答・意見交換がなされた。

○:事務局配布資料10−3第1の2(4)にある最高裁の「白紙の状態」とは具体的にはどういう状態なのか。

△:任官希望者に関する一定の基礎資料を提供するが、委員に先入観を与えることのないよう、意見を付すことはしないということである。

■:事務局配付資料10−3記載の最高裁一般規則制定諮問委員会における検討が熟してきた事項(要旨、第1の1:最高裁に下級裁裁判官の指名過程に関与する委員会を設置すること、第1の2の(1):委員会は、最高裁の諮問を受けて、指名の適否を審議し、最高裁に意見を述べること(その際、理由を付することができること)、第1の2の(2):委員会は、最高裁の諮問を受けて、指名に当たっての選考基準等を審議し、最高裁に意見を述べること、第2の1の(3):希望者全員を諮問するのであれば、委員会に推薦機能を持たせる必要はないこと、第2の1の(4):最高裁は意見を付さないで白紙の状態で委員会に諮問すること、第2の1の(5):裁判官の定員との関係で、任官希望者が採用可能数を上回る場合も、適否に関する答申に止めること(委員会で特段意見があれば、理由を付することができるので、それを答申に盛り込むこと)、第2の2:委員会に、下部組織を設置すること)について、当検討会においても、特に異論はないということでよいか。

○:異議なし。

(3) その他

追加の検討会の開催について
 事務局から、事務局配布資料10−4「法曹制度検討会 今後の開催予定(案)」に基づき追加の検討会の開催について説明があり了承された。
関係機関タイム(日弁連)
 日弁連から、日弁連配布資料「司法修習期間中の倫理研修について」に基づき、司法修習期間中の弁護士倫理に関する研修についての説明があった。

(4) 次回の予定

 次回(10月31日)は、最高裁裁判官の選任の在り方について、最高裁裁判官の地位の重要性に配慮しつつ、その選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置に関して、釜田委員にキャップとなってもらい調査を進めてきた調査グループから外国の法制についての報告を受け、事務局からこれまで我が国に存在した制度等について説明を受ける予定。