【伊藤座長】それでは、所定の時刻になりましたので、第10回「法曹制度検討会」を開会させていただきます。御多忙のところ、御出席ありがとうございます。
議事に先立ちまして、事務局から配布資料の確認をしていただきます。
【植村参事官】それでは、配布資料の確認をさせていただきます。事務局から今日お配りいたしました資料は10−1から10−4までの4つでございます。
そのほか、前回、中川委員から御提出のありました資料を本日の議事の参考にしていただくために改めて配布させていただいております。
また、最高裁から次第に記載しましたとおりの資料の御提出がありましたので、御紹介をいたします。
なお、裁判官の任命手続の見直しの関係で配布されました最高裁判所一般規則制定諮問委員会関係資料につきましては、前回配布いたしました分と重複する分もございましたが、ファイルにとじまして、改めてその分も配布させていただいております。
そのほか日弁連から席上配布資料の御提出がございました。関係機関タイムの際にお使いになると伺っております。
以上でございます。
【伊藤座長】本日は次第にございますとおり、(1)といたしまして、弁護士法第72条の規制対象となる範囲、対応に関する予測可能性を確保することに関し、会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務等との関係、その他の観点からの検討をお願いしたいと存じます。具体的には親子会社の問題につきまして、日弁連にプレゼンテーションをお願いしております。その後、質疑・意見交換を行いたいと思います。
引き続きまして、(2)最高裁にその諮問を受け、下級裁判所の裁判官として指名されるべき適任者を選考し、その結果を意見として述べる機関を設置するとともに、その機関が十分かつ正確な資料・情報に基づき適任者の選考に関する判断を行い得るように適切な仕組みを整備すること。これにつきまして、議事を進めたいと存じます。
本日はまず最高裁からこれまでの裁判官の任命手続の見直しに関する一般規則制定諮問委員会における検討状況について説明していただき、その後質疑意見交換をお願いしたいと存じます。その後、関係機関タイムといたしまして、前回、木村委員から日弁連に対して倫理研修についての資料を提出して欲しいというお話がございましたが、その関係で日弁連から御説明があります。最後に事務局から期日の追加について説明していただきます。
そこで、まず、弁護士法第72条の規制対象となる範囲・対応に関する予測可能性を確保することに関し、会社形態の多様化なとの変化に対応する見地から企業法務等との関係、その他の観点からの検討に入りたいと存じます。
まず、日弁連からプレゼンテーションをお願いしたいと存じます。どうぞよろしく。
【日弁連(川中副会長)】初めに弁護士制度改革推進本部の事務局長をしております高中弁護士の方から最初に全般的に述べていただいて、日弁連の方針等については、私の方で後で簡単に述べさせていただくということで進めさせていただきます。
【日弁連(高中事務局長)】それでは、弁護士制度改革推進本部の事務局長をしております高中と申しますが、プレゼンテーションをさせていただきます。
まず、弁護士法第72条についてでございますが、最高裁の昭和46年7月14日の大法廷判決がございまして、立法趣旨を述べております。弁護士資格もなく、弁護士法の規律にも服さない者が、自らの利益のためにみだりに他人の法律事務に介入することを業とする行為を禁止することによって、当事者、その他の関係人の利益を守り、国民の法律生活の安定と、法律秩序の維持を図ることを目的とするということを述べております。
この趣旨は、社会の法律関係がますます複雑・高度化した現在においても、いささかも減じられるところはございませんで、かえって知能犯化しております事件屋などにつきましても、弁護士法第72条をもって積極的に対処する必要が高まっていると考えております。
しかしながら、弁護士法制定から半世紀以上を経まして、法律事件の内容、あるいは取り扱い対応が、往時とは比較にならないほど複雑多岐わたるようになった現在におきましては、弁護士法第72条を形式的に解釈運用すると、現在の我が国経済の実情に適合しないという事態があることも確かであると考える次第であります。
そこで、国民の法律生活の安定を確保するために、弁護士法第72条の趣旨をあくまで守るということは当然のこととしつつも、合目的的な解釈・運用を図っていく必要性があると考えるものであります。
企業法務との関係でございますが、コンプライアンスの確立の要求が近時高まっておりまして、企業の法務部門が充実・強化されております。また、バブル経済崩壊後の我が国経済の低迷に伴いまして、企業活力の再生を図るというために、企業の分社化が進展をしておりまして、昨年の商法改正による会社分割制度の導入後は、この分社化傾向がますます顕著となっております。そこで親会社の法務部門が子会社の法律事件を取り扱うことが求められるようになっておりますが、弁護士法第72条の趣旨をあくまでも形式的に解釈をいたしますと、弁護士法第72条に抵触するという問題が発生せざるを得ないということであります。しかしながら、先ほど申し上げましたように、弁護士法第72条を合目的的に解釈すると不都合は回避されるのではないかと考える次第であります。
この問題につきまして、2つのシチュエーションがございまして、まず、親会社の法務部門が子会社の法律事件を取り扱う問題と、分社化によって独立した法務サービス会社がグループ企業の法律事件を取り扱う問題の2つがございますので、これを分けて述べたいと思います。
まず最初に、親会社の法務部門が子会社の法律事件を取り扱うことについての問題であります。弁護士法第72条を見ますと、他人間という文言が書いてございませんが、これも立法技術上の原因に基づくものと認められます。弁護士法第72条の前身の「法律事務取扱ノ取締ニ関スル法律」というのかございましたが、ここには明確に「他人間ノ訴訟事件」あるいは「他人間ノ非訟事件ノ紛議ニ関シテ」という文言がございまして、他人性が要件であることが明らかでございましたが、現行の規定にはそれがございませんけれども、それは先ほど申し上げた立法技術上の原因に基づくものと考えられます。
したがいまして、他人性が必要であると解釈されるわけですが、ここから申し上げますと、企業の法務部門が自社の法律事件を取り扱っても問題とはなりません。しかしながら、子会社ということになりますと、親会社とは別の法人格を持ちますので、形式的には他人の法律事件を取り扱うということにならざるを得ないという点がまず出てまいります。
しかしながら、他人という要件につきまして、法人格の異同というこの一点のみから形式的に判断するのではなくて、親会社から独立した法律的、経済的な地位、ないしは利益を有するかどうかという指標から考えるということといたしますと、そのような地位や利益を持たず実質的見地から自己の法律事件を取り扱うのと同一であると認められる場合には、他人の法律事件を取り扱うものではないと解釈することは可能ではないかと思われます。
そのような場合につきましては、会社を含む国民の法律生活の安定、法律秩序の安定、これを害するような弊害はないのではないかと考えることができるからであります。
そこで、そのように実質解釈を施すことにした場合には、どのような関係にある会社までを自己と同一であると評価することができるかという問題でございます。
お手元に資料がございましたが、商法の親子会社基準を採用する考えが1つございます。商法の親子会社基準は、総株主の議決権の過半数という基準を設定しておりまして、これを有しておればよいとする考え方が考えられます。次に、連結決算対象かどうか、すなわち連結財務諸表規則による支配力基準を満たしていればよいとする考え方も考えられるわけであります。
まず、商法基準による考え方でございますが、この利点は画一的でありまして、明快という利点がまず考えられます。しかしながら、翻って考えますと、議決権の過半数を有していたとしても、その他の少数株主は存在するという限り、親会社と子会社の利害が完全に一致するということは難しいと考える次第であります。親子会社の利害は一致する、親会社の方針に反対する子会社の役員は更迭すればよいと言われることがございますが、現実には親子会社間でコンフリクトの問題が発生した事例があるということが書籍にも紹介されております。
例えば、江頭憲治郎先生の『株式会社・有限会社法』という本の44ページには、そのコンフリクトの問題が記載されている次第であります。このように考えますと、商法基準を満たせば直ちに他人性がないと判断することは難しいと考えるものであります。
次に、連結財務諸表規則の基準、すなわち支配力基準でございますが、これによる考え方については、現実にかなうという利点があると考えます。すなわち証券取引法上、公開会社は連結決算を義務づけられております。また、平成17年からは商法特例法に基づいて大会社についても義務づけられますが、これらにつきましては、さまざまな法規制がなされておりまして、また、そのような会社は社会的にも一定の信用力があると認められますので、弁護士法第72条が懸念しております弊害が生ずる恐れも少ないと言ってよいように思われるわけであります。
しかしながら、そもそも連結財務諸表規則を考えてみますと、これは投資家保護の見地から企業活動の実態をディスクローズするというために定められた大蔵省令でございます。親子会社間の利害調整という見地は連結財務諸表規則には見られないと考えられるわけであります。先ほど申し上げましたように、ここで問題とすべきは、子会社について保護に値する独自の利益、ないしは地位があるかという問題であります。その意味で言いますと、連結決算対象ということから直ちに利害対立がないと言い切ることについては、疑問があると考える次第であります。
また、法律のような厳格な改正要件が規定されていない大蔵省令であるという点も、また問題であろうかと考える次第であります。
このように考えてまいりますと、完全親子会社、100%株式を持っている会社、100%子会社と申しますが、この場合には少数株主は存在いたしません。この完全親子会社につきましては、子会社の法律事件を親会社の法務セクションが取り扱うこととしても、格別の問題がないと考えます。すなわち、完全親子の関係にございますと、子会社の株主は当然のごとく親会社一人でございますし、企業の実質的な所有者である株主である親会社の利益とは別の経済的利益を子会社に観念することはできないのではないかと思います。
また、完全親子会社の関係にございますと、連結納税の対象になりまして、その収益も一体となりますので、税法の観点ではございますが、法律的にも両者は一体の関係にあると考えることが可能ではないかと思われる次第であります。
この見解につきまして、現実の企業結合の状況に適合しないという反論が当然あり得ることと思います。しかしながら、刑罰法令でございます弁護士法第72条につきまして、やはり罪刑法定主義という見地から見まして、厳格に解釈される必要があり、不都合は別の方法で対処していくべきではないかと思われるわけであります。例えば、別の方法としては、子会社の法務セクションに対する親会社からの社員の派遣ということも考えられると思います。なお、株主総会の特別決議要件、これは総株主の議決権の3分の2でありまして、定款変更ができますが、この要件を満たせば、親子会社間の利害はほぼ一致するので、これでもよいという考え方もできると思います。しかしながら、やはり残りの3分の1議決権を有する少数株主の存在を無視することは私は問題であると考える次第であります。更に特別決議要件のほかに連結決算対象であるということの要件をダブルスタンダードにすると、弁護士法第72条の弊害が生ずる恐れは最小限に抑えるということになりますので、この考え方もあり得るかと存じます。
しかしながら、先ほど申し上げた点にかんがみますと、万全とは言い難いと思料されるものであります。ちなみに、弁護士法第72条の解釈論の中で、親会社が子会社の法律事件を無償で取り扱う場合には、当然のごとく報酬を得る目的がありませんので、問題になりません。この場合の報酬の意義でございますが、無形の労働に対する対価を言いますので、民法の650条に規定するような費用償還請求の対象となるような、いわゆる実費の支払いを受けるにとどまる場合は、報酬を得る目的があるとは言えないと考えられます。
したがいまして、このような観点からの検討というものも不都合の解消には必要ではないかと考える次第であります。ただし、報酬目的の解釈に当たって、連結消去になるという解釈もございますが、直ちに連結消去が報酬目的がないということについては、困難があるように思われる次第であります。なぜならば、連結消去は会計処理方法の1つでございまして、報酬目的という実態の解釈に直ちに使えるというものではないと考えるものでございます。
なお、一般的な基準ではございませんが、弁護士法第73条に関しまして、最高裁の判決が平成14年1月22日に出ました。これはいろいろ解釈があるようでございますが、一般には構成要件該当性は認めつつも、社会的相当の見地から成立を否定したと解釈されているようでございますが、この解釈を採りますと、個々の事案ごとには、弁護士法第72条違反の違法性が阻却されるという手法もあり得るのではないかと思われるわけであります。
次に、独立した法務サービス会社がグループ企業の法律事件を取り扱う問題について述べさせていただきます。以上の論述に対しまして、法務部門を分社化して独立させ、その独立した会社がグループ企業の法律事件を有償で取り扱うことについては、先ほど述べたところとは事情が異なると考えます。
グループ企業の法的サービスを専門的に取り扱う独立した会社を設立する現実的なニーズが経済界の中でどの程度あるのか、これは必ずしも明らかではないと思われております。確かに持株会社の傘下に法務サービス会社を据えまして、その傘下会社の法律問題を取り扱うような形態、これを想定することはできるのでありますけれども、当該の法務サービス会社と資本関係もなく、連結決算対象でもないという兄弟会社の法律問題を果たして中立適正に処理できるのかという疑問がまずあるわけでございます。持株会社の傘下にある兄弟会社間で利害が対立するという事件については、この法務サービス会社は、中立的な処理ができないのではないかと考える次第であります。このような結合形態のときこそ、弁護士に依頼をして事件を処理するのが本道であると考えるものでございます。そして、この形態は何よりもグループ企業という範囲をどのように画するかという問題がございます。そして、それがクリアーされたとしても、グループ企業を超えて広く一般の法律事件を取り扱うに至る蓋然性が高いのではないかと考えます。例えば子会社や関連会社の社員個人などの法律問題を処理するに至るという恐れもなきにしもあらずと考える次第でございます。
したがいまして、この独立した法務サービス会社につきまして、会社を含む国民の法律生活の安定を害するという危険性をはらむと言わざるを得ないと考えますので、弁護士法第72条の対象外とするには、問題があるという次第でございます。
弁護士法第72条につきまして、以上でございます。
【日弁連(川中副会長)】引き続きまして、副会長をしております私、川中の方からいたします。
弁護士法第72条の問題を扱うときに、これが刑罰法規であるということを押さえておくことは、一番肝要なことではないかと私たちは考えております。刑罰法規である以上、高中事務局長が申し上げたように、犯罪構成要件を一義的に解釈することが要請されてくるわけであります。もちろん、合目的的な解釈が必要な場合はあるわけでございますけれども、それを余りに強調し過ぎて、要件をあいまいにしたり、あるいはこれを広げたりすると、それが普遍性を持ってくることになりますので、犯罪構成要件があいまいになってしまうという問題があるということは、きちっと押さえておかなければならないと考える次第です。
高中事務局長がただいま申し述べたことは、そういう立場に立って弁護士法第72条を解釈すれば、100%子会社までしか許容できないのではないかということであります。それが基本にあるわけですけれども、日弁連の執行部としては、具体的な社会的必要性が要請するところの具体的な妥当性も一方において追求する必要はあるだろうと考えております。前回、中川先生の方からは、その具体的な社会的必要性があるのだということが報告されましたけれども、もう少し5年、10年という長い目で見た場合にまでそういう必要性があるのかどうかについては慎重に見極める必要があるのではないかと思っております。と申しますのは、法科大学院ができまして、法曹の輩出が年間3,000人という時代になってきますので、審議会意見書にも書いてありますように、社会のすみずみまで弁護士が進出して、法の支配の担い手として活用するような社会が現出するということであれば、もちろん、行政にも企業にも弁護士がたくさん入っていくだろうということにもなりますので、弁護士以外の企業法務というのも自社のみならず、子会社の法律事務まで扱うことの必要性をどのように考えるかということについては、慎重に見極めていきたいと思っているところであります。
それから、具体的妥当性と言った場合にも、解釈を離れての具体的妥当性、あるいはその具体的な解決の妥当性というのもなかなか難しい問題でございまして、現時点ではどうするということの結論が先ほど高中事務局長が言いました弁護士法第72条の解釈を超えてどうするかということでございますが、それはまだ明確には出ておりませんので、本日のこの検討会における委員の先生方の議論もお聞きしまして、刑罰法規である以上、法務省、検察庁がどういう解釈を取るのかということについても、重大な関心を払わなければなりませんので、法務省の意見等もよくお聞きしながら、日弁連としては慎重に態度を決めていきたいと考えております。以上です。
【伊藤座長】どうもありがとうございました。それでは、意見交換につきましては、後ほど時間を取ってございますが、ただいまの日弁連のプレゼンテーションにつきまして、御質問があればお願いいたします。
【木村委員】今、高中事務局長の方からお話しいただいた中で1つだけわからなかったのは、連結会社というのがありますね。それは会計処理上一体であるとみなされるのですが、税法上は課税の対象となるという点については異なるのですか。それも一体なのですか。その辺はどうなのですか。
【日弁連(高中事務局長)】それは連結納税ではないと聞いているのですが。
【中川委員】現在は税法上は個別なのです。ただ、まだ決まっておりませんけれども、将来的にはこれを連結納税にするということが大体決まっておりまして、経理処理的に一体にしたものに対して課税する。つまり、個々の会社の課税ではなくて、連結をした結果の一つの経理処理、それに対して課税をするという、欧米はみんなそうなっているわけですけれども、それに倣った課税に変えていくという方向になっております。
【木村委員】関連しますが、そうしますと、現在の段階では例えば親会社というのがあって、子会社がありますね。要するに、親会社は子会社の方に赤字をたくさん作らせて、高く買わせたりして親会社はもうかったことになっているという場合に、親会社の方に対する課税と、子会社に対する課税との率が違う。しかし、将来はこれが全部ひとくくりになると、課税の中身がやはり違ってくるという可能性になりますね。会社全体としてどうなるかと。
【中川委員】はい。ですから、親会社は非常に利益を上げている。連結した子会社が大変な赤字を抱えている。それを連結しますと、全体としては赤字になるかもしれません。その場合は、課税はされないということになります。逆に親会社は非常に成績は悪いけれども、子会社にいい会社がたくさんあって、それを全部合体すれば大変な黒字になったというときは、その黒字に対して課税されるということになるわけです。
【木村委員】そうすると、先ほどのお話の中でありましたが、要するに、株主の方から見ますと、現在、連結しているかしていないかということは公開されているわけですね。そうすると株主の方から見ますと、一応この親会社とこの子会社がどうなっているということがわかるようなシステムになっているのですか。
【中川委員】全然わからない。だから、今のディスクローズの方式は単体と連結と両方ディスクローズしますので、個別の会社はどういう状況か、それを全部引っくるめればどういう状況かということがわかるようになっているのです。
ただし、株価は何で動いているかと言いますと、連結で動いているのです。だから、連結がよければ株は上がりますし、悪ければ下がるということにマーケットはなっているということです。
【木村委員】わかりました。
【伊藤座長】ほかにいかがでしょうか。今の日弁連のお話についての御質問ございませんか。
【中川委員】法務サービス会社を独立させてサービスをするということが、社会的安定性の点から、つまり間接的にサービスをするということが適正ではないのだという御説明でしたけれども、これはどういう意味なのか、もう少し具体的にお願いします。
【日弁連(高中事務局長)】コンフリクトの問題が発生しかねないというところが中心でございます。
【中川委員】どことどことのコンフリクトですか。
【日弁連(高中事務局長)】兄弟会社の関係になりますので、持株会社の下に企業がぶらさがりますね。その企業同士の間でコンフリクトが起きたときに、その持株会社の傘下にある法務サービス会社がそれらを中立的な形で処理ができるかどうかという問題点を指摘しているわけでございます。
【中川委員】親会社の法務部門と。
【日弁連(高中事務局長)】先生がおっしゃっているのは、独立した法務サービスの趣旨でございますね。
【中川委員】ですから、どこが違うのかというのがいまだによくわからないのです。それを独立させた場合と、親会社の法務部門が直接サービスを行う場合とどこが違ってくるのだろうかというのがわからないのです。
【日弁連(高中事務局長)】株を所有しているかしていないかという関係が大きいと思っています。つまり親子の場合は、日弁連の場合は100%完全親子の方に限定にしてお話を申し上げましたけれども、その場合には少数株主の存在がないというのが我々の今回のプレゼンの大きな理由になっているところでございます。それが持株会社になりますと、独立した会社が1つある。それと兄弟会社の関係でつながる事件を取り扱う。ここがシチュエーションとしては違っておると考えておるわけでございます。
【中川委員】確かに形態は違いますね。だけれども、親会社から分離した法務サービス子会社がやるのと、親会社が直接サービスをするのとはどこが違うのかというのが、法形態は確かに違っておりますけれども、実態というか、何も変わらないのではないかと思うのです。
【伊藤座長】日弁連のお話しは、日弁連の先ほど述べられた100%子会社に限るという前提にした話ですか。今の独立法務サービス会社についての。
【日弁連(高中事務局長)】それも前提にした話でございます。
【伊藤座長】前提がちょっと違うのではありませんか。
【平山委員】今の問題は結局、他人性という観点から検討いたしますと、親会社、子会社の場合は、他人性をどこまで緩和するかという問題ですけれども、独立した法務サービス会社は、ある意味ではまさに他人そのものですね。そういう意味で違うということと、法務サービス会社の場合は、まさに弁護士法第72条が禁止している弁護士ではない者が法律事務を扱うことを「業」とするということになりますね。弁護士法第72条が業とするのはどうかということを言ってきたわけですから、親会社、子会社の場合は、まさに自分の身内の仕事ということで、業として行うわけではないのではないかと、まだ理解できますけれども、法務サービス会社の場合は、まさにそれ自体を業として掲げて行うということになると、これはちょっと弁護士法第72条の解釈の範囲は超えるのではないかと私は理解するのです。
【伊藤座長】私の理解が恐らく悪いのだと思いますが、仮に日弁連の立場を前提にしたとき、親会社がある。100%子会社が2つある。100%子会社である法務サービス会社がある。この法務サービス会社が子会社間の法律関係についての業務を処理するということになると、中川委員がおっしゃるように、それは100%親会社である親会社の法務部門をやっているのと全く同じではないかと。こういう問題はないのではないかということだと思うのです。
【日弁連(高中事務局長)】そういう御趣旨ですか。
【田中委員】もう一つよくわからないのですけれども、少数株主の話を出されるのですが、親会社の中でも親会社の法務部が別に少数株主の利益まで代弁しているわけではないのだから、子会社の少数株主が云々という話と、親会社と子会社の利益相反云々というのは、関係ないのではありませんか。少数株主の話がなぜ出てくるかよくわからないのです。
【日弁連(高中事務局長)】結局、役員としては、少数株主が存在すれば、代表訴訟の問題を抱えざるを得ないと思うのです。
【田中委員】それは親会社の場合も同じ話になるのではありませんか。少数株主がいるから、親子の会社がどうのこうのという話にはならないのではありませんか。細かいことはわからないのですが、普通、常識的に考えてそういう感じがしたので。少数株主というのは親会社にもいるわけですから。
【日弁連(高中事務局長)】ただ、親会社が一番トップにいるわけで、その下にぶら下がるというか、下にいるのは子会社の関係ですから、利害相反という面からとらえた場合に、会社の役員が、例えば外資が50%、身内資本50%といった場合の利害相反的なことを考えますと、役員は代表訴訟のことも考えて少数株主の利益もやった上で、親会社と利害が完璧に一致するとは思えないのではないかという指摘もあると思うのです。
【田中委員】それはあり得ると思うのです。親会社と子会社の間はあるのだけれども、少数株主がいるかどうかという話とは余り関係ないのではありませんか。親会社の中でも。
【平山委員】私は日弁連の意見は意見としてお聞きいただきたいと思いますが、私の理解では、その点はこういうことだと思うのです。戦後の日本の商法は所有と経営の分離ということでやってきました。したがって、株主は会社の所有者ではあるが、その経営は役員たる取締役が責任をもっているわけです。そうすると、役員は自分の会社に忠実でなければいけないという義務を負っております。そのところから経営判断などをしていくことになる。そうすると、100%子会社でしたら、いつでも役員をとりかえられますけれども、また例えば3分の2以上ですと、総会をやってとりかえられる。しかし、過半数では役員のとりかえは難しいわけです。
また、少数株主のことも考えて子会社の役員は会社経営をやらなくてはいけないということになりますと、どうしても親会社と子会社の間に商法的には利害が対立する場合があり得ると。その場合に親会社の法務部がそれを全部とり仕切るということでは、なかなか経営者たる役員としては、進退両難に陥ることが多いのではないかという意味で、少数株主から代表訴訟が起きたりしますよと。だから、ちょっとそこは難しいのではなかろうかということを言っているのではないかと理解しています。
【奥野委員】誤解しているかもしれませんが、素人として聞きたいのですが、子会社とか子会社同士とか、子会社と親会社の間で、あるいは少数株主との間で意見対立があるかもしれない。それは当然あるだろうと思うのですが、問題はそのときに独立した法務子会社を使わなくてはいけないという話になっているではなくて、使ってもいいという話になっているだけですから、当然、それを使ったら損だと思うような子会社や、コンフリクトを持っているような子会社は当然ほかの弁護士に持っていくはずだと思うのです。だから、法務子会社を使わなくてはいけないということを決めましょうという話ではないわけですから、何でそのようなことが問題になるのか私には全くわからないのですが。間違っていますか。
【伊藤座長】御意見については、また今の奥野委員の発言を踏まえて後で議論しますが、とりあえず日弁連から今の奥野委員の発言について補充されるようなことございますか。よろしいですか。それでは、また後で伺うかもしれませんが、ありがとうございました。
議論に入りたいと思いますが、前回は中川委員から、本日はただいま日弁連からそれぞれお話をいただいたわけでございます。この問題につきまして、皆様方の御意見を伺いたいと思いますが、ちょっと前提として整理をさせていただきますと、範囲をどうするかということは、まさにこれから議論の対象になるわけでございますが、親子会社とかグループ会社の間の法律事務の取り扱いについて、形式だけ見ると、それは弁護士法72条本文に抵触するように見えるけれども、実質的に見ると、弁護士法72条の下でも解釈上、これに抵触しない部分があるのではないか。そういう解釈をすることでよいのではないか。恐らくここは共通の前提になっているかと思います。その上でそれでは、どういう範囲を画するかということだと思いますが、その前提の部分はよろしゅうございますね。何かその点について御発言ございますか。
【平山委員】少し緩やかにやっていこうという意味で、それは時代の流れではないかと私は思います。
【伊藤座長】その前提は前提として、今、お話がありましたけれども、範囲をどうするかということで御議論をいただくということでよろしいですね。
(「はい。」という声あり)
【伊藤座長】そこで一番の中心的なところへ入るわけですが、これまでの議論の中では、ただいまの話にも出てきましたけれども、結局、他人の法律事務、言わば他人性をどういう基準で判断するかということでございまして、幾つかの考え方があったように思います。
第1は、連結ということを基準にして、連結している親会社と子会社との間に限って認めるという考え方。
第2は、商法上の親会社と子会社、つまり親会社が子会社の株式のうち50%を超える部分を持っているという子会社との間について認めるという考え方。
第3は、ただいま日弁連のお話にありましたが、完全子会社と言いますか、親会社と100%子会社との間に限って認めるという考え方。大体この3つくらいになるかと思います。そこでどの考え方が適切なのかなどについてお話をいただきたいと思います。
今もちょっとお話が出ましたけれども、前回、中川委員が提案されました親会社が中心になって作りました法務サービス会社が連結されたグループ会社に提供する法務サービスの取り扱いと、これはちょっと問題の内容が違いますので、別に議論をしたいと思います。そこは後に置いておいて、とりあえず本体の方について幾つかの考え方を踏まえて、皆様方の御意見をお願いをしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【田中委員】前の話に関係するのかもしれないのですけれども、この前の中川委員の説明でもそうだったですし、今の日弁連の説明でもそうだと思いますけれども、これは合法的に解釈する理由として、他人性の欠如という部分が中心になっていたと思うのですけれども、どちらの説明もその途中になってくると、報酬を得るかどうかという有償性の話が絡んでいて、一体どちらをベースにしてその範囲を決めるかというのは、他人性の話をベースにして考えるという前提でいいわけで、報酬云々という点は、条文には前面に書いてありますけれども、これは緩めることには必ずしもならないと理解してよろしいのですかね。
【伊藤座長】今までの議論の流れからしますと、そのように私も理解しておりますけれども、それでよろしいでしょうか。
【岡田委員】そうでしょうね。
【平山委員】結局、無償の場合は議論するまでもないという感じではないかなと思うのです。有償の場合、どこまで主体を広げるかということではないですかね。
【伊藤座長】それでよろしいと思います。
【田中委員】有償、無償については連結消去という方式で一旦お金が動くけれども、ノミナルには動いたけれども、最後は動いていないという話は一応括弧に入れて考えるということですね。
【伊藤座長】そこももちろん、議論すれば、いろいろな考え方があるかと思いますけれども、この場でそこをどうこう議論するということは、問題の性質が違うように思いますので、主たるところである他人性のことについて御議論いただければよろしいかと思います。どうもありがとうございました。
【中川委員】全然無視する必要はないと思うのです。有償は有償だと思うのです。さっきもちょっとお話がございましたように、利益を得るための費用徴収では決してないのです。要するに、実費を徴収するという意味での有償ですから、そういうものをもって業と見るかどうかという点には絡んでまいりますので、かなり大きな要素ではあるかなと思いますけれども、それはちょっと横へどけておいていただいても結構だと思います。
【伊藤座長】それでは、そういうことで3つくらいの考え方が出ておりますが、他人性について御議論いただければと思います。
【平山委員】この前もちょっと中川先生の方に質問したことがあったわけでありますが、その延長になりますけれども、今日も日弁連の意見でもございましたけれども、結局、この場合の他人性を考えるに当たりましては、やはり刑罰法規ですね。例えば弁護士法第78条の2項も今も厳然として両罰規定としてあるわけでありまして、そういう点から見ますと、一義的、画一的、あるいは明白性と言いますか、統一性というか、そういうものがないとなかなか解釈論の幅を広げるにしましても、困難なのではないかという気が私はいたしまして、前回質問したわけでありますが、私は、50%以上がいいとの意見を言ったわけではありませんで、むしろ中川先生のおっしゃっていることには、実質的にはすばらしい面があると私も思っております。私としては、結論として横枠と縦枠を考える必要があるのではないかと思っているのです。
縦枠というのは、財務諸表規則は公開会社のみ、つまり証券取引法上の枠に該当した会社だけが、言わば特別扱いされることになりますが、それでいいのかということになります。やはり横枠として、商法の規定できちっとやっていかないと無理ではないかという面がございまして、その場合には3つのケースに分けて考えてみることができると思います。日弁連のような100%子会社のケース、それから、2番目は、3分の2子会社というのがあると思うのです。3分の2というのはどういう意味があるかと言いますと、3分の2の株を持っておりますと、定款変更ができる。それから、解散決議ができる。役員の解任ができるのです。そのほか営業譲渡もできるのです。ほとんどのことはできるわけです。そうすると、その程度の支配力が商法上ある会社ですと、恐らくさっき中川先生などから出ておりました株主間の対立によって役員が右往左往しなくてはいけないという部分は、そういう会社ではほとんど起きてこないかと。実質的に親会社の意向のようにせざるを得ない部分が商法的になっております。
私は個人的には3分の2基準というのも横枠として適当ではないかと考えています。そして、最後が要するに50%以上、これは外弁法などでも使っているのです。2分の1以上と確かになっていますけれども、そういう使い方が所有と経営との関係で考えてみますと、あり得る。この横枠基準の場合は、これは証券取引法の適用になる会社であろうが、そうでないのであろうが、全部1つの基準になりますので、会社を差別したことにはならないという利点があります。
ところで、前回中川委員から御提案がありましたように、今日では、企業法務が非常に充実してきて、実際にはほとんど弁護士以上のこともおやりいただける力も付いています。そういうことをどう見るかということで議論があったと思いますので、そういう意味からしますと、公開されて財務諸表がきちっと適用されるような会社の場合は、企業法務も実力と実態を備えているのではないかなと。そうすると、そういうところが自分の子会社関係でやることには、弁護士法第72条を設けました立法趣旨からしますと、実質的に適用しなくても十分いいのではないかということが考えられます。そこで、私などは横枠を商法規定でいって、縦枠として、例えば中川先生のような財務諸表の適用のある会社であればいいのではないかと個人的には考えておりまして、1つの意見でございますが、前提としてはそういうことをお考えいただきたい。
【伊藤座長】わかりました。どうぞ他の委員の方も御意見をお願いいたします。先ほど奥野委員、途中で口をはさんでしまいしたけれども。
【奥野委員】特に結構です。
【木村委員】政策上、この弁護士法第72条を改正するということも視野に入れていいのですか。それとも弁護士法第72条の解釈でいこうとするか、それについてここで決めるということですか。
【植村参事官】今の段階でいずれかの方向性が出ているわけではありませんので、そういう意味では御自由に御発言いただいて結構かと思いますが、ただ、御参考までに聞いていただくということで申し上げますと、今、議論していただいている問題について、法解釈ではなくて、立法の方法で解決するのは、私どもこれまで検討してきたわけでございますが、かなりそれは難しいと現段階では事務局として思っております。
今、御議論になっていて、つかまえたい範囲を立法技術上、疑義がないようにきちんと取り出せるかという点が1つございます。
もう一つは、仮にそれができたと仮定いたしまして、弁護士法第72条の2項をこしらえるとか、特別の法律をこしらえるとか、次の段階に至りますが、そういたしますと、当然のことながら、なぜそういう立法をするのかということになりまして、ほかの局面ですね。つまり、今の弁護士法第72条に形式的に当てはまってしまうけれども、実態を見ると、どうだろうかという局面は、ほかにもあるかもしれません。そうすると、今回の親子会社の関係で立法しようということになると、ほかの局面についても検討しないと具合が悪いということになるような気もいたします。
そうすると、そういう議論をするのは、この段階で本当に適当かどうかいう問題が多分出てくるような感じがいたしまして、事務局といたしましては、検討会の先生方の方からそういう御意見が出るをおとめする趣旨では全くございませんが、そのような検討を行うのは、相当難しそうだなと思っております。
【木村委員】確認ですけれども、今回のこの事案というのは審議会の方の意見書の流れの中ではどういうように解釈されているわけですか。
【植村参事官】意見書で申しますと、この部分については以下のような枠囲いの記載になっております。「弁護士法72条については、少なくとも、規制対象となる範囲・態様に関する予測可能性を確保するため、隣接法律専門職種の業務内容や会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務等との関係も含め、その規制内容を何らかの形で明確化すべきである。」こういう表現になっております。ですから、具体的にどういう方法でやるかということは書いていないわけでございます。
これを受けた推進計画がどうなっているかと申しますと、「弁護士法第72条について、隣接法律専門職種の業務内容や会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務等との関係も含め検討した上で、規制対象となる範囲・態様に関する予測可能性を確保することとし、遅くとも平成16年3月までに所要の措置を講ずる。(本部及び法務省)」となっておりまして、御承知のとおり本部が何か措置を講ずる場合には、通常想定しているのは立法措置でございます。
ところが、推進計画上、ここに法務省を入れたのは、もともと中川委員のプレゼンテーションにも解決策の御提案として法務省が解釈を示すというのが入っておりましたけれども、そういう措置も、その所要の措置の中に入るであろうということを想定してこのような記載になっておると理解をしております。
とりあえず以上でございます。
【木村委員】ありがとうございました。たしか以前に御説明をいただいたかと思うのですけれども、この場でなお詳しく参事官から御説明いただきまして、背景が大変よくわかりました。
なお、中川委員御提出の資料の2ページだと思うのですが、考え方の下のところの措置の2番目に、弁護士法第72条の改正と、総合規制改革会議の中間報告というのがございますが、この総合規制改革会議の中間報告では、弁護士法第72条の改正についても積極的な意見を述べているということになっているわけでございますか。
【植村参事官】そのとおりでございます。
【木村委員】これは中川委員がここに挙げられたのは、これについてはあるということを述べただけなのか。それとも中川委員としては、この弁護士法第72条の改正をも視野に入れた方がいいという御意見なのかについてはお伺いしてもよろしいでしょうか。
【中川委員】私の紙の3枚目をごらんいただきたいのですが、一番下段に総合規制改革会議中間とりまとめの文章がございまして、弁護士法第72条の見直しとして法廷外法律事務については、弁護士以外の専門家、隣接法律専門職に限定しないと。これは企業法務のことを言っていると思うのですが、それが行えるようにすること。少なくとも会社がグループ内の他の会社の法律事務を有償で受託できるようにすることを含めて、消費者保護の必要性が薄い対事業向けサービスについては、直ちに業務独占範囲外とすることということになっているのです。だから、弁護士法第72条を改正して、こういう事業所向けの法務サービスについては、弁護士さん以外の専門家が提供できるようにした方がいいのではないかという提案になっておるわけです。
私はちょっとこれは行き過ぎだと思っておりまして、これをやりますといろいろな法務サービス会社のようなものがたくさんできて、かえって混乱するのではないかなと私は思っております。ただ、こういう意見がかなり強くあるということも事実でございまして、法務省は反対されていると聞いておりますけれども、どうなるのか予測がわからないというところでございますけれども、私はこれでいくべきだという意見ではないということです。
【木村委員】よくわかりました。どうもありがとうございました。
【伊藤座長】立法でいくか権限ある当局が解釈を示すかという極めて技術的な問題ですから、むしろこの場では実質を議論していただいた方がよろしいかと思います。先ほど来、出ておりますような100%子会社に限るという今日の日弁連のお話、前回の中川委員の連結子会社まで認めるという考え方。それから、平山委員が一つの考え方として示唆されました3分の2の株式を保有している関係であればいいという考え方。その辺りの実質を委員の皆様方の中で御議論していただければよろしいのではないかと思います。どうでしょうか。
【岡田委員】私は付け焼き刃なのですけれども、私の周辺の企業の方に聞いてみたのですけれども、メーカーなど、大方の企業が弁護士法第72条のことは気にしなからも、この最高裁の判例とか、実態を踏まえて無償で本社が子会社に関してはリスクマネージメントも含めて、法務担当がやっている。それは無償であるということです。それでは、その範囲はと言いましたら、連結の子会社、親子関係だと言っていまして、現在、そんなに不都合というのは余り感じていないようなのです。そうは言いながらも、弁護士法第72条というのがとても気にはなるという意味では、もっと解釈をはっきりさせて欲しいという意見が圧倒的だったのです。
ですから、今のお話で商法よりももっと厳しくなっていますね、日弁連の考えは逆行しているのかという感じがするのです。
【伊藤座長】わかりました。どうそ奥野委員。
【奥野委員】私はさっき木村委員がおっしゃられたことも含めて申し上げると、中川委員よりも少し極端でありまして、弁護士法第72条をもう少し積極的に見直しをするべきではないか。そういう時期にそろそろ来ているように思います。つまり、弁護士という資格は、それなりに極めて重要な資格ですし、それが弁護士さんの方々がやっていらっしゃることも極めて重要だと思うのですが、だからと言って、弁護士業務をその資格を持っている人しかやってはいけない、それも消費者ではなくて、大企業などに対してさえも、資格を持っていない人は全くやってはいけないというのは少し行き過ぎではないかと思っていまして、そこはもう少しはっきりさせていただきたい。そこまで言うと多分、この弁護士法第72条の文章と矛盾することが出てくるので、本当は法律自体を書き換えていただくか、修正していただくことが一番いいのではないかと思っています。
先ほどの参事官の御意見等も含めて当面、それをこの場でやるのは難しいのなかというのが私の印象でございまして、もちろん、そうしていただければベストですけれども、そういう意味でセカンド・ベストということで考えると、今、座長がおっしゃられた100%、3分の2、連結という話ですが、100%というのは私には本当によくわからないのです。子会社同士で何かいろいろな問題が起こるというけれども、それは親会社の支配権が及んでいる子会社同士の話なので、そこで何か問題が起きるならば、そもそも法務子会社が出てくるとか、そういう議論にはならなくて、当然、親会社がそこで仲裁に入るか、さもなければまさにさっきも申し上げましたけれども、外部の弁護士等も含めて紛争の種を担うということであって、そこを理由として100%というか、子会社として親会社でなくちゃいけない。とりあえず100%でなければいけないということにはならないのではないかというのが私の印象です。
言い方が悪かったのでもう少しはっきり言うと、株式会社というのは、多分、法律家の方々が見た場合の株式会社と、経済学者が見た場合の株式会社とは違うと思うのです。法律上で言うと、株主が株式会社の所有者であるというように法律上構成されているわけです。だから、所有権が何割であるかということが極めて重要なのです。
ところが、とりわけ日本の株式会社というのは、よく御存じのように、株主は余り力を持っていないわけです。むしろ経営者であるとか、場合によっては従業員の人たちの方がはるかに大きな力を持っている。
そういう意味で言うと、株式の保有割合でもって実態的な支配というものを定義するとのは法律上はあり得ると思いますが、いわゆる支配の実態ということをちゃんととらえているかというと、残念ながらそううまくとらえていないということが私は事実だと思うのです。
そういう意味で言うと、株式の保有割合が100であるというのは法律上は確かに意味がありますが、それが65であるとか、そういうことを問題にするよりも、実態として、財務であったり、税であったり、そういうものが最終的に実態として表れてくるわけですが、そこに反映されてくるようなものを基準として選ぶのが多分、少なくとも実態としては望ましいのではないかと思います。ただし、これは法律に絡むので、実態だけではだめだということは私は重々わかっていますが、しかし、財務諸表でもしうまく法律的にもとらえられるのであれば、そちらの方がはるかに実態に即しているのではないかというのが私の意見でございます。私の印象では財務諸表というのは、そういう基準が税務基準にも使えるし、さっき中川委員もおっしゃられましたけれども、一応公表されている。ただし、普通の人が常に見られるわけじゃなくて、財務諸表というのは専門の人が見ないとなかなか、普通の人ではなかなか見ないものが公表されているという問題はありますけれども、一応、とにかく専門家はすぐにわかるというところで定義されているものですから、私は財務諸表を基準にする方が望ましいのではないかというのが意見でございます。
【伊藤座長】わかりました。
【松尾委員】この弁護士法第72条の問題は、弁護士会、企業、それぞれの立場から言えば、まさに利害関係が非常に大きい問題でありますので、私などのような部外者からその範囲について、どこまでがいいという明確な意見はなかなか安易には出せないと思っております。
しかし、基本的にこの問題が改革審議会の中で取り上げられて、こういう意見書が出ている。その中で最後のところなのですが、規制内容を何らかの形で明確にすべきというような文言が使われている。または、総合規制改革会議の弁護士法第72条の見直しの件で、これは読み方にいろいろな意見があろうかと思いますが、私はこれはかなり積極的にとらえて読むべきじゃないかと思います。そうすると、先ほど日弁連が説明されましたように、100%子会社に限るというような、基本的にはそういうお考えですね。そういう考え方は非常に範囲として狭い考え方に当たるのではなかろうかと思います。
そうしますと、あとはこれまでもいろいろ出ておりますように、商法211条の2第1項による定義を取るのか、あるいは財務諸表等関係の規則第8条、こういった定義でとらえるのか、いろいろ考え方はあろうと思いますが、私も今、奥野委員が言われたように実態としてこれを見るのが、合理的な考え方ではないか。基本的には現行よりは緩やかにと言いますか、範囲を広げる形を取りながら、その実態はどうなのかという、財務諸表だとか連結だとかいろいろありますが、そういうような実態を見て、どう考えるということがこの場の論議の一番大事なところであろうかと思います。技術的なことと先ほどおっしゃいましたけれども、これはやはり私は法律できちっと決めるべき問題ではないかと考えております。これは実際にやるのは法務省かもしれませんが、単なる解釈でどうだこうだというものではなくて、きちっとした立法上の事項だと思っております。
【佐々木委員】前回の中川委員の御意見と、今日の日弁連の方からのプレゼンテーションを踏まえまして、個人的なことですが、意見を述べさせていただきます。
日弁連のプレゼンテーションにもありましたとおり、商法の基準等でいきますと、基準の明快性、解釈のシャープさということを第一義に挙げておられます。片方で奥野委員がおっしゃったような、あるいは松尾委員も、中川委員も前回おっしゃいましたけれども、実態を反映した在り方と申しますか、実態の反映、この2つの調和というところで議論がされるのだと思います。
まず、基準の明快性で100%ということになりますと、子会社という日弁連の説明でいきますと、何人かの委員がおっしゃいましたとおり、実態として使用に耐えるものがあるのか。言わば法人なりしたような会社ばかりが100%というのがかなり世の中であろうと思います。そうすると、親会社に法務部でそういうところがあるのだろうかという疑問がわいてまいりまして、100%でコンクリート詰めしますと、そのような解釈論としても、実用的なものになり得ないのではないかという点が1点。
2点目が、プレゼンテーションの中にあった点でコンフクリトの問題をおっしゃいましたけれども、これは端的に奥野委員がおっしゃったように親会社の法務部門を使用する場合の在り方ですので、そういう場合がそもそも想定されていないのではないかという奥野委員の指摘も、まさにそのとおりではないかと思うわけであります。
ただ、基準としての明快性と言いますと、商法の211条2の1項の定義ですが、この定義が議決権を支配するという観点から成り立っていますので、日弁連のいう基準としての明快性、あるいは画一性があるのだという点は、一方で非常に大事ではないかと思います。
それから、実用の面から申しますと、財務諸表の関係でありますけれども、今日いただいた資料10−1の2で見てみますと、親子会社の定義のところで、支配の観点が、意思決定機関を支配するのに、議決権支配であるとか、人的な支配であるとか、契約による支配であるとか、融資関係による支配ということをずっと書いてあるのですが、ただ1つ、この結果、この注に書いてあるとおり、連結財務諸表を記載した有価証券報告書が公開される。経理的には一体のものとして支配性を持って扱われるとなっておりますので、一見、これでもって実態を反映した形がよく表れている。これを使えばいいではないかという議論もあるのですけれども、例えば4項2号のホを見ますと、実はその支配性を表彰するものとして非常にあいまいな文言が使われていまして、推測と書いてあるのですが、この基準自体が中に一体何を、中身がよくわからない部分があるわけです。
したがいまして、ほかの部分では非常にわかりやすい議論ができるのですが、この財務諸表の連結という視点だけからではなかなか基準としても使えないのではないかと考える次第であります。そうしますと、これはちゃんぽんにするという考えも当然出てくると思いますけれども、商法の基準と連結財務諸表の明快なところとを入れて、実態と形式を反映させるというようなことでどうだろうかなというのを今密かに思っているわけであります。
日弁連の方でも最後のくだりで、特別決議の問題と、連結の問題をダブルでやるということをちゃんとおっしゃっておりますので、そういう考え方もこれから進めていただいて、それと同時に議論を法務省、あるいは事務局の間でしていただければというのが私の意見であります。
【平山委員】今の関連でよろしゅうございますか。
今の佐々木委員のお話のとおり、財務諸表規則でいきますと、資料10−1の2の第4項2号のホというのがあるのです。これは意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在する、ここまで入ってしまうのです。刑罰法規の適用にここまで入れたら、弁護士法第72条違反の刑事罰に関する裁判などはほとんどできないだろうという気がしておりまして、大変難しいなという気はいたします。
もう一つ、時間の観念がこの財務諸表で入ってくるのです。事業年度ごとに変えることができるし、変わる。そうすると、どの時点で相談して、ここは入っていたとか、こういう問題もありまして、これだけでいくというのは私は非常に危険だと思っておりまして、そういう意味で先ほど個人的には、商法で画一的なある基準を作っていただいて、しかし、実質は実力のあるちゃんとした企業法務がやっていただくということからいくと、証券取引法が適用されるような会社について考えた方がいいのではということを申し上げたのです。
【中川委員】私も平山先生のおっしゃることも非常によくわかるのですが、1つだけ困った問題がございます。それは、商法の親会社というのは50%超なのです。そうしますと、幾つでもいいのですが、50.01でもいいのですけれども、50%超えていなきゃいけないのです。ところが、50:50という会社はたくさんあるのです。どちらかの株主が経営を握っておる。しかし、株式は50:50というのが結構あるのです。これは商法上は子会社にはならないのです。しかし、実態は完全に連結して、子会社として扱っているわけです。そういう会社ほど実は大事な会社でありまして、例えば外資と一緒にやるとか、大きなメーカーが2つ事業を切り出して1つの会社にする。これなどは50:50です。だから、実際のニーズはそういうところにもあるわけでして、それが入ってこないとなると大変これは困るという事態になるのです。そういう関係があるということ。それから、ホの問題は、書いてありますけれども、実際はこんなのはなくて、要すれば、我々は何で判断しているかと言いますと、役員の派遣です。これは過半数以上を、なかんずく社長を派遣して残りの役員の過半数を派遣する。
それから、資金調達を半分以上親会社が面倒を見る。大体その2つなのです。それと経営指導契約を結びまして、大事なことは全部親会社に全部相談をしなさいとうことを義務づける。そういうことで40%〜50%の間の会社は縛りをかけているというのが実態なのです。ですから、私も余りこのホというのはよくわかりませんけれども、実質はそうなっている。
それから、タイムラグの問題は、昔は確かに平山先生おっしゃる事業年度が終わりましてから、有価証券報告書を作りまして、その中に連結会社はどことどことどこかということを書いて大蔵省に届け出た。ところが今は御存じのようにディスクローズが早まっておまして、少なくとも半期に1回、それからもっと早く四半期、3か月ごとに1回くらいのペースに今はなってきております。その四半期に発表する連結財務諸表には、どこの会社を連結したのかということを全部ディスクローズするわけですから、全部の会社とは言いませんけれども、そういう会社は3か月に一遍くらいは連結対象会社がどこであるかということはわかるようになっているわけです。
【平山委員】変えることはできますか。
【中川委員】もちろん、変えることはできます。ですから、株式構成が変われば、次の期には取り消さなければいけませんから、そういう問題はありますけれども、ディスクローズという面から見ると、非常に早くわかるようになっているというのが実態でございます。
【木村委員】今のお話の連結財務の点でいろいろなことが早くわかるようになってきたということと、私の今日の一番最初の質問の、課税が現在はばらばらである。しかし、これから数年のうちにそれは1つに課税される。そうしますと、商法とか財務諸表とかいろいろな関連の会社の株の配分とか力のバランスとか、いろいろなことが書かれているのではなくて、会社を例えば同一の課税対象となる連結企業という感じで会社をカテゴリーすることが可能なのでしょうか。
【中川委員】この前も申し上げましたが、企業グループとして評価するような時代になつつあるということです。
【木村委員】もしそうだとしたら、ここに書いてある、中川委員御提出資料の3枚目でございますけれども、この弁護士法第72条の見直しというところで、会社がグループ内の他の会社の法律事務を有償で受託できるというグループ内の他の会社、グループ内ということは、今の中川委員のお話によりますと、同一の課税対象となる連結企業体の中での法律事務ということに読み替えることができると思います。現在はもちろん、同一の課税対象となっていないわけでありますが、将来構想としてですね。ここに書いてあります総合規制改革会議の趣旨は、あくまでも法廷外法律事務についての、しかも隣接法律専門職に限定しないという括弧まで入れて、法廷外法律事務については、これを有償でやってもいいじゃないかという方向を出していいのではないかということに関連して、弁護士法第72条の見直しということが出てきているので、この趣旨を生かすような方向が、我々消費者の側から見ますと、会社というのは連結しているのも1つの会社と見えるわけですし、その中で法廷外、法廷でやる法律事務でしたらこれ大問題ですけれども、法廷外法律事務については、むしろ弁護士法第72条を改正して、そこに明確に規定してしまうというくらいの方がいいのではないかという気が私はするのです。
【釜田委員】この審議会の意見書の中で、ここはところどころ不思議な感じを受ける箇所があるのですが、審議会の中心的な答申は、法曹家を増やすのだということでしたね。3,000名規模で増やしていって、それを社会のすみずみまで行き渡るようにするのだということでございますから、今の日本の現状と違って、将来社会というのは、公務員の世界も含めまして、ちょうどアメリカの社会に見られるように、政治界も含めて法律家があらゆるところで活躍するような社会が描かれているのです。ですから、そこには当然企業の中にもたくさんの法曹家が入っていく時代と私は受け取っているのですが、非常に長期的な構想があると同時に、直ちに対応しなければならないのだというところが、ところどころ意見書の中に入っているのです。これもその1つなのですが、先ほどの日弁連のお話の中にも出てきましたけれども、長期的にそういう一方で描いている姿と関連させても、なお、こういう必要性があるのか。今、暫定的にここ数年型として必要なのか。その長期においてもそういうことが起こるのか。その辺りが私ははっきりしないのでございますが、いかがでしょうか。
【中川委員】それは私も実はわかりません。30年先にどうなっているかと言われたら、それはわかりません。ただ、目先と言いますか、数年とか10年くらいのスパンで考えれば、こういうようになるだろうなというのが大体わかるような気がするのです。
それはどういうことかと言いますと、多分、企業法務が積極的にグループ会社にサービスを提供するという事態が起こりますと、相当弁護士さんの仕事は増えると思います。これは逆説的に聞こえるかもしれませんけれども、現在の状況を見ますと、子会社群に対する法務サービスというのは全体としてプアーなのです。つまり、いろいろな法律問題を抱えているのですけれども、それをきちっと対応していない面があるわけです。まあまあ、なあなあでやっている面がある。それを企業法務の人たちが掘り起こすことになるわけです。そうしますと、当然これは法的にきちっと対応すべきだという問題がたくさん出てくるはずなのです。そこら辺に対しても、今、外部の弁護士さんも、余り関与されておりません。我々はいつもそこを問題にしておりまして、どういう具合にしたらそこがうまく行くのだということを考えていたわけです。こういう形になりますと、お前のところはこういう問題があるじゃないか。ちゃんとした先生に頼みなさいという形になっていくと思うのです。そういうことで、多分外部の弁護士さんにお願いをするチャンスというのはかなり増えると思います。いろいろな企業法務の人に聞いてみたのですけれども、大体皆さんそういうことをおっしゃっておりまして、当面は法律問題が掘り起こされて、顕在化してくることによって、親会社の法務部員というのは限られているわけですから、直接自分で処理するというのは無理なわけで、アドバイスはできますけれども、実務の方は外部にお願いしろと指導するようになると思うのです。それが短期的と言うか、そこから先どうなるかと言われますと、これはちょっと何ともわかりません。
【小貫委員】私は結論的には中川委員の意見に賛成なのです。佐々木委員が御指摘したとおり、大蔵省令を見ますと、これは投資家保護のために作っている規則なものですから、他人性を意識して作った規則ではありませんので、あいまいさと言いますか、資料10−1の2の第4項2号のホみたいな規定が残っていて、必ずしもこれですべてやっていいのかなという疑問はあります。ただ、同号の柱書を見ますと、まず、100分の40以上、100分50以下という形式基準をまず設けてあるのです。その上で、かつ、イ以下のこれこれの実質要件を充足するものという構造でございますので、商法基準を入れるかどうかというのは、議決権の割合を、50%以下でもよいか、50%を超えるものにするか、あるいは3分の2にするかというところの意見の対立にしかすぎないのではないか。ところで今、中川委員のお話ですと、50:50というのは非常に多いようです。これを排除してしまうと、いろいろ解釈論を示されても、余り実戦の場で使う場面がなくなりはしないだろうかという御意見でございまして、そういう企業実態があるのだとすれば、この連結基準でいってどうなのかと。このように私は考えております。
【伊藤座長】それでは、先ほど別にと申しましたが、親会社が設立をいたしました法務サービスが、連結グループ会社に提供する法務サービスの取扱い、この点についても御意見を承っておきたいと思いますが、これはいかがでしょうか。先ほど日弁連のお話については、それについては問題があるという御指摘もございましたが、委員の間で御議論をお願いできればと思います。
【平山委員】私がちょっと先ほど申し上げましたように、これはまさに弁護士法第72条と抵触すると思いまして、できればこれは避けたいと思っております。だから日弁連の意見をそのまま私も援用したいと思います。
【伊藤座長】他の委員の方はいかがでしょうか。
【松尾委員】前回中川委員にお聞きしたときに、この法務サービス会社というのは、現状では、実態として余り成熟してもいないし、どうなるかわからぬというお話だったと思います。そこにまさにこの問題がかかってきているのではないかと思うのです。
つまり、どのようになるかわからぬということと、果たして弁護士法第72条との関係で疑問が残るのではないかという読みがあるから、そこまで成熟する形までなっていない。こういうように考えられないこともないということですから、私は積極的にこれを認めるという状況にはないだろうとと思います。したがって、日弁連が言うような形の疑問とは少し違いますけれども、ちょっと消極的な意見です。
【奥野委員】私は今の松尾委員の意見とは逆になるのですが、時代を考えてみると、今はそういう会社形態がないからやめるというのは、言わば日本経済が変わらなくてはいけないという時代を考えたときに、余り建設的でない考え方かなというのは、そう言っては失礼なのですが、そういう感じがややありまして、前回もちょっと申しましたけれども、グループ企業と言いますか、持株会社、分社化というのはなぜ起こっているかというと、こういうさまざまな業務によって、例えば待遇が違うとか、いろいろな会社の違う対応が求められる。別会社にしておくということが、いろいろな意味でフレキシビリティーを生むという可能性があるわけです。これはあくまでも可能性の世界です。だからこそ、研究開発に特化した分社とか、いろいろな分社が起こり得るわけです。そういうことを考えると、それを特に排除しなくちゃいけない積極的な理由がなければ、別にそれは入れておいた方が、企業としてこれから国際競争も非常に激しくなるでしょうし、そういうときに法務上の対策も打ちやすいのではないかというのが私の印象であって、そういう意味で子会社同士であっても構わないのではないかと私は思います。
【中川委員】私は前回も申し上げましたように、他のスタッフ機能、人事の派遣会社であるとか、資金の貸付けとか、運送とか、あるいは経理とか、そういうものは全部別会社化しているわけです。それが常識になっております。なぜ別会社化するかと言いますと、これは前回奥野先生が御指摘されておりましたけれども、効率化なのです。経費コストを考えているわけです。分社化をして、本社の人件費というのはものすごく高いのです。それを分社化することによって、プロパーの人を安く雇えるというメリットがあります。そういうことで分社化をしているわけでありまして、法務部門だけが、それはいけないというのは、私も合理的な理由がないのではないかなと思います。
ただ、若干気になるところがありますのは、法務サービスというのはほかのサービスと違う面もあるのではないか。ですから、分社化をしたサービス会社が、例えば50:50でどこかと合弁を組むとか、これはちょっと変で、だから、親会社の本当にコントロールが及ぶという条件が必要ではないか。まさにコンプライアンスの問題がございますので、単にサービスだけを提供するというわけではありません。倫理性の問題とか、いろいろありますから、やはりそこを考えますと、親会社のコントロールが本当に及ぶという形での子会社が望ましいのではないかという感じはいたしますけれども、子会社化することの合理性はほかのサービスと同じようにあるような気がしております
【岡田委員】先ほどちらっと申し上げたのですが、メーカーの場合に、法務担当の仕事の中にリスクマネージメントがすごく大きな部分を占めているということを聞きまして、そういうことを考えると、やはりグループ化して、子会社関係、親子関係でもいいのですが、そこがリスクマネージメントについても責任を持つということを考えますと、私たち消費者にとってはそちらの方がいいのかなと考えます。
【佐々木委員】今、中川委員がおっしゃったとおり、この問題、親会社が子会社の法務を扱えるというのは、言わば支配性が確立しているということを根拠にして、他人性の要件を排除するとか、こういう枠組みであるわけですけれども、親会社から外に出た法務サービス部門というものが、その兄弟会社に対してどういう支配力を及ぼすかという理屈が難しいのではないか。
つまり子が親にかかって、間接的にかかっていくか。あるいは親と法務会社を一体化して、それから二重の意味でその他の連結子会社にかかっていくという構造を取らざるを得ないですので、二重の理屈を立てないといけない。そうすると、実質論としてはわかるのですけれども、今の段階での解釈理論としては、非常に難しい。だれが見てもこれであるということは言えないという考え方ができるのではないか。こういう疑問を持ちます。それだけ申し上げておきます。
【田中委員】前回私も疑問を出したのですが、後で奥野先生に指摘されて、確かにこれは法律家的な、法人実在説的な発想だと思っています。経営的な必要性はよくわかるのですけれども、法的に理論を構成すると、今、中川委員がおっしゃったこととも関係するのですが、親会社との関係とか、兄弟会社との関係で、何らかの新しい法律でも作るのなら別ですけれども、商法とか財務諸表の既存の規定に依拠しながら、法務サービス会社までも作れるという理論構成をするのは、多分、これは法律家だけの見解で、経済学者からは、まだそんなことを言っていると笑われるかもしれませんけれども、実際を前提に考えると、抵抗があるので、すんなりいかないのではないかというのがこの前出した疑問の趣旨です。
【平山委員】この問題も含めまして、外国でも一番重要な問題にされているのはいわゆる義務の衝突の問題です。例えば親会社の法務部に弁護士がいたとします。あるいは今の法務サービス会社に弁護士がいたとして、幾つかの他の子会社の法務部門を担当するとした場合に、多重忠実義務と言いますか、そういうものの衝突は避けられないだろうと思うのです。ですから、非常に進退両難に陥ることが出てくるのではないかと思いまして、そういうことも是非今後の検討で頭に入れて整理していただきたいと。そうではないと、我々は一体だれに忠実にやるのかという問題は避けられないと思っておりまして、倫理規範からいっても、こちらを立てればあちらが立たずということが非常に起きてくるような気がいたしますので、是非よろしくお願いしたいと思います。
【木村委員】現段階では、先ほど私が申し上げたような同一の課税対象となる連結企業体というのは、立法がないわけですから、それで法律を作るということは難しいと思うのです。しかし、そういうことがはっきりとした法律になった段階で、そこら辺を中心にして考えるということも1つの選択肢としてあるではないかと思うのです。確かに田中先生の言われるように、現行法上ということは無理だとすると、新しい法律ができた段階でそれに合わせて対応するということも可能にはなるわけです。新しい課税対象ができるわけですから、そういう意味ではグループ内の他の会社の法律業務で有償で受託できるということは、基本的にはその段階で私は差し支えないのではないかと思います。しかも、全体的に先ほど釜田委員が言われたように、長期のレベルと短期のレベルといろいろ違うかと思いますが、審議会の方向性としては、業務独占範囲をできるだけ減らして、法廷外法律事務については、企業の中でのエキスパート力を十分に使うような方向性も相当真剣に考えていかなくてはいけいなということがありますので、そこら辺は相当フレキシブルに考えてもいいのではないかという気がして、私はむしろこの(隣接法務専門職に限定しない)と書いたのはすごいことまで書いているなと思ったくらいです。
問題は、総合規制改革会議の位置づけ、これと司法制度改革推進本部法曹制度検討会との関係がどうなっているのか。行政上、総合規制改革会議の方の位置づけが上位の方にあるのか、並んでいるのか、そこら辺のところを事務局にお伺いしたいのです。
【植村参事官】私から申し上げますと、私ども事務局は検討会と御一緒させていただいて、審議会意見書の御提案を実現するための立法作業を中心に進めているわけでございます。したがいまして、司法制度改革推進本部事務局としての権限範囲というのは、この意見書を具体化する限度に限られております。
したがいまして、先ほど来、総合規制改革会議の中間とりまとめで弁護士法第72条の見直しについての言及がございましたけれども、中間取りまとめと審議会意見書の提言を並べてみますと、明らかに言っている内容が違うわけでございまして、それで実は総合規制改革会議の中間とりまとめに対しましては、推進本部と法務省が一緒になりまして、これに対する意見を提出しております。これは本日用意しておりませんので、お見せするのは無理でございますが、もし御要望があれば次回にでも、あるいはそれまでの間にもごらんいただくことは可能かと思います。また、政府は、意見書に基づきまして推進計画も作っておるわけでございますが、意見書が言っておりますのは、あくまでも弁護士法第72条の明確化というところでございます。それを受けた推進計画も、規制対象となる範囲・態様に関する予測可能性の確保ということでございまして、両方比べていただきますと、相当範囲が違うというのは、おわかりいただけるだろうと思います。
【伊藤座長】熱心な議論をいただきまして、この問題、今後どうするかということでございますけれども、弁護士法を所管しておられる法務省に仮に解釈を示していただくということであっても、いろいろな検討がなお必要かと思います。
そこで、この検討会での議論は一応ここで止めておいて、この議論を踏まえて本部事務局と法務省で更に検討をしていただいて、またその結果をこちらに示していただくということでよろしいでしょうか。
(「異議なし。」と声あり)
【伊藤座長】どうもありがとうございます。
【木村委員】座長、先ほどの書類について、お伺いしたいと思います。法務省と事務局とが共同で、総合規制改革会議の中間とりまとめに対して意見を提出したという、これは非常に大事な事項なので、それについての書類を提出していただくということは請求できるでしょうか。
【植村参事官】それは事務局としていたします。
【木村委員】それはお願いします。
【伊藤座長】それでは、本部事務局、法務省で更にこの問題についての取り扱いをお願いしたいと思います。それでは、ここで5分ほど休憩を取らせていただきます。
(休 憩)
【伊藤座長】それでは、再開いたします。
次に最高裁にその諮問を受け、下級裁判所の裁判官として指名されるべき適任者を選考し、その結果を意見として述べる機関、これを設置するとともにその機関が十分かつ正確な資料・情報に基づき適任者の選考に関する判断を行い得るように適切な仕組みを整理すること、これについて議事を進めることにいたします。
まず、最高裁から、裁判官の任命手続の見直しに関する一般規則制定諮問委員会におけるこれまでの検討状況について説明していただきます。
最高裁から配布していただきました「見直しの検討状況」と題するペーパーを拝見いたしますと、第1は司法制度改革審議会意見、第2は政府、最高裁のこの問題についての推進計画、第3は最高裁の検討の基本スタンス、第4は裁判官指名手続の実情、第5は最高裁判所の検討状況とされています。このうち、第3の中では、第1及び第2が引用されておりますほか、検討手法が問題とされておりますので、第1から第3までは、まとめて説明していただいて、委員の皆様から御質問をしていただきたいと思います。続いて第4は、裁判官の任命手続の見直しについて検討する際、同じく裁判官の任命と申しても、第1に司法修習生から判事補に任命される場合、第2に判事補から判事に任命される場合、または判事として再任される場合、第3は弁護士等から任命される場合、こういった場合では、任官希望者についての資料のありよう等が全く異なるということから、審議会意見が言うように、何らかの機関を置いて審査をする場合、その差異に着目した検討が必要であるという観点からの問題提起のように思われます。そこで、第4の説明が終わった時点で、委員の皆様から質問をお願いしたいと思います。更に最後の第5は、これまでの一般規則制定諮問委員会の具体的な検討状況でございます。
ところで、一般規則制定諮問委員会の検討状況につきましては、情報の公開が行われておりまして、私どもといたしましても、第2回委員会の議事概要までの資料は事前に入手をしております。そこで、事務局には、これまで公開されました情報、すなわち第2回委員会の議事概要までに基づきまして、最高裁の一般規則制定諮問委員会における検討が熟してきたと考えられる事項を整理した事務局資料10−3を作ってもらいました。そこで、最高裁から第5についての説明をお聞きになりますと、直ちに内容に関して御質問や御意見がおありかと思いますけれども、第5の中身についての質疑応答や意見交換は、事務局資料10−3についての事務局の説明の後でお願いをしたいと思います。こういう進め方でお願いをしたいと思います。
私からやや長たらしい前置きを申しましたけれども、それでは、最高裁から、これまでの裁判官の裁判官の任命手続の見直しに関する一般規則制定諮問委員会における検討状況について説明をお願いいたします。
【最高裁(小池審議官)】最高裁の審議官の小池でございます。それでは、私の方から、現在の最高裁での検討状況について御説明申し上げたいと思います。
本日たくさん資料を準備させていただきましたけれども、それを適宜引用させていただきながら御説明申し上げたいと思います。今、座長の方から御紹介がありましたような形で御説明申し上げたいと思います。まず、恐縮ですが、レジュメをごらんいただきたいと思います。
「裁判官の任命手続の見直しに関する検討状況について」10月8日付のものでございます。まず第1から御説明申し上げたいと思いますが、司法制度改革審議会意見は、裁判官の任命手続の見直しに関しまして、下級裁裁判官の指名過程に関与する諮問機関の設置を提言しております。先ほど、座長のお話もございましたけれども、最高裁は、その機関の設置につきまして一般規則制定諮問委員会を開催して検討を重ねているわけでございます。これまで2回の会議を開いたわけでございますが、このレジュメに従って、順を追って御説明したいと思います。まず第1の関係で、審議会意見の概要でございます。詳しくは資料1の方にございますけれども、まずこのレジュメで御説明申し上げたいと思います。
審議会意見は、この枠の中にございますように、最高裁判所にその諮問を受け、指名されるべき適任者を選考し、その結果を意見として述べる機関を設置すべきであるという点。そして2番目の○になりますが、その機関が、十分かつ正確な資料・情報に基づき、実質的に適任者の選考に関する判断を行い得るよう、例えば、下部組織を地域ブロックごとに設置することなど、適切な仕組みを整備すべきである、こう提言しているわけでございます。そして、更にこの制度を整備するに当たりまして留意すべき事項として、このページの真ん中から下のところに掲げたような事柄が掲げられております。例えば、この機関が実質的な判断を行い得るように十分配慮がなされるべきこと。それから選考の基準等を明示することを始めとして、選考過程の透明性を確保するための仕組みを整備すること。それから、ちょっと飛びますが、委員の構成や、選任方法については、中立性・公正性が確保されるように十分な工夫をすること等々を掲げられているわけであります。
こういうものを受けまして、レジュメの2ページをごらんいただきますと、政府の推進計画と最高裁の推進計画が立てられたわけでございます。政府のものは、この上の方の○でございますが、その内容は、要するに、最高裁における検討状況を踏まえた上で検討し、なお、必要な場合には、本部設置期限までに、所要の措置を講ずるという内容であります。そして2番目の○にございますが、最高裁の方も時を同じくしまして、司法制度改革推進計画要綱を作りまして、この諮問機関の設置について所要の措置を講ずることを明らかにしたわけでございます。
この辺りは前にも御紹介したところでございますが、こういったものを踏まえまして、このレジュメの第3というところをごらんいただきますと、最高裁としては、ここに掲げておりますような基本的なスタンスを取っております。ゴシックで○で3つございますが、審議会意見に沿った検討の方向性、推進計画に沿った検討方法、それから、そういったものを受けて、一般規則制定諮問委員会という外部の御意見を聞きながら、具体的な検討方法を考えていくという3つの柱でございます。
最初の審議会意見に沿った検討の方向性と申しますのは、最高裁としては、この審議会意見というのは積極的に受け止めております。ここでの諮問機関というのは、下級裁の裁判官の指名過程を透明化して、国民の裁判官に対する信頼感を一層高めるという観点から、非常に意義があるものと考えているわけであります。最高裁としては、審議会意見に、枠の中もございますし、その留意すべき事項ということもございますが、そういったものを十分尊重して、この諮問委員会の設置について検討を進めてまいりたい、これは前にも申し上げたところでございます。
そして、その推進計画、これは政府の方と私どもと作ったわけでございますが、この検討会でも事務局から御説明がございましたけれども、この諮問機関の設置というのは、最高裁の憲法上の権限とされている下級裁の裁判官の指名権に関する問題でありますことから、政府の推進計画では、その趣旨としては第一次的な検討は最高裁に委ねている。最高裁はそれを受けて積極的に検討していくということでございます。
最高裁は、先ほど申し上げましたように、推進計画要綱におきまして、この機関の設置につきまして、第一次的に検討を開始することを明らかにし、このことはこの検討会でも御報告したところでございます。
そして、この案件の重要性に照らしまして、広く各界の御意見をお聞きすることが適当であろうと考えまして、今年の6月、一般規則制定諮問委員会に、この諮問機関の設置に関する調査審議を諮問したわけであります。
この委員会は、7月31日に第1回、9月20日に第2回の会議が開かれたわけであります。政府の推進計画では、先ほど申し上げましたように、最高裁における検討状況を踏まえた上で検討することとされているわけでございます。最高裁といたしましては、今、申し上げました一般規則制定諮問委員会の審議状況についても、適宜この検討会で御説明しつつ検討を進めていきたいと考えております。本日、御説明を申し上げますのも、この趣旨に従うわけであります。
そして、具体的な検討方法につきましては、前にも御説明申し上げたところでございますが、やはり多角的な視点から検討を行う、閉じた検討ではなくて開いた検討をするということで、今回も資料2の委員名簿を付けさせていただきましたが、経済界、労働界、報道機関、自治体等々、幅広く各界から委員を選ばせていただきました。実際、議事概要あるいはその議事録等にありますように、非常に活発な、かつ幅広い視点からの御意見をちょうだいしているところであります。
そして、これもこの前御紹介したところですが、この一般規則制定諮問委員会では、従来とスタイルを違えまして、審議会意見を出発点として基本的な論点から検討すると、本日は資料7の論点メモを資料とさせていただきましたが、そういった形でしております。
従来、普通の規則制定諮問委員会ですと、かなり規則案の原形であります要綱というものをお示しして、それについての当否を御議論いただくわけですが、まず、この問題は、裁判所の要であります裁判官の任命の在り方というところに関わる問題ですので、今、申し上げましたようなスタイルを取ったということでございます。
それから、検討プロセスも明らかにする必要があるということから、この間口頭で申し上げましたが、本日は資料3で、議事公開の概要をメモにまとめてございますけれども、そういった形で、報道機関に議事の傍聴をしていただくことにして、議事概要、議事録を公表する。議事録については、発言者のお名前も明らかにする。更には、そういったものをホームページに登載しているというように、当検討会と基本的に同様の扱いをしているわけでございます。そういった開いた検討態勢をしているということでございます。
前に御説明したところと重複するところもございますが、要は、審議会意見を尊重して、なるべく各界の御意見をお聞きしながら、この問題を基本に立ち返って考え、かつその検討プロセスは明らかにしてまいろうという姿勢で検討しているということでございます。以上でございます。
【伊藤座長】ただいままでの小池さんからの説明に関して何か御質問ございますか。先に進んでよろしいでしょうか。
それでは、第4の部分についての御説明をお願いいたします。
【最高裁(小池審議官)】それでは第4、この関係はレジュメの3ページの中ほど以降のところと資料の方ですと10番という資料がございますので、これを併せてごらんいただければと思います。実は、このように第4という項目を立てさせていただきましたのは、最高裁で行っております一般規則制定諮問委員会第1回のときに、こういった手続について必ずしも十分な御説明を申し上げないままに会議をしましたところ、法律上の任命手続の流れというのは御説明したのですが、ここに大きく言いますと3つのスタイルがあるのですが、この3つの類型を想定しませんと、なかなかどんな制度設計をしていいかというのがおわかりにくいところがあったようでございますので、第4という項目、これは実情ということでございますので、この実情自体を、このような制度設計をしたときに、どう変えていくかという問題があるわけですが、まず、現状はこうなっているということを理解いただくために、こういった項立てをしました。それでは、その内容と実情について御説明申し上げたいと思います。こういった裁判官の指名、任命というのは、憲法80条に定められてございます。これは最高裁の指名した者の名簿によって内閣でこれを任命する。要するに、指名に基づいて任命すると定めてありまして、最高裁に下級裁の裁判官の指名権を憲法は与えているわけであります。
最高裁では、下級裁判所の裁判官の指名につきましては、任命資格を備えた者で任命を希望するという人の中から裁判官会議で任命を相当、適当であるという人を決定して、その人の氏名を記載した名簿を内閣に送付する。抽象的に言うとこういうことになります。これを具体的に言うとどういうことになるかというのが、この資料10の図でございます。任命されるルートというのは、大きく分けますと3つの類型があります。
1つは、司法修習生から判事補に任命されるというものであります。
2つ目が、判事補から判事を任命、つまり、10年間判事補をやって判事になる場合、あるいは判事として10年間仕事をして更に再任をするという場合でございます。
3番目として、弁護士あるいは学者、検察官から判事あるいは判事補に任命されるという場合でございます。
最初の1番目の司法修習生から判事補への任命というのは、10ページの絵でいきますと一番の上の段なのですが、司法修習生、御存知のように、司法試験に受かった後、司法研修所で法曹になるためのトレーニングを受けているわけでございます。その人が判事補への任命を希望する場合には、この流れのようになっております。毎年卒業が10月でございますので、7月の下旬のころに、まだ勉強している途中なのですが、二回試験という大きな試験があるのでまだその前の段階ですけれども、ここで判事補採用願というものを提出しまして、それで、9月の下旬に二回試験という、一種の卒業終了試験を受ける。その後に、今ですと、10月の上旬、先だって最高裁は今年も行ったわけでありますが、そこで面接を行って、そういった二回試験を合格した人たちについて、裁判官会議で指名するかどうかが決定されています。
この類型では、任官希望する修習生には、指名の段階では、法律家としての実績がないと、勉強して法律家になる前、要するに、法律家としてのキャリアがないわけであります。そこで、現在指名に当たっては、専らその可能性を探るという意味もあるのですが、修習中の成績とか、それから二回試験の成績、その修習中の成績と申しますのは、司法研修所で集合修習というところで勉強しているときの成績と、実務修習といって、全国各地でやっているのですが、そこで弁護修習、検察修習、裁判修習と3か所を回るのですが、そこでの成績を基礎資料として用いる。そして、面接の結果、それから本人からの身上報告書も検討資料として用いて検討していくということでございます。
それから2番目の類型が、判事補から判事への任命、あるいは判事の再任ということですが、これは中段のようになっております。従来、特に判事補から任官した場合には、従来の任官期が4月が多うございましたが、最近は10月になっているのですが、4月期でございますので、こういったものは毎年4月期に起こってくるのですが、ここにありますように、任期が終了する前の年の9月ころに再任するかそうでないかと、再任の希望を所長に各裁判官が伝える。そして、任期が終了する2月ほど前に任命願、これは判事補の場合でございますが、判事補から判事への任命願、それから、判事が更に再任したいというときには再任願というものを提出する。そして、裁判官会議で指名するかどうかが決定される。ここでは面接というプロセスはないわけであります。
この類型の任官希望者、判事と判事補ということになりますが、一定期間の裁判官としての経歴、多くの者は10年間ということでございますが、判事の場合にはその前の10年がありますけれども、再任されてからの10年ということでありますが、その資料が裁判所に蓄積されてございます。そこで、現在は、この類型の場合には、専ら任官希望者のそれまでの10年間が多うございますが、それまでの裁判官としての評価、人事評価等が基礎資料として用いられているという形になります。
それから下の段、これは典型的なものとして弁護士さんからの任命ということになっていますが、これはここに書いてあるような手続であります。直接最高裁にお申し込みいただくことも可能なのですが、これは弁護士任官を促進するという意味もありまして、弁護士会で弁護士任官適格者を推薦する手続を設けておられます。この手続によって、所属弁護士会あるいは弁護士会の連合会の推薦をいただきまして、最高裁に申し込みがなされるというのが通例であります。申し込みがされますと、最高裁では面接を行い、もちろん、健康診断等もあるのですが、その上で指名するかどうかというのを決定しております。その類型の任官希望者、この例に挙げたものですと、弁護士さんということになりますが、法律家としての経歴はあるわけですが、裁判官としての御経歴はありませんので、裁判所には、任官希望者に関する情報の蓄積はないか、あるいは非常に乏しいという状況にあります。そこで、現在、指名に当たっては、弁護士としての実績や面接の結果等が基礎資料として用いられているということになります。
仮に学者から裁判官任官を希望される場合にも、弁護士会等の推薦手続がない点を除けば、基本的には弁護士の場合と同様ということになります。
今申し上げましたように、下級裁判所の裁判官の指名に当たっては、この3つの類型ごとに基礎資料をベースとする資料や、その資料の集め方等に違いがあるという実情になっているわけであります。審議会意見は、指名過程に関与する機関が実質的な判断ができるように十分な資料を集めなければいけないということに配慮する必要があるということを指摘されております。これから諮問機関の在り方を議論するに当たっては、現実に諮問機関においてどういうような審議をするのかどんな審議方法を取るのかということを少しイメージしながら考えていく必要があると、そうだとすると、今申し上げましたような3つの類型ごとの実情を踏まえて検討していくことが重要であると思われます。
そういうことでございますが、それぞれ、例えば、少し補足しますと、これは資料の14というのをごらんいただきますと、つまり3つの類型がありますけれども、それぞれ数のオーダーというものも大体イメージしていただきますとよろしいのではないかと思いますが、例えば、修習生の場合には、平成13年ですと114、そのぐらいの人が同じようなタイミングでやらなければいけないとか、弁護士さんからのものですと4と2ですから、6人ぐらのいオーダーということになります。判事再任は4月期ですが、大体同じ時期に来ますから160とか、そのような数になるということになります。
時期的な流れは、現在はこういう形になっていますが、こういう諮問機関を設置したときには、こういった時系列の流れというものも、また、どうあるべきかということをイメージしていただいて、いろいろ御議論いただければと思います。
少し説明が長くなりましたけれども、以上でございます。
【伊藤座長】ただいまの部分についての御質問をお願いいたします。
【木村委員】この資料の10の裁判官の任命手続の概略、この任命手続については裁判所の規則に一応あるわけなのですか、この任命手続の。
【最高裁(小池審議官)】これは規則であるものもありますし、そうではなくて、言わば運用でやっているものもあると思います。例えば、二回試験をするとか、そういうものはここの表に書いてあるものでございますね。
【木村委員】これはそうしますと、必ずしもこういうことが一々規則に書いてあるわけではなくて、運用上こういうことがなされているということなのでしょうか。
【最高裁(小池審議官)】そうでございますね。
【木村委員】どうしてそれをお伺いしますかと言いますと、例えば、司法修習生から判事補へのところでは、採用のための健康診断とございますね。それから弁護士さんの方からも、採用のための健康診断があって、判事補さんから判事の再任については、これは人数が結構160何名で多いのですけれども、一切健康診断というのはないわけですが、これは健康診断の内容にもよりますけれども、例えば、通常の場合の身長とか体重とか血圧のほかに精神的な面も含めたような健康診断というのがあった方がいいのではないかと思うときもあるのですね。そういうのは何かないのですか。そういうのは別に手続上は要するに必要ないのですね。
【最高裁(小池審議官)】裁判官の場合には、健康というものには非常に注意しております。普通年に2回は健康診断というのをやりまして、ほとんど日帰り人間ドックと同じぐらいのレベルのものはやるわけです。たしか心電図を取らないぐらいでほぼ同じぐらいです。そういうときに、メンタルな面も、お医者さんが、面談をしたりしますので、そういうところはわかると思いますし、それからあとは一般の組織におけるそういった、しかも裁判官の場合は全部幹部職員になれるようなものでございますが、そういう人の精神的なものを含めての健康チェックというのは恒常的にずっとやっているということでございます。
【木村委員】私ども一般のイメージからしますと、裁判官というのは常に公平、誠実、謹厳実直、何といいますか非常にストレスがたまるお仕事ではないかと思うのです。そのストレスの中で、先年来ちょっと裁判官の方々で、通常の裁判官のイメージと違うイメージをお持ちの方々が新聞でも報道されたような事件があったりしたわけですけれども、そういう健康上のチェックにしましても、何からの意味のそういうことが定着していると、3つ並んでやはりどこかにあった方がいいかなという感じが今しましたものですから、お伺いさせていただいたわけです。大体そういう方はほとんどいらっしゃらないとは思います。しかし、弁護士会の方にしても、あるいは検察の方にしても、これは統計的な数字で言うとゼロコンマ何%は必ずそういうことなる可能性があるという話ですので、健康上のチェックはあった方がいいかなという気がしますが。それは最高裁はもちろん規則の方ではないということなので対応は可能かどうかわかりませんが。
【最高裁(小池審議官)】その健康モデルについては一生懸命また考えていきたいと思いますが、こういう任命のプロセスの中に盛るのか、それとももっと恒常的に、10年に一遍やればいいという問題でもございませんので、むしろそこはまだ十分考えてまいりたいと思いますが。
【中川委員】面接ということなのですが、面接でも何でもいいのですけれども、とにかくバツだと、この人は困るというのはどういう御判断をベースにされるのか。そういうケースがあるのかないのか。それからあるとすれば、何が裁判官の場合には非と判断されることになるのでしょうか。
【最高裁(小池審議官)】ここは裁判官として、どういう資質を持つべきかというスタンダードをどう立てていくかということでありますので、今日お話しするというよりは、今後またこの委員会が立ち上がりましたときにどう考えていくかという問題。それから、この間ここでちょっと御説明しましたけれども、人事評価の問題というのがございますが、そういう中でどういうファクターを考えていくべきかという問題がございますが、やはり一言では申し上げられないのですけれども、裁判官の資質、裁判官としてふさわしいかどうかというレベルですと、法律的な専門家としての知識とかそういうものがあるかどうかとか、中立、公正であるかとか、それから、ある意味での知的忍耐力があるかとか、世の流れにさおさすような判決をしなければならない精神的な勇気があるかどうかとか、そういったようなものをいろいろ考えていくということになると思います。それは事務処理の能力というものもあると思いますが、そういった項目としてたくさん挙げられている中で、それを総合して適か不適かということを考えていく。非常に抽象的なお話になりますが、そういうことになると思います。
【中川委員】そうしますと、思想的なもの、非常にラディカルだとか、あるいは極めて右翼的であるとか、コンサバティブであるとか、そういう要素は全く関係がないわけですか。
【最高裁(小池審議官)】これも御質問としてはなかなかお答えしにくいところがありますけれども、その人の属性として、これは最高裁としての公式見解というのではなくて、むしろ今、御質問があったので、そういうものを一裁判官、あるいはこういう仕事をしている者として考えているというところで申し上げますと、思想的な、その人として属性がどうかということでもって判断するというのはいかがなことかと思うのです。ただ、職業人として合理的に、ある事件に遭遇したときに仮説を立てて、幾つかの仮説を立てて、その中でその合理的な範囲内の、その証拠に照らしてある仮説が立証されたというように選択できるかどうかというところの能力というのは見ていかなければけないと思うのです。それが立証されたということとは、かかわりなく常に右の端のまたその外を選ぶということになりますと、それは職業人としてどうかという問題が出てくると思うのです。裸の属性ということではないと思うのです。
【中川委員】あくまでもプロフェッショナリティーというか、それを中心にしておられるということなのですね。
【最高裁(小池審議官)】はい。
【佐々木委員】レジュメの中にあるのですが、諮問機関の審議を実質的なものにするためにということで3つの類型があるということですね。それで、私自身は、教官の経験もありますし、現在新補を預り、今また新補を配属部に配属しなければいけない、そういう作業をしている立場から見ますと、例えば、一番上の修習生から判事補への任命のプロセスの中で、指名諮問委員会、例えば、そういう仮称のものができた場合に、これは任官を希望する人に対して早期な任官を図らなければいけない。我々迎え入れる方としても現場の立場としてもそれは大事であるということになりますと、今年のシステムでは、10月4日に修習が終了する。そして、10月11日には配属部が明らかになる。そして、10月8日に裁判官会議がある。こういう中で、早期の任官を図るということになりますと、委員会の審議の在り方、これをできるだけ工夫していただきたいと考えます。だから、そこは120人近くの人をこのスパンの中に入れてやるわけですから、相当圧縮しないと、前の方は司法研修所の成績の問題がございます。それから、教官が試験で採点をいたします。そういう前の問題と後ろの現場の問題とは、この辺りのことはどう考えたらいいのだろうか、120人です。そこら辺のことは、実際どう考えておられるのか。
【最高裁(小池審議官)】そのへんは、またこれから制度設計するときに、なかなか難しい問題だなと思っています。
それで、実際上非常にタイトなスケジュールの中でやっていかなければならない。特に多くのところでは、10年前の判事補は判事としてなっていくということですので、次の新しい判事補を待ち望んでいるわけですので、二回試験が終わってからゆっくり委員会にかけて慎重にするのはいいのですけれども、現場の方に人が行かないということになると、これはなかなか実際難しいと。そういう意味で、実質的に審査をするということは非常に重要ですけれども、実質的にやるにはどうしたらいいか、これだけ100を超える人たちが一遍にやってきて、短期間にやらなければいけないときにはどうしたらいいかということは十分考えなければいけないと思います。それは、新任判事補の場合には、かなり可能性で判断していくということですから、修習の成績とか二回試験の成績とかというところをある程度重視して、そしてあとはもう、でき上がった委員会の方で、恐らく面接とかあるいは独自にいろいろ調査をされるということもあるのでしょうけれども、そこら辺をどのようにウエイトを置いていくのかということも、1つテーマとして考えていかなければならないと思います。実質的に審議をしなければいけないという機能を持たせるための制度設計、あるいは運営方法はこれから考えていかなければいけないかなと思っております。
【佐々木委員】再任の場合はもっと人数が大きくなりますので、そこはもっと現場にとってもシビアになってくる。
【最高裁(小池審議官)】そうですね。
【佐々木委員】同じ問題、より高いかもしれませんね。
【最高裁(小池審議官)】ただ、数が多くなりますが、やや時間的余裕はあるということになりますので、そこを両方見ながら、設計と運用を考えていくということになると思います。
【伊藤座長】それでは、また関連することは後の方で御議論いただくといたしまして、第5の部分の説明をお願いいたします。
【最高裁(小池審議官)】それでは、3ページの下段、むしろ1枚めくっていただいてごらんいただきたいと思います。
最高裁の検討状況でございますが、一般規則制定諮問委員会は、先ほど申し上げましたように7月31日に第1回が開催されました。そして、この日は先ほど資料7ということで引用させていただきましたが、その論点メモに基づいて審議が行われました。
第1回では、問題の全体像を把握するために、論点メモにありますような機関の設置の要否、その法形式、組織、その所掌事務といいますか、所管の事務等々について、各論点について一通り協議がされたわけでございます。詳しくは、資料4の議事概要がございます。前にも配らせていただきました。
それから、第2回が9月20日に開催されまして、この日は第1回の協議を踏まえまして、資料8というのがございますが、これは資料7という論点メモを第1回の会議の状況を踏まえまして、更にバージョンアップしたものですが、その資料8に基づいて審議が行われました。
その審議の前提として任官希望者の類型に応じた審議方法の在り方について議論しまして、その後、この機関の所掌事務、所管事務を中心に協議がされたわけであります。その内容につきましては、前後して恐縮ですが、資料5に議事概要がございます。この2回の会議とも委員からは非常に活発な御意見をちょうだいしまして、精力的な審議をしていただいているわけであります。そして、これまでの検討の概要について申し上げますと、これはレジュメの方の4ページの中ほどからでございます。ここは意見の一致が確認されている項目について列挙させていただきました。こちらは今度は4ページ中段からのレジュメの方をごらんいただきまして、それを前提に御説明させていただきます。
まず、指名過程に関与する指名機関の設置につきましては、ここにありますように、審議会の意見書の提言どおりに、最高裁判所に下級裁判所の裁判官の指名過程に関与する委員会を置くことについて意見の一致が確認されております。
そして、委員会の所掌事務、所管事務については、後に申し上げますような確認がされておりますけれども、委員会が設置されたときの委員の委員数とか構成とか、そういった制度設計については今後検討される予定であります。次回、10月22日に予定されておりますので、そこで議論されると思います。
それから、委員会に下部組織を置くことということについて、これは全く御異論なく意見の一致が確認されました。審議会の意見は、先ほどのところにございましたように、委員会が十分かつ正確な資料、情報に基づいて、実質的に適任者の選考に関する判断を行い得るよう、例えば、下部組織を地域ブロックごとに設置することなど、適切な仕組みを整備すべきであると提言しているわけでございますが、この意見に従うものであります。その詳細については今後検討する予定でございます。
そして、委員会の所掌事務につきましては、特に第2回で議論されたわけでございますが、その結果、まず、委員会の所掌事務としましては、4ページの下4分の1ぐらいのところにございますが、委員会は、最高裁判所の諮問を受けて、裁判官として任命されるべき者を指名することの適否を審議し、その結果に基づき最高裁判所に意見を述べることについて意見の一致が確認されています。ちょっと回りくどい言い方ですが、要するに、裁判官に任命希望者が裁判官として指名することの適否というものを審議して意見を述べるということであります。
それから、委員会は指名の適否について意見を述べるに当たっては、その理由を付することができることについても意見の一致が確認されています。委員会の方で、特に迷った事例といいますか、そういったところに意見を付していただく。例えば、指名を適とした場合、否とした場合、両方ありますが、そういうところに意見を付していただくことができることにすべきという意見であります。
それから諮問に当たっては、最高裁は任官希望者全員を記載した名簿を委員会に提出すべきこと。言い換えれば、希望者全員を諮問の対象にすべきこと、ということについて意見が一致しているということが確認されております。
それから、この適否に関して意見を述べること以外の所掌事務としまして、4ページから5ページにかけてですが、最高裁の諮問を受けて、指名に関する事項、例えば、選考基準等の一般事項を審議して、その結果に基づき最高裁に意見を述べることについて意見の一致が確認されております。
ゴシックで書いたところが意見の一致事項です。それから「*」を付けたものが幾つかございます。5ページの一番上のものは、今申し上げました検討の方法を述べました注でございますが、2番目のものをごらんいただきますと、まず諮問の仕方につきまして、最高裁は、その指名の適否に関して意見を付して諮問するのか、それとも適否の意見を付さないで諮問するのかという点が議論されました。この点については、諮問の際に、最高裁は任官希望者に関する一定の資料を提供するけれども、任官希望者の指名の適否に関する意見を付さないで、言わば白紙の状態で諮問すべきである、ということが確認されております。
それから、次の「*」ですが、委員会の所掌事務に関しては、委員会は指名の適否の意見を述べるだけでなくて、独自に適任者を推薦する機能を持たせるべきかどうか、これに関連して、任官希望者は申込先が最高裁ではなくて、委員会に任官の申し込みをすることとすべきではないかというような点が議論されたわけであります。最初に、独自の推薦機能という点については、これは両様の意見があったわけでございますが、議論の結果、要するに、最高裁が任官希望をしている人全員を諮問に付するということならば、委員会は、任官希望者全員について、結局適否の判断をするということになるわけですので、委員会に独自の推薦機能を持たせるまでの必要はないだろうという大方の意見の一致があることが確認されています。それから、1の点と2の点というのは相互に関連するところがあるのですが、2の点について委員会へ申し込むことでどうか否かという点についても両論の御意見がございました。しかし、この点も御議論の結果、最高裁が任官希望者全員を諮問に付するならば、任官希望者は最高裁宛てに任官の申し込みをすれば足りるのであって、あえて委員会宛てに応募する手続を設ける必要がないということで、大方の意見の一致があることが確認されております。
こういったことによりますと、今まで決まったところでどういうことになりますかといいますと、任官希望者は最高裁判所に任官願を提出する、そして最高裁は、任官希望者全員を記載した名簿を適否に関する意見を付することなく委員会に提示して全員を諮問する。そして委員会は、その名簿に記載された個々の任官希望者について指名の適否を審議して意見を述べる。そして、理由を付することができるということになるわけであります。
それから5ページの一番下の「*」ですが、ここはやや技術的になりますが、これは委員の方から御指摘された論点であります。委員会の所掌事務につきましては、仮に任官希望者が採用可能数を上回る場合に備えて、委員会は適否の判断に加えて、任官希望者に対する段階的評価に関する意見を述べることとすべきか否かという点も議論されたわけであります。つまり、採用可能数が仮に100人であるというときに、150人の方が応募されたと、適否の判断によると120人の方は適ということになる。しかし、120から100を引いた20人の人については、採用できないことがある。そうすると、では、その採用できない20人というのはどういう形で選別するのかというところの意見も付することにしてはどうかという問題意識でございます。この点につきまして、いろいろ議論がありましたが、規則制定諮問委員会としては、指名諮問委員会は任官希望者の指名の適否の意見を述べるにとどめるべきであって、任官希望者に対する段階的評価、あるいは1番から120番まで順番を付けるというようなことにすべきできないということであります。むしろそれは、適否に関する理由の中で述べていく運用ということでよいのではないかという御意見でございました。
駆け足で申し上げましたけれども、そのほか下部組織の所掌事務等の論点が残されていますが、これは今後検討される予定でございます。
委員会は、次回が10月22日、その次が11月22日、そしてその次が12月24日という更に3回の予定がされております。委員会の審議状況については、これからも適宜この検討会で御説明する機会をいただきまして、また御意見を伺えればと考えている次第でございます。以上でございます。
【伊藤座長】それでは、先ほど冒頭に申し上げましたけれども、事務局から、事務局資料10−3について説明をお願いします。
【植村参事官】それでは私から事務局資料10−3「裁判官の任命手続の見直し 検討のたたき台(案)その1」について御説明をいたします。
ただいまの最高裁からの御説明によりまして、最高裁が一般規則制定諮問委員会において、裁判官の任命手続の見直しにつきまして、検討をどのように進めてきたのか、第1回委員会、第2回委員会を経て、現在までにどの辺りの検討が熟してきたのか、委員の皆様には既におわかりいただけたのではないかと思います。最高裁からの説明にもございましたけれども、2回の委員会を経まして、本日付で最高裁から提出のありました「裁判官の任命手続の見直しに関する検討状況について」と題するペーパーの第5の2つ目の○、これまでの検討の概要に記載されておりますように、幾つかの事項につきましては、既に委員の皆さんの大方の意見が一致して、既に検討が熟したものと思われます。先ほど座長からお話がございましたけれども、このような最高裁の一般規則制定諮問委員会の検討状況につきましては、既に第2回委員会の議事概要までは公開されております。それに基づきまして、既に検討が熟したと考えられます事項を事務局として整理いたしましたのが事務局資料の10−3ということになるわけでございます。
詳細にわたる最高裁の説明の後でございますので、重複する部分が非常に多い説明でございますが、若干御説明をさせていただきたいと思います。この中で、事項として挙げておりますのは全部で7つでございます。第1番目の事項が、事務局資料10−3の第1の1に記載いたしましたものでございます。最高裁から配布されました資料の8「これまでの議論の整理等に関するメモ」、このメモが第1回委員会の議事を整理いたしまして、第2回委員会の資料になったペーパーとお聞きしておりますが、この1ページをごらんいただきますと、確認された点というのが整理されております。
少しだけ説明しておきますと、資料化はいたしておりませんが、第1回の委員会の議事録というのは既に公開をされております。何でこんな設置のところまで一々確認したのかと、あるいは御疑問があるかもしれませんが、その議事録を見ますと、憲法が最高裁に下級裁判所の裁判官の指名権を与えたことから見まして、審議会意見書が提言するように、最高裁にその諮問を受け、指名されるべきものを選考し、その結果を意見として述べる機関を設置することに何か問題はないかということで、そういう確認的な問題意識から付されたと伺っております。ただ、当然のことながら、ここはどなたも異論がないということで確認されたということのようでございます。それから、組織として委員会方式にするということも設置のところで、既に委員会というのが出てまいりますが、異論なく了解されているようであります。それから、第2番目、第3番目の事項は、事務局資料10−3の第1の2の(1)(2)に記載しました事項でございます。第1回委員会で設置することに御異論のなかった委員会について、所掌事務について検討が行われまして、この2つの点については特段の御異論がなくまとまったとお伺いしております。ただ、この際、第1回委員会における所掌事務の検討の段階で、設置する委員会自体に指名候補者の推薦機能を持たせるかどうかという点が問題になりまして、そうすべきであるという意見も出されたようでございます。第1回目は、そこで議事が止められておりまして、第2回委員会におきまして、この点に関する議事が行われたということのようでございます。
第2回の委員会の議事概要、これは最高裁の資料5でございますが、その10ページをごらんいただきますと、真ん中辺に「イ 推薦機能、応募方式」という事項が出てまいります。委員長から「委員会の所掌事務として、指名候補者の推薦機能を持たせるべきか、さらに、任官希望者が委員会へ直接応募することとすべきかという点について、意見を伺いたい」という問いかけがございまして、その後、意見交換が行われたようでございます。そして、その取りまとめは12ページに出てまいります。7行目でございますが、「大方の意見は、委員会に推薦機能を持たせる必要はない、任官希望者は指名権を有する最高裁に任官願を提出し、最高裁が指名権を行使する際、国民の意見を反映させるため、委員会に諮問することでよいということだと思われる。前回確認したとおり、希望者全員を諮問するのであれば、実質的に意見の相違はないと思われるので、今述べたような方向で暫定的に取りまとめたい」と発言をされまして、委員の皆さんは異議なく了解しておられるようであります。
そして、第5番目の事項は、事務局資料10−3の第1の2の(4)に記載した事項でございます。今の資料5の12ページのウをごらんいただきますと、「最高裁の諮問方法」という事項がございます。ここで委員長から「最高裁は意見を付さないで白紙の状態で委員会に諮問するということでよいかどうか確認したい」という発言がありまして、委員の皆さんは異議なく了解をしておられます。
続いて第6番目の事項が資料10−3の第1の2の(5)に記載した事項でございます。これは資料5のエに、先ほどの諮問方法に引き続きまして、「裁判官の定員と諮問・答申の方法」というものがございます。委員長の方から「裁判官の定員との関係で、任官希望者が採用可能数を上回る場合、どのような諮問又は答申をすべきか。諮問された人の適否に関する答申に止めるのか、委員会の意見を積極的に反映させるために段階的な評価などをするのかが問題になる」という問題提起がございまして、13ページをごらんいただきますと、上から7行目になりますが、「前回、委員会が指名の適否について意見を述べるに当たっては、その理由を付することができることを確認しているが、委員会で特段意見があれば、それを答申に盛り込むことによって、運用上は十分機能するのではないかと思われる。したがって、委員会は適否のみの答申に止め、あとは定員政策上の問題もあるので、最高裁を信頼して任せる。そして、重要なことは、意見が異なる場合に、委員会にフィードバックする方法を確立することにより透明性を確保することであると思われるが、そのような取りまとめでよいか」と発言されまして、委員の皆さんは異議なく了解をしておられます。
最後に第7番目の事項は、事務局資料10−3の第2の1に記載した事項でございます。これも下部組織の設置だけのことでございます。最高裁資料の8をごらんいただきますと、その5ページでございますが、ゴシックで「確認された点」として「委員会に、下部組織を設置すること」というのが出てまいります。第1回の委員会の議事概要、資料4で見ていただきますと、その11ページになりますが、カという小項目がございまして、「下部組織の設置の要否、機能」について委員長の方から、「委員会の下部組織の設置の要否及び設置した場合の機能について、概括的・一般的な意見はあるか」という問いかけがございまして、議論の末、12ページの下の方になります、「下部組織を設置することについては概ね意見が一致した」というまとめがされております。
以上が事務局で既に公開された資料に基づきまして、既に最高裁の委員会の方で議論が熟したと考えた点でございまして、この点について検討会の委員の皆さん方に議論をしていただきたいと考えて、資料10−3「検討のたたき台(案)その1」を作成したものでございます。以上でございます。
【伊藤座長】それでは、先ほどの最高裁の小池さんからの説明、及びただいま資料10−3についての事務局からの説明に関しまして、御質問がございましたら、お願いいたします。
【木村委員】事務局の方も大変よくわかりやすくまとめていただきましたし、それから最高裁の小池さんの方からも、今日までの資料も、大変資料をきちんとまとめていただいて、この作業に心から敬意を表したいと思います。本当にどうもありがとうございました。
今、植村参事官の方からわかりやすくまとめていただきましたが、設置のところでございますけれども、このことについて確認されたと。小池さんもそう言われましたが、その前段階のところで質問があるのです。まだ確認されていないので参事官は御指摘になさらなかったのかもしれませんが、本日の資料4でございますが、最高裁の一般規則制定諮問委員会関係資料というところで資料4がございます。その3ページを拝見させていただきますと、これは設置の要否というところで、設置については確認されたわけですが、一番下の行を見ますと、少なくともこの機関を設置することについては、法律で定めるべきであるということを言っている委員がいまして、それに対しまして、その次のところでは、同じ○のところで真ん中辺でございますか、4ページですが、法律で定めるということになれば、政治部門の意見が関わってくる。これは司法の自律性を損なうことになるのではないかという意見があって、その次に機関を設置することについては、法律で定めるという程度でもいいのではないかと思う。その4ページの一番下を見ますと、法律を通じて国民に公示することも重要である。これはどういう意味かよくわかりませんが、これは国民に公示するというよりも、国民の代表が決めるという意味だと思うのです。法律というのは国民が作るものですから。そういう意味で今日御配布いただきました資料の憲法77条の最高裁の規則制定権に基づく、「最高裁は訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律、及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する」という、その権限の中で最高裁に設置する機関の確認がなされたというように理解するのか。まだ、そこのところは討議が進行中であって、法律で言わば憲法77条ではなくて、国民の代表者から構成される議会が作る法律、要するに立法によって、このような新しい裁判官の在り方についての基本的な方向づけをするという論議でいくのか、そこはまだ確認されていないというところでの今日のお話なのでございましょうか。そこら辺のところはいかがですか。
【最高裁(小池審議官)】今、引用されました資料4の5ページの下の方に黒い四角がございますが、「大切なのは中身をどうするかである」。これは委員長のまとめですが「法形式について議論しづらいという側面もあろう。最高裁判所規則で定めるべきという意見が多かったように思うが、この点については、多少中身の議論に入った上で、再度議論してもらいたい」。
それを受けまして、資料8をごらんいただきたいと思うのですが、これは第1回の論点メモ資料7を受けまして、その議論を更に整理したメモでございますが、それの資料8の1ページの1の「○設置」「確認された点」の下に「*」が打ってございますが、ここにまとめられまして、論点としては、更に設置するということは決めたけれども、その規定形式については、再度議論されることになったという状況でございます。
【木村委員】よろしいですか。その議論の段階は、その時点でお教えいただければと思います。そのことについては、ここで何か発言してもいいですか。ここは事実関係の認定だけですね。
【伊藤座長】あとでお願いします。今は御質問ということで承っておりますから。
ほかに何か御質問ございますか。
【平山委員】どの部分でもいいのですか。
【伊藤座長】小池さんと植村さんの説明に関することであれば。
【平山委員】それでは、確認の意味なのですけれども、これは資料10−3の2ページの(4)でございます。「『最高裁は意見を付さないで白紙の状態で委員会に諮問するということでよい』ことが確認されている」と書かれておりますが、これは要するに白紙の状態であらかじめ何か裁判所の方の考え方などを付さないで、言わば起訴状一本主義的に出すということが一応この委員会では決められたということでよろしいのですか。
【最高裁(小池審議官)】この点は、先ほども私どもの方で申し上げましたレジュメの5ページの「*」の2番目のところでございまして、「最高裁は諮問の際に任官希望者に関する一定の資料を提供するが任官希望者の指名の適否に関する意見を付さないで、言わば白紙の状態で諮問すべきである」ということが確認されている。
【平山委員】言わばというように書いてありますので、資料が付くという意味で言わばとやったのでしょうか。
【最高裁(小池審議官)】言わばというのは、白紙の状態でというのは非常に比喩的な言葉でございまして、意見を付さないということと、言わば同義反復でされているのではないかなということです。
【平山委員】わかりました。
【中川委員】審議会の趣旨は、裁判官の任命にできるだけ国民の意思を反映させて透明性を出すのだと言っておりますが、そうだとしますと、選ばれる委員の方がどういう方をイメージされているのかということと、先ほどの問題にまた戻るのですが、要すればネガティブ、この人はだめだという人をピックアップするということには実際はなろうかと思うのですけれども、では、それはどういう人なのだというイメージです。
更にもう一つ細かい話になるのですが、さっき小池審議官が言われた今年は100人が定員です。しかし、150人応募がありました。これは委員の方におっしゃるのですか、おっしゃらないのでしょうか。もしおっしゃるとすれば、これは人間の心の動きですけれども、たくさん落としておこうということにならないとも限らないわけで、その辺はどういうプロセスをお考えなのでしょうか。まだ、ちょっと早いかもしれませんが、教えていただければと思います。
【最高裁(小池審議官)】まず、委員をどういう構成にするかとかいうのは、これから議論されるところですので、そこでの議論を踏まえて考えてまいりたいと思います。
最後の点は、でき上がりました委員会で考えていくことではあると思うのですけれども、要するに、この間の私どもの方の規則制定諮問委員会で議論されましたのは、この諮問委員会としては、裁判官としての適格性があるかどうかということの判断をする。それから、採用するかどうかというところですね。さっきの例でありますと、120人の方が適と付くと。でも、採用の枠は100というときにどうしていくかというのは、裁判所も1つの組織でございますので、その時点においてその組織の年齢構成とか、こういう事件では刑事の方の人材が欲しいとか、あるいは知財の方の人材が欲しいとか、そういうようなもろもろのファクターで考えていくということになると思います。そこを委員会の方の方々がそういう採用に関わる多元的なファクターを考えて順序づけをされるとか、それはなかなか実際難しいのかもしれません。そうであるとすると、適否というところの御判断をいただいて、その理由の中で、これはどんなのが付くのかわかりませんが、この人は非常に将来性があるのではないかなとか、そういうものは付くのかもしれませんが、そういった理由の中で述べられたことを、また、考えていくことになるのかと。ここからは委員会というよりも、担当しているセクションでの議論としては、そういうものはこれから委員会が立ち上がったときに、どういう運用をしていくのかということは、立ち上がってから考えるべき問題ではないかと考えている次第でございます。
【伊藤座長】よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。
【平山委員】資料10−3の所掌事務等の中の(3)の質問の仕方なのですけれども、大方の意見はどうかというまとめになっているのですけれども、これは暫定的にとりまとめが行われたということですね。その暫定的とりまとめはどうかという意味でよろしいのですか。
【植村参事官】暫定的にとりまとめたいという御趣旨そのものが、実は事務局としてはよくわかりませんので、とりあえずこういう書き方をさせていただいたのですが、もしその辺、最高裁の方からこの暫定的にとりまとめたいという御趣旨が何か御説明いただければ、是非、私自身も聞いてみたいという感じがいたしております。
【最高裁(小池審議官)】これは言葉の使い方にもよるのですけれども、こういった制度設計をいたしますときには、一つ一つの論点を確定してまいります。また、全体ができ上がったときに見渡していくということもございます。ただ、ここのところは私どもの理解としては、今後の制度設計の中でいろいろ考えていくということでございます。今、議論されているのは、総論的な議論でございます。それで各論的な議論があって詰めていくわけでございますが、これからの制度設計をしていくに当たっては、ここでの大方の御意見を前提に制度設計をしていくことについて異存はないかという御趣旨だろうと理解はしているところでございます。
【伊藤座長】それでは、やや煩瑣ですけれども、事務局資料10−3のそれぞれについて、御意見を伺いたいと思います。
まず第1の「1 設置」に関することで、こういう委員会を置くことが確認された、この点はどうかということですが、この点について、それ自体は恐らく今までの御意見を承っていますと、御異論がない点かと思いますが、先ほど木村委員がおっしゃった点、もし、よろしければどうぞお願いします。
【木村委員】先ほど御配布いただきました最高裁からの資料の4の続きでございますが、5ページも御指摘していただきましたが、真ん中のところで、実務家の感覚としては、司法の自律性を考えた場合、最高裁判所規則で定めるのが妥当であるということで、これは恐らく憲法77条ということになるかと思うのです。その後の御発言も、司法権の独立ということになってくるわけですが、その次に出てきて、なぜ下級裁判官を指名する過程に国民の意思を反映させるかといったことを議論した上でまた戻ったらということになっていますが、これにつきましては、本日御配布いただきました資料10−3の3ページの下の方に、非常にはっきりと審議会の意見を含めて、国民の裁判官に対する信頼度を高める観点から、こういうものが必要である。最高裁判所にその諮問を受け、指名されるべき適任者を選考し云々ということが書いてあるわけです。私はこれは基本的には実務家の感覚として、恐らくそうなるかもしれないと思うのですが、国民の方から見ますと、これだけの大きな改革の流れの中で、法律できちんとした形でこういうシステムを作るということをはっきりと表明した方が、最高裁判所にとっても非常にふさわしい在り方に沿った形になるのではないかと考えましたものですから、その点についてお伺いしたわけなのです。小池審議官のお考えでは、例えば最高裁判所の規則制定権で行った場合と、新たに法律を作って新しい機関の設置を行った場合とで、私が考えると、中身についてはそう変わらないかと思うのですが、その点は大分変わってくるとお考えですか。それとも、司法の独立権が侵害されるとお考えになるのか。その点はいかがですか。
【最高裁(小池審議官)】ここは御議論いただければと思うのですが、ここで関係機関としてそこについての御意見を申し上げるというよりは、御議論いただければと思います。
【伊藤座長】わかりました。それでは、そういう御意見を承って、また、これから議論をされるということですから、ただいまの木村委員の御発言も参考にしていただければと存じます。
それでは、「1 設置」自体についてはよろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
【伊藤座長】それから、次の「2 所掌事務等」の(1)は、適否を審議し、最高裁に意見を述べる。意見を述べるに当たっては、その理由を付することができると。こういったことが主たることかと思いますが、この点について何か御意見ございますか。
【田中委員】適否どちらでも理由を付すことができるとなっているわけですが、最高裁の資料1で司法制度改革審議会意見書の最後の方ですけれども、「同裁判所は、同機関による選考の結果、適任とされた者を指名しない場合にその者から請求を受けたときは、指名しない理由を本人に対して開示するものとする。また、同機関による選考の結果、適任とされなかった者に対して説明責任を果たすための適切な措置についても検討する必要がある」とされていることを考えると、適しないという意見を述べるときには、必ず理由を付すか何かしないことには説明責任を果たすことにならないのではないかという感じがちょっとするのです。この辺り、今から詰められることだと思うのですが、適切な措置との関連で適切だということについては、意見を付さなくてもいいかもしれないけれども、不適だと言った場合には、意見がないとその後のプロセス全体から見て具合が悪いのではないかと思うのです。この点はこれからの検討の事項かもわからないのですけれども、意見として。
【伊藤座長】もし何か検討がされたような部分がございましたら。
【最高裁(小池審議官)】ここのところはこれからの議論でございますが、御参考に、資料8の3ページをごらんいただきたいのですが、所掌事務に関連する事項というところがございます。このときには、委員会が指名を受けようとする者を適任としなかったときには、その者には何らかの形で通知をすべきか、これは本人の通知ですが、最高裁は指名の結果について、委員会に通知することとしてはどうか。どのような場合に通知することとすべきか。例えば、任官希望者を指名しなかったときはどうか。指名の結果のほか、その理由も併せて通知することはどうか、こういう論点がございまして、関連する意見の要旨というところで1つ意見を引用しております。
これは今、田中委員から御指摘があったような認識に立った御意見だろうと思います。ただ、意見を付さなければならないとしますと、常に付すということになりますが、付すことができるという形の規定にして、その運用はどうするかというのは、この間の議論では所掌事務に関連すべき事項というところと相関性を持った御議論があったように思います。
【伊藤座長】この点は田中委員の御指摘について、検討いただくということでよろしいですね。
それでは、2の(1)についても御了承いただいたということでよろしいでしょうか。引き続きまして、2の(2)、選考基準等の一般的事項についての審議をするとか、結果に基づき最高裁判所に意見を述べることが確認されたということですが、この点についても格別の御意見ございませんか。
それでは、御了承いただいたものといたします。
次に(3)ですけれども、推薦機能を持たせるべきだということについては、これも先ほど来、小池さんや植村さんから説明がございましたけれども、委員長が、大方の意見はこういうことであって、希望者全員を諮問するのであれば、実質的に推薦機能ということで言うかどうかは別として、実質的な意見の相違はないという暫定的なとりまとめがあったということですけれども、この点については、いかがでしょうか。まさに暫定的なとりまとめとして、こういう形でのまとめが行われたということは御了承いただけますか。
【松尾委員】第1点の最高裁なのか委員会なのかという意見があったようですけれども、確かに委員会に持ち込むということも、この制度を作ろうとする考え方から言えばあり得ると思います。しかし、私は指名権を持つ最高裁に対して申し込みをするというのは筋論であろうと思いますし、そのことと、申込者、希望者、全員について諮問に付するということが前提になるとするならば、あえて推薦ということは必要ないのではないかということで、この確認事項については賛成しております。
【伊藤座長】どうもありがとうございました。そういうことで、この点も了承したということにさせていただければと存じます。
引き続きまして、2の(4)の点でございますが、「最高裁は意見を付さないで白紙の状態で委員会に諮問する」という白紙という表現については、先ほど来、意見の交換、説明がございましたが、それを踏まえて、これもこういうことでよろしゅうございましょうか。
【田中委員】白紙の状態という表現はやめた方がいいと思うのです。要するに、意見を付さないで一定の資料をフォーマットか何か作って出して、審査するときに、この人についてはこういう資料をもう少し欲しいという形で出していただいて審査すると理解してもよろしいわけですね。
【最高裁(小池審議官)】ここは白紙の状態というのは、比喩的な表現でございまして、これはもう一度委員会の中でも議論する必要があるのかもしれません。大方の方は意見を付さないで、イコール白紙の状態という同義反復ととらえておられるのかもしれませんけれども、ただ、白紙の状態でというのが、先ほど佐々木委員の御質問にも関連するのですが、実質的に、言わばコントラバーシャルなものをやるのか。それとも、1からすべてのものを委員会でやるのか。先ほど起訴状一本主義というお話がありましたが、そういうことなのかというところも受け取りがあるようでございまして、ここはむしろ審議の方法をどうすべきかというところで、改めて確認すべき事柄なのかもしれません。
【中川委員】それに関連するのですけれども、面接という方法、委員が判断に迷うときに、本人の話を一遍聞いてみたいなということもあろうかと思うのです。要するに、ディスカッションするプロセスの1つとして、本人面接ということも是非加えていただいたらという感じがいたします。
【松尾委員】白紙の状態のところの関係なのですが、実際のやり方とすれば、申込者、希望者の本人であるという名簿と、いわゆる基礎資料、この2つの提出で諮問するという形になりそうですか。
【最高裁(小池審議官)】そこは更に審議の方法というのは、今後検討していくということになると思いますが、先日の段階では、一定の資料でという議論でございましたので、田中委員からおっしゃられたようなイメージでのとりまとめということと思います。
【松尾委員】要するに、委員会に先入観を持たせるような資料は出さないということでしょう。
【最高裁(小池審議官)】そういうことです。
【岡田委員】ここで申し上げていいかどうかわからないのですが、資料5の5ページから判断資料について、外部の資料が随分議論されているのですけれども、ここの部分に関しては、前の評価制度のところも、やはり外部の声ということは皆さん申し上げ、私もそう思うので、この議論に関しては是非とも力を入れていただきたいなというお願いなのです。
【伊藤座長】何か小池さんございますか。
【最高裁(小池審議官)】この間どういう資料にするかということと、審議の方法というのは密接に関係しますので、御議論がございました。私どもとしましては、恒常的に裁判官についてどういう資料に基づき人事評価していくかという問題は、前にここで御説明しました人事評価の在り方というところの検討でございましょうし、それから、今回、規則制定諮問委員会で行っていますのは、任命手続において、どういう形で審議するかという枠組みの問題でございますので、一応別個の問題と考えております。
ただ、次回の一般規則制定諮問委員会では、やはり議論を進めていく上で、人事評価の在り方についての研究会の報告が出ましたので、そこでどういう報告がなされているかということは、若干御説明した上で、更に審議を進めていくという手はずを考えております。
【伊藤座長】それでは、(4)についても、こういうことで御了解いただいたといたしまして、(5)でございますが、これは先ほど来、御説明がございましたが、任官希望者が採用可能数を上回る場合にはどういう答申をすべきかと。適否の答申にとどめるのか、段階的な評価などを付するのかという問題に関しまして、委員長のとりまとめとして、委員会が適否のみの答申にとどめ、あとは最高裁を信頼して任せる。しかし、重要なことはここに書いてあるように、委員会にフィードバックする方法を確立することにより、透明性を確保するというとりまとめの発言が行われて、委員が異議なく了解しているということでございますが、この点もよろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」との声あり。)
それでは、第1の2の(5)については、御了承いただいたということにいたします。
次に「第2 下部組織の設置について」の1でございますが、これも委員会に下部組織を設置するということが確認されておりますけれども、この点も御了承いただけますでしょうか。
(「はい」との声あり。)
それでは、大変丁寧に意見交換をしていただきましたが、全体をまとめますと「検討のたたき台(案)その1」にある各事項については、当検討会におきましても、格別の異論がなかったということでまとめさせていただきます。
【平山委員】さっきの岡田委員の発言とも関連がございますが、この前にここで研究会の報告がございましたね。あれのその後の扱いというのがよくわからない。つまり、一般規則制定諮問委員会との関係、それから我々との関係、それから最高裁での今の進捗状況が少しわかりませんので、あの問題は国民的な関心のあることですから、十分御説明を、どの時点かできちっとしてただかないと、納得がいかないと思いますので、よろしくお願いします。
【伊藤座長】それはそういうことになると思います。
それでは、この問題につきまして、最高裁の一般規則制定諮問委員会の次回の会合が10月22日に予定されていると伺っております。当検討会といたしましては、11月12日に予定しております第12回検討会におきまして、今回に引き続いて最高裁の検討状況を説明していただきまして、質疑応答及び意見交換を続けたいと考えております。
次に、関係機関タイムでございますが、前回木村委員から日弁連に対しまして、倫理研修についての資料の提出をして欲しいというお話がございまして、その関係で日弁連から説明をお願いをいたします。
【日弁連(川中副会長)】お疲れのところ申し訳ございません。「司法修習期間中の倫理研修について」というA4、1枚のペーパーを出しておりますが、これに基づいて若干、御説明申し上げたいと思います。
前期修習と後期修習というのは、研修所に全部の修習生が集合しまして行う、いわゆる集合研修のことでございますが、現在は前期3か月でありますが、そこで10時間の倫理の講義がある。後期3か月で5時間の講義があるということでございます。実務修習期間の中で弁護士修習に当てられる期間というのは3か月でございますが、これは東京弁護士会の司法修習委員会が行っている修習講義の内容でございますが、5時間の座学で弁護士倫理の問題を講義するということでございます。
今日の関係機関タイムで述べさせていただきたいということをお願いしておりましたのは、個別修習3か月間で実務に即した指導が同時になされるという説明をしておりますが、この点について、若干御説明を申し上げないと、御理解いただけないことがあろうかと思いまして、この点について若干御説明申し上げたいと思います。
弁護士倫理は弁護士のもろもろの活動に即して決められているものですから、弁護士の行動をつぶさに見聞して、その中で個別ケースごとに学んでいくのが最も実戦的だし効果的だろうと思います。その点、弁護研修というのは、原則マン・ツー・マンで3か月間、朝から夕方までべったりと指導弁護士について回って、指導弁護士が行う法律相談、あるいは依頼者との打ち合わせ、それから裁判所に行って証人調べをしたり、和解交渉をしたりという場面も全部立ち会う。あるいは、警察署の留置所に行ったり、拘置所に行ったりして、被疑者や被告人と面会する場にも立ち会うということで実際に指導を受けるわけですが、その中で指導弁護士の方が具体的に注意をしておいた方がいいと思うようなことについては、その場で個別に修習生に指導をする。あるいは修習生の方から、この点はどういうことかというようなことがあれば、その場で質問をして、その場で指導弁護士の方が答えるということでやっておりまして、実際に弁護士の心得、あるいは縁、倫理というものを体得していくというのは、この個別修習の中で実り多いものとして、学んでいくのではないかと思います。
私事を申し上げて恐縮でございますが、私はもう35年前に司法研修をやった者でございますけれども、今でもそのときの指導弁護士から教えられた言葉というのは、覚えております。それくらい強烈な印象を持った指導が行われるということでございますので、木村先生が前回に問題にされた、誠に適切な御指摘でございますが、司法試験を受かって司法修習を経ない人たちに対する修習代替の措置を、弁護研修をやるということについてとりまとめが行われておりますけれども、その期間が余り短いと、この倫理研修というか、個別指導も十分にできないということが実際問題としてありますので、その点は、是非ともこれからの期間の問題等についてよろしくお願いをしたいと思います。簡単ですが。
【木村委員】今、詳しく御説明していただきましたが、司法修習期間中の倫理研修ということで、今日は資料をきちんと作っていただいて、大変詳しく御説明していただきましたが、前回の第9回の私の発言の趣旨は、日弁連の方から、できましたら資料としてどのような弁護士倫理にのっとって、どういう研修をしているか、弁護士会の雑誌の後ろの方にも研修の内容について書いてございますが、一応検討会に御提出いただきたいということで、司法修習期間中の倫理研修ということよりも、実際に弁護士会の中で個別に、継続教育の一環として、どのような倫理教育を行っていて、それが例えば企業の方で法曹資格を得た方がそういう中にきちんと入ってやれるかどうかという資料の提出、御説明を求めたわけでありまして、司法研修の中での、言わば倫理教育の資料という意味では、前回の私の発言ではなかったのですが。
【日弁連(川中副会長)】そういうことでございますか。それは私ども勘違いをしていたのかもしれませんが、私の方は修習代替措置でございますので、司法修習生にはこれだけの倫理研修を行っているのですよ、ですから、司法試験を受かって企業法務等に従事した人たちが、弁護士資格を取るについては、司法修習生に行っている、このくらいの倫理研修は行う期間は保証してもらわないといけないという観点から、この資料を出しましたので、二度手間で申し訳ございませんが、次回には木村先生の質問に端的に答える資料を作成して提出したいと思います。
【伊藤座長】もちろん、今日御説明いただいた内容、これはこれで大変有益なものでございますので、なお、私が聞いている限りでも、いろいろな研修をやっておられるようでございますので、それについて補充をしていただければ大変ありがたいと思います。どうもありがとうございました。
それでは、期日の追加につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
【植村参事官】委員の皆様には大変お忙しい中、誠に恐縮でございますが、前回御了解をいただきました進行の枠組み案、これをごらんいただきますと、9月から12月までの第2期には、裁判官制度問題を中心として議論していただかなければならない案件が数多くございます。そこで、誠に申し訳ないのですが、皆様方の御都合を先んじてお尋ねをいたしまして、11月28日でございますが、午後1時30分から4時30分まで、期日の追加をお願いすることといたしました。よろしくお願いをいたします。
【伊藤座長】それでは、大変御多忙のところを恐縮でございますけれども、そのように御協力いただければと存じます。
【奥野委員】ややこの会、議事の進行にものすごく丁寧であることは大変結構だと思うのですが、少し時間を私の常識から言うと取り過ぎという気がいたしまして、回をどんどん付け加えられるのは少し控えていただきたい。むしろ時間も、最初は3時間程度で終わるはずだったと思うのですが、もう少し効率的に、要らないものは委員の希望があっても切るとか、座長が御苦労されているのはよくわかりますので、余り無理にとは申しませんが、是非そこそこにしていただければと存じます。
【木村委員】私は今の御見解には必ずしも賛成できないのです。やはり座長が大変に御配慮していただいて、例えば今日みたいな資料につきましても、これは司法の在り方をこれから考えていく上で非常に重要な問題提起をしていただいて、資料も提出していただいたわけですので、ある程度我々委員は国民の一人として、責任を持った参加をしていきたいという観点から、必ずしも私は奥野委員の意見には賛成できないということははっきりさせておきたいと思います。
【伊藤座長】皆様方の御協力を得て、充実した審議を適切な時間内でできるように、事務当局にも準備をお願いしたいと思います。どうもありがとうございます。
それでは、予定した時刻がまいりましたので、この辺りで本日の議事は終了したいと思います。次回は10月31日、午前10時から、最高裁裁判官の選任の在り方につきまして、最高裁裁判官の地位の重要性に配慮しつつ、その選任過程について透明性、客観性を確保するための適切な措置の検討に関しまして、これにつきましては、釜田委員にキャップになっていただきまして、調査グループを作り、外国の制度についての調査を進めてまいりました。検討会委員以外のメンバーの方にも、次回については御出席をいただいて、報告を伺いたいと思います。また、事務局から、これまで我が国にかつて存在した制度につきましても、説明をしてもらうことになっております。
本日の検討会の模様につきましては、終了後、私から例によりまして、報道関係の方に対して御説明をいします。どうも長時間ありがとうございました。