① 最高裁からの説明
最高裁配布資料「裁判官の任命手続の見直しに関する検討状況について その2」及び「最高裁判所一般規則制定諮問委員会関係資料」に基づいて説明がなされた。
② 事務局からの説明
事務局配付資料12−1「裁判官の任命手続の見直し 検討のたたき台(案)その2」及び資料12−2「最高裁判所一般規則制定諮問委員会議事概要(第3回)」について説明がなされた。
③ ①、②の説明に対して、次のような質疑応答・意見交換がなされた。(○:委員、●:事務局、□:日弁連、■:座長、△最高裁。以下、同じ。)
○:最高裁判所一般規則制定諮問委員会(以下、「諮問委員会」という。)では、最高裁に設置することとしている下級裁裁判官の指名過程に関与する委員会(以下、「委員会」という。)の下部組織に審査機能を持たせることとして議論されているか。
△:その点は、次回の諮問委員会で議論されていくことになると思う。委員会制度全体というものをどのように考えるか、国民の意思の反映についても対象となる事柄(裁判員制度、裁判官の任命等)によって発現形態もいろいろな捉え方があると思われるので、そのような観点からも考えるべき問題であると考える。
○:委員会は審査の際に必ず下部組織の意見を聞くのか。それとも必要な場合に聞くのか。
△:次回の諮問委員会で議論いただくことになると思われる。
○:各高等裁判所管内を下部組織の設置単位とすることは当然なのであろうが、違う発想からの意見はなかったか。
△:第1回諮問委員会で、高裁単位が良いのではないかとの意見が出され、他の意見はなかった。
○:以前の説明で、裁判官の給源には3ルートあるとのことであったが、それぞれ大体どれくらいの人数になるのか。東京高裁や大阪高裁管内は人数が多いとのことであったが、分布はどのようになっているのか。裁判官は転勤が多いと思うが、人事情報はどこに蓄積されてどこから収集できるのか。
△:年によって変動はするが、採用・再任者数は全体で年に約300名である。判事補から任用するケースが最近は100人前後、弁護士からの任官は年に数名となっており、全体からこれらを除いた人数が判事からの再任者数となる。裁判官の人数の分布は東京高裁と大阪高裁管内で全体の約半分になると思う。弁護士からの任官は、東京、大阪等しか例はないと思う。毎年行っている裁判官の人事評価に関する資料は最高裁及び所属している高等裁判所にある。基本的には最高裁に集約されている。
●:裁判官の採用・再任者数については、第10回検討会で配布された最高裁判所一般規則制定諮問委員会関係資料の資料14によると、平成13年度については、司法修習生からの判事補任命が114名、弁護士からの判事補・判事任命が6名、判事再任が160名、その他(出向からの復帰)が判事補・判事を含め45名で、計325名となっている。参考までに、簡裁判事については、任命が72名、再任が30名、計102名となっている。
[簡易裁判所判事を審議の対象とすべき裁判官の範囲とするかについて]
○:簡裁判事はどのようにして選ばれるのか。
△:(簡裁判事の職務について説明後、最高裁判所配布資料22「簡易裁判所判事の選考手続について」に基づき説明。)
○:諮問委員会の議事概要を見ると、簡易裁判所判事選考委員会(以下、「簡判選考委員会」という。)の委員構成や選考の在り方を、新しくできる委員会の形に近づける方向での条件が入っているが、諮問委員会ではどのような手法を取ってまとめるのか。
△:今後、諮問委員会で議論いただくことになる。
○:簡易裁判所判事選考規則(以下、「選考規則」という。)第5条に、「簡易裁判所判事推薦委員会が推薦した者以外の者の中から、簡易裁判所判事の候補者を選考することができる」とあるが、具体的にこのようなケースはあるのか。
△:例えば、高等裁判所の民事の首席書記官等、約30年にわたって書記官をしている者については、簡易裁判所判事推薦委員会(以下、「簡判推薦委員会」という。)の推薦によらず、簡判選考委員会で直接審査をするという形がある。このような者も選考委員会では裁判官としての適格性を見ることになる。
○:実際にはどのような者が簡裁判事になっているのか。簡判選考委員会を委員会に近づけるということであるが、それは精神論としてのものか、簡判選考委員会の委員に外部委員を入れるなど仕組みとして考えていくということか。
△:簡裁判事に任命される者は、割合的には裁判所書記官が多いが、行政官や検察関係者からも簡裁判事になっている。簡判選考委員会は、簡裁判事の資格を付与するものであり、かつ裁判官としての適否を判断する側面も持っている。簡判選考委員会の改革をどのように進めていくかということについては、この2つのことを考える必要がある。簡裁判事として裁判事務を担当するのにふさわしい知識・経験を持っているかどうかの判断は、やはり法律専門家がしなければならないという問題が一つある。他方、簡裁判事は国民に身近で接する機会が多いということもある。仕組み自体を改めることと共に、委員の学識経験者枠にどのような方に入っていただくかという運用の問題も検討していくべき課題であると考えている。
○:簡判推薦委員会は選考規則第17条の委員で組織されているが、全員面接をして、書類で経歴や上司の意見を踏まえて検討し、現実に推薦しないということが何名もある。簡判推薦委員会は、コントラバーシャルな内容については、実質的にかなり審議をしていると思う。
■:簡裁判事を審議対象から外すという考え方そのものについては了承ということでよいか。
○:異議なし。
[最高裁の委員会に対する説明責任の果たし方、委員会の任官希望者に対する説明責任の果たし方について]
○:諮問委員会では、本人から委員会に説明を求められた場合の対応は委員会の裁量で対処していけばよい問題であることとしてよいかということで、異議なく了解されたということであるが、どのような経過でこのような取りまとめとなったのか。
△:最高裁から諮問を受け、適否について意見を述べるといういわば一連の指名プロセスの中間的存在である委員会が独自に任官希望者に理由を述べたり結果を通知するのはどうか、という意見や、委員会の意見について最高裁が答えるのであれば、委員会でのプロセスの透明性を確保することは可能であるという意見があった。他方、折角の委員会であるから本人に直接結果を知らせた方がいいという意見もあったが、前者の意見が多くこのような取りまとめとなった。
○:委員会の役割は諮問に答えることであり、説明責任は最高裁にあると考える。本人から委員会に説明を求められた場合の対応は、委員会の裁量で対処すると取りまとめに書いてあるが、必要ないくらいであると考えている。シンプルに考えて、説明責任を一本化した方が透明化が図られると考える。
■:委員会の任官希望者に対する説明責任の果たし方等については、諮問委員会の取りまとめでよいか。
○:異議なし。
[委員会の構成、委員の選任方法について]
○:学識経験者の中には報道関係の人も入るのか。
△:範囲としては当然に入っているものと考える。
■:委員数は10人前後で、内訳は、少なくとも、裁判官、検察官及び弁護士の法曹関係者と学識経験者とし、委員の選任方法は最高裁が任命すべきであるとの諮問委員会での取りまとめでよいか。
○:異議なし。
[委員会の権限について]
■:委員会に対して、任官希望者の面接、関係者からの意見聴取、関係機関への資料提供、意見照会等の必要な協力を依頼する権限を付与するとの諮問委員会での取りまとめでよいか。
○:異議なし。
[下部組織の権能等について]
○:委員会と下部組織では、それぞれどのような資料が出てくることになるのか。
△:裁判官にふさわしい者をどのように選んでいくかということ、新しい制度がきちんと機能していくようにすることの2つの要請を考えていく必要がある。司法修習生については、研修所の成績が中心になるので、下部組織から資料が出ることは通常考えられない。弁護士からの任官については、最高裁に資料はないので、地域の情報が重視されるであろう。裁判官を10年間やってきた者については、人事評価の関係で外部評価をどのように取り入れていくのか、それをどのように蓄積していくのかということに関わってくる。この問題は、新しい委員会の最初にしなくてはならない仕事となると思われる。
○:下部組織を置くことのメリットはどのようなものか。
△:どのような設計にしていくかは検討中である。諮問委員会で了承された部分で言えば、重要な案件について、事実に近いところで、資料を収集し、情報を提供し、参考となる意見を述べるということであるから、重要な機能を果たすことになる、と言えると思われる。
○:委員会と下部組織の権限を明らかにしておく必要があると考える。下部組織はどの程度まで必要な参考意見を述べられるのか。
△:次回の諮問委員会の重要なテーマとして議論する予定である。
○:100名の再任があるとして、委員会で振り分けをして、問題がある者だけを下部機関に下ろすということではその下ろされた本人にとってちょっと問題だと思うので、逆に振り分けをしないで全員を下ろした方がいいのではないかという気もする。
△:そのような意見もあり、逆の意見もあったということである。
■:下部組織の権能について、本日示された部分には異論はないと思われる。具体的な制度設計については次回の諮問委員会で検討されるということであるので、本日の当検討会で出た意見を持ち帰ってもらって、今後検討を進めてもらうということでよいか。
○:異議なし。
[下部組織の設置単位、人数等について]
○:下部組織の人数については5人前後ということであるが、委員会に合わせて10人くらいにした方がいいのではないか。
△:管内の大きさや下部組織の持つ権能との関係でこのような取りまとめがなされている。人数はどのくらいの規模がよいかということも、ある程度プラクティカルに考えていくことになると思う。
○:東京高裁管内の下部組織の委員数については5人前後では少ないと思う。実情に合わせた人数構成にすべきである。委員には、民事事件担当の裁判官と刑事事件担当の裁判官は入っていた方がいいと思う。
○:下部組織を高裁単位で8ブロックにすることは当然だと思うが、委員数については、東京・大阪は、5人くらいでは負担が大きいと思う。
○:下部組織の説明責任については議論されているか。
△:今のところ議論はない。
○:全体に関係することであるが、これまで出た問題点を解決するために、諮問の仕方、委員会と下部組織との関係を考えて工夫して検討を進めて欲しい。
○:下部組織は現場と言い替えると考えやすい。確かに現場は中央で持っている情報と違う情報を持っているかもしれない。最終決定は中央がするが、情報の価値としては、中央も現場も差がないと考えた方がいいのであろう。
■:下部組織の設置単位、人数等については了承されたということでよいか。
○:異議なし。
■:「裁判官の任命手続の見直し 検討のたたき台(案)その2」にある各事項については、当検討会においても異論がなかったと伺っておく。
次のような質疑応答・意見交換がなされた。
○:前回、最高裁を設置するときの諮問委員会について、また、昭和30年代の最高裁の機構改革(いわゆる二階建て案)についての話も出たが、その後、昭和50年代にも同じような議論があり、当時の社会党が出した案があると記憶しているが、これから議論する上では、廃止になった諮問委員会の話よりは参考になると思うが、これに関する資料は事務局では集めているのか。
●:(事務局参考配布資料「過去に提出された最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案の概略」に基づき説明)
○:このときの提案理由はどのようなものか。
●:一言で言うと、最高裁判事の任命は非常に重要な問題で、そこに民主的な要素を入れるという観点から提出する法案であるという位置付けだったと理解している。
○:昭和32年当時最高裁判所の機構改革の提案があったということであるが、そのような方向性を考えていく必要があるのではないか。
●:前回、時間の関係で、昭和32年当時の部分は簡単にしか説明できなかったので、補足説明をさせていただく。事務局配布資料11−3「第36回司法制度改革審議会文書3「裁判官任命諮問委員会について(審議会事務局)」にあるとおり、昭和32年の法案提出に至る過程で問題とされたのは、最高裁発足後の未済事件の急増にどのように対処するのか、という点であった。この問題に対処するため、法制審議会に対する諮問があり、その答申の中に最高裁判所の機構改革が盛り込まれた。しかしながら、事務局参考配布資料「民事事件・刑事事件未済件数の推移−最高裁判所」にあるとおり、昭和26年をピークとして未済事件は減少傾向となり、法案が提出された昭和32年頃には、ピーク時の半数くらいの未済事件となった。法案はいったん継続審査とされたものの、その後、機構改革の必要性がなくなり、廃案になったものと推測している。
■:事務局から現在の最高裁裁判官任命の運用についての説明をしてもらいたいと思う。
●:内閣官房が本年6月から採用した運用について説明させていただく。(事務局配布資料12−4「司法制度改革推進本部顧問会議(第5回)議事録抜粋」及び資料12−5「最高裁裁判官の任命について(司法制度改革推進本部顧問会議(第5回)資料)」に基づき説明)
○:本年6月からということであるが、顧問会議にこの資料が出てきたのはどのような経緯からか。
●:内閣官房から説明があったのは第5回顧問会議であるが、それに先立つ顧問会議で、顧問から意見書にある最高裁裁判官の選任の部分の検討を早くやるようにとの発言があり、それに対して、事務局から、この問題については、運用面の問題と法制面の問題の両面があるという説明をした。法制面の問題については、問題自体が非常に重く、外国がどうなっているかなども十分調べた上で検討したいという話をし、その結果、今、まさに検討の時期を迎えている。運用面については、内閣官房に検討をお願いすることとなった。その結果、第5回の顧問会議で説明された新たな運用措置ということになる。
○:平成10年に施行された新民事訴訟法は、最高裁の機能として憲法解釈や法令解釈に重点を置くということが大きな目的になったと認識している。今後、いわゆる大法廷の案件は増える可能性があるのか。新民事訴訟の効果として、一般の事件は減っていくのか。
△:概略を話すと、平成12年度の最高裁の新規の受理件数が約6,400件、うち民事事件が約4,500件、刑事事件が約1,900件。昭和40年で民事が1,947件、刑事が1,836件という数字が出ている。刑事の方はほぼ同じ水準ということで、民事の方が1,947件 から4,500件と倍増以上しているように見える。民事訴訟法の改正によって、上告制度が変わり、「上告」というものと「上告受理」という2つの制度ができた。上告は、憲法違反や法律に従って判決裁判所を構成しなかった等の法律違反があった場合になされるもので、概ね4,500件のうちの半分程度がそのような上告というものである。残りの半分が上告受理ということで、判例の解釈に誤りがある場合や、法令の判例違反というものである。上告受理は、上告審が裁量により受理できる制度で、決定という比較的簡易な方法で受理・不受理を判断でできることになる。大法廷の判断のところは、これは回付という手続があり、個々の裁判の問題になるので、見通しを述べることは難しい。
○:この問題については、最高裁の裁判官がどのように候補者として選考され、最終的に任命されるかという仕組みと流れが、一般の国民には非常に見えにくい状況になっているところが問題だと思う。そこで意見書は、透明化をすべきであると提言していると思う。改革審の意見書を素直に見ると、機構改革も頭に入れて透明化を図れと言っているのかはっきりしないが、単純に読む限り、運用面の透明化を図れという趣旨だと思う。そうすると、検討会では、あくまでもその範囲で限定的に検討するだけに終わるのではないか。個人的には、機構改革を含めた大きなとらえ方をすべきではないかと思うが、それは、政治に関わる大きな問題だと思う。個人的な気持ちとすれば、そこまで大きく広げて司法制度改革の実を求めていくべきではないかと思うが、改革審の意見書にはそこまでやるように書かれているわけではない気も一面ではあるので、どうすべきか迷っている。
○:最高裁の役割は極めて重要であり、それにもかかわらず、きちんとした形で必ずしも機能していないのではないかという危惧を持ち続けている。例えば、いわゆる投票の価値の平等の問題である。それにもかかわらず、選任手続も不透明であるし、国民審査の制度もきちんと機能していない。そのような意味で、選任手続の透明性ということも大事だが、それと同時に、最高裁の制度自体をもう少しうまく機能するような形にしないと、選任制度だけをいじっても、問題としては解決しないのではないか。意見書にはそこまで書き込まれていないという問題があるが、それに関しては次のように理解している。当検討会で、最高裁判所の制度、国民審査の制度を変える方向性を出すことは審議会も期待していないし国民も期待していないと思う。したがって、我々が最初に直接的に議論すべき問題は選任の制度の在り方であろうが、それ以外の関連する機構の問題、国民審査の問題についても、問題点を指摘するということはできるのではないか。
○:最高裁裁判所の、活力が少しなくなっているのではないかと感じる。そういう意味では、当検討会での議論ではないと思うが、最高裁の在り方をしかるべきところできちんと議論するのは非常に意味がある思う。今日の議論に限って言えば、プロセスを透明化するという問題ではなく、最高裁裁判官として選ばれた人の顔が見えず、本当に国民の最高の判断者として、その人たちを信頼していいのかの判断ができないという点がむしろ問題なのではないかと思っている。それをどう工夫したらいいかということのような感じがする。
○:最高裁裁判官の任命の際の内閣からの説明は新聞等では見ているが、具体的にはどういう点を説明されているのか。
●:事務局で資料を用意したのでご覧いただきたい。(事務局参考配布資料「最高裁裁判官の人事(閣議決定)に関する内閣官房長官の記者会見要旨」に基づき説明)
○:国民審査の問題は次回あたり取り上げるのか。
●:前回、調査グループから、事後的なものであるが、世界的にもまれな、非常に客観的・透明な制度として国民審査制度というものがあるという話もあった。このテーマは、近接して検討していただいた方がよいと思っており、次回11月28日には冒頭、国民審査の関係で検討をお願いしたいと思っている。具体的には、総務省の担当者から、対象となる裁判官の情報開示について説明を受ける予定である。また、最高裁でもホームページ等を通じて最高裁判事の紹介をしているので、それについて最高裁からも話を伺って、その後、ご議論をいただきたいと考えている。
○:最高裁の人事の問題は、結局この55年間の日本の最高裁裁判所の業績・足跡がどのように評価されるかによって違ってくると思う。200年来の歴史を持っているアメリカの連邦最高裁と日本と同時期頃からスタートしたドイツの憲法最高裁判所が比較の対象としてあがってくる場合が多い。見落としてはいけない点は、この2つは連邦国家であるということである。アメリカの最高裁は、たくさんの違憲判決を出していると報道されるが、それは州の法律に対する違憲判決が多い。日本の最高裁は55年間に数件しか法令違憲にしたものがない、とよく言われるが、アメリカの最高裁が、制度スタート時から55年程度経過した時点でどのくらい、同レベルの連邦議会の法律を憲法違反としていたかを見ると、60年ぐらいで2件である。したがって、比較の仕方によっては、日本の方が数が多いというような評価も可能である。アメリカの場合は、50州の多様な法律があり、最高裁判所はその統一化を図ろうという姿勢があるので、たくさんの法律を憲法違反にするということもある。単一国家の日本とは状況が違う。EUの裁判所が行う司法審査は全部連邦型のものである。連邦型のものであるから全国統一のルールをつくる、全国統一の憲法規範を宣告するという意味でかなり積極的な活動が目立ってくるのだと思う。単一国家の場合は、英国のように議会との関係が非常に重要になってくる。日本の憲法は議会を国権の最高機関と位置づけているため、日本の最高裁は55年間国会との関係をどのように調整していくかということで自制的であったという見方もできる。定数不均衡の問題は30年来続いているので国民も関心を持っている。30年間の国会との間のやりとりを通じて、衆議院は、国会自身が改正をして2倍以内におさめるという方向に進んだ。1、2年で裁判所が突出して、議会・行政に代わって改革の青写真を引くのがいいのか、あるいは問題を投げ返して、日本は議院内閣制であるから、本来の役割領域である議会が内閣と一緒になって考えて改革する方が、時間はかかっても全体としていいのか、そのあたりも関連していると思う。また、一つの尺度としては、実際に国民審査で罷免された方はいなかったということも客観的に確認できることである。総合的に考える必要がある問題ではないかという印象である。
○:意見書は、制度的な面も含めて、例えば終戦直後の最高裁の任命についての制度などにも触れながらの提言になっていると思うので、この問題は単なる運用ではなく、制度面も考えておくべき時期に来ているのではないかと思う。
○:今の最高裁判事は非常に素晴らしい顔ぶれだと評価している。ただ、たまたま今いい方がおられるということでいいのかということが意見書の趣旨ではないかと思う。機構改革も含めるとなると当検討会でやるのは難しいと思う。我が国の最高裁裁判官に対する国民の信頼については、司法裁判所裁判官としての信頼、つまり憲法裁判だけでなくて一般の事件をやるので、それにはその実務を経験した人が相当数いなけれはいけないという点が国民の信頼の基礎にあると思う。もう一つは、立憲国家であれば、法律は最高裁判所が最終的には作るのだくらいの気概が必要である。そういう意味では、政治的にもかなりきちんとした意見を言える裁判官が必要とされている。制度として見た場合には、国民の2つの信頼を担保する制度を考えていかなければいけないと思う。意見書が求めている議論はきちんとして、できないものはできないということでいいと思うが、きちんとした議論をしておくべきだと思う。日弁連は4人の裁判官を推薦しているが、その際にはどのような方法をとっているのか聞きたい。
□:(日弁連配付資料「日弁連における最高裁判所裁判官候補者候補者推薦方法」等に基づき説明)
○:我々が選挙のときに、「×」をつけるということからすると、最高裁裁判官を私たちから見える形にしていただきたい。
○:最高裁の在り方や機構論を議論すべきだという意見はよくわかるが、当検討会で議論するということについては疑問を持っている。当検討会は、第1回で話があったとおり、意見書を具体化し実行に移していくという役割を担って発足したものである。憲法論まで踏み込んだ機構論、制度論という幅広い、あるいは深い議論をする場として果たして適当かと思うところがある。それにはそれに適する専門家もおり、そういったところで別途議論していただくのがいいのではないのかと思っている。
○:当検討会でどれだけの議論ができるかという問題はあると思う。裁判官の任命過程の透明化ということだけが議論になっている感じだが、適任者を選ぶという話になると、最高裁の位置づけや最高裁の裁判官に対して何を期待するかという選任の基準の問題があると思うので、それと絡ませて議論していかないと、適切な検討はできないのではないか。
○:我々が最終的な結論までは出せないにしても、問題提起だけでもしておくチャンスではないかと思う。
○:当検討会でどこまでやれるかには限界があるような気がする。これは共通した認識だと思うが、この問題は矮小化して考えたくない。最高裁の在り方をこの機会に広く大きくとらえる形で論議したい。ここで結論が出るものではないし、具体的な仕組みでどうすればいいというものは出ないかもしれないが、政治のサイドに反映させるというようなことまで考えていかなくてはいけない問題かと思っている。
■:次回も議論を続けたい。