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法曹制度検討会(第12回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)

1 日時
平成14年11月12日(火)13:30〜17:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 伊藤 眞(座長)、岡田ヒロミ、奥野正寛、小貫芳信、釜田泰介、木村利人、佐々木茂美、田中成明、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)
(説明者) 川中 宏(日本弁護士連合会副会長)
小池 裕(最高裁判所事務総局審議官)
(事務局) 大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、植村稔参事官

4 議題
(1)最高裁に、その諮問を受け、下級裁判所の裁判官として指名されるべき適任者を選考し、その結果を意見として述べる機関を設置するとともに、その機関が十分かつ正確な資料・情報に基づき適任者の選考に関する判断を行い得るように適切な仕組みを整備すること
(2)最高裁裁判官の選任等の在り方について−最高裁裁判官の地位の重要性に配慮しつつ、その選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置
(3)その他

5 配布資料
【事務局配布資料】
[裁判官の任命手続の見直し]
○資料12−1 裁判官の任命手続の見直し 検討のたたき台(案)その2
○資料12−2 最高裁判所一般規則制定諮問委員会議事概要(第3回)

[最高裁裁判官の選任過程について透明性・客観性を確保するための措置]
○資料12−3 最高裁判所裁判官の選任等の在り方についての主なやりとり
○資料12−4 司法制度改革推進本部顧問会議(第5回)議事録抜粋
○資料12−5 最高裁裁判官の任命について(司法制度改革推進本部顧問会議(第5回)資料)
○参考配布 過去に提出された最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案の概略
民事事件・刑事事件未済件数の推移−最高裁判所
最高裁裁判官の人事(閣議決定)に関する内閣官房長官の記者会見要旨

【最高裁配布資料】
[裁判官の任命手続の見直し]
○資料 裁判官の任命手続の見直しに関する検討状況について その2
○資料 最高裁判所一般規則制定諮問委員会関係資料
    ・資料20 最高裁判所一般規則制定諮問委員会議事概要(第3回)
    ・資料21 これまでの議論の整理等に関するメモ・その②(委員会配付資料8)
    ・資料22 簡易裁判所判事の選考手続について(委員会配付資料10)
    ・資料23 裁判官の人事評価制度の検討状況について(委員会配付資料11)

【日弁連配布資料】
○日弁連における最高裁判所裁判官候補者推薦方法
○資料1 日弁連最高裁判所裁判官推薦諮問委員会に関する資料

6 議事

【伊藤座長】所定の時刻になりましたので、第12回法曹制度検討会を開会させていただきます。御多忙の中、お集まりいただきましてありがとうございます。
 それでは、議事に先立ちまして、事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

【植村参事官】それでは、配布資料の確認をさせていただきます。本日、事務局からお配りいたしましたのは資料12−1から12−5まででございます。次第に書いてございますとおり、12−1と12−2が裁判官の任命手続の見直しに関する資料、12−3ないし12−5が最高裁裁判官の選任過程について、透明性・客観性を確保するための措置に関する資料でございます。また、最高裁から、次第に記載しましたとおりの資料の提出がありましたので、御紹介いたします。
 裁判官の任命手続の見直しの関係で配布されました最高裁判所一般規則制定諮問委員会関係資料は資料20〜資料23まででございます。これは前々回、最高裁から配布されました資料に続くものでございます。通し番号をふっております。
 なお、国民から当事務局に寄せられました意見につきましては、既に第3回検討会でお伝えいたしましたとおり、事務局で目録を作成しております。ご希望の委員の方には目録をお渡しし、それを見ていただいた上で必要な部分を閲覧していただくこともできますので、ご希望の方は事務局までお申し出いただきたいと思います。改めてお伝えをしておきます。
 以上でございます。

【伊藤座長】それでは、本日はまず次第にございますとおり、(1)最高裁に、その諮問を受け、下級裁判所の裁判官として指名されるべき適任者を選考し、その結果を意見として述べる機関を設置するとともに、その機関が十分かつ正確な資料・情報に基づき適任者の選考に関する判断を行い得るように適切な仕組みを整備することについての議論をお願いいたします。前々回同様、最高裁における検討が熟してきた事項についての議論をお願いしたいと存じます。引き続きまして、(2)最高裁裁判官の選任等の在り方について−最高裁裁判官の地位の重要性に配慮しつつ、その選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置ということでございますが、これについて議論をお願いしたいと存じます。
 前回、外国の制度につきまして、調査グループからご報告をいただきましたが、それと事務局からの、これまで我が国に存在した制度等についての説明、これを材料にしながら検討をしていただきたいと存じます。
 そこで、早速ですが、まず(1)の議題について議事を進めることにいたします。最高裁から前々回の検討会以降、これまでの「裁判官の任命手続の見直し」に関する一般規則制定諮問委員会における検討状況について説明をしていただきます。
 ところで、一般規則制定諮問委員会の検討状況につきましては、情報公開が行われておりまして、私どもといたしましても、第3回委員会の議事概要までの資料は事前に入手をしております。そこで前々回も同じでございましたが、事務局には、これまで公開された情報、すなわち第3回委員会の議事概要までに基づきまして、最高裁の一般規則制定諮問委員会における検討が熟してきたと考えられる事項を整理した事務局資料12−1を作ってもらいました。前々回同様、最高裁からの説明を伺った後、事務局資料12−1について事務局から説明をしてもらいます。
 それでは、最高裁から前々回の検討会以降、これまでの「裁判官の任命手続の見直し」に関する一般的規則制定諮問委員会における検討状況について説明をお願いしたいと思います。小池審議官どうぞよろしくお願いいたします。

【最高裁(小池審議官)】審議官の小池でございます。よろしくお願いいたします。
 前々回の検討会に引き続きまして、裁判官の任命手続の見直しに関する検討状況について御説明申し上げます。お手元に配布させていただきました資料のレジュメに沿って説明申し上げたいと存じます。
 最高裁の一般規則制定諮問委員会は去る10月22日に行われましたが、前回御報告しました以降の残る論点全体について検討いたしました。各委員から様々な角度から御意見が出されまして、極めて活発な意見交換が行われたわけでございます。
 レジュメの作りについて御説明しますと、最初の1ページにありますイタリックの部分は、前回、当検討会で御説明し御了解をいただいたものでございます。以下、ゴシックの部分が、前回の一般規則制定諮問委員会で確認された事項、「*」が付いておりますのが一般規則制定諮問委員会でなお検討することとされている点、つまり次回に検討するという点でございます。(注)に掲げましたものは、今後、制度運営上留意すべきであるとされた点等を参考のために記載したものでございます。以下、ゴシック体の部分を中心に説明を申し上げます。
 まず1ページの下段の所掌事務等というところに属する事項でございますが、あらかじめ諮問の対象外として定めておくべき類型があるかどうかということが問題になりまして、その類型として簡易裁判所判事、高等裁判所長官、短期間裁判官の身分を離れていた者の3つについて議論いたしました。
 まず、簡易裁判所判事につきましては委員会の審議対象から除外すること、すなわち諮問の対象から除外することでよろしいのではないかということが確認されたわけでございます。その理由として、委員から出されました御意見や御指摘は(注)にも掲げましたとおり、簡易裁判所判事が比較的軽微な事件を扱うという職務の特質性と、簡易裁判所判事選考委員会というものが既にございますが、ここで実質的に裁判官としての適否について審査してございますので、諮問の対象としますと、いわば屋上屋を重ねることになるのではないかというような点が御指摘としてあったわけでございます。
 次の2ページを御覧いただきますと、短期間裁判官の身分を離れていた者が復帰する場合と高裁長官につきましては次回にさらに議論することになりました。短期間身分を離れていた者が復帰する場合につきましては、大方の御意見としては、2年、3年の比較的短い期間であれば原則として諮問の対象から除外する方向でよろしいのではないかという御意見でしたが、そのスタンダードといいますか、基準の定め方をどうするかということにつきまして次回さらに検討しようということになっております。高裁長官につきましては賛否両論がございました。審議対象から除外することに積極の意見の方が多かったと思いますが、さらに次回もう一度検討しようということにされたわけでございます。
 それから、2ページの中ほどでございますが、所掌事務に関連する事項。ここはいわば最高裁判所と委員会との関係で、その判断の情報を最高裁から委員会の方に提供すべきでないかという問題意識に基づくものでございますが、ここにありますように、最高裁はすべての任官希望者の指名結果を委員会に通知すること、最高裁は委員会と最高裁との結論が異なるときにはその理由も付して通知することということが確認されました。最高裁が指名の結果、その理由を委員会に明らかにすることによりまして、指名の判断過程の透明化を図るという点につきましては全く御異論がございませんでした。(注)として掲げましたのは、こういう議論をする前提として、任官希望者に対する説明につきましては、最高裁から指名の結果の通知をするのは当然である。それを前提としております。さらに最高裁が任官希望者を指名しなかった場合には、任官を希望していた人から求めがあれば最高裁はその理由を明らかにすること。こういったことが当然の議論の前提とされていたわけであります。
 それから、少し角度が違うのですが、任官希望者から、指名に関する委員会に説明を求めることができるかどうかということも議論になりました。ただ、これにつきましては、委員会は、その指名の過程において最高裁から諮問を受けて意見を述べる機関でありまして、その見解はいわば中間的なものでございます。そういったことからしますと、委員会が答申の内容を任官を希望する人に対して通知する必要はないのではなかろうか。ただ、運用の問題として、求めてきた場合には、委員会の方で今後対処していけばいい問題で、規定上盛るとかという問題ではないだろうという意見でございました。
 続きまして、2ページの下段の委員会の組織、構成でございます。委員数というところがまず問題になりました。これは委員会が、その適否が特に問題になる人について重点的に審議することを前提に、この数についての議論があったわけでありますが、こういった人事に関する事柄について、実質的に審議ができるという観点から人数を考えますと、10人前後が適当であろうということが確認されたわけであります。(注)にありますように、10人前後ということで、7人、9人、10人、12人と、ほかにも御意見がございましたけれども、こういった御意見が出されました。具体的な人数を何人にするかということについては次回検討する予定でございます。今は10人前後という取りまとめであります。
 委員の構成につきましては、ここにありますように、少なくとも法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)及び学識経験者で構成されるということが確認されました。この法曹三者と学識経験者との委員の構成をどうするかという比率の問題、学識経験者の範囲については、次回さらに検討する予定でございます。ただ、学識経験者というのは、狭い意味で学者ということではなくて、学識を持つ方と様々な御経験を持つ方という広い意味での議論ということが前提になりましたけれども、さらにもう少し議論してみようということになっております。
 それから、委員の選任につきましては、最高裁が任命すべきことということが確認されました。ただ、運用の問題として、最高裁はできるだけいろいろな方面から意見を聴取して適切な選任が行われるように配慮しなければならない、重要な委員でございますので、そういう点は十分配慮した方がよろしいという意見が述べられたということを(注)として掲げた次第であります。
 次に任期、再任、勤務形態という比較的技術的な事柄でございますが、これにつきましては、一般規則制定諮問委員会の方では、俗に起草委員会と呼んでおります準備会の方で原案をつくりまして、その案に基づいて検討したらどうかということになっております。2ページの末尾から3ページにかけまして、委員会の運営方法、権限等という問題がございます。委員会が実質的な審議を行うためにどのような活動を行うかということにつきましては、3ページの上にありますように、委員会に、任官希望者の面接、関係者からの意見聴取、関係機関への資料提供、意見照会等の必要な協力を依頼する権限を付与すべきことということが全く異議なく確認されました。また、この項目の議論におきまして、委員会がどのような審議資料をどうやって集めていくかということについては様々な御意見が出されたわけであります。この議論に関連しまして、最高裁からは、本日の資料23に提示させていただきましたけれども、「裁判官の人事評価制度の検討状況について」というペーパーに基づきまして説明をしたわけであります。すなわち、この委員会でも様々な審議資料を集めることになります。他方で最高裁は人事評価制度を検討しておりまして、いわば恒常的に外部の意見をどう聞くか、考えていくわけでございますので、その両者の関係が問題になるわけでございます。そこで特に評価の基準の検討状況や外部からの評価情報について、どのようにそれを取り入れていくかという検討等につきまして、その検討状況を概略御説明したわけであります。この点につきましては、現在、検討中でございますが、裁判官の人事評価制度に関する検討状況につきましては、ぜひ当検討会においても説明の機会をちょうだいしたいと考えております。できますればなるべく早い段階でそういう機会をいただければと思っております。
 下部組織についてでございますが、これは3ページ上段からでございますが、まず、機能、所掌事務という点につきましては、ここにありますように、下部組織は、任官希望者に関する資料を収集し、委員会に対して情報提供を行うことという点、下部組織は、委員会に対して、必要に応じて参考となる意見を述べることができることという点については異議なく確認されたわけであります。(注)にありますように、下部組織に推薦機能を与えるべきかについても議論がございました。ただ、前回までの議論で、最高裁に置かれる委員会が推薦機能を持たないこと。いわば委員会の方で応募を受け付けて、そこで一次的な推薦をするという機能は持たないとされたことから、下部組織の方が推薦機能を持たないものとすることについて、特に異論はありませんでした。親委員会の方が持たないのに、下部の方が持っているというのはおかしかろうということで、特に御異論はございませんでした。
 なお、以上の点について異論なく確認されたわけでございますが、下部組織がさらなる機能、例えば指名候補者の第一次的審査を行うかどうか等については、次回さらに議論をする予定であります。すなわち中央の委員会で諮問を受けますけれども、むしろ下部組織で一次的にその情報に基づいて適否の判断をするという考え方もあるのではないかという御意見もございますので、そこはさらに議論してみようということでございます。
 それから、3ページ中ほど、下部組織の組織、運営方法、権限等でございますが、ここはまず最初に、設置単位は各高裁管内を1つのブロックとしてそのブロックごとにすること、その形式は委員会形式とすることが確認されました。下部組織の委員数ですが、これは5人前後ということが確認されました。ところでこのように5人前後と取りまとめたわけでございますが、御意見の中には、地域によっては、例えば東京高裁管内ですと大変裁判官数が多いわけでございまして、そういったところには委員数もそれに応じて多くなってよいのではないかという御意見。あるいは、今、申し上げましたように、下部組織がさらなる機能を持つかどうかということはまだ議論すべき課題となっていますので、その結果によってはこの数の変動ということもあり得るのではないか。そういう意味で少し留保といいますか、暫定的要素の残った5人前後という取りまとめであるということを申し上げておきたいと存じます。それから、下部組織の委員の構成は、少なくとも法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)及び学識経験者で構成すること。委員は、最高裁が任命することが確認されました。この法曹三者と学識経験者の構成比率の問題、学識経験者の範囲ということは、先ほど申し上げました委員会と同様の問題がございますので、次回併せて検討しようということになっております。それから、下部組織がどのような権限を持つかということですが、下部組織に、外部の機関に情報の提供を求める権限を付与すること。これは随分縮めて書いてございますが、要は、3ページの一番上にある中央の委員会が持っている任官希望者の面接、意見聴取、資料提供、意見照会等の協力依頼の権限ということと同義でございますけれども、こういった権限を持つことについては異論がございませんでした。下部組織の委員の任期等々の技術的事項につきましては、先ほど申し上げました起草委員会の方で、さらに検討して、それに基づいて次回検討しようということになっております。
 第3のその他の事項でございますが、この庶務的業務を行うような事柄については、次回、さらに検討することになっております。ただ、担当するセクションとしては、最高裁や高等裁判所の事務局が実質的に担当することはいいだろうけれど、組織として独自の事務局が要るか、要らないかということについてはもう少し考えてみようということになっております。
 以上、駆け足でご報告いたしました。
 私ども最高裁の一般規則制定諮問委員会は、次回、11月22日、さらに12月24日に開催をいたしまして、この問題を検討する予定でございます。次回の11月22日には、起草委員会がつくりました要綱案をもとに、さらに詰めた検討をいたしまして、さらにこの設置を法律で行うべきか、最高裁規則で行うべきかという論点もございますので、そういったものについて、さらに議論を行う予定でございます。その議論の状況あるいは検討結果の状況につきましては、改めて当検討会に御説明申し上げたいと考えてございます。
 以上でございます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。それでは、先ほど申し上げましたとおり、事務局から、事務局資料12−1について説明をお願いします。

【植村参事官】それでは、事務局資料12−1について御説明いたします。
 ただいまの最高裁からの御説明によりまして、第3回一般規則制定諮問委員会における検討状況については、もうお分かりいただけたと思います。先ほど、座長からもお話がございましたとおり、第3回委員会の議事概要までは公開されておりますので、前々回の検討会におけますのと同様、議事概要に基づきまして、既に最高裁における検討が熟したと考えられる事項を事務局として整理いたしましたのが、事務局資料12−1でございます。
 なお、今回は第3回一般規則制定諮問委員会の議事概要のどの部分から引用したのかお分かりいただけますように、議事概要の当該部分に下線を引いたものを事務局資料12−2として用意いたしまして配布させていただいております。
 内容につきましては、最高裁から詳細な御説明がありましたので、事務局からの説明はこの程度にさせていただいて、議事に入っていただければと思います。

【伊藤座長】それでは、ただいま最高裁の小池さんからのお話、そして事務局からの説明につきまして、まず内容について、御質問があればお願いいたします。どうぞ、木村委員。

【木村委員】大変わかりやすく御説明していただきまして、最高裁判所一般規則制定諮問委員会がどのような方向でこれに取組んでいるかということがよくわかりました。簡易裁判所判事は審議対象から除外するということでございますが、それに関連してお伺いしたいのですけれども、議事概要、資料12−2でございますが、それを見ますと、4ページの下の方、「国民の司法参加、透明性の確保の観点からすると、何らかの形で委員会の審査を経ることが必要である。但し、簡易裁判所判事選考委員会を充実強化し、発展させるという前提条件が整備されれば、簡易裁判所判事は委員会の審議対象から外してよい」と。前提条件が整備されれば、ということなのですが、そのほかに、何かこの論議の中で、具体的にこうしようとか、ああしようとかという論議が何かございましたのかどうかについてお伺いしたいのですけれども。

【最高裁(小池審議官)】特にそれ以上の議論はございませんで、簡易裁判所の判事の選考委員会については、少しまた御説明の機会をいただければありがたいのですけれども、そこをもう少し工夫をしていったらどうか、その点についての御意見でございました。

【木村委員】そうですか。

【伊藤座長】審議に入ってから、もう少し補充して説明していただきます。

【木村委員】そうですか。もう一つ、質問よろしいですか。

【伊藤座長】はい、どうぞ。

【木村委員】もう一つの質問でございますが、今との関連で、司法担当の専門職がこれから非常に増えてくるという予測のもとに、例えば簡易裁判所判事も増える傾向にあるのかというようなこともデータとしてあるのか、そういう増員ということに結びついていくことの中での論議なのかどうかということです。また、それに関連して、これは後でもしかすると御説明いただけるかと思いますが、今日お配りいただきました資料22の一番最後でございますけれども、その1ページで、下の方を見ますと、第5条第2項で、「簡易裁判所判事推薦委員会が推薦した者以外の中から、簡易裁判所判事の候補者を選考することができる」との規則があるのですが、実際にこういうことで、推薦委員会が推薦しなくても、メカニズムとしてこういう制度で任命された方がいらっしゃるのかどうかということです。例えば、将来パートタイム的な弁護士任官ということも考えられるのか、あるいは司法修習した方が簡易裁判所の判事になるということも多くあるのかということです。そこら辺のところを含めまして、簡易裁判所も非常に大事な裁判のシステムですので、国民に一番近いところなのでございまして、そういう点で素晴らしい裁判官がたくさんおられるかと思いますが、今後のことを考える上で、きちんとそこを対応していただければありがたいと思うので質問させていただきました。

【伊藤座長】木村委員、今の点も併せて、後でまとめて小池さんに説明をしていただくようにします。

【木村委員】よろしくお願いします。

【伊藤座長】平山委員。

【平山委員】順不同になりますけれども、今の小池さんの御説明の中の3ページ、下部組織の関係を特にお聞きしておきたいのですが、司法制度改革審議会の意見書の101ページが「国民的基盤の確立」になっておりまして、そして、その109ページに国民の参加制度ということの充実の中に「裁判官の指名過程に国民の意思を反映させる機関の新設」というのが大きく載っています。一般規則制定諮問委員会では、このこととの絡みで、この下部組織について、既に議論していただいたのかどうかということをお聞きしたいのです。
 といいますのは、小池さんの御説明の中では、この下部組織がどういう権限を持つかという点につきまして、親委員会がいわゆる推薦機能を持たない。したがって下部組織も持たないということに大体議論が一致しているとのことでした。
 ところでその審査機能、今の推薦機能ではございませんで、審査機能の方は親委員会は持つということになっているのではないかと思いますが、議論としては、下部組織は持つということにしていただいているのか。それがないと、私は意見書の「国民の参加」というところに非常に遠いものになってしまうなという気がいたしますので、その点の議論状況はどうかということをちょっとお聞きしておきたいのです。

【伊藤座長】小池さんお願いします。

【最高裁(小池審議官)】その点は、次回、いわばプラスアルファの権限を持つかどうかというところで議論をしていくことになると思います。意見書の中に今お話がありましたような記載があることは、委員の方々も私どもも認識しているところでございますが、それが下部組織というところと直結するのか、あるいは委員会制度全体の仕組みをどう考えるのか。国民の意思の反映、参加ということについても、例えば、裁判員制度のような場合と、裁判官の任命というところと、対象となります事柄によって、その発現形態もいろいろな捉え方があると思いますので、そういった観点からまた御議論いただきたいと思いますし、考えていただくべき問題だろうと思っております。

【平山委員】私は、この司法制度改革審議会の意見書は、地方の分権といいますか、そういうことと密着したいわゆる裁判所の制度というものを志向していると思うのです。そうしますと、中央で1つの委員会が国民の参加という形ではちょっと納得が難しいのではないか。むしろ地方の下部組織に国民が参加して、そして意見を言っていくということを目指しているのではないかと思いますので、そういう観点で、ぜひ一般規則制定諮問委員会でも御議論いただきたいと思っていますので、その点がここに出てきませんので、質問しておきたいと思います。

【伊藤座長】平山委員、その点は後ほど私どもの審議の中でお願いします。それでは、小貫委員どうぞ。

【小貫委員】下部組織のブロック委員会、この関係で1点お尋ねしたいのですが、中央委員会と仮に名付けたとして、中央委員会はいろいろ審査する際にブロック委員会の情報等を必ず聞かなければいけないというようなことになるのか、必要あれば聞くということになるのか、議論があったのであればどういう議論だったか、次回もまた議論されるということなので、次回の検討テーマに入っているのか、そのあたりをお聞かせいただければと思うのですが。

【伊藤座長】どうぞお願いします。

【最高裁(小池審議官)】これは次回御議論いただくことになると思います。これは両論御意見がございまして、必ず下部の意見を聞くべきであるという御意見もありますし、むしろ前回この検討会でも御意見があったと思うのですが、諮問者のリストとともに、一時的な資料が出てくると、中央の委員会ではある程度重点審議事項、大切な事項というのが絞られますので、そういったものについて下部の方に検討を依頼するという仕組みでいいではないか。大きく言いますと2つの考えがありまして、そこのところ、恐らく後者の考えの方が多いと思いますが、次回はそこをさらに議論しましょうということになっております。

【伊藤座長】どうぞ、木村委員。

【木村委員】今の先生方の御質問の関連ですけれども、3ページの真ん中に、「下部組織の設置単位は、各高等裁判所管内を1つのブロックとして」とあります。各高等裁判所管内ということについては、委員会の方では全く異論はなかったわけですね。何かほかのやり方ということについては案が出るとか、例えば特定の地域をまとめてやるとか、そういうような新しい発想は一切出てこなかったのか。高等裁判所単位は司法行政上当然ですよね。当然というか、恐らく一番妥当な結論だと思うのですが、こういう制度の改革に当たって、違う発想が何かなかったかなという気もするのですけれども。

【伊藤座長】どうぞ、お願いします。

【最高裁(小池審議官)】これは第1回のときにアイディアとして高裁単位がよろしいのではないかという御意見がありまして、その後、ほかの御意見はございませんでした。

【木村委員】そうですか。

【最高裁(小池審議官)】はい。

【伊藤座長】どうぞ、中川委員。

【中川委員】実務的なことで恐縮ですけれども、これは裁判官になられる方の給源に3ルートあって、司法修習を終えられて判事補になられる方、判事補から判事になられる方、判事10年目で再任される方と3つあると思うのですね。その3つの給源につきまして、大体どれぐらいの人数になるのかということ。先ほどお話がございました東京、大阪管内の方、あるいは北海道とか四国の方では全然人数が違うように思いますけれども、それの分布がどのようになっているのかという点を御教示いただくと考えやすいなというのが1つです。
 もう一つ、「情報」という言葉が先ほどからあるのですが、この情報というのはどこにあるのかということです。それぞれの裁判所、判事10年もされておられますと結構転々とされますよね。そういう方の人事情報といいますか、そういうものが最終的にどこに蓄積されるのか。つまり、下部組織にしろ上部委員会にしろ、どこからそれを調達できるということになっているのか、その辺を教えていただけますでしょうか。

【伊藤座長】お願いいたします。

【最高裁(小池審議官)】手元に資料を持ってまいりませんでしたので、つかみのお話をいたしますと、まず人事の件数、再任のところですと、 200から300人くらいのオーダーになります。判事補から採用するというのは年によって違いますけど、最近ですと100人前後ということになります。それから、先ほど判事補から判事、10年の再任とありましたけれども、それは一緒で考えておりますので、それ以外、弁護士からなられる方ということが問題になりますが、それは今のところ年に数件ということでございます。ですので、全体で200から300人くらいだと思いますが、そのオーダーから100人が修習生、10件以内で数件が弁護士あるいは学者というようなオーダーです。

【中川委員】修習生から判事になられる方が大体100人ですか。

【最高裁(小池審議官)】100人くらいです。

【中川委員】判事補及び再任の方が合わせて200人ぐらい。

【最高裁(小池審議官)】弁護士任官の方を除いた数ということで。

【中川委員】大体200人くらいで、トータルで300人くらいですか。

【最高裁(小池審議官)】その年によって変動はしますけれども。それで、管内別ということになりますと、修習生の場合はみんな東京でございますので、それ以外ということになりますけれども、これは主に裁判官の数がどのように分布しているかということになります。こうなりますと東京管内が圧倒的に多く、東京と大阪で、恐らく半分くらいの数になると思います。もっといくかもしれません。高松や札幌というところですと件数は非常に少ないことになります。それから、弁護士任官の方は、東京か大阪がほとんどで、北海道、九州や高松からは、まだそういう例はないのではないかと思いますが、そういうような形になると思います。
 それから、裁判官の人事情報ということですが、これは毎年人事に関する評価をいたしております。このやり方をこれからどのようにするかというのは今検討中でございますが、基本的にはそういうものは最高裁の方にあります。それから、個々の人事をしていくときには高裁と相談もいたしますので、高裁の方にも同様の資料があるということになっております。基本的には最高裁の方に集約されているということになります。

【植村参事官】事務局から補足いたしますが、最高裁の一般規則制定諮問委員会関係資料といたしまして、本日通し番号で資料20以降をお配りいたしましたが、通し番号で申しますと資料14というのがございます。そこに「平成13年度の採用・再任者数」というデータが登載されておりまして、平成13年度で申し上げますと、司法修習生からの判事補任命が114名でございます。それから判事の再任は合計いたしますと160人でございます。弁護士からの判事、判事補任命、いわゆる弁護士任官の方が合計で6名のようでございます。また、短期間外部に出て戻って来られる方を対象にすべきかどうか、次回の一般規則制定諮問委員会でさらに議論にするというお話がございましたが、御参考までに申し上げておきますと、その対象として考えられる判事補が平成13年度には22名、判事が23名おられたということでございます。今、申し上げました判事、判事補の合計数が325名になるようでございます。それから、今日御議論いただきます簡裁判事でございますが、平成13年度の数で任命が72名、再任が30名、合計で102名ということでございます。
 以上、補足させていただきました。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。中川委員、よろしゅうございますか。

【中川委員】ありがとうございました。

【伊藤座長】それでは、事務局資料12−1に基づきまして、順次、意見交換をしていただきたいと思います。
 まず、第1の2の(1)簡易裁判所判事を審議の対象とすべき裁判官の範囲とするかどうか、についてでございますが、これは先ほど木村委員からの御質問にもございましたが、簡裁判事がどういう仕事をしておられるのか、どういう人がどういう手続で任命されているのか、このあたりのことについての情報を提供していただいた方がよろしいかと思いますので、小池さん、よろしくお願いいたします。

【最高裁(小池審議官)】それでは、お手元の資料22を御覧いただきたいと存じます。簡易裁判所判事の選考任命の手続について資料を作ってみました。
 この前提として簡易裁判所判事の仕事でございますが、抽象的に言えば、簡裁で一番国民に身近な事件を担当します。民事事件で言いますと90万円以下の事件、訴訟物の価額といいますか、要するに訴訟の争いの金額が90万円以下の事件。それから簡易裁判所では調停制度というのがございますので、そういったものを担当するということでございます。刑事事件ですと、罰金の事件あるいは窃盗というような事件、令状裁判所として令状を出したりといったものを担当しているということでございます。
 それで、簡易裁判所の判事は、もちろん司法試験に合格して法曹資格がある人は簡易裁判所判事になれるわけでございますが、そのほか、長年司法事務に携わり、簡易裁判所判事の職務に必要な学識経験のある人ということになるのですが、要するに国民に身近な裁判所である簡易裁判所の判事にふさわしい良識を備えた人が裁判官になれるという別のルートがございます。そのルートとしては、原則となりますのが、これから申し上げます、この絵にありますルートということでございます。
 司法試験に合格した法曹資格を持ってない方にもこういった裁判官になってもらうという仕組みとしましては、まず、各地方裁判所に簡易裁判所判事推薦委員会というのがございます。資料22で言いますと黄色い枠で囲ったところでございますが、ここで各地方に応募した簡易裁判所判事の任官希望者の人物・識見が簡裁判事として適当か否かということを審査しまして、これを高裁長官を通じて最高裁にある選考委員会に推薦するわけであります。ここでも委員がおりまして、各地裁の所長、そのほかの裁判官、ここに書いてありますような弁護士会の会長、学識経験者8人の委員会でもって推薦するかどうかということを審査するわけであります。その上で推薦された人を対象としまして、最高裁に設けられております選考委員会で選考するわけです。そこの選考委員会の委員は9人でございますが、これは資料22を1枚めくっていただきまして、参考というところの選考規則というのがございますが、その3条で定めているわけですが、最高裁判事3人、東京高裁長官、次長検事、弁護士2人、学識経験者2人という9人で構成されていまして、裁判所の関係者が4人でそのほかが5人ということになるわけでありますが、こういった選考委員会で選考していくということでございます。
 第一次選考は、ここにありますように、筆記(論文式)試験でございまして、科目はここにあります憲法、民法、刑法、民訴、刑訴と5科目です。1科目2時間の論文式ですので、かなり内容も高いものです。私もこういう試験の採点をしたり問題を作ったりしたことがございますけれども、かなりレベルとしては高い試験になっています。
 この筆記試験の合格者を対象に第二次の選考をいたします。ここは2つありまして、法律学に関する、古い言葉ですが、考試、これは法律試問といいますが、法律の試験と人物考査です。法律の試験は実務的な問題を中心としまして、民事、刑事の方の分野で、その職務に必要な知識、経験を有しているかどうかを口頭試験でチェックするわけであります。それから、人物考査につきましては、これもやはり口述の方法、いわゆる面接でございますが、身上、経歴等の一般事項に関する事柄を尋ねます。そして、この候補者の人物・識見が法律的能力とともに、簡裁判事にふさわしいかどうかということを検証します。そういった意味で、一般規則制定諮問委員会では、簡易裁判所判事選考委員会の、主に人物考査とかこういうところの機能に着目した議論がなされたということでございます。それで、選考委員会は、第一次選考と第二次選考の結果を総合して適任者を選ぶことになります。
 こういったような手続を前提としまして、最高裁の一般規則制定諮問委員会では、この選考委員会の審議の機能を実質的に諮問委員会と同様の機能を果たしているのではないかということで、その諮問の対象外としてよいのではないかという意見になったわけであります。ただ、先ほど木村委員から御指摘がありましたけれども、この選考委員会の委員構成、選考の在り方を新しく立ち上げられます裁判官の指名に関する委員会になるべく近づける方向でさらに改革すべきである、という意見が述べられたわけであります。最高裁としましては、裁判官の指名に関する委員会というのがこれから作られていくわけでありますが、そういった中身をよく見まして、この簡裁判事の選考委員会の在り方についても、さらに検討してまいりたいと考えております。
 ちなみに、今も改良はいたしておりまして、前は、やや面接というところも形式に流れるのではないかというような指摘がありまして、実は本年から第一次選考の合格者につきましては、まず、各高等裁判所で高等裁判所の長官による口頭試問を20分から30分ぐらいの時間をかけてやっております。全部中央に集めますと人数が多いものですから、やや時間が短くなるということで、まず高裁の方で高裁長官の面接をして、その結果を踏まえまして、これは全員ではありませんが、今度は中央の選考委員会で手分けをして面接を行います。その高裁と最高裁の2つの面接の結果を総合判定するという形にしているのですが、この辺はまたもっといい方法があるかどうか、これから考えていくということになろうかと思います。
 以上でございます。

【伊藤座長】ありがとうございました。それでは、ただいまの最高裁の説明につきましての御質問、それを踏まえての御意見があればお願いします。どうぞ、平山委員。

【平山委員】質問でございますが、このまとめ方で、今のところ、委員会の委員構成や選考の在り方を新しく立ち上げられる委員会に近づける方向でさらに改革する、とこういうものが入ってまとめておられます。これは手法としては、仮に最高裁規則を制定するときにはどういう手法をとられるわけでしょうか。条件か何かを書くということになるのでしょうか。そこがちょっとよくわからないのです。この議事録を読んでいきますと、そういう手法になっていて、例えば法律ですと、国会の附帯決議とかありますけれども、これはどういうことを考えて今後の進行はお進めになるのでしょうか。

【最高裁(小池審議官)】活きた会議の取りまとめでございますので、今、こういうまとめになっておりますけれども、今後、要綱案を作りまして、また御議論いただき、私どもの予定としては、12月24日にきちんとした要綱という形で、いわば答申のような形を作るわけですが、そのときに今のような問題も整理していくことになると思います。

【平山委員】今までの規則制定で、こういうのがありましたよというのが何かありますでしょうか。こういうのを別途に、確認書か何かをお作りになるのかどうか知りませんけれども、どのようなことをお考えになっているのでしょうか。

【最高裁(小池審議官)】まだ、その例というのは承知してございませんけれども、今、少なくとも一般規則制定諮問委員会で議論されていますのは、そこをいわば停止条件にすべきであるとか、そういう固い議論ではなく、プラクティカルに考えたときに、屋上屋を重ねるような、簡易裁判所判事選考委員会で外部の方が入っていただいて適となった人に、もう一度、また外部の方が入っていただくということで、適否を考えるということは余りプラクティカルではないから、そこは考えましょうということだと思います。

【平山委員】わかりました。

【最高裁(小池審議官)】この仕組みは仕組みとして考えるけれども、そういったような議論があったことを踏まえて、これから考えていくべきであろうと、こういう御趣旨ではないかと忖度しているのですが、ここはまた次回以降、確認をして行くという作業になると思います。

【伊藤座長】岡田委員、お願いします。

【岡田委員】簡裁の選考委員会の委員のことで、先ほど下級裁判所の裁判官の指名の委員のところで、学識経験者というのは学者だけでなくて、もっと広くということを言われたので、多分その委員会に合わせてこちらの簡裁の選考委員も同じような形でということだろうと思うのですが、私は、昭和22年の簡易裁判所判事選考規則は、大変優れているなと驚いたのです。今回の下級裁判所の裁判官の委員会にとても似ているという感じもしますし、その意味では、今後は、この簡易裁判所判事選考委員会の学識経験者の委員も学者だけではない方がよいということだろうと思うのですが、現在は法律学者が学識経験者になっているのでしょうか。

【最高裁(小池審議官)】今は最高裁事務総長と法務省の方にお願いしています。これが学識経験者ということになっておりまして、その辺がこれから検討していくべき問題ということだろうと思います。確かに学識と経験はあるのでしょうけれども、そこはもう少し開いた形にしていく必要があるだろうということでございます。

【伊藤座長】よろしいでしょうか。

【岡田委員】先ほど中川委員もおっしゃいましたけど、私たちにもとても簡易裁判所は身近なものですから、ぜひとも簡裁の裁判官の選考には、私たちのレベルの意見が通るようにと思ったものですから。

【伊藤座長】木村委員。

【木村委員】先ほど簡易裁判所判事選考規則の第5条のところでお伺いさせていただきましたが、推薦した者の中から簡易裁判所推薦委員会が候補者を選考する。だけど、必要があるときには推薦委員会が推薦した者以外の中から簡易裁判所の候補者を選考するというのは、具体的にいろいろそういうケースがあるわけでございますか。

【最高裁(小池審議官)】そこの説明を落としまして申し訳ございませんでした。原則は5条1項にあります推薦するということですが、2項が働く場合もあります。例えば裁判所の中で書記官という職種がありますが、その中で高等裁判所の民事の首席書記官等となりますと、これは非常に法律のことに通じているわけです。大方、試験を受けて書記官研修所というところに入り、そこで1年ないし2年のトレーニングを受けて勉強し、それから約30年にわたって書記官事務をやっております。そういう人に対して、試験を受けなくても明々白々であるというような方については推薦ということではなくて、2項の方を働かせて、ダイレクトに選考委員会の方で審査をするという形がございます。ただ、二次選考のところの裁判官として適格かどうかということについては、こういった人もいわば選考の対象になっています。入り口のところはそういうルートが別途あるということでございます。

【伊藤座長】松尾委員、お願いします。

【松尾委員】今の問題と関連があるのですけど、実際には、例えば書記官出身の方がどのくらいいるのか、あるいは検察関係の人がいらっしゃると思いますが、どのような実態にあるのでしょうか。
 それから、もう一つの質問は、先ほど出ましたけれども、委員会に近づける方向でさらに改革するということについて次回おやりになるということなのですが、これがいわゆる精神論とか努力目標として、そういう方向性になるようにと、その程度のものなのか、あるいは仕組みを委員会に近づけるようなことに考えられているのか。例えば、先ほどの有識者の関係などの実態がありますので、そこまで考えられて、特に外部委員、外部情報ということを重要視されて、仕組みとしてそこまで近づけるようにと具体的に考えられようとしているのか、質問ですけれども、2点お願いします。

【最高裁(小池審議官)】まず前者の実態の方は、今、手元に資料を持っておりませんけれども、割合からすると裁判所の書記官が多いと思います。試験を受けて合格するのも多いと思いますし、それ以外の長いキャリアでもって選考委員会にかけられるという人もいらっしゃると思います。ただ、行政官や検察関係から来られる方もおられます。そういう状況だと思います。
 それから、選考委員会の改革をどう進めていくかということについては、これもまた御議論を次回以降していただきたいし、また、私どもも考えていかなければいけません。それは2つのことを考えなければいけないと思います。1つは選考委員会の方は簡裁判事の資格を付与するというものであり、もう1つは、裁判官としての適否という、諮問委員会と同様な機能を果たすという2つの面があります。
 そうしますと簡裁判事として長らく裁判事務を担当して、簡裁判事としてふさわしい知識、経験を持っているかどうかというのはかなり法律専門家が判定をしなければいけないという問題が1つございます。他方、国民に身近な非常に接触する度合いが多い、数も多いということですと、もう少しそういう資質を持っているかというのは開いた目で見なければいけないところがあります。私どもこれを担当しているセクションの者としては、仕組み自体を改めることも含め、かつ枠を作ったときの学識経験者というものをどうするかという当てはめ運用の問題も含め両面から検討していくべき課題が課せられていると受けとめております。

【平山委員】今の関連で、私も松尾委員と同じように、今、非常に的確に、小池さんが説明されましたが、先ほど審議会の意見書でも、国民の参加部分というのは後者だと思うのです。ですから、そこのところが誰もいないという感じでは、これはいけないのではないかと思いますので、法曹だけでなく、きちんとそういう人が参加している簡裁の委員会であれば、兼務してもいいのかなという気がしますけど、そうでないと、意見書の趣旨に沿わないことになってしまうことにならないかという気がちょっと心配しております。

【伊藤座長】どうぞ、佐々木委員。

【佐々木委員】先ほどの簡易裁判所判事の選考手続についてというところで資料がございますけれども、実は簡易裁判所の判事推薦委員会に私は入っておりますので、この点も考えますと、現実にはその場には、実は規則の17条でございますところで、外部の方を現実に入れているわけであります。その中でどういうことをやるかといいますと、現実には書記官、主任書記官クラスが多いのですけれども、それと検察事務官から来られる方を含めて全員面接をしまして、書類でご本人のそれまでの経歴等も踏まえる。それから、上司の方のいろんな資料も踏まえて選考いたします。そして現実に推薦しないということが何名もあります。それは外部の方に諮ってこの委員会で決めているところでございます。
 したがいまして、かなりこの推薦委員会というものは実質的な、コントラバーシャルな点についてはかなりやっていると考えておりますので、今、おっしゃった選考委員会ともどもワンセットにしてこのあたりを十分お考えいただければと考えています。

【伊藤座長】そういたしますと、いろいろ御意見をいただきましたが、本来のこの問題に戻りますと、一応簡裁判事につきまして、下級裁判所の指名過程に関する委員会の審議対象からは除いて、しかし、内容的には考え方として密接なものがあるので、その仕組み等について十分検討をしていただくということで、事務局のたたき台案その2の資料12−1でございますけれども、(1)の考え方そのものにつきましてはここで了解をしていただいたということでいいでしょうか。

(「はい」と声あり)

【伊藤座長】それではそのようにさせていただきます。どうもありがとうございます。
 引き続きまして、資料12−1でございますが、第1の3の(1)最高裁の委員会に対する説明責任の果たし方、第1の3の(2)委員会の任官希望者に対する説明責任の果たし方、これにつきまして何か御質問、御意見ございましたらお願いいたします。

【平山委員】よろしいですか。

【伊藤座長】どうぞ、平山委員。

【平山委員】第1の3の(2)の後半の部分でございますが、「本人から委員会に説明を求められた場合の対応は、委員会の裁量で対処していけばよい問題であるとしておくことでよいか。」という発言が委員長からされておりまして、「委員は異議なく了解している」と、こういう記載がございますが、この部分につきましては、この事務局で付けていただいております資料12−1の5ページの司法制度改革審議会意見、司法制度改革推進計画という欄のすぐ上のところでございますが、最後の部分、「また、同機関による選考の結果、適任とされなかった者に対して説明責任を果たすための適切な措置についても検討する必要がある。」と、司法制度改革審議会の意見書は言っているわけですが、今回の取りまとめのようなことで、適切な措置と言えるのかということがちょっと心配なのです。この点はどういう議論の経過でこれでいいことになったのかということを教えていただけますか。

【伊藤座長】小池さんお願いします。

【最高裁(小池審議官)】もちろん審議会の意見は意識して認識した上での議論でございます。審議会の段階でも、委員会が仮に本人に通知するということになりますと、委員会の方がだめと言って、最高裁も指名しなかったという場合もありますけれども、場合によっては、委員会の方が、「不適」と言ったけれども、最高裁の方が「適」という場合も論理的にはあり得るわけでありますが、そういうときに委員会が、本人に「実はあなたはうちのところでは不適だったのです。」と、こういうことを言うことはいかがなものかというような議論も背後には潜んでいたはずなのです。先ほども申し上げましたように、指名に関わる委員会というのは最高裁から諮問を受けまして、適否についての意見を述べるということでございまして、それは一連の指名プロセスの中の途中の意見でございます。中間的なものについて、委員会が独自にこういった任官希望者に対して、その理由を述べたり、結果を通知するというのをシステムとすることはどうなのか。むしろ何らかの措置を構ずべきというのは、最高裁が最終的に、特に指名をしなかった場合については、最高裁はこう考えて指名をしなかった。ただ、委員会の方もこういう意見であったとか、そういうことを伝えるならば、ここでの委員会における考え方を本人に明らかにするということで、そのプロセスの透明性というのができるだろうと。恐らくこの何らかの措置というのは、そのくらいまで広げた意味合いではないかと考えられます。そうでないと、中間的なものについて、システムとして非常に固いものをつくりますと、ある意味でちょっと常識にかなわない仕組みになってしまう可能性があると思います。ちょっと私が補足はいたしましたけれども、そういう見解に立った議論が一方にあり、もう一つは、せっかくの委員会だから、ダイレクトに本人にそういう検討過程といいますか、結果を伝えた方がいいのではないか、そういう御意見と2つあったわけですが、どちらかといいますと、前者の御意見が多くてこの取りまとめになりました。まとめの置き方も、先ほどありましたように、「対処していけばよい問題であるとしておくことがよいか」と、やや含みのある取りまとめとなっていたのは、そのような御意見が交わされたからということだと思います。

【伊藤座長】松尾委員どうぞ。 【松尾委員】指名に関する委員会の役割・機能というのは、今、おっしゃるように最高裁の諮問に対する意見を述べるということですね。したがって、その関係の説明責任はどこにあるかというのは最高裁であり、最高裁一本で考えていくべき仕組みになっていると思うのです。したがって、ここに委員会の裁量で対処云々と書いてありますが、それは私は必要ないと考えております。むしろこの問題はシンプルに考えて、余り複雑に考えるとどうも仕組み全体がはっきりしないと思います。まさに透明感から言うと説明責任を一本化した方が透明化するのではないかという意見です。

【伊藤座長】ほかにいかがでしょうか。どうぞ、木村委員。

【木村委員】最高裁の中にこの諮問委員会ができたということの意味が非常に重いと思うのです。今まで最高裁の人事局がずっと議論の内容を具体的な情報を大変詳しく集めてやってきたところで、基本的には私は説明を求められた場合の対応は諮問委員会がやってもいいのではないかと思うのです。今までとは全く違う在り方で、こういう形でやってきたということを明確に国民に示すという意味からも、結局また最高裁が決めるというのではなくて、最高裁の中に新たに作った制定諮問委員会というものがきちんと機能していると。責任持ってちゃんとこういうふうにして推薦したということも含めてやった方がいいのではないかと私自身は思います。ですから、ちょっと松尾委員の意見とは違うのですが。

【伊藤座長】いかがでしょうか。そういういろいろ御意見があることを前提として、委員会の裁量で適切に対処すると、こういう表現になっているのかと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

【伊藤座長】それでは、この点も了承されたということでお願いします。
 引き続きまして、資料12−1の第1の4の(1)委員会の構成、(2)委員の選任方法、このあたりにつきましてはいかがでしょうか。どうぞ、御質問、御意見をお願いいたします。いかがでしょうか、格別の御意見ございませんか。

【岡田委員】質問よろしいでしょうか。

【伊藤座長】どうぞ、岡田委員。

【岡田委員】最近新聞に司法改革の記事がよく出るようになりまして、そういう面では、この学識経験者の中にそういう報道関係の方というのは入る予定があるのかどうなのか。そこをちょっとお聞きしたいなと思ったのです。

【伊藤座長】どうぞ、今の段階での。

【最高裁(小池審議官)】諮問委員会で具体的にそういうお話が出ているわけではありませんけれども、私どもとしては、当然そういう方も範囲としては入っておられると考えております。

【伊藤座長】よろしいですか。

【岡田委員】はい。

【伊藤座長】特に格別御意見がなければ、この点も了承されたという扱いでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

【伊藤座長】引き続きまして、資料12−1の第1の5の(1)委員会の権限につきましていかがでしょうか。この委員会の権限について下線部分がございますが、このあたりにつきまして、御質問、御意見があればお願いいたします。この下線部分のような権限を付与することについては異論がないというので取りまとめられたようでございますが、この場でもこの点については御了解いただけますか。

(「はい」と声あり)

【伊藤座長】それでは、次に資料12−1の第2の2の(1)下部組織の権能等でございます。これについては、先ほども御質問がございましたが、なお、御質問、御意見があればお願いしたいと存じます。

【平山委員】ここは関連でございますけれども、先ほどもちょっと冒頭に御質問申し上げましたけれども、この委員会で一番大きな問題は下部組織と中央組織といいますか、この両組織の関連と、それから、中央組織の場合はどういう資料が最初に出てくるのかというようなことの関係で、例えば中央組織につきましても、外部資料が最初から冒頭に出てくるということであれば、中央組織でやったことを補充的に下部組織がやるというようなことがよくわかるのですが、中央組織のところに出てくるものは、例えば裁判所がお持ちになっている資料にすぎないということであれば、その中で選択されて一部だけが下部組織におりてくるということではこの審議会の意見書の趣旨には私は合わないと思うのです。ですから、そのあたりの議論はどのようになっているのかをもう一回お聞きしたいのですけど。

【伊藤座長】小池さん、お願いします。

【最高裁(小池審議官)】議論されていることと、それを受けとめていることと少しお話としては混じるかもしれませんけれども、要は裁判官にふさわしい方をどう選んでいくということとともに、この新しい制度がきちんと機能すると、プラクティカルに作っていかなければいけないと。その2つの要請をどう考えていくことだと思います。
 そこで、確かに下部組織を重視して、そこで一次的に審査をしていったらいいというお考えもあるわけですけれども、そこにつきましては、先ほども御指摘ありましたように、任命についての判断は3つの類型がありまして、司法修習生については下部からやっていくことは余り考えられません。これは研修所の成績が中心になると思います。他方、弁護士から任官される方というのは、最高裁の方には資料はございませんから、そういう意味ではそれぞれ地域の情報というのが重要視されるだろうと思います。それから、裁判官を10年やってきた者についてどう判断するかというのは、これは人事評価の関係で、外部の意見をどう取り入れていくのか、それをどう蓄積していくのかということに関わってまいります。そういった問題は、これから運用の問題がかなりあるわけでございまして、恐らく新しい委員会が最初にしなければいけない仕事は、最初にどのような資料を最高裁に求めて、最初の仕分けはどういう形でやっていくのか。それから、下部の機関との関係で、どのように仕事の割り振りをしていくのか。まず、そういったところを実践的に考えてしていくべきことだろうと思っています。
 そういう意味で、今の段階では、おっしゃったように、外部のような情報もきちんと考慮していかなければいけないだろう。では具体的にどうするかというのは、これからまた考えていくべきではないかと。それは私どももそう思っておりますし、私どもの諮問委員会の検討でもそういう御意見が多々出ているところでございます。

【伊藤座長】平山委員、よろしいですか。

【平山委員】今の説明はわかりました。

【中川委員】小池さんに御質問なんですけれども、下部組織を設置するということのメリットといいますか、つまり、先ほどのお話では、下部組織も最高裁上部組織も大体同じような情報を持っているはずだと私は理解したのですけれども、下部組織を置くことのメリットといいますか、だから上部組織が下部組織にあれこれ下請け的にやってくれというならメリットはあるような気がするのですけれども、同時並行的に仮に何かするのだということにしたときにどういうメリットがあるのかというのはよくわからないのですが、教えていただけますか。

【伊藤座長】お願いします。

【最高裁(小池審議官)】これはどういう設計にするかというところで、今、検討途中の段階で、甚だ申し上げにくいところもあるのですけれども、重要な案件について、その事実に近いところで情報を集めて確認していくというところは現在議論されております。情報を収集し報告して、それから参考となる意見を述べるという、一般規則制定諮問委員会で現在確認されているところをとっても、これは下部組織としての意味合いは随分あるのではないかと思います。例えば弁護士の関係ですと最高裁は情報を持っていません。裁判官の場合でも、法廷での立ち振る舞いにやや問題があるというようなものが抽象的に10年間に蓄積される情報としてあっても、では直近、今いるところでどうなのかいうことを高等裁判所にあるそういう組織に依頼して確認してもらう。その情報を持って、また本人との関係でも、具体的にこういうものがあるのではないかということを、また抽象的に言われるのではなくて、具体的な事柄で面接などをするときに話すことができます。いわば反論権というのも必要でしょうから。そういった意味合いでは重要な案件について、この下部組織が重要な機能を果たすということは明らかに言えるのではないかと、こう考えております。

【伊藤座長】よろしゅうございますか。

【中川委員】はい。

【伊藤座長】どうぞ、松尾委員。

【松尾委員】下部組織を置くこと自体には私も賛成なのですけど、上部組織と下部組織の関係を明確にする必要があるのではないかと思うのです。つまり目的、どのような役割をするのか。また下部組織の権限というのはどこまで許されるのかという問題について明確にまずやっておかないと、実際にこれがスタートしたときに実務的に混乱もあるだろうと思います。といいますのは、例えば、上部組織と下部組織の関係で、ここにあるように、「必要に応じて参考となる意見を述べる」ということが書いてありますが、どの程度までの意見を述べられるのかというような問題が、個々のケースにおいて起きてくるような懸念をするわけなので、初めから上部と下部との関係を明確にしておいた方がいいのではないかと思います。

【伊藤座長】何かございましたら、どうぞ、よろしく。

【最高裁(小池審議官)】そこはまた次回の重要なテーマでございますので検討してまいりたいと思います。きちんと決めていくというのも1つの考えですし、こういった事柄について、少し運用といいますか、実際立ち上がってからの知恵に委ねるというところの大切さもあると思いますので、この辺をどうするか、もう少し次回の議論を見てここで御報告し、また、ここで御意見をちょうだいできればと考えております。

【松尾委員】先ほどの中川委員が言われたように、下部組織が、単に資料や情報を収集するだけの下請けといいますか、そういう役割だけにとどまるのか、それ以上の権限を持ってやるのかというところで相当違ってくると思うのです。そこは今やっておられる委員会でおやりになると思いますが、くどいようですけれども、その辺のところがあいまいなまま決めてしまうというのでなくて、目的、役割、権限、すべてをきちんとした方がうまく機能できるのではなかろうかと考えるものですから、あえて意見を述べます。

【最高裁(小池審議官)】まさにそこの点は御指摘のとおり重要な問題でございますが、考えるポイントは2つございます。1つは、これは指名に関する委員会ということでございます。指名権というのは最高裁が持っているということでございまして、そこの問題をどう考えるのか。8つの下部組織があったとして、そこの意見を一次的に尊重して中央の委員会が上訴審的なものでするのか、それとも全体のすべての状況、裁判官制度というものを見渡している、最高裁が最終的に指名権を行使するわけですが、そこに近い委員会が考えるべきかという問題が1つ。もう1つ、もう少しプラクティカルな問題として、我が国の裁判官制度がどのように運営され、かつ国民がどう求めているのか。審議会のときは地方分権的な裁判官制度のイメージというものがありましたけれども、では具体的に、各都道府県単位だけで裁判官が全部給源を得てできるのか。そして全国、かなりそういう場合にはある程度裁判官の判断というものに幅があるということを許容していただかなければいけないことになるのですが、そういうことをどういうイメージにするのか。今まで最高裁あるいは裁判所がやってきましたのは、全国どこの住んでいる方も、同じようなレベルの同じような判断をして欲しいということから転勤制度というものを組んできたわけでありますが、プラクティカルに考えたときに、それに整合するようなシステムというものをどうするのか。下部組織の問題をどう考えるかというのは指名権の在り方というところと、我が国の裁判官制度の運営の在り方という2つをバランスよく見渡して、どう決断するかという問題だろうと考えております。

【伊藤座長】どうぞ、平山委員。

【平山委員】関連ですけれども、小池さんがおっしゃるのはよく理解できますけれども、この議事録を全部拝見していますと、まず中央組織のところで振り分けをするというような感じをちょっと受けるのですね。修習生は別です。また、弁護士から行くのも別です。例えば10年目のいわゆる裁判官のところだけを考えてみますと、100名が来たとして、それについて中央組織の方で最高裁からお出しになった資料だけで振り分けをしまして、そして、これはちょっと問題があるというのを地方組織といいますか、下部組織に調べろというような形で下ろすということは、逆に下ろされた本人にとりましては、資料集めはその方に限るわけですから、大変なことではないかという気がいたしまして、むしろ、そういう中央組織の振り分けはしないで全員につきまして最高裁の資料を付けて下ろしていただいて、地方組織の方では外部評価もきちんと皆さんについてとってみて、そして意見を言っていくという仕組みでないとこの審議会が言っているような趣旨に私はそぐわないような気がしますし、現実に裁判官に申請された100人の方の中で、自分だけが地方組織に下ろされているというような形になりますと大変な問題が起きるのではないかという気もいたします。外部評価が最初のところでついてくるかどうか、非常に関係がありますけれども、すべての人に一応外部評価はきちんとつかせるという形でおやりになった方が将来機能するのではないかと思っておりまして、何とかなく中央振り分け方式はどうかなという気がするのです。

【伊藤座長】何かございますか。

【最高裁(小池審議官)】そこは、二つの考えがありまして、今、平山委員のおっしゃったような御意見もありますし、これは私が申し上げているというよりは、そういう別の御意見もあるということでございます。

【伊藤座長】そういたしますと、基本的な考え方としては、審議会意見書で言われているように、国民の意思を反映させるという立場に立っていて、かつ本来の委員会と下部組織という形で、候補者の特性に応じつつ、国民の意思の反映をさせる仕組みをつくる。この点については、恐らく下部組織の権能ということから見ましても御異論がないと思います。あと、具体的な制度設計については、最高裁の委員会の方でもまだ審議途中でございますし、本日ここでいろいろ建設的な御意見をいただきましたので、それを持ち帰っていただきまして、次回お話をいただければと思います。一応、基本的なことについては了承いただいたということにさせていただきたいと思います。

(「はい」と声あり)

【伊藤座長】それから、資料12−1の第2の3の(1)下部組織の設置単位、第2の3の(2)下部組織の人数、権限、運営方法、これにつきまして、何か御質問、御意見ございますか。どうぞ、木村委員。

【木村委員】資料12ー1の第2の3の(2)の中の真ん中のところの、「また、委員数は5人前後ということで取りまとめをしておきたい」。これは「5人前後ということで取りまとめをしておきたい」というのは、大体これは決まったことなんでございましょうか。

【伊藤座長】小池さん、お願いいたします。

【最高裁(小池審議官)】冒頭に申し上げましたように、5人前後ということの一応の取りまとめがされましたが、管内の大きさですとか、それから、今、平山委員からも御指摘がありましたように、下部組織の持つ権能ということによって、これはまだ幅があるということで、このような取りまとめになったと理解しております。

【木村委員】非常にはっきりと明確に委員数を5人前後という、今の小池さんの御報告を聞いて安心したのですけれども、非常にフレキシブルで、ある場所によっては増えるということですが、全体との調和といいますか、中央の方との関係で言いますと、これからの21世紀に判事が10年終えて、そこで再任とかそういうような問題を含めていきますと、5人前後で足りるような制度設計でいいのかどうか。これは中央と合わせて10人ぐらいにしておいた方がいいのではないかという気もするのです。特にこの審議会の意見書の趣旨に沿って、民間の方々、司法内部の方々だけでなくて、地元といいますか、そういう地域にも有識・学識経験者が非常に数多くおられるわけですので、積極的にそういう方々を入れていくような方向づけで、できれば10人前後ということでお考えいただけるような方向もお願いしたいと考えております。

【伊藤座長】もし、ございましたら。

【最高裁(小池審議官)】また、議論してまいりたいと思いますが、1つは、お話で出ているのは、これは諮問なり、そういう活動としても、一人の裁判官の任命の適否という非常に重要な事柄でございますので、やはり出て来られる委員は常に出席をしていただきたいと思うのです。要するに、一人の人を決めるにしても数回の会議が行われ、どんどん適否というものが煮詰まっていけば、だんだん厳しいことになりますので、その議論の経過を伝聞ではなくて、ずっと把握していただきたい。そうなるとある程度、人数もどのくらいの規模がいいかということ、そこはプラクティカルに考えていく必要があるのではないかという気はいたしております。

【平山委員】人数論につきまして、小池さんのお話で、東京などはちょっと問題があるのではないかというお話がございました。私も体験的に弁護士会の方から見ますと、東京高裁管内は、関東弁護士連合会と言いますが、東京の3つの弁護士会と10の県の弁護士会がありまして、例えば弁護士委員を一人出すということになったらとても大変です。それとその人たちは他の都県のことはよく知らないということがありまして、この関東弁護士連合会では、例えば弁護士委員は3人はいないと公平な相談にのれないのではないかという心配がございます。これは柔軟に考えていただいて、例えば、高松などは、10人では、委員をお願いするのが大変だというようなこともあるようにも聞きますけれども、いずれにしましても、実情に合わせてやる必要があります。5人前後では、私は東京高裁管内の下部組織はなかなか難しいと思います。東京の裁判所も裁判官は非常に多うございますしね。
 それともう一つは、刑事司法と民事司法の方がいらっしゃった方がいいのではないでしょうか。例えば東京の裁判所ですと、刑事事件をずっとおやりになる裁判官と民事事件をおやりになる裁判官がございますよね。そういうことから言っても、きちんと意見をみんなが言えるのにするのには、裁判官もやはりお2人以上はないといけないだろうと思いますので、そういう点もちょっと御検討いただいた方がいいのではないかと思います。

【伊藤座長】どうぞ、松尾委員。

【松尾委員】私も8ブロックということについてはそう思うのですけれども、東京や大阪あるいは名古屋は、仮に5人としたら相当負担も大きくなるし、実際に下部組織としての役割が果たせるかどうかというような問題もあるのではないかと思うのです。だから、そういったところは地域的に考えて、5人ということが基本であっても、その場合は委員数を増やすということも考える必要があるのではなかろうかと思います。
 それから、もう一つ これは質問になると思いますが、中央委員会の方で一応10人前後ということになっておりますが、これが果たしていいかどうか、私は判断できませんが、10人前後ということと、ここで言う5人前後というのは何か関係づけられて数字が出ているのでしょうか。

【伊藤座長】小池さん、お願いします。

【最高裁(小池審議官)】まず10人前後と5人前後というものをそういう関連づけで議論されているものではないと思います。下部組織して活動するときに、中央としてどのくらいの数が要るのかということだと思います。一般規則制定諮問委員会で議論していくときに、下部組織の委員の方が、どれだけ管内の人を知っているかということになりますと、学識経験者というのはそれだけことをご存じあるということは考えられませんので、むしろ一定の資料があったときにどう判断するかとか、あるいはこういった事柄についてはどういうところに調査をしたらいいのかと、そういうご見識を持っておられる方というところがポイントとなるのではないか。恐らく皆さんそういう前提で議論されたと思います。

【伊藤座長】どうぞ、奥野委員。

【奥野委員】ちょっとよくわからないのですが、つまり中央の組織に関しては説明責任ということがいろいろ言われているのですが、下部組織も一応情報の収集とかいろいろなことをされまして、それを上部に上げるわけですから、当然何らかの最終決定に影響を与えるような情報とかそういうことが出てくる可能性があるのですが、それに関する説明責任の問題は議論はされていらっしゃらないのでしょうか。

【伊藤座長】小池さん、お願いします。

【最高裁(小池審議官)】そこの議論は今のところございませんが、御指摘の点は非常に重要な問題だろうと考えます。

【伊藤座長】では、まず田中委員から。

【田中委員】今、奥野委員がおっしゃったことだけでなくて全体に関連するのですけれども、先ほどの下部組織の権限と中央の関係はかなり微妙なので、例えば最高裁は、中央だけでなくて下部組織も含んだワンブロックに諮問して、例えば、Aという人について中央でもちろん審議するけれども、その人がいくつかの高裁管内で勤務していた場合には、その高裁の下部組織からも何か意見を言う機会を与えることなども検討に値すると思われます。中央で振り分けた上で、問題ある人だけ下部へおろすというのでなくて、下部の方からも自主的に意見を言おうと思えば言えるというような形の諮問の仕方を考えないと、さっき平山委員がおっしゃったような問題が生じるので、諮問の仕方と中央と下部との関係をもう少し何か工夫していただくことを考えていただいた方が、今まで聞いていた議論の問題点を回避するというか、改善するためには必要な感じがしたので、その点をそちらの方で検討されるときに考慮いただいたらという感想を持ちました。

【最高裁(小池審議官)】その点、また検討したいと思います。

【中川委員】それに若干関連するのかもしれませんけれども、下部組織というと下部の組織かなと思ってしまいますが、そうではなくて、「現場」というように言葉を置き換えた方がわかりやすいのではないでしょうか。これは人事評価ではございませんので、一人一人の評価をするわけではないけれど、再任していいかどうか、判事として適任かどうか、大きな意味では評価ですよね。その評価を現場でやるのと中央でやるのという感覚になった方が、これは民間は全部そうしているわけです。どこかの人間を評価するときに、現場の支店長はどう言っている。中央にある人事部はこう思うけれども、では現場はどう言っているのだというのは必ず聞きます。最終的に決めるのは会社、つまり人事部だと思いますけれども、そういう意味からいいますと、現場の評価といいますか、現場の考え、それから人間だからどんどん変わりますから、中央で持っている情報とは違う情報があるかもしれません。どんどん悪くなる人もいるし、よくなる人もいるかもしれませんから。そういう意味で、現場の評価をとるという、そういう感覚で考えていただいた方が弾力性が出てくるのではないかという感じがいたします。ということは、最終決定は中央にしろ、情報の価値としては余り差がないという考え方がいいのではないかと私は思いますけれども、御参考までに。

【伊藤座長】どうぞ、木村委員。

【木村委員】今、お話をお伺いしていて思ったのですが、現場は現場でも、この場合には地域性といいますか、各高裁の地域で出てくるわけですので、現場というのはちょっと言葉としてはなじまないので、地域単位委員会とか、何かそのような感じの名称が恐らくあると思うのです。この審議会の意見書には地方分権推進という方向性が指摘されていますが、裁判を支えるシステムが余り中央に集中して、中央集権みたいになるのではなくて、地域のそういう裁判システムの活性化というか、そういう方向性があると思うのです。ですから地域におられる方々の、法律専門職でない方々の学識経験者が入るような形での委員会を積極的に作るような方向を踏まえた新しい日本の司法の在り方を考えるようなことが議論されていったのかどうか、そこら辺はどうなのでしょうか。余り地域性ということは出てこなかったのですか。

【伊藤座長】何かございましたら。

【最高裁(小池審議官)】裁判制度が構造的に中央集権化していることはないと思うのですね。個々の簡易裁判所、家庭裁判所、それぞれそこでの訴訟活動をされている方はそこに立脚して、個々の事件を1つ1つ判断されておられますので、そういうことはないと思います。
 また上部、下部というのは適当ではないかと思いますが、意見書に「下部組織」として書いてあるので「下部組織」という言葉を使っておるのですけれども、それはふさわしい言葉を探すにしろ、要は中央の委員会と各地の組織というところをどう機能を割り振るのかと。どれが一番意見書の趣旨にかない、かつプラクティカルになるのかと。それで、適否を判断をできる仕組みはどうかということをもう一度、まだ、回数ございますので、ここのところは議論したいと、かように考えております。

【伊藤座長】それでは人数、説明責任、諮問の仕方、上部、下部の関係などについて積極的な御議論をいただきましたので、その点につきましては、小池さんに持ち帰っていただいて、また、そちらの委員会で御検討いただくということで、基本的な審議の状況、内容についても御了解いただいたということにさせていただきます。

(「はい」と声あり)

【伊藤座長】そういたしますと、資料21−1検討たたき台(案)その2にある各事項については、基本的には御了承いただいたと承ります。先ほどお話ございましたように、最高裁の一般規則制定諮問委員会の次回の会合が11月22日にあるとお聞きしておりますので、当検討会といたしましては、12月10日に予定しております第14回検討会におきまして、ただいまいただいたような御意見を踏まえた最高裁の検討状況を説明していただいて、意見交換、質疑応答をしたいと、こういうことでお願いいたします。どうも小池さんありがとうございました。
 それでは、このあたりで5分程度休憩をとらせていただきます。

(休 憩)

【伊藤座長】それでは、再開させていただきます。どうぞよろしくお願いします。
 引き続きまして、(2)最高裁裁判官の選任等の在り方について−最高裁裁判官の地位の重要性に配慮しつつ、その選任に過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置ということでございますが、この議事に入りたいと思います。
 この問題につきまして、先日の第11回検討会におきまして、事務局から、これまで我が国に存在した制度等につきまして、説明してもらいましたけれども、御質問の時間を十分とることができませんでしたので、まず、前回の事務局の説明に対する御質問からお願いをしたいと存じます。どうぞ、田中委員。

【田中委員】前回質問しようと思ったのですけれども、最高裁を設置するときの諮問委員会の他に、その後、30年代に、いわゆる中二階案が出され、さらにその後、もう一遍、50年代に最高裁の機構改革の案が出たときにも同じようなことが議論されたように記憶しています。当時の社会党が出した案だと思うのですが、それなどの方がこれから議論する上では、一番最初の諮問委員会よりは参考になると思うのですけれども、それに関する資料などは事務局で集めていらっしゃるのでしょうか。

【伊藤座長】植村さん、それではお願いします。

【植村参事官】それでは、今の点について事務局で調べましたところをお話しいたします。事務局で調べましたところ、昭和50年代におきまして、4回にわたりまして法案が提出されているようでございます。ただ今その概略を取りまとめましたペーパーを配布いたしました。お手元で御覧ください。
 昭和22年当時の制度や昭和32年の第26回国会に提出された法案と比較いたしますと、委員会の構成や候補者の答申方法、外部に対する公表などにつきまして、それまでの制度等におきましては、法律で定めるのは設置のみ、あるいは設置に加えて委員の出身分野のみであったのに比べますと、法律によって細かく規定しておりました。御覧いただくとわかりますように、4回にわたって提出されたうちの最初の法案、つまり昭和50年の第75回国会に提出された法案とそれ以降3回にわたりまして提出された法案では若干内容が異なっております。異なっている点につきましては、ご参考のために事務局の方で下線を付しております。それは委員構成の点と答申方法の欄に書きました答申内容の公表の関係でございます。一番右側に「結果」と書いた欄がございまして、いずれも国会終了に伴いまして廃案ということになっておるようでございます。以上でございます。
 ただ、田中委員の方からお話がありました機構改革絡みであったかどうかの点でございますが、いずれの法案もこの表題に掲げましたように、「最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案」という法案でございまして、実は提出法案そのものも入手はしておるのでございますが、それを見ましても、裁判所の機構改革との関連はなかったようでございます。

【田中委員】前の中二階案などとは理由も違ってきているわけですか。その前のときには上告件数が非常に増えてきたのでという提案理由だったと思うのですけれども、このときの提案理由というのは、端的に裁判官の任命諮問委員会の設置だけを問題にしようというものですか。

【植村参事官】ただいま第75回国会で審議をされました法案につきまして提案理由の趣旨説明を見ておりますが、長文にわたりますので、ここで御紹介をするわけにもまいりませんが、一言で申しますと、この最高裁判事の任命は非常に重要な問題で、そこに民主的な要素を入れるという観点から提出する法案であるという位置づけだったと理解をしております。

【伊藤座長】どうぞ、ただいま、少し補足して事務局から説明をしていただきましたが、これら昭和50年代に提出された法案に関して何か御質問があればお願いします。どうぞ、木村委員。

【木村委員】資料11−3でございますけれども、これは1957年ですから、昭和32年ぐらいに出たもので、今の田中委員の質問にも関係しますが、最高裁判所の機構の改革に係る裁判所法の改正ということで、お伺いしたいのは資料11−3の6ページですが、ここでは裁判所の機構の改正で非常にユニークな形で、長官、大法廷判事8人で大法廷を構成して、小法廷の数は6で、判事の総数を30人とすると書かれています。最高裁の判事ということで30人になるのでしょうけれども、つまり最高裁全部で39人になって、だけれども、長官と大法廷判事に限って国民審査の対象で、あとのつまり30人というのは国民審査に付さないということになるわけで、多分任免も天皇が認証するわけですね。このような形で非常に大きな変革が今から45年前に出ているわけで、それに伴って大臣がいろいろなことを言っています。特に14ページを見ますと、右側の中村梅吉法務大臣によると、それとの関連かと思いますけれども、最初は諮問委員会があって、そしてこうなることが「天下も納得し合理的であろう」という「天下」という言葉を使って、「今回、改正の機会にこうした構想を織り込むような立案をした」ということを言っています。これは昭和32年のつまり最高裁判所の制度改革ですね。このような形でいろいろな提案があって、それから50年近くたってしまったわけですが、昭和50年代にもそれがあったということですので、何かこのような方向性を考えていく必要があるのではないかということを強く感じますものですから、審議会の意見書の中で書かれてあることでも、透明性・客観性ということを含めて最高裁判事のことも出てきているわけでございますが、審議会では余り討議しなかったということですが、今後のことを考えますと、今、この時点で、そういうことができるのかどうかわかりませんが、増員を含めた制度設計の見直しみたいなものも可能なのでしょうか。そこになると相当これは大きな法律の改正になりますね。

【伊藤座長】それはまさにここで御議論していただければよろしいかと思います。

【植村参事官】今の委員のご発言の関係で補足をさせていただきますと、昭和32年当時、こういう法律案が提案されました経緯でございますが、それは今御指摘のございました資料11−3の6ページの中程に書いてございますとおり、「諮問の背景事情」というところがございます。昭和32年の法案ができる過程で実は法制審議会に諮問があったわけでございます。
 その諮問の背景事情として書いてございますとおり、当時、最高裁判所の未済事件の増加に関連し、上告制度に関連する最高裁判所の機構改革の議論が行われていました。「当時、発表されていた意見としては次のようなものが挙げられている。本諮問も、そのような状況を背景としてなされたものである。」ということのようでございました。
 したがいまして、立法の動機といたしましては、中核を占めていましたのは、当時の最高裁判所の未済事件の増加にどう対応するか、ということでございます。その対応策としては、機構改革をいたしまして、下の欄の「上告制度改正要綱案」に書いてございますとおり、今ももちろん大法廷と小法廷があるわけですが、機構論、権限論として大法廷と小法廷をはっきり分けてしまいましょうという発想でございます。大法廷の方は、憲法判断と判例変更、こういうものに特化して、その大法廷を担当する裁判官も長官と専属の大法廷判事8名にしましょうということでございます。それとは別に、小法廷については、全員でいいますと30人で構成する小法廷を全部で6個置きまして、通常の上告事件はそこで審理をしていきましょう、こういう発想でございます。
 憲法上の最高裁判所というのは何なのかと申しますと、当時の法案にはそこら辺がしっかりと書いてあるわけですが、この改正案におきまして、憲法上の最高裁として位置づけられておりますのは大法廷のみでございます。小法廷と申しますのは下級裁判所の一番トップに位置するものという位置付けでございまして、したがいまして、最高裁判所の裁判官は誰かといいますと、長官及び大法廷判事8名だけが憲法上の最高裁裁判官という位置付けでございました。
 したがいまして、国民審査を受けていただくのも、その合計9名に限るし、このとき、構想されておりました諮問委員会につきましても、この9名だけをそこに諮問をいたしましょうと、こういう制度であったようでございます。
 ついでながら、先ほど申しました立法動機の関係で、この法案が最終的にどうなったかもつけ加えて御説明しておいた方が分かりやすいと思いますので、この際、説明させていただきます。事務局から資料を配らせていただきますのでご覧ください。
 この資料は、当時の最高裁判所の未済事件数の推移を見たものでございます。これを御覧いただきますとお分かりのとおり、戦後、刑事事件がたいへんな勢いで最高裁の未済事件として滞留するようになってまいります。そのピークが昭和26年でございます。民事事件は比較的安定しておりまして、全体の数に影響を与えていたのも刑事でございました。昭和26年にピークを迎えまして、この頃から最高裁判所の事件負担についても対策を考えないといけないという議論が沸き起こってきたようでございます。そして、その後の法制審議会の設置、機構改革論の検討、そして昭和32年の法案の提出という一連の経過になるようでございます。
 ところが、もともとの立法動機の中心を占めておりました未済事件の急増でございますが、その後、刑事事件が徐々に減少し落ち着いてまいりました。昭和32年頃になりますと、一番のピークから比べると大体半分ぐらいの未済になっております。そのようなこともありまして、この法案は一旦継続審査になったのでございますが、その後、廃案になりました。つまり当初の立法の動機は、事件負担を何とかしなければというところにあったわけですが、未済事件数が落ち着いたものですから、機構改革論そのものが、そんなことを言うと僣越かもしれませんが、熱が冷めまして、その必要性がなくなって廃案になったのかなと私どもとしては推測をしておるところでございます。以上でございます。

【木村委員】大変詳しい御説明をいただきまして、また、特にこの図をいただきまして、非常にはっきり推移がわかりましてありがとうございました。これは昭和40年までですが、最高裁の小池さんもおいでですけれども、最高裁の方は大変お忙しいのだろうと思うのですけれども、大体現在の段階ではどれくらいの未済件数があるのかということ。それに関連して、場合によっては、今の御説明では、当時の案における小法廷判事は最高裁判事ではないという御説明ですが、この上告制度改正要綱案の中には、あたかも最高裁判事であるかのような書き方になっているのですね、6ページの四角の中を見ますと。しかし、別格の大法廷の最高裁判事という何か二重構造になっているような気がしましたものですから。先ほど質問させていただきましたが、参事官の御説明でわかりました。現状から言って、最高裁は、先日、釜田委員らの調査グループから諸外国の最高裁の任免その他につきまして詳しい御説明をいただいて大変に刺激されるところが多かったのですけれども、そういう中で、数が果たしてこれでいいのかどうか、もう少し何らかの形でユニークな方向を打ち出すことができないのか。いろいろな意味でこの案件がたまっているのではないかという気もするのですが、その点はいかがでございましょうか。

【植村参事官】今の事件負担の点に関しましては、実はこの後で事務局資料の12−5というのがございまして、これは内閣官房の方でお作りになりました「最高裁裁判官の任命について」という資料でございますが、そのあたりで事件数について見ていただこうと思っております。

【木村委員】わかりました。

【伊藤座長】ほかにどうでしょうか、御質問、御意見がございましたら。今の点に関係することを事務局からさらに説明をしていただきたいと思います。

【植村参事官】それでは、事務局から、内閣官房が6月から採用いたしました運用につきまして、この機会に御説明させていただきたいと思います。事務局資料の12−4と12−5を御覧ください。
 資料12−4は、7月5日に開催されました第5回顧問会議の議事録から、6月から採用された運用についての内閣官房からの説明部分を抜粋したものでございます。そして資料12−5は、その際、説明用に席上配布された資料でございます。
 資料12−4の1ページ目から2ページ目にかけての内閣審議官の説明にありますが、資料12−5にありますとおり、最高裁裁判官の任命は、最高裁長官の意見を聞いたうえで、内閣として閣議決定するとされております。2つ目に、最高裁長官に意見を聞くのは、最高裁の運営の実情を踏まえたものとなるよう人事の万全を期すために慣例として行っているということであります。3つ目に、最高裁長官の意見は、一般的には、出身分野、候補者複数名と最適任候補者に関するものである。4つ目に、候補者については、(ア)主として裁判官、弁護士、検察官の場合は、最高裁長官から複数候補者について提示を受け(イ)行政、外交を含む学識経験者については、原則内閣官房で候補者を選考し、いずれの場合も内閣総理大臣の判断を仰いだうえで閣議決定するということであります。そして、その際、最高裁裁判官は国民審査をうける重い地位であることに鑑み、極力客観的かつ公正な見地から人選しているということであります。
 それから、最高裁裁判官の出身分野についての議論がありますが、現在の最高裁裁判官の出身分野は、最高裁の使命、扱っている事件の内容などを総合的に勘案した結果のものであるということであります。そして、出身分野については、固定しているわけではないが、裁判官出身が6名、民事5、刑事1、弁護士4、学識者5で、内訳は資料12−5に記載されているとおりとなっているということであります。なお、11月6日に退官されました藤井裁判官の後任として島田裁判官が任命されたため、現在の裁判官の内訳は、民事4、刑事2となったようでございます。
 そして、最高裁裁判官の法律上の任命資格が、裁判所法41条に規定されておりまして、識見が高く、法律の素養のある40歳以上の方で、15人のうち少なくとも10人は、①高裁長官又は判事を10年以上、それから、もう一つの要件といたしましては、②高裁長官、判事、簡裁判事、検察官、弁護士、法律学の教授等で、通算20年以上ということが法律に規定されておるわけであります。こういった①、②で書いてある方は、いわば法律のプロフェッショナルということでございまして、そういう方が法律上少なくとも10人は占めるようにとされているわけであります。その結果として、現在の出身分野が記載されたようなものになっているという趣旨の説明が顧問会議ではなされております。
 それから、最高裁の使命は、言うまでもなく憲法判断、法令解釈の統一ということですが、平成12年度の最高裁の新規受理件数というのを見てみると、約6,400件、うち民事事件は約4,500件、刑事事件は約1,900件ということで、圧倒的に民事事件が多いということであります。そして、大法廷での事件ということになりますと、平成12年度の新規受理件数のうち大法廷で扱う事件ということでございますが、8件ということで、結果としては小法廷で取り扱われる事件が大変多いということであります。
 こういうようなことを総合的に勘案した結果、今のこういう出身分野の比率になっているという説明をされております。
 そして、後任の最高裁判事内定後、官房長官記者会見で、可能な範囲で選考過程、選考理由を明らかにする。しかし、候補者を含め、具体的な人選の過程、だれとだれが候補者になってというような具体的な人選の過程は公表は差し控えるという説明をされております。
 以上が、この6月以降の内閣官房が運用について新たにとられた措置でございます。
 事件数について評価にわたる御質問がございましたが、これは私どもでお答えすべき筋合いのものとも思われませんので、最高裁がこの事件数をどう御覧になっているか、今の段階でお答えいただけるのであれば、むしろ最高裁にお答えいただくのがよろしいかと思っております。

【伊藤座長】まず、ただいま植村さんから話がございました内閣官房から明らかにされた任命について、このプロセスに関して何か御質問ございますか。どうぞ、木村委員。

【木村委員】これは明らかに、現時点で2002年6月以降ということですが、これが特に出てきたのはどなたかの要請によってこれが出てきたのでしょうか。なぜ、今の時点でこれが出てきたかということですけれども。

【植村参事官】事務局から御説明いたしますが、今のペーパーが出てまいりまして、内閣官房から御説明があったのは第5回顧問会議でございますが、それに先立ちます顧問会議で、実は顧問の方からお話がございました。今年は特にお替りになる最高裁判事の数も多いということで、意見書にある、今、皆様方にお願いしている検討を早く一生懸命やりなさいと、こういうご発言があったわけでございますが、それに対しまして、私どもといたしまして、この問題につきましては、運用面の問題と法制の面の問題と両面がございますという御説明をいたしました。
 法制面の問題につきましては、問題自体が非常に重うございますし、外国がどうなっておるのか、そのあたりも十分調べた上で検討させていただきたいというお話をしたわけでございまして、その結果、今、まさに検討の時期を迎えておるわけでございますが、運用面につきましては、私どもではなくて内閣官房がやっておられることでございますので、そのときに運用面についての御検討をお願いをしたわけでございます。
 その結果、出てまいりましたのが、第5回の顧問会議で説明されました新たな運用措置ということになります。

【伊藤座長】ほかにいかがでしょうか。どうぞ、岡田委員。

【岡田委員】これは最高裁の方からお答えいただいた方がいいのかもしれませんけど、顧問会議でも座長の方から質問されていますけど、平成10年に施行された新民事訴訟法、あれはたしか最高裁の機能として憲法解釈とか法令解釈に重点を置くようにということで、それが大きな目的になったと認識しているのですが、実際はどうなのでしょうか。今回、平成12年度の大法廷の新規受理件数を見ても、そういう案件はたった8件で、ほかは普通の三審といいますか、上告事件だろうと思うのですけど、今後、いわゆる大法廷の案件は増える可能性があるのか。それから、新民事訴訟の効果として、これからますますそういう意味では、一般の事件が減っていくのか、その辺はどうなのでしょうか。

【伊藤座長】ただいま岡田委員の御質問に関して、もし最高裁、きょうの時点で何かお話しができることがあればしていただいて、しかし、将来のことについては正確なことはわからないと思うのですけれども、過去と現在の状況、これについて必要があれば適宜また資料を補充していただくというようなことも考えられると思いますが、いかがでしょうか。

【最高裁(小池審議官)】正確なことはまた資料にさせていただきまして、概略をお話しをいたしますと、資料12−5の平成12年度の最高裁の新規の受理件数が約6,400件、うち民事事件が約4, 500件、刑事事件が約1,900件。今、席上で配られました昭和24年〜40年代のグラフの下に表がございますが、昭和40年で民事が1,947件 、刑事が1,836件という数字が出ております。刑事の方はほぼ同じ水準ということで、民事の方が1,947件から4,500件と倍増以上しているように見えます。
 ただ、実際上、これはどういうところになっているかといいますと、今、岡田委員から御指摘がありましたように、民事訴訟法の改正によりまして、これはむしろ伊藤先生が一番お詳しいわけですが、上告制度が変わりまして、「上告」というものと「上告受理」という2つの制度ができました。上告というのは、憲法違反や、法律に従って判決裁判所を構成しなかった等の法律違反があった場合になされるもので、概ね約4,500件のうちの半分ぐらいがそういう上告というものでございます。残りの半分が上告受理ということで、判例の解釈に誤りがあるとか、法令の判例違反だとか、そういうものでございますが、こちらの方につきましては、上告審が裁量によって受理することができる制度でございまして、不受理決定という比較的簡易な判断でできることになります。
 実際上、上告という方が2,500件ぐらいあるのですけれども、こちらは実務的にいいますと、明らかに憲法に違反しているというような主張はございますけれども、判断として迷うものはそんなに多くない実情という面があります。
 それから、もう一つ、これば非常に技術的なのですが、上告事件というのは上告の手続がありますけれども、上告受理を申し立てるというのは1つの書面で両方の手続を一遍にできるのです。憲法違反がございますと、これは上告という手続ですが、もう一つは、上告受理ということで、いわば法令に違反するとか解釈が違うというのは、実際上1つの書面にしていきますので、数としては、約二千数百と二千数百で合計4,500 という形になっていますが、実質1つの事件というものがございまして、今、手持ちございませんけれども、数とするとむしろ2,000件から3,000件。2,500件のプラスマイナスくらいの数で推移しているということになっています。
 そういう意味で、事件の規模としては、昭和40年頃に比べますと、刑事の方は同じような水準で、民事の方はそれよりもやや上方にシフトしておりますけれども、そんなに隔たりのある数ではないということになっています。
 それから、大法廷の判断のところは、これは回付という手続がありまして、個々の裁判の問題になりますので、その運用がどうであるとか、これからの見通しについてはお答えは差し控えさせていただきたいと思います。概略はそういうことでございます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。また、もし、さらに詳しい数字等が必要であればお願いすることにいたしまして、とりあえずよろしいでしょうか。

【岡田委員】はい。

【伊藤座長】松尾委員からお願いします。

【松尾委員】この最高裁裁判官の選任問題は、最高裁が憲法判断するということと上告審としての最終審であるということで、それを担当する最高裁裁判官がどのようにして候補者として選考され、そして任命されるかという、仕組みと流れが一般の国民には全く見えない状況になっている不透明さが問題だと思うのです。だから、その問題について改革審議会の意見書は、その点を透明化すべきであると、このように指摘していると思います。
 ただ、この意見書では、単に選任制度の仕組み・運用面を国民に透明化するように、明らかにせよというように指摘しているのか、先ほどから出ておりますように、最高裁の機構改革も視野に入れて、そこまで考えて透明化を図れと言っているのか、どうもはっきりしないのですが、現実的には運用面の透明化を図れという趣旨にしか読めないような気が私はしています。
 そうしますと、この検討会でやるのは、現実問題としての運用面の透明化について、どのようにすれば国民が納得できるような仕組みになるか、この点を限定的に検討するだけに終わるのではないかという考え方もあるわけです。
 私、基本的には、それだけではなくて、機構改革を含めた大きなとらえ方をするべきではないか。確かに昭和32年当時の背景事情とは全く今は違っているのでしょうけれども、やはりこの司法改革という大きな観点から最高裁裁判官の選任問題をとらえるときに、単なる運用面の透明化だけでなくて大きな捉え方をすべきと考えます。そうした意味で、昭和32年の段階の法律案あるいは50年代の議員立法の法律案が大いに参考になるのではないか。そこまで掘り下げて考えていくべきことではないかと思います。これは単なる法曹制度検討会だけの問題ではなくて、政治にかかわる大きな問題だと思うのですが、どうもそこまでやるようにとの改革審の意見書でもないような気も一面ではありますので、どうすべきか、迷っているというのが正直なところです。
 しかし、少なくともブラックボックス的になっている今の最高裁裁判官の選考・任命のことについて明らかになるように、何らかの客観性・透明化の手当てを考える必要があるのではないかと、現時点ではそういう意見です。

【奥野委員】1つは先ほど松尾さんがおっしゃられたことに関してなんですけれども、私は最高裁の役割は、日本が民主国家である以上は極めて重要であって、それにもかかわらず、きちんとした形で必ずしも機能していないのではないかという危惧を残念ながらずっと持ち続けています。例えば1つの例を挙げれば、いわゆる国民の投票権の問題です。この平等ということに関して、つい最近まで非常に長い間不平等を放置していたと。最近でも、私は少なくとも国民が期待しているような形の抜本的な方策をとってくれていないのではないかというような疑心暗鬼を私個人持っておりますし、そう思っていらっしゃる方も随分多いのではないでしょうか。それにもかかわらず、選任手続も不透明ですし、国民審査の制度もきちんと機能していません。
 そういう意味で、内閣の問題として選任手続の透明性ということも大事なのだけれども、それと同時に、最高裁の制度自体をもう少し様々な形でうまく機能するような形でやらないと、選任制度だけをいじっても、どうも問題としては解決しないのではないかと思っていまして、ただ、松尾さんがおっしゃるように、意見書がそこまできちんと書き込んでいるかというと書き込んでいないという問題があるわけですが、私はそこに関しては次のように理解しているので、こういう理解ではいかがでしょうかということを1つ申し上げたいことなのです。それは、ここの場で、最高裁判所の制度、国民審査の制度をこう変えましょうということを言うのは多分審議会も期待していないし国民も期待していないであろう。したがって、我々がまず最初に直接的に議論すべき問題は選任の制度の在り方ということについて議論することであろうと。ただ、選任の制度の在り方というのが、それだけで独立して議論できるかというと、先ほどの最高裁の制度とか国民審査の在り方ということにも実は関連してくるので、それだけを取り出して議論することはかなり難しいのではないか、これはやや予見になりますけれども、その可能性は否定できないと思うのです。そういう意味で、我々ができることは、選任制度をきちんと見直しつつ、それ以外の関連する機構の問題、国民審査の問題についても、その問題を指摘するということは当然できるのではないか。それをすることが我々の役割ではないかと1つは思っております。それとの関連で、今日出てきた資料12−4と資料12−5で2つほどお聞きしたいのですが、12−5の方がまとまっているのでいいかもしれませんが、上から6つ目に「現在の最高裁裁判官の出身分野は、最高裁の使命、扱っている事件の内容などを総合的に勘案した結果のもの」と書いてあるわけですね。これが任命の手続が極めて不透明なものにならざるを得ない1つの理由のように思うのです。つまり15人のうち1人か2人ぐらいしか一時期には選ばれない。それで、しかも分野というものが、民事、刑事、いろいろ決まっている。その後任を選ぶという形になっているということで、そうすると最初から枠が決まっていて、何か非常に選びにくい形なわけです。
 1つ、お聞きしたいのは、仮のこととしてなのですけれども、例えば、先ほどから議論になっているような昭和二十何年の機構改革とか外国であるような憲法裁判所的な形で、先ほどの参事官が話したケースの案で言えば、大法廷と小法廷を分けて、大法廷の方だけを、いわば憲法裁判所の部分だけを国民審査にするというようなことになった場合には、分野の制約はかなり外れてくるものなのでしょうか。最終的なお答えは難しいと思いますけれども、印象としてどうなのかというようなことを1つはお伺いしたい。それは透明性を確保する上ではかなり重要な論点の1つではないでしょうか。
 もう一つは、岡田委員がお聞きになられたこととも関連するのですが、資料12−5の一番下の※のところに大法廷案件が8件と書いてあるのです。私は正直言って、これは民主主義国家として、極端に言いますと恥ずかしい数字だと思っていまして、憲法の問題、判例変更がこれだけ見直しもされないし、放置というのは少し言い過ぎだと思うのですけれども、ほかの国はもうちょっと多いのではないかというのが私の直感なのですが、ここら辺の、例えば憲法裁判所が分かれている場合には、この部分はもう少し増えるものなのでしょうか。それ以外のこの6,400件とかということにどういう影響を与えるものなのでしょうか。そこらの辺のところをお聞きしておきたい気がするのです。

【伊藤座長】御質問の趣旨はよくわかりまして、ただいまの奥野委員の御質問については、これもここで議論していただかないと、最終的には整理のつかない問題かと思いますが、例えば前半の方のお話については、前回の外国のいろいろ憲法裁判所の制度もあって、憲法裁判所的なものといってもいろいろあるのですが、全く抽象的に憲法判断だけをやるという制度の場合と、アメリカ式に個別事件の審査を通じて憲法判断をやるという場合、日本は後者の考え方を採っているのですが、そういう個別事件を通じてということをもうやめてしまって、抽象的な憲法判断だけをやるということになると、全くこれは風景が変わってきてしまって、当然さっきおっしゃったような出身の母体といいますか、これも余り意味がなくなってくるように思います。ただ、そうではなくて、一応個別事件、民事であれ、刑事あれ、行政であれ、個別事件を通じて憲法判断をするのだという建前を維持したときには、それほど現在の状況と極端に変わるかというと、その辺はまた議論があるところではないかと思いますが、私の印象をお話ししただけなものですが、ほかの委員の方も今の奥野委員の問題提起についてお考えをお聞かせいただければと思います。どうぞ、中川委員。

【中川委員】私、先生の御質問に直接お答えすることにならないと思うのですが、私も非常にフィーリングが似ておりまして、最高裁裁判所が制度疲労というとちょっと語弊がありますけど、活力が少しなくなっているのではないかと思います。世の中どんどん進んでおりますし、進みに合わせた、合わせるというと、法律がありますからおかしいのですけれども、物の考え方なり、もう少し社会を進めるという姿勢があってもいいのではないかと思っているのです。非常に保守的といいますか、むしろそういうセンスが薄いのではないでしょうか。
 特に、私もちょっとアメリカにおりまして、具体的な事件で連邦の最高裁まで行ったことがあって、そこでの議論とかやり方を見ておりますと、これは行政より一歩先へ出ているような感じもありまして、あれはちょっとやり過ぎではないかという面もあるのですが、三権が足並み揃えて社会の歩みを作っていくという、そういう何か姿勢が欲しいなという感じがしております。そういう観点から見ると、若干、最高裁が後ろを向いてしまう、背中を見せている、前を向いてないという感じを非常に強く持っているのです。
 そういう意味では、ここでの議論ではないと思いますけど、ぜひ最高裁の在り方というものをもう一度国民の代表といいますか、しかるべきところできちんと議論するのは非常にこの際意味があるのではないかと思っております。
 したがいまして、きょうの議論はその中のごくごく一般なものですから、一環にしかすぎないので、小さな問題だと思うのですが、今日の議論に限って言えば、プロセスを透明化しろという問題なのでしょうか。ちょっとその点では松尾先生と意見が違うのですが、プロセスではなくて、最高裁判事として選ばれた方の顔が見えないといいますか、本当に国民の最高の判断者として、その人たちを信頼していいのかどうかという判断ができにくい。何かある日、突然元高等裁判所の長官とかという形で出て来られまして、内閣官房長官が発表するというだけですから、その方が本当に最高判断者として任せていいのか、信頼していいのかということについての判断ができないという点がむしろ問題なのではないでしょうか。そのプロセスというよりも、人物についての信頼性を何か説明していただくということの方が大切ではないかと思っておりまして、今の現行法律ですと、15人中10人は法律家でなければいけないわけですから、この部分はそうしなければいけません。ただ、5人の枠がありますから、そこはどうするかという問題ありますよね。それが固定化しているというのは大変おかしいと思いますし、それこそ時代時代によって必要な人を持ってくればいいわけで、そこは全然固定化する必要はないと思うのですけれども、結局、どういう人が選ばれたのか、どういう人だというところに問題があるような気がしておりまして、それをどう工夫したらいいかというような感じがするのです。
 ちょっとばらばらの話になって恐縮です。

【伊藤座長】先ほど、佐々木委員どうも失礼しました。

【佐々木委員】今、中川委員がおっしゃった点に関連して、質問に戻りますけれども、資料12−5で、今質問された部分で一番下の部分、選考過程の顔、裁判官の顔の説明ですね。最高裁裁判官の任命の際の内閣からの説明は、新聞等では拝見しているのですが、具体的にはどういう点を説明されているのか、もしおわかりになれば、そのあたりはどうでしょうか。

【伊藤座長】一番下の選考過程、選考理由を明らかにすると、この部分ですね。

【佐々木委員】はい。

【植村参事官】それでは、事務局の方で6月以降、最高裁裁判官任命に関する官房長官の記者会見における公表内容に関する資料を用意いたしましたので、それを御覧いただきたいと思います。2枚にわたる紙でございますが、読んでいただければおわかりのとおり、経歴をまず御紹介して、それから、その方特有のというと語弊があるかもしれませんが、弁護士出身の方は弁護士会でどのような活躍をされてこられたとか、学者出身の方は学者のお仕事をもちろんされ、そのほか国のいろいろな行政の分野での御活躍の様子なども紹介がされております。それから検察官の方も、これまでどういう御活躍をされてきたのか紹介があります。
 それから、最後のところでは、最高裁長官の人事がございまして、その関係では、そういったものに加えまして、真ん中あたりにございますが、「顧問会議でアピールされた2年以内に判決が得られるよう、裁判の充実、迅速化を図る等の司法制度改革の推進の必要性について認識を共有しており、最高裁長官として適任である」といったような御説明もございます。
 それから、一番下には、お二人の裁判官につきまして、「司法制度改革の推進の必要性について十分ご理解をいただいており、適任である」というような紹介も見られるところでございます。以上でございます。

【伊藤座長】佐々木委員、いかがでしょうか。

【佐々木委員】この点について、中川委員の質問との関連では、国民審査の問題を次回あたりやられるのでしょうか。国民審査の点ですね。

【伊藤座長】ここでですか。

【佐々木委員】はい。

【伊藤座長】はい、そのように予定しております。

【佐々木委員】その際に、何らかの提案とかそういうものはあるのでしょうか。そこの部分。

【植村参事官】事前に座長にお諮りして、内々の予定として考えているところでございますが、前回、調査グループの先生の方から、我が国の制度につきまして、事後的なものであるけれども、ということでございましたけれども、世界的にもまれな、非常に客観的、透明な制度として国民審査制度というものがあるというようなお話もございました。この問題については、近接して御検討いただいた方がよろしいと思っておりまして、次回11月28日には冒頭、国民審査の関係で御検討をお願いしたいと思っております。具体的には総務省が国民審査の関係の具体的なことを担当されておりますので、総務省の御担当の方に来ていただいて、国民審査の関係で、特に意見書で言っております、対象となる裁判官の情報開示の問題についての御説明をしていただきたいと思っております。それから、最高裁でもホームページ等を通じまして、最高裁判事の御紹介をされておりますので、そのあたりについて、最高裁からもお話を伺いまして、その後、御議論をいただきたいと考えております。

【釜田委員】最高裁の人事の問題は、結局この55年間の日本の最高裁裁判所の業績・足跡といいますか、それをどのように評価するかということによっていろいろ違ってくると思うのです。ただ今ここでも出ておりましたが、日本の最高裁判所につきましては、非常に抑制的で消極ではないかという意見は、割とこの間いろいろな方面からあったことは事実です。そういうときは比較の問題ですから、どこかと比較してそういう評価が出てくるわけですが、大体比較の対象になりますのは、この前、調査しました国との関係でいきますと、200年来の業績を持っていますアメリカの連邦最高裁ですね。もう一つは、日本と同時期くらいからスタートしましたドイツの憲法最高裁判所が大体比較対照として挙がってくる場合が多いわけです。
 これはここで、我々ちょっと見落とす点がございますが、この2つは連邦国家なのです。ですからアメリカの最高裁は、よくたくさんの違憲判決を出しているというように報道されます。確かに日本の新聞等でも、日本の東京で下されました最高裁の判決のニュースをカバーする量より、場合によってはアメリカから打電されてきた向こうの紹介記事の方がたくさんの紙面をさいているというような非常におもしろい現象も起こるわけですが、それは大体が州の法律に対する違憲判決が多いのです。日本の最高裁55年の業績について、その間に数件しか十に満たない法令審査、法律を違憲にした数は少ないのではないかとよく言われますが、私はそのときに、アメリカのスタート時から55年ぐらいたった時点でアメリカの最高裁はどのくらい出していたのか、同レベルの連邦の議会の法律を憲法違反していたか。アメリカ建国当初から。いわゆる連邦議会の法律を憲法違反にしたというのは、60年くらいで2件なのです。ですから比較の仕方によっては、日本の最高裁はそれ以上の法律に対する違憲判断を下しておりますから、場合によったら、スタート時からを比較すれば、日本の方が数が多いというような評価も可能であるわけです。いろいろな実態問題、社会問題に対して、どのように判断を下しているかということを言いますと、アメリカの場合は50州の多様な法律が入ってきますから、最高裁判所はそれを統一する機能、統一化を図ろうという姿勢がございますから、勢い地域的にたくさんの法律を憲法違反にすると。それは全国のいわゆる基準から見て指示することができないと、そういう形のものが多いのですね。ですから単一国家の日本の場合とちょっと状況が違います。今後も日本との比較で、恐らく比較対象の方が積極的ではないかというのが出てくる可能性があるのはEUの裁判所がやります司法審査権、ヨーロッパの人権裁判所ですが、これは全部連邦型のものです。ですから全国の統一のルールをつくる、全国統一の憲法規範を宣告するという意味でかなり積極的な活動が目立ってくると思うのです。
 しかし単一国家の場合には、英国に見られますように、議会との関係が非常に重要になってまいります。日本の憲法は議会を国権の最高機関と位置付けておりますから、日本の最高裁は55年間、それとの関係をどのように調整していくかということで非常に自制的であったという見方もできるのです。これはお一人お一人の全国民数だけの評価があり得ることなのですが、その辺も総合してみますとどうだったのか。それが必要だと思うのですね。実際にどういう点の違憲の判断が日本で下されてきたのか。例えば、先ほどおっしゃいました定数不均衡の問題、あれは30年来続いておりますから、非常に国民も関心を持っております。しかし、30年間あの問題にかかわってきた日本の司法部は、あれはアメリカと比較しますと、アメリカも実は1960年代の初頭なのですが、それとほとんど1年違いくらいで日本の司法部もあの問題に関与しました。それから30年間、国会との間のやりとりを通じまして、結局衆議院の方は、国会自身が改正をしまして2倍以内におさめるというような方向へ行ったわけですね。ですから、その辺の時間、30年間やりとりを通じて改めていくというやり方をどう評価するかという問題と関連しているのです。1〜2年で裁判所が突出して、議会・行政に代わって改革の青写真を引いていくというのがいいのか、あるいは問題を投げ返して、日本の場合、議院内閣制になっていますから、本来の役割領域である議会が内閣と一緒になって考えて改革するという方が、時間はかかっても全体としていいのか、そういうあたりのことももうちょっと関連していると思うのです。
 この前の調査は外国調査だけでございましたから、あれと比較して、日本の部分が報告書の中にはなかったわけですが、あそこで日本を登場させまして比較をしますと、なかなかおもしろい図が出てくると思うのです。そういうこともちょっと人事問題は関連しているのかなと思います。だから、今までの業績と裁判官の人事問題をどのように結びつけて評価するか。一つの尺度は、実際に国民審査で罷免された方はいなかったという、これは客観的に確認できることなのです。そういうあたりも総合的に、先ほど国民審査のことも言っていましたけれども、あれとの関連もありまして、全部をひっくるめて、一回考える必要がある問題ではないかという印象ですね。私、調査の後にはそういう印象を持ったところです。

【伊藤座長】木村委員、どうぞお願いします。

【木村委員】釜田委員から大変重要な御指摘をしていただいたと思うのですが、我々のこの検討会は、意見書などを見ましても、相当大事な任務を委ねられているという感じを私は持っております。確かに松尾委員から御指摘がありましたように、実際にそれを読んだ中身はそこまで言ってないのではないかということなのですが、しかし、意見書の99ページをよく読んでみますと、制度的な面も含めて、例えば昭和22年の裁判官任命諮問委員会の制度などにも触れながら、措置の検討への期待も含めた提言になっていると思うので、これは単なる運用とかそういう面ではなくて、制度面も考えておくべき時期に今来ているのではないかと私自身は思っています。私自身は日本の司法が、かつて1950年代のことですけれども、田中耕太郎最高裁長官が世間の雑音に耳を貸すなと言っていた時代から、私が外国から帰ってまいりました2000年には非常に大きく司法部は変わっておりまして、相当これは首脳部におられる方々が、国民のために開かれた司法、国民の意見を聞いていこうというふうに積極的に変わっていると私自身は大きな期待をしておりまして、最高裁の判事を辞められた方々の中にも非常に積極的に新しい方向性を出していくことに意欲を持っておられるという印象を持つものですから、我々もこの際、非常に真剣にこの問題については考える必要があるのではないかと思うわけです。
 例えば、今朝の新聞などを見ましても、司法改革国民会議でございますですね。顧問会議の何人かの方々がメンバーに入っているということですけれども、そういうことで非常に司法についての積極的な提言をしているという状況を踏まえて、検討会としても、むしろ今の時点で相当積極的な意見を出していくような方向で、最高裁判所の判事の任免について、特に制度的な面も含めた検討をする必要があるというのが私の考えです。

【伊藤座長】本日、いわば自由討議で、また、取りまとめ等につきましては、次回以降御相談しますが、とりあえず委員それぞれの方、まだ御発言のない方にも、本日の段階で御発言いただいておいた方がよいように思います。どうぞ、平山委員。

【平山委員】私は、この司法制度改革審議会意見書の99ページになると思いますけれども、これは我々は重く受けとめるべきではないかと思っておりまして、私自身は今の最高裁判事、最近任命された方も含めまして、個人的には非常に素晴らしいと思っております。恐らく今どのような方法を用いてもああいう顔ぶれを揃えることは非常に難しいくらいに素晴らしい人だと評価いたしております。
 ただ、問題は、仕組みとして、現在たまたまいい方が就任されているということでいいということにはならないというのが意見書の趣旨ではないかと思うのです。そうしますとそのやり方としては2つありまして、機構改革も含めて行う方法、奥野先生も背景としてはそういうことをおっしゃっておりますが、これはなかなかこの委員会でやるのは難しいと私は思っておりまして、議論するのはいいと思いますけれども。もう一つは、選任等に限っての制度改革です。つまり、機構改革までは含まない改革であります。この前、外国調査もしていただきました結果からも理解できるとおり、我が国の今の憲法が予定している最高裁判事というのは司法裁判所だと思うのです。憲法裁判所的なものを含めた、両方を含めた司法裁判所だということを前提にして、その裁判官をどうやって国民の信頼を得られるような仕組みにするか、こういうことではないかと思っておりまして、そうなると我が国の最高裁裁判官に対する国民の信頼というのは何かといいますと、1つは司法裁判所裁判官としての信頼、つまり憲法裁判だけでなくて、一般の事件をきちんとやっていきますので、それにはそういう実務を経験した人がかなりな数いなければいけないという問題が1つ国民の信頼としてあると思うのですね。
 もう一つは、この前も学者のどなたかがおっしゃっておりますように、立憲国家ですから、最終的な法律は最高裁判所が作るのだくらいの気概を持ってもらう必要性がある。そういう意味では、政治的にもかなりきちんとした意見を言える裁判官を必要としているのだろうと。それは国会とかそういうところに、その意見に従うということではなくて、国民のいわば少数者のためにもきちんとした政治的発言もできるような裁判官、それがやはり国民が期待している、国民の信頼をこの意見書が言うようにつなげる制度ではないか。このような2つのモメントがあると思います。
 そうすると、現在たまたまいい裁判官がこのところずらっとおられまして安心ですけれども、制度として見た場合には、国民の2つの信頼を担保する制度を考えていかなければいけない時代にきているのではないでしょうか。これまで今日お話いただきましたように、各時代で何度か最高裁判所の任命に関する諮問委員会構想が出てはつぶれていっておりますけれども、出てきたゆえんは、そういう制度をきちんとしておかないと、例えば政治はどのように動くかわかりませんよね。そういうときに国民全体が信頼できるような最後の砦としての最高裁判所に守っていただける。そういう国民の信頼をつなぐのにはどうしたらいいかということがあるのではないかと思いまして、そういう意味では、これは審議会が言っているように、議論はきちんとして、できないものはできないということでいいと思いますけど、きちんとした議論をしておくべきだと思っております。それには審査基準、審査方法あるいは手続、そういうものについては、仕組みを作っていくのが今我々としては大事なことではないでしょうか。現在の裁判官が、例えばトップの人格者揃いでありまして、裁判の中身も非常に充実してきていると私は思っておりますけれども、それを制度として担保していかなければいけない。そうでないと国民の信頼を最終的につなぐことが非常に難しいのではないかと思っておりまして、日弁連なども相当何回も何回もこれはチャレンジして意見を言ったりしてきておりますけれども、国会でもそういう議論がありますので、特に審査基準とかそういうことについての客観性・透明性、そういうことについて、日弁連が今4人の裁判官を推薦しているわけですけれども、そういうときにはどういう方法をとっているかというようなことについても、できれば御参考にお聞きいただき、ぜひ議論を活発にしていただく。これをやっていただくことが、どこか別なところで今後おやりになるにしましても非常に大事なことではないかと思っておりますので、きょう担当副会長が来ていますので、何か資料などを持っているようですので、ぜひお聞きいただければと思っております。

【伊藤座長】平山委員からの御希望ですね。

【平山委員】そうです。

【伊藤座長】委員から、そういうご希望があるようですので、日弁連の方、それに対応して御説明をいただければと思います。

【日弁連(川中副会長)】担当副会長の川中でございます。後ろの方からで申し訳ございませんが、資料を用意いたしましたので、日弁連が最高裁裁判官候補者を推薦する手続について、どのように行っているかを簡単に御説明申し上げたいと思います。
 資料として、「日弁連最高裁判所裁判官推薦諮問委員会に関する資料」というのを出させていただきました。最高裁判所裁判官推薦諮問委員会という資料がございますが、これは昭和48年に理事会で議決されて、その後、何度も改正を重ねてきております。平成5年まで民主的に機能しなかったというようなことがあるものですから、平成5年に運用基準を制定いたしまして、それが後ろの方に付いている基準でございますが、それに基づいて全国から候補者を募って推薦するという手続に変わりました。A4で1枚のペーパーで、「日弁連における最高裁判所裁判官候補者推薦方法」というのがございますが、これに基づいて簡単に御説明申し上げていきますと、まず日弁連が最高裁裁判官の定年退官が予想される年月日の大体1年ぐらい前に、次期裁判官候補者でふさわしい人がいれば推薦をしてくれという依頼を各弁護士会に通知いたします。推薦期間は大体3、4カ月ぐらいの期間をおいて、そういう依頼をいたしまして、その依頼を受けた弁護士会は全会員にそういう依頼が来たということを徹底いたします。その中から自薦または他薦で、最高裁裁判官にふさわしいと考えられる人が推薦されてきます。それを各弁護士会がそのまま右から左に取り次ぐのではなくて、各弁護士会で弁護士推薦委員会あるいは常議委員会で審査をいたしまして、その弁護士会が責任を持って推薦できる人物かどうかを十分審議をして、これでふわさしいというような結論が得られたら、弁護士会連合会で推薦をして、そこから日弁連にこういう人がいいのではないかと推薦をします。日弁連は、各ブロックの連合会から推薦されたきた何名か、1人のポストに対する推薦の場合でも十数名推薦されてくることがございますので、そういった人たちについて、だれが日弁連として責任を持って推薦できる候補者としてふさわしいのかというようなことを諮問をいたします。その諮問をする日弁連の最高裁判所裁判官推薦諮問委員会の構成と審議の内容について簡単に御説明申し上げますが、これは会長とか前年度の会長、事務総長、それから東京三会と大阪という大会から各1名、各弁護士連合会から各1名の委員で構成されております。それであらかじめ推薦基準を決めておきまして、平成13年に決められた候補者の推薦基準は、この資料の中にありまして。

【伊藤座長】ちょっと時間の関係があるものですから簡潔にお願いできればと思います。

【日弁連(川中副会長)】もう終わります。この推薦基準に基づいて推薦をしまして、候補者となっている人、一人について30分ぐらい面談をし、所信表明もしてもらい、質問もし、それで適正な人を推薦するというような形で、1のポストについて4人ぐらいの候補者を日弁連の会長から最高裁最高裁判所の長官あてに推薦していくというようなことをしております。時間がないようですので、以上、また御質問があれば、お答えさせていただくことにしたいと思います。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。

【奥野委員】今の件に関して1つだけ質問していいですか。

【伊藤座長】どうぞ。

【奥野委員】今までの過去のケースで、弁護士枠というような、弁護士の方がお辞めになられたケースで、日弁連の推薦でない方が任命されたことはあるのでしょうか。あるいは今までは日弁連の推薦というのが基本的に前提になっているのかどうかということをお聞きしたい。

【伊藤座長】どうぞ、そういう例があるかないかだけ。

【明賀弁護士】日弁連の明賀です。今行っている推薦委員会の中で日弁連が推薦した以外から選考されたことはありません。ただ、日弁連の中で順位をつけて推薦していますが、そこでどうなっているかは不明な状態です。

【伊藤座長】ありがとうございました。

【松尾委員】1点、質問。

【伊藤座長】今の日弁連のお話についての質問ですか。

【松尾委員】質問です。公表をするということになっておりますが、これは弁護士会、いわゆる会内に対する公表ですか。それとも一般に対する公表なのでしょうか。

【川中日弁連副会長】今のところは会内でございます。

【松尾委員】会内だけですか。

【川中日弁連副会長】任命されれば、任命された報告ということで、今日お配りした資料の3に(1)と(2)がございますけれど、(2)の方はもちろん会外にも向けて報告いたします。

【伊藤座長】よろしいですか。それでは田中委員。

【田中委員】今、日弁連が推薦して、推薦した者が任命されなかったことはないとおっしゃったのですが、昔は、弁護士が5人だったのですが4人になるときに、そのときには弁護士会も納得して4人で結構ですと言われたのでしょうか。そのあたりが不透明なので、弁護士会の中では透明にやっていらっしゃるかもしれないですけれども、一般人の目から見れば、なぜ裁判官が6人で弁護士が4人で、一体そういうのはどこで決まっているのか、必ずしも納得してないと思うのです。選ばれた人についてどうのこうのとは言わないですけれども、こういう仕組み自体、それほど納得していないと思うので、そういうプロセスについて、一般人がわからないところで何かやっているのではないかというところはあると思うので、そのあたりはどうなのでしょうか。

【明賀弁護士】推薦された者以外から指名されたことがないというのは、平成5年に、この新しい制度つくった以降の話でして、平成5年以前の話はまた別の話ですので、それはまた御説明いたしたいと思います。

【川中日弁連副会長】今、田中先生がおっしゃった、5名から4名に減った経緯はもう一回調べまして、また、御報告申し上げます。

【伊藤座長】御説明や御報告をいただくかどうかについては、今後、事務局とも相談して決定させていただきたいと思います。あと岡田委員、小貫委員いかがでしょうか。岡田委員から。

【岡田委員】もう皆さんから出尽くしている感じですが、私たちが選挙のときに、最高裁の裁判官については国民審査で「×」とかやるわけですから、そういう面では、最高裁の裁判官というのは、私たちから見える形にしていただきたいし、そのためのシステム、制度は絶対必要だろう、そのように思います。

【伊藤座長】ありがとうございました。どうぞ、小貫委員。

【小貫委員】私も最高裁の在り方とか機構論という制度論を議論すべきだという意見はよくわかりますけれども、ただ、この検討会で議論するかということについては疑問を持っております。もともとこの会は、最初第1回で話があったとおり、意見書を具体化する、これを実行に移していくという役割を担って発足していったのです。だとしますと、憲法論まで踏み込んだ機構論、制度論という幅広い、あるいは深い議論をする場として果たして適当なのだろうかなと、このようにに思うところがございまして、いろいろそれにはそれに適する専門家もおられるでしょうし、そういったところで別途御議論いただくのがいいのではないのか、このように私自身は思っております。以上です。

【伊藤座長】どうぞ、田中委員、お願いします。

【田中委員】私もこの検討会でどれだけの議論ができるかという問題があると思います。裁判官の任命過程の透明化ということだけが議論になっている感じなのですが、適任者を選ぶという話になってくると、最高裁の位置づけとか最高裁の裁判官に対して何を期待するかという選任の基準の問題があると思うので、この点にどの程度踏み込めるかという問題はあると思うのです。それと絡ませて議論していかないと、余り適切な検討はできないのではないかという感じで、印象としては、私も奥野委員とか中川委員のおっしゃった問題点はかなり深刻な問題で、このあたりをスキップして、透明化さえ図れば、本来の期待されている機能を最高裁が果たすようになるというような形だけに議論を縮減してしまうとちょっと問題あるのではないかという印象を持っています。ただ、どの程度この問題をここで議論できるかいうのは難しい問題ですから検討しなければならないと思いますけれども。

【伊藤座長】どうぞ、奥野委員。

【奥野委員】私も小貫委員がおっしゃったことは基本的によくわかって、私が最高裁判所の機構作りみたいなことに対して知見を持っているかといえば、それは持ってないに決まっているのですけれども、今、田中委員がおっしゃったことも含めて、1つは選抜ということを考えるのは事前の選抜であって、それは事後のチェックと組み合わさったものだろうというのが1つだし、それから事前の選抜とか事後のチェックというものは何をやるのかということにもかなり関わってきて、そこでどうも今のやり方が問題あるのであれば、少なくともそこを見直した方がいいですよというぐらいのことに関して言う知見ぐらいは我々は持っているのではないかと思います。それさえないような我々だったら、そもそも選抜するということに口を出すべきないのではないかということで、最終的なところまで言わないにしても、問題点があるかというチェックぐらいはすべきだし、問題点がありそうだったらそれは言うべきではないか、これはさっき申し上げたことです。
 それともう一つ、申し上げたいのは、釜田委員がおっしゃったことに関わるのですけれども、日本の最高裁がそれなりに苦労されているということは非常によくわかって、とりわけ日本の、これは連邦国家がどうかという問題とは別の、いわゆる日本国憲法のもたらした問題、作り出した最高裁の問題点があって、日本の最高裁は非常に苦労されてきているし、みんなが納得するような形ですぐ動けるような状況にはなかったということも確かだと思うのですね。しかし逆にそれがある種のしがらみをつくってしまって、最高裁と国民との間に距離を作り出してしまったということも他方では事実だと思うのです。
 そういうことで考えていくと、今、司法改革というのが、事前裁量から事後チェックへという形の裁判ということを三権の中できちんと考えましょうという話になりつつあって、その1つの流れに入るのかどうか知りませんけれども、憲法自体に関しても国民の感情が少しずつ変わりつつあって、恐らくそんなに遠くない時代に日本国の憲法というものが、これは政治的にも法律的にもかなりきちんと見据えざるを得ない状況が来ると思うのです。そのときに今の最高裁判所でいいのかということも問題としてはあって、そこまで考えればせっかくの機会だから少し考えてみると。もちろん、そこで我々が最終的な結論までは出ないにしても、問題がありそうだったらば、そういう問題提起だけはしておくことが、せっかくの意見書があるわけですから、そういうチャンスではないかと私は思うのです。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。松尾委員。

【松尾委員】先ほども申し上げましたけど、要するにこの検討会でどこまでやれるかというのは限界があるような気がします。それは皆さん共通した認識だと思うのですが、ただ、言いたいのは、この問題は矮小化して物を考えたくないということです。最高裁の在り方というものをこの機会に広く大きくとらえる形で論議したい。ここでもちろん結論が出るものではないし、具体的な仕組みでどうすればいいという方向性は出ないかもわかりませんが、検討会の議論を顧問会議などを通じて政治のサイドに反映させるというようなことまで考えていかなくてはいけない問題かと思っております。

【伊藤座長】それぞれの御意見については反論や再反論多々あると思うのですが、大体皆さんそれぞれの御意見はお話いただきましたので、次回はそれを踏まえて議論を続けさせていただくことにしたいと思います。
 それでは、大体予定の時刻がまいりましたので、本日の議事はこのあたりで終了したいと存じます。次回は11月28日午後1時30分から4時30分までを予定しています。冒頭に、先ほど植村さんから話ございましたが、最高裁裁判官の選任の在り方についてのもう一つの論点であります、国民審査制を取り上げて、審議会意見や推進計画にありますとおり、審査の対象となる裁判官に関する情報開示の充実などの観点から議事を進めるために、審査公報の作成等に関与している総務省、ホームページなどで最高裁裁判官についての広報活動に努めている最高裁から、それぞれお話をいただきたいと思います。その後に、今回の議論に引き続きまして、最高裁裁判官の選任過程についての透明性・客観性を確保するための適切な措置について議論をいただきたいと思います。さらに、その後、「裁判官の人事制度の見直し−裁判官の人事評価について、可能な限りその透明性・客観性を確保するための仕組みを整備すること」につきまして議事をお願いしたいと思います。この問題につきましては、7月22日の第7回検討会におきまして、裁判官の人事評価の在り方に関する研究会の報告書について、最高裁から報告をしていただきました。その後、最高裁では、この報告書に基づいて人事評価制度の検討を続けてこられて、検討も熟してきたということでございますので、最高裁から検討状況の説明をお願いしたいと考えております。以上でございます。
 どうも、本日は長時間ありがとうございました。ご苦労さまでした。

(以上)