① | 総務省からの説明
総務省配布資料「最高裁判所裁判官国民審査の概要について」及び「最高裁判所裁判官国民審査公報」に基づいて説明がなされた。 |
② | 最高裁からの説明
最高裁配布資料「最高裁判所裁判官に係る情報開示の充実方策について」に基づいて説明がなされた。 |
③ | ①、②の説明に対して、次のような質疑応答・意見交換がなされた。(○:委員、●:事務局、■:座長、△:最高裁、▲:総務省。以下、同じ。) |
○:昭和22年以降、審査公報に字数制限が設けられたとのことであるが、1000字になった理由は何か。また、審査公報に顔写真を掲載してはどうか。
▲:1000字となった理由については、記録に残っていない。その3年後に公職選挙法が改正され、参議院議員の選挙公報に500字の字数制限が設けられた。それとの比較においても、1000字は大きな数字であると思う。審査公報に顔写真を掲載することは、技術的には可能であると思う。
○:審査公報は、紙面だけのものなのか。例えば、選挙のときの政見放送のように、審査公報の内容をテレビで紹介したりすることはできないのか。最高裁のホームページはすばらしいと思うが、パソコンを使えない者にも配慮した方策は採れないものか。
▲:衆議院議員総選挙時の国民審査における情報提供は、審査公報のみである。国民審査は解職の制度であり、選ばれることを目的として立候補者が競う選挙とは性質が違うと思う。選挙と国民審査とを同列に扱うことには、慎重な検討を要するのではないか。
△:選挙の直前になると、マスコミ各紙が最高裁判事の紹介記事を掲載しているが、最高裁として行う平素からの情報提供となると、なかなか難しいと思う。広報誌「司法の窓」は、情報提供の一つと見ていただきたい。
○:昭和22年以降、国民審査の投票方式に関し、内部的にであってもいいが、見直しのための検討を行ったことはあるのか。
▲:罷免の可否を決めるという方式を改善するための積極的な検討を深く行ったという経過はないと承知している。
○:司法制度改革審議会の意見書では、国民審査制度の形骸化が指摘されていることが書かれているが、制度の担当者の目から見ても形骸化していると思うか。また、審査公報には「最高裁判所において関与した主要な裁判」を掲載することとなっているが、憲法79条1項は「最高裁判所の裁判官の任命は、・・・国民の審査に付し」と規定されていることから「任命」が審査の対象と考えられ、最高裁判事に就任した後の情報だけでなく、もっと任命時における当該裁判官の情報の充実を図るべきと考えるがどうか。
▲:これまで一人も罷免を可とされた裁判官が出ていないことをもって、国民審査制度が形骸化しているとするかは、判断しかねるところであるが、緊張感を持った制度であると言えると思う。また、任命時の情報については、「その他審査に関し参考となるべき事項」として各裁判官の判断により掲載すべき事項ではないかと考える。
○:例えば、審査公報に最高裁裁判官の紹介のホームページのアドレスを掲載したり、関連機関のホームページをリンクさせたりすることができれば、より充実した情報提供ができると考えるが、現状はどうなっているのか。
▲:この問題に関連して、選挙運動にホームページを利用できないかがいろいろな研究会で議論されたことがあるが、選挙公報に掲載したアドレスの間違いやインターネットの技術上の問題で立候補者に不平等が生じるのではないかとの配慮から実現するに至っていない。国民審査に関して具体的に検討したことはないが、同様の問題は当てはまると考える。
△:最高裁のホームページのリンク先はそれほど多いとは思わないが、今後の検討課題とさせていただきたい。
○:国民審査制度に関する国民の意見を受け付ける窓口は、総務省にあるのか。
▲:意見募集の窓口は、首相官邸のホームページや総務省のホームページにもあり、選挙に関する問題については様々な意見が寄せられている。しかしながら、国民審査に関する意見が最近寄せられたという記憶はない。
○:現行の国民審査制度の投票方式は、罷免を可とする裁判官に「×」を記載することになっているが、一般国民からすると、何をすればいいのかよくわからないのではないか。投票方式から見直す必要があると思う。また、各裁判官に関する情報としては、例えば、現在の司法制度改革の動きについてどのように考えているかをインタビューして、それを映像として公開するといった方法も考えられる。
○:国民審査は解職のための制度だと言っても、国民から見れば、社会正義実現の最後のよりどころとなる最高裁の裁判官を初めて審査する機会であり、そういう意味では、選挙と同列に扱って、情報提供してもいいのではないか。国民が関心を持たないのなら、それで結構という姿勢ではなく、どうすれば関心を持ってもらえるかを考えていく必要があると思う。
○:投票方式については、「○×」方式も検討すべき時期に来ているのではないかと思う。国民審査制度は、本日のテーマの一つである最高裁裁判官の選任過程の見直しの問題とも深く関係する。やはり、任命前の情報も開示する必要があると思う。
●:(事務局参考配布資料「最高裁昭和27年2月20日大法廷判決」に基づき説明)
現行の投票方式は、国民審査制度を解職の制度とする本判決によって是認されており、司法制度改革審議会においても、この点についてのやり取りがあったものの、意見書においては、具体的には、「審査対象裁判官にかかる情報開示の充実に努める」と記載されていることからも、本日の議論は、情報開示方策の充実を中心としていただくよう御理解をいただきたい。
○:国民審査制度の本質は、不適格者の排除にあると思う。そのための情報としては、各裁判官が、どのような意見をどのような立場で述べたかが重要であると考える。この点を踏まえた上で、公報の在り方として選挙公報により近づけていく姿勢が大切であると思う。
○:国民審査がリコール制度であることには十分配慮する必要がある。選挙は、選ばれるために自分を売り込む必要があるため、選挙公報にも自由を与える必要があるが、国民審査の場合、公報のでき具合や、ピーアールの上手・下手によって「×」がつくのはいかがなことかと思う。最高裁裁判官として適格性があるという観点で国民に理解してもらうために必要な情報というものは、おのずから決まってくるのではないかと思う。
○:最高裁裁判官として資質・能力が明らかに欠けている人を事後的に排除する目的のために、多くのことを根堀り葉掘り聞くのは相当ではないと思う。例えば、経歴だけでなく、その人の業績、功績、実績がわかるような事項や、司法に関するものの考え方等を書いてもらうのがいいのではないか。
○:国民審査制度は、裁判官に対する国民の関心が高いアメリカで定着してきた制度を参考にしたものであるが、日本の場合は、裁判官に対する関心が薄いところに制度だけが入ってきた面がある。この制度を実効化するためには、公の文書だけに頼らずに社会全体として、国民審査に関係する可能性のある者が関心を持って情報を集積し、また、国民自身も関心を持って情報を集める姿勢が必要であると思う。
○:裁判官出身の最高裁裁判官の場合、就任前の下級審での判決を掲載することは制度上可能か。
▲:最高裁判所裁判官国民審査法施行令第26条には、「最高裁判所において関与した主要な裁判その他審査に関し参考となるべき事項を掲載する」とあり、当該裁判官が下級審での判決を「審査に関し参考となるべき事項」と判断した場合には掲載していただければいいと考える。
○:最高裁の「司法の窓」は、どれくらいの部数をどんなところに配布しているのか。
△:発行部数は4万部であり、主に地方公共団体や学校に対して配布している。
■:本日の議論のうち、審査公報の充実等を中心とした事項については、所管の総務省におかれて、最高裁からの御協力もいただきながら、本日のご議論等も踏まえてさらに検討をしていただき、しかるべき時期に、事務局を通じて検討結果を報告していただくこととしたい。最高裁においても、本日の議論を踏まえて、ホームページの充実等の方策を更にご検討いただきたい。
○:異議なし。
△:(最高裁参考配布資料「民事事件・刑事事件の新受・既済・未済件数の推移ー最高裁判所に基づき説明)
■:前回の御意見を承っていると、大体次のように分けられるのではないかと思う。
① | 最高裁裁判官の選任過程に諮問委員会を設置してはどうか。 |
② | 最高裁の機構改革などを含めて議論する中で検討すべき問題である。したがって、当検討会でその点を含めて検討するのは難しいのではないか。 |
③ | 当検討会でそういった機構改革まで踏み込んだ議論はできないとしても、問題提起の意味があるから、最高裁の在り方について一応検討してはどうか。 |
司法制度改革審議会意見では、「司法制度を支える法曹の在り方」の「裁判官制度の改革」の中に位置付けられていることから見ても、最高裁の機構改革まで射程に置いてこの検討会で議論するということはやや趣旨が違うのではないかと思う。そこで議論の仕方としては、現在の最高裁の機構を前提にして、諮問委員会設置に関する意見交換を行わざるを得ないのではないかと考える。ただ、最高裁の機構改革問題に踏み込まないと議論しにくいという御意見の方はそのようなお立場で発言をしていただきたい。
○:この検討会で運用改善を検討するだけでは意味がない。また、最高裁判所の機構改革まで検討するのは非常に荷が重いし、審議会意見も、むしろ現行の最高裁判所の制度を前提に議論して欲しいと言っていると思う。我が国の最高裁判所は、憲法裁判所的な機能を持った司法裁判所であるから、意見書がいうように、最高裁裁判官に対する国民の信頼を高めるためには、第1に、司法裁判所裁判官として、すなわち実務家として、国民の信頼に応える公平で実力のある裁判官を選任する必要があり、第2に、憲法裁判所的な機能を有するので、政治的な面でも信頼感を持たれる必要があり、そのためには、民主的な正統性を有し、他の政治権力との関係で独立を保ち、少数者のためにもきちんとした政治的な発言のできる資質を備えた裁判官を選任する必要がある。そして、このような裁判官を選任することを担保する制度として「裁判官任命諮問委員会」を制度化する時期にきており、裁判官選任の審査基準、審査手続、委員選任方法などを定めるべきである。
○:資料13-1に記載のある、昭和50年代に国会に提出された最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案の趣旨説明には、大事なポイントを突いている点があり、最高裁裁判官の選任がこのような委員会の手続を経ることになれば、納得のできる側面が出てくる。特に、設置法案が提案するような国会、司法関係の委員が納得した形で最高裁裁判官が選任されたということになれば、国民も納得できるのではないか。
○:現在の最高裁判所の機構を変えない前提で考えると、10人以上は法律の専門家でなければならない、という枠があり、かつ、最高裁判所には最終的な法律判断を求めて多数の事件が持ち込まれ、これを処理するには、法的に高度の専門性を備えた者が必要とされている、ということがある。したがって、諮問委員会を設置すれば、国民の目から見ると選任過程にスクリーニングがかかる感じはするが、諮問委員会が機能するのかはよく分からない。結果的には、同じことになり、諮問委員会は一体何をやっているのか、ということにもなりかねず、設置に賛成とも反対とも言いかねる。実体がどうなるのかを考える必要があり、理念だけで設置するわけにはいかない。委員の選任の問題もあるし、15人を一斉に選任するのであればそれなりの意味があるが、年に1人、2人を先ほどの枠の中で選任するとなると、委員会による選任にどれだけの実質的な効果があるのか、ということも考えておく必要がある。
○:第11回検討会の資料11-2を見ると、諸外国においては、我が国に比べ、最高裁判所裁判官の選任過程についての政治ないし政党の関与の度合いが大きい感じがし、我が国の場合、裁判所と政治は距離を持っており、最高裁裁判官の選任も正しく行われている感じがする。設置した委員会が機能すれば、透明性・客観性の観点からは現在よりも良いが、設置すべきであるとは決めがたい。
○:現在の最高裁判所は、違憲審査の機能と通常の事件についての上告審の機能を果たしているが、最高裁裁判官としては、前者については思想的・政治的判断を求められるのに対し、後者については実務的・専門的判断を求められる。このような最高裁裁判官の選任過程に透明性・客観性を持たせ、設置した委員会においてどう判断するかということになると、矛盾が出てくる。その意味で、現行の最高裁判所の仕組みを残しつつ、透明・客観的な選任をしたり、設置した委員会を機能させるのは難しいのではないか。
もう一つは、三権分立から考えると、最高裁裁判官の選任を政府の専権にするのではなく、立法府と行政府が緊張関係を持ちつつ決定する仕組みをとるべきであり、例えば、行政府が指名した者について、議会が同意するかどうかでチェックする制度が望ましい。憲法がそのような規定をしていないのは、制度の不備であり、顧問会議を通じて、内閣や立法府に発言して欲しい。
○:今の時点での最高裁裁判官の選任は、昭和22年当時とは異なり、後任者にどのようにして適格者を選任するかという局面での問題となる。人事の本質から考えると、前任者の役割を踏まえて後任となる者の能力がそれにふさわしいかどうかを決める必要があるが、そのためには前任者、後任者について質の高い情報を有している者が選任に関与すべきことになる。また、憲法は、議院内閣制を採用した上で、司法権と行政権のチェック・アンド・バランスの観点から、最高裁裁判官の選任を内閣の専権としている。任命権者以外の他の機関の関与を認めているアメリカ、ドイツ、フランスも、そのような仕組みはいずれも憲法上の仕組みとされており、何らかの手続を設けるとしても、本来は憲法で設けるのが筋ではないか。さらに、現在最高裁判所が担っている職責・役割を果たすためには、多数の民事事件、刑事事件の処理が必要であり、人事の本質からいえば、そのような観点からみた適格者を充てざるを得ない。以上のような憲法上の視点や現状における最高裁判所の職責・役割からすると、任命過程において何らかの措置を講ずることは大変な問題である。
○:審議会意見の中で裁判官の出身分野別の人口比率の固定化などの問題点が指摘されているが、昭和22年当時の裁判官任命諮問委員会の制度がプラスに参考になるのかマイナスに参考になるのかはよくわからない。現在の最高裁判所の機構、在り方を見直さずに考えると、実効的な措置を考えれば考えるほど憲法問題に入らざるを得なくなる。下級裁判所の裁判官についての諮問委員会は、裁判所の権限の中での問題であるが、最高裁裁判官についての内閣の任命・指名をどう適正に行うかということについて諮問委員会を設置するということになると、権力分立の仕組みそのものをどうするか、という問題が絡み、憲法問題になる。下級裁判所の裁判官の任命・諮問手続については、最高裁に戻して検討してもらっていることを考えると、最高裁裁判官の選任の問題は、まず内閣で考えてください、ということになるのではないか。現状に問題があることは事実であるが、何らかの諮問委員会的なものを設置するだけでは問題は解決しないと思う。
○:昭和22年当時の状況とは事情が全く異なるし、昭和32年の制度も最高裁判所の機構改革を前提にしたものであるから取り得ないとすると、昭和50年代の法律による諮問委員会の設置が参考となろうが、組織の構成人員、運用、権限等について相当検討すべきであり、むしろこれまでにない形の諮問委員会を構想すべきである。
新たに行われるようになった内閣官房長官の記者会見による説明については、透明化という面で足りるのか、という感じを受ける。また、記者会見の内容がマスコミ報道の中で詳しく述べられてはいない。
この検討会でどこまで話が進むかわからないが、非常に大きな問題としてとらえるならば、この検討会以外のところでやるべきものであり、これは多分に政治的な要因が入ってくるものではないか。
○:任命諮問委員会の問題は、最高裁判所の在り方や、将来のありようの議論と密接に関係している。将来憲法裁判所を設けるということになれば、幅広い委員会で選任の議論をすることも考慮していいが、現状を前提にすると、任命諮問委員会を設けるのは疑問である。現在の最高裁判所の機能・機構、果たしている役割、特に年間新受件数に現れているように、最高裁判所が現実に果たしている機能の力点は民事、刑事の具体的な事件の解決にあり、退官者を補充する後任者の任命については、専門分野を考慮して選任せざるを得ない。そうすると、私としては、「任命諮問委員会」を設置しても、何を議論するのか具体的なイメージを作り上げることができないし、内閣の憲法上の権限と委員会との絡みも重要な問題として残っているのであるから、委員会の設置には消極である。
内閣として選任過程をどこまで説明できるかということになるが、個人のプライバシーのことも考慮する必要はあるが、最大限の努力をする必要がある。それとともに、国民審査においても、対象となる裁判官についての、これまでよりも一歩も二歩も踏み出した情報提供が可能であり、現状では、そのような側面からの改善が望ましい。
○:その答申が、内閣に、答申された候補者の中からの任命を義務付ける意味合いまで含む任命諮問委員会を作るとすると、憲法上内閣の任命権に対する制約となりかねず、問題である。意見書がいう透明性とは、最終判断の理由、そういう選定に至った理由を説明する、ということであり、客観性とは、あらゆる情報を収集して適任者を選んだ、そういう努力をしたという過程が必要である、ということであると思う。そうすると、内閣自身がそのような機関の助力を必要とするというのであれば、有能な人材に関する情報収集、情報提供機能を果たす機関を内閣の中に設置することは可能であろう。また、その機関は、国民審査の際に情報提供を行うことになろう。
■:これまでの意見を承っていると、任命諮問委員会の設置について、積極説、消極説、あるいは憲法問題として議論すべきであるとの意見が出た。ここでどれが多数意見かを決めるというのは、余り意味がないと思う。今までの意見を簡潔に整理した議事整理メモを座長の責任において作成し、追加してなお意見があれば、次回、また発言いただくという形とさせていただきたいがどうか。
○:了解した。
○:一言追加すると、最高裁裁判官の選任について、内閣対国民の審査という形の緊張関係を作り出すための委員会、例えば、内閣が選んだ者について、当該委員会で模擬議会証言のようなことを行って、その人の資質、経歴や、その人がどのような考え方の持ち主かを明らかにした上、電子媒体で公開し、問題があれば内閣は国民審査をおそれて任命をやめ、そうでなければ任命する、そのようなことをする委員会を作ることは可能ではないか。
○:出身分野に関係なく、この方がベストの人だということを十分説明してもらえれば国民は納得するわけであるから、そういうことを注文として申し上げる。
■:できれば、次回の検討会までに議事整理メモを座長の責任で作成したいと思う。その上で、なお意見があれば承りたい。ただ、次回検討会が近接している都合上、来年1月21日の第15回検討会で諮ることになるかもしれないので、御理解願いたい。
○:了解した。