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法曹制度検討会(第13回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)

1 日時
平成14年11月28日(木)13:30〜16:30

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第2会議室

3 出席者
(委 員) 伊藤 眞(座長)、岡田ヒロミ、奥野正寛、小貫芳信、釜田泰介、木村利人、佐々木茂美、田中成明、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)
(説明者) 門山泰明(総務省自治行政局選挙部選挙課長)
金井康雄(最高裁判所事務総局人事局参事官)
(事務局) 大野恒太郎事務局次長、植村稔参事官

4 議題
(1)最高裁裁判官の選任等の在り方について−国民審査制度の実効性を高める措置
(2)最高裁裁判官の選任等の在り方について−最高裁裁判官の地位の重要性に配慮しつつ、その選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置
(3)裁判官の人事制度の見直し−裁判官の人事評価について、可能な限りその透明性・客観性を確保するための仕組みを整備すること
(4)その他

5 配布資料
【事務局配布資料】
[最高裁裁判官の選任過程について透明性・客観性を確保するための措置]
○資料13−1 第75回国会、第87回国会、第89回国会、第93回国会に提出された最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案とその趣旨説明

[裁判官の人事評価についての仕組みの整備]
○資料13−2 裁判官の人事評価について、可能な限り透明性・客観性を確保するための仕組みの整備 検討のたたき台(案)
○資料13−3 裁判官の人事評価についての仕組みの整備に関する主なやりとり
 
参考配布  最高裁昭和27年2月20日大法廷判決

【総務省配布資料】
[国民審査制度の実効性を高める措置]
○資料 最高裁判所裁判官国民審査の概要について
○資料 最高裁判所裁判官国民審査公報

【最高裁配布資料】
[国民審査制度の実効性を高める措置]
○資料 最高裁判所裁判官に係る情報開示の充実方策について
     ・資料1 「最高裁ホームページ」のトップページ
     ・資料2 「最高裁の裁判官の紹介」のコーナー
     ・資料3 「広報誌『司法の窓』第61号」(平成14年10月号)

[裁判官の人事評価についての仕組みの整備]
○資料 裁判官の新たな人事評価制度の整備に関する検討状況について

参考配布 民事事件・刑事事件の新受・既済・未済件数の推移−最高裁判所

6 議事

【伊藤座長】それでは所定の時刻でございますので、第13回法曹制度検討会を開会させていただきます。御多忙の中、御出席いただきましてありがと うございます。
 議事に先立ちまして、事務局から配布資料の確認をお願いします。

【植村参事官】それでは、私から配布資料の確認をさせていただきます。事務局からお配りいたしましたのは資料13−1から資料13−3でございます。資料13−1でございますが、これは、田中委員の方からの御質問がございました件に関連するものです。昭和50年代に社会党から提出された法案と、その趣旨説明を資料化したものでございます。資料13−2と資料13−3は、裁判官の人事評価の関係の事務局からの資料でございます。また、総務省、最高裁から、 次第に記載いたしましたとおりの資料の御提出がございましたので、御紹介をいたします。
 以上でございます。

【伊藤座長】それでは、本日はお手元の議事次第にございますとおり、まず最高裁裁判官の選任の在り方について−国民審査制度の実効性を高める措置についての議論、具体的には審査対象裁判官に係る情報開示の充実策について、総務省、最高裁のプレゼンテーションに続いての議論をお願いしたいと思います。
 2番目に、最高裁裁判官の選任の在り方について−最高裁裁判官の地位の重要性に配慮しつつ、その選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置につきまして、前回に引き続きまして検討をお願いしたいと思います。
 最後に裁判官の人事制度の見直し−裁判官の人事評価について、可能な限りその透明性・客観性を確保するためにの仕組みを整備することにつきまして、最高裁から説明をお願いしたいと存じます。
 それでは、まず最高裁裁判官の選任の在り方について、国民審査制度の実効性を高める措置についての議論、具体的には審査対象裁判官に係る情報開示の充実策について、総務省、最高裁のプレゼンテーションに続きまして議論をお願いしたいと存じます。
 そこで、早速でございますが、総務省の方から御説明をお願いできればと存じます。

【総務省(門山選挙課長)】総務省の選挙課長の門山と申します。よろしくお願い申し上げます。それでは、総務省の方で、内閣の中におきましては、最高裁判所裁判官国民審査法を所管いたしておりますので、そういったことから、特に今回のテーマでございます情報開示という意味で審査公報の実務を中心に現況を御説明申し上げたいと思います。お手元の資料をご覧いただきたいと思います。「最高裁判所裁判官国民審査の概要について」という1枚紙でございます。
 まず全体の流れがございますので、審査の時期、国民審査の方法等につきまして簡単に御説明をさせていただきます。
 審査の時期及び対象につきましては、各裁判官につきまして、任命後初めて行われます衆議院議員総選挙の期日に行うということが規定されているわけでございます。つまり衆議院の解散総選挙がございましたとき、あるいは任期満了総選挙の際の期日に同時に行うという仕組みになっているわけでございます。
 国民審査の方法でございますが、これにつきましては、(1)中央選挙管理会、ここが審査の期日前12日までに、審査期日及び審査に付されます裁判官の氏名について官報で告示するという手続から始まってまいります。そして(2)にございますように、衆議院議員の選挙権を有する者が審査権を有するということでございます。そして衆議院議員の小選挙区選出議員の選挙の際の投票所におきまして、その投票と同時に一人一票の投票により審査をするということでございます。
 (3)投票用紙には審査に付されます裁判官の氏名が予め印刷されておるわけでございまして、審査に付される各裁判官に対する×の記号を記載する欄が設けられるということになっております。この場合の裁判官の氏名の並ぶ順番でございますが、これにつきましては、中央選挙管理会がくじで定めた順序によるということでございます。
 (4)投票所におきまして、罷免を可とする裁判官については、当該裁判官に対する記載欄に×の記号を記載し、罷免を可としない裁判官については何ら記載しないという扱いでございます。
 (5)罷免を可とする投票の数が可としない投票の数より多い場合には、罷免を可とされたものとするということが流れでございます。
 そのための情報開示の手段といたしまして審査公報というものがあるわけでございます。審査公報につきましては、法律の53条に根拠がございまして、政令並びに発行規程というもので詳細が定められております。
 (1)審査公報につきましては、審査ごとに一回、都道府県の選挙管理委員会、これは各都道府県ごとに置かれております行政委員会でございます選挙管理委員会が発行主体になるわけでございます。
 (2)審査に付される裁判官の氏名、生年月日、経歴、最高裁判所において関与した主要な裁判その他審査に関し参考となるべき事項を掲載するということでございます。ここに列記しております事項につきましては、政令の26条でこういう形で列記されております。なお、もとになります法律の53条で列記されておりますのは氏名、経歴まででございます。それから、その他審査に関し参考となるべき事項ということでございますが、これにつきましては、掲載文は各裁判官から御提出いただくわけでございますが、どういう事項がこの参考となるべき事項に当たるかということは、裁判官御自身で御判断いただくという考え方でございます。
 (3)字数制限でございます。審査公報の字数につきましては千字以内ということが政令で定まっております。ちなみに千字という制限でございますが、これは昭和22年にこの国民審査法ができましたとき以来変わっておりません。なお、衆議院議員選挙、参議院議員選挙につきましても選挙公報というものがございますが、これにつきましては、従前は字数制限があったわけでございますけれども、平成9年から字数制限がなくなったという状況にございます。
 (4)掲載文の記載の仕方でございますが、掲載文につきましては、通常使用する漢字、カタカナ、ひらがな等をもってこれを記載することとされておりまして、例えば傍書いたしました注釈、符号、図面、図表、写真といったものは使用できないということ。これは発行規程という規制がかかっております。ちなみにこれも衆議院、参議院の選挙の場合でございますが、衆議院、参議院の選挙につきましては、平成9年以降図表を用いることも可となったという状況にございます。
 (5)審査に付される裁判官は、審査公報の掲載文を審査の期日の告示があった日に中央選挙管理会に提出しなければならないというのが原則でございます。つまり審査公報につきましては、各裁判官から御提出いただきましたものをそのまま掲載するというのが原則でございます。ほとんど考えられないわけでございますが、御提出がない場合には中央選挙管理会が調整するというような規程になっております。
 それで、実際の配布でございますが、配布につきましては(6)にございますとおり、市町村の選挙管理委員会がこれを行うわけでございます。それで、当該市町村におきます選挙人名簿に記載された者の属する世帯に対しまして、法律上は審査の期日前二日までに、配布するということでございます。
 ちなみに御参考といたしまして、前回、平成12年6月に衆議院選挙が行われました際に、国民審査が行われたわけでございますが、そのときに発行されました審査広報、大きさはこの資料のとおりでございます。これを提出させていただいております。お名前、生年月日、さらに略歴、関与された主要な裁判、信条をお書きになっておられる方が多いといいますか、この機会におきましては皆さんお書きになっていたということでございます。姿としてはこうなっているということでございます。
 実務的な現状の御紹介ということでございますので、説明は以上にさせていただきたいと存じます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。
 それでは引き続きまして、最高裁から説明をお願いいたします。

【最高裁(金井人事局参事官)】それでは、この関係につきまして、金井から説明させていただきます。きょうはお手元に11月28日付のレジュメ、それから資料として1、2、3という形で配布させていただいております。御説明をこのレジュメに則しましてさせていただきたいと思っております。
 まず、司法制度改革審議会の意見の関係でございますけれども、レジュメ1の枠囲いの中に記載したとおりでございまして、国民の実質的な判断が可能になるよう審査対象裁判官に係る情報開示の充実に努めることが明示されております。
 これを受けまして、最高裁におきましても、自ら行うべき施策の1つとして司法制度改革推進計画要綱、これもレジュメに記載してありますが、最高裁判所裁判官のプロフィールを紹介するなど最高裁判所裁判官に係る情報開示の充実を図るための措置について検討を行うとしております。
 ところでこの最高裁判所裁判官に係る情報開示の充実の意義でございますが、レジュメの2に記載させていただきました。国民審査の制度を考えてみますと、国民が最高裁判所の裁判官を罷免するか否かを決定する解職制度という位置付けになっていると思われますけれども、裁判官の任命に国民の声を反映させ、国民の最高裁の裁判官に対する信頼を高める、こういう点で大きな意味があると考えております。その意味で、裁判官の人物、考え方などをわかりやすく紹介するために、平素から充実した情報提供に努めていくことが重要だと認識しているところでございます。
 情報開示の現状ということにまいりたいと思いますが、レジュメの3に記載させていただきました。本日は、インターネットの活用を中心に御説明させていただきたいと思います。まず最初に最高裁判所裁判官の紹介という項目でございます。
 平成13年2月から最高裁のホームページに最高裁の裁判官の紹介というコーナーを新たに設けております。資料1、2をご覧いただきたいと思うのですけれども、最高裁ホームページのトップページが資料1でございます。
 資料2、最高裁の裁判官の紹介というコーナーがございます。この資料2の裁判官の氏名のところをクリックしていただきますと最高裁の裁判官の紹介というページが出てまいります。そのページをプリントアウトしたものをご覧ください。写真、略歴、信条、趣味などという項目に従いまして、情報が提供されているという仕組みになっております。裁判官の人となりがうかがわれる内容になっているかと思っております。
 それから、情報提供の2つ目といたしまして、レジュメの2枚目にまいりますけれども、最高裁判例集の関係を御説明させていただきたいと思います。
 ホームページの「最高裁判例集」のコーナーがございます。このコーナーでは、最高裁判所民事判例集、最高裁判所刑事判例集に登載された裁判すべて、これは昭和22年の第1巻以降すべてホームページに載っておりまして、キーワード等々で検索をいたしまして、その裁判の全文を閲覧できる仕組みになっております。
 次に「司法の窓」という項目にまいりますが、最高裁では裁判所の広報誌でございます「司法の窓」を年2回発行しております。発行部数は4万部ということなのですけれども、お手元に資料3といたしまして、これは先月発行された最新号ですけれども、お配りいたしました。ご覧いただけたらと思います。資料3の1ページ目でございますけれども、裁判官が執筆したエッセイ「15のいす」という名前が付いておりますが、それが毎号掲載されております。今回はここにご覧いただけるような形で15のいすで「若いころの支部勤務」という思い出を綴ったエッセイが載せられております。
 この「司法の窓」ですけれども、平成11年10月に発行されました分以降は、ホームページの上でも閲覧が可能になっております。
 次にレジュメの4ということでございますが、今後の方策でございます。
 今後も最高裁ホームページを一層充実させることを通じまして、裁判官に関する情報の開示をさらに図ってまいりたいと思っております。現在考えておりますことを2つ申し上げたいと思いますが、まず裁判官の関与裁判の紹介の充実ということを考えてまいりたいと思っております。
 先ほどご覧いただきました「最高裁の裁判官の紹介」というコーナーで、各裁判官の紹介事項の中に、「最高裁において関与した主要な裁判」、こういう項目を新たに追加いたしまして、各裁判官が関与した主な裁判例をすぐにわかる形で紹介していきたいと考えております。裁判のあった年月日であるとか、どの法廷に係属した事件であるか、裁判の結果、上告棄却、破棄、差戻しといった結果のほかに判示事項、当該裁判官の意見の別、全員一致の意見であったのか、反対意見であったのか等々、意見の別なども明記したいと思っております。これは一覧的にご覧いただけるような形で掲載したい思っているわけですが、なお、さらに裁判の中身についてもっと知りたいという場合には、そのページの所定の欄をクリックしていただきまして、裁判の全文を容易に見ることができるようにすることも考えたいと思っております。
 それから、充実策の2番目ということで裁判官の人物紹介の充実ということも考えてまいりたいと思っております。現在は「最高裁の裁判官の紹介」のコーナーで、「信条、趣味など」という項目を設定して、そこに各裁判官にお書きいただいたものを掲載しているわけですけれども、この項目をもう少し細目化いたしまして、例えば裁判官としての心構え、好きな言葉、印象に残った本、趣味、その他、こういった形で細分化いたしまして、多様な情報をわかりやすく提供するというような形を考えていきたいと考えております。また、その他の項目でございますけれども、先ほどご覧いただきました「司法の窓」に裁判官が執筆したエッセイや裁判官がお書きになられている著作の紹介などもすることが考えられるかと思っております。こういった方法をとることによりまして、各裁判官の人物や考え方の紹介をより一層充実していきたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

【伊藤座長】どうもありがとうございます。
 それでは、ただいま総務省及び最高裁から説明をいただきましたが、これに関しまして、まず御質問のある方、お願いいたします。どうぞ、木村委員。

【木村委員】国民審査の概要のところの3の審査公報でございますが、そこで字数が千字以内というのは昭和22年に決まったというお話でしたですね。これは何か決まったときには理由がついて決まるのですか。それとも理由は特に明記されてないのかというのが第1点。
 第2点が、ただいま金井さんの方からも御説明ありましたように、大変にいいホームページが最高裁もできていて、しかも写真がきちんと載って、長官のなかなかいい笑顔の写真もあるわけですが、こういう写真は、今、インターネットでだれでも入手できる情報であるとしたら、こういう審査公報に載せてもいい段階に来ているのではないか。特に衆議院議員の選挙の写真についても図表についても、その枠組みを外したということでございますので、将来、最高裁判事のこういう審査につきましても写真の掲載ということはもっと前向きでやった方が、国民からしても顔も非常によく見えるし親しみも感じますし、いいのではないかと思うのですが、その2点につきましてお伺いしたいのですが。

【総務省(門山選挙課長)】1点目にお尋ねがございました審査公報の字数制限でございますが、これは昭和22年法律制定されていたときから千字になっていたということを申し上げましたのですけれども、その際、なぜ千字かという説明は探しましても残ってございません。ただし、その3年後に公職選挙法で選挙公報の字数制限が決まったのですけれども、これが参議院選挙の場合で500字という字数でございましたので、それとの比較でいくと、比較的大きい数字だったということでございますが、なぜ2千でなくて千なのかということになりますと、特に根拠らしいものはございません。

【木村委員】選挙公報には、現在は字数制限はないのですね。

【総務省(門山選挙課長)】平成9年以降ございません。

【木村委員】審査公報の方は残っているわけですね。千字で。

【総務省(門山選挙課長)】はい。

【伊藤座長】第2点はいかがでしょう、写真について御質問がありましたけれども。

【総務省(門山選挙課長)】写真につきましても、基本的に技術的には可能なことだと考えております。したがいまして、技術的というよりはそういったものがあった方がいいのかどうかという御判断の問題かなと思います。

【木村委員】いいのではないですか、やった方が。

【伊藤座長】木村委員の御意見は承りましたが、御説明はそういうことだそうです。どうぞ、岡田委員。

【岡田委員】裁判官の国民審査に関して、情報として選挙のときに出されるのはこれだけなのですか。例えば衆議院、参議院の議員の場合は、テレビに出たり、新聞に出たり、街頭に出れば公報の看板があったりといろいろあるのですけれども、全くこれだけなのか、願わくはNHKぐらいで、各裁判官の紹介みたいのがあればもっと親切というか、私たちも理解できると思うのですけれども。
 それから、最高裁のホームページ、大変立派で親近感を持ちました。ですが、コンピュータというかインターネットということ自体が、お年寄りとかには拒絶反応がありまして、そういう方にも配慮したような方法がとれないものなのかどうなのか、この2つをちょっとお聞きしたいと思います。

【伊藤座長】これはどうですか。まず門山さんから。

【総務省(門山選挙課長)】まず国民審査の情報提供でございますが、基本的には情報提供をいたします手段はこの審査公報だけとお考えいただいた方がよろしいかと思います。官報で公示するというのは別にいたしまして。国民審査というのは一般の選挙と異なりまして、解職の制度として設けられているということでございますので、例えばテレビを使ったらどうかといった御意見、国会などでも御議論あったことがあるのですが、要するに裁判官の方の人物を知るとか身近に感じるという意味では有効な方法かもしれませんけれども、審査の性格といいますか、要するに裁判官としての職責に関しての適否の審査という国民審査の趣旨から見まして、それが適当な方法と言えるのかどうか。要するに何人かの候補者の中から当選させる人を選ぶ選挙につきましては、テレビですとか手段をたくさんを使いましてそれぞれ工夫されて競争の運動をされるわけでございますが、それと同列に考えることについてはいかがということで慎重な検討が必要ではないかということを私どもも申し上げてきております。

【伊藤座長】それでは金井さんからもお願いします。

【最高裁(金井人事局参事官)】この国民審査の直前になりますと、よくマスコミ各紙が各裁判官の人柄、関与した大きな裁判について新聞報道をしておられるように承知しております。そういうものを拝見していますと、裁判官の人となりを伝える情報といたしましては、どんな心構えで裁判に臨んでいるのかとか、先ほども申し上げましたような好きな言葉、趣味、そういった欄も新聞記事の中には設けられておりますので、審査公報のほかにマスメディアを通じたそういう形での情報もあります。
 それから、平素からの最高裁としての情報提供はどういう形でできるかというのはなかなか難しい問題があるかと思うのですけれども、今日御紹介いたしました「司法の窓」での「15のいす」というのは、そういう努力の一端と御理解いただけたらと思っております。

【松尾委員】選挙課長に御質問いたします。この国民審査についていろいろな意見がありますね。これは最近のことではなくて随分前から議論されている問題です。その投票方式について、昭和27年に合憲判断が最高裁で出たことももちろん知っておりますけれども、少なくとも昭和22年以降、様々な見直しなどの意見があるにも関わらず、内部的に見直しの検討をされたのかどうか。あるいは全くされていないのかどうか、その辺のところをお伺いしたいと思います。

【総務省(門山選挙課長)】国会でも国民審査の在り方につきましては、そう頻繁にということではございませんけれども、たびたび御議論にはなっております。ただ、基本的に憲法に基づいて罷免の可否を決める制度ということでございますので、その本質的な性格は変わっていないと承知しておりますので、私どもの方で積極的にこれを変えるべきだというような検討を深く行ったという経過はないと承知しております。

【伊藤座長】よろしいですか。

【松尾委員】意見についてはまた別途。

【伊藤座長】また後で御意見は伺います。

【平山委員】課長にお聞きすべきことかどうか、疑問もありますけれども、この検討会の基礎になっております昨年の司法制度改革審議会の意見書がございまして、その中に、この国民審査制度が形骸化しているという指摘があるというようなことがありまして、それについて、ここで例えば充実策を検討しなさいと、こういうことで今やっているわけでございますが、課長の方からご覧になって、今この制度が非常に形骸化しているなというように思っておられるかどうか、率直にひとつお聞きしたい。それは今の情報の充実問題のほかに、例えば審査方式の問題があるのではないかということも考えられると思います。もう一つは、情報につきましては、裁判官が就任された後の裁判にどういう関与をされているかというようなことが基本に議論されているように思いますけれども、この憲法79条2項からいきますと、任命について国民の審査に付するとなっているのですね。任命の可否ですから、任命の時点の資料といいますか、その充実というのが私は大事なことではないかと思っておりまして、そういう点について、情報の充実ということは、まさに任命時点でどういう参考資料があってやられているか、そこも関連するように思いますが、課長は率直にお考えになって、その点はどのようにお考えになりますか。

【総務省(門山選挙課長)】なかなかお答えが難しいのでございますが、要するに過去十数回、罷免といいますか、審査制度を行いました結果として罷免された方はお一人もいらっしゃいません。最高で×が付いたとしても15%強だったと思いますが、そういったことから意味がないのではないかという御意見があることは承知いたしておりますけれども、しかし、それをもって形骸化と言うべきなのかどうかというのはちょっと判断をいたしかねるところでございまして、関心が高いかと言われますと決して高いとは思いませんけれども、やはり緊張感という意味での意義を持った制度ではないかと考えておるところでございます。
 それから2点目の、任命後の情報はあるけれども、任命される時点での情報が余りないのではないかという御指摘でございますが、現在の法律、政令で規定していますのは、例えば関与されました裁判というのはお書きいただくようにということで決めているわけでございますけれども、それ以外にどういった事項を必ず書いていただかなければならない項目として挙げるかという問題につきましては、これは審査公報の原稿自体が各裁判官からお出しいただいたものをそのまま載せるということでございますし、法律でも参考となる事項はお出しいただくということでございまして、それぞれの裁判官において御判断されるべき事柄であって、法律で余りこれもこれもというように書いていくものではないのではないかという考え方を持っております。

【伊藤座長】その点も御意見もあると思いますが、また後ほど。

【平山委員】はい。

【奥野委員】大したことではないのですが、最高裁の方と総務省の方とでいろいろ御努力されているというのはよくわかったのですが、その連携がどうなっているのかがよくわからなくて、例えば一番簡単なこととしては、最高裁のホームページのアドレスを公報に載せることは可能なのか。あるいは各個人のコラムでなくて、そもそもこの公報の頭のところに、このことに関連する情報というものはこのサイトを見なさいというようなことを総務省の方で一括して書いてしまうということもあるでしょうし、それから、これはどの程度そういうサイトがあるのかどうか知りませんが、例えば日弁連さんなどが、何かこういう最高裁の国民審査に関して御意見があるのではないかと私は思うのですが、それ以外にもさまざまなNGO等が何かそういう情報提供をしたいと思っているような場合に、それを最高裁としてはアドレスをリンクさせるといいますか、そういうようなこと。
 つまり、最高裁のホームページの一番下のところ、私開けてないのでわからないのですが、リンク先などはどの程度あるのでしょうか。具体的にはどういうところにリンクを張っておられるのでしょうかということをお聞きしたいのですが。

【伊藤座長】まず門山さんからお願いいたします。

【総務省(門山選挙課長)】1点目といたしまして、審査公報に各裁判官のホームページのアドレスなりを表示するのはいかがかという御指摘でございますが、これにつきましては、直接審査公報についてそういう議論をしたことはないのですけれども、ちょっと長くて申し訳ございません。最近の動きとして、選挙運動にインターネットホームページを使えないかということが随分議論されておりまして、私どもも研究会を設けまして議論をさせていただきました。
 その際も基本的に各候補者にホームページによる選挙運動を認めようと。それをだれのホームページであるかをちゃんと知らしめるためには選挙公報にホームページのアドレスを載せる、あるいは選挙管理委員会のホームページからリンクを張るといったようなことが必要ではないかという御議論も随分強くございました。
 ただ、それに対しましては、これは選挙の場合と審査の場合を別に考えるべきかもしれませんが、選挙の場合には、要するにだれかのところにはきちんとつながる、だれかのところは間違ったアドレスだったためにつながらないといったようなこと、あるいはリンクが技術的に適切でなかったといったようなことでつながらないとなりますと、選挙の候補者間の平等という意味で選挙無効にまでつながりかねないという議論がございまして、そこまでいくのはちょっと困難ではないかという整理がされているというのが選挙公報の世界でございます。
 したがいまして、審査公報については、そういう意味で検討したことはございませんが、同じ点はやはり当てはまってくる部分があるのではないかと考えております。

【伊藤座長】金井さん、最高裁のホームページのリンク先といいますか、そちらの方はいかがでしょうか。

【最高裁(金井人事局参事官)】実情といたしましては、余りリンク先が多いわけではないのですけれども、例えばここで御議論いただいています司法制度改革の問題ですと、推進本部のホームページとリンクさせるということはいたしております。
 この先、どういう形でやっていくのかというのは、なかなかお答えしにくいのですが、今、総務省のお話を承っていますと、検討すべき問題もいろいろあると思いますので、そういったところも見ながら考えていくということになろうかと思います。

【伊藤座長】この点もなお御意見があると思いますので、これから我々の中で議論をしたいと思います。質問ということでは、以上でよろしいでしょうか。

【木村委員】1つだけお伺いしてもよろしいですか。

【伊藤座長】どうぞ。

【木村委員】総務省の方では、例えばこういうことに関連するようなことについてのメールでの問い合わせとか、一般の方々からの窓口はあるのでございますか。それに関連して国民審査についての問い合わせとか、こうしたらいいとか、例えば私どもの検討会の場合ですと、平成13年12月2日から、ついこの間の14年10月31日までのメールで見ますと、最高裁判所の裁判官国民審査制度の改善についての投書が387番目にあるのですね。改善の内容はわかりませんけれども、関心があるということがわかるわけです。1941通のうち1通しかないのは関心がそんなに多くないのかもしれませんが、少なくとも関心があるわけなので、窓口があって、国民の一般の問い合わせを受ける形になっているのかどうかということについてお伺いしたいのですが。

【伊藤座長】いかがでしょうか。

【総務省(門山選挙課長)】こういう時代でございますので、窓口を設ける、設けないに関わらず、全員パソコン持っておりますので、いろいろなところからメールはまいります。ただ、制度的にという意味では、例えば内閣全体の中でも首相官邸のホームページも御意見をいただいた場合にはメールを受ける窓口とはございますし、総務省につきましても、そういう広報のセクションでそういったものをお受けする窓口がございます。そういった中には、選挙関係のお問い合わせというのは、ほかの状況は知りませんですけれども、私どもの来ている数だけを見ましても相当ございますので、選挙の部分についてのそういったメールについてはほとんど自由にかなりの量、総務省には届けられていると思っていただいてよろしいのではないかと思いますが、国民審査に関しまして、少なくとも最近何らかのメールをいただいたということは私の記憶にちょっとございませんけれども、恐らくあるとしますと衆議院選挙で同時に国民審査を行いました直後、直前の時期であれば、あるいはあったかもしれませんが、そこの事実関係は把握しておりません。

【伊藤座長】どうもありがとうございます。
 それでは、ただいまの総務省及び最高裁からの御説明を前提にいたしまして、公報及び最高裁のホームページなどによる裁判官についての情報の開示、これの在り方につきまして、御意見を伺いたいと思います。どうぞ松尾委員。

【松尾委員】私は最高裁裁判官の国民審査の制度そのものについては、国民の声を聞く、民意を反映させるという意味で、制度そのものの存在は必要だと思っております。しかし問題は、どういう内容のものなのか、また、その対象となる裁判官の情報が現状では十分でない。したがって、投票する有権者の立場から言えば、裁判官の解職の制度とはいえ、実際問題として、どうしたらいいのか、ほとんど認識できていないし、何のためにやるのかということもはっきりわからない。そのような状態で投票行為をしているのではなかろうか。
 そう考えますと、先ほど形骸化しているという発言もありましたが、私も現状では十分に効果を上げていないという意味で形骸化しているとの指摘もできます。
 それから昭和22年にこの制度が発足して以来、先ほど私が質問しましたところによると、どうも内部的に余り見直しの検討がされていないというような状況は驚きでありまして、この問題について担当の関係者はどう考えているのだろうかという指摘をしたいと思っております。
 少し具体的に申し上げますと、検討すべき様々な問題があると思いますが、そのうち2、3点を挙げますと、1つは、この投票方式、先ほど言ったように最高裁の合憲判断が出ておりますけれども、この罷免の可否ということが非常にわかりにくい。×を付ければ罷免になるということなのですが、×を付けるかどうかということも意識の高い人は別として、一般の有権者には十分に認識・理解されていないのではないか。単純に言うと○をつければどうなるのか、何もしなければどうなるのか、そういう認識・理解もなく、どうもはっきりわかっていないのではなかろうかということが基本にあるわけです。したがって、この×をもって罷免を可とするという、このやり方そのものの見直しをやっていかないと、関心もないし、どうしていいかわからないという部分の救済もできないのではなかろうか、こう思います。
 それから、審査公報の問題なのですが、これについても非常に細かい点についていろいろな問題がありますが、私はここで言いたいのは写真の問題です。ここに参考的に出された審査公報ですが、審査される対象の裁判官がどういう方なのか、略歴はわかりますが、写真の掲載が全くありません。写真は有権者に訴える力が相当強い。しかも現在のようにテレビを中心とする映像化の時代ですので、動かぬ写真だけではなくて、動く写真といいますか、こういう映像化時代に対応することも検討の余地はあるのではなかろうかと思います。ただし、それが対象となる裁判官の人気投票になるような、そういうことは避けなくてはいけないことは当たり前のことでありますが、やり方によっては、そういうことではなくて、身近な印象を受けることだってあるわけです。
 また対象となる裁判官がどういうご意見を持っているのか。確かにこの公報によると信条という部分はありますけれども、これは非常に簡単でありまして、皆同じようなことを書かれているわけです。そういうことでなくて、例えば将来の日本の司法制度についてどういう考え方を持っているのか、あるいは今の司法制度改革の動きについてどういう意見を持っているのか。そういうことなどをインタビューするかどうか、そういう手法をとって映像化してわかりやすくするということだって現実にできないことはないのではなかろうか。
 そういうことは、これまで法律上、政令上やるべきでないと思い込まれている部分があるのではなかろか。現在何をやるのか、国民にこの審査制度を正確に十分に理解させ認識させ、そして親しみが持たれる制度として審査の効果を上げることを考えますと、1つ1つについて見直して共感を得るような制度にすべきではないかと基本的には思っております。小さいことはいろいろありますが、基本的な部分について意見を述べました。

【伊藤座長】どうぞ、皆さん御意見をお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ、岡田委員。

【岡田委員】前々回に浅香先生の方から、国民審査というのは世界に類のない制度だということをお聞きしまして、改めて私もそのことの重大さというか、国民として大変な権利を持っているのだと思ったのですけれども、先ほど来国民審査というのは裁判官のいわば罷免、リコールみたいなものだということなのですけど、逆を言えば、私たち国民からすれば法律的に正義の最後のよりどころを託す人という意味からすれば、その方に託していいのかどうかという、選任ですよね。罷免ではなくて、初めて選ぶ、そういう機会であることにもなるのではないかと思うのです。
 だとすれば、衆議院の代議士を選ぶのと同じような位置付けで、もっと私たちに情報を出していいし、黒い字だけで、しかも一回の公報だけで選べということ自体が国民の関心を求めているというように思えないのですね。何か関心がなければないでいいし、むしろ持って欲しくないのだとすら思えるような感じが私たちからするとあるのです。
 ですから先ほど来、NHKでどうのこうのと言いましたけれども、もっと裁判官一人一人の人格、その人柄を私たちが関心を持つような形で出していただければ自然と関心を持ってくるだろうと、そう思うのと、衆議院の憲法調査会ですか、あの辺では余り機能してないから、やめてしまえという声もあるみたいですけれど、そういうことをされると、私たちからすれば、せっかく自分たちに与えられた権利を持っていかれてしまうような感じもするもので、どうすれば国民が関心を持つのかということを考えなければいけないのではないかと思います。

【平山委員】私も、今、松尾委員、岡田委員がおっしゃっているのと非常に似たことを申し上げますけど、まず今日最高裁判所の金井さんの情報開示の充実化策につきましてのレジュメの中の2に「最高裁判所裁判官に係る情報開示の充実の意義」というところ、意義を非常に的確にとらえてあると思うのですね。それはどういうことかといいますと、国民審査は、最高裁判所裁判官の任命に国民の声を反映させることに大きな意義があるのではないか。そのことが岡田さんがおっしゃるように、国民の最高裁判所裁判官に対する信頼を高めるということがありますので、これは私は大事な制度だと思います。
 そうであれば、これを形骸化させてはならないということになるのではないかと思いまして、その充実化策は何かというと、今日議論としては審議会の意見書が、情報開示の充実ということを書いておりますので、そこに焦点が当たっていると思いますけれども、もう一つあって、それは審査方式について検討すべき時期に来ているのではないかと、松尾先生がおっしゃっているようなことを、私もぜひ検討しなければいけないのではないかという気がいたしておりまして、大変難しいことですので、きちんとそういう別な機関などができまして検討されるのはいいと思いますが、情報の開示だけではなかなかこれを本当に実効性のあるものにできるかというと、例えば〇×式というようなものも考えてみなければいけない時期に来たのではないかという気が1ついたします。それから、もっと大事なことは、最高裁判所が指摘されておりますように、私もそう思うのですが、憲法の規定、先ほど申し上げましたけど、憲法79条2項は、最高裁判所の裁判官の任命は国民の審査に付すと読むのが正しいのではないか。その後にたまたま罷免のことが出てまいりますけれども、まず任命をレビューするのだということを書いているのだろうと思うのですね。そういう点では、そのときの資料が非常に大事になってくる。ただ、最高裁の裁判官に就任されてからいい判決を書かれていることは大事なことでありますけれども、その前の資料、これを国民が知る機会がない。であれば、この次に議論いたします選任過程の問題と非常に連係していると思うのです。ですから情報は就任された後のことだけではなくて、任命前の情報を国民がどのように開示してもらえるかということに関係があるのではないかと思いますので、単に任命後の罷免問題として考えないで、信任問題という、岡田さんがおっしゃるようなことが私は基礎にあるということを考えていただくと非常にいいのではないかと思っております。

【伊藤座長】情報の充実の話と、ただいま松尾委員、平山委員から、審査の方式の話ございまして、ここはそもそもこの制度をどう理解すべきかという問題とも若干関係をしておりますが、事務局で何かそのあたりは調査・検討されたことございますか。

【植村参事官】既にこれまでの皆様の御発言の中に出てまいっておりますが、この問題につきましては、戦後すぐ問題になったようでございまして、昭和27年2月20日に大法廷判決が出ておるわけであります。事務局から大法廷判決の写しを配らせていただきます。
 大法廷判決の骨子だけ述べますと、憲法が定める国民審査制度は、先ほど平山委員は憲法79条2項の方からおっしゃいましたけれども、この大法廷判決が根拠としておりますのは、むしろ憲法79条3項でございまして、憲法79条3項の文言から明らかなとおり、解職の制度であるところ、何も記載しないで投票した者は積極的に罷免する意思を有するものではないから、このような者の投票について罷免を可とするものではないという効果を生じさせることは解職制度の精神から言えば、その人の意思に合致する効果を生じさせるものと言って差し支えない、としているわけでございます。
 この大法廷判決に沿ってずっとその後の実務も行われてきたと、事務局としては理解しておるわけであります。ちなみに今回の審議会におけるやりとりについて、既に皆様方に資料をお示ししてございますが、その中でもこの論点が実は出てまいったわけでございます。しかしながら、最終的な意見書の取りまとめに当たりましては、平山委員からも御指摘がございましたとおり、審査対象裁判官に係る情報開示の充実に努めるということが明示的な提言になりましたので、その点に重点を置いて今日は御議論をお願いしたという次第でございます。そのあたりをぜひ御理解をいただければと思います。

【佐々木委員】私もこの大法廷判決の解釈で確立したものだと理解しております。国民の審査という制度が根本的に不適格者を排除するものです。そのために材料となるものは何かという観点から、その材料を豊富にするということはよくわかっておるつもりであります。したがいまして、実際には判決にどのように関わられたか、少数意見をどのように言われたか、補足意見をどう述べられたか、あるいは多数意見の中でどう構成されていったのか、その辺の事柄が大事で、判断や意見のあらわれ方と、どういう立場で述べられたか、これが基本的に材料となるべきだと思います。それは現状の最高裁に求められているもので、今日も机上に配布されている資料12-5にあるとおり、通常事件あるいは法令解釈の統一ということがございまして、その中で、その裁判官がどういう役割を果たされたか、元弁護士であったけれども、法解釈についてどのように論理を展開されたか、こういうことが極めて重要でありますので、その観点からの情報をたくさん提供していただくということが大切かと思います。
 そして、それを国民にどういう形で提示していくか、これはまさに公報の在り方の問題ですので、ここらあたりは、松尾先生がおっしゃったように、写真であるとか、あるいは木村先生もおっしゃいましたけれども、そのような問題を選挙公報により近づけていく姿勢がとても大切ではないかと思います。
 それから、第2点目の憲法の構造上の問題で、憲法上はあくまで内閣あるいは天皇の任命行為で完成されているのではないか。後で行うことは任命行為を継ぎ足して、国民が何かプラスアルファして継ぎ足すという形にはなっていないのではないか。内閣の方で任命行為を完成させているのが憲法の仕組みです。したがって、国民審査は任命後の行為について、何日かの後の衆議院の解散の折とか、そういう折に、それでもなおかつ先ほど申し上げた材料に不適格な者があれば排除する、こういう構成になっているのではないかと考えますので、私といたしましては、前段の問題、これをより選挙公報に近づけていくという態度、それから奥野先生が言われたような最高裁のサイトと結び付けていく工夫は必要だろうと考えております。

【小貫委員】審査方式については憲法論から憲法改正の問題ということになってくるのだろうと思いますので、それを除いたところで意見を申し上げたいと思うのですけれども、この裁判官について国民に知ってもらうと、こういう面からの努力は必要だろうとこのように思います。少なくとも国会議員と同じような審査公報の水準にできないものかなと、こういうことを思いながら聞かせていただきました。
 ただ、その際に総務省の門山課長も触れておられましたけれども、リコール制度、罷免制度というところからくる慎重な取扱いが必要だろう、考慮に十分入れておく必要があるのではないかと思います。選挙は選ばれるために出るわけですので、自分を積極的にアピールして売り込んでいくと、こういう意味では公報に自由を与えてやるということが必要なのだろうと思うのです。
 一方で、これは一応選ばれた最高裁裁判官について、最高裁の裁判官として適格性がないということで×を付けると、こういう制度がリコール制度だと理解されますので、公報のでき具合によって×が付いたりするのはいかがなものかと思いますし、PRが若干下手だからというので×が付くのも制度の趣旨からどうなのかと思います。およそ最高裁の裁判官として適格性がある、見識が高い、法律素養があるという観点で国民に理解してもらうためにはそのために必要な情報はおのずから決まってくるものがあるのではないのかなと、このように思うわけでして、ですからもっともっと前向きに一歩も二歩も前進してほしいとは思いつつも、今言った観点での慎重な配慮も忘れてはいけないのではないか、こう思います。

【中川委員】私も皆さんとそんなに意見は変わらないのですが、国民審査制度というのは最高裁の裁判官として資質なり能力が明らかに欠ける人を事後的に排除する、そういう制度ではないか。議論はいろいろあるでしょうけれども、私どもの感覚からしますと、そのように理解できると思いますね。したがって、それだけの目的でございますから、根掘り葉掘りその人のことを掘り下げてどうだこうだという姿勢はないのではないかと思うわけです。
 しかし、そうはいいましても、岡田さんも言われましたように、これは最後のとりでといいますか、最終判断を委ねる方々でございますから、裁判官としての本当に適格性があるのかどうか。あるいは国民の側から見まして、最後の判断をお任せするだけの人格なり識見なり、そういうものをお持ちになっている人かどうかという判断はやはりできなければいけない。それが審議会の意見書も言っております実質的な判断ができるだけの材料を提供しなさいよという意味ではないかと思うのです。
 そうしますと情報の質といいますか、内容をどの程度にするかというのにつきましてもう少し議論をした方がいいのではないか。今現在この選挙公報にもいろいろな情報が出ていますし、最高裁の方でも大変な御苦労をされまして、いろいろ工夫されているのはよくわかりますが、何か情報が活きてないという感じがするのです。非常に形式的であると。経歴などもそうそうたる経歴ですよね。しかし、一体この経歴の中でその方が何をされたのだろうか、どういう業績なり功績なり実績を上げられたのだろうかというような点、これは非常にわかりにくい。
 もう一つ、松尾先生がおっしゃいましたけど、司法に対する姿勢というのは大げさすぎるかもしれませんが、例えば立法府と司法府との関係というのはどうお考えになっているのか、それから裁判が政治や経済、社会に与える影響もあるわけですけれども、そういうものはどの程度考慮すべき問題なのかとか、あるいは法の安定性というものとか発展性というものもありますよね。最高裁というのは法律のルールを作り出していく機能もあると思うのですが、その一方では安定させる。その安定と発展というものをどうお考えになっているのか、そういう司法というものに対する基本的なその方のお考えなども多少言っていただいた方がいいのではないか。
 思想、信条というのは、皆さん誠実に中立公平に行いますとお書きになっているだけですから、これは余り意味がないので、もう少し本当の信条といいますか、国民の目から見て、この人の考え方はこうなのだということがわかる、何かそういう情報を提供していただくとさらに良くなるのではないかという感じがいたします。

【伊藤座長】ありがとうございました。どうぞ、釜田委員。

【釜田委員】国民審査制がとられていますのは、既に御指摘のように、今の最高裁判所司法部に違憲審査権限が付与された、あるいは行政裁判権も付与されたことと無関係ではないわけであります。特に司法審査権限を付与されてから55年間の軌跡があるわけでございますが、この制度は、本来、個々の裁判官に対する関心が一方で非常に強い文化背景を持ったところで定着して運営されてきた面があるわけですが、日本の場合には、制度だけが形の上では導入されましたけれども、裁判所を構成されます具体的な裁判官に対する関心というものは非常に薄いわけでございますね。機構としての裁判所に対しては関心はありますが、その裁判所を構成しています、例えば最高裁の15名の裁判官の方が個々に、先ほどから各委員の先生方御指摘のようなもろもろのことについてどういったお考えをお持ちかということに対する関心が非常に薄いわけです。
 一例を挙げますと、例えばこの間、町田長官の人事の発表がございました。それを各新聞、テレビは報道いたしましたけれども、「時の人」欄に町田長官の御紹介ありましたが、それは通常の新聞がほかの分野での人の紹介されるのと余り変わってないのですね。そこで、新聞によっては一言ぐらい、町田長官が今までの裁判官としての御執務の中で、行政事件というようなことにちょっと言及された新聞記事もございました。しかし、それはそこでもう途絶えているのですね。どんな事件に関わられて、どんな判決を下されたのか、そういう関心はそれ以上には深まってないわけですね。
 これは別にマスコミだけがそうだというわけではなくて、今、全国にあります法学部の学生諸君もそれ以上の関心を持っておりません。これがアメリカでありますと、一国の最高裁の長官が交代したとなりましたら、ちょうどここに略歴に挙がってますような、今までの裁判官としてのいろいろなお仕事の内容についてどういう判決に関わられて、どんな判断を出されたのかということがたちどころに情報が集められて、そういうものが法律関係の学生諸君の演習クラスなどでも研究テーマ、共同研究の対象にすらなるという、それぐらいは関心があるわけですね。
 日本の場合はそういうものがないわけです。ないところへ制度だけが入ってきましたから、なかなか国民審査の段階で情報開示と言いましても、社会そのものの中に情報がないわけです。ですから審査公報で並べてもなかなかできないわけでして、実際には日頃から社会全体が、司法部というものが創造的な役割も果たすのだということを認識した上でいろいろな情報を自分たちで集めて理解しているという、そういう積み重ねがない限りは、国民審査の段階だけでこれを求めても、私はどこまでできるか、その点については疑問を持っているわけです。ですから情報の開示ということは、いわゆる公の文章だけに頼らずに、社会全体としてそういう分野に関わる可能性のあるものが常日頃からそういうものを集積する、関心を持ち続けるということも同時にやらなければならない。「国民自身が」という言葉を使えば国民自身がそういう努力を重ねてないとできないことではないかということが1点です。
 もう一つは、公の情報という点に限定して言いますと、先ほど平山委員が繰り返しおっしゃいましたように、次の第2番目の任命権の行使と大きく関わっていると思うのです。ですから任命過程において、内閣が具体的人物を最高裁の裁判官に適任であるという判断をされたその理由等がいろいろ説明されることになるわけですから、そういう選任過程の情報、それが同時に国民審査のときの出発点になる情報の1つに加えられてもいいと思うのです。ただ、どこまでそういう詳細なものを載せるかにつきましては難しい点があると思います。その点は周辺の情報関係の新聞等の業務の方が側面からカバーするというようなこともやらなければ、国民になかなか詳しい情報は伝わらないという気がいたします。ですから少なくとも、例えば公報に載せるとすれば、いつ、どういう内閣によって任命されたというあたりの情報くらいは載せ得るのではないか。
 アメリカの最高裁の裁判官の場合には任命しました大統領の名前が常にずっと記載されておりますから、そういうことは国民は知った上で裁判官のいろいろな判決に対する評価をしているということでございますが、日本でも少しそういう情報を公的にも加えてもいいのではないかというのが私の意見でございます。

【伊藤座長】ただいま各委員からいろいろ御意見をいただきましたが、今の段階で総務省あるいは最高裁のお立場で何か御発言ございますか。よろしいですか。

【平山委員】ちょっとよろしゅうございますか。1点は、釜田先生のお話とも関係がございますし、佐々木委員の先程の御発言にも関係がございますが、私は情報開示は任命後のことだけでなくて、任命前の情報を含むと思うのです。この制度は任命後、初めて行われる衆議院選挙で早くも実施されるわけですね。そうすると任命されて間がない方は任命後の裁判内容などはないわけですね。そういうことを考えると、10年後の2回目の方は任命後の情報がいっぱいあると思いますけれども、任命後間もない方は、任命後の情報はないわけで、情報は任命前の部分、任命に当たっての部分も一定程度出していただかないと本当に審査できるということにならないというのが1つ。
 それからもう1つは、佐々木委員の話の中の大法廷判決で、いわば×式が合憲だというのが決まっているのは私もよく理解しているのですけど、それ以外の方法はだめだと言っているわけではないと解していますがどうでしょうか。

【佐々木委員】事件性のある範囲での判断ですから、それ以外の制度について判断がなされているものではありません。

【平山委員】そうですね。

【田中委員】質問でもあるのですが、前から気になっているのですが、「最高裁判所において関与した判例、その他、審査に関し参考となるべき事項」、例えば配布されている町田判事の場合は、「最高裁判事に就任してまだ日が浅いので、特に記すべきものはない」とあるのですけれども、町田判事は高裁でかなり有名な判決を出されていらっしゃるわけですね。下級審で関与した判決を掲載することは今でも制度的に可能なのですか、だめなのですか。その点、どうなのですか。

【伊藤座長】もし何か御意見がございましたら、どうぞ。

【田中委員】御本人が書かれないだけなのですか。

【総務省(門山選挙課長)】条文で御説明申し上げますと、審査公報に掲載すべき事項は法律で書いてあります分と詳しい分は最高裁判所裁判官国民審査法施行令の26条がございますけれども、そこで裁判官の氏名、生年月日及び経歴並びに、次でございますが、「最高裁判所において関与した主要な裁判」という項目で掲げてございまして、特記しているのは最高裁判所の裁判でございます。ただ、その次にその他審査に関し参考となるべき事項を掲載するということがございますので、例えば原稿をお出しになられる裁判官の方が、下級審における判決が審査に際して参考となるべき事項だと御判断されれば御提出になることはあり得るものと考えております。

【田中委員】その方が情報提供としてはいいと思うのですけれども。

【伊藤座長】そうですね。任命行為を再審査をするという趣旨ではなくて、その方の法律家としての人物像を知る情報という意味ですね。

【田中委員】専門家は町田判事が下級審でどういう裁判をしていらっしゃるのかわかるのですけれども、一般の人々は知らないし、そういうものも積極的に出していただいた方がいいような気がするのです。

【木村委員】私は国民審査の制度は絶対に残しておくべきだと思います。形骸化しているかというような御指摘があって、だから、これをやめるというよりも、内容的に充実させるような方向が望ましいと思っているわけです。それに関連して、御配布いただいた最高裁の長官の履歴を見てみましたら、昭和59年のところが最高裁秘書課長兼広報課長、兼職になっていますが、これはアメリカの連邦政府の最高裁判所の場合も広報というのはパブリック・リレーションといって、今、釜田先生のお話もございましたけれども、極めて重要な膨大な仕事のあるところで、パブリックの問い合わせ、その他について非常に大幅な仕事をしているところなのですけれども、具体的に最高裁では広報課がどういうことをおやりなっているかということを御参考までにお伺いできればと思いますが、いかがでございましょうか。

【伊藤座長】金井さん、最高裁の広報課の機能といいますか、役割について一言、簡単で結構ですのでお願いします。

【最高裁(金井人事局参事官)】わかる範囲で御説明させていただきたいと思います。これまで裁判所というところは重要な裁判があったときに、この裁判に関する情報をきちんと提供していくということが主な仕事になっておりまして、裁判所としての施策について御理解いただくというようなことについては余り積極的に対外的に広報をしていくということはございませんでした。そういう意味で広報のセクションというのはそう大きなセクションになっていないわけでございます。
 ただ、今回この審議会以降の議論を拝聴しておりますと、裁判所がどういう形で仕事をし、何をやろうとしているのかということにつきまして、もう少し国民の皆さんに御理解いただけるような方向が必要なのだろうと私自身は思っております。
 これからこういう審議会の議論等も踏まえまして、どうしていくかというのは大きな検討課題かと思っております。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。それではいかがでしょうか。

【松尾委員】最高裁にちょっとお尋ねしたいのですが、私は「司法の窓」というのはすごくいい編集をされていると思いますし、内容的にも表現も非常に親しみやすいものになっていると思います。「司法の窓」というのは大体どのくらいの部数、どういうところに配布されていますか。
 それから、国民審査の公報とは違った意味で、相当編集の上で工夫されている点が多いと思いますので、広くこういうものを出すことによって、裁判官の人物像を知るという効果はあろうと思いますので、お尋ねします。

【最高裁(金井人事局参事官)】「司法の窓」ですけれども、裁判所を知っていただくための広報誌という位置付けになっております。今は4万部発行しているということでございまして、配布先としましては、できるだけ広くということを考えているわけですけれども、地方公共団体に置いていただくとか学校関係に置いていただくとか、そういった形でいたしております。以前と比べますと発行部数も増やし、できるだけ多くの人にご覧いただけるようにということで考えているところでございます。

【伊藤座長】大分予定の時間も過ぎておりますので、少し取りまとめたいと思いますが、審査方式そのものについても御意見がございましたが、それは御意見として十分私も内容は理解できましたが、当検討会がなすべきことという点では、情報の充実ということに絞って考えたいと思います。その点につきましては、内容はそれぞれ様々な御意見が出ましたが、方向という点では恐らくどなたも御異論がないところだと承りましたので、その点、本日の御意見を踏まえて、審査公報の内容について、所管の総務省において、最高裁の御協力もいただきながら検討していただくこと、それから最高裁のホームページにつきましても、さらに本日の御意見を踏まえて充実化を御検討いただくことでいかがでしょうか。
 特に総務省の検討結果につきましては、また、どういうことになるのか、皆様の御関心もなお高いと思いますので、しかるべき段階で事務局を通じて報告をしていただくということにさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。

(「異議なし」と声あり)

【伊藤座長】ありがとうございます。それでは、総務省の門山課長、ありがとうございました。それでは、2番目の議題でございますが、「最高裁裁判官の選任等の在り方について−最高裁裁判官の地位の重要性に配慮しつつ、その選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置」について審議をいただきたいと思います。前回は自由に御意見を述べていただくということで様々な角度からの御意見をいただいたわけでございますが、前回の御意見の中で、岡田委員から、最高裁の事務負担についての質問がございましたので、それについて、最高裁から更に御検討いただくようなことがございますでしょうか。

【最高裁(小池審議官)】席上に資料を配らせていただきました。「民事事件・刑事事件の新受・既済・未済件数の推移」ということで、最初の表が新受事件(新しく受けた事件)、2枚目が既済事件(処理した事件)、3枚目が未済事件(今、手持ちの事件)ということです。前回、手持ちの事件の未済事件についてのお話がございましたが、新受事件、既済事件の方のグラフもお示ししましたので御覧ください。
 大体形としては3つのグラフはよく似ておりまして、オーダーの方も大体一緒でございますので、これを御覧いただければと思います。説明はお時間もございますので、省略させていただきます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。岡田委員、何か、よろしいでしょうか。

【岡田委員】はい。

【伊藤座長】それでは議事を進めたいと思いますが、前回の御意見を承っておりますと、大体以下のような御意見に分けられるのではないかと思います。
 一つは最高裁裁判官の選任過程に諮問委員会を設置してはどうか。もう一つは、最高裁の機構改革などを含めて議論する中で検討すべき問題である。したがって、当検討会でその点を含めて検討するのは難しいのではないか。このような御意見もあったように思います。さらに、当検討会でそういった機構改革まで踏み込んだ議論はできないとしても、問題提起の意味があるから、最高裁の在り方について一応検討してはどうか、このような御意見もあったように思います。
 そういうことを踏まえまして、どういう形で議論を続けるかということになりますけれども、前回、事務局から配布いたしました事務局資料12−3によりますと、司法制度改革審議会における佐藤会長の取りまとめにおきましては、国民審査との関連も含めて諮問委員会の設置についての検討をしてほしいと、このような結びになっているようでございます。
 そして、そういう議論を受けまして、意見書の中では、枠囲いの中で、「最高裁判所裁判官の地位の重要性に配慮しつつ、その選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置を検討すべきである。」という提言がされて、枠外で「昭和22年当時、裁判所法の規定に基づき設けられていた裁判官任命諮問委員会の制度も参考になる。」といったことにされているわけでございます。
 そこで、先ほど申しましたように、前回の御意見の中にもございましたが、最高裁裁判官の選任過程に諮問委員会を設置してはどうか、こういう御意見についての意見交換をしていただいたらいかがかと思います。ただ、その際の議論の前提として、前回確か松尾委員から御発言がございましたが、意見書は最高裁の機構改革まで頭に入れてこの問題を検討せよと言っているのではないのではないか。このような御発言がございました。
 私といたしましても、ただ今御紹介しましたような審議会におけるやりとり、この問題の意見書の中での位置付けでございますが、司法制度を支える法曹の在り方の裁判官制度の改革の中に位置付けられています。こういったことから見まして、最高裁の機構改革まで射程において、この検討会で議論するということとはやや趣旨が違うのではないかと思います。
 そこで議論の仕方としては、現在の最高裁の機構を前提にして、諮問委員会設置に関する意見交換を行わざるを得ないのではないかと考える次第でございますが、ただ、繰り返しになりますけれども、この問題は結局機構改革の問題に踏み込まないと議論しにくいという御意見もございますので、そのような御意見の方はそのようなお立場で発言をしていただければと思います。そういうことで、一応この検討会での議論としては、機構改革の問題は機構改革の問題としてあるけれども、しかし、最高裁裁判所の現在の機構を前提とした諮問委員会の設置の是非について議論をしていただくということでよろしゅうございましょうか。
 あれこれ長らく申しましたけれども、それでは、前回、最高裁裁判官の選任過程に諮問委員会を設置してはどうかという御意見を積極的にお述べになったのは、平山委員、木村委員であったように思いますけれども、平山委員、木村委員から、なお、その点について御発言がございましたらお願いしたいと思います。どうぞ、平山委員。

【平山委員】今の座長のまとめのような方向で是非ここではやっていただきたいと思います。繰り返しになりますが、整理して申し上げてよろしゅうございますか。

【伊藤座長】どうぞ。

【平山委員】前回も申し上げましたけれども、審議会意見書の99ページでございますが、ここには次の2つの点が明記されているわけでございます。
 1つは、選任過程について、透明性・客観性を確保するための適切な措置を検討すべきだ。2つ目は、昭和22年当時、裁判所法の規定に基づき設けられていた裁判官任命諮問委員会の制度が参考になる。これは参考にすべきだということであると思います。
 そういう意味からいたしますと、今、座長のおまとめのように、この検討会で単に運用改善を検討することでは意味がないと思うわけであります。また、最高裁判所の機構改革までここで検討するのは、非常に荷が重いし、審議会ペーパーはそのことは言っていない。むしろ現行の最高裁裁判所の制度を前提に議論して欲しいと言っていると思うのです。
 ただ、それに当たっても、背景としてどういうことを議論するかということは別だと思っております。せっかくこの検討会で外国制度の調査を、釜田先生が中心になって学者の先生方にやっていただいている。そのことも我々として活かしていく必要があるのではないか。そうすると調査の結果は憲法裁判所制度を持っている国とそうでない国がありましたけれども、最高裁裁判官の任命の前か後かは別にいたしまして、その透明化・客観化に各国は努力していることはあの報告で私は裏付けられていると思うのです。そういうことを考えますと、この検討会では、選任過程の問題についてはきちんと議論すべきだというのが私の前回申し上げたところでございます。
 そこでどういう中身を議論するかということについては、これも前回にも申し上げておりますけれども、日本の今の最高裁判所は、憲法裁判所的な機能を持った司法裁判所である。これは憲法の位置付けからいってそうなる。そういたしますと、この審議会ペーパーは「最高裁判所裁判官に対する国民の信頼感を高めるため」とこう言っておりますので、現行憲法下での日本の最高裁判所裁判官は、その2つの任務を負っておられることを考えて、我々は制度づくりを考える必要がある。
 そうすると、第1には、司法裁判所裁判官、すなわち実務家としての裁判官、これに対する国民の信頼感が担保される制度でなければいけない、こう思うわけでありまして、そういう意味では、この前の外国調査の結果、アメリカなどで採用されているメリットシステムの様な、本当に法律実務家として公平で実力のある方を選任する方法が国民の信頼を高める、そういうことが1つある。
 もう一つは、憲法裁判所的な機能を持っておりますので、いわば最高裁判所が究極の法を作ると言ってもいいと思うのです。ルールメーカーといいますか、そういう位置にありますので、政治的な面でも信頼感を持たれる必要がある。言い換えますと、いわばそのためには強い国民の支持を得ている、民主的な正統性を有するといいますか、他の政治権力との間にきちんと独立を保っていける資質、こういうことになっているのではないかと思うのですね。
 そういうことから見ると、この前も申し上げましたけれども、今の現裁判官の方は、私はどういう制度をとっても、この方々が一番素晴らしいということになると思っています。ですが、制度として考えていく場合は、どういう政治権力が任命に当たるかということは、これから後のことを考えてみますとわかりません。そういう場合にいかなる政治権力との間でも、国民のためにきちんと物が言える裁判官が常に任命されるというシステムを構築しておく必要があるのではないか。
 こう考えまして、私としては長年、既に何回も何回もトライはされて実現していませんけれども、任命制度について、今申し上げました2つの要請に応えられるきちんとした担保的な制度をとっておく必要があるのではないかと思いまして、裁判官任命諮問委員会というようなものを制度化すべき時期にきているのではないか。それは今の裁判官の方々が悪いということではありませんで、将来日本の内閣と司法の関係がどのようになっていくかわかりませんので、そういう意味で、今、平時にきちんとした審査基準、審査手続、審査委員の選任方法などを定めた方が国民全体、日本全体のためにもいいのではないかと考えますので是非提案をしたいと思います。

【伊藤座長】木村委員いかがでしょうか。

【木村委員】確かに制度上の問題になりますと、これは大変大きい問題、国の統治行為といいますか、根本に関わる問題になってくると思うのです。制度的に最高裁判所それ自体を考えていきますと、憲法裁判所的な意味合いもあるかと思いますが、一応法曹制度検討会ということで、最高裁判所判事がどうかということで、前回発言させていただきましたが、今日お配りいただきました資料13−1がございますが、その5枚目に「第75回国会、第87回国会、第89回国会、第93回国会に提出された最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案とその趣旨説明」というところがございまして、真ん中のところに、「現行法上、最高裁判所長官の指名及び最高裁判所判事の任命は、内閣の専権であり、全く自由にその選任権を行使することができ、それが適正に行われていることを制度的に保障すべき何ものもないのであります。そして、国民はその選任が公正・適正に行われたことを知る道を全く閉ざされているのであります。これは明らかに法の不備であり、重大な欠陥であると考えるのであります。」ということが書いてあって、「よって、この法の不備、欠陥を是正し、最高裁判所裁判官の選任人事が慎重かつ適正に行われることを保障するため、最高裁判所裁判官任命諮問委員会の設置は緊急の重要事であると信ずるのであります。」と佐々木静子議員が言ったのですが、私は全面的にこれと全く同じ意見というわけではありませんけれども、大事なポイントをついている点があると思うのです。
 その次の次のページへ行きますと、今度は横山議員が似たようなことを言っていまして、「現行法上最高裁判所裁判官の指名または任命は、内閣の自由裁量であり、しかも国民はその選任人事が慎重かつ適正に行われたかどうか知ることはができません。」我々は、今、平山先生が言われたように、現在の最高裁長官を始め判事の方々はそれぞれに大変にすばらしい方々であることは信じて疑わないところでございますけれども、しかし選任過程が何らかの意味で、この最高裁判所裁判官任命諮問委員会の手続を経たということになりますと納得できる側面が出てくるのではないかと私自身は考えております。特に資料13−1の1枚目を見ますと、五条に諮問委員会の委員の、こういうのがいいのではないかというところで、一 衆議院議長、二 参議院議長、三 最高裁判所長官、四 検事総長、五 日弁連会長、以下六、七、八、九とあります。これは佐々木議員の提案による趣旨でございますが、ほかのところを見ますと、またちょっとずつ違って、昭和22年の裁判所法第39条4項の規定では、諮問委員会に諮問しなければならない旨が書いてあったのですが、諮問委員会の委員については政令で書いてあったので、これを法律にしようという意図があって、これが出てきたと思うのですけれども、その構成もこれとやや似ておりまして、15名入っている。
 昭和22年の場合には、日弁連という名前は入ってなくて、全国の弁護士の中から互選された者(4名)という形になっていますが、何かこういう形で、ああ、なるほど、国民の信頼を受けている国会並びに司法関係の委員が納得した形で最高裁裁判官が選任されたということが国民の目に見えやすいという形の方が、我々としては納得できるのではないかということを思いましたものですから、前回そのことについて指摘させていただきましたので、本日も少し補足させていただきました。

【伊藤座長】どうぞ、ほかの委員の方々それぞれお考えを伺えればと思います。

【中川委員】さっき座長が言われました前段、選任過程だけを余り議論しても大したことではないなと思いますのですけど、それは横に置いておきまして、現在の最高裁の機構を変えないという前提で考えてみますと、この前もいろいろ御検討ありましたように、最高裁判事の枠というものはある程度決まっているわけです。10人以上は法律の専門家でなければいけないという枠が1つございます。
 それから、もう一つの御検討で非常に気になっていることは、事件数が多いという問題です。平山先生がおっしゃいましたように、憲法裁判所ではございませんので、結局最高裁判所に最終的な法律判断を求めて多数の事件が持ち込まれ、それを処理していかなければならないという一方の要請もございます。その辺を兼ね合わせて考えますと、最高裁の判事は立派な人でないといけない。これは申すまでもないことですが、法的な面でもプロフェッショナリティーといいますか、専門性を極めて高度に備えている方でないと、現在の機構を前提にした以上はやっていけないのではないか。
 そうしますと、今、木村先生がおっしゃったとおり、諮問委員会があれば何となく国民の目から見ますと、スクリーニングがかかっているなという感じはしますけれども、結果的にその諮問委員会がどう機能するのであろうかという点になりますとよくわからなくなる。結果的には同じではないかという感じになってきまして、結局諮問委員会が一体何をやっているのだという話になりはしないかなという懸念がございまして、これは何とも言えないところなので、私は賛成とも反対とも言いかねる。というのは、その辺の実体が一体どのようになるのかということなのです。実体を踏まえて議論していきませんと、理念だけでやりますと、かえっておかしな、また、その委員をどうやって選ぶのだという問題も出てきます。しかも、15人いらっしゃる裁判官の欠員を選ぶということですから、15人を一斉に選ぶのなら、これはまたそれなりの意味はあると思うのですけど、1年に1人か2人の方をそういう枠の中で選んでいくということを考えますと、どれだけ委員会の実質的な効果があるのだろうかということも考えておく必要があると思いまして、あえて申し上げておきます。

【伊藤座長】どうぞ、岡田委員。

【岡田委員】前々回いただきました諸外国の調査結果の表を見まして、任命権者以外の関与機関等というのをずっと見ますと、これというのがないのですね。諸外国においては、日本に比べて政治ないし政党が関わっている度合いが大きいような、そういう感じがして仕方がないのです。確かに日本の場合は内閣が任命のところに関わってきたりするのですけれども、その形から見ると日本の場合は裁判所と政治はちゃんと距離を持っているという感じがします。
 そうだとすれば、最高裁裁判官の選任というのは正しく行われているのだろうという感じがします。だけれども、審議会の意見書からすると、客観性・透明性は求められているとは思います。では、どうすればいいのかという感じがして、委員会を作るというのは、確かにそういうものができて、中川委員がおっしゃるように、設置した委員会が機能すれば、透明性・客観性の観点からは、なるほどと思うのですけれども、果たしてこの諸外国の調査結果を見るとどうなのかなというところで、私自身も委員会を作るということに関して、作るべきだというところまで決めがたいという感じはします。
 もし効果あるものができるとすれば、きっと諸外国の中で、日本のものは、ずば抜けたシステムになるのかなという部分では挑戦してみて欲しいなという気持ちもありますが、今の段階でというと、私自身は委員会を作るべきだというところまでは決めがたいと思っています。

【伊藤座長】奥野委員お願いします。

【奥野委員】前回申し上げたことは、座長がおっしゃられたので、もう一度簡単に繰り返したいと思うのですけれども、基本的に私は1つは中川委員がおっしゃられたように、最高裁判所というのは2つの機能を持っていると思うのです。
 1つが違憲審査であって、もう1つが通常の事件についての上告審の機能。前者は多分考え方としては思想的といいますか、政治的な判断が極めて求められることであって、これは国民として極めて関心がある。後者に関しては、今度は実務的・専門的な知識が必要であって余り思想的なことに介入しては困るという逆の話があって、それを選任においても透明性・客観性を持たせ、設置した委員会においてもどう判断するかということになると、かなり矛盾が出てきてしまうのではないかと思っていて、そういう意味で、現行の最高裁の仕組みをこのまま残していきつつ、透明・客観的な選任をしたり、設置した委員会を機能させるのは非常に難しいのではないか、というのが1つ。
 もう一つは、これは木村委員等も強く御指摘されたことですけれども、今の最高裁裁判官の選任・任命が基本的に政府の専権になっているということで、これは三権分立であって司法の独立ということから考えて極めておかしいというのが私の印象でありまして、基本的に最高裁の裁判官を決めるときには当然残る二権、つまり立法府と行政府とがそれぞれある種緊張関係を持ちつつ決定するという仕組みを取るべきであって、例えば1つの例を挙げれば、これはうまく機能しているとは思いませんけれども、最近日本銀行は独立性が大事だということで新日銀法というものを作って、日銀の施策を決定する政策委員ですか、審議委員というものを作ったわけですが、彼らについては議会でのチェックがかかって、議会に行って審査を受けて議会の了承を受けない限りは任命されないという仕組みになっているのです。こういう諮問委員会みたいなものも候補者の2倍以上を指名するということをするよりも、本来であれば立法府が指名した人に関して議会が了承するかどうかということでチェックすることの方が本来はいいはずで、それができない理由は憲法がそのように規定していないからですね。そういう意味で言うと、これは制度の不備だと私は思わざるを得ないので、本来、法曹制度検討会ではできないでしょうけれども、司法制度改革推進本部の顧問会議を通じて、内閣なり立法府なりに何か発言していただきたいというのが私の個人的な希望ではあります。その上で、そうではあるけれども、そういうことは非常に難しいし、現実的にはそういうことが実現する可能性も時間的に極めてかかるだろうということを考えれば、当面何かすべきかもしれないということは、私はそれなりによくわかります。
 そういう意味で、先ほどの国民審査のときに、平山先生が強く主張されたことにも関係しますけれども、審査をする以上は、当然そのために必要な情報、とりわけ任命前の情報がきちんと出てこないといけない。そういうことがきちんと出るための仕組みが何らかの形で制度的に担保されるということは必要なのではないか。そういう意味で、現状の仕組みの下でも何らかの形で、ある種の任命に関する情報が、単に開示されるだけではなくて、ある程度議論されるといいますか、緊張関係を持って議論された結果が開示されるというような仕組みを作れるのではないか。それが昭和22年当時の諮問委員会そのままではないにしても、何かそれに似たような機関ではないかと思うので、そういう方向性で少し検討してみられたらいかがかと思います。

【佐々木委員】この問題を考える場合の基本的な考え方ですが、強調しておきたいのは、今の時点での最高裁裁判官の選任は、昭和22年当時とは異なっていて、後任者にどういう人を選ぶか、最も優れた人を選ぶ必要があるという場面での問題だと思います。そして考える場合の視点としては、憲法上はその人の選び方がどのようになっているかという問題と、現在最高裁判所が担っている職責とか役割、中川委員が言われたようなことですね。その2点をきっちり考えなければいけない。
 そこで考えてみますと、まず一番最初に戻りますと、基本的なスタンスの問題点につきましては、前任者と後任者にどういう役割を持たせるか。前任者の方としてどういう仕事を現在までやっておられたか。それを踏まえて後任の候補となる方がその能力、資格がそれにふさわしいかどうか。これは人事の本質的な事柄だろうと思いますけれども、これを決めるシステムは、一番前任者及び後任の候補者についての質の高い情報を持っている者が選任に関与するべきだと考えております。それがまず第1点。
 それから、憲法上の問題を考えないといけないと思いますけれども、これは憲法79条1項で、先ほどおっしゃるとおり、内閣が任命権を専権しておるという問題がございます。憲法は議院内閣制を採りまして、その上での司法権と行政権とのチェック・アンド・バランスの観点から、こういう統治機構の根本的なところを決めているということをおさえなければなりません。
 先ほど岡田委員がおっしゃいましたように、各国の制度でこの問題を見ますと、例えばアメリカ、ドイツ、フランスも任命権者以外に他の機関の関与を認めているわけですが、そのような仕組みはいずれも憲法上の仕組みとされています。他の機関の関与を認めないのは、憲法の不備だと言ってしまうのでしたら簡単なのですけれども、現行憲法を前提にするとそこが非常に大変な問題になると思うのです。だから何らかの手続を設けるにしても、本来は憲法で設けるべきだという筋合いのものではないか。こういう観点があろうと思います。
 それから、中川委員の指摘された問題点、これは極めて大きいのですけれども、12−5という資料にもあるように、先ほども申しましたとおり、現在最高裁が担っている職責と役割を果たすためには、多数の民事事件あるいは刑事事件についてまず処理しなくてはいけない。これが要らないというなら全然別なのですけれども、こういうものは要らないと、これとは別にしてくださいというなら順調にできるのですけれども、この観点からいきますと、先ほど申しました人事の本質に立ち戻ると、よりふさわしい方、抜けたところに来る候補者、次の候補者によりふさわしい分野の方を充てざるを得ない。現状はこういうことだろうと思います。
 したがいまして、方法的にも、中川委員が指摘されましたように、裁判所法41条の法律のプロで10人ぐらいいなくてはならないという問題と、もう一つの問題は、今必要な人として最もふさわしい人を選ぶ場合に、約6,400件をどうしていくのか、この問題を抜きにして語れない。この職責を全うできる方、こういうことになろうかと思います。
 ちなみにアメリカなどでは、年間200件ということが浅香先生の本などに書かれておりますけれども、それとはおよそ違うシステムですし、国民のニーズというのは、最終審として法令の解釈の統一を求めている。あるいは法令の解釈をどういうものであろうかと求めていると思います。
 したがいまして、意見書には、何らかの任命過程での措置を検討するとありますけれども、憲法上の視点や、あるいは今申し上げた最高裁判所の現状の職責・役割からすると、任命過程において何らかの措置を講ずることについては具体的な制度設計は極めて難しいと思いますので、この点をぜひお考えいただきたい。

【伊藤座長】どうぞ、田中委員。

【田中委員】私の意見は、この前も話したのですけれども、この問題点は、この検討会の守備範囲から見てしんどいのではないかということです。今、佐々木委員が緻密におっしゃったのですけれども、これをもう少しラフに言うと、少し意見書の批判になって、基本的には憲法の設計ミスではないかということにもなるのですが、例えば意見書の中で裁判官の出身分野別の人数比率の固定化などの問題点が指摘されていると言われる点などについて、一体どうして実効的に調整するのかといった問題を考えていくと、昭和22年当時の裁判官任命諮問委員会の制度が参考になると言われても、プラスに参考になるのかマイナスに参考になるのかよくわからないという問題があると思うのです。
 そう見ていきますと、実効的な措置を考える場合、現在の最高裁の機構、在り方を見直さずにどの程度実効的な措置を採れるか、考えようとすれば考えるほど憲法問題に入らざるを得なくなってきて、この前の外国の制度の調査を見ましても、最高裁の判事の任命プロセスに三権の他の機関が関与する場合には憲法レベルで制度設計をしているのですね。
 憲法問題に入らずに、どうするかということになってきますと、下級審の裁判官について一種の諮問委員会を設けるから、それとパラレルに考えて、最高裁の内閣による指名・任命についても、そういう諮問委員会的なものを設けるべきだというのは、論理的には構造が違っているような感じがします。下級審の裁判官の場合には、裁判所の権限の中でそれをどう適正に行使するかという問題だと思うのです。それに対して、最高裁裁判官についての内閣の任命・指名をどう適正にするかということについて諮問委員会的なものを設けるという話は、これは権力分立の仕組みそのものをどうするかという問題が絡んでいて、単なる司法権の内部での問題ではないわけでして、ですから憲法問題になると思います。これは図式的な議論かもしれないのですけれども、この検討会でも、下級審の裁判官の任命、諮問手続については、最高裁に戻して検討してもらっていることを考えると、この最高裁の裁判官の問題は、まず内閣で何か適切な仕組みをお考えいただいて、それをこの検討会で検討させていただきますというのがロジカルな対応関係になるというところがあって、論理的に突き詰めていくと無理があると思います。そうなるとこれは衆議院や参議院の憲法調査会で議論されているので、そこのマターになるのではないかというのが、少し乱暴な議論かもしれないですけれども、理論的にパラレルに見ていくとそういう感じがします。決して現状がうまくいっているという評価ではなくして、いろいろ問題があることは事実なのですけれども、それをどうしてやるかというのはかなり大がかりな議論になるので、今、佐々木委員がおっしゃった論点をきちんと詰めた上で、こういう問題を取り上げるならばこう考える必要があり、それはこういうところで検討しなければならないといったシミュレーションをした上で、どういう措置をとるかということを検討しなければならないと思います。何らかの諮問委員会的なものを設けて、それで本当に改善できるならば具体的な方策を考えたらいいと思うのですけれども、ちょっとそれだけでは問題が解決しないような感じを持っているので、議論をきちんと整理した上で見通しを立てた方がいいのではないかと感じます。

【伊藤座長】松尾委員、お願いします。

【松尾委員】一般の国民の立場から考えてみますと、最高裁の最終審としての機能や裁判官の職責、役割と国民との関係に見ると、最高裁裁判官の任命は、過程においてもそうですが、国民にまず理解されなくてはいけない、信頼されなくてはいけないということだと思います。その任命が公正、適正に行われていたかどうか、つまり透明化の問題だと思うのです。ところが現状ではまさにそこが問題になっておりまして、国民の立場から見れば、どうして、あるいはどういう経過でこの裁判官が任命されたかということが全くわからない、知らされていない、知るべき道もない、というようなことが問題になるのであって、そこをどうするかという問題になろうかと思います。それは司法制度改革審議会でも指摘しているところなのですが、私なりの解釈ではどうもはっきり提言しているようにも見えない、これは私の思い込みかもわかりませんが。
 しかしそれは別として意見書に従って言うと、現行ではだめだと、やはり見直しをすべきではないかという点は見えてくると思います。
 そこで考えると、1つには、既に出ておりますように、任命の諮問委員会めいた組織を作って、事前に検討するかどうか。もう一つは、国会の承認ということも道としては考えられるのではないか。それがどちらがいいというものではないけれども、そういうことが一応考えられるとします。
 諮問委員会の問題について、私は基本的には諮問委員会の組織をどのようにするかは別にしても、こういう組織を作ることは必要ではないかと基本的には考えます。ただ、これは昭和22年当時の状況の諮問委員会とは全く事情も違っておりますし、昭和32年の問題については、最高裁の機構改革ということを前提にされた議論ですから、それはちょっと取り得ないということになりますと、参考的に言うと、昭和50年代の国会に提案された形の法律による諮問委員会の設置ということは参考になる余地がむしろあるのではなかろうか。ただし、それを安易にどういう組織にするかということではだめですので、組織の構成人員、運用、権限、そういうことは相当検討すべきであって、むしろこれまでにない形の諮問委員会ということも構想しなければならないのではなかろうかと考えております。
 それから、この問題をこの検討会で論議することは重要で、やらなくてはいけないことですが、ここで1つの方向性を見いだすことができるかどうかです。もし見いだせないとするならば、この検討会でどのようにまとめ上げていくかという問題はあると思っています。これは任命についての多分に構造的といいますか、仕組みの上でのものの考え方であります。もう一つ、第2の考え方として、前回、私がちょっと触れましたが、現行を前提として、透明化のための改善策がないだろうかということであります。現行はどのようになっているかというのは既に資料で示されておりますので、このような形で決まっていくということなのですが、多分にこれは内閣の裁量付きであるというような事情になっているし、あるいは最高裁長官の意見を聞くということが慣例的になっているというようなことで決まってきているわけですけれども、実際にどのようにして候補者が選考されて、どのようにして任命されるのか。最高裁の裁判官に任命された方々、現在の方々でも多分にそういうような方が任命されたということでそれは認めますけれども、問題は個人の問題ではなくて仕組みの問題として考えたときに、その辺が運用上の面から考えてもはっきりとしていない、透明化していないところに問題があるわけですから、構造的な問題が結論として方向性をこの場で見い出し得ないとするならば、次善の策として運用上の問題として考えることもできないかという考え方です。これは前回、その点について少し触れておきました。私がそれをもって全てであるということを言っているわけではありません。誤解がないためにあえて申し上げておきます。
 そのように考えて、さらにこの運用上の問題について言いますと、例えば新たに内閣官房長官が記者会見で説明されるようになりましたけれども、透明化という面では、果たしてこれで足りるのかというような感じも受けますし、また記者会見の内容がマスコミ報道の中で詳しく述べられているかどうか。必ずしもそうではなくて、むしろこの人が最高裁の裁判官に任命されることになったと、経歴はこうだということだけが報道されているのが実態ではないかと思います。そうするとそれを読む一般の国民は、ああ、この人が後任になったのだ、こういう経歴の人だというだけであって、任命に絡む透明化された情報は全く知ることもできないという現状が続いているのではないかと思っております。
 結論的にこの検討会でどこまで話が進むのか、私自身も何とも言えませんが、非常に大きな問題として捉えるならば、この検討会以外のところでやるべきものであり、これは多分に政治的な要因が入ってくるものではないかと考えています。

【伊藤座長】まず小貫委員からお願いします。

【小貫委員】前回も若干申し上げたのですけれども、この任命諮問委員会の問題は最高裁判所の在り方というか、将来のありようというか、その議論とどうも密接に関係しているように思えて私にはならないのですが、仮に将来憲法裁判所を設けるということになれば、幅広い委員会での選任の議論をしていただくということも大いに考慮していいのだろうと思うのですけれども、ただ、現状ということを前提にして議論してみたらどうかというと、どうも任命諮問委員会を果たして設けるべきかということについては疑問があると言わざるを得ないと思っております。
 それは中川委員あるいは佐々木委員からも詳しくお話がありましたけれども、現在の最高裁判所の機能や機構等を考えて、あるいは現実に果たしている役割ということを見ますと、事件数は、平成13年で民事、刑事合わせて4,546件の新受件数だとこういうことなのです。こういうときに最高裁が現実に果たしているというのは、具体的な事件を解決するというところに力点が置かれているのだろうと思うのです。そうするとこれから新たに退任された方の補充を考えて任命しなければいけないという場合には、この現状を前提とする限り、裁判実務能力が必要ではないか、こういう観点で見ざるを得ないであろうし、退官された人が民事分野を専門にされているのか、あるいは知的財産、行政分野を専門にされているかというようなところを考慮して選ばざるを得ないのではないのかと思うのです。
 さて、そのようなことを前提として考えてみますと、任命諮問委員会を作っていただいて、何を議論していただくのかというところ、私には具体的にイメージを作り上げることができないと考えています。しかも田中委員が御指摘のように、内閣の任命権や指名権という憲法上の権限と委員会との絡みも重要な問題として残っていると思いまして、そういうことからしますと、現状ではこの委員会を作るということには消極的な意見にならざるを得ないのではないかと思っています。
 では、透明性は現状でいいのだろうかという問題は残ると思いますが、これは内閣でどういう人を選任したかという選任過程をどこまで説明できるかということなのだろうと思います。その際に個人のプライバシーも考えなければいけませんので、何でもかんでも洗いざらい言うというわけにはいかないだろうと思うのですが、そのあたり最大限の努力をして国民に明らかにすることは必要だろうし、そういう観点で見て現状の改善余地はあるのかと思います。それとともに、先ほど議論された国民審査の充実化というところでも、これまでよりも一歩も二歩も踏み出した情報提供ということが可能なわけで、現状ではこういう側面から迫っていくのがいいのかなと思っております。以上です。

【伊藤座長】釜田委員お願いします。

【釜田委員】今、議題の委員会を設けるかということでございますが、それはこの委員会がどういう役割を果たすかということにかかっていると思います。従来、設置しようと何回か国会の場で試みられました委員会を拝見しますと、どうもこの委員会におきまして、何名かの候補者を答申するという形になっているようでございますが、この答申の意味が、内閣側にその答申された候補者の中から選ぶ、あるいは任命するというような義務づけをするというような意味合いまで含まれていたとすれば、憲法上内閣の任命権に対する制約が起こるおそれがございますので、問題になる可能性があると思うのです。そういう意味では内閣に専任権・任命権というものを国民は憲法を通じて与えたわけでございますから、内閣の判断において適任者を選べるということでございます。ただし、選べるという意味は、どういう人物を選んでもいいかということではなくて、先ほど来御指摘のありますように、最高裁の裁判官に適任の人物を選ばなければならない、そういう制約を伴っているわけです。
 そうしますと内閣としましては、どうやって適任者を選んだかということ、自分の最終的な結論について説明が必要になってくるわけでございまして、この審議会が言う透明性というのは、恐らく国民に対して最終判断の理由といいますか、そういう選定に至ったところを説明するということと関係しているかと思います。客観性という点では、いろいろな情報、あらゆる情報を収集して適任者を選んだのだと。有能な人物が存在するという情報を全て入手した上での選定であると、そういう努力をしたという過程が必要であるということではないかと思うわけであります。
 そういたしますと、現在、内閣が任命権を行使する際にどのようにして情報を入手しているかということでございますが、それについて外から見えないということがどうも審議会で問題になった点のようでございますので、その点から考えますと、どういう形のものかは別としまして、ある種の委員会というものを内閣自身が内閣の内部に設けるというこことであれば、それは恐らくそれを通じて客観的な情報、有能な人材の存在を知るための情報が収集できる、何かそのような窓口といいますか、ルートを自分の手元に設ける、そういう機能を果たすものであれば、現行の制度上も内閣自身の下に設けることは可能だと思うのです。ただ、外側から一定の候補者を絞りまして、その中から選択せよと迫るような制度を設けることはいささか現行の憲法下では難しいのではないでしょうか。
 今申し上げましたような情報収集、情報の提供機能を果たすようなものが何か考えられるのであれば、また内閣自身がそういうようなものの助力を必要とするということであれば、そういうものを内閣の中に設けることは客観性を確保する上での1つの手段ではないかと思います。
 先ほど来指摘がありますように、国民審査制度の関係でも、内閣はあらゆる情報を入手した上での選定であったということを国民に説明する義務があるわけですから、その説明が詳細になされるようにしておく。それが国民審査のときの1つの判断材料として提供されるよう持っていくことが可能ではないか。私は委員会を設けるとすれば、何かそのような内閣自身の判断過程に寄与できるような情報提供機能を果たすようなものであればいいのではないか、そういう感じも少し持っております。

【伊藤座長】岡田委員、ちょっと休憩をとりたいと思います。もし御発言があれば簡潔にお願いできますか。

【岡田委員】発言というか、ちょっと教えていただきたいのですが、内閣に任命権があるということで、国会が関わるとすれば、例えば承認とかになれば憲法を改正しなければいけないということですね。そうすると、こういう諮問委員会などを作って、その中に国会議員が入って来るという形をとれば国会が関わってはくるわけですよね。立法機関として内閣だけではなくて、その辺がちょっと気になったものですから。

【伊藤座長】形式的といいますか、国会が関与しないという部分は、実質を活かすとすれば、そういう諮問委員会の構成もあり得るのではないかということでしょうか。

【岡田委員】改革ということに、透明性・客観性が欠けるとすれば、そういう方法もあるのかなと、確認です。

【伊藤座長】若干議事が遅れていて申し訳ありませんが、ひととおり御意見を伺いましたので、このあたりで10分ほど休憩をとらせていただきます。

(休 憩)

【伊藤座長】それでは再開させていただきます。よろしいでしょうか。
 この議事の取扱いについてお諮りをしたいと思います。前回もそうですが、先ほど来の御意見を承っておりますと、諮問委員会の設置について積極的な御意見、それから消極的な御意見、あるいはその内容についてもいろいろな御意見ございました。さらには憲法問題として議論すべきであるというような御意見もございました。
 そういった御意見の内容を伺っておりますと、ここでどれが多数意見かというのを決めてやるというのは現在の段階では余り意味がないと思いますので、私の考え方といたしましては、一旦ここで、今まで出されました御意見につきまして、それを簡潔に整理をいたしました議事整理メモ、これを私の責任で作成をさせていただいて、それについて、なお、こういう御意見があるとか、別の指摘があるというようなことがございましたら、さらにそれに付け加えて次回以降にまた御発言をいただくという形にさせていただいた方がよろしいように思いますが、いかがでしょうか。
 それでは奥野委員から。

【奥野委員】決して反対というわけではないのですが、議事整理メモをまとめられる前に一言だけ、もし御迷惑でなければ言わせていただければと思うのですが、私の立場は、先ほど申しましたように、基本は構造問題だけれども、それは非常に実現困難であることを考えるとこのことを議論してもいいのではないかということですが、そういうことを考えたときに、こういう諮問委員会みたいなものは余り現実的ではないという御意見が一方では強いわけですが、その御意見を伺っていると、基本的にいくつかの理由があって難しいというお話だと思うのです。
 一番大きな理由は、最初のときと違って、今は1人とか2人ぐらいの改選でしかない。そういうときに、例えば候補者を複数名挙げて、多分何人かはだめになるだろうというような人の名前まで挙げて議論するのはいかがなものかというお話がありますけれども、やり方としてそういうやり方だけなのかということを私は疑問に思っています。釜田委員もおっしゃられたことですけれども、私も割と似たような考え方を持っていまして、本来、こういう委員会といいますか、最終的な選任の在り方としては、ある分野の日本で最高の人を選ぶということでは多分ないのだと思うのですね。そうではなくて、最高裁の裁判官として妥当かどうかということを議論するわけで、それを最終的に判断するものとしては、国民審査というものがあるわけで、そういう意味で言うと三権分立にはなっていないかもしれないけれども、当面三権分立という形がうまく機能しないのだったらば、内閣対国民の審査という形の緊張関係をうまく作り出せればいいわけで、そういう役割をするものとして新しい何か委員会を作ることは可能ではないのでしょうか。
 具体的に言うと、釜田先生は、内閣の選考の手続を明らかにするとおっしゃいましたけれども、むしろそうではなくて、内閣が選んだ人について、この委員会でいわば模擬議会証言みたいな形のことをして、それを電子政府の時代ですから、電子媒体かなんかで国民に公開するというようなことをすることによって、その人がどういう経歴の人で、どういう考え方を持っていて、どういう資質の人であるかということが明らかになるような仕組みを仕組むことはできるだろうし、それが公開された段階で問題があるようならば、内閣の方が国民審査のことをおそれて手を引くだろうし、そうでなければ当然任命するでしょうし、任命権についても問題ないだろうと思います。例えばですけれども、そういうような在り方もあるでしょう。
 そういう意味で、否定的な方々がネガティブに思われることもわかるのですけれども、もう少し諮問委員会の在り方というものにまで広く考えてみると、もう少し積極的に考えられる可能性もあるのではないかということです。

【伊藤座長】私が議事整理メモと申しましたのは、今、奥野委員がおっしゃったことを決して内容的に否定するとかそういうことではございませんで、今までいろいろ口頭で、本日もいろいろな御意見が出ましたので、それを事務局に公平、中立な立場から整理してもらって、なお、それについて、いや、自分の言っているのはこういう趣旨ではないですとか、あるいはほかの方の御意見について、なお、こういう意見があるというようなことは、それを踏まえて、また、必要があれば議論を続けていただいたらいかがでしょうかと、そういう趣旨でございます。そういうことでよろしいでしょうか。どうぞ中川委員。

【中川委員】この委員会の話とちょっと関係がないのですが、たまたまこの間、大学の同窓会がございまして、友達に外務省の者がいたのです。もう退官しておりますけれども、高官の一人だったわけですが、たまたまこのような話になりまして、「外務省の株が1つあるのだよな。」と言ったのです。それで私はびっくりしまして、「株って何だ。」と言いましたら、「いや、あれ一人送れるのだよ。そういうことになっているのだ。」と言うわけです。私は外務省のその方がいいとか悪いとか言っているわけでなくて、「株」という言葉が出てくることに対しまして大変な驚きでございまして、それはちょっと困ると思います。国民の方も、何か固定的な枠みたいなものを感じておりまして、外務省から一人、学者さんから何人と。これは何を意味するか。結局、さっき釜田先生がおっしゃったように内閣の説明が少し足らないのではないかなと思うのです。外務省であれ、何であれ、そのようなものは関係ないわけでして、この方がベストの人だということを十分説明していただければ納得するわけですから、そういうことを注文としてこの場で申し上げておいた方がいいかなということでございます。最高裁の裁判官は、いわば公人であるわけですから、プライバシーを多少犠牲にするくらいの覚悟があってしかるべきだと思います。

【伊藤座長】わかりました。それでは、ただいまの御発言は承りましたので、できれば次回の検討会までに議事整理メモを私の責任で作成をさせていただきます。若干事務局にももちろんお手伝いいただくことになりますけれども、その上で皆様に、なお、御意見があればさらに承りたいと思います。ただ、考えてみますと、次回は12月10日でございますから、余り余裕がございませんで、場合によりましては、本日の御意見の整理など事務局でやっていただくこともございますので、来年の1月21日の第15回の検討会でお諮りをすることになるかもしれませんので、そのあたりは御理解をいただければと存じます。
 それでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

【伊藤座長】それでは引き続きまして(3)裁判官の人事制度の見直し−裁判官の人事評価について、可能な限りその透明性・客観性を確保するための仕組みを整備すること、この議事に進みたいと思います。
 この問題につきましては、前回、私から最高裁から検討状況の説明をお願いしたいというお話をいたしましたが、若干事情が変わったように伺っておりますので、まず最高裁から説明をお願いしたいと存じます。金井さんよろしいでしょうか。

【最高裁(金井人事局参事官)】それでは御説明させていただきます。席上に1枚紙のレジュメが置いてありますので、それも適宜ご覧いただけたらと思っております。現時点での状況を御説明させていただきます。
 裁判官の人事評価につきましては、裁判官の人事評価の在り方に関する研究会の報告書が今年の7月16日に取りまとめられました。その取りまとめの経緯とか研究会報告書の内容につきましては、この検討会において7月に御説明したとおりでございます。
 その後、最高裁事務総局におきまして、改革審議会の意見の趣旨を踏まえまして、さらにはこの研究会報告書、それから今年の7月、8月にこの検討会で委員の皆様方から様々な意見をちょうだいいたしました。そういったことも踏まえまして、さらには高等裁判所との協議を経るなどして、これまでいろいろ検討してきたところでございます。
 その検討に当たりましては、改革審の意見にもありますとおり、裁判官の独立性に対する国民の信頼感を高めるといった観点に立ちまして、裁判官の独立の保持にも十分配慮しつつ人事評価の仕組みを整備する必要があるといった基本的な認識に立って検討を進めてきたところでございます。
 そういう形で検討を進めてまいったわけですけれども、これから申し上げます2つの事柄が出てまいりましたので、今日その点を御説明させていただきたいと思っています。1つは人事評価制度を整備するに当たりましては、評価の対象になる裁判官の意見を十分に踏まえまして、また、その理解を得て制度設計をしていくことが必要不可欠ではないだろうかと思われます。
 2つ目の要素といたしましては、人事評価制度の整備を図るに当たりましては、多角的・多面的に検討を進めていくことが適当ではないだろうか、このようにも思われるわけでございます。そこで、今申し上げましたような事情も考慮いたしまして、また、この問題に関する高等裁判所との協議の結果等も踏まえましていろいろ検討してみたわけなのですけれども、この段階で事務総局といたしましては、これまでの検討に加えまして、さらに裁判官の意見を十分聴取する、その理解を得るという手順を踏む必要があると考えました。また、さらに多角的・多面的に検討するためには、一般規則制定諮問委員会において議論してもらうことも視野に入れながら検討を進めていく必要があると、考えた次第でございます。
 司法制度改革審議会意見に鑑みますと、新たな人事評価制度の骨格は、本日のこのレジュメの2に書かせていただいたような事柄、こういったことが大きな検討課題になってくるのだと思っておりまして、今後こうした点を中心に最高裁内部でもう少し検討を進めさせていただけたらと考えている次第でございます。
 今後の予定をごく大ざっぱに申し上げさせていただきますと、この人事評価制度の整備につきましては、最高裁の推進計画の要綱上は、平成15年末までに所要の措置を講ずるということで考えているところでございます。そこでこういったスケジュールを前提にいたしまして、これまでの検討状況を踏まえまして、さらに人事評価の対象となる裁判官の意見も十分に聞くなどいたしまして、新たな人事評価制度の整備の在り方について多角的・多面的に検討を進めてまいりたいと思っております。平成15年末までの間にこの制度を整備することを目指したいと思っているわけです。
 こういった状況にありますので、今日の御報告は以上の程度にとどめさせていただきまして、今後の検討状況につきましては、これまで何回か御議論いただいているのですが、裁判官の指名過程に関与する機関の設置の問題の場合にならいまして、節目節目でこの検討会に検討状況の御報告し、また御議論いたただきたいと、このように考えている次第でございます。

【伊藤座長】今、説明がございましたように、検討状況が熟するまでに若干時間を要するということでございますが、何か御質問等ございましたらお願いします。どうぞ、木村委員。

【木村委員】説明いただきましてありがとうございました。評価の対象となる裁判官の意見を「十分に踏まえる」必要が出てきたということなのですが、これを人事評価の整備のプロセスで、十分ではないかもしれないけれども、一応は評価の対象となる裁判官の意見については聴取をしてやっていったというプロセスにあったわけでございますよね。特にそれが「十分に踏まえる」というようになったアクセントの置き方ですけれども、何かそこで、これでは足りないというようなことが具体的に出てきたのかどうかということについて、例えば地域的な聴取が行き渡ってなかったとか、よくわかりませんけれども、ほかの省庁との差とか、そこら辺のところはどうでしょうか。例えばサラリーの問題も関係してきますよね。ですから、何かこの「十分な」というところが非常に意味がありそうな気がするのですが、いかがでございましょうか。

【最高裁(金井人事局参事官)】従前からこの問題については、裁判官の意見を十分踏まえながら検討していかなければいけないと考えていたところなのですけれども、これまでの意見聴取といたしましては、人事評価の研究会が昨年9月から今年の7月まで動いておりまして、その検討過程で、研究会での議論がインターネット等を通じまして裁判官のもとに届き、それを前提にした裁判官の意見が研究会にフィードバックされるとか、そういった形で議論がされてきたわけですけれども、研究会報告書が出された以降、余りそういった議論が内部的にはまだされておりませんでした。
 他方、研究会の報告書が出された以降、この検討会で様々な意見が出されておりますし、最高裁内部に設置されている一般規則設定諮問委員会の関係でも、下級裁判所裁判官の指名についての御議論の中で一部人事評価に触れる御意見もございました。そういった新しい事情も出てまいっておりますので、そういったことを踏まえて、これからどうしていったらいいかということをもう少し意見交換していく必要があるだろうと思っているわけです。

【木村委員】専ら内部的な問題で、対外的な問題ではなくて。ということでしょうか。

【最高裁(金井人事局参事官)】今、申し上げているのは裁判官との意見交換、理解を得るという、そういう手続が、今後の制度を作っていく上でも、制度を発足した後も重要になってくるのではないだろうかと思っているということでございます。

【平山委員】私、金井さんの御説明で十分納得できます。もっと慎重に検討したい、これはこれでいいと思いますが、2、3御質問しておきます。
 8月29日の検討会で、私の方から研究会報告書と審議会意見書の差異、異同についてのペーパーを皆さんにお配りしたりいたしまして、意見書と報告書に乖離があるのではないかという質問をしておきましたのですが、そのこととの関連で、今までの裁判所での審議状況は、報告書については見直してみようということにあるのかどうかというのを、今までのところで結構でございますが、ざっくばらんに、方向として、そういう積極的な意味があれば非常にいいのではないかと思いまして、これが確認させていただきたい1点でございます。
 それから、2点目は、人事評価について新たな仕組みを恐らくお考えになるだろう。それを、例えば最高裁判所で規則としてお作りになるということになれば、一般規則制定諮問委員会の方に当然お諮りになるのではないかという気もしますもので、そのあたりについて、先程は視野に入れてとおっしゃっておりましたけれども、そのあたりの議論をされているということであれば、私はそれは非常に大事なことだと思っておりまして、見通しとしては規則にするのか、あるいはガイドラインなのか、あるいはそのほかかということについても、何か御議論があれば、ちょっと中間的な状況報告を伺っておいて、今日はそういうことでよろしいかと思います。評価の対象になる裁判官の意見を十分聞きたいというのは、私は大事なことだと思いますので、時間は要りようではないかと思いますし。それからもう一つ、仮に規則にするというようなことであれば、当然規則制定諮問委員会との関係で、やはり時間が要るのではないかと思いますので、そのあたりのところをざっくばらんに中間報告を今日していただければいいかなと思います。

【伊藤座長】金井さんお願いします。

【最高裁(金井人事局参事官)】まず最初の御質問の関係ですけれども、配布資料にも書かせていただいていますが、今後制度を整備していく上では、評価権者の明確化をはじめとして様々な問題について検討していかなければいけないと思っております。
 その中で、ここの場でいただきました御意見、一般規則制定諮問委員会でもいただいている御意見等を考えてみますと、一番深刻な問題といたしましては、裁判所外部から寄せられる情報をどのように評価の中で考慮していくか、その問題が一番大きいと私自身は思っているわけですけれども、そういった点も含めまして、もう少し時間をかけて議論していくことになるのだろうと認識しております。
 それから、2つ目のお尋ねの関係ですけれども、審議会の意見書の趣旨等を踏まえてまいりますと、新しく整備します評価制度ですが、これは単に内部的な通達又はガイドラインというようなことで作り上げられるものではないと認識しております。やはりどういう制度かということをはっきり裁判官にも知らせ、国民の皆さんにもわかってもらうという、そういう形の仕組みを作っていかなければいけないのだろうと思っております。
 では、それをどのように作っていくかということですけれども、研究会の報告書では、規則で整備するのが憲法との関係で適合しているのではないかという報告をいただいているわけですが、そういったことも参考にしながら、これから検討していくということかと思っております。
 では、一般規則制定諮問委員会を開催するのかという点なのですけれども、先ほど申し上げましたのは、一般規則制定諮問委員会を開催することも視野に入れながら手順の問題については、これからもう少し検討させていただきたいと思っています。

【松尾委員】研究会の報告以降、私は大分事情も変わっているのではないかと思うのですね。具体的にはこの検討会でもいろいろな意見が出ました。私は外部評価を尊重するとか、そういう仕組みをもっと考えるべきであり、報告書のあの内容では足りないのではないかという意見を述べました。とにかく検討会ではいろいろな意見が出たという事情の変化があったと思います。
 それから、本日、手元にありますけれども、日弁連から人事評価についての意見書が出ております。内容的にはかなり批判的な内容になっております。そういう意味でも事情が変わってきていると思います。
 したがって、この問題は評価を受ける裁判官にとって非常に大きな問題であると同時に、裁判を受ける国民の側からいっても大きな問題ですから、いろいろな意見を集約するということが必要でありますし、当面裁判官のいろいろな意見を交換し、全ての裁判官に理解を求めるということの作業は絶対必要ではないかと思います。
 それから、多様な意見を聞くということで、一般規則制定諮問委員会の話が出ましたけれども、そういう規則事項とお考えになっているのであれば、当然のごとく、これは聞くべき筋合いのものと思います。したがって、こういうことのためにちょっと時間がかかるのはやむを得ないと思っております。とにかく慎重に十分に理解できる評価制度をまとめてほしいと思います。

【伊藤座長】それでは、最高裁からの説明について御理解いただきましたように思いますので、そちらの検討が熟するのをお待ちしたいと思っております。適宜また状況の報告をお願いしたいと存じます。どうもありがとうございました。本日、予定いたしました議事は以上でございますので、特にほかにございませんでしたら、このあたりで終了にさせていただきたいと存じますが、よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

【伊藤座長】次回は12月10日午後1時30分から午後5時までを予定しております。先ほど御了解いただきました最高裁裁判官の選任過程についての透明性・客観性を確保するための適切な措置につきまして、私の責任で議事整理メモを作ると申しましたので、それが間に合えば、その点をまずお諮りをしたいと存じます。
 続いて、前回に引き続きまして、下級裁判所の裁判官についての任命手続の見直しの問題、これについて最高裁から説明をしていただいた上で議事を進めることにいたします。そして最後に弁護士会運営の透明化、弁護士会の会の運営について国民の意見を反映させることが可能となるような仕組みを整備すること、これをはじめといたしまして、弁護士会運営の透明化を図ることについて日弁連から検討状況を説明していただいた上で議事を進めたいと考えております。そういうことでよろしゅうございますか。
 どうも長時間ありがとうございました。