前回に引き続き、次のような質疑応答及び意見交換がなされた(○:委員、●:事務局、□:日弁連、■:座長、△:最高裁、▲:法務省。以下、同じ。)。
○:懇話会を発展的解消し市民委員会に改組するとのことだが、消費者相談員のような者も委員に含まれる等、専門家だけではなく一般市民も意見を述べることができるようなものに変わるのか。また、市民委員会では弁護士会に寄せられた苦情について、どう対処すべきか議論したりするのか。
□:市民委員会は当然一般市民も含む幅広い層から構成されることになる。
○:私は懇話会に参加しているが、現在でも委員は法律の専門家ばかりではなくマスコミや消費者なども含まれているし、専門的な議論ばかりではなく、一般的で市民的な議論をしている。発展的解消とはそれをさらに一般市民へ開放するということではないか。
○:情報公開について、不開示情報として「開示することにより、日弁連の活動に支障を及ぼすもの」など、包括条項が設けられているが、このような規定の仕方は現行の情報公開法との間にずれがあるのではないか。また、情報公開に関する現在の検討状況についても聞きたい。
□:いずれはより具体的に類型化した不開示情報を規定できるようにしたいと考えている。
○:日弁連に設置された各種委員会には大学教授を助言者・協力者として参加させているとのことだが、これは法学系の教授が中心なのか、それとも様々な分野から参加させているのか。
□:各分野の専門家に参加を依頼していることから、結果としてやはり法学系が中心となっているが、国際人権問題委員会には幅広い分野から10名の大学教授の参加を得ている。
○:会外との連携について、学者との連携に偏っているのではないか。もっと市民生活に密着したテーマを取り上げたり、日弁連に対する市民の意見を聴く機会を設けたりして、市民からの信頼が得られるように運営するべきではないか。
○:情報公開はPRとは異なる。PRはよい点だけをアピールするものであるのに対し、情報公開はよい点も悪い点も含めて情報を開示するものである。現在の日弁連の活動は、ややPRに傾いているのではないか。問題点も含めた情報公開を行い、その問題点をどのようにして改善していくかを公表することにより市民の信頼も高まるのではないか。
○:無料のものも含めた法律相談について、有益であったというプラスの評価がある一方で、一般論で終わってしまい役に立たなかったなど、マイナスの評価も見受けられるため、改善を求めたい。また、日弁連の各種刊行物はどの程度利用されているのか。市民だけではなく、会員にもあまり読まれていないのではないか。
○:消費者センターで法律相談を紹介することがあるが、地方自治体が実施しているものでは、消費者問題に詳しくない弁護士に対応され、相談者が混乱することがあるようだ。また、弁護士会が行っているものはいつも混雑していてなかなか相談できない。対応する弁護士により回答の内容も満足度も異なるようだ。対応する弁護士の専門分野を登録し、あらかじめ表示するシステムを作って欲しい。
□:市民との交流の裾野を広げるべきとの考えには全く同感であり、そのように取り組みたい。
情報公開とPRの違いについても認識しており、新たな情報公開制度を設ける取組をしている。
法律相談については、無料法律相談の際にどこまで答えるかという問題がある。時間が30分と短く、相談者は資料も持参しないので、事件を解決できるような回答まではできず、誤った判断を避けるためにも一般論的情報提供に留めていることが多いのが実情と考えられる。専門分野の認定についても、これまでの弁護士活動について弁護士会に申告させ、登録する試みが始められている。
弁護士会の刊行物については、最近新しく取り上げられるようになった問題についての有益な情報を提供するほか、読みやすくするなど工夫したいと考えている。
○:付き合いのある弁護士から、弁護士会の一体感が希薄になったという話を聞いたことがある。会長等のトップクラスの任期が短か過ぎるのではないか。トップがある程度の期間腰を据えて取り組まなければものごとは動かない。
□:確かに、単位弁護士会の会長の任期は1年であるが、日弁連の会長、事務総長及び事務次長の任期はいずれも2年間である。各事務次長の任期が終わる時期をずらすなどして継続性の確保を図っている。
○:日弁連の国際的な役割、アジアの中で果たすべき役割は非常に重要である。不法滞在外国人の人権が守られているのかなど、様々な問題がある。そのような問題にはどこで取り組んでいるのか。
□:国際人権委員会において取り組んでおり、難民問題のシンポジウムを行うなどしている。また、NGOともかなり密接に連携している。
■:この問題については、委員からの意見も踏まえつつ、前回日弁連より報告のあった方向で、弁護士会運営の更なる透明化を図っていただくということでよろしいか(各委員了承)。
① | 法務省からの説明
法務省配布資料「検察庁の人的体制の充実強化について」に基づいて説明がなされた。 |
② | 最高裁からの説明
最高裁配布資料「裁判所の人的態勢の充実について」に基づいて説明がなされた。 |
③ | ①、②の説明に対して、次のような質疑応答・意見交換がなされた。 |
○:法科大学院への教員派遣、裁判員制への対応などを考えると、裁判所、検察庁の人定体制の充実について、司法制度改革審議会意見書で提言されている内容は最低限の水準であり、本検討会として、これでは不十分だと意見を述べるべきではないか。少なくとも10年間で裁判官・検察官を倍増させないと、裁判の迅速化にも対応できない。
▲:国家公務員について、10年間で10%削減するという全体の方針があり、その中で検事については50名の増員を要求して39名の増員を実現できた。増員の必要性について関係当局の理解を得られた結果だと考えている。今後も更に努力したい。
△:増員要求に当たっては、司法制度改革への取組みの必要性をアピールした。今年度の査定の結果は、当局が司法制度改革の重要性を理解した結果だと考えている。
○:国家公務員数削減という全体の方針があるにせよ、必要なものは必要である。検察官を増員すれば検察事務官も必要になることは当然である。人的体制の充実に向け、更に努力されたい。
最高裁の資料9−6にあるようにかつては6か月必要だった破産の同時廃止事件の平均処理期間が2か月になったのはなぜか。
△:破産手続については、裁判官以上に書記官の役割が重要である。人的手当をするとともに、なるべく迅速に処理できるよう、審尋を書面だけで行うとか、集団で行うとか、新しい方法で処理している。また、書式を簡易なものとするような工夫もしている。
○:裁判の迅速化、法科大学院への教員派遣、裁判員制の導入などへ対応することは必要だが、これに伴いどの程度の増員が必要になるのかはまだ不確定である。そうした中でどのように増員していくのかという問題があり、思い切った見通しが必要である。
成年後見制の導入、DVの増加などで、家裁調査官が苦労していると聞いている。家裁調査官と書記官の業務の関係を整理し、連携を図るべきではないか。そのためにも、最高裁が検討している裁判所職員総合研修所構想はかなり有益なのではないか。
△:書記官は公証のスペシャリストであり、家裁調査官は諸科学の専門家である。双方の業務の重なりをどう整理し、どう連携させるかも含め、総合研修所でシステマティックにトレーニングしていきたい。その際、司法研修所とどのように連携していくのかも今後の検討課題である。
○:裁判官について、10年間で500人の増員を目指すとのことだが、それで足りるのか。
△:この増員計画を策定したのは平成13年の春であり、事件数の増加による+αは当然発生し得るし、裁判員制導入のため必要となる分等も留保されている。ただし、定員の枠を広げても、それを埋める人材を確保しなければ意味がなく、そのため弁護士任官の推進などが必要になってくるだろう。
□:日弁連が開催した地域司法計画シンポジウムの報告書において、裁判官不足の実態について報告されている。参考にされたい。
■:裁判官、検察官の増員を図っていくべきであるという大きな方向性としては意見は一致しているのではないか。次回の検討会においては、本日の議論も踏まえながら、「いわゆる弁護士任官の推進」や「特例判事補制度の計画的かつ段階的な解消の条件整備に資する方策」の問題等について、検討することとしたい。