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法曹制度検討会(第18回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)

1 日時
平成15年4月22日(火)13:30〜15:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 伊藤 眞(座長)、岡田ヒロミ、奥野正寛、小貫芳信、釜田泰介、木村利人、佐々木茂美、田中成明、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)
(説明者) 田中敏夫(日本弁護士連合会副会長)
塚原英治(日本弁護士連合会弁護士制度改革推進本部委員)
伊藤茂昭(前日本弁護士連合会事務次長)
(事務局) 大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、植村稔参事官

4 議題
(1)弁護士の執務態勢の強化・専門性の強化−弁護士の執務態勢を強化するとともに、その専門性を強化するため、法律事務所の共同化・法人化、弁護士と隣接法律専門職種などによる協働化・総合事務所化(いわゆるワンストップ・サービス化)等を実効的に推進するために必要な方策
(2)その他

5 配布資料
【事務局配布資料】
[弁護士の執務態勢の強化・専門性の強化]
○資料18−1 司法制度改革審議会意見書(抜粋)及び司法制度改革推進計画(抜粋)
[その他]
○資料18−2 第10回顧問会議資料(抜粋)

【日弁連配布資料】
[弁護士の執務態勢の強化・専門性の強化]
○資料 ワンストップサービスの推進策について
○資料 隣接業種との共同事務所の経験
○添付資料
 ・資料1 法律事務所の共同化及び弁護士法人の現状(弁護士白書抜粋)
 ・資料2 所属弁護士10名以上の事務所数の推移
 ・資料3 事務所規模別所属弁護士数(アメリカ)
 ・資料4 弁護士数の多い事務所
 ・資料5 弁護士法人の数
 ・資料6 弁護士法人一覧表
 ・資料7 弁護士法人設立の手引き(抜粋)
 ・資料8 Q&A弁護士法人制度(抜粋)
 ・資料9 隣接法律専門職種との協働化の現状
 ・資料10 事務所内での法律関連職種
 ・資料11 第11回弁護士業務改革シンポジウム第1分科会報告・資料集(表紙)
「隣接業種との協働による新たなステップ」
 ・資料12 東京シティ法律税務事務所(事務所案内パンフレット)

6 議事

【伊藤座長】所定の時刻になりましたので、第18回法曹制度検討会を開会させていただきます。お忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
 まず、議事に先立ちまして、事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

【植村参事官】それでは私から御説明をいたします。
 事務局から配布させていただきましたのは、資料18−1、18−2の二つでございます。18−1は、本日の議題と関係いたします審議会意見書の抜粋と推進計画の抜粋でございます。18−2は、後ほど御説明させていただきます第10回顧問会議の資料でございます。
 また、日弁連から次第に記載いたしましたとおりの資料の御提出をいただいております。
 以上でございます。

【伊藤座長】それでは、本日は次第にありますとおり、(1)といたしまして、「弁護士の執務態勢の強化・専門性の強化」の問題について、日弁連から検討状況の御説明をお願いし、引き続いて御議論をお願いしたいと思います。その後に4月14日に開催されました第10回顧問会議につきまして事務局から報告をお願いします。
 早速議事に入りたいと思いますが、「弁護士の執務態勢の強化・専門性の強化」の問題につきまして、日弁連から検討状況の御説明をお願いしたいと思います。塚原弁護士からは全般的なお話をしていただいて、続いてお話しいただく伊藤弁護士は、自ら税理士、司法書士との共同事務所の運営に関わってこられた経歴をお持ちと伺っております。体験に基づいた貴重なお話をお聞かせいただけるものと存じます。
 それではどうぞよろしくお願いいたします。

【日弁連(塚原弁護士)】日弁連で弁護士制度改革推進本部の事務局をしております塚原です。よろしくお願いいたします。私の方からは、今、座長からもありましたとおり、レジメの①に基づきまして、法律事務所の共同化及びワンストップサービスの現状というところを中心に御報告いたしまして、引き続いて伊藤弁護士から、レジメ②に基づきまして実際の経験をお話しした上で御討議をお願いしたいと思っております。
 お手元にレジメのほかに資料をお配りをしております。今もありましたとおり、弁護士の執務態勢と専門性を強化するために法律事務所の共同化・法人化が必要であるという指摘がされておりますが、法律事務所の共同化の現状につきまして、資料1にまとめておりますのが昨年の4月に調査した内容でございます。
 この下の図を御覧いただくと分かりますが、弁護士が1人の事務所というのは既に半数を割っております。実はこの数字、資料3を見ていただきますとわかりますが、アメリカにおきましても、弁護士1人の事務所は44.7%ございまして、この数字は日本の数字とほぼ同様であります。個人経営の弁護士が半数程度いるということは実はアメリカも同様なのであります。
 11人以上の事務所に所属する弁護士は資料1に戻りますと、いくつかの数字を合わせなければいけませんが、この段階で合計いたしますと11.4%でありまして年々増加しております。
 統計のとり方に多少のずれがあるのですが、資料2を御覧いただきますと、所属弁護士10名以上の事務所数がどのように推移してきたかということがお分かりいただけるかと思います。
 資料4では、日本で弁護士数の多い事務所をまとめておりますが、既に100名を超える事務所が五つ存在しておりまして、いずれも5年前も日本で最も人数の多い事務所だったのですが、その増加が著しいことがお分かりいただけるかと思います。
 このような中で弁護士事務所の法人化も進んでおりまして、昨年の4月に施行されました弁護士法によって弁護士法人が認められて以来、ほぼ1年を経過しました、今年4月10日現在でまとめましたものが資料5の数字でございます。弁護士の法人数はこの段階で(その後、現在までまだ少し増えておりますけれども)、76に達しております。法人に所属する社員弁護士と使用人弁護士の総数が329名になっています。
 そのうち弁護士法人は従たる事務所を設けることができるということになっておりまして、こういう事務所を持っている法人は既に17あります。従たる事務所が都道府県外にあるものが四つ存在しています。
 過疎地に弁護士を派遣する場合に、弁護士が常駐をしない従たる事務所も許可があれば認められるのですが、非常駐許可を得たところが四つございます。過疎地型のうち既に常駐しているものも二つありまして、この従たる事務所を保有する法人17のうち過疎地型は六つあるというのが現状であります。
 このように法人化の目的の一つでありました過疎地への弁護士の派遣についてもある程度進みつつあるということで、法人化が共同化・経営合理化、過疎地への法律サービス提供のきっかけになるという効果は期待できるものと考えています。具体的にどのような事務所がどのように設立をしたかということにつきまして、資料6にすべて載せておりますので御参照いただければと思います。
 引き続きまして、「ワンストップサービス」という言葉で呼ばれております隣接法律専門職種との協働の課題についての現状を御説明いたします。
 弁護士が扱います法的な諸問題が社会の進展に伴い複雑化かつ高度化していることは御承知のとおりでありまして、そのために多面的な立場からの検討を要するとともに、時間的にも迅速な処理を求められるということが増えております。このような場合に法律的な知見のみによる事案の検討にとどまらず他の専門資格者との協働的な取組の中で対処することの必要性や有用性は弁護士においても強く認識されております。多くの弁護士は、これらの必要性を自覚しておりまして、既に他の資格者と提携、協働して業務を遂行しておりますけれども、後で御説明しますとおり、協働化の実務の大半は、事務所を異にする資格者が個別案件ごとに集合して実施しているという状況であります。
 この協働化の現状につきまして、データをいくつか御紹介したいと思いますが、日弁連は弁護士業務の実態調査を電通にお願いいたしまして大規模な調査を10年ごとに行っております。資料9を御覧いただきますと、一番上の図に「隣接職種との提携のある割合」という数字が出ております。1980年の段階では全国平均で、わずかに12.2%しかありませんでしたけれども、1990年調査の段階では49.7%と飛躍的に増大をしております。2000年調査ではこれが44.2%と若干後退をしております。これは質問の仕方に多少の問題があったかと思いますが、実は共同事務所を設けているという数が少し増えておりまして、そちらが増えたことによって外部との提携という意味では減ったという回答が出てきているのかもしれません。この点が個別データに当たらないとよく分からないところがあります。
 提携の内容につきましては2のグラフにまとめておりますけれども、1990年の段階で事件紹介の関係が33.2%、これが2000年では43.8%。知識の交流が1990年調査で45.3%、2000年では49%になっております。それぞれ提携をしているという相手方につきましては3のところにまとめておりますが、司法書士、税理士が7割を超えているということで、提携の最も主要な相手方は司法書士と税理士であるというのが現状でございます。
 これは外部との提携関係ですが、さらに共同事務所を設けているということについても調査をしておりまして、それが次のページの資料10でございます。これは実数はもともとサンプリングをしている関係で調査対象弁護士を絞っておりますので、実数がこれだけしかないという意味ではありませんので、パーセンテージでお考えいただきたいと思いますが、事務所内に司法書士がいるという弁護士数は3.3%、税理士がいるという回答は2.5%、弁理士がいるという回答が1.1%であります。やはり提携関係が多いものとして、同じように司法書士、税理士と共同事務所化をしているところがある程度あらわれてきている。この辺は後で伊藤弁護士から実際の事務所の実態を御報告いただきたいと思っています。
 総合的な事務所ということにつきましては、政府が1999年に閣議決定をいたしました「規制緩和推進3か年計画」で、総合的法律経済関係事務所の開設につき措置を講ずるとされておりました。これは弁護士と隣接法律専門職種が一つの事務所を作り、依頼者に総合的な視点で対処しうる便宜を与えることが目的となっておりました。
 隣接法律専門職種との協働にメリットが大きいことは前述したとおりですけれども、一方で、現行法の下においては資格者にそれぞれ異なる法制上の制約や監督・倫理規範がありまして、それぞれ非資格者の業務の禁止をうたっております。さらにとりわけて弁護士法において求められている弁護士の使命や独立性、その他弁護士に課せられた責務、とりわけ守秘義務と利益相反回避義務というのが重要でありますが、こうした義務や倫理規範が損なわれないように協働のあり方については慎重に検討する必要があります。
 日弁連はこれらの倫理や義務を守りながら、異業種間の共同を可能にする基準を取りまとめております。また、資料としては11に大変分厚い資料ですので表紙だけをお付けいたしましたけれども、隣接法律専門職種とのネットワーク作りを強化するために、1997年及び1999年に開催をいたしました弁護士業務対策シンポジウムで隣接法律専門職種との連携の強化を打ち出しております。日弁連といたしましては、依頼者に利用しやすく、かつ弁護士に課せられた義務と責任を果たしうるような共同化をさらに推進してまいりたいと思います。
 後で、また必要な御説明をさせていただきたいと思いますが、私の方からはとりあえず以上で、引き続いて伊藤弁護士から御報告します。

【伊藤座長】それではお願いいたします。

【日弁連(伊藤弁護士)】弁護士の伊藤茂昭でございます。本日は隣接業種との共同とその事務所の経験と題して御報告の機会をいただきましたことを大変うれしく思っております。私はこの3月までは日本弁護士連合会の事務次長として、今次の司法改革に関与して参りましたが、本日は退任いたしましたことでもあり、弁護士業務、法律事務所経営に携わる一弁護士として御報告をさせていただきたいと存じます。
 お手元に配布させていただきましたレジュメ②というのがございますが、それに沿って御報告させていただきたいと思います。
 まず共同事務所を志した契機でございますが、二つ、「クライアントにとってメリットのある事務所」、「取り扱い事件からくる事務処理上の必要性」と書かせていただきました。何も私が弁護士になりましてから、最初からこのような目標を持っていたわけではありません。一つのきっかけといたしまして、弁護士になってからすぐに、ある先輩弁護士と御一緒する席で中小企業の経営者の会合がありましたのですが、そこで弁護士に対する要望・不満ですとか、そういったことでのアンケート意見の集約がございました。そこの中での要望・不満は、一つは、忙しすぎて十分に自分の言い分を聞いてくれない。あるいは威張っていて敷居が高い。それから、いくら費用が取られるかわからないので頼みにくい。事件の見通しを話してくれない。任せておけと言うだけだと。こういったことに加えて、頼みたいけど、どこに信頼できる弁護士がいるかわからない。このような様々な不満・要望を聞かされたわけであります。
 私は今次の司法改革は弁護士にとってこのような依頼者、潜在的依頼者の持つニーズに合わせて弁護士業務の改革をすることであると考えおります。話は少しそれましたが、その中小企業の経営者の御意見の中に、たらい回しというのがもう一つあったわけであります。救急病院で、受け入れ体制がなく、救急車の患者がたらい回しされることが医療の関係で報道されることがあります。一つのことを依頼者が聞くのに法律事務所へ行きまして、これは税務問題ですから税理士事務所に行きなさい、これは登記ですから、司法書士さんのところに行きなさい。こういった不便さの指摘が、先ほどの会合の中の一つとしてあったわけであります。私は単純にその不便さを解消することを志向しようと考えました。私が、事務所報に「今総合コンサルティングの時代」と書いたのは1989年のことでございました。そのときにはまだ、「ワンストップサービス」というような言葉は全く一般的ではございませんでしたし、「総合的経済法律関係事務所」という用語もまだ生まれていなかったように思います。
 私は不動産事件や相続事件を扱うことが非常に多かったものですから、よく一緒に法律相談と税務相談をテーブルを並べてやっておりました。隣にいた税理士と非常に意気投合いたしまして、その税理士と同じフロアで執務する体制を作ったのであります。これらの不動産事件、相続事件というものは税務や登記は必須ですので、これらの事件が得意という事務所といたしましては必要に迫られたという面もございました。このようなことから出発した事務所の経過につきましては、また後ほどお話しするといたしまして、共同事務所が実際にどのようなメリットがあったかについてお話しさせていただきたいと思います。
 クライアントにとってのメリットでございますが、今お話いたしましたように、相続というものは依頼者の側からみれば、社会的に一個の事実であります。しかしながら、遺産の分割を行うに当たっては弁護士、税務申告は税理士、相続登記は司法書士と専門分野により業務が分断されております。すべてを同一の場所で一緒に相談を受けることが依頼者にメリットがあることは申すまでもありません。不動産の売却・購入等も同様であります。これは、個人の依頼者のみならず、会社等にとっても同様であります。例えば等価交換の手法を使って個人と企業が不動産共同事業を行うときは常に税務問題が主要なテーマになります。事業規模にもよりますが、権利の移転に伴って、その都度不動産登記手続が必要になります。企業の側で税務問題と法律問題等を区別して整理することはもちろん可能ですが、個人の土地所有者が関係した場合と、または債務整理が伴っていたり、複雑な権利関係が存在したりしていた場合は、税理士と弁護士が共同で相談を受けることは特に威力を発揮したと考えております。
 弁護士が法律事件を解決するに当たっては、このような相続・不動産事件以外であっても税務問題が関係する場合が非常に多くあります。例えば離婚事件に伴う財産分与などもそうであります。課税を見過ごして、依頼者から弁護過誤で訴訟で訴えられたケースも判例集に登載されております。共同事業の解消であるとか、その他多様なケースで和解金の授受などの金銭の交付がある場合は税務上その行為がどう評価されるかは税理士の意見を聞くことが望ましいと思います。常時このようなケースにおいて、事前に税理士に相談できる事務所内体制が存在することは、そのことにより、依頼者に対しより良質なリーガルサービスが提供できることになり、依頼者の利益にも資することになると考えております。
 また、税務部門の顧問会社に法律問題が発生した場合、即座に弁護士の対応が可能であるというメリットがあります。通常、中小企業でも税務申告は必要であり、申告のため顧問税理士がいるのが一般であります。しかし弁護士の法律の顧問というのは弁護士数が少ないこともあり、必ずしもそれほど一般的ではありません。しかし、そのような中小企業でもいつ弁護士に相談したいという法律問題が発生するかわかりません。税理士と弁護士が共同で執務する場所で、税務部門の顧客の初めての法律相談にもスムーズに対応できるというメリットもあります。
 さらには、事件の内容そのものに共同して継続して処理に当たるという場合もございます。課税をめぐり解釈に争いがあり税務署・国税当局と交渉する場合、税理士だけでなく税務に強い弁護士も同行することがいい解決に導くこともありました。国税不服審判や税務訴訟等について、弁護士・税理士がチームを組んで連携して交渉・手続に当たれることも大きなメリットであると思います。
 さらには会社の合併・解散・営業譲渡等、債務整理・不良債権の処理等を行うに当たって、弁護士と税理士が共同して対処することもあります。不良債権絡みで多数戸のマンションを一括売却するときの税務など、売却交渉と税務の共同での処理などで力を発揮したこともあります。さらに最近では外国資本の法人が当事者として債権の取引を行うに当たって、弁護士、司法書士が権利関係を調査し、日本法に基づく予測を整理したりすることも大きく増えてきた分野であります。
 司法書士との関係でいえば、確定判決や和解条項等に基づく登記が事務所内でできるというメリットがあります。また訴状の請求の趣旨の記載や和解条項の起案によってその文案で登記手続が可能かどうかの司法書士の事前チェックも可能であります。また弁護士の依頼者である顧問会社等から会社の設立その他登記の依頼があった場合、直ちに司法書士による商業登記手続の対応が可能であります。
 以上、依頼者の側からのメリットを述べてまいりましたが、私は事務所経営にとってもメリットがあったと確信しております。
 一つは業務処理の能率化・迅速化という点であります。隣接業種との事件の共同処理については、外部の事務所との連携でも処理は可能であります。しかし、同一事件の処理に当たって、会議の日時や場所の設定をはじめ、業務処理における連携における能率化、迅速化ということでは、同一場所の執務には格段のメリットがあるように思います。特に私がこのような事務所を開始したときは、まだ現在のようにメールにより書類が添付されてやりとりされるという時代ではございませんでした。場所的同一のメリットは今以上であったように考えられます。
 また、経験の蓄積の共有ということもあります。相続案件や不動産取引など共同処理を行うことにより、その共同処理の解決のノウハウが蓄積され、良質な総合的リーガルサービスにつながると思います。
 さらに、弁護士にとっては税務知識、税理士にとっては法務知識が豊富になり必要な場合の業際分野の知識の獲得が迅速に行われるようになります。このことは翻って考えますと顧客からの大きな信頼につながり、事務所の発展にも寄与したのだと思います。
 今後さらに考えられるメリットといたしましては、さらに昨年度通常国会で司法書士の簡易裁判所の代理権が付与されました。一審で司法書士が担当する事件や相談で、範囲を超えた業務分野を同一事務所で弁護士が協力して行うことが今まで以上に協力の内容が広がると考えられます。
 以上、多くのメリットがある共同事務所ですが、私は、今、総合コンサルティングの時代とともに、「クライアントを明るいメイトに」ということをキャッチフレーズにやってまいりました。簡単に当事務所の隣接業者との共同の沿革を述べてみたいと思います。私は1980年(昭和55年)に弁護士登録をし、いわゆるイソ弁として法律事務所に勤務いたしました。その経過につきまして、資料12ということでコピーさせていただいいているものをお手元に配布させていただいております。もとはカラー刷りのものなのでございますが、コピーですのでちょっと見にくくなっているかと思います。その最後のページに東京シティ法律税務事務所の沿革というのがございます。ここに簡単に記載しているとおりでございます。
 一人で独立いたしましたのは3年目1983年(昭和58年)です。その後、勤務弁護士2人を採用し弁護士3人の事務所となって、もう一人の独立していた友人の事務所と合併いたしました。それが1987年(昭和62年)であります。そのとき一緒に法律相談、税務相談をしていた税理士と事務所フロアを共有して執務を開始いたしました。弁護士4名、税理士2名の出発でありました。そのときには、伊藤・松田法律事務所、山端康幸税理士事務所と二つの事務所名を列記する形でございました。
 それから6年経過いたしまして、弁護士の人数も徐々に増え、1993年(平成5年)でございますが、共通名称を使用しての執務体制すなわち東京シティ法律税務事務所として名称を変え出発をいたしました。そのときには、国際部門を担当する弁護士3名を含む弁護士12名、司法書士1名、税理士3名、総勢46名の事務所でございました。
 2002年(平成14年)には、おかげさまで東京シティ法律税務事務所は順調に発展し、弁護士28名、司法書士2名、税理士8名、総勢約70名を有する事務所に成長することができました。資料12は1996年に出した総合的コンサルティングを目指した事務所案内でございます。
 さらに不十分な国際部門の強化のため、弁護士20人規模のユーワパートナーズという事務所と合併することにいたしまして、ことしの2003年2月、東京シティ法律税務事務所とユーワパートナーズ法律事務所が合併しシティユーワ法律事務所として出発することになりました。国内・国際の双方に強い総合事務所の道を目指したいと考えております。現在弁護士50名、司法書士2名の事務所ですが、税理士部門との連携は継続しております。税理士事務所は税理士事務所として法人化し現在税理士8人の事務所となっております。
 現在の状況はそのようなところでございますが、今後の共同事務所の多様なニーズと方向性・可能性について述べたいと思います。
 国際分野と国内分野の双方を有する事務所は事務所の大規模化とともに当然増えてくると考えております。今回はそれとは別に分野、専門別の共同事務所のいくつかの可能性を御紹介したいと思います。
 まず、知的財産分野であります。特許の申請から、管理・侵害訴訟の代理まで、すべて同一の事務所で対応が可能な事務所であります。これは弁理士と弁護士の共同事務所ということで、既に相当大規模の事務所が存在している分野であります。
 また、雇用保険等を扱う社会保険労務士との分野での共同事務所が考えられるかと思います。労働事件につきましては、社会保険労務士に新しい代理権限が前回の社会保険労務士法の改正で与えられました。これらによる共同も今後の分野としては考えられるかと思います。
 あるいは隣接業種ではありませんが、離婚あるいは子どもの人権等は極めて精神的なケアが重要な分野であります。ケースワーカーであるとか精神科医などこれらの分野との連携が必要とされる分野ではなかろうかと考えられます。
 これらとともにあらゆる分野での総合性を有する共同事務所も魅力的な方向であると考えられます。隣接業種を多数集め、総合化した事務所があります。青森県八戸市には弁護士3名のほか、税理士・公認会計士、司法書士、土地家屋調査士、行政書士、建築士、測量士がそろっている事務所があります。これらにつきまして、先ほど御紹介のありました日弁連の業務改革シンポジウムのシンポで私が分科会長をやりましたときにビデオ等で御紹介させていただいた事務所であります。
 最後になりましたが、公設事務所であるとか、弁護士任官であるとか、行政や企業への弁護士の就職と一人一人の弁護士の多様な試みが、国民の司法アクセスを容易にし、また法律事務所で国民のニーズに応える業務のあり方を模索していくことが国民の信頼を高め、制度を変革していく力となるのだという立場から確信を持って、私のつたない経験の一端をお話させていただきました。引き続き、弁護士業務の改革に当たって必要な御示唆を賜ることができれば幸いであります。
 御清聴ありがとうございました。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの日弁連からの御説明につきまして、まず御質問をお願いしたいと思います。どうぞ、どなたからでも結構でございます、いかがでしょうか。どうぞ、奥野委員。

【奥野委員】御報告ありがとうございました。大変興味深いお話だったのですが、こういう専門職に関するサービスがあったときに、どのようにカスタマーといいますか顧客の側といいますか、依頼人の側がどうやっていいサービスを提供してくれる事務所、そういうものがたくさんできてきているということが今日のお話だったですけれども、次のレベルとして、その中のどこに行ったらいいだろうかということが多分依頼主にとっては非常に問題になるのではないかと思うのですけれども、そういういわば、私たちの言葉で言えば、インターミディアリーというわけですが、そういうものというのはどうお考えになっていらっしゃるのかということについてちょっとお伺いしたい。
 例えばインターネットなどでしたら、ホームページというのはたくさんあるわけですけれども、どれが本当にいいホームページか全然分からないので、最近はポータルサイトという出入口、これがインターミディアリーだと思うのですけど、まずそこに入って、そこに入ると、こういうことに関心があるのだったら、ここら辺に行ってごらんなさいと。そうすると何か情報が入るからというような形でつながっているように思いますし、あるいは企業の債券などを買うということになると、どの債券を買うと本当に安心なのか分からないというようなときには格付け機関みたいなものが、インターミディアリーになって、これがこの企業の社債は安心だよとか、この企業は危ないけれども、利子率は高いよとか、そういうことを全部提供してくれるわけです。
 何かそういうような形のサービスみたいなものというのは、弁護士だけでなくて総合化されているということで、そういう意味で非常にいい方向で動いていると思うのですけれども、是非もう一歩進めたとするとその辺に行きそうな気がするのですけれども、何かそういう御努力ないし事業みたいなことはお考えになっていらっしゃるのでしょうか。

【伊藤座長】塚原先生から。

【日弁連(塚原弁護士)】弁護士会としてそのような情報提供をするかということは、評価にわたる部分は非常に難しいところがあります。しかし民間では既に行われておりまして、「ビジネス弁護士2000」などのように、日経ビジネス誌がビジネスに強い弁護士を投票で選んで、1位が久保利英明弁護士でしたが、弁護士についてのランキングを毎年のように発表しておりますし、最近では週刊誌が「勝つ弁護士」とかいろいろなものを出すようになりました。昔はそういう取材に応じること自体が広告規制に反するという考え方が強かったのですが、最近は民間の評価に委ねるということで問題にされなくなったこともあり、そういうものが徐々に出始めているという状況です。
 弁護士会が行っておりますのは情報提供です。評価付けにはなってないではないかという御指摘とは思いますが、第二東京弁護士会のページからですと取扱い分野については、分野で検索をかければ、、その分野を取扱分野として表示している弁護士の名前が出てくるというような形の情報提供は既に行っているところであります。

【伊藤座長】伊藤弁護士の先ほどお話の中で、中小企業経営者の不満といいますか、今の奥野委員の御質問に関連するようなところもございまして、どこへ行ったらいいのか誰に会ったらいいのか分からないということでしたが、今のことについて何か御意見ございますか。

【日弁連(伊藤弁護士)】日弁連として、あるいは弁護士会として格付けまでは非常に難しいと思います。ただ、先ほど塚原弁護士からもありましたように、専門性がある弁護士についての名簿ですとか、研修を受けたですとか、そういったものについては各単位弁護士会においても、例えば知的財産の研修を受けた弁護士というような形での公開等は様々な分野で進んでおりますし、弁護士会が行います法律相談につきましても、分野ごとに内部的な研修を受けた者を担当に充てるというようなことが徐々に進んでまいっております。
 今後、さらに様々な研修に限らず、取扱事件等につきましても、企業等がよく調査されておりまして、そういった分野でのアクセスは相当改善されてきているかと思います。中小企業の方も商工会議所ですとか、そういったところとの連携で一人ではなかなか難しいけれども、そういった業界団体等を通してのアクセス、そこにおける様々な分野別の選別等は行われるような状況に徐々になってきているのではないかと思っております。

【伊藤座長】奥野委員、よろしいですか。

【奥野委員】ちょっと意見になるかもしれませんが、いいですか。

【伊藤座長】どうぞ。

【奥野委員】そういう客観的な情報を流されるというのは、それはそれで大変重要なことだし是非やっていただきたいと思うのですけれども、例えば派遣労働者みたいなことを考えるときに、このときも働きたいというパートの人とそういうパートを求めている企業と、それをどうやってマッチさせるかというのは非常に問題なわけですね。そういうときに、リクルートがそういう雑誌を作ったり、そういう企業が、企業がいいのかどうか知りませんけれども、例えば弁護士の中から、そういうインターミディアリーをベンチャーとしてやるのだと。お互いの同業者の中で、ここがよさそうだ、こういうものが欲しいです、という人が来たらば、この弁護士の方がそこは非常に強いですけどいかがですか、というような形でつないであげると。一人の人がつないでいくと独占になりますけれども、たくさんの人が競争的につなげば問題ないと思うのですけれども。やや意見になるのですけれども、そういうことも少し含めて、少しお考えいただいた方が、大企業はそんなことはないと思うのですけれども、個人とか中小企業にとっては、こういう法律サービスの使い勝手が非常によくなるのではないかと思うので是非お考えいただければと思います。

【日弁連(塚原弁護士)】その点について、一言だけ申し上げておきます。弁護士を紹介することでお金を取ってよいかという根本問題がありまして、特にそれを弁護士でない者が行うというのは現行法では非弁提携として禁止をしているところです。弁護士がやるのであれば問題が少ないかどうかですが、アメリカでも弁護士を紹介した弁護士が報酬を取ってよいかという問題が弁護士倫理の問題としていろいろ議論されています。今の問題は非常におもしろいとは思っておりますが、なかなか検討すべき課題が多いので、なお、今後勉強させていただきたいと思っております。

【伊藤座長】どうぞ、木村委員。

【木村委員】今の話にも関連してくるのでございますけれども、今、塚原弁護士と伊藤弁護士にお話いただきましたが、去年配布されました資料ですが、日弁連で2001年1月23日に刊行されました、「弁護士のあり方について」という書類があります。これを見ますと、まさに奥野委員が言われたようなことについて書いてありまして、「弁護士が一定の事件を専門的に取り扱うことができる機会を大きくするために、弁護士の専門性をできる限り広告・表示できるように・・・専門認定表示の制度化などを検討する。」と日弁連は決めているのです。その後に出てくる言葉は、「日本全国のどこにいても一定の専門性を持った弁護士にアクセスしやすくなるように、インターネットなどの利用によって弁護士会における弁護士情報の開示を推進し、地方へもそういう弁護士を派遣できるような体制をめざす。」ということを日弁連で既に決めていらっしゃるわけです。
 私の質問は、「専門認定表示の制度化などを検討する」とこの時点で表明されているのですが、それから2年たって、制度化がどの辺までいっているのでしょうか。例えば福祉専門であるとか、本日の伊藤弁護士の御発表の中の一番最後のところには大変いろいろな職種との関連が、4の「今後の多様なニーズと方向性」というところに書かれていますが、私の見解では、これからもっと増えてくるのは、例えば成年後見制度との関係の後見人の問題ですね。それから社会保険労務士との関係ではいろいろ出てきましたが、その他に福祉関係の法務ですね。非常に案件としては小さくなると思いますが、そういうところもきっと恐らくこれからニーズが出てくると思いますので、そういうことも含めて、例えば私どもの方は福祉をやっているとか、そういうような専門認定表示の制度化などについて検討を既に2001年から始めているようですけど、具体的にどこまでいっているのかということをお伺いしたいというのが一つです。
 それから、最初の質問は塚原弁護士で、第2番目の質問は伊藤弁護士にお願いしたいのですが、福祉関係がこれから高齢化社会を迎えて、法律家の任務としてそういう後見やなんかについて非常に大きくなってくると思います。それから、あと消費者の問題とか、交通事故の問題とかいろいろな問題が出てくるかと思いますが、比較的少額の事件についても、本当に弁護士事務所としては積極的に取り組んでいただけるのか。結局弁護士事務所にお願いするのは非常にお金がかかってしまうというような、結果的にそうなるのかどうか。そういう方向性について、2点についてお伺いしたいのですが。

【伊藤座長】それでは、最初に塚原先生お願いします。

【日弁連(塚原弁護士)】専門認定表示の問題について、ここでお示しできるだけの検討結果をお出しできないのですが、取扱分野の表示についてはどういうものを取扱分野として表示するかについては、それぞれのところで規定化をして一定のものを表示するということは進んでおります。
 専門認定等について、諸外国でどのようになっているかというようなことは検討しておりますけれど、日本で具体的にどうするかについてはまだ成案を見るに至っていません。アメリカでも専門認定をやっておりますけれども、実際に専門認定を受けている弁護士は97年で2万2,000人程度で、アメリカの全体の弁護士からすると少ない。本当に専門化している大ローファームの弁護士は専門認定なんかは受けないです。アメリカで一番専門認定を受けているのが多いのは民事事実審、トライアルロイヤーというのはアメリカではそれが専門ということになるので、それが一番多くて27%です。どういう場合に専門と名乗ってよいか、アメリカでも様々議論がありまして、取扱い分野がそこに集中しているからといってそれを専門といえるか。スペシャリストというのはそれだけではないということになると、誰がそれを判断するか。その判断に要するコストに見合うだけのものが果たしてあるかというようなことがいろいろ議論されているところなので、日本でもそういうものを入れることにどの程度の意味があるか。医者の世界でも認定医というものがありますが、判断を民間に委ねた場合には、医者の世界では学会が1,000もあると言われていますけれど、学会が乱立をして、そこが認定をするというような形でやった認定医というのにどの程度の意味があるかというような問題もあります。その辺を考えていくとなかなか悩ましい問題がございまして、どこで認定をし、どこで線引きをするかということについてなかなか意見をまとめられる状況にないというところでございます。

【日弁連(伊藤弁護士)】御質問の内容は、今次の司法改革の非常に大きな課題だと思っております。その趣旨は、弁護士が非常に大きく数が増えてまいりますと、ある程度自由競争の分野でニーズに応えて、ニーズに合致させていけることができる分野と、刑事事件ですとか民事少額事件のように一定の公的なバックアップがなければなかなかやりきれない分野があると思います。そういうことからいきますと、隣接業種との共同でも社会福祉分野、先ほど申しました離婚ですとか子どもの人権ということで人権救済に当たっていくという場合には、法律分野だけではなくて様々な職種の方との連携が必要になりますし、それが実際にそのような案件での依頼者が弁護士費用を払えるかどうかという問題が発生してまいります。これは老齢化社会における成年後見等でもしかりでしょうし、ここでは別の検討会ありますけれども、刑事分野というのも非常に大きな問題だと思います。
 そういうことから申しますと、そういった分野に弁護士の数が増えた場合に業務として成り立っていかせるための体制を国として作っていくことが非常に重要ではなかろうか。そういう意味では民事扶助の充実、それから中間層に対する権利保護保険の充実というようなことが総合的な施策として検討されていかなければいけないということになりますと、例えば国選弁護が六十数億、扶助が三十数億という予算の中で、こういった国民の小さな少額事件、破産事件等も含めた権利救済ができるかということになりますと、まさに総合的な司法アクセスとともに公的な扶助制度が充実されなければ今次の司法改革における一番重要な課題がなおざりになるのではないかと考えますし、そのような観点から、まさに政府にこの司法予算の拡大ということも皆さん方には訴えていただきたいというように思います。
 そういう中でプロボノ活動、あるいは公的な活動として弁護士ができる範囲でいろいろな分野にまた出て行くということも必要でしょうし、そういう意味では公設事務所という中で、刑事事件を中心的に扱っていく事務所であるとか、福祉事件を中心に扱っていく事務所であるとか、こういったものを日弁連としても今後総合的な政策としてやっていく必要があると個人的には思っておりますし、そういったことがあすの21世紀の社会を作っていくのではなかろうかと思います。
 医者を例にとれば非常によくわかると思います。医者が増えたとしても、医者にかかれずに死んでいくという人がいたのはそう古いことではありません。国民保険が完備されてきて、医者の増員と相まって、今でこそ日本においては医者にかかれずに死ぬというケースはほとんどなくなりました。今は質の問題として医療過誤を、質をどう高めるという問題になっています。弁護士はまだ全く足らないという状況の中で、そういった、かかれる仕組みをどう作るかというのを法曹制度・司法制度として委員の皆さんに御検討いただきたいというのが私の偽らざる気持ちでございます。以上です。

【伊藤座長】どうぞ、御意見も含めてお願いいたします。どうぞ、木村委員。

【木村委員】最初の点について塚原弁護士に引き続き質問ですけれども、はっきりと制度化を検討するとして弁護士会が一応態度を決めてやっている以上は、そういう方向に行っていただきたいと私は思うのですが、確かにアメリカはアメリカで日本の事情とまたいろいろ違うと思うのです。アメリカの特に弁護士の数の多さとか、専門性よりもゼネラリゼーションということが非常にアメリカでは評価されることになります。日本ではこれからこういう形で新しく弁護士の人数が増えていこうとしているときに、ある程度弁護士の職務内容について、これが大体専門だみたいなことがわかるような方向をやっていくために、例えば日弁連は相当の大英断で、日本における法律の様々な学会、例えば民訴学会とか私法学会とかいろいろありますけれども、そういうところでの何かトレーニングを通しての検定もカウントされて、そしてちょうど医学界における専門医制度みたいな形でのいわば専門認定表示の制度化にも大きく踏み出していただけたらなという気がするのです。
 それと、一定の専門性を持った弁護士を日弁連が派遣するということなのですが、実際にそういうことで、地方の方からそういう依頼があって、日弁連ではどのようににお考えでしょうかみたいなことが実際にあったのかどうか。派遣できるような体制を目指すと書いてありますけど、これは要望があって、こういうことが言えてくるのかというような気がするのですけど、その2点につきまして、もう少し制度化の前向きな検討の方向性が出てこないものかどうかという点はいかがでございますか。

【日弁連(塚原弁護士)】是非さらに検討したいと思っております。まだここで申し上げられるだけのものがないのが残念なのですが、一般的なレベルで言いますと、専門分野を設けている弁護士というのは以前に比べると、弁護士の人数が増えてきたということもありまして、増えてきております。2000年にとったアンケートでいいますと、専門分野を設けているという弁護士が既に12.7%、重点分野を設けているという弁護士が36.9%で合わせるとほぼ50%になっておりまして、全くそういうものを設けてないという弁護士が50.4%ですので、ある程度専門分野を設けつつあるということになります。
 ただし、それぞれの需要に規制されているところがありまして、特に地方で専門化した場合にそれで生計が成り立つか、専門化して、それで生活を成り立たせるというだけの需要が確保できるかという問題があるために、専門化できるところは限られてきています。そういうこともあって、日弁連では、特に特別な分野についての要請があった場合には派遣するようなことを考えるべきだと述べたわけですけれども、それはそういう需要があったからではなくて、将来的に考えたいという願望のようなレベルで申し上げたかと思っております。制度化については、さらに検討したいと思っています。
 どこで線引きをするかというような点については、アメリカでは州で認定する場合の基準がいくつかあるのですが、そういうものが日本でうまく当てはまるのかということも含めて、なお検討させていただきたいと思っています。2年たって何も進んでないではないかというお叱りは分かるのですが、ここではそれ以上申し上げられませんので。

【伊藤座長】是非御検討ください。

【日弁連(伊藤弁護士)】よろしいですか。

【伊藤座長】どうぞ。

【日弁連(伊藤弁護士)】認定とまではいかないのですけれども、具体的なケースとしては、例えば知財分野では、例えば東京都で相談事業をかなりの予算をかけて今年度開始しました。そこで弁理士と弁護士に、弁護士も毎日午後一人派遣してくださいという話になりました。これはもちろん知財分野の相談ができるという弁護士です。これは日弁連にも知的財産政策推進本部というのがございますし、東京三会でも研修等をやっておりますので、そういうところの研修を受けた弁護士を東京三会から御推薦いただきまして東京都に派遣するといういうことで、東京も地方と考えれば、地方の一つとして、そういった政策は具体的に実施しております。
 今後そういった、特に知財は全国でいろいろな予算がついているような状況ございますし、中小企業がどういった形で自分たちの持っている会社のノウハウがそれなりの財産価値があるかということすらわからないというような状況の中で、弁理士と弁護士が協力いたしまして、今後の知財立国という方向でのアクセスを容易にしていくというような作業に既に着手している分野もございます。

【日弁連(塚原弁護士)】あと1点、これは将来的な課題なのですけれども、法科大学院が来年立ち上がって、そこで専門教育が十分できるようになった場合には、既に弁護士になって登録している人も改めてそこのコースを履修すれば、一定の専門表示が許容されるというような仕組みも今後は考えられるかとは思っております。ただ、これはまだ立ち上がっておりませんので、どのような形でそれを実現できるかというのは将来の課題ということになります。

【伊藤座長】岡田委員、どうぞ。

【岡田委員】随分短期間で日本の法律事務所もアメリカに近づいたと感じたのですが、ただ、私たち消費者から見れば、法人化された法律事務所というのはちょっと敷居が高いのかなということと、それから個人の弁護士の場合は、依頼人の財産状況によって、弁護士の判断で結構費用もいろいろ考えていただけるような感じがあるのですが、これが法人となるとそういうわけにいかないのではないかと考えますと、消費者が利用しやすい事務所というのは個人なのかなという感じがするのです。
 ですから法人の事務所ができることは大変いいし、たくさんできて欲しいのですけれども、やはり今までのような少人数の弁護士の事務所もあって欲しいということと、ところが最近弁護士の広告が電車の中にいっぱい出ているのですが、サラ金とか何とか書いてあることはみんな同じなのです。そうすると逆に広告で、消費者はどこへ行けばいいのか迷うし、また変なところへ行って、ますます被害を受けているという実態もあるものですから、先ほどから出ているのですが、この先生なら大丈夫というようなところを弁護士会として交通整理していただけないものなのかどうなのか。クレジット・サラ金に関しては東京の場合は2カ所、クレジット・サラ金専門の相談センターがありまして、ここは本当に成功しているのではないかと思いますし、そこへ行った消費者は安心して帰ってくるということがあります。
 最近、私たちのところで多いのがヤミ金融とかそういうことではなくて、不当請求というか架空請求なのです。全く借金もしてないし何の利用もしてないのに突然電報が来たり電話が来たり手紙が来るというものです。ひどいものになると黒枠の電報が来たり、子どもの幼稚園まで取り立てに行くとか、そういうことで消費者は毎日毎日大変不安なのですが、そういう方を送り込むのにどこへ行けばいいかという感じなのです。消費者相談というのがあるのですが、もういっぱいなのですね。
 そうしたときに、第二弁護士会の相談センターの方とはやっとパイプがつながりまして、今こういうものがあるのだけど、というようにつなげますと、百貨店とかそれから新宿とか、そういうところを交通整理していただけるのです。消費者というのはそういうところへ行って名刺をもらってくるだけで安心するのです。
 ですから是非とも、先ほどから出ていますけれども、専門化、この先生なら大丈夫、この先生なら分かってくれるというような、そういうシステムを作っていただきたいなと思います。

【伊藤座長】何かいかがでしょうか、今の点。

【日弁連(伊藤弁護士)】一つは公設事務所です。公設事務所という形で弁護士会が設けている限りは悪い事務所でないという、そういう意味での安心感は持っていただけるのではないかと思います。東京では東京三会が公設事務所を作っておりますけれども、今日出席していただいています東京弁護士会の会長で日弁連の副会長がおられますが、北千住に二十数人規模の弁護士を抱えた第二公設事務所を作ることを予定しております。もちろんクレジット・サラ金の事件も扱いますし、そういうことで個人のプライベートな事務所をこれがいいですよというのはなかなか言いにくいのですが、徐々に各地に公にそういう事務所をたくさんつくることによって、常時安心して行ける事務所、アクセスポイントを拡充していくということは非常に重要なことだと思います。
 一方で、非弁提携といいますか、依頼者を食い物にする事務所があるのも事実ですし、これについては東京三会が非常に苦労して、完全な強制調査権がないような中で役員が総出でそういった事務所を回りながら、その撲滅を期した活動を展開しているというのが現状です。これら双方相まって国民の皆さんから信頼しうる体制を作るということに、徐々にではありますが一生懸命頑張っておりますので、御理解いただきたいということでございます。
 何か特別にあれば、第二公設事務所のお話をお願いします。

【伊藤座長】お話があればどうぞ。

【日弁連(田中副会長)】今、伊藤弁護士から話がありましたが、まだ構想段階でして、会内手続が必要という前提ですけれども、今年度中に方向を出そうということで、北千住に割と大きな事務所を作ろうと思っています。総合型の法律事務所を目指そうと思っております。一番の売りは刑事事件に基本的に対応する事務所を作ろうということです。今年度の1番の課題になっているかと思いますが、それは大きな単位会の弁護士会はきちんとしたものを作って対応する責任があるのではないかと考えていまして、それを主なコンセプトにしていますが、それだけではなくて、今出ていますようにクレジット・サラ金問題も含めて民事、弁護士任官、それからリーガルクリニック関係の仕事等々を担う総合的な事務所を作って、今、御質問が出ていたような問題について基本的なところで対応していきたいと考えております。
 今は東京弁護士会の場合は、公設事務所が池袋にありますが、北千住にも設けて、それにとどまらずいろいろなところにさらに設けていきたいと考えています。よろしくお願いします。

【伊藤座長】どうもありがとうございます。

【日弁連(塚原弁護士)】先ほどの岡田委員の質問の前半の部分ですが、法人化すると消費者のニーズに応えられないかということはありません。しかも共同化と法人化というのは必ずしもイコールではありません。先ほど挙げました日本の最大手の五つの事務所は法人化しておりませんし、一人法人というのも逆にありますので、法人化したからどうこうということはあまりありません。かつ共同化している事務所が消費者の事件を安くやってくれないかというとそうではありません。共同化している事務所もいろいろな形態がありますので、大企業の案件を処理するために共同化しているところもあれば、一般消費者の事件をやるために共同化している事務所もありますので、必ずしも大きいから高いとかいうことにはならないのす。それなら大きくて安いところはどこなのだ、紹介してくれという話になると私の口からは申し上げにくいですが、今後は評価対象になってくるかなと思っております。

【伊藤座長】松尾委員、どうぞ。

【松尾委員】これまで弁護士は利用者のニーズに応えきれてないと、先ほどのお話のようにあったわけですから、そういう意味で利便性といいますか、ニーズに応えるために事務所の共同化・法人化、ワンストップサービスという多様な事務所の形態で利用者がうまく利用できるようなに努力をされていると私は高く評価しております。
 ただ、問題は、個人の弁護士の仕事、事務所、これも十分に大事にすべき問題であると思います。共同化・法人化、あるいはワンストップサービスも確かにいいのですが、利用者のすべてがそういったところに行くとは限らないし、それは費用の問題も含めて言うならば、個々の地域に根づいた弁護士を利用したいという考え方も結構あると思いますね。だから、利用者がどの弁護士に依頼しやすいか、どの法律事務所が一番利用しやすいか、つまり選択できるものをいろいろお考えになって、それを充実させていくということが基本的には一番大事ではないかと思います。
 お話があったようにいろいろなメリットがあるということは十分に分かりますし、私もこうあるべきだと思っておりましたので、その点はよく理解できるのですが、ただ、実際問題として今後増えていくであろう多様な事務所形態の中で、いかに弁護士の執務形態を強化・充実させていくか。そこにどういう問題が今後考えられるだろうか。これまでの経過の中で問題点が全くなかったかどうか、あるいは今後どういった課題を抱えていくのだろうかという疑問も少々あります。一部お答えになっているものもありますけれども、例えば倫理の問題あるいは事務所の運用の問題、弁護士の内部の中でこういう動きをどのようにに見ているのだろうかとか、そういったことについてお答えできればお伺いしたいと思っているのですが。

【日弁連(伊藤弁護士)】第1の最初の問題ですが、誠におっしゃるとおりと思います。何も大規模な事務所がいいのではなくて大規模事務所を必要としているクライアントもいるということでして、それに応えられなかった現状があったということだと思います。ソロプラクティスはそれなりの良さがありますし、地域地域に風邪を引いたらすぐかかりつけのお医者さんがいると同じように、23区内まんべんなくどこにでもちょっとしたことが相談できるという弁護士がホームロイヤー的におられるのが私は理想だと思います。
 しかしながら、そういう風邪を治すお医者さんが脳の高度な専門手術ができるかということになりますと、すぐ総合病院に連携で送られて、そこで処理できるような総合病院もそう遠くないところにアクセスできる形で存在していると、そういういろいろな国民がおられて、いろいろな方々のニーズがあって、それに対応できる法律事務所がくまなく存在していると、こういった体制を作るのが私は理想だろうと思いますし、そういった形での多様な事務所を複合的に網の目に作っていき、そのようなアクセスポイントを充実させて絡み合わせていく、これが一つの方向性だと思います。そういう意味では、何も大きいことだけがいいことだという主張ではございませんので、その点は誤解がないように御理解いただきたいと思います。
 それから、大きくなればそれなりの問題もあるかと思います。例えばなぜ大きい事務所が今まで少なかったかというと、やはり弁護士の考え方もあるとは思うのですが、経営に割かれる時間が当然増えますし、その中でいろいろなルールを決めていくという大変さもございます。非常に自由に一人でやれるというメリットも一人の事務所にはございますし、それがまたそれぞれのニーズに合った形で生まれていくということで私はよろしいのではないか。ただ、今まではあまりにも協働処理をできるところが少なかったと。これを何とかしたいということがワンストップサービスの課題ではなかろうかと思っております。

【伊藤座長】どうぞ、塚原弁護士。

【日弁連(塚原弁護士)】冒頭にもアメリカの資料もお示ししてお話しましたように、アメリカでもソロプラクティスというのはなくならないで、かなりの率で残っています。これは弁護士の仕事そのものに内在しているものがあるのだろうと思っております。ですから今、伊藤弁護士の方からも申し上げたとおり、それぞれのニーズに合った事務所が選べるというような状態になるのが一番いいのだと思います。アメリカでも一人でやっている弁護士であっても、お互いに相談できるネットワークを作るというような仕組みもできているところがありますし、あるいは数人単位でブティック化するというように専門店を目指す形で、大ローファームでないけれども、ある分野では非常に専門性を持つ事務所ができているというように、いろいろな形態ができています。ただし、最近の数字を見てみますと、やはり大きいところの伸びが非常に大きいです。それはそういう事務所を必要とするところがあるからで、弁護士人口がある程度の増えてくれば、いろいろなニーズに対応して事務所の方が調整をすることも大事になります。個人が1対1で安心して相談できるという意味での一人の弁護士事務所のニーズもなくならないので、それぞれに合った体制がとれればと思っております。共同化した場合の弁護士倫理についてはいろいろな問題がありますので、現在日弁連の方でも倫理規定自体の見直し作業を進めております。

【伊藤座長】どうぞ、中川委員。

【中川委員】一つ、二つ教えていただきたいのですけど、隣接職種とのタイアップの問題と、専門性の強化という関係のことになるのですが、日本ではこのように、それぞれ「○○士」という職種が別になっております。その関係でこういうタイアップというのは必要になってくると思うのですけれども、そのこと自体は非常にいいことだとは思いますが、一方、そのことによって弁護士の専門化が遅れるということはないのだろうかという心配があります。これは多分お答えはノー、そんなことはないと、お互いに知識を分け合ってということになるのかと思うのですが、不動産の問題は不動産鑑定士に任せてしまおう、税金の問題は税理士に任せよう、知財の問題は弁理士に任せようと、そういう切りわけが効率の面からいえばその方がいいわけです。しかし一方では弁護士がそういう方面の知識を深めるということがなくなってくるという心配もないではないと思います。だから、その辺はどのようにお考えになっているかというのが一つ。
 それからもう一つは、先ほどもお話がありました、大事務所になればなるほど経営というかマネージメントが必要になってくるのです。それがありませんと、いわゆる個々の弁護士の集合体ということになりまして、大事務所になったためのメリットがなかなか出てきません。クライアントの側からとりましてもかえって分かりにくいということになってしまいます。例えばの話ですけれども、その事務所全体としての報酬体系があるとか、あるいは一定の予算で一つの法律問題を請け負ってもらえるのだとか、いわゆるチームとしてそういうことをお願いできるのだとか、何かそうなってきますとクライアントとしては使い勝手がいいのですが、そのためには相当マネージメントが必要ですよね。やはりボスというかヘッドがいらっしゃって、その人がきちんと事務所全体の統制をとっていくとような形になっていくのかなということです。アメリカは御存じのようにパートナー・アソシエーツと言いまして、パートナークラスの人がアソシエーツを使って一つの法律問題を処理していくというような体制ができているみたいですけど、そのようなことが日本でも可能なのかどうか。そのあたりです。将来のことも含めて教えていただくとありがたいと思いますが。

【伊藤座長】今の2点についてお願いします。

【日弁連(伊藤弁護士)】最初の方の専門分野との関連ですけれども、例えば税理士の職務は伝統的に税務申告が中心です。税についてのいろいろな知見はございますが、例えば弁護士が受けてきた教育と税理士が受けてきた教育はかなり違います。税理士の場合、例えば相続税法22条がありますが、出てきた通達がそれに照らして適合かとか、あるいは憲法体系上どうなるかというようなことについては非常に不得手でございます。通達を含めてそれを前提として申告していくという業務に非常になれてきて、中には優秀な方もいろいろおられて憲法から勉強されている方もおられますが、そういたしますと、例えば国の徴税行為に対して、それは憲法上疑義があるというようなことはやはり弁護士が入らないとなかなか言えないという側面があるかと思います。
 そういう場合に一つの申告だけをやっている事件のケースではいいのですけれども、それについて、これを疑問を挟んで何かしようという場合はやはり弁護士が出て行かなければいけない。しかし、今まで弁護士の数があまりにも少なかったために、日本では税理士だけに任せきりの状態が続いてきたという状況があると思います。行政の行うことが正しいのだという前提ですね。国民のそういった税務に対する権利救済が非常に遅れている国になってしまう。行政事件の数が諸外国に比べて相当少ないというような現状にもそれはあらわれていると思います。
 そういった現状を打破していくためには、隣接業種と弁護士がどういう関係を築いていけばいいのか。あるいは税理士という資格自体をどうしていけばいいのかというのはやはり検討していく課題ではありますけれども、今まで税務の問題を弁護士が扱うから大丈夫だということは言い切れない現状があったということは私は素直に認めざるを得ないと思います。その上でどういった協力関係なり新しい仕組みを作っていくのかという議論が必要だと思っておりますので、今後は増えてきた弁護士が、例えばタックス・アターニーとかパテント・アターニーとか、そういった職種に増加する弁護士が積極的に出て行って協力関係を作るというのが望ましい姿ではなかろうか。これが1問目に対する私の考えです。
 2問目ですが、日本の渉外関係を扱っている100人を超える大事務所は経営形態が米国におけるパートナーシップと大体同様な状態で、パートナーがアソシエートを事件の配転等を決めて依頼するという、そういった形態をとっているところが大部分だと思います。マネージング・パートナーとか、執行パートナーという形で何人かを選任して、責任持った経営体制を行うという形でないと50人、100人を超える事務所の運営はできないということで現実にそういう形になっているかと思います。そのパートナーシップの形式というのはアメリカあるいは日本でも最近非常に経験上積み重ねられてきたことがございまして、それがストレートに法人の仕組みとぴったり合致させるためには再びそこで組織変更を行わなければいけないというのが大きな事務所の法人化がやや遅れている一つの原因になっているのではなかろうかと私は推測といいますか、判断しております。

【伊藤座長】どうぞ、塚原弁護士。

【日弁連(塚原弁護士)】まず最初の問題については、これまでの日本の法律家あるいは準法律家の現状を変えるべく法律家を抜本的に増やす、弁護士を増やすという方針に、改革審以来日弁連も踏み出しております。ですから法律分野についてはオールマイティーの権限を持っている弁護士が、本来いろいろなものをやっていくべきである。ただ、差し当たってまだ分野によっては十分数がいない、あるいは能力的にキャッチアップができてないという分野があるということで、隣接業種と提携・協力しながら、当面国民のニーズに応えていく。いずれは弁護士であって、そういう分野の専門家が育っていくことが望ましい。そのために大幅に増員することに踏み切っているというのが日弁連の立場でございます。
 最初のところで弁護士が自分で勉強して、ある程度専門知識も持ちながら、しかし広い範囲を見ていく必要があるという御指摘かと思いますが、アメリカの場合、大きなローファームであるほど専門分化いたしますので、一人の依頼者に対してデパートメントごとにそれぞれの弁護士が出てきて、それぞれがみんなタイムチャージをつけるためにコストがかかるという問題が生じます。あまりにも細分化してしまうと、一つの事件がいくつもの法律分野にまたがっていることがいくらでもありますために、そこの調整をどうするか。ある程度采配をしてトータルで報酬を決める必要が生じている。ばらばらに専門家を寄せ集めてきて、全部タイムチャージで取るというようなことでは依頼側のニーズに応えられないという部分もありますので、依頼人側からこういう形でやってほしいという注文を出されれば、だんだんそれに応えるような形が今後出ていくのではないかと考えています。
 これは制度としてどう決めるというよりは、結局需給関係で自然と改善されていく、あるいは依頼者がもっと注文つけていただいていい時代になってきていますので、そこを法律事務所側がどう受けとめていくかということになろうかと思います。

【伊藤座長】時間が大分超過しておりますが、どなたか、なお、御質問、御意見があればお願いいたします。どうぞ、木村委員。

【木村委員】東京シティ法律税務事務所、これは大変すばらしいパンフレットだと思いました。国際的なパートナーシップで、外国人の弁護士はここにはいないわけですね。全部日本人なのでしょうか。

【日弁連(伊藤弁護士)】外国の州弁護士の資格ある者が中におります。このパンフレットを作った段階ではまだいなかったのではないかと思いますが、今は2名おります。

【木村委員】それはアメリカで資格を取った方ですか。

【日弁連(伊藤弁護士)】そうです。ただ外弁登録はしていません。現実にスタッフという形で作業していただいています。

【木村委員】そうなのですか。先生のお考えでは、これからこういう形の事務所というのは、大きな司法改革の流れの中で相当増えていくであろうという予想に立っていらっしゃるのかなとも思いました。それに関連して、外国の方々で、日本に滞在している方々がなかなか日本人のローファームにアクセスできないことが今までかなりございましたですよね。大きい企業で雇われている方につきましてはほとんど問題ないのですが、個人でいらしっゃる方、特に滞在期限を過ぎて滞在している外国の方々とかいろいろな方々が、例えば労務上の事故があっても、正当な補償が受けられない。弁護士さんにお願いしようと思ってもなかなか行けないというようなケースがいろいろあったわけですけれども、今後そういうことも含めて、何かそういう外国人の滞在者の人権救済のためのいろいろな事務所も増えてくるかと思いますが、そういうような見通しについては先生いかがお考えでございますか。現状を含めてお話しをお伺いできれば。

【日弁連(伊藤弁護士)】入管の事件を個別に扱って弁護団を組んでやっている方たちがおられますが、それはまた大手の事務所とは若干違った形態で人権救済を専門的にかなりやっておられる方おられます。そういう事務所はあまりまだ大規模化してないのですが、今後そういう事務所も増やしていかなければいけないという、そういう意味では、先ほど一番最初の御質問でありました採算ベースの問題で、どのような事件でも人権救済の、国際的な人権問題は非常に今大きくなってきています。そういった問題を救済するための事務所は、かなり公的な、先ほど言いました扶助をつけるような形で運営していかないとなかなか要望に応えられるところまでいかないのではないかと思っています。
 だから、プロボノだけに頼るのではなくて、そういった事務所を充実させていくということも課題の一つだと思っています。
 ちょっと違いますか、質問の趣旨に対して。

【木村委員】もし、そういう方向でしたら、日弁連のホームページが大変充実して、こういう関係のいろいろな部会とか、そういうのがございますけれども、そういうところに外国の方がアクセスされるような英語版を付けていくような方向性が望ましいと思います。この間、私、3月18日でしたですか、最高裁関連でホームページが新しくされるということに関連して英語版の充実をお願いしまして、昨日チェックしましたら大変にすばらしい英語版がもうできていまして、最高裁の判事の経歴を含めて掲載されてあるわけです。
 ですから日本の中でも国際化が進んでいるわけですので、外国からもちろんアクセスする方も多いわけですけれども、先生のところのパンフレットにも人権の救済という言葉がございますが、そういう人権救済を含めた積極的な取組を日弁連で是非外国語で情報を流していただくようなこともお考えいただければと思います。あるいはもうあるかもしれませんけれども。

【日弁連(伊藤弁護士)】国際室というのがございまして、それなりの広報もやっておりますが、不十分かなという面があれば、私、現在担当ではございませんけれども、広報室というところでやるように、一会員でございますから努力したい思います。

【木村委員】是非お願いしたい。

【日弁連(塚原弁護士)】日弁連ではございませんけれど、法律扶助協会では外国人相談をやっておりまして、英語だけでなくて何カ国語ものパンフレットを出し、無料に相談に乗れる体制をとっておりまして、かなりの相談件数があります。本日はデータを持っておりませんけれども。

【伊藤座長】それではこの問題につきましては、本日、委員からお出しいただいた意見も踏まえまして、今後とも日弁連における取組をお願いしたいと思います。どうも本日はありがとうございました。
 それでは続きまして、4月14日に開催されました第10回顧問会議につきまして、事務局から報告をお願いします。

【植村参事官】予定のお時間が過ぎておりますが、若干御説明をさせていただきます。
 4月14日、第10回顧問会議が開催されました。昨年3月に司法制度改革推進計画が閣議決定さ、それから1年を経過いたしましたので、事務局から関係資料をお配りした上で進捗状況についての説明をいたしました。
 提出法案を取りまとめましたのが、本日事務局資料としてお配りいたしました資料18−2の1枚目の資料でございます。第10回顧問会議資料1と右肩に打ってございます。それから、法案提出を含めまして、司法制度改革推進計画に基づく主な措置事項を取りまとめましたのがその次に入れてございます資料18−2の2枚目ないし5枚目の第10回顧問会議資料2と右肩に打ったペーパーでございます。
 そのほか顧問会議におきましては、関連資料を添付資料としてお配りいたしました。資料18−2の後ろの方に当検討会関係の添付資料を抜粋して付けております。
 事務局からの説明に対しまして、当検討会関係の事項につきましては、特に顧問から御質問、御意見はございませんでした。
 私からは以上でございます。

【伊藤座長】何かただいまの報告につきまして御質問ございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、予定した時刻を少し超過いたしましたが、特に御発言がなければ、本日の議事はこのあたりで終了したいと存じます。次回は7月22日、午後1時30分から予定しております。次回の議題につきましては、事務局におきまして、関係機関とも調整をしながら検討してもらうようにいたします。

以 上