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法曹制度検討会(第19回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)

1 日時
平成15年7月22日(火)15:00〜16:30

2 場所
司法制度改革推進本部事務局第1会議室

3 出席者
(委 員) 伊藤 眞(座長)、岡田ヒロミ、小貫芳信、釜田泰介、木村利人、佐々木茂美、田中成明、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)
(説明者) 木村 靖(日本弁護士連合会副会長)
高中正彦(日本弁護士連合会弁護士制度改革推進本部事務局長)
小池 裕(最高裁判所事務総局審議官)
(事務局) 古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、植村稔参事官

4 議題
(1)第156回国会における法曹制度検討会関係の法律改正について
(2)大学教授等に対する弁護士資格付与制度の見直しについて
(3)その他

5 配布資料
【事務局配布資料】
○資料19−1第156回国会における法曹制度検討会関係の法律改正について(国会における修正内容について)
○資料19−2弁護士法の一部改正 −弁護士資格の特例の拡充について−
○資料19−3第156回国会における司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議のうち、弁護士資格の特例措置の見直しに関する事項
○資料19−4大学教授等に対する弁護士資格付与制度の見直し 検討のたたき台(案)
○資料19−5大学教授等に対する弁護士資格付与制度の沿革

【日弁連配布資料】
○資料 年度別登録数とその内訳(弁護士登録前の職業と資格取得事由)
○資料 弁護士法5条3号に基づく登録件数の推移
○資料 弁護士法5条3号に基づく登録請求一覧

【最高裁配布資料】
○資料 下級裁判所裁判官指名諮問委員会委員名簿
○資料 下級裁判所裁判官指名諮問委員会地域委員会地域委員名簿

6 議事

【伊藤座長】所定の時刻になりましたので、第19回法曹制度検討会を開会させていただきます。御多忙のところありがとうございます。
 まず、議事に先立ちまして、事務局から配布資料の確認をお願いします。

【植村参事官】それでは、配布資料の確認をさせていただきます。
 本日、事務局からは、資料19−1ないし19−5を配布させていただきました。また、日弁連、最高裁から次第に記載しましたとおりの資料の御提出がありましたので、御紹介をいたします。
 以上でございます。

【伊藤座長】それでは、本日は次第にございますとおり、まず、「第156回国会における法曹制度検討会関係の法律改正について」、事務局から説明をしてもらいます。続いて「大学教授等に対する弁護士資格付与規定等の見直しについて」事務局から提案がございます。日弁連から「大学教授等に対する弁護士資格付与の実情」について御報告していただいた上で御議論をお願いしたいと思います。最後に、関係機関タイムといたしまして、最高裁から、去る6月19日以降、3回にわたって開催されました「下級裁判所裁判官指名諮問委員会」での審議の状況につきまして、御報告をお願いします。
 それでは、早速議事に入りたいと思います。まず、「第156回国会における法曹制度検討会関係の法律改正について」、事務局から説明をお願いいたします。

【植村参事官】それでは、資料19−1、19−2、19−3に基づきまして、今国会における法曹制度検討会関係の法律改正の内容や衆議院、参議院の法務委員会の附帯決議の内容について説明させていただきます。
 これまでの検討会で御説明してまいりましたとおり、当検討会関係の改正法案は、去る3月14日、司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案として国会に提出されました。そして、資料19−1をご覧ください。この資料に記載いたしましたとおり、弁護士となる資格の特例の拡充につきまして、国会議員・特任検事に対する弁護士資格付与の要件として研修を付加する旨の修正がなされたほかは、去る7月18日、提出時法律案のとおり成立をいたしました。
 この間、委員の先生方には大変お世話になりました。ありがとうございました。重ねてお礼を申し上げたいと思います。
 今回の法改正につきましては、衆議院、参議院の法務委員会におきまして、附帯決議が付されておりますが、弁護士資格の特例に関する部分を資料19−3にまとめました。衆議院法務委員会の附帯決議も参議院法務委員会の附帯決議もいずれも弁護士資格の特例制度について、さらに適切な見直しを行うよう政府に求めるものであります。
 附帯決議の内容を御理解いただくために、まず資料19−2をご覧ください。資料19−2は、弁護士資格の特例措置について、現行制度と拡充された制度を図示したものでございます。
 まず、弁護士資格付与の原則は、皆様御承知のとおり、現行弁護士法第4条の定めのとおり、司法試験に合格し、司法修習生となって司法修習を終了することでございます。
 これに対しまして、現行法上の特例措置は、第5条に定められております。附帯決議に関係いたしますのは、第2号の司法試験合格後、衆議院、参議院の法制局参事、内閣法制局参事官等を5年以上経験した方々と、第3号の大学等の法律学の教授、助教授を5年以上経験した方々です。
 今回の法改正によりまして、拡充された制度の対象者となりましたのはご覧のとおり、企業法務等の担当者、公務員、国会議員、特任検事でございますが、これらの方々につきましては、いずれも司法試験又はこれに準ずる試験に合格した上、それぞれの分野で一定期間の法律実務経験を積み、さらに新しく整備される研修課程を修了することを資格取得の要件としております。
 これに対しまして、先ほど申し上げました現行制度の対象者はどうかといいますと、第2号の司法試験合格後、衆議院、参議院の法制局参事、内閣法制局参事官等を5年以上経験した方々は、試験合格後一定期間の法律実務経験を積んでおられますが、弁護士実務に就くに当たり研修課程を修了することは要件とされておりません。この点で、企業法務等の担当者、公務員、国会議員、特任検事とは異なっているわけであります。
 参議院の附帯決議では、本法によって新たに特例措置を講ずる者に対しては研修を課することとしたことにかんがみ、衆参の法制局参事、内閣法制局の参事官等の職に在った者に対して弁護士資格を付与する制度について、速やかに適切な見直しを行うこと、とございますとおり、この点を明示的に取り上げており、適切な見直しの内容は、研修課程の修了を弁護士資格付与の要件に追加することであると理解しております。
 また、衆議院の附帯決議においては明示はされていませんが、本法によって新たに特例措置を講ずる者に対しては研修を課することとしたことにかんがみ、大学等の法律学の教授、助教授の職に在った者等に対して弁護士資格を付与する制度について引き続き適切な見直しを行うこと、としておりまして、この文章の中にございます「在った者等」の「等」は、現行弁護士法第5条第2号に列挙された方々を意味すると考えられますので、要するに参議院の附帯決議と同様の内容であると理解しております。
 続きまして、第3号の大学等の法律学の教授、助教授でございますが、大学教授、助教授の方々は第2号に列挙された方々や、今回の法改正によりまして拡充された制度の対象者となりました方々とは異なり、司法試験やこれに準ずる試験に合格されているわけでもございませんし、一定期間、法律実務経験を積まれているわけでもございません。
 そこで衆議院の附帯決議においても、参議院の附帯決議においても、適切な見直しが求められております。
 適切な見直しの内容ですが、両議院の法務委員会の審議におきまして、与野党問わず制度の見直しを求める質疑がなされており、御趣旨としては、法律学の教授、助教授に対し司法試験に合格していなくても弁護士資格を付与する制度の廃止を意味するものと理解をしております。
 以上が、法律改正の内容及び弁護士資格の特例に関する附帯決議の内容でございます。

【平山委員】よろしいですか。

【伊藤座長】どうぞ。

【平山委員】今の御説明で分かりましたが、国会議員と特任検事につきまして、事前研修というのが追加修正されたと思いますが、このいきさつについて若干御説明をしていただいた方が、今後の審議にいいと思いますので、よろしくお願いします。どのような経過でこのようになったのでしょうか。

【伊藤座長】では、植村さんお願いします。

【植村参事官】私どももつまびらかにいきさつが分かっているわけではございませんが、私の知る範囲で申し上げますと、政府原案といたしましては、御承知のとおり、資料19−2の下の方に記載しております、国会議員、特任検事については、研修を要件としないものをお出ししたわけでございます。与党調整というのがございまして、政府原案については、国会に提出する前から与党に説明させていただきます。その中で議論があったと聞いております。そのような与党調整を経まして国会には政府原案どおり提出をいたしました。
 衆議院でまず議論をしていただいたわけでございますが、その過程で国会議員については、司法試験に受かっているとはいえ、民事、刑事の実務に携わっているわけではなく、法律実務といっても立法実務に従事されているわけで、直ちに資格を付与して弁護士として活動してもらっていいのかどうかということになりまして、その点につきましては、いろいろな方から御発言があって、研修を追加しようというようになっていったものと承知をしております。
 特任検事につきましても、刑事については立派な経験を積んでいるとはいえ、民事についてはどうだろうかというような御質疑もあり、最終的には国会議員の先生方と同じように、やはり第一線の弁護士として、民事、刑事の実務を担当してもらうためには、法廷実務についての知識も要るだろうし、さらには法曹倫理についての知識もいるだろうというようなことで研修をやってもらった方がいいであろうということで、衆議院でその修正がなされたと承知いたしております。
 この程度でよろしゅうございますでしょうか。

【平山委員】私自身は、これはすばらしい修正ではないかと思うのですね。私は、一貫して、事前研修の必要性を主張してまいりました。弁護士法5条に基づく特例措置の場合は全て事前研修をやるべきではないかということを申し上げてきましたので、このたび特に国会議員につきましては、自らこのように修正されたというのは非常に感動いたしますよね。そういう意味でいいと思いますが、この流れ、やはり司法試験合格と司法修習というもの、今の現行法、これは非常に大事なものだというのが確認されたのではないかと思いますし、また、その司法修習に代わるものということになれば、一定の法律実務の経験とプラス事前研修というようなことの図式が、今日配布していただきました19−2を見ますとできたように思うのですね。非常に分かりやすい、納得性の高いものだなと思いまして、今回、法曹養成制度が来年からスタートしますので、そこでは大きな法曹といいますか、量も質も高めるという時代が来ましたので、大学教授に対する特例はもうそろそろ、という感じではないかと思いまして、これは国会議員自身が持ち出されたということであれば、私は非常に高い見識だなと思っておりまして、それでちょっと経過を聞いてみたかったのですね。

【伊藤座長】それでは、内容のことですが、大学教授のはこれからやりますけれども。

【木村委員】今のことなのですけれども。

【伊藤座長】どうぞ。

【木村委員】私も同感です。大変詳しく御説明いただきまして、今の植村参事官の御説明の中にほとんど触れられていることなのですけれども、例えば国会議員の刑事、民事の訴訟手続の研修、それから特任検事につきましては、民事のことについてやるとかということなのですが、論議の過程で、所定の研修という場合の所定の内容を具体的にどのように構想しておられたのか、もし、それについて御承知おきでございましたらお知らせいただきたいというのと、それから、この研修の主体でございますけれども、これは私たち常識的に考えれば、これは日弁連ということになるのでしょうけれども、そういうことを含めて、内容と研修の主体につきましては、国会での論議が何か議事録のような形で残っているのでございましょうか。

【植村参事官】今、木村先生から御質問のあった点は、国会でも質疑がございました。この修正は、衆議院の与党の先生方から出た修正でございまして、それで国会議員と特任検事にも研修をしてもらおうということになりまして、その後、参議院にまいりまして質疑の中でそのような議論があったように記憶をしております。
 そのときの議論では、主として司法書士について研修を受けてもらう制度が既にでき上がっておるわけでございますが、それとの対比の議論があったように記憶しておりますが、提案者からは、今後国会議員や特任検事に一体どういう研修が必要なのか、よく議論をしてほしい。つまり、これは法務省の方で第一義的には研修の中身を詰めていくわけでございますが、そこで中身としてどんな研修が要るのかというのをよく議論してほしいという限度にとどまっておりまして、それ以上、細かいところまでは議論はなかったようです。
 ただ、比較していただくとすれば、企業法務等の担当者、公務員に対して研修をいたすわけでございます。これは政府原案の中に入っていたわけでございますが、これにつきましては、いわゆる集合研修ですね。皆さんが集まってする研修と、個別研修といいまして、弁護士事務所等に行っていただいて研修をする。その組合せで研修が行われるというような説明は政府の方からさせていただいておりまして、そういうことについては、恐らく国会議員の先生方や特任検事についても同じようなものになるのではないかというようなことではなかったかと思います。
 ただ、いずれにいたしましても、今後法務省の方でお詰めになることでございますので、その御検討の成果があらわれてくるだろうと思っております。

【木村委員】主体の話。

【植村参事官】企業法務等の担当者と公務員につきましては、政府からは日弁連を想定しておりますというお答えをいたしておりました。それとの対比で国会議員と特任検事についても、恐らくそうなるであろうというような質疑があったように記憶はしておりますが、すみません、その程度の記憶にとどまっております。

【伊藤座長】よろしいですか。

【木村委員】はい。

【伊藤座長】それでは、続きまして、ただいま説明ございましたけれども、衆議院、参議院の法務委員会の附帯決議を踏まえたものと考えますが、大学教授等に対する弁護士資格付与規定等の見直しについて、事務局から提案の説明をお願いいたします。

【植村参事官】先ほど御説明いたしましたとおり、衆議院、参議院の附帯決議によりまして、現行弁護士法5条2号、5条3号の見直しを求められております。資料19−4をご覧ください。
 資料19−4は、このうち、第5条第3号の見直しについて、皆様にお諮りするものでございます。この資料19−4について説明をさせていただきます。検討のたたき台案の1は、先ほど御説明いたしました衆議院、参議院の附帯決議を踏まえまして、司法試験に合格していない大学教授等に対する弁護士資格付与制度の廃止を提案するものでございます。
 ここで、大学教授等に対する弁護士資格付与の制度の沿革につきまして、若干御説明をさせていただきたいと思います。資料19−5をご覧ください。旧々弁護士法、それから改正旧々弁護士法時代を経まして、昭和8年に制定されました旧弁護士法は、弁護士資格付与に関する原則的な定めといたしまして、「弁護士試補として1年6月以上の実務修習を了へ考試を経たること」、それから、「弁護士試補たるには成規の試験に合格することを要す」という規定を置いておりました。
 そして、この規定についての例外といたしまして、「判事又は検事たる資格を有する者」には弁護士資格を付与することとしておりましたが、一方、現在の裁判所法に相当いたします当時の裁判所構成法におきまして、「三年以上、帝国大学法科教授たる者は、此の章に掲げたる試験を経すして判事又は検事に任せらるることを得」という規定がございまして、これらの規定によりまして、3年以上、帝国大学法科教授の職に在った方々は、試験に合格することや、実務修習を経ることなく弁護士資格を付与されることになっていたわけでございます。
 戦後、昭和24年に制定されました現行弁護士法は、このような旧弁護士法の考え方を引き継ぐとともにその範囲を広げました。すなわち現行裁判所法や検察庁法におきまして、一定期間、大学院の付置されている大学の法律学の教授又は助教授の職に在った方々に対しまして、判事又は検察官の任命資格を付与することとしたことを踏まえまして、現行弁護士法5条3号が、実質的に旧帝国大学法科教授と同様に扱うべきであると考えられた国立大学、私立大学の法律学の教授、助教授の職に在った方々に対して弁護士資格を付与することとしたわけでございます。
 このような経緯で、現行弁護士法に盛り込まれました大学教授等についての弁護士資格の特例措置につきましては、既に半世紀を超える運用実績があるわけでございまして、この点につきましては、弁護士登録の請求に対する審査という形でその運用に携わってこられました日弁連から御報告をしていただくことになっております。
 今回、法曹制度検討会における検討結果を踏まえまして、弁護士資格の特例措置の拡充を含む弁護士法の改正法案を作成し、与党に御説明した上、その御了解を得て国会に提出したわけでございますが、与党に説明させていただきました段階から、特例措置の拡充に関連いたしまして、現行弁護士法5条3号を廃止してはどうかという強い御意見をいただきました。
 さらに、衆議院、参議院の法務委員会におきましても、同趣旨と理解されます質疑をいただきまして、両院におきまして、先ほど御説明いたしましたとおりの附帯決議をいただいた次第であります。
 私どもといたしましては、附帯決議の御趣旨というのは、今回の司法制度改革の中で、法曹養成のための中核的な教育機関として法科大学院を創設し、法科大学院における教育と司法試験、司法修習を有機的に連携させたプロセスとしての法曹養成制度を構築することにより、国民の多様かつ広範な要請に応えることのできる多数の質の高い法曹を養成しようとしている中で、司法試験ないしこれに準ずる試験合格という客観的で明確な能力の検証を経ることなく、かつ司法修習等を通じて実務に関する経験を積むこともなく、弁護士資格を付与する現行弁護士法の5条3号の制度というのは、もはや維持すべきではないのではないかということにあると考えております。そこでたたき台案の1にありますとおりの提案をさせていただいたわけであります。
 次に、たたき台案の2でございます。2におきましては、1のとおり、司法試験に合格していない大学教授等に対する弁護士資格付与制度を廃止する場合に、司法試験に合格し、司法修習生となる資格を得た後、一定範囲の大学教授等の職に在った期間が通算して五年以上となる方々に対して、研修を修了することを要件として弁護士資格を付与すべきと考えるがどうかという提案でございます。
 これは司法試験に合格していない大学教授等に対する弁護士資格付与制度を廃止するにいたしましても、司法試験に合格し、客観的で明確な能力の検証を経た上、一定範囲の大学教授等の職に在って、法律学の研究等を行うことにより、その分野について高度の専門性を身につけた方々に対しましては、さらに弁護士として活動するための実務的な能力を涵養するための研修過程の修了を要件とした上で、弁護士資格を付与することでどうかという趣旨でございます。
 なお、たたき台には記載しておりませんが、今回の法律改正によりまして、新たに弁護士資格の特例措置の対象として追加された方々について、資格取得の要件として研修課程の修了を要求することとしたわけでございます。これとの対比におきまして、現行弁護士法第5条第2号の対象とされている方々についても、弁護士として活動するために必要な実務的能力という点につきましては、必ずしも十分な能力を備えているとは限らないのではないか。また、先ほど平山先生からも御指摘がありましたけれども、今回、研修を要件とした上で弁護士資格を付与された者との関連で、法制度の整合性をとる必要もあるのではないかということもございます。そこで、現行弁護士法第5条第2号の対象とされている方々についても、研修課程の修了を要求することとしてはどうかというものでございまして、この点につきましても、委員の先生方に特に御異論がなければ、事務局といたしましては、その方向で今後検討してまいりたいと考えております。

【伊藤座長】よろしいですか。それでは日弁連から、現行弁護士法5条3号の運用状況についての報告をお願いいたします。どうぞ、その前の方で。

【日弁連(木村副会長)】日弁連副会長の木村と申します。
 それでは、「弁護士法5条3号による弁護士資格付与の実情」について報告させていただきます。
 まず、最初に登録・審査の具体的な手続について述べさせていただきます。弁護士法5条3号に基づきまして登録を求める方は、各弁護士会にまず登録請求をしていただきます。各弁護士会は、弁護士法5条3号による登録の申請があったときに、速やかにこれを日弁連に請求者の名前、資格要件、請求日を通知いたします。そして、各弁護士会が弁護士法5条3号に基づく登録要件を審査いたしまして、登録請求の進達を拒否したときは日弁連に連絡がなされます。登録要件の審査で問題がなければ登録請求の進達を日弁連に行います。日弁連は、弁護士会から登録請求の進達を受けたときは、必ず実質的な調査を行います。結果として登録要件が確認されれば、登録がなされます。そうでなければ、登録が拒否されます。拒絶された場合、請求者は、行政訴訟でこの判断を争うことが可能です。
 次に、資料3を見ていただきたいと思いますが、「弁護士法5条3号に基づく登録請求一覧」であります。請求件数と認容件数が記載されております。両者の件数の違いは、登録請求があった後に認容に至らなかった場合、すなわち、請求者自身が登録請求を取り下げましたり、弁護士会の進達拒否、日弁連の登録拒絶があったことによります。取り下げと登録拒否の内訳を見ますと、取り下げが約15%、登録拒絶が10%になります。
 次に、登録請求と登録の件数について述べますが、資料2を見ていただきますと、「弁護士法5条3号に基づく登録件数の推移」が書いてあります。これは1965年から2002年までのデータでございます。
 登録請求の件数ですけれども、1990年(平成2年)ころまでは、1年間に10名以下でありましたが、1991年(平成3年)から1998年(平成10年)までは、概ね年間10名台に増えました。1999年(平成11年)以降は、年間20から30名に増加して、本年、2003年は、現時点で既に34名となっております。この資料の数字ですが、本日現在を見ますと、請求は既に40名を超えております。そういう報告を受けました。このペースでいきますと、本年中には60名を超えることが予想されております。このように、登録が急増しておりますのは、司法制度改革審議会での弁護士制度、法曹養成制度の議論の進行に影響されていると思われます。1999年は、司法制度改革審議会が発足した年でありますし、2000年(平成12年)は審議会で弁護士制度、法曹養成制度について活発な議論がなされた年でありますので、議論が進む中で、司法制度が大きく変容する、そういう息吹を感じた大学関係者の方が、登録を急いだのではないかと考えられます。
 本年の登録件数が、昨年のおよそ倍のペースでなされているその原因でありますが、一つは、来年4月に開校予定の法科大学院制度の影響が大きいと思われます。つまり法科大学院では、実務家教員が一定の割合で必要であると書いております。ロークリニックなどの設置には弁護士資格を有する者が必要であることも告げられております。そして、もう一つの原因は、司法制度改革推進本部が審議会意見書を法律化していく過程の中で、弁護士資格付与制度に変革をもたらすということが確実になっております。弁護士法5条が改正されていく中で、従来からいろいろ意見があった弁護士法5条3号につき改正がなされるのではないかという予測から、今の制度のうちに登録をしておこうというように考える方が増えたのではないかと推測されます。
 では、どのような大学教授・助教授が弁護士登録をするのかという点ですけれども、弁護士法5条3号に基づいて登録した方は2003年6月26日現在で登録中の人数は270名ですが、登録時の平均年齢を見ますと61歳、現在の平均年齢は70歳です。ただ、中には、若くして登録される方もありますが、平均年齢をとると61歳ということですので、大学定年後に登録されている方が多いと思われます。
 ちなみに出身大学別の内訳を紹介しますと、2002年10月末の現在の統計ですけれども、11名以上の登録者が出ている出身大学は、中央大学16名、専修大学14名、東京大学14名、慶應義塾大学13名、同志社大学12名、青山学院大学11名、日本大学11名となっております。
 以上でございます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。それでは、ただいまの事務局及び日弁連の説明につきまして、まず御質問をお願いいたします。どうぞ、小貫委員。

【小貫委員】副会長に教えていただきたいのですけれども、請求件数と認容件数の食い違いが出ておりまして、そのうち拒否が10%という御説明だったと思うのですが、個別に説明していただくのは差し支えあるでしょうけれども、一般化して言うと、どんなものが拒否になるのかというのが一つと、この97年の(注1)を見ますと、これは弁護士会で拒否されて、恐らく取消訴訟があって、認容されたものが2件ありますと、こういうことなのでしょうね。これ、差し支えない範囲で、どんな点が争点になったのか、それを教えていただきたいのですが。

【日弁連(木村副会長)】一番の争点は法律学ということだと思います。その法律学について、どのような法律学を指すのかと。どのような法律でもよいかというと、そういうわけにはいきませんので、一応日弁連としましては、審査基準というのを設けております。その審査基準は弁護士の職務を行うのに必要な基本的・実体的・手続的、現段階においては、憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法、破産法、国際私法、労働法というものを指します。これらの取得を前提とするものと明らかに認められる法律学の教授、助教授の職に5年以上在った者という基準であります。
 したがいまして、例えば海法とか英米公法、司法、経済法、国際公法、税法、国際取引法、行政法、こういうものも一応法律学と認められていますが、法医学とか、刑事学、行政学、社会学、法哲学、法制史学、これは入らないというようになっております。
 したがいまして、このような大学教授として、また、助教授として勉強された法律学がどのようなものであったのかということを、この審査基準に当たるかどうかということが一番のポイントだと考えられます。

【伊藤座長】よろしいですか。

【小貫委員】はい。

【伊藤座長】どうぞ、ほかに、松尾委員。

【松尾委員】この審査の中に、教授・助教授のその教諭の論文だとかその他学術的な文献の審査、こういったものも入ってくるのでしょうか。

【日弁連(木村副会長)】そういう審査を一部したことはあります。でも詳しくは高中弁護士がおりますので。

【日弁連(高中弁護士)】先ほどのお尋ねでございますが、東京弁護士会の例で申しますと、中身の審査もいたします。第一東京弁護士会、第二東京弁護士会もしていると聞いております。著作目録というものを出していただきまして、どういった学問的な研究されておるのか、これらを拝見させていただく、このようになっております。

【伊藤座長】よろしいですか。どうぞ。

【小貫委員】日弁連の方で分かるかどうか、今、潜在的な有資格者数というのは大体把握されておりますでしょうか。

【日弁連(高中弁護士)】弁護士法5条3号の有資格者という意味ですか。

【日弁連(木村副会長)】把握できていません。

【日弁連(高中弁護士)】弁護士法5条3号については大学指定法というのがございまして、この大学が大変数が増えておりますので、とても把握はできかねるところでございます。

【中川委員】今、平均年齢が61歳とおっしゃいましたね。これはどうしてもっと若い先生が、例えば40代とか50代の初めの先生が弁護士ということで活躍しようというようにはならないのですか。

【日弁連(木村副会長)】なかなか個人的な差があって難しいのですけれども、やはりいろいろな大学を渡り歩いたりだとか、いろいろな状況がありまして、弁護士業務の方に専念するというよりも、やはり学問的な中で定年まではひとまず勉強していて、それが終わった段階で弁護士になろうかという方が多いと思います。私の滋賀弁護士会につきましては、若いといっても40代ですけれども、弁護士登録をされた方がおります。主に調停をやってもらうとか、国選をやってもらうとかということで、やはり事件なり弁護士会の活動をとことんやっていただけるとかというところまではなかなかしていただけないのが実情だろうというように思います。

【中川委員】先生の方が居心地がいいということをおっしゃっていますけれども。

【伊藤座長】そのあたりは、田中委員に。

【田中委員】全くそういうことではございませんでして、国立大学は兼業禁止で、実際上弁護士はできないということでございまして、私学でもかなりの大学は兼業禁止で弁護士ができないというだけでして、大学の中でも潜在的に弁護士としてやれる人はいくらでもいるというのが実情です。ちょっと今の説明では誤解を招くので、制度的な制約の問題です。

【平山委員】早稲田大学などでもそういう制限があるようです。今のところ。それは外さないとなかなか難しい。

【田中委員】今度は法科大学院の関係で外されることになりますし、国立大学も法人化して、教員は公務員の身分を離れますから、兼業として認められるようになるということで大分変わると思います。

【中川委員】私は別にたたき台に反対しているわけではないのですけれども、多才な法曹を作るという意味から言いますと、若いときに学者向きでない人はどんどん出て、そういう実業界で実際に活躍された方がいいのではないかなという気はするのですよね。登録時の平均年齢が61歳というのは、いくらなんでもという気がいたしましたので。

【伊藤座長】どうでしょうか。御意見はこれからまた承りますが、何か御質問があればどうぞ。どうぞ、木村委員。

【木村委員】先ほどの統計の御紹介によりますと、中央大学が16人、東京大学が14人というのは、現段階では兼業はよろしいのでしょうか。

【伊藤座長】登録者の出身大学です。

【木村委員】出身者ということですか。

【伊藤座長】そういう意味だと思います。

【木村委員】先ほど平山先生が言われたように、早稲田大学では確かに兼業禁止規定が割合に厳しくて、事実上弁護士をなさっている方はいらっしゃらないわけです。私がちょっとお伺いしたかったのは、平均的に考えて60代の大学の教授出身の方には、女性の方は極めて少ないかと思われますが、登録を請求された方で、女性の弁護士の方ももちろんいらっしゃるかと思いますが、どのくらいになるか、統計はございますでしょうか。

【日弁連(高中弁護士)】男女はとってないですね。

【木村委員】家庭というか、離婚訴訟とか、いろいろそういう関連の弁護士先生で、女性の方が大分いろいろ御活躍ですが、必ずしももちろん大学から来られたのではなくて、司法修習を終えられて、最初から弁護士さんでおられたという方が圧倒的に多いのですよね、恐らくは。

【日弁連(高中弁護士)】女性弁護士の方が大変増えておりますけれども、それは圧倒的に修習修了者ということでよろしいかと思います。

【木村委員】そうですか。

【伊藤座長】それではいかがでしょうか。御質問、まだあるかもしれませんが、内容の議論に入りたいと思いますので、どうもありがとうございました。
 先ほど説明を事務局からございました、事務局たたき台(案)についての御意見ですが、まず、1の司法試験に合格していない大学教授等に対する特別措置の廃止、これについてはいかがでしょうか。どうぞ、佐々木委員。

【佐々木委員】現行の弁護士法が昭和24年制定ということでございますので、この当時の法律職にある主に法学部の数等を考えますと、現在とは非常に違っておるように思いますし、先ほどの法改正の趨勢から見て、両院の意思もありますのでやむを得ないと考えます。ただ、今、田中委員の方からおっしゃいましたように、現実に資格要件がありながら登録申請をされていない方につきまして、改正法が施行されたときに、それをどう賄っていくかが問題だと思います。改正法施行後の経過措置といいますか、こういう点については御留意をお願いしたいと、このように考えております。

【伊藤座長】どうぞ、松尾委員。

【松尾委員】資料19−5で御説明ありましたように、旧法、現行法についても法律学大学教授については、特別な扱いをされていたということなどの経緯からいって、今回も見直しの対象になりにくいのではないかという印象は持っておりました。それから、改革審の意見書の中にも、この点については確か触れていないというようなことなどもありまして、この検討会でも検討するのが果たしていいのかどうかというような感じは持っていました。
 しかし、一方では、先ほどからいろいろ主張されておりますように、法科大学院を中心とする新しい法曹養成制度ができようとしているという、そういう弁護士資格の付与が大きく変わろうとしているということと、衆参両院でこのような附帯決議が出ているというような動きなどから見ると、流れというものは相当変わっていかざるを得ないだろうというように感じております。
 そういう意味から、ここにある弁護士法5条3号についても、やはりこれを見直していくべきですし、結論とすれば、これは廃止してもやむを得ないと、このように考えております。

【伊藤座長】どうもありがとうございます。どうぞ、ほかの委員の方、御意見をお願いします。そういたしますと、司法試験に合格していない大学教授等に対する特例措置の廃止については、ここで御意見が一致しているというように承ってよろしいですか。

【平山委員】今の佐々木委員の御発言にございましけれども、経過措置については十分御配慮いただいた方がいいという意見です。

【伊藤座長】分かりました。

【松尾委員】むしろ法律学の教授の方たちが、この問題について、どのようにお考えになっているのか、ここは御意見を御参考に伺いたいと思うのですが。

【伊藤座長】私自身もそうなのですけれども、どうぞ、まず釜田委員と田中委員から、それぞれ御発言いただければと思いますが。

【釜田委員】私個人といたしましては、五十数年前の立法を支えていました社会的な要請、そういうものがなくなったといいますか、一定の役割を果たしたという判断が国会においてなされつつあるのではないかというように理解しております。ですから、どこか節目がないと、こういう改正措置は採りにくいと思いますが、今が一つの時期ではないかと思っています。
 それから、大学における、先ほど田中委員がおっしゃいましたが、兼務・兼職の関係ですね。これは各大学がその都度本務に支障のない範囲内でということを重々条件を付けた上で、それから、また研究に少しでも役立つ面があるのであれば、教職に就いている間にも実務に就かれることを認めてきたということで、積極的に推し進めてきたというようなことはなかったわけです。それが先ほど日弁連から御説明いただきました数値にあらわれているのではないかと私は理解しております。

【伊藤座長】ありがとうございます。もし、田中委員、何かございましたら。

【田中委員】私もこの後の代替措置次第のだと思いますし、今の制度は合理的だとはとても思えないし、日弁連の審査基準にも、私は大いに異議がありますし、ああいう審査を受けるのは不愉快だと思う人はたくさんいると思います。廃止した後の代替措置についてはまた別に意見がございますけれど、廃止することについてはもともと賛成です。

【伊藤座長】どうぞ、植村さん。

【植村参事官】事務局から、経過措置について一言だけ申し上げておきますと、先ほど佐々木委員から、御趣旨としては改正法をこれから考えていくとして、施行前に現行の弁護士法5条3号の資格取得の条件を具備した人が出てくるであろう。現在でもそういう人はたくさんいるであろう。その人たちについて、遡ってその資格を奪うことは妥当でないと、こういう御趣旨だと理解いたしました。
 その点も含めまして、仮に法改正を行う場合の経過措置につきましては、今後、政府部内でいろいろと検討してまいりたいと考えております。

【伊藤座長】松尾委員、よろしいですか。私個人も全くお二人と同感でございます。
 それでは、その点は事務局のたたき台(案)にあるとおりのお考えであるということで2の方に進みたいと思います。この特例措置を廃止する場合に、司法試験に合格し司法修習生となる資格を得た後、大学教授等の職に在った期間が通算して五年以上となる者に対して、研修を修了することを要件として弁護士資格を付与することについては、これはいかがでしょうか。この点について御意見を承りたいと思います。どうぞ、小貫委員。

【小貫委員】私、修習免除の規定を置くのは、他との横並びでも賛成でございますけれども、先ほど弁護士会の審査基準の中で若干気になりながら聞いておりましたのは、法律学というものについて、私の感覚だと若干狭いのではなかろうかという感じを持ちました。今回のたたき台(案)の法律学というのは何を想定されているのか、まだ不明でございますけれども、今回の制度は司法試験に合格するというしばりと、その後での研修をという二重のしばりをかけるはずでございますよね。
 そういうことを前提とすれば、法律学という中身についても、もう少し拡大の方向で検討していただけないだろうか。私が具体的に言いたいのは、法制史などは是非とも入れてほしいなと思いますし、田中先生おられるから言うのではないですけれども、法哲学も是非とも必要なものだろうし、あるいは比較法なんていう研究テーマでいろいろ研究されている方も対象として入れていいのでなかろうかなと、このように思っております。
 というのは、実定法の法律解釈だけに限定するという、技術専門家集団だけを作るという発想というのはいかがなものかという、こういう思いがありまして、法解釈あるいは立法の基礎となるような基礎法学をおさめた方は、今後益々私は重要になってきはしないかと、このような思いがありまして、同じ法律学の教授という、「法律学」という用語を使うのは、それでいいのかもしれませんけれども、この解釈については十分に御検討いただきたいというのが私の意見でございます。

【伊藤座長】どうぞ、田中委員。

【田中委員】私も先ほど言ったのは全くその趣旨でございまして、現在の制度で法律学に限定しているというのは合理的でないという感じがいたしまして、例えば私などは司法試験に受かっているわけですけれども、今の弁護士会の基準に当たるような実定法は受け持っていません。これで仮に弁護士会の審査受けてこのような基準で登録を拒否されるというのはかなり不合理な気がします。実際上、今おっしゃったことに基本的に賛成なのですが、ただ、今回の趣旨から言いますと、一定の大学については、附帯決議などを見ますと、むしろ法科大学院の教授というような形に限定して、法律学云々というのはとって、法科大学院の教授という形のしばりにする方が今回の附帯決議の趣旨にも合うのではないかという感じがするわけです。
 そして、実際上の問題として、従来、大学では講座制という形を採っていまして、1科目しか教えないという人は多いわけですけれども、法科大学院になれば、いくつかの科目を教えるということになりますし、例えば法曹倫理が法律学の科目に入るのかとか、ローヤリングはどうなのかということなってくると、法律学の教授というくくりは全くナンセンスな規定になってきます。先ほど小貫委員おっしゃったような、審査の過程で必ずしも合理的でない差が出てきます。従来とは違って、司法試験に合格しているというしばりをかけてあるわけでございますし、それから事前に研修をするという条件をかけてあるわけですから、法科大学院の教授の職に在った者というような形でしばりをかけておくのが適切ではないかと私は思っております。

【伊藤座長】今、田中委員の御発言について何か御意見、どうぞ、平山委員。

【平山委員】非常に両先生のおっしゃっていることと、小貫さんのおっしゃっていることもよく分かりまして、今までの弁護士会の一つの審査基準を持っておりましたのは、司法試験に合格されてない、事前研修もないという状態で、どのようにしたら弁護士資格を与えても問題ないかという観点からやってきたのではないかと思うのですね。ですから今回たたき台(案)2のところでお作りになろうとする、司法試験には合格されて、弁護士研修も事前にやるということになりますと、その中の実務経験というのは、私は恐らく変わっていくだろうと。それが田中先生のおっしゃるように、法科大学院で教えるということになっていく可能性もあるでしょうし、そうでなくて、普通の学部でやっておられても、非常に大事な部分で、我々から個人的に見ますと、非常に優れた見解などを意見書などで述べていただくというような弁護士も必要ですね。
 そういう意味で、その部分は、恐らく私は解釈としては緩やかになっていくのではないかと思っておりますけど、そのような感じですね。

【植村参事官】ちょっと事務局から差し出がましいようですが、言わせていただきますと、今後たたき台(案)の2について、具体的に法制化を考えていくということになりますと、従前の制度との関連もございまして、私としてはやはり法律学という枠を外してしまうことは相当に難しいだろうというように思います。したがいまして、事務局としては、そこは活かしていただいた上で、今、平山先生からもお話がありましたように、運用のレベルでは、恐らく法科大学院制度が立ち上がっていくわけでございまして、今のような弁護士法5条3号の下での法律学の解釈とは違った解釈をしていく余地は、個人的な見解でございますが、多分あるだろうと思います。
 ただ、先ほどの意見に戻りまして恐縮でございますが、言葉としては、この法律学というところは外さないような法制度にしていくべきであろうというようには思っておりますので、一言言わせていただきました。
 それから、一定範囲の大学というところで、現行法上の一定範囲の大学と変わるのか、変わらないのかということがございます。ここはまだ政府部内で詰めきったわけではございませんが、何らかの枠組みを維持した上でやるべきであろうというようには考えております。以上でございます。

【伊藤座長】どうぞ、木村委員。

【木村委員】先ほど来の御発言の、小貫委員と田中委員の見解に基本的に賛成です。それで、やはり確かに司法試験の合格ということと研修ということが絡み合っているので、真ん中のところは、今、参事官の言われたような方向性が極めて重要かと思いますが、前の大学教授等に対する特例と大きく違うところは、前のところは、法律学の教授又は助教授の職という、そういうことが非常に明確に書いてあるのですが、ここは「法律学の教授等」となっていますね。これが割合に大事になってくるのではないかと私には思えるのですね。ですから、これは「教授等」と言った場合に、例えば講師とか非常勤講師とか、助手とかということも含めるのか、例えば教職に在った者、法科大学院で教授ではないけれども、教職に在った者となりますと、これは相当幅広く大きな特権が与えられることになるわけで、そこら辺は事務局としては、この前の教授、助教授でなくて、「等」と入れたことの背景は何だったのでしょうかということをちょっとお伺いしたいのですが。

【植村参事官】ここは「教授、助教授」と書く代わりに「教授等」と書いた趣旨でございます。ですから、現行法と変わっておりません。

【木村委員】変わってないのですか。

【植村参事官】申し訳ございません。

【木村委員】もう少し幅広く、もうちょっといろいろ、せっかく法科大学院で教えている、そういう人を含めて、司法試験を受けて受かって教員となった者はみたいにとったのですけれども、そのように「等」は読まないわけですね。

【植村参事官】提案の趣旨としては読んでおりません。教授、助教授というのは、厳格に別の世界で枠として決まっておりますので、その枠組みは維持すべきであると考えております。

【田中委員】木村委員のおっしゃった法律学等の教授というように、法律学の後に「等」を入れていただくというのも考えられます。法律学というのは、一つの学問的概念なので、参事官がおっしゃるように、融通無碍に広く理解できるかというと、逆に、やっぱり今の日弁連のように、狭めていくという傾向が出てくると思います。法学の教授と言えば、基礎法とか外国法とかも入りますけれども、「法律学」というと、そういう限定がかかってくるという問題が、少なくとも学問的な議論としてはあり得るので、私は法律学というしばりは、せめて「法学の教授」それぐらいまで広げてないと、また審査の過程で細かな、どの科目がどうのこうのという議論が蒸し返されるおそれがあると思うので、この表現は制度論としてあまり好ましくないと考えております。

【松尾委員】同感ですね。「法律学」という法律用語を使ったとしても、運用面でかなりといいますか、広く解釈した方がいいのではなかろうかということですね。ですから、今おっしゃったように、法律学という学問でなくて、法学全般というぐらいの広がりを持った解釈が望ましいと思います。それは小貫委員がおっしゃったように、司法試験に合格しているということと、研修を奨励するというような、そういう歯止めがあるわけですから、法律学という狭い範囲で解釈する必要はないのではなかろうかと感じます。

【植村参事官】複数の委員の方から御意見が出ておりますが、法制的に見ると、私としては、現行法の「法律学」という言葉をあえて変えたときに、何を入れて、何を外したのかが明確にならないと、説明ができないことになりますので、かなり難しいのではないかという気がしております。ただ、先ほど来申し上げておりますように、運用として解釈の余地がある文言であることは当然でございまして、それが変わり得ることは大いにあるであろうと。
 それと、何となく委員の皆様方の御発言をお聞きしておりますと、全て弁護士会がお決めになるかのような印象でございますが、弁護士会が資格の審査の過程で拒絶いたしますと、これは最終的には裁判所に行くわけでございますね。裁判所として、この法律を解釈して、適切な範囲を決めることになりますので、決して弁護士会だけでお決めになっているわけではないということも頭に置いていただければと思います。以上でございます。

【平山委員】高中さん、裁判で2例ぐらいありますよね。あれはどういうことでしたか。

【日弁連(高中弁護士)】この「法律学」の定義に関しては、以前東京高裁の判決がございまして、やはり実定法ないしは、これに準ずるものと、こういう解釈をいたしました。ところが最近、東京高裁で、2件ほど日弁連が負けた事件がございまして、これはまさに法律学の内容について日弁連と裁判所の解釈が違ったと、こういう例がありました。
 裁判所の方としては、この弁護士法5条3号は、大学指定法に言う大学に5年以上いれば、それは法律家としてふさわしい能力を備えていると推定した規定である。したがって、法律学の中身については、先ほど御質問ございましたように、詳細にわたって、どういった学問をやっていたのかについては問わないのだと、こういう解釈をした判例があったように記憶をしておるところでございます。したがいまして、今後、法律学としても、解釈の余地は大いにあろうかと思いますので、お二人の先生方から御提案がございましたけれども、そういう解釈論に日弁連としては変更するということもあり得るというように御回答できると思います。
 ただ、これはあくまで個人の意見でございまして、日弁連がそうするという趣旨ではございませんけれども、解釈をする余地は十分にあると、こういうお答えはできると思います。

【伊藤座長】いかがでしょうか。私自身も大学に席を置く者として、田中委員のようなお考えも共感するところがあるわけですが、他方、植村さんのおっしゃっていることも十分理解できます。最終的に裁判所まで行って争わなければはっきりしないというのでは、何とも困ったものですが、今、日弁連の方からも、個人の御発言ということでありましたけれども、はっきりそうおっしゃっていただきましたので、従来のような非常に厳格な運用からは、恐らく変えていただけるのではないかと考えますので、「法律学」という言葉を、従来よりは含みのある概念として運用されるであろうと、あるいはそうすべきだろうという、ここでの恐らく大方の御意見を踏まえた上で、事務当局の原案について御了解いただければ大変ありがたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「はい。」と声あり。)

【伊藤座長】どうもありがとうございます。
 ほかに何か、さらにこの点につきまして御意見ございますか。どうぞ、木村委員。

【木村委員】例えば研修を修了することを要件としてということで、要するに法曹資格、特に弁護士になるためには研修が要件だということになっていますですね、これははっきりと。その場合、せっかくここに日弁連の方がいらっしゃるのでお伺いしたいのは、弁護士として職業を遂行していく中で、例えば研修というのは、弁護士さんを何年か、例えばアメリカなどでは医師などは研修といいますか、単位を取って充当していかないと職業が職業として成り立たないことになってくるわけですね。ですから何かそういうような研修のシステムが、入り口で研修があって、入ったら最後ずっと研修はないのか、そこら辺のところはいかがなのでしょうか。そこら辺のところでお伺いしたいのですが。

【日弁連(木村副会長)】現行では、弁護士になると、なったときに研修を皆さんさせてもらっています。それから10年ずつ繰り返してやっていくということがあります。それは研修というのは、どの程度の期間が適正なのか、まずどういう内容かということについては、委員会の方で検討して一つの案は持っております。どのぐらいの期間で、どういうことをさせるかということについては、どこでその方がいろいろ仕事をしてきたかということとも絡むのですけれども、ほぼ合同修習と個人修習ということが基本になって進んでいくというようになると思います。

【木村委員】そうしますと、自発的なもので強制的なものではないというわけですよね、10年ごというのは、全員が受けなければいけないという。

【日弁連(木村副会長)】それは受けなければいけないのです。

【木村委員】いけないのですか。それは大変いいことだと思いますね。私は日弁連のホームページを見ていましたら、5月23日に「司法改革宣言2003」というのをやっているのですが、その中に「高い倫理と専門的能力の一層の向上を図るとともに、弁護士会が取り組んできた地域司法計画の精神に沿って司法による身近で、より役立つ、そしてより信頼される弁護士会となることによって我が国の変革の一歩を担わなければならない」、こういうことに非常にふさわしい研修を入り口のところでしていただいて、そして弁護士会自体が何年かの区切りでやっているということがもう少しはっきり出るような宣言をしたらよかったなと。例えば司法改革で、これが必要、あれが必要と言っているのですが、日弁連の中自体が研修について本格に取組んでいることがちっとも出てないような気がするのですが、その点はいかがでございましょう、副会長として。

【日弁連(木村副会長)】なかなか難しいのですけれども、あくまでも外に向かってやる宣言ですので、確かにうちの問題というのもありますし、今かなりいろいろな問題が弁護士会の中でもあります。ですから、いろいろな問題というのは、いろいろなトラブル、依頼者との間のトラブルという問題がありますので、やはり弁護士の倫理というものが非常に重要視されています。やはり高い識見とそれなりの法律知識を持ってきちんと対応していくというようなことを自分たちも研鑽していかなければいけないわけで、そういうことに対するシステム化というのですか、それは今取り組んでいるところです。また、そうしないと、弁護士の地位も危うくなるであろうと考えていますし、他業種との関係から見てみましても、やはり「法曹」と言われる内容につきましては、もっと深く研究して、位置付けをした上で制度的にもきちんとしていきたいと考えております。

【木村委員】是非それをお願いしたいと思います。今度こういう形で新しく入るときの研修をしっかりすると同時に、入ってから後の事後の研修ということも是非しっかりとやっていただいて、外側に対してもそれはやっているぞということを明確に出していただけるような方向性をこの機会に打ち出していただければ大変ありがたい。この間、ホームページ見たばかりなものですから、関連で発言させていただきました。すいません、どうも。

【伊藤座長】いえいえ。どうぞ、田中委員。

【田中委員】研修を修了することを要件とすることは、そうになったのならば、それは強いて反対しませんが、ただ、研修の中身とやる場所ですけれども、みんな東京へ出てきて研修を受けなければならないというような集中的な研修というのは、事実上それ以外のところに居住する者対する参入制限になる可能性があるので、期間によりけりですけれども、長く東京へ出てこないと申請できないということにならないように十分に配慮していただきたいと思います。既に了承された研修についても要望したいのですけれども、東京へ1カ月ほど出てこないと申請資格をとれないという制度などは、資格取った後、事後的な研修をするならばいいのですけれども、資格を取るために、例えば企業を何日か休んで出て来ないと受けられない研修とか、そういうことがないように十分御配慮いただきたいと思いますので、是非その研修の中身を検討されるときに御配慮いただきたい。

【伊藤座長】分かりました。その点、関係の方には御留意いただければと思います。
 それでは、当検討会といたしましては、事務局たたき台(案)を了解したことにさせていただきます。事務局には、本日の御意見を参考にしながら、さらに検討を進めていただきたいと存じます。
 なお、事務局から、衆議院、参議院の附帯決議を受けまして、現行弁護士法第5条2号に規定された方々につきましても、研修課程の修了を要求する方向で検討したいという説明がございましたが、この点は特に御異論がないと承ってよろしいですか。

【平山委員】是非実現していただきたいと思いますね。そうすれば、特別措置の場合のスキームが絵にかいたように大変すっきりしますね、みんな。

【伊藤座長】分かりました。それでは、関係機関タイムということで、最高裁から、去る6月9日、7月1日、7月14日と既に3回にわたって開催されました下級裁判所裁判官指名諮問委員会における審議の状況につきまして御報告をお願いいたします。どうぞ、小池審議官よろしく。

【最高裁(小池審議官)】審議官の小池でございます。私の方から簡単に御報告申し上げます。
 裁判官指名諮問委員会につきましては、当検討会でその検討状況について御報告したところでございますが、5月に規則を施行した後、委員11人を任命いたしまして発足いたしました。また、この委員会の下部組織としまして全国8カ所の高裁所在地に置かれました地域委員会の委員も任命したわけでございます。席上に御参考までに委員会委員、地域委員会委員の名簿を配布させていただきました。
 指名諮問委員会は、今、ございましたように、6月9日に第1回の会議が開催されまして、委員長には元最高裁判事で同志社大学教授の奥田委員が選任されました。その後、7月1日に第2回、7月14日に第3回の会議を開催したところでございます。9月からはいよいよ本格的に指名候補者の指名の適否に関する具体的な審議を行うわけでございますが、その前提として、3回にわたり、その指名の適否について審議するための手順、方法、いわば委員会の運営に当たって決めておかなければならない一般的事項について協議を行ったわけでございます。
 地域委員会は、中央の協議を受けまして、今月下旬、実は本日は、高松で開催されているわけでございますが、今月下旬から8月上旬にかけて各地でこの地域委員会が開かれるわけでございます。
 この指名諮問委員会の模様につきましては、大部になりますので、本日はお配りしなかったのですが、第1回、第2回のものは最高裁のホームページで議事概要、配布された資料がオープンにされております。今後、指名諮問委員会では、指名の適否の審議が個々具体的な人事にわたりますので、議論の内容は非公開、公開しないと考えておりますけれども、委員会の一般的な手続、あるいは基準に関する議事については、要旨を適宜な方法でインターネットで公開していく予定でございます。第1回、第2回は掲載いたしまして、第3回も今準備をいたしておりますので、是非ご覧いただければと存じます。
 先ほど申し上げましたけれども、委員会は9月以降、この秋、10月に採用する新任判事補の候補者、それから来年の4月期の再任候補者、あるいは弁護士から任官される方の候補者について順次指名の適否について審議していくこととなります。
 その間、各地の地域委員会も、的確な判断に必要は資料を収集するために適宜開催されていくことになっております。
 中央の委員会で、3回にわたり、非常に活発な議論が長時間、多岐にわたって行われましたので、その内容は割愛させていただきますが、資料の収集の方法、あるいは基準等につきまして、本当に活発な議論がなされたということを御報告させていただきます。
 以上でございます。

【伊藤座長】ありがとうございました。ただいまの御報告につきまして、何か御質問がございましたら、どうぞお願いいたします。

【木村委員】下級裁判所裁判官指名諮問委員会並びに下級裁判所裁判官指名諮問委員会地域委員会地域委員の名簿、なかなか大事な作業だったと思うのですが、これは見ますと、非常に苦労のあとが見えて、女性の委員の方々をなるべく入れるようにした配慮がおそらくあるかと思うのですが、地域によっては入ってない方もいらっしゃいますけれども、これはふさわしい人がいなかったとか、そういうことになるのでしょうか。

【最高裁(小池審議官)】何とも言いがたいところなのですが。

【木村委員】何とか女性を入れるような、絶対一人は、一人でも私は少ないと思うのですね。下級裁判所裁判官指名諮問委員会の方は、千葉の女性センターの方と住友生命の方がお入りですが、これだけの人数で二人というのも、ちょっとという感じがしまして、せっかく内閣には男女共同参画会議というのがございますので、なるべく女性の委員を入れるという方向でお願いしたいと思います。ふさわしい方がいくらでもいるような気がするのですが、いかがでございますか。

【最高裁(小池審議官)】この点は、最高裁で任命したわけでございますので、各高裁等から情報収集いたしまして、まさにジェンダーの関係を十分念頭に置いてその選任の検討をしたわけでございます。ただ、恐らく各国家機関でも皆そういうことは考えているわけでございますが、我が国の状況の中で、こういった会を催すときに、女性の社会進出というものの現状との相関の中でいろいろ工夫しているということでございます。御指摘の点は裁判所も十分認識しているところでございます。いろいろ御指摘もあろうかと思いますが、この委員会は永続的な委員会でございますので、今後そういった視点は常に念頭に置いて、また委員構成を考えてまいりたいと考えております。

【伊藤座長】どうぞ、松尾委員。

【松尾委員】地域委員会のメンバーを見ますと、地検の検事正、地裁の所長、全部そのようになっていますが、これは特別なお考えがあるのでしょうか。据わりがいいということだけですか。

【最高裁(小池審議官)】これは、こういった人事について、それぞれ組織に身を置いて、そういった知見を持っている方ということでございます。例えば検事正につきましては、法務省等を通じていろいろ御相談して、この委員会にふさわしい方という情報をいただいた上で選ばせていただいたということでございます。いろいろこの点、御指摘あろうかと思いますけれども、この辺につきましても、また、今後考えてまいりたいと思います。

【松尾委員】しかも全部同じような並びになっているものですから、お聞きしたわけです。

【伊藤座長】どうぞ、木村委員。

【木村委員】先ほど御説明いただきましたが、インターネットで公開されているというのは大変にいいことだと思うのですが、これは今後もそうだと思うのですけれども、こちらの地域委員会の方ももちろん原則というか、インターネットで逐次公開されるという方向は決まっているわけでございますか。それとも各個の委員会に任せている形になっているのでしょうか。

【最高裁(小池審議官)】この扱いについてもまた検討してまいりますけれども、基本的には指名諮問委員会の下部組織ということでございますので、同一の扱いをしていくことになると思います。ですので、一般的な事項につきましては、皆さんに御認識いただけるようなことにしてまいりますし、個別具体的な情報ということになりますと、オープンにするのはふさわしくないものについては公開は控えさせていただくと、そのような運用になっていくのではないかと思います。

【伊藤座長】よろしいですか。

【木村委員】はい。

【伊藤座長】特にほかにございませんか。どうも小池さんありがとうございました。若干時間の余裕がございますが、一応用意した議題は以上のとおりでございます。何か特に御発言ございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、本日の議事はこのあたりで終了したいと思います。
 次回は9月9日、午後1時30分からを予定しております。次回の議題につきましては、事務局で検討してもらうことといたしたいと思います。

以 上