第2回配布資料一覧
日弁連・最高裁配付資料---資料2
弁護士任官等に関する協議の取りまとめ
最高裁判所と日本弁護士連合会とは,裁判官の給源の多様化・多元化を図り,21世紀の我が国社会における司法を担う質の高い裁判官を安定的に確保するため,弁護士からの裁判官任官を大幅に拡大することが極めて重要であるとの基本認識の下に,任官することの魅力と任官しやすさを増し,弁護士任官制度を実効あらしめるための具体的方策について,本年4月から,おおむね月2回のペースで協議を重ねた結果,当面講ずべき措置について,以下のとおり協議が整った。
- 日本弁護士連合会の任官推薦基準及び推薦手続
日本弁護士連合会は,別紙1「任官推薦基準及び推薦手続」を策定するとともに,同記載の「推薦基準」に基づき,同記載の「推薦手続」を経ることを通じて,司法制度改革審議会が示したような多様で豊かな知識・経験と人間性を備えた裁判官となり得る資質,能力を有する弁護士が,できる限り多く裁判官候補者として推薦されるよう努めるものとし,最高裁判所はこれを了承する。
- 最高裁判所の採用手続
最高裁判所は,日本弁護士連合会から上記手続を経て任官希望者の申込書類が提出された場合には,日本弁護士連合会を通じて提出された資料,実際の訴訟活動等を通じて収集された任官希望者の法律実務家としての資質・能力等裁判官としての適格性に関する資料及びその他の資料を判断材料として,任官希望者の採否について,能力,識見,人柄等を考慮し,総合的に見て裁判官としてふさわしいか否かという観点から検討するものとし,日本弁護士連合会はこれを了承する。
なお,不採用の場合には,本人から申し出があれば,書面により,その理由を本人に対し開示するものとする。
- 日本弁護士連合会が行う弁護士任官推進のための環境整備方策
日本弁護士連合会は,弁護士が裁判官に任官しやすくするための環境をより一層整備するとの観点から,以下の方策を推進する。
(1) 各弁護士会又は弁護士会連合会に「弁護士任官適格者選考委員会」を設置し,弁護士任官希望者の推薦手続を行う体制を整備する。また,この推薦手続を継続的に行うことができるようにするために,任官希望者名簿の整備を進める。
(2) 弁護士任官に伴う事件の引継に関する支障を除去するために,今般の弁護士法の一部を改正する法律に基づく法律事務所の法人化及び共同化を進めることにより,弁護士任官を促進するための環境整備を図る。
(3) 任官に伴う受任事件の引継を円滑に行うとともに,退官後の弁護士への復帰を容易にするなどの観点から,弁護士任官希望者や弁護士任官の退官者で,特に必要のある者が在籍することができる事務所の設置,運営を促進する等,弁護士任官を推進するための制度の整備を進める。
- 最高裁判所が行う弁護士任官推進のための環境整備方策
最高裁判所は,弁護士が裁判官に任官しやすくするための環境をより一層整備するとの観点から,以下の方策を推進する。
(1) 「弁護士からの裁判官採用選考要領」を別紙2のとおり改訂する。
なお,この改訂について,最高裁判所から以下のとおりの説明がされ,日本弁護士連合会はこれを了承した。
-
- ア 従前の「弁護士からの裁判官採用選考要領」3のただし書きの関係については,平成19年3月31日までの間の任官者については,引き続き従前と同様の取扱いをするものとする。なお,その間の弁護士任官及びその受入れ側の状況によっては,この期限を更に延長するか否かについて協議する。
- イ 「弁護士からの裁判官採用選考要領」5の「採用の形態」については,本人の希望を踏まえ,積極的に取り組むものとする。すなわち,
- 短期間の任官については,本人の希望を踏まえ,積極的に取り組む。
- 倒産事件,知的財産権事件,商事事件,家庭事件等の専門的分野への任官についても,本人の希望を踏まえ,積極的に取り組む。
なお,本人の専門的識見の程度によっては,①の場合よりも短期間であっても採用可能な場合もあり得る。
- ウ 「弁護士からの裁判官採用選考要領」6(2)のただし書きについては,4月1日付けの採用を原則とするが,平成19年10月までの間は,事情によっては,例外的に10月1日付けの採用も行うものとする。この場合においては,当面は,当年1月10日までに採用申込みをした者を対象に検討するものとする。なお,その間の弁護士任官及びその受入れ側の状況によっては,この期限を更に延長するか否かについて協議する。
(2) 本年8月1日,京都地方裁判所において弁護士任官者を中心とする部を発足させたが,今後とも,弁護士任官者の配置の在り方等を工夫,改善し,O.J.T.の充実を図る。
(3) 弁護士任官者に対する研修について,より一層の充実を図る。
(4) 日本弁護士連合会から,非常勤裁判官の制度化を検討すべきである旨の考えが示され,これに対し,最高裁判所から,この構想の制度化については,憲法上の問題点等が指摘されているが,常勤の裁判官への任官を促進する機能も期待できるので,民事調停事件及び家事調停事件の分野について,いわゆる非常勤裁判官制度を導入する方向で具体的に検討を開始したい,また,その他の非訟事件についても,導入できる分野がないか研究したい旨の説明がされ,日本弁護士連合会はこれを了承した。
- 判事補が裁判官の身分を離れて弁護士の職務経験を積む制度を実効あらしめるための方策
最高裁判所と日本弁護士連合会は,判事補が裁判官の身分を離れて弁護士の職務経験を積む制度について,司法制度改革推進本部等の関係機関と協力し,司法制度改革審議会の意見の趣旨にのっとった制度設計がされ,その実施に必要な制度の整備がされるように努力する。
- 協議の継続
最高裁判所と日本弁護士連合会は,弁護士任官の推進,判事補に弁護士の職務経験を積ませる制度及び恒常的協力体制の整備等について,今後とも継続して協議する。