第2回配布資料一覧
最高裁配付資料---資料1
裁判官制度の改革に関する検討状況について(説明骨子)
1 はじめに
最高裁判所は,裁判制度を運営する国の機関として司法制度改革に関する施策を策定・実施する責務を負う立場から,政府が行う司法制度改革の推進に積極的に協力するとともに,最高裁判所が自ら行うべき施策を着実に策定・実施することにより,総合的かつ集中的に司法制度改革を推進する。
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複雑多様化,高度化が進展する21世紀の我が国社会において,裁判所が国民から負託された機能を十全に果たしていくためには,裁判官の能力及び資質を一層向上させるための制度の整備等を図る必要がある。
このような観点から,今後の我が国の社会における司法を担う高い質の裁判官を安定的に確保していくことを目指し,司法制度改革審議会の意見の趣旨にのっとって,関係機関と連携,協力を図りつつ,所要の措置等を行う。
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○ 有識者の意見等の反映
- 明日の裁判所を考える懇談会
ア 今回の司法制度改革に関して裁判所が自ら検討,実行していくべき施策について,広く各方面の意見を聴く場として,各界の有識者で構成される「明日の裁判所を考える懇談会」を事務総局に設置。本年2月25日,第1回の会合を開催。その協議内容については,最高裁判所のホームページにおいて公開予定。
イ 今後,裁判官制度の改革等の諸課題に取り組むに当たっては,この懇談会で出される意見も十分に踏まえつつ,検討を進める予定。
- 裁判官の人事評価の在り方に関する研究会
昨年,裁判所外部の有識者5名と高等裁判所,地方裁判所の裁判官2名からなる「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会」を事務総局に設置。人事評価の在り方全般について多角的に調査,検討するために,昨年9月から,月2回程度のペースで協議中。その検討の状況については,最高裁判所のホームページにおいて公開。
- 規則制定諮問委員会
裁判官制度の改革に関し最高裁判所規則を制定する場合には,その制度化の在り方について,裁判所外の有識者を交えた規則制定諮問委員会における審議,答申を踏まえて検討するなどし,また,その委員会における議事内容についてはできる限り公開するなどの配慮をする予定。
○ 日本弁護士連合会等との協議・連携
最高裁判所と日本弁護士連合会は,「弁護士任官等に関する協議会」を設置し,昨年4月から,おおむね月2回のペースで協議。これまで弁護士任官制度の推進について協議を重ねて来たが,今後,判事補が弁護士の職務経験を積む制度を実効あらしめるための具体的方策等についても協議を進める予定。
2 給源の多様化・多元化
(1) 判事補の経験の多様化について
○ 原則としてすべての判事補に裁判官の職務以外の多様な法律専門家としての経験を積ませることを制度的に担保する仕組みを整備することとし,平成15年末までに所要の措置を講ずる。
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○ 司法制度改革審議会意見
「多様で豊かな知識,経験等を備えた判事を確保するため,原則としてすべての判事補に裁判官の職務以外の多様な法律専門家としての経験を積ませることを制度的に担保する仕組みを整備すべきである。」
○ 検討に当たっての主な留意点
- 判事補が経験を積むための受入先の確保や,裁判事務処理要員を確保するための弁護士任官等の推進等が必要。日本弁護士連合会等の関係機関とも協議,連携を図りつつ検討(日本弁護士連合会との間で本年2月から協議を開始)。
- 司法制度改革審議会意見は「判事補が裁判官の身分を離れて弁護士,検察官等の法律専門職の職務経験を積むことが基本になる」としているが,判事補には任期を10年とする憲法上の保障があるので,司法制度改革審議会意見でも指摘されているように,退職手当や共済関係等の面について適切な配慮をすることが課題。立法措置が必要になる可能性が高いので,推進本部とも連携を図りながら検討する必要。
○ 今後の予定
- 第一次的には最高裁判所において検討を進め,所要の措置予定。その検討状況については,法曹制度検討会に報告予定。
(2) 特例判事補制度について
○ 特例判事補制度の計画的かつ段階的な解消に向けて,判事の増員,弁護士等からの任官の推進等の諸条件の整備の状況等を踏まえつつ,所要の措置を講ずる。
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○ 司法制度改革審議会意見
「特例判事補制度については,計画的かつ段階的に解消すべきである。このためにも判事を増員するとともに,それに対応できるよう,弁護士等からの任官を推進すべきである。」
○ 検討に当たっての主な留意点
- 特例判事補制度を計画的・段階的に解消するためには,その基盤となる判事の増員,弁護士任官等も含めた判事の充員などが必要。
- 当面は,司法制度改革審議会意見の趣旨を踏まえ,特例判事補の担当職務の在り方等について,運用の改善に向けた方策を講じていく予定。
○ 今後の予定
- 当面は,前提条件の整備状況を見据えるとともに,運用面の改善に向けた方策を講じていくため,第一次的には最高裁判所において検討を進め,所要の措置予定。その検討状況については,法曹制度検討会に報告予定。
(3) 弁護士任官の推進等について
○ 弁護士任官等を推進するため,日本弁護士連合会と協議・連携を進めることにより,その方策について継続的に検討を行い,所要の措置を講ずる。
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○ 司法制度改革審議会意見
「弁護士任官等を推進するため,最高裁判所と日本弁護士連合会が,一致協力し,恒常的な体制を整備して協議・連携を進めることにより,継続的に実効性のある措置を講じていくべきである。」
○ 検討の状況
- 最高裁判所と日本弁護士連合会は,「弁護士任官等に関する協議会」を設置し,昨年4月から,おおむね月2回のペースで,弁護士任官制度を実効あらしめるための具体的方策について協議。その結果,昨年12月7日,「弁護士任官等に関する協議の取りまとめ」のとおり合意。
- 最高裁判所における弁護士任官推進のための環境整備方策
ア 「弁護士からの裁判官選考要領」を改訂し,短期間の任官,専門的分野(倒産事件,知的財産権事件,商事事件,家庭事件等)への任官について,積極的に取り組む。
イ 弁護士任官者の配置の在り方等を工夫,改善する。
ウ 弁護士任官者に対する研修のより一層の充実を図る。
○ 今後の予定
- 弁護士任官制度により優秀な弁護士をできる限り多く判事に迎えることが,上記(1)及び(2)の各施策を推進するためにも不可欠なので,日本弁護士連合会との間で合意に至った意義は極めて大。この取りまとめに従って,弁護士任官推進策を推進していく所存。
- 最高裁判所は,この取りまとめにおいて,調停手続の分野について,いわゆる非常勤裁判官制度を導入する方向で具体的に検討を開始したい旨の説明をし,日本弁護士連合会の了承を得ており,近く,協議を開始する予定。調停手続の分野での制度化のためには立法措置が必要になると考えられるので,推進本部と連携を図りながら,検討予定。
3 裁判官の任命手続の見直し
○ 最高裁判所に,その諮問を受け,下級裁判所の裁判官として指名されるべき適任者を選考し,その結果を意見として述べる機関を設置するとともに,同機関が十分かつ正確な資料・情報に基づき実質的に適任者の選考に関する判断を行いうるよう,適切な仕組みを整備することとし,所要の措置を講ずる。
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○ 司法制度改革審議会意見
「最高裁判所が下級裁判所の裁判官として任命されるべき者を指名する過程に国民の意思を反映させるため,最高裁判所に,その諮問を受け,指名されるべき適任者を選考し,その結果を意見として述べる機関を設置すべきである。」
「同機関が,十分かつ正確な資料・情報に基づき,実質的に適任者の選考に関する判断を行いうるよう,例えば,下部組織を地域ブロックごとに設置することなど,適切な仕組みを整備すべきである。」
○ 今後の予定
- 国民の裁判官に対する信頼感を高めるとの観点に立つと,司法制度改革審議会意見にのっとって,下級裁判所裁判官の指名に関する諮問機関を設置することが適当。
- 最高裁判所の指名権の行使の在り方の一環をなす問題であるので,第一次的には最高裁判所において検討を進め,所要の措置予定。その検討状況については,法曹制度検討会に報告予定。
4 裁判官の人事制度の見直し
(1) 裁判官の人事評価制度の整備
○ 裁判官の人事評価について,可能な限り透明性・客観性を確保するための仕組みを整備することとし,平成15年末を目途に所要の措置を講ずる。
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○ 司法制度改革審議会意見
「裁判官の人事評価について,評価権者及び評価基準を明確化・透明化し,評価のための判断資料を充実・明確化し,評価内容の本人開示と本人に不服がある場合の適切な手続を設けるなど,可能な限り透明性・客観性を確保するための仕組みを整備すべきである。」
○ 検討の状況
- 「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会」において,昨年12月,「裁判官の人事評価の在り方に関する論点の整理」をまとめ,現在,その論点整理に沿って検討が進められており,今年の夏を目途に協議結果を取りまとめる予定。
○ 今後の予定
- 第一次的には最高裁判所において検討することが適当な事項なので,研究会の報告を踏まえた上で,平成15年末を目途に所要の措置予定。こうした検討状況については,法曹制度検討会に報告予定。
(2) 裁判官の報酬の進級制(昇給制)の在り方
○ 裁判官の報酬の進級制(昇給制)について,報酬の段階の簡素化を含め,推進本部における検討を踏まえ,必要な検討を行う。
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○ 司法制度改革審議会意見
「裁判官の報酬の進級制(昇給制)について,現在の報酬の段階の簡素化を含め,その在り方について検討すべきである。」
○ 検討当たっての主な留意点
- 司法制度改革審議会意見でも指摘されているとおり,裁判官の職権行使の独立性,職務の特質等を踏まえて検討する必要。
○ 今後の予定
- 裁判官の報酬の進級制(昇給制)については裁判官の報酬等に関する法律において定められていることから,推進本部と適切に連携を図りながら検討。
5 裁判所運営への国民参加
○ 裁判所運営について,広く国民の意見等を反映することが可能となるような仕組みを整備するために,家庭裁判所委員会制度の充実を図るとともに,地方裁判所においてもそれと同様の仕組みを導入することとし,所要の措置を講ずる。
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○ 司法制度改革審議会意見
「家庭裁判所委員会の充実,地方裁判所での同委員会と同様の機関の新設など,裁判所運営について,広く国民の意見等を反映することが可能となるような仕組みを導入すべきである。」
○ 今後の予定
- 現在,各家庭裁判所に家庭裁判所委員会が存在。委員は,法曹三者の他,地方公共団体関係者や学識経験者から選任。今後,司法制度改革審議会意見にのっとって,同委員会を充実させていくことを検討。
- 地方裁判所についても,家庭裁判所委員会と同様の機関の設置に向けて,所要の措置予定。
- こうした検討状況については,法曹制度検討会に報告予定。
6 最高裁判所裁判官の国民審査制度の実効化
○ 最高裁判所裁判官の国民審査制度に関し,最高裁判所裁判官のプロフィールを紹介するなど最高裁判所裁判官に係る情報開示の充実を図るための措置について検討を行う。
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○ 司法制度改革審議会意見
「最高裁判所裁判官の国民審査制度について,国民による実質的な判断が可能となるよう審査対象裁判官に係る情報開示の充実に努めるなど,制度の実効化を図るための措置を検討すべきである。」
○ 今後の予定
- 最高裁判所裁判官に関する情報の提供を更に充実させる方策について,検討予定。