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法曹制度検討会(第20回)議事概要

(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり

1 日時
平成15年9月9日(火) 13:30〜15:00

2 場所
司法制度改革推進本部事務局 第1会議室

3 出席者
(委 員) 伊藤 眞(座長)、岡田ヒロミ、奥野正寛、小貫芳信、釜田泰介、木村利人、佐々木茂美、田中成明、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)
(説明者) 稲田伸夫(法務省刑事局総務課長)
小池 裕(最高裁判所事務総局審議官)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、植村稔参事官

4 議題
(1) 検察官・裁判官の身分を離れて弁護士となった者が、検察官・裁判官に復帰した場合の、退職手当や共済関係等の面での適切な配慮
(2) その他

5 配布資料

【事務局配布資料】
○資料20−1 検察官・裁判官の身分を離れて弁護士となった者が、検察官・裁判官に復帰した場合の、退職手当や共済関係等の面での適切な配慮 検討のたたき台(案)
○資料20−2 公庫等への出向制度
○資料20−3 官民交流法による交流派遣制度
○資料20−4 たたき台案による制度の具体的概要図
○資料20−5 国家公務員退職手当法 抜粋
○資料20−6 国家公務員共済組合法 抜粋
○資料20−7 国と民間企業との間の人事交流に関する法律(官民交流法)

【法務省配布資料】
○資料 平成16年度増員要求について

【最高裁配布資料】
○資料 平成16年度増員要求について

6 議事

 議事に先立ち、事務局から、事務局配布資料20-1から20-7、法務省配布資料及び最高裁配布資料について確認がなされた。

(1) 検察官・裁判官の身分を離れて弁護士となった者が、検察官・裁判官に復帰した場合の、退職手当や共済関係等の面での適切な配慮について

ア 事務局からの説明
事務局配布資料20-1から20-7に基づき説明がなされた。
イ アの説明に対して、次のような意見交換がなされた。(○:委員、●:事務局、■:座長、△:最高裁。以下、同じ。)

○:たたき台案による制度がうまくいけばよいと思うが、官民交流法の一部改正により行う可能性はあるのか。また、官民交流法第2条第2項第5号は「法人」を対象にしているが、たたき台案は弁護士又は弁護士法人となっている。法人でない弁護士事務所も対象にできるのか。

●:たたき台案による制度は、新法によってつくることを検討している。行き先は、弁護士法人又は個人事務所を想定した条文にすることを検討している。

○:官民交流法第10条により、交流派遣職員は職務専念義務が免除されているが、たたき台案による制度も同じ条文になる予定か。

●:条文案は検討中であるが、同じ趣旨の規定を置く予定である。

○:国家公務員法第102条は適用されるのか。

●:政治的行為の制限等については、裁判所事務官又は法務事務官の身分が残るので、国家公務員法第102条が適用されるが、そのことが実のある弁護士経験の障害になるとは考えていない。

○:4点お聞きしたい。まず、司法制度改革審議会意見書(以下「意見書」という。)のいう「身分を離れて」の解釈について、事務局は、裁判官や検察官の身分を離れればよいという考えか。次に、処遇上の具体的な不利益は試算したのか。また、政治的行為の制限について、更に説明してほしい。最後に、懲戒権について、第一次的には弁護士会にあると思うが、国家公務員法による懲戒もあるので、二重の処分もあり得るのか。

●:1点目について、司法制度改革審議会において議論の焦点となり、意見の一致をみたのは、裁判官の身分を有し、裁判官の給与をもらいながらでは、弁護士事務所で経験を積もうとしても、法廷活動ができず、「お客様」になってしまうのではないか、弁護士登録をして弁護士として活動してもらうことが必要ではないか、という点にあったものと理解しており、公務員の身分を離れることに焦点を当てた議論はされていない。また、本年3月に本検討会で議論していただき、判事補から検事に転官した上での行政省庁での経験や、判事補の身分のままでの民間企業での経験や海外留学の経験も、意見書のいう「経験」に含まれるという取りまとめをいただいているところ、弁護士経験をする者以外は判事補や検事の身分を持ったままでの経験を行うものであり、弁護士経験をする場合に裁判官の身分を離れるのは、裁判官のままでは弁護士登録をして弁護士業務を行うことができないからであると考えている。意見書は、実のある弁護士経験を積むことを求めているのであり、公務員の身分が残ることによって、その点についてどのような障害があるのかという観点から考えるべきである。そして、事務局としては、公務員の身分を残したとしても、公務には従事しないし、具体的な弁護士業務について最高裁や法務大臣からの監督を受けることもないので、十分に実のある弁護士経験をすることができ、意見書の趣旨に反するものではないと考えている。2点目については、最高裁にお答えいただきたい。3点目について、政治的行為の制限は、裁判所事務官の身分を有する以上、一般の裁判所事務官と同様の政治的行為の禁止又は制限を受けることになると考えている。しかし、このことによって、弁護士業務に障害を及ぼすものではないと考えている。4点目について、弁護士法上の懲戒権と国家公務員法上の懲戒権の双方が行使されることもあり得ると考えている。しかし、国家公務員法上の懲戒処分を受ける場合として実際に想定されるのは、国家公務員としての信用失墜行為に該当する非違行為があった場合であり、例えば、破廉恥犯などの非行行為や、弁護士活動に関連して刑罰法規に該当するような場合ではないかと考えている。

△:処遇上の具体的な不利益について、様々な要素によって変動するので、試算は難しいが、現行法制度を前提として、弁護士実務経験2年後、裁判官に復帰して定年まで働いた場合で試算すると、退職手当は少なくとも約150万円の減額、共済長期(年金)は年額約9万円の減額となる。また、公務員の身分がないと宿舎に入れないという不利益もある。

○:4点お聞きしたい。まず、公務員の身分を離れた上で退職手当等の措置を講ずることが困難な理由は、公庫等への出向制度類似の制度を作ることが困難ということであったが、提案された官民交流法類似の制度も、公務に従事しないという点はいずれも同じではないか。21世紀の裁判官を育てるという国策のため、特別立法をするのだから、公務員の身分を離れる制度を検討する余地もあるのではないか。次に、弁護士業務を行う上で、公務員の身分が残ることは障害にならないか。国家賠償訴訟、裁判官の忌避の申立、検察側の違法収集証拠の排除の主張等について、何らかの制約が課されることはないのか。また、懲戒については、弁護士自治の根幹であり、弁護士会による懲戒が優先するよう手当してほしい。最後に、官民交流法では人事院職員となることとの対比からも、判事補が裁判所事務官に、検察官が法務事務官になることに問題はないか。私個人としては、意見書を素直に読むと、公務員の身分も離れるものと考えているが、これが実際には困難であるということであれば、たたき台案も検討に値すると考える。ただ、本制度では一般の弁護士が制度の受け手となるが、日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)では検討が進んでおらず、検討の時間が欲しいとのことである。日弁連では、9月19日の理事会にかけるとのことなので、ご配慮いただきたい。

●:1点目について、事務局としても、当初は公庫等への出向制度について検討したが、公庫等への出向制度は、公庫等の業務を行うことが目的であり、法律上は出向元に当然に復帰する制度とはなっていない。また、退職手当等の措置が認められるための受入先の要件が非常に厳しい。他方、官民交流法は、民間企業での経験を公務に復帰した後に生かすことを目的とし、派遣元に復帰することを前提とするものであり、派遣中も公務員の身分を保有する制度とし、退職手当等の不利益を回避している。今回の制度において公務員の身分も離れるものとすることは、公庫等への出向制度とも官民交流法とも異なる制度となり、実現は不可能であり、今回のたたき台案を提案したものである。2点目について、公務員の身分を有することによって、行うことのできる弁護士業務に制限が課され、例えば、国賠訴訟、行政訴訟、刑事事件等ができないということになっては制度をつくる意味がないと考えている。ただ、そのことを条文で書くまでもなく、現行法上、弁護士の業務にはそのような制限はないので、あらゆる業務に従事できるものと考えている。3点目について、弁護士法による懲戒と国家公務員法による懲戒とは、趣旨や目的を異にするので、法制的には優劣関係はなく、事案によっては、二重の処分もあり得ると考えている。しかし、通常の弁護士業務の過程で、国家公務員法による懲戒が実際に問題となるのは、刑事罰に触れるような場合と考えられ、運用面では、事実上第一次的には弁護士会の懲戒処分によって処理されることになるのではないかと思われる。4点目について、官民交流法で人事院職員に異動する趣旨は、各省庁と派遣先の民間企業が、いわゆる許認可関係や契約関係にある場合があり、国民から官民癒着との疑念を持たれかねないからと聞いている。また、人事院は国家公務員の中央人事行政機関であり、例えば研修なども各省庁横断的なものを所管しているので、官民交流法では、人事院職員に身分を移してから派遣しているものである。これに対し、裁判所と弁護士事務所の間には、官民交流法において人事院職員とする実質的な根拠となっている許認可関係や契約関係はない。また、三権分立の建前から、裁判所職員には国家公務員法は適用されず、裁判所職員臨時措置法により国家公務員法が準用されているが、「人事院」は「最高裁判所」、「人事院規則」は「最高裁判所規則」と読み替えられた法制となっている。したがって、裁判所事務官でなく人事院職員とすることについては、実質的な根拠がない上に、法制上も説明がつかない。検察官は行政に属する点で裁判官と異なるが、人事院職員とする実質的な根拠はなく、また、検察官という行政の中のごく限られた職種について設けるものであり、中央人事行政機関としての人事院の機能からみても、人事院職員とする相当性は低いと考えている。

○:たたき台案における日弁連の役割は何か。日弁連が弁護士事務所を募集するとなっているが、日弁連がコントロールするのか。

●:本制度を円滑に進めるためには、最高裁判所や法務省が個々の弁護士事務所と協議するだけではうまくいかず、運用面で、日弁連にも関与していただく必要がある。募集についても、弁護士事務所から情報を日弁連に集約して、最高裁判所や法務省と協議していただくことを考えている。

○:3月の本検討会で、下級裁判所裁判官指名諮問委員会において、判事補が裁判官以外の経験をすることが重要な考慮要素となることを確認するという話があったが、本制度を積極的に推進するため、新法の目的規定にそのことも規定すべきでないか。

●:法律の目的規定は、まさにその法律の目的を規定するものである。御指摘の事項は、判事補が裁判官以外の経験をすることを制度的に担保するための方策として、最高裁判所から提案され当検討会で了解していただいたものであり、本制度の法律に規定することは考えていない。

○:現行法との整合性の下では、たたき台案の方向で実現せざるを得ないと思う。現在検討されている「リーガルサービスセンター」との関係は、どのようになるのか。

●:判・検事がその身分を離れ弁護士として司法ネットの運営主体で働く場合、処遇維持を図るために公庫型をとるのか、官民交流型をとるのかについては、今後更に検討していきたい。

○:将来的には法曹三者の交流が非常に深まると思うが、現在において、本制度をどのようなものにすべきかを考えると、判事補の憲法上の身分保障からすれば、弁護士経験を強制することはできず、判事補の自主的な意思が前提となるので、退職手当の不利益等の不安要素を除去して、積極的に出て行くような制度とする必要がある。同期の判事補の間で格差が生じることのないように環境整備をして、実施してみるのがよいと思う。たたき台案が現段階でベストのものとして提案されたのであれば、本日の議論も踏まえて更に検討していただき、意見書の提言が実現するように、ひとまず実施してみるのがよいのではないか。

○:最終的にはお金の問題だと思う。公務員の身分を離れることが確かに理想かとも思うが、現実にこれが困難ということであれば、日弁連もこれを前提に検討されるのではないか。日弁連も、時間のある限度で、十分に議論していただきたい。

○:個人的には、公務員の身分を離れるのが理想的であると思うが、制度を現実に出発させるために、弁護士経験をする者が行きやすい制度とすることが必要であると思う。弁護士会としてもその辺りを検討する機会をいただくこととして、もう一度検討会を開催していただきたい。

○:公務員の身分を離れることは、理念としては尊重すべきものと思うが、これと矛盾するように見える処遇面の配慮も重要である。これをどのように制度設計するかは難しい問題であるが、弁護士実務経験の重要性や、それによる効果の大きさを考えると、何らかの制度をつくることが必要である。多くの判事補が積極的に参加する方向になるよう、受入れ側の日弁連も納得した上で実効的な制度とする必要があり、もう少し議論を重ねてよいのではないか。

○:制度の目的を実現するためには、判事補の積極的な取組みが重要であり、それには、弁護士事務所で実りある経験ができるかどうか、その職務内容がインセンティブになるかどうかが一番重要である。弁護士実務以外を経験する判事補との処遇上の差異が解消されれば、運用面はより一層スムーズになると思う。

○:住むところの問題は若い判事補にとって重要な問題と思う。日弁連がマンションを用意するくらいの大きなスケールで考えるべきではないか。

■:座長としては、日弁連に受け入れてもらわないと制度の運用はおぼつかないと考えるが、他方、スケジュールの問題もある。

○:日弁連では、9月19日の理事会で結論が出ると思われる。

●:そのようなスケジュールであれば、事務局としても結構である。

■:それでは、この議題については、次回の検討会で継続して検討し、御意見をいただくこととしたい。

(2) その他

関係機関タイム
 法務省から、法務省配布資料「平成16年度増員要求について」に基づき、また、最高裁から、最高裁配布資料「平成16年度増員要求について」に基づき、それぞれ平成16年度の検事、裁判官等の増員要求について説明があった。

(3) 次回の予定

 次回(10月21日)は、裁判官の人事評価の仕組みの整備等について議事を進める予定(なお、座長から、同日前に、「検察官・裁判官の身分を離れて弁護士となった者が、検察官・裁判官に復帰した場合の、退職手当や共済関係等の面での適切な配慮」について、臨時の検討会を開催する可能性があるとの発言があった)。

以 上