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法曹制度検討会(第21回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)

1 日時
平成15年10月3日(金) 11:00〜11:45

2 場所
司法制度改革推進本部事務局 第2会議室

3 出席者
(委 員) 伊藤 眞(座長)、岡田ヒロミ、木村利人、佐々木茂美、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)
(事務局) 大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、植村稔参事官

4 議題
(1)検察官・裁判官の身分を離れて弁護士となった者が、検察官・裁判官に復帰した場合の、退職手当や共済関係等の面での適切な配慮
(2)その他

5 議事

【伊藤座長】それでは、所定の時刻になりましたので、第21回法曹制度検討会を開会させていただきます。御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 奥野委員、釜田委員、田中委員は所用のためご欠席でございます。
 委員の交代がございましたので、事務局から紹介をお願いいたします。

【植村参事官】小貫委員には、去る9月29日付で宇都宮地検検事正に御転出されました。そこで新たに最高検の太田茂検事が当検討会委員となられましたので御紹介をいたします。ただし、本日は所用のため御欠席でございます。

【伊藤座長】それでは、事務局から資料の確認をお願いいたします。

【植村参事官】本日は事務局からの新しい配布資料はございません。御参考にしていただくために、前回配布いたしました資料20−1の検討のたたき台案、資料20−4の「たたき台案による制度の具体的概要図」を席上配布させていただいております。
 以上でございます。

【伊藤座長】それでは、本日は前回に引き続きまして「検察官・裁判官の身分を離れて弁護士となった者が、検察官・裁判官に復帰した場合の、退職手当や共済関係等の面での適切な配慮」についての議事をお願いしたいと存じます。
 そこで、前回、平山委員からの御発言もございまして、継続審議といたしましたので、改めて平山委員に意見をお伺いしたいと存じます。

【平山委員】はい、ありがとうございます。まず、今の座長のお話のように、20回の検討会で、この問題につきまして、日弁連での議論を尽くしてもらうために、是非もう一度検討の機会をいただきたい、少なくとも日弁連理事会が9月19日に開催されますので、その後に検討の機会を設定していただきたいと座長にお願いしましたところ、取り入れていただきまして、今日の検討会が開かれたことに改めて感謝をいたします。ありがとうございました。
 そこで早速でございますが、9月19日の日弁連理事会の審議の状況と結論は次のとおりでありますので、申し上げたいと思います。
 まず、第1には、司法制度改革審議会の意見書が提案している判事補の他職経験制度、これは検事の場合も一緒にお考えいただければよろしゅうございますが、この理想形態は判事補が裁判官の身分を離れるだけでなくて、公務員たる身分をも離れて、全く在野の人となり、一定の期間、弁護士になりきる制度であるとする点については会員の中には異論がございません。
 しかし、今回、この推進本部事務局から、たたき台案「資料20−1」として御提案のありました官民交流法類似の制度についても、現在の諸般の情勢下では十分検討に値するものであり、理想形態のスキームにこだわらないで受け入れるべきだという結論に至りました。これが日弁連の理事会の結論であります。
 その主たる理由は、立法におきまして、この他職経験制度が現行の憲法下での裁判官の身分の保障がある中での任意の選択制を前提といたします限りは、理想形態のスキームでは、退職金・年金などの不利益を受けることが明らかであり、その不利益をあえて乗り越えて弁護士経験を選択される方がごく少数になるおそれが高いということが一方においてあるのではないか。他方、判事補に一定の経験期間、弁護士となり当事者経験をしてもらうスキームを作って、多数の判事補にこの制度を利用していただくということは今次の裁判官改革にとって極めて大切なものではないか。ですから、それらのことを考えると、この事務局案は十分検討に値するという結論になったわけであります。
 ただし、反対の立場から、次の2点につきまして強く懸念を表明した理事がありましたので、これをお伝えいたしまして、私も同種の懸念を持ちますので、本日後ほど事務局にこの点については御回答いただきたいと考えます。
 その二つの問題点といいますのは、前回の検討会では出ておりません。前回の検討会でも松尾委員ほか、いろいろ質問していただきましたが、その中にございませんもので、第1は、官民交流法22条でございます。そこに報告義務というのがございますが、これは交流を行って帰って来られた方が報告義務を負うというものでございます。これが弁護士の秘密保持義務、弁護士法23条及び刑法134条と抵触しないかという点が1点であります。
 二つ目は、刑事訴訟法239条2項の公務員としての告発義務がうたわれております。これが弁護士の秘密保持義務、やはり弁護士法23条、刑法134条との関係でどうなるのか、この2点について強い疑問が呈されましたので、この点は後ほど御回答を賜っておきたいと、こういうわけであります。
 私は前回、疑問点だけをちょっとお聞きしましたが、私自身の個人として、今日は意見を申し上げてよろしゅうございますか。

【伊藤座長】どうぞ。

【平山委員】私は前回申し上げました質問の中でも言っておりますけど、やはり理想形態としては、判事補から、弁護士としての他職経験中は、完全に身分を離れていただいた方が、弁護士業務をこなしやすいことは明らかであると思っておりました。しかし、やはり百聞は一見にしかずと言いますから、判事補に弁護士を体験していただくというのはそれなりに極めて重要なことだと思うのです。そういう意味で、今回のスキームは非常に重要なものであると評価すべきだと思いまして、是非そういう意味では、日弁連の理事会の意見のように、この推進本部事務局のたたき台案を立法化していただくということに賛成したいと考えております。
 ただ、座長も御承知のように、二十数年前に判事補のままで弁護士事務所に行かれた交流のような制度が実施された時期があると思いますが、それが失敗に終わったと言われております。ですから、そういうことが、この公務員の身分を持って行かれる制度でもあり得るとすれば、非常に残念なことでありますので、そういう弊害が出るようでしたら、その時点で是非理想形態に向けて、新たな改正等を御検討いただきたいというのが私の意見であります。
 そして具体的な今後の立法に当たりましては、前回から松尾委員からも4点ですか、御質問がありましたし、私もいたしておりますけれども、その中で、特に私が心配いたしておりますのは、弁護士自治の根幹をなしておりますのは懲戒権であります。この懲戒権の帰属、これは恐らく前回の植村さんの御回答などでも、弁護士会も懲戒必要と判断したケースで、公務員としても懲戒必要と判断された件は、これは全然矛盾はないと思うのですが、仮に例えば法廷活動につきまして、訴訟指揮とか、あるいはいろいろなことが過去にありましたけれども、そういうところでいわば犯罪などではございませんで、法廷活動等につきまして、弁護士会はこれは懲戒は必要ないと消極な場合に、逆に公務員たる身分の方で、これは懲戒が必要ということになると、まさに大変難しい懲戒権の帰属や衝突問題がありまして、この点が非常に心配ですので、そういうことはないということで是非立法に当たりましては十分な警戒を持ってやっていただきたいと思っております。
 そして、そのほかのことでも、今回のスキームは退職金・年金などの不利益を受けさせないというところにしぼって立法されるべきであって、業務の点では障害が全くないように立法されるべきであります。弁護士としてその間十分心置きなく活動していただけると、そういうスキームになることを是非御配慮いただいて立法化していただきたい、このように思っております。私の意見でございますが、最初の質問の2点だけは是非御回答を賜っておきたいと思います。以上です。

【伊藤座長】平山委員から、日弁連理事会の結果と、それから御自身のお考えについて述べていただきましたが、その中で2点、報告義務と告発義務ですが、これについて事務局から説明をお願いします。

【植村参事官】それでは事務局からお答えをいたします。
 まず、報告義務の方でございますが、これは官民交流法22条1項に規定されております。官民交流法におきましては、「交流派遣職員は、人事院総裁から求められたときは、派遣先企業における労働条件及び業務の遂行の状況を報告しなければならない。」という規定ぶりになっております。
 このような規定が置かれた理由でございますが、一つには、そんなことはないだろうと思いますが、民間企業の方で給料を払わなければいけないのですけれども、それが遅配するとか、そういうことがもしあった場合にそれはきちんと報告をさせる必要があるので、労働条件の関係で安全を見込んで、こういう報告義務を課していると聞いております。
 それから、業務の遂行の状況というのが出てまいりますが、これは実は官民交流法12条に、一定の範囲で業務を制限している規定がございます。読み上げますと、「交流派遣職員は、派遣先企業において、その交流派遣前に在職していた国の機関、特定独立行政法人及び日本郵政公社に対してする申請に関する業務その他の交流派遣職員が従事することが適当でないものとして人事院規則で定める業務に従事してはならない。」という規定がございます。
 人事院規則でどのようなものがあるかと申しますと、これは「国と民間企業との間の人事交流」という人事院規則がございまして、同じくこれも12条なのですが、その中から一つ挙げますと、「派遣前の機関との間の契約の締結又は履行に関する業務」というものが規定されております。したがいまして、こういう業務には、民間企業に行った人もやってはいけないとなっているわけであります。したがいまして、こういうことがきちんと守られているかどうか、人事院としてもチェックする必要があるわけでございまして、そこでこういう報告義務を課していると聞いております。
 今、御説明したところからお分かりのとおり、この業務制限の関係での報告義務というのは、前回御説明いたしましたが、今回、判事補や検事が弁護士事務所に行った場合には、業務の範囲として何か制限をすることは考えておりませんので、もともとそういう報告を求める前提を欠いていると考えております。
 それから、一般的に業務の遂行の状況について、そんなことはこれもないと思うのですが、行った先で、元判事補や元検事がさぼっていては困るわけでございまして、きちんと業務に従事しているということはやはり把握しておかないといけないというようなことがありますので、今、新しい法律で似たような規定を置くかどうか検討中でございますが、平山委員から弁護士法23条の守秘義務の関係で御指摘がございました。弁護士法23条は、「弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。」という規定ぶりになっておりまして、弁護士法のこの守秘義務と申しますのは、依頼者としては一身上あるいは業務上の秘密を打ち明けて弁護士さんにいろいろな事件の依頼をするわけでございまして、それを守るということは、弁護士さんが依頼者との信頼関係を保持いたしまして、弁護士業務を行うに当たりましては不可欠のものと我々も認識しております。
 したがいまして、ただいま検討中でございますが、仮に報告業務に関する何らかの規定を置くといたしましても、当然のことといたしまして、弁護士法上の守秘義務には反しない限度でやっていただくと、こういうことになるだろうと思っております。
 それから、2点目の告発義務の方でございます。これは刑事訴訟法239条というのがございまして、これが告発についての規定でございます。告発と申しますのは、被害者などの告訴権者あるいは犯人、捜査機関、こういった人以外の人が何か犯罪があるということが気がついたときに、捜査機関に申告いたしまして、処罰を求める意思表示のことを告発と言っておるわけですが、同法239条では、まず、1項で「何人でも犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。」と書いてございます。それから2項で「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」、こういう義務規定になっておるわけでございます。
 そこで平山委員が御心配になるように、判事補ないし検事の身分はないわけですが、裁判所事務官等の身分は残っておりますので、同法239条2項の関係で告発義務があるのではないか。弁護士活動している間に、そんな義務を負っているのでは困るのではないか、こういう御趣旨だと思います。
 解釈でございますが、今申し上げましたように、条文には「官吏又は公吏はその職務を行うことにより、犯罪があると思料するときは告発をしなければならない」とございます。したがいまして、「その職務を行う」というのが何を意味しているかが問題になるわけでございまして、結論から申しますと、この職務というのは当然のことながら公務員としての職務を指しております。ここは全く異論のないところでございます。したがいまして、読み替えると、「官吏又は公吏は、その公務員としての職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」と、こういうことになるわけでございまして、今回の制度で弁護士事務所に出てまいります判事補ないし検事は、公務には従事いたしません。公務には従事しないということで、100パーセント弁護士業務に従事していただくわけでございます。
 重ねて申しますと、弁護士として行う業務を公務とみなすというような規定も置くつもりはございませんので、この点の御心配もいただかなくてよいのではないかと考えております。
 以上でございます。

【伊藤座長】平山委員いかがでしょうか、ただいまの説明は。

【平山委員】説明はよく分かりました。

【伊藤座長】よろしいですか。

【平山委員】はい。

【伊藤座長】ありがとうございました。それでは、ただいまの点について、さらに御意見のある方はお願いいたします。どうぞ、中川委員。

【中川委員】今、植村参事官が、さぼることについてのチェックをどうするのかというお話がありましたね。それとの関連で、評価、つまり2年間判事補の仕事を離れて弁護士事務所へ行くと。民間の例で言いますと、子会社へ派遣されるのと同じような感じなのです。そうした場合に、その派遣された人の評価は誰がするのかという問題がありまして、これはなかなか難しいのです。現場におるから現場の人が一番、つまり派遣先の上司が一番よく分かるのですけれども、しかし評価権というのは本社が持っておりますから、そこでどのようにするかという問題がいつも民間では出てまいります。
 裁判官の評価というのは、また裁判所の方でいろいろお考えになっているようですけど、2年間の評価というものがあるはずですよね。それは一体どういうシステムでおやりになるのか、その辺教えていただきたいと思っておるのですが。

【植村参事官】事務局といたしましては、派遣するための法的なスキームを検討してまいっておりまして、今、先生がおっしゃったような、弁護士事務所に行ったときの弁護士としての活躍状況といいますか、業務遂行状況、これをどう評価するかというのは事務局では検討しておりませんので、今現在、最高裁で何かお答えできるところがあれば、お答えいただきたいと思います。

【伊藤座長】もし何か御発言があれば。

【最高裁(小池審議官)】人事評価の問題は、裁判官として毎年人事評価をしていくという問題と、それから10年たったときの再任なり判事任官というところの問題でございますが、その両方の仕組みをどうしていくか。実は、今日の午後、人事評価に関する一般規則制定諮問委員会が開かれます。またここでも御報告いたしますが、そういった枠組みの中でその辺りの問題について、論点としては認識しておりますので、さらに検討してまいりたいと思っております。

【伊藤座長】どうもありがとうございます。そういうことで問題の所在といいますか、それはそれとして、ほかにいかがでしょうか。どうぞ、松尾委員。

【松尾委員】厳格に理想形態をどうするかというのを考えますと、私はやはり判事補、検察官の身分を離れること、それだけでなく国家公務員としての身分も離れてというのが理想形態だと考えてはおります。しかしながら、これはいろいろと御意見が出ておりますように、現実的には非常に難しい問題かと思います。
 そこで、そうした理想的な形態に固執をしていきますと、この改革審の意見書が提言している弁護士経験という制度そのものが非常に難しく不可能になるのではないかと考えざるをえないのではないかということも一面では考えざるを得ない。重要なことは裁判官の改革・検察官の改革の一つとして、弁護士の経験を経て、また現場に帰って、それを生かしていくというようなこの制度の目的からすると、それは違うだろう、そうすべき問題ではないだろうと、大局的に考えざるを得ないと思います。
 そうしますと、結局どのようにするか。事務局が提案している現在のこの案しかないのかどうか。どうもそれ以外に効果的である良い案がなさそうですし、私もそれ以上の案を持っているわけではありません。そうするとこの事務局提案を十分に検討した上で認めざるを得ないのではないかというのが結論です。
 平山委員が説明されましたように、日弁連の理事会としてもそういう考え方のようで、一応この案を認めるという方向にあるようですから、私は受け入れ側としてそういうお考えであれば、なかなか大変だったとは思いますが、そういう結論を大事にしていくこともまたしかるべしだと考えております。以上です。

【伊藤座長】どうもありがとうございます。どうぞ、ほかの委員の方、岡田委員。

【岡田委員】9月30日付けの日弁連ニュース(NO.37)の記事にも、まさに今回の問題に関して、日弁連の苦渋の結論だということともに、いろいろな懸念とか不安があるので、それを検討会で払拭する努力を引き続きすることにしてということが書いてあるのですが、これは私たちの検討会でということなのでしょうか。また、日弁連としては、どのような希望を持っていらっしゃるのか、その辺を伺いたいと思います。

【伊藤座長】先ほど平山委員が、結論とそれに付随して疑問をお話いただいたのですが、そのことですね。

【平山委員】そういうことを十分配意いただいて立法化してほしいということでございまして、例えば官民交流法の類似制度ということでございますので、この法律そのものをお使いになるのでなくて、新たに立法されるわけですから、いろいろな点で、先ほどの報告義務とかございますが、このあたりを十分、官民交流の場合とこれは本格的にかなり違いますよと。そのことを御配意いただいて立法作業をお願いしたいと思っているわけであります。例えば期間なども官民交流法では、何か原則3年以内とかいろいろ書かれておりますが、このあたりのことも、将来のこともにらんで、十分余裕のある立法をしていただきたいと思っておりまして、申し上げていることではないかと思います。

【伊藤座長】よろしいですか。

【岡田委員】はい。それでよろしいわけですね。

【伊藤座長】ほかにございませんか。どうぞ、木村委員。

【木村委員】植村参事官から大変詳しい御説明いただきまして、ありがとうございました。この新法で、先ほどの御発言の中で、業務の範囲については制限しないという一文があったかに思うのですが、業務の範囲ということになりますと、これは弁護士事務所でいろいろな事件を取り扱うことになりますが、仮に政治的な内容を含む係争事件につきましても、そのことについて、やっていいとか、いけないとかというようなことは新法には含めないということになるわけでございますね。つまり業務の範囲については一切制限しないと、そういう御趣旨でございましょうか。その点についてちょっとお伺いしたいのですが。

【植村参事官】この点は前回も問題になっておりましたけれども、弁護士法3条に、弁護士の職務についての規定がございまして、「弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異義申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。」という一般的な規定がございます。
 もちろん個別にその事件と特殊の関係があって、弁護士さんが一定の範囲でできないというケースについては、別途規定はないわけではないのですが、弁護士法の世界はそういう規定ぶりになっておりまして、そのルールで、今回判事補や検事が弁護士事務所に行ったときにも仕事をしていただきたいと、こういうことを考えておるということでございます。つまり、弁護士法に則って弁護士業務をしていただくということでございまして、それに追加して新法によって特段の業務制限をすることは考えていないと、こういう趣旨でございます。

【木村委員】重ねて関連しますが、前回(20回)の検討会のときにもちょっとお伺いさせていただいて、既に植村参事官の方からお答えをいただいているのですが、公務員としての身分は残るので、国家公務員法は原則的には適用される身分にあるということは何か新法に明記する形になるのですか、それともそのことについては特に明記しないという形になるのでしょうか。

【植村参事官】それは法律自体を見れば、裁判官については裁判所事務官になるということが出てまいりますので、そこから法律の適用関係が決まってくるわけでございまして、国家公務員法が裁判所事務官につきましては、これは実は準用なのですけれども、この間、説明しましたように、裁判所におります裁判官以外の職員に対しましては、裁判所職員臨時措置法によりまして国家公務員法が準用されることになっております。そういう法律を通じてではありますが、国家公務員法がほとんど準用されることになっておりまして、そこで国家公務員法の規制を受けることになると、こういう趣旨でございます。ですから法律の中で、そのことを特に書くわけではございません。

【木村委員】そうですか。

【伊藤座長】よろしいでしょうか。ほかにいかがですか。

【木村委員】もう一つ、関連といいますか、今、岡田委員の方からも御質問があって、平山委員からも、先ほど詳しく御説明していただきましたので、ある程度日弁連の方、この制度の非常に重要なパートナーといいますか、組織を担う当事者であるところの日弁連の理事会での決定の内容が、ここに「苦渋の選択」という形で出ているわけでございますけれども、日弁連の方のそういう選択の内容が、日弁連ニュースの37号を見ますと、これは36号参照という形で書いてあるのでございますが、日弁連の例えば何日の何回の理事会でやったということがこれでは明確でないのですね。
 その点につきまして、平山委員に御質問したいのは、先ほどの御発言の中で、何月何日の理事会でということは言っておられたのですが、もう一遍確認のために。

【平山委員】9月19日でございますね。

【木村委員】9月19日の日弁連の理事会ですね。

【平山委員】結論が出たのはですね。

【木村委員】これは正式の理事会であって、何人理事がいらして、何人の方々による賛成多数だったかということにつきましてはいかがでしょうか。

【平山委員】それは私自身は承知いたしておりませんので、もし必要でしたら、副会長が見えていますから、田中日弁連副会長。

【日弁連(田中副会長)】よろしかったら、私の方で、必要であれば。

【伊藤座長】必要があれば、後で情報提供はしますけれども、平山委員が責任持ってそうおっしゃっていることですから。

【平山委員】こちらは間違いない。

【伊藤座長】それ以上のことは、御希望があれば、人数等は木村委員にお知らせすることはできると思います。

【木村委員】そうですか。

【伊藤座長】はい。

【木村委員】これは極めて大事な事柄だと思うのですね。やはり賛成多数というのは、過半数以上ですよね。ですからそういうことで、全体的な人数ということは、平山委員としては把握していただければ大変ありがたったのですが。

【平山委員】私自身が理事会に出席はいたしていないのですよね。

【木村委員】そうですか。

【平山委員】ええ。ですからこの検討委員として出席の要請を受けていれば出ているのですけど、それはありませんので、私の方は間接的に聞いているわけでございますが、ただ、私が申し上げましたように、反対意見もあったことは、先ほどの質問、「反対の方は」と言っておりますので、全会一致でないことは間違いないと思います。それから、それまでの過程で、理想形態はこうだという点では、私がいろいろ事情を聞いた日弁連会員はほとんど全員異議がないですね。理想的にはこうではないのかという点は。ただし、それで例えば理想形態に固執していった場合に、この制度がせっかくの裁判官改革の基本的な制度として、弁護士経験を体験することが将来判事にとって非常に有益だという審議会意見を受けてのスタートに際して、むしろその障害になってしまったのでは元も子もないではないかということで、この苦渋の選択というのはそういう意味だと思います。
 この事務局でも、長い間いろいろ他の省とも折衝等もされたのだと思いますが、その中で、これしかないなということでお出しいただいておりますので、そのことを十分我々は配意して、これは進めていただく方がいいのではないかという結論になったと聞いておりまして、今、理事の数とか、何名がいて、誰がどういう発言したというのは私は分かりかねますので御容赦いただきたいと思います。

【木村委員】どなたがどういう発言したかということでなくて、これは我々が考えてきた極めて重要な制度の一方の担い手となるべき団体の賛成多数ということであれば、これはせっかくの機会ですので、検討会でもしこのことにつきまして情報提供してくださる方が本日おいでで、御発言が、座長の特別の御配慮で許されるならば、そういうことについても、我々の検討会としては情報を持っておく必要があるのではないかというのが私の意見でございますが、いかがでございましょうか。

【伊藤座長】そこは客観的事実としてどうであったかということは、また別と思いますが、検討会で日弁連の理事会の議決の在り方をここで検討するわけではございませんので、平山委員が責任持ってそうおっしゃっていますので、それを承れば、私どもとしてはいいのではないかと私は考えますが、ほかの委員の方いかがでしょうか。どうぞ、松尾委員。

【松尾委員】この問題は、正確に私は申し上げられないのですが、日弁連の中で相当いろいろな意見があったと聞いております。これは当然だと思います。弁護士あるいは弁護士会としては重要な問題であって、軽々にどちらにするとか、そういうものではないと思います。要するに、そういう意味で、平山委員も「苦渋の選択」という言葉も使われたのですが、非常に微妙な結論だったと私は推測するのですが、その問題の中身をこの検討会で詳しくどうだと議論することは必要ないのではないでしょうか。むしろ日弁連としては、十分に慎重に考えられ、数多くの判事補が弁護士を経験するという裁判官改革の大局的立場で、会内のいろいろな意見がある中でまとめられたのだろうと私は推測しております。
 そういう意味で、日弁連の苦渋の選択というものを、先ほど来から、私申し上げましたように大事にしたい、尊重したいと、こう言ってる次第であります。それでいいのではないでしょうか。

【伊藤座長】何かほかに、よろしゅうございますか。どうぞ、佐々木委員。

【佐々木委員】この前も申し上げましたけれども、この制度は、主体的に取組もうとする者が現場にかなりいるわけでございますので、その自発的・主体的な取組を後顧の憂いなくするため、条件を整備して支援する仕組みと、位置付けておりますので、日弁連の方で様々な検討を踏まえて、御疑念とかそういう問題も克服されて先ほどの回答をされたと考えております。
 したがいまして、今、松尾委員もおっしゃいましたように、この問題は、今後は、弁護士実務経験の職務内容とか、そういうものにウエイトを置いて日弁連でも議論していただきまして、さらに一層深めていただいた方が建設的なものになるのではないか、このように考えております。この場でも、より将来を見据えた方向に議論を進めていただいた方が良いのではと考えます。

【伊藤座長】どうぞ、中川委員。

【中川委員】私もそれに同じような考えなのですが、これは我が国では初めての試みですよね。それでスキーム自身、私もこれは賛成しておるのですが、運用の面でいろいろ出てくるのではないかと。何といいますか、一番懸念する点は、弁護士事務所で弁護士として働く、それに対して報酬をもらうと。つまり使用人ではないのですけれども、その弁護士事務所の職務規律に基づいて、多分その人に対する上司とか指導者とか、そういう人が出てきますよね。そういう人の話を聞かざるを得ない、指揮に服さざるを得ないという面が、これは人間の社会ですからどうしても出てきます。そこから報酬をもらっているのですから、それは弁護士事務所の利益を優先せざるを得ないという場面も出てくると思うのですね。それは非常にいいことなので、それは悪いことではないですね。それが一つの勉強でもあって、そういうものをどのように調整していくかということも大事なことですから、そのこと自体を否定するわけではないし、直視しなければいけないのですが、余りそういうことが行き過ぎますと何かちょっとおかしくなってくる。
 だから、その辺は、さっき私は「評価」という言葉で申し上げたのですが、評価だけではなくて、その人の日常のビヘイビアなり職務の態度が本当に適切かということを、これは日弁連と最高裁との間できちんと実務運用をどうするかということをお考えいただいて、密なるコミュニケーションをとっていただきたいと思います。
 これは法律でどうこうするというのは大変難しいのでできないと思いますが、お互いがやっぱりいい判事を育てようという気持ちで、運用の面に力を入れていただきたいというのが私の希望でございます。

【伊藤座長】分かりました。どうぞ。

【岡田委員】私も中川委員と全く同じで、是非お互いが信頼関係をより一層強めていただきたいと、そう思います。

【伊藤座長】分かりました。それでは、各委員から貴重な御意見、御要望をいただきまして、ただ、結論につきましては、前回、事務局から提案のありました方向でという点では御意見が一致しているように思いますので、その方向での立法化をお願いするということでよろしいでしょうか。
(「はい。」という声あり。)

【伊藤座長】どうもありがとうございます。
 それでは、本日、予定の議事はこれで終了いたしましたので、ここで終了とさせていただきたいと思います。

【日弁連(田中副会長)】座長、大変申し訳ないのですが、日弁連の副会長の田中といいますが、平山委員、岡田委員、木村委員から御質問が先ほど出ていた点で、理事会の数の問題ではないのですけれども、私自身がこの関係の責任者でして、理事会などに報告しなければならない立場あるものですから、一つだけお聞かせいただきたい点があるのです。理事会での数とかということを申し上げるつもりはありません。

【伊藤座長】先ほどの問題ですか。

【日弁連(田中副会長)】平山委員が御質問された点に関連して、ちょっとまだ御答弁いただいてない点があるのではないかという感じがするものですから、それなりの質問が理事からありましたので。

【平山委員】よろしければ是非。

【日弁連(田中副会長)】実は理事から質問がたくさんありまして。

【伊藤座長】もちろんいろいろあると思うのですが、それを私の理解では、先ほど平山委員がまとめて質問をして、それに対して事務局から回答したと理解しておるのですが、いかがですか。

【日弁連(田中副会長)】ほぼ、そうなのですが、多少その続きの点があったものですから。

【平山委員】もし違うところがあったら、私は間接ですので、直接の、機会を与えていただいたらよろしいと思いますけど、どうでしょうか。

【日弁連(田中副会長)】弁護士実務経験に絡む問題なものですから、結構そこら辺りをきちんと説明申し上げておかないと、検討会でもこうなりましたよということを是非次回の理事会などで説明しなければ私も困るなと思っておるものですから。

【伊藤座長】今、私が、前回、事務局から提案がありました方向で御承認いただきますねということでまとめましたが、その結論に影響があるような話ですか。

【日弁連(田中副会長)】全くないと思います。

【伊藤座長】そうですか。それでは、一応その点につきましては、ここで御承認いただいたということにさせていただきます。その上で、それではよろしく。

【日弁連(田中副会長)】よろしいでしょうか。

【伊藤座長】はい。

【日弁連(田中副会長)】申し訳ありませんが、お許しください。それでは申し上げますが、要するに弁護士の守秘義務と告発義務の関係の御説明が先ほど参事官からありました。その延長線上のことなのですが、弁護士として判事補さんが経験をした際に、例えば、今よく世情で問題になっているオーバーステイというのがありますね。外国人が在留期間を過ぎてなお日本に滞在して、それが犯罪だとされるわけですが、そういうオーバーステイであったことを弁護士としては、弁護士の経験しているときにもちろん知っていて、そのことについては弁護士の守秘義務がありますから、告発するという立場にはないことはいいと思うのです。これは御説明があったとおりだと思います。
 問題はその後でして、何年か先に判事補さんが裁判所に戻られますよね。そのときに、例えば、たまたま仕事の関係、あるいは何らかの関係で、なお、その当該人間がオーバーステイであるということを知った場合、その関係がどうなるのかということについて、参事官の方で御説明いただければと思っております。

【伊藤座長】あまり個別の問題は難しいと思うのですけれども。

【日弁連(田中副会長)】具体的にオーバーステイと申し上げたのでして、それはオーバーステイに限らず、一般の犯罪が続いて行われているような場合についてはあり得る話なものですから。

【伊藤座長】そこはちょっと事務局が何らかの機会に御説明、考えを述べることはあり得ないことではないかと思いますが、どうでしょうか、この場で、それについて事務局としての考えを述べるということはいかがでしょうか。

【植村参事官】ちょっと手続的なことを若干言わせていただきますと、関係機関の日弁連から直接に事務局に御質問があって、それに事務局が直接お答えするというのは想定しておらないものですから、その点の問題が一つあるような気がいたします。
 ただ、これは、そうは言っても、この場に皆さんいらっしゃるわけですから、平山委員がその点も御質問になったという御趣旨で私は考えたいと思いますが。

【平山委員】是非そうしてほしいと思います。私自身がそのことを質問していませんので、よろしくお願いします。

【植村参事官】問題は刑事訴訟法の解釈論なので、もともと私ども事務局が所管しているわけでも何でもないのですね。個人的に今の御質問に対して思いつく限度でお答えするということでよろしゅうございますでしょうか。

【日弁連(田中副会長)】はい。

【植村参事官】そういうことであるとすれば、田中副会長がおっしゃったように、継続犯の場合で、弁護士時代に何らかの弁護士としての職務に関連して知ったと。そのときには、公務との関係で知ったわけではないから、公務員としての告発義務はないと、こういう前提ですね。何年か経って裁判所に戻って裁判官をやっている過程で、そこでも職務を行うというのが要件なのですね。ですから今の御質問がどういう場合を想定されているのかちょっと考えにくいのですが、何らかの事件を担当していて、別の事件の被告人としてやって来るというような場合だとすれば、当然それは検察庁がお調べになっているはずでありまして、不法在留も何らかの刑事処分の対象になっているはずなのでちょっと考えにくい。要するにその辺を歩いて見かけたからといっても、職務上ではないものですから、直ちに刑事訴訟法239条2項の問題にはならないと思うのです。ですから、まずそこがよく分かりません。
 仮におっしゃるような、同法239条2項に触れそうな類型があったと仮定いたします。仮定した場合にはどうかといいますと、もちろん継続犯ではございますが、昔、弁護士をやっていたときには何らかのいきさつがあって、弁護士の職務上その人が在留資格がないのに日本国にいるということが分かったということだろうと思いますが、弁護士法23条は「弁護士であった者」にも守秘義務を課しており、その対象となります。何らかの理由で何年か経ってから、同法239条2項にいう職務との関連で、新たにその者が不法在留をしていることを知ることは具体的には想定しにくいのではないでしょうか。実態的にも、年月が経ちますと、事情が変わる可能性もあると思います。日本人の配偶者となった場合には、新たに在留資格が発生する場合もございます。
 どうも曖昧なお答えで恐縮でございますが、その程度でよろしゅうございますでしょうか。

【日弁連(田中副会長)】私どもも一応そのように答えたのですが。

【伊藤座長】分かりました。それでは、その点はそういうことにしたいと思います。
 次回は10月21日の午後1時30分からを予定しております。「裁判官の人事評価の仕組みの整備等」につきまして議事をお願いしたいと思います。
 どうも御多忙のところありがとうございました。

以 上