○:弁護士や検事との交流を促進し、法曹三者の流動化を反映するような報酬制度を取り入れられないか。例えば、判事補レベルでは、能力主義にしたり、あるいはどのように裁判官が評価されているのかということを、何らかの形でシグナルを出せるような仕組みはできないものか。また、国家公務員には人事院勧告の制度があるが、裁判官の場合には弁護士との報酬の差を今後どのように調整していくのか。
●:人事院勧告が出ると、国家公務員の給与法の別表の数字が、その年に出されたパーセンテージに基づいて上下する。裁判官報酬法も、それと全く同じ考え方で上下させており、現状としては人事院が行っている民間準拠の手法を前提にしていると言える。
△:裁判官の報酬も民間に準拠するということで、最高裁から立法依頼をして、法務省提出法案として裁判官報酬法が改正されている。判事の報酬水準は、一般職の国会公務員でいえば指定職のところに対応しているが、弁護士の収入を想定したとしても流動性というものの大きな障壁になるものではないと考える。そういう意味では、委員御指摘のようなことは、十分かどうかは別として、考慮されたシステム作りをしていると思う。
○:今後は、民間、行政職公務員及び弁護士の三にらみぐらいでうまく柔軟に対応していける仕組みを作ってもらいたい。
○:個人的には、法曹三者の中では裁判官が最高に頑張っていると思うし、今の報酬が高すぎるとは思わない。しかし、裁判官の職権行使の独立性に影響を及ぼさないようにすること等が審議会意見書でも言われているので、その点は十分議論していく必要があると思う。そこで、ここでの議論の進め方はどうすべきであろうか。
■:委員の間にはいろいろ意見があると思うが、それをそれぞれ開陳していただき、委員の意見がまとまるのか、あるいは多様な意見が出されるのか、それをみて判断したいと思っている。
○:結論から言って、これまでの国会の審議の流れ、特に昭和26年以降の国会の審議の流れ、あるいは国家公務員の俸給の刻みの状況又は裁判官の報酬制度がそれに準じて決められているということ、それから、キャリア制度をとっているドイツ、フランス等の諸外国の制度との比較等を考え合わせると、裁判官の進級制については、変える必要があるとは考えない。
それから、平成13年12月に公務員制度改革大綱が閣議決定されているということは、現時点である程度の結論を出したとしても、将来この大綱に基づいて公務員制度が相当変わってくるはずである。そしてこれによって、裁判官の報酬の問題も変わってくると思う。
○:裁判官の仕事の特質というのは理解できるが、一般的に外から見ると、同期の裁判官の間で20年間も全く給与が変わらないということには違和感を感じる。そのような中でも、裁判官の異動の際には何らかの差異がつけられているのではないかと考える。現実にいろいろと不満を持っている人たちは、任地を問題視しているように思う。
△:異動については,能力以外の様々な要素を考慮する必要がある。裁判官として率直に言うと、東京とか大阪の事実審の裁判長というのは夢であると思う。しかし、裁判官はプロの集団であるので、そこはまた適材適所で、持ち味を生かす人事というものがなされていると思う。
○:昨年、人事院が公務員給与の減額を勧告し、最高裁も裁判官報酬の減額を承認したが、重大な問題を含んでいた。イギリスでは、第二次大戦後、公務員の給与を減額したことがあるが、裁判官の給料には手を付けなかった。私は、裁判官の人事評価に当たっては、本日配布された最高裁一般規則制定諮問委員会関係資料の資料4(配布資料3)の別紙「評価項目及び評価の視点」にある3項目のうち、3が最も重要であると考えているが、3に掲げられた点を貫くためには、確固とした経済的な裏付けが必要である。下級裁の裁判官も憲法判断を求められる。その際、一切の圧力を排して判断を下すには、身分保障が不可欠である。一番大事なのはこの点であり、裁判官の報酬を減額したように、我が国の議論は薄っぺらなものになっている。我が国の制度は、明治以来のものであるから、我々が数時間議論してもこれを変えるような案は出てこない。やろうと思えば、公務員制度全体との関係で、別途委員会を設けて徹底的に議論するしかない。そうすれば、裁判官の報酬がどういう意味を持っているのか、国民自身が考えるチャンスになると思う。
○:裁判官の職務というものは、費用対効果とか、業績主義というものには基本的にはなじみにくいと思う。そして、政財界を揺るがすような、あるいは経済に大きな影響を与えるような大事件であろうと、少額の事件であろうと、生じた事件に対しては、公平・厳格・適正に対処していくことが求められる。また、裁判官も検察官も優秀な人だけを東京に集めるというわけにもいかない。全国の小規模地裁・地検と、東京地裁・地検というのは等価値であるから、全国に優秀な人材を配置する必要がある。そういった性質は是非御理解いただきたいと思う。
給与の画一・公平ということについては、いろいろ見方があると思うが、裁判官は皆、非常に忙しい。24時間判決のことを考えている人がほとんどだと思うので、そういう中で、若いときから1年単位で差をつけていくというのはいかがなものかという感じがする。
○:裁判官の報酬の刻みの問題はあまり気にならない。これを給与差別というのは時代おくれの話ではないか。また、司法の権威や独立性を守るためにかなり高い報酬を支払うということも構わないと思う。
民間での考え方を参考に申し上げると、大体35歳を基準にして、そこで昇給をストップする会社が多い。それは、35歳ぐらいが能力発揮の限度だと見ているわけであって、35歳から45歳ぐらいまでがいわゆる働き盛りと考え、45歳を過ぎると、もう給与はダウンさせるということが一般的に行われているやり方である。それを考えると、20年間同一の処遇というのは少し長いのではないか。人間の能力の限界というものは、裁判官であろうが誰であろうが同じではないか。法律に取り入れるのは難しいかもしれないが、考えるべきではないか。
○:裁判官にしても、検事にしても、法律上の紛争が絡む問題を扱うので、ある程度の経験の蓄積があって、だんだん熟していって、いろいろな判断ができるようになる職業であると思う。ビジネスの発想とは違うのではないか。
○:裁判官というのは最後の国家制度を支えているわけで、ここがぐらついてはどうにもならないと思う。経験の積み重ねでいい判決が出てくることも多いのではないか。だからこそ最高裁判所でいい判決が出て、それを我々は信頼している。
今、問題なのは23段階の問題であるが、例えば、判事補については、3年目、5年目、7年目で果たすべき役割も変わってくるので、そういうところで一つの段階を設けるのはどうか。判事については、最高裁判所で10年ごとの評価をして、再任をしていくことになったので、そういう新しい制度も踏まえて検討する必要があるのではないか。一番気になるのは、判事4号から3号に行くところで不満が多いと聞いている。そこをきちんと説明して、透明性を確保できれば、審議会の意見書に答えることになるのではないか。
△:それぐらいの時期には部総括裁判官になるという場面が考えられる。そこでは裁判長であるとともに、部のマネジメントをする等、司法行政的な力量というものが問われる。20年ぐらい見てくると、裁判官としての理論の切れ味のほかにも、組織的な適応力とかいうものも次第に見えてくる。そういうところを判断して差をつけるということは、国の機関の在り方として、あるいは人事の在り方として合理的なものであろうと思っている。今後、自己申告、面談、開示といった人事評価のプロセスについて透明性を持った形で運用していきたい。人事の問題をトータルのものとして考えている。
○:裁判官の報酬の段階制については、もう少しシンプルにできることがあれば、それを検討すべきではないか。
●:事務局としては、今の段階では刻みが細かすぎるのではないかという意見と伺ったが、その理由を教えていただければと思う。どういう理由で今の段階は刻みが細かすぎるのか。その刻みが細かいことによって、どういう弊害が生じているとか具体的に教えていただきたい。
○:同期がそのまま上がっていくのであれば、細かい刻みが弊害であるとは思わない。例えば裁判官であれば、3年経過すれば何がやれる、5年経過すれば何がやれる、特例がつけば何がやれる、というようなことがあるので、そういうこととの絡みで、刻みの打ち方については検討に値するのではないかという意味である。
○:刻みを大きくするか、少なくするかはポリシーの問題だと思う。それでどうなるのかということではなくて、刻みの中にどう位置付けていくかという問題であって、人事評価の透明性、公明性を確保することで、社会的な納得が得られるのではないか。進級制(昇給制)自体を議論しても仕方ないと思う。
○:審議会の意見書にある、職権行使の独立性を侵しているのではないかという問題に対しては、21年間の同一処遇は、担当事件について公正・中立に全力投球をしていける運用を形作っていると考えている。また、もう一つの職務の複雑、困難及び責任の度合いが判然としないのではないかとの問題については、ある一定の時期から以降、地家裁の部総括、高裁の部総括、あるいは所長といったところに就き、長年の職務評価が経験とともに高められてそれが評価されていき、上位の号俸を受けているということではないかと思う。それから、刻みをどうするかの問題は、公務員制度改革と密接に絡んでいるので、そこでの議論を踏まえないと、刻みを粗くするかどうかという議論はできないと考えている。
■:全体として、正反対の議論がなされたとは思わないが、具体的なところについてすべて意見が一致したとも言えないと思う。そこで、私の責任で、議事整理メモを作り、それを顧問会議に対する検討状況の報告の中で生かしたいと思うがよろしいか。
○:異議なし。