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法曹制度検討会(第22回)議事録

(司法制度改革推進本部事務局)

1 日時
平成15年10月21日(火) 13:30〜17:20

2 場所
司法制度改革推進本部事務局 第1会議室

3 出席者
(委 員) 伊藤 眞(座長)、太田 茂、岡田ヒロミ、奥野正寛、釜田泰介、木村利人、佐々木茂美、田中成明、中川英彦、平山正剛、松尾龍彦(敬称略)
(説明者) 小池 裕(最高裁判所事務総局審議官)
金井康雄(最高裁判所事務総局人事局参事官)
(事務局) 山崎潮事務局長、大野恒太郎事務局次長、古口章事務局次長、松川忠晴事務局次長、植村稔参事官

4 議題
(1)裁判官の人事制度の見直し−裁判官の人事評価について、可能な限りその透明性・客観性を確保するための仕組みを整備すること
(2)裁判官の人事制度の見直し−裁判官の報酬の進級制(昇給制)の在り方について(報酬の段階の簡素化を含む)
(3)その他

5 配布資料

【事務局配布資料】
[裁判官の人事評価についての仕組みの整備]
○資料22−1 裁判官の人事評価についての仕組みの整備 検討のたたき台(案)その1
[裁判官の報酬の進級制(昇給制)の在り方について]
○資料22−2 裁判官の報酬等に関する法律
○資料22−3 裁判官の報酬の進級制(昇給制)の在り方について(報酬の段階の簡素化を含む)・説明レジュメ
○資料22−4 裁判官の報酬の進級制(昇給制)の在り方(報酬の段階の簡素化を含む)に関する主なやりとり
○資料22−5 第90回帝国議会 貴族院議事速記録第23号 抄
○資料22−6 一般職国家公務員と裁判官(判事、判事補)の報酬の進級制(昇給制)
○資料22−7 裁判官(判事、判事補)の報酬の進級制(昇給制)の沿革
○資料22−8 12回国会 衆議院法務委員会議録 抄
○資料22−9 昭和23年、26年当時の国家公務員一般俸給表(15級制による給与制度)
○資料22−10 第31回国会 衆議院法務委員会議録 抄
○資料22−11 公務員制度改革大綱 〔平成13年12月25日 閣議決定〕抄

【最高裁配布資料】
[裁判官の人事評価についての仕組みの整備]
○資料 裁判官の人事評価制度の整備に関する検討状況について
○資料 最高裁一般規則制定諮問委員会関係資料
  ・資料1 最高裁判所一般規則制定諮問委員会議事概要(第8回)
  ・資料2 諮問事項(委員会配布資料1)
  ・資料3 裁判官の人事評価に関する規則要綱(案)(委員会配布資料2)
  ・資料4 裁判官の人事評価の概要(案)(委員会配布資料3)
  ・資料5 司法制度改革審議会意見書(抜粋)(委員会参考資料1)
  ・資料6 司法制度改革推進計画要綱(抜粋)(委員会参考資料2)
  ・資料7 裁判官制度関係法令(委員会参考資料3)
  ・資料8 司法制度改革審議会(第56回)議事録(抜粋)(委員会参考資料4)
  ・資料9 裁判官の人事評価のあり方に関する研究会報告書(委員会参考資料5)
  ・資料10 下級裁判所裁判官指名諮問委員会(第3回)議事要旨(抜粋)(委員会参考資料6)
  ・資料11 指名諮問委員会において指名の適否について判断する基準について(検討用たたき台)(委員会参考資料7)
  ・資料12 裁判官に求められる資質・能力について記載された文献等(委員会参考資料8)
  ・資料13 法曹制度検討会(第7回)議事録(抜粋)(委員会参考資料9−1)
  ・資料14 法曹制度検討会(第8回)議事録(抜粋)(委員会参考資料9−2)
 
[裁判官の報酬の進級制(昇給制)の在り方について]
○資料 裁判官報酬制度の概要と実情について

【委員配布資料】
○資料 「司法制度改革審議会意見書」と「裁判官の人事評価の概要(案)」との異同について(平山委員)
○資料 裁判官人事評価の評価権者に関する疑問と提案(平山委員)

6 議事

【伊藤座長】それでは、所定の時刻でございますので、第22回法曹制度検討会を開会させていただきます。御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 小貫委員の後任の委員となられました太田委員が御出席でございますので、御紹介を申し上げます。

【太田委員】太田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【伊藤座長】どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、議事に先立ちまして、事務局から配布資料の確認をお願いします。

【植村参事官】それでは、配布資料の確認をさせていただきます。
 本日はかなりたくさんの資料を配布させていただいております。事務局からは、「裁判官の人事評価についての仕組みの整備」の関係で、資料22−1、「裁判官の報酬の進級制(昇給制)の在り方について」の関係で、22−2ないし22−11でございます。
 それから、最高裁から人事評価の関係、報酬の関係で資料の提出がございました。
 更に平山委員から資料の御提出がありましたので御紹介をさせていただきます。
 以上でございます。

【伊藤座長】それでは、本日は、まず議事次第にございますとおり、裁判官の人事評価の仕組みの整備についての議事をお願いしたいと思います。それに続いて、裁判官の報酬の進級制の在り方についての議事をお願いしたいと、こういう順番でお願いいたします。
 早速、裁判官の人事評価の仕組みの整備の問題についての議事に入りたいと存じます。議事の進め方でございますけれども、まず、この問題につきまして、最高裁から、これまでの検討状況や一般規則制定諮問委員会、単に「委員会」とこれから申しますけれども、そこにおける検討状況全般について説明していただいて、この問題全般に関わる問題について質疑応答を行いたいと思います。
 次いで個別の事項につきましては、事務局に委員会の議事概要等に基づきまして、委員会における検討が熟してきたと考えられる事項を資料22−1のとおり整理してもらいましたので、この資料に従い、最高裁から委員会における検討状況について補足する点があれば説明していただいた上で、個別の事項に関する質疑応答や意見交換をお願いしたいと思います。
 それでは、最高裁から、裁判官の人事評価の仕組みの整備に関するこれまでの検討状況について説明をお願いいたします。どうぞよろしく。

【最高裁(金井参事官)】金井でございます。今の点につきまして、御説明させていただきます。
 お手元に配布資料といたしまして、「裁判官の人事評価制度の整備に関する検討状況について」というレジュメが配られておりますので、それをご覧いただけたらと思います。このレジュメの1ページ、「第1」のところをご覧いただきたいと思います。裁判官の人事評価につきましては、司法制度改革審議会におきまして、可能な限り、透明性・客観性を確保するための仕組みを整備すべきだと提言されているところでございます。このレジュメの1ページの下半分に書いてありますように、この審議会の意見では、その制度の整備に当たって留意すべき事項ということで、具体的に五つの点が掲げられています。
 次に資料の2ページ、「第2」というところをご覧いただきたいと思います。最高裁が昨年定めました司法制度改革推進計画要綱でございますけれども、2番目の枠内をご覧いただければと思います。裁判官の人事評価につきまして、平成15年末を目途に所要の措置を講ずる、このように定められているところでございます。この計画に基づきまして、裁判官の独立性に対する国民の信頼感を高める、こういった観点から審議会の意見に則りまして、そこで指摘されている留意点も踏まえまして、これまで裁判官の人事評価の整備に向けた検討を進めてきたところでございます。
 この検討の基本的なスタンスにつきましては、レジュメ2ページの中ほど以下に記載させていただいたとおりでございます。この案件の重要性にかんがみまして、評価の対象となる裁判官の意見を十分に聴取する必要があると考え、これまで行ってまいりました。
 それから広く各界の意見を聴取することが適当であると考えまして、後ほど申し上げますが、「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会」において調査・検討してもらいました。そのほか、今回、最高裁に置かれております「一般規則制定諮問委員会」、これは委員20人から成る委員会でございますが、そこに諮問を行いまして、現在審議をしてもらっているという状況にございます。
 これまでの最高裁における検討状況につきまして、レジュメの「第3」、3ページ以下に沿って具体的にご説明させていただきたいと思います。
 まず、「裁判官の人事評価の在り方に関する研究会」につきましては、平成13年、裁判所外部の有識者5名、裁判官2人からなる研究会が事務総局に設置されました。20回にわたり、人事評価の在り方全般について多角的に調査・検討をしてもらい、昨年7月に報告書が提出され、当検討会にもその結果を御報告したとおりでございます。今回も資料9ということでその報告書を出させていただいています。
 更に裁判官からの意見聴取の状況についても御説明させていただきたいと思います。先ほど御説明いたしましたとおり、人事評価制度の整備につきましては、評価の対象となる裁判官の意見を十分に聴取しながら検討する必要があると考えております。そこでこの点について、平成13年9月から10月にかけ、八つの高等裁判所単位で裁判官による意見交換会を開催いたしました。また昨年11月の当検討会で検討状況に関する報告をさせていただいたわけですが、その後、本年1月から2月にかけても同様に高等裁判所単位で意見交換会を開催しております。更にそういった高裁での意見交換会に先立ちまして、その前提として全国各地の裁判所で意見交換を行っております。このように様々な機会を通じまして、人事評価の在り方について、評価の対象となる裁判官から広く意見を聴取してきたところです。今回そういった意見聴取の結果なども含め、どういった案が適当なのかを検討してきたということでございます。
 それから、レジュメで「3」と記載させていただいておりますが、新たに発足した下級裁判所裁判官指名諮問委員会におきまして、本年7月、評価の基準と密接に関連する裁判官の指名の適否の判断基準の在り方について審議をしてもらいました。そこでは今回御議論いただくことになっております評価の項目ですが、その評価の項目を踏まえ、またその視点を参考にして指名の適否について判断したらどうかということを一応の方針とすることがこの委員会で了解されております。その審議の状況につきましては、今回の資料10、11ということで提出させていただいていますので、参考にしていただければと思います。また、この指名諮問委員会の関係ですが、裁判官の人事評価は、裁判官の再任の適否を判断する際の重要な資料になりますので、指名諮問委員会はいわば重要なユーザーという立場になるわけです。そこで人事評価制度の運用面については、指名諮問委員会と密接に連携を図りながら、実証的、継続的に検討していくことが適当と考えられます。10月6日に開催された指名諮問委員会においても、このような方針が確認されておりますので、今後運用面につきましては、連携を図りながら検討を進めてまいりたいと考えている次第です。
 以上のような検討を重ねまして、本年9月、一般規則制定諮問委員会に対して、裁判官の人事評価に関する規則の制定について諮問をいたしました。10月3日に1回目の会議が開催されたという経緯になっております。
 そこで、以下のレジュメの「第4」に即しまして、一般規則制定諮問委員会におきます10月3日の審議の状況について御説明いたしたいと思います。レジュメの4ページをご覧いただきたいと思います。
 まず審議の経過ですが、本日お手元に資料3として配られておりますので、それもご覧いただきたいと思うのですが、第1回の会議では、「裁判官の人事評価に関する規則要綱(案)」というものをお示ししまして、それに基づいて、その各項目について一通り協議をしていただきました。この資料3ですが、先ほど御説明した人事評価研究会の報告書、これに対する各方面からの意見、評価の対象となる裁判官の意見などを踏まえ、最高裁判所規則の規定を念頭に置きながら、事務総局で作成した資料でございます。
 また、資料4、「裁判官の人事評価の概要(案)」ですが、一般規則制定諮問委員会での審議の際の参考にしていたただくために、人事評価の全体像をお示ししようということで、枠囲みの中に規則の要綱(案)に相当する部分を記載させていただいています。それから、枠外には、人事評価制度の実施に当たり、必要となる細目的事項で通達等により定めることを予定しているものを記載してございます。これをご覧いただくことで新しい人事評価制度の全体像が御理解いただけるかと思っております。
 なお、この資料の概要(案)の枠外に、「*」を付しまして記載がされている部分が全部で4カ所出てまいります。これは一般規則制定諮問委員会の幹事の中から議論しておくべき論点として指摘があった点を記載したものです。参考にしていただけたらと思っております。
 そこで以下、こういった資料をご覧いただきながら、第1回会議での審議の結果について御説明をさせていただきたいと思います。なお、各項目の内容につきましては、後ほど各論の意見交換の冒頭で簡単に御説明させていただくこととして、ここでは審議の結果をかいつまんで御報告させていただけたらと思います。
 まず、資料4をご覧いただきたいと思うのですが、「1 人事評価の実施」の関係ですが、この概要(案)の枠囲みに記載されております規則要綱(案)の記載のとおり、取りまとめられました。枠囲みの外に人事評価の基準日であるとか、評価期間が記載されておりますが、この点についても特段の異論は出されませんでした。
 「2 評価権者」の関係でございます。この関係についても、この枠囲みの中に記載されている規則要綱(案)の記載のとおり取りまとめがされました。なお、この点については、一部の委員から、枠囲みの外に「*」を付して記載してありますように、所属する裁判所の裁判官会議又はそこから委任を受けた委員会とすべきであるという意見も述べられたわけですけれども、最終的には規則要綱(案)のとおりでよいという意見が大勢を占め、原案のとおり取りまとめられたという経緯がございます。
 次に「3 評価の基準等」にまいりますと、2ページに(1)という記載がございます。ここは主に評価項目について記載されていますが、概要(案)の枠囲みの中に記載されている規則要綱(案)の記載のとおり取りまとめられました。また、評価項目との関係で、この概要案の枠囲みの外に記載されているのですが、この資料の一番末尾をご覧いただけたらと思うのですが、「評価項目及び評価の視点」という別紙が付いてございます。ここに各評価項目について、評価する際の視点がいくつか記載されております。この評価する際の視点についても、異論がありませんでした。
 もう一度資料4の2ページに戻っていただきまして、枠囲みの外に記載されております評価結果の表示方法については、文章式のみとするのか、あるいは文章式と段階式を併用するのか、こういった点が議論になりまして、前者の意見が多かったところですが、次回委員会で検討を継続するとされております。
 次にその下(2)に記載させていただいておりますが、ここでは評価情報の把握の在り方についての部分です。この点については、この枠囲みの中に記載されております規則要綱(案)の記載内容自体については、そのとおり取りまとめられた次第でございます。ただし、裁判所外部からの情報の取扱いについては、次回委員会で継続して検討することになっております。それとの関係で、個別具体的な事項を規則要綱(案)に盛り込む必要があるのかどうかといった点についても検討を継続することになっております。
 次に、資料4の3ページの中ほど(3)でございます。ここは裁判官からの書面の提出と面談の関係が書かれているところですが、ここについても、この枠囲みの中に記載されている規則要綱(案)の記載とおり取りまとめられております。
 次に「4 人事評価の結果の開示」という関係でございます。この点についても、この枠囲みの中に記載されているとおり取りまとめられました。また、この枠囲みの外に記載してありますが、開示の申出の方法、開示の方法についても特段の異論は出されませんでした。
 次にこの資料の4ページに、「5 不服がある場合の手続」、その次のページには「6 その他」というところが出てまいります。「5」の「不服がある場合の手続」と「6」の「その他」については、次回委員会で検討を継続することになっております。
 10月3日での委員会での審議の結果は、以上、御説明したとおりでございます。
 最後になりますが、今回の新しい人事評価制度については、裁判所、裁判官にとって、未経験の新たな試みがいくつも含まれております。そういう意味で実施の段階においては、その運用について不断の検証作業を行い、そこにあらわれた問題を克服するために柔軟に対応していくことが求められると思っております。
 そこで、今回の制度の整備に当たりましては、その骨格部分に当たるところを最高裁判所の規則で定め、細目的な事項については、通達などの運用に委ねることが相当であると考えまして、今回のような制度設計をしたところです。
 その運用面については、先ほど御説明いたしましたとおり、評価結果の重要なユーザーである指名諮問委員会と密接な連携を図りながら、継続的に検討していくことを考えております。
 以上でございます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。それでは、ただいま金井さんから検討状況全般について御説明ございましたので、それに関して御質問や御意見をお願いしたいと思います。内容の個別的な事項については御説明及び質疑の時間をとりますので、全般的なことについて御意見、御質問をお願いしたいと思います。どうぞ、木村委員。

【木村委員】御説明ありがとうございました。今の検討状況について、資料に基づいて御説明いただいて大変よく分かりました。事務局総局が提出された「裁判官の人事評価制度の整備に関する検討状況について」という資料の3ページにありますが、今、御説明していただきましたように、現場の裁判官の方々とじっくりと意見交換をしていただいたということで、大変よかったと思います。報告書が出る前に、既に平成13年の9月、10月、それから出た後の本年の1月から2月にかけて意見交換会をやっていただいたということですが、意見交換は具体的にはどういう形で行われたかということが一つ。つまり文章などを含めたのか、それともフェース・トゥ・フェースで顔を突き合わせての何かの集会を開いたのか。それに参加した方々がどれぐらいのパーセントであったのかという具体的な状況、参加されない方もおられたのか、あるいは全員参加したのか。それから、もしお差し支えなければ、現場の裁判官の方々はどこに一番問題をお感じになっておられたのか、今度の人事評価に関連して、その三つについてお伺いできればと思います。

【伊藤座長】金井さんお願いします。

【最高裁(金井参事官)】具体的にどのようにしたのかというお尋ねかと思います。高等裁判所に集まってもらいまして会議を持つと、こういう形でいたしました。参加者は、地方裁判所、家庭裁判所から3名ぐらいずつ出てきていただきまして意見交換をしたということでございます。ですから、東京、大阪高裁での会議はかなりの人数になるわけです。更にこれだけではすべての裁判官をカバーすることになりませんので、先ほども申し上げたのですが、その前段階として、各地方裁判所、家庭裁判所でも、事前にプレの意見交換会をしてもらいまして、そういった成果も踏まえ、高裁に集まってきてもらい議論したということです。
 2回大きな節目がございました。最初の1回目の平成13年度の議論の中では、これから制度設計が進められていくという段階で、どういった形で制度設計をしていったらいいかというところについて主に焦点を当てて意見交換をしてもらったわけです。また、今年に入ってまいりますと、第1回の成果がありますので、ある程度見えてきているところと、それからじっくり議論してもらわなければいけないところがございましたので、そういったところについて、焦点を当てて議論してもらったということでございます。
 主な柱としては、審議会の意見書で問題提起されているところ、留意点として五つございますけれども、そういったところを中心に裁判官としてそれをどう受けとめていくのか、それを実現するためにどういうシステムにしてほしいのかというような形の意見交換をしてきたということでございます。

【伊藤座長】ほかにいかがでしょうか。どうぞ、中川委員。

【中川委員】今、金井さんから御説明ありましたように、裁判官の人事評価というのは大変なことだと思うのですね。そういう一歩を踏み出される努力をされておることにつきましては、大変貴重なことだし、今後とも本当にいい制度にしていただきたいという期待があるのですが、私も資料だけ拝見しまして、若干の御説明も聞いて全般的な印象を申し上げますと、民間の立場を非常に強く出しすぎるという御批判あるかと思いますが、全体として、どうもこれは人事評価ではないと。極論いたしますと、自己査定の何か蓄積のような感じがするのですね。それはなぜかといいますと、私たちが使っております「人事評価」という言葉の最大の要素である評価の結果を処遇に結び付けるという点がないのですね。
 人事の処遇というのはいろいろあります。これは昇任、昇格、異動、昇給、この四つが人事の処遇の基本要素なのですが、そのほかに採用とかもあるのですが、採用された後のことで申し上げますとその四つです。その四つに評価が反映されて、初めて「人事評価」という言葉が生まれてくるというのが私たちの考え方なのですね。
 これは何か漠然とそれを積み上げておいて、そういうものに反映させるおつもりだとは思うのですが、例えば給与・報酬についてどういう結び付きがあるのかというと、これはないということでありますし、それから昇格、異動、その他についても明確な結び付きはないわけですね。参考資料とするというお考えのように思われます。間違っていたら、後で御訂正ください。そういうのは私たちの感覚から言いますと評価とは言わないのです。参考資料なのです。これは文章式ですから、皆さんの自己査定をたくさん積み上げておいて、それを人事当局が参考にするのだというような感じになっております。その点が基本的に違和感があるというのが一つです。
 もう一つは、これも基本的なことなのですが、「相対評価」と「絶対評価」という言葉がございます。絶対評価というのは、しかるべき基準、ここで言いますと、先ほど御説明ありましたあるべき裁判官像はこれだということを規則でお決めになって、その裁判官像にどれだけ近いかということで評価するのが絶対評価なのですね。だから近い人が100人の裁判官のうち90人近い人がおれば、その90人の人はAと評価するわけです。
 ところが相対評価というのはそうではなくて、90人の人たちは基準をクリアーしているけれども、それを横に見ると、非常にすごい人とそうでない人がいるわけです。これは人間の社会はみんなそうです。だから、一つの基準をクリアーしていても、更にすばらしい人がいれば、その人を上に持ってきて、そうでない人を下に持ってきて評価を落とすのですね。これが相対評価と言われるものです。
 なぜ、それをするかといいますと、それはそこに競争原理が働くからなのです。絶対評価の場合は、これは競争原理は働きません。一つの基準をクリアーするかどうか、つまり個人の問題で、横の人は関係ないです。ですから競争意識は生まれない。それでは組織が活性化しない。ということで、高度成長時代は日本も絶対評価やっていたのですが、20年か15年ぐらい前から、それは一切やめました。やめてすべて今相対評価の世界になっている。それで組織の活性化、それが個々の人間のインセンティブにもなって、能力の向上にもつながる。これは本当かどうか分からないのだけれども、そういうことにマジョリティー、大多数はなっているのですね。
 今、申し上げた二つの人事評価の基本要素みたいなものがない。ないからいけないということではなくて、それは裁判官の社会といいますか、裁判官の職務といいますか、そういうものの特性からくるのだという多分御説明になるのではないかと思うのですが、基本的なところですので、分かりやすく言うと裁判官の人事評価というものはどうあるべきなのか。これは審議会もほとんど議論してないですね。それからほかのところでも議論があまりなされてないように思います。いきなり評価のプロセスとかそういうことばかり言っていまして、根本的に裁判官の人事評価というものはどうあるべきなのか。すべきなのか、すべきでないのかということも含めて最高裁はどうお考えになっているのか。きちんとお聞かせいただきたいと思っております。

【伊藤座長】ただいま中川委員からの御発言は、裁判官の人事評価の性質、これについての問題提起だったと思いますが、何かそれと関連して御発言があれば、承ってから、また金井さんにと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ、岡田委員。

【岡田委員】私、何回も読んでみたのですけど、人事評価というのが何のために評価されているのかがどうしても分からなくて、どうも今いただいた資料の中で、裁判官の再任の適否に重要な資料だと書いてあるので、そうすると転勤とか異動、その部分はあまり重要な資料にならないのかというのがどうしても理解できなかったものですから、その辺をお聞きしたいと思います。

【伊藤座長】ほかにいかがですか、今の点に関連して、どうぞ、松尾委員。

【松尾委員】今、中川委員が述べられたように、確かに民間については非常に厳しい評価というものがなされている。特に競争原理を背景にしたものであります。そういう意味で言うと、裁判官の評価というのは、「評価」という名前が使われているが、実態は民間と相当違うのではないかという感想は私も持ちますし、民間の立場から言えば、何か生ぬるいことをやっているということになろうかと思います。しかし一歩踏み込んで考えた場合に、裁判官の評価というのは民間企業の評価と全く違うのだと、全く発想も違うのだと割り切って考えれば、仕方がないなという面もあろうかと思うのです。そこの違いを最高裁が明確に御説明されないと、一般の民間の立場から言うと、違和感が残るものになるのではなかろうかと、そう考えております。

【伊藤座長】佐々木委員、どうぞ。

【佐々木委員】先ほどの木村委員の御質問に関連して発言させていただくわけですけれども、意見交換をするときに、大阪地裁では、高裁の意見交換に先立って、全員について小グループに分けてやったわけです。そのときに重点を置いてほしいと多くの裁判官が言っていたことは、裁判官のとりわけ若い人、判事10年ぐらいまでの人ですけれども、裁判官の仕事の在り方について、これをきちんと理解してもらいたいのだというところを強調していました。それが松尾委員とか中川委員とかにも申し上げておかなくてはいけないことだと思います。
 それは我々の仕事そのものが、権限については判事、判事補という具合に枠組みで同じようであるかもしれませんけれども、全国津々浦々の、どこでどういう裁判所に配置になっても、あるいはどういう職務になっても、あるときは民事執行だとか破産、色々担当職務があるわけですが、基本的には事件処理に当たり、当事者の言い分とか、材料から聞いて全力投球で当たると、こういう姿勢で裁判官はやっているわけですね、遠方の地に散って。そこのところから言いますと、裁判官の職務姿勢は、事件処理の結果、件数であるとか、あるいはそれについての社会評価というものから若干離れたところに位置して、そういうものからややスタンスを置いたところで全力で仕事をやるものであると、そういうものであることを分ってもらえないだろうかという意見が非常に強いのですね。
 そして個々人で見ますと、裁判所の規模で、大・中・小、大・中・小といったローテーションでほとんどの人が回っていくわけです。私自身も支部経験が2回ございますけれども。そこのところを押さえると、裁判官の人事評価は、ある一定期間の実績等を取り上げて、それでもって給与とか処遇に結び付けるとかするのとは性質が違うのではないか、ここを見てほしいというのが非常に強い意見でございましたので、紹介したいと思います。

【伊藤座長】それでは、ただいま何人かの委員の御質問や御意見を踏まえて、金井さんお願いします。

【最高裁(金井参事官)】最も基本的なところの御質問かと思います。どのように考えているかということですが、今の話にもいろいろ出てまいりましたけれども、裁判官の人事評価を考える際に、裁判官の身分であるとか職務の特性を十分考えていかなければいけないのではないだろうか。更にはそれを反映した裁判官人事の在りよう、こういったことも当然考えていく必要があるだろうと思っております。
 そういった観点からいたしますと、世上、評価と言われているものが短期的な視点から、各期ごとの明確なランク付けをする形で、何らかの形で効果を伴った処分ということで行われているのだろうと私どもも認識しているわけですが、そういったものではなくて、むしろ長期的視点から裁判官の適性に関する情報を提供し、それを集積していくための仕組みとして考えていくのが、先ほどのような裁判官の身分、職務の特性、人事の在りようによりふさわしいものではないだろうかと考えているわけです。
 実はこの問題につきましては、10月3日の一般規則制定諮問委員会でも議論になったところでございまして、私どもとしては、今申し上げたような形で裁判官の評価を考えていきましょうという提案について、多くの委員の理解が得られたものと受けとめているわけです。もう少し具体的に申し上げますと、裁判官人事の在りようとの関係で、どう具体的になっていくのかというところでございます。評価が問題になる場面といたしまして、裁判官の場合を考えてみますと、配置のところ、昇給のところ、判事への任命のところなどが考えられるかと思います。それぞれの場面において、評価が反映する程度については、事柄によって濃淡があるかと思っておるのですが、一切関係しないというわけではなくて濃淡があるのだろうと思います。
 そこを少し長くなりますけど、御説明させていただきたいと思うのですが、まず裁判官の配置の関係です。この関係は、裁判官を全国各地の裁判所、職務内容を異にしたり、困難度も異なるポストに裁判官を配置していくにつきましては、個々の裁判官の資質、能力、経験、実績、こういったものを考慮すべきことは当然なことだと思います。そういう意味で評価がある程度反映してくるということかと思っております。
 ただ、この配置を考える上では、他方で評価以外の、これから申し上げますような要素も考慮の対象になってくると思っております。例えば裁判所側の事情で申しますと、人的構成がそれぞれの裁判所の事件処理にふさわしい形になってこないといけないと、人的構成上の必要性がございます。それから僻地勤務の負担の公平性というようなことも考えていかなければいけないのだろうと思います。本人の任地であるとか、担当事務についての希望なども考慮していかなければいけない。家庭事情なども踏まえていかなければいけない。判事補時代につきましては、できるだけ幅広い経験をしてもらうためにということで、大規模庁、中規模庁、小規模庁の勤務経験をしてもらおうと、こういった方針の下に配置をしているわけですが、今、申し上げましたような様々な評価とは直接関係しない要素も裁判官の配置を決めていく上では重要な要素になってくるというところを是非御理解いただけたらと思っております。
 それから、評価が反映してくる2番目の人事の場面として昇給の場面が考えられるかと思います。この点でございますけれども、裁判官が高度の資格要件を備えている、それから、独立してその権限を行使しなければならない、こういった立場にあることを考慮しまして、これまで昇給の関係について運用が行われてきております。その結果、一定の号俸までは特別の事情がない限り昇給ペースに差が生じない、こういう運用になっております。ただ、そうは申しましても、非常に高い号俸については裁判官の能力、実績、就いているポスト、果たしている責任、こういったことに応じて昇給が行われる仕組みになっておりますので、そういう高い号俸については評価が影響してくるという実情もございます。
 これに対しまして判事への任命という3番目の場面になりますと、専ら裁判官としての資質、能力の面から適格性が判断されることになってまいりますので、この場面では評価がストレートに反映していくのだろうと思います。
 以上のように、裁判官に対する人事評価ですけれども、まずは適材適所の配置をするために、裁判官がいかなる適性を有しているのかを知ること、これが一つの目標になるかと思います。二つ目としましては、経験年数の長い裁判官の昇給の適否の資料になってくる。3番目として、判事への任命、再任の際に適格性を欠くものを適切に排除していくための資料として活用される。こういったことが活用される主な場面ということになってこようかと思っております。
 こういったことを考え合わせまして、裁判官について、例えば当期の業績評価が良くないからといって報酬を下げるということは、憲法上絶対に許されない仕組みになっておりますので、裁判官の場合には、我が国の多くの組織で行われているような評価制度と同じように、各期の評価を直ちに勤勉手当や賞与の額に反映させていくと、こういった仕組みは取り得ないと思っております。そこが大きな違いだろうと思っております。
 こうしたことを考慮いたしまして、裁判官の人事評価につきましては、先ほども申し上げましたけれども、長期的な視点からの裁判官がいかなる適性を有しているのかを知るための情報を主体として、情報の提供、集積のための仕組みとしていくことが適切だろうと考えている次第でございます。
 それから、中川委員から御指摘がありました相対評価、絶対評価、この問題ですが、今申し上げましたような人事の在りようを前提にした評価制度を作っていこうと考えておりまして、そうしますと裁判官が有している特徴を文章式で記述していくのが一番ふさわしいのではないだろうか。後ほどの議論でも出てまいりますが、そのように考えておりまして、その評価の上では、あるべき裁判官像を念頭に置いて情報を整理して記述していくことが大前提になるわけですが、その記述の上で、例えば当該具体的に執務をしている庁における執務環境を前提にしてよくやっているのか、そこそこなのか、まだ足りないところがあるのかというような形の評価も行われているわけでございまして、私どもが今回提案させていただいておる評価制度の下では、絶対評価オンリーで突っ走るというのではなくて、相対評価の視点も当然入ってくるのではないだろうか、ある意味では混合型になっていくのかなと考えております。

【伊藤座長】この点につきましては、まだ御意見や御質問があるかと思いますが、恐らくそれだけでも、本日の予定時間を全部使ってしまうようなことになりかねませんので、当然いろいろお考えは、これから御説明いただくような個別項目の議論する際の背景になるものと思いますので、ただいまの金井さんの御説明のような考え方に基づいて、具体的な項目ができているということは共通の御理解にしていただきまして、個別項目についての検討をお願いしたいと思います。
 それで、事務局資料22−1の順序に従いまして、検討をお願いしたいと思います。そこで、まず「1 人事評価の実施」でございますが、この事項についての委員会における検討状況につきまして、最高裁から補足することがあればお願いしたいと存じます。

【最高裁(金井参事官)】若干補足させていただきたいと思います。人事評価に関する規則を設ける際には、人事評価の実施に関する規定を置くことが考えられます。そこでお示しております規則の概要(案)の「1 人事評価の実施」では、裁判官の人事評価の目的が、裁判官の公正な人事の基礎とするとともに、裁判官の能力の主体的な向上に資することであることを明らかにしております。その上で人事評価を毎年実施するものとしております。委員会でも、この案のとおり取りまとめられました。
 具体的には枠外に記載してありますとおり、毎年一定の日に、それまでの間の1年間を対象といたしまして、評価を実施することになると考えております。
 以上でございます。

【伊藤座長】ただいま御説明ございましたように、「1 人事評価の実施」については、この資料の枠囲みの内容が原案どおり委員会で取りまとめられたようでございますが、これについては、何か御質問、御意見ございますか。どうぞ、奥野委員。

【奥野委員】先ほどの質疑にやや関連するのですけれども、人事評価の実施ということで、人事評価の意味なのですが、ここには「公正な人事の基礎とするとともに、裁判官の能力の主体的な向上」と書いてあるのですが、まず、第1にお聞きしたいのは、先ほどの金井さんの御説明だと、任免のところではかなり関係するというお話だったのですが、公正な人事というのはまず第1に任免が入っているのかどうかということです。特に、もしそれが入っているとした場合に、例えば10年間たった段階でまとめて蓄積されたものを基礎にして、多分任免の評価をされるのだと思うのですが、そうだとすると、毎年評価していったものが10年たった段階でどれだけの評価になっているのか。とりわけほかの同僚裁判官と比べてまさに相対的にどういう評価になっているのかということがかなり本人にとっても裁判所にとっても重要だと思うのですが、そういう情報がはっきり分かるような仕組みになるのかどうなのか。それが目的なのかそうではないのか、それが多分本日の後半の話にも関連すると思うので、私としてはそうであるべきだと思っているのですが、ちょっとお聞かせいただきたい。

【最高裁(金井参事官)】裁判官の場合には10年の任期でもって任命されておりまして、10年間の評価の蓄積が、今度は再任の場面でそのまま評価資料として提出され、それに基づいて審査される、こういう仕組みになっていこうかと思っております。昨年御議論いただきました指名諮問委員会という機関ができましたので、これからは新しい評価制度の下で作られた評価書面、これは委員会で再任命の適否の審査の重要な資料になっていこうかと思っております。

【伊藤座長】よろしいでしょうか。

【奥野委員】はい。

【伊藤座長】どうぞ、木村委員。

【木村委員】この資料22−1の2ページの一番下のところですが、「最終的な評価は、最高裁判所の裁判官会議によりなされることを前提として、第一次的な評価権者を明確化すべきである」というのは、最終的な評価が最高裁判所の裁判官会議によりなされることは当然明確化されているわけでございますね。そのことについても、最終的な、要するにこういう評価の内容が、最高裁判所の裁判官会議によって確認されると、そういうことになるわけですね。

【伊藤座長】木村委員、今のお話は、次に出てきます評価権者の話で御発言いただければと思いますので、そちらの方でよろしくお願いしたいと思います。

【木村委員】分かりました。

【伊藤座長】それでは、「1 人事評価の実施」自体については、ここで御了承いただいたということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、ただいま御発言もございましたが、「2 評価権者」につきまして、委員会における検討状況に関して、最高裁から、これも補足があればお願いしたいと思います。

【最高裁(金井参事官)】若干補足させていただきます。規則の要綱(案)では、人事評価は、判事、判事補についてはその所属する裁判所の長が行う。簡裁判事については所属する簡裁の所在地を管轄する地裁の長が行うとしております。これがいわゆる第一次評価権者に当たることになります。
 また、地・家裁所長が行った人事評価については、地・家裁の所在地を管轄する高等裁判所の長官がいわば第二次評価権者として、所長が行った評価について、調整、補充を行うものとしております。平素から情報を把握し裁判官全体を観察している所長や高裁長官が評価権者という役割を担うことが適当であると考えたためでございます。
 この問題につきましては、先ほど御説明いたしましたが、一般規則制定諮問委員会では、一部の委員から、資料4の1ページに「*」で記載したとおり、所属する裁判所の裁判官会議あるいはそこから委任を受けた委員会とすべきであるという意見も述べられたところですが、その御意見も評価権者の問題は最高裁判所の裁判官会議が有する評価権をだれに委ねるのが合理化かという、いわば政策決定の問題であるという点では共通の理解に立つものでございました。そして協議の結果、この規則要綱(案)のとおりでよいという意見が大勢を占めまして、そのようにまとめられた次第でございます。以上でございます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。先ほどの木村委員の御発言との関係では、ただいま金井さんから御説明があったとおり、最終的には最高裁判所の裁判官会議、これが最終的な意味の評価権者であるということを前提にして、更に具体的な制度をどう考えるかということで、この枠囲みの中のような形で取りまとめられたという経緯ですが、それについていかがでしょうか。どうぞ、平山委員。

【平山委員】関連でございますが、昨年の研究会報告書がございましたですね。これを我々の昨年の8月の第8回の検討会で、この報告書の案ではこの部分が評価権者とはなってなくて評価者ということになっているとか、いろいろな問題がありまして、もう少し御検討を願いたいということで、この検討会で注文をつけたと思うのですね。そういう意味からいたしますと、今回の先ほどの金井さんの御説明にもありますように、その後いろいろな検討をしていただきまして、評価者ではなく評価権者ということで対応されている。
 それから、あの時点では、ここの「*」に書かれているような考え方もありますので、十分この点を御検討いただきたいと申し上げていたわけですが、今回の先日の一般規則制定諮問委員会でしょうか、そこではこの結論に、評価権者としては、資料4「2」の(1)、(2)のとおりにまとめられたということでございますので、この間のいろいろな研究検討の結果がここへ出てきていると思いますので、私はこの部分についてはそのとおりでよろしいのではないかという気がいたしております。
 ただ、この前の最高裁一般規則制定諮問委員会における皆さんの議事概要を拝見しておりますと、本日私が1枚ものでこの部分に関連します資料「評価権者に関する疑問と提案」ということで、皆さんに御理解いただく意味で配布いたしておりますが、この部分を評価権者のところに付け加えていただけないかという御提案をしたい。したがって、原則この前、一般規則制定諮問委員会でお決めいただいたので結構でございますけれども、一つは、所長・高裁長官の評価はだれが行うかという問題がまだまとめられていないと思うわけです。したがって、それにつきましては、この提案のようなことを、資料4の「2」の中に(3)として入れていただくことを工夫していただけないかというのが1点です。
 2番目は、今議論になっておりましたように、木村委員もお聞きになっておりましたけれど、最高裁判所との関係が、説明はそうでございますが、この際、きちんとお書きいただいておいた方がいいのではないかということで、関連してこれも提案をさせていただきたいという意見でございます。
 なお、先ほどのところで、手を挙げませんでしたが、私の方は、本日ご提出いただいた裁判官人事評価概要(案)と司法制度改革審議会意見書との対比表を作ってみまして、この人事評価は人事の前提になるのではないか、そういうことを審議会意見書は前提にして、その前提の下に透明性・客観性というようなものを確保したい、こういう提案だと思いますので、そういう意味からいたしますと、我々がきちんと、だれでもこういう規則の下に評価されるということが分かるようにしていただきたい。説明だけではなくて、そういう要望をしたいと思います。

【伊藤座長】ただいま平山委員から、枠囲いの内容についての御異論がないことを前提に、一つは、所長・高裁長官の評価について、もう一つは、最高裁判所との関係についての御発言ございましたが、まず所長・高裁長官の評価についての認識について、事務局いかがですか。

【植村参事官】平山委員からペーパーを提出していただきまして読ませていただきました。私自身も最高裁の一般規則制定諮問委員会の議事概要を見る限りにおいて、委員がおっしゃっている点が本当に検討が熟したと言えるのかどうか、そこの点にちょっと問題があるのかなという気もいたしまして、まず、事務局といたしましては、その点について、最高裁の認識を説明していただくのがよろしいのかという気がしておりますが。

【伊藤座長】そうですか。金井さん。

【最高裁(金井参事官)】高裁長官については、この関係は、規則要綱(案)では高裁長官をそもそも人事評価の対象とはしておりません。それは資料4の「1」をご覧いただきますと、評価の対象として判事、判事補及び簡易裁判所判事について毎年評価を実施すると記載しております。
 その理由ですが、高裁長官につきまして、今般、私どもが提案させていただいていますような裁判官の人事評価と同一の観点に立った人事評価を行う必要性がそもそもあるのだろうかというようなところを議論いたしまして、その必要性は低いのではないだろうかという判断の下に高裁長官については対象にしないということで規則要綱(案)を作ってございます。
 もう一つ、所長についての御指摘がございました。この問題は、今申し上げました規則要綱(案)の第1項で判事というところが対象になっています。地裁所長、家裁所長とも身分としては判事という身分でございますので、当然評価の対象になってくるということです。ただ、所長の場合に、考えてみますと、司法行政事務を主として担っているものですから、今回の評価制度は、裁判事務を担っているものを念頭に置きながら、評価項目とか評価の視点とかいろいろ立てておりますので、そういう司法行政事務を主に担っている所長について、だれがどのように評価していくのかというようなところは必ずしもはっきりと規則要綱(案)の上で出ておりません。
 そういう意味で、一般規則制定諮問委員会では、規則要綱(案)の第1項、第2項に記載されているとおり、取りまとめたところでございますけれども、御指摘の点を含めまして、次回の一般規則制定諮問委員会でもう少し検討していただくことにしたいと思っております。

【平山委員】是非お願いしたいと思います。要するに判事の中で賄うということをおっしゃっているのか、これは所長はもう外すという意味でしょうか。

【最高裁(金井参事官)】基本的に所長も含まれるという前提で。

【平山委員】そうしますと、所長については、別に定めないと理の当然として、所長は自らが評価権者ということになって、自らを評価するだけで、ほかからのいわゆる透明性とかそういうものは確保できないということではないのかと思いますので、是非御検討いただきたいと思います。

【伊藤座長】所長につきましては、今、金井さんからも御発言がございましたが、当然含まれることを前提にして検討したいということですので、そこはよろしいかと思います。高裁長官の方につきましては、金井さんから、先ほど含めないということの理由等についての御説明がございましたが。

【平山委員】理由がよく分からなかったのですが。

【伊藤座長】もう少し御説明いただけますか。

【平山委員】高裁長官には非常に立派な方で、私はすばらしい方がいつも就いておられるのはよく承知しているのですけど、これは制度の問題ですので、仕組みだから、つまり審議会意見書の趣旨は、高い質の裁判官で、国民に説明できるもの、そして独立性ということを言っていますよね。そういう中での仕組みですから、これは最高裁判事以外は評価の対象の中に入らないと、どうしてそれを外すことになるのかというのが私の疑問です。

【伊藤座長】金井参事官。

【最高裁(金井参事官)】今回の評価制度につきましては、規則要綱(案)の第1項で、目的としては、裁判官の公正な人事の基礎とするということと、裁判官の能力の主体的な向上に資すると、この二つの目的を掲げているわけでございます。高裁長官につきまして、能力の主体的な向上に資するということはそもそも考えられるのかどうかとか、公正な人事の基礎にするというところも、それほどの必要性があるのかと、そういうことを考えまして対象外としました。

【平山委員】一応検討はされて外したということですか。

【最高裁(金井参事官)】事務総局の内部で議論いたしまして、必要性の観点から対象外にしていいのではないかという判断に至ったということでございます。

【伊藤座長】それでは高裁長官のことにつきまして、ほかの委員の方、御発言があればと思います。

【伊藤座長】では佐々木委員お願いします。

【佐々木委員】高裁長官と所長と比べますと、高裁長官の場合は、所長あるいは高裁部総括を経てなられて、その官職のいわば位置付けですね。それと今言われたような職務内容、それから見まして、今回の裁判官の人事評価に関する規則要綱(案)の第1項にあるような、こういう目的をもった枠組みで、仕切る必要はないのではないか。ところが所長の方は、多くの場合はそれから高裁部総括になって、また裁判事務に従事されるわけですので、そこの実情から申しまして違うのではないか。裁判官としての実務をこれからされるかどうかでちょっと違うのではないか。
 したがいまして、高裁長官と所長は以上の点で質が違うというところで私は理解しておったのです。

【伊藤座長】ほかの委員の方、いかがでしょうか、ただいまの論点について、何か御発言がございますか。どうぞ、奥野委員。

【奥野委員】規則要綱(案)をお聞きしたいのですけれども、一応日本の政府は民主主義ということになっていて、裁判官は一応独立していることになっているわけですが、最高裁判所の人事というのは多分政府が今のところやるわけで、政府がもし替わったときに、人事に余裕があれば、例えば最高裁の判事の序列が変わるというようなことがあって、その場合にも当然高裁の長官の人事というものが当然問題になり得るわけですね。例えばですが、そういうときに本当は政治的な理由なのだけれども、したがって、高裁の長官に関して、本来は独立性を考えると手をつけられないのだけれども、こういうことはあってはならないことでしょうけれども、高裁長官の能力であるとか資質であるとかということを理由として免職をするようなことが起こり得るわけですね。
 そういうことを担保する仕組みは何かお考えになっていらっしゃるのでしょうか。今のままだと、そこは非常に弱いような気がするのですが。

【伊藤座長】どうぞ、金井さんお答ください。

【最高裁(金井参事官)】高裁長官につきましても、内閣として任命権を行使するについては、最高裁判所が指名した者の名簿に基づいて任命していくという仕組みがとられておりまして、その意味では、判事、判事補と同じ仕組みになっています。ですから、まずは最高裁判所側でこの人が高裁長官にふさわしいかどうかというところが審査されて、その上で指名名簿に載り、内閣が任命していくと、こういうことで動いていきます。
 他方では、その免官の方ですけれども、やはり任期10年の身分保障を持っておりすので、その人を高裁長官から外すためには、弾劾裁判とか特殊な仕組みの下でなければ罷免されないことになっております。

【奥野委員】配置転換ということはないということですか。要するに高裁長官は、判事はそのままなのだけれども、高裁長官から別のポストに就くことはないのですか。

【最高裁(金井参事官)】高裁長官という官への任命権は内閣が持っていまして、次にどこの高等裁判所の長官として仕事をしていただくかというのは最高裁判所が決めていくという仕組みになっておりますので、今の政治との関係で問題は起きないと思っております。

【伊藤座長】例えば、現にある高裁長官の方が別の高裁長官に移るということはあり得るわけですね。奥野委員の御質問は、そういう場合に一定の人事評価的な資料が、意味があるのではないか、そういう御趣旨だと思います。

【奥野委員】そういうことです。

【最高裁(金井参事官)】そういう観点からまいりますと、高裁長官の司法行政事務についての力量については、それは直接最高裁判所が十分に把握できる事柄でございますので、今検討しているような評価制度をそのままの形で高裁長官に当てはめることは必要ないのだろうと思っておりますが。

【奥野委員】まさに公正な人事ということのために、ある種の説明責任のためにこういう仕組みを作ろうというお話なのではないかと私は理解していたのですが、今の金井さんの御返事だと、高裁長官の異動に関しては、最高裁は分かっていることだからアカウンタビリティーは要らないという御趣旨のお返事のようにも聞こえたのですが、誤解でしょうか。

【最高裁(金井参事官)】要するに補職といいますか、どの庁で勤務していただくかの情報収集をどういう形でやっていくかということだろうと思います。高裁長官というのは最高裁判所に非常に近いところで日々の司法行政事務をやっておりますので、高裁長官の司法行政事務の実情は、最高裁にかなり直接的な形で情報として入ってくるということもございますので、評価制度を整備するという必要性は低いのではないかと思います。

【伊藤座長】どうぞ、中川委員。

【中川委員】参考にしていただきたいのですけど、企業で言いますと、役員というのは、要するに一般従業員の評価制度にのらないのですね。今の議論は、役員はだれが評価しているかという問題と似ているのです。これはマーケットが評価しているのです。要するに会社の成績が悪くなり株価が落ちればやめざるを得ない。それと期間2年でしょう。それを今1年に短縮する会社も出ていますから、とにかく悪ければ次は再任しないという形で評価している。そういうものがないですね、裁判所の場合は。マーケットというのはありませんし、国民が直接評価するわけでもないし、任期は長い。だれも評価しないというのはこれはばかな話ですね。人間である以上はだれかに評価されるべきですね。天皇陛下ぐらいではないですか、評価しなくていいのは。ですから、それはだれかが何かの形で評価すべきだと思います。ただ、今社会が特殊ですから、何か全く新しい発想でそこのところは考えざるを得ないなと私は思いますけれども、一般の評価制度をそこへ持ってくるのはちょっと無理。事務の内容も違いますし、それは無理だと思いますから、という感じがします。

【伊藤座長】どうぞ、木村委員。

【木村委員】先ほどのところの続きですけれども、資料4の1ページ、「評価権者」のところで、(1)に「人事評価は」となっていますね。(2)がその人事評価をまた調整及び補充を行うと書いてあるのですが、本来ならここに最終的な評価が最高裁判所の裁判官会議でなされるということを書いておいた方が明確化する。そういう意識でこれは作られているわけですね。ですから、それは明確になっていると恐らく思うのですけれども、この最初の方の、これはどなたかの発言かと思いますが、資料1の7ページを見ますと、これは皆さん方の議論の中で出てきたことだと思いますが、7ページの下の「●」のところは、「下級裁の裁判官の人事権は最高裁の裁判官会議にあり、その意味で評価権限も最終的には最高裁の裁判官会議にある。この権限を規則により最も適切な者に委任するということである」ということで、この枠組みが出てきたとすると、大事なところが抜けていることになってしまって、1番と2番はいいのですが、評価権者の一番大事な、もとのところが抜けているのではないかという印象を持つのですが、いかがでございましょうか。

【伊藤座長】ちょっと待ってください。そこは次に議論しますので、高裁長官についての評価については、金井さんからの御説明は承りましたが、いろいろここでの御意見もございましたので、少し委員会で検討していただいたらいかがでしょうか。そういうことでよろしければ、その点はそうしたいと思います。
 それから、ただいま木村委員の御発言、先ほどの平山委員の御発言の2番目の方、最高裁の裁判官会議の権限との関係を明らかにする必要があるのではないかという点については、金井さんいかがでしょうか。

【最高裁(金井参事官)】特に、平山委員から具体的な御提案も資料「裁判官人事評価の評価権者に関する疑問と提案」の2(2)にいただいておりますので、委員会で検討させていただきたいと思っております。ただ、裁判官の人事に関しましては、指名の場面であるとか、配置の場面であるとか、昇給の場面であるとか、いずれも法令に根拠規定が設けられているところでございますので、それとの関係をどう考えていくかという問題もあるかと思いますけれども、委員会でまた御指摘の点も含めまして検討していただきたいと思います。

【太田委員】よろしゅうございますか。

【伊藤座長】所長の関係ですね。

【太田委員】それにも関係するのですが、今のやりとりで。

【伊藤座長】先に太田委員お願いします。

【太田委員】私も最初の参加で基礎的なことも含めて、意見というより質問になるかと思うのですけれども、先ほど木村委員がおっしゃった最高裁の裁判官会議との関係等も含めて、この評価ということの意味が、基本的にどういうことなのだろうか。例えば地裁なら地裁、高裁なら高裁で最終的に裁判官会議が決める評価案みたいなものを毎年作って承認をいただくと、そういうことが、狭い意味での人事の第一次判断権者を委ねるという趣旨なのか、それとも長期にわたっての昇給の判断や組織での指導的な立場につくべき人を選別するため、情報を集める作業としては毎年ですけど、長年にわたって、正確性のある情報を的確に収集して取りまとめて蓄積していくと。そういう情報の取りまとめや蓄積としての要素が強い意味での評価ということであるのかどうか。ここをよく整理しないと、平山委員の資料にございますように、地裁の所長をだれが評価するのかということとも関係してくるように思うのです。もし前者のような意味でしたら、まさに自分自身の評価案を自分でAと決めるというようなことであればこんなお手盛りのばかなことないですよね。しかし、もし所長についても、何らかのきちんとしたルートで、所長に関する内外のいろいろな積極、消極のいろいろな意見、情報がきちんと上に伝達する仕組みが作られているのであれば、そこは前者のような、いわば第一次評価の勤務評定案を自分自身のお手盛りで作るというようなおそれを含んでいないことになりますので、その辺を最高裁がどう考えておられるのかをお聞かせ願えればと思います。

【伊藤座長】金井さん、お願いします。

【田中委員】私も質問です。

【伊藤座長】どうぞ、田中委員。

【田中委員】具体的な人事と人事評価を切り離してやろうとしておられるのは分かるのですが、そうすると評価はどの段階で確定するものと理解されていらっしゃるのか。例えば不服申立てなどについて、どの段階でどういう形でやるのかという点がどうもはっきりしないので、今、太田委員の質問されたこともそれに関係すると思います。切り離せば切り離すほど、評価は評価として裁判官会議で確定され、それと具体的な人事と切り離されていくというプロセスを押さえておかないと、つかず離れずの関係のままでは、今の地裁の所長さんの例のような問題がはっきりしなくなってくる感じがします。太田委員の質問と基本的には同じ趣旨です。

【伊藤座長】金井さんお願いします。

【最高裁(金井参事官)】非常に基本的なところだと思います。繰り返しになるところもございますけれども、こう考えております。裁判官の人事評価権限ですけれども、これは最高裁が持っている人事権の一部をなすものとして最高裁判所に評価権限が帰属しているのだろうと思うわけですが、この評価権限を最高裁自らが行使して、具体的に個々の裁判官、全国各地に勤務している個々の裁判官について、最高裁自らが評価していくというのは、これは到底不可能だろうと思われます。ですから結局は最高裁自身が持っている評価権限をいかに実行するかということを考えてみた場合には、評価の事務を誰かに委ねまして、そこで評価をしてもらわざるを得ないだろうと思うわけです。誰に委任したらいいかということが問題になりまして、今回、合議体でそういった評価を取りまとめてもらうのは不適切だろうということで、所長、長官、こういったことを考えたわけであります。
 本来、評価権限を持っている最高裁判所の裁判官会議が規則という形で、そういう委任の関係をはっきりと明確化すれば、最終的に最高裁判所が持っている評価権限に基づく評価制度というものが作り上げられるのではないかと、理屈の上では、今申し上げたようなことを考えまして、この制度設計をしているわけでございます。
 実際にも全国3000人ぐらい裁判官がいるわけですけれども、その個々の裁判官について、直接最高裁判所が情報を把握して評価をしていくというのは非常に非現実的ですので、そのような仕組みを仮に作ったとしても、それは非常に形式的なものにすぎるだろうと思っているわけです。
 そうしますと、そういう制度の下で具体的にどういう手順で評価がされていくかということですが、流れを申し上げますと、例えば地方裁判所、家庭裁判所に属している裁判官について申し上げますと、所長による評価書面が作成され、その上で高裁長官がその評価について調整・補充をすると。更に後ほど議論していただくことになると思いますが、開示であるとか不服の手続がとられて、それらの手続が完結した段階で評価の内容が確定するのだろうと思っています。
 そういう形で評価の内容が確定いたしましたら、それが高裁長官から最高裁にその評価書面が提出されて、それが最高裁における人事決定のための資料として利用されていくと、こういう流れになっていくのだろうと思っております。
 平山委員からは、それが司法制度改革審議会の意見との関係で問題があるのではないかという御指摘もあろうかと思うのですが、司法制度改革審議会における審議におきましても、現実に最高裁の裁判官会議で個々の裁判官についてすべて評価決定をすべきであると、こういった議論がされていたわけではございませんで、理論上今申し上げたような形で考えられることを前提にいたしまして、第一次的な評価権者を明確化すべきであるとされているところでございます。ですから今回の制度設計におきましても、最高裁の持っている評価権限を前提にしまして、第一次的な評価権者を地・家裁の所長にしましょうといった仕組みを考えているものですから、私どもとしては審議会の意見の趣旨に合致しているのだろうと思っています。

【平山委員】金井さんのおっしゃることがそのとおりだということを裏付けるようにきちんとしておいたらどうでしょうということを言っているわけでございますね。審議会意見書も、最高裁が最終的な権限は持っていると。一次的な評価権者としてだれかを明確にしたいと、こう言っているわけですから、そのとおりやりましたよということをやっていただければ非常に明確になるのではないかという意味でございます。
 きょう対比表を出しておきましたけれども、違うのか違わないのかも分からないということでは非常に明瞭性がないものですから、それははっきりされたらどうでしょうということを申し上げています。

【伊藤座長】それでは、最高裁との関係については、ただいま何人かの委員からの御発言を踏まえて、この点ももう一度御検討いただくということでよろしいでしょうか。

【松尾委員】ちょっとよろしゅうございますか。この評価についての最高裁の裁判官会議と、地・家裁の所長あるいは高裁長官との関係についてお尋ねします。最終的には最高裁の裁判官会議に裁判官の評価権限があるわけですが、実際には評価の情報収集はできない。だから、所長や長官に委任するというようなことですね。そうするとそこに法的効果として裁判所の所長や長官に法的な効果があるのかどうか。事務処理的なことだけが長や長官に委ねられるのであって、全く法律上の問題はないのかどうかということを確認したいと思います。その辺について御説明願いたい。

【伊藤座長】松尾委員がおっしゃる事務処理というのは情報収集というようなことですか。

【松尾委員】委任された単なる情報収集をして、評価事務をするだけであって、何ら所長や長官は法的な権限、効力はないのかどうか。

【伊藤座長】権限とおっしゃるのは評価をする権限。

【松尾委員】そうです。

【伊藤座長】私の理解が違うかもしれませんが、情報収集をするだけであって、評価そのものは、所長などはそういうことをすることを予定してないのか、そういうご趣旨の発言ですか。

【松尾委員】私の説明が悪いかも分からないですが、裁判官の評価権限は最終的に最高裁の裁判官会議にある。しかし、実際にはそれができないから、裁判所の所長や高裁長官に委ねているということになりますと、そういう裁判所の所長や高裁長官は、単に事務的なことを委任されただけではないか。つまり事務の一部を分掌といいますか、それだけのことではないか。もう一つの考え方は、いや、そうではなくて、最高裁の裁判官会議に委ねられるということは、そこに法的権限が譲渡されるといいますか、言葉がどうかと思いますが、そういう形になるのではないかという考え方もできるのではないか。実際はそれはどうなのだろう、そういう質問です。

【伊藤座長】委ねられているということと、最終的には最高裁裁判官会議、その関係をちょっと御説明いただければと思います。

【最高裁(金井参事官)】評価の性質に関わることだと思うのです。先ほど来申し上げていますとおり、第一次評価権者たる所長としてはどういう活動をするかといいますと、裁判官に関して入手した情報に基づきまして、その人の人物特徴をきちんと記述する形で評価を取りまとめていくと、こういうことになるわけです。ある意味では情報収集にすぎないのではないかとおっしゃられるかもしれませんけれども、集めた情報に基づいて、その裁判官の資質や能力についての何らかの判断もその中に含まれてくるだろうと思います。ですから単に事実行為をしているのではないというところがやっぱり出てくると思います。
 そういう意味で、単に事務を一部分掌しているのではないかとおっしゃられますと、そうでない要素もございますと。しかし、主体は情報の取りまとめ、情報の提供ということですので、何らかの法律行為を行うというような性格のものではありませんので、非常に御理解いただきにくいのですが、両者の性質が兼ね備わったものと思うわけです。
 そういう形の評価を地・家裁所長がいたしまして、高裁長官に上げ、不服の手続等一切終わったら、それが最高裁に提出されてきますので、それでもって最高裁裁判官会議が委任した事務が全部滞りなく終わったと、こういう形になるのだろうと思っています。

【伊藤座長】どうぞ、中川委員。

【中川委員】ここは、私はもっとはっきりされた方がいいと思いますね。これは委任を受けて評価をするということですから、評価権者と位置付けられた方が私はいいように思います。それはなぜかといいますと、これはフィードバックされますよね。だから、結局評価権者が集めた情報なり、自分の考えなり、そういうものをもとに評価をするわけですね。本人の求めがあれば、それをフィードバックするわけですから、そこで当然いろいろな会話が行われるわけでして、そのときに、私はこう思うよということを言わないといけないのです。そうしませんと評価にならないですね。あなたはそう言うかもしれないけど、自分はこう思うと。これで上に上げますということを言わないと、そこはぐずぐずになったまま来たのでは評価にもならないし蓄積も意味もありませんね。ですから、そこはかなり強力にされるべきで、私はさっきから言っていますように、本当に評価かどうか、まだ疑問持っていますけれども、仮にこのシステムでやられるとしても、ここはかなり大切なところだと思います。

【最高裁(金井参事官)】御説明が不十分だったかもしれませんが、所長が取りまとめられた評価は、それはそれで一つの評価として完結しているわけですね。それが高裁長官のところで、第二次評価権者の評価として。

【中川委員】それはいいのです。第一次評価権者のところがファイナルに近いのだということを自己査定書を出す人が認識しているかどうかというところがポイントですよ。それと第一次の人が、これで終りだと。あなたのおっしゃることも分からないではないが、私はこう思います、ということをきちんとそこで終結できるかどうか、ここが大切なところなのです。

【最高裁(金井参事官)】今回の仕組みの上では、今おっしゃられたような形で対応することを考えているわけですが。

【伊藤座長】それがここに書かれてあることの趣旨だと思いますが、それでは、何点か持ち帰って、更に御議論いただきたい点は、先ほど確認したとおりでございますが、枠囲いの中自体については、ここで御了解いただいたということにさせていただきたいと思います。
 続きまして、「3 評価の基準等」(1)でございますが、この事項についての委員会における検討状況につきまして、最高裁から補足がございましたらお願いいたします。

【最高裁(金井参事官)】(1)でございますけれども、ここでは評価項目について記載しています。人事評価は、事件処理能力、部等を適切に運営する能力、裁判官として職務を行う上で必要な一般的資質・能力、こういった三つの評価項目について行うものとしております。そして、この資料の2ページの冒頭部分をご覧いただきたいと思うのですが、人事評価の客観性を確保するという観点から、各評価項目について評価する際の視点を通達で明確にすることを考えております。評価の視点としては、様々な要素が考えられるところですが、この概要の最後に別紙として添付してありますが、評価項目及び評価の視点として、記載されている視点を考えております。
 委員会では、この評価項目について、要綱(案)の内容どおり取りまとめられました。また、評価の視点についても格別な異論は示されませんでした。ただ、評価結果の表示方法につきましては、文章式を基本とするという意見が多かったところでございますけれども、次回の委員会で検討を継続しようということになっております。以上でございます。

【伊藤座長】ただいま御説明がありましたとおり、「3 評価の基準等」(1)につきましては、原案どおり取りまとめられたということですが、いかがでしょうか。それから、資料22−1の(注)にございますように、今、金井さんからも御説明ありましたが、評価を文章式で記述する方法を基本とするが、段階式で記述する方法も併用するかどうか、これについては次回の委員会で検討を継続するということですので、ここではその点は除いて御発言をいただければと思います。どうぞよろしく。釜田委員、どうぞ。

【釜田委員】先ほど御紹介のございました、資料4の6ページの「評価項目及び評価の視点」の3点の評価項目について私は異論はございませんが、これは審議会の意見書が、例えばとしてこういう順序で挙げておられました。それを受けて研究会もこういう順序で答申を出されたようですが、私は今度人事評価の目的との関係で、国民の信頼という点から考えますと、これは全部ここに出ているものは大事なのですが、一番最後の「3」のところに挙がっている問題、これがトップに来るべきだと思うのですね。司法に対する国民の信頼はもちろん、海外から日本を訪れる方が、まず日本に着地して考えることは何かといいますと、ここで何かの疑惑をかけられて身柄を拘束された場合に、自分が無事に母国へ帰られるのだろうかと、これが一番、我々でも海外へ行ったときに一番最初に感ずる不安です。だから、それによってその国の司法、裁判所が、法曹全体なのですが、信頼があるものであるか、あるいは非常に公平・フェアーであると。最後の裁きをするものがここに挙がっている資質を身につけたものかどうかというものが、本当の国の質というものとして問われ、出てくるのです。
 ですから、国民の信頼という目的から言いますと、私はむしろ順序は逆で、これがトップにきて、あとは後ろ後ろへと、こういうことになるべきではないかと思うのです。これは別に、「1」「2」「3」が、順序をおつけになったとは思いませんが、序列だと私も考えておりませんが、国民がパッと見た場合には、一番最後のところに目が行くと思うのです。これは少し順序を配慮していただくのが、外に発表なさるときには私はいいような印象を受けたのですが、いかがでしょうか。
 だから、これでつけていきますと、「1」で100、「2」でも100、「3」でもっと悪いと。しかし上はいいぞというような、そういうものではないですね、これは。最高裁の裁判官の資格要件、裁判所法でございますけれども、識見、人物を前に出す方がいいような印象を受けた感想だけでございますが、いかがでしょうか。

【伊藤座長】評価項目、評価の視点についての構成といいますか、ただいま釜田委員が御発言になったような点について何かお願いできますか。

【最高裁(金井参事官)】これはむしろあるべき裁判官をどう考えるかということで、委員の皆さんに御意見をいただければと思っています。付け加えさせていただくとすれば、この問題につきましては、人事評価の在り方に関する研究会でも議論いたしました。裁判官の指名諮問委員会でも議論し、今日に至っているわけです。その中で、こういった順番、こういった形で記載することで大方の委員の御了解が得られているというようなところがございます。

【伊藤座長】釜田委員、大事なものが一番最後に来るという考え方もできませんか。

【釜田委員】そういう理解もありますね。

【平山委員】あとは、客観性・透明性ということから言って、上の方がやや客観的に評価しやすいという面はあるのかもしれませんね。人間も、釜田委員おっしゃるとおりで、最も基本的なことだけど、その評価はなかなか難しいものがあるのではないかということもあるかもしれませんね。

【伊藤座長】そういたしますと、「3 評価の基準等」(1)につきましては、先ほど申しましたように、次回に検討を継続する部分を除きまして、その他の点につきましては、ここで御了承いただいたことにさせていただきます。

【木村委員】資料22−1にある審議会意見書の記載では、評価基準については、「例えば事件処理能力、法律知識、指導能力、倫理性、柔軟性など」と書いてありまして、今の釜田委員の御発言の非常に大事なところの最高裁配布資料4の「評価項目及び評価の視点」の「3」では「人物・性格」から「倫理性」という言葉が抜けていると思います。「倫理性」という言葉がこの中には、評価基準の中の倫理性ということが恐らくは抽象的であるということで、「廉直さ」「公平さ」「寛容さ」ということが入ってきたのだと思うのですが、それはそう理解してよろしいのでしょうか。例えば倫理性というのがここにあっても、ここには書いてございませんが、例えば正義感とか博愛の精神、何かそういうようなことも含めて「倫理」という言葉は独特の意味を持っているわけですので、何か抜けた理由があるのでしょうか。

【最高裁(金井参事官)】今、御指摘がございましたとおり、廉直さ、公平さとか、倫理性を分解していきますと、そういうことになって、むしろそういうより具体的な形で書きあらわした方がいいだろうという議論がございました。

【釜田委員】先ほど評価権者の話が出ておりましたね。判事として、資料4「評価項目及び評価の視点」の特に「3」を中心に置いて評価がなされていきますね。これで高い評価を得られる方が、行政職としておのずから長官職、最高裁長官というポストに就かれるわけですね。こういう人物が判事として在職されて行政職を兼ねている。その方が評価されるわけですから、私は文章式でいいと思うのです。間違いないです。これをパスした所長であり、長官であり、そういう構造なのです。だから、そこのところだけ切り離すことはできない。これがやはり重要だと申したのは、先ほど座長がこれが一番大事だから最後に置いたよと言われ、私も安心したのですけれども、分かりましたけれども、そこだと思うのです。国民はそこですよ。「評価項目及び評価の視点」の上の方は、アメリカで言えばロークラークが付いて全部補助しますね。補助して、裁判官といえども、無数のこれだけの法令を全部間違いなく扱うということは、だれか補助が付いて完璧になるわけですから、「3」は補助の付けようがないですね。だから、やっぱりということを感じる。いいです、これが一番大事だということで最後、だから3番目という、座長の強い御説明によって説得されましたので、結構です。

【伊藤座長】どうぞ奥野委員。

【奥野委員】どこで発言していいのかよく分からなくて、ここでするのがいいのかなと思うのですが、人事評価を何に使うのかということで、配置とかということも一つありましたけれども、大きなものは任免だと、そうだとすると10年間の評価の蓄積を使って最高裁判所が決めると。本人はそういうことを予期しながら、この人事評価を見ていくということだと思うのです。つまり人事評価というのは、ある意味でどのぐらい能力を自分で蓄積しようかというモチベーションを引き出すものでもあるし、それから、能力があるのだということを上の方で確認するということでもあるし、本人にこのままだと危ないですよというシグナルを与えるというような面も持っているわけですね。
 そういう意味で言うと、かなりこれが蓄積されたものが、しかもほかの人たちと比べて、どういうぐらいのレベルに当たるのかという情報がきちんと裁判所と本人の間で共有されているということが大事だと思うのですね。そこのところが、こういう抽象的な文章、しかも毎年毎年やるので、いわば評価権者は所長はだれであるかということによって、権限ですから、好き嫌いなどで少しぶれたりする。そういうことがあるということを考えながら、どうやって長期的にそういう仕組みとして機能する担保がとれるのか、私は不安に思っているのですね。
 中川委員が最初におっしゃったことを私なりに理解しますと、普通の企業の従業員と判事は違うのかもしれませんけれども、普通の企業だったらば、何かこういう評価をしながら、評価が例えば職務給というような給与の水準みたいなもの、何級何号俸というような数値になっていて、しかも、それが過去何年間か全部反映した数値になっている。だから、逆に言うと、自分としてもどのぐらいなのかというのは結構分かりやすいという形になっていると思うのです。
 しかし、そういうものがないままに、ただ、単にいわば抽象的な文章が毎年毎年積み重ねられていくということだけで本当に大丈夫なのかということを、私は不安に思っているのですね。多分中川委員は最初におっしゃったこともそれにかなり近いのではないかと思うのですが、そこのところはどのようにお考えになっていらっしゃるのか。特に最後の10年目ぐらいのときに、それこそ極端に、あなたはだめでしたと、残念でしたね、というときに、こういう文章が10年間あったからいいでしょうということだけでうまくいくのでしょうかというあたりを御説明していただければ。

【最高裁(金井参事官)】 今回提案させていただいています新しい人事評価制度の基本に関わるところだと思います。評価内容のフィードバックをどのようにしていくのか、重要な論点だと思っております。すぐ後に出てくるわけですけれども、今回の評価制度の上では、評価権者が評価をするに当たって、裁判官から担当した職務の状況について書面の提出を受けるとともに、面談という場面を想定しております。そこで問題状況について指摘するとか、過去の評価についてフィードバックしていくとかということが行われていくだろうと期待しているわけです。更に、今回の評価においては、請求があれば開示していくというようなことも考えております。
 ですから、この仕組み全体として、評価のプロセスを通じて、できるだけ評価の内容が本人にフィードバックされるような形で運用をしていく必要があると考えております。

【奥野委員】新しい段階式の評価をどうするかはともかくとして、給与などとくっつけて、普通の給与だったらやるような仕組みはとらないと、そういう御判断をされているということですね。

【最高裁(金井参事官)】その人事との関係では、冒頭御説明させていただいたような形で、この評価を反映させていく、そこが限度ではないかと考えているわけです。

【伊藤座長】よろしいでしょうか。

【奥野委員】私、個人的には大丈夫かなと思いますが、業界と言ったら失礼かもしれませんが、お仕事の内容よく分かりませんので、これ以上は。

【伊藤座長】また、関連するところで、御発言が恐らくあると思いますので、そちらでお願いしたいと思いますが、何か、どうぞ、中川委員。

【中川委員】評価項目については、私も資料4の「評価項目及び評価の視点」にあるくらいしかないと思います。それはそれでいいと思うのですが、これは軽重の問題というのがあるのです、いつでもそうなのですが、どこにどういう軽重をつけて評価するのですかという問題ですね。これは裁判官の年次にもよると思います。だんだん行政職に近寄れば、そっちの方に重みが出てくるでしょうし、若いころは「1」とか、こういうプロフェッショナリティーのところに重点を置くと。それから3番目というのは、これは一般的な資質ですから。これはある程度の軽重をつけて評価しませんと、人間の成長につながらない。さっきおっしゃっている自主的向上ということにつながらないのですね。ですからもう少しきめの細かな、項目はこれでいいと思いますが、評価の仕方につきましては少し軽重をつける。
 今、奥野委員も言われましたけど、3年もしますと、同じところへ○が付きます。同じなのです。人間なんかなかなか変わらないのです。協調性のない人は協調性がないというように、いつでもそのコメントになるのですね。それでインタビューして、もうちょっと気をつけてくださいよ。分かりました。というようなことでやるので、そんなことを10年もやるのですかという感じもするので、ある程度のところでそういうものは何かするということにしませんと、10年間というのはどうなのですか。長いなという感じがいたしますね。

【伊藤座長】実施や運用については、ただいまの御意見踏まえて十分これから検討、あるは工夫されることと思いますので、その点、是非よろしくお願いしたいと思います。とりあえずのことにつきましては、先ほどの取りまとめのようなことでお願いしまして、次に、「3 評価基準等」(2)につきまして、この件についての委員会の検討状況に関して、最高裁からの補足があればお願いいたします。

【最高裁(金井参事官)】ここでは評価権者は人事評価に当たりまして、裁判官の独立に配慮しつつ、多面的、多角的な情報の把握に努めならなければならないとしております。併せて、裁判所外部からの情報についても配慮するものとするとしてございます。委員会では、この要綱(案)の記載部分については、そのとおり取りまとめられております。評価権者による情報把握の具体的な方法につきましては、事柄の性質上、規則で規定するというよりは、運用に委ねることが適当と考えられるところから、規則ではその骨格部分を規定しようとした次第でございます。
 それから、裁判所外部からの情報の取扱いの問題につきましては、次回の委員会で検討を継続しようということになっております。以上でございます。

【伊藤座長】(注)に書いてありますとおり、外部からの情報の取扱いにつていては、次回の検討ということですので、ここでもそれを待ってと思いますが、それ以外の部分につきまして、ただいまの御説明について何か御質問、御意見ございますか。

【平山委員】よろしゅうございますか。

【伊藤座長】どうぞ、平山委員。

【平山委員】次回の継続になっている部分でございますので、今、申し上げるのはいかがかと思いますけど、ここのところは是非十分議論していただきたいと思っております。去年の報告書につきまして、我々がここで出したのは、ここに非常に大きな関係があると思いますので、しかし、一方において、裁判官の独立という、内部における独立、外部からの独立もありますでしょうから、十分御議論いただいて、これだというものを出していただかないと、ここに来たときに相当議論をさせていただくことになるものですから、是非十分議論して詰めてほしいという希望を申し上げておきます。

【伊藤座長】当然のこととは思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【最高裁(金井参事官)】分かりました。

【伊藤座長】それでは、次回に検討を継続するとされた部分を除きまして、ここでも御了解いただいたものといたします。
 次に「3 評価の基準等」(3)でございますが、これにつきましても、最高裁から補充することがあればお願いいたします。

【最高裁(金井参事官)】 若干補充させていただきます。審議会の意見では、裁判官本人の意向を酌み取る適切な方法を検討すべきであるとされております。そこで、今回の規則要綱(案)第3項(3)では、その方法といたしまして、裁判官から担当した職務の状況に関して書面の提出をしてもらうと。それから併せて評価権者が裁判官と面談するという二つの仕組みを用意したわけでございます。
 このような制度を導入することにより、人事評価の客観性を担保する、本人の自己研鑽、能力開発に資する、更には、人事評価に対する本人の納得性を高めることが期待できるものと考えております。以上でございます。

【伊藤座長】この点につきまして、委員会では、ただいまの御説明のとおりで取りまとめられたようでございますが、何か御意見、御質問ございますか。どうぞ、木村委員からお願いします。

【木村委員】これは当然だと思うのですが、裁判官が担当した職務ということの具体的な内容はないのですか。

【最高裁(金井参事官)】日々の事件処理をしていきますので、それを中心に報告してもらうことを考えているわけです。

【木村委員】事件処理、つまり裁判ということですね。

【最高裁(金井参事官)】書いてもらう内容は比較的自由度の高い形で書いてもらえたらと思っておりますが、どういうことを書くかというと、事件処理の状況についても書いてもらえるでしょうし、部の運営に関する事柄で、若い人でしたら書記官との関係をどうしているかとかということを書いてもらうこともあるでしょう。そこは硬い記載要項を定めるというのではなくて、むしろ自由に書いてもらったらどうかと思っております。

【木村委員】その質問は、今、事件処理ということだったのですが、前のどこかの書類に、書記官との関連とか裁判所内のいろいろな事件処理以外の職務が何かあるのかどうかということをちょっとお伺いしたかったものですから、裁判官としては裁判所内では事件処理以外の仕事は基本的にないわけですね。

【最高裁(金井参事官)】裁判官が事件処理をしていくに当たって、地方裁判所であれば、書記官とチームを組んで仕事してまいりますし、家庭裁判所の例えば少年事件ですとか、書記官であるとか家裁調査官であるとか、様々な職員とチーム組んで仕事をしてまいりますので、そういった人たちとの関係も当然出てまいります。

【伊藤座長】どうぞ、中川委員。

【中川委員】今の御説明で、私は驚いたのですけれども、自己査定書というのですか、これは当然評価項目と関連したものを出すのだと思っていたのです。ですから法律知識、自分のことを書くというのはおかしいのだけれども、それはいろいろな工夫の仕方がありまして、ここに書いてありますような、大きな項目、3項目について自分がどういう職務を執行したかということでなければ意味がないように思うのですね。それと全国一律のフォーマット、どの裁判官も同じフォーマットで書き込めるということにしないと、また、公平性もないということですので、その二つは是非お考えいただきたいと思いますけれども。

【伊藤座長】いかがでしょうか。金井さん、自由記載的な御発言がございましたので、今のような御質問が出たのかもしれませんが。

【最高裁(金井参事官)】具体的に想定されます記載事項としましては、今、御指摘を受けたとおりだと思っているのです。各裁判官が担当職務について、客観的な事実を記載し、また、それに関連する状況の説明であるとか、それから組織運営に関する活動の実績を書いたり、それらに対する所感を書いたりということが想定されるわけです。何分にも裁判官の世界では、初めて導入しようとしている仕組みですので、裁判官がこれをどう受けとめていくのか。また、どういう記載をしていくのかというのは、運用を重ねる中で改善を図っていくべき事柄ではないかと思っております。
 そういう意味で、発足当初、あまりにも硬い項目を立て、それについて記載させるというのは運用としてやりにくい面があると思っておりますので、先ほど申し上げたような、当初は比較的自由度の高い形で始めたらどうかと考えております。

【平山委員】関連でございます。私も実は本日、分析表を出させていただいておりますけど、この部分について疑問があるところだけは書かせていただきました。審議会意見書は、中川委員のおっしゃるようなことを述べているのかなと思っておりましたので、それとの今回の御提案が少しずれていませんかというような意味で分析表を、本人の意向を酌み取る適切な方法という審議会意見書の提案が今回の要綱(案)でちょっと食い違いませんかという意味のことを書いておりますけど、全く今の中川委員の御質問のような趣旨で書いております。御検討を賜わりたい。つまり自分の評価につきまして、各裁判官が適切な意見を述べる方法を確保しろということで、まさに事件処理などをどうやっているかというのは非常に目玉になると思いますけど、それだけで十分でしょうかという意味で、審議会意見書にこれは十分対応していることになるのかなという疑問を申し上げたいと思って書いております。

【最高裁(金井参事官)】一般規則制定諮問委員会でも、審議会意見との関係が議論になりまして、何人かの委員の皆さん方から意見が出されたところでございます。最終的には、私どもの制度設計で十分ではないかと。例えば審議会意見書では、「自己評価書面」と、こういう用語が使われておりますけれども、今回の書面でも、裁判官がやった職務活動についての客観的な事実の報告だけではなくて、それについての感想といいますか、所感といいますか、そういったものも含まれ得るので、十分に審議会意見の趣旨に即しているのではないかというような御意見が出されました。
 更には、また、自分の職務活動について、こんな赫々たる成果をおさめているようなことを積極的に売り込むというような裁判官はあまりいないかと思うわけです。そういう意味では、自己評価を生の形で書くのはいかがなものかというようなところもございまして、裁判官の心情も考えますと、こういった形で書面を出してもらうことがより適切なのではないだろうかという議論になっております。

【伊藤座長】そこはいろいろ考え方があると思うのですが、こういう職務の状況に関し、書面の提出を受けること自体については、共通の認識があり、しかし、先ほどの評価項目との関係で、どういうものが最も望ましいものか、しかし他方、当初出発するに際してどの程度までのものがいけるのかということはいろいろな要素を考えないといけないと思いますので、ただいまの御発言を前提にして、これも実施運用に当たってはいろいろな工夫を是非お願いしたいと思います。
 それでは、ちょっと先を急ぐようですが、大分時間が超過しておりますので、次にまいりたいと思います。次は「4 人事評価の結果の開示」でございますが、これにつきましても最高裁から補足があれば、お願いしたいと思います。

【最高裁(金井参事官)】「4」でございます。評価権者は、裁判官から申出があったときは、その人事評価の結果を開示するとしております。委員会でもそのとおり取りまとめられております。具体的な開示方法といたしましては、人事評価の結果を記載した書面の写しを交付するという、いわば全面開示を考えております。以上でございます。

【伊藤座長】これにつきましてはいかがでしょうか。何か御質問、御意見ございますか。どうぞ、奥野委員。

【奥野委員】できるだけ手短に質問だけですが、ある意味でこれは成績表みたいなものだと思うのですが、成績表というのは原則開示ですよね。原則不開示にしているということの理由をちょっとお聞きしたいのですが、要するに常に開示をしてしまうとすると、評価権者の方が評価しにくいという気持ちがあるのかもしれませんけれども、希望があれば開示するわけですよね。だとすると、そこはそれほど関係ないのかなという気がしていて、むしろ開示を請求した段階でも、評価権者に後で会って何かいろいろ取扱い上、特に所長ですから、困ることをされるのは嫌かなという気持ちを裁判官の方が持ちかねないような気がするのですが、それほど単純な話ではないと思うのですけれども、そこら辺の、なぜ原則不開示にされているのかということについて教えていただければと思うのですが。

【伊藤座長】申出を待って開示するとされていることを。

【奥野委員】そういう意味です。まさに座長がおっしゃったとおりです。

【最高裁(金井参事官)】今の点は、検討の過程で、様々な形で議論してまいりました。一つは、審議会意見でも、この人事評価の開示については、評価対象者本人の請求に応じて開示すべきだと、こういうことが提言されているわけでございます。それから、人事評価の在り方に関する研究会を開催しまして、その中でも、様々な評価制度について、開示がどういう形で行われているのかということを研究していただきました。その中でも、今回示しているような形での開示というところまで踏み切っているものはそうないのではないかという認識です。全員に対して開示するといっても、要旨を開示したり、口頭で開示したりというようなことが多いと思いますが、裁判官の場合には、請求があれば評価書面を開示しようということですので、そういう意味で、開示の在り方としては、かなり踏み切ったものと思っています。
 更に、これは裁判官の方の受けとめ方の問題もございます。これまでこういった仕組みは全然持ってなかったわけですが、新たにこういうものを設けることについて、各裁判官がどう受けとめるのかということも十分議論いたしまして、その中で、こういった形での開示制度が全体としてみれば望ましいのではないかという意見が大多数だったということもございまして、このような制度設計にしています。

【奥野委員】すいません、一言だけですが、要するに資料4「3」の(1)で段階的評価をつけるのですかという話は、次回とお聞きしていますが、特に段階的評価などをされた場合には、それを本人に開示された方がいい。ある種のまとめた評価の数値、それは示した方がいいのではないかというのが一つと、そういうことをしないと、逆に裁判官としては、どういうときに開示請求をしていいのか分からないという逆の不安もすごくあるわけですね。要するに理由もなく開示請求をしただけで、逆に上司から変に思われるということも、こういう仕組みだと起こりかねないというのがちょっと不安なので、サゼッションだけです。

【伊藤座長】分かりました。ただいまの御発言の中の段階的評価については、また、次回にこちらでも受けて検討をさせていただくことにいたしまして、これ自体については御了承いただいたことにいたします。
 そういたしますと、委員会の検討が熟した部分につきましては、当検討会においても御了解いただきました。どうもありがとうございます。委員会の方の日程ですが、次回の会合が11月4日(火曜日)に予定されていると伺っております。当検討会といたしましては、11月18日(火曜日)に予定しております第23回検討会におきまして、今回に引き続いて最高裁の検討状況を御説明いただいて、質疑応答、意見交換を続けたいと思っております。どうもありがとうございました。

(休 憩)

【伊藤座長】それでは再開いたします。
 続きまして、裁判官の報酬の進級制についての議事に進みたいと思います。まず、事務局から審議会意見書、推進計画の内容、審議会における議論の状況、裁判官の報酬の進級制とその沿革、公務員制度改革における給与制度改革の動きなどについて説明をしてもらいます。
 続いて、最高裁から、裁判官の報酬の進級制の実情、諸外国の裁判官の報酬制度などについて説明をしてもらいます。
 それでは、事務局からまずお願いします。

【植村参事官】それでは、私から説明をさせていただきます。資料22−3の説明レジュメをお開きください。
 説明レジュメの冒頭に、審議会意見書と推進計画の抜粋を記載しております。意見書の枠囲いの記載は、「裁判官の報酬の進級制(昇給制)について、現在の報酬の段階の簡素化を含め、その在り方について検討すべきである。」とされておりす。
 推進計画におきましても、「裁判官の報酬の進級制(昇給制)の在り方について、報酬の段階の簡素化を含め、検討する。(本部)」とされております。
 したがいまして、当検討会では、裁判官の報酬制度と申しましても、進級制、すなわち現在判事、判事補の報酬制度は、資料22−2に「裁判官の報酬等に関する法律」を引いております。この別表にありますとおり、判事補は12段階、判事は9段階という段階制になっているわけでございますが、この段階制について、その簡素化を含めて検討していただくということでございます。
 意見書の枠囲いがこのような提案をしている趣旨ですが、枠の外をご覧いただきますと、「裁判官の報酬の進級制(昇給制)について、従来から指摘されているように、昇進の有無、遅速がその職権行使の独立性に影響を及ぼさないようにする必要があること、また、裁判官の職務の複雑、困難及び責任の度は、その職務の性質上判然と分類し難いものであることにかんがみ、現在の報酬の段階の簡素化を含め、その在り方について検討すべきである。」と記載されております。
 この記載から読み取れますことは、まず第1に、現在のような裁判官の報酬の段階制については、従来から指摘されているように、昇進の有無、遅速がその職権行使の独立性に影響を及ぼしているのではないか。したがって、その簡素化を図るべきではないかという問題意識であると思われます。
 第2に、裁判官の職務の複雑、困難及び責任の度は、その職務の性質上、判然と分類し難いものであるから、現在のような裁判官の報酬の段階制の簡素化を図るべきではないか、という問題意識であろうと思われます。
 ところで、この問題に関する審議会における審議の状況は、資料22−4に抜粋いたしましたとおりでございます。第36回審議会、第56回審議会を通じまして、明快に御主張を述べておられるのは中坊委員でございまして、資料22−4の1ページの左側、それから、4ページの左下にもございます。裁判官の独立が多段階にわたる昇給制度の運用を通じて害されているのではないか、国民はそのように見ているのではないかという観点から意見を述べておられます。これは先ほど申し上げました意見書の第1の問題意識からの御発言と思われます。
 佐藤会長の取りまとめとしての御発言は、同資料の5ページにございます。5ページの御発言の最後の部分をご覧いただきますと、「今の段階が多段階というべきかどうか、それ自体評価ですから分かりませんけれども、今の段階でいいのかどうかは、やはりちょっと考えていただくべきものではないか」ということでございます。
 なお、佐藤会長は、議論を取りまとめるに当たりまして、同資料の5ページの御発言の冒頭の部分で、「その前提ですけれども」と述べておられます。これは1ページ戻っていただきまして、4ページの右上に、佐藤会長の御発言がありますように、報酬の段階制に修正を加えることによって、報酬の水準を低下させないということを意味しているものと理解されます。すなわち審議会での議論は、専ら報酬の段階制そのものに焦点を当てて検討してもらいたいということでございます。
 続きまして、裁判官の報酬の進級制の現状につきまして、一般職国家公務員と比較しながら御説明をさせていただきます。
 一般職国家公務員と比較させていただきますのは、佐藤会長も審議会で今御紹介いたしましたとおり、「今の段階が多段階というべきかどうか、それ自体評価ですから分かりませんけれども」と述べておられますので、比較の対象として参考にしていただく趣旨でございます。
 なお、外国の裁判官の報酬の進級制との比較も必要であろうと思いましたが、この点は事務局の手には負えませんので、最高裁にお願いをした次第であります。
 資料22−6をご覧ください。一般職の国家公務員における最も一般的な俸給表は、行政職俸給表(一)でございます。行政職俸給表(一)におきましては、まず職務の級が1級から11級までの11段階に分類されております。そして、それぞれの級ごとに、級によって段階の数は異なりますが、多いところでは1号から32号までの号俸に分かれております。ただし、俸給金額には各級に重なり合いがございます。例えば1級の16号俸のすぐ上が2級の2号俸というわけではございません。1級の16号俸のすぐ上の号俸は、2級では4号俸になっております。また、10級の高位号俸は11級の下位の号俸よりも高い金額となっております。
 次に指定職俸給表は、幹部公務員に適用されるものでございます。1号俸から12号俸までの12段階に分かれております。
 これに対しまして、裁判官のうち任官後10年目までの判事補につきましては、12号俸から1号俸までの12段階がございます。11年目からは、一般職国家公務員についての指定職俸給表の12段階のうちの8段階に準拠するほか、判事特号を設けまして、合計9段階の進級制度となっております。したがいまして、判事、判事補では合計21段階ということになります。
 審議会の議事録をご覧いただきますと、裁判官の報酬の段階は23段階であるとする御発言がございますが、これは判事の上に、東京高裁長官と他の7高裁の長官の2段階がございまして、これを加えたものでございます。
 続きまして、裁判官の報酬の進級制につきまして、その沿革を御説明いたします。資料22−7をご覧ください。
 昭和23年1月当時、判事、判事補の報酬は、判事5段階、判事補6段階の11段階でございました。その後、昭和26年10月には、判事補が6段階から一挙に13段階に増え、合計18段階となっております。その後、昭和34年4月に、判事が5段階から8段階に増え、一方、判事補が1段階減り、合計20段階となっております。この時期にほぼ現行制度と同様の進級制が作られたと言ってよいのではないかと思われます。
 そういたしますと、問題の第1は、昭和26年10月に、どうして判事補についての段階が6段階から13段階に増えたのか。第2は、昭和34年4月にどうして判事についての段階が5段階から8段階に増えたのかということになろうかと思います。
 まず、第1の判事補の段階が増えた点ですが、資料22−8をご覧ください。昭和26年の法改正が審議された衆議院法務委員会の議事録の抜粋でございます。当時、判事補ばかりでなく、これに対応する検事の俸給の段階も同じように改正されたわけでございますが、2ページから3ページにかけての佐藤(達)政府委員の検事についての説明と、3ページの鈴木最高裁判所説明員の説明をご覧いただければお分かりのとおり、一般職公務員の給与の段階は非常に多いのに、判事補、検事については、最初の10年間の間の段階が少なく、人事行政の面からもう少し段階が多い方が望ましいということが主な理由のようであります。
 ちなみに資料22−9に、昭和23年、26年当時の国家公務員一般俸給表をお示ししております。昭和26年当時は、公務員になってから退職までの期間を通じてのものではありますが、82段階の号俸に分かれていたようであります。
 次に、第2の判事の段階が増えた点であります。資料22−10をご覧ください。昭和34年の法改正が審議された衆議院法務委員会の議事録の抜粋でございます。1ページ目から2ページ目にかけての愛知大臣の説明をご覧ください。この当時、国家公務員の俸給表は等級制度になっておりました。最上位は1等級、これは更に1等級の1から1等級の7の7段階あったようでございます。この上に位置するものといたしまして、1等級8、1等級9という二つの号俸を新設したことに合わせまして、判事にも新たに2段階を新設するともに、判事1号を超える1段階、すなわち判事特号を定めたもののようでございます。
 以上、御説明してまいりましたとおり、戦後段階が増えてまいりましたのは、いずれの時点においても、国家公務員の俸給制度との関連において増やされてきたようでございます。
 続きまして、公務員制度改革における給与制度改革の動きについて御説明をいたします。何ゆえ、この点についての御説明をするかと申しますと、先ほども御説明いたしましたとおり、判事の報酬の進級制は、国家公務員の指定職俸給表に準拠して定められております。したがいまして、指定職俸給表が適用される幹部職員の俸給の進級制に手が加えられることになりますと、その改革をにらんだ上で、判事の報酬の進級制をどのようなものとするかを検討することになるものと思われるからであります。
 委員の皆様も御承知のことかと思いますが、現在、公務員制度全体が大きく見直されようとしております。資料22−11をご覧ください。この資料は、既に平成13年12月に閣議決定をされました公務員制度改革大綱から、幹部職員の給与制度に関係する部分、今後のスケジュールを抜粋したものでございます。ご覧いただければお分かりのとおり、具体的な制度設計の検討はこれから行われるものと思われますが、2ページの給与の欄にございますとおり、職責反映をより徹底させるために年俸制を導入し、勤務成績が良好でない場合には、年2回特別に支給する給与については、減額するものとすることなどの提言がされております。
 今後の法制化スケジュールにつきましては、2ページのその下にございますとおり、平成15年中を目標に国家公務員法改正案を国会に提出し、その後、平成17年度末までに関係法律案等を整備することとされておりましたが、皆様御承知のとおり、この予定どおりにはまいりませんでした。しかし、公務員制度改革大綱は閣議決定を経たものでございまして、今後政府としては大綱に従い、国家公務員法、関係法律案、この中には当然国家公務員の給与について定めました一般職の職員の給与に関する法律、いわゆる給与法が含まれるものと思いますが、これらの立案を行っていくことになります。
 そういたしますと、近い将来、判事の報酬が準拠しております指定職俸給表は抜本的に見直されることになりそうであります。その際には、一般論としては、新しく導入される一般職の幹部公務員の俸給制度をにらみながら判事の報酬制度を考えていくことになるのではないかと思われます。
 ちなみに資料22−3、説明レジュメの方に戻っていただきたいのですが、その末尾に、本年6月に出された財政制度等審議会の「平成16年度予算編成の基本的考え方について」から、司法制度改革の部分を抜粋いたしました。関係いたしますのは、末尾の「公務員給与の在り方についての見直しも踏まえ、裁判官、検察官の給与の在り方についても見直しに取り組んでいくべきである」との部分でございまして、ただいま申し上げましたのと同様の問題意識に出たものと思っております。
 以上が、裁判官の報酬制度に必然的に影響を与えるものと考えられる公務員制度改革における給与制度改革の状況でございます。
 私の説明は以上でございます。

【伊藤座長】引き続きまして、最高裁から説明をお願いいたします。

【最高裁(小池審議官)】失礼いたします。小池でございます。
 私の方から、お手元の資料、レジュメがございますが、「裁判官報酬制度の概要と実情について」という1枚ものがございますが、それに沿いまして、少し御説明申し上げたいと存じます。
 今、事務局から御説明がありましたように、我が国の裁判官の報酬制度は、一般国家公務員の給与に関する法規とは別の法律によって規定されております。判事9、判事補12の段階に分けられた報酬が定められております。その沿革、内容等については、事務局の説明のとおりでございますので、制度の背景にある考え方、あるいは制度の運用の実情について、二つの視点から御説明申し上げたいと思います。
 一つは、裁判官の報酬が司法権の担い手として独立して職権を行使するという、裁判官の地位とか職務の特質などに基づく特殊性から、司法権の独立を保障するに足りる、そういった制度設計をしているという点でございます。この点は国家公務員給与とは異なる要因であると言えると思います。もう一つは、裁判官も国家公務員であることから、報酬の体系を決めていく上で職務の複雑困難性あるいは責任の度合いといったような点を取り入れている点でございます。この点は国家公務員給与と共通する要因であるということでございます。
 国家公務員の給与制度の基本的な考え方は、今、事務局から御説明がございまして、11の級と号の組み合わせで非常にたくさんのいわば給与枠が設定されているわけでございます。級は職務の複雑困難性、責任の度合いで11の級が設けられていて、聞くところでは、本省の係長は4級以上とか、本省の課長補佐は7級以上というような、いわば職務階層と連関して位置付けられているということになります。号は各級ごとにたくさんの段階が設定されているわけで、これはいわば同一の職務階層といいますか、そういうところにおける経験、あるいは熟練度等の評価と連関させて、その向上を評価し、あるいは向上へのインセンティブを高めるといったような目的があると。その意味で号の設定は職務内容の複雑、困難性あるいは責任度合いとは直接連関せず同一職務内容における給与設定といったようなとらえ方ができると思います。
 上位の号に格付けられることが昇給でございまして、一定の号に格付けられた職員は経験を積んで熟練度を高めて、いい成績を上げると、例えば原則として年に一回、号が一つずつ上がる定期昇給あるいは特別の貢献度、成果があるときにはいわゆる特昇という特別昇給があるということになります。
 上位の官職に任用されて、級がはね上がると昇格と、このように一般職の国家公務員は、こういった体系に基づく昇給・昇格を大きなインセンティブとして職務に励み、職務効率が組織として上がると、こういう仕組みになっております。特に若手の方ですと、号の中で給与が上がっていくということになりますので、特に同一の級の中で昇給していくということは非常にインセンティブを高め、あるいは能力向上に資するところが大きいとされているわけでございます。
 そこで裁判官との対比ということになりますが、まず、さっき二つの視点で申し上げました第1の視点でございます。職務の特質に関連するところから言いますと、まず裁判官は任命要件に応じまして、判事、判事補という類型がございます。その職務権限に差異はありますけれども、基本的な職務内容は裁判を行うという点で共通しています。判事補は、前にも申し上げましたけれども、主として合議事件の陪席裁判官などの仕事を行いますけれども、特例判事補になりますと、離島を始めとする遠隔地の裁判所等で判事と同様の事件を担当しております。
 判事、判事補としての職務権限は、それぞれ全国各地の裁判所で全く同じであり、独立して行使されています。勤務している裁判所、部署によってその基本的職責が異なることはないという特質がございます。
 そういった意味で、先ほど人事評価のところでもお話が出ましたけれども、裁判官の人事評価は短期的な視点から1年ごとに明確なランク付けをするということではなくて、再任等を視野に入れた長期的な視点で行うべきものと考えられているわけであります。そういった意味で短期的な評価、あるいは多重的な職務階層の中での昇任を前提とした昇格といったような制度をとることは、こういった職務内容から見ると、必ずしも相当ではないものと今までとられてこられたところがございます。
 このような裁判官の職務の特質を考慮して、裁判官の報酬制度は、判事、判事補の区別に応じた号の制度はございますけれども、職務階層に対応して設定される級の制度はないという形になっております。そういったために裁判官報酬は、級と号をクロスして設定している一般職の国家公務員の俸給区分に比べると著しく報酬の段階が少ないという特徴があると言えると思います。
 次に第2の視点のところの国家公務員の特質に連関するところでございます。我が国におきましては、判事補制度が採用されておりまして、これは法曹一元の国と違うわけでして、司法修習を終了して直ちに任官した1年目の判事補から、10年ごとの再任を数回経験した非常にベテランの裁判官までいろいろな経験を持った裁判官の存在が制度としてビルトイン、予定されている制度になっているわけでございます。繰り返しになりますが、ちょうど法曹経験1年の判事補から、三十数年という判事まで非常に幅がある。年齢、法曹経験等も非常に幅がある実情となっております。判事補は大体法曹経験10年未満、多くは任官10年未満の比較的若手によって構成されておりまして、先ほど申し上げましたように、合議事件の陪席裁判官などとして事件処理に取組み、自己研鑽に努め判事を目指している。10年間経験を積むと判事任官資格を得ることになっているわけでございます。
 他方、判事は、10年の法曹経験、我が国の場合には多くは裁判官経験ですが、それを積みまして、裁判官としての熟練度を高め、基本的に単独で事件処理をすることが多いわけでございます。更に裁判官として20年、30年という経験を積み重ねて、やがて適性、能力に応じて、先ほど御議論ありましたけど、部総括判事、所長といった職務を担当していくことになります。
 このような裁判官の職務内容は、判事補という点をとりますと、判事補という官職の中で、あるいは職務権限の中で経験と熟練度を高めていくという点、判事として見ますと、熟練、適性、能力に応じて職務・職責に差異を持たせるという点で、一般職の公務員と共通する面があると言えるわけでございます
 このような面を踏まえ、現行の裁判官報酬制度は一般職の国家公務員の給与制度と関連した形で、先ほど参事官からも御説明がありましたような制度をとり、判事補については昇給によるインセンティブ、あるいは年齢に応じた生活保障といった要素を考慮し、判事については、特に上位の者の職務・職責の差異といった要素を考慮して、号による相当数の段階を設定しているものと考えられるところでございます。
 こういうアウトラインですが、運用はどうだということになります。先ほどもございましたが、報酬制度の運用、特に判事、判事補の報酬における昇給、号の上昇、昇給については、裁判官の職務の在り方、あるいは報酬制度の趣旨に基づいて、特に裁判官の職権行使の独立というものを尊重した運用を行っております。判事補の時代、更には、法曹資格取得後約20年間、多くは任官後約20年ということですが、長期の病休等の特別の事情のない限り昇給ペースに差を設けていないわけでございます。つまり判事4号までは、同期の裁判官全員がほぼ同一のペースで昇給するということでございます。これは裁判官が高度の資格要件を備えた専門職種である、あるいは独立して職権を行う、全国各地の裁判所で基本的に同一の職務権限を行使するといったことを考慮した運用でございます。他方で、判事として、更に経験を積み重ねた後、能力、適性に応じまして部総括、所長等の職務を担当することになるわけでございますが、このような職務担当については、判事3号以上の報酬と連動させているわけであります。この場合には職務の重さ等に照らし、人事評価あるいは勤務状況等を考慮して、各高等裁判所の意見をも聞いた上で最高裁判所裁判官会議において昇給を決定しているわけでございます。これが実情でございます。
 次に資料を1枚めくっていただきますと、外国の制度がございます。多少諸外国の制度のごくごくあらましをお話し申し上げます。まず、前提として外国の裁判官の報酬制度は、進級(昇給)の制度につきましては、国によって前提とされる、いわば国の統治機構における司法権の位置付けとか、裁判官の官職制度とか、裁判官の権限・職責等が大きく異なっておりまして、外国の制度と我が国の報酬制度とを単純に比較するのはなかなか難しく、とらえ方によっては誤解を生ずるというところもございます。ただ、多年の経験を積んだ法律家の中から裁判官を任命するいわゆる法曹一元を採用しているアメリカ合衆国、あるいはイギリスの制度と基本的にキャリア制度を導入しておりますドイツ、フランスの制度とアウトラインを概観しておくことは、我が国の制度を考える上で参考になると思われますので、資料を用意させていただきました。
 まず、アメリカ、イギリスを一括して申し上げますと、資料1の上段がアメリカ、下の方がイギリスでございます。御案内のように、アメリカでは連邦と州それぞれに最高裁、控訴裁判所、地方裁判所が置かれておりまして、そういったところのいずれにつきまして、州については裁判官には最高裁長官、最高裁判事、控訴裁判所判事、地方裁判所判事という4種類の官職があり、4種類の報酬だけしかない。いずれも定額であり、それぞれの官職の中で段階的な報酬額が設定されていない。したがいまして昇給という概念がない。我が国で言いますと、国会や地方議員の議員報酬に類似したようなシステムになっているわけでございます。
 下の方はイギリスの報酬制度ですが、基本的にはアメリカと同様に、一官職、一報酬額となっておりまして、昇給というものが存在しないという形になっております。これは法曹一元という制度と絡んでいるということでございます。
 ドイツの制度は、概要を整理しましたので、資料2−1をご覧ください。これは裁判官と検察官だけにあると言われる俸給表でございますが、これは裁判官のポスト、官職と報酬額が連動しておりまして、Rの後に数字がございますが、その数字が大きいほど上位の裁判官の報酬となっております。第1表にありますように、連邦通常裁判所の長官がR10に格付けられていまして、あとは裁判所の規模に応じてR3までの格付けがされていると。
 更にその下のR2、R1というようなレベルにつきましては、これは第2表にありますように、更に1から12段階の報酬段階が定められて、年齢によって昇給するようなシステムになっています。最も最上位官職、例えば連邦通常裁判所の長官につきましては、一官職一報酬制になっております。ただ、高裁長官とか地裁所長は規模によって報酬額が違うということなっております。
 資料2−2はドイツの国家公務員の報酬制度でございますが、裁判官の報酬制度は、公務員の俸給制度に類似しているようでございまして、第2表(俸給表B)は、上位の裁判官報酬のところに準拠しているように見えますし、第1表(俸給表A)の高額の部分は裁判官の官位の方のR1、R2といった裁判官報酬に対応しているような関係があるように見えます。
 フランスの制度は、資料3でございます。これは左から2番目の官職の欄のとおり、上位の官職から、超階級、第一階級、第二階級というような三つの階級に区別されておりまして、更に階級は複数の等級と級号に区分されております。この等級、級号ごとに報酬額が設定されて、上位の等級や級号に格付けられるためには一定の昇格必要経験年数、任官後必要年数というものが必要とされているようでございます。キャリア制を採用されているフランスにおいては、ドイツと同じように、あるいはそれ以上に、一般公務員と同じく官職と報酬額、あるいは経験年数による昇給という要素を取り入れた報酬体系となっているようでございます。
 英・米・独・仏の制度を一つ御参照いただきまして、御議論いただければと存じます。以上でございます。

【伊藤座長】どうもありがとうございました。それではただいま最高裁、事務局の説明について、まず御質問があれば承ります。どうぞ、木村委員。

【木村委員】まず小池さんの説明の中で、「年齢に応じた生活保障」という言葉があったのですが、これは何を意味するのでしょうか。資料22−2を見ますと、裁判官の報酬に関する法律で、8条を削除された報酬以外の給与の中に、高裁の長官には単身赴任手当とか寒冷地手当がございますね。そのほかにも一般公務員とは違って、これは非常に不思議なのですが、特別調整額、超過勤務手当、休日給、夜勤手当及び宿直日当手当はないというように裁判所は決まっているわけですね。この決まっている理由と、今申し上げました、つまり任地によっては報酬のほかに手当みたいなものがあるのかどうか。それから「年齢に応じた生活保障」と先ほど言われたことの具体的な内容はどういうことなのか、3点についてお伺いしたい。

【最高裁(小池審議官)】1点目が何でございましょうか、もう一回。

【木村委員】第1点目は、「年齢に応じた生活保障」ということをお話の中で先ほど言われたので、その具体的な内容はどういうことなのかということです。2点目が、単身赴任手当、寒冷地手当というのは高裁長官にはあるのですが、ほかの方々にはないのかということです。第3点が特別調整額というのが、一般の公務員並みにないというように規定されているのはなぜなのかということです。その3点です。

【最高裁(小池審議官)】まず、年齢によるというところは判事補等が一番典型ですし、国家公務員も特に若い方はそうだと思いますが、判事補は12段階に号が分かれております。最初はひとり者かもしれませんけれども、結婚して子どもができてと、こうなりますと、だんだん家計が膨らんでいく、そういったところに配慮して、小刻みにそういう号を設定しています。公務員などでも特に若いところはやはりそうですが子どもが生まれたけど、お父さん、給料上がってよかったね、こういう感じの設計になっているということでございます。それから、寒冷地手当、調整手当ですが、これは若い裁判官にも皆ございます。それから、超勤とかそういうものがないということですが、基本的には裁判官は24時間勤務するというような、勤務時間が9時から5時とか、そういう設定がございません。例えば令状などが、地方などへ行きますと、真夜中飛び込んできてもそれを行いますし、そういうことについて特別の手当がない、そういう形になっています。よく判事補の講習などで言うのは、生まれながらの管理職みたいなところがあって、たくさん働いたから手当が出るというのではない。裁判官というのは、無定量の仕事であるけれども、そのかわり身分保障されて給与が下がることない。そういう中で仕事をしていくべきである。たくさん仕事するからたくさん給与をもらうとか、そういうことではなくて、今ある目前の仕事をとにかく全力投球でやる、そういう仕事である。また、職務体系もそのようになっている、こういうことでございます。

【奥野委員】きょう申し訳ないのですけど、少し早く退席しなくてはいけないので、二つだけ申し上げたいのですが、一つは、要するに裁判官の報酬制度というのは、これから組むときに、要するに弁護士とか検察の方との交流を増やそうと、司法改革の精神は少しそういうところにもあると思うのですが、つまり流動化といいますか、そういうものを少し反映するような報酬制度というものが入れられないのか。例えば判事補レベルでは、さっきの話ではないですけれども、もう少し、能力を上げるようなインセンティブであるとか、そういうようなものを使うような報酬制度、あるいはどう裁判官が評価されているのかということを、報酬がシグナルするのが一番いいのかどうか分かりませんけれども、何らかの形でシグナルを弁護士などに行くときにも出せるような仕組みはできないのかというのが一つ。
 もう一つは、質問ですが、国家公務員の場合には人事院という仕組みがあって、民間の給与と比較しながら全体を調整するという仕組みがあるわけですが、裁判官の場合には、今後、特に人数などが増えてきますと、弁護士の方との報酬の差をどう調整していくのかということがかなり大事になると思っているのですが、そこのところの仕組みはよく分かっていないのですが、ないのでしょうか。ないのだったら、少しお考えになった方が長期的にはよいのではないか。例えば弁護士にいい人が集中してしまうとか、逆に裁判官にいい人が集中してしまうとか、給与の面からそういうことが起こらないような仕組みもあらかじめお考えになっておいた方がよいのではないか、この2点です。最初の点は結構です。2番目が質問です。

【伊藤座長】それでは、裁判官の現在の給与体系は先ほどの御説明のとおりですが、それについて、今、奥野委員のような立場からの、いわば根本的な見直しといいますか、そういうことについての検討はどうかという、そういう御趣旨だと思いますが。

【植村参事官】まず、前提について事務局からお答えしたいと思いますが、先ほど申しましたように、一般職の国家公務員につきましては、「給与法」、これは略称ですが、給与法というのがございまして、その別表にいろいろな種類の俸給表がございます。一番典型的なのが先ほど申しましたいわゆる行政職(一)の俸給表でございます。人事院が、今、奥野委員がおっしゃいましたようにいろいろ事実調査をいたしまして、毎年毎年勧告をいたします。人事院の勧告というのは、給与全般についての勧告であって、パーセンテージだけではないのですが、一番報道されるのはパーセンテージでございます。過去は大体プラスの数字が勧告されておったわけですが、ここのところはマイナスの勧告が出ております。
 それが出ますと、今回も国会でやっていただいたわけですが、まず給与法の別表の数字が、そのパーセンテージに基づきまして上下いたします。裁判官の報酬についての法律も、それと全く同じ考え方で、同じパーセンテージを使いまして上下させるということで、現状としては人事院が行っております民間準拠の手法を、裁判官の報酬法も前提にして数字が動いているという実態がございます。実態だけ当方から御説明いたしました。

【最高裁(小池審議官)】人事院というのは行政の方のシステムですけれども、今お話がありましたように、それを準拠した形で、裁判官の報酬についても民間に準拠するということで、これはいわば立法依頼をして、法務省提出法案として裁判官報酬法が動いていくことになります。裁判官の任命は弁護士からの任官をはじめ裁判所法自体が給源の多様化を前提にしておりますので、特に判事などの水準は、一般職の公務員で言いますと、指定職のところで対応しております。それは弁護士という職業の方の収入ということを想定したとしても、流動性というものの大きな障壁になるものではないというようなことも想定していると。もちろん退職金制度をどうするかというような問題がありますけれども、そこはそうであると思います。判事補などの場合には、お医者さんと同じように、初任給調整手当というのがございますが、景気のいいときは弁護士事務所の初任給がよいというようなこともあり、そういったシステムがあるということでございます。
 そういう意味で、御指摘のようなものは、十分かどうかということはありますけれども、そこはビルトインされているかと思いますし、こんな点も考えながらシステムを作っているということでございます。

【奥野委員】今の判事の方はお仕事が忙しく高給だと伺っているのですが、今これから人数を増やしていくことを考えれば、人数をむしろ増やして、裁判の国民にとっての利便性を高めながら、給与については、逆に今の行政職と裁判官との格差みたいなものを残す必要が本当にあるのか。特に弁護士の方の給与所得が下がってくると思うのですね。そういうことも含めて、民間、行政職及び弁護士、三にらみぐらいでうまく柔軟に対応していける仕組みを作っていただければと思います。
 すいません。途中退席させていただきます。

【伊藤座長】どうもありがとうございます。ほかに御質問どうでしょうか。どうぞ、佐々木委員。

【佐々木委員】進級制の問題なのですが、これを考える場合に、何段階かということをしきりに審議会等で言っているわけですけれども、勤務年数との関係で、一般職国家公務員の場合はどうなっていくのかという問題と、裁判官の場合はどうなっていくかというような比較をイメージでやって議論の前提としたいと思うわけですが、そのあたりいかがでしょうか。

【植村参事官】それではもう一度資料22−6をご覧ください。一般職の国家公務員につきましては、採用試験の種類によって、現在Ⅰ種、Ⅱ種、Ⅲ種と典型的なものはございます。Ⅰ種採用職員の場合には、行政職俸給表(一)の適用を受けますけれども、まず3級に格付けされると聞いております。その後、先ほど最高裁からも説明がありましたように、勤務を継続することによって職務評価も高まってまいりまして、係長、課長補佐、課長などのポストに就いてまいります。そうすることによって、図の下の方向に毎年上がりつつ、そういう格付けが上がりますと、今度は右の方向に動いてまいります。将来、指定職俸給表に行くような方は、50前、40代後半ぐらいには11級に到達して、その後、指定俸給表に移られているように伺っております。
 この間、したがいまして、22から23歳で入省して50歳前、40歳代後半ということになりますと、25年とか26年、そのくらいかかって、この行政職(一)の俸給表をずっと上がっていくということのようでございます。その間、何段階通過するかでございますが、これは推測ですが、給与法によりまして、先ほども説明がありましたように、通常毎年一回図の下の号俸、図の上から下に移ることになっておりますので、少なくとも年数程度の段階は通過しているのではないかと思われます。
 それから、指定職俸給表の方にまいりますと、段階そのものは法律上12段階に分かれております。定年は60歳でございまして、運用は私どもよく分かりませんが、50歳前に指定職俸給表に移って、定年が60歳でございますので、その間、用意されている指定職俸給表としては12段階あるということだろうと思います。
 これに対しまして裁判官は、判事補の10年間に12段階進級いたします。毎年一回強ということになります。その辺は一般職の国家公務員とそれほど変わらないのかもしれません。
 その後、判事に任官いたしまして、先ほど最高裁から御説明がありましたように、任官してから大体20年ぐらいは同期は同一で上がってまいりまして、判事の4号まで昇給すると聞いておりまして、ということは、判事になって10年ちょっとの期間で5段階、2年に一回ぐらいのペースになっていくと。その後は、裁判官がそのときに大体何歳になっているかと申しますと、現在、判事補の任官の平均年齢が26歳と聞いておりますので、大体20年たつと47から48歳ぐらい、あるいは49歳ぐらい、そのくらいで多分3号の人が出ているのではないかと思いますが、そこから今度は定年まで、65歳でございますので、相当長い期間をこの残りの段階で上がっているのではないかと思われます。
 そういう意味で、年齢が上がるに従って、裁判官の報酬の段階制というのは粗いものになっていると。非常に粗く言えば、そう言えるのではないかという気がしております。
 以上でございます。

【伊藤座長】それでは、御質問、また後で関連していただいても結構ですので、一応裁判官の報酬の進級制についての意見の交換に入りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【平山委員】よろしゅうございますか。

【伊藤座長】どうぞ、平山委員。

【平山委員】裁判官の報酬のことでございますので、外部の私どもが何か言うのは大変恐縮いたしますが、制度論ですから申し上げますと、審議会意見書はこの問題を裁判官の人事制度の見直しという大きなわくの中で、透明性、客観性の確保というところで、先ほど議論しました人事評価の問題とこの報酬の進級問題を書いているのですね。ですから、ここで今、植村参事官から御説明いただきまして、私はなるほど公務員はそうなっているのかというようなことが分かりますし、小池審議官から説明受けまして、外国はそうかということはよく分かりました。
 しかし、座長、この検討会では、何をするかが問題と思います。つまりこの問題を検討しろという審議会意見書を踏まえますと、例えば今までのように、何かたたき台を出していただくのか、それとも、ここでこの勉強をいたしまして、よく分かりましたということで終わるのかという問題が一つあるように思いまして、今の説明を受けますと、例えば裁判所の方の御説明で、私もなるほどと思いまして、裁判官の職務の特質との関係と国家公務員給与の特質との関係、この二つがあるということで、審議会意見書はどうも1の方に非常に力点があって、今までの制度では、何かそこにきょうの説明で、4号まではずっと同期の者は、特段の事由がなければ一緒に上がっていきますので、そのことが私は独立性とかという問題には何ら関係ないではないかと思います。
 そういたしますと、最後の方で、つまり3号のところで、何かそういう裁判官の独立とか職務の比較等からみて差別することが透明性、客観性があるのかどうかということをもう一度検討しなさいと、こう言っているのかという気がいたしまして、そういう意味で、事務局から何かたたき台が出るのか。それとも今の制度がこれ以上のたたき台は出しようがないというようなことなのか。例えば日弁連司法改革実現本部ではワーキンググループを作りまして、裁判官のことではございますけれども、審議会意見書が書いておりますので、研究会をやっているようです。そして、そこではこのようにした方が理想的ではないかという案はあるようでございますので、そういうのもここへ出して、十分検討していただいて、やっぱりこれだというようにするのがこの法曹制度検討会の趣旨に合うのではないかという気がいたしまして、そこのところはどう考えたらいいのか。
 私自身、個人的には、裁判官が我々の中では最高に頑張っていますし、ですから今の報酬が高すぎるとかそうは思いません。ですから高いところでひとつやってほしいと、いい仕事をと思っておりますけれども、先ほどお帰りになりました奥野委員の意見などもありますけれども、いや、そんな必要ないのではないか。しかし、これは日本の司法というものをきちんとしたものに守っていくのには、私はきちんとしたものをお払いすると。ただし、それがほかから見て、裁判官の独立とか、そういうことに対して疑念のないようにするということは意見書が言っているようなことがあるのか、ないのか分かりませんけど、そういう点は十分議論していくことが、この意見書に答える趣旨ではないのかなと、こう思っておりますので、そこのところを座長に、今後のやり方についてお聞きしたいと思います。

【伊藤座長】このテーマは、まさに報酬の進級制の問題でございますね。ですから、それについていろいろな御意見が恐らく委員の間にはあると思うのですね。私が最初から、こういう意見があるだろうとか、そういうことは申し上げませんけれども、それをそれぞれ開陳していただいて、その上で、先ほど事務当局から説明ございましたいろいろな周辺環境等もございますので、どのように皆さんの御意見がまとまるのか、あるいは多様な御意見が出されるのか、それを見て決めていきたいと思っておりますけれども、どうぞ、ですから、この問題についてのそれぞれの委員の方々の御自身の御意見を承りたいと思います。どうぞ松尾委員。

【松尾委員】今の件の私の理解なのですけれども、改革審の意見書は、裁判官の人事制度の見直し、つまり透明性、客観性の確保ということで大きく括って提言していますが、具体的な中身としては、裁判官の職務の複雑困難性、責任の度合い、要するに裁判官の特質から見て、現在の報酬の段階、つまり進級制、これの刻みが果たして妥当かどうか。もう少し簡略化すべきではないかということですね。それに関連して、こうした多段階の状況では裁判官の独立の問題と何か関係あるのではないか、そういうことを検討しろということだと思うのですね。
 そこで私の意見なのですが、私は結論から言って、これまでの国会の審議の流れ、特に昭和26年以降の国会の審議の流れ、あるいは国家公務員の俸給の刻みの状況、裁判官の俸給制度をそれに準じて決められているということ。それから外国の特にキャリア制度をとっているドイツ、フランスとの比較、そういったことを考えますと、検討しろと指摘されている、この進級制については、それほど変えなくてはいけないほどのことではないのではなかろうか。それは検察官の場合も同じような考え方になっているかと思いますので、それほど異論があると私は思わないというのが一つの意見です。
 もう一つは、先ほども説明がありましたが、平成13年の12月に公務員制度改革大綱が出され閣議決定されているということはかなり今後の問題として大きな要素だろうと思います。現時点である程度の結論を出したとしても、将来この大綱に基づいて公務員制度が相当変わってくる。この刻みの問題も変わってくるだろう。これにつれて裁判官の問題も決まってくるわけですから、ここに焦点を合わせた状況になってくるのではなかろうか、こういう意見です。

【伊藤座長】分かりました。どうぞ、岡田委員。

【岡田委員】私、女性なものですから、ちょっとこういう数字見て思うのですが、これは月給ですよね。ですから大体お給料というのは年俸でイメージすると分かるような気がするのですけれども、一番子どもの教育費がかかる年代がこれでいくとどの時期で、そういう方々が年俸でどのぐらいおもらいになっているかとか、その辺のところもちょっと分からないのですけど、ただ、等級というのですか、号級というのですか、それを減らしたとしても一回一回の上がる率は高くなるわけだから、あまり意味がないのではないかと思うのです。だから、それをなおかつ議論しなければいけないというのはもうちょっと別な部分で不明瞭な部分があるから、そういう議論が出てくるのかなという気がするものですから、もしかしたら、その辺が私も分かれば、自分の意見が言えるのかなと。
 それはこういう月額とかそういうのではなくて、それ以外の手当というのでしょうか、その辺でもしかしたら差があるのかなとか、何かそういうことをちょっと考えているのですが、これが議論になる理由を知りたいと思いまして。

【伊藤座長】分かりました。そこを小池審議官に御説明いただいて。

【最高裁(小池審議官)】私、審議会のこの議論も実は傍聴しておりまして、そのときは、先ほど参事官から御紹介がありましたように、多段階の給与体系の中で、要するに昇給差別というものがあるのではないか。しかも、そこもあまりはっきりはおっしゃいませんでしたけど、それが力量というのでなくて、物の考え方とかそういうところで差別するのではないかというような、いわば最高裁に対する人事の不信があり、そんなことがあって法曹一元という議論が激しく主張されました。それと連関してこういった議論があったと承知しております。
 少し補足させていただきたいのは、裏の手当とかというのはございませんので、先ほどこれは中川委員、奥野委員からいろいろ御批判があるのですけれども、21年間同一処遇で横並びでいくというのはおかしいのではないかというところですが、これは裁判官のそういった独立とかというところについては非常に配慮しています。先ほど佐々木委員からもありましたけれども、裁判官はいつでも、どこの裁判所にいても、どのような事件を担当していても、その事件が重かろうが、軽かろうが、そこに全力投球する。とにかく全力投球しますし、廉直さを保って中立公正の裁判をします。
 これは世界中の裁判官に共通していると思うのですけれども、地位、処遇、評価、そういったものから少し自由にやって、距離を置いて、ただただ、事件を公正・中立に具体的妥当性というところを追い求めて裁判をしていくというところに生きがいを感じているし、それが職業の倫理の中心であります。ですから、大向こうを唸らせるような法律論を展開するというのが決していい裁判ではなくて、地味なところで、あるいはひっそりした和解で終わったり、あるいは当事者間が話し合いが終わって、取下げで終わるという民事事件もあるのですが、それでもよかった、これがベストの裁判ならよかったと思うのです。実は何百枚という判決を書いているのに事件が取り下げられるということもあるのです。どうしてと思うのですけれども、それが当事者にとってベストならそれでいいではないかと、そういうのであると。
 日本の場合には、御批判はありますけれども、同期同一処遇という点、と全国転勤制、つまり、どういう裁判官も皆全国津々浦々行くのだという運用、大きく言うと、その二つの運用で公正・中立・廉直というところを築いてきた。恐らく賄賂の授受ということが、国民のサイドもおよそ考えないというような職業倫理というものが確立されたというのはそういうところがあるのかなと思います。
 やや、脱線しますけど、先日、アジア太平洋最高裁長官会議というのが日本で開かれました。各国の裁判所で最も興味のあるのは、裁判官の汚職をどう防止するかというところに最高裁の裁判官方の関心が強かったようです。我が国ではそういうことは国民も考えないし、裁判官も考えない。実情を述べると、「それはまたそういう嘘を言って」と、こういう反応があって、なかなか信じていただけない。ただ、そういうものが築かれたというのはそういうことでございまして、ちょっと脱線してしまいましたが、裏の手当があるというのではなくて……。

【岡田委員】ごめんなさい、そういう意味で裏の手当と言っているのではなくて……。

【最高裁(小池審議官)】この議論はそういう発端で始まり、最高裁は最高裁としていろいろ御批判がありますが、そういったところは考えて運用しています。長くなりましたけれども、そういうことでございます。

【岡田委員】すいません。私、そういう意味での「裏の手当」と言ったのではなくて、きちんと決まった報酬以外にいろいろ手当ありますよね。その部分で、何か不明瞭な部分が外から見たらあるのではないかと、それがこういう議論になってきたのかなと思ったものですから。

【最高裁(小池審議官)】その点もございません。

【松尾委員】一般的に外から見ると、20年間も全く給与が変わらない、同一処遇というのは、裁判官の仕事の特質から来ることということは分かりますが、何か違和感を感じ、疑問に感じるわけですね。民間の感覚では、先ほどの評価の問題と関連する話なのですが、いい仕事をすれば、成果主義を採用しておるところは当然上がっていくだろうし、平均以下の仕事をしておれば、人よりは落ちるのが普通の感覚だろうと思うのですね。それが裁判官にはない。それはどの裁判所に行っても一生懸命やっているのだからと言えば、それまでなのですが、その辺のところが分かりにくい部分があるのですね。その部分の差異があるとするならば、裁判官の異動のときに何らかの差異がつけられているのではないかとも思うのです。現実にいろいろと不満を持たれている方たちは、俸給のことについてはあまり出ないが、任地の問題についてはかなり問題にされている部分がありますので、その辺の実態はどうなっているのですか。

【伊藤座長】釜田委員、今の関係の発言ですか。

【釜田委員】私は感想です。

【最高裁(小池審議官)】給与の問題と、また異動の問題と、きょうのテーマでどういう関連があるかというところがありますけれども、異動という問題については、能力とかそういうもの以外の様々な要素というところは先ほど申し上げたとおりでございます。ですので、それはいろいろ人事でございますので、不満もありますし、それから給与以外のところで、裁判官というのもなかなか優等生の集団でございますので、給与は同じだとしてもいろいろなところで差があるというところが気になるのかもしれません。
 ただ、恐らく先ほど裁判官の評価基準というところで三つの大きな括りがございましたけれども、それがどれが重要かというのはなかなか難しいところがあります。ただ、大きな裁判所でたくさんの事件が来て、それを迅速に処理していくということは、一つの要請でございまして、そういうものが得意な裁判官もいますし、割合こじんまりとしたところで、事件数はそんなに多くないけれども、そこをじっくりと聞いて、良い耳を持っているという裁判官はそれはそれでおられます。そこは長い評価の中で適材適所というものはあるのだろうと思います。それを受け手の方でどう感じるか。それは裁判官としては、率直に申しますと、東京とか大阪の事実審の裁判長というのは一つの夢でございます。そこはそうでありますけれども、それはそれでまた一プロでございますので、そこはまた適材適所、持ち味を活かす人事というものはされているという面はあろうかと思います。お答えになっているかどうか分かりませんけれども、受け手の方は自己評価というのは様々なございますので、いろいろな声はあり得るということだろうと思います。

【伊藤座長】どうぞ、釜田委員。

【釜田委員】今の御議論と最高裁の御説明は、昨年、裁判官の給与が下がりましたね。あのときに、本来、国会の場で本当に正面から議論すべきチャンスだったのですね。ところが日本はこういう俸給形式をとっておりますから、人事院が公務員の給料の減額を勧告した。最高裁判所も時代の今の経済状況をお案じになって、よろしいということで承認されましたね。重大な問題を含んでいたのですね。
 私はあのときに、今も思い出したのですが、英国の裁判制度を見て思い出したことがあるのですが、第二次大戦後の物すごく経済状況の悪いときにイギリスで公務員の給料の値下げがありました。これは当時の経済状況は今よりももっと悪いですから、当然世論はそれを支持したわけですね。ところが裁判官の給料には手をつけないということで、これを下げなかったというのは40年代のことですよ。それで英国司法部は気の毒がりまして、結局裁判官の方はそれを受け取られて自発的に少しお返しになられたという形をとられたのですね。
 ですから昨年度も、それはなぜかといいますと、先ほど御説明にありましたが、やっぱり最後の、第3の評価項目にこだわりますのは、あれを貫くには、確固とした経済的な裏付けというものがないとできないですね。
 私はもう一つ思い出すのは、昭和25年に最高裁が下級審裁判所にも憲法判断権があるかということを争われました物すごい事件がございますが、25年だったと思いますが、最高裁は最高裁判事も下級審裁判所の裁判官も、職務と職権の行使において対等であるとおっしゃったことがあるのですね。だから、いわゆる簡易裁判所で勤務の裁判官の方も、最高裁に座っている方も、扱う具体的事例は違います。違いますけれども、そのときに憲法判断を求められることあるのですね。そのときに一切の圧力を排して、ご自分の判断を下そうと思ったら、それは何といってもご家族を持っておられる方の身分保障がないとそれはできないです。
 だから、一番大事なのはそこなのです。裁判官の給料を昨年下げたというのは、日本の議論は非常に薄っぺらなところに行っているのですね。これは恐らく後でいろいろ歴史上問題になる。海外から見て比較研究やった場合には、恐らく日本はどこまで詰めたのかということ。そういう私は印象を持っております。これは一つは、給与体系、私もどちらかというと英米の方にいつも目が向いておりますので、こういう単純な給与体系でいくというのだけど、日本は長い間、明治以来、そういう部分をとってきましたから、ここで我々が数時間議論しても、なかなかそれを変えるような案は出てこない。これをやろうと思いましたら、先ほど座長の御紹介がありましたように、どこか別途委員会を設けて徹底的に議論して、公務員制度全体との関係でやるしかないと思いますね。
 そのときに、裁判官の給与というのはどういう意味を持っているのかということを国民自身が考えるチャンスになると思う。去年がそのチャンスにあまりならなかったような気がしますね。あの大問題を抱えながら。
 ですから、そういう形で、こことしましては、次につなぐような提言をするというのも一つの方法ではないかと私は感じております。

【伊藤座長】どうぞ、太田委員。

【太田委員】裁判官についての議論なのですが、検事も準司法官としてほぼ同じような身分や給与体系を持っておりますので、経験的なことも含めてお話ししたいのですけれども、裁判の仕事は、検事にも通じますけれども、民間企業が新たな製品や顧客、営業を開拓し、顕著な業績や利益を上げていくようなこととか、また、一般行政庁とは、公務員という意味では共通の部分がありますけれども、行政庁が政策官庁として、今までのやり方にとらわれず新たな非常にいい企画や政策を考え出して立案し、実現していくというような仕事とも、違う面があるのですね。そういった意味では、裁判官の仕事というのは単なる費用対効果とか、業績主義というものには基本的にはなじみにくい職業なのだろうと思うのです。
 もう一つ、裁判官や検事は、自ら事件を選べないのですね。裁判官や検事が自分で事件を作り出して行くわけではなく、事件が生じ、それを担当することとなった場合に、その事件に対していかに公平・厳格・適正に対処していくかということが本質です。このような事件に対する取り組みの在り方というのは、政財界を揺るがすような、あるいは経済に大きく影響を与えるような大事件であろうと、市民生活に密着した少額事件だろうと、これは基本的に一緒なのですね。
 もう一つの視点は、裁判官も検察官も優秀な人だけを東京などの大都市に集めるというのはいけない。全国の小規模地裁や地検と大都市の地裁や地検というのは基本的に等価値であって全国に優秀な人材を安定的に配置しなければいけない。概ね恐らく裁判官、検察官は三十数年の勤務のうちで、十数回転勤・異動するのが平均的で、その間、多分2から3回単身赴任するというような人も多いのではないでしょうか。親の介護その他いろいろありますけれども、そういう中に、どんな場にあっても彼が先に東京に入ったとか、彼は有名な事件やっているけど、自分はこういう無名の事件しかやる機会がないとか、そういうことに左右されずに、とにかく目の前の事件を誠実に解決していくというようなことが、職務環境として整えられることが大事であると。人間は弱いですから。そのような職務の性質ということは是非御理解いただきたいなと思うのですね。
 もう一つは、給与の画一・公平ということについてはいろいろ見方があると思います。これのあらわれ方は業種によって違いますよね。給与が画一・公平であるということが下手に働くと、頑張ったって、さぼったって、給与は変わらないんだから無理して頑張ることはないよねという風潮になってしまう、これは古い社会主義社会のようなものかもしれませんが、もし、そのような業種であるならば、思い切ってメスを入れて給与に端的に差をつけるということを制度的に導入すべきでしょうが、裁判官の場合は、皆さん多くの事件を抱えて非常に忙しい。24時間判決のことを考えておられる人がほとんどですから、そういった意味では皆さん頑張っておられると思うのですね。そのような職業集団の中で、直ちに若いときから差をつけていくというのはいかがかという感じがいたします。
 松尾委員がおっしゃるように、20年が長いかどうかというところなのですが、確かに民間の方の常識的な感覚としたら、そんなという、私ももし民間人で見たら、多分そう見えると思うのですね。実際には、さっき言ったように、裁判官は皆、基本的にはまじめにやっている。しかし、長い間の勤務を通じてだんだん見えてくるのですね。その中には人以上に努力し、頑張る者と、どっちかというと努力が足りず後ろ向きの者と、能力や努力の差は次第次第に出てくるのですね。そして本当にその評価が客観的に定着してくるのは、やはり十数年はかかるという感じですよね。そして、このようなことを基本としつつ、それを具体的な給与に反映させるのをいつにするかという点で、20年が長いかどうかという議論はあると思うのです。
 そうしますと、結局これは評価の問題と通ずるもので、例えば、名もない事件でも、本当に当事者からいい評価を受けて、公正・中立な裁判をしているということの評価が蓄積されて、最終的に上位号俸に上がっていくときに、そのようなこともきちんと反映されるかどうかということがより本質的な問題なのかなという感じを持っております。
 以上です。

【伊藤座長】分かりました。ちょっと中間的な整理をさせていただきますが、報酬の段階制に関しましては、松尾委員、釜田委員などから、現在の制度でそれほど重大な問題が生じているとは言えないのではないかという御発言がございました。したがいまして、それ以外のお考えがあれば承りたいと思います。
 それから、同期同一処遇、21年間にわたり、これについての問題があるという点は松尾委員からの御指摘があり、他方、ただいま太田委員から御発言のように、それについては一定の合理性があるのだという御意見もあったところですので、そういったことを踏まえて、もう少し御意見をちょうだいしたいと思います。どうぞ、中川委員。

【中川委員】今の太田委員のお話というのは大変説得力があるのですよね。なるほどというように思います。ただ、あまりこれを強調されない方がいいと思います。みんな一生懸命やっているのですよね。民間の人も24時間、実質24時間勤務ですし、辞令一枚で沖縄でも、沖縄ならいいですよね。アフリカのマラリアの真ん中に飛び出して行かなければいけないわけですから、あまりおっしゃらない方がいいのだと。ただ、特殊性があるというのは分かりますね。

【太田委員】業種が全体として、そのような状況にあるとということでしょうね。私も在外公館におりましたので、おっしゃるように民間の方が本当に命をかけて企業……。

【中川委員】余談ですけど。ですから私は刻みの問題というのはあまり気になりません。これは給与差別というのは時代おくれの話ではないかと思いますし、それは気にならない。それともう一つは、司法の権威や独立性を守るためにかなり高いものを支払うというのは私は構わないような気がするのですね。だから、さっきの釜田委員のおっしゃったことには、そうだなというように私も思います。
 そこまでは総論的にそうなのだけど、若干のことを言わせていただきますと、人間というのは、年を取るということをみんな忘れるのですね。これは現実なのです。年寄れば寄るほど自分は年寄ってないと思うのもまた人間なのですよね。そういうものを現実直視して、民間ではどのように考えているかというのを御参考に申しますと、大体35歳を基準にして、そこで昇給をストップする会社が、もっと早い会社もございます。ということは、35歳ぐらいが一番能力発揮の、これは民間の仕事ですから違うかもしれませんが、限度だと見ているわけですね。35歳から45歳ぐらいまでがいわゆる働き盛りで、45歳を過ぎますと、もう給与はダウンさせるというのが一般的に行われているやり方です。その間に大いに稼ぎなさいよと。稼ぐというとおかしいけど、いい成績をとって、もちろん業績評価ですから、いい人と悪い人とで大体3割ぐらい年収で差がございますから、要すれば頑張っていい成績を取れよということになっているわけですけれども、そういうのから見ますと、さっき松尾委員がおっしゃった20年間というのはちょっと長い。20年目になりまとす、この年齢から言いますと、裁判官の平均年齢はいくつか分かりませんが、44から45歳とか、もうちょっと上かもしれませんでしょう。それまで一律無条件に上がるというのは、今の話からしますと違和感があるなと。
 繰り返しで申し訳ございませんが、人間の能力の限界というものを、これは裁判官であろうがだれであろうが同じだと思うのですね。そこのところは、これは実体論で法律に取り入れるのは難しいかもしれませんが、考えるべきではないかという感じでございます。

【木村委員】中川委員の御説明を聞いてよく分かったのですが、ただ、私ども裁判官、検事にしろ、経験の蓄積といいますか、法律上の係争が絡む人生の様々な問題については、35歳ではまだまだで、ある程度経験の蓄積があっても、これからだんだん熟練していって、そういう判断がより良くできるという職業だと思います。ですから、そういう意味では裁判官給与が、最高のところが35歳というのは問題があると思います。
 最高裁判事の定年はいくつですか。

【佐々木委員】70歳。

【木村委員】70歳で相当いい給料ですよね、これを見てみると。普通70歳の人はもらえない給料をもらうわけですから、しかし、それだけの見識と識見と経験と豊かな人格と兼ね備えた裁判官が、そこまで熟練して、最高裁のところまではいかないにしても、裁判官に対して国民が持っているイメージというのは、仕事を若くてもバリバリやるということはもちろんそうなのですが、しかし、豊かな社会的な体験を積むために、今度2年間どこか他職経験をするとか、そういうこともありますけれども、そういう豊かな人間が経験の蓄積の上に立って、本当に社会的な正義感とか常識に沿った判断をしてくれるような、そういうシステムの中での裁判官のあり方なので、私はビジネスと発想とは根本的に違うと思うのです。

【中川委員】私も年寄りですから、そう考えたいのですね。そう考えたいのですが、これが実はイリュージョンじゃないかと。本当に40歳の裁判官、50歳の裁判官、60歳の裁判官、上になればなるほどいい判決を書きますか、あるいはいい裁判をしますか、という問題ですよね。

【平山委員】太田委員と大体同じような考えですね、感じとしましては。それから、釜田委員がおっしゃっているのも物すごく大事なことと思っておりまして、裁判官というのは、最後の要するに国家の制度を支えていただいているわけですね。ここがぐらついたらどうにもなりませんね。そういう意味で物すごく大事な仕事だということで、中川委員のおっしゃること分かりますけど、裁判官の報酬は十分なものを支払わなければならないという点、ですから、例えば35歳でもうストップするとかということではなくて、積み重ねでいい判決も出てきているのは私は多いと思います。ですから最高裁判所でいい判決が出るわけで、最高裁判事はお年は非常に高いですよね。ですけれども、そこで出ているという、それを我々は信頼しているということもありますので、ちょっとほかの仕事とは違うなと思っております。
 今、問題なのは23段階です。そのように分ける必要があるのかという点について、審議会意見書が指摘したことも検討に値するのかなと思っておりまして、例えば、判事補につきましては、10年間で3年、5年、7年と経験をふめば役割も変わってきますので、そういうところで一つの段階を設けるとか、それから判事につきましては、今回、最高裁判所で10年ごとに、きちんと評価もして、そして再任をしていくというようなことがありますから、そういう新しい制度とも見合って検討する必要があるのかなという気がいたしております。
 それから、最後に一番気にいたしておりますのは、これは後ほど植村参事官からお聞きしたいと思っておることですけれども、今の4号から3号に行くところについて何か不満が多いと聞くのです。ですから、そういう不満はおかしいと、このようにきちんと説明できることですということを透明性を確保していただくというようなことをやれば、審議会意見書に随分答えることになりはしないのかという気はいたしておりまして、そういう私は個人的には意見を持っておりますね。

【伊藤座長】今、おっしゃった事務局に御質問というのは具体的には。

【平山委員】4号から3号のところがちょっと私としてはよく分からないのですね。そこに早い人と遅い人があると一般に言われていることについて、どういうことで、それは同期でも先に行く方がいるし、遅い人もいますよということが端的に説明できれば、それはいいと思うのですけど、そこのところが私はよく分からないものですから、例を引いて御説明いただければよろしいと思っております。

【植村参事官】そこは運用の問題でございますので、事務局は全く分かりません。ですから、それは最高裁にお尋ねいただいて、最高裁の方でお答えいただけるかどうかの問題ですが。

【平山委員】巷間言われているところは、そこに何かある種の政策が伴っていて、裁判官の例えば独立について問題があるのだということを言う人がいるのですよ。ですから、そのあたりを、小池審議官の方はどうですか。ご覧になっていて、そこの早い人と遅い方があるというのはどういうケースで出ているのか。

【伊藤座長】評価の一般的な問題でお答えいただければ。

【平山委員】一般的な問題です。

【最高裁(小池審議官)】金井参事官から申し上げましたように、そこはそのぐらいになりますと、部総括というようなことが考えられます。それは裁判長であるということとともに、部のマネジメント、あるいは裁判官会議の有力メンバーとなってきますので、司法行政的な力量というものがあります。それはやはり20年ぐらい見ていきますと、裁判官としての理論の切れ味はあっても、組織的な適応力とか、そういうものは次第に見えてくるわけでございます。そこは20年間見て、そういうものの見極めができないような組織というのは、また、これは不健全でございますし、そこはそれぞれの判断をして、そこは差がついてきます。そこは私どもは国の機関の在りようとして、あるいは人事の在りようとして合理的なものであろうと思っております。
 あとは、人事評価という点について、今後どのように本人に、いわば対話型の人事ということになるわけですね。面談をしたり、先ほどいろいろ御指摘ありましたけど、自己申告書面というか、自己申告のところで、申告することによって、所長がそれを契機に面談をします。面談をしますので、開示といっても、関係はほとんど面談の場で、あなたの評価はこうですよということが分かるような面談をしていかなければいけないわけです。また、開示というようなところで客観的に本人も分かり、自己を高めてもらうし、高まらない人はやはりそういうところで差がついてくると思います。それは今後そこも透明性を持った形で運用していきたいのです。それが審議会意見の趣旨でございましょうし、それを目指して人事評価、あるいは指名諮問委員会の問題、こういった問題はトータルのものとして目指している、こういうことでございます。

【伊藤座長】平山委員の御意見の方は、報酬の段階制、いわばちょっと細かすぎるから、もう少しそれを整理してという。

【平山委員】もう少しシンプルにできることがあれば、するということも検討すべきではないかというのが1点でございます。それから、今御説明いただいたように、全員を何か役職に就けるわけにいきませんよね。ですが、給与については、別に同額でもいいのではないかという気がいたすものですから、そこのところがどうなのかなという質問なのです。

【伊藤座長】ちょっと事務局から。

【植村参事官】事務局としては、審議会意見書には枠囲いの外にご説明しましたような記載がございまして、いろいろ調べたわけでございます。平山委員としても、今の段階制では刻みが細かすぎるのではないかという御意見と伺いましたけれども、その理由を教えていただければと思うのでございます。どういう理由で今の段階は刻みが細かすぎるのか。その刻みが細かいから、こういう弊害が生じているとか、そういう点を具体的に教えていただければ、と思います。

【平山委員】私は同期がそのまま上がっていくならば、細かい刻みで弊害があるとは申し上げておりませんですね。それは同期は同じレベルで上がっていけば、全くそれに文句言える筋はありませんよね。ですからあとは、例えば1年ごとに上げるのがいいのか、それとも職務の特殊性から3年後とか5年後というようにした方がいいか、あるいは職務が例えば裁判官ですと、3年たてば何がやれるとか、5年たてば何がやれる。特例がつけば何がやれるというようなことがありますので、そういうこととの絡みで、何か刻みを打つ方がいいかどうかということは検討に値するのではないか、こういう意味です。

【伊藤座長】どうぞ、田中委員。

【田中委員】私もそんなに進級制一般について、裁判官の職権行使の独立性への影響と関連づけて論じる問題ではないような感じがしています。さっき平山委員おっしゃった4号俸から3号俸への昇給という点も、私もどっちかというと、21年間も同一処遇というのは長過ぎるというイメージを持っていて、それぞれやっている職務の内容で差が生じるというのは、外部から見ても、これは非常に職責上重要な仕事だと、これは必ずしもそうでないというのは分かるので、その段階で差が生じたことの説明がきちんとできるシステムであれば、問題がないように思います。昇給制が裁判官の独立に影響を与えているのではないかという審議会における中坊委員の意見を見ますと、みんな国民はそのように見ているとおっしゃっていますが、みんなそのようには見てない可能性もあるので、実際の運用はどうなっていて、進級制をとっているから、そういう問題が生じているわけではないのだということをきちんと説明することが先決です。多少刻みを大きくするか、少なくするか、これはポリシーの問題だと思うので、それで特にどうなるということではなくて、各裁判官の報酬に差が生じる段階において刻みの中にどういう位置付けていくかという問題だと思います。この問題については、人事制度の透明性、公明性を確保するということで、社会的な納得が得られるのではないかという感じがします。あまり進級制(昇給制)自体をどうのこうの、諸悪の根源みたいに議論しても仕方ないという感じがするのです。

【伊藤座長】どうぞ佐々木委員。

【佐々木委員】私も審議会意見書にある二つの問題意識、独立性を侵しているのではないかという問題と、職務の複雑困難性、あるいは責任の度合いに判然としないのではないか、こういう根拠ですけれども、第1の問題点については、中川委員からは厳しい砲火を浴びておるようですけれども、一応21年間、これについて裁判官に全力投球をできるシステムを作っていると、そういう運用を作っていると。担当事件を公正・中立に全力投球をしていける運用に資しているのではないか、こう考えております。
 それから、もう一つの問題として、複雑困難、責任の度というのを国家公務員と比べて全然否定するものではございませんけれども、それはある一定の時期から以降、最高裁の説明にありましたように、長年の職務評価が経験とともに高められてそれが評価されていき、地家裁の部総括であるとか、高裁の部総括、あるいは所長といった、そういうところについていって、上位の号俸を受けているわけです。なお今後新しい人事評価制度で運用していただき、それが目に見えた形になるようであれば、上位の号棒の昇給についての不満も、あえて言いますと、自己評価と客観的な評価のずれだったのでなかろうかというところが判明してくるのではないかと思います。
 もう一つは、国家公務員制度との絡みで、刻みをどうするかという問題、これと密接に絡んでいますので、制度改革の議論を踏まえないと、ここで報酬の刻みを粗くするか、そういう議論はできないように考えております。

【伊藤座長】それでは、大分予定の時間過ぎておりますので、今までの御意見を承っておりまして、私が理解したところを申し上げさせていただきますが、進級制そのものについて、これは抜本的におかしいというような御意見はなかったように思います。それから、現在の段階制自体についても、相当の合理性があるという御意見も多かったように思います。ただ、平山委員のように、刻みそのものについては検討の余地があるのではないかという御意見も承りました。それから、同期同一処遇については、21年間というのはいくらなんでも長過ぎるのではないか。それについての期間の再検討の必要はあるのではないかという御意見はかなりあったように思いますが、それ自体がナンセンスであるということは、裁判官の職務の性質から考えて、そういう御意見は強くはなかったように思います。
 他方、当初、事務局からの説明にもございましたし、また、松尾委員の御指摘の中にもありましたが、公務員制度改革の中で、俸給表自体についての改革もこれも予定されているというのも事実でございますので、そういった点についての配慮も必要だろうということになります。
 そこで、大体の議論の方向性としては、それほど正反対の議論がなされたというようには思いませんが、しかし具体的なところについてすべて意見が一致したと言ってしまうのもやや行き過ぎかと思います。
 そこで、私の責任で、皆様の御意見を整理をいたしまして、議事整理メモというのを作って、それを顧問会議に対する検討状況の報告の中で活かすということにしたいと思いますが、その方向でいかがでしょうか。よろしいですか。

(「異議なし。」と声あり。)

【伊藤座長】それでは、次回の検討会までに議事整理メモを作成して、それについては、皆様にその内容をお諮りすることにいたしますし、また、更に御意見がある方につきましては、御意見を追加していただくと、そういう取扱いにさせていただきます。
 大分時間を過ぎてしまいまして申し訳ございませんでしたが、特にございませんようでしたら、本日の議事はこのあたりで終了にさせていただきたいと思います。次回は、11月18日午後1時30分からを予定しております。今回に引き続きまして、「裁判官の人事評価の仕組みの整備」等につきまして、議事をお願いしたいと思います。
 直前に申しましたように、「裁判官の報酬の進級制」につきましては、本日の御意見に追加して、更に御意見があれば、それを伺って、議事整理メモに追加することにいたしたいと思います。
 どうも長時間ありがとうございました。