- (1) 裁判官の人事制度の見直し−裁判官の報酬の進級制(昇給制)の在り方について(報酬の段階の簡素化を含む)
- 事務局配布資料23−1「議事整理メモ(案)」について、座長が追加の意見を求め、次のような発言がなされた。(○:委員、□:日弁連、■:座長、△:最高裁。以下、同じ。)
○: |
前回の検討会で、現在の裁判官の報酬の進級制の刻みについては検討の余地があるのではないかという意見を申し上げたが、参考資料として日弁連の司法改革実現本部作成の「裁判官報酬制度の見直しについて(提案)」を紹介したい。
当検討会の討議が深入りしないで終わっているということでは困るので、私の意見ではないが、紹介させていただきたい。
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■: |
それでは、ただいまの御発言の内容を整理し、事務局資料23−1に追加した上で、議事整理メモを完成させ、今後の顧問会議に対する当検討会の検討状況の報告等にいかすものとしたい。
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- (2) 裁判官の人事制度の見直し−裁判官の人事評価について、可能な限りその透明性・客観性を確保するための仕組みを整備すること
- ① 最高裁からの説明
- 最高裁配布資料「裁判官の人事評価制度の整備に関する検討状況について その2」、「最高裁一般規則制定諮問委員会関係資料」15、16に基づき説明がなされた。
- ② ①の説明に対して、次のような質疑応答及び意見交換がなされた。
- [裁判官の人事評価制度全般について]
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○:高裁長官を人事評価の対象にするかどうかについて、最高裁判所一般規則制定諮問委員会(以下、「委員会」という。)で検討した結果は、高裁長官についても評価は必要であるが、最高裁が直接行うので、今回の新しい人事評価制度の対象からは外れるという理解でよいか。
△:そのとおりである。
○:不服申立手続における高裁長官の関与について、2点お尋ねする。1点目は、所長の判断と高裁長官の判断が違った場合には、高裁長官の判断が優先するという考えでよいかどうか。2点目は、原案のような考え方ではなくて、所長の当初の判断が修正されるべきとの判断が出た後に、直ちに当該裁判官に通知して、その裁判官が再び不服を申し出た場合に、はじめて高裁長官が関与するという仕組みはお考えにないのかどうか。
△:不服申立てにおける高裁長官の関与については、不服の前提となる評価における高裁長官の関与と基本的に同じ構造である。制度全体が対話型の人事という形で一貫して構成されており、不服申立ての局面においても、対話型人事の一貫として構成した方が良いだろうというのが委員会の大勢の意見だったと理解している。
○:高裁長官の判断が所長の判断に優先するかどうかという問題ではなくて、調整が2段階行われ、そういう事実がきちんと書類に残るということだと思う。高裁長官の調整の結果、地裁の所長が判断を改めれば別であるが、そうでない限りはそれぞれの記録が残るだけで、どちらが上位下位ということはないのではないか。判断が違っている場合は、違っていることを前提として、具体的な人事を行うということになるのではないか。
△:そのとおりである。
○:裁判官の人事評価について、具体的にどのように定められることになるのか。
△:裁判官の人事評価に関する規則要綱(案)に基づいて、骨格は最高裁判所規則で定めて、細目は通達で定めることを考えている。
○:不服がある場合の手続について、評価権者以外の者に対する不服申立手続として第三者機関を設けるか否かという論点については、設けないということで取りまとめられているが、その一番大きな理由は何か。
△:委員会で述べられた意見を申し上げると、評価書に書かれる事実はいろいろあるので、第三者が判断しようとしてもできないのではないか、また、評価制度の目的が長期的なスパンで裁判官を育てることにあるので、評価権者と裁判官がよく話し合う方がいいのではないか、などの意見が出された。司法制度改革審議会の議論でも、かっちりとした不服申立手続を設けるのではなくて、不服がある人にはインフォーマルな形でも十分に言い分を聞くようなシステムを設けることが裁判官の人事評価に適うのではないか、という指摘があった。これらを踏まえると、第三者機関を作るのではなくて、対話型人事の流れの中でやっていく方が良いのではないかとの取りまとめがなされたということである。
○:裁判官の人事評価制度についてのメールでの意見提出の有無を事務局に伺ったところ、本日参考資料として配布してもらったとおり、日本裁判官ネットワークの有志からの意見書が見つかったということであった。この中では、自己研鑽が有益に行われるような資料提供がなされるようにとあって、人事の資料としてではなく、自分達がデータを知れば大変役に立つと同時に、不服申立について第三者機関が必要と考えるということであるが、最高裁ではこの意見書を入手して、また、委員会では討議がなされたのか。
△:この意見は裁判所にも届けられている。これまでも申し上げたが、全国の裁判官と意見交換会を設けて、不服申立を含めた人事評価の在り方について、広範に議論しており、そのような意見も出されていた。委員会にも論点として提示して、御議論いただいた。
○:裁判官の人事評価の性質は良く分かったが、この制度は果たして人事評価といえるのかと思う。裁判の内容に踏み込んだ評価はできない、評価の結果を報酬の減額につなげることはできない、という法律上の制約はわかるが、その他は必ずしも制約はないのではないか。裁判所は、中央でもへき地でも、上級審でも下級審でも、裁判官は同じであるという固有の文化を強く持っているように思う。同一性を重視する文化は、数十年前に捨てたが、企業も持っていた。裁判所も、時代の変化を検証しながら、やっていただきたい。また、評価権者が地裁の所長というのは、おかしいと思う。小さなところは問題ないが、裁判官が数百人いるところで、所長が一人一人に適切なコメントをつけることは物理的に無理だと思う。うまく機能するものを工夫してほしい。
△:今後更に検討したいが、裁判官の人事評価は、裁判を全国同一水準に保ちたいということに立脚している。また、個々の事件に関しては、手続の中で上訴制度というものがあるので、自分の仕事が上訴審で評価されるということがあり、職務の適性を測るという点では、極めて強力なシステムを持っている。裁判官の人事評価については、今回第一歩を踏み出すものであり、御指摘を踏まえて、少しでも良いものに時代にマッチしたものにしていきたいと考えている。
- [評価の基準等(1)について]
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■:事務局資料23−2の「第1 裁判官の人事評価の概要案 3 評価の基準等(1)」についてはどうか。(委員の検討の参考とするため、評価書のサンプルが最高裁から委員に示された。)
○:段階式評価でなければいけないとは思わないが、評価の目的を考えると、絶対評価ではなくて、相対評価が分からなければいけないと思う。相対評価が分からなければ、再任の時も困るし、裁判官本人もどのようなときに不服申立をすればよいか分からない。相対評価が分かるような文章式評価であればいいと思うが、文章式で評価に関する全員の共通理解を作るという努力が必要だと思う。
△:文章式は一見絶対的評価のような形を取るが、個々の庁において、水準より上か下かを念頭において記述されるので、相対性は入っているといえるとの意見が委員会で述べられた。
○:委員会の議事概要(最高裁提出資料15)末尾に段階式評価書の案が示されているが、評価する立場からすると、2点ほど実際的でないと思う。1点目は、職務の多様性について、どう評価するのか。例えば、地方では一人の裁判官が複数の職務を担当する場合があるが、民事の経験は豊富であるが家事は初めてという場合、当該裁判官の経験や当該庁の事件数を踏まえて、統一して、抽象的にAからEのどの辺りにつけていくのか難しい。2点目は、一つの職務についても、視点は多様であるので、どう評価するのか。例えば、民事訴訟を解決する場合、法律知識の正確性という切り方と分析力という切り方とを複合的に見る方が遥かに良く、視点をぶつ切りに分けて評価するのは十分に評価できないのではないか。
○:文章式は行間が読めるので段階式よりは良いと思うが、最終的には段階をつけることになるのではないか。評価が毎年蓄積されるので、評価権者によって変わる見方も平均化されるので、文章式であっても、偏った評価にはならないと思う。
○:ラグビーでは、レフリーがフェアにレフリングをやるかどうかが観衆の最大の関心事である。ジャッジという言葉が持つ重みを考えると、何よりもフェアでなければいけないと思う。文章式は結構であるが、ジャッジとしての姿勢が貫かれているかどうかについて、国民は一番知りたいと思うし、評価でもこれが一番大切である。
○:司法制度改革審議会意見書で人事評価制度を検討すべきであるとされた趣旨は、間違った差別等が起きないようにしなさいという提案がされたからだと思う。確かに、段階評価により間違いが防げるようにも思うが、段階評価だけでは間違うかもしれない。客観的な要素を入れることは大事であると思うが、委員会の結論を支持する。
○:文章式も段階式も一長一短がある。短所を相互に補完するという意味で併用式があげられているが、裁判官の評価の目的が一般ものとかなり違うこと、また、裁判官は独立して職務を行うという職務の特性を考えると、いわゆるランク付けするような評価は、例え併用式であっても好ましくないのではないか、文章式が妥当ではないかと思う。ただし、文章式にするにしても、評価項目について、客観的・具体的に書かなくてはいけない、段階式の長所を十分に意識した表現でなくてはいけないと思う。さらに、文章式にすると、評価権者の責任が非常に重くなるので、評価権者の研修、訓練が必要であると思う。
○:文章式であっても、段階式のメリットは十分に入っている。A、B、C、Dのランク付けは弊害が多いので、文章式の方が、将来の適正な人事に資するのではないか。
○:裁判官は全人的な対応が必要であり、A、B、C、Dのランク付けをすると非人間的となる。裁判官の評価にビジネスの評価を入れるのは良くない。
○:評価する側やユーザーである指名諮問委員会の委員は、たくさんの例を評価するので、相対的に評価することもできると思うが、問題は裁判官本人であって、わざわざ不服申立手続を設けるのだから、その相対的な評価が本人に分かる設計にしなければいけない。
○:ネガティブな評価は、本人にも分かるのではないか。
■:事務局資料23−2の「第1 裁判官の人事評価の概要案 3 評価の基準等(1)」については、了承されたものとしたい。
- [評価の基準等(2)について]
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■:事務局資料23−2の「第2 裁判官の人事評価の概要案 3 評価の基準等(2)」について、まずは、「1」に記載された①、②、③(最高裁前回配布資料4「裁判官の人事評価の概要(案)」2頁から3頁にかけての「◇裁判所外部からの情報の取扱い」部分)についてはどうか。
○:基本的に異論はない。②について、原則顕名というのは理解するが、匿名であっても具体的な根拠のある事実、信憑性が高いと判断される情報の取り扱いについては、慎重に考えてほしい。また、運用の問題かもしれないが、一般国民の便宜に配慮して、外部情報を取得するためのポストのようなものを置いてほしい。
△:匿名の情報であっても、それだけで排斥するということではなくて、信憑性が高いものは調査する。また、繰り返し数多くある場合は、それ自体が重要な情報ということになる。また、窓口については、委員会で、一般の方に重要なのは、何処に情報を届ければいいのかということであり、人事情報は大切な情報であるので、総務課が大事に取扱うのが適当であると意見が多かった。
○:委員会議事概要の末尾に添付された宮本委員の規則要綱(案)修正案の1について、委員会での検討結果を教えてほしい。
△:委員会では(2)については取り入れ、(3)(4)については採用されなかった。
■:事務局資料23−2の「第2 裁判官の人事評価の概要案 3 評価の基準等(2)」について、「1」に記載された①、②、③については、了承されたものとしたい。
事務局資料23−2の「第2 裁判官の人事評価の概要案 3 評価の基準等(2)」について、「2」「3」に記載された*①、*②(最高裁前回配布資料4「裁判官の人事評価の概要(案)」3頁の「*」部分)についてはどうか。
○:段階式評価アンケート方式を当面使わないという委員会の結論に対して反対ということではないが、中長期的に考えると、やはり注意深く検討していただきたい。アンケート方式は裁判という仕組みを利用する最終的な受益者である国民がどう思っているかを聞くということであるが、委員会の検討結果を見ると、何の議論もなく、さらに委員長のまとめを見ると、「ここまでやるのはいかがなものかというのが皆さんの意見と理解して」とあり、カルチャーショックを受けている。司法制度改革の目的を考えると、ここまでやるべきではあるができないというまとめなら分かるが、非常に違和感がある。アンケート方式は、大学での授業評価に似ていると思う。学生に評価されることは、昔は考えられなかったが、今は違う。ブレはあるものの、たくさんの数を積み上げることによって、有益になる思う。自己研鑽に役立つだけではなくて、一つのもので評価するよりも、多面評価を考えていただきたい。
○:民間では多面評価といった場合に、外部評価は含まれていない。部下が上司を評価する、あるいは、隣の部が自分の部を評価するということを、多面評価という。根本には、評価は教育であり、外部ですべきものではないという考えがある。評価を通じて本人や組織を活性化するのが評価の目的であり、評価する者が責任を持って評価すべきである。参考にする程度は良いが、外部評価は重視すべきではない。
○:匿名であっても信憑性が高い情報を吸収して蓄積するシステムがあれば、アンケート方式は必要ない。当事者へのアンケートは、訴訟の勝ち負けによるバイアスがかかる恐れがある。言いたい時のルートが確保されることが大事である。
○:学生の授業評価との違いについて、学生には講義と試験があるが、訴訟の場面は、一方の当事者の証拠請求を退ける過程がある。その成果を試す試験を行った後の評価なのか、講義の評価なのかで違ってくる。裁判の場合、結果の有利不利、訴訟手続中の姿勢がどう影響してくるのか。顕名であれば、裁判官は反証ができるが、反論可能性を許さないアンケート方式はいかがなものか。評価権者としても、顕名の内部の情報と大規模訴訟で大量に寄せられるアンケートの情報をどう扱うのかというテクニックは至難の業である。
○:結論としては、アンケート方式については不要と思うが、裁判所がどう見られているのかという分析のため、データを押さえておいた方がいいのではないか。評価とは結び付けずに、研究的にやってみてはどうか。
○:一般消費者としては、評価する前に、アンケート調査に答える前に、訴訟状況自体が分からないと思う。そのような段階でのアンケート方式は問題だと思う。
○:裁判官の人事評価に関する情報が外部からでないと入ってこないというのはおかしいのではないか。
○:肯定的な外部評価も大切であり、肯定的な評価もあるという前提で国民に開かれたシステムが望ましいのではないか。
○:裁判所の窓口にも肯定的な評価は寄せられており、アンケート方式を採用する理由にはならない。また、アンケート方式の対象を担当職務により一部の裁判官に限定した制度設計はおかしい。
■:事務局資料23−2の「第2 裁判官の人事評価の概要案 3 評価の基準等(2)」について、「2」「3」に記載された*①、*②については、了承されたものとしたい。
- [不服がある場合の手続きについて]
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■:事務局資料23−2の「第3 裁判官の人事評価の概要案 5 不服がある場合の手続」についてはどうか。
○:高裁長官の関与の仕組みについては、通達ではなくて、最高裁規則に盛り込んでほしい。
○:不服申立をする裁判官に対する実質的なケアができるかというところを基本に考えるべきである。今回の規則要綱案のスタイルは、自己書面の申告から始まって、面談、評価となっていて、調整が入るかもしれないが、双方向の対話、意見交換の延長線上に不服を申し立てる制度という位置付けであるので、評価権者に対して直接的に申し立てられるということで十分ケアできるのではないか。評価者と被評価者と間に異なる評価がある場合に、それを客観的に第三者に委ねてもどうなるものではない。双方の自らの言い分が記録化されて、将来の人事決定の際の担保になることが大切ではないか。
○:第三者機関は最近流行していて、透明性があるようにも思うが、意味がないのであれば作るべきではない。
○:評価権者に対して不服を申し立てることは一般的感覚からして違和感があるが、第三者機関を作って機能するのかどうかを検討する必要があり、不服申立があったときに、所長が必要な調査、修正を行い、高裁長官も調整するということであれば、やむを得ないのではないか。運用については、しっかりやってほしい。
■:事務局資料23−2の「第3 裁判官の人事評価の概要案 5 不服がある場合の手続」については、了承されたものとしたい。
- [その他について]
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■:事務局資料23−2の「第4 裁判官の人事評価の概要案 6 その他」についてはどうか。
○:評価書を何かに反映させるということを最高裁規則で定める予定はあるのか。
△:条文で書く予定はないが、評価の目的は規定する。
○:「評価」が「評価書」に改められたので、評価ではなく、評価書を作成するという感じがする。
△:評価の判断、意見は入っている。
○:「その他」の内容としては、どのようなものが考えられるのか。
△:裁判を担当していない裁判官の評価等について定めることが考えられる。
■:事務局資料23−2の「第4 裁判官の人事評価の概要案 6 その他」については、了承されたものとしたい。
- [高裁長官、地家裁所長の人事評価について]
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■:事務局資料23−2の「第5 1 地家裁所長の人事評価」についてはどうか。
○:所長の評価権者を高裁長官とすることを、通達ではなくて、最高裁規則に盛り込んでいただきたい。
■:他に意見がなければ、「地家裁所長の人事評価」については、委員会の検討結果が了解されたものとしたい。
事務局資料23−2の「第5 2 高裁長官の人事評価」についてはどうか。
○:異議なし。
■:「高裁長官の人事評価」については、委員会の検討結果が了承されたものとしたい。
- [最高裁裁判官会議との関係について]
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■:事務局資料23−2の「第6 最高裁裁判官会議との関係」についてはどうか。
○:最高裁裁判官会議による人事の前提となる人事評価のプロセスであることを、規則上明らかにすべきではないか。
△:人事評価権が最高裁にあることは明らかであり、規則と通達との関係については、今までの振り分けを考えると、評価書の保管等の細目については通達で定めるのが相当であると思う。
○:評価結果の開示というより、評価書の内容の開示と、内部の事務処理の問題に移ったので、規則では定めにくいのではないか。
■:事務局資料23−2の「第6 最高裁裁判官会議との関係」については、委員会の検討結果が了承されたものとしたい。
これまでの検討で、委員会の検討結果については、当検討会においても了解をいただいたことになる。委員会の次回会合は、12月5日に予定されていると聞いているので、委員会の最高裁に対する答申内容については、当検討会への報告をお願いしたい。
- (3) 弁護士報酬の透明化・合理化−弁護士報酬の透明化・合理化の見地からの個々の弁護士の報酬情報の開示・提供の強化、報酬契約書の作成の義務化、依頼者に対する報酬説明義務等の徹底
- ① 日弁連からの説明
- 日弁連配布資料に基づき説明がなされた。
- ② ①の説明に対して、次のような質疑応答及び意見交換がなされた。
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○:報酬見積書の作成・交付については「努める」となっているが、これは、義務化しないで自由に任せるということで、作らない人もいるということか。
□:結論的には作成しない人もいると思うが、弁護士会としては努めるということで、全会員に積極的に指導していきたい。報酬見積書の簡単なフォームを全会員に示すことを考えている。
○:報酬の適正性・妥当性について、例えば、1千万円の訴訟において、勝ったら報酬500万、負けたら1銭も要らないという契約が、許されるのかどうか。逆に、手弁当で一切報酬は受けないという契約はどうか。
□:前者について、適正さ・妥当さを欠くかどうかは現段階では申し上げられないと思う。というのは、どれだけ説明義務を尽くし、その事件はいかなるものであったか、利用者がそれをどこまで理解し、その上で契約を締結したか、というような適正手続がどこまで図られているかがメルクマールになると考えている。社会的に妥当な額というものが自ずと決まっていくのではないか。後者について、弁護士は困窮者に対しては手弁当でも弁護活動を行うことを理念として持っているので、助けなければならない事件は手弁当で構わないと私は思う。
○:報酬制度には危険性を感じている。マスコミが登場して、ランク付けを行い、料金の切り合いになる可能性がある。事務所によってバラツキがあると思うが、他の弁護士との違いの説明がかなり難しいのではないか。情報開示が進んでいて、事務所単位で規模や事件数が理解できれば、合理的であると分かるが、金額だけが一人歩きすると危険であるので、全体としての弁護士事務所のインフォメーションとして、総合判断できるものとパッケージしないといけない。
□:その点について、日弁連会則の第29条の3の改正で、「報酬」を明示した。また、「業務の内容を国民に対し広く知らせるとともに」と「並列」にした。抽象的ではあるが、今後努力していきたい。
○:最終的には弁護士倫理にかかってくるので、倫理教育を含めて考えないといけない。
○:社会的に問題になっている割には、アンケートの回収率が悪いので、周知徹底していただきたい。
□:昨年11月の段階のアンケートであり、会員の関心が必ずしも高くなかった時期のものである。今後整備を図っていきたい。
○:一般消費者の立場からすれば、例えば審級ごとに追加の費用請求があると不安になるので、当該案件についてのトータルの報酬・費用の説明をしていただきたい。契約については、その場で印鑑を押さなくていいということを徹底していただきたい。
□:御指摘の点は、報酬の説明をしていない、基準を説明していない、さらに、報酬契約を締結していないことにより起きることであるので、報酬契約を締結すれば動かしようがないので、その辺の御懸念は随分と改善に向かうと思う。
■:それでは、この問題についてはこの程度にしたい。弁護士法の改正法は来年4月に施行されるので、日弁連においては、必要な規則等を整備するほか、個々の弁護士の報酬基準の作成等、御指導をお願いしたい。また、施行後の弁護士報酬関係の運用状況について、実情の把握に努め、利用者である国民が困ることのないように十全の配慮をお願いしたい。
- (3) 次回の予定
■:次回(12月8日)の議事については、追ってお知らせすることとしたい。
以 上