【伊藤座長】それでは、所定の時刻でございますので、第23回の法曹制度検討会を開会させていただきます。御多忙の中、本日もありがとうございます。
議事に先立ちまして、事務局から、配布資料の確認をお願いします。
【植村参事官】それでは、配布資料の確認をさせていただきます。
事務局から配布いたしましたのは、資料23−1から23−4でございます。
また、日弁連、最高裁から、次第に記載しましたとおりの資料の御提出がありましたので、御紹介いたします。
なお、最高裁資料のうち、一般規則制定諮問委員会関係資料につきましては、前回配布分を含めまして通し番号を振ってございます。本日、新たに配布されましたのは、資料15、資料16でございますが、前回配布されましたもののうち、本日もお使いいただくものといたしまして、資料4の「裁判官の人事評価の概要(案)」を席上配布しております。
以上でございます。
【伊藤座長】それでは、本日の議事についての確認をさせていただきますが、まず次第にございますとおり、議題(1)の「裁判官の報酬の進級制の在り方」につきまして、前回、お話を申し上げましたとおり、事務局資料23−1の議事整理メモに追加して御意見をお述べになりたい方に御発言をいただくと、こういうことにさせていただきます。
続きまして、議題(2)の「裁判官の人事評価の仕組みの整備」につきまして、前回に引き続きまして議事をお願いしたいと思います。
最後に議題(3)の「弁護士報酬の透明化・合理化」の問題についての議事をお願いいたします。
そういうことでございますが、早速議事に入らせていただきます。御多忙のところ、事務局資料23−1の議事整理メモ(案)の作成に御協力いただきまして、心からお礼を申し上げます。前回お話をいたしましたとおり、この資料23−1のメモに追加して御意見をお述べになりたい方がおいででしたら、お願いをしたいと存じますが、いかがでしょうか。
【平山委員】よろしゅうございますか。
【伊藤座長】どうぞ、平山委員。
【平山委員】それでは、早速でございますが、議事整理メモ(案)をお作りいただきましてありがとうございます。非常によく整理していただいていると思います。
実は、私はこの整理メモの中でも、現在の裁判官の報酬の進級制の刻みにつきましては検討の余地があるのではないかという意見を申し上げておりますが、当日、あまり具体的には申し上げておりませんが、今日皆さんのところに参考資料として配布させていただきました日弁連の司法改革実現本部全体会議というところの研究成果で、「裁判官報酬制度の見直しについて(提案)」というものがあるのが分かりました。裁判官の報酬制度の改革は、今次司法制度改革の中での裁判官制度の改革の一つであるため、日弁連としても、強い関心を持って、その研究に当たっているところですが、その研究成果がこのようにまとめられていることを御紹介申し上げておいた方がよろしいのかと思います。
そして、それを拝見いたしますと、私が前回申し上げましたように、もう少し簡素化していただいた方がいいのではないかというのと、ほぼ同じで、違うところもございますけど、つまり判事補の10年の段階で3ランクぐらいにしたらどうかというのと、判事になられましてからは、今回の司法制度改革の中で、10年ごとにきちんとした一般規則制定諮問委員会の方で設けられました下級裁裁判官指名諮問委員会、そこで議論がされ、そして次に判事にもう1回、2回となっていかれるという制度ができましたので、むしろ判事については3回というようなランクでよろしいのではないかというものです。
ただし、そういたしますと、ほかの公務員等との関係で、判事の報酬が安いところで3回の昇給では困りますので、それは国会議員と同じように裁判官に不利でないようなものを、言い換えれば、高いものを3回決めるというようにする必要があります。将来、例えば我々は法曹一元と言っておりますけど、そこまで行かなくても裁判官がきちんと落ちついていい仕事をしていただくということを考えていきますと、このあたりで基本的に進級の簡素化を御検討いただく時期に来ているのではないかと思います。ただし、前回、松尾委員などの話がございますように、公務員制度全体について、近いうちに検討されるということでございますので、ここで、それを絞りましょうということではございませんけれども、是非その際はこういう議論があって、抜本的に検討してみるということをやっていただきたいと思いますので、参考資料として出させていただきました。私の意見ではございません。これは日弁連の総会にかけたものでもございませんし、実現本部というところの研究成果ではございますけれども、一応お出ししておきたい、こういうことでございますので、よろしくお願いいたします。
【伊藤座長】そういたしますと、ただいまの御発言では、これ自体が平山委員の御意見であるというよりは、これについて御紹介いただいたと、そういうことで承ってよろしいですか。
【平山委員】私としては、これは非常に見るべきものがあると思っておりますけれども、ここでこれをたたき台にしていただきたいということではございません。その点は、前に申し上げましたように、ここでは何をしていただくのですかということと多少絡んでおりますけれども、是非こういう資料があることだけは申し上げておきたいと思います。
【伊藤座長】そういう趣旨で承りました。ほかにいかがでしょうか。なお、追加の御意見がございますか。どうぞ、岡田委員。
【岡田委員】今、資料のところでも載っていますし、ほかの資料でも出てきて、私もちょっと疑問を感じるのですが、この調整手当を都市部から地方へ移ったときに3年間持続するというのが、理由がどこにも書いてないので、できましたら教えていただきたいと思いました。4ページのところに、調整手当について、報酬の3%〜12%が付加される、こういう記述がいろいろなところへ出てくるのですが。
【伊藤座長】今、平山委員の御紹介の資料の4ページですね。
【岡田委員】はい。
【伊藤座長】平山委員、この資料についての御質問のようですので、どうでしょうか。
【平山委員】よろしいのでしょうか。私の意見ではございませんが、これを紹介するということであれば、現実はこのとおりだと聞いております。これは間違いはないと思います。
【岡田委員】私たちの感覚としては、理由のところを教えていただければ、ごもっともであればごもっともだと思うし、そうでなければ、「はあ。」という感じがするのですけれども。
【伊藤座長】これ自体はこういう資料だということですので。
【岡田委員】また、機会がありましたら。
【伊藤座長】御発言は、記録にはそのようにとどめておきます。
【岡田委員】分かりました。
【伊藤座長】それでは、よろしいでしょうか。ただいまの御発言については、その内容を整理いたしまして、この事務局資料23−1に追加をするということでよろしいですか。
【平山委員】是非御追加いただきたいですね。ここの討議があまり深い入りしないで終わっているということでも困りますので、是非座長にお取り計らいいただいて、検討はしたのだと。だけれども、公務員制度全体との関係とで、というようなことがよろしいかと思います。
【伊藤座長】それでは、そういう御発言を追加いたしまして、メモを完成して、その上で今後の顧問会議に対する当検討会の検討状況の報告等に活かしたいと思います。
どうもありがとうございました。
それでは、引き続きまして、前回の継続ですが、「裁判官の人事評価の仕組みの整備」についての議事に入りたいと存じます。まず最高裁から、前回の検討会以降、これまでの一般規則制定諮問委員会、単に「委員会」と申しますけれども、におけます検討状況についての説明をしていただきます。
次に、事務局に、委員会の議事概要等に基づきまして、委員会における検討が熟してきたと考えられる事項を事務局資料23−2のとおり整理をしてもらいましたので、この資料に従いまして、最高裁から委員会における検討状況について補足する点があれば説明していただいた上で、順次、質疑応答や意見交換を行うと、こういう形でお願いしたいと思います。
なお、事務局資料23−2の委員長発言を議事概要のどの部分から引用したのかお分かりいただけますように、議事概要の当該部分に下線を引いたものを事務局資料23−3として配布しております。
それでは、最高裁から、前回の検討会以降、これまでの委員会における検討状況について、説明をお願いいたします。どうぞ、小池さんよろしくお願いいたします。
【最高裁(小池審議官)】よろしくお願いいたします。
それでは、前回に引き続きまして、お手元のレジュメ、「裁判官の人事評価制度の整備に関する検討状況について その2」に基づきまして、この人事評価制度に関する最高裁の検討状況について御説明申し上げます。
前回の検討会の後、11月4日の最高裁の一般規則制定諮問委員会で人事評価に関する規則の制定について審議をいたしました。審議のテーマは、大きく言いますと四つでございまして、一つは、人事評価の結果の表示方法、すなわち文章式か、段階式の併用を行うかどうか。二つ目が外部の情報の取扱い。三つ目が不服の手続、四つ目が、当検討会で問題提起された事項でございます。例えば所長の評価等について審議をいたしました。
4時間近く極めて熱心な協議をいたしまして、全体的に実質的な審議を遂げた段階でございます。この結果について御報告申し上げたいと存じます。
この問題は、私どもの委員会でも様々な考え方がございまして、非常にいろいろな考えがある事柄でございますが、当検討会におきまして、これから御報告申し上げますその審議結果が司法制度改革審議会の意見の趣旨に照らしまして、いわばストライクゾーンに入っているかどうかを御検討願いたいと存じます。
最高裁の一般規則制定諮問委員会といたしましては、当検討会の検討結果にもよるわけでございますが、できますれば次回の委員会で規則要綱の文言の詰めを行いまして、答申まで至りたいと考えている次第でございます。以下、レジュメに従いまして、概要を御説明申し上げます。
まず、レジュメの2ページの「3 評価項目」、中ほどあたりを御覧いただきたいと思います。評価の結果をどう表示するかということ、文章式か段階式の併用かということでございますが、結果におきましては、文章式を採用するということで取りまとめがなされました。評価の客観性を確保するという観点から、委員から、本日お配りしました議事概要の末尾に添付いたしました段階式と文章式を併用した一つのアイディアがございました。小学生の通知表を思い出すような様式でございますが、こういったものをアイディアとしてお示しになられまして、段階式と文章式を併用した表示方法を採用してはどうかという意見も出されたわけでございます。
しかし、審議の過程で、果たしてこのような多項目、多段階の評価を本当に適切に行えるのだろうか、あるいはこういった多段階評価の客観性をどうやって担保するのかというような疑問が出されまして、そもそもこの人事評価が長期的な視点から裁判官としての適性に関する情報の蓄積という評価のシステムをとるという趣旨に照らしますと、むしろ文章式の方が好ましいのではないかという委員の御意見が大勢を占めまして、文章式を採用すべきであるという意見で取りまとめがされたわけでございます。
次に、裁判所外部からの情報でございますが、2ページの「4」、その下のところを御覧いただきたいと思います。
既に囲みに記載された規則要綱案については御了解をいただいたところでございますが、外部情報の取扱いの運用の方針につきまして更に協議がされたわけでございます。このレジュメの2ページの末尾に記載されましたように三つの事柄、一つは、情報を受け付ける窓口を明確化すること、二つ目に、情報の的確性を検証できるようにするという観点から、原則として、情報提供した方のお名前が明らかにされ、具体的な根拠が示された情報について考慮することができるということ、三つ目に、裁判官の独立への影響が懸念されるような情報は考慮することができない、というような運用の方針が協議がされまして、これが承認されたわけでございます。
それから、3ページの上段から中段にかけてございますように、管内の弁護士会、検察庁に対しまして、情報の受付窓口について積極的によく分かるように周知方を依頼してはどうかという提案が委員からございまして、このような運用方針をとることについては全く異論なく承認されました。
続きまして、その中ほどに段階式評価アンケート方式の記述がございますが、当事者あるいは代理人等に対しまして、項目を示した段階式評価アンケート方式により、情報収集をすべきではないかという考え方、これは今日も再度配布していただきました資料4「裁判官の人事評価の概要(案)」のところに注記してあった論点でございますが、これにつきましては、積極的にこれを取り入れるべきであるという御意見は出されませんでした。そのため、このような方式は採用しないという方針が取りまとめられたわけでございます。
続きまして、不服がある場合の手続でございますが、これは4ページでございます。
まず最初に規則要綱案の記述の訂正、赤字で訂正してございますが、これは第1回の委員会におきまして、「人事評価の結果」という用語を「評価書の記載」と修正した方が良いのではないかという御指摘がございまして、人事評価の性質が情報の集積という点にあるということからしますと、「人事評価の結果」という用語はいささか判定結果のように受け取られる可能性がありますので、むしろ端的に「評価書の記載」という表現の方が適当だろうという指摘を踏まえたものでございます。
同じ趣旨で、1ページ前の「人事評価の結果の開示」というところも同様に修正してあります。これは形式の問題でございまして、中身の方は4ページの「7」の中段から下段にかけての「○」でございますが、不服手続への高裁長官の関与についての議論がございました。
地裁所長、家裁所長が作成した評価書の記載に不服の申し出があったときには、所長が検討した上で、さらに高裁長官が同様のその検討の手続を行うこととされたわけでございます。もう一つの目があった方がよかろうということでございます。
このような手続内容について、規則に定めるか、通達に委ねるかといういわば広い意味での法形式の問題につきましては、次回の委員会までに幹事においてテクニカルな問題として検討することになりました。
下段の「○」、第三者機関の設置、すなわち評価権者以外の者に対して不服申立手続を設けるかという論点でございます。これも今日再度お配りしました資料4の概要案で論点として掲げていたものですが、これにつきましては、問題提起として、不服が述べられた当人、つまり所長等が自分で判断するのは適切でないという観点から、高裁に設置された3人の裁判官から成る独立の不服審査委員会というところが関与すべきであるという意見が委員から出されたわけであります。
これに対しましては、この評価制度の目的が、いわば長期的なスパンで裁判官を育てるための人事情報の集積であるとすると、評価権者と裁判官がよく話し合うと、いわば対話をするというのが良く、前提の事情を知らない人が不服について判断するのは実際上困難ではないか等の意見が出されまして、第三者機関は設ける必要がないという意見が大勢を占めまして、そのような取りまとめがされたわけであります。
5ページ、「その他」という点でございますが、ここの事項につきましては特段の議論はございませんでした。このとおり取りまとめられました。
さて、当検討会で問題提起された事項につきまして、5ページの9に結果が掲げられております。
まず最初に、所長の評価につきまして、所属の裁判所の裁判官会議や独立の委員会で行うべきではないかという意見が出されたわけでございます。しかしながら、これにつきましては、管内の所長を見渡せる立場である高裁長官が行うのが合理的であるというような意見が述べられまして、この意見が大勢を占め、高裁長官を評価権者とするという旨の取りまとめがされたわけでございます。
この事項を規則要綱に盛り込むか、通達に委ねるかという点につきましては、先ほど申し上げましたのと同様に、幹事において次回の委員会までに検討することになりました。
次に高裁長官をこの評価制度の対象として規則に盛り込むべきであるかという点につきまして、やはり盛り込むべきではないかという意見が出されたわけであります。
これにつきましては、高裁長官に対して最高裁による評価を行うことは当然であるということを前提といたしまして、この裁判官の人事評価に関する規則は、人事権を持つ最高裁自らがその適正な人事権の行使に必要な人事情報を収集することができない、あるいはそうすることが相当でない場合に、誰にやってもらうのかを定め、またそのルール作りをするものである。ところが高裁長官の人事評価は、最高裁が自ら最も良くなしうるところであるので、その意味でこの規則で定める必要がない。これはまた別の角度から、高裁長官の地位あるいは人数(全国8人)に照らしまして、人事評価制度に高裁長官の評価を取り込むことは制度全体の整合性という面から問題ではないかというような意見が述べられまして、この意見が大勢を占めて、今回の人事評価制度の対象とはしないということで取りまとめられたわけでございます。いわば最高裁の責任において高裁長官の評価を行う。この制度の外で行うということでございます。
続きまして、最高裁の裁判官会議とこの人事評価の関係ですが、下級裁の裁判官の人事を最高裁の裁判官会議によって決定することなどにつきましては、本日、事務局から資料23−4というものが配られております。これは最高裁の主な権限をまとめていただいた資料でございますが、これを御覧いただければ分かりますように、こういった事柄につきましては、法律の規定によって定められているわけでございまして、最高裁の一般規則制定諮問委員会では、規則に明記する必要はないということで異論はなく、その旨の取りまとめがされたわけでございます。
大体、審議の概括は以上でございますが、最後に一つ、前回の検討会でも、また最高裁の委員会でも、最高裁の人事評価の性質というのが、世上、民間等でされているものと異なるところがあって、どうもそこがはっきりしないというような御意見がございました。そういうことがございますので、人事評価の性質論というところにつきまして、制度設計の在り方と非常に関連するところでございますので、再度若干の説明をさせていただきたいと存じます。
最高裁が考えております裁判官の人事評価の特徴は、長期的な視点に立って人事に関する情報を収集・集積するものでございまして、毎年の処遇に短期的に直結させるものではないという特色がございます。そういうこともありまして、所長は評価権者とされるわけですが、いわゆる評価決定、処分行為をする権限者ではございませんで、最高裁が持つ人事権を適正に行使するために必要な人事情報の収集・集積といった事務を分掌・分担するという役割をするわけでございます。妙な言い方でございますが、いわば人事情報集積事務分担者とでもいうのが一番実態をあらわす言い方だと思います。
所長は評価に関する意見を付けるわけでございますが、その意見が何らかの人事上の効果を伴う処分というわけではございませんで、その所長の意見もまた評価に関する一つの情報と言えるわけでございます。最高裁はこの人事評価によって集積された情報に基づき、再任・昇任等の人事に関して決定を行います。このような人事に関する決定権限は、先ほど法律を御覧いただきましたが、最高裁の裁判官会議が持っているわけでございます。
前回も御説明申し上げましたけれども、このような人事評価の結果、すなわち集積された人事情報は、一番活用されますのが10年に1回行われる再任の場面でございます。昇給につきましては、前回申し上げましたような運用をしておりますので、20年を過ぎたころから評価を活用するとともにポスト等の関係も考慮するわけでございます。部総括の発令においても同様に人事評価の結果を活用しております。こういったものはいずれも長期的な視点に立った人事情報の活用でございます。
なお、配置につきましては、前回も御説明申し上げましたように、もちろん人事評価の結果も考慮いたしますが、そのほか裁判所あるいは裁判官本人に関する様々な事情が考慮されて運用されているという実情でございます。
裁判官は独立して職権を行使し、裁判官の独立が憲法上保障されているわけでございますが、こういったことから裁判官の人事評価に当たりましては、その職務の最も核心となっています裁判の内容について踏み込むことは許されないわけでございます。そのため人事評価に関する情報の収集・集積に当たりましても、この点に関する特別な配慮、一種の謙抑性というものが求められるわけでございます。
このように最高裁が考えております人事評価は、こういった評価の目的、裁判官の職務の特徴を踏まえまして、長期的な視点に立って人事に関する情報を収集・集積するものであり、毎年の処遇に短期的に直結するものではない。また、評価権者とされる所長、長官が人事上の効果を伴う評価決定をするものではないという内容を考えているわけでございます。
このような考えに基づいて制度設計している点を御理解いただきたいと考えている次第でございます。
長くなりましたが、以上でございます。
【伊藤座長】どうもありがとうございました。それでは、ただいま小池さんから、委員会での検討の経緯及び人事評価の性質についての御説明をいただきましたが、まず、ただいまの御説明について質問がある方はお願いしたいと存じます。どうぞよろしく。
【平山委員】質問といいますか、確認でございますけれども、高裁長官についても検討してほしいということから、前回にお願いをしたわけでございますが、その結果は、高裁長官についても評価は必要であるということは御確認いただいたのですね。
【最高裁(小池審議官)】はい。
【平山委員】その中で、長官については必要ないという説もあったのでしょうか。
【最高裁(小池審議官)】そこは評価をするという前提での御議論でございました。
【平山委員】最高裁判所でその評価は直接やりますからと、こういう意味で理解してよろしいのですね。
【最高裁(小池審議官)】そのつもりでございます。いわば政治的責任をもって行っていく事柄であるという御意見です。
【平山委員】今回の新しいシステム、人事評価制度、これからは外れるけれども、評価はすると、こういう意味でよろしいのですね。
【最高裁(小池審議官)】そのとおりでございます。
【伊藤座長】どうぞ、松尾委員。
【松尾委員】質問です。不服手続についての高裁長官の関与についてお尋ねしたいと思います。原案では、裁判官から不服の申し出があった場合には、まず評価権者である地家裁所長が窓口となって、まず必要な調査をする。それで修正すべきかどうかを判断する。その判断の後に、高裁長官が長官の立場で所長と同じようなことについて検討し判断すると、こういう流れであることは間違いないですね。
【最高裁(小池審議官)】そうです。
【松尾委員】そうしますと、まずお聞きしたいのは、所長の判断と高裁長官の判断が違った場合にはどうするのか。つまり高裁長官の判断が優先するという考え方でよいのかどうかということがまず1点。
2点目は、原案のような考え方ではなくて、まず所長が必要な調査によって修正すべきかどうかという判断した後に、直ちに当該裁判官に通知して、この裁判官が所長の説明では納得できないとして不服を再び申立てた場合に、初めてそこで高裁長官が関与するという仕組みはお考えにならないのかどうか、その点についてお聞きしたい。
【最高裁(小池審議官)】まず、不服の申出におきまして、その長官の関与というのは、不服ではなくてその前提となる評価に関わる長官の関与と基本的に同じ構造でございます。まず所長が第一次的に評価をする。その結果が高裁に行って、それで、また調整していくというのが最初のプロセスでございますが、この不服の段階におきましても、開示を受けた裁判官本人がこれについて不服を述べる。ここで所長といろいろ対話とか調査をして所長が意見をするわけですが、それについて高裁長官が見て、いわば調整者の立場で、独自の立場で意見をする。それは不服の前提となる評価のプロセスと同じように、そういった調整をされたものが本人に示されていく、こういう考え方でございます。
もう一つの点でございますが、それは論理的にはそういう考えも、高裁長官が申出を受けてレビューするような形のものもあると思いますが、全体が対話型の人事という形で構成されておりまして、それが一環しておりますので、むしろここの局面においても、そういう対話型人事という脈絡で構成した方が良いだろうというのが委員会の方の大勢の意見だったと理解しております。
【松尾委員】関連してもう一点。そうしますと、高裁長官は長官としての独自の立場で判断するということが書いてありますけれども、実際問題としては独自の立場というよりも、第一次評価権者である所長の意見をかなり重要視するような立場になるのではないか。あるいは相談するような、協議するような立場になるのではないかとも思われるのですが、そういうことなのでしょうか。
【最高裁(小池審議官)】これは調整のプロセスと同じということになりますので、それは長官が持っている調整機能で、どのような形でまた情報を集めるかとか、そういう問題とパラレルになってくるということになると思います。
【伊藤座長】どうぞ、田中委員。
【田中委員】先ほど松尾委員が、高裁の長官の判断の方が地裁の所長の判断に優先するかどうかという趣旨のことをおっしゃいましたけれども、優先するかどうかという問題ではなくして、調整以外に何か行われたか、その事実がきちんと書類に残るということだけだと思うのです。どちらが優先するかどうかという問題は、高裁長官の調整の結果、地裁の所長が見解を改めれば別ですけれども、そうでない限りは、その調整が何回かなされて、それぞれその記録が残るということだけなので、これに関してどちらが上位・下位ということはないと思います。
【最高裁(小池審議官)】説明が舌足らずで恐縮でしたが、おっしゃるとおりでございます。
【田中委員】長官と所長の評価が違っているのだということを前提にして、具体的にまた人事をするときには、それは違っているのだという前提でやればいいというだけだと思うのです。評価について強調していらっしゃる性格から見ると、何となく三審制とか二審制とか、そういう仕組みでの議論ではないというように思うのです。
【最高裁(小池審議官)】そのプロセスが記録されて、それが示されると、こういうものであるということでございます。
【伊藤座長】どうぞ、木村委員。
【木村委員】先ほどのお話で、不服のある場合について、通達か規則か、規則にまで高めると書いてあるので、これは恐らく規則の方が上位かと思いますが、一般的な人事の評価は、不服とか何とかではなくて、一般的にどこの規則でどうなる予定なのですか。一般規則制定委員会の中の細則とか何とかそういうのですか。全体の構造、人事の評価というのはどこに位置付けられるのかということをお伺いしたいのですが。
【最高裁(小池審議官)】裁判官の人事評価については、名前をどう付けるか分かりませんが、裁判官の人事評価に関する規則というもので、今、御覧いただいていますような要綱に基づいて骨格を定めます。それぞれ評価、どんな評価書にするとか、それから不服のときに具体的にどういう細目でどういう手続をとっていくのか、誰にどんな書類を出していくとか、そういった事柄は通達で定めていきます。細目は通達、こういう構造になるということを考えています。
【木村委員】関連しますが、その中で、先ほど関連したところでは、「裁判官の人事評価制度の整備に関する検討状況について その2」の4ページの下のところで、ただいまの関連しますが、「不服がある場合の手続について、以上の点を除き、規則要綱(案)5項について了承が得られ、評価権者以外の者に対する不服申立手続として第三者機関を設けるか否かという論点については設けないということで取りまとめられた」ということでございますけれども、一番大きい理由は何だったのでしょうか。そのことについてお伺いしてよろしければ。
【最高裁(小池審議官)】これはいろいろな理由があるわけですけれども、いくつかございました。出てきたものを申し上げますと、まず評価者に対する不服の申出の手続を設けること自体、不服を意識した評価書面が作られるということで大きな意義があると。それから、評価書に書かれるものはいろいろな事実がございます。評価的な事実とか評価意見のようなものについて、第三者が判断しようと思っても、結局は判断できなくて、両当事者の言い分を記録するようなことしかできないのではないかとか、それから、先ほども申し上げましたけど、評価制度の目的が長期的なスパンで良い裁判官を育てることにあるとすると、対話型の人事であるので、評価権者と裁判官がよく話し合ってやっていくのがいいわけであって、その前提の事情を知らない人がパネルを構成して、不服を扱うというのはなかなか難しいであろうと。
それから、司法制度改革審議会での議論についても、非常にかっちりとした不服申立手続を設けるというのではなくて、やはりそういう不服のある人にはインフォーマルな形でも十分言い分を聞くようなシステムを設けるというのが裁判官の人事評価にかなうのではないかというような御指摘があったと。そのようなことを踏まえると、独立にパネルなり、そういったものを作るのではなくて、対話型人事の流れの中で、今申し上げましたような形でやっていくのがいいのではないかという御意見が出されたと思います。
【木村委員】関連しますが、この司法制度改革推進本部あてに昨年もメールが数多く来たわけですが、そのメールの中に、裁判官の人事評価についてのメールは何かございませんでしたかと事務局にお伺いしましたところ、本日机の上に御配布いただいたような日本裁判官ネットワークの有志の方々からの意見が来ているということが判明したわけなのです。
この中では、「自己研鑽に有益な資料提供がなされるように」と、自己研鑽ということも非常に強く言われていて、人事の資料としてだけではなく、自分たちがそのデータを知れば大変に役に立つということと同時に、最後のページには、不服申立てで、最終的に裁判所の構成員以外の委員も加わった第三者機関が必要と考えるというようなことが、これは日にちは書いてございませんけれども、そういうものがメールの中に残っていたということなのですが、手紙では来てなかったということですね。最高裁としては、こういった点につきまして、情報を入手して、何か来ていて、委員会の中で特にこれを取り上げて討議するようなことはあったのでしょうか。
【最高裁(小池審議官)】このネットワークの方の御意見ということですか。
【木村委員】はい。
【最高裁(小池審議官)】まず、資料4のところにありますように、論点として、不服申立というところに、こういった第三者機関を設けたらどうかということを論点として掲げてございます。これはどういうことかといいますと、このネットワークの方の意見書というのは、一般規則制定諮問委員会が始まる前に裁判所にも届けられましたので、これは認識しておりました。それから、前にこの席でも御紹介しましたが、この人事評価の問題につきましては、全国の裁判官と裁判官意見交換会というのを数次にわたって行いまして、そこで人事評価の在り方、もちろん不服申立を含むところについて広範に議論しました。全国8高裁のブロックで、高裁単位で裁判官が協議するほか、各地家裁単位でも前提として議論したわけでございますが、そういった意見交換会にはネットワークのメンバーの方々も参加されているわけでございまして、各地の意見交換会の中で既にこの御意見はネットワークの方々を中心として述べられていたわけでございます。
そんなことも考慮しておりましたし、加えて、そういった意見書が届いたということもあって、論点として掲げたと。直接これを示したわけではございませんが、論点として委員会に提示して御議論をいただいたということでございます。
【伊藤座長】それでは、また、後であると思いますけど、どうぞ。
【中川委員】さっき小池さんから大変詳しく、人事評価の性質について御説明をいただいて、私もよく分かったのですが、この制度を果たして人事評価と言うのかどうかという問題だと思うのですね。言わないなら、もうそれを言わない方がいいと思いますし、言うのならば、相当注釈を付けないと人事評価だとは言いにくいなという感じもしますが、お考えになっていることはこういうことだということは分かりました。
この中で、今の御説明で、裁判の内容に踏み込んだ評価はできない。評価の結果を報酬の減額につなげるようなことはできない。これは法律上の制約でございますから、その2点は確かにこれは制約があると思いますね。しかし、そのほかのことは、これはどっちがいいかという問題でありまして、必ずしも法律上の制約はないわけですよね。最高裁のお考えをいろいろ聞いておりまして、これは私が感じたことですから間違っているかもしれないのですけれども、要すれば、裁判官はすべて同じなのだと。非常に崇高な使命を持っていて、それが中央にいても僻地にいても、上位であろうと下位であろうと、これは裁判官という一つの使命を全うする、そういう人間なのだと。だから同一性を重視するというか、全員お手手つないで仲良くとは言いませんけれども、同じように職務を全うしてやっていくのが裁判官だろうと。それが全員に浸透させ鼓舞し、裁判所というものの秩序を守っておられる、そういう文化を非常に強烈にお持ちになっているような気がするのですよね。だから同一年次、同一賃金というのも当然ではないかと。辞令一枚で僻地にも行きなさいと。それは裁判官として当然だというような、これは一つの私は文化だと思いますし、それが必ずしも悪いかどうか、それは何とも言えないので、それぞれの組織体は固有の文化を持っていると思うのですね。
ただ、その目的は何かというと、縄張りでは困るわけで、そういう文化によって良い裁判官が育ち、そして良い裁判ができるかということなのです。それに適した、本当にベストの在り方でしょうかという点が一番の問題だと思うのです。
この文化は企業も持っておりました。これは数十年前に捨てたわけですけれども、日本の企業もこの文化でやってきたのです。全員一丸となって、老いも若きも全部これでやる。それがある時代にはうまくいきましたけど、ある時代には足かせになってしまったという歴史を持っているわけです。
だから裁判所といえども、そういうことに、例えば今の若い人は点数を付けられるということはあまり嫌がりませんね。これは受験戦争の中で。そのプロセスは透明にしてくれと言いますけれども、結果として何点であるかという評価を付けられることは、むしろ好むというか全く嫌がらない癖を持っていまして、そういう人たちもたくさんいるわけで、時代が少しずつ少しずつ変わってきていますね。
だから、この文化でやるのだとおっしゃるなら、私は毅然としておやりになったら良いと思います。それは、これが一番良いのだという確信をお持ちならそうすべきだと思いますね。ただ、時代の流れとか、変化を検証しながら、いつまでもやっていけるかという点は若干不安を感じますので、それはよく検証していただいておやりになるべきだと思いますし、最初に述べた感想ですけれども、評価ですかという点について、もう少し何か言われた方がいいのかもしれませんね。
というのは、一番おかしいなと思いますのは、評価権者が地裁の所長というのは、これは絶対おかしいと思います。小さな支部、地裁は問題ないと思いますが、数百人の人間がいるところで、いくら自己申告制度だといっても、それに適切なコメントを所長一人がつけられますかと。これは物理的に無理だと思いますね。そういう非常に無理な点を抱え込みながらやられるというのもちょっとどうかなという感じがいたしますよね。そうやって、分担者であるというなら、分担者をたくさん作ってもいいわけで、部総括の方が分担されたって構わないわけですから、少しその辺、柔らかくしていただいて、本当に裁判官一人一人の適性を見ているのだということが分かった方が良いように思うのですけれども、今もきちんと見ておられると思うのですが、それを表に出さずに、さっきの文化で全部統一されているような気がしますので、もう一ひねりというような感じもするわけですが、以上でございます。
【最高裁(小池審議官)】また、もう一ひねりも二ひねりもして、これから考えてまいりたいと思うのですが、1点だけ発言させていただきますと、私どもの人事評価は、裁判官が横に手をつないでという発想よりは、裁判というものが全国大きな裁判所でも支部でも、同じ水準を保ちたいということが前提にあると、そこが立脚点になっている点が一つです。
やはり評価をするというのは、適材適所とか良い仕事を確保するという御指摘ありましたが、裁判官というのは、個々の事件につきましては、手続法の中で上訴制度というのがありますから、これは自分の仕事が直接上訴審で評価されるわけです。これは同じ資料で同じ仕事が評価される。これはある意味で職務の適正を図るという意味では極めて強力な職務内容システムというものを持っていると思います。これはほかの世界には、なかなかないようなところかもしれません。
あとは独立というところで、これが人事評価かとお考えかもしれませんが、民間でされているような非常に感度の良い人事評価を行うということはシステマチックで体系的な人事評価の管理とか収集というものが前提になるわけですが、そのことが良いかどうかというようなテーマもございます。これは前回もいろいろ御指摘をいただいたところで、私どももこの評価がベストかどうかというのは分かりません。まず第一歩を踏み出しましたので、ここで随分いろいろ御議論いただいたこと、また私どもの委員会でもいろいろ御議論いただいたこと、将来的には下級裁裁判官指名諮問委員会というところが最大のユーザーになりますので、そういうところでの御意見も踏まえて、少しでも良いものに、また時代にマッチしたものに変えていくように考えたいと思っております。
【伊藤座長】この点は原点のようなところですから、御意見は尽きないと思うのですけど、前回以来の議論の流れもございますので、一応今の点についての質問は終わったということで、具体的な内容に入りたいと思います。今後の検討におきましては、人事評価に関する規則要綱(案)の改訂案の記載を前提として、以下それぞれの具体的な論点について御審議いただければと思います。大変恐縮でございますが、釜田委員、御了解いただければと思います。
それでは、続きまして、事務局資料23−2の順序に従いまして御検討をお願いしたいと存じます。まず、「第1」の「評価結果の表示の方法」の問題、具体的には、「文章式に段階式を併用するかどうか」という問題でございますが、この事項についての委員会における検討状況につきまして、最高裁から補足がございましたら、お願いいたします。
【最高裁(小池審議官)】簡単に申し上げます。これは議事概要末尾の評価表というものが、委員からたたき台として示されまして、これを議論の進める大きな土台として、文章式か段階式を併用すべきかという議論がされました。段階式を併用すべきである、という委員の方からは、一定の客観基準の下で行うことが正確な評価につながる。あるいは文章式では評価が分かりにくいのではないか。それから、文章式によると、記述を全部読まなければならないので、段階的の方が端的で能率的であるというような御意見もございました。
これに対して、併用すべきではなくて文章式が良いという意見の委員からは、先ほど申し上げましたように、職務の独立性から評価資料の収集に制約がある中で、果たしてこれだけ多項目、多段階の評価を適切に行えるのか。多段階評価の客観性をどのように担保していくのか。この評価表はいささか通信簿のようで、人事管理的な面が強く出るのではないか。それから長期的な視点からの情報蓄積という点からすると、ちょっとここまでのものは不必要であるだけではなくて弊害があるのではないか。あるいは現在の文章式の評価でも、評価が段階的、特に非常に良い、非常に良くないというところの点については段階的にされているのではないか、というような意見が出されて、先ほど申し上げましたように文章式評価を支持する意見が大勢でございましたので、そのような取りまとめがなされたということでございます。
【平山委員】用語でございますが、「文章式」という言葉は分かりますけど、どういうものをイメージされているかというのが分からないと具合が悪いのですが、一般規則制定諮問委員会では、何かモデル的なものを示されたと聞いているのですけど。
【伊藤座長】モデルの点は具体例ですか。
【平山委員】具体例でございます。秘密保持の問題があると思いますので、個人の名前とか、そういうものは全部伏せていただいたものを、ちょっとお見せいただければ、我々としてはすごく納得性が高いと思うのです。文章式といっても全然どういうものか分かりませんよね。ですからよろしければ、我々も秘密保持義務を守りますので、どうぞ、お示しいただけませんか。
【伊藤座長】確かに議事概要を拝見しますと、今、平山委員が言われたような御指摘がございますが、委員会ではどういう取扱いだったのでしょうか。
【最高裁(小池審議官)】今の平山委員と同様の御指摘がございまして、幹事から現在作成されております人事評価の報告書のサンプルをお示しいたしました。ただ、これは今の、まだ見直されていない人事評価制度の下で現実に作成されたものでございまして、そういうことで、対象者だとか評価者が特定できないように、文章で記載された評価の部分だけをお示ししたわけでございます。裁判官のプライバシーとかそういったものを配慮したものでございます。委員会では、そういうプライバシーという問題がありますので、メンバーの方に御覧いただいた上で会議終了後回収させていただいておりますし、議事概要上あるいは議事録上にも、このサンプルの内容に関する議論は記載しないという御了解をちょうだいいたしまして、お示しした次第でございます。
【平山委員】座長、一般規則制定諮問委員会での御議論の成果はどうだということを、我々は同じ条件の下でやらないと具合が悪いのではないかという気がしますので、秘密保持義務はきちんと我々は守る、また回収していただくということはよろしいと思いますけど、一見して「文章式」が分かるものを示していただいた方が私は良いと思います。
【伊藤座長】分かりました。そういう御要望がありますので、もし可能であれば、委員会で示されたものと同じサンプルを示していただければと思いますが、ただ、おっしゃられたように、事柄の性質上、大変慎重な取扱いを求められるというのは当然のことだと思います。この検討会の議事の公開、非公開につきましては、第1回の会合で、プライバシーの保護が必要な場合や公開により公正・円滑な議事運営に支障が生ずるおそれがあると考えられる場合は公開を停止して、報道機関の傍聴を制限したり、その部分についての議事概要、議事録への記載を避けることもあり得る、という決定をしていただいているわけであります。
そこで、ただいまお話がございました報告書のサンプルにつきましては、最高裁から、委員、事務局には事実上示していただいて、その後、回収をして、議事概要、議事録には添付しないと、こういう取扱いにしたいと思います。それから議事録への記載につきましても、平山委員の御要望が、いわば端緒になっているわけですが、委員会におけるのと同様、報告書のサンプルが最高裁から示されたと、こういうことを記載するにとどめまして、書面に関する議論、これは議事録等には残さないということで、そういう取扱いを御了解いただけますでしょうか。よろしいでしょうか。大変微妙な問題で、通常の議事と同様にやるというのはちょっと難しいかと思いますので、御了解いただければそのように進めたいと思いますが。
それでは、いかがでしょうか。小池さん、そういう条件の下にお示しいただくということはお願いできますでしょうか。
【最高裁(小池審議官)】はい。
【伊藤座長】それでは、恐縮ですが、委員の方だけではなくて、関係機関、報道機関の方々も、報告書のサンプルの内容、これについての議論の内容は議事概要、議事録には一切残さない取扱いといたしますので、その点御配慮よろしくお願いいたします。
(資料配布)
【伊藤座長】奥野委員お願いします。
【奥野委員】私は段階的評価でなくてはいけないとは思わないですけれども、文章式評価でも大変結構だと思うのですが、先ほど最高裁の小池さんの御説明にあったような評価というのはどういうものであるべきかということを考えますと、要するに10年間の仕事を、段階的にといいますか、徐々に評価していって、その蓄積したものを使って再任をしたり、そういうときに使うというのが一番大きな目的ですよね。
そうだとすると、やはり問題は、絶対評価ではなくて、ほかの裁判官と比べて、ひょっとしたら、この人はここが非常に劣っているとか、全体の中で何位ぐらいにいるとか、そういうことが分からないと再任のときにも恐らく問題でしょうし、それ以上に一番大きな問題は、不服申立をするときにどういう場合に不服申立をすべきなのかということが本人にさえ分からないということになりますよね。文章式評価でも私はある意味ではそこのところが、相対的評価がきちんと分かるような文章的評価であれば、それは段階的評価よりも良いかもしれないと思うのですけれども、言い換えると、段階的評価ということの意味は、A、B、Cという基準というものが、評価をする側も評価を受け取る側も、他人の評価を見る側もそれぞれ何であるかということがみんな分かるわけですね。共通理解がある。文章式だとそれがなかなかとりにくいというところに非常に大きな問題があると思うので、ですから、そういう意味で文章式評価を仮に採用するにしても、きちんとした文章の評価に関する全員の共通理解、関係者の共通理解といいますか、そういうものをきちんと作っていただく努力が必要ではないか。
そこも考えた上で、もし必要ならば、委員会の方で、もう一度段階式評価も含めて御検討いただければと思います。
【伊藤座長】小池さん、何か御発言、聞いておられて、補足的に説明されるようなことがございますか。
【最高裁(小池審議官)】奥野委員の御意見ですけれども、これは私どもの最高裁の方の委員会でも、現にこういった評価をしている所長をしております委員から発言がありましたが、文章式というのは、個々の事実に基づいて記述しますので、一見絶対評価のような形をとりますけれども、それは個々の庁において様々な仕事をしておりますけれども、そこの庁において、水準は非常に上に行っているとか、水準は非常に下であるとか、そういうものは念頭に置いているだろうということです。そういう意味で、相対性というものは入ってきている。裁判官、簡裁判事を含めると3000人おりますけれども、その3000人の1番から3000番まで序列をつけてというものではなくて、この中規模庁のこのぐらいの業務量の中ではこれだけの成果を上げる。ただ、個別に記載されている中身、少し仕事が詰まってきたときには、本当に大きい庁に行ったときには、そこは彼の課題になるかもしれないというようなことが入ってくるということです。
これが先ほど御指摘もありましたけれども、一つ研鑽効果といいますか、そういうところがありますので、それが対話型人事の中で、あなたの課題ということで示していくということになろうかと思います。
補足するところは以上でございます。
【伊藤座長】そういたしますと、今、奥野委員からも御意見が出ましたので、質疑というよりは意見交換に入りたいと思います。大変恐縮ですが、意見交換については、正式の議事ということになりますので、これの具体的な内容についての御発言はちょっと控えていただいて、一般的なことでお願いしたいと存じます。どうぞ、御意見をお願いします。佐々木委員どうぞ。
【佐々木委員】一般規則制定諮問委員会で末尾に付けられている評価表、これが段階的評価の代表的な形というように示されているわけですけれども、2点だけ実際的ではないのではないかという点を指摘したいと思います。と申しますのは、第1点、評価する者の立場から申しますと、地方の県庁所在地の裁判所では、例えばAという裁判官は民事事件、執行事件、倒産事件、そして支部において、私などはそうだったのですけれど、家事事件もやっておったというように、担当職務が複数鼎立していることがあります。そうするとその人の経験や、その庁の事件数等を踏まえますと、どういう評価が出てくるかといいますと、Aという裁判官は、民事事件については、なるほど経験も豊かで、法律知識も十分あるけれども、家事事件は初めてだったということもあるわけでありまして、そういう場合にA、B、C、Dで抽象化すると、民事事件は十分で、家事事件は不十分で、執行事件はかつてちょっとやった程度で今回は平均的だということですと、全体として、一体どの辺に位置付けたらいいのかという問題があります。担当職務の多様性をどういう評価に反映するかというのがちょっと分かりにくい。実態からかけ離れるのではないか、それが1点。
一つ一つの職務についてみましても、評価の視点のところ、私も司法研修所教官でやっておったときによくあるわけですけれども、一つの物事を解決する場面、例えば民事訴訟の場面で見ていくとしますと、法律知識の正確性とか十分性とかという視点の切り方と「分析力」とかそういうものと複合的に見て、そしてこういう視点とこういう視点とこういう視点から一人の像を描き出すという方がはるかに分かりやすいわけで、それをぶつ切りに分けられますと、これは一体どうなるのだろうかという気持ちがいたします。一つの職務について見てみても、視点は複合的な、コンプレックスなものであるというところから段階式は、実際的ではないのではないか、こういう印象を持ちました。
【伊藤座長】どうぞ、岡田委員。
【岡田委員】段階式にしろ文章式にしろ、やはり気を抜いてしまえば何にもならないと思うのですね。今見せていただいた文章式を見ますと、やはり段階式よりは行間も読めるという感じがするのです。段階式だと、その合間、AとBの間とか、BとCの間とか、その辺が読み取れないのですよね。ですからそういう面では段階式よりは文章式の方がいいのではないかなと。でも最終的にはどこかではA、B、C、D、段階をお付けになるのではないかなと思うのですよね。地裁・家裁の評価のレベルではともかくとして、最高裁の裁判官会議とか、何かそこへ行くまでには、ないしはそこでは段階的も加わってくるのではないかなと。
しかも、これは毎年蓄積していくわけですから、地家裁の所長も変われば、高裁の長官も変わっていくという部分では見方も変わってくるということで、平均化されてというか、偏った見方ではなくなるのかなと思うもので、一応文章式の方が良いのではないかと思います。
【釜田委員】私、大学ラグビーに関係していまして、いろいろな試合に立ち会うことがあるのですが、そこで一番重要視されるのはレフリーが、それがランキングA級のレフリーであれ、B級、C級いろいろあるのですけれども、本当にフェアにレフリングをやるかどうか、これが一番観衆の関心事なのですね。いかに技術的な面での知識が豊富であっても、レフリーが少しでも偏ったような判断を示しますと、相手方チームの応援団から、敵方は16名でやっているぞ、というようなヤジが飛ぶのですね。15名じゃなくて、向こうはレフリーも味方に入っておるぞというような、そういう不満がごうごうと出てくるのですね。私はジャッジという言葉の持つ重み、スポーツはレフリーですが、これは何よりもフェアでないといけないと思います。
だから、この前、最高裁が示されました評価項目・視点の「3」、座長が「3」は重みがあるのだと、真打ち登場のような、一番重々しいから「3」に置いてあると説得されました。これが一番大事なことだと思うのです。だから評価される場合にも、本当にそういう面での苦情等が出ていないかどうかのチェック。チェックといいますか、それに対する感想ですね。地裁所長の方、家裁所長の方、いつでも見てらっしゃるわけですね。私は技術的な面、「1」「2」というのは、これは組織の規模とかいろいろありまして相対的なものなのですね。国民が一番知りたいのは、どんな事件を担当されるのであれ、やっぱりジャッジとしての姿勢が貫かれているのかということが、それが一番知りたいですね。
先ほどちょっと手を挙げかけたのは、日本は明治以来、全国に裁判所を設けましたね。これで分かりにくくなったのですが、これは御案内のように英米の初期のように、イギリスであれば、ロンドンに1カ所裁判所を持ちましたね。あとは全部巡回ですね。裁判官はロンドンに集め、あとは事件の度に派遣して巡回法廷を開く。こういう形であれば分かりやすいのですね。判事さんは皆東京にいらっしゃいますから、そこで見て、今日は東北、今日は北海道、沖縄と行って、そこできちんと処理をして、また東京へ帰っていらっしゃる。これだと先ほどのような東京と沖縄とか、そういうような支部等云々というようなことは出てこない。そのときにやっぱり国民が見ているのはフェアかどうか。スポーツでやっているレフリーと私は非常に似ていると思うのですね。
何か給与面での議論では、日本の場合は行政官に倣ってといいますか、そういうモデルで裁判官の方を評価していく。給与体系はそうなっているのだと。これがちょっと分かりにくくしているのではないか、日本の制度を。しかし現状はそうなっていますから、今更言っても始まらないのですけれども、私はその辺の評価を、まず第一にきちんと国民に示していただきたい。それに尽きるのではないか。あとは年数が持つ経験の多少、組織の大小とか、支えるスタッフの力量、それによっていくらでもできるのですね。知識の補完、組織運営の補完も全部周りにいるスタッフが支えていくのですよ。最後の最後で求める個人的な資質は「3」だと私は思うのです。
【伊藤座長】釜田委員は、今おっしゃったような内容の評価が一番大事であるということで。
【釜田委員】趣旨は結構なのです、文章式は。私、今、拝見しましたら、大学におる者としましては、学生諸君のための推薦状と非常に似ているのですよ。人物を外部に紹介するときに、その人物がどうか、どういう人かということをこういう文章でやりますよ。これは内外ともに。それと非常に似ています。だから、私はこれは文章式でいいと思います。所長の方がきちんとされたらいいのです。
それで所長の方に対する不信の声とかあるやに聞いていますけれども、私はそもそもスタートが違うと思うのですね。法曹三者が持っている基本的なフェアプレーの精神を一番よく体得していらっしゃるのが裁判官の方だと思うのですよ。しかも所長職に就かれる方はその中でもベテランの、同僚の中から支えられて評価の上がって来られた方が五十数名全国にいらっしゃると思うのですね。だから、その方がもしフェアな評価ができないのであれば、司法界そのものが崩壊するということです。法曹三者の、ここの検討会の対象事項の基本が崩れるわけですから、これは抜本的に日本の制度全体を対象にして考え直すということです。
私がこういうことを言いながら気になるのは、お前は京都の草深いところにいて知らないことがあるのだと。実は小池さんとか金井さんとか毎回言っておられるけれども、あれは一部で裏はあるのだぞというようなことが、もしも日弁連の方で掌握していらっしゃることがあるなら私は聞きたいと。実はお前は京都の方にいて知らないのだと。平山委員にお伺いしたい。お前が知らないだけだと。松尾委員、東京におって実は掌握しているのだとおっしゃることがあるなら、私は今日教えていただこうと思って上京してきたわけですよ。あれば教えていただきたい。私の考えは甘いと。何かお前、理想的なことに基づいて、前提が間違っているぞということであれば、それを是非教えていただきたいというのが私の率直な感想でございます。
【伊藤座長】いろいろ評価の内容に関する御意見もあるかと思いますが、議題が文章式と併用という話ですので。
【釜田委員】文章式でいいです、すいません。
【伊藤座長】時間の制約というのも当然ございますので、大変恐縮ですが、そのところに絞って、既に御意見をいただいている方はいいのですが、お願いしたいと思います。
【平山委員】私は結局この人事評価制度というものを、司法制度改革審議会の意見書でこれを検討しなさいという意味は、間違った不当な差別等が起きないようにしなさいというところにあると思います。過去の歴史にそういう不当な差別があったかどうか、私はよく分かりませんけど、そういうことで提案がされたと思いますので、それには何が良いかということが一つあるのだろうと思います。
そういう意味からいたしますと、確かに、例えばこの提案のように、5段階に分けるとかというのは非常に間違いを防げるようにも思いますけれども、間違うかもしれないのです。点数だけでいきますから、そういう意味では、私は5段階に分けるというのは難しいと思います。ですから分けるとしても3段階か2段階で、特に不利益を受けるような差別を防ぐのには二つでいいのですよね。そういう意味で考えることができるのかと思います。
そういう意味で、個人的には、そういう客観的な要素を入れるということは大事かと思っておりますけれども、一般規則制定諮問委員会の方の御審議の中身を見ますと、かなり綿密に議論されておりますので、私はこの結論を支持したいと思っておりますが、さっき申し上げましたように、この例を拝見しますと、なかなか分かりやすい。ですからそういう意味で文章式といっても、こちらでいろいろな項目を挙げておられますのをイメージしながらお書きになっているというのが分かりますので、そういうことに十分注意して評価を出して、それが重なっていけば、結論としては10年間でその方の評価が、これは再任に難しいという評価になるのか、そうではなくて一般的だと、普通だから、もうこれは問題ないということになるかという問題ではないかと思いますので、私はとりあえずはこの方式でやってみていただくということに賛成をしたいと考えております。
【伊藤座長】文章の記載内容、総体的にいろいろ御要望ございましたが、今伺っていますと、文章式という形が良いのではないかという御意見が多いように承りましたが、なお、御意見がございましたらどうぞ。
【松尾委員】評価結果の表示方式として一般に文章式か、段階式かと言われますけれども、これはいずれにしても一長一短があると思います。文章式では文章の書き方だとか表現の仕方によって、その評価権者の真意が十分に伝わらない。抽象的な表現ではむしろ曖昧になるおそれがある。さらにはどうしてもイメージ的にはプラスイメージの記述になりやすいというような傾向があると思います。
一方、段階式は、最も優れているとか、かなり劣っているという場合はともかくとして、多くは平均的な範囲内に収まるというようなことで形式的な評価になる傾向があると言われております。いわば評価権者の主観や好みがどうしても段階式にはあらわれやすいとも指摘されていると思います。
そういうことで、文章式と段階式の短所を相互に補完するというような意味で実際的には併用式ということが言われているわけでありますけれども、私も実は当初の段階では、裁判官の評価の表示方式としては併用式の方が妥当ではないかと思っていたのです。しかしよく考えてみると、裁判官の評価の目的が一般の評価とかなり違うことで、一般論では考えにくいと思います。「これは人事評価と言えるかどうか」と中川委員は言われておりますが、そういうようなことも含めて言うと、一般の評価の目的・取り扱いと裁判官の評価の目的・蓄積扱いとは違うということと、裁判官は独立して職務を行使するという職務の特性がありますので、そういう観点から考えますと、いわゆるランク付けするような多段階の段階式、表示というものは、たとえ併用方式であってもあまり好ましくないのではないかと思います。
さらに評価権者が裁判官の事務処理能力や組織運営能力を的確に現実の問題として情報を収集することができるかどうか。それによって効果的に評価できるかどうかということを考えますと、私は裁判官の場合は、現実的に併用式もあまり必要ではないのではなかろうか。結論からいえば、文章式の方が妥当ではないかという考えです。
ただし、条件というか注文がありまして、文章式にするにいたしましても、やはり評価項目について客観的に書かなくてはいけない。具体的に記述しなければならない。さらにいわゆる段階式の長所と見られる部分を十分に意識した表現で記述することが大変重要な条件になってくるのではないかと思います。
さらにもう1点、こういった文章式にしますと、評価権者の表現形式上の役割・責任が非常に重くなると思いますので、評価権者の研修みたいなものも必要になってくるのではないかと思います。所長に対する研修というとちょっと奇異な感じがするようですが、やはり評価の表示の大事さを考えるとそういう研修も必要になってくるのではないか、このように考えております。
【伊藤座長】そういたしますと、いくつか大変貴重な御指摘をいただきましたが、表示方法の問題自体については、委員会の検討結果を大方の委員の方に御了承いただいたということでよろしゅうございますか。内容については、小池さんに十分今までの御意見の趣旨を御理解いただいたと思いますので、さらにいろいろな御検討があり得ると思います。よろしいでしょうか。どうぞ、田中委員。
【田中委員】補足にもなるのですが、この最終的なユーザーである下級裁判所裁判官指名諮問委員会の委員をやっておりまして、こういう評価の結果がどのように出ているかを多少知っているので、守秘義務に反しない限りで言いますと、文章の形で出てきていますけれども、はっきりとこれは非常にいい評価、これは中間あたり、その前後、これは悪い評価だと分かるように、みんな工夫して書いていらっしゃいます。所長さんによっていろいろ丁寧に書いてある人ともう少し工夫した方がいいかという方がいらっしゃるけれども、こういう基準を示して文章方式でやっても、段階式のメリットも十分取り込めると思うので、むしろ今、松尾委員がおっしゃったように、こういうA、B、C、Dという段階式は弊害が多いので、文章式でやった方がよいと思います。 ても、必ずしも文章式か段階式かという問題ではなくて、文章式で段階式の趣旨を入れた評価をしていらっしゃるので、最終的に適否を判断するときにはそれで十分で、むしろ段階よりもそういう文章で書いてもらって、この人が民事系に強いとか、刑事系に強いとか、さっき佐々木委員がおっしゃったようなことが分かった方が、将来の人事に関して適正な人事ができるという意味でも、私は是非文章式でやってほしいという感じです。
【伊藤座長】どうぞ、木村委員。
【木村委員】私も、裁判という私どもの社会の中で作り上げてきたシステムの非常に重要な点だと思うのですね。つまり一般の企業の職員の方の事務能力の評価ということになりますと、これはA、B、C、Dでも恐らくは可能かと思うのですね。年齢が若い、中年である、あるいは高年である。それぞれの年代に即してA、B、C、Dぐらいまでつけることは恐らくは可能だと思うのですね。それもまた給与に反映するような形で。
しかし裁判というのは、そういう点は全人的な評価であり、受ける方も全人的にそれに対応するわけですから、ある程度の経験を踏まえた裁判業務の中の評価をA、B、C、Dでやるというのは最も非人間的なことになるわけでして、そういう点で、早稲田大学の場合も職員の人事については3段階でやっていまして、比較的評価が可能かと思いますが、これは裁判官とは全然違うのです。ですからそういう意味で、裁判のシステムの中に、少なくとも人事評価にビジネスの発想を取り入れるということだけはやめなくてはいけない。これは私の基本的な見解です。
【伊藤座長】ありがとうございました。どうぞ、奥野委員。
【奥野委員】田中委員がおっしゃったことに対して基本的に大変結構だし、有用ならば是非そうしていただきたいと思うのですけど、一つだけちょっと気になることがあって、むしろ任免のことをよく御存じの田中委員に教えていただきたいのですけれども、恐らく評価する側はたくさん評価しますから多分相対的には付けられると思うのですね。それから利用する指名諮問委員会ですか、これもたくさん見ますから、多分相対的に見えると思うのですね。問題は本人であって、わざわざ不服審査ということまでやるわけですから、ということは、本人がどのぐらい相対的なものを付けられたかということが分かってなければ不服申立も何もないわけですね。それが分かるようになっているのかということだけを、見られているそうですが、あまり具体的なことは入らなくて結構ですけれども、私としてはそこが文章にしたときの一番キーの問題、あるいは制度設計の一番かぎのように思いますので教えていただければと思います。
【伊藤座長】田中委員、いかがですか。
【田中委員】守秘義務の問題もありますので、抽象的に言いますと、概して分かります。いろいろな事例が書いてあって、自分はそのように見られるのはおかしいという異論を唱えることができるような文章になっており、少なくともネガティブな評価をされている場合には、比較的、何がネガティブな評価の原因かということが書いてあって、概して可もなし不可もなしという評価が多いのですけれども、非常に良くできるという評価もありますし、問題のある人はこの点が問題になっていると、きちんと指摘してありますから、こういう点でネガティブな評価を受けたのは不本意であるいうクレームをつけることができる仕組みにはなっています。
【伊藤座長】先を急いで恐縮ですが、それでは先ほど私申し上げましたようなまとめにさせていだたきます。
続きまして、「第2」の「裁判所外部からの情報の取扱いの問題」の検討をお願いしたいと思います。事務局資料23−2の「第2」の「1」、本日、改めて席上配布いたしました委員会資料4、「裁判官の人事評価の概要(案)」の2ページから3ページにかけて、「3 評価基準等」(2)「裁判所外部からの情報の取扱い」のこの枠囲いの外に記載されております①、②、③についての検討をお願いしたいと思いますが、委員会の検討状況につきまして、最高裁から補足していただくことがあればお願いいたします。
【最高裁(小池審議官)】特に異論なく承認されたわけでございます。1点だけ補足させていただきますと、こういった外部からの情報は原則として情報提供者のお名前が明らかになって、具体的な根拠事実を明らかにされた情報であることが重要である。どこの情報か、どんな根拠に基づく情報か分からないものは、もちろん例外はあると思いますけれども、考慮することは問題があるという意見でございました。以上でございます。
【伊藤座長】それでは、ただいまの御説明に基づきまして、①、②、③につきましては原案どおり取りまとめられたということでございますが、いかがでしょうか。どうぞ、松尾委員。
【松尾委員】全体として基本的に私は異論はありません。ただ、3の(2)の②の「原則として顕名により」の部分なのですが、顕名だけでなくて、匿名であっても、具体的に根拠のある事実、又は信憑性が高いと判断される情報の場合の取扱いをどうするかということは考える必要があろうと思いますね。顕名であれば、自分の身の保全というようなこともあって有力な情報でも簡単に提供したくないということもありますが、匿名であれば、自分が有する情報を提供するということも十分にあるし、匿名であるからこそ信憑性の高い場合もありますので、そういったところを慎重に吟味してほしいと思います。匿名であると何だか価値がないような扱いは絶対にしてほしくないというのが1点。
もう1点は、これは外部情報取扱いの運用の問題かもしれませんが、検察官や弁護士及び一般の個人が有する外部情報を取得するためのポスト、ポストみたいなものを設けられるお考えがあるのかどうか。特に一般個人の場合は便宜を有効に図っていかないと、仕組みはできたとしても、形だけのものになるおそれもありますので、そういったことを十分に配慮した仕組みにしてほしいと思います。
【伊藤座長】小池さん何か、今の御発言に関して。
【最高裁(小池審議官)】匿名の情報でございましても、重大な指摘を含むとかということは十分あり、それを排斥するということではなくて、例えばいろいろ調査をする重大な対象になりますし、また、そういうものは繰り返し数多く出てくるというならば、それ自体一つの重要な情報ということになると思います。
それから窓口の点ですが、これは委員会の方で、一般の方に重要なのは、どこに郵送なり、その情報を届ければいいかということを、一つの窓口をしっかりすることではないかというような御指摘がございました。確かに目安箱のように、庁内にたくさん設けておけばいいというのもありますけれども、人事情報という大切な情報ですので、取扱いはきちんとした方が良いですし、他の紙と一緒に入っているようではちょっと困るわけで、きちんと総務課で大事に取り扱うというのが適当ではないかというところです。
【伊藤座長】よろしいですか。
【松尾委員】はい。
【伊藤座長】ほかにいかがですか、どうぞ、木村委員。
【木村委員】これは守秘義務の関係なのでしょうけど、インターネットとかそういうものでは受け付けないわけですね。インターネットに同一のものを出しておいて、ここに出してくださいというようなこともやる予定というか、それも考慮の余地があるのでしょうか。今、そういうことですと、非常に出しやすいという方もいらっしゃるかもしれませんけれども、その点はいかがですか。
【最高裁(小池審議官)】その点はこれから検討させていただくということですが、今のところは、情報の管理の面で、紙の情報を前提に考えております。
【木村委員】そうですか。
【平山委員】小池さんの先ほどの御説明の中にあったと思われるのですけれど、議事概要の、添付資料のところに、宮本さんのペーパーがございますが、先ほどの評価表の後に添付されている資料、これは、今の我々が議論しているところとかみ合っているものですよね。これについて、一般規則制定諮問委員会の方の結論としてはどうなったかということでございましたか。先ほど説明いただいたのでしょうか、宮本さんの修正案というのがありますね。これについてはどうなったということでございましょうか。
【最高裁(小池審議官)】特に「1」のところでございますね。
【平山委員】そうです。
【最高裁(小池審議官)】今の外部のところですが、1の(2)のところはこの意見を取り入れさせていただきました。(3)と(4)というところについては、もちろん工夫するというのはそうでございますけれども、ポストを作るとか、そういうことではなくて、この御趣旨を踏まえたような運用をしていくということだったと思います。
【伊藤座長】そういたしますと、資料23−2の「第2」の「1」記載の①、②、③については、委員会の検討結果が了承されたということでよろしいですか。
(「はい。」と声あり。)
【伊藤座長】ありがとうございます。
それでは、引き続きまして、資料23−2の「第2」の「2」、委員会資料「裁判官の人事評価の概要(案)」の3ページ、「3」の「評価の基準等」(2)「裁判所外部からの情報の取扱い」の枠囲いの外の「*」に記載されました①、②についての検討をお願いしたいと思いますが、先ほど奥野委員からご発言ございましたが、その前にもし何か小池さんから補足して説明していただくことがございましたらお願いします。
【最高裁(小池審議官)】①、②一括でございましょうか。
【伊藤座長】そうですね。
【最高裁(小池審議官)】①の点は特にございません。
【伊藤座長】それでは①の点はよろしいですか。①については、特に御意見がなければ、委員会の検討結果が了承されたということでよろしいでしょうか。
続いて②については、小池さん何か補足して説明していただくことはございますか。
【最高裁(小池審議官)】先ほど申し上げましたけれども、段階式のアンケート方式を採用すべきであるということについて、委員から御意見が出されませんでした。それで外部からの情報については、名前を明らかにした情報を原則にしていくという取扱いをベースにしていくという方針が明らかにされたということでございます。
【伊藤座長】奥野委員、どうぞ。
【奥野委員】段階式評価アンケート方式ですが、私は、当面この方式を使わないという委員会の御結論に対して反対を申し上げるつもりはなくて、ただ中長期的に考えて、少し注意深くこの件に関しては御検討いただきたいという趣旨で申し述べさせていただきたいのですが、今回の司法制度改革は、私が理解している限りでは、司法制度というものを国民に対して開かれたものであって、透明であって、しかも国民により身近なものにするというための改革が行われていると思うわけですね。そういう意味では非常に多様なところで望ましい改革が行われつつあると思うのですが、他方、このアンケート方式というのは、ある意味でとりわけ原告であるとか被告であるとか、つまり裁判という仕組みを利用する最終的な受益者である国民がどう思っていますかということを聞きましょうということなのです。これをどう一般規則制定諮問委員会が処理されたかというと、ここにも書いてありますけれども、何も議論はなくて、それを委員長がどうまとめられたかというと、「ここまでやるのはいかがなものかというのは皆さんの意見だと理解して」と書いていらっしゃるわけですね。さっき私が申し上げたことからいうと、ここまで本当はやるべきなのだけれども、何らかの理由でできないからやめますとおっしゃるならまだ分かるけれども、「いかがなものか」とおっしゃって、しかもそれで「異議なし」と皆さんがおっしゃっているというのに、私、ちょっとカルチャーショックを受けていまして、正直言うと、この委員会でもいろいろな意味でカルチャーショックを、法学とは違う分野から、多分参加している数少ない委員としては、いろいろ法律というのはすごい固いところだな、間違ってはいけないと非常に思っていらっしゃるし、専門知識も持ってないと、だめとまでは言いませんけれども、それが非常に大事だとものすごく強くお考えになっていらっしゃる。それはもちろん法律の安定性のために必要だということは私はよく分かるのですけれども、経済学などというのは、ある意味で、逆に間違ってもしようがないと。長期的にはどこかで勝つと言えば勝つのだからと。間違った人は要するに負けるのであって、間違わなかった人は勝つのであって、そういう間違いの中で勝ち残っていくのが勝者資本主義ですよと、極端に言えば競争市場社会ですよと、そう考えているわけですね。
ある意味で、考え方としては両極端な立場だとは思うのですが、そういう立場から言うと、ちょっと違和感を感じるというのが率直なところなのです。さっきも申しましたけれども、この段階評価というのは一番分かりやすい例で言うと、ここにも関係者が何人かいらっしゃいますから言いますけれども、大学で授業をする場合の授業評価というのによく似ていてると思います。昔は経済学部でも、今、私が批判しているような発想が大学の中にあって、学生に授業を評価させるとは何事だという発想で全然許さなかったわけですね。
ところが最近になってむしろ状況が全部逆転していて、教育とか講義の最終的な受益者は学生なのだと。その意味で学生にきちんと評価をしてもらうことが、もちろん個々の評価というのはブレがものすごく多いですけれども、それをたくさんの数を積み上げることによって、その中から統計的な形でいろいろ有益な情報が生まれてくる。それは一つには、ほかの先生に比べてこういうところは良いとか、悪いとか、裁判で言えば、非常にむだなところで時間を使っているとか、そういうような情報が多分出てくるのでしょうし、それがなくても、専門家とは違う目でいろいろなものを見ていくわけですから、そういうことは、例えば時代の変化なども当然反映して、専門家とは違う形でいろいろな情報を流していけるのではないかと思います。
すいません、長くなって申し訳ございませんが、もう一つだけ申し上げると、自己研鑽に役立つだけでなくて、裁判官の評価といったときにも、私はさっきのいわゆる家裁の所長などが評価するのを文章式にするということで、例えば釜田委員が文章式の方が、推薦状などで、人間があらわれているからいいのだというようなお話があったのですが、評価というのは、私は一つのものだけで評価してはまずいと思うのですね。言い換えると、推薦状というのはなぜ評価として非常に有益かというと、普通は採る側、大学にしても会社で採る場合でも、入学試験とか面接試験とかに加えて推薦状を採るわけですね。推薦状だけで採るというのは非常に例外的なわけですよ。
そういう意味で言うと、裁判官の評価をするときにも、上司の評価も一面的にあるのではなくて、利用者の評価というようなアンケート調査、もちろん外部の関係者、弁護士の方の意見なども使ったらいいと思いますけど、できるだけたくさんの情報を多面的に使うと。できるだけそういう形のオープンな評価をしていって、それを活かしていくというような形で、より国民に対して近い、開かれた司法制度を作るような方向で一般規則制定諮問委員会も是非考えていただきたい。
私はこの御発言見ていると、ちょっとこれでいいのかなと。この委員会に対して不安を持ちますと、私は率直に申し上げます。
【伊藤座長】ありがとうございました。どうぞ、中川委員。
【中川委員】また民間のこと言って、嫌がられるかもしれないのですが、私ども多面評価と呼んでいるのですけれども、多面評価の考え方の中には外部評価は含まれてないのです。時どきやるところもありますけれども、それは民間ですから外部の評価で職務行為が影響されることがあるのですね。お客さんからの、評価が非常にいい人は逆におかしいという面がありまして、外部評価というのはやらない、基本的に。多面評価というのは、部下が上司を評価するとか、あるいは隣の部の人が隣の部の人をやるとか、そういうのを言うのですね。
その根本に流れている考え方は、評価というものは外部ですべきではない。これはなぜかといいますと、評価は教育なのですね。要すれば、評価をして報酬に結び付けるという単純なものではなくて、評価を通じてフィードバックし、その人の足らざるをものを補ってもらう。それをもってその人の活性化、組織の活性化を図るというのが評価の本当の目的でして、評価そのものは大した話ではないのですね。要するに評価=教育だという考え方が底流にあるのです。ということは、結局組織の中で責任ある人が責任ある評価をしろという、非常に哲学がしっかりしていまして、そうでなければ本当の評価はできない。評価者は評価について責任を持つわけですから、変な評価をした人はそれは評価権者として逆に評価されて、どこかへ飛ばされるとかクビになるとか、そういうことになるわけです。彼は適切な教育をしなかったわけですから、良い評価ばかりしているということになる。人を見る目がないという評価を受けるわけです。
それが評価であると我々は考えていまして、裁判所は確かにクライアントが外部の方ですから、それは意見をお聞きになるのは私はいいと思いますけれども、私はあまりこれに重点を置かれる必要はないのではないかという感じがするのですけれども、軽く参考にされるのはいいような気がするけれど、自分の組織の中で良い裁判官を育てるという非常に強い哲学をお持ちになっていただきたい、そう思います。
【伊藤座長】どうぞ、太田委員から。
【太田委員】私、この点、段階式評価アンケート方式は不要だと考えます。先ほどの松尾委員の御意見とも少し関連するのですけれども、一方で、顕名で自己の名を明らかにして特定の裁判官の人事に影響を及ぼすような情報を入れるということをするのは、結構勇気が要ることなのですね。また、それだからこそ重要な情報となるのですけれども。しかし、松尾委員がおっしゃったように、匿名であっても非常に迫真性のある情報であって無視できないとか、あるいは特定の裁判官が、どこの裁判所に転勤してもその裁判官に対して同じような声なき声の批判がいろいろ上がってくるというようなこともあるかもしれません。そのような情報についても、匿名だからということのみで一切無視するということでなく、これらをも、きちんと吸収して蓄積されていくシステムができるかどうかが大事であり、そのようなことであれば、私はそれで十分であり、アンケートは不要だと思うのですね。
当事者のアンケートというのは自分の一生がかかっている事件に関するものですから、どうしてもエモーショナルな面をもって記載されがちですし、特に段階式というのは客観評価ですから、当事者は、上司が多数の部下の仕事を常時見ているのとは違いますから、段階式の評価をすることにはなじみませんし、アンケートという形になりますと、当事者の事件ごとの一喜一憂した感情とか、そういったもののために相当バイアスがかかったものとなってしまい、場合によっては裁判官に対して不当な影響を与えることにもなりかねないのかなと。しかし、その方たちがいろいろ言いたいときには、ちゃんとそのルートが確保されていることが大事であって、それらの情報が適切な蓄積の下に客観的に長期の分析に耐えうるような形で十分参考にされていくことさえ確保されれば、このようなアンケート方式による必要がないと思います。
【佐々木委員】奥野委員のおっしゃる意味も十分その感じで分かるわけですけれども、学生に対する講義とちょっと違う点ということを述べたいと思います。学生には講義と試験があるわけですけれど、その講義の状態は特定の一方方向、あるいは双方向の意見交換もあるかも分かりませんけれども、訴訟の場合には両当事者との関係で、ある一方の証拠請求を排斥する過程があります。
それから、裁判の場合は結果ですね。結果の有利・不利がアンケートではどう影響しているのだろうか。アンケートの場合は、そういう点がどのようになるのだろうか。
もう一つ、顕名とか事実関係で来られますと、裁判官は反証可能性といいますか、反論を挙げられます。しかし、アンケートで、例えば大規模訴訟をやって、原告が100人ぐらいいて、被告が一人の場合に勝たせたと。そうするとどういうことになるのだろうか。その結果の影響との関係でどういう形になるのか。また、それと逆の結論だとどうなるのか。結果の影響性についての反論ができず、反証可能性がないような状態に置かれることについては問題ではないかということと、もう一つは、中川委員がおっしゃった点と関連しますが、評価権者としても、顕名で来られた少数のものと内部の様々な情報と、それから圧倒的な物量といいますか、それで来られたアンケートのようなものとどういう位置付けでやっていくのかということがありまして、そのテクニックがまだ内部でも十分検討されませんし、評価権者にとっては至難のわざで、これが3分で、こっちが4分で、こっちが何分ということはできないのではないだろうかということがあります。だからアンケートについては、裁判官の問題、人事を評価する資料としては避けたいと、これが大阪地裁での意見交換会の圧倒的な意見なのです。そういう点を御紹介しておきたいと思います。
【伊藤座長】田中委員。
【田中委員】段階式評価アンケート方式について、この結論は、私も奥野委員と同じように、委員長の話し方については疑義があるのですけれども、結論はそれでいいのです。ただ、所長がこういう項目について評価されるときに、そもそも裁判所は一般的にどう見られているのかということについて、こういう段階式評価アンケート調査に近い形でもう少し社会学的な分析とか、何かデータを押さえておかれた方がよいのではないかと思います。所長が評価されるときに、自分たちは内部的には十分だと思っているかもしれないけれども、社会一般とか利用者は必ずしもそう見ていないというところはあるので、以前にも法社会的学的な調査に裁判所が応じられた例もあるのですけれども、そのあたりについては、裁判所の内部で評価される前提の一つのスタンダードみたいなものを、自己認識というか、自己イメージを確認されるために、こういう研究的な調査を直接的な評価と結び付けずにおやりになって、そのベースを確認された方がいいと思います。そのあたり、裁判所の中の見方と一般的な見方のずれというのは十分あり得ると思うので、その点を一言付言させていただきます。
【岡田委員】利用する側の消費者の立場でいいますと、自分が裁判に関わった場合に、評価するとか、アンケート調査に答えるとかの前に、まず自分に出された判決とか訴訟状況がどういう状況か、それすら理解できない消費者の方が多いと思うのですね。弁護士が付いていれば、弁護士がちゃんと説明してあげれば、消費者も正しく理解できるでしょう。ところが弁護士が付いていない場合は理解しないままで終わるでしょう。弁護士とか書記官などが消費者に対して、ないしは国民に対して、訴訟についてかみ砕いて理解させることができれば自分の意見というものが出てきますから、総務課にちゃんと顕名で意見を出すと思うのです。そういうところに至ってない段階でアンケートというのは私は問題だと思います。
【中川委員】よく分からないのですけど、これは裁判所に対する意見ではないのでしょう。裁判官に対する人事評価に関連する情報の提供を求めるということでしょう。そんなことあるのですか。というのは、外部評価、外部の人からでないと分からないことというのは、そういうことがあっては困りますよね。内部で全部そういうのは認識しているというのが評価であって、何か言われて、はっと気が付くというのは、その人間を見てないということにもなるわけだし、何かそういう意味では、私はこの外部評価の意義がいま一つよく分からない。裁判所に対するいろいろなクレームとか、裁判官を通じてのクレーム、やり方、これは分かりますね。しかし、個人の評価との関連でと言われるとどういうことですか。態度が荒っぽいとか、そんなことは内部で分かったら、それはその裁判官はそうなのだからといって、10年間注意されているわけですから今更という、だから、その辺がちょっと、あまりこれ重点を置くべき問題ではないのではないのではないかと、評価の在り方を十分やるべきだと私は思います。
【伊藤座長】どうぞ、木村委員。
【木村委員】国民に開かれた身近な司法制度という、意見書に従って基本のところを押さえていくという観点からしますと、外部評価といいますか、例えば資料の裁判官の人事評価についての意見書の裁判官ネットワークの資料などを見ますと、2ページのところには、裁判官に不満がある当事者側からの意見だけではなくて、肯定的評価をしている当事者側からの意見、ここは非常に大事なことで、いろいろな例えば病院、アメリカの私はバイオエシックス(生命倫理)が専門ですが、アメリカの病院などでも積極的に病院を評価している人も結構いるわけです。ですから裁判官についてのネガティブ、我々は評価というとネガティブのことをよく考えがちなのですが、そういう点も含めて相当外部にいろいろな形でそれなりのポジティブにネガティブに評価をしていらっしゃっている方がいるという前提で、国民に開かれた情報を集めるということを積極的に推進していこうという方向は、私は非常に望ましい、審議会の意見書に沿った方向だと思うので、それを裁判所は結構よくやっているから、これでいいというのではない、いろいろな形のアンケート方式を含む開かれたシステムを構築するという方向が一番望ましいと思うのです。そうしないとせっかくの機会に、意見書の言っている中身がきちんと表現されないことになるのではないかと思うのです。
【佐々木委員】今の部分のことで、窓口に肯定的なものが来てないかといったら、現に来るわけですよね。終わった人のお礼状とかは現実に総務課の窓口に来ています。だから、肯定的なものを集めるのにアンケートが必要だということにはならないわけです。もう一つは、そのアンケートの問題点は、刑事事件とか執行事件とか破産事件をやっている人はだめだと。その対象は民事の法廷に出てきている人か、なぜか家事に限る。制度設計する場合にその人たちだけがこのアンケートの対象になって、刑事はだめだというような、この場合に、検察官もおられますけれども、そういう問題があります。制度設計の場面で、裁判官の一部に限定した形でアンケート方式を取り入れるのはおかしいのではないかということです。
【木村委員】そうですか。
【佐々木委員】そうです。
【伊藤座長】時間のことばかり言って恐縮ですけれども、大分大幅に時間を超過していますので、取りまとめをさせていただきたいと思います。先ほど田中委員からの御発言もございましたように、裁判所あるいは場合によっては裁判所を構成する裁判官に対する一般的な評価に対して謙虚に耳を傾けるとか、あるいは積極的にそういったことについての意向を情報収集すること自体については、評価とは直接それが関わりないものだとは思いますけれども、重要性があるということについては、恐らく共通の認識があると思いますし、また、奥野委員がおっしゃられたようなことについては、学術的な形での研究というのも既にありますし、これからまたそういうものも恐らく出されていくのではないだろうかと思っております。
それはそういったことを踏まえまして、一応今の段階での考え方といたしましては、この委員会の結論について御了承いただくということにさせていただければ大変ありがたいと思います。
それでは、先を急ぎまして恐縮ですが、「第3」の不服がある場合の手続の問題、これの検討をお願いいたします。事務局資料の23−2の「第3」、本日改めて席上配布しております委員会資料4、「裁判官の人事評価の概要(案)」の4ページに記載されました「不服がある場合の手続」についての委員会における検討状況につきまして、最高裁から補足があればお願いいたします。
【最高裁(小池審議官)】冒頭に補足させていただいたとおりでございます。
【伊藤座長】それでは、冒頭の御説明も踏まえまして、この事務局資料23−2の第3のとおりの取りまとめということですが、この点についての御議論をお願いいたします。
【平山委員】意見を申し上げます。
【伊藤座長】どうぞ。
【平山委員】所長の評価のところとも関係するのですけれども、この不服のある場合の手続につきましても、高裁長官の関与について規則事項にするかどうかということがございます。私は、今回の最高裁判所の規則というのはものすごい重みがあると思うのですね。だから仕組みをしっかりあらわすのには規則をきちんとお作りいただくということが非常に大事なことではないか。それが非常に納得性が高いと思うのです。通達というのは、行政ですよね。そういう意味で、幹事が検討するということになっておりますけれども、是非積極方向で、幹事の皆さんには規則に盛り込むということをおやりいただきたいというのが私の要望です。
【伊藤座長】分かりました。ほかに御意見いかがでしょうか。どうぞ、佐々木委員。
【佐々木委員】不服の手続の在り方につきましても、基本的な手続を設ける際の姿勢といいますか、そういうものを考えますと、不服を申し立てている裁判官、評価の対象の裁判官にとってどのような実質的なケアができるか、実質的な対応ができるかというところから考えていただいたらと思っているわけです。
これは大阪地裁での意見交換会でたくさん出ていたわけですけれども、今回の規則要綱案のスタイルは、一つは自己書面の申告から始まって面談、評価、そして調整が入るかもしれませんが、そういういわば双方向の意見交換の延長線上で不服の申立制度を創設していると、こういう位置付けでありますから、この一連の流れの中で見ていきますと、そういう延長線上に作る制度としては、評価権者、責任の所在のある評価権者に対して直接的に言い分を述べられるということで十分実質的なケアができるのではないか。評価制度全体として見れば対応できるのではないかという意見がまず一つありました。
それから、もう一つは、先ほど冒頭で説明があったようですけれども、評価者と被評価者との間に、事実についてはともかく訂正できるかもしれませんけれども、評価についての認識について、異なることはあり得ることであって、それをいわば客観的にいずれが正しいかを第三者の手に委ねても、これはどうにもならないのではないかと。直接自らの言い分がファイル化されて、将来の人事決定の場面で見ていただければと、そういう担保があればいいのではないか。それから、評価権者が変わる場合もありますから、そういうものが何年も積み重なっていけば、実態として十分分かるではないか、こういう意見が多かったわけであります。
一般規則制定諮問委員会の議事録の個人情報の修正のところなどの意見と同じなのですけれども、前回の議事概要である資料15に、個人情報保護制度で提起された問題というように、事実の関係は訂正ができるだろうけれども、評価は苦渋の選択で両方とも並べてやっていくのだという、こういう考え方が出ておりますが、私も同じ意見でございます。
【伊藤座長】どうぞ、岡田委員。
【岡田委員】第三者機関というのは、最近大変流行していまして、確かに客観的に見ますと、透明性とか公平性とかが担保されるような気がするのですが、ただ、それがあまり意味をなさないのであれば、わざわざ第三者機関を作ったとしてもどうなのかと思います。そのために、また、資料を収集したりということになると、第三評価権者という形にもなりかねないという感じもするのですね。それをあえて裁判所としては、最初の第一、第二評価者のところで修正するかしないか。不服申立者に対して説明するという意味では、外から見たら客観的ではないのだけれども、あえてそのリスクは覚悟の上でやるよという、その意気込みを私はむしろ買って、将来的に外から見ても、公平なのだと思えるような、そういう実績を積んでいただければと思います。
【伊藤座長】ありがとうございます。どうぞ、松尾委員。
【松尾委員】不服の手続の内容について、一般的な感覚から申しますと、評価権者に対して不服申立するというのは、ちょっと違和感を感じます。これは苦渋の選択ということなのでしょうか。しかし、最高裁の一般規則制定諮問委員会でも提案されているような、いわゆる不服審査委員会、これが妥当かどうかということはともかく、何らかの第三者機関的な要素を考える必要があるのではないか。公平委員会みたいなことは考えられないかとも思うのです。しかし、いわゆる第三者機関的なものを作っても、本当にそれが実体として機能するかどうか、効果が上げられるかどうかということを十分に検討しなくてはいけないということ。それから、この原案によると評価権者である所長は裁判官から不服申立があったときに、必要な調査もできるし、理由があれば修正もできる。それを通知することができます。さらに高裁長官が補充・調整する仕組みになっていますが、原案どおりでいいのかどうか。所長が判断して、さらに不服がある場合に改めて高裁長官が判断するという二段構えの方もあるのではないか、一つの意見です。いずれにしても、高裁長官が補充・調整する仕組みになっている。
それから、一番大事なことだと思いますが、不服申立の理由などの関係書面が保管され、記録化する措置がとられている。そういう総合的なことを考えますと、原案の手続について、苦渋の選択ではありますが、結論としてやむを得ないという意見であります。ただし、運用については、これは重視してやってほしいという願いであります。結局これも裁判官の評価の仕組みが一般とかなり違うという特徴を持っていると割り切るしかないなと、このような考え方を持っております。
【伊藤座長】それでは、委員の中には、なお、御自身の意見としては検討の余地があるのではないかということを留保されながらも、しかし、委員会の検討結果そのものが了承できないという御意見はなかったように思います。それから、平山委員がおっしゃられました、どういう形でこれについて規律を設けるかということについては、小池さん、何かその点は御発言ございますか。先ほど御要望がございましたが、補足ということで。
【最高裁(小池審議官)】その点、御指摘を踏まえて検討させていただきたいと思います。
【伊藤座長】それでは、その点は、そういうことで取りまとめさせていただきます。
ちょっとここで5分ほど休憩をとらせていただきます。
(休 憩)
【伊藤座長】それでは、再開いたします。奥野委員は所用のために退席されると伺っております。
そこで、事務局資料23−2の「第4」、「裁判官の人事評価の概要(案)」の「6 その他」についての検討をお願いしたいと思いますが、委員会の検討状況につきまして、最高裁から何か補足ございますか。
【最高裁(小池審議官)】結構でございます。
【伊藤座長】よろしいですか。この委員会では、この問題につきまして、枠囲いの内容が原案どおり取りまとめられたということでございますが、何か特に御意見ございますでしょうか。どうぞ、中川委員。
【中川委員】規則には、人事評価の結果を何かの形で何かに反映させるということはお書きにならないのですか。
【最高裁(小池審議官)】特にそこのところは予定はしておりません。条文として書くことは予定しておりません。
【中川委員】先ほどの御説明では、人事評価でないということであれば、それはいいと思うのだけれども、何か少ししり抜けみたいな感じがするのですね、規則要綱案全体を見まして。
【最高裁(小池審議官)】要綱1のところに書いてあります大きな目的のところで示されていると思います。それ以上、それを細かくしたものについては今のところ予定しておりません。
【伊藤座長】中川委員、そこは御意見があって、御不満があるかと思いますけれども。
【中川委員】それならそれで一つの考え方だと思います。
【平山委員】私も同じような疑問を、第1項は、人事評価を毎年実施するとなっておりまして、「評価書の記載」ということになりましたよね。ですから、そこに何となく人事評価をするのか、しないのかという点が、評価書ということになってしまいましたので、ちょっと違和感があるなという、同じような疑問を持っているのですよね。ですから人事評価でないのだと、評価書を作っていくのだと、とりあえずというようにもとれますので、やっぱり評価も入って評価書ができていると、こういう理解ではよろしいのですよね。
【最高裁(小池審議官)】それは評価の判断、評価の意見というものは入っています。
【伊藤座長】冒頭の説明にございましたが、直接的な何か法律上の効果とか、そういうものに結び付くわけではないと。そういう意味で、若干。
【平山委員】結局そこが不服申立にも関連いたしておりますよね。どうも、そのところが曖昧な気がしまして、やってみていただいて、だめなら、ちゃんとまたやるということをひとつお願いするしかないのかなという気もします。
【伊藤座長】ここは何とかそういうことで御了解いただければと思いますが。どうぞ、木村委員。
【木村委員】今お話になっているところは第6項の「その他」ですね。
【最高裁(小池審議官)】はい。
【木村委員】これは文字どおり「その他」なのでしょうけれども、例えば小池さんがお書きになるとすれば、「その他と」いうのは何が入るのですか。
【最高裁(小池審議官)】細目とかありますけれども、大きい事柄ですと、例えば、私のような身の上の者は、ここの「その他」のところでその評価の事柄が定められるということになると思います。現場の裁判をやっておりませんので、評価の項目が違ってくると思いますが、そういうようなものが入ってくるということになると思います。
【木村委員】そういう意味ですか。
【最高裁(小池審議官)】はい。
【木村委員】分かりました。ちょっと分からなかったものですから。
【伊藤座長】この点につきましても、委員会の検討結果自体については御了承いただいたということにさせていただきます。
続きまして、事務局資料23−2の「第5」の「1 地家裁所長の人事評価」、具体的には、地家裁所長の評価権者をどうするかという問題につきまして御検討いただきたいのですが、検討状況につきまして、何か補足がございましたらお願いいたします。
【最高裁(小池審議官)】先ほど申し上げましたとおりでございます。
【伊藤座長】それでは、この「第5」の「1」に記載したとおりの検討結果になったということでございますが、この点について、何か御意見ございましたらお願いいたします。どうぞ、平山委員。
【平山委員】先ほどと同じ要請でございますが、規則にきちんと盛り込んでいただきたいと。
【伊藤座長】通達ではなくて。
【平山委員】通達ではなくて、これは仕組みをきちんと明らかにしていただいた方が良いと考えます。所長でもそのように考えられるのではないか。また、今後、所長になる方も規則でそう決まっているのだという方が私は良いと思います。
【伊藤座長】その点は、そういう御意見が委員の中から述べられたということで受け取っていただければ幸いと存じます。
この点も、特にほかに御意見ございませんようでしたら、御了承いただいたということでよろしいですね。
それでは、続きまして、事務局資料23−2、「第5」の「2 高裁長官の人事評価」、具体的には、高裁長官を、先ほど小池さんの説明に尽きていると思いますが、この規則による人事評価の制度の対象とするかどうかという問題についての検討をお願いしたいと存じますが、小池さんから補足的説明ございましたらお願いいたします。
【最高裁(小池審議官)】ございません。
【伊藤座長】よろしいですか。
【最高裁(小池審議官)】はい。
【伊藤座長】委員会では、高裁長官は、この規則による人事評価制度の対象とはしないという検討結果になったということでございますが、この点はいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは、この問題につきましても、委員会の検討結果が了承されたということで取りまとめさせていただきます。
続きまして、事務局資料23−2の「第6」、「最高裁裁判官会議との関係」、具体的には、最高裁の権限を規則に盛り込むかどうかについての検討をお願いしたいと思いますが、これにつきましても、検討状況について補足があれば、小池さんからお願いいたします。
【最高裁(小池審議官)】先ほど申し上げましたとおり、法律で根拠が定められておりますので、規則に明らかにする必要はないだろうということで取りまとめられたわけでございます。1点、補足させていただきますと、前回ここで御指摘がありました最高裁に提出された評価書の取扱いでございますが、これは最高裁で庶務を担当する事務総局において保管しまして、人事決定が最高裁の裁判官会議で行われる場合にはそれを利用するということを予定していると、こういった方針についても委員会の了承をちょうだいしております。以上でございます。
【伊藤座長】委員会の審議状況の結果についての御説明を補足的に承りましたが、どうぞ、御意見をお願いいたします。
【平山委員】今、私の方で、前回この検討会で、「裁判官人事評価の評価権者に関する疑問と提案」と題する書面の2項のところで、この関係で御提案ということを申し上げて、その関係で議論していただいたと思いますが、私の方が今の小池さんの説明で分かりますのは、各法律によってきちんと分かるというのは、2行目まではそのとおりでありまして、問題は最後の2行、これについて、つまりプロセス等につきまして、きちんと何か分かるようにしたらどうかという議論が前回の検討会で行われたと思うのですね。その部分についてはどうですか。
読みますと、「2項の冒頭に一つの項目を設けて「(1)最高裁判所はすべての高等裁判所長官、判事、判事補及び簡易裁判所の判事の人事を最高裁判所裁判官会議により決する。」」これはこのとおりだとおっしゃるならば、そのとおりで、法律に全部決まっておりますね。ですから分かりましたと申し上げるのですが、その次に、「その前提となる裁判官の人事評価については、以下のとおり行うもの」とするとし、報告や保管についての確認事項等を明らかに定めていただきたい、こう申し上げたのです。ですから、まさに今日議論しております新しい人事評価制度の中で、評価書というようなものが作られる。それがどう保管され、どう使われるか、プロセスを田中委員がおっしゃったかと、プロセスをきちんと明らかにしておくべきだという意見、そのところは、今の小池さんの説明ではどうなるのでしょうか。
【最高裁(小池審議官)】人事評価については、最高裁の方に権限があるということは、例えば審議会でもそれを前提として議論されておるところでございまして、自明のことでございますので。
【平山委員】上の2行は。
【最高裁(小池審議官)】やる必要がないと。あと、その後、保管とか、それを前提とした細目については、これはまた通達で定めていくということになるわけでございます。
【平山委員】通達形式という意味ですか。
【最高裁(小池審議官)】はい。
【平山委員】それは規則で定めることはできないのですか。
【最高裁(小池審議官)】それは非常に細目にわたると思いますので、それは通達が相当だろうと思います。
【平山委員】何か法律上整合性が云々ということが議論されたやに聞くのですけど、私は整合性は問題ないと思いますけれど。
【最高裁(小池審議官)】法律との整合性というのは、法律で書いてあることを、規則で同じ文言で書けば、整合性の問題が出ないのですが、規則で少し違う表現をとったときには、法律と規則の関係はどうなるのかということが起こるだろうということです。
【平山委員】上の2行は法律に書いてあることですから、要らないですよね、おっしゃるとおりだと思います。下の2行は書いてないのではないでしょうか。今度新しくできる、つまり人事評価制度は新しく新設される。その中の成果物についての取扱い、保管ですから、これは今までの法律に書いてないわけですね。それをきちんと規則にお定めいただいたらどうでしょうかという提案なのですね。
【最高裁(小池審議官)】それは事柄の性質において、規則でどういうことを定めるか、通達でどう定めるか、これは規則と通達の関係は自律権に基づく事柄としては多数ございます。そことの兼ね合いとか、今までの規則と通達の振り分けとか、そういったものを見ながら考えていった結果、こういった事柄については、規則というところでなくて通達なり、あるいは事務連絡、そういった形で対応していけばよいのではなかろうか、こういう趣旨でございます。
【平山委員】その点については、私は了解というより、今回のものはここをきちんと規則に定めておいていただきたい、その方が評価される人たちにとっては非常に分かりやすいし、やはり重みがあると考える、こういう意味であります。
【伊藤座長】分かりました。平山委員の御意見自体は今承ったとおりでございますが、報告やその保管について、これは最高裁が評価を実施していく上での内部的な事項であるということから、委員会ではこういう結論が出ているかと思いますが、その点はいかがでしょうか。平山委員の御意見は承りましたが、全体としてはここに委員会の検討結果を了承するということでよろしいですか。
【田中委員】さっき平山委員が私の発言に触れられたので、一言いわせていただきますと、あれは人事評価という形の結果を開示して、一つのプロセスを確定した上で、それに不服申立をするという前提での発言で、結局人事評価の結果でなくて、評価の内容という形で、ある意味ではどこで一つのプロセスが終わるのか分からないということになってくると、内部の事務処理の問題にかなり移っていったという感じがします。確定するというプロセスがないのだったら、不服申立自体、非常におかしいという感じがしますし、いみじくもさっき小池審議官が「対話的人事」とおっしゃったのですけれども、一つの事務処理を円滑にするための書面となってくると、それを規則に取り上げて云々というのは非常にやりにくくなったという印象を私は持ったのですけれども、そういう理解です。
【平山委員】分かりました。簡単に変わったのではないかと。
【田中委員】中川委員がおっしゃった、一体この評価というのは何なのかという疑問にもつながるところはあるのですけれども、ちょっと性格も変わっているのではないかという気がいたしまして、それならば、少し様子を見た上でしかるべき対応を考えた方が良いのではないかという印象を持っております。
【伊藤座長】それでは、恐縮ですが、大方の意見としては、この委員会の検討結果を了承していただいたということで、これまでの項目についての御検討で、委員会の検討結果については当検討会でも御了解をいただきました。どうもありがとうございました。
委員会の次回の会合は12月5日、金曜日に予定されていると伺っておりますので、委員会から最高裁に対する答申の内容につきましては、また、当検討会への報告をお願いしたいと存じます。どうもありがとうございました。
それでは、引き続きまして、議題(3)の「弁護士報酬の透明化・合理化」の問題についての議事をお願いしたいと存じます。この問題につきましては、本年3月の第17回検討会におきまして、意見書に例示されております「個々の弁護士の報酬情報の開示・提供の強化、報酬契約書の作成の義務化、依頼者に対する報酬説明義務等の徹底」に関する規則の制定、続きまして、「アンケート結果にもとづく市民のための弁護士報酬の目安」の作成につきまして、日弁連から検討状況の御説明をしていただいて、質疑応答、意見交換をしていただいております。
その後、日弁連におかれまして、さらに検討を進めてこられたということでございますので、改めて日弁連から御説明をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
【日弁連(藤井副会長)】資料をお配りしておりますが、私は日本弁護士連合会副会長の職にある福岡県弁護士会所属の弁護士でございます。本日は、当連合会が進めております弁護士報酬制度改革の状況について、報告する機会を与えていただきまして感謝申し上げます。
先ほど座長がおっしゃられましたとおり、平成15年3月18日に開催されましたこの法曹制度検討会において、私の前任者であります永尾廣久前日弁連副会長が行いましたプレゼンテーションに従いまして、これを具体化するための作業を当連合会は進めてまいりました。最も大きな課題であります「弁護士報酬の自由化」及び「弁護士業務・報酬の広報等の強化」を図る会則改正を今月12日の臨時総会で承認・可決いたしまして、改正弁護士法に合わせ来年の4月1日より施行する運びとなりました。
また、個々の弁護士の自己報酬基準の作成義務、受任見積書の作成、報酬説明義務、委任契約書の作成義務、個々の弁護士の情報提供など、これにつきまして、永尾廣久日弁連前副会長のプレゼンテーションに沿った会規(案)を策定中でありまして、かつ、弁護士会としての広報制度並びに周辺制度の整備を図っているところでございます。
それでは、別紙1に基づいて、若干その経過について御報告し、現在検討している内容について、さらに御説明をしたいと思っております。時間が押しておりますので、基本的視点、その他は省きまして、具体的な内容について御報告申し上げます。
別紙1の「第2」でありますが、基本的には、法律改正の方針に従って国民の利便性を増大させるための情報提供がどのようにあるべきかということを考えております。
それから、弁護士報酬額については、自由化するということで、弁護士報酬標準規程の廃止を行います。さらに国民の信頼を得るためにどのような方策をするのか、また日弁連としてどのような立案・実行をしていくのか、このような視点を持って現在進めているところでございます。
そこで、当連合会内の手続でありますけれども、平成15年8月20日の正副会長会におきまして、会則改正案の確定をいたしまして、同年9月5日の理事会で会則改正案を発議いたしました。10月1日の代議員会におきまして、会則改正案を可決し、総会付議を承認していただきました。そして、今月12日、臨時総会を開きまして、会則改正案を承認いたしました。
これは添付しております別紙2でございますけれども、報酬の部分については、会則改正案第29条の3、第87条1項、2項という改正につながっております。これはまた後ほど申し上げたいと思います。
なお、この臨時総会の場所におきまして、来年4月1日からの個々の弁護士並びに弁護士会の対応について基本的な説明を行ったところであります。
そこで、今後の予定でありますけれども、①弁護士の報酬に関する規程、これは会規ということで、総会の決議に基づくものですが、会規の制定を来年の2月26日の臨時総会に付議する予定で現在正副会長会で詰めているところでございます。
それから、②でありますけれども、市民向けのパンフレットなどの作成を準備中であり、これは年明けにも周知期間等の必要性から各自治体の窓口等に配布したいと考えているところであります。
③でありますが、個々の弁護士に対する指導として、現在弁護士報酬等のガイドブックの作成を行っておりまして、これについても近々完成する予定にいたしております。
そこで2ページ目でありますが、「第3」でありまして、弁護士の報酬に関する規程(案)について若干御説明申し上げたいと思います。ほぼ、この内容が規則案として固められ、会規として拘束性を持つということになろうかと思います。
まず、第1でありますが、これは改正案にもありましたとおり、報酬は適正かつ妥当なものでなければならないという、この適正性かつ妥当性という規程は残すといいますか、置きたいと考えております。ただし、当連合会並びに単位会は、現在の報酬規程におきます金額の幅とか、あるいは定額といった金額についての規程は一切排除する予定でございます。したがって、適正かつ妥当というものをどのように解釈するかという問題点は残りますが、適正については、後に述べます契約に至る、あるいは契約を履行するに至る適正な手続を一つ念頭に置くべきではないか。それから妥当というのはやはり金額は決まっていなくても、暴利行為とか、あるいは非常識だというような金額はあるわけでありますから、これはやはり妥当なものであるべきだという弁護士としての指針といいますか、これは会則上も残すことになりましたし、会規上も、つまり報酬規程上もこれが残るということになります。
さらに、この適正かつ妥当な内容としてどのようなメルクマールがあるのかということで、会規上若干のメルクマールを定めていきたいと思っております。例えば事件の難易度、対象事件の経済的な価値、あるいはその他、依頼者がどのようなことを要望しているかといった、抽象的ではありますけど、若干具体的なメルクマールを置きたいと思っているところであります。
さらに弁護士会あるいは単位会と連合会の報酬規程がなくなりますので、各弁護士においては、自己の報酬基準を作成し、備え置くという義務化を規定することにいたしております。つまり弁護士が依頼者がお見えになったときに、その人の顔を見て報酬を決めるのではなくて、この弁護士、Aという弁護士、私は一般的にこのようにしております。その基準をきちんとどなたが来られても、一定の基準を示して、私の値段はこうでありますということ、これをそれぞれの弁護士が自由に作り、そして、それを備え置いて、常に供覧に供すという、そういう体勢を個々の弁護士にとらせたいということで、これも義務化をしたいと思っております。
基準の内容項目としては、どのような種類と考えられる報酬を請求するのか、さらにその種類の中で、A弁護士、私は金額的にはこのような額を考えておりますという基準を示す。その算定方法はどのようなものであるときちんと説明ができる算定方法を示してもらう。それから、支払い時期はいつお願いする。これは最初に支払ってほしいという方もいらっしゃいますし、現実にはいろいろなクレジット、サラ金処理などでは分割で支払ってもらっているということもあります。こういうものをきちんと基準として備え置いてもらう。その他、時間制にするとか、あるいは難易度についてプラスアルファ、マイナスをするとか、そういうことを基準として記載したものを各事務所に各弁護士が備え置くということにしたいと思っております。
それから、依頼しようとする者に対して、報酬見積書の作成・交付に努める、この規定を置くことにいたします。この報酬見積書の作成については、前回の検討会において若干の御議論があったと引き継いでおりますが、これは、極めて委任契約書の案の交付に近付いてまいります。ところで、委任契約書の作成義務は後ほど申し上げますけれども、義務化いたします。これはかなり厳格な義務化をいたしますが、そうなりますと委任契約書を作成する。そしてその場で署名押印するということではない。やはりそれはいずれの場合も契約というものを考えた場合には、契約書をお互いに作成し、そしてそれを点検して、最終的にそれで応諾するかどうか、調印するかどうかということになっていきますので、そのような取扱いになるように弁護士会としては、あるいは連合会としては指導していきたい。
つまり、契約書の作成義務が義務化されました。そのために個々の弁護士が、言い方は悪いですけれども、利用者あるいは相談者が来られたときに、すぐ署名押印しろと、こういう検討の機会も与えず、そのようなことをするのはやはり避けなければいけない。やはり実質的な契約義務というものは、お互いに納得し、よく検討した上での応諾義務ということになるわけですから、ここに見積書の交付は努力義務にいたしましたけれども、限りなくこれに近い実態を作っていきたいと思っています。
なお、これに付言しておきますと、近時いろいろなクライアント・利用者の方々から、複数の見積りをとって比較したい、あるいは見積りを出してくれという御要望も徐々に増えてきております。この点は、マスコミ等にも見積書を作る、そのように努力していくということを弁護士会として広報しておりますので、徐々に、これは社会的に認知されてくるだろう、また要求されてくることになるだろう。見積書も出さない弁護士だったら、それはとてもじゃないけど頼めないよというような状況にもだんだんなっていくだろう。そういうことを願いながら、私どもとしては、当面これは努力義務とさせていただきたい。しかし、先ほどの契約書の義務化その他において、是非御理解をいただきたいと思っているところでございます。
それから、4番目でありますけれども、弁護士報酬について、さらにその他の費用について、説明しなければならないという義務化規定を置いております。これは十分な説明義務を尽くしていないということになりますと、これは問題になるということになってこようかと思います。
それから、5番目でありますが、委任契約書の作成義務であります。これは報酬契約書というよりは、委任の内容についてきちんと契約をすべきだ。つまりどのような受任の範囲であるのか、それからどのようなことをやっていくのか。こういう事務の表示と範囲を明確にした上で、それに対する報酬はいかなるものであるのかということが分かる内容にしなければいけない。こういうことを私どもとしては考えております。
また、事件受任の後、処理の方法が違うということで、中途解約あるいはそのようなことが起こる可能性は十分ございます。このような場合の中途解約による、あるいは中途終了による精算方法についても表記をしていきたいと考えているところでありますし、これを会規化する予定であります。
ただ、委任契約書の作成時期について、若干会内で議論がございまして、例えば時間的に非常に困難な事由がある場合があるのではないか。急いでやってくれと。今、サラ金からわあわあ言って来られているけれども、先生、来てください。これはよく田舎ではあることなので、いやいや、それは1回いくらで、1時間いくらでやるから、どうしようかと、そういういとまはないわけでありますから、こういう駆けつけなければいけないという、仮処分も含めて、そのような事例の場合は、困難な事例という時間的な困難性、これは会規上解釈指針としてきちんと定めて、しかし、これは困難性が止んだときには作らなければいけない。つまり免除する意味ではなくて、そのような時間的なタイムラグの問題、具体的な事情の問題の場合は、その事情が止んだ後に契約書を作る、こういう時間的な義務化、例外的な条項もきちんと入れたい。
さらに契約書の作成を要しない場合、これは合理的な事由が存在する場合ということで、かなり限定的に考えつつあるところでありますけれども、例えて言いますと、1回だけの法律相談、クライアントがお見えになって相談をしたい。相談料いくらですか。1時間、例えば5000円にします。あるいは場合によっては2万円お願いしますと、これはそれぞれの弁護士が基準を持って備え置いているわけですね。これをお見せして、このようになっております。そのときに法律相談契約ということで、1時間5000円と書いて応諾するという、これは必要ないのではないか。そういう合理的な場合です。
それから、私どもの業務の中では、顧問契約を締結しておりまして、クレジット会社との契約をしている。そうしますと、クレジット会社で常に毎日毎日立替金の支払請求事件を受けている。これは請求額の例えば何%、そして取れた額の何%を報酬にしますと。これは継続的な顧問契約書には書いてないけれども、それでやっている場合というのは非常に多いケースがございます。その場合に1件ごとに、例えば総額が100万、あるいは50万といった金額について、1件ごとに受任契約を作るという必要まではないのではないか。こういう具体的な合理性がある場合は、これは免除してもいいのではないか。こういうことも明記したいと考えているところであります。
なお、委任契約の内容について、追加、変更、縮小、その他の問題が起きた場合、これは会としては変更契約をきちんとその場合に結んでいけという指導を徹底させていきたいと思っております。これは従前の検討会ではあまり御議論がなかったところでありますけれども、私ども会内で検討したところでは、事件というのは生き物でありますので、変わっていく場合がある。そういう場合に変更ということが当然出てくるだろう。これも明文化してきちんとしなければいけないのではないかという議論の中で出てきたところであります。
それから、6番目でありますが、各弁護士は報酬の自己情報を開示するよう努める。この努力規定は置きたい。これはどのようなことになるかといいますと、報酬とは少し外れますが、弁護士が増えることによって社会の隅々まで法律家が出かけることになります。そうなりますと、従前の訴訟中心主義的な弁護士業務からかなり脱皮した業務形態に変わっていくであろう。そうなりますと、自らの報酬の自己情報をむしろアピールしていかなければいけない。これは業務のアピールと表裏一体でございます。そういうことで、創意工夫と自由な競争の実現のためにも、このような努力義務をきちんと会規上作る必要があろうと思っております。
次に、そうなりますと、個々の弁護士の報酬についてどうしていくのか。国民はどのようにして知る方法があるのかということになりますが、これはパンフレットの作成を現在精力的に行っております。なお、第1回でありますけれども、アンケート調査が今回お手元にお配りしておりますとおり、報酬の目安ということで冊子を作りました。これは第1回目でありますので、非常に回答率が低いということと、地域的なアンバランスがあるということで、アンケートとしては十分なものとはいまだ思っておりませんけれども、これをできましたら毎年、少なくとも2年置きにはこのようなアンケート調査を繰り返しながら、市民にとって弁護士の報酬というのはどの程度のものなのか。この先生はどの程度のレベルで要求されるのか。しかも事務所に置かれている各それぞれの弁護士の基準といいますか、それがこのアンケートの目安とどのように違うのか、同じなのかということが比較検討できるように弁護士会としてはこのような作業を精力的に進めていきたいと思っております。
それから、選択範囲の拡大については除きまして、最後に手続違背、不当・不正な弁護士報酬についてどのようなことを弁護士会として行うのかという点でありますけれども、当連合会並びに単位会は、今申し上げたような、今後作ります会規を基本にして徹底的な指導と周知を図りたいと考えております。
なお、適正・妥当性を欠けば、いわゆる会規違反となりますけれども、私どもは直接報酬の規程、それに違反したからただちに綱紀・懲戒だということではありません。やはり弁護士の品位を害する行為が綱紀・懲戒の対象になろうかと思います。そのために、会としては、まず個々の弁護士に対して指導を徹底したい。また、若干のお金の面でのトラブルが起きれば、従前からあります紛議調停委員会というのがございます。ここでクライアントと受任弁護士との間の紛議を扱っております。この紛議調停を有効に活用していきたいと考えているところであります。
そして、綱紀・懲戒はそれとは別に、弁護士の品位を害する行為か否か、可罰的な違法性があるかどうかということを別途懲戒の手続の中で行っていくことになろうかと思います。その結果、適正・妥当という範囲が徐々にではありますが、新しい価値観として形成されていくことになっていくのではないかと思っています。
以上でございます。
【伊藤座長】どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に関して、まず御質問があれば承りたいと存じます。どうぞ、木村委員。
【木村委員】「第3」の「3」のところでございますが、今、御説明いただきまして大変よく分かりましたが、「依頼しようとする者に対し、報酬見積書の作成・交付に努める」というのは、要するにそれを義務化しないで自由に任せると。要するにそれを作らない人もいるということですか。
【日弁連(藤井副会長)】作らない人もいるということではあります、結論的に言えば。しかし、それは会としては、それは是非努めるということですから、積極的に見積書を出していくようにしてくださいと。そして現在、私ども考えておりますのは、報酬見積書の具体的なフォーム、これを会として作りまして、全弁護士にこのようなフォームで相談者に出したらどうかという指導を徹底していきたいと思っております。
【木村委員】それが大変よろしいかと思いますね。消費者側はそういうものがございませんと、どのくらい費用がかかるか全然見当がつかないという状況になりますので。
関連でございますが、現行の日弁連会則第87条には、非常に詳しくいろいろ書いてございますが、これにつきましては、現在は、消費者側といいますか、依頼する方の方々ははっきり目に見える形であるわけでございますよね。
【日弁連(藤井副会長)】そうですね。
【木村委員】その場合には、報酬見積書の全体的な作成・交付ということは、今現状ではほとんどの場合の弁護士さんがおやりになっているわけでございますね。
【日弁連(藤井副会長)】報酬見積書の作成・交付は現在は非常に少ないと思います。
【木村委員】少ないのですか。
【日弁連(藤井副会長)】複数見積りをとって比較するという感覚は、国の中にも非常に少ないですし、それから、まして1回きりで事件に遭遇して、弁護士をお願いしたいという人は、ほかの弁護士と比べるという、そういう文化にまだなっておりませんので、これは非常に少ないと思いますね。その点は我々は反省しなければいけませんし、それを変えていきたいという気持ちを持っております。
【木村委員】分かりました。
【伊藤座長】どうぞ、太田委員。
【太田委員】例えば1000万円を請求する原告側で、勝ったら報酬は500万円とし、、負けたら一銭も要りませんというようなことが許されることになるのかどうか。逆に場合によったら、非常に貧しい方が来られたので、いわゆる手弁当でやってあげよう、報酬は出せるだけでいいですよ、あなたのために一肌脱ぎましょうということでやられる場合、いろいろあると思うのですけれども、それはどうなのでしょう。適正・妥当ということの意味と両面あると思うのですが。
【日弁連(藤井副会長)】非常に難しい問題です。前の方の1000万円の請求で500万円、それで負けた場合、ゼロ。これが果たして適正さを欠くか、妥当性を欠くかというのは、私、今の段階では申し上げることはできないですね。といいますのは、どれだけ説明義務を尽くし、その事件はいかなるものであったか。そして利用される利用者がどこまでそれを理解し、その上で契約を締結したか。この適正手続というものがどこまで図られているかというのは非常に大きなメルクマールになると思います。それであと1000万円のうち500万円取る。これが額として妥当か、不当かというのは私としては今日の段階では申し上げられない。誠に申し訳ありません。
また、別の点で、私ども議論したのは、タイムチャージ制をとった場合、いわゆる経済的な利益では200万円なのにタイムチャージで一生懸命やったと。すごく時間がかかって、いわゆる裁判の時間ではなくて、弁護士の作業の時間が非常にかかった。それで例えば金額が200万円を超えたらどうするのだというような議論もしたところでありまして、これはそれぞれの適正さというものが、適正手続はどうなっているのか、そこにメルクマールと額、社会的な妥当性がおのずから決まってくるのではないか。想定でしか申し上げられない。
それから、後の点でありますけれども、現在でも弁護士は貧者に対して、「貧者」という言葉はちょっと使いたくありませんが、困窮者の方に対しては手弁当でもやれという、これは弁護士会として会則上も我々の行動指針といいますか、魂として持っているところでありまして、この場合は経済的な合理性がなくても、どうしてもこれは助けなければいけないという考えた事件、あるいはそのように訴えられる事件、これについては手弁当でやっても構わないと私は思っております。
【伊藤座長】どうぞ、中川委員。
【中川委員】大変一般的な質問なのですけれども、この報酬制度の持っている一つの危険性みたいなものを感じるのですけれども。だから、これに反対だと言っているわけではないのですが、結局マスコミが登場する可能性がかなり高いですね。週刊誌などが事務所の比較をすると。この事務所は安い・高い。そうしますと、これは何が起こるかというと、必ず料金の切り合いになるのですね。今みたいなデフレの時代、特にそうなのです。どんどん、どんどん。そうしますと質を落とすとか、そういう問題にもなるのですが、それはちょっと置いておいて、事務所によって相当バラツキがありますよね。なければおかしいわけです。そこのところがクライアントにとりまして、なぜA事務所は同じ事件でこれだけなのだろうと。B事務所は、なぜ、それだけ安くできるのだろうというところの説明が、これはかなり難しいですね。
というのは、結局、情報開示が非常に進んでいて、例えば事務所単位でどういう人員構成になっていて、どういう事件を扱って、どのような実績があるかというようなことが十分理解できますと、それはここの事務所はこれだけの値段でも合理的であるというように分かるのです。だから、この制度は、金額だけがひとり歩きすると非常に怖い。だから、全体としてのそういう弁護士事務所のインフォメーション、総合判断ができるようなものとパッケージにしませんと、弁護士さんにとっても非常に都合の悪いことが起こるかもしれないし、クライアントも、という感じがちょっとしますね。
その辺はアメリカなどの場合は全部分かるようになっていますから、マスコミが何と言おうと、それは別の情報で評価できるということですので、その辺、十分お考えになったらどうかなという感じがいたします。
【日弁連(藤井副会長)】まさにその点につきましては、別紙2の日弁連会則第29条の3で、どう変えたかといいますと、「活用するため、弁護士の報酬その他の情報」ということで、報酬もきちんと入れましょう。これはばらばらになるからという意味でもなくて、どういう報酬、それぞれどの弁護士がどのように取っているか、できるだけこれを分かるようにしたい。それから「業務の内容を国民に対して広く知らせるとともに」ということを並列にしまして、これは書きぶりから言うと並列になっておりまして、業務の内容、弁護士の内容、そういったものをきちんと広報していく。他方、それぞれの弁護士、あるいは地域的な弁護士についての報酬その他の情報、専門性、そういったものも提供していく。こういう多少抽象的ではありますけれども、第29条の3の改正の意図はそのようなところにあります。これは努力していきたいと思っております。
【伊藤座長】どうぞ、松尾委員。
【松尾委員】弁護士報酬の透明化という意味で、非常に評価する仕組みになっておりますが、いろいろな話が出ておりますように、詰まるところ弁護士倫理の問題に関わってくることだと思うのですね。ですから、ここに指導徹底ということもありますが、そういった意味の倫理教育を含めてうまくやっていかないと問題が山積するのではないか、こう考えております。
【伊藤座長】どうぞ、田中委員。
【田中委員】質問でなく意見なのですが、前にも言ったと思うのですけれども、弁護士報酬の問題がこれだけ社会的に問題になっている割にアンケート調査の回収率が低過ぎるという感じがするので、これは弁護士会の姿勢に問題があると思うので、内部的にこの問題がいかに重要であるかということをもう少し周知徹底されて、これが弁護士の報酬に対する目安になっていくのだということを徹底された方がいいのではないかと思います。11%ぐらいのものをベースにして議論するというのは、ちょっといかがかなという感じがいたします。
【日弁連(藤井副会長)】それはまさに御指摘のとおりでございます。それで、なお、この目安を作ったときは2002年、昨年の11月の段階でございまして、誠に申し訳ないのですけれども、報酬問題について、私どもの会員すべてがきちんと見ていない時代でございまして、その結果、回答率も低かったし、回答を求める方の働きかけも低かったとに率直に反省しております。
今回は、先週になりますか、臨時総会で会則改正も果たしましたので、非常に関心を持ってきております。そして2月には会規の制定に入りますので、全会員がこの報酬問題については関心を持つことになりますから、これを受けてアンケートをきちんと取り直して、この点の整備を図りたいと思っております。それはできるのではないかと今考えているところでございます。
【田中委員】是非そうしていただければと思います。
【伊藤座長】どうぞ、御意見でも結構ですので、岡田委員、お願いします。
【岡田委員】最近、消費者センターから弁護士会ないしは弁護士さんの方へ誘導することが多いのですが、その後も結構相談者がセンターに戻ってくるのです。中でも一番多いのが報酬といいますか、弁護士費用のことなのですね。最初、着手金を納めてお願いしたとして、途中で追加金が発生すると、本人はものすごく不安になるみたいなのです。ですから一つの事件で、最初は調停から始まって、そして訴訟と、段階があると思うのですけれども、是非どこの段階までなら大体このくらいとか、それは着手金、報酬それから実費、その点も説明していただきたいと思います。そうすれば、依頼する方は、自分はこの段階までお願いしようとか、ないしは全体としてこの金額でお願いしたいとか、目安ができると思います。でも先ほどおっしゃったように、事件というのは生き物ですから、途中で変わっていくかもしれません。そういう場合は改めて見積もり出すなど、是非そういう説明を徹底していただきたいと思います。
それから委任契約書は義務化し、その場で印鑑を押さなくていいということですが、それを持って帰って、別なところから委任契約書を取って、どっちかを選ぶということができるわけなので、見積書が努力義務であれば、是非ともその場で印鑑押さなくていいというのを徹底していただきたいと思います。
【伊藤座長】御発言ございましたら、藤井副会長。
【日弁連(藤井副会長)】個人的な意見でございますが、私は現在思っているのは、額の幅を決めた弁護士会の報酬規程では審級ごというのが非常に色濃く残っております。その結果、今、岡田先生が言われたような消費者から見たら、何か手続は、自分は一つのものを解決してもらいたいのに、手続が変わったらお金取られて変だなというように、これは報酬の説明をしていない、基準をきちんと説明しない、さらに報酬契約を締結していないから起きることなのです。
したがって、報酬契約を締結しますれば、これはもう動かしようがないわけですから、もし動かしようがあるような報酬契約であれば、これは私どもは不十分な契約だということになってこようかと思いますので、その点の御懸念は随分改善に向かうのではないかと思います。
【伊藤座長】どうぞ、御意見ございましたらお願いします。格別の御意見はございませんか。
【平山委員】大変立派にやっていただいていると思います。
【伊藤座長】それでは、格別の御意見がございませんようでしたら、この問題は、この程度にしたいと存じます。弁護士法の改正、来年4月に施行されるということでございますが、日弁連におかれましては、それまでに必要な規則等の整備はもちろんでございますが、個々の弁護士の報酬基準の作成等、弁護士に対する御指導をどうぞよろしくお願いいたします。
【日弁連(藤井副会長)】今日はありがとうございました。
【伊藤座長】また、施行後の報酬関係の運用状況につきましても、是非実情を把握していただいて、国民の利益が守られるように御配慮をお願いできればと思います。
それでは、途中大分時間を急いで申し訳ございませんでしたが、本日の議事はこのあたりで終了したいと思います。
次回は12月8日、午前10時30分からの予定でございますが、次回の議題は、追って連絡をさせていただくことにいたします。
どうも長時間ありがとうございました。