① 法務省からの説明
「副検事関係資料(法務省配布資料1から7)」に基づき説明がなされた。
② 最高裁からの説明
「簡易裁判所判事について(最高裁配布資料1から7)」に基づき説明がなされた。
③ 日弁連からの説明
日弁連配布資料「副検事、簡易裁判所判事経験者の専門性の活用について」に基づき説明がなされた。
④ ①から③の説明に対して、次のような質疑応答及び意見交換がなされた。(○:委員、□:日弁連、■:座長、▲:法務省、△:最高裁。以下、同じ。)
○:法務省の構想は、副検事を各区検察庁の管轄する区域のみで活動する限定弁護士としたいということか。また、そのような構想は法務省の統一的な見解なのか。
▲:特定区域に限定した資格を念頭に置いているわけではない。また、権限が限定的な弁護士資格は、一つの考え方として提案したものであって、法務省で細部にわたる検討をしているものでもない。その他にも、ADRの手続実施者等としての活用も提案させていただいた。
○:最高裁配布資料によると、簡易裁判所判事はこの1年で新規任命者が増えているのに対し、法務省資料によると、副検事はこの1年で任官者数が減っている。これはどういうことを意味しているのか。
▲:試験の結果、合格基準に達した受験者が少なかったということである。
○:副検事の地方検察庁での検察官事務の取扱いの現状はどうなっているのか。また、そのような状況は今後も続くのか。
▲:地方検察庁の特捜部などには、ベテラン副検事が数人配置され、その経験や専門性が活用されている。通常の検事が増員されたといっても、事件は日々複雑困難になってきており、副検事に協力を求める状況は今後も続くと思う。
○:簡易裁判所判事には司法書士となる道があり、副検事には試験を受けて特任検事となる道があるのに、新たな資格の創設を提案する理由は何か。
△:司法書士の仕事は登記申請がメインであって、それに新たに簡易裁判所における代理権が加わったというものである。今回の提案は、簡易裁判所判事の経験者には端的に訴訟をメインとして簡易裁判所での訴訟代理権を付与したいとする考えに基づくものである。
▲:副検事には、広域での異動を伴う特任検事の道を選ばず副検事のままで地元に貢献している人も多い。このような副検事経験者の退官後も地元に貢献したいという希望を叶えたいとの考えに基づいている。
○:これまで日弁連が、特任検事に弁護士資格を認め、司法書士にも限定的な代理権を認めたのはどういう理由からか。
□:特任検事については、特に難関とされる選考に合格し、通常の検事と同様の職務を行っている。加えて所定の研修の終了を要件としたからである。司法書士についても、研修によって能力を担保する認定制度を前提としたからである。
○:法曹制度の検討に当たっては、これまでも①司法制度改革審議会意見書に明確に記載された事項については積極的に改革を進める、②国民の目線、市民の立場に立つ、③質の高い大きな法曹を確保するという三つ観点から考えてきた。これらの観点から考えても、現時点では新しい資格を創設するという必要性はないと考える。副検事、簡易裁判所判事の専門性の活用は個別に考えていけば良いのではないか。資格付与の問題は、新しい法曹養成制度、司法ネット構想、ADR制度等の今後の展開を見定めてから再度検討するのが適当だと思う。
○:消費者(利用者)の立場からすると、簡易裁判所判事は、一番身近である簡易裁判所において本人の話を根気よく聞き、納得いくまで説明をしてくれていると思う。その簡易裁判所判事に準弁護士的な資格を付与すれば、非常に頼りがいのある存在になるはずである。簡易裁判所判事、副検事には、弁護士がなかなかやってくれない消費者問題の分野での活躍を期待している。
○:副検事、簡易裁判所判事については、適切な人が適切な仕事をしていると思う。しかし、制度の問題として考えた場合、今ここで新しい資格を付与するということは、世界的な資格の一元化の流れや、利用者側の使い勝手の問題からして適切ではないと思う。ADRや司法ネットでの活用等、広い意味での法律事務における活用を考えていくべきではないか。
○:司法書士に簡易裁判所における代理権が付与されたのは、それなりのニーズがあったからである。その司法書士の代理人としての活動をリードし、教育していく立場の簡易裁判所判事に代理権を付与しないとするのは制度的に齟齬が出てくるのではないか。簡易裁判所判事はボランティア的な活動として自分たちの専門性を活用したいと思っている。認定司法書士制度の今後をも見定めながらこれからも検討を続けるべきだと思う。
○:将来の法曹人口が3000人になったとしても、国民のニーズは満たし切れないのではないかという懸念がある。弁護士が増えても、その多くは大都市に集中するであろう。副検事、簡易裁判所判事の専門性の活用は弁護士の職務と対立するものではなく、補完する関係にあると思う。この問題は、今後も中長期的な検討が必要であると考える。
○:①司法制度改革審議会意見書の書きぶり、②副検事から特任検事、簡易裁判所判事から司法書士への各ルートの存在、③限定的な代理人が利用者に混乱を与える危険性、④今後の法曹人口の大幅増加、⑤これから更に司法教育や司法ネット等における活躍の場ができること等を考え合わせると、今ここで副検事、簡易裁判所判事の経験者に新しい限定的な弁護士資格を付与することは相当ではない。
○:専門職種の経験者の活用は、副検事や簡易裁判所判事に限ったことではなく、その他の公務員、教員、民間企業等においても同様のことが言える。副検事や簡易裁判所判事の経験者も広い意味で法曹を支えるボランティアとしての活用を考えていくべきである。
○:副検事、簡易裁判所判事経験者の専門性の活用は、それぞれの地元における活用という方向性でもって、今後も検討を継続していくのが良いと思う。
■:この問題に関しては、何らかの弁護士に準じた資格の付与を前提としない活用については、今後関係機関において努力してもらうということで異論はないと思う。また、限定された範囲で訴訟代理権を付与したり弁護人となる資格を付与することについては様々な意見があったことに留意する必要があると思うが、本日の議論の最大公約数としては、今後の法曹人口の増加、司法ネットの整備、簡易裁判所における訴訟代理権の付与を受けた司法書士の職務遂行状況等を見極めながら考えていくべき問題ではないか、ということで取りまとめをしたい。
○:異議なし。